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仮面ライダー龍騎 前半合評1 ~仮面ライダー大集合プロジェクト大成功!!

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『仮面ライダー龍騎』前半合評1 ~仮面ライダー大集合プロジェクト大成功!!



『仮面ライダー龍騎』前半評1 ~“究極のライダー”? =仮面ライダー龍騎

(文・森川由浩)
(2002年7月執筆)


 2001年の夏くらいに、“『仮面ライダーアギト』(01)の玩具売上が『百獣戦隊ガオレンジャー』(01)に比して低いから、来年は『ライダー』ではなく別作品になるかも”という話を小生は耳にしていた。それが結局、石森プロ側の要望もあって、『仮面ライダー』としてまた続投となったということらしく、この『仮面ライダー龍騎』(02)が放映の暁となった次第である。


 前作『仮面ライダーアギト』で見せた群像ドラマのコンセプトを押し進め、今度はライダー同士の闘いの中でドラマが進行するスタイルを見せる。登場キャラクターを全て「仮面ライダー」のフォーマットでくくっての整理は、ある意味行きつくところまで行きついた設定の結果、それは「究極のライダー」を目指すものであり、もしかしたら今回のシリーズでいったん幕かという邪推すらさせてしまうものだ。
 そのヒーローのスタイルは、旧来のライダーとは大きくかけ離れ、過去のライダーのデザインコンセプトの基本である昆虫よりも昆虫外の動物をモチーフにしたものが多く、そのデザインコンセプトも過去のライダーはもとより、あまたの動物をイメージした多くのライダー怪人とは一線を画したものになっている。


 今度のライダーたちをビジュアルでの第一印象から見ると、どこかしら平成「ライダー」枠で以前放映されていた東映メタルヒーロー『ビーファイターカブト』(96)の宿敵集団・ビークラッシャーとビーファイターのイメージに近いものがあるが、まだビーファイターの方が旧来のライダーに近いデザインでまとめられている風に見受けられ、この不思議な相互関係には驚愕させられてしまう。これはまさに「ビーファイター」ももう一人の「仮面ライダー」であったのかもしれないという意味合いを持つ。
 原作漫画でも掲げられている「大自然の使者」というコンセプトについては実際、過去に製作された大多数の『仮面ライダー』シリーズよりも、「ビーファイター」の方が貫かれており、本編で活かされていた印象が強かった。「ビーファイター」シリーズ(*1)も、今思えば「仮面ライダー」復活のプロセスとしてなくてはならないステップだったかもしれない。


 だが、その「ビーファイター」の描いた「大自然の使者」「大自然を守る者」のコンセプト、それは「昆虫の助力を借りて闘う人間の戦士」という図式を生み、そして「人間という生きものの非力さ」を裏付ける視点が存在する意欲的なスタイルを確立した。しかし、この意欲的かつ斬新なコンセプトは、『仮面ライダークウガ』(00)で復活した新作「ライダー」シリーズでは割愛されてしまっていた。一度、他作品で描いたものだというのもあってだろうかもしれないが。


 それとも、自然環境問題よりも人間自身の心の荒廃をテーマにし、それに杭(くい)打つヒーロー像を見せようとしたのか。『クウガ』は“究極のやせ我慢”という言葉を企画書に用いて、要領良く苦労せず、快楽的に生きようとする現代人に対し、現在の若者が失いつつある自己犠牲心の復権を謳って、『アギト』ではそれぞれバラバラの立場と目的から、ひとつの目的に収束する三人の仮面ライダーの闘いの中で、結果的には協調性を謳うヒーロー像を打ち立てた。


 事前に入ってきた情報は「13人の仮面ライダー同士の対決」とあり、原作漫画『仮面ライダー』(71)の「13人の仮面ライダー編」が出典かと思いきや、実際にはさまざまな階層の若者がライダーとなって、それぞれの思惑を巡らせて闘うというものになった。導入部は似ていても、全くの別ものとなったところに「仮面ライダー」の今日がある。以前は原点回帰を繰り返していた新作「ライダー」だが、21世紀にはそれを払拭した作品に仕上がった。時代が「苦悩する若者」を求めていないのかもしれないと言われればそれまでだが、実はそれなりに現代の若者の苦悩を今風に描いているのである。


