『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-』 ~敵国認定され戦争となる危険がある人道支援はドーすればイイ!?
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第七章「嚆矢篇」』 ~不評の同作完結編を絶賛擁護する!
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『宇宙戦艦やマト』(74年)50周年記念! 庵野秀明(あんの・ひであき)カントクによる再々リメイクも決定記念! アニメ映画『ヤマトよ永遠(とわ)に REBEL3199(レベル サンイチキュウキュウ) 第二章 赤日の出撃』が2022年11月22日(金)の公開間近記念! とカコつけて……。『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第一章 黒の侵略』(24年)評をアップ!
『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第一章 黒の侵略』 ~敵は未来人・宇宙人・火星人!? ブラックホールの「事象の地平線」上のホログラフィック原理なホーキング放射にカギがある!?
(文・T.SATO)
(2024年10月3日脱稿)
今から44年も前(!)の作品となってしまう1980年夏の2時間尺のSFアニメ映画『ヤマトよ永遠(とわ)に』を、ナンと! 30分尺のTVアニメシリーズ全26話相当に大幅に水増しにするという作品が登場! 「第一章」はその#1と#2にあたるのであった。
日本のアニメの金字塔である、もう50年も前に放映が開始された『宇宙戦艦ヤマト』(74年)。外宇宙からの侵略者・ガミラス帝国による遊星爆弾の攻撃によって、すべての海水が蒸発して赤茶けたクレーターだらけとなった未来の地球が導入部の舞台たるSFアニメであった。人類は地下都市で細々とその命脈をつないでいる。地球滅亡まであと1年! そこにイスカンダル星からオーバーテクノロジーたる「波動エンジン」の設計図と「放射能除去装置」を譲渡するというメッセージが届いて、ヤマトはガミラスの艦隊と戦いながらイスカンダルを目指す。そして、往時の子供向けTVアニメとしては画期的な、艦内での世代間での群像模様や男女の恋愛をも描いて、最後にガミラスを滅ぼして勝利はしたものの、その廃墟に戦争の虚しさと和解の余地もあった可能性を感じて涙する……といった作品でもあった。
一世を風靡した大人気作の常で、同作は外敵を変えるかたちでシリーズ化されていく。映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』およびその翻案たるTVシリーズ『宇宙戦艦ヤマト2(ツー)』(共に78年)。TVスペシャル『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』(79年)。1980年夏休み興行の映画『ヤマトよ永遠に』。『永遠に』のTV向け翻案ではなく、その後の出来事を描いた1980年秋からのTVシリーズ『宇宙戦艦ヤマトⅢ(スリー)』(80年)等々……。
これらの作品群は、いわゆる1960年前後生まれの「オタク第1世代」がまだ10代前半の中学生~大学生である20歳前後までであった時期の作品群でもある。日本における本邦初の中高生~ヤングアダルト向けの一大ブームこと、1970年代末期~80年代前半の「アニメブーム」を招来した作品群ともなったのだ。
とはいえ、往時の『ヤマト』に対する当時のアニメマニアの評価は一般的には、大々的に「完結編」だと謳った第2作『さらば』までを高く評価していた。例外的に、シリーズ第1作目の超ファンではあっても、1960(昭和35)年生まれのまさにオタク第1世代でもあるマンガ『サルでも描けるマンガ教室』(89年)の原作者でもある竹熊健太郎や、巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)の庵野秀明カントクなどは、各々が異なる理由で『さらば』の時点でサメていた旨を語っている。しかし、それは彼らが当時からかなりスレた超マニアだからであって、当時のアニメマニアの一般的な見解ではさらさらない……両者ともにサヨク的な軍国主義批判からの文脈で批判していたワケでは決してないのは、くれぐれも念のため!(笑)
つまり、一応の「完結編」を謳った『さらば』のソバからTV放映が開始された『2』やその続編新作『新たなる旅立ち』の存在に至っては、創刊間もない月刊アニメ雑誌の読者投稿欄やら、ご近所の年上のお兄さんお姉さん世代たちの年長マニアたち……といっても、今にして思えば、まだまだ未成年の中高生の子供たち!……が、そのことにホンキで「裏切られた!」という想いをブチまけている姿をたしかに散見したものであった。
そういうワケで、往時の「ヤマト」ファンは、往年の続編群たる『新たなる』や『永遠に』に対しては思い入れはあまりないハズである。むしろ急遽、製作されたゆえに、いかにも付け焼き刃な追加設定や、それに伴なう矛盾・不整合などをあげつらわれてきた作品群でもあったハズだ。なれば、どのようにリメイクされようとも、初作のリメイク『宇宙戦艦ヤマト2199』(12年)や『さらば』&『2』のリメイク『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(17年)ほどには、『ヤマト』マニアも大騒ぎはしないことであろう……と思ってはいたものの。
原典『新たなる』&『永遠に』は一応の前後編だともいえる、2作がともに共通の敵を仇としたストーリーでもあった。しかし、『新たなる』で華々しく初登場したヤマトの新人搭乗員たちは『永遠に』では連続登板はしていない。その主敵の名は「暗黒星団帝国」であったハズだが、『永遠に』ではその呼称もいっさい使用されていない!(笑) 「暗黒星団帝国」の宇宙人たちの肌の色も灰色から青色へと変更されている!(汗) 『新たなる』ラストではヤマトが局地戦的には爽快な勝利を収めたものの、「暗黒星団帝国」それ自体は残存し、声のみで登場した「グレートエンペラー」なる首魁が率いるスケールも大きな巨悪であることが示唆されて、物語は次作以降へのヒキ(引き)を伴なって終息したハズであった。
しかし『永遠に』においては、「グレートエンペラー」は登場しない(笑)。声も異なる「聖総統」なる敵ボスのオジサンが登場する。彼らは自身のことを「未来の地球人」だと詐称しだす。そして、母星を地球そっくりに改造してヤマトクルーに見せつけた果てにその虚偽を見抜かれて、さらには母星を防衛したり他惑星に侵攻したりするための大規模な宇宙艦隊なども登場せずに、同作にてアッサリと滅ぼされてしまうのであった!(爆)
原典『ヤマトよ永遠に』における「地球の未来人」を詐称した「宇宙人」ではなく、『3199』ではガチで「地球の未来人」が敵!?
