假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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ウルトラマン80 3話「泣くな初恋怪獣」  ~「思い出の先生」のホー登場! 鬱展開なようで明朗さも!

ウルトラマン80』再評価・全話評! ~序文

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100501/p1

ウルトラマン80』第1話「ウルトラマン先生」 ~矢的猛先生!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1

ウルトラマン80』第2話「先生の秘密」 ~「思い出の先生」の塚本登場! 不登校の描き方!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100507/p1


ウルトラマン80』第3話「泣くな初恋怪獣」 ~「思い出の先生」のホー登場! 鬱展開なようで明朗さも!

硫酸怪獣ホー登場

(作・阿井文瓶 監督・深沢清澄 特撮監督・高野宏一 放映日・80年4月16日)
(視聴率:関東13.6% 中部15.1% 関西16.9%)

ウルトラマン80』第3話「泣くな初恋怪獣」 ~合評1

(文・内山和正)
(1999年執筆)


 主人公・矢的猛(やまと・たけし)先生が受け持つ生徒の憎しみと悲しみの心が造ってしまった唯一の怪獣が、今回の硫酸怪獣ホーである。マイナスの心に満たされているのは矢的の生徒ばかりではないのだから、その方が現実的ではあるだろう。しかし結果論だが、「怪獣になってしまいそうな現在(当時)の生徒を救うために教師になった」という設定があった以上は、教え子やその周辺の人物の心が怪獣を育てたり生みだしたりする回は、もう少し多い方がよかったのではないか?


 ガールフレンドが他の男子生徒に走ってしまったために、意図的ではないもののホーを生みだしてしまった真一(謎の霧が真一の心を吸収して怪獣化)。


 矢的が彼に言う


 「愛しているから愛されたい、愛されなければ腹が立つ。でも、お返しを期待する愛なんて偽ものじゃないかな?」


 とのセリフには本放送のとき、私事で恐縮だが自分自身の小中学生時代の身勝手で一方的な恋心を反省させられたものだった。


 矢的は真一を説得するため、故郷にいたころに好きな女の子のために彼女がほしい楽器を2ヶ月間バイトに励んで購入したものの、すでに彼女は別の男性と仲良くなっていたという失恋経験を語る。


 彼こと矢的猛のキャラクターには合致しているのだが、方便としての例え話・作り話ではなく言葉どおりならば、彼がウルトラマンとしてM78星雲にいたころの出来事になってしまう。まるで地球人そのままの生活・文化形態が、ウルトラマンというヒーローの神秘的なイメージを壊してしまうのだ。第1期ウルトラフリークのいう「ヒーローの神秘性」などを過剰に求めていない筆者でさえも少し気にかかる。自分自身も偏見が強かった『80』本放送のころには、こういった設定的な不整合は『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)という作品をマイナスにとらえる要因のひとつともなっていた。


 矢的の説得が直接的には効をなさないのは、抑えきれない彼の感情が安直に解決されないことになるのでよいのだが、このあと真一に改心をもたらすきっかけが、矢的が身を挺して降ってきた瓦礫から彼を守ったためなのは、前回の2話「先生の秘密」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100507/p1)の塚本少年の改心と同じで、パターン化が気になる。真一が自分を捨てたガールフレンドのみどりを捨て身で救う姿は感動したのだが……


 筆者は推理小説マニアでもあり、阿井文瓶氏が脚本家を引退後、阿井渉介名義で書いている推理小説の犯人の性質などを読んでもいるので、真一自身がホーと一体化してみどりを殺してしまうのが、氏の私的感情には(本音のところ)近いのではないだろうか? などと複雑な思いにとらわれてもしまう。まあ、人間いろいろな感情を抱いているし、プロの作家なのだからジャンルに沿ってさまざまに書くだろうし、そんなことを気にしていてはいけないのだろうが。


 恐竜型とは程遠い短足でも人間のような直立二足歩行型のホーがよろけがちに人間のように走るのは、出自を活かした面白い演出だと思うが、足元のみを写したそのシーンと上半身が写るシーンとの動きが合っていないのが残念だ。真一とホーの心の対決も一瞬だけであり、もう少し深く描いてラストの怪獣退治の契機にも絡めてくれたならと思う。