 そのライダーとなった者たちは、


 情報雑誌のライターが変身する主人公・城戸真司(きど・しんじ)こと仮面ライダー龍騎(りゅうき)、
 龍騎に時に対立、時には協力する微妙なホジションの戦士・仮面ライダー騎士(ナイト)、
 現在の腐敗した警察を象徴する悪徳刑事が変身する仮面ライダーシザース、
 「闘いを止める」戦士であり、自分の運命を変えようとする仮面ライダーライア、
 ゲーム世代で快楽主義者の若者を代表し、悪側にシフトされた現代っ子のお坊ちゃま・仮面ライダーガイ、
 永遠の命を求めてライダーになった弁護士・仮面ライダーゾルダ、
 そして脱獄囚がライダーとなり、文字通り「王者」を目指す仮面ライダー王蛇(おうじゃ)


 以上までが登場しているが、この「囚人ライダー」である王蛇こと浅倉威(あさくら・たけし)が、今後の展開の鍵を握っているのは承知の通りだ。


 すでに王蛇はガイ、ライアの二人のライダーを亡き者とした。


 さまざまな階層の若者を描いて、その中で現在の若者への問題点や批判も描く、本作の「21世紀の青春群像ドラマ」としてのコンセプトは、大変面白い。だが、現在の『龍騎』には前作『アギト』終盤の木野薫(きの・かおる)こと『アギト』での4人目のライダー・アナザーアギトに匹敵する、インパクトと主役の座を奪い去るくらいのパワーのあるキャラクターが存在しないのが、前作に比べての物足りなさを感じさせる。


 しかし、残り半分での急展開と、そして8月公開の劇場版で描かれるファイナルエピソード、そして映画で見せた結末と後半の展開の収束次第で、『アギト』を超えるインパクトの作品になるのではと予測する。その結果が視聴者を満足させた時、『龍騎』は真の“究極のライダー”に成り得るわけだ。“無難にまとまった作品”よりも“型破りな作品”の方が面白く思えるし、評価も高くなる。“究極のライダー”には“無難”さよりも“型破り”なパワーを求められているのだ。


 かつて『仮面ライダー』を評価・批評する際、“改造人間の悲哀”“怪奇SF”のシリーズ原点として存在する二つの要素が最前提として論ぜられ、それを満たしたものは高評価を得たことがあった。だが、原作者である故・石ノ森章太郎は、生前に雑誌「MARK1」(ホビージャパン社刊・85年)のインタビューにて


「案外人間でないことのコンプレックスがなくなってきてるんじゃないかな」


 と、当時改造人間の悲哀こそが最大の魅力として奉(たてまつ)られることの多かった本作に対し、ある種このコンセプトに杭打つ意味のコメントをしていたことがあった。そういったマニア諸氏の見解とも異なる、作者自身によるヒーロー観が、しかも没後、こうした形で現在に転生しているのも奇遇である。時代の変化を確実に先読みする石ノ森の先見の明に改めて驚愕させられる。
 しかも、この発言が今から17年前だった。新世界を築くのには過去の要素を土台にして、その復習による試行錯誤から、結果としてその要素を崩すことだったのかもしれない。『仮面ライダー龍騎』の“過去の要素の崩し具合”の進展と度合いが気になる次第である。


*文中敬称略


*1……『重甲ビーファイター』(95)『ビーファイターカブト』(96)と続いたメタルヒーローシリーズで、昆虫の能力を宿した強化服を装着(劇中では「重甲」「超重甲」と呼称)した人間の戦士というコンセプトを持つ作品。3年目として、海の生物をモチーフにして『シーファイター』というシリーズも予定されたが、久々のロボットコメディ特撮『ビーロボ・カブタック』(97)に変更された。


(了)


『仮面ライダー龍騎』前半評2 ~絶対運命黙示録

(文・仙田 冷)


 私事で恐縮だが、実はある友人に「本作のライダーバトルのシステムはTVアニメ『少女革命ウテナ』(97年・ビーパパス)における“決闘”システムに似ている」と指摘され、妙に納得した(本人がそのうちどこかで書くかも知れないので、この辺についてはあまり突っ込まずにおく)。ちなみに、本稿のタイトルは、その『ウテナ』において、主人公の天上ウテナ(てんじょう・うてな)が決闘場に赴く場面で必ずかかっていた曲のタイトル(元々は故・寺山修司の舞台用の楽曲)から頂戴している。


