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怪獣8号・戦隊大失格 ~身体拡張の快感・全能感! 善悪逆転・相対視のモヤモヤ感! 特撮をモチーフにしたマンガ原作の深夜アニメの達成度は如何に!?

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 深夜アニメ『怪獣8号』(2期)が放映中記念! とカコつけて……。特撮ジャンルへのオマージュに満ちた『怪獣8号』(1期)と『戦隊大失格』(1期)(共に24年)評をアップ!


『怪獣8号』『戦隊大失格』 ~身体拡張の快感・全能感! 善悪逆転・相対視のモヤモヤ感! 特撮をモチーフにしたマンガ原作の深夜アニメの達成度は如何に!?

(文・T.SATO)
(2024年8月4日脱稿)

『怪獣8号』(1期)

(2024年春アニメ)


 「怪獣」と聞くや、20世紀の「特撮怪獣」世代の人間たちは少々色めき立つ。もちろん、そんな世代に向けてだけ「怪獣」作品を作っていては広がりもないし、先細りになるだけだとも理性ではわかってはいるものの、アレコレ云いたくなってしまう。まさに老害そのものなのである(笑)。


 個人的には「怪獣」というと、「ウルトラ怪獣」や「東宝特撮怪獣」のイメージなのだ。洋画のクリーチャー・ゲロゲロモンスターではない。それらと比すれば児童ウケする、ツブラなひとみの愛玩動物的な要素も持った存在なのである。


 その意味では本作に登場する「怪獣」たちには少々の違和感を覚えてもいる。しかし、愛玩動物性もある「怪獣」が登場してしまうと、それはもう基本は子供向けの『ウルトラマン』シリーズとの差別化がたしかにできない。


 それは作り手側でも百も承知だろう。子供が読む媒体ではなくマニア向け・青年向け媒体での作品である以上は、本作に登場する「怪獣」たちにはゲロゲロモンスター的な要素を少々強調して、「ウルトラ怪獣」とも差別化せざるをえない。近未来的な科学集団といった『ウルトラ』シリーズの怪獣攻撃隊とは異なり、たしかにリアルに考えれば体育会系の武張った戦闘集団である方がリアルなのだ。そういう意味では「理性」では本作を認めているのだ(笑)。


 それでは、本作はその意味での怪獣モノなのかと思いきや……。そうでもない。変身ヒーローものなのだ。しかして、やはり3原色のスマートな変身ヒーローだと、子供向けになってしまう。よって、白黒モノトーンの骸骨チックな巨大ヒーローに変身してしまうのだ。もちろん、劇中では正義のヒーローには見えないので、新たな「怪獣」の8号として命名されることにはなる。


 むろん、これらの処置も今となっては斬新ではない。80年代あたりのマニアによる創作などにもあったような気がするし、往年の『ウルトラマングレート』(90年)や『仮面ライダークウガ』(00年)の#1などでも、ヒーローが怪獣怪人とも同様の「未確認生物」視をされていて、それはそれで今では新たなテンプレ(決まり切った型)ですらあるのだ。しかしまぁ、リアル寄りに作るのであれば、これもまた新たな歌舞伎的な様式美なのであろう。


 それでは、本作はリアル・シミュレーション路線なのかと思いきや……。そうでもない(笑)。リアリズムよりも熱血ド根性が勝利する精神主義的な「少年バトル漫画」的なノリの方が優先されている世界観でもあったのだ!



 巨大怪獣に苦戦する中型ヒーロー怪獣こと、怪獣8号に変身している体育会系オジサンが気合いを入れて絶叫したり、拳を握りしめる!


 すると、その背景美術にはマンガ的な大量の流線作画が流れ出す!


 時間も引き延ばされてスローモーション映像となる!


 誇張・極端化されたパースペクティブ(遠近感)で拳や腕が突き出されていく!


 パンチが決まるや、「質量」×「速度の二乗」の「運動エネルギー」をも上回るような威力で、敵怪獣をブッ飛ばす!!


 このテの作品の毎度ながらの物理法則を超えたインチキではある。しかし、フィクションとしては実に壮快なのである(笑)。


 そういった描写でも、「怪獣モノ」ではなく「少年バトル漫画」寄りといった印象を受けているのだ。
 もちろん、それらはアクション演出の部分である。人間ドラマ的には、怪獣攻撃隊で戦うことを希望する熱いオトコでありながらも、入隊試験に落ち続けて30代に突入してしまったオジサンの奮闘劇である。
 しかして、入隊がかなったオジサンと年下の青年同僚たちとの群像劇でもある。そして、怪獣攻撃隊の女隊長となった幼馴染へのイイ歳こいたほのかな恋情もある。
 怪獣の幼体に寄生されて、ヒーロー怪獣に変身できるようになってしまった、自身の正体を隠すためのドタバタ喜劇でもある。


 フツーに面白いとは思う。しかしてまた別の、人間に擬態した知性を持ったヒト型の怪獣も、ライバル的に登場してくることで、シリーズを通じた強敵をも設定している。


 てなワケで、充分に面白いのだ。しかし、実にメンドくさい老害なのだけど、本作のような作品を「怪獣モノ」の正統後継者のように持ち上げることには抵抗があるのであった(笑)。
怪獣8号 アマゾンプライム
第1話 怪獣になった男

