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仮面ライダー555最終回・総括 〜終了評 ー平成ライダーシリーズ私的総括ー

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仮面ライダー555』最終回・総括 〜終了評 ー平成ライダーシリーズ私的総括ー

(文・伏屋千晶)

白倉ライダーは二度死ぬ!!

(2004年7月執筆、11月加筆改訂)

* 平山ライダーを超えてゆけ!


 『仮面ライダー剣(ブレイド)』(04年)で放映5年目を迎えた現行の仮面ライダー・シリーズは、滔々(とうとう)、本年度(04年)の10月で、第1期・平山(亨 ひらやま・とおる)ライダー〔『仮面ライダー』(71年)〜『仮面ライダーストロンガー』(75年)〕のシリーズ継続期間=〈4年9ヶ月〉を凌駕しました。



 視聴率的には、90年代後半のメタルヒーロー・シリーズの平均値であった7〜8%からスタートした『仮面ライダークウガ』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090907/p1)が、シリーズ後半で10%に手が届くようになり、翌年の『仮面ライダーアギト』(01年)も10%台を維持し続けて、最高時には15%を突破、平均視聴率は12%に達した(以上、知人からの大雑把な伝聞情報なので、細かい数字が間違っていたらゴメンなさい)ということで、シリーズ初期に於いては30%に迫る視聴率を稼いで空前の大ブームを巻き起こした平山ライダーには、表面的な数字の上では及ぶべくもありませんが、 〔放映時間帯の違い〕 と 〔ホームビデオの普及〕 と 〔少子化による子供の半減〕 といったハンデを考慮すれば、実際には“結構ええ勝負”をしているのではないでしょうか?


* 反逆のライダー・クウガ


 現行シリーズの起点となった『仮面ライダークウガ』は、早稲田大学・特撮系サークル「怪獣同盟」の主宰者にして“筋金入りのマニア”である[高寺成紀(たかてら・しげのり)]プロデューサーの総指揮の下で企画・製作され、慣例的な 「一話完結」 & 「一話一怪人」 の型式から脱却したファジーなシリーズ構成、ハイビジョン撮影による高密度な映像(滑稽なことに、『クウガ』はハイビジョンで撮影されたのに“ハイビジョン放送”は為(な)されなかった)に加え、マニア出身者である同氏ならではの独自の作風[=特撮ヒーロー番組には付き物だった 〈様式美 = 勧善懲悪の古臭いプロット〉 〈寓話性 = 奇想天外な特撮映像〉 〈冗慢な戦闘描写 = 無意味なアクション〉 といった“お子様向け”テイストを徹底的に排除し、 〈リアリズム〉 と 〈登場人物の内面描写〉 にウェイトを措いた脚本構成]を存分に展開し、若年マニア層の絶対的な支持を獲得することに成功しました。


 また、主演男優のオダギリ・ジョー&葛山信吾(かつらやま・しんご)が、児童の母親達の間で、ジャニーズ系の男性アイドルに匹敵する高いミーハー人気を博すというオマケもついて、昨03年ごろまで世間を騒がせていた“イケメンヒーロー・ブーム”の起爆剤となったのは、改めて申し述べるまでもありません。


 初めて製作のイニシアティブを掌握した『激走戦隊カーレンジャー』(96年)以来、“タフネス”よりも“マイルドなルックス”を選考基準にして主演俳優をチョイスしてきた高寺氏の「ビジュアルを重視した」キャスティング・センスは、もっと高く評価されるべきでしょう。ヤサ男型ヒーローの好き嫌いは別にして、あくまでも「大衆の嗜好に対する嗅覚の敏感さ」という、ビジネスライクな側面に於いてのハナシですけれども……。
 (私事で恐縮ですが、筆者の知り合いの女性は、声優としても有名な松山鷹志氏〔杉田刑事役〕のファンでした。シブ〜い声はもとより、風貌がニコラス・ケイジに似ているんだって……?)



 こうして、高寺P(プロデューサー)は、これまでの東映作品の製作者達の間で毛嫌いされてきた「マニア気質」を積極的に導入し、文芸面の体質を自己流に改変することにより、第2期(79年)以降のライダー・シリーズで繰り返されてきた失敗(=4〜5年間のブランクを挟んで周期的に新作が製作される都度、毎度々々「原点回帰」をスローガンに掲げながらも、結局は旧作の人気に及ばなかった)を、ものの見事に克服しました。


 ここまで申し上げれば自明の事とは存じますが、『クウガ』が目指したのは〈原点回帰〉ではなく〈原点否定〉でした。即ち、在来の「仮面ライダー」のイメージを“踏襲する”のではなく、その固定イメージを“根底から覆す”ことが主眼だったのです。


 それゆえ、番組の表層的なスタイルに惑わされずに「ナンセンスな〈様式美〉こそが、特撮ヒーロー番組だけが具有し得る、珍重すべき稀有な特質である」と認識している(筆者のような)昔気質の頑固者や、「ヒーロー物としてのカタルシスが無い」と嘆く(筆者のような)正統派ヒーロー・ファンにとって、『クウガ』はまるで物足りない内容になってしまったワケです。
 けれども、(唯我独尊的な物の云い方を許して貰えるなら)『クウガ』を盲目的に賛美しておられる他の方々よりも、筆者の方が、高寺氏が東映上層部に対して故意に仕掛けた造反の意義を明確に認識したうえで、その心情により深く共感しているであろうし、『クウガ』の製作意図・作品の長所&短所をより正確に把握しているであろう(それを肯定するか否かは、また別の話)――と、かなりの自信をもってキッパリと断言しちゃいますヨ!


 かねてより、筆者が、『クウガ』が「仮面ライダー」のタイトルを冠していることに強い“抵抗”を感じていた根拠は、上記のような“極めて論理的な”理由に因る(よる)ものであり、決して、“一時の感情”に左右されている訳ではないコトを、ご理解頂けましたでしょうか?