 さて、「戦いを止める」というベクトルで動いている仮面ライダー龍騎こと城戸真司(きど・しんじ)だが、実はそう言葉で書いてみると、何気に『ウルトラマンコスモス』(01年・円谷プロ)に似ていたりもする。ただ、同じ「不戦のヒーロー」でも、両者の印象は相当違う。龍騎の方がコスモスよりも覚悟を決めている、という感じなのだ。
 この差がどこから来るのか考えてみると、これはもう描き方の差としか言いようがない。理想とか思想としての「不戦」や「共生」の域を出ていない『コスモス』に対し、『龍騎』の場合はそれを実践することの難しさまで描こうとしている。サブライターとして、心に屈託を抱えた人間を書かせれば良くも悪くも天下一品の井上敏樹を起用したことが、ここでは功を奏したと言えるだろう。


 北岡や浅倉が「話せば分かる」ようなタイプとはとうてい思えない。北岡は命がかかっているわけだし、浅倉は(少なくとも今のところは)暴れていればご機嫌という人だし。


 そこで小林靖子である。近作では「決められた運命への挑戦」をテーマにしている感がある小林をメインにし、どちらかと言うと運命論者っぽい印象の井上にぶつけたことで、作品に一種の緊張感が生じている。それも、前作『仮面ライダーアギト』(01年・東映)の時のような、変に胃が痛くなるような緊張感ではなく、変な例えだが、遠足の前日どうしても寝つけない……という感覚に似た、ワクワク感を伴う緊張感である。
 つまり、ともすれば、心に抱えた屈託に引きずられ、そのまま流されて行きそうな者たちを、真司がどうやって引き戻すのか、あるいは引き戻し損なうのか、要するに「先が気になる」というやつである。なにせ真司自身が、もともと大した覚悟もなく、安っぽい正義感だけでライダーバトルに身を投じた奴なだけに、本人の葛藤という要素も加わって、さらに先行きを期待させる。


(小林の『決められた運命への挑戦』というテーマについては、『未来戦隊タイムレンジャー』(00年・東映)に顕著だが、それ以前にも『地獄先生ぬ〜べ〜』(96年・東映)の最終回や、サブとしての参加だった『星方天使エンジェルリンクス』(99年・サンライズ)といったアニメ作品にはしばしば見られた)


 かくのごとく、結構好感の持てる本作だが、実はひとつだけ、大きな不満がある。ゲストモンスター(敵怪人)の影が極端に薄いことだ。本題からは外れるので、ここでは詳述はしないが、どうにかならないもんだろうか?


(了)


仮面ライダー龍騎 〜前半評3

(文・フラユシュ)


 意外なことに今期のアニメ・特撮の新作の中では、ビデオが積ん録にならず最も視聴が進んでいる。正直視聴前の第一印象は今期最悪というか、ワースト1だったのに不思議なものだ。


 で、個人的に各個性派ライダー中最も色々な意味で気になる存在の北岡=仮面ライダーゾルダについて語ってみよう。


 私事だが、この言葉は高校3年時の担任Y氏(担当は政経で、学生時代は学生運動やってたらしい)の言葉で、


「正しいことを行うのもある程度の力が必要だ。そして人に施したり恵んだりするのも、己がまずある程度富んでいなければ、他人に施すことはできない」(大意)


ということを良く口にしていた。確かに正論だと思う。ある意味、極真空手の大山倍達(おおやま・ますたつ)の


「力無き正義無力なり、正義無き力又無力なり」


という言葉に通じるだろう。よく人は無くても人に施せ、と言ったり、例え力が無くても立ち向かえ、と無責任に言うけれど、凡人はある程度の力なり、富などがなければ、人に優しくしたり、勇気ある行動はできないと思う。


 漫画家・ジョージ秋山が、力無き正義というテーマで、名作『デロリンマン』(69年)を描いているが、それを読んでもある程度の力は必要だろうと筆者は思う。また漫画家・小林よしのりは、ブッダが悟りを開けたのは家が裕福であらゆる意味で満たされていたからだとの見識を『ゴーマニズム宣言』(92年〜)で述べていたのも印象深い。たしか小林氏の生家はお寺さんだったのだなーと思う反面、そうするとイエス・キリストとかは説明がつかんと、つい意地悪な発想をしてみたりもするのだが……。


