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魔進戦隊キラメイジャー最終回・総括・後半評 ~「仲間」を賞揚しつつも「孤高」「変わらないこと」をも肯定!

『魔進戦隊キラメイジャー』序盤総括 ~王道戦隊のようでも異端の文化系レッドが敵幹部とも因縁!
『魔進戦隊キラメイジャー』中盤総括 ~キラメイシルバー&ヨドンナ登場、オラディン王復活! 安定のクオリティー!
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 映画『機界戦隊ゼンカイジャーVSキラメイジャーVSセンパイジャー』(22年)が公開記念! とカコつけて……。『魔進戦隊キラメイジャー』(20年)後半評をアップ!


『魔進戦隊キラメイジャー』最終回・総括・後半評 ~「仲間」を賞揚しつつも「孤高」「変わらないこと」をも肯定!

(文・久保達也)
(2021年3月25日脱稿)

*「本当の大ピンチ」が何度も訪れやがった!(笑)


 全世界を席巻した新型コロナウィルスの影響で製作の中断や新作の放映休止を余儀なくされた『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年)が、当初の予定どおりに2021年2月28日に全45話の放映を終了した。
 『仮面ライダーゼロワン』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200921/p1)に『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)、そして『キラメイジャー』と2020年度は個人的には特撮テレビシリーズが近年稀(まれ)に見る大豊作だったと思えるだけに、それらがコロナの悪影響で散々な目にあわされた件は残念でならない。


 5週にもおよんだ休止期間後にエピソード11『時がクルリと』で新作の放映を再開後、その翌週のエピソード12『ワンダードリルの快男児』では「6番目の新戦士」・クリスタリア宝路(くりすたりあ・たかみち)=キラメイシルバーが初登場した。
 そして、エピソード25『可愛いあの巫女(かわいいあのみこ)』では敵組織ヨドン軍の淀んだマドンナで一人称を「ボク」と呼ぶ、ヨドン皇帝の秘書官・ヨドンナが新キャラとして加わった。


 さらに、エピソード29『まぼろしのアタマルド』ではテレビシリーズの前日譚(ぜんじつたん)として製作された映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200322/p1)にて、ヨドン軍の侵攻で滅ぼされた宝石のように美しい国・クリスタリアの国王で、母国を裏切った実の弟・ガルザに殺害されたと思われていたオラディン王が「空色の不死鳥」=魔進オラディンとして新生し、黄金の鳥型の輸送機・魔進ハコブーとの合体で新巨大ロボ・グレイトフルフェニックスと化す!
――『エピソードZERO』はテレビシリース第1話が先にありきで、後付けでの話ではあっても、実質的には「第1話」といってよい――


 80年代までの1話完結形式のスーパー戦隊シリーズとはまるで異なり、21世紀以降のスーパー戦隊シリーズは小出しに新キャラ・新メカ・イベント編を投入していき、目先の変化で飽きさせない手法は、『キラメイジャー』でもしっかりと継承されていた。


 大理石でできたような頭をしたクリスタリア人と人間が共存する理想郷であり、別の時空にある聖地・アタマルド。その地にあった奇跡の宝石・ミラクルストーンに意識を転生することでオラディン王は復活! 以降はキラメイジャーとの共闘も可能となったのだ。
 エピソード30『誇り高き超戦士』では、主人公の男子高校生・熱田充瑠(あつた・じゅうる)=キラメイレッドの相棒であるレッドキラメイストーン=魔進ファイヤが、


「下々(しもじも)のオレたちが、気軽に王さま呼べるワケないだろ!」


と主張したことから、充瑠は「本当の大ピンチ」になったときくらいにしか王さまを呼ばないなどと返していた。
 だが、実際にはエピソード30以降、充瑠はほぼ毎回、オラディン王を呼んでいた(笑)。


 ただ、こういった事態に説得力・必然性を与えるために、『キラメイジャー』の後半では終盤に至るまで、キラメイジャーをほぼ毎回「本当の大ピンチ」に陥(おちい)らせる作劇がなされていたのだ。


*ニュージェネレーション・ウルトラマンシリーズの田口清隆監督までもが参戦!


 中でも白眉(はくび)だったのは、エピソード32『小夜(さよ)に首ったけ』~エピソード33『巨獣パニック大激突!』の前後編だろう。


ガルザ「このオレの最大の作戦が幕をあけるのだ!」


 この前後編では、女幹部・ヨドンナの人質にとられた大治小夜(おおはる・さよ)=キラメイピンクの救出、人体に有害なヨドミウムを拡散する巨大な種子の発芽を阻止! さらに、都心のビル街で暴れ回る3大邪面獣(!)との決闘! という2大任務が並行して課せられたキラメイジャーの「本当の大ピンチ」が存分に描かれた豪華編だった。


 特撮マニアならば注目せずにはいられなかったことは、この前後編のメガホンをとったのが、自主映画監督上がりで『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)で登板したかと思えば、いきなり翌年度の『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)のメイン監督に大抜擢されて、次作『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)でもメイン監督を連投、先述した同年度の『ウルトラマンZ』のメイン監督も務めている田口清隆(たぐち・きよたか)監督だったのだ!
――『ウルトラマンZ』最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)の撮影終了後の登板だったと思われる――


 ウルトラシリーズではメイン監督に昇格できたからか、多少の予算が増量されたのだろうが、近年の田口監督の特撮演出では、昭和の第2期ウルトラシリーズ並みに大量のエキストラを動員して避難民を演じさせ、そのすぐ背後に巨大怪獣をデジタル合成したり、防衛組織の隊員vs宇宙人などの等身大キャラが戦う背景にウルトラマンvs巨大怪獣をデジタル合成してひとつの絵にしてしまう、といった特撮演出が頭に思い浮かべた人は多かったことだろう。


 2013年以降のニュージェネレーションウルトラマンシリーズでは低予算ゆえに監督が本編と特撮を兼任するのが通例となっている。スーパー戦隊シリーズでは伝統的にメカ・巨大ロボ・新メカ・追加ロボの初登場回などは佛田洋(ぶつだ・ひろし)特撮監督が率いる特撮研究所が明らかに担当しているが、それ以外の回は本編班が担当しているようだ。
 本話では特撮を田口監督が担当したのか否かは、筆者の乏しい調査能力では正確なウラは取れなかったのだが、ウルトラシリーズでの氏の担当回のように実景とのデジタル合成を熟知した感じの見事なカットが連発されていたし、それらは佛田監督のカラーといった感じではなかったので、本話の巨大特撮も田口監督が担当したものだと推測される。


 エピソード32ラストでの、


・都心のビル街の実景を俯瞰(ふかん)した絵の中に暴れる3大巨大邪面獣を合成!
・ガルザが操縦する蒸気機関車型メカ=スモッグジョーキーが変型した恐竜メカも含めた4大怪獣vsキラメイジン!
・ギガントドリラー・キングエクスプレスザビューン・グレイトフルフェニックスの4大巨大ロボの大決戦を、カメラが移動しながら真下からとらえる!


などといった特撮カットも、明らかにウルトラシリーズにおける田口監督の作風にかぎりなく近いものだ。


 圧巻だったのは、


・都心の広場で展開されたキラメイレッド&キラメイイエローvs戦闘員・ベチャットの大軍勢による等身大バトル!
・その背景に映される実景の高層ビルとの間に埋めこむようなかたちで3大巨大ロボvs3大巨大邪面獣の巨大バトル!


 そして、それらを描くのみならず、


・ヨロイ武者型の邪面獣センゴクバスラの手から落ちた巨大な刀が、実景の広場に突き刺さる!
・戦車型の邪面獣タンクリガニーの発砲で、地上のベチャットが炎を上げて吹っ飛ぶ!


 など、実に臨場感・リアル感にあふれる演出がなされていた場面だ!


 太陽の縁(ふち)から立ち昇る赤い炎=プロミネンスを背景に、「グレイトフルプロミネンス!」と新巨大ロボ・グレイトフルフェニックスが3大邪面獣を一気にブッた斬る描写も最高にカッコよかった。
 そのグレイトフルフェニックスの着ぐるみをワイヤーで宙に浮かせたままで、オープンセットを大量の火薬で爆破させる演出に至っては、もはや正気の沙汰ではない(笑)。


 華麗なる大逆転劇が「ご都合主義」だと思われないように、オラディン王が宝石の中に意識を飛ばすことが可能だとの充分な伏線=云い訳(笑)を張ったうえで、通常は等身大のキラメイレッドが使っている弓矢状の武器・キラフルゴーアローにオラディン王が憑依(ひょうい)して巨大化を果たして(!)、それを巨大ロボたちが組みあって発射してみせる! など、パターン破りのサプライズも見せてくれた!


 やはり「特撮ジャンル」や「ヒーローもの」の最大の魅力とはこういったことに尽きるのだ。
 「テーマ」や「ドラマ」などが不要ということではないのだが、こうした特撮戦闘アクションものは、クライマックスのビジュアルや戦闘の見せ場を最大限に盛り上げるための、いわば「ドラマ」や「テーマ」は助走台・手段なのであって、目的ではないのである。この前後編は多くの特撮マニア諸氏にとっても、『キラメイジャー』の「神回(かみ・かい)」となりえたであろう。


*コロナに消された『キラメイジャー』の「クリスマス」!(汗)


 例年のスーパー戦隊シリーズでは第3クール早々に新合体ロボを登場させるために描かれる前後編にこのエピソード32~33は該当している。
 ただしそれとは別に、通常ならば12月のクリスマス商戦たけなわの時期にも巨大メカ戦を中心にした前後編が製作されることが、21世紀以降のスーパー戦隊では恒例(こうれい)だったものだ。


 なかでも、


・『侍戦隊シンケンジャー』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090712/p1)第四十二幕『二百年野望(にひゃくねんのやぼう)』~第四十三幕『最後一太刀(さいごのひとたち)』
・『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)Mission(ミッション)43『決意のクリスマス』~44『聖夜・使命果たすとき』では、敵の巨大ロボ・メガゾードが一気に10機(!)も襲撃!
・『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)ブレイブ41『ヤナサンタ! デーボスせかいけっせん』~42『ワンダホー! せいぎのクリスマス』では、敵の首領・デーボスの巨大なクローン怪獣が世界各地にいっせいに現れる!


といった、東映スタッフ間でも「巨大戦の達人」と評されてきた竹本昇(たけもと・のぼる)監督の作品群が、戦隊マニア諸氏にも強く印象に残っていることだろう。


 だが、『キラメイジャー』のエピソード32~33は、コロナによる5週の放映休止さえなければ本来なら2020年10月11日&18日あたりに放映されるハズだったのだろうが、実際には11月22日~29日となり、先述したクリスマス商戦期の玩具販促用前後編としての役割も兼任することとなったようだ。


 クリスマス直前に放映されたエピソード36『RAP【ラップ】』では、例年のようにクリスマスムードに染まる街並みの描写や、メンバーのサンタやトナカイなどのコスプレ(笑)は描かれなかったが、これもコロナ再拡大による撮影休止や世間での大事件・大事故などによる緊急中継などで放映延期が発生した場合も考慮して、露骨な季節ネタを避けるためにクリスタリアのクリスマスにあたる「クリスタス」という題材に代替にしたのだとも思われる。
――ジャンル作品では似たような例として、往年の『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)においても、ウルトラ兄弟の父でもあるウルトラの父の客演回を過去シリーズでの客演回を踏襲してクリスマス・ネタのストーリーにすることが検討されたものの、全国同時ネットでの放映ではなかったために、子供たちが虚構作品だと気づいて幻滅してしまうことを配慮して、クリスマス・ネタが避けられたということもあった――



 新年一発目のエピソード38『叔父(おじ)の月を見ている』が平和なお正月の真っ最中! といったネタではなくて、「お年賀のタオルの余り」のみ(笑)だったこともまたしかりだ。


 先述した昭和の第2期ウルトラマンシリーズのように、四季折々の日本の風物を点描するスーパー戦隊ならではのエピソードすらも、コロナの影響であまり見られなくなったのはたしかに残念だった。
 だが、近年のスーパー戦隊シリーズで描かれてきた、超豪華な一大特撮スペクタクル巨編こと「クリスマス前後編」(笑)が、『キラメイジャー』では割愛(かつあい)されたことこそが、「特撮」マニアとしては最も残念なことだった。


*敵幹部ガルザばかりではない! もうひとつの「因縁」バトル!