 もしも、『クウガ』が、栄光の「仮面ライダー」の一員としてではなく、名も無き新ヒーロー=『超古代戦士クウガ』という“簡潔な”タイトルで登場していたならば(そして、『仮面ライダーストロンガー』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201231/p1)のパロディーみたいな風貌をしていなかったら)、筆者だって、もっと素直な気持ちで同作品を視聴できたハズ……(ただ、「アダルト向けの人間ドラマ」を志向した作品にしては、物語の序盤に於ける“温和な性格”の主人公が惨たらしい闘争の場に“能動的に”関わってゆこうとする心理&行動の描写が、いかにも「稚拙」で「粗雑」に過ぎて、まるきり納得できず、第1話からまったくノレなかったのも事実です)



 壮大な大河ドラマのオーバーチュアのような、極めて緩慢なテンポで描かれたパイロット[第1〜2話]に対する一般的な評判が非常に高かったことで、自身の製作方針に過大な自信を抱いた高寺氏は、長年に亘(わた)り培われてきた製作現場の慣例を無視して、自己流の〈妥協なき脚本作り〉を実践しようと試み、敢えて、日程の限度枠を超えた長大な時間を脚本の執筆作業に注ぎ込みました。


 その結果、決定稿の完成が遅れた分の時間的なシワ寄せをモロに被るハメになった撮影現場のスタッフと高寺氏との間に深刻な確執が発生し、第1クールから『クウガ』の製作日程は停滞の度合いを強めてゆくことになります。


 5月(2クール目中盤)という比較的早い時期での[総集編](=使用済み映像の再編集による名場面集/新規撮影の分量が少ないので、日程が大幅に短縮できる)「EPISODE17 臨戦」の挿入は“極めて異例”な処置であり(当時、総集編は夏休みシーズンに放映するのが慣例だった)、洒落にならないほどスケジュールが逼迫(ひっぱく)した舞台裏のヤバい状況を如実に象徴する出来事でした。実際、この5月第3週の「総集編」による“穴埋め”と、6月第3週の“1回休み”が無かったら、完全にアウトだったらしい……。



 当然ながら高寺氏は、その責任を問われることとなり、徒(いたずら)に時間を消費する脚本執筆システム[=その元凶は、高寺氏と脚本家・荒川稔久(あらかわ・なるひさ)氏のマニアックな気性に起因するもので、マニア特有の“凝り性”が暴走して、飽くことなく幾度もリテイク(書き直し)を重ね、最終決定稿の脱稿に至るまでに膨大な時間を必要とした]に対して、鈴木武幸(すずき・たけゆき)製作統括から幾度も改善するように注意が為されたものの、一向に埒(らち)があかなかったようです。


 そして、「EPISODE11 約束」「EPISODE12 恩師」に於いて、『クウガ』の製作スケジュールはいよいよ最大の危機を迎えることになります。
 第11〜12話は、主人公・五代雄介の年少期の人格形成上で重要な役割を担った恩師・神崎先生の登場、番組のトレードマークとなった「サムズ・アップ(親指を立てるポーズ)」の由来、必殺技=マイティキックの会得――と、劇的な要素が濃密に詰まった第1クールの締め括り的なエピソードでしたから、高寺&荒川の両氏共に熱が入り過ぎた様子で、遂には脱稿の日限のデッド・ラインを突破し、製作現場は極限のパニック状態に陥った――との由(よし)。(以上、被害者の体験談に基いた風聞ということで)


* 高寺Pから白倉Pの手に


 その頃、後に本シリーズのメイン・プロデューサー職を継承することになる[白倉伸一郎]氏は、そんなコトとはツユ知らず、京都撮影所で「木曜ミステリー」枠のドラマの制作に携わっていました。白倉氏は、『超光戦士シャンゼリオン』(96年)の製作方針をめぐり吉川進氏と大喧嘩した後、テレビ朝日へ出向というカタチで新天地・京都に赴いていました。ある日、京都の白倉氏に、東京の鈴木武幸氏から突然の“呼び出し”がかかったそうな……。


 このまま高寺氏に任せておいたら、遠からず日程が破綻して、放送に穴をあけるのは必定(ひつじょう) ――と見極めた鈴木氏は、遂に自らの指揮権を発動し、次なる第13〜14話の脚本を筆の早い井上敏樹氏に依頼すると共に、京都から緊急召喚した白倉氏を、高寺氏の業務補佐=スケジュール管理の“お目付け役”に任命した次第。


 第2クールに入ってから、突如として鈴木氏が「製作」に名前を連ねるに至った背景には、このような止むを得ない事情があったのです。兎(と)にも角(かく)にも、「一般向けドラマ」の分野へ転進していた白倉氏は、以上のようなに数奇な(?)経緯に因って、実写キャラクター物のジャンルに再び帰ってきました。


 (白倉氏の天敵=吉川氏は、その後、虎の子の「2大戦隊VSシリーズ」の企画を手土産(結納?)代わりに東映ビデオへ出向して、東映テレビ部から去っていたので、白倉氏のカムバックはノー・プロブレム)



 鈴木氏・白倉氏・井上氏の参画後も、高寺氏+荒川氏の脚本脱稿の遅延は改まることなく慢性化したまま月日は流れ、『クウガ』終了間際の頃には、現場スタッフの高寺氏に対する不信感はピークに達しており、石田秀範監督と荒川氏を除く大半のスタッフからは“総スカン”という、極めて険悪な事態に陥っていたようです。


[最も深刻なケースは、長石多可男監督の降板/自らが深く関与した第1期ライダーの世界観を全否定する高寺イズムに反感を抱き続けていたと、当方個人は勝手に憶測している長石監督は、第3クール第39話を最後に離脱。その結果、第4クールの監督ローテーションが乱れ、ラスト6話分を渡辺勝也監督と石田監督で3話ずつ分担することに……


/「古典的なヒーロー活劇」を愛する渡辺監督も、第10話の対メ・ギイガ・ギ戦での「BGM差し替え事件」以来(編:本来はラストの戦闘シーンに主題歌を挿入。初登場のクウガタイタンフォームがゆっくり前進しつつ敵怪人メ・ギイガ・ギの光弾を被弾するタイミングが逐一主題歌の曲調に合致するので好事家はお試しを。本作に関してはベタを嫌った高寺氏の意向で差し替え。関連記事:『仮面ライダークウガ』#10「熾烈」 〜BGM差し替え真相分析!・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001110/p1)、高寺氏の独断専横に対してホントはキレていたようですが、長石監督が先にトンズラしちゃったので、逃げたくても逃げられなかった(?)
/第44〜46話に於いて、メイン・プロットの「人間ドラマ」とは関連性の薄い「戦闘アクション」(=ゴ・ガドル・バとの激闘)の描写に演出の力点が措かれたのは、渡辺監督なりの高寺氏に対する“抗議”だったらしい
/渡辺監督×高寺Pの「ヒーロー番組」に対する見解の相違は、『カーレンジャー』完結編の中でのセリフ=「心はカーレンジャー!」まで遡ります。高寺氏としては“変身能力を失い、無能となったヒーロー達の非合理的な体育会系の精神主義”を揶揄(やゆ)する意図を含んでいたようですが、渡辺監督はそのセリフを「たとえ変身できなくても、最後まで闘い抜く熱血ド根性ヒーロー」のシンボルと解釈して演出しました(翌97年、渡辺監督が戦隊シリーズのスタッフから外されたのは、ご存じの通り)]