 前回などでは京子先生から好意を持たれていたようにも見えた矢的だが、今回の矢的はまったく相手にされず恋のライバルも現われて振りまわされてしまい、三枚目味がこれまでよりも濃厚・全開であった。好意といっても恋愛以前の気持ちだったのだろうが、コミカルな演出でもあまりに今回は矢的を見捨てすぎているようにも見えて、本放送時は「同じ阿井氏の執筆なのに」と気になった。一年間を通してふたりの進展を描いていくためのバリエーションだったのだろうか?


 女生徒たちに「モテるタイプじゃない」と評された矢的だが、のちのUGM編(13話「必殺! フォーメーション・ヤマト」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100725/p1))以後、城野エミ隊員・気象班のユリ子隊員・星涼子(女ウルトラマンユリアン)……とモテモテになることを思うと、複雑な気分である。



◎タイトルロゴはいままでと同様の青いガラスによる文字が一度出たあと、光学合成で赤い文字に変色するかたちに変更。


◎UGMの戦闘機・スカイハイヤーとシルバーガルの1話と2話での攻撃は光学合成だったが、今回は曳光弾となっている。


◎ミドリをかばって逃がした真一の頭上に、ブロック塀が一斉に崩れ落ちてくるシーンは本編班の担当だが、手間がかかっていそうでスゴい迫力。その直後、ブロックの下敷きになった真一と、遠方の怪獣ホーとの特撮合成も違和感がなくて見事だ。2話につづいて近郊の新興住宅地を舞台に、今回は夜間に変えて怪獣バトルが繰り広げられるが、膨大な数のミニチュアの出来といい、照明といい素晴らしい。


ウルトラマンが怪獣にキックを着弾すると火花が飛び散るのは、金属ではない生物相手に賛否はあるかもしれないが、80年代の東映ヒーローの剣や銃による同様描写を先駆けており、夜間であることもあって美しくてカッコいい。


◎冒頭、ミドリがなびいたサッカー少年である柴田が真一と乱闘している。しかも、柴田からは何もしておらず、真一が手を出してきたとのことだが、真一のガールフレンドであったはずのバトン部の少女ミドリは非情にも、柴田のケガのみを心配して付きっきりで保健室へと同行するあたり、物語としては意外とリアルでシビアな描写である。なお、ミドリは前回のラストシーンでも、中央の目立つ場所に登場している。



落語(らくご)「ミドリもミドリだよ。コロッと裏切っちゃってさあ~」
ファッション「それが女心よ。柴田くんはファッショナブルだしスポーツマンだし。アタシだってああいう人が現れたら、喜んでこうなっちゃう(横に傾(かし)いでみせる・笑)。ねえ、みんな」
女生徒たち「(口々に)そうよ、そうよ」
博士(はかせ)「……あ~あ、女は怖いなあ」



 などと女生徒・ファッションの意見に同意する他の女生徒たちの描写も輪をかけている。このへんは当時の学園ドラマでもあまり見た記憶がない、女生徒たちによる良くも悪くもリアルな本音を見せる描写でもあった。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2000年号』(99年12月26日発行)『ウルトラマン80』大特集・合評8「ウルトラマン80全話評」より分載抜粋)


ウルトラマン80』第3話「泣くな初恋怪獣」 ~合評2

(文・黒鮫建武隊)
(1999年執筆)


 怪獣は人間のマイナスの感情をエネルギーとする――『ウルトラマン80』独自の怪獣観を正面から映像化した、言うなれば基本設定に最も忠実な作品。


 この設定自体は1・2話でも語られてはいたが、今一つ具体性を欠いており、「猛やナレーターがそう言うから、そうなのだろう」という程度であった。対して今回は、猛の生徒・真一が失恋し、その悲しみや嫉妬が怪獣ホーを生み出した、という極めてダイレクトな筋立てとなっている。


 人が失恋する度に怪獣が出てきたら、エライ話である。だが、元々『ウルトラマン80』とはそういう番組なのだから、そこに難癖をつけても意味がない。その基本設定を認めた上で、それがいかに描けているか、に注目すべきであろう。