本作『3199』ではナンと! 「詐称」ではなく、どうもガチで「未来の地球人」であることが示唆されている。旧『新たなる旅立ち』のリメイクたる直前作『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』(21年)エンドクレジット後のラストにおける、「暗黒星団帝国」もとい原典『永遠に』における母星の名を採って「デザリアム」なる名称を冠した敵集団による、黒色で逆円錐・縄文土器状の超巨大要塞・自動惑星ゴルバ内部の無人機による潜入映像。
そのゴルバの内壁には、朽ち果てている地球の最新鋭戦艦・アンドロメダ(!)の艦首が突入作戦に失敗したかのようになぜだか生えている! ピンボケのズームアップ映像の艦名プレートにはアンドロメダ級・9207番艦とある! 劇中人物たちもその「製造番号」が現行アンドロメダのそれとは桁違いに大きいことに驚嘆する! 製造年度は300年後か800年後の西暦2339年とも2839年だとも読める! そして、デカデカとインサートされてくる次作のタイトル『ヤマトよ永遠に REBEL3199』……。
もちろん、理性的に考えれば、このシーンをもってしても、敵が「未来の地球人」であるとは断定ができない。「未来の地球人」が戦っていた「未来の宇宙人」である可能性もある。しかし、西暦3199年の未来から来たケムール人(笑)もとい縁もゆかりもなかった「宇宙人」と戦うよりかは、西暦3199年の「未来の地球人」と戦った方が物語としては断然、面白い。
いかに今どきの「時間SF」が過去への干渉でもタイムパラドックスは生じずに、そこから歴史(時間)が枝分かれして分岐並行宇宙が新たに誕生するパターンが主流になったとはいえ、親殺し・先祖殺しのタイムパラドックスの危機への興味関心も惹起されることで、劇的・ドラマチックではあるからだ。
むろん『2205』内でも、敵勢力・デザリアムの幹部キャラは、その初登場時からアナログレコードでノイズまじりの地球のクラシック音楽……ドビュッシーの「月の光」などに聞き入っている。我らがヤマトの旧敵・ガミラスのことを「歴史に残らぬ弱者ども」などと評している。「デザリアム千年の夢」などとも語っている。今いる宇宙空間の戦場を「この時空間」とも呼称していることから、地球の過去への懐古趣味なども持った、我々地球人の未来人である可能性は高い。
しかして、未来から来たので過去のことはナンでもあらゆることまでご存じだ! となっては、ストーリー構築にもムリが生じてしまう……これはあらゆる「時間SF」についてまわる宿痾でもある……。それゆえでもあろう、そこで「『大喪失』に含まれる記録」(=詳細な「記録」が失われてしまった歴史時期)という扱いで、宇宙戦艦ヤマトの存在それ自体を知らないか、そこまで行かなくてもこの西暦2205年にはイスカンダル星にヤマトが表敬訪問しようとしていたことをデザリアム人たちは知らなかったがために、デザリアムの自動惑星ゴルバによるイスカンダル星まるまるの鹵獲(ろかく)作戦を、ヤマトに一度は阻止されてしまうといったストーリー展開にも、SF的な言い訳ができていたのだ。
『2202』最終回にて軍事的アドバンたる「時間断層」を放棄しなかった可能性世界の「地球の未来人」!?