 そんな有様でしたから、『クウガ』が世間一般からあれだけの好評を博し、社内的にも東京撮影所の“所長賞”を受賞したほどの「成功作」であったにも拘らず、『劇場版クウガ』の製作準備という名目で高寺氏の更迭(東京撮影所企画部門への出向)は実施され、『クウガ』の“続編”を前提とした次年度の新番組のプロデュースは、生みの親の手を離れて、白倉氏にバトン・タッチされることになりました。


 爾後(じご)、高寺氏がTVプロデューサー職を解任された経緯について、「造反者に対する理不尽な粛正人事だ!」とか「高寺氏には、性格的に重大な欠陥がある」など、諸々のゴシップが無責任に吹聴されているようですが、実際には上記の如く、「製作日程の慢性的な遅滞」という“事務的な”管理上の責任問題がネックになっていたわけです。


(尚、噂だけで終わった『劇場版クウガ』ですが、当初はマジで「仮面ライダー誕生30周年記念作品」として製作が予定されていた模様です……が、当初から危惧された通り、何ヶ月経っても準備稿どころかシノプシスさえ完成に至らず、モタモタしている間に白倉氏が企画した『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011104/p1)の製作が決定しちゃったんだってサ)



 ところで、第2期以降のライダー・シリーズには“2年目に打ち切られる”という、不吉なジンクス[『仮面ライダー(スカイライダー) 』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1)&『――スーパー1(ワン)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210822/p1)、『――BLACK』(87年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001015/p2)&『――BLACK RX』(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1)、劇場版『――ZO(ゼットオー)』(93年)&『――J』(94年)]がありました。


 然かるに、白倉氏は、シリーズ第2作『仮面ライダーアギト』で、前作とは全く異質のドラマツルギーを構築することによってそのジンクスを打ち破り、更には、ストーリーの〈連続性〉を強調し、毎週々々、次回への興味を惹く作劇の工夫を怠らず(70~80年代大映テレビ製作のローラーコースター・ドラマみたい?)、2年目以降も人気を持続・向上させ、シリーズの命脈を繋ぐことに成功しました。その功績ゆえに筆者は、シリーズの創始者である高寺氏よりも、その後を受け継いだ白倉氏の手腕を“高く”評価している次第です。
 もしも、あの当時、『クウガ』で全エネルギーを使い果たして消耗しきっていた高寺氏が、引き続いて次年度のプロデュースを担当していたら、恐らくは従来と同じ轍(てつ)を踏んで、シリーズは2年限りで幕を降ろしていたことでしょう。(間違いナイ?/長井秀和は、イヤミな社会学者・宮台真司の喋り口調をマネしている、間違いない!)


* 白倉ライダー・トリロジー


 実際、『アギト』は、放映開始当初こそは『クウガ』のパート2=“2匹めのドジョウ”と見なされていましたが、その実態は「みんなの笑顔のために」というパブリックな(公的な)動機を有する唯一無二の英雄を賛美した『クウガ』とは裏腹に、各々にプライベートな(私的な)動機を有する複数のライダー達の「相剋」と「和合」を描くもので、「自存自衛」の為に戦うヒーロー像を積極的に肯定して、観念レベルで特撮キャラクター番組の新たなる局面を切り拓きました(間違いナイ!)。


 言い換えると、『クウガ』は「従来型の東映ヒーロー作品の総決算」(=旧弊的な陋習(ろうしゅう) に対するアンチテーゼ)に過ぎなかったのですが、『アギト』には、あらゆる従来のパターンを超越した、極めて自覚的な“新しさ”が(少なくとも、筆者には)明確に感じられたのです。



 その第一の要因は、「複数ヒーロー」のキャラクター・シフトが、必ずしも「グループ・ヒーロー」を意味しないという点。


 従前の東映作品では、複数のヒーロー達の間柄は必ず“仲間”(=同志・戦友)として機能していました。しかし、『アギト』以降の白倉P作品では、ヒーロー同士が容易には“友好的な関係”を築くことがなかったのは、ご存じの通り。レアなケースを除き、白倉ライダー達が共闘するのは“互いの利害関係が一致する場合”に限られていましたが、それが却って、たまさか彼等が心を通わせた刹那のドラマを、効果的に盛り上げていたように存じます。



 第二には、「殺されたくないから殺す」という、至ってプリミティブ(原初的)な〈個人主義的なモチベーション〉を普遍化した点。


 これは、“みんなの笑顔を守るために”を行動の主たる動機とした『クウガ』とは真っ向から対立する概念であり、「『アギト』を製作するに当たって、前作『クウガ』を〈仮想敵〉に想定していた」という、某誌のインタビューでの白倉氏の言質(げんち)を裏づけるものであります。


 つまり、結局のところ、『クウガ』は、類型的なヒーロー番組の伝統[=パターン]を嫌っていながらも、歴代の東映ヒーローの戦闘モチベーションの根幹を形成していた〈自己犠牲〉と〈愛他精神〉を全面的に肯定せざるを得なかったワケで、残念ながら、旧来の“しがらみ”から脱却しきれていません。その点、『アギト』は、幼稚なヒューマニズムから完全に“解放”されており、ヒーロー番組の「製作ノウハウの革新」という観点に於ける両者の「差」は、歴然としているのではないでしょうか?



