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ウルトラマン80 6話「星から来た少年」  ~自分を宇宙人だと思い込む現実逃避の少年・大島明男編!

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ウルトラマン80』第6話「星から来た少年」 ~自分を宇宙人だと思い込む現実逃避の少年・大島明男編!

UFO怪獣アブドラールス登場

(作・広瀬襄 監督・湯浅憲明 特撮監督・高野宏一 放映日・80年5月7日)
(視聴率:関東12.3% 中部13.9% 関西16.3%)

ウルトラマン80』第6話「星から来た少年」 ~合評1

(文・内山和正)
(1999年執筆)


 口笛を吹くと風が吹く能力を持ち、自分を宇宙人だと信じこむ大島明男生徒。ベランダでの天体望遠鏡での天体観測が大好きな彼がUFO(ユーフォー)を見て、自分を迎えに来てくれたと思いこむ。彼の担任でもある主人公・矢的猛(やまと・たけし)先生は、彼自身は宇宙人ではなくまぎれもない地球人であるのだと諭(さと)そうとする……という話ではあるのだが。


 明男が宇宙人である可能性を少しも検討しようとしない矢的の態度には、彼自身の正体が宇宙人(ウルトラマン80(エイティ))であることを思えば、少し疑問が残る。これではふつうの地球人の頭の硬い大人と変わりないだろう。


 歴代ウルトラシリーズの主題歌を手掛けてきた東京一(あずま・きょういち=円谷一つぶらや・はじめ))氏・阿久悠(あく・ゆう)氏に変わる作詞家として、1960年代から歌謡曲の作詞家として大活躍されてきた山上路夫(やまがみ・みちお。テレビ時代劇『水戸黄門(みと・こうもん)』(69年~)の主題歌が最も有名だろう)氏を起用した、主題歌「ウルトラマン80」(ASIN:B00005ENKAASIN:B000H30GTAASIN:B00005ENF5ASIN:B0001A7VC4)の歌詞や、拙稿「『ウルトラマン80』全話評 ~序文」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100501/p1)でも語った80というヒーローのデザインコンセプトにも強く表れている「人間ウルトラマン」であることが原因なのかもしれないが、ウルトラマンの宇宙人としての視点を(適切な場所では)忘れてはいけないと思う。


 もっとも、これまでのウルトラシリーズ作品で、人間(地球人)に化けたり乗り移ったりしている宇宙人同士が、地球人の姿をしていてもお互いの正体を見抜いているように、宇宙人であるかないかは見ればわかるという解釈なのかもしれない。しかしそう判断すると、同じく広瀬襄脚本の12話「美しい転校生」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100718/p1)とは矛盾が生じてしまうが。12話については美少女宇宙人による擬態(?)が巧妙であったと好意的に解釈すべきところか?


 矢的は彼の悩みの真の原因に頓着したそれではなく、理科の授業の時間に生徒の能力は「因果関係が逆である。風が吹きそうなことを肌で察知して、それで口笛を吹くのだ」(大意)だとも科学的に正確に喝破してみせた。


 しかし、たとえ「正論」であっても、そんな表層的な科学的議論で少年の「苦悩」が癒せるわけでもない。屈辱に満ちた精神のバランスを取るための裏返しとしての「プライド」。たとえ虚構であっても心の拠りどころとせざるをえない「自分が宇宙人である!」といった「優越感」や「特権意識」を安易に奪ってしまっても、むしろ最後の踏ん張りどころを破壊してしまいかねない残酷な行為にすらなりうる。「自分のことをわかってくれない」とばかりに大島少年は沈みこんでしまうのだ。


 してみると、矢的を完璧な人格者・理想の教師としてではなく、第2期ウルトラシリーズの主人公青年たちのように、あくまで未熟で欠点もある発展途上の人格を持った青年として描いていたということだろう。このへんのひと捻りを加えたディスコミュニケーション作劇は、大人になってからの再視聴だと感心させられる。と同時に、良くも悪くも小学校中高学年以上であればともかく、小さな子供たちには理解ができない高度な描写でもあるだろう。もちろん、ワンシーンだけなのだから、少しくらいならばこういった描写が子供向けドラマにもあっては良いとも思うのだ。