 そういう意味で言えば、北岡君は、最も人間臭く、そして自分の欲望に忠実かつ本当は最も弱い人間らしい男といえるかもしれない。こういう一見強がって見栄を張っていても、真実は弱い男といのは、いかにも敏樹ちゃんキャラらしい。それを小林靖子ワールドで、展開するという風に白倉PD(プロデューサー)はしたいのかもしれないが、今のところは井上色の方が強い。作中で最も小林色が強いのは、仮面ライダーライアだろう。そのへんを語り出すと小林論になるので、またの機会に譲るけど取り敢えず、今のところは筆者にとって見どころは、北岡君がどんな結末を迎えるかということだ。


(了)


仮面ライダー龍騎 〜前半評4 仮面ライダー大集合プロジェクト大成功!!

(文・久保達也)


 『仮面ライダー龍騎』(02年)の物語の縦糸となる謎といえば、神崎士郎(かんざき・しろう)が何のために13人もの仮面ライダーを戦わせるなどという壮大なゲームを仕掛けているのか、彼の妹・優衣(ゆい)がそれとどう関わりがあるのか、といった点に集約されているかと思う。前作の『仮面ライダーアギト』(01年)がともすれば謎の解明の方を優先するあまり、肝心のバトル面がおざなりになりがちで、せっかく3人もの仮面ライダーをレギュラーで登場させながらも、ヒーロー活劇本来のカタルシスを得られにくかった(我慢して見ているうちに好きにはなれたのだが……)のに対し、本作は完全にバトル面を優先。


 「戦わなければ生き残れないっ!!」


 とばかりに毎回、複数のライダーが入り乱れて戦いを繰り広げる様は実に壮観。


 ドラマ面においては「棚からボタ餅」式に仮面ライダー龍騎になってしまった城戸真司(きど・しんじ)と、彼が勤務するベンチャー企業・ORE(オレ)ジャーナルの面々がコミカルな味わいを醸し出し、肩のこらない作品に仕上がっている。


 平成ライダーシリーズも三作目に入り、そろそろ息切れかと思いきや人気は益々うなぎ上りのようで、前作とガラッと趣を変えたことは大成功だったと思う。


 本作の最大のウリである13人のライダーだが、当初は(今でも?・笑)「非難GO! GO! GO!」だった仮面ライダー龍騎のデザインを始め、どちらかといえば、この02年秋からDVD(ASIN:B00006BSN6)がリリースされる『宇宙刑事』シリーズ(82〜84年)を代表とするメタルヒーローの趣が強い奴が多いように思う。しかし、神崎士郎が『ライダー』と名付けちゃったのだからしゃあないわな(笑)。東映にクレームを付けるのは筋違いであり、文句があるなら神崎士郎に云うべきだ(笑)。


 古い話で恐縮だが、『仮面ライダーX』(74年)の放映が終了に近付いたころ、数週にわたって次回作に登場する新ヒーローの名前を視聴者に当てさせるシルエットクイズが行われたことがあった。その際、画面に写し出されたのが、『仮面ライダーアマゾン』(74年)のエンディングで有名なシルエットだったのだ。
 歴代ライダーと全く異なった、全身がトゲトゲ状の突起に覆われたシルエット姿を見て、小学校低学年であった筆者はライダーらしいうんぬんよりもひたすら「カッコいい!!」と思ったものだ。実際に現れたのは日本語もまともに話せないジャングルの野生児である「強くてハダカで速いヤツ」(笑)、必殺技もライダーキックではなく、鋭い爪で敵を切り裂く「大切断!!」と異色以外のなにものでもなかったが、男の子の燃える血をたぎらせるには十分過ぎる奴でスグに大好きになったものだった。
 皆さんも小さいころはそうだったのではないか? ライダーファンで『アマゾン』を嫌いな人ってあまり知らないのですけど。いったいいつから我々はそんな新鮮な気持ちを失って、固定概念の強い頭の固い奴になってしまったのだ!?