 先述したエピソード33では、自身が倒したオラディン王が新たな姿で復活したことに対する憎しみを幾日にもわたってたぎらせつづけて、邪悪なる魂=ジャメンタルをパワーアップしたなどと叫びながら、ガルザはスカイキラメイストーン状態のオラディン王とひたすら光線をブツけ合う!
 こういったキャラクター間の因縁や私怨を活かしたストーリーに象徴されるように、『キラメイジャー』では実の兄・オラディン王や甥(おい)にあたる宝路、そしてオラディン王と考えや言動、たとえばシリーズ序盤で、


「人を助けるのに理由がいるの?」


と云った充瑠に、ガルザがおもわずかつてのオラディン王が口にした


「民(たみ)を助けるのに理由がいるかね?」


といった発言を重ねてしまったほどに酷似する充瑠に対しても憎悪を燃やすガルザの、そして地球・クリスタリア・ヨドン軍の3陣営にまたがった因縁(いんねん)を強調することで、キラメイジャーを毎回のように「本当の大ピンチ」へと至らせる効果を上げていた。


 それらについては後述したく思うが、これらの「因縁」を活かしたバトルは、こうした作品の大構造だけでなく、各話単位のミクロなストーリーでも披露されている。


・先述したエピソード25にて、当初は巫女の姿をしていたヨドンナに射水為朝(いみず・ためとも)=キラメイイエローがひとめぼれをするも、為朝はヨドンナに散々な目にあわされる!
・つづくエピソード26『アローな武器にしてくれ』では、為朝=キラメイイエローがヨドンナに逆転勝利する!
・さらに、エピソード34『青と黄の熱情』では、ヨドンナが為朝に逆襲を仕掛けてくる!


 こういった展開などはその典型例だろう。


 ここでヨドンナが、エピソード21『釣れ、ときどき達人』~22『覚悟はいいか そこの魔女』に登場した「淀(よど)みの海の魔女」でオラディン王の妻・マバユイネ王妃(おうひ)にかつて呪いをかけて砂に変えてしまった(!)ヌマージョの「邪面」を、改めて武器としても使った作劇も、過去の「因縁」までをも盛り込んだバトルとして実に効果的であった。


 エピソード26では、為朝が素晴らしい「仲間」がいたから勝てた! ということにしていた。
 しかしそれならば、逆に云うと「仲間」がいなければ君=為朝は勝てないのだ! として、作戦を打ってくるのだ!


 ある道義的なテーマをアンチテーゼによって揺さぶって相対化もしてみせようという論理的な作劇術! しかして、それをあくまでもアクション・攻防劇の中に織り込むことによって、決してシメっぽくも重たくもしないのだ!


 「仲間」である為朝のことをカバうのだろうと行動を予測されてしまった押切時雨(おしきり・しぐる)=キラメイブルーに、ヨドンナはヌマージョの邪面から毒液を浴びせかけた!


 しかもそればかりではない! 先述したエピソード21の回想でも語られたように、オラディン王のヌマージュ討伐の際に毒を浴びせられた経緯がある、サメと特急列車の特性を兼ね備えた魔進ザビューンに、ガルザは操縦する魔進ジョーキーを強引に連結させて乗っ取ったあげくに合体ロボ・ジャアク(邪悪)キングエクスプレスを誕生させて、


「憎きオラディンに、トドメと行こう!」


と、新巨大ロボ・グレイトフルフェニックスにトドメを刺そうとするのだ!


 ラスト近くでは、ヨドンナが一瞬、ヨドン皇帝のシルエット姿となったり、充瑠が、


「頭の中に、声が聞こえた……」


として皇帝のイラストを描く場面もあるだけに、エピソード32~33につづいて、早くも「最終決戦」の様相を呈(てい)していた感のあったこのエピソード34『青と黄の熱情』。それも正義側・悪側の双方にまたがったさまざまな「因縁」を複雑に交錯させたからこその賜物(たまもの)なのだろう。


 そして、キラメイジャーを早くも再度の「本当の大ピンチ」(笑)にさせたのは、華麗なる逆転勝利へと至った為朝と時雨のキャラをさらに掘り下げ、そのカッコよさを印象強く描くためでもあったのだ!



 たとえば、エピソード30冒頭での速見瀬奈(はやみ・せな)=キラメイグリーンの「どこかに7番目の新戦士いないかな?」という疑問に対して、「そんな都合よく行くか?」と云い放った時雨の表情は、クールというよりかはあきらめの境地に達したかのようなポ~ッ(汗)とした表情であった。
 これは視聴者がもはや序盤で描かれたようなクールな時雨ではなく、「ネタキャラ要員」としての時雨を望んでいると見越した確信犯的な演技&演出だったのではなかろうか?(笑)


 ただ、ヌマージョの毒によって終始、顔面が蒼白(そうはく)になりながらも、決して戦列を離脱しようとはしなかったエピソード34『青と黄の熱情』における時雨の勇姿。
 それは時雨をシリーズ早々に「ネタキャラ」にしてしまったエピソード3『マンリキ野郎! 御意見無用』でも、ギャグ的な演出ではありながらも仲間に決して弱みを見せようとはしなかった時雨をきちんと踏襲した描写でもあったとして、感慨をもよおした視聴者も多かったのではなかろうか?


 為朝にしても副リーダー・作戦参謀(さくせん・さんぼう)としてイエローに変身してのバトルの最中にも矢継ぎ早に的確な指示をメンバーに与えつづけて、その華麗な連携攻撃から逆転勝利へとつなげるさまが再三、描かれてきた。
 金髪で「オイッ!」とツッコむ姿が目立っている、一見ヤンキーっぽいキャラの為朝が、実は知的戦略を得意とし、何よりもメンバー間のチームプレーを重要視しているのは視聴者側も充分に把握していることだろう。


「青いヤツ(時雨)はきっとカバうと思ったからね。仲間を殺(や)れば君(為朝)は勝てない。自分が殺られるより……、この方が苦痛だろ?」


 ヨドンナは勝ち誇ったように舌を出して、為朝にそう語ってみせたが、ヨドンナでなくとも視聴者がスカしたカッコつけたがりのイケメンキャラでもある時雨と為朝の行動や心理を事前に察知してしまえるほどに、『キラメイジャー』はキャラが立ちまくっていた。


時雨「おまえはオレを気にしすぎだ!」
為朝「おまえはオレを気にしすぎだ!」


 このセリフを時雨と為朝が同時(!)に放つ描写が、逆説的に両者がビミョーに張り合いつつも、実はふたりの心がイヤ~ンなかたちでも通じ合っていることを示唆していて絶妙ですらあるのだ(笑)。


 「仲間」に対する想いが強すぎることが逆にキラメイジャーに「本当の大ピンチ」をもたらすと確信したヨドンナによる「頭脳戦」。それは先述した「3大邪面獣、総進撃!」に比べればたしかに地味ではあるものの、戦略としては極めて有効な手法ではあるのだ。


 だが、「目には目を、頭には頭を」とばかりに為朝が緻密な作戦によって「頭脳戦」でヨドンナに逆転勝利をおさめるさまは、故・上原正三(うえはら・しょうぞう)先生がメインライターを務めて、氏が手掛けてきた昭和のウルトラシリーズなどとは異なり、敵味方のクールで乾いた「頭脳戦」「スパイ戦」「ダマし合い」による攻防を存分に描いていた初期スーパー戦隊シリーズ秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)~『太陽戦隊サンバルカン』(81年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120206/p1)あたりをも彷彿(ほうふつ)とさせるものがあった!


 しかも、冒頭の時雨と為朝がビリヤードに興じる描写や、「おまえもやってみるか?」と誘われた、その手の遊びには慣れていない充瑠の


「イケてるふたりといっしょにしないでよ!」(笑)


などといった、単なる各キャラの性格の描き分けかと思われていたシーンも、伏線として充分に機能していたのだ。


 充瑠が初挑戦したビリヤードでまぐれで繰り出した「ミラクル神ショット!」を応用した戦法。
 それによって、まだ体調が充分に回復していないキラメイブルー=時雨が横になったままで(笑)、キラメイイエロー=為朝が発射した弾丸をキラメイシールドでハジき返してみせる不意打ちが、ヨドンナに命中する!
 これにより、ヌマージョの毒を解毒するには、毒を浴びた人間がヌマージョの邪面を破壊しなればならないというお題目もギリギリでクリアしたのだった(笑)。


 そのヨドンナの周囲でド派手に炎が吹き上がるなど、決して「頭脳戦」だけにとどまることなく、見た目も実にあざやかでヒロイックな描写となっていた。
 まぁ、ヨドンナを演じる桃月なしこチャンの周囲で平気でナパームを発火させてしまうスタッフたちは、鬼としか云いようがないのだが(爆)。


「まかせろ。オレとタメ(為朝)はイケてるふたりだぜ!」


 先の充瑠のセリフとの係り結びとになるかたちで、そう叫んでみせた時雨はヨドンナに勝利するや、


「これがイケてるオレたち!」


などとキラメイブルーの姿でキラメイイエロー=為朝とお互いの拳(こぶし)をぶつけあう!――かの坂本浩一監督などもよく用いている描写だ――


 スーツアクターのアクロバティックなアクションや合体ロボがCGで繰り出す必殺ワザはもちろんだが、すでに確立したキャラを最大限に活かして描かれる、こうしたカッコよさにも注目すべきだろう。


*カナエマストーンや「魔性の石」をめぐる因縁からもドラマを構築!


 さて、宝路がエピソード12で登場して以降、


・エピソード17『洋館の奇石』で「破壊」を司(つかさど)るデストリア
・エピソード21で「時間逆行」の力を持つリバーシ
・エピソード25で「パワーアップ能力」を持つエネルギア


など、第2クールでは全4種を集めるとなんでも願いがかなうとされている勾玉(まがたま)状の秘宝・カナエマストーン(叶えまストーン・笑)を、キラメイシルバー=宝路が中心となってキラメイジャーが集めていた。
 そして、エピソード38ではその残るひとつであり、人々の深層意識に「幻覚を見せる」魔性の石・イリュージョアがようやく登場した。


 エピソード35『マブシーナ放浪(ほうろう)記』では、クリスタリアの酒・メロロフモフモと同じ成分からできている日本茶を飲んで完全に酔っぱらった(爆)マブシーナ姫が宝路に、


「4つ目のカナエマストーンは、どぉ~したんですかぁぁぁ~~~!」


などとカラんでいた。


 普段の「姫」としての凛(りん)とした口調や立ち居振る舞いは完全にどこかに行ってしまい、ヘベレケになって敵味方を問わずに相手に頭突きをかましているほどのマブシーナ姫の狂乱ぶりは、声を務める人気アイドル声優水瀬いのり(みなせ・いのり)と、スーツを担当する野川瑞穂(のがわ・みずほ)の名演技の賜物だ。


 ただ、第3クールに入って以降、残るひとつとなったカナエマストーンをいつまで経っても宝路が捜そうとしないことには、マブシーナ姫ではなくともツッコミを入れた視聴者は多かったことだろう(笑)。


 だが、イリュージョアを「魔性の石」とするのみで具体的にはどんな力を秘めているのかを明かさない。しかし、イリュージョアが発掘された荒れ地に突き出ているミカヅキ型の岩を、裏切る前の叔父・ガルザだと思いこんだ宝路が、クリスタリアの王室でガルザと茶会を開く幻想を見てしまう描写によって、視聴者にその「魔性の石」における「魔性」とは何か? を示してみせる演出は実に秀逸(しゅういつ)だった。


 また、宝路とガルザがグラジュエルなるクリスタリアに伝わる剣術の再試合の約束を交わす回想の背景では、滝が流れる断崖が映されている。これは埼玉県川口市にある川口市立グリーンセンターの広場前にある大噴水であり、そのロケ地の選定も世界観の構築におおいに貢献していた。


 まだクリスタリアを裏切る前のガルザからのグラジュエル(剣術試合)の申し入れを、かつて宝路は「自分を認めてもらうチャンス」として受け入れた。だが、実はその試合の最中にガルザが宝路を殺そうとしていた事実が明かされる!
 このことで、ガルザは実際にクリスタリアを侵攻する前、つまり映画『エピソードZERO』で描かれた発端となる事件よりも以前から、クリスタリアを裏切ろうと画策していた「前日譚」がこのエピソード38では描かれたのだ!