 〈個人主義〉が高じて、単なる“エゴとエゴの対立”に堕してしまった『仮面ライダー龍騎』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021109/p1)の後を受けた『仮面ライダー555(ファイズ)』(03年)がテーマとしたのは、当然“個人の正しい在り方”であった訳で、それゆえ、[自由気儘な個人が恣意的に形成した任意の小集団]と[“王”を頂点とする全体主義者が結成した巨大組織]との闘争の図式というのは、白倉ライダー三部作の必然的な帰着点であったように存じます。


* やり逃げ


 ……然しながら、困ったことに、白倉ライダー三部作のラストを華々しく飾るハズだった『ファイズ』最終話は、“スカスカ”で“グダグダ”で“ヘロヘロ”の散々な出来で、まったくの期待ハズレでした。


 テーマの結実がど〜のこ〜のとか、物語のディテールの整合性が破綻しているゾとか、なんで最後の最後に“夢”などという月並みなフレーズに逃避しちゃったの? とか、結局オルフェノクの王って、いったい何者だったんだ? とか――そういった次元の問題ではありません。明らかに“ヤル気”を喪失しているように見えるスタッフの消極的な姿勢こそが問題であり、概して『ファイズ』完結編(第49〜最終話)は、批評するに値しない作品でした――と、敢えて断言させてイタダキマス!



 [白倉伸一郎]プロデューサーは、新番組『美少女戦士セーラームーン』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)がまったくの不調で、そっちの問題で頭がいっぱい……。[田崎竜太]監督は新天地への門出を間近に控えて気もそぞろ……。脚本の[井上敏樹]氏に至っては、行き当たりバッタリで風呂敷を拡げるだけ拡げておいて、最終回でヌケヌケと「やり逃げ」をかましちゃう常習犯。オマケに、プロデューサーの交替により、日程の融通が利かない――これだけ悪条件が重なっては、オモシロくなる筈がないって! 


 最終2話の直前に、田崎監督が演出を担当した第45〜46話は、全編に亘って非常にテンションが高かったです[長田結花(おさだ・ゆか)を殺されて、木場勇治(きば・ゆうじ)が悲憤の激情の余り気絶する場面と(人間の生理として、度を越して感情が激すると、失神しちゃうのは事実だそうです)、ホースオルフェノク(=木場)が真正面から突進してくる車のフロントグリルをブン殴る場面のインパクトは物凄かった!]。しかし、この急激なトーン・ダウンぶりは、いったい、どうしたちゃったんだろう……と、訝(いぶ)かったのは、筆者だけ?



 ……とはいえ、いくら脚本がツマらなくたって、監督のモチベーションが低くたって、プロデューサーのチェックがザルになっていたって、「アクション演出」がも〜っと頑張っていれば、少しはマシな“最終回らしい”最終回になり得たのではないのかなァ――と、どうしても考えてしまいますネ、活劇バカ=アクション好きの筆者としては。


 思い起こしてみて下さい、初期戦隊&宇宙刑事シリーズの〈最終決戦〉に於ける、往年のヒーロー達の激闘ぶりを――山岡淳二&金田治の2大“天才”アクション監督なればこそ、本編監督以上に深〜く脚本を読み込んで(?)、1年間に亘る闘争の物語を締め括るに相応しいファイナル・バトルのシチュエーションを案出し、極めてボルテージの高いアクションによって、物語の「大団円」のカタルシスをより一層高めることができたのでしょう。


 それに比べて[宮崎剛(みやざき・たけし)]アクション監督、アンタは勉強不足じゃ! 「作劇術」というものをもっと勉強しないとアカンで。もうチョッとは“最終回らしい”戦い方ってものがあるやろ。


 オルフェノクの王は、折角、岡元次郎氏が演じていたのに、ほとんど動かないキャラクター設定ゆえに“宝の持ちぐされ”だったし、オートバジンなどは全く活躍できない内に“秒殺”されてしまって(CG予算の制約があったにしても)、余りにも可哀相(かわいそう) ……。


 だいたい、3人ライダーの変身ベルトが、何故あんなに簡単に何回もハズレちゃうの? 誰が考えたって、演出ミスだと思うのと違いまっか。


* あばよ、もう一人の俺


 それにしても、“ちょー燃え”必至の「俺ごと刈れ!」パターンだった[木場勇治の最期]の場面は、いくらなんでも、もう少しは盛り上げることが出来たハズ。


 あの場面に、仮面ライダーデルタ=三原修二は余分でしたね。たぶん、乾巧(いぬい・たくみ) =仮面ライダーファイズと木場勇治=仮面ライダーカイザの[ダブルライダー]だけで最強の“王”に立ち向かっていた方が、ラスト・バトルはカッコよかったのではないか――と、皆さんも思いませんでしたか?



 一方、ラスト2話で、カイザの変身ベルトが木場勇治の手に渡ったシチュエーションが余りにも唐突だし、そもそも、木場がカイザになるドラマ的な文脈上の必然性が薄い――と、感じられた方も多かったと存じます。


 しかし、企画段階のプロットでは、もともと、木場勇治が第2クール冒頭でカイザになる予定だったようです。ホースオルフェノクを演じる伊藤慎(いとう・まこと)氏が、カイザ役を兼務をしたのは「ホースとカイザは、同一人物(=木場)」という前提があったからこそ。


 ところが、第1クールの視聴率不振によってシリーズ全体の構想が再検討されて、“イケメン俳優を1人でも多く登場させよう”という姑息なテコ入れ対策のお蔭で、井上敏樹氏のシュミ丸出しの性格破綻者=草加雅人(くさか・まさと)が仮面ライダーカイザになることになりました。しかし、プロット変更が決定した時には、既に伊藤慎氏の躰のサイズに合わせてカイザ・ギアのスーツは完成しており、スーツのフィッティングの都合で、伊藤氏がホースとカイザの二役を演じざるを得ませんでした。



 草加雅人も、当初は「第2クールのストーリーを引っ掻き回すだけ」のワンポイント・キャラとして設定されていた模様で、ホントは草加には早目に死んで(退場して)貰って、その後は木場がカイザのベルトを引継がせて、当初のプロットに立ち返ろう――『アギト』に於ける[仮面ライダーアギト × 仮面ライダーギルス]では完遂できなかった「価値観の異なる2人のライダーの確執」テーマを、今回こそは存分に描き切ろう――と、製作サイドが目論んでいたフシが窺えます。


 が、言はずもがな、井上氏が“天邪鬼(あまのじゃく)”キャラの草加を甚く気に入ってしまって、最終回間際まで殺せなくなり、シリーズ構成が再度変更されたというコトのようです。劇場版『――パラダイス・ロスト』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031104/p1)に於いて、草加を前半部で簡単に殺して、[木場=ホースオルフェノク仮面ライダーオーガ] × [乾=ウルフオルフェノク仮面ライダーファイズ]の2大ライダーの激突をクライマックスに据えたストーリーの原案は、TVシリーズで実現できなくなった初期プロットを、改めてリニューアルしたものだったらしい?