原典『永遠に』における暗黒星団帝国ことデザリアム人の正体は、頭部以外は実は機械化された存在でもあった。そして、生物種としての生命力が衰えたことから、中性子爆弾モドキな重核子爆弾にて地球人を脳死させて、その肉体を奪うことが目的でもあった。同作のリメイクたる『3199』もこれに準じるのであれば、過度な人間疎外的な合理化・機械化文明の行き過ぎによる袋小路の果てに、その反省として改めて「肉体」や「感情」を求めるために1000年過去の地球に襲撃しに来たとも判断ができるのだ。
けれども、前々作『ヤマト2202』最終回においても、すでにこういった過度な人間疎外的な合理化・機械化・軍拡路線に対する批判・相対化の描写は頂点を極めている。加えて、『2202』最終回においては、原典『さらば』&『2』のラストにもなかったその先の物語が描かれてもきた。
劇中においては、初作ラストからわずか1~2年ほどでイスカンダル由来の超テクノロジーたる「波動エンジン」、ひいてはその技術を兵器に転用した「波動砲」を搭載した大小の数百数千の戦艦を擁した大艦隊を急増できてしまったことの、原典『さらば』&『2』における公開当時はともかくとしても、公開3年後(汗)あたりからの『ガンダム』初作至上! 『ヤマト』はもう古い! 粗だらけ! といった風潮に便乗しての、往時のマニア諸氏によるツッコミに対しての数十年後のSF的な言い訳でもあった「時間断層」なる存在……。
これは『2202』に先立つ『2199』最終回において、素粒子・量子レベルにおける超ミクロな「空間」や「物質」や「人間」そのものに永遠に宿っている宇宙誕生時~現在までの局所的な記憶=波動=波長=エレメント(超元素)を基にして、破滅に瀕していた地球の蒸発してしまった海水や森林に大自然までをも復元してしまえた超技術・コスモリバースシステムに対する後付け設定での副産物たる、地球の地底に生じた「深部に行くほどに時間の流れが早まってしまう特殊空間」のことであった。
リアルに考えれば10年ほどはかかってしまうであろう膨大な数の宇宙戦艦群や復興建築資材を、「時間断層」なる空間内の超巨大建造ドックにて製造しつづけてきたとしたことで、いかに現実からはカケ離れたSF作品ではあっても、これをSF合理的には解決しえたのだ。そして、戦術・兵器の設計・敗戦時の宇宙脱出計画なども、この時間差を用いることでのAIによる驚異的な超高速計算をも達成して、その演算結果が現場にも即座にフィードバックされつづけていることも語られていた。
もちろん劇中においては、そういった過度な機械化・合理化・非人間化・軍拡路線に対する相対視や批判、人々の漠とした「これでイイのか?」といった不安なども語られてきていた。
『2202』最終回においては、この外敵に対しては圧倒的な軍事的アドバンテージたりうる「時間断層」を、人々は世界的規模での議論の果てに国民投票・人民投票(!)まで実施して、放棄してしまうのだ!(爆) しかも、「時間断層」を周囲から爆縮して発生させた超絶エネルギーによって、一度は「時間断層」内の「海」……最深部でもあるので、無限にも近い時空の歪みによって高次元世界にも通じている!?……に帰還してきたヤマトを再度、高次元世界へと飛ばして、3次元物質宇宙ならぬ高次元世界……精神世界でもあり、生死の狭間としての実質的には「霊界」!?……にて漂流している、ヤマトの搭乗員たった2名の人命を救出するためだけにだ……。
軍事的アドバンたる「時間断層」を放棄しなかった方がよかったと考えてしまうヒトたち……
……ウス汚れてしまった筆者個人なぞは、一応の「理」の次元においては、侵略的な用途には使わないという制限を付けたうえで「時間断層」なり超兵器の類いを外敵に対する「抑止力」や「反撃力」として、地球連邦政府は保持しておいた方がイイと考えてしまう者ではある(汗)。
それともまったく同じリクツで、女子高生が第2次大戦時の戦車で部活として試合する深夜アニメ『ガールズ&パンツァー』(12年)や、女子高生が旧海軍の軍艦でナゾの軍艦と戦う『ハイスクール・フリート』(16年)などでも、主人公女子高生が大局での勝利を考えずに目前の危機に瀕した人間を見て、隊長や艦長としての職務を放棄し、部下にやらせるのではなく自分で救出に行ってしまう姿をオカシい! と直感的には思う側の人間でもある(爆)。
とはいえ、それは題材的にも「軍国主義的だ!」と見られて批判をされてしまうことを過度に恐れての、あくまでも戦争ではなくスポーツ、勝敗よりも人命の方を優先している慈愛的な女児向け魔法少女モノのようなノリ、99匹の子羊よりも1匹の子羊の方を救わんとする新約聖書のイエス・キリスト的なエクスキューズなのでもあるからして、SNSなどで隆盛を極めた艦長自らがひとりで泳いで助けに行く姿をオカシい! とヒステリックに批判をする連中の末席に加わる気もないのだが(笑)。
原典の初作においても、「軍国主義的」だとして見られてしまうことを非常に恐れて、メインスタッフでもあるマンガ家・松本零士(まつもと・れいじ)が強硬に主張して、ヤマトの艦首から「菊の御紋」をハズさせたり、旧海軍の「軍艦マーチ」の使用をやめさせたりした逸話はマニア間では有名だ。先の大戦時の「戦艦大和(やまと)」の姿をしている以上はそういった議論は宿命でもある。
しかし、「軍事」に関してそこまで過度に忌避すればこそ「平和」が到来するのだ! と云わんばかりの論調なぞは、イザとなれば世界の人々の良識や平和主義といった名の「神風」が吹いて平和が到来する! といったオカルト的な神頼みでの精神主義に過ぎなくて、皮肉にも「神風が吹けば神国・日本は勝利する!」といった先の戦中の言説ともメタレベルでは完全に同じ精神の型であり、悪い意味での日本人的な言説の典型そのものともなっており、個人的には反発を覚えなくもないのだ(汗)。
しかし矛盾・分裂を承知のうえで、一方の「情」の次元においては、このストーリー展開に感涙もしていた……「時間断層」の断固維持を最終演説で訴えていたタカ派の初老の芹沢副司令でさえもまた、そんな人々の情にホダされて涙を流してしまうあたりのダメ押し演出もまたすばらしかったと私見をするのだ……。
だから、そんな選択を採択した地球人類の未来の姿がストレートにデザリアムになってしまうとは考えにくいのだ。むしろ、国民投票の末に「時間断層」を放棄せずに、科学化・合理化・非人間化を押し進めた場合の地球の成れの果てであれば、たしかに1000年後の未来の地球はデザリアムにはなりそうではあるのだ。
並行世界の地球の未来だと推測される根拠! 『2202』における高次元世界から見下ろした幾多の3次元並行宇宙!
