假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

ウルトラマン80 47話「魔のグローブ 落し物にご用心!!」 ~ダイナマイトボール攻撃が強烈!

(YouTubeウルトラマン80』配信・連動連載予定・汗)
『ウルトラマン80』#45「バルタン星人の限りなきチャレンジ魂」 ~俗っぽい侵略の超合理性!
『ウルトラマン80』#46「恐れていたレッドキングの復活宣言」 ~人気怪獣・復活月間の総括!
『ウルトラマン80』 総論 ~80総括・あのころ特撮評論は思春期(中二病・笑)だった!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


『ウルトラマン80』全話評 ~全記事見出し一覧


ウルトラマン80』第47話『魔のグローブ 落し物にご用心!!』 ~ダイナマイトボール攻撃が強烈!

紫外線怪獣グロブスク登場

(作・石堂淑朗 監督・東絛昭平 特撮監督・佐川和夫 放映日・81年3月4日)
(視聴率:関東8.2% 中部12.0% 関西11.9%)


(文・久保達也)
(2011年6月脱稿)


 今回は珍しく防衛組織UGMの気象班・小坂ユリ子隊員とオオヤマキャップ(隊長)のカラみから物語がはじまる。
 ここ数日、太陽光線の中の「紫外線」の分量だけが減少を続けているという異常事態にユリ子が気づいたのである。


 夕焼け空の中に突如として浮かび上がった美しいオーロラを見上げる市民たち。そして、その隠した正体は我らがウルトラマンエイティこと主人公・矢的猛(やまと・たけし)隊員とウルトラ一族の王女さま・ユリアンこと星涼子(ほし・りょうこ)隊員。
 しかし、日が沈むとともに、そのオーロラもまた姿を消していった…… そのあとに起こる怪事件の前兆を端的に表現した、実に秀逸(しゅういつ)な導入部の演出である。


 少年野球チームでセンターを務める玉井正(たまい・ただし)。


・第41話『君はゼロ戦怪鳥を見たくないかい?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110205/p1)のゲスト主役が「ゼロ戦おたく少年」、つまり「戦闘機」ネタだったから「武」の一文字を付けて「武夫(たけお)」
・第42話『さすが! 観音さまは強かった!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110212/p1)のゲスト主役は、観音像に「願掛け」をするような信心深い少年だから、「信仰」の「信」の一文字を取ってきて「信夫(のぶお)」


 彼らに続いて、野球少年だからその名前に「玉」の一文字を入れるとは、実に『80』での石堂脚本回らしい漫画チックなネーミングである(笑)。


 彼は試合中にエラーをして、相手チームの打者にランニングホームランを与えてしまった。


「バカヤロ~~っ!!」
「なにやってんだよ~~!!」
「帰れ、もう~っ!!」


 とチームメイトからは猛烈な非難の嵐。


 正クンは手にしたグローブを見つめて、ゲンコツで殴って地面に叩きつけた!


正「クソっ! おまえが悪いんだ! おまえのせいだぞ~っ! クソ~っ!」


 叩きつけたグローブを足で強く踏みつけてしまう正クン。
 運動オンチの筆者としては、かつては正クンと同じように球技大会ではクラスの足を引っ張ることばかりやらかしていたために――もうそれだけで立派なイジメの対象となってしまう――、この場面には妙に感情移入をしてしまうのだ(笑)。


 そのままグラウンドにグローブを放置して帰ってしまう正クンだった。しかし、帰宅した正クンは、母・よし子にこっぴどく叱られてしまう。


 ちなみに、同じく石堂先生が脚本を執筆された第45話『バルタン星人の限りなきチャレンジ魂』のゲスト主役・山野正也(やまの・まさや)少年の母の名前も「よし子」であった。怪獣の出現理由のユニークさや、抱腹絶倒のセリフ漫才などのアイデアが光る石堂先生も、このあたりは安直だったりする(笑)。


よし子「あのグローブは3年間、ずっとアンタの左手の友だちだったのよ~! 4月から中学に行くアンタの小学校の最高の思い出の品じゃないの!?」


正「だってアイツのおかげでランニングホームラン喰らって、ぼくは最低守備賞をもらったんだぞ!」


よし子「そんなのグローブさんの責任じゃないでしょ! 正の守備がヘタだったからでしょ! ひろってらっしゃい! でないとウチに入れません!」


 「グローブさん」(爆)などと野球のグローブごときに敬称をつける一方で、「守備がヘタだったから」(爆)などと傷心する正クンにさらに追いうちをかけてしまうようなママ・よし子!
 実に正論なのだが、たとえ正論であってもそれが人の心を救ってみせるとはかぎらないのである(汗)。しかしだからと云って、グローブや他人のせいにする正クンのことをアリのままの姿で受けとめてあげればよい! というものでもないのがまたムズカしいところではある。それで世の中を甘く見てナメてしまって自堕落に走る子供たちも全員とはいわず一定数はいる以上は、時として「愛の鞭」としての叱責も必要なのである。
 そのあたりの「子育て」や「人間関係」における機微というものは「飴」と「鞭」、押したり引いたりの永遠の「綱引き」なのである(笑)。


 そして、そのやや強くてキツく出てくるママの姿はまた、同じく石堂先生が脚本を執筆された第41話『君はゼロ戦怪鳥を見たくないかい?』において、競技大会中に行方不明になってしまったゼロ戦のラジコン模型を必死で捜そうとするゲスト主役の同じく小学6年生・斉藤武夫(さいとう・たけお)クンの母親・美絵子(みえこ)が、


「もしゼロ戦がもう出てこないようでしたら、あなたのゴルフ棒も売ってください!」


 などとその旦那さんである秀夫を脅かしていたサマをも彷彿(ほうふつ)とさせるものがある(笑)。



 この回で美絵子が語っていた、古代中国の格言「玩物喪志(がんぶつそうし)」。


「物にこだわり過ぎると人間がダメになるってこと」


 という「物に執着しすぎることへの警鐘」と本エピソードでの「物を大切にしようという警鐘」は、真逆であり矛盾するものではあるけれど(笑)。


 両者をアウフヘーゲン、弁証法的に止揚をするならば、そのドチラであっても両極端はイケナイのだ! ということが「人の世の真実」ということになるのだろうけど、もちろん本エピソードや第41話『君はゼロ戦怪鳥を見たくないかい?』の作品テーマがそうであったということでもない。
 こういう複雑怪奇で矛盾に満ち満ちた、あーでもないこーでもないという、大局を見据えたようなお話は、「子供向け番組」や「道徳説話」などにはなじみにくい種類のものだから(笑)、また別の「物語」の形式ではない「評論」や「人生訓」などのかたちで言及すべきようなことなのだろう。




 やむなく「グローブさん」(笑)を取りに戻った正クンだが、なぜかなかなか見つからない。ここのシーンは野球のバットで落ち葉をカキわけて空を見上げて何度もタメ息をついたりと演出や演技も実に細かい。
 第45話『バルタン星人の限りなきチャレンジ魂』評(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110327/p1)でも引用させていただいた、書籍『君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版・06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124))で星涼子役の萩原佐代子(はぎはわ・さよこ)がインタビューで言及していた、子役に対しても決して容赦はせずに怒鳴っていたらしい東條監督の手厳しい演技指導の成果だろうか?(汗)


 木々の間から太陽の日差しが照りつける描写が、さりげなくその後の伏線ともなっている。


 やがて、めでたくグローブを発見した正クンだったが、


「こら、グローブ! ホントはボクは、おまえなんか許してないんだぞ! おまえを連れて帰らないと、ママがウチに入れてくれないから、仕方なしに連れて帰るんだぞ!」


 と、母のよし子同様に「グローブ」を擬人化して話し掛けている(笑)。


 このあと、正クンは危機に見舞われるのだが、終始こんなコミカルな調子なので、良い意味で本話は楽しい滑稽味の方が先に立ってしまうのだ。


 そのとき、空に美しいオーロラが輝いた!
 そして、そこから火の玉のような赤い物体が地上に接近!
 あたり一面がムラサキ色の光に染まって、赤い物体から白い波状光線がグローブに向かって発射された!


 脚本家や監督はそれぞれ異なってはいるものの、


・第33話『少年が作ってしまった怪獣』(作・阿井文瓶・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101211/p1)で、ゲスト主役の健一少年が作った怪獣人形に憑依(ひょうい)して工作怪獣ガゼラと化し、城野エミ(じょうの・えみ)隊員に「怪獣の魂」と名づけられたナゾの発光体
・第38話『大空にひびけウルトラの父の声』(作・若槻文三http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110115/p1)で、中津山上空の雲海に潜んでおり、怪獣の絵が描かれていた凧(たこ)に取り憑いて心霊怪獣ゴースドンと化した「怪獣のオーラ」


 それらに近いイメージで、今回のナゾの赤い物体は描写されている。


 とはいえ、見た眼的には近いものがあっても、純物理的・純科学的な存在である「紫外線」による超常現象によって発生した今回の事件が、先の「怪獣の魂」や「怪獣のオーラ」と同等のものだとするのは、やや強弁にすぎるだろう。
 『80』第1クールの「学校編」の設定の消滅とともに、人間の負の感情によって発生するマイナスエネルギーという設定も一度は消滅してしまった。しかし、先の第33話や第38話の「怪獣の魂」や「怪獣のオーラ」は広い意味ではマイナスエネルギーだったとはいえるだろう。とはいえ、これらは人々に由来する負の感情によって発生したものではなく、元からあった悪の精神生命体・精神エネルギー・悪霊のようなものだろう。
 そういう意味では「学校編」におけるマイナスエネルギーとはイコールではないし、紫外線に至ってはムラサキ色の光よりも波長が少々短い単なる「光」でしかないのだからマイナスエネルギーですらなかったかもしれない(笑)。


 これは何も『80』という作品の設定的な不整合を批判しているのではない。むしろ思春期の少年の負の感情=「マイナスエネルギー」や、空中に浮遊している茫漠(ぼうばく)とした「マイナスエネルギー」と呼応しあって、自然と怪獣が実体化を果たすという設定の方に、「精神エネルギーの実体化」という概念自体が後年のジャンル作品のように一般化していなかった当時の視聴者たちは、ややムリを感じていたのも事実なのである。
 『80』序盤でのマイナスエネルギーがもっと明瞭ないかにもな異物であったり、明確な悪意を持った存在ではなかったところに、『80』は勧善懲悪活劇としては「弱み」を抱えてしまっていた。
 それならば、少年の負の感情に加えて「怪獣の魂」や「怪獣のオーラ」や「異次元人ヤプール」のような媒介物を通じて怪獣を出現させた方がまだムリはないのである。だから、マイナスエネルギーという設定にも通底していくような「怪獣の魂」や「怪獣のオーラ」といった存在を登場させて、ゆるやかに作品を変節させていく手法は、あくまでも結果論だが『80』という作品の「初志」をかえって貫徹させることにもつながったようにも見えるので、これはこれでよかったのではなかろうか?



 驚いて木の陰に隠れた正クンの眼前で、「グローブさん」(笑)は発光してムラサキ色の奇妙な物体へと変化を遂げた!


 それはグローブというよりかは、人間の手のひらを下に向けた状態の姿に、触角を生やして目と口も備えている。
 正クンのグローブは、紫外線怪獣グロブスクと化してしまったのだ!


グロブスク「ヒャハハハハハ!」


 UGM専用車・スカウターS7(エス・セブン)で紫外線の調査で巡回している矢的とユリ子。フロントガラスに映っている景色でわかるように、実際には市街地を走るスカウターS7の後部座席からの主観映像で、運転席の矢的と助手席のユリ子の会話の場面を捉えている。
 しかし、ユリ子の横顔はずっと映しだされてはいるものの、矢的の横顔はまったく映されていない。実際に運転しているのはUGMのヘルメットと隊員服を着用した吹き替えの人物であるようだ(?)。
 セリフをしゃべりながらの運転はやはり危険だし、当時の特撮ジャンル作品は基本、アフレコ(アフター・レコーディング)であとで声入れするからこその演出なのだろう。
――ハリウッドのアクション映画なども、走行する列車の上やクルマなどに録音技師まで搭乗させるのは危険だし、爆発やクルマのエンジン音や走行時の風切り音などで人間のセリフがうまく録音できないので、そこはアフレコだったりいっそ全編まるごとがアフレコだったりすることもあるそうで、アフレコという手法もけっこう一般的なものなのだ――。


 しかしながら、続いて車内のルームミラーに運転席の矢的の姿を映しだすことにより、矢的を演じる長谷川初範(はせがわ・はつのり)が実際に運転しているかのように錯覚させるハッタリ演出は見事である。ここのカットは実際には停車状態で撮られたものだと推測するので(笑)。


矢的「海水浴などで(肌を)焼きすぎると水ぶくれになる。あれが紫外線の作用だったね」


 ユリ子と紫外線について語る矢的の姿に続いて、


・画面中央に太陽を配して、そこから猛烈に紫外線が大地に降りそそいてくるかのようなイメージカット
・そして奇声を発して地面スレスレに宙を浮遊して、正クンを翻弄(ほんろう)してくるグロブスクの姿


 と、この両者の活動の「活発化」に関係性があることを明示している切り仮しのカットが、ベタだが映像作品というものの基本を押さえてもいる。


正「コラ! もういっぺん使ってやる! もうエラーするな!」


 野球でエラーしたことをいまだにグローブのせいにしている正クンが、ひざまづいてグロブスクにさわろうとするや猛烈な火花が飛び散った!


 正クンをカラかうかのように、奇声を発して宙を浮遊するグロブスク!


正「あっ、逃げるな! おまえに逃げられると、ボクは家に帰れなくなってしまう! あっ、待て!」


 グローブが怪獣化したことの方がふつうは「恐怖」になるハズなのに、正クンにとってはそんなことよりもウチに入れてもらえないことの方がよほど「恐怖」であるらしいことが、本話の滑稽味をいやます。
 しかし、奇声を発して宙を飛び回る「グローブさん」を連れて帰った方が、よけいに家に入れてもらえないのではなかろうか?(笑)


正「あっ! おまえ、グローブのくせにナマイキだぞっ!」


 落ちていた棒切れでグロブスクに殴りかかる正クン。
 激しく火花が飛び散って、やっと恐怖を感じたのか、助けを求めて叫びだす正クン!


 非常事態を察知した矢的隊員が現場に到着した!


 だが、グロブスクの姿を見た矢的は開口一番……


「ン? なんだ? 青いカニか?」


 まぁたしかに巨大怪獣ではないし、ただの浮遊する小型生物だから、ヨコ長なカニのような姿に見えたのだろう(笑)。こういうところで瞬間、ズラしを入れて「緩急」を付けてみせるのも石堂脚本の特徴である。


 ちなみに石堂先生は、


・『マグマ大使』(66年・ピープロ フジテレビ)第47話『電磁波怪獣カニックス 新宿に出現』~第48話『東照宮(とうしょうぐう)の危機・電磁波怪獣カニックス大暴れ』の前後編では、電磁波怪獣カニックス
・『帰ってきたウルトラマン』(71年)第23話『暗黒怪獣 星を吐け!』では、カニ座怪獣ザニカ
・『ウルトラマンタロウ』(73年)第7話『天国と地獄 島が動いた!』では、大ガニ怪獣ガンザ


 などのカニの怪獣を幾度か登場させている。ザニカのみならずカニックスも、『マグマ大使』のレギュラー敵である宇宙の帝王・ゴアが蟹座から呼び寄せた怪獣だった。そして、石堂先生自身が1932(昭和7)年7月17日生まれの蟹座だったりする(笑)。


正「カニじゃないよ。ぼくのグローブだよ。グローブに急にムラサキ色の光が入ってこうなったんだよ!」
矢的「ムラサキ?」


 それを聞いて直感したのか、グロブスクに計器を向けるユリ子。


ユリ子「大変です! このグローブは紫外線の固まりです!」


 樹木の上に跳び上がるグロブスク!


 一見マヌケなグロブスクの顔面の表情だが、やはり太陽から紫外線が放出されているイメージカットに続いて、それを吸収してエネルギーとしていることを象徴するかのように、グロブスクのギニョールを内部から空気で膨らませる演出は、お約束でもこうでなければダメである(笑)。


 グロブスクの目線から俯瞰(ふかん)して見下ろされている矢的隊員が、UGMの専用光線銃・ライザーガンで狙撃!
 両目を左右にギョロつかせるアップのあと、グロブスクは一同をあざ笑うかのように宙を舞って、木の茂みへと隠れるように姿を消してしまう……


矢的「あっ、消えた!」
正「グローブがないと家に入れてもらえない……」


 この両者の発言は噛み合っていないぞ!(汗) この期(ご)に及んでも、グロブスクの脅威よりもオウチに入れてもらえないと泣き出す、春からはもう中学生になるハズの意外と子供じみている正クン(笑)。


 このシーンに続く場面として、矢的とユリ子がよし子に事情を説明して、正を自宅に入れてくれるように説得する場面が撮影されたものの、尺の都合でカットされたのかもしれない。実際、このシーンに続く玉井家の食卓の場面は、父・太吉の以下のセリフからはじまるからだ――いやまぁ、脚本の段階で存在しなかった可能性もあるけれど・笑――。


太吉「フ~ン、UGMが正のために、幼稚園の子だって信用しないようなウソをついてくれたのか?」
正「ウソじゃないってば! グローブがオバケみたいに逃げてっちゃったんだよ!!」


 「幼稚園の子だって信用しないようなウソ」(爆)。たしかに怪獣や宇宙人が頻出するウルトラシリーズの世界の中でも、そのへんの野球のグローブが意志を持って逃げだしただなんて、幼稚園児でもなかなか信用しないだろう(笑)。


 お茶を入れながら、さらに正クンに追い討ちをかけてくる母・よし子。


よし子「はいはい、そのウソはホントじゃありませんねぇ」(笑)
正「知らない!」


 お茶碗のご飯をカキこんでいる正クン。お約束の家族団欒ではありながらも、ディスコミュニケーションは存在しており、しかして決定な決裂までには至っているワケではないところでの「和」と「不和」が常に同時にハラまれてもいる、人間関係の基本そのものといってもよい(笑)、よくあるホームドラマ描写ではある。


 やはり同じく石堂先生の脚本&東條監督の担当回であった、先の第42話『さすが! 観音さまは強かった!』のゲスト主役・岩水信夫(いわみず・のぶお)少年の一家の食事風景も彷彿とさせるものがある。


 ところで、今回のこの食事場面では終始、踏切が鳴る音と電車の走行音が流れている。先の正クンが母・よし子に玄関前で叱られている場面の直前に、踏切と小田急線の電車が走行するカットが比較的長目に挿入もされている。正クンとよし子の会話の前半部分でもやはり踏切と電車の走行音が流れて、玉井家が鉄道沿いにあることが表現されているのである。
 食事風景のみならず、このような細やかなインサート映像や効果音による演出によっても、所帯じみた生活臭が絶妙に醸(かも)しだされていくのだ。



オオヤマ「ブラックホールに吸いこまれると、その中の物凄い引力の作用で、地球もキャラメル1個くらいに縮むというから、紫外線がなにかのキッカケで凝り固まって、グラブ(グローブ)くらいの大きさになっても不思議はないんだなぁ」


 「紫外線」も人間に可視化できない波長の「光」のことだから、この発言に当時のウルトラシリーズファンの子供たちや特撮マニアたちであれば、『帰ってきたウルトラマン』第35話『残酷! 光怪獣プリズ魔』に登場した「光」そのものが凝縮して誕生した光怪獣プリズ魔(ひかりかいじゅう・プリズマ)のことをついつい連想しただろう。しかし、芸術的で非人間体型で半透明クリスタルの巨大オブジェのようだったプリズ魔と、もろに野球のグローブの姿をしているグロブスクでは、SF味においては天と地ほどの品位の違いは生じているのだが(笑)。


――余談だが、ジャンル作品で「光」が無条件に「善」だの「神」だのを意味するようになるのは、オカルト・キリスト教的な世界最終戦争(ハルマゲドン)のイメージが流布した80年代以降のことである。よって、70年代初頭のプリズ魔における「光」とは、価値中立的で単なる物理的な存在であり、そこに道徳的・宗教的な善なる「光」の意味はまだ込められていなかったあたり、良い悪いではなく「時代の空気」の違いといったものが忍ばれる――


 UGM司令室では続けてユリ子がパネルを使って、紫外線についての解説をはじめる。大気中の「オゾン層」が人体に有害な「紫外線」を食い止めており、「地球」を「人体」だと例えれば「オゾン層」は「日焼け止めのクリーム」みたいなもの。それが大気汚染で破壊されて、地球に降り注ぐ「紫外線」の量が増えている……うんぬん。
 ウ~ム、90年代以降に話題となった「オゾン層」の破壊のことが、今から30年も前に『80』ですでに議題とされていたとは……


 このシーンは同じく石堂先生が執筆されていた第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110101/p1)における、地表と上空の温度差が激しくなると太陽光線の屈折によって発生するといわれている「逆転現象」について、UGM司令室でパネル付きでレクチャーしていたユリ子の描写を踏襲している。疑似科学的な味わいを付与するのみならず、こういう科学的な説明をさせるのであれば気象班に所属しているユリ子が適任であり、それによって彼女に見せ場を与えることもできるというワケである。
 ここ数話は新ヒロイン・星涼子隊員にスポットを当ててきたが、そろそろユリ子にもスポットを当ててみせるのも、全話を通じて主要人物全員に見せ場を極力均等に与えるのが正しいとするならば、石堂先生がそこまでシリーズ全体のバランスを考えていたワケでは決してないだろうが(笑)、結果的にはそのような効果も発揮しているシーンではある。


 と、思いきや……


涼子「オリオン座にあるブレイアード星が、2万年前に滅びたのもそれでした。地球に劣(おと)らない、美しい星でしたけれども」


 怪訝(けげん)そうな顔つきで、鋭く涼子をニラみつけるオオヤマ……


オオヤマ「……なに?」


 作劇的にはワザとらしい域にも達しているが、『80』最終回(第50話)『あっ! キリンも象も氷になった!!』への伏線は、もう張られ過ぎなくらい充分に張られてしまったのであった(笑)。


涼子「ゴメンなさい。今のは私が読んだ童話のお話……」
矢的「会議の最中、おとぎ話なんて不謹慎だよ!」
涼子「スイマセン……」


 ここですかさず機転を利かして涼子へのフォローを入れてみせることで、逆説的に矢的の有能さも際立ってくるのだが、本エピソード以降、『80』は完全に「ユリアン編」そのものといった内容になっていくのである。


 太陽由来の紫外線は太陽が沈むと急速に減少することから、徹夜の捜査を隊員たちに命じるオオヤマ。UGMの戦闘機・スカイハイヤー・シルバーガル、そしてスカウターS7が直ちに出動する!


 ここで流れてくる楽曲が、直前作であるテレビアニメシリーズ『ザ★ウルトラマン』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200508/p1)の防衛組織・科学警備隊の戦闘機を描写するテーマ曲としてつくられて、『80』でもたびたび流用されてきた、特撮マニア間では「急降下のテーマ」(正式MナンバーはM27)として知られている高揚感あふれる名曲である。怪獣バトルの前座やヤラれ役にとどまりがちなウルトラシリーズの防衛組織でも、こういう適切な音楽演出があるとカッコよくて頼りがいがあるように見えてくるものなのである。


 同じく石堂&東條コンビであった第41話でも、ゲスト主役の武夫少年がゼロ戦怪鳥バレバドンの背中に乗って遊覧飛行をする場面に使用されている。仮にこの選曲にも監督が関わっていたのだとしたら、東條監督も気に入っていた名曲だったのかもしれない。


 スカウターS7で出動した矢的と涼子にイケダ隊員からの通信が入る。


イケダ「星隊員」
涼子「はい」
イケダ「童話の続き、話してくれませんか?」
矢的「これから市街地に入る。いったん交信を切る」


 オオッ、イケダ隊員までもが涼子の発言で、涼子が少し怪しいと思ってしまったのだろうか? いや、イケダ隊員のことだからそれほどの他意はなく、ちょっとだけ参考に話を聞いてみようかな? といった程度だったのだろうが(笑)。
 しかし、そこは「大爆発! 捨身の宇宙人ふたり」なのである――『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)第13話のサブタイトルであり、未熟なゲン隊員=ウルトラマンレオと老獪なダン隊長=ウルトラセブンとの、周囲には正体を隠さねばならない足枷がある中でのふたりの関係性描写の結果的な反復にもなっている! という程度の意味です・汗――。
 ここでまた涼子隊員にボロが出されないように、矢的が言い訳を付けて通信が切ってしまうという一連ともなることで、「ユリアン編」としての独自のドラマがここでもさりげに展開されているのだ。


矢的「我々ふたりが地球という名の星の人間でないことは、まだまだ知られない方がいい」
涼子「はい」
矢的「地球の人間がヘンに我々の力をアテにしはじめるのがいちばん怖いんだ」
涼子「はい、気をつけます」


 ウルトラシリーズや日本にかぎらず世界中のヒーローもので、主人公たちが正体を隠している理由でもある、ヒーローものがハラんでいる矛盾と核心に迫真してくるやりとりがここでは繰り広げられている!


 しかし、同じく石堂先生が担当された『80』最終回では、実際には地球の人間たちは、矢的が想定していたようなウルトラマンの力に依存するだけの弱々しい存在では決してなかったことが明かされる。それについては項を改めて語りたい……


 実景の朝日の描写に続いて、多摩川沿いをジャージ姿でジョギングしている本エピソードのゲスト主役でもある玉井一家の姿が描かれる。
――長年のウルトラシリーズのマニアであれば、『ウルトラマンレオ』最終回(第51話)『恐怖の円盤生物シリーズ! さようならレオ! 太陽への出発(たびだち)』Bパート冒頭のレオこと主人公・おおとりゲンとレギュラーの梅田トオル少年が、やはり朝の多摩川沿いをジョギングしていた場面を想起したことだろう・笑――


 停車しているスカウターS7を土手の下からの煽(あお)りで画面に捉えて、その右手から玉井一家がジョギングしてくる。


 徹夜の捜索で疲れて、座席で眠りこけていた矢的と涼子の姿を見つけた正クンは、


「あっ、ガス中毒!」(笑)


 と叫んでみせる!


 ナンという不謹慎なガキであることか!? こういうさりげにプチ悪趣味な「笑い」のセンスがまぶしてくるのが、石堂脚本の特徴ではあり醍醐味でもあるのだが(笑)。


 木々の間からこぼれて地上に照射されている朝日の光という自然描写から、カメラがパン(横移動)して公園の中をジョギングしている玉井一家をロング(引き)の映像で捉えるという、なんとも爽やかな朝ならではの映像で、その悪趣味も緩和はされているのだが。


 しかし、本話においては、その爽やかな朝日の陽光はイコール紫外線の脅威そのものでもある。続いて地面に落ちているグローブにカメラがズームすることで、実は直後にこの一家が危機に見舞われることをも暗示しているダブル・ミーニング(二重の意味)が込められた演出でもあるのだ。


 遂に紛失していたグローブを見つけて、その左手にハメてみせる父・太吉。
 だが、グローブは太吉の左手に強い力で吸いついて、ハズれなくなってしまう!


 青空の中、強い陽射しが照りつける太陽の下で、グローブに強い力で引っ張られて、左手を高々と掲げて苦しんでいる太吉を煽りで捉えたカットと、画面中央に太陽を配して強烈な紫外線が地上に浴びせられていることを意味するイメージカットが交互にカットバックされて、危機感を煽りたてる!
 苦悶(くもん)して七転八倒する太吉を演じる住吉道博のひとり芝居もまた見事である!


 遂にグローブは太吉の左手にハメられたままで、奇怪なグロブスクの姿へと変化を遂げる!
 太吉の主観映像からのアップで描写されたその姿のすぐ下に、太吉の左手首に巻かれた腕時計がきちんと映しだされていることがまた、日常生活と直結した世界でのリアルな恐怖感も醸しだしている。


 紫外線の固まりの存在をキャッチしたUGM司令室からの連絡を受けて、矢的と涼子は眼を覚まして現地へと急行する!


 その間にもグロブスクの文字通りの「魔手」が太吉を襲撃している!


・輝く太陽の下、太吉からの主観映像でのグロブスクのアップ!
・地面に横たわって必死でグロブスクをハズそうとする太吉の表情!
・太陽から膨大に紫外線が放出されているイメージカット!
・グロブスクの強い力に引きずられて、左手を挙げたかたちで立ち上がらざるを得なくなってしまう太吉を、太陽の下での煽りで捉えたカット!


 それらを細かく交錯させることで、絶妙な緊迫感を醸しだす!


 現地に到着した涼子が、その正体はウルトラマン一族の王女・ユリアンとしての超能力ゆえだろう、その右手の人差し指から赤い一条の光線を浴びせるや、グロブスクの動きはようやく止まった!


 グロブスクが光線を浴びて動きを止めるカットでは、よし子にその様子をしっかりと見られてしまっている(汗)。ふつうの人間ではないことがバレバレなツッコミの余地がある描写だから、ここはあまりウマい演出ではないだろう。しかし、一瞬のことだから何かの光線銃を撃ったのだと、よし子ママもきっと誤解をしたことだろう! と好意的に深読みしてあげようではないか!?(笑)


 この攻撃で太吉の左手からはハズれたものの、グロブスクは地面スレスレに浮遊して一同の許から飛び去っていく!


 画面右手に横たわる太吉の顔、左手に介抱するよし子、中央に正クンを捉えて、その手前にグロブスクの姿をローアングルで捉えた演出が絶妙な臨場感も醸しだしている!


涼子「ブレイアード星の話で知ってたの。紫外線の反対は赤外線でしょ。赤外線のビームにいちばん強く反応するのよ」
矢的「そうか、それでか」


 そう。このセリフはオゾン層が破壊されたブレイアード星でも、紫外線が結集して怪獣が誕生したことをも示唆するSF的なそれであったのだ!


 地面スレスレに浮遊するグロブスクを矢的と涼子の主観映像で背後から捉えて、それを追っている矢的と涼子を足元からバストアップへとズーム。振り返ったグロブスクをアップで捉えて、さらにドアップでグロブスクが左右に両目をギョロつかせている…… といった一連の描写はカメラアングルと編集が絶妙である。


 再度、グロブスクに赤外線光線を浴びせかける涼子。


矢的「待て! 今、ヤツは気が立ってる!」


 グロブスクは赤く発光して、その全身が白い光学合成に覆(おお)われるかたちで遂に巨大化した!


 その姿は大きく変貌を遂げており、もはやグローブがモチーフの怪獣とは思えない! 触角というよりかは二股に分かれている頭部は珊瑚(サンゴ)を思わせて、黄色い目が光っている紫色のブニョブニョとした全身は、


・初代『ウルトラマン』(66年)第17話『無限へのパスポート』に登場した四次元怪獣ブルトン
・『ウルトラセブン』(67年)第35話『月世界の戦慄』に登場した月怪獣ペテロ
・あるいは『ウルトラマンネクサス』(04年)の第1話~第4話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)に登場したスペースビースト・ペドレオン


 などを彷彿とさせるブキミさを備えている!


 そのブキミさを強調するかのように、


・両目とその間にある穴
・赤いボツボツに覆われた腹
・サンゴ状の頭部


 それらがブニョブニョとうごめく様子を順にアップで映しだしていく。
 そして、画面下半分には本編ロケ映像の矢的と涼子を、その上半分には特撮セットのグロブスクを合成したカットにつなげるという一連の映像演出は、お約束でも実にカッコいい!


 甲高かった奇声が巨大化とともに腹の底から響き渡るような低い笑い声へと変わるのも実に効果的である!――この鳴き声は、『ウルトラマンタロウ』第2話『その時ウルトラの母は』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071209/p1)~第3話『ウルトラの母はいつまでも』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071216/p1)の前後編に登場した再生怪獣ライブキングの鳴き声、もとい笑い声(笑)を加工して使用したものらしい――


矢的「星くん!」
涼子「スイマセン。刺激しすぎました!」
矢的「これは君と僕の責任だよ」
涼子「はい……」


 美しい夕焼け空の中、黄色い目から紫色の波状光線を放って街を破壊するグロブスク。
 ……ってオイオイ。もう夕焼けの時刻ってことは、グロブスクは日中いっぱいずっと暴れ続けていたことになるのだろうか!? だとしたら、たしかに矢的と涼子の責任は重大だ!(笑)


 しかしそんなヤボなツッコミも、『80』では極めて珍しいあまりに美しすぎる今回の「夕焼け特撮」の前ではもうどうでもよくなってきてしまう。『ウルトラセブン』第8話『狙われた街』やオモテ向きは欠番の第12話『遊星より愛をこめて』、『帰ってきたウルトラマン』第32話『落日の決闘』や第37話『ウルトラマン夕陽(ゆうひ)に死す』などの特殊技術(特撮監督)を担当した大木淳による「夕焼け特撮」を彷彿とさせるものがあるからだ。



――『80』で組んでおられた特撮監督が佐川和夫さんなのですが、佐川さんについてお聞かせ下さい。
「『ウルトラQ』(66年)の時に円谷プロに入って、セットがあった美セン(東京美術センター・のちの東宝ビルト。引用者註:2007年に解体)に呼ばれたんです。で、オープンセットにフラッと近づいたら、「セット壊す気か、近寄るな、バカヤロー!」って怒鳴った人がいたの。それが当時カメラマンのチーフだった佐川和夫さん(笑)。実は佐川さんと僕とは大学の同級だったんだけど、むこうが先に業界に入って大活躍しているベテランでしょ。だからもう威厳たっぷりだったんです。佐川さんはやっぱりすごい人ですよ。特撮のことよくわかってるし、飛行機の飛びをやらせたら、あの人はピカ一。めざす絵を撮るために全然妥協しないんですよ。「こんな感じ」というアバウトな打ち合わせをしても、ラッシュで観ると予想を超えた何倍も凄い絵になってできている。何度も感心させられました。『80』の頃は打ち合わせしたらあとはもうお任せです。素晴らしい映画人ですよ」

(『タツミムック 検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版・06年2月5日発行・05年12月22日実売)監督 東條昭平インタビュー)



 セットの夕陽を画面左奥に捉えて、その手前に街灯を配するという距離感のある構図の中で、グロブスクが高々とジャンプして、ビルにのしかかってその巨体で押し潰す!
 真っ赤に染まった夕焼け空の中、地球防衛軍の戦闘機群が飛来してグロブスクに攻撃をかけるも、両目からの波状光線で次々に撃墜される!
 フジモリ隊員とイケダ隊員が搭乗するUGM戦闘機・シルバーガルが波状光線をからくも避ける!
 まさに東條監督が絶対的な信頼を寄せる佐川特撮監督の妥協のない、迫力ある飛行機特撮の連続である!


 そして画面右手に樹木やビルを配して、中央に沈んでいく夕日を捉えたカット!
 それに続いて、画面左手奥に沈んでいく夕日、その下に鉄塔、右手前にビルや民家を配した奥行きのある構図の中で、グロブスクは夕日が沈むと同時に、その全身が白く覆われて消滅していく……
 太陽光に含まれている紫外線がなければ実体化ができないという怪獣の特性を実に的確に表現した描写でもある。


オオヤマ「結論は簡単だ。チャンスは日の沈んでいる間だ。いいか、今夜中に必ず捜しだせ! 出動!」
隊員一同「了解!」


 この場面にのみ広報班のセラの姿があるが、おそらくはほかに出番があったものの、尺の都合でカットされたのだろう。


 深夜の街を疾走するスカウターS7。


矢的「いくらヤツが動かないと云ってみても、東京は広すぎるよ」
涼子「西の方へ行って」
矢的「西? ヤツが潜んでいるところがわかるのかい?」
涼子「ええ。私すべての宇宙光線がキャッチできるの。西の方に紫外線の固まりがあるわ」


 山間部にたどり着いて、停車するスカウターS7。


矢的「ここか?」
涼子「ええ」


 正体は宇宙人・ウルトラマンエイティであることから超能力・ウルトラアイをつかって透視する矢的隊員。
 矢的の両目が星状に光って緑色の輪が発射される描写を繰り返したあと、半透明のグロブスクの姿が浮かぶ場面では、『ウルトラマンタロウ』のメインタイトルの中間部――同作主題歌のイントロが入る直前――でも使用されていた効果音が流れていることにも注目!


矢的「夜だし街から離れてる。君ひとりを観客に、君の代わりに力いっぱい戦うよ」
涼子「スイマセン。お願いします」


 それにしても矢的のこのセリフ、本エピソード前半での児童ドラマとは一転して、完全にオトナの男女間での演技となっている。


 涼子だけに見守られる中で、変身アイテム・ブライトスティックを高々と宙にかざす矢的!


矢的「エイティ!!」


 登場したウルトラマンエイティ、まるで拝むようなポーズで右手から水色の波状光線を発射!


 その光線を浴びた位置に幾つもの星がキラめいて、白い光学合成のかたちからグロブスクが実体化する!


 そして、なんと第40話『山からすもう小僧がやって来た』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110129/p1)から使用が開始された新オープニング主題歌『がんばれウルトラマン80』が今回はじめて劇中で流される!



――劇伴にはオープニング主題歌『ウルトラマン80』、そしてエンディング用の副主題歌『レッツ・ゴー・UGM』のアレンジ曲も多く含まれていますが。
「僕は作品で流用できない主題歌はダメだとずっと思っていました。これまでのウルトラシリーズでも、「主題歌をもっと先に作って、僕に時間をくれれば主題歌のアレンジ曲が用意できるよ」と毎回言っていたんですけど、実際問題、なかなかすぐには主題歌が決まらないわけでね。『帰マン』あたりではそれができなかった。ようやく実現できたのが『80』だったんですよ。やっぱり作品で表現しきれないことを主題歌が表現し、主題歌が表現しきれないことを作品が表現する。これで映像と音楽が一体になるわけですよ」

(『君はウルトラマン80を愛しているか』音楽 冬木透インタビュー)



 名構成の労作である『ウルトラセブン総音楽集』(87年・キングレコードASIN:B004P1Y8B2)のライナーノーツであったか、その解説書で担当ライター氏は「BGMと主題歌を同じ作曲家が担当していて音楽世界が統一されている点でも、『セブン』は素晴らしい」という趣旨の論を展開していた記憶がある。


 第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちは、こういった論法でも第1期ウルトラの作品群を持ち上げて第2期以降のウルトラ作品を陰に貶(おとし)めてきたのであるが(笑)、当の冬木大先生はもっと柔軟で融通が利いていたのである。


・バック転を連続させて、右足でキック!
・側転のあと高々とジャンプして、グロブスクの頭部をキック!
・着地して低い姿勢のまま後転して、両足でキック!
・さらにチョップ! ひざ蹴りの連打!


 いつもながらのスピーディで豪快なウルトラマンエイティのアクションに、一見優しいメロディラインと歌い口の『がんばれウルトラマン80』は意外と違和感がない。冬木先生の持論を借りるならば「主題歌としては合格」ということになるのではなかろうか?


 『80』の戦闘シーンでは、登場ブリッジ曲であるM51はもちろんのこと、エイティ優勢の戦闘テーマ・M52、ピンチに陥るエイティのイメージ曲・M53、そして逆転からの勝利を飾るM2がシリーズを通して定番で使われるパターンが圧倒的であり、こうした変則的な音楽の使用は珍しい。
――ちなみに『80』のシリーズ後半では、冬木先生がやはり作曲された前作『ザ★ウルトラマン』のBGMでもある『交響詩 ザ★ウルトラマン』第四楽章『栄光への戦い』の『インベーダー軍団』と『勝利の闘い』(ASIN:B00005ENGI)なるブロックの単独録音版の流用が、エイティ劣勢と逆転勝利のBGMとして代用されるようになる――


 だが、それに呼応するかのごとく、怪獣の着ぐるみの造形面でも、擬闘(アクション監督)の車邦秀(くるま・くにひで)が担当したアクション演出面でも、変則的な試みがなされていくのだ。


 エイティのジャンピングキックを姿勢を低くしてカワしたグロブスクは、なんとその天地が逆になるのだ!
 サンゴ状の「二股」に分かれた頭の方を足にして動き回って、「五本指」状の足の方を頭にしてエイティの頭を押さえつけて、ド突きまくるのである!
 もっとも野球のグローブがモチーフの怪獣なのだから、本来ならば最初から「五指」の方が頭としてふさわしいのだが、やはりあとから「手首」の方が頭になるよりも、「五指」の方が頭になった方が絵的なインパクトは絶大だろう。


 そうかと思えばグロブスクは地面を這った状態で、エイティの攻撃から高速で逃げ回るのである! もちろんカメラの回転速度を変えて撮影しているのだが、周囲でムラサキ色の霧が立ち昇っている演出も実に効果的である。


 目には目を! グローブにはボールを! とばかりに、エイティはジャンプして夜闇の中で身体をまるめて、前転するかたちで回転をはじめる!
 ここからはエイティの回転姿勢とほぼ同一サイズに思える造形物に変わるのだが、相応の大きさから来る実在感も高いことからミニチュア的な軽量感はないのである!


 そして、空中を水平ヨコ方向にコマのようにスピンして大きく旋回しながらグロブスクに何度も何度も体当りをブチかます!!


 身体をまるめた状態のエイティの造形物の周囲に、高速で渦が回転するような線画を合成作画することによって、スピード感も高めつつ、エネルギーも込められているようなパワー感まで表現ができている!


 この一連の夜景の中での長尺の特撮シーンの豪快さはまさに必見! ムチャクチャに迫力もあってカッコよくて意外性もある、歴代ウルトラシリーズでも観たことがないような、空前絶後カタルシスと驚きに満ち満ちた特撮アクション演出として仕上がっているからだ!
 ウルトラシリーズのまさに五指(笑)に入るベストバウトに挙げたいくらいである! ちなみに、このエイティの攻撃技は「ダイナマイトボール」と命名されている。


 かたおか徹治先生による名作漫画『ウルトラ兄弟物語』(78年)の第1話、過去の失敗のトラウマから異星の西部劇調の居酒屋で飲んだくれてヤサグレていた「新マン」こと「帰ってきたウルトラマン」が、地面スレスレで空中前転しながら滑空して必殺光線を乱発するローリング・スペシウムをも彷彿とさせる!
 ……と云いたいところだが、1939(昭和14)年生まれの当時41歳の佐川和夫特撮監督は、世代的にもこの小学生向けの漫画を読んでインスパイアされたという可能性は非常に低いだろう(笑)。


 ボール状から元の姿に戻ったエイティ、飛行状態でグロブスクに突撃をかけるが、その身体をスリ抜けてしまう!(合成もお見事!)
 グロブスクにカラみつかれて、全身に赤いイナズマのような電撃も走る!


 それを見かねた涼子が、やはり指先から先の赤外線光線をグロブスクに浴びせかける!
 全身に赤い電撃が走ったグロブスクは空へと逃れて、今度はエイティとの空中戦を展開!


 地上に墜落したグロブスクはエイティに抱え上げられて、ウルトラナックルで右腕のみでグルグルと回転させられ、地上に投げ捨てられる!
 エイティ、さらにグロブスクをつかみあげて、地上へと投げ捨てる!


 エイティ、両腕をL字型に拡げたポーズからいつものサクシウム光線を発射するのかと思いきや、胸の中央にあるカラータイマーが一瞬黄色く光って、その両腕をいったんクロスさせて、そのままいつものポーズに腕をスライドさせて三条の赤い光線を発射した!
 ウラ設定ではサクシウムエネルギーに赤外線を含ませたガッツパワー光線だ!
――一部書籍では単に「サクシウム光線・Bタイプ」と命名されている。まぁ元はサクシウムエネルギーだからこれも間違いではないだろう。歴代ウルトラマンの技名のネーミングに別名があるのもむかしからのことである・笑――


 長年のウルトラシリーズのマニアであれば、『セブン』第47話『あなたはだあれ?』で、集団宇宙人フック星人にウルトラセブンが両腕をL字型にして放ったワイドショットの光線が三条に分かれるスリーワイドショットを思い出したことだろう(笑)。


 ちなみにウルトラセブンもその看板作品のシリーズ中盤からはさまざまな光線技のバリエーションが描かれてきた。
 予算の削減で特撮ミニチュアセットが満足に用意できなくなったり、人間ドラマの重視によって見た目がどんどん地味になっていったシリーズ中盤だが、逆にウルトラセブンは光線技のバリエーションが増えているのだ。


 視聴率と直接相対するプロデューサーはともかく、この時代の特撮現場の特撮監督たちが、少しでも年少の視聴者たちをつなぎ止めようと考えるような細やかな殊勝(しゅしょう)さがあったとはとても思えない(笑)。なので、単に映像的な実験をしてみたいという自身の子供っぽい欲望でさまざまな光線技をセブンに発射させてみた! といった程度での安直なノリだったのだろうと推測はする。


 しかしそれらの要望を、特撮監督の意向をはるかに超えたハイセンスなイメージで見事に映像化してみせていたのが、1950年代の東宝特撮映画の時代から「光線作画」を担当してきた飯塚定雄(いいづか・さだお)なのである。悪い意味で漫画的な大味のデタラメさはまるでなく、シャープでスマートでクールなセンスもあって、遠近感なども実に正確かつ未来的でカッコいい「光線」の数々が、作品の映像的な「品位」も上げていく!


・第29話『ひとりぼっちの地球人』で宇宙スパイ・プロテ星人に浴びせた、電磁波を含ませた黄色い波状光線・チェーンビーム!
・第36話『必殺の0.1秒』で催眠宇宙人ペガ星人の円盤を攻撃した、ニードル状の光線を続けざまに放つウルトラショット!
・第43話『第四惑星の悪夢』で第四惑星の地球攻撃用ロケットを全滅させた、飛行状態の両手から放つダブルビーム!


 小学校中高学年以降ならばともかく、子供なんてものは人間ドラマなぞはロクに理解していない。むしろこうした変則的に披露される光線技といったヒーローの万能性の方に妙にドキドキしたりワクワクしているだけだったりするものなのである。特撮変身ヒーローもののキモとはまさにコレなのである!(笑)


 そして、怪獣博士タイプの子供のみならず、子供たち一般はこういった必殺技とその名称や映像をすべてコレクション的に知っておきたい! 把握しておきたい! 手近にまとめておきたい! と痛切に願うものでもある。


 苦節20年。これらの光線技にはじめてネーミングが与えられたのは、放映から20年(!)も経った80年代末期の平日帯番組『ウルトラ怪獣大百科』(88年)や、『てれびくんデラックス ウルトラ戦士超技全書』(90年・小学館ASIN:B00MTGGP70)に至ってのことであったのだ(笑)。



 ガッツパワー光線を浴びたグロブスクは全身が赤いイナズマ状の電撃に覆われて消滅していく。
 画面の左手前に立ち尽くしているエイティが、右奥の山の向こうに昇ってくる朝日を見つめてうなずく勝利の場面は実に美しい。


 地面に落ちているグローブをひろってジッと見つめる涼子。
 その涼子の後ろ姿を画面の右手前に配して、画面の左奥から矢的が朝霧が立ち昇っている中で、涼子に向かって笑顔で駆けてくる描写が爽やかである……


涼子「猛……」


 グローブをそっと猛に手渡す涼子。


涼子「勝ったのね」
矢的「ウン」


 勝利の、いや、決してそればかりではない矢的と涼子が互いをジッと見つめる笑顔が交互に映し出される……


 この一連では往年の名作テレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)の劇中音楽でも有名な川島和子による哀愁を帯びたスキャット曲・M17-2が流れている。



・第18話『魔の怪獣島へ飛べ!!(後編)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100829/p1)においては、ゲスト主役の星沢子(ほし・さわこ)が自らの命を捧げることで蘇生したイトウチーフ(副隊長)が、彼女への想いを語るラストシーン
・第43話『ウルトラの星から飛んで来た女戦士』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110219/p1)では、愛する矢的を守るために城野エミ隊員が侵略星人ガルタン大王の剣に貫かれて殉職した事実に、オオヤマ・イトウ・フジモリが衝撃を受ける場面からラストシーンに至るまで


 『80』最終回に向けて、このふたりには男女間のロマンスの伏線も与えておこうという意図も、濃厚に感じられる本編演出でもある。


 この楽曲は『ウルトラマン80 ミュージック・コレクション』(日本コロムビア・96年8月31日発売・ASIN:B00005ENF5)では「無償の愛」なるタイトルがつけられたブロックに収録されていた。しかし、これまでの劇中での使用例も思えば、いわゆる単なる「無償の愛」ではないこともたしかである。


 矢的はグロブスクとの戦いに赴(おもむ)く直前、涼子にこう語っていた。


「君ひとりを観客に、君の代わりに力いっぱい戦うよ」


 これまで『80』では市街地、そうでなくとも市民やUGMが見守る中でのエイティVS怪獣の戦いが描かれてきた。だが今回、その戦いを見守っているのは涼子=ウルトラの星の王女・ユリアンのみなのである――いやまぁ人間大サイズの変身ヒーローが戦っている作品ではないので、おそらく誰かしらが目撃してUGMにも遅れて通報しただろうけど・笑――。


 怪獣グロブスクの誕生経緯はともかく、その巨大化の結果責任は、ウルトラ一族の一員であるユリアンにある。そして、その責任は同じウルトラ一族であるエイティが尻拭いをしてみせようというのが表向きの理由になっている。
 しかし、理由の字面はそうであっても、「君のためだけに戦う」という趣旨のセリフは、これは遠回しの「愛の告白」でもある。そうでなくても遠回しな「好意の表明」ではある。矢的ことエイティが内心で秘かに好意を持ちはじめていただろう涼子ことユリアン。その「愛するユリアンのために捧げた戦い」でもあったのだと……



矢的「(涼子の右肩を左手でポンとたたいて)さぁ、UGMに帰ろう」


 画面の奥にスカウターS7を配して、それに向かって駆けていく後ろ姿の矢的と涼子…… ロマンチックな風情も感じられる場面である。



 紺と白のジャージ姿で正クンが所属する少年野球チームで、ノックを務めている矢的、そしてあいかわらずの正クンの姿にかぶるラストナレーション。


「そうそう、いくら失敗しても腐(くさ)ったり、腹を立てたりしないことだ。怪獣たちは人間の心の乱れにつけこもうと、いつもねらってるんだからね。球(たま)が落ちるのはグローブのせいではない。君の練習が足りないからなんだ」


 しかし、ノックの打球をエラーしてズッコケている姿の正クンのカットで物語は締めくくられている(笑)。




 そう、「社会」や「周囲」の人々の方が悪い場合もたしかにあるだろう。しかし一方では、「個人」の方が悪い場合もある。そして、「個人」が悪いとはいえないが、「個人」の努力が足りていない場合もあるのだ。
 たいていの物事は、フェア・公平に考えれば「半々」なのである。だからまずは「社会」や「グローブ」(笑)のせいにはせずに、我が身自身のことを顧(かえり)みてみることである。


 むろん「個人」の努力だけでもどうしようもない場合はある。その場合は、自分に才能がないと思えば潔(いさぎよ)くその道はアキラめて別の道に活路を見出すことも必要だ。
 しかしその上で、「個人」の生存の上でも最低限は必要な事項だ! どうやら「社会」の方が間違っている! ということであれば、「社会」に異議申し立てをすることにもはじめて正当性がやどるだろう。


 そして、「社会」をつくっているのもまた「個人」(であるひとりひとり)である。しかし、億人単位の「個人」の意志が集合したかたちで「社会」が構築されている以上は、「社会」もまた即座に一挙に変革しうるものでもない。中長期にわたっての交渉や会議などでの粘り強さが必要なのである――即座に変わらなければオカシい! それは理不尽だ! と考えてしまうことも理解はできるのだが、それは自身が独裁者と化してしまう道でもある・汗――。


 いくら他人や社会から邪険にされようとも「腐ったり腹を立てたりしないことだ」。社会運動や市民運動のようにヒステリックにガナったりする必要はないのだ。かといって、卑屈に押し黙ってしまう必要もない。相手を貶めて胸を透かせたいという「擦り切れた快・不快」といった程度の感情(劣情)に基づく「怒り」などは深く静かに沈潜させて蒸留させていき、「私憤」ではなく大勢の人間の状況をよくしたいという「義憤」「公憤」に洗練させた「瑞々(みずみず)しい喜怒哀楽」としての高次な感情へと置換してから言葉を発するべきなのだ。


 目的のためにならば少々のズルや抜け駆けも許されるということもあまりない。目的達成のためにもたとえ迂遠になろうとも正当な「手段」を採択し、お天道様に恥じないかたちにした上で、それからはじめて気高く戦うべきだろう。
 たとえその発端は正当な「怒り」であったとしても、「目的」のためにならば「手段」を選ばす、いくらでも礼節を欠いて口汚く論敵を罵倒してもよい! 他者を傷つけてもよい! 少々のズルをしてでも出し抜いてよい! という低劣な心理にそれは容易に堕落しうる。
 そのような自堕落を許すと、それはてきめんに自己を絶対化・正義化して、論敵どころか仲間内での内紛や内ゲバをも誘発するのだ。正しき者こそ強くあれ。正しき者こそ節度・抑制心も含めて心が強くあるべきなのだ。


「怪獣たちは人間の心の乱れにつけこもうと、いつもねらっているのだ」


 このセリフは、第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』評(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110101/p1)でも引用させてもらった、以下のインタビューでの石堂先生の発言にも通じている。



――石堂さんは雑誌『ドラマ』(映人社・93年9月号)の中で「悪人はあまり書いたことがない」とおっしゃっています。この感覚は石堂さんの怪獣像にも反映されているのでは?
「それはね、僕が大学でドイツ文学をやっていたとき(引用者註・氏は東京大学文学部独文学科の出身)、ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテの悲劇『ファウスト』(1808年)を読んでね。あれにメフィストフェレスという悪魔が出てくるでしょう(引用者註・初代『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』に登場した悪質宇宙人メフィラス星人のネーミングの語源でもある)。このメフィストという「悪」とは何かということを、僕は論文のテーマに選んだんです。そこで導き出した結論は、メフィストファウスト自身が呼び出したものであると。悪とは人間の外に客観的に存在するものじゃなくて、人間の内から呼び出されたものであるという。いわゆる世の中に「絶対悪」というのが最初からあって、それをやっつければOKという話じゃない。そういう感覚が、ウルトラマンを書いていたときにも確かにあったと思いますよ。怪獣も結局、人間が呼び出したものであると」

(『君はウルトラマン80を愛しているか』脚本・石堂淑朗インタビュー)



 「怪獣も結局は人間が呼び出したものである」。「社会」の「悪」というものも、結局は個人個人が長年にわたって醸成してきたものなのである。


 この石堂先生のご持論が、単に『80』第1クール「学校編」の思春期真っ只中の中学生たちのミクロな負の感情といったマイナスエネルギーという狭い概念を超えていき、ゲーテの『メフィストフェレス』などにも通じていくような普遍的な概念にも昇華していったようにも見えるのは、『ウルトラマンA』においても人間の精神を試してくる悪魔としての異次元人ヤプールの描写を、メインライター・市川森一(いちかわ・しんいち)が降板したあとでも最も色濃く継承していたのが石堂先生であったことを思えば、もちろん結果論であることは重々強調しておくけど、重ねて石堂先生を投入したことによる成果であったと思うのだ。



 ともまれ、「物を粗末に扱うな」「環境問題」などといった「道徳的テーマ」「社会派的テーマ」だけにとどまらず「児童ドラマ」も展開させて、SF的な存在のようでもイロモノでもある「怪獣グロブスク」(笑)、そして実に美しい「夕焼け特撮」に、特別な趣向を凝らした壮絶なる「特撮バトル」などなど、本話は見どころ満載のエピソードに仕上がった。
 それでいてラストは、最終展開への伏線としてエイティ=矢的とユリアン=涼子との「愛の告白」めいた情緒豊かなシーンまでもが描きこまれているといった密度の濃さ!
 そう、本エピソードは「ユリアン編」の中でのターニングポイントでもあり、矢的と涼子の関係性の変化とその急転までもがしっかりと描かれていたのであった……


 石堂・東條・佐川の最強トリオとしては『80』最後の作品となったが、文句なしの大傑作である。



<こだわりコーナー>


*正クンはグローブを自らの意志で捨てたのだから、サブタイトルの「落し物」はちょっと違うんじゃないかと思う(笑)。


*正の父・太吉を演じた住吉道博は、東映コメディ特撮の大人気番組『がんばれ!! ロボコン』(74~77年・東映 NET→現テレビ朝日)の第73話『ゲバリキュン!! どうかおいらを追い出して』~最終回(第118話)『メデタリヤ! ロボコン村は花ざかり』に至るまでの、主人公のロボコンが居候(いそうろう)をしていた小川家のパパ・太郎役でレギュラー出演していたことでもジャンルファンには有名。
 しかしさかのぼること、初代『ウルトラマン』(66年)第18話『遊星から来た兄弟』では、凶悪宇宙人ザラブ星人科学特捜隊から引き取ろうとする宇宙局の局員も演じている――セリフは一言もないが・笑――。『怪奇大作戦』(68年・円谷プロ TBS)第13話『氷の死刑台』でも、人間を超低温の中で生かし続ける実験の末に冷凍人間を誕生させ、彼に殺されてしまう科学者・島村を演じていた。テレビ時代劇マニアには、『必殺』シリーズ第3作『助け人走る(たすけにん・はしる)』(73年)のシリーズ前半でのレギュラーの密偵・為吉(ためきち)役でも知られている。なお、以上の作品には「住吉正博」の名義で出演していて、現在ではこの芸名に戻しているようだ。


*CS放送・ファミリー劇場で放映された『ウルトラ情報局』2011年1月号にゲスト出演した小坂ユリ子隊員役の白坂紀子(しらさか・のりこ)のインタビューも紹介しておこう。
 『80』第1クールの「学校編」で桜ヶ岡中学校の事務員・ノンちゃん役に起用された際には、テレビドラマの出演ははじめてだったそうだ。「地のままでそのままやって」と云われたものの「こんなお姉さんがいたらいいなぁ」と生徒たちに親近感を持ってもらえるような人物像を演じるように心掛けていたそうである。
 「学校編」の設定が消滅したことでいったんレギュラーからハズれたものの再度、UGM・気象班の小坂ユリ子隊員役として起用された際には「エッ? そんなことあるのかな?」と本人が最も驚いたのだとか。もっとも彼女自身は「おてんば」なところがあり、どうせ防衛隊の隊員の制服を着るのならば、戦闘機に乗って戦うような役をやりたかったらしい(笑)。
 第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』や本話のように、隊員たちにレクチャーをする場面では、テレビの前の子供たちにも理解ができるように心掛けたそうだが、隊員を演じている俳優たちにジッと見詰められているので、かなり緊張してしまったとか。
 もしもユリ子が気象班ではなくUGMの新人戦闘隊員として参戦していたら『80』はどうなっていたであろうか? 城野エミ隊員とユリ子隊員が矢的をめぐって小さな火花を散らしているような描写が何度かあったことを思えば、『80』第10話『宇宙からの訪問者』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100704/p1)でマドンナ教師・京子先生とゲストヒロイン・アルマが矢的をめぐって恋の火花を散らしていたようなラブコメが展開されたのかもしれない(笑)。


 主人公・矢的猛を演じた長谷川初範の印象に関しては「一生懸命なマジメな方」であり「矢的先生にピッタリ。とても素朴(そぼく)でいい方。あのとおりの方……」だったらしい。


 ご子息は幼稚園のころにはウルトラマンシリーズにかなりハマっていたそうである。レンタルビデオ店で『80』を借りて観せたら「なんでここにいるんだ!?」ととても驚くとともに「スゴい、スゴい!」と喜んだそうで、「やってよかった」という実感をはじめて得られたそうである。そして、ご子息がウルトラマン、夫の俳優・志垣太郎(しがき・たろう)が宇宙忍者バルタン星人を演じてよく親子で遊んでいたそうだ。ナンと志垣はそれだけでは飽き足らずに、どこで調達したのかバルタン星人のかぶりものまで入手。近所の公園でそれを着用してほかの子供たちと遊んでいたらしい(笑)。
 青春ドラマ『おれは男だ!』(71年・日本テレビ)の転校生・西条信太郎役や、『エイトマン』や『幻魔大戦』で知られる第1世代SF作家・平井和正の筆による不朽の名作学園SFを実写化した映画『狼の紋章』(73年・東宝)の高校生主人公である狼人間・犬神明(いぬがみ・あきら)役など、かつては二枚目俳優だった志垣だが、実際には80年代中盤の大人気バラエティ番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(85~96年)でのコミカルな吸血鬼ドラキュラのごとき「デビル志垣」の方のキャラがホントの地であったようである(笑)――志垣太郎はテレビ時代劇『水戸黄門』(69年~・東映 TBS)第13部(82年)の第10話『尾張名古屋の妖怪退治―尾張―』に徳川綱誠役でゲスト出演して白坂と共演、志垣が白坂に一目惚れしたことから猛アタックの末に結婚したらしい――


 これらのことから、白坂は「ウルトラマンは子供たちにとってすごく大きな存在」だと再認識したそうであり、「エイティは永遠に不滅のヒーローです!」と語っていた。


*本文で『ミラーマン』について少しふれたのでついでに書いておく。最近、『ミラーマン』放映当時のセルロイド製の「お面」――一見パチモンかと思うほど出来が悪いがきちんと版権シールが貼られている――や、学校給食用のナプキン――ミラーマンVS怪獣キティファイヤーのヘタな絵柄だがこちらも版権もの――のデッドストックをたったの数百円で入手する機会を得た。『ミラーマン』は玩具メーカーブルマァクが発売したソフビ人形の数々で大量の売れ残りが発生したことでも有名な作品だが(汗)、このようなデッドストックが安価で入手できたということがたまたまの出来事でなければ、それ以外の関連アイテムもあまり売れ行きは芳(かんば)しくはなかった可能性もある。
 これは喜ぶべきことではない。やはり制作費を出資してくれる玩具会社も儲かるような作品づくりをしないとダメだということなのである……


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2012号』(2011年12月29日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)


[関連記事] ~『80』石堂淑朗・脚本作品!