 これは、さらに最終展開にて明かされるガルザの出自の伏線ともなりえている。やはり『キラメイジャー』の主軸となるタテ糸はしっかりとしていたのであり、もちろんすべてが最初から計算され尽くして作劇されていたということではなく、後付け設定も多々あったのだろうけど、本作のシリーズ構成には破綻(はたん)は見られなかったと解釈すべきだろう。


 ガルザがグラジュエル(剣術試合)で宝路を殺そうとしていた事実に当の宝路はまったく気づかずに、これをいち早く察知したオラディン王が割って入ることでそれは「無効試合」とされていたのだ。
 ガルザの陰謀からオラディン王は宝路を救ってくれていたのにもかかわらず、その真相をずっと知らずにいた宝路の中では、むしろそれがオラディン王=父に対する小さな「不満」として長年にわたってくすぶりつづけていたという親子のスレ違いは、宝路が幻想を見るに至った動機としては実に絶妙である。


「おまえが命拾いした、あのグラジュエルのことか?」


 このガルザのセリフで宝路が「あのとき」のオラディン王が真相を見抜いていたこととガルザの偽計にようやく気づかされる作劇的技巧は、長年の「因縁バトル」の決着としてもあまりにドラマチックにできている!


 宝路がガルザとのグラジュエル(剣術試合)の「再戦」を果たすために、自身のキラエイシルバーのドリル状の武器・シャイニーブレイカーでは「剣での勝負」にならないからと、時雨=キラメイブルーの専用剣・キラメイソードと交換する描写も、サブテーマとして仲間であるキラメイジャーたちと持つに至った友情や信頼も感じられて実にカッコいい!
 「あのとき」のグラジュエルでは、ガルザは背中合わせの状態から「1・2・3」と歩を進めていき、そこではじめて剣を交えるというルールを破って、「2」でいきなり宝路を斬りつけようとしてオラディン王に阻止されていた――序盤から終盤に至るまで、カッコいい敵キャラとしての印象が強かったガルザだが、やはり倒してもよい悪党にするためにか卑劣な一面も持っていたとするのだ!――。


「同じ手は通用しない!!」


 今回もガルザが「2」の歩の段階で斬りつけようとしてきたのを察知した宝路は、古代中国の故事「宋襄の仁(そうじょうのじん)」のようにルールを愚直なまでに形式主義的・官僚主義的に守ったがために敗北してしまった! ……などといった愚かしい事態などには陥らずに(笑)、ズル賢い相手がそう来るのであればコチラも! ……とばかりに融通無碍(ゆうづうむげ)に機転を利かして「3」の歩を踏む前に方針転換! その反則攻撃をも華麗にかわして、ガルザが武器としている先端が「三日月型」のカギ爪状になっている剣・クラッシュエンドを逆に奪取してみせて、グラジュエルにも勝利する!


 イリュージョアが発掘された岩が「三日月型」だったのは、このシーンの伏線的な象徴としての意味合いからだったのだ。ちなみに、ガルザが頭部に付けた邪面もまぎれもない「三日月型」だった。
 宝路の「因縁バトル」、そしてその「成長」を描いた作品として本作は出色の出来だった。


*元気ヒロインの意外な多面性! 転じて、ラスボスの「多面性」!(汗)


 エピソード39『皇帝はスナイパー』では、ヨドン皇帝の恐るべき実態が明らかにされた。
 秘書官なのに皇帝には会ったことがないというヨドンナのことをガルザが不審がったり、ガルザとは対照的にヨドン軍の幹部でもコミカル寄りのキャラで作戦参謀のクランチュラが、ヨドンナに嫌がらせのように「皇帝」と呼びつづけるという描写があったが、それは半分正解だといってよかったのだ。


 王冠のような兜(かぶと)をかぶって、ヘドロのような淀んだ色の表情を観音開きで覆うように、顔の左右にそれぞれ別々の邪面を付けているヨドン皇帝。
 そののデザイン・造形は実にインパクトが高いものだ。そしてもちろん、その左右の邪面こそが皇帝の真実を象徴していたのだ。


 皇帝の顔の左側には舌を出して嘲笑(ちょうしょう)する青い邪面があった。これは、


「ココ、笑うところで合ってるかな?」


が口グセだったヨドンナの人格を示すものだ。


 そして、右側の複数のトゲがある赤鬼の邪面は皇帝のもうひとつの人格であり、このエピソード39にて闇のハンター・シャドンとして実体化を果たしたのだ。


 スーパー戦隊シリーズに登場する大首領といえば、「生まれながらにしての大悪党」というキャラが多く、敵の中堅幹部たちと比べるとその出自や背景はそれほど描かれてこなかったが、ヨドン皇帝がこのような存在として描かれたことには注目せずにはいられなかった。


 この手の子供向け特撮変身ヒーロー番組だけでなく、一般の大人向けの映画やテレビドラマや小説などでも、フィクションである以上はそこに登場する人物たちは、程度問題の差はあれども、ある程度までは「性格」が誇張・単純化されたものではある。それは性格設定がブレて首尾一貫しなくなってしまってもイケナイためだ。
 しかし、あまりにも固定的なテンプレ・一面的にすぎる描写であっては、それはそれで記号的でウソくさい感じが強くなってしまう。


 そこで、シリーズが中盤や後盤に至れば、ある登場人物の意外な側面を描写して、その人物像を膨らませたり、あるいはどんな人間にも多面性がある以上は、そこでリアリティーを醸し出すことで視聴者の共感や感情移入を喚起する手法もよくあるものではあるのだ。


 たしかに80年代までの特撮変身ヒーロー番組では、このような描写は少なかったかもしれない。しかし、近年ではスーパー戦隊シリーズにかぎらず仮面ライダーシリーズなども含めて、そこに登場するキャラたちがある程度の固定化された性格はありつつも、決して一面的にではなく意外な一面なども微量に織り混ぜることによって多面的に描写されるのが常識となっている。


 それらとはちょっと違ったものかもしれないが、エピソード37『せな1/5(5分の1)』なども、そのへんをねらった作品であった。
――同話のサブタイトルは、中年マニアはすぐにピンと来るだろうが、『週刊少年サンデー』連載で高橋留美子(たかはし・るみこ)原作の人気漫画『らんま1/2(2分の1)』(89年にテレビアニメ化・キティ・フィルム フジテレビ)が元ネタであり、それに近年の『週刊少年マガジン』連載の人気漫画『五等分の花嫁』(17年。19・21年にテレビアニメ化・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220329/p1)なども掛けているのだろう。ちなみに『らんま』は、金曜夕方に時間帯が変更後の『高速戦隊ターボレンジャー』(89年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191014/p1)~『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120220/p1)期におけるスーパー戦隊シリーズの強力なウラ番組でもあったのだ!(汗)――


 このエピソードでは、ヨドンナがいつもは邪面師やベチャットをシバいているムチによって、瀬奈を5人に分裂させてしまう!――メインターゲットである子供たちが混乱しないようにするためか、各人が右胸に1~5の番号をわかりやすく付けていた(笑)――


・瀬奈1号→アスリート
・瀬奈2号→ひたすらかわいい
・瀬奈3号→出来るOL(オーエル=オフィス・レディ)
・瀬奈4号→カンゲキ屋
・瀬奈5号→うしろむき(汗)


 1号から4号は、本作『キラメジャー』序盤から描かれてきた瀬奈の


・明るい
・前向き
・常に全力疾走


といったプラスイメージの人格だったのに対して、瀬奈5号だけは、これまでの『キラメイジャー』ではまったく見せたことのなかった、


・うしろむき


といった、瀬奈の知られざるもうひとつの属性を体現したキャラクターだったのだ。


 そんな自分には存在理由がない! などと、瀬奈5号は基地を飛び出していってしまう。


 そして、瀬奈5号の人格を失った瀬奈=キラメイグリーンは、巨大メカ戦に巻きこまれた親子が乗る車を放置して操縦するキングエクスプレスザビューンでひたすらに暴走!(爆) 間一髪のところで巨大ロボ・キラメイジンが親子の救出へと至ってしまう始末となっていた(汗)。


 本話のようなエモーショナルな回でも、たとえば、


・実景のビルの屋上で戦況を見つめるヨドンナを画面手前に配して、左奥でガルザが操縦するスモッグジョーキーが破壊したビルの破片がヨドンナをカスめるように画面右へと吹っ飛ぶ!
・これと入れ違いに、魔進ザビューンが画面右から左奥へと突撃していく立体感あふれる演出!
・親子の自動車を救うキラメイジンを運転席の主観でとらえた臨場感のある演出!


など、特撮ジャンル本来の「非日常的」な魅力がしっかりと描かれていたことにも言及しておこう。


 キラメイジャーになっていなければ、神奈川県の湘南(しょうなん)海岸が見えるレストランで働いていたかも? などと意外とシンミリとした抒情的なことを云ってみせている冒頭の瀬奈の発言が伏線となっていたように、湘南の海の荒波を見つめながら、元気娘の象徴でもあった後ろに結んでいたポニーテールをハズして黒髪を下ろしてみせる女の子らしい瀬奈を背後からスローモーションでとらえた演出は実に格調高さにあふれていた。


 そして、瀬奈が今まで前向きに突っ走ることができたのは、逆説的にあなた(5号)が常に瀬奈の心の片スミで最悪の事態を想定してブレーキをかけていたから安心して背中を任せることができていたからだ……といった趣旨の発言をして迎えに来た小夜からも、瀬奈5号は逃げ回ってしまって波打ち際で全身ズブ濡れとなった末に、すでに1号から4号の4人が合体を果たしていた瀬奈にしっかりと受けとめられる……


瀬名1~4号「おかえり」
瀬名5号「ただいま」


 90年代以降のスーパー戦隊シリーズ、そして平成仮面ライダーシリーズの大ベテランである田崎竜太監督による往年の青春学園ドラマ、あるいは近年の深夜アニメで流行している女性同士の恋愛を描いている「百合(ゆり)」モノ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191208/p1)をも彷彿とさせるような、実に抒情的な演出には感服させられた。


 それにしても、あるキャラクターの意外な一面を描くにしても、このエピソードは「子供番組」として視覚的に最もわかりやすい「5人もの瀬奈」といった、とても通俗的でコミカルなかたちで描いていたのだが(笑)、そもそもの本作主人公であるキラメイレッドこと充瑠自身が「瀬奈5号」のような人物だったし(笑)、ふつうの元気で健全な子供たちにはともかく「瀬奈5号」のような性格類型の子供にとっては、「希望の光」となりえたようなエピソードであったかもしれない。


 本編のドラマ性の高さとはやや異なる類いの魅力のものだが、


・ヨドンナと格闘を演じながら屋上からジャンプしたキラメイイエロー&キラメイピンクが実景のビルを背景に合成され、
・その手前に、瀬奈の「本当の大ピンチ」に颯爽(さっそう)と駆けつけた魔進オラディンと魔進ハコブーもCGで表現されて合成されるカット


なども、見逃せにできないアクション&特撮カットであった。


 このエピソードのラストで、ヨドンナがヨドン皇帝へと巨大化変身も果たしてみせることで、本話は単なる単発のゲストストーリーではなくメインストリームにもカラんだストーリーにも仕上がっている。
 これまで通信機と変身アイテムを兼ねていた左腕のヨドンチェンジャーで皇帝の指令を受けていたヨドンナだが、実はヨドン皇帝の別人格、ヨドン皇帝の分身であるらしい下位人格であることがエピソード39に先だって示唆(しさ)されたのだ。


 皇帝によって崩壊させられた都心のビル街を背景に、その光景をビルの屋上から呆然(ぼうぜん)と見つめるキラメイジャー。そこに青い不死鳥姿の魔進オラディンが舞い降りてくるラストカットは、視聴者に迫りくる最終決戦への予感を高めさせるには絶妙な演出であっただろう。


*キラメイジャーの危機を、マブシーナ姫の決意ドラマへとスライド!