原典『さらば』においては「反物質」の肉体の持ち主とされて、翻案『2』ではそれはさすがにムリがあったとばかりに超絶的な「超能力者」であるとされた宇宙の美女・テレサ。『2202』においては、超絶的な「超能力者」であるとする設定もまた今ではムリがあるので(……いや当時であってもムリがあったけど・笑)、これまた唯物論的なハードSF小説の世界においては(古典SFを除いては)オカルト扱いされてしまうような禁じ手にも思えたものの、『幼年期の終り』(52年)や『2001年宇宙の旅』(68年)などのように、その星の知的生命体(=宇宙人種族)の全員が肉体を捨てて精神だけの存在として高次元世界に住まう合体集合生命へと進化してしまった超存在が、3次元の人々にも認知ができるための本地垂迹説な方便・アバター(化身)として、テレサなる美女の姿を採っているのだとして、再設定・再構築もされていた。
そんなテレサが3次元世界よりも上位にある高次元世界から下界を見下ろせば、その3次元宇宙の過去~未来の時間(歴史)の流れまでも1本の糸のように俯瞰ができてしまえる。どころか、3次元宇宙それ自体も1つではなく膨大に存在しており……いわゆるパラレルワールド=マルチバース(多元宇宙)!……、それらのアリえたかもしれない可能性の世界もまた実在の世界だとして分岐しながら増殖し続けていくことも俯瞰ができることになる。
実際にも『2202』の中後盤においては、テレサがヤマトの搭乗員たちにそういった無数の幹や枝にも見える時間線が、光の樹木のようにカラまったビジョンを見せつけてもきたのだ……個人的にはこの時点では、原典の旧作群やそのバージョン違いをなかったものとして上書きにしてしまうのではなくって、並行世界としてはこの時間樹のひとつとして確固として実在しているのだ! すべての全肯定なのだ! といったことを、深読みマニア向けに言明するための回りクドいファンサービスだと思っていたのだけど(笑)……。
ということで、デザリアムは「時間断層」を放棄している『2205』以降の時間線の未来から襲来した地球人である可能性はゼロではないが低くなる。しかし、「時間断層」を放棄しなかった場合の可能性たる分岐並行宇宙の側の未来から来た可能性は大いに想定されるのだ! ……などと云いつつ、「ヤマト」マニアや深読みアニメマニア諸氏の全員とはいわずともカナリ大勢もまたそう直感していたことを、あとでググって知ったのであった……(爆)。よって、ワリとアリがちな考察にはなってしまったので(汗)、筆者の独創であるかのようにエラそうに語る資格もないのだけれども。
そのうえで付け加えるのであれば、本作『3199』におけるデザリアムの設定には、さらなるヒネりがあった。彼らは必ずしも科学・機械・合理化・軍拡バンバンザイの申し子でもなかったからだ。彼らはヤマトやアンドロメダなどの駆動源たる「波動エンジン」や「波動砲」……実質的に「原子力」や「核兵器」のメタファー……を、忌むべき諸悪の根源だとして否定もしている! そもそも、彼らは「波動エネルギー」の存在を知ってはいても、自身たちではそれらをたしかに利用や武装はしてはいなかった。このあたりは、劇中の前半においては軍拡路線をひたすらに突き進もうとしていた『2202』における地球連邦政府、あるいは「時間断層」を維持しつづけた場合の仮想の地球の未来のイメージとは一致しなかったりもするのだ。
しかし、こうも考えることができる。デザリアムもまた未来のある時点において「波動エネルギー」の制御に失敗して滅亡の危機に瀕したからこその、数百年後の「後出しジャンケン」としての「波動エネルギー」の否定・放棄ではなかったのかと。そのために、「波動エネルギー」技術の本源たるイスカンダル星を惑星まるごと鹵獲して、滅ぼさないまでも自身たちの厳格なる管理下に置くことで、その超テクノロジーを他の宇宙人種族が使用できないように、門外不出にしようとしたのではないのかと……。
救いの星ではなく、忌まわしき星としての側面も持たされてしまったイスカンダル。実はこの設定はスタッフが一新された『2202』以降のシリーズではなく、アニメ・特撮のデザイナー上がりでもある出渕裕(いずぶち・ゆたか)が総監督を務めたリメイクシリーズの初作たる『2199』が初出ではあった。アレキサンダー大王のアラビア語読みがイスカンダルでもあったことから着想を得たのか、同作は子供向け勧善懲悪の特撮変身ヒーローものではないのでイスカンダルを無垢なる「絶対正義」の存在にすることは避けておき、何者ではあっても「原罪」を背負った存在にしようと思ってなのか……たしかに弱者や少数派であっても「原罪」を背負ってはいる!……、イスカンダルもまたはるか太古のむかしに「波動砲」を用いて大マゼラン銀河に一大覇権星間帝国を一度は樹立していたことが明かされてもいた。しかして、自ら「波動砲」を封印して「平和主義」へと方針転換したという、血塗られた過去が語られてもいたからだ。
そして、その「平和主義」の理念によって、「波動エンジン」の原理だけを地球人に教えたハズであったのに、ヤマトの副長・真田さんという不世出の大天才が、その技術を発展させた先にある「波動砲」まで独力で完成させていたことを、『2199』終盤においては激しく糾弾して、その技術や発砲の封印を命じてしまうのでもあった(汗)。
原典の『ヤマト』初作においては、超光速航行・ワープに失敗すれば宇宙全体をも崩壊してしまう可能性が語られていた。『2199』中盤においてもイスカンダルの女王スターシャの末妹とされた新キャラ・ユリーシャの霊(生き霊)に憑依された女性搭乗員が、ワープ航法ではないものの「波動砲の乱用にて宇宙全体が引き裂かれる可能性」にも言及していた。『2199』ではこのセリフに対しての伏線回収はまったく採られなかったのだが(笑)、今さらながらにこのセリフでの設定をひろい直してきたのであろうか? 昭和の『ヤマト』シリーズのように光よりも速く動ける架空の素粒子・タキオン粒子を発射するのではなく、通常は超ミクロな空間内に畳み込まれているようにも見立てることができる「余剰次元」……4次元以上の高次元空間を意味する物理学における実際にもある専門用語……を射線上の3次元空間に強引に展開したものだとして、『2199』以降の「波動砲」は再設定もされていた(=劇中でも正式名称は「次元波動爆縮放射器」)。