ウルトラマン80』#45「バルタン星人の限りなきチャレンジ魂」 ~俗っぽい侵略の超合理性!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110327/p1

ウルトラマン80』#42「さすが! 観音さまは強かった!」 ~観音さまが勝利! 児童編終了

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110212/p1

ウルトラマン80』#41「君はゼロ戦怪鳥を見たくないかい?」 ~石堂脚本が頻繁に描く戦後の核家族、情けない父・ちゃっかり息子!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110205/p1

ウルトラマン80』#37「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」 ~UGM&子役らの石堂節のセリフ漫才が炸裂!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110108/p1

ウルトラマン80』#36「がんばれ! クワガタ越冬隊」 ~スクールカーストを陰鬱にならずに明朗に描写!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110101/p1

ウルトラマン80』#34「ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!」 ~石堂淑朗脚本・再評価!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101218/p1


[関連記事] ~急降下のテーマ曲使用編!

ザ・ウルトラマン』(79年)#14「悪魔の星が来た!!」 ~星そのものが怪獣! 「急降下のテーマ」初使用!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090803/p1

ウルトラマン80』(80年)#14「テレポーテーション! パリから来た男」 ~急降下のテーマ&イトウチーフ初登場!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100801/p1

ウルトラマン80』(80年)#25「美しきチャレンジャー」 ~フォーメーション・ヤマト再使用!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101016/p1

ウルトラマン80』(80年)#41「君はゼロ戦怪鳥を見たくないかい?」 ~石堂脚本が頻繁に描く戦後の核家族、情けない父・ちゃっかり息子!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110205/p1

ウルトラマン80』(80年)#47「魔のグローブ 落し物にご用心!!」 ~ダイナマイトボール攻撃が強烈!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210224/p1(当該記事)

ウルトラマンメビウス』(06年)#17「誓いのフォーメーション」 ~&『80』#13、25フォーメーション・ヤマト編&BGM

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061001/p1



ウルトラマン80 相原京子 / ノンちゃん写真集 BEAUTIES&BEASTS [初版完全限定]

「魔のグローブ 落し物にご用心!!」が配信中とカコつけて!
#ウルトラマン80 #ウルトラマンエイティ



『ウルトラマン80』全話評 ~全記事見出し一覧
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧

ウルトラマン80 46話「恐れていたレッドキングの復活宣言」 ~人気怪獣・復活月間の総括!

(YouTubeウルトラマン80』配信・連動連載予定・汗)
『ウルトラマン80』#43「ウルトラの星から飛んで来た女戦士」 ~星涼子・ユリアン編開始!
『ウルトラマン80』#44「激ファイト! 80 VS ウルトラセブン」 ~妄想ウルトラセブン登場
『ウルトラマン80』#45「バルタン星人の限りなきチャレンジ魂」 ~俗っぽい侵略の超合理性!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


『ウルトラマン80』全話評 ~全記事見出し一覧


ウルトラマン80』第46話『恐れていたレッドキングの復活宣言』 ~人気怪獣・復活月間の総括!

どくろ怪獣レッドキング三代目 壷の精マアジン登場

(作・平野靖司 監督・東條昭平 特撮監督・佐川和夫 放映日・81年2月25日)
(視聴率:関東9.7% 中部12.9% 関西12.1%)


(文・久保達也)
(2011年4月脱稿)


「僕は「なにもわざわざ昔の怪獣を出すことないじゃん」って思ったんですけどね。この時は確かプロデューサーからレッドキングを出そうって話でした」


――ではレッドキングへの思い入れなどは特になく?
「この話に対しては思い入れはなかったですね。本来レッドキングは怪獣がたくさん出てくる島にいたじゃないですか」


――『(初代)ウルトラマン』(66年)第8話『怪獣無法地帯』の多々良島(たたらじま)ですね。
「そうそう。僕にとってのレッドキングはそういう怪獣なんですよ。この時は「とりあえず出せ」というから出したわけですよ。魔法使いが出すという設定だけど、要はなんだってよかったんです。これはもう、無理やり出すために考えた設定だったんです(笑)」


(『タツミムック 検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版・06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124)脚本/平野靖士インタビュー)



 当時の平野氏の「やる気のなさ」が伝わる発言だが(笑)、ウルトラマンシリーズを代表する大人気怪獣・レッドキングを出すためにムリやり設定された「壷(つぼ)の精・マアジン」による珍騒動が全編にわたって繰り広げられる今回のコミカル編。


 あのシリアス寄りの演出で、時に社会派風味もあった東條監督による作品だったとはちょっとビックリだが、変身ヒーロー作品に市民権を勝ち取るために社会派テーマや陰欝(いんうつ)な人間ドラマを求めていた若いころをとうに相対化した中年マニアからすれば、なかなかどうして実に味わい深い楽しめる作品に仕上がっていると思える。


 静岡県裾野市(すそのし)にある「日本ランド スキー場」に家族でスキーに来ていた淳と妹のヨッコ。
――ここは2011年現在では、「スノータウン Yeti」(イエティ。雪男の意味)という名称に変わって、「富士急行」系のフジヤマリゾートが運営している――


 彼ら兄妹は偶然見つけたホラ穴の中で奇妙な「壷」を発見。ヨッコはそれを絵本の中で見た、なんでも願いをかなえてくれる魔神・マアジンが潜んでいる「壷」だと信じこんで、それを大事に持ち帰る。


正男少年「怪獣発見! 前方30メートル! 爆弾投下用意!」


 帰宅してからも「壷」を大事そうにかかえて外出するヨッコと出歩いていた淳は、モロにイジメっ子風(笑)の少年たちである正男ら3人の悪ガキが乗る自転車から、スレ違いざまに爆竹(ばくちく!)の奇襲攻撃に襲われる!(ヒドい!)


 それにしても、正男少年はいかにもヤンチャそうに見える子役を使っていて、絶妙なキャスティングである(笑)。


 おそらく近くに飛行場があることを示すのに加えて、それ以上にこのシーンに太平洋戦争中の「空襲」のイメージも微量に付与するためだろう、この場面では航空機が飛行する効果音が終始流れている。爆竹がハデに破裂する前後では、まさに悪ガキどものセリフ「爆弾投下用意!」の状況と見事にシンクロしている!(笑)


 本エピソードのメインテーマではないが、ディテールに対する点描にスタッフたちの太平洋戦争中の「空襲」体験を声高にガナったりはせずに二重にカブらせていく、ちょっとしたお遊びの演出は、『ウルトラマンタロウ』(73年)第39話『ウルトラ父子(おやこ)餅つき大作戦!』などでの空襲写真のインサートなどでも見られる。こういうストーリーではなく映像や音響面での演出は、おそらく脚本上には記されておらず本編監督や音響担当者のアドリブなのだろうと推測する……



 冒頭のナレーションでも、妹のヨッコよりも実はスキーをすべるのがヘタである……と説明されているほど、メガネをかけた運動神経や体力には実に乏しい冴えない印象の淳。彼はまさに故・藤子・F・不二雄(ふじこ・エフ・ふじお)先生の名作漫画『ドラえもん』(69年~)に登場する小学生主人公・野比のび太(のび・のびた)クンを彷彿(ほうふつ)とさせるキャラクターである(笑)。


 そんなヒ弱そうな淳が、


「アイツら~!」


 とケンカをふっかけようとするや、妹のヨッコは


「お兄ちゃん、やめなさい。どうせ負けるんだから」


 と実に冷めた目で淳を制止する。


 絵本の中に描かれている「ファンタジー世界」の登場人物の実在を信じこんでいるような現実世界と虚構を混同したような素朴な少女なのかと思いきや、そのような単純で記号的・ステレオタイプな脳内お花畑のポエムな少女でもなく、一方でヨッコは「現実世界」の世知辛(せちがら)い原理原則や「腕力や胆力面では実に頼りない兄貴」の本性をシビアにわかってもいる、二面性もある少女として描かれているのである。


淳「バッカヤロ~~!!」


 負け犬の遠吠えのごとく、正男たちに叫ぶ淳に対して、振り向きざまに正男たちが、


「へへッ、ザマぁ見やがれ!」


 と声を揃えるさまは、個人的には30数年前の悪夢の日々を思い出してしまうほどの見事な演技である(爆)。



 その後、淳は仲のよい友だちである少年・悟(さとる)や少女・ミエとともに、ヨッコのおとぎ話に付きあわされることになる。


 ヨッコが公園の水道で「壷」をきれいに洗ってあげて、


「アカサタ ナンナン マミムメモン!」(笑)


 と呪文を唱えるや、壷の中から白い煙が吹き上がった!


 作画合成の赤い渦の中から、なんと本当に絵本に描かれていたマアジンが現れたのだ!


 冒頭でヨッコが読んでいた絵本の中に描かれていた、実にファンタジックな世界は、雇われ外注デザイナーでなければ、本編美術班の誰かが描いたのだろうが、実に見事な出来映えであった。
 そのファンタジックな絵本の世界観に登場していたのと同じ姿である、黒いシルクハットにウラ地が赤いマント、まさに「魔法使い」であるかのような爪先の尖ったブーツ姿の存在ではある。


 だが、マアジンを演じているコメディアン・横山あきおの個性が強く出すぎている。


・目の周囲が白
・その下が黄色
・頬(ほお)は青


 それらが赤で縁取(ふちど)りされているという、あまりにド派手なメイク!


 絵本の中のファンシーな「絵柄」だけの存在であれば「やさしい夢の存在」といった感じなのだろうが、3次元でコメディアンが演じると妙にナマ臭くなって滑稽味の方が浮上してきて正直、絵本の世界から飛び出してきたファンタジックなキャラクターだとは到底思えない(笑)。


 しかも登場時には漫画の擬音のような「ボョョ~~ン!」などという効果音を流されてしまうと、これはもうテレビの前でズッコケるしかない(爆)。


 どうヒイキ目に見ても「魔法使い」というよりは怪しい「大道芸人(だいどうげいにん)」(笑)にしか見えないマアジンに対して、ヨッコが驚きも恐れもせずに、


「マアジンさん、こんにちは」


 と律義に頭を下げた時点で、筆者は完全にトドメを刺されてしまった(爆)。


 ここで驚いてヨッコがマアジンから逃げ去ってしまうと、マアジンが魔法を使う余地がなくなったり、話が遠回りになりすぎてしまうので、ヨッコもそうとうの肝っ玉の持ち主か、やはりそこいらへんは物事の道理が単にわかっていない年齢相応の幼女だったのだ! ということでナットクしようではないか!?
 もちろんそれと同時に、本エピソードはこれからリアリズムよりも不条理・喜劇の方が優先される作劇になりますよ~! という視聴者に対する宣言も兼ねている。


 そんなひたすらにウサンくさい印象のマアジンではある。しかし、「大きな犬のぬいぐるみ」がほしいと願ったヨッコに、マアジンは手にしたステッキで、


「マアジン マアジン ポン!」


 と呪文を唱えて、ヨッコの願いをかなえてくれたのだ!


 願いをかなえる瞬間、ステッキの先端の周囲に七色の星がキラめく合成が実に安っぽいともいえるが、良い意味で低予算のご町内ファンタジー作品的な印象も与えてくれている。
 このステッキ、ひょっとして児童向け実写ドラマ『(新)コメットさん』(78年・国際放映 TBS)で、主人公のコメットさん役の当時のアイドル歌手・大場久美子(おおば・くみこ)が魔法を使用する際に使用していた小道具の流用ではないかと勝手に思っている。


 『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)第7話『東京サイレント作戦』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100613/p1)で騒音怪獣ノイズラーに襲撃される新幹線のミニチュアが、映画『新幹線大爆破』(75年・東映)で使用されたものを東映から借りていたという前例もある(だから破壊できなかった・笑)――『新幹線大爆破』は単なるパニック映画と思われがちなのだが、実はとても良いお話の名作。ただし「特撮映画」だと期待して観てはいけない!――。



 『コメットさん』を製作した国際放映も、往年の今は亡き東宝の分派である映画会社「新東宝」の流れを組んでおり、東宝の撮影所などもある世田谷区の砧(きぬた)にあった会社だから、同じく東宝の分派みたいなものである円谷プロのご近所でもあり、円谷プロから移籍した熊谷健(くまがい・けん)プロデューサーとのコネで内々に借りてくることができたとか?(笑)


イケダ隊員「キャップ(隊長)! 怪音波です!」


 同じころ、我らが防衛組織・UGMが怪しい音波の発信をキャッチした。


イトウチーフ(副隊長)「奇っ怪な波長だな。地球のものじゃない!」
フジモリ「じゃあ宇宙人!?」


 マアジンは300年もの長い間、「壷」の中に閉じこめられていたという設定以外は、その出自については劇中では一切語られずに、最後までナゾの存在として終わっている。だが、UGMの反応からすると、遠い過去にどこかの星から「壷」の中に閉じこめられた状態で宇宙に追放された存在だったという可能性も考えられる。
 まぁフワフワとしたファンタジックな存在なので、過去にはちょっとした悪党だった……というような設定を付与してしまうと微量に重たくなってしまって、本話のカルみのあるテイストも失われてしまうので、あえてそこには突っ込んでいかないのが作劇の塩加減としては正解ではある。


 ただまぁ、『(旧)コメットさん』(67年・国際放映 TBS)のオープニング映像では、宇宙でイタズラばかり繰り返す主人公のコメットさん――演じたのは当時の人気歌手・九重佑三子(ここのえ・ゆみこ)――に業(ごう)を煮やしたベーター星の先生が、


先生「おまえみたいな娘(こ)は地球へでも行ってしまえ!」


 とコメットさんをロケットに縛りつけて、地球へと追放してしまう様子が、作品の基本設定の紹介も兼ねて毎回のオープニング映像で描かれていた。
 こういう漫画チックでコミカルな映像表現であったならば、マアジンがちょっとした悪党だったとしても、大丈夫だったかもしれないが(笑)。


 300年も薄汚い「壷」の中に閉じこめられていたワリには、


マアジン「イヤでがすなぁ、このゴミ」


 などと街に散乱したゴミを嘆くくらいにはモラリストではあり、子供たちに街をきれいに掃除させて、そのご褒美として子供たちの願いをかなえてあげようという設定もまた面白い。
 後年に特撮作品でも隆盛を極めるエコロジー・テーマをもし仮に扱うのならば、このように子供たちにも視覚的にわかりやすいかたちで描くべきだろう。


――ちなみに、ゴミの中にはコンビニエンスストアセブンイレブンのマークが入った「紙袋」があった! 当時はまだコンビニでもいわゆるビニールのレジ袋ではなく、こうした「紙袋」の方が主流だったかなぁ? ちなみにこの当時、筆者の地元の三重県四日市市(よっかいちし)にはまだコンビニは一切存在しなかった(爆)。
 日本でコンビニが誕生したのは70年代前半であり、70年代中盤からすでに朝7時~夜11時まで営業するというセブンイレブンのテレビ・コーマシャルは散々に流れていたのだが、突如として雨後の竹の子のように急速に開店ラッシュとなるのは、関東圏でも80年代後半になってからのことである――


 マアジンに願いをかなえてもらうために、淳たちは公園のゴミを片づけて、ミエは新しい洋服を、悟はデジタル腕時計を願った。
 しかし、マアジンからミエにプレゼントされたのは、お姫様のような白いドレス! 悟にプレゼントされたのは大きな柱時計! やや時代感覚がズレていたり、明らかに間違ったかたちで願いをかなえてしまうのだ(笑)――あとできちんとデジタル腕時計を出すのだが――。


 これらの描写は単なるギャグとしての点描どまりの描写ではなく、のちにマアジンが大騒動を引き起こすことの伏線として立派に機能することとなる。


「ボクは“ラジカセ”と“自転車”と“ラジコン飛行機”と“マンガの本100冊”と“チョコレートパフェ”と“テストで100点とりたい”!」


 淳は矢継ぎ早に願いをまくしたてる!


 常に満たされない不全感を胸の内に秘めていそうな、我々オタクの似姿でもある(爆)、ヒ弱な淳のキャラクターからして、外側からはガツガツとしているようには見えないのに、意外と本心は貪欲(どんよく)である描写もなかなかにリアルだ。


 だが、「願いごとはひとりにつき、ひとつしか叶えられない」のが原則であった!


 怪音波の探索で出動した、我らが主人公ことウルトラマンエイティである防衛組織・UGMの隊員である矢的猛(やまと・たけし)と、ウルトラ一族の王女さま・ユリアンこと星涼子(ほし・りょうこ)が搭乗するUGM専用車・スカウターS7(エスセブン)が接近してくるのを察知するや、マアジンは


「いや、大人には見つかりたくないデガス。大人はウソつきが多いデガスからね」


 と、淳の願いをかなえないままで、「壷」の中に姿を消してしまう!


 これもまた、そこでマアジンの存在や正体がバレてしまっては、あとはUGMとの攻防劇になってしまって、子供たちとの蜜月(みつげつ)の時間もそこで終わってしまうことを回避するための都合論ではある。ヒイてジラして引き延ばしていくこともドラマ一般では肝要なのである(笑)。


 子供たちがマアジンに願いをかなえてもらうために、街中で掃除をすることが一大ブームとなる。


 そんな中、パトロール中の矢的隊員と涼子隊員の眼前で、ひとりの少年が危険な場所に侵入して掃除を試みようとした末に落下してしまう!


 危うく少年を受けとめたが、その際に矢的隊員は足を負傷してしまう!


 涼子隊員は銃身が短い小型の白い銃のようなものを、矢的の足に向けて光線を当てるが……


矢的「なんだい、それは?」
涼子「メディカルガンよ」
矢的「それは君の星(ウルトラの星)から持ってきたのかい?」
涼子「そう。これさえあれば、どんなケガでも病気でもへっちゃらよ」
矢的「だとしたら、もう使わない方がいいなぁ」
涼子「どうして?」
矢的「君は『郷に入れば郷に従え』って言葉を知っているかい?」
涼子「ええ。郷ひろみならテレビで見たけど」


 ♪ ア~チィ~チィ~、ア~チィ~、ってその郷と違うわいっ! 70~80年代の大人気アイドル・郷ひろみのことである(笑)。


矢的「(苦笑)わかってないなぁ。僕たちは今、地球で生活しているんだ。地球には地球のやり方があるってことだよ。さぁ、わかったら公園へ行こう」
涼子「ええ」


 やはりわかっていないような様子で考えこんでいる涼子。


 前話の第45話『バルタン星人の限りなきチャレンジ魂』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110327/p1)では、「バルタン星人」の存在と「児童ドラマ」の方を優先したのだろう、星涼子隊員の正体がウルトラ一族の王女さま・ユリアンゆえの世間知らずから来る超能力の発露で正体がバレそうになるお約束の「点描」はあっても、地球人との感覚のズレにともなう「懊悩」の心情描写まではなかった。
――ひょっとすると、シナリオ上では涼子はまだ登場しておらず、第43話『ウルトラの星から飛んで来た女戦士』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110219/p1)で殉職したUGMの城野エミ(じょうの・えみ)隊員のままだったゆえかもしれない・爆――


 しかし今回は、第44話『激ファイト! 80vs(エイティたい)ウルトラセブン』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110226/p1)に続いて、地球で正体を隠して生きていくための術(すべ)をよくわかっていない涼子=ユリアンに対して、地球では正体を隠して人間に合わせた生き方をすることを諭(さと)していく矢的=ウルトラマンエイティの姿が描かれている。
 『80』終盤の「ユリアン編」独自の特徴となるシリーズ・イン・シリーズのドラマをここで描けているばかりでなく、これまた本作の最終回近辺でのクライマックスへの伏線としての重要な役割を担(にな)っているのである。


 ただこのメディカルガン、第43話『ウルトラの星から飛んで来た女戦士』において城野エミ隊員が殉職した際にも、涼子は看病で使用したのであろうか?(笑)



石田えりさんが殉職して、私がUGMに入ったあとで、メディカルガンというのを出してきた回があったんですよ。「このガンさえあれば、どんなケガでも病気でもへっちゃらよ」みたいなことを、私は言いきっているんですね。じゃあ石田えりさんが亡くなった時、なぜそれを出さなかったのかと(笑)。あとでファンの方からもつっこまれましたよ(笑)。この回はまた東絛監督で、ゲスト主役の男の子がすごく怒鳴られてかわいそうで(笑)。こっちはこっちでスキーをするシーンもあって、(矢的猛役の)長谷川(初範)さんはスイスイできるんですけど、私は基本のボーゲンしかできなくて。うまく止まれなくて、もう顔なんかひきつってました」

(『君はウルトラマンエイティを愛しているか』星涼子役/萩原佐代子(はぎわら・さよこ)インタビュー)



 社会派の東絛監督が一方では昭和的なドナりまくる演出をしていて、しかもダミ声だから何を云っているのかわからなくって、監督の意図を推測して演じていたという証言は、東映スーパー戦隊シリーズの出演者インタビューでも散見するものである(笑)。子役に対しても同様にドナっていたというのはどうかとも思うけど(汗)。


 それはさておき、メディカルガンを第43話ではなぜ使わなかったのか?
 これはキツいところを突いてくる質問であり、『80』という作品の根幹、「ユリアン編」の屋台骨にも関わりかねない問題ではある。このような疑問をいだく御仁はややイジワルともいえるけど、それだけ作品のことを深くよく真剣に観ているのだともいえるのだ。その疑問をスタッフに対してではなく、シナリオに沿って演じているだけの役者さんに対してブツけるのには疑問だが(笑)。


涼子「あらゆる手を尽くしたけれど、ダメだったわ」


 第43話で侵略星人ガルタン大王を倒し、矢的が真っ先にエミのもとに駆けつけた際、涼子はそう語っていた。よって後付けだが、そこまでイジワルに、もとい正当に見抜いてしまえる御仁たちも、さらにその先まで射程を伸ばして、映像化はされなかったものの、その「あらゆる手」の中にはきっとメディカルガンも含まれていたのだ! などともっと好意的に深読みしてみせようではないか!?(笑)


正男「オメエら、いいもん持ってんじゃねぇか! その壷よこせよ!」


 マアジンの出現で再度、怪音波が発信されたことにより、矢的と涼子が向かう。


 ここで本エピソードのお題・課題であるウルトラシリーズの大人気怪獣・レッドキングをそろそろ尺のバランス的にも登場させなければならない。しかし、危険なレッドキングを召喚する役目は、善良なるメインゲスト子役である兄妹には似つかわしくはない。そこで先のイジメっ子たちに登場をお出まし願うのだ(笑)。


 よって、公園で淳は正男たちに「壷」を奪われてしまうのだ! 必死に抵抗した淳であったが、


ヨッコ「お兄ちゃん、ケンカしたら負けるよ」


 というヨッコの実に冷静な説得はあまりにも大きかった(笑)。


 淳から「壷」を強奪した正男たち3人の悪ガキは、とあるビルの屋上に登って、それぞれの願望を告白する。


正男「オレ、前からホンモノそっくりに動く、怪獣のオモチャがほしかったんだ!」


 それだったらオジサンは今でもほしいぞ(笑)。


正男の友人A「だったらオレ、エレキングがいいなぁ……」


 『ウルトラセブン』(67年)第3話『湖のひみつ』より、木曽谷(きぞだに)の吾妻湖(あづまこ)から出現した宇宙怪獣エレキングの姿がバンクフィルムで映し出される!
 ただし今回もオリジナルの鳴き声はかぶらず、第44話『激ファイト! 80VSウルトラセブン』におけるウルトラセブンの紹介場面と同様で、エレキングの鳴き声は『ウルトラマンタロウ』第28話『怪獣エレキング満月に吼(ほ)える!』に登場した月光怪獣・再生エレキングのものを使用している(笑)。


正男の友人B「それよりさぁ。オレ、ウーがいいなぁ……」


 初代『ウルトラマン』第30話『まぼろしの雪山』より、飯田山(いいだやま)に出現して、「雪ん子」と呼ばれて村人たちから忌(い)み嫌われていた少女ユキに手を差しのべる伝説怪獣ウーの場面が流れる。
 こちらの流用映像にかぶるウーの鳴き声は、『ウルトラマン80』が放映されていた1980年前後のジャンル作品としては珍しく、きちんと過去シリーズでの初登場時と同じ鳴き声を使用している!


 オリジナルの怪獣の鳴き声が使用されないのは、なぜなのか? それは第1期ウルトラシリーズの音入れを担当していた東宝系の「キヌタ・ラボラトリー」がこの時点ですでに解散していたからだろう――厳密には73年に会社名を変更して機材専用会社となる――。
 基本的に「効果音」の類いは製作会社ではなく録音スタジオを経営する会社の所有物なのであり、それらが散逸してしまったり、倉庫のどこにあるのか誰にもわからなかったりして発掘しきれなかったことが事の真相なのだろう。


 もちろん録音スタジオ間でも、効果音テープを有償無償で貸し借りするようなことも少しはあっただろう。しかし、当時の長命シリーズ作品で過去作のオリジナルの怪獣の鳴き声が使用されている場合は、原盤テープからではなく、製作会社の所有物であるテレビ放映用のフィルムとセットになっている「MEテープ」――セリフ抜きの音声である「MUSIC(BGM)&EFECT(効果音)専用の音声テープ――から、該当する怪獣の正しい鳴き声だけをダビングして、再音源化していたのだと思われる――今だと著作権法的にはグレーな行為だが・汗――。


――90年代以降のウルトラマンのアトラクションショーや新作における往年の人気怪獣の再登場時の怪獣の鳴き声なども、すべてこの「MEテープ」、もしくは当時のレーザーディスクには必ず収録されていた「MEテープ」のみの音声からの再音源化ではないかと思われるのだ――




 しかし、怪獣エレキングに怪獣ウー。ウ~ム、キミらの好みにケチをつける気はないが、キミらよっぽど当時の第1期ウルトラシリーズ至上主義者の兄ちゃんたちに毒されとったんやなぁ(笑)。


 この劇中の少年たちによる、第1期ウルトラシリーズの人気怪獣偏重は、当時の子供たちの怪獣に対する好みを正当に反映したものだったのだろうか?


 ちなみに、さらに後年の1988年12月26日(月)から30日(金)までの冬休み期間中の5日間、TBSローカルで朝10時からの90分枠の特番で、『おまたせ! 一挙大公開ウルトラマン大全集』なる番組が放送されたことがある――中部地区でも少し遅れて放送された――。内容は連日、初代『ウルトラマン』から傑作選を2話ずつ放映して、最後にウルトラ兄弟の紹介やら主題歌集やらの企画ものとして構成されていた。
――この番組の演出は、『80』では第43話と第44話の特撮監督だった神澤信一(かみざわ・しんいち)が担当。ナレーションを務めたのは、初代『マン』で科学特捜隊のムラマツキャップ(キャップ)を演じた故・小林昭二(こばやし・あきじ)であった!――


 その中の『ウルトラ怪獣ベストテン』という企画は、市井(しせい)の人々に最も好きなウルトラ怪獣を挙げてもらうというものであった。
 それで保育園だか幼稚園に赴いてそこの園児たち多数にインタビューした映像が流れたところ……


 驚くなかれ! 第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちには忌み嫌われていた第2期ウルトラシリーズの怪獣であり、『ウルトラマンタロウ』第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』に登場した、ウルトラシリーズの強敵怪獣たちの亡霊が合体したという設定の「暴君怪獣タイラント」を挙げた幼児たちが圧倒的に多かったのである!


 この1988年度は、テレビ東京で平日夕方18時25分から放映されていた帯番組『ウルトラ怪獣大百科』が放映されていた年である。この番組でも7月20日(水)にタイラントが紹介されていたので、その印象が鮮烈だったのだろうか? それとも園内の図書の中に『怪獣図鑑』などの書籍があって、そこに強敵怪獣として記述されていたことが「刷り込み」とでもなっていたのだろうか?(笑)


・竜巻怪獣シーゴラス
・異次元宇宙人イカルス星人
・宇宙大怪獣ベムスター
・殺し屋超獣バラバ
・液汁超獣ハンザギラン
・どくろ怪獣レッドキング
・大蟹超獣キングクラブ


 歴代ウルトラ怪獣の怨霊たちが合体、各々の部位が体表を彩(いろど)った意匠(いしょう)を持ち合わせて、ウルトラ5兄弟をもひとりずつ倒していった! という戦歴を持った強敵怪獣!


 第1世代の特撮マニアたちが神格視してきた第1期ウルトラシリーズのデザイナー・成田亨(なりた・とおる)氏は、古代ギリシャ神話におけるライオン・ヤギ・毒蛇が合体した怪物キメラ(キマイラ)のような「合体怪獣」という存在を、後年の自著では怪獣デザインにおける「禁じ手」として否定的に語ったことから、成田信者たちはその口マネをして、タイラントのような「合体怪獣」の存在は邪道であり低劣な存在であるとして罵倒的に語ってきたものであった(汗)。


 科学的・SF的にはまるで合理的ではないけれど、呪術的・オカルト的にはアリエそうではある(笑)、怪獣の怨念・怨霊が集積して誕生したという出自設定。その体表にそれらの怪獣の特徴的な意匠が浮かび上がったようなキャラクター。
 そして、そういったキャラクターに我々もまた、各々の怪獣の霊的・物理的なパワーまでもがやどっており、通常の怪獣の数倍もの強さがあるようにも感じられてきてしまうというような心性!
 こういった感慨は、未開の原始人の時代から人間そのものに本能的に備わっている、それが「非科学的」ではあっても「原初的」な「本能」には訴えかけてくるような普遍的な情動ではあるのだ。


 当の子供たちも、そして全員とはいわずとも多くの特撮マニアたちが、タイラントなどの合体怪獣にいだいてしまうような畏怖(いふ)の感慨は、そんなところに理由があるのだろう。事実、近年のウルトラシリーズにもイベント編や映画などではあまたの合体怪獣たちが登場しつづけてもいる。実に喜ばしいことである(笑)。


 このように後出しジャンケンでエラそうに語っている筆者であるが、『80』放映当時はすでに中学2年生であり、当時出始めたマニア向け書籍に実はすっかり洗脳されており(汗)、「ウルトラ怪獣といえば第1期ウルトラに登場したヤツらが最高であり、第2期ウルトラの怪獣などはカスである!」と思いこんでいた時期があるので、決して無罪ではないのだが(爆)。


 しかし、1970年代末期~1980年の第3次怪獣ブームであった当時、たとえばケイブンシャの児童向け文庫本『ウルトラマン大百科』(78年8月10日発行)や、小学館の幼児誌『てれびくん』・児童漫画誌コロコロコミック』・学年誌のカラーグラビア記事などでは、全ウルトラシリーズが第1期や第2期の区別などはまるでなく、均等・平等に扱われていたものだ。
 それらをむさぼり読んでいた当時の子供たちの間では、もちろんそれぞれに好みはわかれただろうが、少なくとも金科玉条的な第1期ウルトラシリーズ至上主義に陥(おちい)っていた者は、マニア予備軍の小賢しいガキたちを除けば(笑)ほとんどいなかったハズである。


 だから正男の友人たちが揃って第1期ウルトラシリーズの怪獣ばかりを挙げるっていうのはどうもなぁ(笑)。まぁ、このへんは脚本の平野氏の世代的な好みか、第1期ウルトラ至上主義者たちによるマニア向け書籍の影響を中途半端に受けてしまった円谷プロ側のプロデューサー・円谷のぼる社長や満田かずほ側からの平野へのオーダーなのだろう。




正男「エレキングもウーもイマイチだよ。それよりさぁ、レッドキング。これが一番さ!」


 おい、正男! おまえも第1期ウルトラシリーズ至上主義者か!?(笑)


 空き地の近くにあるビルの屋上で、呪文を唱えてマアジンを呼び寄せた正男は、ホンモノそっくりのレッドキングを出現させてくれることを願った!


 街中の子供たちの願いを叶えて、すっかり疲れきっていたマアジンは、


レッドキング、出てこ~い。……ホンじゃ」


 と、召喚の言葉を唱えるや…… 即座に「壷」へと戻ってしまう!(笑) まさに脚本を担当した平野氏の本話に対する証言に匹敵するほどの「やる気のなさ」である(爆)。しかし、だからこそレッドキングが唐突に登場してくれて、その大暴れが見られるのである(笑)。


 しかし、ホンモノそっくりのレッドキングは全然現れない。シビレを切らした正男は「壷」の中をのぞきこんで、


「オイ! レッドキングはどうしたんだよ!?」


 と催促する。「壷」の内側からの主観映像で、画面中央上方の穴の外から覗(のぞ)きこんでいる正男の顔を映している構図はお約束なアリガチな映像なのだが、基本を抑えることもまた大事である。ここでまるで意味のない変化球で違和感のある映像を見せられても意味がない(笑)。


 そしてその映像に、


「ピィ、ガァァァァ~オォォォ~ッ!!!」(擬音にするとこんな感じか?・笑)


 というレッドキングの鳴き声がカブってくる!!


 いつの間にかビルの横の空き地にレッドドキングが出現していたのだ!!
 ここではちょっとハグらかせてみせるワンクッションを置いてみせたフェイント攻撃な変化球の演出が試みられている。


 レッドキングの足から頭へと全身を映していき、正男たちが


「ホンモノだぁ~!!」


 と腰を抜かすという、ベタだがこうあってしかるべきというコテコテの演出がたまらない(笑)。


 相応の高さのビルの屋上にいる正男たちをにらみつけてくるレッドキングの首から上を実景と合成した魅惑的な特撮カット!
 ニラみつけてくるレッドキングの顔面と怯える正男たちをワンカットに収めるためにという、特撮演出の都合論(笑)でビルの屋上をロケ地にしてレッドキングを召喚してみせたといったところだろう。


・ミニチュアのビルを破壊するレッドキングの右横に、ビルの非常階段を駆け降りていく正男たちを合成した特撮場面
・さらにはススキ一面の原っぱと、画面手前にいる矢的隊員と涼子隊員のもとに駆けてくる正男たちの画面の上方に、ミニチュアセットで暴れ回っているレッドキングを合成


 と、畳みかけるような合成カットの連続が、どこまで行っても合成ではあり「実物」には見えないのかもしれないが(笑)、特撮作品においては「本編」と「特撮」を架橋してくれる醍醐味でもある!


 しかもススキ一面の原っぱのカットは、単純に画面の上の方が特撮ミニチュアセットで、画面の下の方を実景として、地平線の上下でスパッと分かれているような簡単な合成カットではない。
 画面の右上には実景の倉庫が配されており、そのすぐ後ろにはミニチュアのマンション風の建物が見えるようになっている。さらによく見てみると、レッドキングの足元を隠すようにその手前に実景がまたハメこまれているといった、芸コマな合成カットなのである!


 矢的と涼子は、UGMの光線銃・ライザーガンでレッドキングを攻撃する!


 その間にも「壷」を奪いあっていた淳と正男だったが…… ナントはずみで「壷」が地面に落下して、割れてしまった!!


 もうマアジンを呼び出してレッドキングを消してもらうような生ヌルいマイルドなオチへの出口は塞がれた! あとはウルトラマンと壮絶に戦ってもらうしかなくなったのだ!(笑)


 子供たちを安全な場所へと逃がそうとする涼子であったが、逃げ遅れたヨッコに巨大なレッドキングが迫ってくる!


 屋外での「自然光」のオープン撮影でのあおりで撮られたレッドキングの全身カット。シンプルでアリガチな手法ながらも、やはり屋内の特撮スタジオでの「照明器具」で擬似的に白昼を再現した場合の陰影とはまるで異なっている! 怪獣や青い大空の巨大感・実在感・奥行き感をこれほどまでに的確に表現できる演出はないのだ!


 この特撮カットでは、レッドキング3代目の体色が、初代『マン』第8話『怪獣無法地帯』に登場したレッドキング初代の白に近い黄色ではなく、第25話『怪彗星ツイフォン』に登場したレッドキング2代目のようなやや金色にも見えている。正男の前にはじめて姿を現したときの全身カットでは、体表全身のジャバラ(蛇腹)模様の部分に、初代と同様に地の黄色の上を青で細くウスく彩色がされているのも確認ができる。



――レッドキングといえばウルトラ怪獣の代名詞ですが、これを作られたということで感慨などありましたか?
「嬉しかったのと、ちょうどこの時期、原口智生(はらぐち・ともお)くんを介して、初代のレッドキングを作った(故)高山良策(たかやま・りょうさく)さんとおつきあいさせて頂くようになって。昔のお話を聞かせて頂いたりとか、一緒に食事をさせて頂いたんです。そのタイミングにほぼ偶然『80』でレッドキングを作ったので、感慨深かったですね。高山さんにレッドキングを作ることになったとお話したら、「がんばりなさい」と言われて、そんなこともあって気持ち的にもかなり入れこんで作りました」

(『君はウルトラマン80を愛しているか』造形/若狭新一(わかさ・しんいち)インタビュー)



・『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)第5話『出現、怪獣島!』~第6話『爆撃、5秒前!』の前後編と、第36話『イジゲンセカイ』
・『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)第42話『旧友の来訪』
・『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年)第1話『怪獣無法惑星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)・第7話『怪獣を呼ぶ石』・第11話『ウルトラマン
・『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年)第10話『新たな戦いの地平で』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100312/p1)と、第12話『グランデの挑戦』~第13話(最終回)『惑星崩壊』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100331/p1


 21世紀に入ってからの近年のウルトラシリーズでは、ひんぱんに再登場を繰り返すようになったレッドキング。それらの中で使用されているレッドキングの着ぐるみは、初登場作品である初代『マン』第8話『怪獣無法地帯』に登場した初代レッドキングを完璧なまでに忠実に再現した、まさにレプリカと云っても過言ではないほどの見事な出来映えである。


 近年のそれらと比較してしまうと、今回登場したレッドキング3代目の着ぐるみは、今日的な観点で厳密に見ればそれほど初代のレッドキングとは似てはいない。眼球が異様に大きかった初代と比べて、白目の部分も明確に造形されている眼球はむしろ2代目を思わせるものである。全身のジャバラも黄色と青で塗装されているとはいえ、ロング(引き)の映像で見ると、全体的には茶褐色にも見えることで、これもまた2代目の特徴である。頭部の先端もやや尖(とが)りすぎているように感じられる。何よりも首の部分が実に固そうで、微動だにしなさそうなあたりは、初代や2代目と比すると生物としては不自然な感じもしてきてしまう(笑)。


――レッドキング2代目といえば、一般ピープルには初代との区別が当然つかないだろうが(笑)、クチうるさい特撮マニア諸氏にはやや金色というイメージが強いかとは思う。しかし、山岳を切り崩して防衛組織・科学特捜隊の前にはじめて姿を現した場面では、どちらかといえば茶褐色で塗装されているようにも見えてくる色彩でもあるのだ!――


 だがそれでも、造形面でもこだわりを見せはじめていた当時の年長の特撮マニアたちの視点で観ても――といってもこの当時の上限はまだ25歳くらいなのだが・笑――、このレッドキングはその時代までのウルトラシリーズに登場した、着ぐるみを新造した復活怪獣たちの中でも、初代や2代目の着ぐるみの造形を忠実に復元しようとした存在として、ダントツの人気を誇っていたものである。


 今回のレッドキングは、正男が「ホンモノそっくりのレッドキングがほしい」と願ったことで、マアジンが誤って「ホンモノ」(笑)を出してしまったという設定である。ただし、どこかヨソの土地から瞬間移動されてきた「ホンモノ」ではなく、正男の頭の中でイメージされたレッドキングを実体化しているのかもしれない。当然のことながら、正男の頭の中では初代と2代目の印象がごっちゃになっていただろう。だから、このレッドキング3代目が初代と2代目のチャンポンであるのは、まさに正しいのである!?――造形担当者が作品の意図をそこまで汲んで表現したのかは別として(笑)――


怪獣・宇宙人の「2代目」「3代目」「再生」「改造」といった区別の始原はいつなのか!?


 現在では考えられないことだが、マニア上がり出身のライターたちが関わった商業誌が多数出版されるようになる1978~79年の第3次怪獣ブームより以前に発行された怪獣図鑑、少年向け雑誌の怪獣特集などの出版物においては、レッドキングや宇宙忍者バルタン星人など複数回にわたって登場して、登場話数によっては明らかに着ぐるみが別ものである怪獣や宇宙人でも、「初代」「2代目」などと明確に区別されることなどはまったくなかったのだ。


 かの第1世代の特撮評論家・竹内博(たけうち・ひろし)が、小中学生時代に円谷作品のみならず、東宝東映などの特撮映画に登場した怪獣たちをも百科事典形式にノートにまとめた「ゴールデンモンスター」なる資料を基にした、1970年代に子供向けの一連の文庫本サイズのブ厚い『大百科』シリーズで当時の小学生たちの注目を集めていた、今は亡きケイブンシャ勁文社)から1971年末に発売されて、100万部を超える大ベストセラーとなった『原色怪獣怪人大百科』。この『原色怪獣怪人大百科』においても、レッドキングは2代目の写真だけが、バルタン星人は初代の写真だけが掲載されたのみであったのだ。
――もっとも、初代『マン』第16話『科特隊宇宙へ』に登場したバルタン星人2代目は、商品化権用の三面写真や雑誌掲載用のスチールなどが一切撮影されていなかったそうである。円谷プロの社員でもあった特撮ライター・竹内博先生が放映用フィルムのコマ焼きからポジフィルムやネガフィルムを逆につくって、ようやくその写真が書籍に掲載できるようになったのは、70年代末期の第3次怪獣ブーム以降のことであったのだ――



 ところで、この『原色怪獣怪人大百科』は厳密には書籍ではなく、両面に16種の怪獣怪人を紹介した折込みのシートを24枚セットにした形式であった。怪獣映画の元祖『ゴジラ』(54年・東宝)に端を発して、当時の最新作『ミラーマン』(71年・円谷プロ フジテレビ)第1話『ミラーマン誕生』に登場した鋼鉄竜アイアンに至るまでの、製作会社の垣根(かきね)を越えて全370体もの怪獣・怪人・ヒーローが紹介されていた、当時としては実に画期的な出版物であったのだ。
 72年末には第2巻、73年末には第3巻も発行されたが、74年末に先述の文庫本サイズの子供向け『大百科』シリーズの第1巻『全怪獣怪人大百科』として再編成されて、その年の新作に登場した怪獣・怪人を増補するかたちで84年末に発行された「昭和60年版」まで毎年刊行され続けた大ロングセラーでもある。


 しかし、あの竹内氏も1971年当時の時点で、マニアだから内心ではレッドキングやバルタン星人を初代・2代目などと区別する意識があったのだろうが、それを子供向けの商業誌でも展開するというところまでは踏み込めなかったようである。もちろん71年当時は、年長マニアによるサロンなどもない、ほぼ子供たちだけがジャンル作品を観ている時代であったから、顔面のマスクの形状や材質までもが異なる初代ウルトラマンのA・B・C、3種類のマスクの区別さえもがまだ一切されていないような時代であった(笑)。


 70年代前半の第2期ウルトラシリーズの掲載権を独占していた小学館でさえも例外ではない。『帰ってきたウルトラマン』(71年)の放映当時に発行されて、90年代初めまで刊行され続けたロングセラーである子供向けハードカバー書籍『入門百科』シリーズの『ウルトラ怪獣入門』なども同様である。『ウルトラセブン』第4話『マックス号応答せよ』に登場した反重力宇宙人ゴドラ星人や、第10話『怪しい隣人』に登場した異次元宇宙人イカルス星人は、平日夕方の5分番組『ウルトラファイト』(70年)登場時における、たしかにオリジナルの着ぐるみだがヨレヨレのクタクタになったゴドラや、アトラクション用に新規に製作されたイカルスの着ぐるみの写真で紹介されていたのだ。
――ちなみに『ウルトラファイト』に登場する宇宙人たちは、「星人」抜きでの「ゴドラ」や「イカルス」という名称で実況中継されており、後年のマニア向け書籍でも『ファイト』を紹介する際にはそれを踏襲している・笑――


 学年誌のさまざまなカラーグラビア企画に登場する際にもバルタン星人は初代ではなく、『ウルトラファイト』に登場したバルタン(爆)や、『帰ってきたウルトラマン』第41話『バルタン星人Jr(ジュニア)の復讐』に登場したバルタン星人ジュニアの写真が平気で使われていたものだ(笑)。初代『マン』第39話(最終回)『さらばウルトラマン』に登場した宇宙恐竜ゼットンも、初代の写真ではなく、『帰ってきた』第51話(最終回)『ウルトラ5つの誓い』に登場したゼットン2代目の写真で代用されることが多かったのである。


 もっともこれらは1960年代後半の第1期ウルトラシリーズの掲載権が講談社にあったために、小学館が第1期ウルトラに登場した怪獣たちのスチール写真をほとんど持っていなかったことが大きいだろう。だが、そんなことがまかり通ってしまうほど、当時はおおらかな時代だったのである。


 そうした中で幼年期を過ごした者たちにとっては、ビデオなどで度々反芻(はんすう)できるわけではなかったから、たまたま手近でふれた出版物の違いによって、怪獣たちに対するイメージも各人各様のものが形成されていったかと思えるのである。バルタン星人といっても即座に初代をイメージするワケではなく、『ファイト』版やバルタン星人ジュニアの方をイメージしていた者も相応にいただろう(笑)。
 レッドキング2代目は、初代の着ぐるみが第19話『悪魔はふたたび』に登場した発泡怪獣アボラスとして頭だけをスゲ変えて改造されたあとに、また元のレッドキングの姿に戻された着ぐるみでほぼ同一の姿だったことから、子供たちにも2度目の登場や初代とは別個体という認識はあっても、造形面では誰にも識別が付かなかったことと思う。



 まったくの余談だが、2011年4月8日8時15分にNHK総合で放送された平日朝のワイド番組『あさイチ』にゲスト出演した俳優の村上弘明(むらかみ・ひろあき)に対して、視聴者たちから寄せられたFAXの中に、


「幼いころに夢中になっていた『(新)仮面ライダー』(79年)の主役の人が、村上さんだったなんて今まで全然気付きませんでした」


 などという、我々特撮マニアにとっては思わず仰天してしまうものがあった。一般層というのはやはりそんなものなのである(笑)。


 そのようなわけで、今回登場したレッドキング3代目は、当時の人々が思い描いていたレッドキングに対するイメージの最大公約数を満たしたかたちでは造形されているが、書籍『君はウルトラマン80を愛しているか』で述べられていたような初代レッドキングの再現モデルとは、今日的な観点からは少々異なるだろう――後年の若狭氏であれば、少なくとも目の部分は眼球を大きく造形したかとも思える――。
 たとえて云うならば、バンダイから発売中のソフビ人形『ウルトラ怪獣シリーズ』のレッドキングは2000年に金型が一新されて以降、初代の造形と彩色を再現したかたちで発売され続けているが、1983年に初発売された当初は、造形は初代であるものの整形色は茶色でスプレーによる塗装は金色と2代目としての彩色であり、初代と2代目が混合された姿として造形されたようなものであった。


 もちろん現在では年季の入った特撮マニアであれば、レッドキングといえば初代派もいれば2代目派もいるだろう。しかし当時の草創期マニアたちの欲求を満足させるという意味では今回のレッドキングはほぼ完璧な仕上がりとなっているのだ。
 さらに個人的に云わせてもらえば、多少いびつな感のあるレッドキング初代の全身のスタイルに比べれば、今回のレッドキング3代目の方がスタイルはよいように思う。正面から見た顔面も、先述の『原色怪獣怪人大百科』をはじめとして、当時の怪獣図鑑レッドキングを紹介する際には必ずといってよいほどに用いられていた「恐竜とキングコングの合いの子」というフレーズがまさにぴったりである。その凶暴な面構えは初代をはるかに陵駕していると云っても過言ではないほどなのである――筆者からすると初代の顔はややカワイめかと思えるので・笑――


 とはいえ、それゆえに今回のレッドキング3代目を過剰に高く評価して、それまでに登場した怪獣や宇宙人の2代目や3代目たちを、造形のショボさゆえに完全否定するマニアたちの意見には同意しない。アレらはアレらで味があるのだ(笑)。


ウルトラマンタロウ』の人気怪獣・復活月間と、学年誌での連動記事の画期性!


 小学館『小学三年生』73年12月号(11月3日頃実売)に掲載されたカラーグラビア『ウルトラひみつ大作戦 帰ってきた最強怪獣』は、『ウルトラマンタロウ』における10月放映分の第3クール頭の歴代怪獣・復活月間であった、


メフィラス星人2代目が登場した第27話『出た! メフィラス星人だ!』
・再生エレキングが登場した第28話『怪獣エレキング満月に吠える!』
・改造ベムスターと改造ヤプールが登場した第29話『ベムスター復活! タロウ絶体絶命!』
・改造ベムスターと改造ヤプールと改造サボテンダーと改造ベロクロン二世が登場した第30話『逆襲! 怪獣軍団』


 これらに登場した再生怪獣・改造超獣・2代目宇宙人登場編の大特集であった。そこでは「怪獣軍団ひみつ作戦会議」で選抜された最強怪獣たちの、「初代」と「2代目」の違いが図解で解説されていたものだ。


 先述した再生エレキングのツノが初代と比べて回転しなくなったのは、


「(変身怪人)ピット星人の指令を受けなくてもいいからだ」


 そうであり(笑)、


 「まえのエレキングはしっぽが長すぎたので、少し短くして動きやすくした」


 という後付けの設定には、妙に合理的な説得力が感じられる(笑)。


 ただその一方で、


「性能はよくなったが、ピット星人があやつらないので本当はだめになった」


 っていうのは、意味わかんねぇぞ~っ!(笑)


 異次元超人・改造巨大ヤプールに関しては、


ヤプールは、ウルトラマンA(エース)にさんざんやられたため、顔と頭がめちゃめちゃにこわされた。そこで、せい形手術で直した」


 ……のだそうである。初代というか同一個体の改造前と比べて、顔面と頭がかなり歪んでいることに、顔面にエースの光線の直撃を浴びたことがあるのをきちんと踏襲して、それに対する「整形手術」をしたという理由をつけたのである(笑)。


「やられた顔(額)のところは、とくべつな銀色の金ぞくをうえつけた。だが、Aとのたたかいで悪くなった頭はなおらなかった」


 「悪くなった頭は直らなかった」(爆)。いま読み返すと笑ってしまうのだが、当時のいたいけな子供たちは改造ヤプールがやや弱かったりアッサリと負けてしまった理由を、こういった一応の合理的な説明で「へぇ~、そうなんだ!」と納得していたのであった(笑)。


 ちなみにレッドキングも、「怪獣軍団ひみつ作戦会議」で選抜される最強怪獣の候補にあがっていたそうだが、「頭がよくないから」という理由で外されていた(笑)。ちなみに宇宙ロボット・キングジョーは策略星人ペダン星人に「つくるのに3年かかる」と云われてアキラめたらしい(爆)。


 いやぁナンとも児童レベルでの知的好奇心(笑)をそそられる、実際の作品のバックヤードで繰り広げられていたというウラ側での物語の数々!
 単なる善VS悪とのマンネリで1話完結ルーティンのド突き合いだけであれば、子供たちも飽きてきて次第に予定調和がバカバカしくなって、それでは子供番組からの卒業も早まってしまうものである。だからそれだけでもイケナイのだ。
 しかし、その作品のウラ側に、各話単位のストーリーや、強化月間(笑)である4本分の数話を超えて中長期にわたって準備されてきた、悪い宇宙人たちによる2代目・再生・改造怪獣たちによる長期的な地球侵略計画があったのだ! というウラ設定を付与されるや、あら不思議!
 作品はとたんに「地上での単発的な戦い」と「宇宙での長期的な攻防戦」との「二重性」や「複雑性」を帯びてきて、物語のスケールも宇宙規模に拡大していき、繰り返すが大人レベルではなく子供レベル(笑)でのワクワクさせる「知的好奇心」を惹起して、子供たちの興味関心をより長期にわたって継続するものともなっていくのである!