 また、劇場版でカイザに変身した主人公集団側のレギュラー・菊池啓太郎(きくち・けいたろう)は、TVシリーズの方では、第3のライダー=デルタになる予定だったようです。つまり、番組開始時からのレギュラーである乾巧・木場勇治・菊池啓太郎が3人ライダーになって共闘する――というのが、企画時点での構想でしたが、視聴率アップの方策として、イケメン・ライダーの増員が実行された結果、完成作品のようなキャラクター・シフトになってしまった模様。
 (あの“ライダーマン(『仮面ライダーV3』73年・仮面ライダー4号)並みに弱い”三原デルタのイメージの原型は、「弱虫」啓太郎をキャラクターに由来するものらしい)


* カウンター・ヒーローの系譜


 ところで、『ファイズ』で完遂することが叶わなかった「異なる価値観を持つ2人のヒーローの確執と絆の物語」とは、脚本家・井上敏樹氏が幾度も繰り返し描き続けてきた十八番のテーマであるのは、皆さんもご存じの通り。


 『光戦隊マスクマン』(87年)第39話「出現! 謎のX1(エックス・ワン) マスク」での〔タケル(レッドマスク) × 飛鳥リョオ(X1マスク/マスクマンのプロトタイプ)〕に端を発し、
 『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)の〔天堂竜(レッドホーク) × 結城凱(ゆうき・がい)(ブラックコンドル)〕で一応の結実を見た同テーマは、
 『五星戦隊ダイレンジャー』(93年)第26・27・35・39話で展開された〔亮(リュウレンジャー) × 的場陣(魔拳士ジン) 〕では善玉 × 悪玉の図式を超越したドラマとして尖鋭化し、
 『超光戦士シャンゼリオン』(96年)では凸凹主人公コンビ〔涼村暁(すずむら・あきら)(シャンゼリオン)  × 速水克彦(はやみ・かつひこ)(ザ・ブレイダー) 〕という変化球を見せた後に、
 『仮面ライダーアギト』に於ける〔津上翔一(アギト) × 葦原涼(あしはら・りょう)(ギルス) × 氷川誠(ひかわ・まこと)(G3)〕の三角関係(仮面ライダーG3=「善」、仮面ライダーギルス=「悪」、そして、主人公・アギトは善悪の両者の間で揺れる「中庸」のポジション)に発展し、更に、その3人を束にして相手にした4番目の男=〔木野薫/アナザーアギト〕が登場しました。


 そして、最終的には、


 『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4』の〔G4(水城史朗(みずき・しろう)) × G3−X(氷川誠)〕、
 『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021104/p1)の〔龍騎(城戸真司(きど・しんじ)) × リュウガ〕といった、自分自身とソックリな相手(もう一人の自分)と戦う――


 というユニークなプロットを以て、井上氏が長年描き続けてきた「複数ヒーロー」の作劇モチーフは、表現様式として“完成”の域に到達しました。


 「鏡に映った鏡像」、或いは「双子」のように主人公と瓜二つの外貌を持ちながら、性格は正反対である“敵”の設定とは、「進む方向を一歩間違えていたら、そうなっていたかも知れない“もう1人の自分”」を意味し、無敵のスーパーヒーローにとって、究極・最大の敵とは「自分自身のダークサイド」に他ならなかった――という、井上氏一流のアイロニーの発露であります。


 [自己の内面での葛藤] → [ネガティブな心理の克服] [成長(人格の成熟)] の精神的なプロセスを“活劇ドラマ”の骨格の中に取り込んで、従来の 「ヒーローのライバル」 「ダーク・ヒーロー」 「アンチ・ヒーロー」 とは異質の、ヒーローの心の裏側に挑んでくる 「カウンター・ヒーロー」 とでも称すべき画期的な概念を案出した、井上氏の「劇作家」としてのセンスは、やっぱり素晴らしいのだ!


 尚、『EPISODE FINAL』に登場した、もう1人の仮面ライダー=ファムも、デザイン段階では“白いナイト”――即ち「仮面ライダーナイト(秋山蓮(あきやま・れん))の敵」というコンセプトでキャラクターが想定されていた、とのコトです。(そういえば、[小沢澄子×北絛透]のバトルも、この作劇パターンの類型に属しますね)


(編:マニア向け書籍『ファンタスティックコレクション 仮面ライダー龍騎』(朝日ソノラマ・2003年6月30日第1刷発行・7月5日第2刷発行・ISBN:4257036761)にもその旨の記述があり)



 ――で、話を『ファイズ』に戻しますと、本作の場合、〔乾巧〕と〔木場勇治〕の描写のウェイトが五分五分で、どちらが“ポジ”(陽)で、どちらが“ネガ”(陰)なのか、ハッキリしていないところがミソだったのに、最終回間際で結花が殺されて、人間に裏切られた(と誤解した)木場がキレてしまった時点で、物語の先が見えちゃったのが、少々残念でした。


 やっぱり、最初から絶望していた乾巧には、友と共有すべき未来のビジョンが見えていなかったので、壊れてしまった木場を救えなかったのネ……。



 そしてまた、本年04年度の『仮面ライダーブレイド』第17〜19話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041101)で展開された仮面ライダーギャレン=橘朔也(たちばな・さくや)と“仮面ライダーになれなかった男”=桐生豪(きりゅう・ごう)との因縁の対決も、同一のモチーフによるエピソードでした。井上敏樹氏の筆による[ヒーロー × カウンター・ヒーロー]のエンドレス・バトルは、今後も果てしなく続いてゆくことでしょう。(桐生豪役を演じた増沢望氏って、ロック歌手の大御所・矢沢永吉氏にクリソツでしたけど、永ちゃんマニアの長石監督のシュミによるキャスティングかしら?)