 ラスト、ケガをした明男のために桜ヶ岡中学1年E組のレギュラー生徒たちは輸血に協力する。現在のウルトラシリーズ作品であれば、中学生の採血は許されていないことを考慮して、このようなことはしないだろうだけに(16歳以上から採血が可能になるのだ)、気に掛かる視聴者もいるかもしれない(皆が同じ血液型というのも都合がよすぎるし)。しかし、宇宙人ゆえに血液を提供できない矢的の二重の苦悩をいかすためにも、明男の変化をうながす理由のひとつとしても、この程度の描写については目くじらを立てなくともよいのではなかろうか?


 矢的は本話では二度目の変身を果たして、『80』という作品の根底には1980年前後の特撮マニア間では盛大を極めていた「第2期ウルトラシリーズへの批判」を持ちつつも、と同時に「ウルトラマンタロウのリライブ光線」(死者をも復活させる再生光線)などといった描写が象徴するように、「第2期ウルトラシリーズからの影響」を逃れきれない製作姿勢の象徴だとも思われる、ある意味では安直な「メディカルビーム」で、ウルトラマン80として重症となった明男の命を救ってみせている。


 ここでやめておけば、感動的だったと私見するのだが……。このあと矢的は、「明男が勉強やスポーツが苦手なこと、優秀な兄姉と比較してくる家族への現実逃避から、自分はみんなとは違う特殊能力を持った宇宙人なのだと思い込もうとしていた」と正確にハッキリと指摘するのだ。


 そこまで追いつめなくても本人ももう分かっていたことだろうし、視聴者も明男がエリート家庭のなかの非・優等生として苦しんでいることを知らされていたのだから、わざわざセリフで解説してもらわなくてもいいと思う。矢的がすべきは見守っていてやるか、(明男が望めばだが)これから明男がどうしていけば良いのかを考えて力添えをするか、明男に出世を要求してくる母親を説得するかだろう。


 しかし、明男くんは物の道理をわかった子なので、矢的の少しクドくて明男の面子(メンツ)をつぶしかねない説教をも、内心ではともかく大人の態度で不快な顔をせず明るく承諾してみせているのが救いだし、作品のラストに涼風も与えている。


 というわけで、ストーリー的には少し疑問も残るが、特撮ものとしてやヒーローものとしては見どころも多かった。


 明男の空想シーンで、夜間に明男がUFOに向かって歩いていくシーンがある。70年代末期に革新的な特撮技術の向上を遂げて、全世界にインパクトを与えた『未知との遭遇』と『スター・ウォーズ』(77年・日本公開78年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200105/p1)などの海外作品のマネだとはいえ、このシーンはハイセンスなデザインの巨大UFOを美しい照明で照らした見事な特撮映像に仕上がっていた。


 個人的な嗜好でもあろうが、本話に登場した「UFO(ユーフォー)怪獣アブドラールス」は正統派の恐竜型怪獣とは程遠い、不定形な形態と電飾にいろどられた異色なデザインで、本放送当時から好きな怪獣だ。


 3話「泣くな初恋怪獣」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100516/p1)以来ひさしぶり(?)に、ウルトラマン80は腹部から発するバックルビームを使用してアブドラールスを倒した!


 突き出した両腕の先端から放つリング状のウルトラスパイラルビームでUFOも撃破!


 さらに、前述の救命行動用のメディカルビーム! と特殊能力を使いまくってもいる。


 ウルトラブレスレットなどの携帯兵器を持たない80にとってバックルビーム(およびバックル)は、当時としては80とも似たデザインのようにも思えていた初代ウルトラマンとを、デザイン・能力ともに隔(へだ)てている独自の要素として、個人的には印象的である。バックルビームの使用を見ると、その回の敵怪獣が特別の相手だと感じてしまうのは筆者だけだろうか?