 もっとも、シリーズ後半の半年間にわたってレギュラーキャラとして登場しつづけたヨドンナに対して、同じくヨドン皇帝のもうひとりの別人格であった敵幹部シャドンがエピソード39のたった1回こっきりの登場で終わったのは実に惜しい。ガルザやクランチュラとの幹部同士の群像劇なども観たかったところだ。まぁこのへんは例年よりも4話ほどトータル話数が少なくなってしまったことの影響だったのかもしれない。


「キラメイジャーのタマ(命)はワシが取ったる!」


 「始末屋」「闇のスナイパー」との異名を誇っている敵幹部シャドンが標的を狙撃するライフルには、瞳が縦長になっているワニの目のようなスコープが付いている(笑)。シャドンがかぶっているフードや両肩のトゲ状のパーツなどもワニの鱗(うろこ)をモチーフにしており、その統一感のあるデザインがまずはカッコいい!


 「命」を「タマ」、「おのれ」を「おどれ」と称したり、語尾に「じゃ」を付けて話すなど、標準語で上品に話しているヨドン皇帝がシャドンの赤い邪面を付けた途端に、「広島弁」になってしまう理由は不明だが(笑)、戦後の混乱期に広島県で起きた暴力団の抗争事件を題材にした東映の往年の大ヒットヤクザ映画『仁義なき戦い』(73年・東映)シリーズのイメージが「闇のスナイパー」として投影されているのだろう。
 なにせ、最終決戦4部作が開幕するエピソード42のサブタイトルまで、その『仁義なき戦い』まんまなのだから(爆)。


 ワニと広島ヤクザの合成怪人(笑)のワリには、幹部怪人シャドンはキラメイジャーを集結させるために当初はマブシーナ姫をねらったり、影の中に潜んで移動することで標的の隙(すき)をついて狙撃するなど、


「往生(おうじょう)せいや!」


が口グセながら(笑)、その戦法がまさに「頭脳戦」「スパイ戦」であることも彼の個性を出せていて、魅力的に映ったものだ。


 そして、そのシャドン独特の戦法を逆手にとってキラメイジャー側もあざやかな逆転勝利をおさめる! このへんは80年代中盤以降のスーパー戦隊シリーズではなく70~80年代初頭の古き良き時代のスーパー戦隊シリーズの香りもする、先述したエピソード34で描かれたヨドンナに対する逆転勝利の再現といってもよいだろう――初期戦隊シリーズは意匠はコミカルなのに、作劇的には実はドライだったりもするけれど(汗)――。


 ヨドンナ、そしてシャドンと、ヨドン皇帝の別人格に連続勝利したキラメイジャーならばヨドン皇帝に勝つのも必然なのだ! などと、最終決戦直前にスタッフが視聴者に対して高らかに宣言しているようにも思えてしまい、エピソード37のラストで魔進オラディンが皇帝に向けて放った、


「地球にはキラメイジャーがいる!!」


というセリフには、改めておおいなる説得力を感じずにはいられなかったものだ。


 このエピソードでも冒頭で「キシンジーセ」――「成人式」のことで、同語句の逆さ読み(笑)――のお祝いにと、宝路に宝石店に連れられたマブシーナ姫が放った「光」で店中の宝石が輝いてしまう描写を、さりげない伏線として機能させていたのは実に秀逸だった。
 宝路・小夜・時雨・瀬奈が次々に狙撃される!――といっても「死亡」するワケでは決してなく、子供向け番組にふさわしい、皇帝に捧げられる「泥団子(どろ・だんご)」と化すだけなのだが(笑)――


 そして、ついに充瑠に銃口を向けたシャドンが引き金を引こうとしたその瞬間……


「マブシーナ、光を放て!!」


 為朝のこの合図でマブシーナ姫が放ってみせた「光」で魔進たちの全身が輝いて、シャドンは目がくらんだばかりか潜伏のために用いる「影」がいっさいなくなり、「光」ばかりが満ちあふれた異空間へと封じこめられる!


 そして、すでにシャドンに狙撃されたと見せかけた為朝=キラメイイエローが放った「シューティングスタービリオン!」の不意打ちを食らって、シャドンは爆発四散した!
 その瞬間、ヨドン皇帝の顔の右側にあった赤い邪面が砕け散る描写が、シャドンが皇帝の別人格・分身であった事実を的確に示していたのだ。


 本格的な最終決戦を前にしたカタルシスにあふれた名編だった。しかし、このエピソードはキラメイジャーvsシャドンの緊迫感にあふれる攻防戦に点描されたマブシーナ姫の心理描写にも注目すべきだろう。


 自身が不用意に外出したことがキラメイジャーを「本当の大ピンチ」に至らせたなどと、マブシーナ姫は再三にわたって自責の念を口にしていた。ここに至るまでのマブシーナ姫は戦闘系のキャラクターではないので当然ではあるのだが、『キラメイジャー』の「真のヒロイン」として、ひたすらに「守られる存在」としてのみ存在していた。


 だが今回、自身の「光」がキラメイジャーを救ったばかりか、別人格とはいえヨドン皇帝に打ち勝つ(!)に至ったことで、マブシーナ姫がこれまでのような「守られる存在」からの脱皮・卒業を決意するまでに至った心の変遷(へんせん)が実にキメ細やかに描写されていたのだ。


 エピソードFINAL(ファイナル・最終回 第45話)のサブタイトル『君たちがいて輝いた』は、まさにマブシーナ姫のキラメイジャーへの想いを最大限に象徴したものだった。最終回でマブシーナ姫がカナエマストーンで再興したクリスタリアの女王となる決意をするに至った「動機」が描かれたエピソードとしても、このエピソード39は今後も語り草になると思えるのだ。


*主人公の身に起きた、「もうひとつ」の関係性の変化!


 いよいよ最終決戦が開幕したエピソード42の導入部では、充瑠が高校の教室でうたた寝した際に見た夢が描かれた。クリスタリアの王室で絵を描くのに夢中な少年が、


「ひらめキ~~ング!」


と充瑠の決めゼリフを叫んだことから、充瑠はその少年を「小さいときの王さま」=オラディン王だと思いこむ――結果的にはミスリード演出だったのだが――。
 「ひらめきは世界を救うんだ!」と、その少年はクリスタリアを守るための「必殺ワザ」の絵を一心不乱に描きつづけている……


 このエピソード42を皮切りに、エピソード43『汚れた英雄』、エピソード44『友よ、静かに眠れ』にかけて、先述してきた映画『キラメイジャー エピソードZERO』以前に起きていた「本当のはじまり」が「前日譚」として小出しに明らかにされていく。
 そして、これまでは互いに「因縁」の敵でしかなかった充瑠とガルザの関係性が、この最終章で想定外の方向へと変化をとげていくのだ。
 そんな波乱に満ちた展開の予兆として、エピソード42の静的でナゾめいた導入部は実に絶妙な描写となっていたが、そればかりではなかった。


 映画『キラメイジャー エピソードZERO』では、戦闘員・ベチャットの大軍勢を率いたガルザとクランチュラを中心とするヨドン軍がクリスタリアを一気に制圧するさまを、充瑠が教室で見た夢として描く導入部からはじまっていた。
 充瑠とガルザの関係性の変化を描くにあたって、このエピソード42の導入部は『エピソードZERO』との係り結びとしての役割も担(にな)っていた。そして、それは充瑠の身に起きたもうひとつの関係性の変化をも必然的に視聴者に示すこととなったのだ。


 『エピソードZERO』では充瑠を「あつた(熱田)ぁぁぁ~~~~~!!」などと恫喝(どうかつ)するなど完全にバカにしていたものの、シリーズ中盤のエピソード20『あぶないペア』ではセッチャクザイ邪面によってキラメイレッドとくっつけられて、その正体を知って以降は充瑠に対する意識を改めた同級生の女子高生・柿原瑞希(かきはら・みずき)の存在である。


 エピソード1『魔進誕生!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200712/p1)にも登場したヤンキーっぽい男子生徒が、その当時と同じく実は天下のキラメイレッドさまである充瑠を「落書き野郎!」などと露骨にさげすんでみせることも(汗)、対比として瑞希側の劇的に良好化した変化を強調するのに絶大な効果を発揮している。
 ヤンキー男子と仲が良い女子生徒が「なんかあった?」などとふたりして、充瑠と瑞希をいやらしいニヤケた表情で見つめている描写も、学生の教室空間においてはさもありなん的でフィクション作品としては実によかった(笑)。


 なお余談だが、ヤンキー男子の名前は脚本では獅子鷹宮健太(ししたかみや・けんた)だそうであり、スーパー戦隊シリーズの歴代レッドのモチーフにされることが多かった「獅子」=ライオンと「鷹」=ファルコンを掛け合わせた名前となっている(爆)。


 これまでに瑞希が登場したのは、『エピソードZERO』とエピソード20のみであり――エピソード1には先述したヤンキー男女は登場したが、瑞希は登場していない――、個人的にはそれこそ90年代以降の学園ものの深夜アニメのように、視聴者サービスのノルマ的に「夏休み回」(笑)なども設けて、充瑠と瑞希の関係性の進展を描いてほしかったようにも思えてきてしまう。
 だが、その代わりにこの最終展開では、瑞希を地球の「本当の大ピンチ」へと巻きこむことで、充瑠とガルザとの関係性のみならず、瑞希との間にも劇的な進展をもたらしていくことで、マクロとミクロの出来事を織り成すかたちでラストバトルを構築していくのだ。


 同級生たちにふたりの仲をからかわれた責任をとってくれ! と、瑞希は遊園地の優待券を充瑠にチラつかせて、暗に「デートしろ!」と強要する(笑)。


 これは、『獣電戦隊キョウリュウジャー』の最終展開でも、アミィ結月(あみぃ・ゆうづき)=キョウリュウピンクが桐生ダイゴ(きりゅう・ダイゴ)=キョウリュウレッドに対して、敵組織・デーボス軍が滅びだらば世界で一番おいしいストロベリーパフェを食べに行こうと約束したり、古いところでは『仮面ライダーストロンガー』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201231/p1)第30話『さようならタックル! 最後の活躍!!』でも岬ユリ子(みさき・ゆりこ)=電波人間タックルが城茂(じょう・しげる)=仮面ライダーストロンガーに、敵組織・デルザー軍団が壊滅したらふたりでどこか遠いところに行ってみたい……などと願っていたことを彷彿とさせる、静けさの中でも来たるべき嵐のフラグ(予兆)を立ててみせることで、その後に来る怒涛の展開との落差を際立たせるための、古典的にして常套的(じょうとうてき)でもやはり美しい作劇ではある。


 『キョウリュウジャー』も『ストロンガー』も同様だったが、最終展開での激しい攻防戦の直前や最中でも、そんな淡い恋愛模様が点描されることで、クライマックスでのバトルのドラマ性がより高くなるのである。


*「因縁」の敵が強化変身したさまを、「ワクワクする!」と表現した主人公の深層心理!


 敵幹部ガルザが同じく敵幹部シャドンを失ったヨドン皇帝の体内にある「意識の部屋」に入りこむ。
 真っ赤な部屋の中央にヨドン軍の紋章(もんしょう)が背もたれに描かれた椅子(いす)が置かれた世界といったかたちで表象されているが、もちろん物理的な空間ではなく精神世界である。そこにガルザが厚かましくも着座してみせる!
 この描写によって、彼がヨドン皇帝のことを精神面でも文字通りに「主役の座」を奪ってみせたことを表現してみせた秀逸な表現でもあった!
 ちなみに、「主役の座」につけなかったヨドンナは完全に消滅してしまったワケではなく残留思念としては残存しており、ヒザをかかえてうずくまっていることで、その旨が端的に表現されている。
 そして、ガルザは皇帝の意識と肉体を乗っ取って巨大化し、人間世界の街に突如として出現する!