 「もう一人の俺」との戦い――それは、永遠に勝負が決しない闘争によって成長し続ける“男”のロマンです。


坂の上の雲


 「世界中の洗濯物が真っ白になるみたいに、みんなが幸せになりますように――」



 『ファイズ』最終話で最も“解げせない”箇所は、上記の主人公の(とって付けたような)最後のセリフに他なりません。


 なんで、今さら「夢」に縋(すが)らにゃ、ならんのや! と、初見の時には、脚本家・井上敏樹氏の“なげやり”な開き直りに呆れたものですが、脚本を読んだ上で再度見直してみたら、なんかもう、現実に幻滅しきってドン底まで落ちてしまった人間って“夢にしがみついて生きてゆくしかない”のかも知れない……と、しみじみ主人公・乾巧に同情してしまいました。


 映像では、乾巧の掌のショットは、逆光シルエット処理で微妙にボカしてありましたが、脚本には、乾巧の掌の表面は、既に灰と化してボロボロになっている――と明記されています。つまり、乾巧も他のオルフェノクと同様に、間もなく全身が灰塵に帰して、絶命するであろう……と、ハッキリ暗示されているワケで、極めてペシミスティック(悲観的)な幕切れになっています。


 そういった状況を考慮して、上記のセリフを改めて聞いてみると、自ずと最初の印象とは解釈が違ってくるのも、理解して頂けるでしょう? 「最終回」を初めて演出する田崎監督としては、やはり、余りにも“救いのない”エピローグは回避したかったのではないでしょうか? きっと、希望のシンボル=真っ白な洗濯物のイメージに逃避するしか、演出の策がなかったのでしょう。


 「裏切り」や「殺し合い」ばかりが続いた陰惨な物語の中で、楽天家・啓太郎の口癖である「真っ白な洗濯物」は、いつの間にか、果てしない闘争に絶望しきった登場人物達にとって、唯一の「明るい希望」の象徴として機能するようになっていたのです。(その典型的な例は、第19話のラスト・シーン/シナリオ・タイトルは、そのものズバリ、「真っ白の波」でした)



 「のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶(いちだ) の白い雲がかがやいているとすれば、それのみみつめて坂をのぼってゆくであろう」


 ――と、歴史小説家・司馬遼太郎(しば・りょうたろう)は書いています(『坂の上の雲』(68〜72年)第一巻(69年・ASIN:B000J98KPO・78年に文春文庫化・ISBN:4167105284・99年に文庫新装版・ISBN:4167105764)・あとがき)。『坂の上の雲』なるタイトルは、時代(編:題材となった明治と、本作が執筆された昭和40年代の高度経済成長期)のオプティミズム(楽観主義)を象徴する言葉であり、同時に、作者の創作意図を示すものと申せましょう。


 『ファイズ』に於ける「真っ白な洗濯物」とは、これに対応するキー・ワードであり、主人公が洗濯屋に居候する(住込みのバイト)という基本設定からして、上記のセリフが、当初の段階から物語の大団円の“締め”のセリフとして、周到に用意されていたものであることが推察できます。


 でも、「夢」に対する言及に関しては、『アギト』第48話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)に於ける、葦原涼(ギルス)のセリフの方が数段優れていたように思います。



 「夢なんか無くても生きてゆける。いや、ふつうに生きてゆくのが、俺の夢だ。(中略)……花が夢を持っていると思うか? それでも、花は咲く、花は枯れる――そういう風に生きてゆければいい、と思う」



 ――おォ! なんとカッコよく、なんとクサい、そしてまた、なんと“キマッてる”セリフでありましょうか! 苦労人の葦原涼に比べたら、乾巧はまだまだ甘いね。


* 第51話「引き継ぐ者」……って、ナニ?


 『ファイズ』最終回を以て、白倉氏がライダー・シリーズから離脱するのを記念して、第51話「引き継ぐ者」なる短編映像が内輪で製作され、同作品の打ち上げパーティーで上映されたそうです。(『クウガ』の「EPISODE50 乙彼(おつかれ)」みたいなものです)


 最終話のラスト・シーン=主人公3人が土手で並んで寝そべっているところに、赤い円筒状の物体が上空から降ってきました。それを菊池洗濯舗に持ち帰った3人は、いったいこの物体は何なのかと、喧々轟々に語り合う。幽霊になった草加雅人も加わり、しょーもない言い合いが続いた後に「そうだ、木場なら分かるかも知れない」というコトで、一行は木場のマンションへ(なぜか、木場と結花は生きている)。ここでも、木場・結花・海堂のしょーもないやりとりがあって、「ひょっとしたら、スマートブレインの罠かも知れない」というコトで、舞台はラッキークローバーへ移動(本編でロケに使用していた店が借りられなかったのか、店構えが少々チープな居酒屋に変わっている)。だが、村上峡児・琢磨逸郎・影山冴子(代役)・北崎にも、その円筒状の物体が何であるか分からない……ンで、沢田亜希の幽霊まで登場して、スッタモンダの末に、その物体が新番組『仮面ライダー剣(ブレイド)』の主人公=剣崎一真(けんざき・かずま)に渡す「バトン」であることが判明。ラストは、無事にバトンの授受を終えた2人が、カメラ目線で同時に変身! ダブル・ライダーの揃い踏みで、幕となります。


 ――以上、脚本・監督・撮影はすべて鈴村展弘(すずむら・のぶひろ)氏。スタッフ&キャスト共に、ノー・ギャラだったそうです。(なんと、鈴村監督が自らデジカメで撮影/同氏の撮影技術は、素人マニアだった頃に後楽園ゆうえんち野外劇場のヒーローショーを8ミリビデオで撮影して鍛えたものである!?/尚、後楽園ゆうえんち〔現/東京ドームシティ〕の常連客の間では、マニア時代の鈴村氏が撮影・編集したと云われている「五星戦隊ダイレンジャー/決戦!! 6000年戦争」(1993年秋公演)のビデオテープが出回っていたコトがありました。もちろん、不特定多数を相手に営利目的で売買すると著作権侵害行為に該当しちゃいますので、ダビングは知人同士の間でのみ、代価はテープ代実費のみでした)


* 白倉ライダー・5つの誓い


 唐突ですが、最後に「白倉ライダー・5つの誓い」。


 ――みなさんも、ご唱和願います。



 一つ、道義に拘泥せず、己の思うがままに闘うべし
 一つ、必ずや血族・同胞の復讐を為し遂げるべし
 一つ、ホレた女に命を張るべし
 一つ、裏切りには血で報いるべし
 一つ、須く(すべからく) 、殺られる前に殺るべし



――さらば、白倉ライダー!!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


* 恐れていた高寺Pの復活宣言


 04年度の人事異動により、鈴木武幸氏が取締役に就任! 鈴木氏に代わって児童向けTV番組プロデューサー部門のボス(部長代理?)に昇格した日笠淳氏は、今後はキャラクター番組全般の統括を担うことになり、05年度の仮面ライダー・シリーズの新番組には、遂に“あの方”のカムバックが決定しました!