 このへんは円谷プロ側やTBS側が考案した設定ではなく、あくまでも小学館学年誌の編集者たちによる後付けの功績なのである。しかし、その功績は非常に大なるものがあるのだ! 彼ら学年誌の編集者たちがウルトラシリーズスペースオペラ的な「SF」性を拡大したのもまた間違いがないところでもあるのだ。
――もちろんそれは「ハイSF」ではなく「ローSF」ではあるのだが、それを云うならばかの『スター・ウォーズ』(77年・日本公開78年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200105/p1)だって、アシモフやクラーク作品と比すれば「ローSF」なのである・笑――


 ちなみにこの学年誌の企画には、その後の第3次怪獣ブーム時代には同じく小学館の『てれびくん』や『コロコロコミック』でウルトラシリーズの特集記事を担当していた安井ひさしが「協力」としてクレジットされている。
 氏が関わるようになったころから、こうした怪獣たちの種族内での「2代目」「3代目」などの違いが明確にされるようになっていったようでもあり、やがて70年代末期の第3次怪獣ブームの時代においては、各種の書籍でも「2代目」「3代目」などと表記される「公式設定」に昇華するのである。


 しかし、第3次怪獣ブームの以前には、『ウルトラセブン』第48~49話(最終回)『史上最大の侵略』に登場したウルトラセブンそっくりの、シナリオ上では「M78星雲人」とされていたらしいキャラクターなどは、この小学館学年誌でさえまだ紹介されてはいなかったのである。その欠落を安井ひさしとともに活躍していた後年の編集者にして特撮ライター・金田益美(かねだ・ますみ)が指摘したことによって、第3次怪獣ブーム以降の書籍には「セブン上司」が掲載されるようになったようなこともあったそうである。


 『てれびくん』81年2~4月号に連載されていた居村眞二(いむら・しんじ)先生による『ウルトラマン80』コミカライズの最終章は、バルタン星人軍団VSウルトラ一族の大攻防戦を描く『ウルトラマン80 宇宙大戦争』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110107/p1)という連続ストーリーとなっていた。そして、この作品には早くもそうした2代目・3代目を識別していく「運動」の総決算的な趣が感じられるのである。
 この作品では、バルタン星人の一族たちの各個体を、初代・2代目・ジュニア・5代目・『ウルトラファイト』版のバルタン(笑)のビジュアルで描き分けていたからだ!



「居村先生にウルトラシリーズのコミカライズをお願いする際、私はTV用脚本を簡略化したシノプシスを書いてお渡ししていました。大抵は脚本を作画家に渡し全てお任せすることが多いのですが、TVの脚本にはまんがになりにくい場面が少なくなく、アレンジを加えざるをえなかったのです。それが高じて『ウルトラ超伝説』第1部(引用者註:『てれびくん』81年5月号~86年3月号に長期連載されたウルトラ漫画)になると全編私のオリジナルということになります」

(『ウルトラマン80 宇宙大戦争 /ザ★ウルトラマンウルトラセブン』(居村眞二ミリオン出版・04年11月16日発行・ISBN:4813020089)『アンヌへの憧憬で生まれた「三百年間の復讐」』安井尚武)



 おそらく安井ひさし先生のシノプシス自体に、バルタン星人初代・2代目・ジュニア・5代目などと詳細に指定がなされており、写真資料とともに提供されていたのだろう(笑)。


 このような一連を、視聴者にはじめて意識させるキッカケとなったのが、小学館『小学三年生』73年12月号に掲載されたカラーグラビア記事『ウルトラひみつ大作戦 帰ってきた最強怪獣』であったと個人的には目する。
 このグラビア記事は、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)の入場者特典の一部として再録されることとなる。そのキャプチャー画像がネット上にも流布して以来、好意的なものではあっても、この記事は「ネタ」的に消費されているのが実態で、それでもよいのだけど、実は同様に学年誌の編集者が生み出した「ウルトラ兄弟」なる設定以上に、実はウルトラ史における歴史的な画期であったのだ! と私見もするのである。


 個別具体の単発エピソードを超えた、悪の軍団による大いなる陰謀が物語のウラ側にはあったとすることで、ウルトラシリーズの「世界観」を宇宙規模に拡大させていき、1975年度の『小学三年生』に連載された大宇宙を舞台にウルトラ兄弟VSジャッカル軍団との戦いを描いた内山まもる大先生の名作漫画『ザ・ウルトラマン』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1)などにも通じていく、「世界観消費」のファーストバッターであったともいえる、歴史的にも非常に大きな意義があった記事であったと大々的に主張をしたいのだ。




 さて、ヨッコの危機を救うために、矢的はレッドキングに敢然と立ち向かっていく!
 ミニチュアセットで画面手前に進撃してくるレッドキングの映像に、駆け出していく矢的をハメこんだ合成カットは実に「ザ・特撮!」といった感じである。


 その間に淳、そしてなんと正男がヨッコを救い出す!


 それまで徹底的に悪辣な姿ばかりが描かれていた正男ではあった。しかし、こうした善良なる一面も描かれることで、正男も単なる記号的で一面的な悪者キャラクターではなくなって、いかにイジメっ子でも他人の命を見捨てるようなそこまでの悪人もそうはいないだろうというリアリティーも出てくることによって、視聴者のナットク感も強くなる。
 今まで自分のことをイジメてきた正男に対しても、表面的には遺恨なくオトナの態度でお礼を云ってみせている淳少年。そして振り向いて、それを確認して笑顔を見せる矢的らの演出は、実にさわやかですらあるのだ!


 だが、レッドキングの進撃はやまない!
 足許のアップでは電柱がスパークを起こし、踏み潰された数台の自動車が燃え上がる!
 マンション風の建物を怪力で破壊するレッドキング


 思えばレッドキングは初代『マン』第8話では多々良島、第25話では日本アルプスを舞台にして、他の怪獣たちや初代ウルトラマンと激闘を展開していたわけであり、本格的な都市破壊は今回がはじめてなのである!


 遂にUGMが出動! 戦闘機・スカイハイヤー、そして戦闘機・シルバーガルがα(アルファ)とβ(ベータ)に分離した状態でレッドキングに攻撃をかける!


 淳ら子供たちがいた公園のミニチュアを中央に配置して、周囲には民家を中心とした多数の建造物、画面奥にはビル群をバックとして、手前で暴れるレッドキング
 それに向かって画面右上手前から3機編隊で飛行するUGMメカという、実に奥行きと立体感のあるロング(引き)のカットがカッコい!


 だが今回は、レッドキングの圧倒的な怪力により、UGMの戦闘機群は実にあっけなく撃墜されてしまう! それは少々残念なのだが、これもまたレッドキングは他の怪獣とは異なる強さを持っていると表現するためのパワーバランス的な処置だろう。


 矢的、変身アイテムのブライトスティックを高々と掲げる!


矢的「エイティ!!」


 ウルトラマンエイティ登場!


 画面左にレッドキングを背面から捉えて、その手前に瓦屋根の民家、画面右奥にエイティの勇姿。その手前に幾多の建造物を配置と、ここ数話のエイティ登場場面では奥行きと立体感を得られる構図が徹底されている。


 画面右からエイティがレッドキング目がけて宙返り!
 レッドキングの背中で転がったあと、着地したエイティはすぐさまレッドキングの腹に左足でキック!


 レッドキングに背負い投げをかけようとするエイティ!
――初代ウルトラマンが初代レッドキングに致命傷を与えた技も背負い投げであった。ちなみに今回の特撮監督・佐川和夫は、『80』第37話『怖(おそ)れていたバルタン星人の動物園作戦』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110108/p1)においても、初代『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』で描かれた初代マンVSバルタン星人の空中戦を再現していた――


 だが、レッドキングは怪力で逆にエイティを抱えあげる!
 しかしエイティは両足を大地に着けて、その反動を利用してレッドキングを投げつける!


 まさに畳みかけるようなスピーディでアクロバティックなアクションの連続!
 軽快なアクション演出はそれとはウラハラに被写体の重厚感・巨大感を相殺してしまう危険性もあるのだが、その手前には必ず民家や樹木などの比較対象物を配置することで巨大感の相殺も緩和されている!


 投げられたレッドキング、起き上がるや怒りを体現するかのごとく、両腕のこぶしを胸で太鼓のように激しく打ち鳴らす! これぞまさに「恐竜とキングコングの合いの子」ならではの仕草(しぐさ)である!(笑)


 エイティ、レッドキング目がけて、宙をジャンプして華麗にキック!
 なんとレッドキングは、態勢を低くしてこれをよけてみせる知能プレイを見せる!
 こういった場面でも、画面手前に居並ぶ民家の屋根、両脇には樹木を配置することを忘れない。


 着地したエイティの腹にレッドキングは頭突きをカマして、さらに右手でエイティの顔面にパンチもカマす!
 初代や2代目のごとく、ただひたすら怪力で押しまくるレッドキングの戦法が忠実に再現されている。


 だが、個人的には『80』第22話『惑星が並ぶ日 なにかが起こる』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100926/p1)に登場した古代怪獣ゴモラⅡ(ツー)のように、初代ゴモラにはなかった手の甲からのミサイル攻撃、頭部のカブト状の両ヅノからは三日月状の光線、さらにはリング状の光線でエイティを締めあげるといった、単なる野生の野良怪獣ではなく超常的な新しい特殊能力も披露してほしかったような気がする。


 こんなことを主張してしまうと、「そんなものは邪道だ!」だと批判されそうではある。でもちょっと待ってほしい。今回のレッドキングは正男が脳裏に思い描いたイメージを魔法で再現したものであると捉えれば、それもアリではないのかと思えるのである。


 多くの子供たちが幼いころに怪獣の絵を描いていた際には、劇中では火炎や光線を吐かない純然たる野生の地球産の怪獣でも、超常能力を持つ怪獣や生物兵器である超獣との区別などはロクに付けていなかったろうから(笑)、目やツノや口などから劇中では描かれなかった光線や火炎を描き足していたのではなかろうか?――そういえば、亡くなったウチの祖母なども、恐竜は口から火を吐いていたのだと信じいてたものだ・笑――


 そういった理由もあるのだが、「科学」ではなく「魔法」で出現した怪獣でもあるし、同族の別個体でもないのだから、オリジナルとは少々異なった能力を披露してもギリギリでアリだったような気がしないでもないのである。
 一般男子が思い描いている怪獣に対するイメージとはまさにそうしたものであり、レッドキングが口から火炎を吐いたり、目から稲妻状の光線を発射すると正男が思いこんでいたとしても決して不思議ではないだろう。正男少年も、初代マンとレッドキングの戦いを直接に目撃していたわけではないのだから(笑)。


 その点では異論もあるだろうけど、『ウルトラマンマックス』に登場した、口から「岩石ミサイル」(!)を吐くという必殺技を与えられて、別名「装甲怪獣」として再設定されたレッドキングのリメイクも、作品世界が昭和ウルトラとはまた異なる世界だからスンナリと受け入れられたということもあったのだろうが、個人的には好ましいアレンジだったと思っている。


 ちなみに、ゴモラⅡが登場する『80』第22話でも、特撮監督を佐川氏が担当していたが、氏は初代『マン』第26~27話『怪獣殿下』前後編では特撮班のカメラマンとして初代ゴモラの大暴れをカメラにおさめていた。
 そしてこれが決定的なのだが、日タイ合作の映画『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』(74年・日本公開79年)では、「怪獣帝王」なる異名をつけられた怪獣念力(!)を披露して、ツノからは電撃を放ってみせるゴモラを頂点とする怪獣軍団を描いた作品の特撮監督も務めていたのだ!


 これも無機物が長年月を経たのちに意識や魂が生じてきて付喪神(つくもがみ)や妖怪と化すのと同じ原理で、ゴモラが長年月を経たのちに進化して高度な知能や超能力も持つに至ったという一応の「SF考証」(笑)を付与してみせればアリだとは考える。しかし、『80』第22話に登場したゴモラⅡ同様に、ミサイルや光線を発するのはオカシいだの、造形がマズいだの、鳴き声が違うだの違和感ばっかり……と、かつては批判が絶えないものだった(汗)。


 まぁ、今ではその世代の特撮マニアたちも枯れてしまって、考え方を変えてしまったヒトもいるようなので、このあたりを許してしまっている御仁もまた多いようなのだが(笑)。


――映画『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』は都心では第3次怪獣ブームの頂点にあった79年のゴールデンウィークに公開された。しかし地方では、3月に先行公開されたテレビの再編集映画『ウルトラマン 実相寺昭雄監督作品』との同時上映であった。『80』放映中の80年12月31日正午にはTBS系でテレビ放映もされており、80年代~90年前後にはVHSビデオソフト化やレーザーディスク化もされたのだが、ウルトラシリーズの海外での商品化権をめぐるタイのチャイヨー・プロと円谷プロとの一連の訴訟問題のあおりを受けて、DVD化は困難となっている。2011年4月7日にバンダイビジュアルから発売されたウルトラシリーズ劇場版DVD-BOX『ウルトラシリーズ45周年記念 メモリアルムービーコレクション 1966-1984』にも収録されることがなかった――



 さて、ひたすら怪力で押しまくるレッドキングは、エイティを豪快に投げ飛ばす!
 吹っ飛ばされても立ち上がったエイティ、レッドキングの足を踏みつける! 悲鳴をあげるレッドキング


 レッドキング、お返しとばかりにエイティの体を怪力で「ドン!」と押し飛ばす! 吹っ飛ばされるエイティ!


 この一連でホンの数秒しか映らないのだが、淳たちがいた公園のテラスの屋根の下からの主観映像で、画面の奥にエイティとレッドキングを捉えて、その手前に公園を配置し、背景に並んでいる民家も捉えるといった、カッコいいアングルの特撮カットもまたイイ味を出している。


 レッドキング、大地に倒れたエイティを怪力で蹴りまくる!
 レッドキングに蹴られながら大地を転がっていくエイティ!
 画面手前に並んでいる民家・電柱・街灯などをナメながら、このへんは1カットの長回しで撮られている。


 エイティ、低い体勢のままでレッドキングに飛びかかる!
 しかし、レッドキングの長いシッポの一撃がエイティの顔面を強打する!
 シッポの動きをアップで捉えたカットが実に効果的!


 エイティ、レッドキングの長いシッポをつかみあげる!
 しかし、すぐにふりほどかれて、レッドキングは両腕でエイティの顔面をハサみ打ちにする!
 さらにエイティを投げ飛ばして、頭突きもカマす! またも吹っ飛ばされるエイティ!


 そしてレッドキングの大きく口を開けた凶暴な面構えがアップに!
 真っ赤に塗られた口の中や舌と同様に、歯ぐきも血塗られた赤でていねいに塗装されているのが目を引く。


 続いてエイティの左肩に、レッドキングの鋭い牙が「グサリッ!」と突き刺さる様子がアップに!
 この場面では「ブタっ鼻」に造形されている鼻が目を引く! 「ブタっ鼻」の称号は『80』版バルタン星人5代目よりもむしろレッドキング3代目の方がふさわしいだろう(笑)。


 レッドキングに左肩を噛みつかれて苦しむエイティ!
 画面手前にはアパート風の建物、左にビル、右下には樹木、その上には近所に野球場かゴルフ場でもあるのか背が高いネットが張られているという立体感のある画面構図! 真横から撮られたカットのあと、別アングルで同じ被写体が撮られる!


 今度は画面中央からやや左寄りに両者が捉えられて、画面左手前には電柱、その右にはリアルなブロック屏、さらにその右には先ほどのカットと同じアパート!
 右奥には同じビルが配置されて、右端にはやはり野球場かゴルフ場の背が高いネットが!
 画面左の電柱からそのネットに向かって斜めに電線が張られているという、遠近感も実に的確に表現された構図である!


涼子「エイティ、しっかり!」


 「ユリアン編」に突入後、涼子がエイティに声援を送ったのは今回が実ははじめてである。メディカルガン同様に、視聴者には見えないところで声援を送っていたと解釈してあげるのが、作品に対する「愛」がある、しかして封建的な忠誠心のような「盲愛」ではなく「知性」もある、「真のマニア」の在り方でもある(笑)。


 続いてレッドキングの目のアップ!
 黒い眼球が「ギョロッ!」と動くサマを見せたあと、レッドキングが豪快に画面手前にエイティを投げ飛ばしてきて、あわてた子供たちが逃げてくる本編場面をつなぐという編集は効果絶大!


 エイティの胸中央にあるカラータイマーが活動限界が迫ったことを示す赤い点滅をはじめる!


涼子「いけない!」


 涼子、おもわずエイティにメディカルガンを向けるのだが……


ナレーション「涼子はメディカルガンで少しでもエイティのエネルギーを回復させようとした。だが、エイティはそれを断った。エイティは子供たちにラクをしてはいけないということを見せたかったのだ」


 涼子の主観カットで大地に倒れ伏したままのエイティが、メディカルガンでの援護を断るように首を振っており、その背後に迫ってくるレッドキングを捉えた画面構図も、二重の意味が込められており「ドラマ」と「特撮」の融合でもある!


 エイティ、バック転でレッドキングに迫って、レッドキングをなんと3連発でブン投げる!
 ……ではなく(笑)、正面・斜め・真横から撮られた同じ絵を連続でつないでいるのだが、まさにここから大逆転劇になりますよ~という意味を込めた、念押し・ダメ押しの強調演出でもあり、今まさに3連覇で投げたのだ! と誤解をするようなリテラシー(読解能力)の低い視聴者は、よほどの幼児はともかく子供たちの中でもそうそうはいないだろう。


 さらにエイティ、初代マンが第8話でレッドキング初代に披露したようにジャイアントスイングをカマす!
 初代『マン』第8話では、この様子を初代マンの全身を捉えるロングのカットで撮影されていたが、今回の『80』では画面の手前に民家の屋根、さらにその前を電線が伸びている奥で、エイティの上半身とエイティにつかまれて宙でスイングさせられているレッドキングが捉えられている。


 大地に叩きつけられるレッドキング
 その手前には民家の屋根、右奥にはビルと、ここでも手を抜くことなく立体感のある構図が続いている。


 遂にエイティ、第18話『魔の怪獣島へ飛べ!(後編)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100829/p1)で吸血怪獣ギマイラを葬りさった、足先にエネルギーを集中して黄色く発光させて、相手に飛び蹴りを叩きこむムーンサルトキックをレッドキングに放った!
 この宙を飛びながらキックへと至る場面は、第18話の美麗なキックポーズでのバンクフィルムが流用されている。何度でも観返したくなるような美しい特撮映像であれば、バンク映像の流用もドシドシやるべきだ!


 しかし、直撃の瞬間はもちろん替えが効かないので新撮! ムーンサルトキックを喰らったレッドキングの胸がストロボ状に閃光を放つサマは実に美しい!


 エイティ、両腕をL字型に組んで必殺技のサクシウム光線を放つ!
 それを喰らったレッドキングはやはりストロボ状の閃光を発したあと、全身が赤く発光して遂に大爆発を遂げた!!


 たしか今は亡き朝日ソノラマが発行していた特撮雑誌『宇宙船』Vol.6(81年4月30日発売)の『ウルトラマン80』放映終了特集において、この際に使用されたレッドキング爆破用のカポックを抱いている造形の若狭新一の写真が掲載されていたように記憶している。このカポックの出来がまさに着ぐるみをそのまま縮小したかのような見事な出来映えであったのだ。画面にはマトモに映らないものなのに、そこまで再現してみせる若狭氏は、やはり金銭を度外視した職人魂・芸術家気質といったものもあるのだろう。


涼子「これ、預けとくわ」


 メディカルガンを矢的に手渡そうとする涼子。


矢的「どうしたんだい? 急に」
涼子「これも「魔法の壷」みたいなもんでしょ。地球にも立派な医学があるし、あんまり便利なものがあると、人間はラクばっかりするみたいだから」
矢的「そうかい。じゃあ預かっとく」



 まさに先述の『ドラえもん』のような「道徳説話」的な教訓オチで今回の物語は締めくくられる。


 レッドキングを登場させるためにムリやり設定された魔法使いのマアジンが潜む「魔法の壷」と、同様に便利な超科学の道具である「メディカルガン」を絶妙に対比させて、「児童ドラマ」と「涼子=ユリアンの成長物語」を両立させつつも、レッドキングの派手な大暴れとエイティとの白熱したバトルを展開していたのは見事である。
 平野氏は本話に対してはやる気がなかったようだが、なかなかどうして! 出来は悪くないどころか、むしろ良いとすら思うのだ!


 放映から30年もの歳月が流れた。「魔法の壷」や「メディカルガン」とまではいかなくとも、我々は様々な便利なものを手に入れてきたものの、それでラクばかりするようになっている。その余暇で自己研鑽に励めばまだよいのだけれども、実際には自堕落になりがちである。
 涼子の発言はそんな未来を暗示していたかのようであり、今観ると大変に興味深い……


 なーんて。そんな小学生の読書感想文のような、歯の浮くようなキレイごとの教訓めいたテーマ主義的なクサいまとめ方で文章を締めくくるのは本意ではないので、やめておこう(笑)。
 教訓テーマはあってもよいのだが、あくまでも二の次である。ヒーローと怪獣の大暴れに対する快感。これが特撮ジャンルの主眼であって、ドラマやテーマなぞは派生物なのである。


 便利な道具の登場で人々が徳性的には堕落することに警鐘を鳴らすのは、『80』放映当時のジャンル作品群にもよくあるネタではあったし――先に挙げた名作漫画『ドラえもん』などもその典型――、近代の産業革命以降の「文学」や「物語」の常套テーマですらある、陳腐な手垢のついたものでもある。
 それに「道徳」や「報道」などとは異なる「文学」「物語」というものの主眼とは、小学生の読者感想文に記すと先生にホメられるような道徳的な解題なんぞではなく、劇中事件に対する良し悪しを論じるものでもまるでなく(笑)、わかっているけどやめられない道徳的にはホメられたものではないインモラルな心情へと陥ってしまう人間の愚かさや、繊細デリケートな云わく云いがたい複雑で様々な心情描写や禅味・俳味などの面白みや可笑しみ・無常観・不条理感なども含めて言語化・形象化してみせることなのだ! という趣旨のことを、文芸評論家である故・江藤淳先生なども夏目漱石の著作の文庫本などの解説に寄せている。



 結局マアジンに願いをかなえてもらえず、ションボリとする淳であったが、そこに空から雪が舞ってきた!
 矢的はそれをマアジンから子供たちへの最後のプレゼントであると語って――「優しいウソ」というやつですネ・汗――、子供たちは、


「♪ゆ~きや、コンコン。アラレや、コンコン。降っては降っては、ズンズン積もる……」


 などと童謡を口ずさんで、輪になって踊り出すが、ギャグメーカーのイケダ隊員もその輪の中に加わってしまう(笑)。


 ラストシーンは一面に雪が降り積もった、背景には山々がそびえる郊外の住宅街のミニチュアセットであり――公衆電話ボックスや雪だるまのミニチュアもある!――、清涼な印象を残して本話は幕となる。


『80』人気怪獣・復活月間の総括!


 第44話『劇ファイト! 80VSウルトラセブン』から3週連続で続いた人気ヒーロー・人気怪獣復活編は今回で終了となった。児童ドラマではなく怪獣押しであった、それまでのレッドキング登場編と比較すれば、不満を持たれる方々がいるのも当然だろう。


 だが、『80』ももうシリーズ後半どころか終盤戦である。あの『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)よりもはるかにシビアでヘビーだった『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)でさえも(爆)、第9話『宇宙にかける友情の橋』や第23話『ベッドから落ちたいたずら星人』や第32話『日本名作民話シリーズ! さようならかぐや姫 竹取り物語より』などのファンタジックな印象の作品もあったのに比べると、児童編以降を振りかえっても『80』には意外とそうした味わいのある作品が少ないようには思えるので、たまにはこういうテイストのエピソードがあってもよかったのではなかろうか?
 まぁ、スタッフ数十人を海辺や山間などの遠方ロケに泊まりがけで出かけさせるような予算はもう底をついていたので、多々良島や日本アルプスを舞台にできなかったというのが実情なのだろうが(笑)。


 今回は関東・中部・関西と全地区でわずかながらも視聴率は前回よりも上昇。もちろん前話ラストの予告編や新聞のラテ欄(ラジオ・テレビ欄)などでサブタイトルからして大々的に謳(うた)われていた、久々に再登場する人気怪獣・レッドキングに対する期待値の高さが影響したのだとは思われる。


 ただし、さかのぼること、『ウルトラマン80』第1話『ウルトラマン先生』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1)が放映された80年4月2日(水)夜7時のちょうど2日後である、4月4日(金)夜7時には『(新)仮面ライダー(スカイライダー)』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1)第27話『戦車と怪人二世部隊! 8人ライダー勢ぞろい』が放映されていた。
 そして、その翌週の第28話『8人ライダー友情の大特訓』とは前後編形式となっており、歴代仮面ライダー&スカイライダーVS最強怪人グランバザーミーが率いる2代目怪獣ならぬ怪人二世部隊との決戦を描いていたのであった――グランバザーミーは個人的にはネオショッカー怪人の最高傑作――。
 この第3クール巻頭の前後編を皮切りに、『スカイライダー』では第40話『追え隼人(はやと)! カッパの皿が空をとぶ』に至るまでの第3クールは、一部を除いてほぼ毎週が「変身前を演じる俳優さん」も含めてゲスト出演を果たしている、歴代ライダー続々客演編が放映されており、当時の子供たちを熱狂の渦に巻き込んでいたのだった!


 『スカイライダー』では先輩ライダーが客演しているのに、なぜ『80』では先輩ウルトラ兄弟が客演しないのか!? そんな想いを抱いていた子供たちはきっと多かったことだろう。
 『80』の人気の低迷の原因を、円谷プロのスタッフは「学校編」の設定のせいだと思いこんで、消去法でそれを排除することで難局を乗りきろうとしたが、本当の原因はそこではなかったのである。
 テイストはマイルドでもドラマ性は一応は高かった「学校編」を継続しつつも、同時に月に1回程度は歴代ウルトラ兄弟を「変身前を演じる俳優」さんも含めて助っ人参戦させたり、人気怪獣再登場エピソードなどの娯楽編もシリーズ途中で随所に挟み込んでいくような加点法の発想。
 仮に各話のドラマ重視編が子供たちにはイマイチ楽しめなかったのだとしても、数話に1回は先輩ウルトラ兄弟客演編や人気怪獣再登場編などのイベント編での高揚感を味わえることがいずれはあるだろうと潜在的に思わせられれば、そこで視聴を打ち切られることもなく、『80』はもっと視聴率が上向いていたのではなかろうか? そこに思い至らなかったことこそが『80』最大の悲劇であったと思えるのだ。


 頑ななまでのウルトラ兄弟という設定に対する間接的な否定は、先輩ウルトラ兄弟の客演を否定的に言及してみせた草創期のマニア向け書籍『ファンタスティックコレクションNo.10 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマンPART2』(朝日ソノラマ・78年12月1日発行)が、つくり手たちに与えた間接的な影響だったのだろう。
 とはいえ、ウルトラの父は登場したものの怪獣とのバトルを演じることはなかった。ウルトラセブンも登場はしたもののそれは偽者である「妄想ウルトラセブン」であった。そして、バルタン星人・レッドキングの再登場もまた…… 遅きに失した感は否めないのである。



<こだわりコーナー>


*マアジンを演じた横山あきおは、マラリア星から来た「怪盗ラレロ」と彼を逮捕するために地球に来た同じマラリア星の「宇宙刑事ポポポ」が繰り広げる騒動を描いた連続テレビドラマ『怪盗ラレロ』(68年・東映 日本テレビ)にラレロ役で主演していたことがある、ジャンル作品には縁があるコメディアンなのだ。当時は青空あきおの名義で青空はるおと漫才コンビを組んでおり、相方の青空はるおがポポポを演じていた。
 なお、ラレロのコスチュームはシルクハットにマント姿と今回のマアジンにそっくりであり、やはり本編の現場スタッフ側の美術班や衣装班あたりの世代人である誰かのオマージュが入っていたのではなかろうか? なお、筆者個人は世代的にも『ラレロ』は未見である――慈善事業ではないのだから仕方がないのだが、東映ビデオも売上が見込める特撮ヒーローもの以外の作品はなかなか映像ソフト化してくれないので――。


 我らは『ウルトラマンA』(72年)第40話『パンダを返して!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070204/p1)でも、宇宙超人スチール星人に自身のパンダコレクションをすべて盗まれてしまう薬局・パンダ堂の店主を演じている。ちなみに本文で紹介した72年末に発行された『原色怪獣怪人大百科 第2巻』には当時、上野動物園で飼育されることになったランランとカンカンによって巻き起こった一大パンダブームを反映して、なんとパンダの折り込みポスターが付録につけられていた(笑)。


 加えて、『ミラーマン』からミラーマンVS怪獣の特撮格闘場面だけを抜き焼きした作品と、残存していた着ぐるみを用いて新規に野外で撮影された作品で構成された平日夕方の5分番組『ミラーファイト』(74年・円谷プロ 東京12チャンネル→現テレビ東京)では、氏はナレーションも担当していた。その元祖である『ウルトラファイト』では当時はTBSのスポーツアナだった山田二郎によってスポーツ実況風の解説がなされていたのだが、『ミラーファイト』における横山の語り口はいかにもノンビリとしており、実にトボケた感じのホノボノとした味わいが感じられたものである。第2次怪獣ブームも下火になったころの作品ではあったが、関東地区では巨大特撮ヒーロー作品の新作がなかった70年代中盤には何度か再放送もされたそうであり、当時の子供たちの特撮巨大ヒーローに対する渇きを癒やしていたそうである。


・第1期ウルトラシリーズ最終作である『ウルトラセブン』と第2期ウルトラシリーズのトップバッターである『帰ってきたウルトラマン』の間に生じた空白期間に放映されていた『ウルトラファイト』。
・本作『80』と『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)の間の15年にもわたる空白期間にテレビ東京で平日の夕方や早朝に放送された5分番組『ウルトラ怪獣大百科』(88年)~『ウルトラマンM730(エムナナサンマル) ウルトラマンランド』(96年)。
・『ウルトラマンコスモス』(01年)と『ウルトラマンネクサス』(04年)の間の空白期を埋めていた平日早朝の5分番組『ウルトラマンボーイのウルころ』(03年)。


 30分の新作テレビシリーズの放映がなかった時期に、こうしたミニ番組の放送によって、新たなファン層の開拓に努めてきた当時の円谷の営業姿勢はもっと評価されてしかるべきだろう。


 往年の書籍『全怪獣怪人大百科』にしてもそうだが、これらの5分番組は、新作ヒーローに対する関心だけで手にとったものの「こんな怪獣や怪人が過去に存在したのか!?」という、特撮ジャンル一般の旧作に対する基礎知識や興味を喚起させる役割を充分に果たしていたのは間違いない。筆者なども『原色怪獣怪人大百科』で、往年の東宝特撮映画『地球防衛軍』(57年・東宝)に登場したロボット怪獣モゲラの存在を知って、同作を観たくて観たくてたまらなくなったものだが、家庭用ビデオデッキも映像ソフトもなかった当時はもちろん叶わず、やむなく今は亡き玩具メーカーブルマァクから発売されていたモゲラのソフビ人形を、祖母にせがんで買ってもらった経験がある(笑)。


 『ウルトラマンメビウス』放映終了以降、地上波での新作ウルトラマンのテレビ放映は、この項を執筆中の2011年春で早くも4年もの空白期間となっている。そろそろテレビ東京で抜き焼き再編集の5分番組などを放映すべきではなかろうか!?


*冒頭の日本ランドの場面で、場内のスピーカーから現実音楽として流れている歌謡曲は、当時のアイドル歌手・河合奈保子(かわい・なおこ)がヒットさせていた3枚目のシングル『愛してます』(日本コロムビア・80年12月10日発売)である。これは涼子の矢的に対する気持ちの今後の進展を象徴する曲として選ばれたのかもしれない!? 河合奈保子は80年にデビューしたアイドル歌手たちの中でも、松田聖子(まつだ・せいこ)と人気を二分するほどの注目を集めていた(ただし聖子ちゃんの方が人気は上)。


*本文で紹介した『(旧)コメットさん』は、家庭用ミシンの製造で有名だったブラザー工業の1社提供枠であったTBS月曜19時30分からの30分テレビドラマ枠『ブラザー劇場』(64~79年)において、67年7月から68年12月まで1年半にもわたって放映されるほどの人気番組となった。しかし、67年10月から翌年3月までの半年間は真ウラでピープロ製作の特撮番組『怪獣王子』(67年 フジテレビ)が放映されており、さらに68年1月からは水曜日19時30分から曜日を移動してきた東映特撮『ジャイアントロボ』(67年・東映 NET→現テレビ朝日)も真ウラで放映されるという時間帯衝突が起こっていた。その結果、『怪獣王子』は同じくピープロが製作した前番組である特撮ヒーロー『マグマ大使』(66年・ピープロ フジテレビ)に比べて視聴率が激減、スポンサーのロッテが怒って2クールで製作打ち切りの憂き目に遭い、『ジャイアントロボ』もそれに呼応するかのごとく、2クールで放映を終了してしまった。
 第1次怪獣ブームの実質的な「期間」については諸説ある。個人的には『ウルトラセブン』・『怪獣王子』・『ジャイアントロボ』が一斉にスタートした67年10月の時点ではすでに峠を越えていたのではなかったか? と、『コメットさん』がひとり勝ちをしていた現象を見るかぎりではそう推測するのである。
 同じく『ブラザー劇場』枠で放映された『(新)コメットさん』も78年6月から79年9月までの1年3ヶ月ものロングランとなったことを考えると、こうしたご町内ファンタジー系の作品は、筆者の当時の印象でも70年代いっぱいまでは子供ウケもよかったように記憶している――しかしこれもまた80年代に入ると、当時のMANZAI大ブームと連動してもっとブラックで軽躁的なお笑いが突如として大流行して、こういう牧歌的なファンタジー作品が茶化されてしまうようになってしまって、それらを一掃してしまうのだが・汗――。


 だから今回の『80』第46話のようなファンタジックな路線も、子供番組としては「王道」とはいえなくても必ずしも「邪道」とは云いきれないのではなかろうか?
 ……などとロジックをもてあそびたいところなのだが、当の男の子たちからすれば、作品の看板から受け取る戦闘的なイメージとは相反する女々しいノリには気恥ずかしさ&反発も覚えてしまいそうだから、ムズカしいところではあるだろう(笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2012号』(2011年12月29日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)


[関連記事] ~怪獣レッドキング登場編!

『ザ☆ウルトラマン』#27「怪獣島浮上!!」 ~レッドキングと怪獣軍団登場・レッドキングアボラス・バニラ・アーストロン・ゴーストロン・ゴキネズラ!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091102/p1

ウルトラマンマックス』序盤評 #5「出現、怪獣島!」~#6「爆撃、5秒前!」前後編にも言及!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1

ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEO』#9~11 ~ペダン星人ダイル死す!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100312/p1

新型コロナ禍に揺れた2020年の日本を斜に構えて観る!

新元号「令和元年」 ~近代・ポストモダン社会における「天皇制」を考える!?
『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』 ~右vs左ではない!? 一度断念した上での「理想」や「公共」へと至る経路の違い!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[思想] ~全記事見出し一覧


新型コロナ禍に揺れた2020年の日本を斜に構えて観る!

(文・T.SATO)
(2020年12月15日脱稿)


 一介のオタクごときがコロナ禍についてエラそうに語るのも気が引けるところではある。コロナで親族や知己を喪ったり、コロナ関連の経済不況により失職して経済苦に陥っている方々には衷心からお悔やみやご同情を申し上げたい。


 コロナ禍自体がまだ現在進行形で変遷を遂げており、最終審判者気取りでモノを申すのは控えるべきであろう。新たな知見が今後とも積み重なっていくであろうことを思えば、筆者も自身の考えに固執することなく柔軟にその見解を変えていきたいとも思う。
 もちろんその際には「過去の見解はこうであり現在の見解はこうである。見解を変えた理由は以下による」などと語ることにする。見解の変更という以上に、自身の過去の見解が誤っていたことが判明すれば、包み隠さずにそれを表明して、他人のせいにはせずに自身の不明を公然と恥じたいとも思う。


 もちろんアマチュア同人ライターでもある筆者としては、しょせんは趣味のことでもある以上は「公共」のことではなく「私事」に過ぎないともいえるので、コチラもやはり気が引けるのだけれども、同人誌即売会の開催に大きな影響が発生したことが思い出される。2020年3月からは同人誌即売会にかぎらず各種の巨大イベントが次々と中止を決定。ついには超巨大同人誌即売会であるコミックマーケットまでもが中止の憂き目にあってしまった。


 これを30数年前の昭和末期の昭和天皇の病状悪化に伴なって生じた各種イベントの「自粛」になぞらえて批判をする向きも多くはないが一部にあったものだ。しかし、この見解は妥当であろうか?
 各種イベントの「自粛」は日本固有のものではなく欧米でも日本に先立つ2月から発生したものである。ということは欧米での各種イベント「自粛」も日本の天皇制によるものなのであろうか?(笑)
 そんなバカげたことはない。筆者からすれば昭和末期の「自粛」とコロナ禍の「自粛」とは似て非なる、まるで異なるものである。コロナ禍の世界中で発生した「自粛」とは単に純粋に「防疫」的なものにすぎない。


 とはいえ、この世界規模でも生じた「自粛」に国家権力による「自由」や「個人」の抑圧を見る向きはある。たしかにその意見にも一理はあるのだ。
 が、そのような見解は、むしろ逆に「万人の自由」の称揚ではなく、「性格強者」や「経済強者」だけが最終勝利を収めていく「ミーイズム」や「エゴイズム」とも通底している「自由絶対主義」・「自由至上主義」・「新自由主義経済」にも通じていくモノでもある。
 そのロジックで行くならば、コロナに感染しても自粛せずに飲食店の店員を感染させて果ては自身もコロナ死した御仁や、確信犯で各所を出歩き立ち寄り先の飲食店や観光地を休業に追い込んだ迷惑系ユーチューバー、当局からの重ねての要請をブッチ切って公共交通機関で沖縄へ帰宅した陽性の女子高生らが、一番「自由」を行使しているからエラくて反体制・反権力で大正義! ということになってしまう。
 こんな「公共心」皆無の私利私欲な御仁をムダに持ち上げるようなバカけた論理ももちろんまったく成り立たないのだ。


 筆者個人は「自由」が無意味とはもちろん思わないまでも、「自由」を疑義を許さぬ宗教のように信奉・絶対視することには反対である。それこそが「近代」最大にして最後の宗教であり、諸悪の根源であるとすら考えてもいる。
 その伝で「自由」を「平等」や「博愛」とともに3大原理のひとつに据えた「近代」自体を「全否定」はしないまでも「相対視」はするべきだとも考える。それはつまりは以下のようなことである。
 人間はそれぞれが異なる「価値観」や「趣味嗜好」を持つ以上は、そもそも各人が単純に「自由」を無制限に発揮すれば、周囲や隣接している他人と手足や肩がぶつかって、そこに「不自由」が発生するのは必然でもあるのだと。自分がスキなものが他人のキライなものであることは往々にしてあるのだと。
 これを解決するのに、18世紀ドイツの哲学者・カントが唱えた、「『動物』的・『感情』的な好悪に基づく『自由』」ではなく、「『道徳』や『理性』的な義務に自らの意思で従う『自律』という名の『自由』」、あるいは古今東西の宗教や哲学が唱えてきた「抑制」や「節制」や「節度」こそが有効であるとすら考える。
 むろん奴隷のようにへりくだって他人・権力者・強者に対して卑屈にふるまえという域に達してもイケナイ。しかし万人がお互いに一歩だけ下がることによって――二歩以上は下がる必要はナイけれども――、逆説的に各々の周囲に自身の手足を障害物ナシに伸ばせて振り回せるだけのフリーハンドの空間を確保もできることで、かえって「自由」が達成されるというロジックでもある。


 まぁ直前に述べたようなロジックは、本を読んでついモノを考えてしまうような評論家気質のオタ連中にとっては自明のことでもあるだろう。
 しかし、毎度の上から目線で恐縮だけれども、「道徳」と云った瞬間にそれは戦前の「修身」に通じるものでもあるから全否定されねばならない、そのことを考慮も検討もしてはイケナイと云ってきたのが、日本の戦後のサヨクではある。
 ならば「修身」には陥らないかたちでのオルタナティブ(代替可能)な「道徳」教育を代案として提示すればよかったのだが、そのようなことをすることはしなかった――そんな風潮を悪い意味で小賢しく反映していたのが往年のコミックバンド・クレージーキャッツが歌った『学生節』(1963(昭和38)年)の3番の歌詞「道徳教育、こんにちは~」であり、個人的には実に浅知恵の社会派気取りの歌詞だとしか思えないので不快である――。
 とはいえ、現今のアメリカのみならず英仏独でも「マスクをしない自由」を訴えるデモが隆盛を極めているので、カント的な「自律」としての「自由」の概念は欧米の庶民大衆にも流布していないことがよくわかるのだが(笑)。


 ここまでは「自粛」と「自由」を「自律」の概念で架橋・調停できないのか? という論考である。
 しかし他方で「自粛」の必要性と同時に、「自粛」によって外出・外食が制限されることでの「経済活動」の大幅な縮減についても別個に独立して検討して、この両者を天秤にかけなければイケナイのも、アチラを立てればコチラが立たなくなる非ユークリッド空間でもある3次元、我々が住まう「この世」の日常・社会生活での厳然たる事実でもある。もちろん100かゼロかではない。60対40なりでの両立が図れるのであればそうであるべきだという話である。
 マスクや特に食事前の手指の手洗いを徹底することで感染リスクをゼロにはできないにしても減らすことが可能であるならば、そして食事中の飛沫感染が懸念されるのであれば、大会場での宴会を避ける個室での食事などで、外出・旅行・外食なども許可して、「観光業界」や「飲食業界」も同時に守っていくという方策も正しい。


 日本ではコロナでお亡くなりになった方が2020年には年間で3000人程度となった(2020年12月15日執筆時点)。
 対するに1990年代末期~2010年代初頭の年間自殺者数は毎年約3万人であった。しかし2012年からのアベノミクス効果で、以降は年間2万人に減少――アベノミクスが万能の理論だと云っているのではないので念のため。もちろんまったくのムダであったということもアリエナイのだけれども――。
 つまり、「経済苦境」が生じれば年に1万人くらいはそれで自死を選ぶのであろうことと比較考量すれば、そして今後数年は20世紀前半の世界大恐慌レベルの経済状況となることから、年間自殺者数がさらに2万人くらいは増加して4万人くらいまで上がってしまう可能性があるのならば、アメリカのように新型コロナで数十万人が死んだというのならばともかく、3000人と数万人の生命を苦渋の上で天秤にかければ、医療崩壊をさせない範疇で「GoToトラベル」や「GoToイート」なども駆使してそれらの業界に救いの手を差し伸べるのは正しいとすら思うのだ。
――毎度、無知な御仁はコレを日本独自の政策だと思っているようだが、EU諸国が先鞭を付けた政策であることの後追いであることも念のため――


 「GoToトラベル」よりも休業要請して保証金を払えばイイという意見もある。しかしコロナが完全に終息する見込みなどあるのだろうか? ナイだろう。
 「観光業界」の関連人口が約1000万人。「飲食業界」が約500万人。彼らに未来永劫、永遠に休業補償をするべきなのであろうか? コロナが下手をすると数年~数十年単位で終息しないことがあるならば、「飲食業界」や「観光業界」の完全復活はムズカしいことになってしまい、そこで就業する個々人に対しては別の業種への転換を促すしかなくなるだろう。そうなると、永遠に休業補償を与えるような政策にも現実性を感じない。


 ここで連想するのが2020年4月に決定した国民全員に対しての「一律10万円の支給」である。現在の日本人の人口は約1億3千万人。つまりコレにより総計13兆円が一挙に支出されたことになる。
 対するに日本の税収(歳入)は60兆円程度である。つまり税収の1/4がコレで消えたのだ(汗)。
 国民全員に国家が金銭を支給する「ベーシック・インカム」という制度についての議論がある。左派連中はいかにもこの制度が人道的にも優れた万能な制度のように喧伝している。
 しかし1人10万円を月1回支給すれば13兆円×12ヵ月で260兆円が必要なことになる。税収をはるかに超える支出を必要とするこの制度が実現するとはとても思えない。
――そこで「国家財政」と「家計」とは異なるものであり、国家には「貨幣」や「国債」発行の機能があり、「国債」を購入する主体が外国政府ではなく国内銀行であるならば単純な「債務」にはならずに「資産」ですらある……といった今流行りの「MMT理論」を反論に持ち出してくるのならば検討の余地はあるのだが、そーいう理論的なウラ打ちや補強を彼らがすることは今のところはナイのであった(汗)――


 しかし、コレだけコロナ禍による事態の推移が早いと、言論人であろうがSNS上でのアマチュア論壇であろうが、その場かぎりの曲学阿世で平気でその言説を翻している輩も見えてきてしまって実に興味深い。
 日本人の一斉「自粛」を批判して反旗を翻す意味でも20年3月下旬に箱根に行って少しでも「観光業界」を潤したと語っていた左派のコメンテーター・青木理(あおき・おさむ)ほかは、今では「GoToトラベル」を否定するのが流儀となっている――しかも批判をしたソバから「GoTo」を利用して旅行に行ったとも云っている(爆)――。
 彼らは20年春~初夏にかけては、「飲食業界」や「夜の業界」を主要な感染源と見なして「自粛」を求めることを、当初は「特定業種」に対する差別であり、営業自粛を求める声を「自粛警察」と呼んでいた。
 ならば、「観光業界」や「飲食業界」などの「特定業種」に自粛や休業を実質的に求める「GoTo」批判も「自粛警察」そのものでありダブルスタンダードだともいえるだろう。
 加えて、感染拡大を防ぐための「GoTo」批判と同様の純然たる「防疫」面から中国人観光客の流入制限を唱えた御仁たちをも「排他的ナショナリスト」だと罵倒していたこととの整合性もドー取るのであろうか?
――そーいえばフランスのマクロン大統領も当初は国境を閉ざすべきではナイと主張して、南隣りのイタリアからのコロナの流入をやすやすと許していた(「人道」と「防疫」を混同するとは愚かなり)――


 まぁもちろんシッカリと定まった立脚点があっての発言ではなく、単に時の政権をディスりたいだけの発言であることもわかる。
 20年2月末の幼稚園~小中高の「学校一斉休校」も時の政権が先に発動したから「無意味だ!」「強権発動だ!」とガナっているのに過ぎない。時の政権がノロノロとしていたならばその逆に「早く一斉休校にしろ!」「子供の生命と健康を守れ!」と叫んでいたのは間違いがないのだ。
 それが証拠にその1ヵ月強後には早くも馬脚を現わす。20年4月の上旬になると彼らは「早くロックダウンしろ!」「早く緊急事態宣言を発せよ!」と政権に「強権発動」を促すのだ(汗)。
 ここから察するに、時の政権が先に「緊急事態宣言」を発すれば、彼らはコレを「戦前への回帰につながる」という論法で反対したのに違いないのである。
 ただし、当方は時の政権への擁護もしない。野党やマスコミの反発を恐れて、むしろ逆に彼らの方が促すようになってきてから「緊急事態宣言」を発する、世間の声に「耳を傾けすぎる」政権の行為を高等戦術などではなく実に不甲斐ナイと思うのみである。


 20年3月になるや欧米ではロックダウンが始まり、北欧のスウェーデンを除く欧州諸国も学校を「一斉休校」にしたが、コレを自身に不都合と見てかサヨク連中は黙殺する。
 このスウェーデンの休校はナシという施策を愚策としてモーレツに批判した、初夏においては自国の施策を「K防疫」として世界標準モデルになったと豪語していた韓国はその点ではスジが通っている。日本でも「K防疫」を見習えと云っていた御仁はスウェーデンをも批判すべきであろう(笑)。
――個人的には給食も含む学校空間とは「3密」の典型ともいえるので、子供たちは無症状感染でもココを起点に同居家族への感染が広がっていると考えるのが科学的であるとは思うのだけど、コロナがエボラ出血熱ほどの致死性もナイ以上は、子供たちの集団生活体験の効用とも天秤をかければ、大変心苦しいのだけれども高齢の方々にはややリスクをかぶってもらうしかナイのかな? とも思ってはいる(汗)――


 要は彼らの発言にはシッカリとした立脚点などはナイ。その場かぎりの矛盾に満ち満ちた単なる「カウンター」や「反論」でしかなく、「政策」提言型のオルタナティブではないのである。まぁ今回のコロナで始まったことではないので驚きもしないのだけれども。
 いや、時の政権に迎合せずに常にその反論を張るのが「民主主義」なのだという意見もある。しかしコレは怪しい。多方向の陣営から「求心的」に上がってきた「政策」を突き合わせて「熟議」をしていくのが真の意味での「民主主義」のハズである。
 しかし、彼らがしていることは常に反対をする全否定であって、特に定見があるワケでもないのに物知りぶったり、したり顔で溜め息まじりに嘆いてみせて、「熟議」や「提言」からは逃走する「遠心的」で「無政府主義」的なふるまいであり、筆者には彼らの行為こそが「議会制民主主義」を破壊する行為であると見える。


 ある種の「赤勝て白勝て、巨人か阪神か」レベルで政治を見ている御仁はこのような行為に拍手喝采の念を覚えているのであろうが、特に「右」でも「左」でもなく個々の「政策」ごとに「是々非々」で判定をくだしているような御仁たちは、このような言説活動ではサヨク政党を支持・投票することはアリエナイことも指摘しておきたい。


 エッ? 何が何でも「自民党」を支持する岩盤支持層? 自民党員なんて100万人しかいないのだ。総人口の1億人で割れば1パーセントなのだから、そこが支持をすることで自民党政権が継続できていると思うのは浅はかである。
 もしも「左派」の立場に立つのだとしても、非・自民でありさえすれば小池百合子の「都民ファーストの会」や「希望の党」や「大阪維新の会」やかつての「みんなの党」などにも勝たせて、「自民党」を少しずつ弱らせて中長期で「左派陣営」を有利に持っていくという戦法もあってイイはずなのだが、それらが古典的な左派政党――ぶっちゃけ「社民党」や「共産党」――ではないことから、毎日・朝日・東京新聞は選挙時に彼らに対する大反対キャンペーンを展開して、「希望の党」や「大阪維新」は弱らせても結果的に「自民党」の圧勝を助けてしまっている。
 大局や中長期を見据えた展望がない短慮だとしか云いようがナイ。まぁ自分で自分たちの首をせいぜい絞めてくれ。彼らが一度滅びたところで、何でも反対ではなく政策提言型の健全な「オルタナ左翼」政党が誕生するかもしれないのだから。


 世田谷区やニューヨーク州で唱えられている全住民に対する「PCR検査万能論」も、1日あたりの検査可能数を小学生レベルの割り算で考えても、それが達成されるのには数年を要するのでは? 未開の原始人ではないのだし二次方程式連立方程式を解くワケでもない小学生の「四則演算」レベルの話なのだから、もっと計量的に考えようヨ~、という話もしたかったのだけど毎度、文量が長くなりすぎてしまったので機会を改めたい。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86-PART2(2020年12月27日発行)所収)


[関連記事]

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』 ~右vs左ではない!? 一度断念した上での「理想」や「公共」へと至る経路の違い!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200809/p1

元号「令和元年」 ~近代・ポストモダン社会における「天皇制」を考える!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190825/p1

追悼、保守思想家・西部邁 ~近代に依拠しつつ近代を疑う

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200121/p1

まおゆう魔王勇者』 ~異世界を近代化する爆乳魔王に、近代自体も相対化してほしい(笑) 『AMNESIA』『ささみさん@がんばらない』 2013年冬アニメ評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200123/p1



週刊文春 新型コロナウイルス完全防御ガイド (文春ムック) (文春e-book)

2020年コロナ禍の日本を私的総括!
#コロナ禍 #新型コロナ #新型コロナウイルス #PCR検査 #GoToトラベル #緊急事態宣言 #学校一斉休校



[思想] ~全記事見出し一覧
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧

ウルトラマン超闘士激伝 ~オッサン世代でも唸った90年代児童向け漫画の傑作!

(2021年2月7日(日)UP)
『コロコロコミック増刊号 ウルトラマンPART1』&『2』 ~『ザ・ウルトラマン』&『コロコロ増刊』ウルトラ特集記事の時代!
内山まもるウルトラマン漫画1971~2010総覧! ~『ウルトラコレクションボックス ザ・内山まもる』
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[ウルトラ] ~全記事見出し一覧


 歴代ウルトラマンたちが大宇宙を舞台に大活躍を繰り広げるネット番組『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)が配信完結記念! とカコつけて……
 ウルトラ一族が大宇宙を舞台に活躍する作品の元祖のひとつでもある、90年代児童マンガの傑作『ウルトラマン超闘士激伝』評を発掘アップ!


ウルトラマン超闘士激伝』 ~オッサン世代でも唸った90年代児童向け漫画の傑作!

(文・久保達也)
(2010年7月26日脱稿)


 筆者を含めた70年代に少年時代を過ごした者たちは、かの内山まもる大先生・かたおか徹次先生などが小学館の学習雑誌や児童漫画誌コロコロコミック』で描いてきたウルトラシリーズのコミカライズ作品や、ウルトラ一族が大宇宙を舞台に活躍するオリジナル展開漫画『ザ・ウルトラマン』(ASIN:B017TYZ8H4)や『ウルトラ兄弟物語』(ASIN:B07TTLQXKN)などに夢中になってきた。
 80年代前半にも、5年もの長きにわたって幼児誌『てれびくん』において居村眞二(いむら・しんじ)先生によるウルトラシリーズのオリジナル漫画にして、鎧(よろい)を着用した新たなウルトラ戦士、アンドロ警備隊のアンドロメロスとウルトラ一族が、大宇宙どころか時間跳躍やタイムパラドックスまで織り込まれていた名作漫画『ウルトラ超伝説』(ASIN:B002DE75TK)が連載されていた。


 しかし、90年代にも4年間にもわたって当時の少年たちに向けたウルトラシリーズのオリジナル展開の傑作漫画があったのだ!
 それが講談社の月刊の児童漫画誌コミックボンボン』(81~07年)において、93年4月号から97年3月号にかけて連載されていた『ウルトラマン超闘士激伝(ちょうとうし・げきでん)』(原作/瑳川竜(さがわ・りゅう) まんが/栗原仁(くりはら・じん)・ISBN:4063216853)である!