 事ここに至って、敵軍をガルザが乗っ取ってみせたのだ! スーパー戦隊シリーズでも80年代のシリーズでは終盤によく描かれていた敵組織の内紛劇でもある!


 そして、ビジュアル的にもそのへんを象徴させて子供たちにも理解をさせやすくさせたり、見た目の変化もつけることでキャッチーにして、少しでも視聴者の興味関心を喚起するためでもあるのだろう。
 エピソード41『ありのままでいたい』では皇帝から用済みとされてしまった敵幹部クランチュラの協力を得たガルザが、それまでの三日月型の邪面から一変して、背中に満月を思わせる円形のパーツを背負った、鋭い牙のオオカミが宙に向かって大きく口を開いたように二股(ふたまた)状に裂けた銀色の頭部中央にはオオカミの顔があり、右腕にはチェーンソーを備え、全身を金色の鎧(よろい)で武装したロードガルザへと華麗なる変身をとげたのだ!


 ところが、その姿に充瑠=キラメイレッドが不謹慎にも、ある意味では視聴者目線で「ワクワクする!」などと大喜びしてみせるのだ(爆)。


 いや、ロードガルザの実にカッコいいデザインや造形に対して視聴者が「ワクワクする!」と喜ぶのは当然だ。筆者とて例外ではない(笑)。
 だが、劇中では右腕のチェーンソーを振りおろすだけで街の大半を炎上させたり――ビル屋上のキラメイジャーの主観として実景の都市部を俯瞰した合成カットが絶大な効果を発揮した!――、重力を操って宙に浮かべたキラメイジンの合体を解除させたロードガルザに対して、本来ならば正義側の主人公ヒーローが「ワクワクする!」などと喜んでいる場合ではないのである(汗)。


 ましてや、その前段としてガルザが拡散させた黒い霧が人々を戦闘員のベチャットと化してしまい、その中には充瑠と遊園地に行く約束をしていた瑞希も含まれていたのだ!
 高校の階段の踊り場で充瑠と手が離れてしまった瑞希は、「絶対に助けてね」と云い残して、黒い霧の中に姿を消してしまった……
 だから、魔進ファイヤでなくとも「ナニ、不謹慎(ふきんしん)なこと云ってんだ!」と充瑠をドヤしつけるところだろうし、為朝でなくとも充瑠に「オイッ!」とツッコんだ視聴者も多かったことだろう。


 だがしかし、


・先述したエピソード42の導入部にて、自身が考案した必殺ワザ「トルネードスクリュークラッシュ!」を夢中になって描いていたクリスタリアの少年
・エピソード31『おもちゃ』にて、バンダイ発売の玩具サイズに縮小されてしまった魔進たちを手に、「科学特捜スーパー警備隊!」(爆)だの「マグマドリラー!」だのと叫びながら、ひたすら変型・合体遊びを楽しんでいたゲスト主役の少年・龍生(たつお)――これらの一連にて龍生を見つめる充瑠にはほとんどセリフがなく、その表情演技のみで充瑠の心理を描写した演出は絶品だった――
・超異色作であるエピソード40『痛む人』(!)のゲスト主役で、プロの漫画家をめざしている青年・八太三郎(はった・さぶろう)が描いたマンガや、三郎の部屋にあふれるコミック・フィギュア・ゲーム・映像ソフトなどなど――八太三郎は東映特撮作品の原作者名として、東映が使用しているペンネーム・八手三郎(はって・さぶろう)からの運用(笑)――


 充瑠はこれらを「輝いてる!」として、自身もまた目をキラキラとさせて、満面の笑(え)みで見つめていたのだ。それらに共通するクリエイティブな何か、少なくともクリエイティブたらんとする自身との「同質性」を彼らに感じたからこそ、充瑠は「因縁」の敵であるハズのガルザの新たに強化された姿に対しても、つい「ワクワクする!」などという不謹慎な感想をもらしてしまったのだ。


 エピソード1でも、


・為朝=e(イー)スポーツのプレイヤー
・瀬奈=女子陸上の選手
・時雨=イケメン俳優
・小夜=美人外科医


 彼らと初対面した際に、充瑠はこの4人を「輝いてる!」と評していたが、同時に「マブしすぎて……」と彼らに対する近寄りがたい印象をも口にしていた。


 エピソード36でも、敵幹部クランチュラがラップのメロディに乗せて充瑠を、


「唯一の友達はスケッチブック!」


などとさげすんでいた(汗)。


 そんな充瑠にとっては「お絵描き」に夢中になっていたクリスタリアの少年、「おもちゃ」で遊んでいた龍生、「マンガ」や「ゲーム」が得意な三郎など、世間ではダサいとかイケてないとされてしまう、自身と感性を近しくする存在こそが、真の意味で「輝いてる!」として映ったのであった!


 エピソード40でも、充瑠が邪面獣ジイシキ(自意識・爆)シェルガと化した三郎を倒すのに反対する描写が伏線となっていたようにも思えるが、充瑠がロードガルザを「ワクワクする!」と感じたのはある意味で必然だったことがこの先に明らかにされるのだ。


*「倒すべき敵」に「もうひとりのオレ」だという「同質性」を設定する!


 エピソード42のクライマックスでは,、都心のビル街でロードガルザvs巨大ロボ・グレイトフルフェニックスとの決戦が展開される!


 キラメイジャーの面々が基地で談笑している冒頭の場面で、魔進オラディンがモニターを通して「イザとなったらとっておきのワザを使う」などと語っているのが、絶妙なミスリード演出としても機能した。


 冒頭の夢の中で必殺ワザの絵を描いていた少年を充瑠がかつてのオラディン王だと思う描写から、グレイトフルフェニックスの「とっておきのワザ」とは「あの絵」に描かれていたものだろうと予想した視聴者も少なくなかっただろう。
 だが、暗闇に包まれる闇の帝国・ヨドンヘイムを背景に、右腕のチェーンソーを構えて全身を高速回転させて、金色の渦(うず)を巻き起こして竜巻攻撃を繰り出す「トルネードスクリュークラッシュ!」を使ったのは、なんとロードガルザの方だった!!
 さすがにキラメイレッド=充瑠もこれには愕然(がくぜん)とする! しかし、逆に云えば、充瑠がロードガルザの姿を「ワクワクする!」とした感性が、極めて正しかったことが証明された瞬間であったというべきかもしれない。


キラメイレッド「ひらめきは世界を救う!!」
ロードガルザ「ん!? ……そんなものは戯れ言(ざれごと)だ!」


 幼かったころに「必殺ワザ」の絵を描きながら叫んでいだ自身の言葉を、まさかの当の敵から聞かされることになったものの、ガルザは一蹴(いっしゅう)した。しかし、レッド=充瑠にそれを聞かされるやホンの一瞬だが動揺を見せてしまう描写が、つづくエピソード43でガルザが敵側から味方側へと立ち位置シャッフルを見せる前兆としても機能したように映る。
 なんといっても充瑠の口グセである「ひらめキ~~ング!」の出自がオラディン王ではなく、ガルザであった事実が明かされたのだ!!


 この事実が証明された時点で、充瑠にとってのガルザは深い「因縁」はあっても、すでに「倒すべき敵」ではなく、「もうひとりのオレ」(!)と化したといっても過言ではないだろう。


 湾岸の遊歩道から見上げるキラメイジャーの対岸に林立する高層ビルの実景に、巨大なロードガルザのみが合成された臨場感あふれるラストシーンにて、スカイキラメイストーン状態のオラディン王がついにロードガルザによって空の裂け目から別の時空へと連れ去られてしまう!
 王さますらも「本当の大ピンチ」に陥ったのにもかかわらず、エピソード43の冒頭で基地から出動するキラメイジャーを尻目に、充瑠はいまだにロードガルザの姿を回想して「でも、あの姿……」などとニヤついていたのだ(爆)。


 だが、充瑠は自身と感性を同じくするガルザとなら和解が可能との結論に達したのだ。「ワクワクする!」とはそれに対する期待の意味もこめられていたのだと解釈すべきところだろう。


 キラメイレッド=充瑠vsロードガルザのガチンコバトルの最中に、その充瑠が寄せていた期待は見事に的中するに至って、最終決戦のドラマ性がより高められることとなった!
 「トルネードスクリュークラッシュ!」も実にカッコよかったが、ロードガルザはデザインのモチーフそのままに、満月を背景に自身のジャメンタルをオオカミの形にした攻撃ワザ「ビーストウルフオメガディア!」をキラメイレッドにぶつける!


 だが、レッドはこれを


「スゴいの、またキタァァァ~~~ッ!!!」


などと大喜びして(笑)、ガルザの必殺ワザはむしろ充瑠の「ひらめキ~~ング!」なる創造力を触発して、そのキラメンタルが真っ赤に燃えた不死鳥の姿となった新たな必殺ワザ「ゴッドバードアルファズム!」を生みだしたのだ!
――ロートル世代や日本の新旧アニメの巨大ロボットたちが共闘するテレビゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズ(91年~)をたしなむようなロボットアニメファンも兼ねている老若の特撮オタク諸氏であれば、往年のロボットアニメ『勇者ライディーン』(75年・東北新社 NET→現テレビ朝日)の主人公ロボット・ライディーンが鳥型に変型して繰り出す必殺ワザ「ゴッドバード!」を引用したものだと即座に気づいたことだろう!(笑)――


 ロードガルザとキラメイレッドの横顔を2分割でとらえた画面の中央で、ビーストウルフとゴッドバードが激突する描写も、ガルザと充瑠の「同質性」を端的に演出で表している! そんな激闘の最中にも、レッド=充瑠の本音が漏れる。


「おまえは敵だけど、神絵師(かみ・えし)だ!!」
「本当はいっしょに絵が描きたい!!」


 同じくエピソード43にて、湾岸の遊歩道で重力を操ってキラメイシルバーに勝利し、


「わたしたちを滅ぼした果てに何をするつもりですか!?」


などとマブシーナ姫に問われた等身大のロードガルザは、


「オレの思うように世界を変える!」


と返していたが、マブシーナ姫はそれができるのは充瑠さんだけだ! と主張して、その理由を「ひらめきで何かを変えてくれる」からだと語っていた。


 だが、先のガルザとレッドのガチンコバトルでレッドが必殺ワザ「ゴッドバードアルファズム!」を放てたのはガルザの「ビーストウルフオメガディア!」があったからこそだと描くことで、マブシーナ姫からは否定されたものの、ガルザも充瑠と同じ「ひらめきで何かを変えてくれる」力の持ち主であることが視聴者にも示されたのだ。


 そして、半魚獣とでも形容すべき闇獣バスラに食われそうになっていたのをレッドが助けようとした際に、オラディン王は実の弟・ガルザを元々「英雄になる素質」があった「選ばりし者」だったと語った。
 派手なアクション場面や特撮場面に絶えずガルザと充瑠との「同質性」を示すような証言を点描していく脚本&演出は、アクション抜きの人間ドラマによる会話劇だとタイクツしてしまうであろうところを、最後まで子供たちや視聴者の関心を持続させるためにも絶大な効果を発揮しているのだ――まぁ、小学校に上がったころ以上の年齢の子供であればともかく、幼児であればこのへんの敵味方キャラの意外な「同質性」といったドラマは理解ができていないだろうとも思うので、こういう処置も絶対的に必要なのだ(笑)――。


 その剣を組み合わせたままで、いつしかロードガルザとキラメイレッドがクリスタリアの王室へと戦いの場を移していく!
 そして、エピソード42の冒頭で描かれた「夢のつづき」をともに見ることで、ついに真実が明かされる演出は実にドラマチックに仕上がっていたのだ!