 そうです! 高寺成紀プロデューサーが、4年間の沈黙を破って、新ライダーと共に帰ってきたました!


 ――その名も、『仮面ライダー響鬼(ヒビキ)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070106/p1)!!! 仮面ライダーとしては前例のない“鬼”をモチーフにしたデザインで、和太鼓を叩きながら登場し(?)、太鼓のバチを武器にして(??)、この世に邪悪を撒き散らす魔物を退治する……って、ナンじゃそりゃ???


 また、もう1人のライダーは「轟鬼」(トドロキ)という名で、こちらは横笛(和風)を武器とするそうだ。(後日付記:コメディアン宮迫博之がフジテレビのバラエティ番組『ワンナイR&R(ロックンロール)』(00〜06年)で「轟(とどろき)」という名のホモキャラネタをヒットさせていた事を考慮して、「威吹鬼」(イブキ)に変更されたとか。もちろん実際の武器は横笛ではなくラッパなのはご存知の通り)


 漢字表記の名称、和楽器を武器とする点からも容易に推察されるように“和風”テイストの仮面ライダーになる模様。変身アイテムは「音叉(おんさ) 」、様々な武器に変化するディスク状の小動物=「ディスクアニマル」が玩具の目玉商品となる。


 そもそも、高寺氏は「現代版『変身忍者 嵐』(72年・石森章太郎原作の特撮時代劇)」を企画していたとの事で、和風のスタイルは“忍者”に由来するものらしい。ヒーロー達が楽器を携行しているあたりは、どちらかと言えば『人造人間キカイダー』(72年・石森章太郎原作の特撮変身ヒーロー)ぽいのですが……。


 監督は[石田秀範]氏(メイン)と[諸田敏(もろた・さとし)]氏の他に高寺氏が発掘した(?)新人監督の起用が予定されているらしい。


 脚本は[きだつよし]氏。意外な人選と思われるかも知れませんが、『クウガ』の時の[荒川稔久]氏と同じく、高寺氏が作成するプロットにしたがってセリフを書くだけの「代筆者」なので、誰でも構わないのだそうです(!?)。


 主演は、中堅俳優の[細川茂樹]氏(=響鬼)と、実写版『美少女戦士セーラームーン』でセーラー戦士達を助けるタキシード仮面・地場衛(ちば・まもる)を演じ終えたばかりの[渋江譲二]氏(=轟鬼)。


 細川茂樹氏は、準主演クラスの役処で数多くのTVドラマに出演している二枚目俳優。現在、既に同氏は30歳を越えているので、“三十路ライダー”の誕生である。


 (3人目のライダー「弦鬼」(ゲンキ)は、第2クールで登場予定。……後日付記:実際には、渋江譲二]氏(=轟鬼)の名前が威吹鬼(イブキ)となって、3人目のライダーの名前が「轟鬼」となったのはご承知通りです)



 一方、05年度のスーパー戦隊シリーズ新番組のタイトルは『魔法戦隊マジレンジャー』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060313/p1)――史上初の「魔法使い」戦隊。タイトルは“MAGIC(マジック)”と“本気(まじ)”の2つの意味を含んでいます。


 誰が考えても明らかなように、ファンタジー洋画『ハリー・ポッター』(01年〜)と宮崎アニメ『ハウルの動く城』(04年)の人気に便乗した企画であり、恐らくは、魔法学校の生徒が主役ではないでしょうか? 魔法の絨毯(じゅうたん) とか、ホウキで空を飛ぶのかしら?


 チーフ・プロデューサーは[塚田英明]氏が留任、メイン監督はもちろん[渡辺勝也]氏、脚本はアニメ畑出身の[前川淳]氏。第1〜2話では『パワーレンジャー』(93年〜・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1)とタイアップして、ニュージーランド・ロケが行われる予定。『星獣戦隊ギンガマン』(98年)〜『未来戦隊タイムレンジャー』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001102/p1)の主役レッドや、『仮面ライダーアギト』〜『仮面ライダーブレイド』を演じた[高岩成二(たかいわ・せいじ)]氏がレッド役に復帰し、『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)〜『特捜戦隊デカレンジャー』(04年)のレッドを演じた[福沢博文]氏はグリーンに回るそうです。



 一方、『美少女戦士セーラームーン』を終えた白倉伸一郎Pがチャレンジする次なるテーマは、Vシネマ『Re:仮面ライダー(仮)』。なんと、1号&2号ライダー編をリメイクするのだそうです。


 どの程度のアレンジが施されるのかは未だ検討中の模様ですが、本郷猛役と一文字隼人役を若い俳優が演じるという趣向。ひょっとしたら[藤岡弘、]氏の“おやっさん”が見られるかも? (滝和也も出るのかナー?)


 監督[長石多可男]氏、脚本[井上敏樹]氏と、お馴染みの顔ぶれ。長石監督が『ブレイド』最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041113/p1)を撮り終えた後に、本格的な打ち合わせに入る予定。井上氏の筆にかかったら、1号ライダー・本郷猛はキザなエリート、2号ライダー・一文字隼人(いちもんじ・はやと)はナンパなプレイボーイにされてしまうのではないか――と、心配しています。(後日付記:映画『仮面ライダー THE FIRST』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060316/p1)として実現)



 ――更にもう1人、大切な人が東映に帰ってきます!


 東京ムービー+フジテレビの提携の下に企画が進行していた[田崎竜太]監督の新作TVシリーズが、クランクイン直前に製作中止が決定――しかし、白倉氏の口利きで、東映テレビ朝日の下での再スタートが決定し、田崎監督が東映に帰ってくることになりました!


 内容は、渋谷の街を舞台にしたティーンエージャーのドラマで、タイトルは『Sh16uya(仮)』(1をi、6をbに見立てて“シブヤ・シックスティーン”と読むらしい)。主演は、田崎監督お気に入りの[芳賀優里亜]&[弓削智久(ゆげ・ともひさ)]。[鈴村展弘]監督も参加。放映は05年の春頃、放映時間帯は深夜の予定。(後日付記:「6」ではなく「5」の表記で、『Sh15uya』(シブヤフィフティーン)として05年1月より放映)



 ――さあ、今年(05年)は、高寺ライダーと白倉ライダーの激突だ! 高寺Pにとっては、初めての「劇場版」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060314/p1)もあるのだ……って、また揉めそうで、ちょっとコワい?