(了)


『戦隊大失格』(1期)

(2024年春アニメ)


 5原色の変身ヒーローが活躍するスーパー戦隊と、悪の軍団との戦いはすべて茶番・出来レースでもあった!
 悪の軍団もたいがいだが、正義のスーパー戦隊もどうもオカシイ。怪しい。その正体はモラルに欠ける人間ばかり。どころかハッキリと冷徹であったり、エエカッコしいの二枚舌の持ち主であったり、いっそ人格破綻者やサディストばかりが集っている……。
 そんな彼らの横暴に対して恨みを募らせていた悪の軍団の戦闘員クンは、人間に擬態して「大戦隊」なる防衛隊に潜り込み、スーパー戦隊候補生の爽やか青年クンの助力も得て、彼の姿に擬態して、他の候補生たちとも期せずして親交を結んでいくのであった……。


 5原色の特撮変身ヒーローが活躍するスーパー戦隊シリーズのパロディーである。パロディーではあるのだが、パロディー的な楽しさやウィットやユーモアなどはない。ひたすらに陰々滅々とした作風である。正直に云って、個人的にはあんまり面白くはない。いや、単なる個人の好みを云っているのではない。客観的に観ても話運び・作劇があまりウマくはいっていないようにも私見するのだ。


 加えて、戦闘員が爽やか戦隊候補生に擬態しているゆえに映像的にも分かりにくい。そこに戦闘員の顔面もウスくオーバーラップさせたり内心の声なども多用してほしいのだ。


 もちろん、ヤリたいことはわかる。「善悪」を疑ってみせる。疑いはするものの、疑ってもなお残る「正義」ならば実在もするのでは? それであれば、その「正義」は万全ではなくても、信ずるには値するのではなかろうか? 相対化しつつも絶対化もする。最終的には漠然としたものではあっても「正義」はある! 具体的な固形物としてではなく、かろうじて理念としての「正義」は実在するのだ! そんなところをねらっているとは思うのだ。


 しかし、出来上がった作品を観るかぎりでは、「混迷」の一言。「最終着地点」――真の「正義」なり――を「北極星」のように遠景として定点にはできていないので、ひたすらに一応の劇中内での正義たるスーパー戦隊の組織内部での露悪的な険悪さや、彼らのゆがんだ過去(笑)などが描かれていく……。


 これはこれで既視感あふれる「善悪逆転モノ」に過ぎない。


 でもまぁ、アメコミヒーローチーム・アベンジャーズもどきの実態が悪辣な人格破綻者ぞろいであって、エエカッコしいのためには、人命救助の失敗を糊塗するために隠蔽にも走っており、超高速で走行できるアメコミ超人ヒーロー・フラッシュもどきに衝突されたことで恋人を亡くしてしまった青年による復讐劇を描いたアメリカのTVドラマ『ザ・ボーイズ』(19年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201004/p1)にも通じる内容のハズではあったのだ。


 しかし、あちらが次はどうなる!? この次はどうなる!? といったストーリーへの興味関心を惹起するのに対して、こちらはそうでもない。それは本作がスーパー戦隊の基地内の密閉空間や、ビルの屋内での特訓光景に、内紛劇などに限定されているので、話に広がりがない、といった一因もあるのであろう。ちょっとしたことだとは思うのだ。


 あとは、やはりアリがちな「垂直」と「水平」の混同である。「国vs国」、「組織vs組織」であれば、たしかに「どっちもどっち」的な「相対」的な要素が強いであろう。それらのなかで唱えられている「正義」であれば、それに疑問を持つこと自体はまぁ正しいのだ。


 しかし、真の「善悪」とはそういったものではないであろう。他人をイジメておとしめて悦に入ったり、マウントを取って自身の優位性を誇る行為や、他者に危害を加えてみせるような行為は、「相対的」なものではない「絶対的」な「悪」なのだ。


 「ミーイズム」や「エゴイズム」ではなく、「公平」「博愛」的にふるまって、弱者に救済の手を差し伸べるような行為は、「相対的」なものではない「絶対的」な「善」なのだ。


 そこを抑えていないと、あるいはそこに立ち返っていかないと、「善」も「悪」も何もない単なる「ニヒリズム」であって、そのことに開き直った輩による「悪」の蔓延をさえ惹起する浅知恵でしかないのだ。


 で、ググってみると……。エッ!? あの良作ラブコメ『五等分の花嫁』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201018/p1)の作者さんの次作が本作であったの!? エ~、大ヒット作の次作として自由に(?)描かせてもらえたならば、こんなに悪い意味でマニアックな作品を描いちゃうの!?


 そういや、「週刊少年マガジン」連載のヤンキー教師マンガ『GTO』(96年)の作者さんによる、同作の大ヒット後の『ひみつ戦隊モモイダー』(03年)なるスーパー戦隊のパロディー漫画はツマらなかったものだ(汗)。


 やはりお絵描きを仕事にするマンガ家センセイの正体は、往々にしてオタクでもあるものだ。編集者がマーケティングの上でのお題や縛りを与えて初めて、傑作なり商業的な成功作もできるといった要素も否めないのであろう。
戦隊大失格 アマゾンプライム
戦隊大失格

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.89(24年8月8日発行))


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