内山まもる入ってる! ――というのがかつて「コミックボンボン」(講談社)誌上で見かけた『超闘士激伝』の第一印象だったりするのだケド、懸命なる「ボンボン」読者世代にとって、そんなコト無縁には違いない。
 にも関わらずそこから話が始まってしまうのは、この『激伝』に溢れる熱き「ウルトラ魂」こそかつて内山まもる小学館の学習雑誌で描き、後に「コロコロコミック」誌での再録によって70年代末から巻き起こる、俗に“第3次怪獣ブーム”と呼ばれるムーブメント起爆剤のひとつになる快作『ザ・ウルトラマン』(というのは再録時の改題。もちろん79年4月放送開始のアニメーション番組とは無縁)の後継者たる資格アリ、とこちらが勝手に判断してのコトなのだケド……


 もちろん、この平成の世に繰り広げられる『激伝』には、周到なマーケティング・リサーチによって導き出された(に違いない)格闘色の強調や、例えば装鉄鋼(メタルブレスト)といった「バンダイ・ベンダー事業部」&「コミックボンボン」誌が『SDガンダム』――引用者註:2頭身の児童向け玩具(85年~)――で培ったノウハウの転用によるガジェットの充実、といった魅力的なエレメントは詰めこまれている。
 でも『激伝』を読んで唸らされるのは、やっぱし過去の『ウルトラ』シリーズにおける設定を、過剰なまでのオマージュを込めて再生産しようとする、その姿勢にこそ、だったりするのデスネ。


 事実、現在商業誌で展開されている漫画で、これほどまで“ワカる奴だけ大喜び”的にツボを突いている作品は、ちょっと他には見当たらない。
 しかも、そのツボが、熱血少年漫画としての『激伝』の世界観の枷(かせ)になるコトなく、否(いな)、それどころか世界観をヒートアップさせるべく組み込まれているコトには、驚かされると同時に、怒涛(どとう)のような感動を覚えずにはいられないノダ。


 例えば、金子修介伊藤和典樋口真嗣といった“ゴジラで育った世代”が、新作『ガメラ』シリーズで、多くの“自分たちと同じ魂を持つ観客”を納得させ、かつ新たな観客層を取り込んでいるように、原作者・瑳川竜&栗原仁“ウルトラ(それも第2期の!)で育った世代”コンビはこの『激伝』で、それに非常に近い地平を目指し、かつ到達できてんじゃないかなあ、と思うのだ。
 もちろん前者が“一般層”を、後者は、“少年層”を切り拓こうとしている、という違いにはあるにせよ」


(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』(エアーズ 96年9月21日発売・ASIN:B000064C7F)ライナー・ノーツ「EXPLANATION」赤星政尚)



 いやぁ、のちに『ウルトラマンメビウス』(06年)のメイン脚本家を務めた、当時はまだ一介のライターに過ぎなかった赤星政尚(あかほし・まさなお)先生(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)にこのような立派な作品解説を書かれてしまっては、筆者ごときが何を書いても蛇足になってしまうなぁ(汗)。



 この『ウルトラマン超闘士激伝』に小学生のころに「ウルトラ魂」を植えつけられ、成人してもそれが離れない世代人はかなり多いようである。
 ネット上の「復刊ドットコム」には、実に同作が完結した4年後の、今から思えばまだまだネット草創期の2001年ころから、すでに復刊を求めるリクエストが多数寄せられ続けていたのである。


 復刊を求めていた声を総合すると、以下の通りである。
 講談社から全6巻で刊行された『ボンボンコミックス』レーベルの単行本には、シリーズ途中までのエピソードしか収録されていない。それらの続きとなる、それまでの巻数と同等(爆)のエピソードが未収録である。それらも含めた完全版での復刻を! といった声が多数を占めている。


 その当時に子供向けのガシャポン自販機で発売されていたミニフィギュアを熱心に集めていたという声も実に多かった。
 そして、連載自体が97年3月号までに急場しのぎのように完結しており、それを残念がる声も根強いものがあったのだ。


 そうして、最初の復刊希望からまる10年近い歳月を経(へ)て、遂に2009年12月20日に第1巻(ISBN:4835444094)が発行されたのを皮切りに、2010年3月1日に第2巻(ISBN:4835444108)、5月1日に第3巻(ISBN:4835444116)、7月1日に第4巻(ISBN:4835444124)と、未収録部分も含めて完全なかたちでの完全復刻がめでたくなされたのである!


 筆者は連載当時はすでに20代後半であり(汗)、本作に登場するスーパー・デフォルメの略称であるSDキャラたちはあちこちで目にした記憶はある。しかし、SDキャラゆえに「どうせギャグものだろう……」と関心が低かった。さすがに児童漫画誌である『コミックボンボン』を立ち読みすることも気恥ずかしかったので、この作品に関しては実はほぼノーマークだったのだ。


 それで、今回の復刻を契機に改めて読んでみた。


 ……ムチャクチャおもしろい!!


 本作の作風・ストーリー展開・キャラクターは、『週刊少年ジャンプ』連載の超人気漫画で、長年テレビアニメも放映されていた、いまだに根強い人気を誇るバトル漫画『ドラゴンボール』(84年~)に似ているとよく評されている。


 しかし、オッサンの筆者としては幼少期にぎりぎりカスった、クラスの中での番長を決めて、次は学年の番長 ⇒ 上級生の番長 ⇒ 隣町の番長 ⇒ 県規模での番長 ⇒ 関東規模での番長 ⇒ 日本規模での番長 ⇒ アメリカの番長(笑)と戦う、「町内最強武闘会」のはずが、国家同士の戦争レベルにまで発展してしまう、『週刊少年ジャンプ』創刊当初から連載されていたという往年の大人気漫画『男一匹ガキ大将』(68~73年)を想起してしまう(汗)。


 後年のジャンプ漫画のすべてが同じだろうが、要するに敵のスケールが次第に大きくなっていったり、以前の敵が味方となって新たな強敵に共に立ち向かうところに、共通点が見いだされるのである(笑)。


第1部『メフィラス大魔王編』

ウルトラマン超闘士激伝

ウルトラマン超闘士激伝

ウルトラマン超闘士激伝

*93年4月号『銀河最強武闘会開幕』
*93年6月号『謎の覆面格闘者』
*93年7月号『優勝者決定!?』
*93年8月号『恐怖のハイパーゼットン
*93年9月号『セブン復活指令』
*93年10月号『試練の星キング星』
*93年11月号『鋼魔(こうま)四天王あらわる』
*93年12月号『ウルトラ戦士集結』
*94年1月号『闘士ウルトラマンの帰還』
*94年2月号『宿命の対決!』
*94年3月号『最終決戦!!』


 ウルトラマンたち巨大超人一族や巨大怪獣や宇宙人、そして地球の防衛組織までもが参加する、宇宙最強を決める「銀河最強武闘会」が「銀河連邦」(!)の主催で行われるところから物語は始まる。
――この「銀河連邦」とは1972年に円谷プロが自社製作の作品群はすべて同一世界の物語である! と定義した際の総称である。その後に定着しなかったウラ設定ではあるのだが・笑――


 はるかなる太古よりこの宇宙に伝わる伝説の最強戦士、「超闘士」(ちょうとうし)となる可能性を秘めている初代ウルトラマンの力を暴こうとする謎の覆面選手。


 その彼と手を組んだのが、初代『ウルトラマン』(66年)第39話(最終回)『さらばウルトラマン』で、初代マンを一度は殺害したことがある超強敵怪獣・宇宙恐竜ゼットンだった!


――本作に登場する巨大怪獣たちは皆、意思を持っており人語もしゃべるが、絵柄がSD調であるためか違和感は少ない・笑――


 ウルトラ兄弟 VS 歴代強敵怪獣たち! あまたの対戦カードでの激戦が展開される!


 その果てに、初代マンは謎の覆面戦士と対戦した!


 難敵相手に苦戦する初代マン。決勝で当たるだろう対ゼットン戦用に温存していた隠し球を、初代マンは遂に使用せざるをえなくなる。


 両腕を十字型に組んだスペシウム光線の構えから、伸ばしていた両手のひらをグッと握って、左右の腰許まで引いてから右拳だけを突き出す、いわゆるアタック光線の構えで、新必殺技スペシウム・アタックを放つ初代マン!!


 この光線に押された謎の覆面戦士は、余力を残した風でありながらもアッサリと降参。しかし、初代マンもエネルギーを使い果たし、倒れてしまって担架(たんか)で運ばれてしまう……


 控え室で横になって、しばしの休憩を取る初代マン。


初代マン「だめだ この負傷では(決勝戦の)ゼットンと互角にはやりあえん……!! もう…… だめか…!?」
科学特捜隊の隊員たち「ウルトラマン!!」
初代マン「きみたちは…… 地球の科特隊のみんな……!!」


 本作『超闘士激伝』は、ウルトラシリーズ番外編のテレビシリーズ『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)や映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(ザ・ムービー)(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)での発想をはるかに先駆けており、ウルトラシリーズの未来の時代がその舞台となっている。


 そして、ここは良い意味で漫画なのだが、この未来世界には歴代ウルトシリーズの防衛組織がそれぞれ併存していて、「銀河最強武闘会」の舞台である「ウルトラの星」まで来ているのだ! 加えて、地球人の身長もウルトラマンたちのせいぜい1/3くらいの大きさで描かれている(笑)。
 まぁ、作品の絵柄的にもリアリズムが優先される世界観ではないし、身長比率の描写についてはデフォルメ表現だとして、読者諸兄の大勢も許せるのではなかろうか!?



イデ隊員もどき「これをつかってください。きゅうにあつらえたんで 見ばえはよくないけど……!」
初代マン「あっ!!!」
ムラマツ隊長もどき「あなたにはかつて地球をまもってもらった恩がある!(中略) ぜひこの装鉄鋼(メタルブレスト)をつかってやってください!!」
初代マン「……ありがとう!!」


 両胸・左肩・左上腕だけを覆った黒鉄(くろがね)の「装鉄鋼」を装着して、ゼットンとの決勝戦にのぞむ初代ウルトラマン


観客の怪獣A「なんだっ!? あの鎧みたいなのはっ…!!」
観客の怪獣B「ゼットンのパンチをモロにうけとめやがった!!」


イデ隊員もどき「ハ~ッハッハッハッ!! 見たかあ!! あれこそわが科特隊がプレゼントした巨大防御装甲「装鉄鋼(メタルブレスト)」だあーっ!!!」


観客の怪獣C「メタル……」
観客の怪獣D「ブレスト!!」


ムラマツ隊長もどき「ウルトラ戦士の急所カラータイマーをガードし 防御力を数段アップさせるプロテクターだっ!! あれを装着したウルトラマンこそ まさにきたえぬかれた武闘家が武装した最強戦士! 闘士(ファイター)ウルトラマンだ!!」


 「闘士ウルトラマン」となった初代マンは、強敵ゼットンを圧倒していく!


 初代マンが少しでも回復してくれる時間を稼ぐために、ゼットンとの準決勝で粘った末に昏倒したウルトラマンエース! エースの友情に報いるためにも、闘士マンはエースの必殺投げ技・エースリフター(!)を使って、ゼットンに大ダメージを与えた!!
――エースリフターもまたマニアであればご承知の通り、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)第28話・第29話・第44話でも使用されたことのある技である!――


 敗北を予感したゼットンは、観客席にいた謎の覆面選手からのテレパシーでの指示で、授与されていたハイパーカプセルを砕く! その超エネルギーを浴びるや、ゼットンはハイパー化(強化)、筋骨隆々の姿となって暴走を開始した!
 その強大なるパワーにはウルトラ戦士たちが束になってかかっても抑えることができない!


 だが、「闘士ウルトラマン」は負けじと立ち上がった。
 闘士マンとハイパーゼットンとの拳と拳の応酬がはじまる!
 そして、ついに光線技ではなく、闘士マンによる高速突進による渾身の拳による一撃が決まった!


 闘士マンは遂にゼットンを倒して、「銀河最強武闘会」の優勝者となったのである!!



「『超闘士激伝』のスタートラインは元々バンダイさんで、SDキャラクターで『騎士(ナイト)ガンダム』――引用者註:『SDガンダム』の系列で、日本武者をモチーフとした『武者ガンダム』(85年)に続く、西欧騎士をモチーフとしたシリーズ(89年)――みたいな強力なものを新たに立てたいという話があり、いくつかあるビッグキャラクターの中からウルトラマンを選び、『激伝』の形のものを企画してバンダイさんに逆提案してスタートしました。
 その頃には『ボンボン』デビュー――引用者注:読み切りラジコン漫画『スカイボンバー一直線』(87年)――時の担当さんが編集長になっていたこともあって、漫画連載もスムーズに決まりました。


 企画の発進元だったベンダー事業部でカードやガシャポンになるという時に、当然本物のウルトラマンと『激伝』版には差があった方がよいだろうと、鎧(よろい)や剣といったトイ要素を入れることになり、ウルトラマンにプロテクターを着けました。


 物語のテイストとして考えたのは、『騎士ガンダム』は『ドラゴンクエスト』――引用者註:86年開始の云わずと知れた今でもシリーズが続く超有名テレビゲーム――をベースにした話になっていたので、『(週刊少年)ジャンプ』漫画っぽいのがよいのでは? という話になり、バトルっぽい作風になったんです」


(『フィギュア王』No.139(ワールドフォトプレス・09年7月24日発売・ISBN:4846527891)「光の国◆人物列伝」瑳川竜 ~『フィギュア王』プレミアムシリーズ6『ウルトラソフビ超図鑑』(10年7月15日発行・6月1日実売・ISBN:4846528278)にも再掲載)



 本作におけるウルトラマンが鎧を着用するという設定の直接の発端は、内山ウルトラ漫画やアンドロメロスありきの発想ではなく、鎧や武装の着せ替え人形でもあるSDガンダムの亜流として発想されたことがこれでわかる。
 しかし、それがバンダイ側の発案ではあっても、単なるメディアミックスの一環としての漫画のストーリーの「原作者」レベルではなく、この企画の発端のタイミングに臨席していて、そこにウルトラマンを選定して格闘技漫画のスタイルとすることをも逆提案(!)してみせるという、「企画」「プロデューサー」級のポジションとしても、『激伝』の原作者・瑳川竜氏は関わっていたというのだ。まさに名実ともに『激伝』の産みの親だったといえるだろう。




 ……しかし、戦いは終わったワケではなかった。


 覆面戦士の配下である分身宇宙人ガッツ星人の謀略で、初代マンの親友・ウルトラセブンが透明な十字架の中に封じこまれてしまったのだ!
――もちろんこれは『ウルトラセブン』(67年)第39話~第40話『セブン暗殺計画』前後編で、セブンがガッツ星人によって透明な十字架の中に閉じ込められてしまった鮮烈なシーンへのオマージュでもある!――。


 殺害しないまでも中のエネルギーをゼロにしてしまう、特殊元素でできた透明な十字架。この状態からセブンを復活させるためには、膨大なエネルギーを秘めたダイモード・クリスタルが必要だと判明した。
 それを手に入れるために、初代マンはウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングが住まうキング星へと向かう!
――ダイモード・クリスタルも、『セブン暗殺計画』前後編で十字架に囚われたセブンを復活させるために、同作の防衛組織・ウルトラ警備隊が必要とした、セブンに照射するマグネリウムエネルギーを発生させるための「ダイモード鉱石」が由来。後年の『ウルトラマンメビウス』終盤でのセブン客演編でも、同アイテムの発展型とおぼしき「メテオール・マグネリウムカートリッジ」なる新アイテムが登場していた――


 別名“試練の星”と呼ばれているキング星の砂漠地帯で、初代マンはかつて地球でも対戦したことがある、光線技の通じない蟻地獄怪獣アントラーと戦う!
――ウルトラマンキングはキング星にたったひとりで住んでいるというウラ設定があったハズだが、実際には初代マンに登場した中東の「バラージの街」そっくりの街も登場。地球の中東風の住民たちも多数住んでおり、少々違和感もあるのだけれども…… 許そう!・笑――


 苦戦の末にアントラーを倒して、初代マンはウルトラマンキングからダイモード・クリスタルを授かった!


 しかし、その留守をねらって、謎の覆面戦士、その正体はメフィラス大魔王(!)の配下である「鋼魔四天王」である4大・闘士(ファイター)!


・宇宙忍者バルタン星人が鎧をまとった、闘士バルタン星人!
・凶悪宇宙人ザラブ星人が鎧をまとった、闘士ザラブ星人
・誘拐怪人ケムール人が鎧をまとった、闘士ケムール人!
・三面怪人ダダが鎧をまとった、闘士ダダ!


 ひとりでも百軍に匹敵するという彼らが、ウルトラの星を襲撃してきたのだ!!


 ここからストーリーは完全に「銀河最強武闘会」を離れて、ガチの「戦争」へと転じていく!!


 ウルトラ兄弟たちジャック・エース・タロウも、4大強豪宇宙人の大猛攻に絶体絶命のピンチに!


 しかし、そこに当時はシリーズ最新の日豪合作作品でもあるウルトラ戦士であった筋骨隆々のウルトラマンG(グレート)が加勢する! グレートは『激伝』ではウルトラ一族が設立した宇宙警備隊には参加していない、はぐれ戦士であるという設定なのだが、強力なパワーファイターでもあるのだ!


 宇宙忍者でもある闘士バルタン星人の分身体である「PSY(サイ)バルタン」たちと単身で戦うことになったウルトラ兄弟の長男・ゾフィーもまたピンチに陥(おちい)る!


 しかし! そこにウルトラ学校の生徒たちを避難させたあとだという、ウルトラマンエイティが両腕をL字型に組んで放つ必殺技・サクシウム光線が炸裂した!!


――ウルトラマンエイティは『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)テレビ本編の序盤(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1)では地球人の姿をしているときは防衛組織の隊員と中学教師も兼任していた。その設定をきちんと継承しており、ウルトラの星へと帰ったあとは、ウルトラ学校の教師をしていたのだという、さもありなんな設定も付与されての嬉しすぎる助っ人!――


 ウルトラの星に来ていた地球人の防衛組織もこの戦いに参戦! しかし、防衛組織・MAT(マット)の戦闘機・マットアロー2号が撃破されて墜落してくる……


 その機体をガシッと受けとめる巨人の手があった!


加藤隊長もどき(笑)「!!? ウ… ウルトラマンが… かえってきた!!?  いや…… ちがう!! ウルトラマンジョーニアスとU40(ユーフォーティ)戦士団だっ!!!」


――太陽エネルギーを補充するために一度は戦線を離脱したウルトラマンが、墜落していくマットアロー2号をガシッと受け止めて、操縦していたMATの加藤隊長が「ウルトラマンが……帰ってきた!」とつぶやくのは、『帰ってきたウルトラマン』(71年)第18話『ウルトラセブン参上!』からの引用でもある!・笑――


 そしてなんと! ここで助けに登場したウルトラマンは、第3期ウルトラシリーズのテレビアニメ作品『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)の主人公ヒーローであるウルトラマンジョーニアスなのである!
 しかも! ジョーニアスはM78星雲にあるウルトラの星とはまた別の星である、ウルトラの星・U40出自なのだが、同作の第20話『これがウルトラの星だ! 第2部』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090914/p1)で初登場して以降、度々ジョーニアスを加勢してきた、U40のウルトラマンであるエレクとロト! それに5大戦士たちも駆けつけてくれたのだ!!
 ジョーニアスのみならず、エレクやロトたちまで! この漏れなく総ざらいにしていくような感覚! 作り手たちは、よくある第1期ウルトラシリーズ偏重ではなく、ウルトラシリーズ全般を等しく愛するマニアたちの感慨をも、実によくわかっていらっしゃる!(笑)


 闘士バルタン星人がその両腕のハサミから超爆撃光線「バルタン・ミクスド・ファイヤー」で、ウルトラ兄弟たちを抹殺にかかった!
 しかし、ウルトラマングレートが敵の光線を受け止めてハネ返す秘技「マグナムシュート」で、逆に相手を撃滅させる!!
 しかし、バルタン星人は敗れたが、グレートも相討ちとなり昏倒してしまった……


 バルタン星人の敗退によってバルタン星人の分身体も消滅! 手透きとなったゾフィー・エイティ・ジョーニアスが、ジャック・エース・タロウの加勢へと向かった!
 しかし、四天王で残った3人の闘士宇宙人とウルトラ戦士たちとの激突で、双方ともにひとり、またひとりと欠けていく……


 そこに闘士ウルトラマンがキング星から遂に帰ってきた! ダイモード・クリスタルをウルトラの父や防衛組織・ウルトラ警備隊のアマギ隊員もどき(笑)に手渡すと、颯爽と戦場に到着!


 闘士マン VS メフィラス大魔王、今までとは段違いの強者VS強者の対決がはじまる! 
 互角の戦い! しかし、メフィラスはハイパー化して身の丈も倍になる! 闘士マンは大苦戦!


 エースの発案で、エースのトサカ部分のまるい穴、エネルギーホールに、ゾフィー・ジョーニアス・エイティは「スペースチャージ」する! エースがそのエネルギーを結集して、トサカから必殺光球・スペースQ(!)を放とうとするや……


 メフィラスが人差し指から放った光線が、エースのトサカ部分を砕いてしまう!! 後ろ向きに倒れてしまうエース!


――「スペースチャージ」とは、『ウルトラマンA』第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』で、マイナス宇宙にあるゴルゴダ星でウルトラ4兄弟たちがエースだけを地球に返すためにエネルギーを分け与えた「ウルトラチャージ」と、続く後編である第14話『銀河に散った5つの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)で披露された5兄弟のエネルギーを結集した必殺光球「スペースQ」を混合した誤植だと思われる・笑――


 メフィラス大魔王が闘士マンにトドメの超魔光閃(ちょうまこうせん)をその片腕から放とうとした瞬間! なにかが片腕に当たって光閃の軌道がそれることで、闘士マンをかろうじて救った!
 それはウルトラセブンのトサカ部分を外して放つ、宇宙ブーメランであるアイスラッガー


 ダイモード・クリスタルの超エネルギーで復活し、防衛組織・ウルトラ警備隊から託された「装鉄鋼」を両肩と両脛(すね)にまとった「闘士(ファイター)ウルトラセブン」が駆けつけてきたのだ!


 しかし、闘士マンと闘士セブンの力をもってしてもメフィラス大魔王を倒せるかは厳しい! 闘士セブンの発案で、セブンのアイスラッガーゾフィー・ジャック・タロウ・グレートがエネルギーをチャージする!
 闘士マンはそのアイスラッガーを片手に握って渾身の一撃! 遂にメフィラス大魔王を打ち破ったのであった!!




 本作の独自性は、内山まもる大先生のウルトラ漫画で前例はあるものの、ウルトラマンが鎧を装着したことだろう。


「鎧はちょっとな。もはやウルトラじゃないよな」
龍騎(『仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021109/p1))もカードバトルがそんな風に論争巻き起こしたけど、マーチャンダイジング的には大成功してシリーズの裾野を広げた。売れそうな冒険なら議論を呼んでもウルトラでやってみてもいいんじゃないだろうか」
「鎧のウルトラマンって準備稿ではあったみたいだね。今回日の目を見たわけだ」
「(ウルトラ)セブンのデザインは西洋の甲冑をイメージしたそうだけどね」
「たとえば、地球人が巨大ロボ操縦して、子供がウルトラのフィギュアと連動遊びができるように、劇中でもロボが鎧に変形してウルトラマンと合体するおもちゃ出すとか」
「そこまでやるなら別のシリーズを立ち上げればいい。鎧なら(ウルトランマン)ヒカリが持ってるし、(ウルトラマン)ゼロも(テクター)ギア着けてるけど、ウルトラマン本来のかっこよさには及ばないよ。『激伝』みたいにすれば別だけど。そもそも(仮面)ライダーみたいな装着系と同一視するのはおかしいと思う」
「そこでアンドロメロス(『アンドロメロス』(83年))の復活でつよ(°∀° )!」
「『超闘士激伝』ぐらいの鎧なら良いな。顔が隠れたりウルトラマンのスタイルを損なうような物はNG」
「デカレッド・バトライザー(引用者註:『特捜戦隊デカレンジャー』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041112/p1)後半の強化形態)みたいな感じならウルトラマンの顔も隠れないしいいかも。鎧に変形する防衛戦闘機を操縦する地球人との友情が形になった姿って感じで。そんな感じでとにかくおもちゃがドンドン欲しくなる展開をしていって、まずマーチャンダイジングで成功して欲しい」
平成ライダー仮面ライダーメタルヒーローだから、ウルトラマンも他の円谷ヒーローの要素を+してもいいんじゃないか? どうせウルトラマン以外をやる余裕なんてないだろ。超闘士・メロス・グリッドマン(『電光超人グリッドマン』(93年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190529/p1))みたいにアーマー装着したり、ウルトラマンがメカ怪獣みたいなものに変身すれば玩具も売れやすい。賛否両論だろうが宇宙を守るヒーローとしての軸がぶれなければ何をやっても許せる」


2ちゃんねる「特撮!」掲示板『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』Part19 2009年12月21日~2010年1月6日)



 映画『ウルトラ銀河伝説』感想スレ(ッド・掲示板)のハズなのに、玩具展開の是非やウルトラマン武装をすることの是非についての論争に転じてしまっている(笑)。


 『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)のころにはティガが赤・紫・銀の標準の姿であるマルチタイプから赤&銀のパワータイプや紫&銀のスカイタイプにタイプチェンジするという程度のことに対してさえ、「商業主義」だ! などという素朴な批判がおどっていたものだ。
 それを思えば世間もやっと追いついてきたどころか、2010年現在でのウルトラシリーズにおけるウルトラマンの在り方を超えており、はるかに将来を見据えている提言をしている!


 60~70年代のむかしの子供たち向けではなく、アニメやゲームなどとの競争も激しい当今の子供たちの興味関心をゲットするための意匠やアイテム、商業的な収益をも見据えた現実的な提言まで主張してくれているのだ。
 こういった意見は90年代から特撮評論同人界でもごく少数あるにはあったのだが、ほとんど世間一般・特撮マニアの大多数への影響力はなかった(爆)。
 しかし、『激伝』世代がようやく発言権を得てきたためか、商業誌の読者投稿欄や同人誌などといった意見交換に数ヶ月ものタイムラグを要する媒体とは異なり、ネットという媒体自体が議論や個人の見解の変化のスピードを加速させるのか、これまであまり一般的ではなかったタイプの意見が、00年代以降に勃興したネット上の超巨大掲示板で可視化されて、先進的な議題となるに至っているのである。


 「闘士ウルトラマン誕生」の瞬間は、「ウルトラマンとはかくあらねばならない!」というドグマとは無縁な子供時代に『激伝』に接した彼らの世代の大勢からすれば、特に気張って興奮したり、その逆に反発されることもなしにナチュラルに受容されたものだと思われる。
 しかし、筆者のような古い世代からしても――といっても70年代前半が原体験である第2期ウルトラ世代だが――、「鎧」の着用に地球を守ってくれた恩があるからと「装鉄鋼」を科学特捜隊がプレゼントしてくれるという理由付けをきちんと与える描写については、「ジ~ン」と心の琴線(きんせん)にふれてくるものがあるのだ。


 古くはテレビアニメ『ザ★ウルトラマン』最終章4部作(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20200508/p1)という前例があるにせよ、近年の『ウルトラマンメビウス』や映画『ウルトラ銀河伝説』のように、地球人の方が逆にウルトラマンを助けるという設定の、ある意味では先駆けですらあるのだ!
 「長年の功労に対する恩返し」「地球人がウルトラマンを助ける」。この2大エクスキューズも設けることで、ウルトラマンが「鎧」を着用することに抵抗があるような、年長のウルトラシリーズマニアたちの反発もやや緩和されるようなワンクッションもある描写に昇華できていたとも思うのだが、いかがだろうか?



 なお、「イデ隊員もどき」「ムラマツキャップ(隊長)もどき」「アマギ隊員もどき」(笑)などについては、以下のような経緯があったそうだ。



「当初、科特隊などの防衛軍は、肖像権の問題があるため、似せないで描く事になっていた。が、連載前のキャラシートにふざけて描いたら、ちょっとウケて「これだけふざけて描いてあったら別人でしょう」と、GOサインが。万が一クレームがついたら、「別人」で押しとおすつもりだったのだ。(たぶん)」

(復刻版『ウルトラマン超闘士激伝』第1巻カバー内表紙「激伝ひみつメモ」栗原仁)



 そのようなワケで、『ウルトラマンA』の防衛組織・TAC(タック)の「今野(こんの)隊員もどき」をはじめ、頭身も縮めた大幅なデフォルメではあっても、元ネタの俳優さんたちにそっくりである(笑)。


第2部『ヤプール編』

ウルトラマン超闘士激伝 2

*94年4月号『第2回銀河最強武闘会開幕』
*94年5月号『復活! メフィラス大魔王』
*94年6月号『怪僧マザロン』
*94年7月号『デスマッチ開始!』
*94年8月号『決定! ベスト4(フォー)』
*94年9月号『マザロン豹変』
*94年10月号『ハイパーマザロン』
*94年11月号『最強タッグ結成!』
*94年12月号『超闘士誕生!!』
*95年1月号『ヤプール軍団総攻撃!』
*95年2月号『超闘士ウルトラマンタロウ
*95年3月号『メビウスの三つの鍵』
*95年4月号『最強闘士(ファイター)集結!!』
*95年5月号『怨霊超獣あらわる!!!』
*95年6月号『ハイパーヤプール
*95年7月号『宇宙最大の危機』
*95年8月号『闘士(ファイター)ウルトラマン復活!?』
*95年9月号『テリブル・ゲート オープン』
*95年10月号『ヤプール大戦終結!!』


 惑星・Q-49で「第2回銀河最強武闘会」がループ星人ヤンドの主催で開かれた。
 激戦の末に、闘士ウルトラマン・メフィラス大魔王・闘士エースキラー・怪僧マザロンがベスト4に勝ち残る。


 しかし、マザロンはヤンドの配下としての本性を現わす! 対戦相手でありロボットでもある闘士エースキラーをかつて製造したのは自分なのだと!!
 この一言で自身もかつては異次元人ヤプールの手先であったエースキラーも、マザロンの正体に気付いた! ヤツはヤプール人の一味だったのだ! マザロンはその怪力でエースキラーを自身の「オモチャ」だったとして破壊してしまう!!


――怪僧マザロンの原典であるマグマ超人マザロン人も、『A』の埋もれている大傑作である鬼才・真船偵(まふね・ただし)脚本&監督作品の第24話『見よ! 真夜中の大変身』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1)の前話に登場した怪僧こと通称・ヤプール老人がマグマの中で変身した姿であって、ヤプール人のひとりでもあるのだから、それを踏襲して、この怪僧マザロンもヤプール人のひとりだったという描写を与えているのだ! そして、ヤプール人のひとりであるのならば、かつてエースキラーを製造したことがあったとしても不思議ではないのだ!――


 闘士マンとメフィラス大魔王は協力してマザロンを一度は倒すが、マザロンはハイパー化して、闘技場を爆破しようとする!


 闘士マンはメフィラスとハイパー化のためのエネルギーを合わせて、観客席を除いた競技場のグラウンドまるごとマザロンと爆弾を無人の惑星に超テレポーテーション(瞬間移動)させる!
 だが、エネルギーを使い果たした闘士マンは力尽き、ハイパーマザロンから彼をかばおうとしたメフィラスも倒れて、遂に超空間時限爆弾が大爆発してしまう!


 「友」となったメフィラス大魔王を守りたい…… その想いは、超空間時限爆弾の大爆発の中で、「その拳は惑星をも砕き、その輝きは暗黒の宇宙をも光で満たす」という、伝説の最強戦士「超闘士(ちょうとうし)」としての初代ウルトラマンを誕生させた!
 「超闘士ウルトラマン」はその開いた右掌を突き出して「スペシウム超光波」を上空に放った! ……遂にハイパーマザロンを打ち破る!!


 しかし、そのすさまじいパワーは初代マンの肉体をも破壊してしまい、駆けつけたウルトラ戦士たちとメフィラスの前で、初代マンは超光波を放った直立不動の姿のままで帰らぬ人となっていた……


 おもわず号泣してしまうメフィラス大魔王……


 帰るべき肉体を失った初代マンの魂は、死後の世界・霊界でもある「あの世」をさまよい、そこで霊界にも出入りができる超能力を持ったウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングと出逢った。
 キングはこの3次元世界である「この世」では物理的な機械にすぎないウルトラの星の人工太陽であるプラズマスパーク核融合装置の、天上世界における本体・精神・魂でもある「太陽神」(!)の存在を説明して、女性のような声で語りかけてくる「光」だけの存在である「太陽神」に初代マンの肉体を復活してくれるように懇願する。
 しかし、承諾はされたものの、それには3年もかかると告げられてしまう!


 極悪宇宙人テンペラー星人からウルトラ司令室に送られた通信で、ループ星人ヤンドの正体がかつてエースやタロウらウルトラ一族とも戦った異次元人ヤプールであることが判明する!


――この場面でのテンペラー星人の回想映像では、たむろしている居酒屋で地獄星人ヒッポリト星人・暗殺宇宙人ナックル星人といった、歴代のウルトラシリーズでも前後編の2話にわたってウルトラ兄弟を苦しめた強豪宇宙人たちがそろっている。後年の映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)や映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1)でも、強豪宇宙人連合として復活したメンツでもあり、強豪は強豪同士でつるんでいるというのもまた、実によくわかっていらっしゃる!・笑――


ヒッポリット星人「い、いま宇宙に生き残っている超獣たちの生みの親だったという(ヤプール)……!」


エース「昔オレが…… 必死の思いでやっつけたヤプールが下の下のヤツだったなんてっ……!!」



「あともう一点ビジュアル的には、自分が内山まもる先生の『ザ・ウルトラマン』世代で、ウルトラマンが大勢出てくるバトルストーリーっていうのに慣れていたので、内山先生風のスッキリした顔立ちが一番合っていると思い、じゃあ内容的にもウルトラシリーズの全内容を網羅したサーガ的な要素も取り入れようということで、あの形に落ちついたんです」

(『フィギュア王』No.139「光の国◆人物列伝」瑳川竜 ~『フィギュア王』プレミアムシリーズ6『ウルトラソフビ超図鑑』にも再掲載)



 そう。歴代のウルトラマンたちが登場しながら、原典のテレビシリーズとはまったくの無関係であるとされてしまっては、なぜにそこにウルトラマンというキャラクターを用いているのか? という地に足が着かない不自然さ・不安定・不如意感が作品世界に生じてしまったことだろう。
 しかし本作は、完全パラレルストーリーなどではなく、あくまでもテレビシリースでの出来事も史実として肯定して、その世界とも直結している未来の時代での一応はアリエそうでもある続編世界の後日談とすることで、SD調のキャラデザと鎧を着用するという変化球でありながらも正統な血筋であるサラブレッド感も醸し出すことができているのだ!


 この異次元人ヤプールも、ウルトラシリーズを昭和の『仮面ライダー』シリーズのような単なる善VS悪との攻防劇に堕落させた張本人だ! と70年代~90年代にかけては第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちからは糾弾されてきた存在なのだ。
 しかし、各話単位のゲスト悪役、あるいは前後編のかたちでウルトラ兄弟を苦しめた強豪宇宙人をも超えた、大きなスケールを有する強敵といったら、やはり「怪獣」よりも強い生物兵器「超獣」を製造した『A』のシリーズ前半の宿敵を務めた異次元人ヤプールだろうから、実に納得がいく巨悪としての再登場だ!
――次作『タロウ』で「超獣」よりも強い「宇宙大怪獣」が登場したことには目をつむろう・笑――



 数日後、全宇宙にヤプール超獣軍団(!)の一斉攻撃もはじまってしまった!
 大蝉超獣ゼミストラ! 大蛍超獣ホタルンガ! 気球超獣バッドバアロン! 絵面的にはビミョーだが、初戦の三下のヤラれ役としてはちょうどイイ!(笑)


 防衛組織・ウルトラ警備隊の戦闘機・ウルトラホーク1号にそっくりのホーク・ウェポン1号の両翼に両足で立って乗っかった闘士ウルトラセブンがそこに駆けつけてくる!


闘士セブン「H(ホーク)・W(ウェポン)1号!! アームドアップ!!!」


 ホーク・ウェポン1号が3機に分離して、セブンの背中の鎧と剣と盾になる!
 ホークウェポンでパワーアップした「フルアーマー闘士ウルトラセブン」をリーダーに、一致団結したウルトラ戦士・怪獣・地球人連合軍 VS 異次元人&超獣軍団 との全面戦争がはじまった!
 キングジョー・ガメロット・クレージーゴン・ビルガモといったロボット怪獣たちもウルトラ戦士たちに加勢する!


 そして、この「ヤプール編」の後半から、初代ウルトラマンが主人公ではなく、ヤプールとの因縁が深いウルトラマンエースでもなく(笑)、ウルトラマンタロウが新たな主人公に昇格するのだ!


 大戦のさなかなのだが、ヤプールの首を討ち取って戦争を終結させるために、メフィラス大魔王は闘士タロウを連れて修行の旅に出る。
――本作の原典(爆)である『ドラゴンボール』で、ナメック星人・ピッコロ大魔王が、一度死んでしまった主人公・孫悟空(そん・ごくう)への贖罪か、その息子である孫悟飯(そん・ごはん)を連れて、修行の旅に出るのと同じパターン!・笑――


 惑星・TM-27でヤプール軍に打ち勝ったふたりは、出来損ないの大鳩超獣ブラックピジョンの案内で、ヤプールの本拠地であるメビウス星へと向かった。


キャプション「メビウス星……… それは マイナス宇宙という この宇宙の空間のゆがみに存在する惑星である。特定の宇宙座標から超光速で突入して はじめて到達できる星なのだ……!」


 ナンと! メビウス星は『A』第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)に登場してウルトラ兄弟が十字架にかかった、そして同作の防衛組織・TACも超光速ミサイルNo.7で破壊しようとした「ゴルゴダ星」と同じマイナス宇宙にあるというのだ!
 原典ではTACの兵器開発研究員・梶(かじ)隊員が「マイナス宇宙」を「裏宇宙」とも云っていたので、「空間のゆがみ」ではなく「宇宙全体自体が二つ折りの布団(ふとん)のように湾曲しており、その布団を折ったウラ側にあたる部分がマイナス宇宙」であると捉えている筆者の私的見解とは異なるのだが(笑)。


 そして、メビウス星の内部はテープがネジれてオモテとウラが通じている「メビウスの輪」が大量にあるような「無限回廊」ともなっている。これも『A』第23話『逆転! ゾフィ只今参上』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061012/p1)に登場した、梶隊員が発明した「メビウスの輪」の原理と梶自身の「脳波」(!)などで「空間」自体を湾曲させて、我らが「3次元世界」のウラ側にある「異次元世界」――梶隊員が装着したヘッドギアから伸びるいくつかの電線経由の「脳波」も駆使するということは、半ばは「精神世界」でもある!?――へと局所的につなげるという、実は『A』には多数ある「SF」色豊かなアイテムのひとつである「異次元転移装置」(仮称・笑)へのオマージュでもあるのだろう!


 そのメビウス星の番人であった、『A』第25話『ピラミットはスフィンクスの巣だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061021/p1)にも登場した古代超獣スフィンクス(!)から、ヤプールに会うためには扉を開ける「3つの鍵」が必要だと告げられ、ブラックピジョンがその事実を伝えるためにウルトラの星へと向かう!


 激戦の末、全宇宙にいるヤプールの幹部超獣たち、殺し屋超獣バラバ・変身怪人アンチラ星人・天女超獣アプラサールから、「朱(あか)の鍵」・「蒼(あお)の鍵」・「翠(みどり)の鍵」」を奪い取った闘士ゼットン・フルアーマー闘士セブン・闘士ウルトラマンエースエースキラーR(リベンジャー)!
――ロボットであるエースキラーは頭部は残っていたのでボディーだけを新造して、ついでに名前も変えたのだ・笑――


 彼らが3つの鍵を携えて集合してくることを待っていたメフィラス大魔王・闘士ウルトラマンタロウともども、ヤプールが鎮座する“輝きの場”へと赴く!


 だが、その道中には超獣たちの怨霊がただよっていた。そして、その怨霊たちが結集していき…… 最強超獣ジャンボキングが現れた! しかも、ジャンボキングの主導権を握っていたのは、先に滅ぼした怪僧マザロンであったのだ!
――ジャンボキングは『A』第52話(最終回)『明日(あす)のエースは君だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)に登場した人間ふたりが獅子舞いのように着ぐるみに入る四つ足型の怪獣で、超獣たちの怨霊や空気中にただよう超獣の残骸分子などが集合した合体超獣であり、原典でもマザロン人がパーツの一部を占めていた存在である!――


 メフィラス大魔王は闘士セブンたちにジャンボキングを任せて、タロウとともに“輝きの場”へと急行する!




 月刊漫画誌における1年半もの長期連載となって、個人的にも内容的に最も充実していると思える「ヤプール編」である。
 この異次元人ヤプールとは、もちろん往年の『ウルトラマンA』シリーズ前半のレギュラー敵にして、その次作『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)でも前後編で復活して、はるか後年の『ウルトラマンメビウス』(06年)でも復活を果たし、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年)ではラスボスをも演じた存在である。


 ウルトラシリーズでは珍しい組織悪、通常回のゲスト怪獣や宇宙人を上回るシリーズを通じたラスボス的な悪役といったら、この異次元人ヤプールを想起するだろう。


 先に掲げた『フィギュア王』のインタビュー記事によると、原作者の瑳川竜のペンネームの由来は、長年のウルトラシリーズのマニアであればすぐにピンと来たと思うが、『ウルトラマンA』に登場する防衛組織・TAC(タック)の竜五郎(りゅう・ごろう)隊長を演じた瑳川哲朗(さがわ・てつろう)の名字と役名の名字をくっつけたものなのである。


 1964年生まれで8歳で『A』を視聴している瑳川竜は、それと同時に本邦初のマニア向け書籍である『ファンタスティックコレクションNo.2 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマン』(78年1月25日発行)や第2期ウルトラシリーズを否定的に論評した同『No.10 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマンPART2』(78年12月1日発行)の論述の直撃を受けた世代でもあるだろう。
 よって、当時の子供たちはともかく小学校高学年以上のマニア予備軍やすでにマニアであった中高生以上となっていた特撮マニアたちのほとんどと同様、『A』をはじめとする第2期ウルトラシリーズに対しては、子供時代の感慨とは真逆に、氏もおそらくは全否定の立場に洗脳されてしまっていたであろうことは容易に推測されうることではある……(多分・汗)


――『メビウス』の時期になると、立候補してエース客演編や異次元人ヤプール・ネタに臨んでいた脚本家・長谷川圭一なども、メインライターを務めた『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)放映開始当初の特撮雑誌『宇宙船』でのインタビューに答えて、『セブン』が一番好きであり、「第2期ウルトラも子供が観たら面白いのでしょうが」などと、婉曲的に第2期ウルトラシリーズのことを否定していたのだ・爆――


 しかし、当時の先進的な特撮マニアたちは、早くも80年代中盤から、家庭用ビデオデッキの急速な普及なども手伝って、当時はまだひんぱんにあった地上波での再放送などでの第2期ウルトラシリーズの再鑑賞などを通じて、その作品内容が第1期ウルトラシリーズと比しても決して卑下されるべきものではない。どころか、部分的には優れている点もあることに気付いて、同時多発的に草の根で再評価を進めてはじめていたのであった……
 本作『超闘士激伝』を拝読するにつけ、第2期ウルトラシリーズにおける小ネタの数々のみならず、特撮評論同人誌ではすでに研究・発掘が進んでいたのだが、商業誌レベルでは話題にすらされてもこなかった(汗)、第2期ウルトラの知られざる名ドラマ編や名テーマ編にも、瑳川竜氏は非常にくわしいと思われる。独自のご見識もお持ちとおぼしき瑳川竜氏もまた、独力で80年代のうちにはもう第2期ウルトラシリーズを再評価してみせる境地に早々に辿り着いていたのだろう。


 本作『激伝』においても、第1期ウルトラシリーズである初代『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』だけを持ち上げるようなことはしていない。
 かといって、その逆張りとして、第2期ウルトラシリーズ作品にして自身のペンネームの由来ともなった『ウルトラマンA』を特別に偏重するような、私情まるだしの不公平なことなども一切していない。
 どころか、第3期ウルトラシリーズであるテレビアニメ『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)の主人公ヒーロー・ウルトラマンジョーニアスまでをも登場させる!
 自身が成人して以降に誕生したウルトラ戦士たちであるから、子供時代に遭遇したウルトラマンたちと比すれば必然的に思い入れは薄いだろう、1990年代のウルトラマングレートウルトラマンパワードウルトラマンネオスウルトラセブン21(ツーワン)にまで、単なる個人の好悪や思い入れのごときでの手抜きを一切感じさせない!
 人間だから個人的な好悪はもちろんあるだろうが、私情には決して走らず、それを前面に押し出すようなことも決してしない、氏の実に公平・公正な人柄も偲ばれようというものだ!


 とはいえ、ヤプール編であることから『A』ネタは随所に盛り込まれてはいる。
 「第2回銀河最強武闘会」の主催者であるループ星人ヤンドは、「ドン(首領)・ヤプール」を逆さ読みにした名称だった(笑)。


 そのループ星人ヤンドが、武闘会の会場で自身の側近として連れていたのは、


・『A』第10話『決戦! エース対郷秀樹』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060709/p1)でヤプール配下の宇宙人として登場した変身怪人アンチラ星人!
・『A』第48話『ベロクロンの復讐』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070402/p1)に登場した「Q歯科医院」の女医に化けていた女ヤプール


 であり、これまた知性を持たない超獣ではなく、知性を持ったヤプール配下の宇宙人やヤプールの同族キャラを配しており、配下として登場させるキャラクターとしては実に納得ができる人選でもある!


 しかも、後者はエースの口を強引に開けて、「あ~~~ら!! こんなところに虫歯がっ!!」などという、原典作品へのオマージュでもあるギャグ描写のオマケつき!(笑)


 『A』第24話『見よ! 真夜中の大変身』に登場するマグマ超人マザロン人が、本作『激伝』では「怪僧」として描かれているのは、その原典の前編にあたる『A』第23話『逆転! ゾフィ只今参上』(このエピソードも大傑作!)にも登場した、通称・ヤプール老人の仮の姿が「怪僧」であったからだというのは、先にもふれた通りである。


 闘士ウルトラマンのスペシウム超光波に敗れた際には、


マザロン「……こりゃあ すごいぜ…… ホンモノだぁ……!! 気合いをいれないと殺されちゃうなぁ!! がんばらなくっちゃ! がんばらなくっちゃ!!」


 というセリフを吐いている。これもまた、その原典の『A』第24話でマザロン人が吐いていた「がんばらなくっちゃ、がんばらなくっちゃ!(喜悦)」の引用で、なおかつこのセリフは1972年放映当時の流行語でもあるのだ――71年放映の中外製薬「新グロモント」のCMや、幼児向け大人気番組『ママとあそぼう! ピンポンパン』(66~82年)のエンディング歌曲「ピンポンパン体操」の歌詞などで多用されていたフレーズ・笑――。


 そして、やはり埋ずもれてしまっている大名作である『A』第18話『鳩を返せ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060907/p1)に登場した大鳩超獣ブラックピジョンは、『激伝』でも物わかりの悪い失敗作の超獣として描かれている。


ヤプールコマンド(戦闘員)「光線を吐けっ!! 光線を吐くんだあっ!!!」


 と命令されたブラックピジョンは、惑星・TM-27の生物に対してではなくヤプールコマンド部隊に、しかも光線ではなく口から火炎を吐いてしまう(笑)。


 これだけでも一応のギャグとして機能しているのだが、実は『A』第18話ではヤプールから同様に、


「光線を吐くんだあっ!!」


 と命令されたブラックピジョンが、口から火炎を吐いてしまって、それまでイイ感じでテンション高く鑑賞ができていたのに、「アレ?」とズッコケてしまうような描写があったのだ(笑)。


 シナリオを無視した特撮現場でのアドリブ演出を、本編監督なりアフレコ現場へフィードバックするような横の連携が、あの時代はラフな体制ゆえにできていなかったためだろう(爆)。


 大鳩超獣に改造される前の鳩の飼い主・三郎少年が吹いている鳩笛に反応してしまい、時折りヤプールの命令を聞かなくなるという原典での設定にも則して、『激伝』でも出来損いの超獣として描かれており、それを知っていれば二重の意味で笑えるギャグなのである。


 赤星政尚先生が『激伝』を評していわく、“わかる奴だけ大喜び”的なツボは、当の赤星政尚自身がメインライターを務めた昭和ウルトラの25年ぶりの正統続編として描かれた『ウルトラマンメビウス』でも、一部のマニアたちからそれを理由とする批判を受けていたように、「それを知らなきゃ楽しめない!」という作品の間口が狭くなる危険性もあるので、やりようによってはたしかに手放しでは絶賛できるものではない。


 しかし、その元ネタがメインターゲットである90年代や00年代の子供たちに理解ができなかったとしても、作品の本スジのストーリーの理解に支障が生じない、独り善がりなものでなければ、そのようなネタの挿入もまったく問題はないだろう!


 それで云うならば、メフィラス大魔王の配下である鋼魔四天王は、メフィラス星人の初登場回である初代『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』で、バルタン星人3代目・ザラブ星人2代目・ケムール人2代目を配下に従えていた描写の踏襲として、


・闘士バルタン星人
・闘士ザラブ星人
・闘士ケムール人


 を登場させている。しかし、それだけではなく、


・闘士ダダ


 まで連れてきているのだ! このダダは、初代『ウルトラマン』放映当時に怪奇漫画家としてすでに名をあげていた楳図かずおが『週刊少年マガジン』(講談社)に連載していた同作のコミカライズ「メフィラス星人の巻」で、テレビ本編に登場していた3大宇宙人に加えて、漫画独自に三面怪人ダダまで配下としていたことに対するオマージュでもあるのだ(笑)。
 同コミカライズは70年代末期の第3次怪獣ブームに便乗して78年に再版もされたことから、当時はビニールカバーがかかっていなかった漫画の単行本は立ち読みしほうだいでもあったから、第3期ウルトラブーム世代の子供たちにもけっこう知られていた事実である。以降も何度も再版されてきたことから、年長マニアであれば即座に鋼魔四天王にダダも含めていた意味までわかってニヤリとしたことだろう。


 闘士エースとエースキラーRがその両腕をL字型と鏡文字の逆L字型に構えて、伸ばした上腕を接したかたちで放った「W(ダブル)メタリウム光線」もそうである。
 これはエースキラーがウルトラ4兄弟の能力のみならず、原典ではエースキラーが4兄弟の光線技を使って爆砕してしまった、ウルトラマンエースの能力を擬似的にコピーしたエースロボットの能力をも併せ持つことで、今回のエースキラーはウルトラ4兄弟ならぬ5兄弟の能力を持っていることから、エースの必殺技であるメタリウム光線も放てるのだ! ということを、クドクドと説明しなくても瞬時に年長マニアたちに理解させているのだ。そして、そのメタリウム光線をエースとエースキラーが当時に合体光線として放ってみせる快感!
 内山まもる大先生が小学館の学習雑誌『小学三年生』74年9月号の『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)のコミカライズの一編『ウルトラキラーゴルゴ』の回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210124/p1)において、この漫画オリジナルの展開である直前作のヒーロー・ウルトラマンタロウとの客演編を描いている。ここではレオとタロウがその両腕を接しあって「ダブル・ストリウム光線」を放つという燃える描写がある。年長マニアであれば「Wメタリウム光線」には、この「Wストリウム光線」へのオマージュまで含まれていることは一目瞭然でもあるだろう!


 そして、メフィラス大魔王・フルアーマー闘士セブン・闘士エース・闘士ゼットンたちの最後のエネルギーを充填した超闘士タロウが、ヤプールの故郷である「異次元世界」こと「ヤプール次元」と、「3次元世界」であるこの「宇宙」との狭間にある「門」でもある「テリブル・ゲート」に放つことで、ふたつの宇宙を同時に救ってみせる奇跡の光線がまた、あのコスモミラクル光線である!!
 この光線技は、映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹富士)で、ウルトラ5兄弟と合体して「超(スーパー)ウルトラマン」となったタロウの超必殺技なのだ! 84年当時としてもやや安直な名前の光線ではあり、それまでの光線の名称であったスペシウムやエメリウムといった元素チックなネーミング・ルールからは外れている違和感も少々あったのは事実だ(笑)。しかし、「宇宙の奇跡」を起こしてみせる光線としては、そのネーミングが幸いして、この場面ではこれほどふさわしいものはない!


 要は流用の仕方や、曲解に近いところはあってもアリには思える巧妙にズラしたアレンジが実にすばらしくて、「内輪ウケ」に陥るどころか、むしろ「バトル」や「ドラマ」の盛り上げにおおいに貢献しているくらいなのである!


 子供のころは気にもとめていなかったが、長じてから『激伝』を再読してみたら、膨大な小ネタの元ネタがわかってさらに楽しめた! などという感想などは、2ちゃんねるの『ウルトラマン超闘士激伝』スレッドなどを見ると当然ながらにけっこうある。『激伝』もまたテレビのウルトラシリーズとも同様、一粒で二度オイシい、幼少時とは異なる別の読み方も可能としている、一応の知的(笑)な作品でもあったのだ。



Q:ウルトラ作品の中で、もっとも好きなキャラクターは何ですか?
A:ゾフィーが好きでした。M87光線、あれだけ覚えているんです。マンガで読んで強そうだったんですね。

円谷プロダクション会報『TFC.15』(09年9月号)『ウルトラマンメビウス外伝 ゴーストリバース』(バンダイビジュアル・09年11月25日&12月22日)監督・横山誠インタビュー)



 オリジナリビデオ作品『ウルトラマンメビウス外伝 ゴーストリバース』(09年)は、2009年度の児童誌『てれびくん』や『テレビマガジン』などでの展開とも共通した、製作タイミング的には後付けなのだが、09年末に公開される映画『ウルトラ銀河伝説』の前日談・つなぎとしての意味も兼ねた、その映画同様にグリーンバックで撮影した背景を、高精細なCG映像による宇宙や惑星の地面に置き換えたアクション主体の仮面劇の佳作であった。
――アナログ特撮ではよくあった、背景とキャラクターの境目に、手作業でマスクを切ったためのズレのようなノイズがチラチラと見えていたような気もしたけど、作品自体は面白かったので見逃そう!?・笑――


 『ウルトラ銀河伝説』の監督を務めた坂本浩一にスカウトされて、坂本同様にアメリカの『パワーレンジャー』シリーズ(93年~・)のスタントマン・アクション監督・監督を務めてきた1967年生まれの横山氏の世代だと、ここで云っている「マンガ」とはもちろん90年代の『超闘士激伝』ではなく、ゾフィーが主人公であったりM87光線を披露していた内山まもるの70年代の大人気漫画『ザ・ウルトラマン』シリーズに相違はない。
 「ウルトラへの愛が足りない僕」とインタビューで自称する氏でさえ、M87光線が強く印象に残っているくらいなのだから、子供向け漫画だってあなどれないのである。実作品の映像インパクト以上に……


 実際に『激伝』を『コミックボンボン』で小学生時代に読んでいた世代は、すぐあとの90年代後半の『ウルトラマンティガ』にはじまる平成ウルトラ3部作を幼児期に鑑賞して育った世代以上に、当然ながら昭和のウルトラ兄弟やウルトラの星の歴史やその組織、昭和のウルトラ怪獣たちや、『激伝』のラスボスともなったウルトラ一族との3万年にもわたる宿敵・エンペラ星人のことまでくわしいので、その影響は実に大なるものがあるのだ。



「連載が始まる前に、瑳川先生から「マンやセブン達には絶対にギャグをさせないで下さい」と釘をさされていた。当時しょーもないギャグものしか描いた事がなかったので、懸念なさったのだ。でも、「A(エース)はギャグをしてもいいですよ」と、お許しをいただいたので自由に描かせてもらった。もっとも自由すぎて、今見るとずい分暴走しているのだが…」

(復刻版『ウルトラマン超闘士激伝』第3巻カバー内表紙「激伝ひみつメモ」栗原仁)



「あんにゃろう! ブン殴ってやる!!」
「なんでい! テンペラー星人の一匹や二匹!」(笑)


 名声優・納谷悟朗(なや・ごろう)の声でしゃべる神秘的な宇宙人としてのウルトラマンエースではなく、ウルトラ5兄弟の5番目としてのエースは、地球でエースと合体したチンピラ(笑)もとい北斗星児(ほくと・せいじ)隊員の性格と近しい、ウルトラ一族としては未熟で熱血な「弟キャラ」としての印象を我々は強く持っている。
 『ウルトラマンタロウ』第34話『ウルトラ6兄弟最後の日!』における、テンペラー星人(の影武者)を倒して増長したタロウこと東光太郎(ひがし・こうたろう)に対して、チンピラ北斗(爆)ことエースがその性格を如実に表現している先に挙げた名セリフ(笑)が、それをウラ打ちしてくれている。
 まぁ北斗隊員みたいな、未熟で失敗ばかりしても能動的にストーリーを駆動していくようなキャラクターは筆者も大好きだし、以降のアニメや特撮作品では北斗のような性格タイプが主流となっていくのだが……


 1960年代に放映された初代マンやセブンは、それまでのヒーローもの全般にいえることだが、ある程度の完成された人格である禁欲的な「大人」のキャラである。
 70年代に入ると、世の中が豊かとなり、学校を卒業すると「子供」がすぐに「大人」の社会に組み込まれてしまっていたそれまでの時代とは異なってきて、「子供」と「大人」の中間である「若者」のままで試行錯誤ができるモラトリアム期間が延長されてくることで、「若者」という在り方が社会一般でもクローズアップされるようになる。
 こういった「若者」がジャンル作品で急速に勃興しだしたのが『A』が放映されていた1972年であった。同時多発的にチンピラ北斗(笑)をはじめとして、永井豪原作のテレビアニメ『デビルマン』の高校生主人公・不動明(ふどう・あきら)や人間搭乗型の巨大ロボットアニメの祖『マジンガーZ(ゼット)』の高校生主人公・兜甲児(かぶと・こうじ)、名作刑事ドラマ『太陽にほえろ!』でショーケンこと荻原健一(はぎはら・けんいち)が演じていた新人刑事・マカロニといった、少々不良チックで未熟な発展途上の「若者」像が遂にドラマの主人公としても成立するようになった大地殻変動があったのだ。


 よって、マジメな初代マン(ハヤタ隊員)やセブン(モロボシ・ダン隊員)がギャグを演じることには違和感があるだろう。ウルトラ兄弟の4番目である「帰ってきたウルトラマン」ことウルトラマンジャック(郷秀樹(ごう・ひでき)隊員)は発展途上の若者像ではあったけど、そこまではまだ崩れてはいない二枚目である。飛んでウルトラ兄弟の6番目・ウルトラマンタロウ(東光太郎)は未熟な若者でもお上品なお坊ちゃまキャラだから、あまりに崩して描いてしまうとこれまた少々違和感が生じてしまう。
 そうなると、本作におけるコミックリリーフを担当する役回りは、チンピラ北斗もといエースこそが適任であることは、満場の一致となる実に的確で納得ができる采配だっただろう(笑)。


 エースは『激伝』では、鳥のクチバシのようなかたちで口を大きく開いて驚いてみせたり(笑)、宿敵であったハズの異次元超人エースキラーとの掛け合い漫才を楽しんでいるかのようなキャラクターとなって、「漫画」本来の在り方でもある楽しいギャグ描写を一手に引き受けており、場面をなごませてもくれている。


 しかし一方で、ヤプール編の『最強闘士集結!!』では、「メビウスの3つの鍵」をめぐっての闘士エースの以下のようなエピソードも、『激伝』ではすっかり相棒と化してしまったエースキラーRによって、回想のかたちで語られているのである。
――本来は回想ではなく『激伝』本編でストーリーをつむぎたかったのだろうが、子供向けバトル漫画としてのバランスを考えれば、悲劇臭のするエピソードは軽く済ませるたかちで処置するのも仕方がないだろう――


エースキラー
「……オレたちのようなロボットでもないかぎりは…… だれでもみんな異性を愛したりするんだろう……?
 エースにとって…… アプラサールとはそういう女性だった……
 そして、オレたち全員を守るために死んだ……!!
 ……彼女は最初から超獣ではなかった。アプラサという少女がその能力をヤプールにねらわれ、改造されてしまった姿だったんだ……
 彼女はヒール星の避難民全員とそれを守っているオレやG(グレート) エースらを全滅させる使命をもっていた……
 だがエースと出会って…… 最後にはヤプール軍をうらぎった……!!」


アプラサ(回想)「……さよならエース…… この鍵で…… 宇宙に…… 平和を……」


――このアプラサの元ネタは、もちろん『A』第21話『天女の幻を見た!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061009/p1)に登場した乙女座の精霊・天女アプラサで、異次元人ヤプールによる異次元エネルギーで天女超獣アプラサールと化したゲストキャラクターの引用である。ただし、テレビ本編でも最後は爆発した乙女座を離れて白鳥座へと旅立っていったので、その彼女の成れの果てがやはり結局は死んでしまった……という解釈はやや問題があるかもしれないのだが、ギリギリでアリかもしれない――


 奇しくも、同じく講談社『月刊マガジンZ(ゼット)』連載の漫画で、こちらはウルトラ兄弟たちの前日談を描いている『ウルトラマン STORY 0(ストーリー・ゼロ)』(05年~)でも、ウルトラマンエースの主役回では淡い恋愛ネタのエピソードが描かれていた。テレビ本編でもシリーズ前半では男女合体変身だったエースには、変身前の北斗隊員と南夕子隊員にやや一方通行ではあっても(笑)そのような淡い恋情のニュアンスがあったので、そうした男女間での恋愛描写が比較的に似合うというイメージもあるのだろう。
 「ギャグ」と「恋愛」とは「水」と「油」ではあるのだが、上手くやれば「ギャップ萌え」や「悲劇萌え」というものに転化することもできる。やや軽率そうで異性に対して軽口なども叩きそうだから、そこから男女交際もはじまりそうなイメージもどこかで持っていた『激伝』におけるエースだからこそ、異性との浮いた話が唐突に浮上しきてもアリエそうなエピソードに思えてくるのだろう。



 そして、あのウルトラの父も、『A』第38話『復活! ウルトラの父』を元ネタにして、サンタクロースの扮装をしたミスターサンタ(笑)として「第2回銀河最強武闘会」に出場してしまっている!