 だから、『龍騎』の新ライダーたちもオジサン連中にはライダーに見えないかもしれないが、子供たちにはやっぱ人気あんだぜ〜。マニア諸氏も同様だろうが、筆者もいまだによく玩具店に足を運んでいて、先日も『龍騎』の契約モンスターである赤い龍・ドラグレッダーのソフビを買ってしまった(笑)。ぞくぞく発売される新ライダーのソフビは、店頭に並ぶやアッという間に品切れになってしまっている。


 で、この間、面白かったのが、仮面ライダー龍騎と仮面ライダーナイトのソフビを買おうとした子が、母親に「(仮面ライダー)ゾルダはいらないの?」と聞かれ、「こいつは悪い奴やからいらん!」(笑)と答えていたことだ。


 『龍騎』の作品世界は、基本的に善も悪もない混沌とした舞台に思える。故・石ノ森章太郎先生が終生、訴えておられた「勧善懲悪」とは異なっているため、その意味では『ライダー』と名付けるのはどうかと思っている(だから神崎士郎に文句云えってか!・笑)。しかし案外、子供たちはちゃんと各ライダーの人間性を見ているかに思え、それを理解させうる作劇は子供番組として成功しているようで、筆者の心配も杞憂に終わりそうである。


 そういや腕にハサミを有したデザインの仮面ライダーシザースなどは、最も子供受けするかと思ったが、こいつもあまり売れていないのだ(笑)。そりゃそうと「ゾルダはいらん!」といった子の母親は、子供の反応に妙に残念そうな顔をしていた。あのね〜、北岡弁護士のソフビじゃないんだから(笑)。


 子供たちは新ライダーぞくぞく登場に大喜びだ。しかし、お母さんたちはそれらに変身するイイ男がぞくぞく登場に大喜び!! いやぁ、世間にはこんなにもイイ男が存在しているのかと、筆者などは軽い嫉妬を覚えてしまう(笑)。悪徳刑事・悪徳弁護士・愉快犯的なコンピューターオタク・脱走犯と総じてロクでもない奴として描かれている点だけは、我々イケてない面々でも大いに共感を覚えるのではなかろうか?(笑)


 その中ではライダーになることを拒絶してモンスターに殺されたピアニストの友人の代わりに仮面ライダーライアになり、ライダー同士の戦いを辞めさせようとした占い師・手塚海之(てづか・みゆき)のいい人ぶりが光る。演じる高野八誠(たかの・はっせい)は『ウルトラマンガイア』(98年)でライバルの青いウルトラマンことウルトラマンアグル=藤宮博也(ふじみや・ひろや)を演じていたが、今回のあまりのいい人ぶりに、筆者は友人に聞かされるまで彼がアグルだと全然気付かなかったものだ(笑)。


 まぁ、いくらイイ男であっても、彼らの演技のヘタさ加減には批判の声も強いようだが、思えばイイ男路線はなにも『仮面ライダークウガ』(00年)に始まったわけではない。『ウルトラセブン』(67年)のモロボシ・ダン役だった森次浩司や『帰ってきたウルトラマン』(71年)の郷秀樹(この役名ならイイ男じゃなきゃマズイだろ?・笑)役の団次郎という偉大なる先駆的な存在があったわけだ。つまりどちらももともと役者ではなく、ファッションモデルの出身であった。
 特に森次に関しては円谷プロの満田監督によれば「芝居はヘタクソだった」(笑)とか。『セブン』は『ウルトラマン』(66年)よりも視聴者層を中学・高校生まで引き上げたいという思惑があったようだ。その年ごろの女の子は当時のGS(グループサウンズ)に夢中であり、彼女たちを振り向かせるにはそれこそザ・タイガースの沢田研二やザ・テンプターズの萩原健一なみのルックスを備えた主役が必要だったわけで、演技力なんか二の次だったのではなかろうか?
 森次起用の背景にはそんなウラ事情が読みとれるが(ホンマかいな?・笑)、中高生の女の子はともかくとして『セブン』が本放映当時、女子児童にも人気があったとはよく聞く話で、「視聴者層を広げる」という意味では一応の成功を収めたといえるのではないだろうか。


 まして、当時とは違って現在は大人もヒーロー作品を見る時代だ。マニアだけの楽しみではなく、一般層も取り込もうと考えるならそんじょそこらのジャニーズ顔程度ではまだまだ足りない。よほどのイイ男でなければ視聴者のハートをガッチリと掴むことはできないわけで、やはり演技力なんか二の次になってしまうのだ。この傾向は何もヒーロー役者に限ったことではない。現に今大人向けのドラマに出演してる若い役者なんて皆、学芸会レベルじゃないの(笑)。