◎アブドラールスの名称は、当時の人気悪役プロレスラー、アブドラ・ザ・ブッチャーから引用したものかと推測される。


◎大島明男くんの名前の漢字表記は、矢的が採点するテストの答案用紙のアップ映像で確認できる。


◎柔道で女子生徒に背負い投げされて一本取られてしまう大島明男くん! という1970年代までには考えられないような情けない男子生徒の姿も描かれている。それを見ていたレギュラーの桜ケ岡中学事務員・ノンちゃん――演じる白坂紀子は当時の関東ローカル夕方の子供向け情報番組『夕やけロンちゃん』のサブ司会で、のちに俳優・志垣太郎(しがき・たろう)夫人!――いわく、


 「戦後35年の民主教育は、女の子が男の子を一本背負いで投げ飛ばす成果を上げたのです!」(笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2000年号』(99年12月26日発行)『ウルトラマン80』大特集・合評8「ウルトラマン80全話評」より分載抜粋)


ウルトラマン80』第6話「星から来た少年」 ~合評2

(文・黒鮫建武隊)
(1999年執筆)


 異色の第5話「まぼろしの街」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100530/p1)のあとは、再び教師編本来の路線に戻る。


 現実逃避する生徒・大島明男を描く話だが、その現実逃避が具体的には「自分(明男)は宇宙人なんだ」という形で描かれている点が興味をそそる。


 一般の学園ドラマならば


 「こいつ、バカじゃないの」


 で終わってしまうところだが、この番組はウルトラマンシリーズ。


 実際にUFOが飛来、UGMがその存在を確認している状況が併行して描かれているため、妙なリアリティを感じさせ得ている。なおかつ口笛で風を呼ぶ、という明男の特殊能力(?)までが披露される念の入れようだ。自分を宇宙人だと思い込みたくなる明男の心情がより理解しやすくなる上、視聴者が「本当に宇宙人かも」と一瞬疑いたくなる効果まであげている。


 こうした工夫により、怪獣事件と生徒の描写の融合、という教師編の話作りのネックも上手にクリアーされた。


 それどころか、


 「怪獣をやっつけて!」


 という明男の叫びに応えてエイティが劣勢を跳ね返す、というヒーローものの十八番シーンの興奮が、ひときわ活かされる好結果を生んだのである。


 この台詞(セリフ)は、一度は怪獣アブドラールスを自分の仲間とみた明男が、それを自ら否定したこと(現実逃避からの脱却)を意味する。それが、エイティこと矢的先生に伝わったからこその形勢逆転なのだ。


 ハカセたちの輸血で助かった明男が、だから


 「僕は確かに地球人だ」


 と語るエピローグも忘れ難い。これが加わったことで、悩む場面が長い割りにアッサリ解消してしまった、という2話「先生の秘密」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100507/p1)や4話「大空より愛をこめて」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100523/p1)で見られた不満も残らずに済んだ。


 明男の心の弱さ、それに真摯に向かい合う猛の姿勢、といった学園ドラマの要素がきちんと描かれている一方で、UFO事件を中心とした活劇性・娯楽性も適度に盛り込まれ、学校編の中でもバランスが抜群に良い。


 特撮も快調。アブドラールスの住宅街破壊やエイティの光線技の乱舞がナイトシーンに映えて美しい。SF映画『未知との遭遇』の宣伝ポスター(夜の闇の中の荒野の舗装道路が地平線の小高い丘の上に向かう、遠近感を強調した長大な一本道)を意識した映像のお遊びもあり、満足度の高いエピソードである。



(重箱のスミ)


・地球人の台詞中(ナレーションを除く)で「ウルトラマン80(エイティ)」という名称が使用されるのは、今回から。これまでは単に「ウルトラマン」と呼ぶのが通例だった。
ハラダたちが電話に出て「(UFOによる)危害は無いと思われる」旨(むね)を言う場面があるが、既にオーストラリアのメルボルンの街を破壊しているUFOがどうして安全なんだ?(笑)
・エイティが二回変身する、初めてのエピソード。二回目の変身に際しては、はじめからカラータイマーが点滅している。夜間の戦闘後、太陽エネルギーを補給していない状態で再変身したからか。なかなか細かい演出だ。単なる撮影の都合かも知れないが。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2000年号』(99年12月26日発行)『ウルトラマン80』大特集・合評1「ウルトラマン80教師編・各話評」より分載抜粋)


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