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2005年準備号』(04年8月14日発行)〜『仮面特攻隊2005年号』(04年12月30日発行)所収『仮面ライダー555』終了評より抜粋)



『假面特攻隊2005年号』「仮面ライダー555」終了評・関係記事の縮小コピー収録一覧


ミニコミペーパー『ヒーロー伝説』通巻第5号 1993年1月17日(日)
(特撮HEROファン倶楽部 信天翁 鈴村展弘)
 助監督時代の鈴村展弘氏が配布していたペーパー! 92年度東映特撮・終了間際の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』他の最終回をフライング紹介! 93年公開・放映前の新作『仮面ライダーZO』『五星戦隊ダイレンジャー』他の詳細を紹介! 記事によれば、『中華戦隊チャイナマン』→『拳法戦隊ゴレンケンジャー』→『伍拳戦隊ダイケンジャー』→『五星戦隊ダイレンジャー』に改名されていったそうな。 ……ペーパー配布が社内にバレて、大目玉を喰らったとの当時の風の噂(笑)。(T.SATO)


・読売新聞 2004年5月14日(金) 芸能欄・画面にイケメン花盛り ドラマに加え情報番組も 〜美形全盛時代はまだまだ続きそう。『新・科捜研の女』(04年)に『555』の半田健人ファイズこと乾巧)・泉政行(木場)・溝呂木賢(啓太郎)がレギュラー出演!
・読売新聞 2004年5月13日(木) TV欄試写室『新・科捜研の女』#5 “イケメン俳優”3人起用 〜『555』出身の3人起用は30〜40代女性層を意識
・読売新聞 2004年6月18日(金) TV欄投稿欄『放送塔』「新・科捜研の女」終了残念 〜イケメン俳優目当てに見始めたがハマる。34歳主婦


中日新聞 2004年9月22日(水) 芸能欄・ヒーローから昼メロに変身!? 仮面ライダー 戦隊もの… イケメン起用し母親層取り込む 〜27日スタートの東海テレビ(フジ系)『愛のソレア』に「555」半田健人、放映中のTBS『虹のかなた』に「龍騎涼平松田悟志東海テレビ『女医・優』に「アバレンジャー西興一朗、以前も東海テレビ真珠夫人』(02)に「クウガ」葛山慎吾、後番組『新・愛の嵐』(02)に「アギト」要潤。昼メロPが意識的起用と明言。TBSのPも視聴者が飽きたら熱は下がるが、今のところ局内の女性は『虹』のふたりにハマってると発言。
・日刊スポーツ 2004年7月16日(金) どらまちっくDAYS ついに来た!時代劇にもイケメンの波!! 〜Vシネマ『イケメン新選組』(04年・ASIN:B00028XEPS)は「仮面ライダー555」の俳優たちが近藤や沖田を演じる。女優・秋本奈緒美と結婚した原田篤仮面ライダーデルタ)が土方(ひじかた)。
 (直上2つの新聞記事のみ『2004おたくコレクション〜業界全体とその賦活への展望(文・久保達也)』の図版)


東映ヒーローアクセサリーズ
仮面ライダーファイズペンダント メーカー希望価格19,000円
仮面ライダーファイズリング メーカー希望価格15,000円
特捜戦隊デカレンジャーS.P.D隊員服緊急出動!
・ジャケット 各26,250円
・パンツ 各12,600円
・スカート 各9.450(以上、税込)
 来るべき「少子高齢化社会の到来」に備えて、バンダイの“高齢者向け”ビジネス戦略がスタート。ファイズペンダント&リングはオーダーメイド、SPD隊員服は「子供用」に先行して「大人用」が予約限定で販売された。


トレーディングカード(スマートレディ&島田奈々子)
 〈島田奈々子〉(『仮面ライダー龍騎』のORE(オレ)ジャーナルの黒眼鏡娘)と〈スマートレディ〉(『仮面ライダー555』のスマートブレイン社長秘書)――栗原瞳氏は、2つの役柄を通して「髪形と服装で、女は“化ける”」という事実を改めて証明してみせた。
 (『555』#1〜2で、木場勇治の恋人=〈森下千恵〉を演じた[勝村美香]氏(タイムピンク=ユウリ)も、当初は〈スマートレディ〉役の候補だったらしい)

(共に伏屋千晶)



仮面ライダー555』平均視聴率:関東9.3%・中部11.4%・関西8.1%
 (平均視聴率EXCEL表計算:森川由浩)

仮面ライダー555』はじめ、「スカイライダー」(79)〜「仮面ライダーW」(09)関東・中部・関西の全話視聴率表を、09年末発行の『假面特攻隊2010年号』「平成ライダー東西視聴率10年史」大特集に掲載!


[関連記事] 〜『仮面ライダー555』全記事一覧

仮面ライダー555』 〜全記事見出し詳細一覧

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080120/p1

仮面ライダー555』 〜前半合評1 「夢」を持たないのは悪いことか?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031102/p1

仮面ライダー555』 〜前半合評2 「特撮」ではない「555」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031103/p1

『劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』 〜賛否合評1

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031104/p1

『劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』 〜賛否合評2

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031105/p1

仮面ライダー555』 〜後半合評1 幼児と児童でのライダー人気の落差に着目すべし!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031106/p1

仮面ライダー555』 〜後半合評2 ―完結直前! 『555』総括―

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031107/p1

仮面ライダー555』最終回 〜終了評 ―平成ライダーシリーズ私的総括―

  (当該記事)


[関連記事] ~ライダーシリーズ総括

 (ライダー各作品の「終了評」の末尾に、関東・中部・関西の平均視聴率を加筆!)

仮面ライダークウガ』前半・総括 ~怪獣から怪人の時代来るか再び

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仮面ライダークウガ』最終回・総括 ~終了賛否合評

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仮面ライダーアギト』最終回・総括 ~終了評 ―俺の為に、アギトの為に、人間の為に―

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仮面ライダー龍騎』最終回 ~終了賛否合評1

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仮面ライダー龍騎』総論! ~終了賛否合評2 ―『龍騎』総括・小林靖子vs井上敏樹!―

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仮面ライダー555ファイズ)』最終回・総括 ~終了評 ―平成ライダーシリーズ私的総括―

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仮面ライダー剣ブレイド)』最終回・総括 ~終了合評 會川ヒーローは痛みと深みを増して

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