 「必殺ワザ」を夢中で描いていた幼いころのガルザのもとに、やはり幼かったころのオラディン王が現れて、ガルザの「トルネードスクリュークラッシュ!」に感激したオラディン王は自身も「必殺ワザ」の絵を描きはじめる。
 ここでも先述したように、当時のガルザが「ひらめきで何かを変えてくれる」力をたしかに持っていたことが示されており、オラディン王がガルザを指して語った「英雄になる素質」「選ばりし者」が俄然、説得力を帯びて伝わってくるのだ。


 ガルザもまた新たな必殺ワザ「ビーストウルフオメガディア!」を描いて、オラディン王は自身が描いて後年に充瑠も思いついた「ゴッドバードアルファズム!」と引き比べて「引き分けだ」とし、そのまま争うこともなく兄弟は並んでお絵描きを描きつづけていく……


 イジワルに絶対平和主義などをモノサシとして見てしまえば、平和で牧歌的なお花畑などの光景は描かずに(汗)、なんだかんだと他人を倒してみせるための好戦的な必殺ワザなどを好んで描いて、そこで万能感・全能感にひたってしまうことこそが危険である! 右翼的である! なぞといった批判も成り立つだろう。
 しかしまぁ、人間一般も理性的・合理的な近代人である以前に、狩猟をして捕食もする生物・動物でもある以上は、良くも悪くも本能的にこーいう乱暴な必殺ワザや戦闘もののテレビゲームなどといったものに快感をおぼえてしまったり、そこで疑似的に達成感や充実感を得たりなどして、現実世界では弱者であり不全感にさいなまれている自身の心を癒したり元気づけたりしがちなことも事実であるどころか、ある意味では必然の宿痾(しゅくあ)ですらあるのだ。
 その意味でも幼き日のオラディン王とガルザの兄弟が、必殺ワザを考案し合って全能感にひたっていたことは、特撮変身ヒーローものの本質の何たるかをも体現しており、実に示唆的でもあるのだ。


 幼いころのガルザとオラディン王と同じく、「ビーストウルフオメガディア!」と「ゴッドバードアルファズム!」を炸裂させたロードガルザとキラメイレッド=充瑠であるならば、当時の兄弟と同等の良好な関係性を構築できるハズだと、視聴者が先述した充瑠の「ワクワクする!」という発言にようやく共感させるに至る作劇的技巧には、充瑠ではないがおもわず「神絵師だ!」と叫びたくなるような感慨もおぼえる(笑)。


 すべての願いがかなうとされている4つのカナエマストーンを使って人生をやり直そう! などとキラメイレッドに説得されるガルザの全身に、星のキラメキのような効果までもが描かれることで、彼に彼本来のキラメキが復活しつつあることも示唆されて、その心の変遷を映像演出的にも如実に象徴してみせる!


 まぁ、兄=オラディン王を大好きだった幼いころのガルザを、ラスボスであるヨドン皇帝が洗脳して自身の尖兵(せんぺい)として育てあげたという真相は常套的な作劇だともいえるし、ヤボなツッコミを入れるならば幼いころはほかのクリスタリア人と同じく青地に金模様の頭で青い目であったガルザが、洗脳後に紫色の頭と赤い目に変わったことを王室の誰ひとりとして不審に思わなかったのか?(爆) などというイジワルな見方も可能ではあり、そのような隙もあるのだが、そんな視聴者側の邪念もすぐさまに消し飛ばされる。


 しぶとく生きていたヨドン皇帝から、兄をはじめとするクリスタリア人に対する憎しみの感情を植えつけられた件を聞かされたガルザが、


「生きていた意味は何ひとつなかった……」


と後悔して、その「生きていた意味」を最も象徴している三日月型の兜を乱暴に脱ぎ捨てる描写!


 そして、


「オレが生きた意味は今、ここで生み出す!」


とガルザがヨドン皇帝に特攻する描写には、視聴者の感情移入が一気に高まるように、ここまでのストーリー展開から実に用意周到に逆算して構築された作劇なのだと改めて思い知らされるのだ。


 反撃も空しく、皇帝の攻撃で崩れ去っていくガルザを焼き尽くす炎だけが見えるヨドンヘイムの暗闇の中で、ガックリとヒザを落としたキラメイレッドの姿がその胸中の空しさを表現している。


 そして、その充瑠もまた、キラメイジャーと魔進オラディンの眼前で奈落の底へと転落していってしまったのだ!


 リアルに考えればヘンなところかもしれないが(汗)、瑞希から手渡されていた「遊園地の優待券」がその場に残るラストカットは、ヨドンヘイムへの突入直前に、


「オレ、柿原さんと約束したから、絶対帰ってくる!」


とメンバーに無事に帰還することを力強く宣言した充瑠からすれば、決してハズせない演出だったのだ。


*「万策尽きる」までにイジワルに追い詰めてこそ、勝利のカタルシスも高まる!(笑)


 エピソード44では主人公である充瑠が不在のままで、キラメイジャーと魔進たちのヨドン皇帝への総攻撃が描かれる。
 それは決してシーソーゲーム的な気持ちのよいバトルではなく、ヨドン皇帝の圧倒的な優位が目立ったのはもちろん、皇帝の絶大な力・強さを印象づけるばかりではなく、キラメイジャーと魔進たちにとって充瑠がいかに大きな存在となりえていたかを示すための作劇になっていた。


 先述したエピソード34でヨドンナが為朝に放った


「仲間を殺れば、君は勝てない」


というセリフが、ここで改めてキラメイジャーに重苦しくのしかかることとなったのだ。


 特に相棒の魔進ファイヤが充瑠の消息不明を信じようとはせずに、今は充瑠のことよりも皇帝を倒すべきだとした時雨や小夜に対して猛反発したり、


「ファイヤはまだ、気持ちの整理が……」


として、相棒を失ったファイヤの心情に共感したほかの魔進たちも出動をためらう描写などは、ふだんのボケとツッコミを中心とした軽妙なやりとりは影をひそめて、たとえその姿は宝石ではあっても立派な「人間ドラマ」「群像劇」としても成立していたのであった――5人の戦士の内、4人までもが機械生命体のメンバーで構成されているスーパー戦隊を主人公とした『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)の序盤でもこのようなドラマはしっかりと継承されている――。


 キラメイジャーの完全敗北を最も印象づけたのは、為朝が立案した緻密な作戦計画によって繰り出された連携攻撃がヨドン皇帝には通用せずに、「失敗」に終わってしまったことだろう。


 皇帝が奪おうとすること必至のカナエマストーンを隠さずに、むしろ積極的に武器として使う!


・時間を逆行させるリバーシアで皇帝を10日前のヨドンナの姿へと戻す!
・エネルギアでパワーを強大させた新ロボ・グレイトフルフェニックスの光線で石像に封印する!
・それを抜群の破壊力を誇るデストリアで粉砕(ふんさい)する!


 これまでにも何度もこうした有能な作戦・連携プレーでキラメイジャーが勝利をおさめるさまが描かれてきただけに、それをも打ち破ってしまう皇帝のラスボスにふさわしいデタラメなまでの強さがより強調されるとともに、充瑠が欠けた穴がいかに大きいかが示されるのだ。


 そして、「貴様が消えれば封印は解けるハズ」だと、実は自身の「弱さ」の部分が独立・体現された存在であったヨドンナを始末してしまうことで(!)、自身の封印を解くに至ったヨドン皇帝は、「仲間を捨てたからこそ」逆転したのであり、対比的に「仲間を殺れば勝てない」キラメイジャーの無力感が倍増されるのだ。


「ココは泣くトコで、合ってるかな?」
「ココこそ笑うところだ。我の役に立って死ぬのだからな」


 「仲間」なんぞ不要だと豪語してきたヨドンナが「仲間」によって最期を迎えることで、「仲間」がいたからこそ勝利をおさめてきたキラメイジャーに精神的なダメージを与えるのは必至であり、皇帝の方がキラメイジャー側の「頭脳戦」にも逆転勝利したことで、力関係のみならず「頭脳戦」でも皇帝が圧倒的に優位なことが表現されている。


 ここまでキラメイジャーの「本当の大ピンチ」を絶望的なまでの苦境として描くことで、「仲間」たちが次々に駆けつけてくる描写に、視聴者がつい声援を送りたくなるような気持ちへと至らせる作劇は、やはり実によくできているのだ。


 魔進ザビューンは皇帝の弱点が邪面の下の本当の顔だと看破し、グレイトフルフェニックスが集中攻撃を加える!
 グレイトフルフェニックスが戦闘不能に陥るや、宝路が操縦する巨大ロボ・ギガントドリラーが駆けつけて、皇帝の顔に巨大なドリルを突き立てる!


「今はみんなといっしょに戦ってください。充瑠さんがとげられない想いを、あなたが遂げるのです!」


 マブシーナ姫の説得に「ここからはメッチャメラメラだ!!」と魔進ファイヤが奮起したことでパイナップルタワーの基地から魔進たちがいっせいに発進! 巨大ロボ・キラメイジンに合体して駆けつける!


 ひたすらに絶望的な状況ばかりでは、年長視聴者や我々大きなお友達にとっては大丈夫でも、幼児にはキツいであろうから、たとえほんのわずかの瞬間でも視聴者を安心させて歓喜させる、こうした描写を適宜(てきぎ)に挿入していくストーリー展開こそが、「子供番組」には必要な塩加減・バランス感覚でもあるだろう。


 しかして、これだけの総力戦でも皇帝を倒せない! まさに「万策(ばんさく)尽きた!」としか云いようがない「本当の大ピンチ」は、ホントウの最後のクライマックスでの大逆転劇をおおいに盛りあげるための事前準備としての「落差」をつくっておくためのものであることは相違ないのだ!(笑)


*帰ってきた男! その名は熱田充瑠ことキラメイレッド!


 ヨドン皇帝が超巨大な火球を宙に浮かべて、「ヨドンデストロイヤー!」と発射しようとしたその瞬間、何かが突撃してそれを粉砕した!


 一瞬の静寂のあとにその正体を見せる演出が心憎いが、「ヨドンデストロイヤー!」を阻止したのはガルザが相棒にしていた魔進ジョーキーであり、そこからビルの屋上に飛び降りた充瑠が元気な姿を見せるのだ!


 為朝は「フザケやがって!」と充瑠を羽交い締め(はがいじめ)にして、瀬奈は「心配してたんだから!」と充瑠の肩をバシバシと叩いて、時雨は「必ず生きていると思ってた」とウェ~ンと泣きだしてしまう(笑)。


 充瑠の無事に対する反応をそのキャラならではの行為として描き分けた脚本も、視聴者の感情移入を喚起したことだろう。時雨の泣き演技は当然ながら、この感動的なシーンが過剰にシメっぽくはならないように「ネタキャラ要員」として要請されたものだろう(笑)。


 ファイヤはもちろんのこと、魔進たちが相棒たちの手元におさまるサイズのキラメイストーンの状態でワチャワチャと集結するさまが、「仲間」がいたからこそ勝ってきたキラメイジャーの結束力を改めて象徴する!


 充瑠が無事に生還できたのは、皇帝の攻撃で爆死寸前となったガルザが魔進ジョーキーに意識を飛ばして、谷底に転落する途中で救ってくれたからだと回想で語られることで、ガルザの存在にも救いを与えてみせている。


 自分の分まで生きて絵を描くことでキラめきつづけろと充瑠に云い残したガルザは、


「生まれ変わったら仲のいい兄弟になりたい」(涙)


というオラディン王への伝言を充瑠に託して、ジョーキーの操縦室の中でキラメキの中で消滅していく……


「オレが生きることで、ガルザが生きた意味になるんだ!」


 皇帝に洗脳されたがために、本当は仲がよかったハズの兄・オラディン王と兄によく似た充瑠に憎悪の炎を燃やすに至ったガルザだった。
 しかし、真実がすべて明かされた今、自身の想いをつなぐ相手としてガルザが充瑠を選んだのは、充瑠がオラディン王との「同質性」を持つだけではなく、ガルザ自身との「同質性」をも感じたことで、ガルザも充瑠のことを真に認めて望みを託したのだということを、この充瑠のセリフが逆照射のかたちで表現しているのだ!


