『波よ聞いてくれ』『イエスタデイをうたって』『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』『ぐらんぶる』『この音とまれ!』『殺し愛』『グレイプニル』 ~純オタ向けとは異なる、漫画原作アニメの良作の数々!
『うる星やつら』『つぐもも』『小林さんちのメイドラゴン』『よふかしのうた』 ~異界から来た美少女キャラとの同居ラブコメにも今昔!(非日常・異能よりも日常性が強調・好まれる傾向)
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実写TVドラマ版『パリピ孔明』(23年)が放映中記念! とカコつけて……。週刊青年マンガ誌連載マンガが原作である、2022年春アニメの深夜アニメ版『パリピ孔明』・『ダンス・ダンス・ダンスール』(共に22年)評をアップ!
『パリピ孔明』『ダンス・ダンス・ダンスール』 ~純オタ向けとは異なるナマっぽい人物描写!(優劣ではなく) 青年マンガ誌連載の傑作&良作!
(文・T.SATO)
『パリピ孔明』
(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)
「パリピ」とはパーリー・ピーポー。パーテイー・ピープルの訛(なま)りの略で、パーティーを好む軽薄な人々。
「孔明」とは古代中国にて魏・呉・蜀の3国が三つ巴の戦いを繰り広げた時代の『三国志』に登場する、実在の天才軍師・諸葛孔明(しょかつ・こうめい)のこと――魏の歴史書「魏志 倭人伝」の時代なので、卑弥呼の時代の人物ですネ――。
死後に現代日本の渋谷に転生(転移?)した、往時の服装に羽毛扇を持ったままの孔明。
彼が現代日本社会や若者文化を、偶然に知り合った若きシンガーソングライターの少女からの教授や彼女のスマホやWikipedia(笑)などで徐々に事情を理解し、軍師もといマネージャーとして彼女をスターダムに上げようと知略をめぐらしていく……といった実にマンガ的な楽しさに満ちあふれた作品である。
現代日本に転生した孔明という一点や、死亡時の年齢よりも若返った身だとはいえ現代日本の若者音楽をノイズと感じずに大感銘を受けるあたりは、非リアルなマンガそのものである――そもそも日本語を解しており、ソコにセルフ・ツッコミも入ってはいる(笑)――。
しかし、そこのSF合理的な理由・説明などでモタついてしまっては、孔明と少女やその周辺人物たちとの人間ドラマ・物語がサクサクと行かなくなるのでご愛嬌であろう。
対するに、本格的な歌手をめざしている先の少女による、酔い潰れた孔明を招き入れた彼女の下宿のたたずまいや、孔明が転生者だとは信じない、そもそも孔明とは誰なのか?(笑) といった彼女の住まいの室内やリアクションの方で、虚構作品なりのある種のリアリティや地に足が着いた生活感の担保も作っている。
アーパーなようでも高校の修学旅行で自身の家庭環境や孤独さに苛まれて、渋谷駅で衝動的に電車に飛び込もうとしたところを、今の彼女が歌っているクラブのオーナーに救われたとすることで、少女とオーナーの人物像も確立、視聴者の感情移入も喚起する。
強面のダンディーなオーナーは、実は重度の『三国志』マニアだともすることで、孔明とも意気投合して、眼前の事象にも通じるモノがあるあまたの「史実」を語り出すギャグ要素も大量に投入(笑)。
これらが確立できれば、敵対勢力や味方として立ち現れてくる、
●胃弱な小柄のラッパー少年
●強面の大柄ラッパー青年
●すでに知名度を持った人気女性歌手
●実は喉が弱いボーカルのインディーズバンド
彼らとのやりとりでも、少女や孔明と相手方のキャラも引き立ってくるのだ。
最後に立ちはだかるのは、少女とも意気投合していた路上ライブをしていた女性。その女性の正体は仮面舞踏会のアイマスクをした人気ガールズバンドのボーカル!
彼女らには巧妙なマーケティング戦略を駆使する敏腕プロデューサーがいて、女性はその方針に反発して放浪、路上ライブをしていたというのだ。
そして、夏の大型野外ライブの出場権を賭けて、渋谷の交差点でのゲリラライブを舞台に歌唱対決のクライマックスを作っていく!