つまり、実は我らが3次元宇宙の時空間それ自体に、甚大なる負荷やキズあとを付けてしまっている可能性はあったのだ。よって、デザリアムの出自である並行宇宙のひとつそれ自体もまた「波動砲」の乱用の末に、ある時点で崩壊の危機に瀕してしまい、あるいはそのものズバリでひとつの宇宙それ自体が崩壊してしまって、その並行宇宙における地球の文明のそれまでの歴史記録の一部をも失ってしまって、それを「大喪失」と称しているのであろうか?
「合理」を超えた「肉体」と「感情」の回復を目指す未来人。「差別」「対立」「戦争」はなぜに起こるのか!?
そして、デザリアム人たちは(適度かつ暴走しない範疇での)「感情」の肯定、あるいは枯渇気味であった「感情」の適度な回復を目指しているようでもある。
逆説的だが、「科学」や「合理」や「倫理」の根底・土台・土壌には、ヒステリックなスリ切れた快・不快といった意味での「感情」(=劣情)ではなくって、論理の格子の垂直水平がワチャクチャにたゆんでしまわないための「感情の安定」こそが必要であるのだ。加えて、仮に現在や過去に間違いを犯していたと気付いた場合であっても、羞恥心から来る隠蔽やヘリクツによる見苦しい自己正当化には走らずに、自分個人の失態をも三枚目・道化・ピエロ的に人前で余裕を持ってカミングアウトし、「ナンちゃって~」とアタマをポリポリと掻きながらでのアカウンタビリティー(説明責任)的に自身を笑い者にやつして、そこからの軌道修正も明るく図れるような、機知(ウッィト)と諧謔(ユーモア・愛嬌)なども必要なのである。
それが人格向上、人間としての器量を大きくするための道でもあるのだ。そして、軍国主義・ミリタリズムが戦争を引き起こすのでもない。それは結果に過ぎない。戦争は相手がいなければ起きえない。たとえ義憤からではあっても、相手が明らかに劣っており遅れており間違ったものだとは思えても、個人あるいは左右双方の陣営ともに他人や他陣営やその思想信条に対しての蔑視・全否定・呪詛、そして撲滅せんばかりの礼節を欠いたヒステリックな言動こそが、原理的には差別・分断・対立・虐殺・戦争をも引き起こす根本原因でもあるのだ。真に否定すべきなのは、そしてまたセルフコントロールにてフィルター・抑制・自制されるべきものは、そういったヒステリックでササくれ立った心性・態度・言動なのである……最近、一部で流行りの「トーン・ポリシング」(口調警察)なる概念で他人からの批判を否定し、自己を神聖不可侵にする行為は害毒がデカいと思う……。
加えて、物理的な殺人・強盗・暴行までは行かない程度の「悪」であれば、避けたり怒りに変えるのではなく、一度オトナの態度で飲み込んで蒸留・包摂・昇華する。そして、分かり合えなくても棲み分け的に共生しながら、たとえ演技やポーズや上から目線でのミソっカス扱いのそれではあっても、それはオクビにも出さずに礼節を持って、互いに断交ではなく接点を、折りにふれては交渉や、一時的には小さな「悪」に染まって暫定的な妥協をしていくこともまた、長い目での大きな「善」をもたらすためには必要でもあるのだ。
それはまた、古今東西の哲学・高等経典宗教(の上質な部分。排他的・狂信的な要素は除いての……)が共通して説いてきた、(「そのままの君でイイ」といった自堕落な俗論なぞではないところでの・笑)ストイックに努力を重ねて身に付けていくべきものとしての徳目、ヒトの目指すべき道、登頂すべき道でもある。
マジメな方々には非常に申し訳ないのだけれども、ただ単に四角四面なだけの人間や、メソメソとした小者・小人物にはこれができないので、ヤンキーDQN(ドキュン)・粗暴犯・権力悪と比すればまだマシではあっても、これらともまた別種の始末の悪い「悪」の存在・人格へと堕落していく可能性もあるワケだ。よって、みずみずしい喜怒哀楽としての「感情」の獲得もまた絶対的に必要なのである。
しかし、AIには「感情」「倫理」、あるいは「直感」「インスピレーション」といったものがないので、科学におけるブレイクスルー、さらなる一段の飛躍といった進歩もまた望めなくなってしまって、デザリアムは停滞文明と化してしまったのではなかろうか? などといった推測も可能ではあったのだ。
これらもまた、現今のスレまくってしまって、その上限は還暦をも突破してしまった、実にメンドくさいマニア諸氏に対するミスリード演出・フェイント作劇でもあって、作り手たちはさらにウラを掻いていてくる可能性は高い。もちろん、こういったネット界隈でのマニアの深読みはたいていがハズれるか、ハズれなくてもズレてはいるものだ。しかし、開き直るようではあるのだが、そういった考察遊びもまた楽しいのだし、こういったことを愛好するマニアがごくごく一部の少数派であるとも云いがたい。
そうであれば、歳も若い『ヤマト』マニア諸氏も含めて、あまたの個人ブログやYouTube動画などでも考察・深読み遊戯を繰り広げて、それらに対してアッという間に数万! といった膨大なる再生回数を誇ってしまっていることの説明がつかない(笑)。90年代後半に隆盛を誇った巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)に始まる、良くも悪くも深読み隆盛の風潮は雲散霧消して、00年代後半からはボキャ貧(ボキャブラリー貧乏)の「萌え言語」一辺倒の世になってしまった……と個人的には嘆いていたものだが、四半世紀を経てまた世は一巡を遂げていたようだ。
「地球の未来人」ではなく「銀河の中心、暗黒のブラックホール近辺に巣くった宇宙人」が敵なのか!?