 そして、このエピソード44で秀逸な点がもうひとつある。


「皇帝に逆(さか)らって生き延びた者はいない」


 このセリフをクランチュラに実に3回も反復させていることだ。


・1回目は、ヨドンヘイムにあてもなく広がる荒野をさまよっていた際に。
・2回目は、消滅したガルザに代わって充瑠を乗せた魔進ジョーキーを操縦していた際に――視聴者には具体的に何に乗っているかを明かさずにキラメイジャー劣勢の最中にこれを描写することで、この時点ではクランチュラがキラメイジャーをあざ笑って再度、皇帝に加勢するのか? と思えるようなミスリード演出として機能している――。
・3回目は、自身を捨てた皇帝への切り札として盗み出していたカナエマストーン・イリュージョアを、「おまえらなら新しい歴史をつくれるかも」とキラメイジャーに託した際にだ。


 先のセリフはもちろん皇帝の絶大なる力を端的に表現しているのだが、まったく異なる状況下でも反復されることで同一のセリフが別の意味合いとして聞こえてくる効果を上げており、クランチュラの心の変遷やキラメイジャーとの関係性の変化が絶妙なまでに表現できていたのだ。
 ガルザの場合は魔進ジョーキーだが、クランチュラからはイリュージョアが託されて、キラメイジャーが皇帝への決定打とすることで、クランチュラの敵から味方への立ち位置シャッフルにも唐突ではなくキチンと段階を踏ませているという作劇も周到にできていたということになるのだ。


*最後まで各キャラの「らしさ」も貫徹してみせたキラメイジャー!


 皇帝が邪面をハズすのは敗北した相手の屍(しかばね)を食らうときのみだという「流儀」をクランチュラから聞かされたキラメイジャーが、イリュージョアを駆使してキラメイジンとギガントドリラーが戦闘不能となった幻影を皇帝に見せて、一瞬の隙をついてヘビをモチーフとした本当の顔をねらい撃ちにするに至るさまは、再三述べてきたがキラメイジャーならではの頭のよい連携攻撃の賜物でもあり、『キラメイジャー』の真骨頂と呼ぶべきものなのだ!
 ついに、唯一の弱点を突かれた皇帝は等身大の姿となり、舞台は巨大戦としての市街戦から等身大アクションによる郊外へと移行する!


 皇帝との最終決戦が撮られたロケ地を、筆者は静岡県御前崎(おまえざき)市にある中部電力御前崎風力発電所付近だと推測している。
 高さ120メートルにもおよぶ発電用の大型風車が、同じ中部電力浜岡原子力発電所をはさむ約10キロメートルの間に全11基も並ぶ場所である――個人的にも何度か通りかかったことがあり、ほぼココだと特定しているのだが――。


 そして、その巨大風車を最大限に活かした絶妙な演出があったのだ。


 もう観念するように説得するマブシーナ姫を画面右に、断固として敗北を認めないヨドン皇帝を画面左に配置してロング(引き)でとらえたカットの両者の背景には、それぞれ先述した巨大風車が1基ずつ映っている。
 しかし、マブシーナ姫の背景にある風車は風の勢いでグルグル回転しているのだが、皇帝の背景に位置する風車はピッタリと止まったままなのだ!


 キラメイジャーの最後の名乗り場面の背景にもこの巨大風車の群れはとらえられており、撮影時の気象条件で回転する風車と回転しない風車が混在していたことが確認できるのだ――それとも別撮りによるデジタル合成?――。
 先述したカットはまさに最終決戦の風向きが変わり、もはやキラメイジャーの方が圧倒的な優位に立ったことを端的に象徴する演出であり、すべてが計算できることではないだろうが、予期せぬ天候・風向きなども味方につけて、このような劇的なカットも撮れたのだろう!


 それにしても原発も近距離にある場所で、よくもまぁ大量の火薬使用の許可が出たものだと(汗)。


 スーパー戦隊シリーズの最終回での変身といえば、ヒーロー&ヒロインの変身後のスーツを着用した変身前の役者が名乗りを上げるとともに、ヒーローのマスクが装着される演出が定番となっている。
 今回は戦況を見守るマブシーナ姫と相棒の魔進たちが、回想として流れる名場面を背景として各人への想いを語る演出がなされたことで、視聴者の感情移入もいっそう高められたことだろう。


・破壊力を誇るカナエマストーン・デストリアを手に皇帝に突撃するキラメイグリーン=瀬奈
・皇帝にそれをはじかれるも「想定内だ」(!)として、すかさずデストリアをキラメイショットで射撃するキラメイイエロー=為朝
・さらにキラフルゴーアローでそれを撃つ「スパークリングフェニックス!」で、ついに皇帝を倒すに至るキラメイレッド=充瑠!


 その最後の活躍に至るまで、各メンバーが「らしさ」を存分に発揮して、いつもながらの戦法で最大の敵に打ち勝ってみせるさまは、先述したマブシーナ姫と魔進たちがキラメイジャーに寄せる絶大な信頼感に説得力を与えて、彼らの勝利は「仲間」がいたからこそとの証明にもなりえていたのだ。


 大苦戦の末の勝利に抱き合って喜びあうキラメイジャー! その上を舞って彼らと喜びをわかち合う魔進たちの描写もまたしかりである。


*「邪面」を付けねば、生きられない現代人!


 さて、ここまで述べてきたものの、『キラメイジャー』はスーパー戦隊シリーズの当然の宿命でもある「仲間」を称揚するだけの作品ではなかったとも思える。
 ヨドン皇帝もガルザもヨドンナもシャドンも、クランチュラを除く敵キャラが「仲間」を否定して、「孤高(ここう)」の存在であることを望んでいたが、それを単純に「悪」として断罪したワケではなかったのだ。


 むしろ彼らの背景に、個人的には現代社会の病巣(びょうそう)が透(す)けて見えてきたのだ。


 エピソードFINALにて、皇帝の「意識の部屋」で断末魔のヨドンナが「あなたにとってボクは……?」と問いかけるや、皇帝はもうひとつの人格だったシャドンも含めて「弱さの象徴」だと答えていた。
 皇帝自身がヨドンナに語った回想によれば、皇帝の出自は「淀みの海」に生まれたヘビの化身で、本来はたいした力もなかった怪人にすぎず、自身がつくった邪面をかぶることで「無敵になった気がした」ほどの超「ヘタレ」だったのだ(汗)。
――ヨドン皇帝の元来がヘビであったという設定は、『仮面ライダー』第1作(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)の最終回にて敵のショッカー大首領の覆面の下に無数のヘビがまとわりついた頭部があったことから着想された設定であろうか?――


 「往生せいや!」と、相手をひたすら恫喝して虚勢を張ることで優位に立とうとしたシャドン。
 「ココ、笑うトコで合ってるかな?」などと、舌を出して相手を見下し、ひたすら嘲笑していたヨドンナ。


 別人格として脳内で生まれた彼らを、皇帝自身が「弱さの象徴」だと断じたのは、ある意味では正鵠(せいこく)を射ていたのだ。


 我々の周囲にもシャドンやヨドンナみたいな輩(やから)があふれていることだろう。その中にも「邪面」を付けなければこの世知辛い(せちがらい)現代社会を生きられない、実は本来のヨドン皇帝みたいな、軽蔑すべきか同情の余地はあるのか悩んでしまうような「ヘタレ」もいれば、歴代スーパー戦隊シリーズの敵首領たちのように天然で粗暴にできているような御仁たちもいるのやもしれない。


 そして、ガチンコ対面ではなく文章や絵などといった二次表現で自身をアピールしようとする者たちは、残念ながら本作の主人公である充瑠のように理想化・美化された存在ではさらさらなく、むしろヨドン皇帝にとっての邪面、つまり現実社会では弱いヘタレのダメ人間であるクセに、その反転としてイキがったり強がったり社会正義ぶったりするような仮初(かりそめ)の人格を発揮していることが往々にしてあるものなのだ(汗)。
 そういう意味では、筆者のような物書きオタクたちこそが、キラキラとしたキラメイジャーたちよりも、よっぽどシャドンやヨドンナやヨドン皇帝の方に近い存在なのだろう(爆)。我々こそが悪に近いのだ。よって常に一生、自戒しつづけなければいけないのだ。


 ただ、そういうことを云ってしまったならば、この文章もここで終わってしまう(笑)。
 『キラメイジャー』における充瑠のような、おもいっきりの「変化球」で、本来の戦隊レッドらしからぬ、邪気はないけど文化系の奇人変人といった人物像。
 彼のような人物を主人公に設定して、敵のキャラクターたちとも対比になるかたちでドラマを構築し、なおかつ主人公を立てるかたちで、そこに何らかの理想像や可能性を追及して、さらに「宝石」や「車」モチーフとも接点を持たせていくといった営為の集大成が成功して、『魔進戦隊キラメイジャー』といった作品として昇華していったのだし、しかもその試みは成功したともいえるのだ。


*「仲間」の賞揚だけでなく「孤高の人」の存在価値をも認めてみせた『キラメイジャー』!


 先にヨドン皇帝・ガルザ・ヨドンナ・シャドンらを「孤高の人」と記したが、キラメイジャーとなる以前に「スケッチブックだけが友達」(爆)だった充瑠だって、立派な「孤高の人」だろう。
 そんな充瑠を敵幹部クランチュラはエピソード36でも「リーダーの器(うつわ)が全然ない」とまさに実に正しく評してみせていた(汗)。リアルに考えれば、充瑠のような浮世離れした芸術家タイプは他人さまに号令を掛けるどころか、隣の人に話しかけることすら困難な性癖かもしれないので、我々オタクと同様に実社会ではウマくやっていくことはムズカしいだろう(笑)。しかし同時に、充瑠は「人の悪口を云うのが苦手」だとも語っていることで、彼の善良な素質をも描いていたのだ。


 同じ「孤高の人」でも、オラディン王や充瑠に宝路らを散々に罵倒(ばとう)していたガルザや、為朝を徹底的に見下していたヨドンナらとは異なり、充瑠は人の欠点をあげつらうことはせずに、この世知辛い現代社会で埋もれている人物の「キラキラ」をも見いだす姿が対比的に描かれてきたのだ。


 たとえば、キラメイジャーを後方支援する地球防衛組織・CARAT(カラット)の設立者で、キラメイシルバー=宝路の実は弟(笑)であった博多南無鈴(はかたみなみ・むりょう)が


「遅咲きクリエイティブ! キラメイゴールド!」


として「7番目の戦士」=キラメイゴールドになるのでは!? との再三のミスリード演出がなされたエピソード30の場合だ。
 30数年前、体内に侵入したモンストーンを取り除く手術のためにオラディン王によってクリスタリアに連れていかれた宝路は、意識が遠のく中でオラディン王が博多南に、


「君こそが真の戦士だ!」


と語りかけたのを記憶していたことから、ヨドン軍の攻勢が激化する中で博多南が「7番目の戦士」となる決意を固めたのだと思いこむ。だが、充瑠はそれを、


「(博多南さんは)そういうタイプじゃないよ」


などと遠慮なしに否定をしたのだ。実の兄だが博多南とは正反対に見た目や挙動がかなり派手でファンキーなノリの宝路ではなく、充瑠がそれを看破したのは、博多南に自身との「同質性」を感じ取ったためだと思うのだ。


 回想場面で描かれていた高校生当時の博多南は、現在と同様にメガネをかけていることから、おとなしそうな印象であり、兄が世話になるからとオラディン王に日本酒、マバユイネにチョコレート、王室の一族に石のように硬いせんべい(笑)をおみやげとして手渡すとともに、宝路が退屈しないようにと好きなマンガを全巻(爆)、オラディン王に託していた。
 これをオラディン王は「カンペキな気遣い」と評して、「後方を任せられる存在があればこそ戦士は安心して前に出られるのだ」という「後方要員」としての意味合いで、博多南に「君こそが真の戦士だ!」と呼びかけたのが真実だったのだ(笑)。ただし、もちろんそれこそが「真の戦士」ではなくても「真の人格者」ではあるのだ。


 映画『エピソードZERO』以前の前日譚として、博多南がキラメイジャーの後方支援をするようになった経緯を描いて、そのキャラを掘り下げたこと自体も好印象だ。
 ただ、人目につくような派手さや人前に出ることをキラう人間にも理解を示して、適材適所で活躍できる場所が必ずある! と主人公の充瑠や王さま=オラディンが語ったことで、そんな子供たちに一条の光を照らしたかもしれない作劇こそが「子供番組」としてもすばらしいのだ。
――いやまぁ、思春期に達した将来においては裏切られることが必定なので、これはこれで残酷な仕打ちなのかもしれないけど(笑)――。


 先述したエピソード37の「後ろ向き」な「瀬名5号」に対する小夜の説得はこれを反復して描いたものであり、日々生きづらさにさいなまれている「瀬名5号」のような「孤高の人」にも存在価値はあるとした『キラメイジャー』は、つまり単にスーパー戦隊シリーズの普遍のテーマでもある「仲間」を称揚するばかりの作品ではなかったのであった。


*「変わらない」ことをも肯定してみせた『キラメイジャー』のテーマ的多面性!