 事実、このイイ男戦略は『クウガ』あたりから確実に成果を上げている。


「ねえ、今ライダーやってる人カッコイイよねえ」
「エ〜、子供は見てるけどアタシまだ寝てるわよ」
「今度から見なさいよ。スッゴイカッコイイんだからぁ〜♥」


みたいな主婦の間での口コミから起こった静かなムーブメントが、マスコミを巻き込んで爆発的な勢いとなっていた。ジャンル作品を一般層に幅広く認知させ、新作『ライダー』のみならず、歴代『ライダー』作品の人気をも再燃させている。
 2002年6月に全国のセブンイレブンのコンビニエンスストアで展開された「歴代仮面ライダー大集合プロジェクト!!」なるキャンペーンの関連商品が、初日で完売になるほどのパニックを巻き起こしたことを考えると、もう「ミーハー主婦層」などとあなどってはいられないものがある。単なるオタク女子こと「やおいファン」――実は筆者は、つい最近までこの言葉の原義を知らずに、「やおい」とはかつて日本テレビの『木曜スペシャル』(73〜94年)でUFO番組を製作していた超常現象研究家・矢追純一(やおい・じゅんいち)氏のことかと思い、「やおいファン」を超常現象のファンかと思っていた(笑)――などよりも、「ミーハー主婦層」はよほどジャンル作品人気に貢献しているかと思うわけだ。


 実際、ヒーロー作品に限らず、現代のあらゆるマーケットを考慮するに女性層の嗜好を無視しては語れないものがある。もう何年も前から食品メーカーなどが女子高生の意見を尊重したプロジェクトチームによって開発したデザートや菓子類などを発売した成功例も多いわけだ。戦略としてこれを活かさない手はないのである。


 イイ男たちもそうだが、優衣の叔母がオーナーをしているカフェ・花鶏(あとり)など、都内各地のトレンディなスポットのロケ使用は、『龍騎』全体にオシャレな雰囲気を醸し出し、ミラーワールドの設定もそれに華を添えている。


 我々がヒーロー作品に感じていた、云わば「泥臭い」魅力の徹底的な排除には批判もあるかもしれない。しかし、それを女性層が最も敬遠する要素であれば、やはり排除もやむを得ないのである。活動する大都会で舞台が展開されるのは、造成地や採石場(笑)といった、人っ子一人いないような場所でカブりものが取っ組み合うよりたしかに魅力的なのだ。


 こんなふうに女性の嗜好面から作品を捉えていくと、どんどんと不満が解消されていくから不思議なものである。画面に彩りを添えようと思えば、CGの多用も必然である(ミニチュアなんて、女性が最も嫌いな要素では? だって模型なんか興味ないんだもん!)。
 『ライダー』の魅力を支えてきた敵の怪人が軽視された扱いをされているのも、「人を食う」なんて陳腐な設定の敵のモンスターが、『龍騎』のオシャレワールドに居場所をなくすのは当然なのである(筆者なぞは、モンスターなんかよりも、公表された初期企画における50人のライダーが毎週一人ずつ出てきた方が面白いじゃん!! なんて思っていたので、許容できるってこともあるのかもしれないが・笑)。


 だから、「怪獣を殺さない優しいウルトラマン」だって男の目からは軟弱に映ろうが、女性から見れば「ステキ〜♥」ってことになるわけだ。無事に放映が再開された『ウルトラマンコスモス』(01年)の打ち切り騒動(02年6〜7月)の最中、いかに多くの女性たちが『コスモス』を支持しているか、我々はイヤというほど思い知らされたハズである(笑)。それまで、まともに『コスモス』をとりあげようともしなかった各マスコミが話題にしてくれたお陰で、皮肉にも打ち切り騒動が『コスモス』を世間一般に認知させることになったのだ。 再開後の『コスモス』が2ケタの視聴率を稼いで、夏の映画『劇場版ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET』(02年)の興行収入が20億に達したら、ミーハー主婦に感謝せねばならないぞ(笑)。