とはいえ、ここまで伏線を張っておいて深読みまでさせたあげくに、デザリアムの正体はやはり未来の地球人ではなく宇宙人であった! となってしまうと、それもまた個人的には詐欺に近くも思えて、社会風刺性にも乏しくなってしまうとは思える。よって、ごくごく個人的にはそのオチはやめてほしいのだが(笑)。
原典では『永遠に』の直続作である『ヤマトⅢ』が初出の敵勢力でもあった「ボラー連邦」が、前作『2205』冒頭から先行登場してきて、本作『3199』冒頭にも登場していた。しかし、彼らもまたデザリアムが地球圏に飛ばしてきた超巨大要塞・グランドリバース……原典『永遠に』における重核子爆弾に相当……のことを、
●「銀河の中心にあって、宇宙を凍てつかせる魔女の吐息(といき)」
●「ウラリアの光」
として恐れてもいた。その要塞の存在それ自体を既知の存在だとしていたのか、単にそれが放っていた「赤黒い光」や、宇宙戦艦群の機能を停止させてしまう「異形の力」を恐れていただけであったのか? それとも、我らが住まう天の川銀河の中心部に君臨している星間覇権国家のことを恐れていたのか?
ウン? 天の川銀河の中心部には、旧作『ヤマトⅢ』においては、銀河の中心部の「核恒星系」を周回する惑星・ガルマン星こと実はガミラス帝国の始祖が住まっていた惑星が鎮座ましましていたハズだ。ガミラス星亡きあとのガミラス民族はその始原の地を起点に新たに「ガルマン・ガミラス帝国」として版図(はんと)を拡げていっていたのだ。主役・カーク船長を演じるウイリアム・シャトナー自らが監督を務めたものの、マニアの評価は低いが筆者個人の評価は高い、往年のSF映画『スタートレックⅤ(ファイブ) 新たなる未知へ』(89年)においても、天の川銀河の中心部には「エデンの園」とでも称すべき桃源郷の惑星が発見されていた。
しかし、90年代以降の天文学の進展で、天の川銀河にかぎらずあまたの銀河の中心部には超々巨大ブラックホールが存在しており、その超強大なる重力に周囲の星々が引き寄せられることによって、あまたの銀河も実は成り立っていたことが常識化してしまった! ということは、銀河系の中心部にガルマン星が存在するという設定は、イジワルなSFマニア主体の『ヤマト』ファン向けにはツッコミどころを与えてしまう可能性が高いのだ……筆者個人はそのへんはテキトーでも、あるいは確信犯でのオールドSFでもイイのでは? とも思ってはいるものの……。
けれども、改めてググってみると、『2205』冒頭にてボラー連邦に蹂躙されて、星間宗教の女神マザー・シャルバートへの信仰までをも奪われてきたリメイク版のガルマン星は、銀河系の中心部に位置するものではなく、天の川銀河の辺境部に位置するものとして、シレッと設定が変更されていたのであった!(笑)
それでは、ボラー連邦が恐れた「銀河の中心にあって、宇宙を凍てつかせる魔女の吐息」とは何なのか? 原典ではスタッフの単なるお遊び・楽屋オチだったとは思われるのだが、暗黒星団帝国の「重核子爆弾」とまったくの同型の兵器を禁断の武器庫に保管していた星間国家が、実は旧作『Ⅲ』には登場していた。非武装中立・無抵抗主義で殺害されていく、女王マザー・シャルバートが統治する宗教国家・シャルバート星だ。
しかし、シャルバートもかつては一大星間覇権国家であった。ボラー連邦は重核子爆弾もといグランドリバースの姿を見て、デザリアムではなく往年の覇権国家としてのシャルバートやその女王のことを想起して恐れたのか? そういえば、異常増進した我らが太陽の活動を凍てつかせ、もとい冷まさせてしまった「ハイドロコスモジェン砲」なる超絶兵器も、シャルバート星は保有していたのだ(笑)。
冗談はともかく、銀河の中心には超巨大ブラックホールが存在している。このブラックホールとは「黒」「暗黒」そのものであって、原典での「暗黒星団帝国」にも通じてくる。宣伝ポスターでは「暗黒」の文字に「デザリアム」との読み仮名が振ってあった。すると、銀河の中心部のブラックホール近辺に巣くっている宇宙人種族が「地球の未来人」だとの詐称をしているのか?