 その「孤高の人」をゲスト主役としたのがエピソード40だ。
 漫画家としての活躍を夢見るひきこもりの青年・三郎が、ハリガネ邪面が化けた美少年・カロリーくん――ネット上のハンドルネーム――に絵がうまい、おもしろいなどとおだてられて、そのカロリーくんに勧められるままに人気雑誌の新人募集コンテストに応募するも落選し、ネット上で作品を散々に酷評されてしまう。


「なんで、いつもこうなんだ!?」


 歩道橋の上で絶望していた三郎に、カロリーくんが、


「もっと純粋なままに生きられる世界に」


と誘いかけるや三郎の全身はハリガネに包まれて、夕陽を背景に巨大な邪面獣ジイシキ(自意識・笑)シェルガと化した!


 特撮マニア諸氏であれば、天体望遠鏡で夜空の星を観ることだけが生きがいであり、仕事は失敗つづきで近所の住人からも疎(うと)まれている冴えない青年・フクシン三郎を、美少年に化けたサイケ宇宙人ペロリンガ星人が星の世界へと誘(いざな)った『ウルトラセブン』(67年)第45話『円盤が来た』を彷彿としたことだろう。
 個人的には「京都アニメーション大賞」に応募するも入選せず、自身の作品をパクったなどという逆恨みで2019年7月18日に京都アニメーション第1スタジオに放火し、多くの社員を死傷させた青葉真司(あおば・しんじ)容疑者のこともおもわず頭に浮かんだが(汗)……


「純粋であればあるほど無防備だ。無防備なほど闇に堕(お)ちやすい」


 これは人間を邪面獣化する今回のクランチュラの作戦に対してガルザが口にしたものだ。闇に堕ちやすい人間が常に「純粋」な人間であるのかは議論の余地はあるだろうし、粗暴だったり自分に甘いタイプであったりすることも多いのだろうが、ガルザの見解にも一理はあるのだ。まさにこれはヨドン皇帝に洗脳されてしまった幼いころのガルザ自身のことであり(!)、最終展開で明かされた彼の出自の伏線でもあったのだ。
――むろん、「純粋」であることをエクスキューズとして、自身の悪事を自己正当化してしまう危険性もあるワケなので、「純粋」さも必ずしも万能でもホメ言葉でもないということにはなる。悪に傷つけられないように、あるいは悪の誘惑に負けないようにするためにこそ、「純粋」さよりも「知恵」や「老獪」さもまた必要だいうことにもなるのだ!――



 エピソード44の冒頭では、ヨドンヘイムで消息を立った充瑠のことを、魔進オラディンは、


「彼はひたすら純粋だった。純粋だったからこそガルザの意識とつながることができた」(大意)


などと語っており、ともに「純粋」であった充瑠とガルザの「同質性」をより強調していた。


「人の純粋な心を利用して、許さない!!」


 「純粋」なキラメイレッド=充瑠がキラフルゴーアローでハリガネ邪面にトドメを刺す描写は、我々のような人種にとっては『キラメイジャー』の全バトル中、最もカタルシスが感じられたかもしれない。


 ロン毛でデブでメガネの三郎に自身との「同質性」を感じたからこそ、キラメイレッド=充瑠は通常回では見られないような怒りを爆発させたのだろう。
――演じたお笑いコンビ・かが屋の賀屋壮也(かが・そうや)のルックスや体形がリアルにすぎるが、実際の氏もイラストやマンガが趣味だそうだ(汗)――


 そして、このエピソードが秀逸だったのは、同じ「純粋」でありながらも邪面獣に変貌するに至ったほどの三郎の内面に渦巻いていた「異質」な部分すらをも、充瑠が否定するどころか肯定してみせたことだった!


 エピソード36のクライマックスで、充瑠はかつてスケッチブックしか友達がいなかった自分が変われたのは魔進ファイヤが


「おまえは変われる!」


と云ってくれたからだとファイヤに対する謝意を口にして、それに対してファイヤは、


「それはおまえの意志だ」


と返している。


「変われ! 変われる! 変わりたい!!」


とエピソード1で叫んでいた充瑠の姿が視聴者の目に浮かんだだろう。「純粋」だったがゆえにクラスでボッチとなり、「柿原さん」の標的にもされていた充瑠は、自らの意志で「変わる」ことを望んだのだ。


 これに対して、


「カロリーくんとの時間だけが生きていて楽しかった」(!)


と語ったほどに日々生きづらさをかかえていた三郎は、コミックやフィギュア、映像ソフトにゲームのコントローラーなど、「全部、ボクの大事なモノ」が浮かぶ異空間の中で、


「ずっとこのまま…… ずっといっしょに……!!」


と、自身から離れていってしまうカロリーくんの幻影を追い求めたほどに「変わらない」ことを望んだのである。


 この三郎の姿は、充瑠が魔進ファイヤとの出会いがなければそうなったかもしれない「もうひとつの可能性」だと解釈できるものだ。
 ファイヤとの出会いがなかったら、充瑠はそのままスケッチブックだけが友達のボッチ生徒として高校生活を過ごすこととなり、「柿原さん」=瑞希にもバカにされつづけて、まちがっても「遊園地デート」の約束をする関係に至るなんぞありえなかったことだろう。


 だが、高校卒業後に充瑠がその才能を開花させて、新進気鋭のイラストレーターなどになって名声をとどろかせたならば、あの「柿原さん」もようやく充瑠に注目するに至ったという、また別の可能性もあっただろう。


 ふたつに分かれた道の片方を選んで若干(じゃっかん)遠回りになったとしても、その先で道は再びつながっている、などということはよく云われる例え話ではある。「変わる」と「変わらない」のどちらを選んでも、実は人生にさほどの違いはないかもしれない(!)との主張がラストシーンで描かれている。
――この結論には異論もあると思われる。古代ギリシャのむかしから「幸福の女神には前髪しかない」(彼女には後ろ髪がないので、女神が目の前を通りすぎたら幸福やチャンスは二度とツカむことはできない)などとも云われてきたし、個人の努力を放棄させて人々を自堕落にさせてしまう危険性もあると思う。しかし、やみくもに努力を重ねてもかえって失敗する可能性もあるだろうし、心の休息をとって雌伏の時間をすごすことが必要な場合もあるというかぎりにおいては肯定もできるのだ――



 三郎がひとりで暮らしていた、けっこう豪華な邸宅が更地(さらち)と化したことに驚く充瑠に、今回の事件を契機に三郎は「変わろうとしているのかも?」という見方を為朝が示す。しかし、これに対して充瑠は、


「変わらなくたっていいじゃん!」


と主張する。


 通りがかった書店の店頭に貼られた告知ポスターで、充瑠たちは人気漫画雑誌で三郎の手による新連載マンガがはじまったことを知った。


為朝「たしかに変わらなくてもいいのかもな。自分の中の純粋さを大事にすれば」
瀬奈「いつか誰かのキラメキになる」


 先述したエピソード30の「7番目の新戦士」のイメージシーンで博多南が名乗った「遅咲きクリエイティブ!」ではないが、たとえ今は生きづらさをかかえていても、「邪面」をかぶるくらいならば「変わる」必要はなく、「変わらない」ままでいても、そのキラメキがいつかは認められるときが来る……


 甘いかもしれない。十全なオチではないかもしれない。そのキラメキは永遠に認められないかもしれない。人生はそんなにうまくいかないことも、往々にして真実ではあるからだ。
 しかし、このオチにはそんなにイヤな感じやムリな感じもしてこない。むしろこまっている人間に対しても背中を少しだけ押してくれるような優しい希望も感じられるのだ。
 そのかぎりで、万全なものではなくても、こういうテーマとオチのエピソードがあってもよいのではないか? そんな気持ちにさせられてしまうエピソードでもあった……



 エピソードFINALのラストでは、ヨドン軍壊滅の3ヶ月後に、パイナップルタワーのCARAT基地にキラメイジャーや魔進たち、クリスタリアの王族らがバーチャル会議状態で集結して、久々の再会を喜びあった。
 為朝・瀬奈・時雨・小夜は充瑠が違う世界とつながったからこそすべてがはじまり、皆が出会えたのだと充瑠を賞賛した。


 最終決戦の様相を呈していた第3クール後半から第4クールにかけて、エピソード36で充瑠、エピソード37で瀬奈5号、エピソード40ではゲスト主役の三郎と、生きづらさをかかえる「痛む人」を描いたエピソードを、間を空けずに連打した『キラメイジャー』。


 スケッチブックしか友達がいない、コミュニケーション能力には欠けるハズの充瑠がさまざまな世界とつながり、多大な影響力を示すに至った『キラメイジャー』。


 「強くなれ!」でも「勇気を持て!」でも「あきらめるな!」でもなく、「変われ! 変われる! 変わりたい!!」ばかりでもなく、「変わらなくたっていいじゃん!」をも視聴者に訴えていた『キラメイジャー』。


 たしかに表層的には明朗快活な作風で、久々の「王道」的な印象が強かったが、その根底では実は良い意味での「変化球」が常に投げられていたのではあるまいか? 『キラメイジャー』をテーマ的にも総括するならば、そんなところであるだろう。

2021.3.25.


(了)


『魔進戦隊キラメイジャー』終盤寸評

(文・戸島竹三)


 敵幹部・クランチュラがキラメイジャー側に付いたキッカケ。敵首領・ヨドン皇帝に始末されそうになったところを、キラメイジャーに助けられて改心する「あるある」ネタではなかった。


 自由に「お絵描き」を楽しむキラメイレッドこと充瑠少年の「スケッチブック」に反応し、侵略用に邪面怪人たちを「創造」してきた自身の行為とも同じだと気づいて、


「そうか、お前も『作り手』だったのか……。私と同じように、色々なものをイメージしていたんだな」


と共感して、街中で再会したあとも、ふたりして屋外ステージ用に多彩な色彩の巨大な絵画を共作で作り上げていくシーンは多幸感にあふれていて実に感動的!


 敵キャラのひとりと味方キャラのひとりを「クリエイター気質」の感性という共通点で結びつけたアイデアは新鮮で、またもや唸らされた。


 敵幹部・ガルザがヨドン皇帝に洗脳された回想シーン。彼の心の奥底にあった兄・オラディン王への嫉妬心が利用されたという描写ではなかった。
 それこそ裏切り系悪役「あるある」ネタだから避けたのかもしれないが、ここは少し残念。ベタでもクリエイター気質に必然的にハラまれてしまっている、クリエイターのダークサイド、優秀なクリエイターへの嫉妬ネタも、クリエイター万々歳ではなく、ポジティブな子供向け作品自体を少々相対化してみせるアンチテーゼとしてはほしかったところだ。


 そして、ヨドンナ(本当に素晴らしいヴィラン・ネーム!)。理屈は二の次で生き残ってほしかった……。
 とか思っていたら、映画『魔進戦隊キラメイジャーVS(たい)リュウソウジャー』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220507/p1)に出るじゃん!(時系列が最終回前なのか?) とりあえず嬉しい。


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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スーパー戦隊シリーズ 魔進戦隊キラメイジャー Blu-ray COLLECTION 4 <完>

『キラメイ』総括 「孤高」「変わらないこと」をも肯定!
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