といったところで、ムチャクチャに面白い。
もちろん、孔明が随所にカラんでこなければ、この作品は看板倒れになってしまう。そこで、孔明は『三国志』オタクはご存じ、劇画『子連れ狼』などでもおなじみの「石兵八陣」(八門遁甲の陣)を用いてライブ会場での人流の導線を誘導したり、奇策を弄したり、二手三手先を見据えた手を打っていく――むろん、先に敵が小細工を弄していることから来る「反撃」の位置付けとなっているので不快感はない――。
とはいえ、ゲームチェンジャーとしての役回りだけではなく「人間通」でもあるので、当世の若者たちの懊悩や自己実現にも思いを馳せて気持ちも寄せている。
死出に戦のない世への転生を願っていたように、彼が生きた時代と比すれば実に平和な時代への感謝の気持ちも持っており、作品世界を俯瞰した存在へと高めることで、登場の必然性も確保ができているのだ。
『ダンス・ダンス・ダンスール』
(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)
男子バレエが題材の作品。といっても、バレーボールではなく、踊りの方の男子バレエに興じている中学生男子クンを描いた作品である。
まぁまぁ面白い。ややマイナーなジャンルやスポーツでも、現実世界に存在する事象にスポットを当てることで、スポ根(スポーツ根性)的でもリアルな肌ざわりも併せ持った作品にもなっている。
マイナーだからとマーケティング的にも黙殺するのが正しいワケでもない。「商品」や「物語」は時に新奇な目新しさも必要だ。埋もれた潜在ニーズを具現化、ニッチ(隙間)なところを拡幅してタネを植えて稔らせる。
大学生男子がチアダンス活動する小説原作の深夜アニメ『チア男子!!』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190603/p1。19年に実写映画化)などもまぁまぁ面白かったけど、やはり現実ヘイト(現実的な日常がキライ・笑)な一般的なオタにはウケないのであろう。しかし、個人の好みは棚上げしてマンガ・アニメジャンルの大局を見据えたかったり、物語の「作劇術」の何たるかをドコかで究めたいような方々には、観て損はないとも思われる作品なのだ。
やはり本作も題材以前に、視聴者を感情移入させるに足る「導入部」や、たとえ偏見だとしても誰もが自然と想起してしまう「女子がするバレエを男子がするだなんて……」といった疑問を前面化するかたちでフック(引っかかり)も作っている。
すなわち、世間一般での風潮を知らない幼児のころには偏見なくバレエにあこがれて練習にも励んでいたのに、同級生男子たちから「ヘンだ!」と蔑まれてしまったことで主人公少年は一度はバレエをやめており、「男らしくあらん!」と東洋武術に鞍替えしていたとするのだ。
たしかに微塵たりとも男子バレエに習熟することを疑わずに一直線であることは潔(いさぎよ)いやもしれない。しかし、一般ピープルの感覚とは遠すぎる。男子バレエが恥ずかしくなって一度は離れてしまったような御仁の方が、筆者も含めた世間一般・大多数の視聴者には感情移入もしやすいことだろう。
こーいう「助走台」こそが重要で、ソコさえウマく行けば、あとのストーリーにも感情移入して乗っていける。逆に云うならば、ソコに瑕疵(かし=欠点)があると乗っていけないものなのだ。
むろん一般的な物語としては、まったくのド素人が苦労を重ねて強くなり、巨大な宿敵を打ち倒していく方が面白い。しかし、変身ヒーローものならばともかく、現実的には素人が巨敵を倒すことなどは困難だ。
なので、本作の主人公男子クンも一見は素人。偶然の流れで転校生のヒロイン女子に誘われて彼女の母親が経営するバレエ教室を見学したところで、むかし取った杵柄(きねづか)が騒ぎ出して見事なバレエを披露する!
しかして、ヒロインの母親は冷徹だ。彼を挑発することで、もっと彼の才能を引き出そうとするのであった。
といったところで、自発性なのか? 人の手のヒラの上なのか? この両者もまた厳密に選り分けることができるのか!? といった根源的な難題までをも感じさせている。
それと同時に、ライバルとなる混血バレエ少年やまた別のバレエ少女との出逢いも重ねさせて触発させていく。
けれど、学校では思春期のモテ/非モテ的なカッコよさ基準の酷薄なスクールカーストもあるので、バレエを習いだしたことを隠していたりもする。
しかし、ライバル少年がイジメられたことで、男気を出して助け船を出したところで、その加害者少年こそ自身が幼少期にイジメていた当の相手でもあった事実にも直面させられたりもする! といったあたりでも、実に滋味あるドラマを構築できているのだ。
アイススケートやスケボー(スケートボード)を扱った近年のこのテの作品同様に、バレエのシーンこそが肝なので、そのあたりは実にリアルでスタイリッシュな映像を表現もできていた。
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http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040407/p1
『パリピ孔明』『ダンス・ダンス・ダンスール』 ~純オタ向けとは異なるナマっぽい描写! 青年マンガ誌連載の傑作&良作!
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