「ブラックホール」における「事象の地平線」にて生じる「ホログラフィック原理」と「ホーキング放射」にカギがある!?
そこで、往年の科学少年・天文少年の成れの果てとしての血も騒ぎ出す。「ブラックホール」の内部もまた、光でさえも脱出できない「事象の地平線」の先(中)がまた、時間・空間をも超越した高次元世界や他の並行宇宙へと通底している超空間なのではなかったか? そうなると、デザリアムはブラックホールを物理的に超えてきた並行宇宙の地球の未来人でもあったのか?
アインシュタインの相対性理論によれば、「光の速さ」だけが「絶対不変」であって、「時間」と「空間」の方が「相対的」であるとされている。つまりは、「光の速さ」に近づけば近づくほど「時間」と「空間」の方が伸縮して、いわゆる浦島太郎の「ウラシマ効果」などが発生してしまうのだ。
この原理によって、ブラックホールの表面(=事象の地平線)については、物体などが光の速さに迫る勢いで落下していく際に、落下していく当人にとっては一瞬の出来事ではあっても、傍から見れば「時間」の進み方が極度に遅くなって、ついには「時間」(動き)が停止してしまったようにも見えてしまう。それによって、落下物や電磁波(=光)などの「情報」が「事象の地平線」上における「池に広がった波紋・波・波動・波長」、つまりは実質的に「情報」が「周波数」「電磁波」のようなかたちで半ばは永遠に残ってしまっている状態になっているのだともいう。これを「ホログラフィック原理」(=(超)平面上における(超)立体映像としての情報)というのだ。
さらに加えて、かのホーキング博士などによれば、3次元物理世界的にはまったくの真空・絶無の空間には見えてもウラ側(高次元世界?)には未知のエネルギーが充満しているので、超ミクロ・極微の世界においては正物質&反物質の素粒子が「対生成」で常に出現して直後に「対消滅」をしていっているともされている。
なおかつ、「事象の地平線」上の極微世界においても「対生成」は起きている。しかし、その片方の反物質は直後にブラックホールの内側へと落ちてしまって正物質との「対消滅」は起きえなくもなってしまう。
その逆に、正物質の方はブラックホールの外側(=「事象の地平線」よりも手前の通常の宇宙空間)へと飛び出していってしまうのだ……これを「ホーキング放射(輻射)」とも名付けている……。よって、超長期的にはブラックホールも質量が次第に微減していき、やがては蒸発・消滅してしまうとも予想されているのだ。
この光さえをも飲み込んでしまうハズのブラックホール(=厳密にはその表面であり、通常の宇宙空間との境い目でもある「事象の地平線」上のみ!)から唯一、脱出できるものとしての、「ホログラフィック」(立体映像)な「情報」にも満ち満ちた「ホーキング放射」。その原理を拡大援用して、デザリアムは銀河の中心のブラックホールの内側から外側(この時間時点での宇宙空間)へと出現(実体化)したのであろうか? それとも、「ホーキング放射」(=結局は電波や素粒子による波長の「情報」=銀河全域やブラックホール内外の「歴史情報」)をつぶさに解読してみせた宇宙人種族が、未来の地球人を詐称しているのであろうか?(笑)
……『3199』第1章のラストにおいては、ワザワザごていねいにもデザリアムの紋章が地球の「国連」とおぼしき紋章へと瞬時に変化を遂げていた。……宇宙人なのか? 未来人なのか? どっちやねん!
敵の正体は「未来人」ではなく「宇宙人」でもなく、「火星人」(爆)だとの仮説もあった!?
後学のために濃ゆいマニア連中の考察もググってみた。すると、デザリアムの正体は地球人でも宇宙人でもなく火星人(爆)だとの説もあった! もちろんタコ型の火星人なぞではない。火星へ移民した地球人の成れの果てのことである。『2199』にて新たに設定された、地球とガミラスとの10年戦争以前の25年間ほどの歴史設定。
異星人(実質、ボラー連邦)の宇宙戦艦の残骸出自のオーバーテクノロジーにて宇宙戦艦群を建造して、地球に対する独立戦争を仕掛けたものの、敗戦と地球へのバビロン捕囚・ディアスポラ(離散)・強制移住の憂き目にあって差別されてきた火星移民たちのことなのだ……『2199』シリーズでは、女性キャラに改変されていたヤマトのパイロット・山本なども、銀髪・赤眼の火星移民の出自だともされていた……。
彼らは地球連邦政府と地球人への反感、あるいは敗戦や強制移住に差別などの苦労・苦渋なども知らずに、安直に「時間断層」を放棄してしまったお坊ちゃまな地球人民への反感を持ったまま、今や政財界や軍の上層部にも浸透しているのだともいう。
そんな彼らが地球人憎しのあまりに、被差別民たる火星人にも優しい真に公平な社会の強引・性急なる樹立、「未来の火星人」だとも名乗るデザリアムからの接触と地球に対する安全保障条約の甘言、自爆したイスカンダル星の復元のためのエレメントの代替たりうるものとしてのイスカンダルの遺児にして地球人との混血児・サーシャ嬢の差し出しの交換条件にも乗って、外患誘致に乗り出した……といった考察も散見されるのだ(汗)。
地球に降下した重核子爆弾ならぬ巨大要塞・グランドリバースという名称もまた、劇中においてはヤマト型の3番艦こと宇宙戦艦・銀河に移設されてしまったコスモリバースシステムの名称をも想起させるものでもある……『2202』終盤での初登場以来、若きエリート女艦長が指揮する戦艦銀河は搭載したコスモリバースシステムからのナゾの平和主義的な干渉(汗)によって発砲などはできなくなってはいるものの……。
むろん、デザリアムが地球の未来人であれば、コスモリバースシステムの同系版を開発保有していたとしても不思議ではない! すると、サーシャを生け贄にしたグランドリバースで、地球や修復中の月や土星のように、イスカンダル星をも復活させようといったところなのでもあろうか?