 さらに、近年の傾向として特筆すべきは、ヒーロー役者が放映終了から時を経ずして、一般のテレビドラマなどに進出するのが顕著な点である。『クウガ』の主役を演じたオダギリジョーなどは深夜番組やバラエティにまでひっぱりだこだ。『アギト』の主役を演じた賀集利樹(かしゅう・としき)や、『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)の主役を演じた金子昇などが、放映終了後すぐさまゴールデンタイムのドラマにレギュラー出演しているのも、ミーハー主婦の大声援に磨き上げられて役者として大成したからである。
 今の役者にとっては、衰退の激しい映画なぞよりもヒーロー作品に出演する方がよほどステイタスに感じるのでは? と思えるほどである。ヒーローのイメージが根付いてしまったために、そのあとの仕事に恵まれなかった往年のヒーロー俳優よりかなり恵まれた環境にあるといえる。役者の待遇改善にも、ミーハー主婦層は大いに貢献しているといえるだろう。


 繰り返すようだが、この20数年もの間、特撮ヒーロー作品に市民権を与えるためにさまざまな努力を重ねても、我々特撮マニアが遂に成し得なかったことを、たった数年の間にミーハー主婦層が成し遂げてしまったのだ! 今や(02年現在)高校生が電車の中でアドベントカード遊びをする(これ実話だぞ!!)に至るまでに、変身ヒーローは市民の生活の中にすっかり根付いているのである。「ミーハー」とは一種の侮蔑の意味を含んだ言葉のようだが、私が今後「ミーハー」を使用する際は敬意の念からであることをここに宣言する(笑)。


 こうなったら、東映も円谷プロもミーハー主婦層の意見を尊重したプロジェクトチームを結成し、今後の特撮変身ヒーロー作品の繁栄に大いに役立てるべきではないか? 彼女たちと我々特撮マニアの嗜好が一致する点ばかりであるハズもなく、我々から見れば「どいつもこいつもイライラするぜっ!!」と嘆きたくなることも多いかもしれないが(それは以前の私だ・笑)、とにかく昨今の好況を生み出したのが、まぎれもなく彼女たちである点を考えれば、とても軽視するわけにはいかないのだ。それこそ深夜番組のオタク向けヒロインなぞではなく、現代の女性たちが思い描いた最高にカッコいいスーパーヒロインを生み出してくれるかもしれないぞ(笑)。


 まぁ、それはともかくとして、これだけ一般層の間に特撮ヒーロー作品に対する免疫ができたのだから、そろそろ『ライダー』のブランドに頼らない新しいヒーローを生み出すには絶好の機会ではないかと思われる。東映もそろそろ石森プロに版権料を支払しなくても済むメタルヒーローをやりたがっているだろうし(笑)、そのためにも『龍騎』で『ライダー』を完全燃焼してくれることを期待したい。


 『アギト』の「居場所探し」に対して『龍騎』は「人生の転換」がテーマのようだ(どちらも自分には切実な問題だが・笑)。それこそ「変身願望」の変奏でもある。手塚が死をもって伝えたそのメッセージを受けて、真司がライダーたち(あの粗暴な仮面ライダー王蛇(おうじゃ)こと浅倉威(あさくら・たけし)を含めて)の運命を変えることができるのか!? 今はそれが最大の関心事である。ホントに筆者も変身しなきゃ(笑)。

2002.7.14.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2003年準備号』(02年8月11日発行)〜『仮面特攻隊2003年号』(02年12月29日発行)所収『仮面ライダー龍騎』前半合評1〜4より抜粋)



『假面特攻隊2003年号』「仮面ライダー龍騎」関係記事の縮小コピー収録一覧
・スポーツ報知 2002年1月17日(木) 仮面ライダー「龍騎」登場 〜制作発表・主役抱負・番組P、CG多用
・スポーツニッポン 2002年1月17日(木) 13人もいる!!仮面ライダー 〜制作発表・抱負、初期ライダーは未視聴
・日刊スポーツ 2002年1月17日(木) 須賀「頑張る」「仮面ライダー龍騎」制作発表 〜須賀貴匡(たかまさ)・松田悟志・杉山彩乃・久遠さやか出席
・スポーツニッポン 2002年3月8日(金) 今夏の主役だ仮面ライダー「龍騎」映画化決定 〜龍騎&ナイトのフィギュア5万体が2日で完売する勢い・ハリケンレッドで人気塩谷瞬HP開設



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#仮面ライダー龍騎24周年 #仮面ライダー龍騎 #仮面ライダーナイト #仮面ライダーゾルダ #井上敏樹 #高岩成二



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