ノタニー博士「あんなバカ丸出しの道化者(どうけもの)が これ以上マグレで勝ちぬけるわけがないだろ!?」


 ウルトラシリーズの元祖であり変身ヒーローが登場しない『ウルトラQ』(66年)に登場した、イレギュラー登場人物であった一の谷(いちのたに)博士もどき(笑)である、武闘会の実況解説担当であるノタニー博士がこのように解説していたのには笑ってしまう。
 しかし『A』第38話では、ウルトラの父が変身していた地球人の姿である、名優・玉川伊佐男が演じていたサンタクロースもけっこうお茶目だったから、ウルトラの父の素の性格も厳めしいだけではなく、愛嬌・包容力・茶目っ気もあるキャラクターであっても不思議じゃない!?



 ウルトラマンメビウスの教官を務めていたという新設定以降、最近では頼もしいキャラとして定着している感のあるウルトラマンタロウだが、それ以前は『ウルトラマンタロウ』放映当時の設定をひきずり、「末っ子の甘えん坊」というイメージが根強かったものだ。
 90年代に描かれた『激伝』でもそれは当然ながら踏襲されており、「心優しい戦士」であることが強調されている。ヤプール編の終盤である『宇宙最大の危機』には、ヤプールとの以下のような会話がある。


ハイパーヤプール「……助けあい いたわりあう精神…… そんなキレイごとが!! きさまらの宇宙では尊重されたり賛美されたりしているのかね……? フフフッ……!!」
闘士タロウ「あっ…… あたりまえだっ!!! 仲間どうし助けあったり 傷ついたものや弱いものをいたわったりするのはあたりまえのことだっ!!!」


 そして『闘士ウルトラマン復活!?』では、力尽きた闘士タロウを勇気づけるために、霊体だけの存在となっている闘士ウルトラマンが、ウルトラマンキングの力を借りて、霊界から自身のビジョンをタロウの心に送っている。


闘士マン「……タロウよ もし私が…… 伝説の超闘士と呼ばれるに値する男だったとしたら…… 私の武器はたった一つしかない!! それは黄金に輝くオーラでも底なしのパワーでもない!! みんなの宇宙をどんなことがあっても守りぬきたいという使命感……! ウルトラ魂だっ!!!」


 09年11月15日にTBS系で放送された『オレたち! クイズMAN(マン)』では、格闘家の高田延彦(たかだ・のぶひこ)が、「ウルトラマンから学ぶ男の生き様(ざま)クイズ」というのを出題していた。
 そして、『タロウ』第43話『怪獣を塩漬にしろ!』に登場した食いしん坊怪獣モットクレロンや、第48話『日本の童謡から 怪獣ひなまつり』に登場した酔っ払い怪獣ベロンを、タロウが倒さずに宇宙へ返した件を「男の優しさ」として紹介していた。
 この際に、解答者のマリエや里田まい、観客の女性たちからは一斉に「タロウやさし~い!」という歓喜の声があがっていたものだ。


――アッ、放送作家がさも高田延彦が提示した例題のように執筆していて、マリエや里田まいや観客の女性たちのリアクションも含めて、放送台本にも書かれていた仕込みの演出でしたかネ?・笑――


 まぁこの論法で行くと、怪獣を倒さずに保護に務めていた『ウルトラマンコスモス』(01年)こそがウルトラシリーズ最高傑作となってしまって、憎っくき悪をやっつけるアクションのカタルシスを主眼とする変身ヒーローものの本質を否定することにもなってしまうので、それもまた痛し痒しではある。
 しかし、戦闘一本槍だけでもジェノサイド(大量虐殺)の思想に通じていくところはたしかにあるので、時にはこのような「異文化との共生」を――厳密には共存もできないので「棲み分け」としての「共生」なのだけど・汗――、この作品(やその作り手たち)は「単なる殺し合いの戦い」ばかりを描いているばかりではない! とするエクスキューズのための変化球を提示するのも、広い意味での「ウルトラ魂」ではあるのだろう――ただし、勧善懲悪の娯楽活劇作品としては本道・王道ではないとも思うけど――。


 よって、ヤプール編の最終回である『ヤプール大戦終結!!』においては、原典の『タロウ』でも見られたような「男の優しさ」は、以下のような描写として昇華されている。


闘士タロウ「……みんなの宇宙を守りぬきたいというウルトラ魂こそが超闘士の最大の武器だって 闘士マンはいっていた…… その魂でぼくらの宇宙は救えた……! だから あと少し…… ほんの少しだけ残っている ぼくの魂の炎をっ…… 違う宇宙の人にも…… わけてあげたいんだ……!!」


 そして闘士タロウは、ヤプールのみならず、崩壊の危機にあった「違う宇宙」である「ヤプールの宇宙」=「ヤプール次元」の世界をも救ったのである!!


闘士セブン「奇妙な大団円だったな……」


 その後、異次元人が襲撃してくることは二度となかったという……



 そして3年後、「第3回銀河最強武闘会」に参加するために、宇宙中を修行の旅に回っていたタロウが帰ってくる場面で「ヤプール編」は幕となるのであった。



――ここでタロウが乗船していた、その姿は地球の大型客船のデフォルメである船舶の船長さんが、『ウルトラマンレオ』第28話『日本名作民話シリーズ! 帰ってきたひげ船長! 浦島太郎より』に登場した「ひげ船長」ではなく(笑)、同話に登場した海棲人パラダイ星人ふたりが合体して誕生する星獣キングパラダイ! しかも彼が「ひげ船長」のようにパイプ煙草をくゆらせている二重のダブらせ描写は、それこそ“わかる奴だけ大喜び!”だったりする!


「……船長~~っ~!! ありがとうございましーーーー!!」


 寝袋かサンドバックみたいなバッグを担いでいるタロウによるお礼のセリフが入ってくる一連のシーンも、『タロウ』第1話『ウルトラの母は太陽のように』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)冒頭における、主人公青年・東光太郎が、乗船させてもらったタンカー・日々丸(にちにちまる)の白鳥(しらとり)船長に放ったセリフに対するオマージュである・笑――



 『ウルトラセブン』(67年)~『ウルトラマンA』(72年)の脚本を執筆した高名な脚本家・市川森一(いちかわ・しんいち)先生が、オウム真理教地下鉄サリン事件を引き起こした1995年ごろに、


ウルトラマンから何かを学ぼうとするガキなんてロクなもんじゃない」


 などと発言していたことがあった(爆)。


 当時の特撮マニア諸氏は一斉に大反発をしたものであったが、個人的には氏の意図ともまた別に、一理はある発言ではないか? とも思えるのだ。


 今でも大局としてはそうなのだろうが、娯楽活劇作品の本質・エッセンスだともいえる「アクションのカタルシス」や「ヒロイズムの高揚」などといった言説は、世間でも特撮マニア間でもあまり一般化はしていない(汗)。
 仮に子供たちも大人たちもイケメン俳優目当ての女性であっても、実はそのアクション場面にこそ高揚を覚えていたのだとしても、「ウルトラマンから正義を学びました!」とか、あるいはその逆に「正義の絶対性を疑いました!」などといった「道徳的なテーゼ」や「社会派的なテーマ」で、ウルトラシリーズを持ち上げていたり、いつまでも子供向け番組に執着している自分自身を自己正当化しようとしてやっきになっている(笑)。


 たしかにウルトラシリーズには、「道徳的なテーゼ」や「社会派的なテーマ」による秀逸なエピソードもあった。「アンチテーゼ編」やまさに良質な「SF」としか云いようがないエピソードもあった。その存在も否定してはならないだろう。
 しかし、ウルトラシリーズにかぎらず、この手の戦う戦闘ヒーローものの本質や、ジャンルのアイデンティティーとは、ぶっちゃけ「アクションのカタルシス」や「ヒロイズムの高揚」といったものではなかろうか? 我々が後世に伝えなければならない「ウルトラ魂」とは、そのようなものではなかろうか!?


 『週刊少年ジャンプ』に連載されてきた『キン肉マン』や『北斗の拳』や『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢(セイント・セイヤ)』や『幽☆遊☆白書』といった、かつて少年たちをおおいに熱狂させて、現在でも根強いファンがたくさんいる作品群は、それは時にはグッと来る道徳的なセリフやメッセージも込められてはいたのだろう。
 しかし基本的にはそれらはエクスキューズであって、これらの作品もまた「格闘場面」、そして「善悪攻防のカタルシス」を描いていただけではなかったか!? それらを時代の風潮や流行に合わせて、意匠やパッケージだけを変えていたのではなかったか!? そこの肝どころをこそ押さえるべきだとも思うのだ。


 しかし、たしかに「バトル」の描写だけでも、やや単調になってきて飽きてしまうものかもしれない。80年代のスーパー戦隊シリーズメタルヒーローシリーズのように前後編やシリーズのタテ糸もさしてなく、1話完結のルーティンで極度にパターン化された戦闘シーンが延々と毎回毎回続いていくようでは、アクションの高揚感も薄れてしまうだろうし、それでは子供たちが卒業して『週刊少年ジャンプ』に走ってしまうのも仕方がないことだっただろう。
 よって、シリーズを貫くタテ糸なども必要だっただろうし、バリエーションや変化球に満ち満ちたアクション演出も必要だ。そして、「バトル」を繰り広げる登場人物たちである「キャラクター」の性格設定や、その魅惑的でドラマチックな出自設定、そこに起因する「戦う動機」といった「行動原理」もまた実に重要なものではあるのだ。


 その次に重要なことは、これらの「キャラクター」たちを手頃なサイズの一種の「形見」として手許に置いておいて、それらを眺めまわしていたいというような欲望を喚起することである(笑)。それはもちろん連載漫画をまとめた単行本であったり、人形や玩具やゲームであったりもする。ついでに云うなら、手足が稼働したり鎧や武器が着脱可能なプレイバリューの高いものの方が望ましい(爆)。


 良くも悪くも関連グッズの収集や、ジャンク知識の収集。それこそが商業的にも短期的には重要だ。そして、子供たちや特撮マニアたちを中長期にわたって空想の世界で遊ばせて、作品自体や作品の広大な「世界観」や長大な「歴史観」それ自体に執着させていくこともまた、実に重要なポイントでもあると思うのだ!


 70年代末期の第3次怪獣ブームの時代に、児童漫画誌コロコロコミック』に掲載されていたウルトラ漫画をむさぼり読んでいた小学生たちは、駄菓子屋に足繁く通って、店先に置かれていた20円のガシャポン自販機――当時はガチャガチャと呼称――でポピー(現・バンダイ)のウルトラ怪獣消しゴムを、店内では山勝『ウルトラマン ペーパーコレクション』をはじめとするカード・ブロマイドの類いを購入してダブりカードは友人たちと交換することで、クラス中の男児がコレクションに躍起になっていたものだ。


 このような現象もまた、流行の規模は70年代と比すればはるかに小さかっただろうが(汗)、『超闘士激伝』連載時にはある程度までは再現がされていたようだ。
 90年代の連載当時に発行された『ボンボンコミックス』レーベルの単行本の巻末には、『激熱!! 超闘士道場 出張版』と称して、様々な関連グッズを紹介したページがあった。
 カードからモンスターを召喚しあってバトルする『遊☆戯☆王』(96年・98年にテレビアニメ化)よりも前に、この時点ですでに単に登場キャラクターの絵柄のみのカードではなく、スーパーバトルカードダスとして、パワーレベル・バトルゲージ・軍団マークといったものが付与されて、対戦ゲームとして遊べる機能が存在するカードが発売されていたのである!
 そして、任天堂ゲームボーイ専用の『激伝』のソフトも94年夏に発売されていた。さらには、かの『HGシリーズ』よりも以前の93年よりバンダイ・ベンダー事業部から発売が開始されていた『ガシャポン超闘士激伝』はパート14(プラス『ガシャポン超闘士鎧伝(ちょうとうし・がいでん)』2シリーズ)を数えるほどの人気シリーズとなっていた。
 100円ガシャポンの中では、『騎士ガンダム』や『ドラゴンボール』に次ぐ売上を誇っていたようであり、瞬間最大風速的にはトップをとった月もあったという!



 思えば07年の年末から放映されたテレビシリーズ『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』も、07年5月からバンダイが稼働させたアーケード向けカードゲーム機『大怪獣バトル ウルトラモンスターズ』、さらにはそれで遊べる「応援カード」が付属したバンダイウルトラ怪獣シリーズとの連動企画であったからこそ、視聴が限られてしまうBS放送・BS11(ビーエス・イレブン)での放送であったのにもかかわらず、なんとか人気や知名度は相応に確保ができていたのだろう。


 『ウルトラマンメビウス』の放映が終了した翌年度以降も、


・07年にはバンダイから発売されて、ゲームのプレイヤーが『ウルトラマンメビウス』の防衛組織・GUYS(ガイズ)に入隊して、怪獣撃滅に参加できる仕様であった玩具『DX(デラックス)ウルトラコクピット』(別売専用ソフトも都合3巻発売)
・08年にも小学館の『てれびくん』と講談社の『テレビマガジン』でのカラーグラビア記事連載や連載漫画(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210117/p1)、新作オリジナルビデオも発売された『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス』


 などなど、様々な媒体での『メビウス』の続編的な展開が、現時点での最新テレビシリーズである『ウルトラマンメビウス』を今日まで延命させて、2010年時点でのウルトラマンといえばメビウスを指すくらいの人気となっている。
 しかし、そうした商業展開やメディアミックスの手法の種(たね)は、『超闘士激伝』が連載されていた90年代前半の時点ですでに蒔(ま)かれてはいたのである。


第3部『ゴーデス編』

ウルトラマン超闘士激伝 3

ウルトラマン超闘士激伝 3

ウルトラマン超闘士激伝 3

  • 作者:瑳川 竜
  • 発売日: 2010/04/24
  • メディア: コミック

*95年11月号『謎の戦士ウルトラマンパワード
*95年12月号『帰ってきた闘士(おとこ)』
*96年1月号『仮面騎士の正体』
*96年2月号『宇宙の悪魔ゴーデス』
*96年3月号『友情の証』
*96年4月号『ゴーデス五人衆』
*96年5月号『邪悪な波動』
*96年6月号『魔神(ましん)復活!!』
*96年7月号『パワードの秘策』
*96年8月号『究極魔神シーダ誕生!!』
*96年9月号『ウルトラの星の秘宝』
*96年10月号『銀河の奇跡』


 この「ゴーデス編」における「ゴーデス」とは、1990年に登場した日豪合作オリジナルビデオ作品『ウルトラマンG(グレート)』全13話のシリーズ前半を通じて登場した宿敵存在である。
 キャラクターとしては、1993年に登場した日米合作オリジナルビデオ作品『ウルトラマンパワード』のパワードを新たに登場させて、このパワードとグレートを今度は新たな主人公格として活躍させている。


 「第3回銀河最強武闘会」が開催され、総勢600名によるバトルロイヤルの末、ベスト16が勝ち残る。
 その中には自分の精神を極限まで鍛え上げ、「肉体の強さ」のみならず、「魂の強さ」まで追求している新たな武闘家一派・パワード流派のウルトラマンパワード・パワードレッドキング・パワードバルタン星人のほか、正体不明の仮面騎士、そして意外にもウルトラマンキングの姿があった!


――パワードレッドキングやパワードバルタン星人などは、『ウルトラマンパワード』に登場した初代『ウルトラマン』の人気怪獣たちのリメイクである。ネタ元の怪獣たちと区別するために、劇中ではそう呼ばれないものの「パワード」を冠した怪獣たちが、ここではパワード流派の門下生たちとして登場した! なにかしらの共通項がひとつでもあると、不思議と違和感も生じないどころか、むしろパワードの門下に怪獣たちがいるならば、そうあってしかるべき! といった感も醸せている!・笑――


 武闘会に参加したウルトラマンキングは、メフィラス大魔王と闘士タロウにだけはその正体を明かした。それは3年を経て、新たな肉体を得て復活した闘士ウルトラマンであったのだ!!
 闘士マンはキング自身から今大会に正体を隠して参加している悪魔の存在を教えられて、それを見つけ出して倒すという使命を受けてきたのである!


 キングのにらんだ通り、仮面騎士の正体は宇宙の悪魔・ゴーデスであった! そして原典『ウルトラマンG』での暗躍と同様に、ゴーデス細胞をまき散らして武闘会に参戦した戦士たちから大量のエネルギーを吸い尽くしていく!


 そのとき、ゴーデスが呼び寄せた暗雲を割って、天空から「太陽神」が精錬してキングと闘士マンが設計した黄金色の「新装鉄鋼」(ニューメタルブレスト)! そして、王冠状の「ウルトラクラウン」が届けられた!


 初代マンはそれらを装着すると、頭部にハメたウルトラクラウンの突起が、ウルトラの父ウルトラマンタロウのような両ヅノと化した「超闘士ウルトラマン」に転生した!
 この人工的な両ツノは、父やタロウのウルトラホーンと同じ働きをして、制限時間なく「超闘士」として戦い続けることができるというのだ!


 同じく両ヅノをやや巨大化させて超闘士となったタロウは、超闘士マンとその両掌底から「W(ダブル)オーラ光線」をゴーデスに放った!!
 しかし、その攻撃によって弾き飛ばされたゴーデスのマントの下にはウルトラマングレートの下半身が! ゴーデスはウルトラマングレートの体を乗っ取っていたのだ!


 しかも、ゴーデスはグレートのことを「ゴーデスハンターだった」と発言した! 初代マンがキングからも聞かされていたふたりの「ゴーデスハンター」とは、このグレートとパワードであったのだ!


 ひとまず退散したゴーデスは、


・宇宙怪獣ベムラー
・原始地底人キングボックル
・緑色宇宙人テロリスト星人
・奇怪宇宙人ツルク星人
・マグマ怪獣ゴラ


 彼らに邪生鋼(エビルブレスト)を装着させて、ゴーデス5人衆と化さしめ、宇宙を地獄にするために出陣させる!


 しかし地球人やウルトラ一族も手をこまねいているだけではない。ノタニー博士はゴーデス細胞を無効化できる新合金を発明した!


 防衛組織・UGMの戦闘機・スカイハイヤーとエイティ腹部中央の四芒星の意匠を模した「重装鉄鋼」(ダブルブレスト)を装備したウルトラマンエイティは、闘士エイティとして!
 同じく防衛組織・科学警備隊の大型戦闘機・スーパーマードックとジョーニアスの額や胸中央のカラータイマーの五芒星の意匠をまとったウルトラマンジョーニアスも、闘士ジョーニアスとして参戦!


 U40最強の戦士・ジョーニアスは、M78星雲のウルトラ兄弟の長男にして最強と謳われたゾフィー兄さんの強さと双璧! と語られているのも、よくわかっていらっしゃる。


 闘士エイティのスーパーバックルビームと、闘士ジョーニアスのスーパーロッキングスパーク――オオッ、身長938メートルの超巨大怪獣バゴンを倒した超必殺光線のスーパー版!――の合体光線で、ゴーデス5人衆のひとり・ゴアを倒すのであった!


 戦いが終わって、ガッシリと握手を交わすエイティとジョーニアス! 本来は世界観を異にしている第3期ウルトラシリーズの2大主人公ヒーローによる握手なのであった……(涙)



 邪悪な波動を感じる超能力を持っているピッコロ王子の手助けも受けて、超闘士タロウはゴーデスの本拠地を突きとめる。しかし、逆に捕らえられて、ゴーデスにそのエネルギーを与えられて超巨大怪獣・海魔神コダラーが復活してしまう!
 超闘士マンや闘士ジョーニアス、闘士エイティ、さらにメフィラス大魔王が呼び寄せた鋼魔四天王らが束になってかかっても敵わず、遂には対となる超巨大怪獣・天魔神シラリーまでもが復活してしまった!
 パワードはその心をミガくことで備わった強烈な精神感応波で、コダラーとシラリーを互いに戦わせるように仕向けた!


――コダラーとシラリーもまた『ウルトラマンG』最終回の前後編に登場した、単なる生物ではなく大自然・地球の自浄作用のごとき強敵の印象が強い怪獣であり、『激伝』でもこの大宇宙自体を無に帰す(!)というラスボス級の怪獣として割り振られているのは実にピッタリでもある!――


 ウルトラの星の王女である女ウルトラマンユリアンhttp://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110219/p1)とウルトラ一族の看護組織である銀十字軍の女性ウルトラ族たち(!)も駆けつけて、ウルトラ戦士たちは撤退する……


 超巨大怪獣同士の激闘になす術もなく、ウルトラの星に帰って状況を見守るしかないウルトラ戦士たちだったが、遂にコダラーとシラリーが相討ちとなった!
 ……戦いは終わったかに見えた。しかし、コダラーとシラリーの2大魔神が合体して超巨大怪獣・究極魔神シーダが誕生!


 現役のウルトラ戦士たちばかりでなく、ウルトラの星の最大の秘宝である鍵型の大型アイテム・ウルトラキー(!)を携えてウルトラの父も参戦してくる!


 だが、シーダの衝撃波で吹っ飛ばされるウルトラの父


 代わりに闘士セブンとメフィラス大魔王のふたりで、ウルトラキーの引き金部分を引いて、かつて悪魔の星・デモス一等星を一撃で破壊したという超光線が発射される!!
――悪魔の星・デモス一等星うんぬんというスケールの大きな逸話もまた、『ウルトラマンレオ』第38話『レオ兄弟対ウルトラ兄弟』でも実際に言及されて映像化もされていた、ウルトラシリーズの史実を踏まえたものである!――


 それでも魔神シーダはすみやかに体を再生させていく…… シーダに敗れた初代マンも大地に伏せたままであった。


 しかし、死の床の三途の川で初代マンは、同じく生死の境をさまよっていたタロウ・グレート・パワードから彼らの最後のエネルギーを授与された!


 立ち上がった初代マンの胸の中央にあるカラータイマーの円周部分が、斜め左上と斜め右上、そして真下の下方の三方へと細く鋭く長々と伸びていく!!


 それは20万歳以上の年齢を誇るウルトラマンキングでも実際にははじめて見たという、銀河永遠の生命「デルタスター」のシンボルでもあった!!


初代マン「スペシウム 超光波!!!!」


 突き出した右腕から凄まじい奔流がほとばしる!!!


 大爆発が生じる!! シーダはスペシウム超光波によって遂にトドメを刺されたのであった!




 『ボンボンコミックス』レーベルの単行本では未収録に終わっていた「ゴーデス」編が、ついに復刻を遂げた章である!


 映像作品でのウルトラマンパワードの掌底(しょうてい)・手のひらを見せつけるヘンにモッサリとした空手アクション(汗)、もとい東洋の神秘(爆)を再現したかのような静的な構え方や戦い方をするパワード。
 それを「初代マンにも似ている静かな戦い方」だと関連つけているのも、初代『ウルトラマン』のリメイクであった『ウルトラマンパワード』の弁護の仕方として、それをも『激伝』本編にて巧妙に意味付けしてみせるエクスキューズの仕方は実にうまいと思う(笑)。


 ファンタジックな童話の人形キャラクターのようなピッコロ王子も「タロウの親友」を名乗って登場! このピッコロもまた『ウルトラマンタロウ』第46話『日本の童謡から 白い兎は悪い奴!』に登場した宇宙人キャラクター・ピッコロ本人である。第1期ウルトラシリーズ至上主義者であるシリアス志向な特撮マニアたちが忌み嫌ってきたコミカル編に登場したことから、旧来の特撮マニアたちからはキラわれていただろうが、一見はマイナーな怪獣キャラクターのようでも実に鮮烈な印象を残していたからか、『激伝』での再登場も妙に嬉しい。
 『帰ってきたウルトラマン』出自のなまけ怪獣ヤメタランスやササヒラーも、原典通りにコミカルながらも重要な役どころで登場している。


 現在でもあまりスポットが当てられることが少ないジョーニアスやエイティ・グレートにパワードらが中心となって活躍するあたりもまた、ホンモノの「ウルトラ愛」が感じられて好印象を残す。
 『ウルトラマン80』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)から『ウルトラマンティガ』(96年)の間にテレビシリーズが16年間も製作されないという空白期間だった当時、グレートとパワードはオリジナルビデオシリーズのヒーローだったとはいえ、当時の子供たちにとっては間違いなく最新の現役ウルトラヒーローであったのだ!
 ゴーデス編が95年11月号から連載開始される直前、95年4月から9月にかけての半年間、関東など一部の地域ではTBS系列で『ウルトラマンパワード』(93年)と『ウルトラマンG(グレート)』(90年)が毎週土曜17時30分枠(後年の『メビウス』の放映枠でもある)で連続放映されており、「ゴーデス編」への呼び水としては絶好のものとなったかもしれない。



パワード「……また心が乱れたぞG(グレート)……」
グレート「……悪リィ……」
パワード「ウルトラの星のこと…… まだ悩んでいるのか?」
グレート「……ああ。オレたちはゴーデスハンターとしてキングから特命をあたえられている身だ。だからヤツをさがし続けて倒さなきゃならねえ…… それはわかってるんだ……! だけど…… せっかく父やゾフィーから宇宙警備隊にさそわれても、なんの説明もしないで断りつづけなきゃいけねえなんて……」
パワード「………」
グレート「正直耐えられねえっ!! ……オレだってセブンやエースたちといっしょに戦ってやりてえのに……」
パワード「……しかたのないヤツだ。おまえはうわべとは違い、内面は情にあつい…… そう思うのもムリはないが…… 我々には他人にできない任務がある。宇宙平和のために表舞台で働くか裏舞台で働くか…… 違いはそれだけだろう?」
グレート「………!! おまえはいいよな。さとりきってて。オレから見たら超人だぜ……」
パワード「強さはおまえが上だ。だからこそ私は魂をみがいている……」
グレート「……ありがとうよ…… またオレがまよったら…… たすけてやってくれよ。 な?(ウインク・笑)」


 ゴーデス編の第4話『宇宙の悪魔ゴーデス』で描かれた回想場面である。ナンと! グレートとパワードはふたりともに幼いころからウルトラマンキングに育てられ(!)、キングのもとで修行を積んでゴーデスハンターの特命を与えられていた! という実にオイシい設定となっているのだ!
 70年代の小学館の学習雑誌や『コロコロコミック』でのウルトラ一族のウラ設定の特集記事のようなノリだが、なぜだが実に納得ができて腑に落ちてくるウラ設定である。
 現在ではすっかり冷遇されている感のあるグレートとパワードであるが、せっかく『激伝』ゴーデス編で主役の任を務めたふたりに与えられた「グレートとパワードはキングに育てられた」という最高のウラ設定! 円谷プロの公式設定にもしてほしい!!


オリジナルビデオアニメ『ウルトラマン超闘士激伝』

バンダイビジュアル『ばっちしV』シリーズ・40分・96年9月25日発売・定価3500円)
ウルトラマン超闘士激伝

ウルトラマン超闘士激伝

ウルトラマン超闘士激伝


 本作は「ゴーデス編」と、続く「エンペラ星人編」の間に起きた事件として設定されている。


「地球で銀河連邦生誕イベントが開催。記念試合で対戦する闘士マンとメフィラス! 同じころ、タロウ、エース、ジャックらは彗星爆破の任務に向かったが、一同の前に、彗星の中から出現した超強力怪獣が立ちふさがった!!
 タロウらを倒した怪獣は地球へと進軍。マンとメフィラスの試合会場に突如出現して…!?」

(『ウルトラマン超闘士激伝』第6巻(講談社 96年7月5日発行)『激熱!! 超闘士道場 出張版』「OVA(オリジナルビデオアニメ)『超闘士激伝』製作快調!!」「★ストーリー★」)


 ところで、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』は、公開初日の夕方に放映された『メビウス』第24話『復活のヤプール』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061112/p1)中でのセリフから、映画が先で第24話が後だという時系列になっていた。
 NTT東日本フレッツ・スクエアで『メビウス』放映当時にネット配信された『ウルトラマンメビウス外伝 ヒカリサーガ』も、SAGA1(サーガ・ワン)『アーブの悲劇』では、ウルトラマンヒカリ――この時点では謎の鎧の戦士・ハンターナイトツルギ――が初登場した『メビウス』第5話『逆転のシュート』の前日譚。
 SAGA2『勇者の試練』では、ヒカリが地球を去った第17話『誓いのフォーメーション』直後の後日譚で、その次回である第18話『ウルトラマンの重圧』に登場する宇宙大怪獣ベムスターも登場。
 SAGA3『光の帰環』は、ヒカリが再登場する第35話『群青(ぐんじょう)の光と影』の前日譚として同話に登場するババルウ星人も登場していた。
 バンダイの玩具『DXウルトラコクピット』で描かれた事件も、一応『メビウス』本編のどこかで発生していた正編であるという設定であり、07年7月に発売された第2弾は、リュウ隊員が隊長に昇格して指揮する新生GUYSが活躍する『メビウス』最終3部作の後日譚でもあった。


 そして、すでに本作『激伝』は、「ゴーデス編」と「エンペラ編」の間の出来事として、同様の試みを行っていた。それがこの番外編では決してなく、あくまでも正編のひとつでもあったこのOVAなのである!


 もちろんこういう商業展開にも一長一短はあるだろう。重要キャラの生死を描いてしまったOVAを観ていない読者に対して、OVAの続きである漫画の「エンペラ編」の方では説明が少ないことなどは欠点である。
 ただし、そこさえフォローがていねいであれば、媒体が異なる正編といった存在も積極的にアリだろう!


 今回の漫画『超闘士激伝』復刻版でも、OVAのコミカライズを描き下ろしすることや、OVAの静止画キャプチャーを使用することは、予算面や意外とかなり高額であるらしい映像版権使用料的にもムリだったとしても、文章だけでも見開き2ページくらいで当時の事情やOVAのストーリーも紹介してほしかったところだ。
 ……ついでに云うと、原作者や漫画家による後書きや、『激伝』にくわしいライターなどによる解説なども、最終巻にはほしかったところなのだが、これも復刻版製作における予算面での問題か?(笑)




 「銀河連邦生誕記念式典」が開かれた、我らが地球にある巨大闘技場。現れた闘士ウルトラマン(声:森川智之)に、突如メフィラス大魔王(声:檜山修之)が奇襲攻撃をかけてくる!


メフィラス「相手をブチのめす! それが闘いの掟だ!」
闘士マン「手を出さないでくれウルトラセブン! これはメフィラスと私の試合なんだ!」


 闘士マンは「超闘士」の状態を維持するための王冠型のアイテム・ウルトラクラウンを、まるでウルトラセブンことモロボシ・ダン隊員が変身アイテム・ウルトラアイを着眼するかのごとく額に装着する!


闘士マン「ウルトラクラウン! 装着!!」


 ウルトラの父やタロウの両ヅノのようなウルトラホーン(ウルトラクラウンの突起部分の変型)が、闘士マンにも生えてくる! それも光輝く黄金色である!


 そればかりではない! 地球人の防衛組織・ウルトラ警備隊の地底戦車・マグマライザーはライザーG(ジャイアント)なる人型ロボットに変型した!


 ナンと! 未来の時代が舞台だとはいえ、『激伝』では防衛組織にマシンから変型する巨大ロボットまで建造させていたのである!――「ヤプール編」でもアラスジ紹介では省いたが、防衛組織・科学特捜隊の戦闘機・ビートルが変型してビートルG(ジャイアント)なる人型ロボットが登場していた!――


 先に引用した2ちゃんねるでの論争でも、地球人が巨大ロボットを建造してウルトラマンをサポートしたり、巨大ロボットが変型して友情の証としてウルトラマンの鎧として合体してもよいのでは!? という意見が出てもいた。


 そもそもウルトラシリーズを製作した円谷プロも、かの『トランスフォーマー』(85年)シリーズよりもずっと以前、73年1月放映開始の『ジャンボーグA(エース)』(73年)で、正義の宇宙人由来の超常の力によるものだから、玩具での変型は不可能なプレイバリューはないものだったが(笑)、セスナ機をジャンボーグAに、自動車をシリーズ後半に登場する2号ロボであるジャンボーグ9(ナイン)に一応は変型させていた。
 これは先立つこと1ヶ月前の72年12月に放映が開始された『マジンガーZ(ゼット)』(72年・東映動画→現東映アニメーション フジテレビ・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)の放映で、巨大ロボットアニメが大人気となり、第2次怪獣ブームが下火となりはじめていた当時の風潮にも合致して、成功をおさめていたのである。


 かつては孤独に素手で戦っていた昭和ライダーとは似ても似つかぬ、複数のライダーたちが登場して武器や武装も多用し、多段変身を繰り広げている平成ライダーたちだが、今では誰もそのことに対して文句も云わない。
 『仮面ライダーBLACK RX』(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1)がはじめてレーザー剣を使ってクルマに乗ってロボライダーやバイオライダーに2段変身したときには、当時の子供たちはともかく年長のマニアたちからはアレだけ凄まじい非難囂々(ひなんごうごう)があったというのに……(汗)
 だから多分に単なる「慣れ」の問題なのである。よって、ウルトラマンが鎧を着用したり、地球人が巨大ロボットを建造してサポートしても、そのうちに慣れちゃうと思うゾ(笑)。



闘士セブン(声:関俊彦)「ホーク・ウェポン、アームド・アップ!」


 さらにさらに! 3機に分離した防衛組織・ウルトラ警備隊の戦闘機・ウルトラホーク1号が3機に分離したα(アルファ)号が剣となってセブンの右手に、β(ベータ)号は盾となって左手に、γ(ガンマ)号とウルトラホーク2号は翼となってセブンの背中に装着される!
 ウルトラホーク3号は変型してライザーGの右腕に装着! ウルトラマンエイティとともに、地球に天変地異を巻き起こした、本作のメイン悪役である彗星戦神ツイフォン(声:梁田清之)に立ち向かうのである!


 圧倒的なパワーを誇る強敵相手であれは、多少の武装をしても卑怯には見えない! ということもある。と同時に、「ウルトラ」の玩具の主流であるソフビ人形は、変型や着せ替え的に遊び倒すのには限界があり、これくらいのプレイバリューがないと今の子供たちにも興味を持ってもらえないとも思うのだ。



「武器だの合体ロボだの、お前ら本気かよ! 発想が幼稚過ぎて幼児も見放すぞ! ウルトラマンというキャラがなんで40年以上も生きつづけたのか、もう一回考えてみることをお勧めする」
「一人のファンとしてウルトラマンを商売の道具にしたいとは一切思わない(以下略)」


「これからの商品展開を含めた案は? みんなそう言いたい気持ちを持ちつつ、なるべく逸脱(いつだつ)しない案を出している」
「まあなんだな。此処(ここ)でみんなが言ってることは「夢だけじゃ食っていけない」ってことなんだな。(武装や巨大ロボに反対するのは)わからんでもないけど(円谷プロが)倒産しかけた現実を考えるとね・・・」
「割りと無理矢理感や逸脱が少ない案がそれなりに出てたと思うけど」
「まぁみんなの言いたいことは「マーチャンダイジングでも成功して欲しい」ってことだよな。それだけ利益が制作費になるわけだし」


2ちゃんねる「特撮!」掲示板『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』Part19 2009年12月21日~2010年1月6日)



 その存在自体を全否定するかのように評されてしまうことも往々にしてある巨大掲示板2ちゃんねる」なのだが、実際にはこのような理性的かつ建設的な、経済的な現実をも見据えた応酬もあったのだ。



メフィラス「おまえに倒されたあいつのため…… いや、おまえにはわかるまい! あいつとの闘いで、オレに生まれたものがなんなのか…… 闘う男の、誇りってヤツだよ!」



――『超闘士激伝』って監督好みのお話ですよね?
「ホントは殺伐(さつばつ)としたのは好きじゃないんで、あんまり殴る蹴るっていうのは得意じゃないんだけど(笑)、まあそれだけじゃないですからね。そこにちゃんと友情とかそうゆうのがあるから作品として成り立ってるワケで、まあ男っぽいですよね。そういう意味での男っぽさ、汗クサさはわりと好きなんで(笑)」


――監督の過去の作品だと『アイアンリーガー』に…。(引用者註:児童向けテレビアニメ『疾風(しっぷう)! アイアンリーガー』(93年・サンライズ テレビ東京)。SD調のロボットたちがスタジアムで各種競技をする作品で、当時のオタクのお姉さんたちの一部にも人気があった・笑)
「近いモノはありますよね。ちょっと恥ずかしいぐらいの感じが(笑)。まあ『アイアンリーガー』の時もそうだったんですけど、生身の人間がやると、どうも照れちゃうと言うか…
 「誇りってやつだよ」とか言われると、“お前ナニ言ってんだよ”みたいな(笑)。そんな気分になるところが、――引用者註:漫画アニメやSDキャラ、着ぐるみの仮面キャラクターである――ウルトラの兄弟、あるいはメフィラス星人だったらストレートに出せる部分があるんで、そういう助けはかなり借りてるかな、とは思いますね」


(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』「INTERVIEW」監督:アミノテツロー



 ハイパー化の数十倍のパワーを誇る「超エネルギー増幅装置」を装着したメフィラスは、遂に彗星戦神ツイフォンを倒した!! だが……


闘士マン「メフィラス、なんてことを!」
メフィラス「最後まで説教か?…… それもおまえらしい……」
闘士マン「しゃべるな! 今すぐ地球へ運んでやる」
メフィラス「よせ、ムダだ。オレはおまえみたいに不死身じゃない。オレなりに頑張ってはみたが、おまえのようにカッコよくはいかなかったぜ……」
闘士マン「なにを云う! ツイフォンを倒したじゃないか!? おまえは私より上だ!」
メフィラス「そうだな…… おまえでも勝てなかったアイツをな……」


 だが、背後にただならぬ殺気を感じる闘士ウルトラマン


メフィラス「どうした……」
闘士マン「すごかったよ、メフィラス。すごかった! ヤツはコナゴナだ! 地球は救われた! おまえのおかげだ!」


 ヒトをだまして陥れるためのウソではなく、ヒトを安心させるための気遣いとしての優しいウソも咄嗟に機転を働かせてつくこともできる、愚直なだけではなく実に人間が良く出来てもいる闘士マン。


メフィラス「そうか…… よかったな……」
闘士マン「メフィラス……」


 闘士マンの腕の中で静かに息絶えるメフィラス大魔王……



――監督から提案されたコトってあります?
「こういう話の常なのかもしれないですけど、死んでは生き返り死んでは生き返り、みたいな、そういうニュアンスってあるじゃないですか。でも、やっぱり死んだ人は戻ってこない……って言うのかなあ、そういうケジメはどっかでつけられるとイイですね、って話はしましたね。
 だからメフィラス(大魔王)も、死ぬんだったらちゃんと死んでくれよ、みたいな気分で(笑)。あと、死にに行くんではなくて、結果として死んでしまったという部分も欲しいなって、これは言葉のアヤですけど“命に替えて”と“命を賭けて”ってけっこう違うんじゃないかな、っていう、そのへんの微妙なこだわりだけ明確にして貰(もら)ったって感じですね。
 例えば、ハイパーエネルギー増幅装置って極端なコトを言うと、最初はつけると絶対に死ぬって設定だったんですよ。だったらつけないよ(笑)ってそのぐらいの気分なんですけど、そのへんをノリだけでいかずに“押さえ”たいな、と思ってたんで……。
 僕なんか、メフィラスに感情移入しやすかったんですけど、まあ主人公はどうしても(初代)ウルトラマンなんで、(初代)ウルトラマンが最終的に見せ場を作ってくなかで、今回はメフィラスとの友情話の頂点、みたいな気分はありましたね」

(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』「INTERVIEW」監督:アミノテツロー



 ツイフォンに怒りを爆発させる闘士マン!


闘士マン「おまえはいったい何者なんだ!? なぜこんな殺戮(さつりく)を続ける!?」
ツイフォン「オレはオレだ。全宇宙をかけめぐり、その先々にあるものはすべて破壊する。それがオレだ」
闘士マン「なんだと! なぜだ!? なぜそんなことを!?」
ツイフォン「なぜはない。それがオレだ。もう何万年もの間、繰り返してきた。そしてこれからもだ」
闘士マン「そうはさせない! もう二度と、こんなことはさせない!!」


 ハナっから話し合いなんぞは通じるハズのない、感情のカケラすらもない倒すべき相手としてツイフォンが描かれているのも、勧善懲悪活劇としては秀逸だが、だからこそ「闘士マン」が黄金のオーラに輝く「超闘士ウルトラマン」へと強化変身する必然性にも、がぜん説得力がわくというものなのである!


超闘士マン「私は宇宙を破壊する者を許さない!!」


 だが、ウルトラクラウンなしで超闘士となったことから、胸の中央にあるカラータイマーが早くも赤く点滅をはじめる!


 ツイフォンは頭のツノでそのカラータイマーを貫いた!! 吹っ飛ばされる超闘士マン……


超闘士マン「死ねない…… 絶対に死ねない…… 私には義務がある! メフィラスが守ったものを、守り通す義務が! 死ぬわけにはいかない!」


 そのとき、超闘士マンのカラータイマーの周囲に神秘なる力が発動した!!


ゾフィー(声:江原正士)「オオッ、あれは!?」
ウルトラの父(声:玄田哲章)「宇宙伝説の永遠の命、デルタスター!!」


 超闘士マンに装着された巨大な紋章・デルタスターをド突いたツイフォンの拳がコナゴナに砕けた!
 一瞬、動揺したツイフォンだが、すかさず全身をドリル状に回転させて超闘士マンに突撃する!
 しかし、それもデルタスターにハネ返される!


超闘士マン「そうだ、それが私だからだ! おまえの長い旅もこれで終わらせる!! ……スペシウム超光波!!!」


 遂にツイフォンを宇宙の塵(ちり)と化す!


 英雄となった超闘士ウルトラマン


ノタニー博士(声:八奈見乗児)「いや、(超闘士)ウルトラマンだけではない。英雄は彼の…… 我々の胸の中にもいるよ……」


 この戦いを目撃していたすべての人々の想いも代弁して、メフィラス大魔王に哀悼の言葉を捧げてみせるノタニー博士……



 OVA版スタッフは『激伝』の世界観を充二分に熟知し、各キャラの描き方に存分に反映させている。脚本は原作者の瑳川竜氏が自ら手掛けることで、完全に『劇伝』正編の一編ともなっていた。



「今回、絵コンテを読み込んでいくうちに、過去に見ていた実写のウルトラマンよりアニメのウルトラマンの方に不思議なリアリティーを感じてしまった。実写の場合に感じていたウルトラマンスーツや怪獣達との質感と風景との間のギャップが、アニメになった途端に見事に解決され、すべての登場人物や背景が同一線上に並んだのである。そして無表情なマスクの向こうにあるウルトラ戦士たちの心の叫びが聞こえてきた。これこそ真実のウルトラマン伝説だと思うのである」

(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』「MESSAGE」音楽:池毅)



「今回のウルトラマンの音楽制作は、まず最初にボーカルヴァージョンをつくる時に、ひとつの標語がありました。それはスタッフから出た注文で、〈汗くさい感じのする体育会系サウンドにしたい…〉といったようなものでした。逆に言えば〈オシャレでナンパな音楽から正反対に位置するもの…〉といったようなニュアンスだったと思います。これってある意味で、ウルトラマンの核をなす大事な部分ですよね?」

(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』「MESSAGE」音楽:戸塚修


 この発言に続く、戸塚修氏の「備考」による使用機器の目録を読むと、本作のBGMは後年の『ウルトラ銀河伝説』の楽曲群のように、早くも録音スタジオを借りてスタジオ・ミュージシャンを招集してのナマ楽器からの収録は一切行わずに、パソコン上の作曲ソフトとシンセサイザーだけでつくったようでもある。



「そんな意味でも、監督として(系で言うなら“コブシ握り系”あるいは“血液たぎり系”の作風を得意とする)アミノテツロー――引用者註:リアルロボットアニメ『マクロス』シリーズの人気異色作『マクロス7(セブン)』(94年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990906/p1)などが有名――を迎えての映像化は、まさしくベスト・マッチングの印象。演出・絵コンテを手懸けた(平野俊弘監督作品――引用者註:戦闘美少女アニメ『戦え!! イクサー1(ワン)』(85年)・巨大ロボットアニメ『破邪大星ダンガイオー』(87年)と『冥王計画(プロジェクト)ゼオライマー』(88年)などの80年代の草創期OVAなど――における好き者ぶりはつとに有名な)西森章(にしもり・あきら)以下、『ウルトラ』世代のスタッフの大挙参入も頼もしい限りで、このアニメ版『激伝』もツボを突きまくった快作(隕石を目撃した子供のコスプレを見よ! カタストロフィー描写の引用ぶりを見よ! 思わずやってしまいました的オープニングを見よ!)として、原作の“ウルトラ魂”を見事なまでに継承した、燃える逸品(いっぴん)に仕上がっている。(中略)
 ともあれ“ウルトラ魂”を持つスタッフの「限りなきチャレンジ魂」が炸裂した印象の『激伝』アニメ版。この先の展開にも大真面目に期待してマス。本気で!

(96/8/9)」
(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』「EXPLANATION」赤星政尚)



 本作の敵である彗星戦神ツイフォンは、初代『ウルトラマン』第25話『怪彗星ツイフォン』で地球に接近した彗星ツイフォンが、同話ラストでの計算通り、地球歴(多分、西暦・笑)3026年に再び接近して、その正体を遂に現わした姿だろう。
 ということは、『激伝』の時代は今から1000年後の西暦3020年代の出来事となるのだ。
――「ヤプール編」冒頭ではエースが「むかしオレが地球をまもっていたころ…… 数十年まえかな~~」と云っていたのだが…… エースの云い間違いだったのだろう・笑――


 日タイ合作の映画『ウルトラ6兄弟VS(たい)怪獣軍団』(75年・79年日本公開)に登場したインドやタイの神話の神様である白猿ハヌマーンの扮装のような服を着た少年コチャンもさりげにモブの中に登場。
 昭和ウルトラシリーズのオープニング映像へのオマージュに満ち満ちた影絵のオープニング主題歌映像にかさなるカッコいい主題歌やエンディング歌曲など、小ネタのマニアックな楽しさにも満ちている。


 VHSビデオソフトとしてリリースされて以来、まったくソフト化の機会に恵まれない本作だが、このまま埋もれさせるにはあまりに惜しい名作である。
 せめて『激伝』復刻版の全巻購入特典としてDVDを頒布(はんぷ)するといったことができなかったものであろうか? 本作は『激伝』の立派な「正編」なのである。


 強いて云うならば、メフィラス大魔王の声を筆者などは勝手に原典の初代メフィラス星人の声である加藤精三でイメージしていたので、『五星(ごせい)戦隊ダイレンジャー』(93年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111010/p1)のイレギュラー敵怪人・神風大将の声であったことには少々イメージが違った(笑)。


第4部『エンペラ星人編』

ウルトラマン超闘士激伝 4巻

ウルトラマン超闘士激伝 4巻

ウルトラマン超闘士激伝 4巻

  • 作者:瑳川 竜
  • 発売日: 2010/06/30
  • メディア: コミック

*96年11月号『新たなる脅威』
*96年12月号『結成! 銀河遊撃隊』
*97年1月号『ブラック指令の罠』
*97年2月号『光と闇の戦い』
*97年3月号『光の戦士よ永遠なれ!!』


 莫大な量の高純度エネルギーを蓄積できる特殊立方体・EX(エネルギー・エックス)キューブを軍事に悪用し、全宇宙を攻撃せんとする者が現れた!
 正体不明の新たな敵・エンペラ星人の軍団である! 彼らの戦闘機械獣・メタルモンスの圧倒的な軍勢に、宇宙はいまだかつてない危機を迎えていた!


 ウルトラマンネオスウルトラセブン21(ツーワン)が警備するセントール星をエンペラ軍団の陸軍戦闘母艦・ドレンゲランが襲撃する!
 メタルモンスを次々に破壊するネオスとセブン21! その前に姿を現す陸軍参謀・ザム星人!


 ふたりの危機に、伝説の最強戦士・闘士ウルトラマンが駆けつけた! エンペラ軍の侵攻に対抗するために、ウルトラ戦士団は戦力を再編成、闘士マンは銀河遊撃隊隊長に任命されていたのである!


 エンペラ軍団が真にねらうものはウルトラの星の3大秘宝だった。ウルトラキー! ウルトラベル! そして幻の鏡・ウルトラミラー!
 かつてそれらはウルトラの星に所蔵されていたのだが、ババルウ星人にウルトラキーを奪われた際(!)、ウルトラの星が壊滅の危機を迎えたことから、ウルトラの父はウルトラキーなしでもウルトラの星の軌道を維持できるようにウルトラの星の機能を改良し、3つの秘宝を全銀河に隠していたのである!
――ウルトラキーを奪われたうんぬんの逸話は、もちろん『ウルトラマンレオ』第38話『レオ兄弟対ウルトラ兄弟』~第39話『レオ兄弟ウルトラ兄弟勝利の時』の前後編を指している!――


 セントール星を今度は海軍戦闘母艦・サメクジラと、空軍戦闘母艦・サタンモアが襲う!
 超闘士マンはネオス・セブン21とともに、地球人から受領した超光速銀河遊撃挺・スターフェニックスでこれを迎え撃つ!
――フェニックスの名前がまた、初代『ウルトラマン』第16話『科特隊宇宙へ』に登場した金星探査用宇宙船・フェニックスからの引用で、その姿は科学特捜隊のマークである「流星」を模した姿であった・笑――


 海軍参謀・バルキー星人はイーストン星でウルトラベルを手にしてしまう。面白くない空軍参謀・ブラック指令は暗黒司祭・ジェロニモンと手を組み、残るふたつの秘宝を同時に手に入れようと企む。


 セブン21はジェロニモンが作り出した暗黒時空に落ちてしまい、ブラック指令にウルトラの父やタロウの両ヅノのようなデストホーンをつけられてしまう! ブラック指令に操られてしまったセブン21は、ウルトラキーを奪ってしまった!
 ネオスは単身でスターフェニックスに乗りこみ、ブラック指令とセブン21がいる水星へと向かう! 必死でセブン21を説得するネオス!
 だが、セブン21はネオスに向けてウルトラキーの銃口を向けてしまう!


 間一髪! 現れた超闘士ウルトラマンが持つウルトラミラーでウルトラキーの攻撃はハネ返された!
 そしてセブン・エース・タロウ・グレートの4大守護闘士も大集結! エンペラ空軍との決戦の火ぶたが切って落とされた!


――ちなみに、エンペラ軍が「陸軍」「海軍」「空軍」に分かれていて幹部たちが「参謀」の役職だったりするのは、円谷プロの分派がつくった特撮巨大ロボット作品『スーパーロボット マッハバロン』(74年)のララーシュタイン博士が率いるロボット帝国からの引用だろう・笑――


 そしてネオスはセブン21にウルトラミラーを向けて、本当の心を映し出すように説得を試みる! すると脳裏にネオスとの思い出が回想されて苦しみはじめる21!


 サタンモアから脱出したブラック指令の前に、ウルトラキーを携えたネオス、そして正気を取り戻したセブン21が現れた! そのトサカ部分を外して宇宙ブーメラン・ヴェルザードを放つセブン21!
――このへんも内山まもる大先生の『ウルトラマンレオ』コミカライズ最終回の同様シーン(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210124/p1)へのオマージュである――


 生き残ったジェロニモンからエンペラ軍の本拠地を聞き出そうとする守護闘士たちだったが、彼らの眼前にエンペラ星人の巨大なる幻影が現れて、戦いがまだ終わっていないことを告げるや、姿を消していった……




 連載開始当時、すでに96年9月スタートの『ウルトラマンティガ』の放映がはじまっているが、今回の「エンペラ星人編」の主人公格となったのは、ウルトラマンネオスウルトラセブン21である。


 筆者の記憶に誤りがなければ、94年11月23日(祝)にマスコミ向けに新ヒーローの製作発表記者会見が行われ、その席上にてテレビシリーズに向けて準備が進めれているとされたはずである。
 ネオスらのデビューは95年3月11日~6月18日に熊本県三井グリーンランドにて開催されたイベント「95年こども博 ウルトラマン伝説」であり、同年初夏には映像作品化に向けて、高野宏一特撮監督によって8分間のパイロットフィルム(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971115/p1)が製作されている。
 脳魂宇宙人ザム星人と宇宙鉱石怪獣ドレンゲランとのバトル中心で構成され、白昼の戦いがオープンセットのビル街、夜の戦いがスタジオ撮影のビル街で撮られており、ドレンゲランの首が伸縮したり、セブン21の目が細くなったりする場面に当時最新のモーフィング技術――今から見ると実に初歩的な被写体の変型描写を可能とするCG技術――が部分的に使用されている。


 このパイロット映像は、講談社『テレビマガジン』の愛読者向けに頒布されたのみならず、95年よりバンダイビジュアルからおびただしく発売されたキッズ向け再編集ビデオソフト『ばっちしV(ブイ)』シリーズにもたびたび流用されて、ウルトラヒーロー大集合! というような内容のビデオソフトでは、ネオスとセブン21が常に最新ヒーローとしてセンターポジションに位置づけられており、彼らのプロモーションの役割を果たすには絶好のものともなっていた。


 『テレビマガジン』では、なんと赤星政尚(!)による脚本と宮田淳一の作画により、95年11月号から96年2月号にかけて、地球に来るまでの話として漫画版も連載されていたのである!