 そうして見ると、まずホー出現の経緯が良い。いきなりホーが出るのではなく、まず夜空に謎の生命体(?)が出現し、真一のマイナスエネルギーを吸収する。その上で、「うおおーん」という奇妙な声が響き渡るのだ。これがホーの声であり真一の心の声なのだが、嘆き声というか溜息というか、実にそれらしい声で効果を上げている(UGMに入る苦情電話によると、聞いていると気が滅入ってしょうがないそうだ)。


 そして次の晩、より強くなった真一のマイナスの感情を吸収し、今度はホーが実体化するというわけ(なんだか『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)40話「夢」に登場する夢幻怪獣バクゴンを連想させる展開である。こちらの方が先だが)。


 こうした段階を踏んだ丁寧な描写が、「失恋なんかで怪獣が出てたまるか」という感覚を麻痺させる。とどめとして、ただ泣いていたホーが、「オレ、憎いんだ、悔しいんだ」という真一の叫びを耳にした瞬間に暴れ出し、真一をふった彼女(みどり)の家へ向かう場面まで用意されている周到さ。


 ところで、こういう題材だといかにもドロドロした暗い作風を想像しがちなのだが、実際の作品を見ると、そういう印象はあまり受けない。むしろ非常にライトで明るい、見ていて気持ちの良いエピソードなのである。『ウルトラマン80』はそのタイトルからもわかる通り、新時代――80年代――のウルトラマン像を強く意識していた。それが、軽く明るい作りに通じているのだ。好みの問題はあろうが、失恋男が嫉妬に狂って怪獣を生み出す、などという話をサラッと見せてくれるのは『ウルトラマン80』ならではの魅力だ。


 真一とリンクする形で、京子先生にあしらわれる猛の三枚目ぶりをコミカルに描き(近隣の南台中学の北川先生の車に乗って去る京子を見送る、情けない表情が絶品!)、その猛に「無償の愛」を説かせる。正直言って、失恋後数日しか経ていない真一に「見返りを期待する愛なんてニセモノ」と説いたところでその場での説得力はないと思うが(事実、真一は説得されていない)、それでも真一は、みどりを――自分を見直してくれるなどという「見返り」を期待せずに――救いに向かった。


 その自分の行動を後から振り返った時に、おそらく猛の言葉が心に落ちた筈(はず)である。ともあれ猛が地球に来て先生になったのは正にこのような場合のためなのであり、真一を説くこの場面は、ウルトラマン先生の本領発揮と言ってよい。そのつもりで楽しみたいものである。


 本当は筆者としては、ラストシーンで自分の頬を叩きながら言う、


 「男は失恋して失恋して、いい顔になっていくんだぞ。どうだ、いい顔してるだろ?」


 のセリフが、はっきり強がりだとわかる分、「無償の愛」のことも含めて更に真一の心に届いたように思うのだけどね(猛らしいし)。最後まで明るさを貫徹してみせたこのラストも、いかにも『80』らしくて好きだ。


 『80』名物、ナイトシーンの破壊特撮も迫力満点!



(重箱のスミ)


・今回より、メインタイトルのクリスタル文字が最後に合成で赤く着色されて強調される。
・戦闘機「スカイハイヤー」「シルバーガル」のテロップが入る。
・サブタイトルは「初恋怪獣」となっているが、劇中では「初恋」だという説明は一切為(な)されていない。
・みどり役の鈴木真代は『スターウルフ』(78年・円谷プロ)2話に、キャプテン・ジョウの娘役で登場。同話も深沢監督作品。
・オールドミスの教頭先生がナイチンゲールキュリー夫人の話をするが、要するに何を言いたかったのだろう?(笑)
・バックルビーム初使用。しかもナレーションで名称が紹介されるオマケ付き。ちなみにサクシウム光線の名称が劇中で紹介されたのは、何と33話(「少年が作ってしまった怪獣」・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101211/p1)だった。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2000年号』(99年12月26日発行)『ウルトラマン80』大特集・合評1「ウルトラマン80教師編・各話評」より分載抜粋)


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