1979~80年を反映してしまう『永遠に』、2022~24年を反映してしまう『3199』、あるいは時世を透かし見てしまう(成人の)観客!
もちろん、以上はSF的なガジェット(小道具)の部分の話に過ぎない。そこが優れていてもドラマ・物語として優れていなければ、作品としてはダメであることは云うまでもない。むろん、作り手も受け手もスレてしまったからであろう。『2199』以降のリメイクシリーズでは主人公男女の恋愛模様は押さえてはいるもののベタッとはしておらず、そこに焦点はあまり向いてはいないのだ。あくまでも、膨大な数の脇役キャラも含めての壮大なる群像劇といった様相を呈してもいる。
「愛」だの「ロマン」だのといったセリフやテーゼが出てくれば、それだけで崇高なるロマンを感じられた70年代中後盤とは異なり(汗)、観客や時代の方が変わってしまって、「愛」や「ロマン」が時にもたらす逆説的な惨禍や、それであっても品位を持ってニヒリズムにはおちいらずに、ツマ先立ちで細い線上を歩くようなストイックな生き方が賞揚されてもいる。
よって、リメイク作品のノルマ(笑)として、本作の一応のメインヒロイン&敵将校とのラブロマンス、『竹取物語』のように赤ちゃんから乙女へと急成長をとげてしまったゲストヒロイン・サーシャ嬢との交情なども描かれるのではあろうが、作品の目線はもう少しマクロで高いところも目指すのではあろう。
原典『永遠に』の時期にも、その前年1979年においては旧・ソ連(現・ロシア)によるアフガニスタン侵攻があった。中国とベトナム間での戦争も勃発して(ソ中の代理戦争でもあった)、当時は平和主義勢力(爆)だとされていた共産圏同士での戦争の勃発に対して、左派系知識人たちは衝撃を受けていた(笑)……ベトナム戦争を勝ち抜いて4年しか経っていなかったベトナム側の圧勝にて終結……。
しかし、ロートルな筆者は社会や世界情勢にも関心を持ちだしていた小学校の高学年ではあったものの、不肖にもそれらを『永遠に』と重ねて観ることなどしてはいなかった……当時は映像機器がお手軽ではなかったからか、ご当地の映像がニュースなどでもほとんど流布されなかったこともあったからでもあろうが……。
もちろん、今どきの本格SFアニメ作品で、原典『永遠に』の冒頭とも同様に、やすやすと地球侵入・地球侵略を許してしまう図を見せられてしまうと、劇中における地球連邦政府と地球防衛軍があまりにもマヌケに見えてしまうことであろう。それを防ぐためのエクスキューズなのでもあろう。地球連邦政府や政財界の内部の反逆者などからも示し合わせた、インターネット経由でのコンピューターシステムに対する大規模ハッキングなども伴なうクーデターの一連として、本作『3199』の冒頭は仕上げてみせていた。
しかし、原典の再現だとはいえ、地球の地上にデザリアムの兵士が銃を乱射しながら降下していき、都心を瓦礫にしながら制圧していく光景を見せつけられてしまうと、現今のウクライナやガザ地区の惨状をやはり想起もしてしまうのだ(汗)。
もちろん、虚構作品が現実社会の縮図・写し絵や、それに対する批判(という名のプロパガンダ)である必要性は必ずしもない。むしろ、何か物事の真相を見抜いたつもりでも、幼稚でお粗末なテーマを提示しているだけの作品や、政権ともまた別種のプロパガンダを提示しているだけの作品なども多い。そういった危惧はありつつも、『3199』がどのような作品になっていくのか、お手並み拝見といったところではある。
いかに高齢のオタク諸氏がリメイク作品を酷評しようが、『ガンダム』や『ヤマト』に『パトレイバー』のリメイクや続編作品のようなロートル・コンテンツは、たいていの深夜アニメなどよりも映画興行や円盤売上なども稼いではいるものだ。もちろん、ジャンルのメインストリームではもはやない。若いオタク向けの新作アニメのヒット作も年々歳々登場はしている。その意味でジャンルが旧作頼みになっているワケでもない。だから、ジャンルの豊饒さの一環として、最低限は稼げるコンテンツである間は、個人的には今後ともこれら旧作のリメイクシリーズには続行してほしいと願っているのだ(笑)。
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