 『ウルトラマン』放映30周年記念の96年の放映を目指して、前年の95年に着々と準備が進められていた、ウルトラマンネオスウルトラセブン21のダブルヒーローを主役に据えた新番組『ウルトラマンネオス』の企画案は、TBSでは子供番組として適切な放映枠が取れなかったようであり、土曜夕方6時の放映枠を持っていた毎日放送(大阪・TBS系)も難色を示したのかして流れてしまったのはご承知の通りである。
 以降は平成『ウルトラセブン』を製作した円谷昌弘プロデューサーとビデオ会社・バップ側の人脈によって、その5年後の2000年11月から01年5月にかけて発売された全12巻(全12話)のオリジナルビデオシリーズとして企画が再始動するまではお蔵入りとなってしまったヒーローたちでもある。


 95年版の『ネオス』は、原点回帰志向のファーストコンタクトものであった『ウルトラマンG』や『ウルトラマンパワード』とは異なり、『ウルトラマンメビウス』のように昭和のウルトラシリーズとも直結していることを示唆するウルトラファミリーの集合写真、1970年代の学年誌や『コロコロコミック』でのウラ設定のように、


・宇宙警備隊のエリート戦士集団である勇士司令部に所属するという設定のウルトラマンネオス
・宇宙警備隊の特別部隊である宇宙保安庁に所属するという設定のウルトラセブン21!


 といった要素を前面に押し出していて、一部の世代人の特撮マニアたちを大興奮させていた。


 しかし後年の映像化作品では、非常に残念なことに、その『ネオス』95年版の最大のウリをバッサリと捨て去ってしまい(汗)、またしても人類がウルトラマンや怪獣と初遭遇した世界であるという舞台設定に退行してしまっていたのだった……


 『ティガ』放映前年の95年夏休みに開催された『ウルトラマン フェスティバル95』における「ウルトラライブステージ」では、ネオスとセブン21がバリバリで主役を務めており、グレート・パワード・初代マンが準主役として活躍して、その最後にネオスと21がもうしばらくしたら地球へと派遣されるだろうとウルトラの父ウルトラの母が語っていた……
 ところが翌年夏休みに開催されたゴジラウルトラマン仮面ライダースーパー戦隊の合同イベント『史上最大の決戦 ヒーローフェスティバル96』の4大特撮ヒーローが共演するライブステージでは(その内容自体は傑作!)、ネオスとセブン21の姿はなかったと記憶している……
――ちなみに、夏休みが終わったらすぐにテレビで放映が開始されるハズの新ヒーロー・ウルトラマンティガの姿もなかったと思う。同作は96年のゴールデンウィークあたりで急に製作が決定したらしくて(?)、ヒーローの着ぐるみだってデザインから造形までに最低でも2~3ヶ月はかかるだろうことを思えば、このイベントへの登場には間に合わせられなかったといったところだろう――



 セブン21が小川に小石を投げて愚痴る……


セブン21「いっちゃあアレだけど オレもオマエも ウルトラ戦士の中じゃあ けっこう期待の星だったんだと思うんだけどなぁ…… こんな惑星に配属…… しかもたった二人だ。いわゆる左遷でしょコレって。やることといったら農作業をしている怪獣さんたちのあいてと たま~~に襲ってくるメタルモンスの一掃……! モーーー毎日そんだけだもん!!」
ネオス「………」
セブン21「ああ…… いまごろセブン先輩やタロウ先輩たちは 宇宙のあちこちで華々しく戦ってんだろうなぁ………」


 「エンペラ星人編」第1話である『新たなる脅威』でセブン21がつぶやくこのセリフ。テレビ化が流れてイベントでしか活躍できなかったネオスとセブン21の不遇も如実に象徴されているようで、正直シャレにならない(汗)。


 もっともふたりが「いなか星」であるセントール星に派遣されたのは、ウルトラの星の3大秘宝のひとつであるウルトラキーが隠されていたことから、その隠密の警備のために有望な新人であるふたりがそれと知らされずに任命されていたのだ……とのちに判明することで、両者のキャラも立てている。


 それをねらうのは、エンペラ星人の配下となっていた酋長怪獣ジェロニモン・宇宙海人バルキー星人・ブラック指令・脳魂宇宙人ザム星人!
 エンペラ星人のデザインは、後年の『メビウス』で登場したものとは異なるのだが、『激伝』らしくて全身が鎧に被われたハイパーエンペラ星人といった趣である。
 造形的には金銭と手間がかかりそうだが、今さら云っても詮ないことだけど、『メビウス』終盤に登場したエンペラ星人も、『激伝』世代を狂喜乱舞させるためにもこのデザインで登場させてあげてほしかったなぁ……


 陸軍戦闘母艦・ドレンゲラン、海軍戦闘母艦・サメクジラ、空軍戦闘母艦・サタンモアは、いずれも原典では怪獣である。しかし、この陸・海・空の参謀たちが搭乗する怪獣型の巨大宇宙戦艦は、ウルトラシリーズ番外編である映像作品『アンドロメロス』(83年)に登場した悪の異星人混成軍団・グア軍団の3大幹部であるジュダ・モルド・ギナが搭乗していた全長900メートル級(!)の怪獣戦艦キングジョーグ・ベムズン・ギエロニアへのオマージュでもあるだろう。


 そのエンペラ軍団とウルトラ戦士たちとの3大秘宝の争奪戦! それを巡る参謀たちの仲間割れ!
 7つのドラゴンボールを集める漫画『ドラゴンボール』、8つの霊玉を集める江戸時代の長編小説『南総里見八犬伝』など、大むかしからあるコテコテのアイテム争奪戦だともいえるのだが、良い意味で王道の活劇展開となっている!


 そして、ウルトラミラーがただの「物理」的なアイテムではなく、「心」や「魂」や「真実」をも映し出すような「精神」的な「鏡」であると設定されているのも、それもまたベタかもしれないけど、神秘的で超常的なアイテムであるのならば、こうでなくてはダメだろう!


 大宇宙の平和を左右するマクロなアイテムであるウルトラミラーを用いて、ネオスがセブン21を改心させようとする実にミクロでプライペート・ドラマになってくる件りでは、ふたりの出逢いが回想として印象的に描かれており、これまたベタでも実に感動的に仕上がっている。
 「マクロ」な「イベント」と「ミクロ」な「ドラマ」を両立させるためには、主人公にとっての親友や大切なヒトが「悪」に墜ちてしまって、かのヒトと直接に対面させて会話もさせるという、「バトル」と「ドラマ」も両立できるこの手にかぎる!(笑)


セブン21「オイッ、おまえ なんかオレと同じようなのがついてるじゃねえか。席番もとなりあわせだし なんか縁がありそうだなオレたち……!」
ネオス「遺伝的にビームポイントが直線になるウルトラ人は 人口二千人に一人だという…… ウルトラの星の人口は百八十億人だから九百万人はいる計算になる。それが出会うことは たいして珍しいことだとは思わんが……」
セブン21「な なんだこの野郎……! まるっきりおもしろくねぇヤツ……!!


セブン21(心の声)「……そうさ。まるっきし おもしろくないヤツ!! ……いつもいつもオレに差をつける…… アタマにくるヤツ………!! そんなヤツをいつから……? なんで……? なんで……… こんなに好きになっちまったんだ!!?」


 ウルトラ学校の入学式に始まり、徒競走(笑)やテストの順位発表、殴り合いのケンカの末、肩を組んでのツーショット!(笑)


 この場面の直前は、


ブラック指令「ウハハハハッ!!! いい光景だわ!!! ウルトラ戦士どうしで殺しあっているところはっ……!!!」


 という、実に冷酷なシーンなのだが、だからこそよけいにその対比として、このシーンのハートウォームさが際立ってくるのだ!


――『ウルトラマン フェスティバル95』の「ウルトラライブステージ」と本作『ウルトラマン超闘士激伝』での、一応はネオスと対等ながらもヤンチャで未熟なセブン21! というイメージが強烈にあるので、はるか後年の近年になってから設定された、ネオスの年齢が8900歳というのに対して、セブン21の年齢が倍以上も歳上である1万8千歳(!)というのには非常に違和感があるなぁ。しかも、元祖のウルトラセブンの1万7千歳よりも年上じゃねーか!? ……まぁ元祖のセブンも、70年代には小学館コロタン文庫『ウルトラマン全(オール)百科』(78年10月10月発行・ISBN:4092810350)にも記載されていた通り、ジャックと同い歳の1万7千歳ではなく1万9千歳だったハズなのだけどなぁ(汗)。今からでもアレは間違いだったとして、21をネオスと同い歳に再設定してほしい!・笑――



「でも終わるときは非常に急だったんですよ(笑)。もうこれで終わりって話になったのが、エンペラ星人編が始まって1・2回ぐらいのザム星人とか出てくる回。言われてビックリですよね。
 最初が前後編で、その後編を打ち合わせしてるときに、次の前中後編3回で終わりにしなくちゃなんないってなって、強い宇宙人が出てきたばっかりなのに、どうやって終わらせようか非常に考えましたよね。最後は見開きのバトルシーンでバン! と。
 あとせっかく出てきたばっかりだったんで、ネオスとセブン21の関係論だけはその3回の中できちんと終わらせようということでまとめたんですけど。途中で終わったのは残念ですけど、急な終わり方としてはかなり納得していただける形でまとまったんじゃないかと(笑)。

(『フィギュア王』No.139「光の国◆人物列伝」瑳川竜 ~『フィギュア王』プレミアムシリーズ6『ウルトラソフビ超図鑑』にも再掲載)



 その通りで、マクロとしての事件は解決していないが、「エンペラ星人編」の主人公であるネオスとセブン21の物語としてはきちんと完結できていたとする、瑳川竜氏の自画自賛(笑)には完全に同意したい。



セブン21(心の声)「そんなヤツをいつから……? なんで……? なんで……… こんなに好きになっちまったんだ!!?」


 女性オタクの全員ではないけど、一部であるBL(ボーイズ・ラブ)ファンも大喜びの展開である(笑)


・「メフィラス大魔王編」の初代マンとセブン
・「ヤプール編」の初代マンとメフィラス
・「ゴーデス編」のパワードとグレート
・「エンペラ星人編」のネオスとセブン21


 いずれも「静」と「動」、「攻め」と「受け」の組み合わせであり、特撮ファンも兼ねていたBLファンたちが本作に興奮していたのもうなずける!?
 ……いや、バカにしているワケではなく、ヒーローもののメインターゲットはもちろん子供たちではあるものの、一部にはこういう受容をされてもイイのではないのかとマジで思うのである。それがダメだと云うのならば、ブーメランとして返ってきて、子供向けヒーロー番組に対して「あーでもない、こーでもない」と論評して楽しんでいる我々自身の存在もまた否定されねばスジが通らなくなってくる(笑)。



ウルトラマン同士の殺し合いを「見世物」とするなら、それは「商売」として、飽きられ枯れるまで続ければよろしい。もう、僕らが幼いころに胸をときめかせたウルトラマンはここにはいないのだから」



 『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』について、日本テレビ系列の中京テレビのプロデューサーであり、『今甦る! 昭和ヒーロー列伝』(93~96年・中部地区ローカル)を担当したことで知られる喜井竜児(きい・りゅうじ)が、自身のブログでこう批判していた。


 氏の云わんとする実にストイック(禁欲的)なヒーロー観そのものは、やや潔癖ではあるけど誠実なものだとは思える。しかし、ヒーローの偽物と戦うとか、ヒーローと同等のダークヒーローと戦うとか、誤解や洗脳からヒーロー同士が一時的に戦ってしまうという展開も、実に楽しいではないか!?(汗)
 ヒーローに比べたら、見た眼的にも分が悪いから、最後には負けるのだろうナ、という感じのルーティンな怪獣や怪人と戦っているのと比べたら、時たまに変化球として登場してくるヒーローの偽物やダークヒーローは、通常回のゲスト怪人やゲスト怪獣たちよりも強そうには見えるのだ! もちろんそれでも最後にはヒーローに負けてしまうのだとわかってはいても(笑)、我々はワクワクとさせられてしまうのだ。
 ヒーロー同士の必殺技の応酬や力比べなども、リアルに考えればたしかに不謹慎な殺し合い(爆)かもしれない。しかし、オラオラ系の暴力的なナマ身の人間が演じるものではない、記号的な仮面ヒーローたちによる舞踏的で様式美的でスマートなアクション描写だと、殺伐とした感じはそれほどしないのではなかろうか?
――もちろん意見というものはヒトそれぞれではあるので、そう思われる方々の見解を全面否定するものでもないのだが・汗――



 先のアミノテツロー監督の発言のように、ナマ身の人間に演じさせたらばクサくなってしまうようなセリフや演技や作品テーマでも、漫画アニメのキャラやSDキャラ、アニメ特撮の記号的な仮面キャラに語らせれば、生グサさも減らせてそのストーリー展開やメッセージにひたれたり、そのことで道徳的なテーマまでもが純化して浮上してきて、スナオに受け取れて心に響いてきたりもするものである。
 こういった利点を活かして、これまで極めて暑苦しいくらいの友情ドラマが『激伝』では展開されてきた。


 たとえば、ごく少数いるにはいた実写特撮『ウルトラマンメビウス』における、漫画アニメ的な防衛組織・GUYSの熱血バカばかりな暑苦しい絶叫調の友情ドラマがやや苦手だった方々でも、こうした漫画のような最初から記号化やデフォルメの度合いが高い媒体であったならば、『メビウス』のような熱血少年漫画的なストーリー展開や人間描写であったとしても、受け入れられやすいのではなかろうか?


 それとは別に、頭身がデフォルメされた『激伝』に、実写のウルトラマンシリーズはまるで観たことがないにもかかわらず、可愛い「仮面キャラ」が演じている「人間ドラマ」(笑)にハマり、そこからウルトラシリーズに興味を持ち始めたようなオタクのお姉さんたちも、『激伝』の各種同人誌などを観るかぎりではいるにはいるのである。後年の『仮面ライダー電王』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)で実力派人気声優たちが声をアテていたキモ可愛い仮面怪人キャラ・イマジン4人組が高いオタク女性人気を示したことの先駆けでもあるだろう。こういった仮面ヒーローたちに漫画アニメ的なデフォルメされた性格を与えることも、特撮ジャンルの商業的な新たな鉱脈であるようにも思うのだ。



「エンペラ星人編はガシャポンでやっていた展開はみんなやる予定でした。
――引用者註:ウルトラマンゼアスウルトラマンティガ、グランドキング(映画『ウルトラマン物語』の宿敵怪獣)をはじめとする陸海空の合体怪獣、2代目怪獣軍団などが、「エンペラ星人編」の連載前には先行発売されていたようだ。この時点では3万年前にウルトラの星を襲撃したという設定のみでデザインがなかったエンペラ星人の姿が、円谷プロ所属だったデザイナー・丸山浩によってデザイン・商品化もされており、『メビウス』以前には公式デザインとされていた。ちなみにグランドキングをはじめとする陸海空の怪獣とは、ガシャポンオリジナルのアクアキング(シーゴラス)とエアロキングバードン)であったようだ――


 どうしても末期の頃になると、漫画は月一連載で、ガシャポンは3ヶ月に1回12体ずつ出るから、最低4キャラを月一で消費する話にしない限り、ガシャポンと同時展開できないんですよ。ただそれだけが原因ではなく、ガシャポンのセールス的にも漫画的にも、そろそろ程良いとこかなみたいな感じでした」


(『フィギュア王』No.139「光の国◆人物列伝」瑳川竜 ~『フィギュア王』プレミアムシリーズ6『ウルトラソフビ超図鑑』にも再掲載)



 先の瑳川氏の発言にもあるように、ネオスとセブン21の関係論は、エンペラ編の人間ドラマ面での背骨であったためか、ドラマとしては「エンペラ星人編」はきっちりとした終わり方となっていた。


 もっともエンペラ軍団にウルトラベルを奪われたままの状態ではあり、「本当の戦いはこれからだ!」という締めくくられ方は、メタ的に見ればいかにも「打ち切り」といった印象ではある(笑)。
 しかし、逆に云うならば、いくらでも続編を再開させることが可能である! というような完結のさせ方なのである。


続編『ウルトラマン超闘士鎧伝』


 『コミックボンボン』における『激伝』の連載は97年3月号で終了した。しかし、ガシャポンの写真を使用した『ウルトラマン超闘士鎧伝(ちょうとうし・がいでん)』なる続編的な内容の記事連載が、同年11月号までは続けられたようである。
 『ボンボン』には、ギャグ漫画ではあるが『ウルトラ忍法帖』(92~05年)というウルトラマンの漫画がもう1本連載されており、こちらは打ち切りにあわずに21世紀までの長期連載を成し遂げている。それはそれで喜ばしいことなのだが、『ウルトラ忍法帖』の方が人気は高かったのだろうか? とてもそうは思えないのだが(笑)。
 ならばせめて、ガシャポン展開が完全終了する前後までの約8号分くらいは、『激伝』にも連載を続けさせてほしかったものである。


 筆者の調査不足で詳細は不明なのだが、エンペラ星人編で結成された「銀河遊撃隊」に初代ウルトラマン隊長の下にウルトラマンゼアスが新人隊員として参加。映画『ウルトラマンゼアス』(95年)本編での宿敵・ベンゼン星人を基にしたダークベンゼン星人(!)と戦うというのがストーリーであり、宇宙の彼方で超古代のウルトラマンティガの石像を発見するというストーリーだったようだ。


 加えて、ウルトラの星の3大秘宝がすべてエンペラ軍団に奪われてしまって、エンペラ星人は3大秘宝を本来の姿である「ウルトラクロス」――超古代ウルトラ人(ティガのご先祖? ティガの同族?)によってつくられた伝説の「闘衣」――に復元するのだが、ゼアスが「太陽の棺」で元の3大秘宝の姿に戻すのだとか、ウルトラクロスを半々に分けてエンペラ星人と初代ウルトラマンがその身にまとって激突するのだとか…… 当時を知っている若い人がいたら、誰かこのオジサンに教えて下さい!(笑)


――後日付記:『鎧伝』のストーリーは後述した「ウルトラクロス編」の方が先行するエピソードであり、前述した「ダークベンゼン編」があとのエピソードだったそうです――


*そして、実写作品でも最新ウルトラ戦士・ウルトラマンゼロが遂に鎧を着用する日が来た!!


 さてさて、もう皆さんも違法にアップロードされている玩具業界向けの写真などで知っているだろうが(笑)、2010年12月23日(祝)に公開される映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)において、ウルトラマンゼロは究極武装! 「ウルティメイトゼロ」として、なんと遂にアーマー――小さい鎧なので全身にまとうといった感じではないけれど――を装着するのである! このアーマーは巨大な弓矢にも変型するという!


 そして、『激伝』でも描かれた、70年代前半に構想されていた、円谷プロ作品はすべて同一世界の物語であるとする「銀河連邦」の構想までもがアレンジされて復活!


 ゼロとともに戦う仲間として、


・「鏡の戦士」である巨大な宇宙鏡の中の2次元世界出自の「ミラーナイト」――最終回で2次元の世界に帰った『ミラーマン』(71年)のアレンジ――
・「炎の戦士」の「グレンファイヤー」――最終回で宇宙に旅立った地底人『ファイヤーマン』(73年)のアレンジ――
・「鋼の戦士」である正義のロボット「ジャンボット」――惑星エスメラルダならぬエメラルド星からの贈りもの『ジャンボーグA』(73年)のアレンジで、セスナならぬジャンバードなる宇宙船から変型するようだ――


 といったリメイクキャラクターたちも登場!


 『ミラーマン』の敵怪獣アイアンの姿かたちや、『ジャンボーグA』のグロース星人の歴代敵幹部の名前にある末尾の「~ゴーネ」も継承した新たなキャラクターも、悪のウルトラマンであるウルトラマンベリアルこと復活したカイザーベリアルが率いるベリアル帝国の幹部としてアレンジ復活する。



初代ウルトラマンとほぼ同年数の人生を送ってきた僕(と言っても2万年では無い。今年(96年)は彼の生誕30周年!)は物心ついた頃からもう毎日がウルトラだった。
 『マン』(初代『ウルトラマン』(66年))や『セブン』(『ウルトラセブン』(67年))の再放送に夢中になり、『ウルトラファイト』(70年)すら一時も見のがさなかったバリバリの第二期世代だ。
 『帰ってきたウルトラマン』(71年)の1話の放送日などは近所の友達全員と正座して、TVの前で待ちかまえていたものだ。あの光輝くオープニングが流れ出した時の感動は忘れない。「ああ、オレたちのウルトラマンがはじまるんだ!!」という実感を子供心にひしひしと感じていた。


 その上に、多感な中学生時代に第三期ブームが起こってしまった。気がつくと劇場版や怪獣消しゴム集めとかにドップリはまっていたのである。僕の同年代に“ウルトラ信者”が非常に多いのも、こうした運命的なタイミングにより、全シリーズを切れ目なく観続けた世代だからだろう。


 生まれた時にはウルトラマンがこの世に存在した僕らには空白期間が全く無い。ずっとウルトラファンだったと言っても過言では無いのである。


 だから『激伝』のストーリー原作という仕事をいただいた時ももうただうれしくて仕方無かった。長年楽しませてもらったウルトラ戦士たちへのご恩返しだ。単にキャラクターを拝借しただけのSD物に終わらせることなく、本家のウルトラマン物語のアフターストーリー的な要素を徹底的に強くした」


(『ウルトラマン超闘士激伝 オリジナルサウンドトラック』「MESSAGE」原作・脚本:瑳川竜)



 そう。「アフターストーリー」の要素もまた、人々をワクワクとさせるものなのである!
 『激伝』が終了して早くも十数年、ようやく世間が追いついてきた。『激伝』がいかに先見性に富んでいたかが、『ウルトラマンゼロ THE MOVIE』での展開を見ても窺い知れるというものだ。
 

 しかし、地上波どころかBS放送の新作テレビシリーズ、旧作や準・新作の再放送などもなく、特に目立ったパブリシティー展開もない2010年においては、どうやって集客につなげていくのかが最大の課題ではある。
 しかも、世代人や特撮マニア以外には知る人が少ない『ミラーマン』や『ファイヤーマン』や『ジャンボーグA』のアレンジキャラクターではある。


 とはいえ彼らリメイクキャラクターを使うことで、観客比率で考えればやはり少数派ではあろう特撮マニアの固定客たちにも、あとでビデオが出たらレンタルして観ればイイや……で終わらせずに、小まめに確実にゲットして少しでも興行収入を上げていくべきではあるのだ。


 よって、前年度の映画『ウルトラ銀河伝説』の後日談といった意味だけでなく、もっとさまざまな作品の「アフターストーリー」的な要素を前面に押し出して、


・ミラーナイトはミラーマンのまさに同族だった!
・グレンファイヤーは宇宙に散ったファイヤーマンの不肖(笑)の息子だった!
・惑星エスメラルダも実はエメラルド星のことであり、その住民は地球人と変わらない姿をしているけど、一部の戦士たちは『ジャンボーグA』に登場したエメラルド星人やその息子・カインのような姿に巨大化変身できるのだ! ジャンボーグ7やジャンボーグ11(笑)といった巨大ロボットも配備されていたのだ!


 くらいのことまでして、往年の『ミラーマン』『ファイヤーマン』『ジャンボーグA』の世界観とも直結してくれないものかなぁ(笑)。


 そもそも、『ミラーマン』の防衛組織・SGMが、『ジャンボーグA』のシリーズ後半にもその防衛組織・PAT(パット)の隊長や一部隊員として参画することから、この2作品は少なくとも放映テレビ局を超えた同一世界の作品なのである。


 もちろん一般層には正直それほどの訴求力がある手法では決してない。しかし、ヒーロー級の多数の仮面キャラクターを登場させることは、画面に華(はな)を添えるものだし、年長マニアのみならずマニア予備軍である怪獣博士タイプの子供たちをゲットするのにも実に良い趣向であると思えるのだ。


 だが、最も肝心なのは、東映平成ライダーシリーズを手懸けてきた白倉伸一郎プロデューサーも最近各誌で発言しているように――氏のつくる作品を必ずしもすべて好んでいるワケではないが、それとこれとは別である――、1960~70年代のような作品の大ヒットは望めないにしても、連続テレビシリーズとして『ライダー』や『スーパー戦隊』のように中断の切れ目なく、今や子供向け番組が各局で集中するようになって、子供たちの視聴習慣も根付いていそうな土日の午前中あたりの放映枠などをゲットして、細々とでも放映をし続けることで、子供たちへの接触面積を少しでも増やし続けることが肝要なのである。


 そのためには、赤字にならないリーズナブルな予算の範疇(笑)で新作シリーズを毎年製作して、シリーズが中断している間に他の人気アニメなどが入ってしまって放映枠を取り返せないとか、あるいは放映枠それ自体が消滅してしまうような最悪の事態(爆)は二度と避けねばならないのだ。
 1990年代までとは違って、久しぶりにシリーズを再開させれば、視聴者や子供たちにも新鮮に思ってもらえたり、ドラマ的・テーマ的・質的にも良い作品をつくりさえすれば、それだけで人気もゲットできるという時代ではもはやないだろう。
 物事の変化のスピードが実に早い今という時代に、シリーズに長い中断期間が生じてしまうと、子供たちにも「終ワコン」(終わったコンテンツ)的な古クサい印象を持たれてしまうような気配がプンプンとするのだ……


 ウルトラマンや怪獣という存在自体がどこまで行っても、今となっては悪い意味ばかりではなく「既成概念」のかたまりなのである。昭和のウルトラ兄弟には頼らないウルトラ戦士を見てみたいという声にも一理はある。しかし、そんなことを云い出したら、そもそも「ウルトラマン」の看板に頼らない新ヒーローをつくるべきだ! という話に帰結していかないと論理的には矛盾してしまうのである(笑)――これは新旧ヒーロー共演が当然となってきた近年の「ライダー」や「戦隊」にも当てはまる議論である――



 そうなると、本作『激伝』のように、「原点回帰」「本格SF志向」「大人向け」(笑)などではなく、オモチャ箱をひっくり返したような感覚の、良い意味でのB級作品であり、バトルを主眼に据えたオールスター総登場路線!


・70年代中盤の学年誌内山まもる大先生に始まる広大なる宇宙を舞台としてウルトラマン一族たちが大活躍するオリジナル漫画!
・イベントでのウルトラ戦士たちが活躍するアトラクショー!
・テレビシリーズ『ウルトラマンメビウス』や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』などのような複数ヒーローや複数怪獣登場もの!


 そういった路線を大前提として、その延長線の方向に、その次の一手として現代の子供たちが喜びそうで、玩具会社・バンダイも収益を高められそうな、プレイバリューの高い玩具性を強めていくしかないのではなかろうか? 昭和ライダーたちのシンプルな姿からははるかに遠ざかってしまった平成ライダーたちの玩具性の高い姿がすでにそうであるように……


 2010年現在、新作テレビシリーズを製作できる体制にはないと思われる円谷プロであるが、そうであるならテレビ以外でもさしあたって、イベントやアトラクや児童誌での特写グラビア展開・漫画連載、低予算ビデオ媒体での続編や番外編、それこそ『激伝』ほかの漫画作品や、そのアニメ化、この『激伝』自体も掲載誌や出版社の垣根を超えた続編の再開など、ムリのないかたちでなにかしらの手を打つことで日々の小銭も稼いで、子供やマニアたちの関心をつなげるべきではなかろうか? そして、その上でのテレビシリーズの復活であるべきだろう。


 角川書店の月刊漫画誌特撮エース』(03~06年)では、初代『ウルトラマン』のリメイク漫画である『ウルトラマン THE FIRST(ザ・ファースト)』(03年)などが連載されていたけど、失礼ながらそんな後ろ向きな企画にニーズがあったとはとても思えないのである。それこそ『激伝』の続編でも引っ張ってきた方が、潜在ニーズもあってよっぽど売れたんじゃないのかしら?


 年1回のウルトラマン映画の公開だけでは、21世紀初頭にシリーズが再開するも早々に終焉してしまった東宝のミレニアム『ゴジラ』シリーズ(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060304/p1)の二の舞となることは必定である。
 映画公開の年末年始のクリスマス商戦に少しでも玩具を売ることは実に重要なのだが、それだけでも翌年の映画の製作費くらいならばともかく、今後の新作テレビシリーズの充分な製作費を稼ぐこともできないだろう。


 しかし、過剰に深刻に考える必要もないだろう。子供も年長マニアもゲットできるような、ヒーロー総登場で熱血バトル路線で歴代シリーズの小ネタや玩具性にも満ち満ちていた、オリジナル展開漫画『ウルトラマン超闘士激伝』という、時代を先駆けていた立派なテキストがあるのだから……



 ……『激伝』の原作を務めた瑳川竜は、『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)で東映特撮にいきなり登板して、しかも最初からメインライターを務めた三条陸(さんじょう・りく)のペンネームであったことが2009年に判明している。なんとライバル作品である『仮面ライダー』シリーズへの登板! ならば、『ウルトラマン』シリーズのメインライターとして、関係者は氏をスカウトしてきてくださいよ!(笑)



<参考文献>
同人誌『ウルトラマン超闘士激伝 小事典』(UNLUCKY BIRD・97年6月1日発行・00年3月26日3刷発行)ほか
同人誌『ウルトラマン超闘士激変』シリーズ(はじめくんとマグロちゃん・97年3月23日発行)ほか


2010.7.26.



P.S.


 復刊ドットコムの復刻版コミックスには、栗原仁によって新たに描き下ろされたギャグ漫画も掲載されている。
 第3巻の巻末にある『続・セブン家の人々』は、映画『ウルトラ銀河伝説』にそろって出演できたり、ソフビ発売を喜ぶセブンとカプセル怪獣ミクラス・ウインダム・アギラの家に、扉の陰から半身だけ覗くかたちで、


セブンガー「みなさん ぼくの事なんか忘れてるんですね」


 と、『レオ』第34話『ウルトラ兄弟永遠の誓い』に登場した怪獣ボール・セブンガーが「恨み節」をグチりに来る(笑)。


 セブンはこともあろうに、セブンガーの陰が薄いのは連れてきたジャックのせいだと云いだし、カプセル怪獣たちもセブンといっしょに住めばソフビ化のオファーかかりまくり、再評価の嵐だとあおる。


 すると今度はジャックが扉の陰から半身だけ覗くかたちで、「どーせ話が地味だよ」「どーせ模様がパンツだよ」「どうせ二代目ゼットンはくさってるよ」などとイジケる始末(笑)。


 こんなことがギャグにされないように、そろそろセブンガーを復活させてやれよ!(笑)


 また第1巻の巻末では『バーナーオン!』なる『メビウス』の4コマ漫画が。毎度デフォルメされているが、GUYSのリュウ・ジョージ・マリナ・コノミ隊員たちがクリソツ! 肖像権は大丈夫なのか?(笑)



(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2011年準備号』(10年8月13日発行)~『仮面特攻隊2011年号』(10年12月30日発行)所収『ウルトラマン超闘士激伝』より抜粋)



後日付記:なんと! 『ウルトラマン超闘士激伝』は連載終了から17年もの歳月を経た2014年から、バンダイのカプセル玩具『ガシャポン(R)』の公式ホームページ「ガシャポンワールド」にて『ウルトラマン超闘士激伝 新章』と題した続編が連載開始されて、秋田書店の『少年チャンピオン・コミックス エクストラ』レーベルから2016年以降は単行本も続々続刊が発売されている!
ウルトラマン超闘士激伝 新章 1 (少年チャンピオン・コミックス エクストラ)


 『激伝』正編も新装版の「完全版」として再刊発行中!(玩具展開のみで語られたエピソードなどの紹介ページもあるらしい)


[関連記事]

コロコロコミック特別増刊号 ウルトラマンPART1』&『PART2』 ~『ザ・ウルトラマン』&『コロコロ増刊』ウルトラ特集記事の時代!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1

ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』 ~前日談『ザ・ウルトラマン』をも上回る!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210117/p1

内山まもるウルトラマン』漫画1971~2010総覧! ~『ウルトラコレクションボックス ザ・内山まもる

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210124/p1

ウルトラマン超闘士激伝』 ~オッサン世代でも唸った90年代児童向け漫画の傑作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210131/p1(当該記事)


[関連記事]

ザ・ウルトラマン ジャッカル対ウルトラマン』 ~日本アニメ(ーター)見本市出展作品!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160914/p1

ウルトラマン80 宇宙大戦争』 ~マンガ版最終章は連続活劇! TVでも観たかったウルトラ兄弟vsバルタン軍団総力戦!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110107/p1

コンビニ漫画『ウルトラマンレオ 完全復刻版』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061028/p1


[関連記事]

ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)序盤総括 ~セブンガー大活躍! 「手段」ではなく「目的」としての「特撮」!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1

ウルトラマンタイガ』(19年)序盤総括 ~冒頭から2010年代7大ウルトラマンが宇宙バトルする神話的カッコよさ! 各話のドラマは重めだが豪快な特撮演出が一掃!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1

『ウルトラギャラクシーファイト』(19年) ~パチンコ展開まで前史として肯定! 昭和~2010年代のウルトラマンたちを無数の設定因縁劇でつなぐ活劇佳品!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1

ウルトラマンタイガ』『ウルトラギャラクシーファイト』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1


[関連記事] ~70年代末期の第3次怪獣ブーム作品! 中盤や終盤でヒーロー大集合!

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #50「ウルトラの星へ!! 完結編 平和への勝利」 ~40年目の『ザ☆ウル』総括!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200508/p1

仮面ライダー(新)』(79年)総論 ~スカイライダーの〈世界〉!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1



配信完結『ウルトラギャラクシーファイト』の元祖のひとつ!
#超闘士激伝 #ウルトラマン超闘士激伝 #瑳川竜 #栗原仁 #ウルトラギャラクシーファイト



[ウルトラ] ~全記事見出し一覧
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧

内山まもるウルトラマン漫画1971~2010総覧! ~『ウルトラコレクションボックス ザ・内山まもる』

(2021年1月26日(火)UP)
『コロコロコミック増刊号 ウルトラマンPART1』&『2』 ~『ザ・ウルトラマン』&『コロコロ増刊』ウルトラ特集記事の時代!
『ザ・ウルトラマン ジャッカル対ウルトラマン』 ~日本アニメ(ーター)見本市出展作品!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[ウルトラ] ~全記事見出し一覧


 歴代ウルトラマンたちが大宇宙を舞台に大活躍を繰り広げるネット番組『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)が配信中記念! とカコつけて……
 ウルトラ一族が大宇宙を舞台に活躍する作品の元祖でもある、内山まもる先生の『ウルトラマン』漫画1971~2010総覧を発掘アップ!


内山まもるウルトラマン漫画 1971~2010 総覧! ~『ウルトラコレクションボックス ザ・内山まもる

(文・久保達也)
(2010年10月21日脱稿・11月10日改稿)


 当初の2010年8月上旬発売の予定からは大幅に遅れたが、この10月1日にようやく小学館から「完全部数限定」で『ウルトラコレクションボックス ザ・内山まもる』(ASIN:B01CQLG9IC)が発売された。構成は小学館の『てれびくんデラックス愛蔵版』レーベルで、あまたの歴代特撮ヒーローの『超全集』シリーズを手掛けてきた間宮尚彦氏。


 その目玉となるのは、『ウルトラマンタロウ』(73年)放映時期の夏休みに発売された小学館『小学二年生 夏の増刊』(73年9月増刊号・73年9月10日発行(8月10日実売)・定価200円)に掲載されていて、長らく未収録で幻の作品になっていた、


・長編漫画『かがやけウルトラの星 けっせん! ウルトラ兄弟たい怪獣軍団』


 の「完全復刻」である。同作を当時の『夏の増刊』のカラー表紙も含めて原寸サイズで復刻している。
――『夏の増刊』らしく、水泳帽の男の子と白いサマーハットの女の子を前面に大きく押し出して、左上スミの誌名の直下にまるい枠囲みで「ウルトラマンタロウ」を、右横スミに今では幻の封印作品となってしまった73年版のテレビアニメが放映中だった「ドラえもん」を、左下スミには同じく放映中のバレエを題材とした児童向け30分枠の人気実写連続ドラマ『赤い靴』(72年・TBS)の主人公たちが取り巻いたものだった――



 1970年代の小学館学年誌における『ウルトラマン』シリーズのウラ設定の特集記事や、内山まもる大先生による『ウルトラマン』シリーズのコミカライズやオリジナル展開のストーリー漫画は、20世紀のむかしから特撮同人界の先達たちが散発的に発掘・整理・研究を同人誌などで発表してきた。
 それらもおおいに参照して、彼らの足元にもおよばないので先達には敬意を表しつつも、筆者もここに自分なりの内山ウルトラ漫画の整理をしてみたい。


・その「ヒーロー共演」「ヒーロー大集合」といった華(はな)のある「イベント性」
ウルトラ兄弟の故郷・ウルトラの星にはウルトラ一族が設立した宇宙警備隊の隊員が100万人もいるといった「ウラ設定」をフルに活用したことでの、一般の宇宙警備隊の隊員たちであるウルトラの一般兵士たちも多数登場する「ウルトラ軍団」
・敵宇宙人も同族の別個体が「軍団」(!)として登場してしまうような、後年のリアルロボットアニメの量産型の人型ロボットに対する一応のリアルな肌ざわりにも通じるようなテイストの導入
・そして、それによって生じてくる、単なるヒーローVS怪獣の1VS1の戦いではなく、バトルのステージや作品の「世界観」も宇宙規模で拡張していくようなスケール雄大のワクワク感!


 これらを析出して、それらも踏まえて、今後のウルトラシリーズや、それをも超えた特撮ヒーローもの一般・特撮ジャンル一般における今後の目指すべき「作劇」や「展望」などの提言もおこなってみたい。




 内山まもる大先生が1970年代前半に小学館学習雑誌に連載していた、いわゆる第2期ウルトラウルトラシリーズである


・『帰ってきたウルトラマン』(71年)
・『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1
・『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1
・『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1


 などのコミカライズ作品は、小学館コンビニエンスストア売り専用の『My First BIG Special』レーベルの廉価版の単行本で、「完全復刻版」と称して、すでに2004~07年にかけても発売されていた。


 これらのコミカライズの一部は「内山まもるウルトラ傑作選」名義で、1978年初夏の『コロコロコミック特別増刊号 ウルトラマンPART1』(78年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210117/p1)~79年春の特別増刊4号こと『春の特別増刊号 ウルトラマン』(79年)などにも再録されてきた。
 その後にこれらは、78年~80年にかけて発行された『ザ・ウルトラマン』名義で小学館の『てんとう虫コミックス』名義の単行本にも収録されたことで、元原稿なりそれらを撮影した画質のよい印刷用のフィルム製版も残っていることだろう。


 しかし、これらに未収録で終わったコミカライズは、元原稿が行方不明であったのだろう。あるいは、当時の小学館学年誌に掲載時の連載漫画の見開きページの両端の「柱」のキャプションなども含めて、往時の雰囲気の再現することまで目論(もくろ)んでいたのだろう。当時の学年誌の誌面を複写するかたちでの「完全復刻版」としての登場となったのだ。


 この「完全復刻版」は、『小学二年生』1971年5月号~72年4月号に連載された『帰ってきたウルトラマン』を2004年7月30日(金)(7月16日(金)実売)に発行。
 これを皮切りに、『小学二年生』72年5月号から73年3月号に連載された『ウルトラマンA』も、1週間後の同年8月6日(金)(7月23日(金)実売)に続けざまに発行されている。


 ところでこの00年代前中盤の当時は、各巻が通算で10万枚以上も売れていたという、ウルトラシリーズのデジタルリマスター修復版DVDが順次発売されていた。
――まぁ2K(水平解像度2000本)のハイビジョン画質ではなく、その半分の1KでのSD(標準)画質での修復だったので、2010年のハイビジョン化された今となっては画質面では見劣りするだろうが――


 その一環である「デジタルウルトラプロジェクト」から、DVD『ウルトラマンA』Vol.1(asin:B00024JIU2)・Vol.2(asin:B00024JJGK)・Vol.3(asin:B00024JJGU)が2004年7月23日(金)に一挙に同時発売されている。
 『帰ってきたウルトラマン』と『ウルトラマンA』のコミカライズの「完全復刻版」の企画が通ったのは、おそらくこの『A』のDVD発売との相乗効果や広告収入による売上連動のメリットを、担当者が出版社の上層部なり営業にプレゼンした成果だったのではなかろうか? この「完全復刻版」の表紙ウラの広告には、DVD購入特典を派手にうたうのはもちろんのこと、巻末にもこのDVDの紹介記事が設けられていたのだ。


 以降、『ウルトラマンタロウ』と『ウルトラマンレオ』も、「デジタルウルトラプロジェクト」のDVDリリースに合わせるかたちで、『ウルトラマンタロウ』と『ウルトラマンレオ』の内山大先生のコミカライズも復刻されていった。


 『小学二年生』1973年4月号~74年3月号に連載されていた『タロウ』コミカライズの「完全復刻版」は、2005年7月8日(金)(6月24日(金)実売)に発行。
 『小学二年生』と『小学三年生』双方の1974年4月号~75年3月号に連載されていた、それぞれに内容が異なる『レオ』のコミカライズは、1冊の中で前半部分と後半部分のかたちでまとめた「完全復刻版」が、それまで最大の370ページを誇るボリュームで2006年11月10日(金)(10月27日(金)実売)に発行されている。
 これらの「完全復刻版」の構成を担当したのは、老舗同人誌・藤子不二雄FC(ファンクラブ)・ネオユートピア出身の秋山哲茂氏。


 『レオ』では『小学二年生』版と『小学三年生』版の完全収録を遂に果たしたワケなのだ。『A』までは『小学二年生』だけで連載してきた内山大先生だが、『タロウ』では『小学二年生』のみならず『小学五年生』にも連載をしており、惜しくも未収録に終わっているが、こちらの完全収録も期待せずにはいられない。
 ちなみに、この『小学五年生』の『タロウ』コミカライズは、対象年齢が小学校高学年であることからか、『タロウ』本編の内容とは大幅に異なり、タケルなる少年が主役を務めながらも、実にハードタッチの完全オリジナルなストーリー展開の作品となっていた。


 これらの「完全復刻版」により、第2期ウルトラシリーズがリアルタイムで放映されていた時代に小学館学年誌で連載されていた内山大先生のコミカライズは、『小学五年生』版の『タロウ』を除けば、完全収録が果たされたのだった。


 だが、各学年誌の発行部数が100万部を超えていた最盛期でもあった70年代前半の『小学二年生』は、夏休みと冬休み時期の年2回、『増刊号』も発行されており、それらに掲載されていた内山ウルトラ漫画がまだあったのだ! しかし、それらには100ページ近い大長編もあったので、この「完全復刻版」が相応に売れるかどうかが不分明な中では、予算的にもページ数をむやみに増やすワケにはいかなかったのか、残念ながら収録が果たされてはこなかったのであった……


『小学二年生』版『帰ってきたウルトラマン』作品リスト

帰ってきたウルトラマン[完全復刻版]

帰ってきたウルトラマン[完全復刻版]

帰ってきたウルトラマン[完全復刻版]

*71年5月号『必殺! 流星キック』

 古代怪獣キングザウルス三世登場

*71年6月号『アーストロン大逆襲』

 凶暴怪獣アーストロン登場

*71年7月号『怪獣峠を越えろ』

 古代怪獣ツインテール・音波怪獣シュガロン登場

*71年8月号『二大怪獣の恐怖 東京大竜巻』

 津波怪獣シーモンス・竜巻怪獣シーゴラス登場

*71年9月号『復讐のベムスター

 宇宙大怪獣ベムスター登場(ウルトラセブンは登場しない)

*71年9月増刊号『決戦 ウルトラ兄弟対11大怪獣』

 頭脳宇宙人チブル星人・冷凍怪獣ペギラ・有翼怪獣チャンドラー・どくろ怪獣レッドキング・古代怪獣ゴモラ・酋長怪獣ジェロニモン・宇宙恐竜ゼットン・宇宙怪獣エレキング・冷凍怪獣ガンダー・透明怪獣ゴルバゴス・化石怪獣ステゴン・毒ガス怪獣モグネズン・ニセウルトラセブン登場

*71年10月号『戦慄! マンション怪獣誕生』

 マンション怪獣キングストロン登場

*71年11月号『この一発で地獄へ行け!』

 八つ切り怪獣グロンケン登場

*71年12月号『呪いの骨神(ほねがみ)オクスター』

 水牛怪獣オクスター登場

*72年1月号『ウルトラマン夕陽(ゆうひ)に死す』

 変幻怪獣キングマイマイ・竜巻怪獣シーゴラス・用心棒怪獣ブラックキング登場

*72年2月号『ウルトラの星 光る時』

 暗殺宇宙星人ナックル登場(初代マンとセブンは登場しない)

*72年3月号『バルタン星人Jr(ジュニア)の復讐』

 ロボット怪獣ビルガモ・宇宙忍者バルタン星人Jr登場

*72年4月号『魔神 学舎に咆(ほ)える』

 魔神怪獣コダイゴン・発砲怪人グロテス星人登場


 サブタイトルについては初出時はあったりなかったり(汗)、「ひらがな表記」も多いために、「完全復刻版」でのそれに便宜的に統一させていただいた(以降のコミカライズについても同様である)。


『小学二年生』71年9月増刊号『決戦 ウルトラ兄弟対11大怪獣』(『帰ってきたウルトラマン』)


 『小学二年生』71年9月増刊号に掲載された大長編漫画『決戦 ウルトラ兄弟対11大怪獣』の内容は以下の通りである。


 『ウルトラセブン』(67年)第9話『アンドロイド0(ゼロ)指令』に登場した人間大サイズの頭脳宇宙人チブル星人が、ウルトラシリーズの歴代人気怪獣である冷凍怪獣ペギラ・有翼怪獣チャンドラー・どくろ怪獣レッドキング・古代怪獣ゴモラ・酋長怪獣ジェロニモン・宇宙恐竜ゼットン・宇宙怪獣エレキング・冷凍怪獣ガンダー・透明怪獣ゴルバゴス・化石怪獣ステゴン・毒ガス怪獣モグネズンを復活させる!
 のみならず、なんと『セブン』第46話『ダン対セブンの決闘』に登場した巨大ロボット・ニセウルトラセブンまでをも復活させた!
 そして復活した怪獣たちを日本各地で暴れさせ、さらにはウルトラ兄弟の4番目である「帰ってきたウルトラマン」こと防衛組織・MAT(マット)の郷秀樹(ごう・ひでき)隊員を捕らえることに成功する!


 だが、チブル星人の力で同じく復活した友好珍獣ピグモンが、自らを犠牲にして郷隊員を救出!


――初代『ウルトラマン』(66年)第37話『小さな英雄』と同じパターンなのだが、漫画ならではの特撮ステージの広さの限界をはるかに超えた、怪獣の頭数の多さのスケール感では、60匹の怪獣が復活すると喧伝しながら再生怪獣が数匹だけにとどまってしまった『小さな英雄』をはるかに上回る!――


 郷隊員はウルトラマンに変身し、ニセセブンに対しては両腕を十字に組んだ必殺技・スペシウム光線で、最強怪獣であるゼットンには高速回転技であるウルトラスピンで1兆度の火の玉を跳ね返して見事に撃退する!


――71年当時の「帰ってきたウルトラマン」の固有名詞としては、だたの「ウルトラマン」と呼ばれることが多かった。翌72年以降からは初代ウルトラマンと区別するために、「新ウルトラマン」やその略称でもある「新マン」と呼ばれるようになっていく。10数年を経(へ)た83年ごろになると「ウルトラマンジャック」という新たな名称が誕生して、古い世代からの反発を受けるようになる・笑――


 しかし、残った怪獣軍団にウルトラマンはビルの屋上に追いつめられ――体重3万5千トンが乗っかったら、ふつうは崩れるやろ!・笑――、胸の中央にある活動限界を示すカラータイマーが赤く点滅を始める!


 そのとき、巨大な火の玉が飛来した!――初代『ウルトラマン』第1話で初代マンが地球に到来した際や、最終回で故郷へ帰還する際に出現した「赤い光球」のかたちを踏襲!――
 それが3つに分離すると、ウルトラ兄弟の長男であるゾフィー・前のウルトラマンウルトラセブンの3人が現れたのだ!


――当時の学年誌では、「帰ってきたウルトラマン」の方を「ウルトラマン」と呼称して、「初代ウルトラマン」のことは「前のウルトラマン」と呼称していた。中には「古いウルトラマン」などという呼称もあった・笑――


 ゾフィーが「パチッ!」と指を鳴らすという、実に人間クサい演出による号令で、ウルトラ兄弟と怪獣軍団の大激闘がはじまる!
 圧倒的なウルトラ兄弟の強さの前に、怪獣軍団は破れさるのであった!


 73ページ(!)にもおよぶ大長編の原作(シナリオ)は、『帰ってきたウルトラマン』第8話『怪獣時限爆弾』で脚本家デビューを果たして、『タロウ』と『レオ』ではメインライターを務めることになった田口成光(たぐち・しげみつ)である。


 この『夏の増刊』が発売された71年8月には、『帰ってきたウルトラマン』第18話『ウルトラセブン参上!』も放映されている。いわゆるウルトラ兄弟の3番目にあたる先輩ウルトラ戦士・ウルトラセブンがゲスト出演するという快挙をはじめて成し遂げたのだ。しかし、セブンが「ウルトラ兄弟」の一員であるというセリフは映像本編ではまだ登場してはいなかった。
 よって、ウラ設定を紹介する学年誌の記事などではなく、ストーリー性のある商業作品としては、本コミカライズこそが「ウルトラ兄弟」がはじめて大活躍した、歴史的な作品だと云っても過言ではないだろう!


ウルトラ兄弟」の誕生! 小学館学年誌側の人物列伝!


 「ウルトラ兄弟」という設定は、『帰ってきたウルトラマン』放映当時の『小学二年生』編集長・井川浩の発案だったそうである。当時『二年生』に連載中だった母子もの漫画『かあさん星』(作・谷ゆき子)が女子児童の絶大な支持を得ていたことから「親子・兄弟ものはウケる」との確信があったのだそうである。


 71年8月号(7月1日実売)に掲載された特集記事『なぜなにウルトラマンじてん』では、


ゾフィーが「いちばん上のおにいさん」
・前のウルトラマン初代ウルトラマン)が「二ばんめのおにいさん」
ウルトラセブンを「三ばんめのおにいさん」
ウルトラマン帰ってきたウルトラマン)を「いちばん下のおとうと」


 として、早くも「M78星雲で生まれた四人きょうだいです」と紹介している。


 続く71年9月号の別冊付録『ウルトラ怪獣じてん』にも同様の記事が掲載されていた。


 「ウルトラ兄弟」の名称が公式設定に昇格して、ウルトラシリーズの映像本編ではじめて語られたのは、飛んで72年3月31日(金)放映の『帰ってきたウルトラマン』最終回(第51話)『ウルトラ5つの誓い』に至ってであった。同話に登場したゲスト悪役・触角宇宙人バット星人による、「ウルトラ抹殺計画」とは「ウルトラ4兄弟(!)を皆殺しにすることだ!」という趣旨のセリフの中でである。



「そんな『ウルトラファイト』(70年)派の私にとっての次なる「ウルトラ」は学習誌の記事だった。そう考えると、テレビでオンエアされていたオリジナルの番組自体は体験した順位でいくと実は低いのではないか? とさえ思える。二次的な情報が強烈な印象を刻みこみ、関連商品がストーリーやドラマを超えて、記憶の中核を形成してたりする。なんせビデオのない時代だ。開示される情報に日々飢えていた」

(『学年別学習雑誌で見る昭和子どもクロニクル1 ウルトラ博物館』(小学館・03年12月20日発行・ISBN:4093874824)「私を映画の現場に飛びこませた「ウルトラ」と学年誌記事」映画監督 樋口真嗣



 怪獣映画・平成『ガメラ』シリーズ3部作(95~99年)でも名を上げた樋口真嗣(ひぐち・しんじ)も発言しているように、ひょっとしたら我々は円谷プロが製作した「ウルトラ」そのものではなく、小学館の「ウルトラ」を愛していたのではないのか? 最近はそんな気もしてくるのだ。
 第2期ウルトラをリアルタイムで体感した世代は、小学館学年誌に掲載された魅惑的なカラーグラビア記事や、内山大先生が描いていたような、いわばキレイな「夢の世界」で、実は子供番組としてはいささかヘビーでシビアな展開(汗)にも満ち満ちていたドロくさい「地ベタの世界」でもあった第2期ウルトラシリーズの印象を、良い意味で上書きしていた面もあったのではなかろうか?



「当時デスクだった上野(明雄)さんの提唱で、入社一、二年目の若手社員が中心になってウルトラマンを専門に扱うセクションを作っていたんです。番組にならって「MATチーム」なんていってましたね。
 毎晩遅くまで、時には泊まりこみで残業の連続だったけど、まだ大学の延長気分も残っていて、クラブ活動みたいで楽しかったですよ。『A』でTACチームに変わっても、僕らは習慣的にMATチームを名乗り続けていましたね。
 学年誌の記事や絵本まで、当時はまだデザイナーという役割がありませんでしたから、なにからなにまで、全部自分たちで手掛けていたんです。
 当時の学年誌に200票調査というのがあってね。一番よかった記事を男女別に集計したものなんです。ウルトラの記事は最高の時は男児で180票以上獲得していましたからね。無効投票も何票かあるから、これは驚異的な数字でした。(中略)
 当時のウルトラ人気はすごかったですから、かなりの量のページが用意されているわけです。学年誌自体ページ数が多かったこともあるんだけど、4色のカラーで始まった特集が1色ページまで続いているなんて構成は、この頃ならではだと思います。『三年生』では『ウルトラ五兄弟強さくらべ』(73年2月号)、『二年生』でいうと『ゾフィー物語』(73年10月号)なんかは大受けでした。(中略)
 ウルトラの国は確か学年誌の記事で先に模型を作りました。それ以前から何度も記事で取り扱って、徐々に姿が固まってきたんだよね。もちろん途中で円谷プロさんの方で設定固めはしてもらって、「この建物の後ろはこれ」なんていう図面を作ってもらってね。学年誌の記事を裏づける形で、テレビの方に登場した記憶があります」

(『学年別学習雑誌で見る昭和子どもクロニクル1 ウルトラ博物館』「最強部隊、小学館MATチーム」小学館出版局プロデューサー 八巻孝夫)



ウルトラ兄弟の設定については学年誌が先行した企画ですね。そうした扱いをしたいとの問い合わせが、当時の『小学二年生』の井川編集長からあってね、こちらとしては「まぁいいでしょう」とご返事しました。ただ「本当の兄弟ではない」ことのエクスキューズは出してもらうようお願いしたと思います。学年誌はいろいろな記事展開があって、僕ら作り手側も読んでいて「そうだったのか!」とヒザをたたくことの多い雑誌でしたね(笑)。
 それで、こちらも少しは関連づけをしようか、なんてことになって、『A』第1話でサブタイトルに「ウルトラ5兄弟」の文字を取りこんだり、「タロウは父と母の実の子」だとか、「セブンとタロウはいとこである」なんて設定を作りましたね。(中略)
 飲みに行ったときなど、「こんな記事で展開しておいてね」なんてリクエストをして、あとあとドラマで逆輸入できそうな企画をやっておいてもらうなんていうことも稀にはありましたね。
 『タロウ』でウルトラの国を登場させましたけれども、時間的な制限のあるテレビでは、細々とした説明はできないわけです。その点雑誌の記事であれば、一軒一軒の建物にくわしい説明書きが加えられます。(中略)いわばゲームの「攻略本」のような役割を果たしていてくれたんじゃないでしょうか」

(『学年別学習雑誌で見る昭和子どもクロニクル1 ウルトラ博物館』「学年誌ウルトラシリーズの攻略本だった!!」円谷プロ 満田かずほ)



 『帰ってきたウルトラマン』は序盤はともかく、そのやや地味な内容が祟ってか、第1クールで視聴率は低落していきTBS側が想定していた初代『ウルトラマン』のような超高視聴率がとれなかったために、第2クールいっぱいでの放映打ち切り(!)が検討されたころもあったという。
 しかし、第2クール中盤から視聴率はじょじょに上昇をはじめる。そして、特撮マニア間での評価は低かった最終第4クールが、その世評に反して実は最高平均視聴率を叩き出してもいる(笑)。
 もしも『小二』の井川編集長が「ウルトラ兄弟」という設定を考案して、それを学年誌の各誌のカラーグラビア記事で展開していなかったならば、児童間での盛り上がりにはいささか欠けてしまって、『帰ってきたウルトラマン』の第3クール以降の放映どころか、その後のウルトラシリーズ自体が存在しなかっのたかもしれない!?


 学年誌からの働きかけで「ウルトラ兄弟」の設定が成立したことは、マニア向け書籍の草創期から当時の第1期ウルトラシリーズ至上主義の文脈でやや否定的に語られてきたことだったのだが(汗)、前述した2003年に発行された書籍『ウルトラ博物館』での各種インタビューで、その具体的な功労者たちのお名前も遂に特定されたのだった!


 第1期ウルトラシリーズである初代『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』は、本編だけを純粋に観るかぎりではその内容に連続性はないともいえるのだが、初代ウルトラマンウルトラセブンのその故郷はともに共通で、M78星雲・光の国とされていた。
 だから、これらを共通の世界観として前面に押し出す発想があってもよさそうなものだし、『週刊少年マガジン』に連載された名漫画家・桑田次郎先生による『ウルトラセブン』コミカライズの第1話冒頭では、その共通設定に触発されたのだろう、地球上空の宇宙空間で初代ウルトラマンウルトラセブンが共演して初代マンがセブンにあとを託すという、出自設定的にもありうべき描写がすでに登場もしているのだ。


 しかし、先の満田氏の発言から見て、ウルトラシリーズを製作していた円谷プロダクション側は、『帰ってきたウルトラマン』第18話『ウルトラセブン参上!』でウルトラセブンをゲスト出演させていたのにも関わらず、小学館側からの働きかけと、そしてその後の雑誌展開の大成功を見てから「ウルトラ兄弟」の設定に本腰を入れたようでもあり、そのへんの良い意味でチャイルディッシュなヒーロー共演を前面に押し出すような発想は当初はあまりなかったのが事実のようだ。


 「ヒーローとはひとりで戦う者」であるという意識が、当時は根強かったのだろう。
 加えて、複数の作品を同一世界での出来事として連結して「世界観」が拡張されていくような、児童レベルでの知的なワクワク感を、視聴者や子供たちにも醸(かも)し出していくような、良い意味での「童心」や「SFマインド」に訴えかけていくような発想も、当時は全然一般的ではなかったのだろう。


 しかし、この「ウルトラ兄弟」という設定で歴代ウルトラシリーズを連結する発想に触発・インスパイアされたのだろう。翌72年4月から放映される『ウルトラマンA』の企画段階になると、ウルトラシリーズのみならず円谷プロの特撮ヒーローである『ミラーマン』(71年)や『トリプルファイター』(72年)なども含めて、自社製作の作品群を「銀河連邦」という名称で、同一世界での出来事だとして売り出していこうという動きが早くも観られるようになっていく――とはいえ、この動きは全然定着しなかったのだが・笑――


 こうした異なる作品を同一世界での出来事だとして連結・シリーズ化していく手法は、オタク第1世代や第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちによる「1回性」=「ファースト・コンタクト」ものを重視するテーゼによって、「ヒーローの神秘性」や「怪獣の恐怖性」を損なうものだとして、70年代末期から90年代にかけては、個人的には大変残念なことだったが、完全否定をされてしまう(汗)。


 しかし、昭和ウルトラシリーズの25年ぶりの正当続編として製作された『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)の登場を皮切りに、昭和ウルトラシリーズは完全復活を果たした。
 加えて、映画『ウルトラ銀河 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)では「SF」における「平行宇宙」の概念を導入! 昭和ウルトラとは異なる世界観であった平成ウルトラ世界のウルトラマンダイナことアスカ・シン隊員が、その看板作品『ウルトラマンダイナ』(97年)の最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971211/p1)で高次元世界へと移行していったことをうまく活かして、昭和ウルトラの世界に颯爽と登場したのだ!
 そして、近々上映予定である映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)では、また別の平行宇宙で『ミラーマン』(71年)や『ファイヤーマン』(73年)や『ジャンボーグA(エース)』(73年)の同族のようなキャラクターたちとも共演をするらしい!
 これは往年の「ウルトラ兄弟」や「銀河連邦」を構築した際の発想とも相似形なのである。単なる善と悪とのド突き合いを超えて、スケール雄大なワクワク感も惹起させてくれる試みではないか!?(笑)


『小学二年生』版『ウルトラマンA』作品リスト

ウルトラマンA [完全復刻版]

ウルトラマンA [完全復刻版]

ウルトラマンA [完全復刻版]

*72年5月号『輝け! ウルトラ5兄弟』

 ミサイル超獣ベロクロン・古代超獣カメレキング登場

*72年6月号『変身超獣の謎を追え!』

 変身超獣ブロッケン登場

*72年7月号『二次元超獣の奇襲!』

 忍者超獣ガマス登場

*72年8月号『死刑! ウルトラ5兄弟』

 殺し屋超獣バラバ・異次元超人エースキラー登場

*72年9月号『鳩を返せ!』

 大鳩超獣ブラックピジョン登場

*72年9月増刊号『ウルトラ5兄弟たいヤプール人』

 殺し屋超獣バラバ・異次元超人エースキラー・宇宙恐竜ゼットン・宇宙ロボットキングジョー・宇宙大怪獣ベムスター・用心棒怪獣ブラックキング登場

*72年10月号『復讐鬼ヤプール

 凶悪超獣ブラックサタン・銀(シルバー)星人宇宙仮面登場

*72年11月号『全滅! ウルトラ5兄弟』

 地獄星人ヒッポリト星人・ウルトラの父登場

*72年12月号『ウルトラの星に祈りを込めて』

 超獣人間コオクス登場

*73年1月号『この超獣 10,000ホーン』

 騒音超獣サウンドギラー登場

*73年1月増刊号『怪獣はか場のけっとう ウルトラ五兄弟たい40大怪獣!!』

 異次元超人巨大ヤプール・地獄星人ヒッポリト星人・40大怪獣超獣・ウルトラ軍団(!)登場

*73年2月号『神秘! 怪獣ウーの復活』

 火炎超獣ファイヤーモンス・雪女怪獣スノーゴン・伝説怪獣ウー(二代目)登場

*73年3月号『大超獣最後の逆襲!』

 ミサイル超獣ベロクロン登場


『小学二年生』72年9月増刊号『ウルトラマンA ウルトラ5兄弟たいヤプール人』


 『ウルトラ5兄弟たい(対)ヤプール人』も長らく幻の作品であった。


 のっけから話は飛ぶのだが、第2期ウルトラシリーズ最終作である『ウルトラマンレオ』が放映終了した直後の1975年度の『小学三年生』に『さよならウルトラ兄弟』というタイトルで連載されて、1978年には創刊間もない時期の児童漫画誌コロコロコミック』に『ザ・ウルトラマン』名義でも再連載を果たして大ヒットを放った、通称『ジャッカル大魔王』編。


 2007年にこの作品もコンビニエンスストア売りの『My First BIG』レーベルの単行本として、『ザ・ウルトラマン 死闘!ジャッカル対ウルトラ兄弟!!編』(小学館・07年11月21日発行・ISBN:4091087183)と銘打って再刊されている。
――ただし、「DVDウルトラシリーズ」発売との連動ではなく、「コロコロコミック30周年シリーズ」の連動企画としての刊行だった。当時はガレージトイメーカー・インスパイアから「レジェンドヒーローリターンズ」として、同作に登場する内山大先生のオリジナルキャラクターである宇宙警備隊アンドロメダ星雲支部隊長のウルトラ戦士・メロスや、その宿敵であるジャッカル大魔王のソフビ人形も発売されており、この単行本の応募抽選による読者プレゼントにも採用されていた――


 オリジナル展開のウルトラ漫画の嚆矢(こうし)にして、その中でも最も人気が高いであろう「ジャッカル大魔王」編は、今までにも何度も再刊されてきたので、すでに単行本を所有しているマニア諸氏も多かったことだろう。よって、今回の再刊はパスしようと思った御仁も多かったことと思う。
 しかし、そんなマニア心理を見透かしてウラをかいたのだろう(笑)。この単行本の巻末には、今まで幻だった『小学二年生』72年9月増刊号掲載の『ウルトラマンA ウルトラ5兄弟たいヤプール人』が、併せて完全復刻を果たしていたのである!


――なお、この作品は第3次怪獣ブームがピークに達していた『小学二年生』78年12月号にも、『ウルトラ兄弟物語 勝利のウルトラサイン』と改題して再録されたことがあるので念のため――。




 異次元人ヤプールがウルトラの星の軌道を狂わせ、地球に衝突させようとする!――なんと後年の『ウルトラマンレオ』(74年)第38話『決闘! レオ兄弟対ウルトラ兄弟』~第39話『レオ兄弟ウルトラ兄弟勝利の時』前後編の先駆けの発想が、この72年の時点ですでにあったのだ!――
 全世界に衝撃が走る中、『A』第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)~第14話『銀河に散った5つの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)の前後編に登場した殺し屋超獣バラバが復活! 東京に出現して暴れ始めた!
 ウルトラ兄弟の5番目・ウルトラマンエースが登場するや、同じ前後編ではこの宇宙のウラ側にあるというマイナス宇宙のゴルゴダ星でウルトラ5兄弟と対戦した悪のヒーロー・異次元超人エースキラーまでもが復活して東京に出現する!


エース「エースキラーに勝つには(ウルトラ5兄弟の合体エネルギー光球である)スペースQしかない。にいさんたちをよぼう!」


 ウルトラ4兄弟の能力をコピーされている超強敵・エースキラー相手ならば、ウルトラ兄弟が助っ人参戦する必然性も出ようというもの! 決して大勢でする弱いものイジメではないのだ!(笑)
 エースが宇宙空間に発したウルトラサインをキャッチした、「帰ってきたウルトラマン」と同一のデザインである「ウルトラ警備隊」の長官(!)はウルトラ4兄弟を地球に派遣する!


――こんなにも早い時点で、ウルトラ兄弟以外のウルトラ一族の同族別個体を登場させるという、ウルトラ世界の広大な「世界観」といったものを読者に想起させる発想がすでにあったのだ! ただし、『ウルトラセブン』に登場した防衛組織と同一の名称になってしまっているのだが、当時の学年誌ではウルトラ一族が設立した「宇宙警備隊」の名称を「ウルトラ警備隊」として誤って記述してしまうことが多かった・汗――


 超獣バラバの右手のムチに首を絞められ、エースキラーが発したウルトラ兄弟の長男・ゾフィーの必殺技であるM87光線を浴びて苦しむエース!
 エースキラー帰ってきたウルトラマンの武器であるウルトラブレスレットを繰り出そうとする!


 そのとき、ウルトラセブンがそのトサカ部分を分離して投擲(とうてき)する宇宙ブーメラン・アイスラッガーが宙を舞って、バラバのムチを切断した!
 ウルトラ兄弟の登場にあわてふためいたヤプールエースキラーを消滅させ、バラバはセブンが両腕をL字型に組んで放つ必殺光線・ワイドショットで砕け散った!


 だが、新たに宇宙恐竜ゼットン・宇宙ロボットキングジョー・宇宙大怪獣ベムスター・用心棒怪獣ブラックキングが出現!
 なんとテレビ本編の初期話数での超獣出現シーンのように空を割って出現させることで、異次元人ヤプールの手先として登場したことも表現しているのだ! こうして単なるテレビ本編のビジュアルを再現するだけでなく、クドクドと説明しなくてもそこに二重・三重の作劇的な意味あいも込めてくれる手法は、実にうまいし子供たちにも嬉しい趣向だろう!


ゾフィー「われわれを地きゅうにひきとめる気だ! (初代)ウルトラマン、光の国へ帰れ!」


 同じころ、同作の防衛組織・TAC(タック)基地本部では、ウルトラの星を破壊するミサイルの発射秒読みが開始されていた!
 ミサイル発射に反対する竜隊長と、第2期ウルトラ恒例の「悪い長官(笑)」が、激しく対立する場面がきちんと描かれているのもナイスである。
 ただ、この場面にはエースに合体変身する北斗隊員と南夕子隊員も描かれており、何の説明もないままエースが突然戦いの舞台から姿を消しているのは困ったものだけど(笑)。


ゾフィー VS ベムスター&ブラックキング!
ウルトラセブン VS ゼットン


 帰ってきたウルトラマンがその必殺武器・ウルトラブレスレットで遂にキングジョーを倒した!


 これらもパノラマ風の見開きページで描かれている!


 彼らの大決闘の最中、遂にウルトラの星に向けてミサイルが発射された!


 再びエースが登場し、ウルトラ兄弟たちにウルトラの星が爆破されてしまったことを告げる(汗)。


 ブラックキングはセブンのエメリウム光線に、ベムスターはエースのキングキック――本放映当時に設定されていた映像本編では未使用に終わった技――とタイマービーム――タイマーショットの誤まりだろう・笑――に倒される!


 残ったゼットンと再度その姿を見せるエースキラー


ゾフィー「(初代)ウルトラマンがもどらなければ」
エース「スペースQは、つかえない」


 のちの東映スーパー戦隊シリーズ、たとえば『バトルフィーバーJ』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120130/p1)第37話『電光剣対風車剣』における、曙四郎(あけぼの・しろう)=バトルケニアが欠けているから必殺技のペンタ・フォースが使えない! みたいな、ヒーロー一般の魅力でもある「万能性」にはやや欠けてしまうというきらいはあるのだが、無敵の必殺技にも使用上の縛りや弱点や欠点がある! という、それはそれでウルトラシリーズではともかく、後年のヒーローものではよくあるパターンをここでもすでにやっている(笑)。


 ゼットンはTACの戦闘機・タックアローの攻撃にやられる!――初代ウルトラマンをその最終回で倒した超強敵怪獣が、いくらなんでもその弱すぎる扱いはダメだろう!・笑――


 初代ウルトラマンもなんとか戻ってきた!
 ウルトラ兄弟は5兄弟の合体エネルギー光球技・スペースQでエースキラーを遂に葬り去った!



 初代マンはゾフィーに「地球に迫っていたウルトラの星は、実はヤプール人が作った偽もの」であったことを報告し、ゾフィーは「やはり、そうだったのか」とひとりごちて、ウルトラ4兄弟はウルトラの星へと帰っていくのであった……


――「やはり、そうだったのか」って…… 絶対にゾフィー兄さんの後出しジャンケン発言だろ!?・笑――


『小学二年生』73年1月増刊号『ウルトラマンA 怪獣はか場のけっとう ウルトラ五兄弟たい40大怪獣!!』


 『小学二年生』73年1月増刊号に掲載された『ウルトラマンA 怪獣はか場のけっとう ウルトラ五兄弟たい(対)40大怪獣!!』では、『A』本編における2大強豪宇宙人であった異次元超人・巨大ヤプールと地獄星人ヒッポリト星人がタッグを組んで(!)、宇宙の「怪獣墓場」(!)に眠っている40匹以上の怪獣・超獣を甦らせる!


――この「怪獣墓場」とは、初代『ウルトラマン』第35話で初登場した宇宙空間に存在する怪獣たちの墓場である。飛んで73年の円谷特撮巨大ヒーロー『ジャンボーグA(エース)』(73年)での登場を皮切りに、さらに飛んで『ザ★ウルトラマン』(79年)第27話『怪獣島(じま)浮上!!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091102/p1)や、『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)第15話『悪魔博士の実験室』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100808/p1)、またまた飛んで『ウルトラマンメビウス』(06年)第21話『虚空(こくう)の叫び』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061026/p1)や、映画『ウルトラ銀河 THE MOVIE』(09年)などにも再登場を果たしている。人間ドラマ的・社会派テーマ的には意味はないのだし(笑)、「SF」というよりかは「呪術」的な舞台装置でもあるのだが、エンタメ作品としては実に「童心」に訴えかけてもくる魅惑的な設定ではあったのだ。この作品ではそれらを先駆けること1972年の時点で、早くも『怪獣墓場』ネタを採用していたのだった!――


 さらにヤプールウルトラマンエースに化けて、『A』第3クールから第4クール前半にかけてのレギュラーであった梅津ダン少年(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061120/p1)をはじめとする多くの子供たちを誘拐!
 泣きわめく子供たちの中で、ダンだけはただひとりコラえることができていて、「ウルトラ5つの誓い」を叫び続けていた! このあたりの「負けん気」は、テレビ本編でのダン少年の描写を見事に引き継いでもいる。


 この「ウルトラ5つの誓い」は、『帰ってきたウルトラマン』最終回と、その後日談でもあリ同作の子役レギュラー・次郎少年をゲスト出演させた『ウルトラマンA』第10話『決戦! エース対郷秀樹』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060709/p1)でも披露されたものである。
 とはいえ、ダン少年が「ウルトラ5つの誓い」を知っていたというのは初耳なのだが、本編では描かれてはいなくても、第10話のラストで次郎少年から「ウルトラ5つの誓い」を聞かされていたウルトラマンエースこと防衛組織・TAC(タック)の北斗星司(ほくと・せいじ)隊員の兄ちゃんが、ダン少年に直々に伝授していたとしても全然不思議じゃないだろう!(笑)


 地球の危機を察知したウルトラの父は、ウルトラ4兄弟を地球へと派遣! 北斗隊員の前になんと彼ら4人は変身前の人間体の姿で現れた!
 しかも、背広スーツ姿のゾフィー以外、ハヤタ隊員(初代ウルトラマン)、モロボシ・ダン隊員(ウルトラセブン)、郷秀樹隊員(帰ってきたウルトラマン)は、変身前の防衛組織の隊員服姿での登場なのだ!(涙)


 空中に浮遊するヒッポリト星人からの挑戦状を受けて、ウルトラ5兄弟は怪獣墓場に急行する! だが子供たちを人質にとられており、怪獣&超獣軍団には手も足も出せない!
 ウルトラ兄弟のピンチにウルトラの父が颯爽(さっそう)と登場! ウルトラ兄弟たちに子供たちを地球に送り届けるように命じて、自身は自ら40匹もの怪獣&超獣軍団にたったひとりで立ち向かっていく!


 無事に子供たちを地球に送り届けて、怪獣墓場に戻ってきたウルトラ5兄弟は、力を使い果たして倒れているウルトラの父の姿を見た…… ウルトラ兄弟たちの怒りが爆発!


ゾフィー VS 変身超獣ブロッケン&台風怪獣バリケーン
初代ウルトラマン VS 対昆虫怪獣ノコギリン&宇宙牛人ケンタウルス星人!(後者がなぜだか悪役・笑)
ウルトラセブン VS 宇宙大怪獣ベムスター&変幻怪獣キングマイマイ&吸血宇宙星人ドラキュラス!
帰ってきたウルトラマン VS 古代超獣カメレキング&一角超獣バキシム
ウルトラマンエース VS 怪魚超獣ガラン!


 これらが見開きページで、パノラマ的にダイナミックに描かれているのだ! この迫力ある構図は先述した『決戦 ウルトラ兄弟対11大怪獣』や、『小学二年生』75年3月号に載された『ウルトラマンレオ』コミカライズ同誌版の最終話『ウルトラ兄弟大勝利!』などでも用いられており、編集部から相応にページ数を与えれており、紙幅に余裕があったがゆえの画面演出でもある!


 ウルトラ5兄弟の応援に、ウルトラ兄弟の故郷・光の国から数十人ものウルトラ戦士の一団「ウルトラ軍団」(!)も駆けつける!


 巨大ヤプールとヒッポリト星人の頭上を覆い尽くすように、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)ではじめて実写映像化された多数の「雑魚(ざこ・笑)ウルトラマン」こと、当時の学年誌でも公表されていた宇宙警備隊の一般隊員たちは100万人もいる! というウラ設定を合理的に活用して、彼らの一部を空一面に登場させて逆転勝利の勝機とする描写が、これまた見開きページで描かれることとなったのだ!


 ところで、現在の作品では、いわゆる「マント」はウルトラの父やウルトラ6兄弟などしか着用していない。
 こうしたコミカライズでの「雑魚ウルトラマン」たちまで「マント」をまとっていた印象があまりに鮮烈な記憶として残っている筆者としては、光の国ではみんなが「マント」を着用しているのだという印象があるので、少しだけ複雑なものはある……
 とはいえ、遂にウルトラ6兄弟がマントをまとった姿で実写映像されたことにはたしかに感動したので、今後はこの新設定の軍門に降ることとしよう!(笑) 


『小学二年生』版『ウルトラマンタロウ』作品リスト

ウルトラマンタロウ [完全復刻版]

ウルトラマンタロウ [完全復刻版]

ウルトラマンタロウ [完全復刻版]

*73年4月号『ウルトラの母は太陽のように』

 ウルトラ5兄弟・宇宙大怪獣アストロモンス・オイル超獣オイルドリンカー登場(ウルトラの母もシルエットで登場)

*73年5月号『恐怖のはらぺこ大怪獣!』

 再生怪獣ライブキング登場(テレビ本編とは異なりウルトラの母は登場しない)

*73年6月号『液体怪獣を追え!』

 液体大怪獣コスモリキッド登場

*73年7月号『東京の崩れる日』

 ゾフィー・大羽蟻怪獣アリンドウ登場

*73年8月号『怪獣墓場からの脱走者』

 ゾフィー・噴煙怪獣ボルケラー・虫歯怪獣シェルター登場

*73年9月号『涙のストリウム光線』

 ゾフィー・銀十字軍団(!)・火山怪鳥バードン登場

*73年9月増刊号『かがやけウルトラの星 けっせん! ウルトラ兄弟たい怪獣軍団』

 悪質宇宙人メフィラス星人・宇宙忍者バルタン星人・反重力宇宙人ゴドラ星人・暗殺宇宙人ナックル星人・分身宇宙人ガッツ星人・異次元超人巨大ヤプール・幻覚宇宙人メトロン星人・総数120匹の怪獣軍団登場

*73年10月号『消えた車は怪獣のエサだ!』

 しんきろう怪獣ロードラ登場

*73年11月号『ウルトラの泉の秘密』

 宇宙大怪獣ムルロア・ウルトラの母ウルトラセブン登場(セブンは1コマのみ。他のウルトラ兄弟は登場しない)

*73年12月号『神の子になった少年』

 悪質宇宙人メフィラス星人(二代目)登場

*74年1月号『ウルトラ7番目の兄弟』

 宇宙犬ラビドッグ(!)・極悪宇宙人テンペラー星人ウルトラ兄弟ウルトラの父ウルトラの母登場

*74年2月号『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』

 ウルトラ5兄弟・暴君怪獣タイラント登場

*74年3月号『地球が沈む! タロウ最後の戦い!』

 ウルトラ軍団(!)・熱怪獣ファイアント登場



 内山大先生の『帰ってきたウルトラマン』や『ウルトラマンA』時代のコミカライズは、比較的オーソドックスな内容であり、怪獣が1匹余分に出たりする程度でそれほどの冒険はしていなかった。
 『小学二年生』増刊号ではウルトラ兄弟が勢ぞろいする長編漫画を執筆してきたものの、『ウルトラマンタロウ』や『ウルトラマンレオ』のころになると、『小学二年生』の通常号でも頻繁にウルトラ兄弟をゲストに登場させるようになる。


 しかも、テレビ本編のように先輩ヒーローが助っ人参戦しても苦戦してしまって子供たちに歯がゆい思いをさせることもなく(汗)、颯爽とした大活躍をさせており、先輩ヒーローとしての「強さ」や「頼もしさ」を鮮烈に感じさせるように魅力的に演出されているのだ! 我々はテレビ本編でもこんな先輩ウルトラ兄弟たちの助っ人参戦編が観たかったのである!


 『小学二年生』版『タロウ』では7月号~9月号にかけては、なんと3号連続でウルトラ兄弟の長男・ゾフィー兄さんが登場するのだ!



 7月号掲載の『東京の崩れる日』は、ストーリー自体は基となったテレビ本編の第9話『東京の崩れる日』に忠実なのだが、タロウと大羽蟻怪獣アリンドウとの戦いを光の国で見ていたゾフィーがブラザーズ・マント――という名称は当時はないが・笑――を颯爽と脱ぎ捨てて、地球へと飛来!
 アリンドウにウルトラキックを豪快にかます
 タロウにアリンドウの弱点が脇腹であることを伝えると、タロウはそれを目がけて両腕を逆L字型に組んで放つ必殺技であるストリウム光線を発射した!
 ウルトラ兄弟の華麗なる連係プレーが遂にアリンドウにトドメを刺した!



 8月号掲載の『怪獣墓場からの脱走者』は、テレビ本編の第12話『怪獣ひとり旅』と第13話『怪獣の虫歯が痛い!』の設定をミックスしてアレンジしたオリジナル作品となっている。


 なんと噴煙怪獣ボルケラーは「怪獣墓場」(!)を脱走し、ゾフィーに追いかけられる存在として登場!
 地上に落下してきた際に、少年の息子を助けようとした父親を飲みこんでしまった怪獣ボルケラーに対して、ゾフィーは思うように戦うことができない。
 『タロウ』の防衛組織・ZAT(ザット)がボルケラー攻撃に出動するが、ゾフィーはそれを制止してボルケラーの思うがままにされてしまう!


 主人公であるZATの東光太郎(ひがし・こうたろう)隊員はウルトラマンタロウに変身!
 ボルケラーにスワローキックを喰らわし、ストリウム光線を浴びせようとするが、ゾフィーからボルケラーの腹の中に少年の父がいることを聞いて、なんとミクロ化(!)してボルケラーの体内に侵入!
 タロウが無事救出に成功するや、ゾフィーはボルケラーを幻の必殺技であるM87光線(!)で倒した!!


 あとはタロウに任せて、光の国へと帰還するゾフィー……


 ゾフィーの登場はここまでなのだが、このあとタロウはなんと! 劇中ではオープニング主題歌バックのZAT基地格納庫内での映像のみで本編では未登場に終わってしまったZATの海底メカ・アイアンフィッシュ(!)の危機を救うために、海中で虫歯怪獣シェルターと戦うのである!
 たまにはこういう地底メカや海底メカも活躍する、目先の戦場を変えたエピソードも観てみたい! そんな子供たちの願望に応えてみせたバトル・シチュエーションをここぞとばかりに実現してみせる旺盛なサービス精神!――内山大先生や学年誌の担当編集者たちも、自分たち自身こそがそれを観てみたかった!?――



 9月号掲載の『涙のストリウム光線』は、テレビ本編の第18話『ゾフィが死んだ! タロウも死んだ!』~第19話『ウルトラの母 愛の奇跡!』の超短縮バージョンである――この2話を含む3部作の第1話であった第17話『2大怪獣タロウに迫る!』のことをカウントに入れなかったのは、食葉怪獣ケムジラが登場しないから・笑――。
 よって、ゾフィーが登場するのは当然なのだが、これがまた本編以上に涙を誘う展開になっている!


 火山怪鳥バードンに苦戦するタロウのもとに、颯爽と登場するゾフィー


ゾフィー「タロウ 大丈夫か!?」
タロウ「ゾフィーにいさん」
ゾフィー「タロウ、光の国へ帰ってけがをなおしてこい。その間(あいだ)、わたしがくいとめる。ウルトラの母がまっているぞ」
タロウ「しかしにいさん」
ゾフィー「きずをなおして、早くもどってきてくれ」


 ゾフィーの透明な球形状のウルトラバーリヤに包まれたタロウは光の国へと向かい、ゾフィーは単身バードンに立ち向かう!
 しかし、バードンの鋭い爪で、胸の中央にあるウルトラ一族の命でもあるカラータイマーを破壊されてしまった!


 そこに治療を終えたタロウが戻ってきた!


 ゾフィーバードンをがっちりと組み伏せ、「タロウ、今だ! ストリューム光線をうて!」と叫ぶ!


タロウ「ええっ!? それはできない……。怪獣からはなれてくれ!」
ゾフィー「かまわん うつんだ! 今をのがしたらチャンスはない! カラータイマーをこわされた。わたしの命もあとわずかなのだ。はやくうつんだ! タロウ! これは警備隊隊長としてのめいれいだ!」
タロウ「にいさん……」
ゾフィー「頼む うってくれタロウ!」
タロウ「ゾフィーにいさん!」


 ゾフィーごとバードンにストリウム光線を放ってしまうタロウ!


タロウ「ゾフィーにいさん ゆるして……」


 ガックリと膝を落としてしまうタロウ。


 そのとき、空の彼方から、光の国の看護組織・銀十字軍の長でもあるウルトラの母と、ウルトラの母の姿に似た女性ウルトラ族である銀十字軍の数十名もの一団(!)が現れる……


ウルトラの母ゾフィー……。りっぱでしたよ……」(泣)



 泣かせるのはこればかりではないのだ!


 74年1月号掲載の『ウルトラ7番目の兄弟』は、テレビ本編の第33話『ウルトラの国大爆発5秒前!』~第34話『ウルトラ6兄弟最後の日!』前後編の後日談(!)ともなっており、この前後編に登場した極悪宇宙人テンペラー星人が軍団(!)としてリベンジしてきて、光の国を占領してしまうのだ!
 ウルトラの父ウルトラの母・ウルトラ5兄弟、そして第25話『燃えろ! ウルトラ6兄弟』で光の国に帰還したタロウを出迎えた宇宙犬ラビドッグ(!)を殺人バリアーに閉じこめ、ニセのウルトラサインでタロウをおびき出す。


 バリアーを壊そうとするタロウだが、そのときラビドッグがバリヤーに突撃! 高圧電流でラビドッグはひとたまりもなかったが、バリヤーの発生装置が破壊された!


 タロウはテンペラー星人の隊長をストリウム光線で倒して、ラビドッグの仇をとる!


 バリヤーから脱出したウルトラ5兄弟とタロウは、兄弟全員の力を合わせた光線技・ウルトラビッグパワーでテンペラー星人の宇宙船を粉砕した!


 ラビドッグの墓前で回想にふけるタロウ……


ウルトラの父「わたしたちは、ラビドッグをウルトラ7番めの兄弟とよぶことにしよう。ラビドッグの名は、いつまでもウルトラの国にのこるであろう」


 翌年度にウルトラ7番目の兄弟に加入したのは、獅子座L77星出身のウルトラマンレオなので、今となってはその部分は不整合ではある。
 しかし、テレビの純粋コミカライズではなく、個別のイベント編の後日談でもあるオリジナルエピソードであり、テンペラー星人も軍団(!)として登場するという、ある意味では後年の量産型の敵ロボットが大挙登場するようなリアルロボットアニメ的な発想のエピソードには、スケールも実に大きく感じられてワクワクとしてくるのだ!


 テレビの映像本編の各話の時系列の隙間を埋めていたとしても全然不思議ではない、語られざる「準・本編」や「番外編」といった、子供たちの歴史年表的な興味関心をも惹起する手法。
 それは洋の東西を問わない、後年の『ウルトラマン』シリーズ・『スター・ウォーズ』シリーズ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200105/p1)・『スタートレック』シリーズ・『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)・『機動戦士ガンダム』シリーズ(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)などにおける、映画やテレビの本編だけではなく、漫画や小説やオリジナルビデオでシリーズの隙間を埋めて、脇役キャラクターたちにも焦点を当てていき、その「世界観」や「歴史観」を広大に拡大していくような、その後に世界的にも隆盛を極めていく手法の先駆け・萌芽ではなかっただろうか!?



 そして74年3月号掲載の『地球が沈む! タロウ最後の戦い!』(最終回)では、南極に現れた熱怪獣ファイアントのために南極の氷が溶け出し、日本各地を津波が襲う!
 ZATが攻撃に向かうが、ファイアントが発する熱はミサイルすらも溶かしてしまった!


 そこに現れるウルトラ5兄弟をはじめとする数百人の「ウルトラ軍団」!
――なんと今回はウルトラ5兄弟のみが「マント」を着用していた! アレッ? 映画『ウルトラ銀河伝説』における「ブラザーズ・マント」の設定はこのエピソードからの引用だった?・笑――


 ウルトラ戦士数百人が全員で怪獣ファイアントを目がけて、一斉に冷凍光線・ウルトラフリーザーを発射する!


 だが、ファイアントの繰り出す熱攻撃に、雑魚ウルトラマンたちは次々に倒れていく!


 光太郎は戦闘機・スーパースワローでファイアントに突撃! そのままタロウに変身して、捨て身の自爆必殺技・ウルトラダイナマイトを放った!!


 崩れおちるタロウを抱え、ゾフィーとウルトラ軍団は光の国へと帰っていくのであった……


『小学二年生』73年9月増刊号『かがやけウルトラの星 けっせん! ウルトラ兄弟たい怪獣軍団』(『ウルトラマンタロウ』)


 2010年10月1日に発売された『ウルトラコレクションボックス ザ・内山まもる』では、先にもふれた『小学二年生』73年9月増刊号に掲載された大長編漫画『かがやけウルトラの星 けっせん! ウルトラ兄弟たい怪獣軍団』も遂に完全復刻されていた。


 この『かがやけウルトラの星』も、当時の雑誌からダイレクトに復刻されていることから、元の原稿は現在行方不明なのだろう。しかし、この長編漫画のイントロでもあったカラーグラビアの発色の良さも含めて、比較的きれいな状態で復刻されているのは実に喜ばしいことだ。


 そのカラーグラビアは、タロウが力強くパンチを決める扉に


「絵・内山まもるとウルトラグループ(!)」


 とクレジットされている。


 ウルトラグループの中には当時、内山大先生のアシスタントを務めており、のちに内山大先生に代わって『コロコロコミック』や小学館学年誌ウルトラシリーズのオリジナル漫画やコミカライズを描き続けた、かたおか徹治先生の名前もあり、これは今回の新たな発見である。


 ページをめくると、


メフィラス星人「うふふ、地きゅうはおれたちのものだ!」
ウルトラマンタロウ「行くぞ、怪獣軍団をたたきつぶすぞ」


 と、見開きの2色で向き合う両雄のグラビア姿が!


 このメフィラス星人は、初代『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』におけるメフィラス円盤内での、初代マンことハヤタ隊員との会話場面からコラージュしたものかと思われるが――この『夏の増刊』はメフィラス星人2代目が登場する『タロウ』第27話『出た! メフィラス星人だ!』が放映される前の発売なのである――、タロウとの構図もバッチリと決まっており、これは今回の大長編漫画の予告編の意味も兼ねていて、いっそうの期待が高まる!


 そして「さあ、読もう!」とウルトラ6兄弟ががっちりスクラムを組む写真の下には、若かりし日の内山大先生のお姿も! 内山大先生は1949(昭和24)年1月生まれのいわゆる第2次世界大戦が終結した直後の世界的なベビーブーマー世代のいわゆる「団塊の世代」なので、当時まだ24歳なのだが、けっこう今で云うイケメンであるのがまた憎い!(笑)




 ZATのZATバルーンなるこの大長編漫画オリジナルの大きな気球の試運転中、東光太郎隊員は海底火山の爆発と円盤の大群に遭遇! さらに付近の島に『帰ってきたウルトラマン』に登場した水牛怪獣オクスターが上陸する!


 島民の危機に光太郎はウルトラマンタロウに変身するが、もうひとり、島民の脱出に力を貸していた謎の青年がウルトラキング(!)なる巨大超人に変身する!


――ここで登場するウルトラキングはもちろんウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングのことではない。ウルトラマンキングは翌74年の『ウルトラマンレオ』の中盤で初登場したキャラクターなので、ここでのネーミングの一部重複は仕方がないので見逃そう・笑――


 ウルトラキングはクロスした両腕から放ったスター光線で怪獣オクスターを倒すが、怪獣軍団が地球に向かいつつあり、ウルトラ兄弟もすぐ日本に向かうとのウルトラサインがタロウに届く!


 相次ぐ地球の異変に、ZATは謎の青年・げんすけを先の戦いの功績からZAT隊員(!)として迎え入れた。


 同じころ、


・北海道に宇宙忍者バルタン星人!
・東北地方に反重力宇宙人ゴドラ星人!
・東京に暗殺宇宙人ナックル星人!
中部地方に分身宇宙人ガッツ星人
・四国に異次元超人巨大ヤプール
・九州に幻覚宇宙人メトロン星人


 そして、それぞれが率いる総数120匹もの怪獣軍団が現れ、総攻撃を開始した!!


 関西と中国地方にはいっさい怪獣が出現していないのはナゼだ!?(笑)


・北海道に初代ウルトラマン
・東北地方にウルトラセブン
中部地方帰ってきたウルトラマン
四国地方ウルトラマンエース
・九州にウルトラ兄弟の長男であるゾフィー


 そして東京にはウルトラマンタロウが現れ、次々に怪獣軍団を撃退していく!


 かの脚本家・長谷川圭一が映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・松竹)の製作前に練り上げていた流産プロット『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟2』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20130317/p1)では、


・横浜に宇宙大怪獣アストロモンス!
・北海道に宇宙怪獣エレキング
・京都に古代怪獣ゴモラ
・名古屋に古代怪獣ツインテール
・沖縄に一角超獣バキシム


 といった、歴代ウルトラシリーズの人気怪獣たちが登場して、


初代ウルトラマンが京都に!
ウルトラセブンが北海道に!
帰ってきたウルトラマンが名古屋に!
ウルトラマンエースが沖縄に!


 それぞれが急行して、横浜では当時最新のウルトラマンメビウスがアストロモンスと対戦! などという、まさに夢の対決が描かれていたものだ。


 このようなパノラミックなエンタメ活劇優先の同作が、実現ができなかったことがいまだに惜しまれる……(涙) 中年オヤジの第1期ウルトラシリーズや1960年代リスペクトなノスタルジードラマだった『超8兄弟』よりも、大画面で鑑賞する映画では複数ヒーローVS複数怪獣の高揚感こそを作劇の中心に据えるべきだろう!


 まぁこういった複数ヒーローVS複数怪獣ものは、別に長谷川先生や内山大先生だけではなく、1960年代の第1期ウルトラシリーズの各種の怪獣図鑑の時代から、パノラミックな見開きページの挿絵画像などでも描かれてきたものだし、そういったものに仮にまったく遭遇していなかったとしても、往時の子供たちは「ごっこ遊び」やソフトビニール人形や落書きなどで、ヒーロー集団VS怪獣軍団の戦いを妄想してワクワクしてきたのであったのだが……



 そして、げんすけはウルトラキングに変身し、日本各地に飛び回ってウルトラ兄弟たちを助けて大活躍する!
 東京に戻ってきたウルトラキングはタロウとともに怪獣軍団を撃退し、東京侵略隊長のナックル星人を絞めあげるが……


ウルトラキング「おい、このへんでひきあげろ」
ナックル星人「わかった。うまくやれよ キング」


 空の彼方へと逃げ去っていくナックル星人率いる怪獣軍団。


 地上に平和が戻り、ウルトラキングとげんすけの人気が人々の間で高まる。
 ZATバルーンで飛行中だった光太郎と南原(なんばら)隊員、そしてげんすけは、途中でテレビ本編でもレギュラー・キャラクターであった健一少年をはじめとする子供たちを乗せてあげる。


 しかし、げんすけは子供たちを利用して光太郎の左腕に付けている変身アイテム・ウルトラバッジを地上へと落下させてしまい、バッジを取ろうとした健一は頭をぶつけて気絶してしまう!


光太郎「おまえの正体はなんだ!」
げんすけ「知りたいか 光太郎」


 げんすけがバルーンから後ろずさりに飛び降りて変身する! げんすけの正体は悪質宇宙人メフィラス星人であったのだ!


 初代『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』に登場したメフィラス星人が、東京・丸の内の28番街に出現させたバルタン星人3代目・凶悪宇宙人ザラブ星人2代目・誘拐怪人ケムール人2代目は、近年の一部の特撮マニアたちからは実体のないホログラフィー(立体映像)であったとする説も唱えられている。云われてみれば、彼らは物理的な破壊活動はしておらず、メフィラス星人のブラフ(ハッタリ)であった可能性も高いワケであり、それはそれでありうべき合理的な推論ではある。
 しかし、やはり幼いころに我々はこれらの配下の宇宙人たちを実在の存在として捉えていた。そして、それらの強力な宇宙人を配下に従える上位の存在として、メフィラス星人のことを捉えていた子供たちが大勢だろう。


 メフィラス星人が近年に至って、『ウルトラマンメビウス』や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100331/p1)などに、繰り返して同族の別個体が登場するようになったほどに、いまだに高い人気を保ち続けているのは、別に「知的」で「紳士的」だからだという理由ばかりではなく、バルタンやザラブやケムールを配下に従えたことがあり、その黒光りした体色ともあいまって、こういう怪獣軍団や宇宙人軍団のトップに君臨しそうなマフィアのボス的なスゴ味や貫禄もあるからなのだろう。


 内山大先生的には「メフィラス星人は黒ベタ中心の配色であることから、漫画で使いやすいデザインなので好きだった」とのことだそうだが、やはり当時の学年誌の担当編集者も含めて、宇宙人・怪獣軍団のボスとしてふさわしいキャラクターだと考えていたのだろう。



 筆者のあいまいな記憶で申し訳がないのだが、たしか『小学一年生』74年2月号に掲載された『タロウ』のコミカライズでも、怪獣軍団のボスはこのメフィラス星人であった!


 ちなみに、この『小学一年生』版の『タロウ』コミカライズは、小学館の『週刊少年サンデー』73年4月15日号~8月12日号でも、ほとんど『デビルマン』(72年・東映 NET→現テレビ朝日)の永井豪による原作漫画版(72年)と同じようなノリの(笑)、実におぞましいオリジナルの『タロウ』コミカラズを描いていた石川賢が担当していた――よりにもよってなぜ高学年誌ではなく『小学一年生』に!?・笑――。


 鬼才・石川賢(いしかわ・けん)先生は、合体ロボットアニメの元祖『ゲッターロボ』(74年)の原作漫画版――まぁ実際には当時の『仮面ライダー』や『マジンガーZ』などとも同様、原作名義ではあっても同時進行である今で云うメディアミックス展開の作品である――でも知られている永井豪先生のアシスタントで、永井先生ダイナミックプロに所属している漫画家でもある。
 この異形(いぎょう)でベビーな内容である石川賢版は、第3次怪獣ブームにおける熱狂的なウルトラ大ブームに便乗して、79年3月1日にも単行本として再販(ASIN:B000J8IR8U)されたことがあったことから、当時の子供たちや特撮マニア間でも相応に知られてはおり、テレビ本編の牧歌的な内容とは真逆なシビアな内容はマニア間での評価も高くて、定期的に出版社を変えて再販もされてきた(86年・ISBN:488653323X、99年・ISBN:4575936553、16年・ISBN:4778033094)。


 マニア向け書籍『まんが秘宝Vol.2 つっぱりアナーキー王』(洋泉社・97年9月発行・ISBN:4896912772)において特撮ライター・切通理作(きりどおし・りさく)は、石川賢版『タロウ』終盤でのタロウの顔面に生じた亀裂から漏れてきた強烈な「光」を指して、昭和のウルトラシリーズとは世界観が異なる平成ウルトラシリーズ第1弾である『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)におけるウルトラマンの神秘性や「光」の概念にも通じるものがあるという趣旨の文章を書き下ろしている。
 その一点だけを取れば、たしかにこの「光」はシャープでクールでハイセンスな「SF」的な香りがするのだが、しかし基本的には「SF」ではなく下世話な「エログロ・バイオレンス」(笑)な方向性での異色作として優れているのにすぎない石川賢版のグロさこそが、ヤバさにも接近していてそこに抵触(ていしょく)しているから実は『ウルトラマン』の秘められた本質にも接近していた正道・本道でもあったのだ! 作品としのクオリティーも高いのだ! と云わんばかりの持ち上げ方をしているようにも取れるその論法には、石川賢版『タロウ』を持ち上げたいという切なる気持ちは実によく伝わってくるのだが、失礼ながら少々ムリがある論法だと思えて首を傾げてしまうところもあったのだが……



 メフィラス星人に蹴飛ばされて、海へと落下していくZATバルーン!
 その衝撃で正気に戻った健一の手には、落下したと思われていたウルトラバッジがしっかりと握られていた!(笑)
 健一からバッジを受け取り、光太郎はタロウへと変身!


 いやぁ、この華麗なる連係プレー! 『タロウ』には欠かせない存在であったレギュラー少年・健一くんに、足手まといなだけの人質要員ではなく、きちんとした活躍の場を与えてくれているのもさすがである!
 ……と云いたいところなのだが、この描写では健一くんに光太郎の正体がタロウだとバレてしまうよ~(汗)。今回はパターン破り的に無言で変身して、変身の瞬間についてはその閃光で目撃しなかった! とかのウマいエクスキューズ描写はほしかったところだなぁ。


 メフィラス星人はウルトラキングへと変身、空中でタロウとの激しい死闘が展開される!


 そして再び姿を見せる宇宙人&怪獣軍団! そこに颯爽と登場するウルトラ5兄弟!


ゾフィー VS ブラックキング!
・初代マン VS ベムスター
・セブン VS エレキング
・新マン VS ブラックサタン!
・エース VS ヒッポリト星人!


 これまた見開きの一大パノラマで描かれている! 実にカッコいい!


タロウ「キング、いやメフィラス、このしょうぶ(勝負)はあとでつけよう」
キング「ふふふ、すきなようにしろ。どうせおまえたちは、しぬのだ」


 ウルトラキングから本来の姿に戻るメフィラス星人。このあたりはきちんと「紳士的」なメフィラス星人が描かれている(笑)。メフィラス星人としばし休戦し、怪獣軍団に向かっていくタロウ!


 タロウは地底怪獣テレスドンに後ろからはがい締めにされる!――その傍らには弟の地底怪獣デットンの姿も! ちなみに、デットンの着ぐるみはテレスドンの流用であることから、当時の学年誌怪獣図鑑のウラ設定ではこの2匹は「兄弟」とされ、70~80年代の子供たちは皆そういう設定なのだと知っていたのであった・笑――


 前方からは古代怪獣ツインテールのムチで胴体を巻かれて、絶体絶命の初代マン!
 初代マンはテレスドン一本背負いをかけて、ツインテールは下敷きになるが、初代マンはテレスドンに組みつかれたまま海中に落下!
 そこにやってきた竜巻怪獣シーゴラスが、なんと初代マンのカラータイマーをツノで突き刺してしまう!


メフィラス星人「うわっははは、ウルトラ兄弟よ! (初代)ウルトラマンはし(死)んだぞ!」


 初代マンの死がテレビ・ラジオを通じて一般大衆にも知らされるという地に足の着いたリアルな描写も素晴らしい!


アナウンサー「ウルトラ兄弟は怪獣軍団と、九州おき(沖)でち(血)みどろのたたかいをはじめました! 日本にこれい上(以上)のひがいを出させないためにウルトラ兄弟は、上りく(上陸)しようとする怪獣軍団をくいとめています! そして今、わたしたちのためにウルトラマンは、いのちをなげだしてくれたのです!」


 いやぁ、泣かせるし、燃えますなぁ!
 このような戦闘現場の周辺や、それに対するテレビ中継など、スポーツ根性ものや格闘技漫画や演劇漫画などにはよくあるような、観衆たちの大袈裟な心配や応援といったリアクションや絶叫、暑苦しいスポーツ実況解説(笑)などが、読者や視聴者の気持ちを代弁してくれるどころか煽(あお)ってくれたりもすることで、シーンの盛り上がりはずいぶんと違うものとなってくるのだ!


新マン「にいさん、ウルトラダブルをつかう!」
ゾフィー「やめろ、(新)ウルトラマン!」
新マン「ウルトラダブル!!」


 ウルトラダブルとは身長を2倍の80メートルの大きさにして新マンの力を倍増させるという、『帰ってきたウルトラマン』放映当時に設定だけはあったものの映像本編では描かれることがなく、今回が初披露なのかと思いきや……
 実はこれ、先述の『ウルトラ兄弟対11大怪獣』においても、ゴモラエレキング・ゴルバゴスに崩されそうになった高層ビルを支えるために一度披露していたのだ!


 こういう人間ドラマや社会派テーマではない、ウルトラマンの巨大化能力やミクロ化能力といったヒーローの「万能性」を見せつけて子供たちをワクワクさせたり、その超能力が戦術的にも勝機に結び付くようなかたちで合理的に活かされる戦闘シチュエーション・アクション演出に子供たちはワクワクとさせられるのだ!


 後年の映像作品では、テレビアニメシリーズ『ザ★ウルトラマン』第14話『悪魔の星が来た!!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090803/p1)で、通常は身長70メートルサイズで戦う同作の主人公ヒーローであるウルトラマンジョーニアスが、当時の児童誌などでも公表されていた最大120メートルまでは巨大化できるという設定を劇中でも披露! 稚気満々(ちきまんまん)なヒーローの特殊能力を主眼に据えたカッコいいアクション演出で、当時の子供たちも熱狂させている。ヒーローものではこういう「万能性」のカタルシスを感じさせる要素も非常に重要なのだ!


 ちなみに、『ウルトラ兄弟対11大怪獣』では先の高層ビルの中に、映像本編でもレギュラー・キャラクターでメインヒロインでもあった坂田アキとその弟の坂田次郎少年が閉じこめられていた…… って、コレも『ウルトラマンレオ』第48話『恐怖の円盤生物シリーズ! 大怪鳥円盤日本列島を襲う!』で描かれた、円盤生物サタンモアに襲われながらも必死で高層ビルを支え続けるレオの先取りみたいだなぁ。
 まぁ、円谷プロの文芸部にいた田口成光はともかく、円谷プロ外部からの招聘(しょうへい)であった大のオトナである脚本家たちが、学年誌の漫画にまで目を通すことは当時はありえなかっただろうから、あくまでも偶然の一致だろう。高層ビルを破壊しながら戦う巨大ヒーロー・ウルトラマンVS巨大怪獣の設定を煮詰めていけば、だれでもこのようなシチュエーションにたどりつくものなのだろう。
 高層ビルの中にいる人々を守るために戦うウルトラマンというシチュエーションは、たしか『コロコロコミック』特別増刊4号である『春の特別増刊号 ウルトラマン』(79年4月30日発行・3月30日実売)にも掲載されたテレビアニメ作品『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)のコミカライズでも存在していたと記憶している。


 本作の2年も前に自身が採用していたウルトラマンの特殊巨大化能力をここ一番というときに採用するとは! 絵的にはスゴいインパクトがあるし、内山大先生もヒーローの特殊能力から来る「万能性」が発揮されるカタルシスを好んでおり、それを自作の作劇にも採用してしまうような「子供心」「童心」が強いのだろう(笑)。
 それはさておき、このウルトラダブルも、新マンことウルトラマンジャックの取っておきの秘技として、今後の映像作品でも再現してほしい!


 棲星怪獣ジャミラ・宇宙怪獣エレキング・凶暴怪獣アーストロン・古代怪獣ダンガーを、ウルトラダブルで一度に粉砕する新マン! だが、それによってエネルギーを使い果たして、海中に没してしまう……
――棲星怪獣ジャミラは水に弱いはずなのに、なぜか平気で海で戦っていたりする・笑――


エース「うう くそっ。見ていろ! かたきはとるぞ! ウルトラサンダー!!」


 始祖怪鳥テロチルス・宇宙大怪獣ベムスター・台風怪獣バリケーン・吸血宇宙星人ドラキュラスに、エースの雷撃がトドメを刺す!


バルタン星人「エースめっ!」


 エースの背後に両手のハサミから光線を浴びせかけるバルタン星人! たまらず崩れ落ちるエース……


セブン「アイスラッガー!!」


 バルタン星人のみならず、メトロン星人ガッツ星人・ナックル星人・巨大ヤプールの宇宙人軍団を一度に倒してしまうアイスラッガー!――それまでいたハズのゴドラ星人がここではなぜか不在だが・笑――


「★おこった セブンの アイスラッガーが とぶ。しねっ、星人ども」


 などという欄外のコメントが、学年誌であってもテレビの放送禁止用語などもあまりなかった1970年代前半らしくて乱暴な言葉遣いである――『スペクトルマン』(71年)後期エンディング主題歌『ネビュラの星』の「♪に~くい怪獣、ぶっ殺せ~~」に通じるものがある・笑――。


 これらのウルトラ兄弟勢ぞろい長編でのセブンは、内山大先生の作品ではかなり活躍が目立ち、おいしい位置を占めているような印象がある。やはりアイスラッガーのような飛び道具は、漫画表現的にもそれだけ華があり、絵にしやすいから……ということなのかもしれない。
 新マンのウルトラブレスレットやタロウのキングブレスレットが第1期ウルトラシリーズ至上主義者の特撮マニアたちからは「ご都合主義だ!」などと長年批判されてきたためか、平成のウルトラマンたちは光線技ばかりで飛び道具を用いることがなくなってしまったのは、個人的には残念なことであった。
 『ウルトラマンメビウス』では、主人公ヒビノ・ミライ隊員の左腕に変身直前、変身アイテム・メビウスブレスが浮上してきて、変身後のウルトラマンメビウスもそれを左腕に装着しているが、これは同作の第1話の冒頭でウルトラの父から伝授されたものであった。同作に登場する2号ウルトラマンであるウルトラマンヒカリが左腕にハめている変身アイテム・ナイトブレスもまたウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングが授与したものだと劇中でも言及されていた。
 長大な歴史を持つシリーズものでは、そのような先輩ヒーローから渡されたアイテムを身にまとっていた方が、それと描かないまでも、その背後にさまざまなヒーロー同士の関係性やドラマ性が想起されてきて、広大な「世界観」をも結果的に提示してくれるものでもあるのだ。あるいは、子供も年長マニアも勝手に妄想してしまうのだ(笑)。先輩ウルトラ戦士との因縁付きでのアイテム装備を、今後は一般化させていった方がよいだろう!



メフィラス星人「くそ セブンめ。メフィラス光線をうけてみろ!」


 メフィラス星人が両眼から発した光線を喰らって、遂にセブンも倒れた……


ゾフィーメフィラス星人。よくも弟たちを、こんなめにあわせたな(静かな怒り)」
メフィラス星人「ふふふ。おまえたちも し(死)んでもらう!」
ゾフィー「おまえが生きているかぎり し(死)死なん!」


 初代マンも新マンもエースもセブンも倒れたが、ウルトラ兄弟最強の(ハズである・笑)ゾフィー兄さんは最後まで残った! ゾフィーはこうでなければイケナイのである! テレビ本編でも見習ってくれ!(笑)


 活動限界を示すカラータイマーが激しく点滅する中、メフィラス星人と一騎打ちでスレ違いざまに一撃のチョップを喰らわすゾフィー
 だが、体勢を崩したかに見えたメフィラス星人が前転しながら、ゾフィーの背後にメフィラス光線の不意打ちを喰らわす!


 ゾフィーがやられた! しかし、そのメフィラス星人の背後から、すかさずダロウが


「ストリューム光線!」


 遂にタロウがメフィラス星人を倒した!


タロウ「やった! ゾフィーにいさん、しっかりして!」
ゾフィー「タロウ、わたしはもうだめだ」


 浅瀬に倒れ伏してしまうゾフィー兄さん……


タロウ「ゾフィーにいさん!」


 夕日が沈んでいく浅瀬に倒れ伏しているウルトラ兄弟たちを、傷心したタロウはひとり見つめているのだった……



「★ウルトラ兄弟が しぬなんて……。でも、また 生きかえって みなさんの 前に あらわれるでしょう」


 などという、欄外の読者へのフォローにはおもわずコケてしまうのだが(笑)。


 実に93ページにもおよぶウルトラ兄弟VS怪獣軍団のバトルを描いた大長編漫画。このような作品を当時の子供たちは映像本編でも観たかったのだ!
 『東映まんがまつり』で上映された映画『5人ライダー対キングダーク』(74年)やアニメ映画『マジンガーZデビルマン』(73年)などに対抗して、1970年代前半の『東宝チャンピオンまつり』あたりで、このようなウルトラ兄弟が勢ぞろいして大バトルを展開する作品を製作していれば、当時の子供たちは手の舞い足の踏むところを知らずで大コーフンして、ひいては『仮面ライダー』や『マジンガーZ』に押されていた『ウルトラマン』人気を挽回して、第2次怪獣ブームもまだまだ延命できたのではなかっただろうか!?


 そのような作品の本格的な実写映像化は、実に35年もの歳月を経てしまったのだが、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)や『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』に至ってようやく実現した。しかし、70年代前半の時点で漫画媒体であったとはいえ、ウルトラ兄弟VS怪獣軍団を描いたスケール雄大な作品はすでに実現しており、当時の子供たちの心をとらえていたのであったのだ!



・『コロコロコミック特別増刊号 ウルトラマンPART1』(78年7月24日発売・6月24日実売)
・『コロコロコミック特別増刊2号 ウルトラマンPART2』(78年9月24日発売・8月24日実売)
・『オバケのQ太郎』をメインに『ウルトラマン』をサブに据えた『コロコロコミック特別増刊3号』(78年12月15日発売・11月15日実売)
・増刊4号に相当する『コロコロコミック春の特別増刊号 ウルトラマン』(79年4月30日発行・3月30日実売)


 これらの4冊には、70年代前半の『A』・『タロウ』・『レオ』の放映時に学年誌で連載されていた内山大先生によるウルトラシリーズのコミカライズが多数再録されたものだったが、『小学二年生』増刊号で描かれた長編漫画は一切再録されなかった。


 これらの長編漫画が『コロコロコミック特別増刊号』に再録されていれば、『ザ・ウルトラマン』名義の単行本の続刊にも再録されて、後世にも伝わったのだろうと考えると非常に残念なのだが、これらは内山大先生の原本となる漫画原稿がすでに散逸していて、発掘ができなかったためだと考えるのが妥当だろう。「金の成る木」でもある内山ウルトラ漫画を、当時の『コロコロコミック』編集部が懸命に捜索していなかったワケがないのだから(笑)。


 内山大先生のウルトラシリーズ最初のコミカライズ作品である『帰ってきたウルトラマン』も、『コロコロ特別増刊号』に一切再録されなかった。これは後年の作品群と比すると作画のクオリティが少々低かったためだとも考えられるのだが、これもやはり元原稿が当時すでに散逸していた可能性の方が大きいと推測する。


 ちなみに、『コロコロコミック』一連の『特別増刊号』に再録された学年誌の『A』・『タロウ』・『レオ』のコミカライズは、そのすべてではないのだが、小学館てんとう虫コミックス』レーベルの漫画単行本である『ザ・ウルトラマン』の第1巻(78年11月25日発行・ASIN:B017TYZ8H4)に「ジャッカル大魔王」編こと『ジャッカル対ウルトラ兄弟』と『特別増刊2号』に描き下ろしされた『若きファイタスの挑戦』が収録されたあとの、第2巻(78年12月25日発行・ASIN:B017TYZ8HY:)と第3巻(79年1月25日発行・ASIN:B017TYZ8L0)の方に再録されて、以降は90年代前半まで重版を重ねていく――大ロングセラーだったのだ!――。



 『てんとう虫コミックス』の単行本が絶版後、1997年に草創期『映画秘宝』の別冊として『まんが秘宝 ぶっちぎりヒーロー道』(洋泉社・97年5月発行・ISBN:4896912578)で、ヒーロー漫画の名作の一環として同作が紹介されたことの影響なのだろうが、この『ザ・ウルトラマン』は98年にも双葉社から全3巻に再編集して復刻されている(第1巻・98年3月12日、第2巻・98年4月12日、第3巻・98年5月9日発行)。
 この再販の成功を見てか、小学館からも当時流行の文庫本サイズでの名作漫画の再販の流行に乗って、『コロコロ文庫』と題した文庫版サイズで全4巻が復刻されることになった(第1&2巻・98年5月10日、第3&4巻・98年7月10日発行)。


テレビ本編の第2期ウルトラシリーズとは!? TBS・橋本洋二プロデューサーのテーマ&ドラマ至上主義の功と罪!


 内山大先生が小学館学年誌で描いてきたのは「ウルトラマンのドラマ」であった。
 「そんなことは当たり前じゃないか!?」などという声が聞こえてきそうである。しかし、それでは円谷プロが製作し、70年代前半にTBSで放映されていた第2期ウルトラシリーズは、果たして本当に「ウルトラマンのドラマ」だったのであろうか?



「『帰ってきたウルトラマン』は『ウルトラマン』『ウルトラセブン』というあり方と違うものにしようという気持ちがものすごくありました。それには全体にテーマの縛りがないとまた同じになってしまう。だからテーマの縛りをちゃんとしようと考えたんですね。あえて言えば変身のバトンみたいなものはいらない。それよりはドラマとして当然そこではこうなるべきというものを書けばいいんであってね、そういうドラマにしましょうというのがごく最初のスタートですよね。別にバトンをやめるところからスタートしたわけじゃないんだけれども、ウルトラシリーズを僕がやらせてもらうならということで考えると、やはりあれはいらなくなってくるんです。それからなんとかカーとかもいらないと思ったんですが、これはマーチャン(引用者注:マーチャンダイジング・版権収入ビジネス)の都合で作りましたけど(笑)」


「出さなきゃいけないということはない。51回全部出さなくてもかまわない、あえて言えばそういうことです。そういうことよりはドラマ的にきちんとまとめようと。その上でドラマ的に入っても邪魔にならないときは出してもかまわないんです。つまり宇宙基地とかああいうものがあると、みんなあそこに逃げちゃうんですよね。そういうことは僕の考えていることと違うからやめましょう、宇宙基地はなくてもいいよ、なんて誰かに言ったことがあります」


「なんといっても円谷プロですから、ものの中心は要するに怪獣なんですよね。怪獣といっても、例えば僕なんかも大変胸を打った『空の大怪獣ラドン』(56年・東宝)のような作品もできているわけですし、それはそれで大変結構なものだと思うわけです。けれどもそれにプラスアルファーというか、それだけではない円谷プロの引き出しみたいなものを作った方がいいんじゃないかと思っていたものですから、怪獣ありきではなくて、人間ありき。そこに怪獣が出てきて、それぞれの人間が格闘をしてどういう結末になるかという方向にしてくれ、という話をしたんですね。だから特撮班の人はそういう話を聞いてものすごく面白くなかったと思うんですよ。そうかよ、特撮なんかいらないのか、だったらやってみな、みたいな感情があって当然だと思うんだよね。ですから特撮の人たちがなにかを言ってきたら、僕としての意見を言おうと思っていたこともあるんです」


(『KODANSHA Official File Magazine ウルトラマン VOL.5 ウルトラセブン[第2集]』(講談社・05年7月25日発行・ISBN:4063671755) 橋本洋二TBSプロデューサー(現・東放制作プロデューサー)インタビュー)



・変身アイテムはいらない
・防衛組織に専用車はいらない
・宇宙基地もいらない
・怪獣ありきではなく人間ありき……


 人間ドラマを重視するあまりに、これらを否定する…… その志は壮とすべしだが、やや問題もある考え方ではなかろうか?(笑)


 第2期ウルトラシリーズから「人間ドラマ」部分だけを抽出してみれば、その出来は「まず怪獣ありき」「怪事件ありき」で製作された元祖『ウルトラQ』(66年)や初代『ウルトラマン』などと比較すれば、たしかに「事件」や「怪獣」よりも「人間」の方を描いていることから、その完成度は比較にならないくらいに高いとはいえるだろう。たしかにこれは声高に主張できるだけのものではあり、筆者個人もその方面から第2期ウルトラシリーズを擁護したりもしている。


 だが、年長マニアや大のオトナから見ると、ある意味では幼稚で噴飯ものの虚構でもある、変身ヒーロー・変身アイテム・防衛組織のメカ・宇宙基地・巨大怪獣などといった、本来ならば特撮ジャンルや変身ヒーロージャンルの一大特徴・アイデンティティーであり、それらを中核として描いていくべき作品群が、リアルな人間ドラマの方が優先して描いてしまったのならば、それは本末転倒ではなかろうか?


 『帰ってきたウルトラマン』では当初、主人公である郷秀樹隊員は自らの意思ではウルトラマンに変身不可能であった。危機に陥った際に、人間としてできるだけの最大限の努力をはらった結果、光に包まれてウルトラマンに変身するというかたちだった。
 自らの意思で変身できるようになったシリーズ後半以降も右手、あるいは両手を高く掲げて変身するかたちであり、変身アイテムは最後まで登場することはなかった。


 これは膨大な変身ヒーロー作品を観尽くした現在の視点から見ても、あるいは子供のころでも、あまたの変身ヒーロー作品の中では最も地味な類いの変身だろう。いや、放映当時からしてすでにそうであったのだ。
 幼いころにウルトラマンごっこをする際に、初代マンに変身する際は変身アイテム・ベーターカプセルの代わりに懐中電灯(笑)、セブンに変身する際にはボール紙で自作したウルトラアイを使用することがあったが、帰ってきたウルトラマンのシリーズ当初の変身設定は「ごっこ遊び」には使いようがなかったのだ――ウルトラマンエースへの男女合体変身を再現する際にも、近所から女の子を連れてこなければならなかったので大変だったものだが・笑――。


 しかし、これは元祖『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)初期の第1クールこと通称「旧1号ライダー」編の設定にも、イコールではないにせよ当てはまることなのだ。
 主人公の本郷猛(ほんごう・たけし)が一定の変身ポーズを取って主体的・能動的に変身するかたちではなく、自身のバイクを駆って変身ベルトの風車に風圧を受けることで自然に仮面ライダーへと変身していく…… これは「ごっこ遊び」で子供たちが猛烈にマネをしたくなるようなシチュエーションではない(笑)。


 当時の視聴者たちが年長マニアとなったことで、「旧1号」編が80年代に入ってから獲得した高いマニア人気とはウラハラに、放映当時は視聴率や人気が低迷したのは暗くて地味な作風ばかりではなく、変身シーンそのものに魅力が乏しかったことも大きいだろう。
 周知の通り、本郷猛を演じていた藤岡弘(ふじおか・ひろし)が撮影中の事故で降板、佐々木剛(ささき・たけし)演じる一文字隼人(いちもんじ・はやと)=仮面ライダー2号が登場する。
 そして、当時の真っ当なオトナの視点からすると、ある意味では幼稚の極致ともいえるこの変身ポーズこそが、子供たちの変身願望・超人願望・万能感を擬似的に満たすことで、『仮面ライダー』の人気を大爆発させ、玩具会社・ポピーの「光る! 回る!」が売り文句であった「変身ベルト」も大ヒットさせることとなったのである。


 極論すれば、『帰ってきたウルトラマン』が子供たちの変身願望・超人願望を満たしてあげるような変身シーンや玩具的なアイテムには不足があったことが、「第2次怪獣ブーム」が「変身ブーム」にとって代わられていくことの要因のひとつだったのではあるまいか?


『小学五年生』版『ウルトラマンタロウ』作品リスト


*73年4月号(宇宙大怪獣アストロモンス登場)


*73年5月号(再生怪獣ライブキング登場)


*73年6月号(液体大怪獣コスモリキッド登場)


*73年7月号(大羽蟻怪獣アリンドウ登場)


*73年8月号(虫歯怪獣シェルター登場)


*73年9月号(火山怪鳥バードン登場)


*73年10月号(怪獣自体が登場せず!)


*73年11月号(宇宙大怪獣ムルロア登場)


*73年12月号(オリジナル怪獣登場・タロウ登場せず!)


*74年1月号(怪獣もタロウも東光太郎も登場せず!)


*74年2月号(怪獣もタロウも東光太郎も登場せず!)


*74年3月号(怪獣と東光太郎も登場せず・タロウは登場)


 『小学五年生』版は連載時にはサブタイトルが一切なかった。『コロコロコミック特別増刊号 ウルトラマンPART1』にて、4・6・7月号に掲載された分が再録された際に、それぞれに『ねらわれた少年タケル』・『自分の足で歩くんだ!』・『警官インベーダー』とサブタイトルがつけられて、単行本への収録時にもそれを踏襲している。


 実は内山大先生の『小学五年生』版『タロウ』には、小学校高学年向けであるせいか、先のリストにあるように怪獣やタロウ、そして本来の主人公・東光太郎すらもが登場しない作品という、当時としてもパターン破りな前衛的なエピソードも存在する!
 そもそも、『小学五年生』版『タロウ』コミカライズの主人公はあくまでもタケル少年なのである! 光太郎はタケルをサポートする存在としてのみ登場しているのだ!


 この『小学五年生』版『タロウ』は、インベーダーに殺された大堀博士の息子・タケルが、博士に託された極秘データをインベーダーに狙われながら、さすらいの旅を続けるという物語なのである。
 とはいえ、その道中でタケルに関わった人々が次々に事件に巻きこまれていくというイジワルな展開は――いたいけな少女までもがインベーダーに殺害されてしまう!――、『タロウ』どころか完全に往年の特撮巨大ヒーロー『シルバー仮面』(71年・宣広社 TBS)であり、再生怪獣ライブキングがインベーダーの変身であったりする点は、完全に『ミラーマン』(71年・円谷プロ フジテレビ)であるとしか云いようがないのだが(笑)。


 内山大先生が小学館学年誌ではじめて手掛けたヒーロー作品のコミカライズは、『小学二年生』70年10月号~71年3月号に連載された、当時小学館円谷プロがテレビ化を念頭に置いて各誌で展開していた『ジャンボーグA(エース)』であった――『小学一年生』70年4月号から中城けんたろうによって先行して描かれていた『ジャンボーX(エックス)』も12月号から『ジャンボーグA』に改題されて71年3月号で完結する――。
 実際には同作のテレビ放映が開始されたのは、2年後の73年1月からであり、『ウルトラマンA 怪獣はか場のけっとう』が掲載された『小学二年生』73年1月増刊号では、この70年版の再編集版と描き下ろし新作漫画がともに掲載されている。ちなみに70年版は「古いジャンボーグA」と紹介されていた(笑)。


 内山大先生は『帰ってきた』と『A』、そして『小学二年生』72年1月増刊号に掲載された読み切り作品『ミラーマン危機一髪!』(作・田口成光)など、一貫して『小学二年生』を中心に活躍されていた。
 その後、『緊急指令10-4・10-10(テンフォー・テンテン)』(72年・円谷プロ NET)を、なんと『小学三年生』・『小学五年生』・『小学六年生』の3誌かけもちで半年間連載しており(72年8月号~73年1月号)、内山大先生の小学校高学年向けの連載自体は実は『タロウ』がはじめてではなかった。
 ただ、『10-4・10-10』は、個人的には「なんだかなぁ~」と頭を抱(かか)えたくなるようなイベント性ほぼ皆無の作品だったので、内山大先生がどれだけ実験的な試みをしたとしても、さして支障はなかったとも思われる。


 内山大先生は並行して、『二年生』版ではテレビ本編を「理想」化した『タロウ』を描いてもいたのだから、『五年生』版がこのような極端に過ぎる厳しい「現実」の世界として、あえて描き分けをしてみせたのも、ある意味では作家としての自然な生理ではある。


 『五年生』版を完全なかたちで全話を読めたワケではないので、トータルでの作品評価を断定することは差し控えるべきだろう――単行本に収録された序盤の数話について読むかぎりでは、あくまでも小学生向けだが、その範疇での子供向けの変化球作品としては実に楽しめるのだが――。
 しかし当時の『小学五年生』の読者の評判は、その序盤はともかくおそらく芳(かんば)しくはなかったと思えるフシがあるのだ。各種の情報によれば、その最終回は巻頭の扉のページも含めて、たったの4ページで終わっているそうである……
 しかもそれまでの道中ですっかり疑心暗鬼に陥ってしまったタケルが、出会った人々を片っ端から撃ち殺してしまう(!)という壮絶なオチで締めくくられているそうだ! もう石川賢の『少年サンデー』版『タロウ』どころの騒ぎではない。こっちの方がよっぽどハードである(爆)。


 内山大先生はその後、再び『二年生』『三年生』を中心に活躍するようになり、高学年向けの連載に一切手をつけていないことから察するに、きっと『五年生』編集部とひと悶着(もんちゃく)があったのではなかろうか? ホントにヤケクソな終わり方だもの(笑)。


 内山大先生が高学年向けの『ウルトラ』をはじめるにあたって、オリジナル設定やオリジナル展開、怪獣やウルトラマンさえ登場しない回まであるという試みは、おそらくシリーズ途中までは成功していたのではなかろうか?
 あるいは子供が読んだら面白くなくても、中高生以上、もしくはマニア人種が読めば面白いような作品なのかもしれない。その最終回はともかくとして、その志(こころざし)の高さはおおいに評価できることから、個人的には『五年生』版の『タロウ』を完全なかたちでぜひとも読んでみたいと強く願っている。


 だが、内山大先生もウルトラマンと同様、「神」そのものの天才作家ではないのだ。いくら志が高くても、後年に再評価がなされようが、ドラマ志向・テーマ志向が行き過ぎて商業的・視聴率的にも失敗した往年の『シルバー仮面』のような、橋本プロデューサーの理論に通じるものが、『五年生』版『タロウ』には濃厚に感じられなくもないのである。


 先の橋本理論を突き詰めていけば、第2期ウルトラシリーズ自体もこうした『シルバー仮面』のようなノリに陥る危険性があったのだ。それがかろうじてそうはならなかったのは、やはり小学館が発明した「ウルトラ兄弟」の設定や、ウルトラ一族の魅惑的なウラ設定の存在による、実作品に対しての上書き作用も大きいのだろう。
 実作品の外側での現実世界での子供たちの受容のされ方も含めて、実にきわどい瀬戸際で「娯楽性」と「ドラマ性」が絶妙に両立・中和されていたことが――時には乖離もしていたが・汗――、第2期ウルトラシリーズが相応の人気を維持できていたことの原因であった……と今は思えるのである。


『小学二年生』版『ウルトラマンレオ』作品リスト

ウルトラマンレオ[完全復刻版]

ウルトラマンレオ[完全復刻版]

ウルトラマンレオ[完全復刻版]

*74年4月号『登場! ウルトラマンレオ

 サーベル暴君マグマ星人・双子怪獣レッドギラス&ブラックギラス・ウルトラセブン登場

*74年5月号『逆襲! マグマ星人

 サーベル暴君マグマ星人・双子怪獣レッドギラス&ブラックギラス登場

*74年6月号『爆走! ツルクライダー隊』

 怪奇宇宙人ツルク星人登場

*74年7月号『ウルトラマンレオ七つの武器』

 サーベル暴君マグマ星人・宇宙星獣ギロ登場

*74年8月号『必殺拳! 嵐を呼ぶ少年』

 サーベル暴君マグマ星人・さそり怪獣アンタレス登場

*74年9月号『裏切りのふるさと』

 こうもり怪獣バットン・ウルトラ兄弟登場

*74年10月号『レオ兄弟対怪獣兄弟』

 兄怪獣ガロン・弟怪獣リットル・アストラ登場

*74年11月号『伝説の長老対魔法使い』

 怪獣人プレッシャー星人ウルトラマンキング登場

*74年12月号『帰ってきたウルトラマンの贈り物』

 二面凶悪怪獣アシュラン・怪獣ボールセブンガー・新ウルトラマンウルトラマンジャック)登場

*75年1月号『卑劣なるババルウの罠』

 暗黒星人ババルウ星人・怪獣ボールセブンガー・ウルトラ兄弟・アストラ・ウルトラの父ウルトラマンキング登場

*75年2月号『ウルトラセブン最後の日』

 暗黒星人ババルウ星人・ブラック指令・円盤生物シルバーブルーメウルトラセブン登場

*75年3月号『ウルトラ兄弟大勝利!』

 暗黒星人ババルウ星人・ブラック指令・再生円盤生物軍団(!)・ウルトラ兄弟登場



 ウルトラファミリーやウルトラの国の登場により、『タロウ』がエンターテイメントとして充分に成功をおさめながらも、『レオ』は一転して孤独な戦いを強いられる主人公・おおとりゲン=ウルトラマンレオ(とモロボシ・ダン隊長=変身できないウルトラセブン)を描く物語となった。


 前年73年の第一次石油ショックや世紀末思想の流行といった、当時の時代背景が色濃く影響したのである。
 筆者も今では『レオ』に対してカルト的な執着と好意を覚えているが、そのやや偏ったものでもドラマ的には非常に高い完成度はともかく、ウルトラシリーズもしょせんは子供向けの番組なのだから、ここまでヘビーな方向に振り切るのではなく、ただでさえ当時は第2次怪獣ブームと変身ブームがロボットアニメブームに押されて衰退しつつあった中で、年少の視聴者をつなぎとめるための工夫は、もっと明るいエンタメ的なものであった方がよかったとは思っている。
――もっともオタク予備軍である「暗い」小学2年生であった筆者は、あのような『レオ』本編の陰惨な作風も、リアルタイムで充分に楽しんではいましたが・笑――


・当時の子供たちも期待していた『レオ』本編へのウルトラ兄弟の頻繁なる助っ人参戦といったイベント編を増やすことでのエンタメ性の増量!
・第2話ラストのナレーションで、『エース』前半における異次元人ヤプールのようなシリーズを通じた宿敵となるのかと思われた、レオの故郷・L77星をも滅ぼしたサーベル暴君マグマ星人のレギュラー化と連続大河ドラマ性!
マグマ星人たちとの激戦による重傷で、変身ができなくなっていたモロボシ・ダン隊長が、遂にウルトラセブンに再変身!


 実はそのような明るいエンタメ的な方向性でのオルタナティブな、本編でもありえたかもしれない、むしろかくあるべきでもあった『ウルトラマンレオ』が、内山大先生のコミカライズではやはり達成されてもいたのだ!



 『小学二年生』74年9月号に掲載された、こうもり怪獣バットンが登場する『裏切りのふるさと』――『二年生』連載作品とは思えないシブいサブタイトルだが、初出時にはその年間連載の約半数にサブタイトルがなく、本話もそのひとつであった・汗――。


 マグマ星人によって、星そのものが爆発で滅亡させられてしまったレオの故郷である獅子座・L77星人の生き残りたち(!)が登場して、なんと我らが地球を襲撃する! しかし、レオがこれをなんとか制止をした!


 レオの身体の大半を占める赤い部分は毎回黒ベタで、輪郭に白い影のようなラインが描かれているのだが、今回登場したL77星人たちは同様に大半を占めている赤いであろう部分を斜線で表現することで、主役とゲストを絵的にも微妙に差別化して描き分けをしている。
 それにしても、内山大先生は歴代ウルトラ兄弟たちの口をあえて人間の口のように描いて、その代わりに絶対に開けないことで非人間性を表現していたのだが、レオはその口が人間のようにやわらかそうで開閉するかたちで表現されており、白い「歯」まで見せている!(笑)
 レオの頭部のデザイン自体が複雑な突起状なので、見た目をやわらかくして、漫画的な感情表現やお芝居をさせるための改変であろうが、レオの若者ゆえの未熟さを表現するのにも絶大な効果をあげている。


ゾフィー「その五人組は、わたしたちがおっている わるい星人たちだ。見ろ」


 テレビ本編では第3クールの終わりまで、歴代ウルトラ兄弟たちが複数で登場することはなかったのだが、ここではゾフィー・初代マン・新マン・エースのウルトラ兄弟が早くも登場してイベント編ともしているのだ!


 そしてL77星人たちは、こうもり星人バットンとしての正体を現した!


レオ「どうしてL77星人に、へんそう(変装)したのだ。答えろ!」
バットン「宇宙でおまえそっくりな奴にあったのさ」
レオ「えっ?」
バットン「そいつから、いろいろ聞き出したあとで、かるく いきのね(息の根)をとめてやった。ふふふ」
レオ「なんだと……。生きていたわたしのなかまを、よってたかって、きさまたちは。おのれ! ウルトラレオナマイト!」


 なんとレオはバットンたちを両脇にかかえて、タロウのウルトラダイナマイトのような捨て身の自爆技・ウルトラレオナマイトを炸裂させる!
――これは内山大先生によるオリジナル必殺技! 映像的には派手な必殺技に欠けており、子供たちにとっても爽快感には乏しかった『レオ』のバトルなので、このような大技は映像本編でも見たかったところだ!――


 勝利しながらも傷心しているレオに、


ゾフィー「レオ、きみのつらい気もちはわかる」
レオ「ゾフィー……。L77星人はほかにもまだ……」
ゾフィー「それは、もう すぐわかる(微笑)」


 光の国へと帰っていくウルトラ兄弟


レオ「ぼくのほかにまだL77星人が生きていたんだ。ぼくはひとりぼっちじゃなかった。もしかしたら、弟・アストラもどこかで…… アストラ!」


 なんと、レオの弟・アストラが生き残っているのであれば、アストラ以外の同族が生き残っていても不思議ではないという、幼児はともかく子供たちでも直観的にやっている程度の合理的な推論を拡張した、レオの同族の姿を模した悪役を登場させて、なおかつウルトラ兄弟たちがゲスト出演するイベント編の高揚感をも確保しつつ、彼らにレオの同族の生存可能性まで示唆させるというオイシい役回りもふっているのだ!
 テレビ本編でも個別・単発のアンソロジー話ばかりではなく、このような作品の基本設定を活かして膨らませて小出しにしていくような「連続性」を感じさせるエピソードを、幼児はともかく小学生であれば無意識にでも『レオ』本編に期待していたのは、当時の児童としても強く証言をしておきたい!


 そして本話はなんと続く74年10月号『レオ兄弟対怪獣兄弟』の伏線として描かれた物語ともなっているのだ! やはり年少の視聴者たちは「地球人のドラマ」などよりも、こうした「ウルトラマンのドラマ」も求めていたのではなかろうか!?


『小学三年生』版『ウルトラマンレオ』作品リスト


*74年4月号『レオの誕生に朝日は昇る!』

 サーベル暴君マグマ星人・双子怪獣レッドギラス&ブラックギラス・ウルトラセブン登場

*74年5月号『危機一髪! モロボシダン』

 サーベル暴君マグマ星人登場

*74年6月号『暴走! ウルトラマンレオ

 怪奇宇宙人ツルク星人・ウルトラ兄弟登場

*74年7月号『マシンロボギリシャス』

 サーベル暴君マグマ星人・ロボットギリシャス・宇宙星獣ギロ登場

*74年8月号『復活! ウルトラセブン

 風船怪獣バンゴ・ウルトラセブンウルトラの父登場

*74年9月号『ウルトラキラーゴルゴ』

 サーベル暴君マグマ星人・地獄星人ゴルゴ・ウルトラマンタロウ登場

*74年10月号『弟・アストラは生きていた!』

 兄怪獣ガロン・弟怪獣リットル・アストラ登場

*74年11月号『伝説の長老・ウルトラマンキング

 怪獣人プレッシャー星人ウルトラマンキング登場

*74年12月号『怪獣ボール』

 二面凶悪怪獣アシュラン・怪獣ボールセブンガー登場(新マンは郷秀樹の姿で登場し、扉絵のみに新マンが描かれている)

*75年1月号『奪われたウルトラキー』

 暗黒星人ババルウ星人・怪獣ボールセブンガー・ウルトラ兄弟・アストラ・ウルトラマンキング登場

*75年2月号『襲撃! 謎の宇宙人』

 暗殺宇宙人シャドウマン・ウルトラ兄弟登場

*75年3月号『全滅! ウルトラ兄弟

 暗殺宇宙人サイボーグナックル星人・ウルトラ兄弟・アストラ登場



 『小学三年生』版74年6月号『暴走! ウルトラマンレオ』は初出時にはやはりサブタイトルがなく、『コロコロコミック特別増刊2号 ウルトラマンPART2』に再録時は『レオ発狂!』(汗)というサブタイトルが付けられた。2006年発行の『My First BIG』レーベルの単行本への再録時には、「発狂」という言葉は差別用語放送禁止用語となって久しかったからだと思うのだが、『暴走! ウルトラマンレオ』と改題されている。


 このエピソードでは、ゲンが奇怪宇宙人ツルク星人に仕掛けられた催眠装置で操られ、ゲン自身がレオに変身してしまって街を破壊する!


モロボシ・ダン「レオをくいとめるのは、ウルトラ兄弟しかいない。そうだ、ウルトラ兄弟をよぼう」


 なんとモロボシ・ダン隊長はレオの頭のトサカ部分に乗っかる!――前作『タロウ』で東光太郎がよく怪獣に乗っかっていて、それまでのシリーズとのリアリティーの基準線とは異なる破天荒な描写にやや違和感があったところもあるのだが(笑)、このエピソードではダン自身がふつうの人間ではなく元はセブンであるから違和感も緩和できるのだろうか、それを踏襲!――
 しかし、ツルク星人に操られたレオにひねりつぶされそうになる!


 そこにウルトラ兄弟たちが登場!


 接近してきたレオの左耳を目がけて、ゾフィーは両腕を十字型に組んだスペシウム光線発射型のスタイルでスポット的にM87光線を発射する!


 催眠装置が破壊されて正気に戻ったレオは、やはりツルク星人の軍団(!)と大激闘!


 たまらずツルク星人はこともあろうにウルトラ兄弟に助けを請うが……


ゾフィー「いやだね」(爆)


 なんとゾフィーは破壊された低いビルに座っており、頬杖をついて拒否するポーズ。頭身もやや低くてデフォルメされた姿でのギャグ演出が投入されている(笑)。「漫画」というジャンル本来の、こんなお茶目な描写が時折見られるのも内山ウルトラ漫画の魅力のひとつなのだ。



 74年8月号『復活! ウルトラセブン』では、ゲンと子供たちを飲みこんだ風船怪獣バンゴを前に、


モロボシ・ダン「こんなとき、セブンになれたら、セブンになれたら……」


 と願ったダンの前に、ウルトラの父がテレパシー映像で出現!


ウルトラの父「それほど、セブンになりたいか」
ダン「ほかに方ほうがありません」
ウルトラの父「ウルトラの国より、一分間だけなら、エネルギーを送れる。だが、よく聞けダン。一分が一秒でもすぎたとき、おまえのからだは消めつする」


 ウルトラの父の警告を受けつつ、ダンはウルトラアイを着眼!


ウルトラセブン「わたしがどうなろうと、わたしはたたかう! かならず一分間で怪獣を、たおす!」


 『レオ』を観ていた当時の子供たちの誰もが期待していたダンのセブンへの再変身を一時的にではあっても、内山大先生は見事に実現してくれていたのだ!(涙)
 ところで、セブンの身体も黒ベタだが影の部分は斜線で区別、しかし実物のセブンの目の複雑な構成は、全体的に未熟な熱血漢としての擬人化の度合いが強かったレオの描写とは異なり、タロウと同様に実写作品に準じるかたちで見事に描かれていた。



 さらにさらに! 74年9月号『ウルトラキラーゴルゴ』では、マグマ星人がレオ抹殺のために、宇宙の殺し屋・地獄星人ゴルゴを雇う!


ダン「やつに、勝つにはひとりでは、ぜったいにだめだ。なんとかなるのは、5兄弟のスペースQぐらいだろう。おまえでは、どんなことをしてもか(勝)てっこない」
ゲン「では、どうすれば……」
ダン「うむ。そうだ、この地球には、タロウがまだいたはずだ。タロウのストリウム光線に、おまえのエネルギーがくわわれば、少しは勝負ができるかもしれない。そうだ、テレビで、タロウを呼び出そう」


 この会話、まるでテレビ本編から抜き出してきたみたいに、ふたりの人物像や会話の口調の雰囲気も、それらしく出せている。


 ここでもウルトラ兄弟の最強の必殺技は、ウルトラ5兄弟の力をウルトラマンエースの頭頂部のトサカ部分のまるい穴であるエネルギーホールに集約して放つ光の球であるスペースQであることがキチンと押さえられてもいる!


 そして、なんとモロボシ隊長はテレビニュースを利用して、直前作の主人公・ウルトラマンタロウこと東光太郎に協力を呼びかけるのである! ……しかし仮にもウルトラ兄弟の間柄なのだから、テレパシーやウルトラサインで呼びかけた方が早いような気もするのだが(笑)。


光太郎「連絡はしないよ! ダン。いまのぼくは、もう、怪獣なんかとはたたかいたくない。ぼくは、もうふつうの人間なんだ。ふつうの人間として、この地球でくらしていたいんだ。ごめんよ」


 安アパートと思われる一室で、ひとりつぶやく光太郎。


 『タロウ』最終回(第53話)『さらばタロウよ! ウルトラの母よ!』のラストを、きっちりと踏襲している設定も素晴らしいが、


欄外「きみたち、おぼえているかい。ウルトラマンT(タロウ)の最終回で、東光太郎がバッジをすてて人ごみにまぎれていったのを」


 などというキャプションは、おもわず『タロウ』と『レオ』のナレーションを務めていた名俳優・瑳川哲朗(さがわ・てつろう)の声で読みたくなる(笑)。


 遂に名作人気劇画『ゴルゴ13(サーティーン)』(68年~)の顔に酷似(笑)した、人間体型のスマートでカッコいい悪の超人・ゴルゴとウルトラマンレオとの決戦の火ぶたが切って落とされる!


 広大な特撮スタジオのようなパノラミックな広がりをも感じさせる、浅い高低もある山裾を舞台にバトルを繰り広げている構図がまた、壮大で迫力も増している!


 ゴルゴが両腕をX字型にして放つ、宇宙最強のクロスレーザーの威力に、レオは絶体絶命のピンチに!


 それを見ていた光太郎は……


「だめだ、こんどこそやられる」


 光太郎は意を決して、遂にウルトラマンタロウに変身する!(涙)


タロウ「レオ、ストリウム光線に、エネルギーをかしてくれ!」


 タロウとレオは空中高く飛び上がり、並んで片腕を接しあって、またしても内山大先生のオリジナル必殺技・ダブルストリウム光線(!)が炸裂する!!(快感)


 戦いが終わって、レオは自身の左腕を見つめて「ぼくも、すごい光線がうてた」と驚いている描写もはさんでいる。テレビ本編でも当初は光線技が放てなかったレオの設定を踏襲しながら、それに対するエクスキューズ・言い訳(笑)も入れてみせて、接ぎ木であっても漫画独自の設定とも接合してみせる、実にていねいな点描(てんびょう)でもある。


ダン「ありがとう、光太郎。また、われわれといっしょに怪獣とたたかってくれ」
光太郎「いえ。ざんねんですが、また、ぼくはふつうの人にもどります。とめないでください」


 『レオ』本編でもこのような先輩ヒーローとの高揚感あふれる共闘を観たかったなぁ。先輩ヒーローが苦戦したり悪役を務めるのではなく、出来のよい爽快な客演エピソードが月に1回くらいはあれば、その高揚感を担保に当時の子供たちもまた、このような胸が躍るエピソードがいずれあるだろうと観たくなって、『レオ』から脱落せずに視聴を継続したのではなかろうか!?


 東光太郎を演じた篠田三郎をゲストに呼ばず、いやウルトラ兄弟が助けに来ないというストイック(禁欲的)な作劇に徹した『レオ』の本編は、ゲンとダン隊長の関係だけに特化して多少の歪(いびつ)さはあってもドラマ的・テーマ的には非常に高度なものがあったのだと今となっては思う。よって、同作のことがカルト的に好きでもあるのだが、近年の『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)などよりもはるかにヘビーな内容ではあり、その意味では子供番組としてはおおいに問題もあったのだ(爆)。
 そこまで突き詰めて描かなくても、もう少しだけ軟化・妥協して、数話に1回は先輩ウルトラ兄弟がゲスト出演して子供たちもワクワクとさせようなる、子供番組としての華がある「イベント編」をもっと頻繁に配置するようなシリーズ構成を、『レオ』のテレビ本編こそが目指すべきではなかったか!? そうすれば視聴率はあそこまで急落せずに、第2期ウルトラシリーズもまだまだ延命できたのではなかろうか?


「タロウ、ほんとにありがとう。でも、あんまりかたいこといわないで たまには、出てきてね」


 という欄外のコメントは、タロウこと東光太郎を演じた篠田三郎に変えれば、今現在の特撮マニアの大勢が思っていることだよなぁ(笑)。



 このエピソードは人間体型のカッコいいダークヒーローが登場する一大バトル編でありながら、前作の主人公・東光太郎のウェットな人間性にもスポットを当てた人間ドラマでもあった。


 しかし、たとえ「人間ドラマ」が中心の作劇ではあっても、こうした華のある「ヒーロー共闘」を描いていくことも可能であることは、21世紀の平成ライダーシリーズでも見事に証明されている。
 どうひいき目に見ても就学前の幼児には理解できるはずがない、複雑怪奇で高度な劣情(笑)による群像劇までもが描かれていたりもするのだが、その登場人間同士の感情的な衝突を、即座に双方が仮面ライダーへと変身してライダー同士の戦い・バトルシーンとしてしまうことによって、子供たちも退屈はしないだろうし(笑)、それによってアクションシーンも双方の戦う動機が反映されることでおおいに盛り上がってもいるし、これら複数のライダーたちが用いている変身ベルトも大ヒットしている! 一石二鳥どころではなく、一石三鳥ですらあるのだ!


 本稿執筆中に放映されている『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)のUSBメモリー型アイテムである「地球の記憶」(爆)が記録されているという、そのSF的・科学的な原理そのものは実にデタラメなものに思える(笑)、劇中でのコレクション・アイテム「ガイアメモリ」を付録にしたホビー誌『フィギュア王』(ワールドフォトプレス)は即完売して、ネットオークションでプレミア付きで売られるような現象まで起きているのだ。


 変身アイテムのみならず、変身やヒーローのタイプチェンジをサポートするコレクション性もあるマーチャンダイジングを意識した玩具の隆盛! 「変身のバトンはいらない」などと云っている場合ではないのである!(笑)




 『小学三年生』版『レオ』は、75年2月号『襲撃! 謎の宇宙人』~3月号『全滅! ウルトラ兄弟』の前後編で幕を閉じている。


 エース・新マン・初代マンがサイボーグナックル星人に次々と惨殺されていく!
 ゾフィーは赤と銀のペンキで(笑)新マンに変装し、ナックル星人を罠にかけて、レオ・アストラ兄弟とタロウとともに兄弟の仇を討たんとする!
――ウルトラキラーゴルゴの回のラストにおける、タロウこと東光太郎の去就との整合性についてはこの際、置いておこう・笑――


 だが、タロウとアストラが倒され、ゾフィーは宇宙空間でようやくナックル星人を捕らえるや……


ゾフィー「レオ、ふたりをめがけてうて!」
レオ「そんな、ばかな、はなれろゾフィー!」
ゾフィー「ばか、はなれたらおまえもわたしもやられる!」


 これは『ウルトラマンタロウ』コミカライズの一編でもある、先述の『涙のストリウム光線』の再現でもある! ジャンル作品や劇画などではむかしからよくある、いわゆる「俺ごと刈れ!」のパターンであり、よくあるネタだともいえるのだが、それゆえに人々の心を打つ普遍的なパターンだともいえる。


 ウルトラ兄弟の最強戦士といえば、古い世代は即座にゾフィーを挙げるだろうが、実は本編でそれを発揮していたのは『ウルトラマンA』第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060604/p1)くらいのものであり、内山大先生が描いていた本当に強かったゾフィーを見続けていたことによる「刷り込み」効果も大きかったのではなかろうか?


 『タロウ』の一部コミカライズでもあったのだが、この『小学三年生』版『レオ』コミカライズの最終回前後編は、大宇宙やウルトラの星を舞台に地球人ではなくウルトラ兄弟だけが活躍することから、同誌『小学三年生』新年度の75年4月号から継続して連載が開始された『さよならウルトラ兄弟』(『ザ・ウルトラマン』こと『ジャッカル大魔王』編)のプロトタイプだとも受け取れる。


第2期ウルトラ各作の最終回、特に『レオ』最終回は、コミカライズのような集団総力戦であるべきだった!


 先にもふれたが、『小三』ならぬ『小学二年生』版の『ウルトラマンレオ』コミカライズの終盤は、3部作の壮大なる連続ストーリーともなっていた!


 75年1月号掲載の『卑劣なるババルウの罠』から3月号掲載の最終回『ウルトラ兄弟大勝利!』である。
 この3部作では、テレビ本編では第38話『決闘! レオ兄弟対ウルトラ兄弟』~第39話『レオ兄弟ウルトラ兄弟勝利の時』の前後編に登場した強敵である


・暗黒星人ババルウ星人


 第40話『恐怖の円盤生物シリーズ! MAC(マック)全滅! 円盤は生物だった!』から最終回(第51話)『恐怖の円盤生物シリーズ! さようならレオ! 太陽への出発(たびだち)』に登場したレギュラー敵であるブラックスター出身の


・ブラック指令


 この2大巨頭が2大ラスボスとして君臨して、タッグを組んだ軍団として、ウルトラマンレオウルトラ兄弟たちに前に立ちはだかるのだ!


――テレビ本編でも第2期ウルトラシリーズの完結にふさわしい、こんなストーリーを展開してほしかった!――。


 そして最後は、彼らが連れてきた円盤生物の大軍団とウルトラ兄弟との見開きパノラマでの大決戦となるのだ!


 その3部作の中編である75年2月号掲載『ウルトラセブン最後の日!』で、円盤生物シルバーブルーメに突攻して果ててしまったウルトラセブン
 しかし、最終回『ウルトラ兄弟大勝利!』では、セブン以外の歴代のウルトラ兄弟たち全員が人間体として再登場する! しかもテレビ本編で活躍していた当時の防衛組織の隊員服姿なのだ!
 『タロウ』最終回で「ウルトラの力」を捨てて変身道具・ウルトラバッジをウルトラの母に返したはずのタロウこと東光太郎隊員までもが、防衛組織・ZATの隊員服姿で描かれているのだ!(笑)


 そして、彼らが改めて歴代ウルトラマンたちに変身することでの集団バトルを繰り広げる!!


 戦いの最中に彼らの円盤のひとつが爆発して、中に閉じこめられていたウルトラマンレオの父と母が、レオと感動の再会まで果たす!
 ウルトラ兄弟全員登場のスケール感やイベント性のみならず、主役ヒーローであるウルトラマンレオのプライベート・ドラマも並行させることで、人間(?)ドラマ性も充実させて主人公キャラを立ててみせてもいるのだ!


 亡国の民であるウルトラマンレオの設定を煮詰めていけば、獅子座・L77星の出身で流浪の果てに悪に落ちてしまった同族や、死亡してしまったと思われていた親族との再会などのエピソードも、M78星雲・ウルトラの星のウラ設定や歴史を拡充させていったのと同様の手法で、あってしかるべきシチュエーションではあった。
 そのあたりについては、テレビ本編よりも内山大先生のコミカライズにおける作劇の方が、よりドラマチックでもあり、数段勝(まさ)っていたともいえるだろう!


 このレオの両親は3部作の第1話である『卑劣なるババルウの罠』では、ババルウ星で捕らわれの身となっている描写があることで、その後の伏線が与えられていた。


 ちなみに、ババルウ星人はレオの故郷・L77星を滅ぼしたマグマ星人の着ぐるみの改造だそうである。怪獣図鑑などではババルウ星人となっているが、テレビ本編での登場回のオープニング映像の最後に出てくる登場怪獣の字幕では、実は「ババルウ星人」ではなく「暗黒星人ババルウ」となっている。
 よって、本来はババルウ星人ではなくマグマ星人と同族であり、その上位個体の固有名詞がババルウだったのでは? という深読みが80年代以降の特撮評論同人界などではされてきた。
 しかし、内山大先生のコミカライズではマグマ星とも別にババルウ星が登場してしまったことで、この仮説は少なくともこのコミカライズには当てはまらないことになってしまった(笑)。しかし、やはりL77星の生き残りを籠絡しているババルウ星人は、L77星を滅ぼしたサーベル暴君マグマ星人とも深い関係にあったということにはなるのだろう!


 ウルトラ兄弟たちは大量に出現した円盤生物たちを次々と倒していく!
 しかし、『レオ』全編におけるドラマ面を背負っていたセブンのことも忘れてはいない。最後はセブンの想いがこもっている形見の武器・アイスラッガーをその手に堅く握って、レオの弟・アストラに待ち伏せされて地球上空の宇宙空間で立ち往生していた巨大化しているブラック指令を切り裂いてみせた!!


 バトル面でもドラマ面でも、最終回としては極めて充実度が高い内容ともなったのだ!



 当時の子供たちが観たがっていた、ウルトラシリーズが終焉を迎えるにあたっての集大成としての『レオ』の最終回とは、このような歴代ウルトラ兄弟たちも駆けつけてくるような作品ではあっただろう。
 第1期・仮面ライダーシリーズ最終作である『仮面ライダーストロンガー』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201231/p1)の終盤や、第2期・仮面ライダーシリーズの第1作目である『(新)仮面ライダー』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1)の終盤においては、5部作や3部作の連続ストーリーで、歴代の仮面ライダーたちが変身後のヒーローとしての姿を見せるのみならず、変身前の人間体の姿も込みで登場して盛り上げていたのだが、それよりも前に内山大先生はすでにコミカライズで同様のことをやってのけていたのである!



 『仮面ライダー』最終回(第98話)『ゲルショッカー全滅! 首領の最後!!』では、敵組織・ゲルショッカーのアジトに捕らわれた立花藤兵衛(たちばな・とうべえ)や少年仮面ライダー隊の前で、ショッカー幹部・ブラック将軍の正体である怪人・ヒルカメレオンに変身を阻止された、第53話から主役ヒーローに返り咲いた仮面ライダー1号こと本郷猛を助けに、仮面ライダー2号が参上していた!


 静岡県浜松市のかんざんじ遊園地・パルパルにて、数々の遊具を稼働させながらのダブルライダーVSヒルカメレオン&ゲルショッカー戦闘員との大激闘に、ピーカンの青空の下で子門正人(しもん・まさと)がシャウトする『仮面ライダー』の主題歌『レッツゴー! ライダーキック』が流される中、ダブルライダーVS再生怪人軍団(!)の壮絶な死闘も展開されている! まさに最終回にふさわしいスケールも大きな豪華絢爛(ごうかけんらん)なバトルであったのだ。


 やはり東映特撮ヒーローである、『キカイダー01(ゼロワン)』(73年・東映 NET)最終回(第46話)『よい子の友達 人造人間万才(ばんざい)!』でも、キカイダーゼロワンと前作の主人公であるキカイダーの「キカイダー兄弟」と『01』で登場した女性型の人造人間ビジンダーが、最後には勢ぞろいを遂げていた! そして一致団結して、大犯罪組織・シャドウを壊滅させたのだ!


 巨大ロボットアニメの元祖『マジンガーZ』(72年・東映動画→現東映アニメーション フジテレビ・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)の最終回を、劇場で先行公開したアニメ映画『マジンガーZ対暗黒大将軍』(74年・東映)では、次作『グレートマジンガー』(74年・東映動画 フジテレビ)の主人公ロボットが先行登場してマジンガーZの危機を救うことで、その圧倒的な強さを魅せつけてもくれていた!


 先輩ヒーローを登場させた元祖であった第2期ウルトラシリーズは、そのウルトラ兄弟といった要素を各々の最終回において、バトルのスケールを拡大させる舞台装置として有効に活用することができずに、後発の東映作品の方がそういった要素を活かしてイベント編や最終回で複数のヒーローを登場させて盛り上がりをつくることで、「有終の美」を飾ることができていたのである。


 たしかに『タロウ』の最終回や『レオ』の最終回は、長じてから鑑賞するとドラマ的・テーマ的には優れている。今となっては個人的にも大好きである。しかしそれは高校生以上になってからの再視聴での感想である。
 それまでは、初代ウルトラマンを倒してしまう宇宙恐竜ゼットンが登場する初代『ウルトラマン』最終回(第39話)『さらばウルトラマン』や、幽霊怪人ゴース星人が世界各国の都市を地底ミサイルで吹っ飛ばす『ウルトラセブン』最終回(第49話)『史上最大の侵略(後編)』に遠くおよばないと思っていたものだ(汗)。


 だからこそ、第2期ウルトラ各作の最終回は、内山大先生が小学館学年誌で描いていたような、最強怪獣軍団VSウルトラ兄弟の大決戦を主体に前後編で描くべきだったのではなかったか!?
 しかも、第2期ウルトラ各作の最終回が共通して描いてきた、少年や子供たちへのメッセージや自立テーマも、ウルトラ兄弟や怪獣軍団が総登場するような大スケールの大バトルとも平行して描いていくようなことも、充二分に可能だったのではなかろうか?


 そうすれば、子供のころにはその少年の自立テーマや人間ドラマの切実さがよくわからなくても、大バトルでの高揚感の記憶をよすがにして、長じてからも再視聴を幾度も繰り返して、


「第2期ウルトラシリーズにも意外と高度なドラマやテーマがある!」(笑)
ウルトラマンはただの戦っているだけの作品ではない!」(爆)


 などといった、それはそれで今となっては通俗的でややヌルくもある、少々皮相的な批評のされ方ではあっても(笑)、長年の酷評に見舞われてきた第2期ウルトラシリーズの評価はもっと高まり、あるいは後年における再評価の開始時期ももっと早まったのではなかろうか?


 かのシリーズ最高傑作(笑)と名高い『ウルトラセブン』にしろ、『狙われた街』や『盗まれたウルトラアイ』や『ノンマルトの使者』などのようヒーローやメカや怪獣があまり活躍しないアンチテーゼ編ばかりが『セブン』の本質であったハズがない。あれらはあくまでも異色作やアンチテーゼ編としての魅力なのである。
 3機に分離合体するウルトラ警備隊の戦闘機・ウルトラホーク1号や、ウルトラ警備隊の専用車・ポインターなど、子供たちが玩具で遊びたくなるような、シャープでクールなスーパーメカや、隊員たちのスマートな制服などの意匠がなかったならば、第1期ウルトラシリーズをつくったスタッフの残党たちがつくった往年の『シルバー仮面』のような地味な作品になっていただろう(笑)。


 『帰ってきたウルトラマン』第18話『ウルトラセブン参上!』などは、MATが宇宙ステーションを浮遊させているといった「SF設定」がなければ生みだされない話である――同話の脚本を担当した市川森一(いちかわ・しんいち)先生は橋本プロデューサーとは折り合いが悪かったそうだから、「宇宙基地はいらない」と云われてワザと出したのだろうか?・笑――。


 ドラマ的な必然性がなければ、「なんとかカーはいらない」「宇宙基地はいらない」なぞという発想。それ自体は今考えてみると、やや漫画アニメ的・記号的な方向性でそのキャラを立てていた登場人物たちであった初代『ウルトラマン』の防衛組織・科学特捜隊の隊員たちとは異なり、MATやTACやMACの隊員たちの間における不和の描写や対立劇をも可能とさせている。イヤミな同僚かと思われた隊員に意外な人間クサい一面を与えるなどのドラマ性を与えるような功の部分もあったのだ。


 それが長じてからでも、オトナの鑑賞に耐えうる高いドラマ性を達成して、我々が幾度となく観返している理由でもある。しかしそれと同時に、幼児や子供たちが鑑賞したときには、やや重苦しくて爽快な戦闘のカタルシスが得られないという欠点をハラませてしまってもいたのだ……


 『ウルトラマンタロウ』ではオープニング主題歌の映像のみにしか登場しなかった特殊潜水艇・アイアンフィッシュを登場させたり、『ウルトラマンレオ』の第2話ラストではシリーズを通じた宿敵かと思わせてそうはならなかったサーベル暴君マグマ星人をレギュラーとして登場させた、内山大先生のウルトラシリーズのコミカライズでの作劇を、当の円谷プロや橋本洋二プロデューサーの方こそが見習うべきだったのではなかろうか?


 橋本洋二の述懐では、特撮現場の人間たちが氏に対して苦情を云ってきたことは結局なかったそうだ。それを当時の故・円谷一つぶらや・はじめ)社長がウラ側でうまくまとめてくれたり、円谷プロ側の熊谷健(くまがい・けん)プロデューサーが橋本イズムとイコールではなくても理解は示してくれていたから「割と好き勝手にやることができたんだろうな」と氏も冷静に自己分析はしている。


 本邦初のマニア向け書籍が発行された1970年代末期以降~90年代後半の平成ウルトラ3部作のころとは異なり、70年代前半当時はウルトラ兄弟の設定を特撮マニアたちが、ウルトラマンの神秘性を毀損(きそん)するものとして問題視をする、などということはもちろんまだなかった。


 にも関わらず、第2期ウルトラの映像本編における先輩ウルトラ兄弟の助っ人参戦エピソードは、下手にドラマ性を高めようとすることで、シンプルな爽快感にはいささか欠如しているエピソードが残念ながらも多い。
 これもまた、ウルトラ兄弟の共演や防衛隊のスーパーメカの大活躍といった「イベント性」や「娯楽活劇性」よりも「人間ドラマ性」の方を重視してしまった、橋本洋二のポリシーが仇(あだ)となってしまったゆえだろう。


 これこそが第2期ウルトラシリーズが抱える最大の弱点なのである。しかし、歴史的には第2期ウルトラシリーズを酷評したいがあまりに、「第2期ウルトラシリーズにはドラマがない」なぞという批判もかつてはあったのだ。
 いや、それはまったく逆ですよ(笑)。むしろ逆にドラマをヤリすぎてヘンに重たくなってしまったことが、「娯楽活劇性」を重視していた『仮面ライダー』や『マジンガーZ』の後塵を拝してしまったことの原因なのだから……


 先の橋本プロデューサーの理論を究極まで押し通すとするならば、人間ドラマ的にきちんとまとまってさえいれば、「怪獣ありきではなく人間ありき」どころか「怪獣さえもいらない」などということにもなってしまう。もっと云うならドラマ的にきちんとまとまってさえいれば、怪獣どころかヒーローさえもいらないということになってしまう。
 後年の『仮面ライダークウガ』(00年)の最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001111/p1)には仮面ライダーが一切登場しなかった。しかし、いくら年長の特撮マニアたちが絶賛しようが、当の就学前の幼児たちが大泣きしたり不信感を抱かせてしまった以上は、この最終回は子供番組としてはあまりよろしくはなかったのではないのか?(笑)


『さよならウルトラ兄弟』(のちに『ザ・ウルトラマン』『ジャッカル対ウルトラ兄弟』に改題)作品リスト

ザ・ウルトラマン 死闘!ジャッカル対ウルトラ兄弟 (My First Big コロコロ30周年シリーズ)

*75年4月号『さい強怪獣あらわるの巻』


*75年5月号『壮絶! ウルトラ兄弟、死闘の巻』


*75年6月号『あばかれたなぞの宇宙人の巻』


*75年7月号『光の国ぜんめつ! の巻』


*75年8月号『第一部さい終回 ふくしゅうのちかいの巻』



『さよならウルトラ兄弟 第二部 たたかえ! ウルトラ戦士』(改題)


*75年9月号『なぞの超人あらわるの巻』


*75年10月号『地球をすくえ! の巻』


*75年11月号『四天王をたおせの巻』


*75年12月号『あやうし! メロスの巻』



『復活! ウルトラ兄弟』(改題・第3部)


*76年1月号『さよならウルトラ兄弟第三部』


*76年2月号(サブタイトルなし)


*76年3月号『ジャッカルは死んだの巻』


第3次怪獣ブーム下の1978年度作品リスト


コロコロコミック特別増刊2号『ザ・ウルトラマン』『若きファイタスの挑戦』


*78年10月号『げきとつ! ウルトラ兄弟』前編


*78年11月号『げきとつ! ウルトラ兄弟』後編



 歴史的な大名作でもある『ザ・ウルトラマン』の『ジャッカル対ウルトラ兄弟』とその続編『若きファイタスの挑戦』、『小学三年生』78年10~11月号に掲載された『げきとつ! ウルトラ兄弟』については、項目を独立して細かく語らせていただいたので、詳細についてはそちらを参照されたい。


katoku99.hatenablog.com



 『小学三年生』75年4月号~76年3月号に『さよならウルトラ兄弟』というタイトルで連載された本作。この作品はその後、『ザ・ウルトラマン』と改題されたことで、このタイトルで後年も流通することとなった。
 小学館の児童漫画誌コロコロコミック』No.5(78年3月15日号・2月15日実売)~No.7(78年7月15日号・6月15日実売)に、その最終章の直前までがいったん再連載されている。この再連載での大反響を受けて、『コロコロコミック特別増刊号 ウルトラマンPART1』(78年7月24日発行・6月24日実売・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1)が刊行されて、その第1回から最終回までが一挙に収録されたことは、ご承知のことだろう。
――小学館てんとう虫コミックス』レーベルの単行本に収録された際に、『ジャッカル対ウルトラ兄弟』というサブタイトルが付与された――。


 『コロコロコミック特別増刊号 ウルトラマンPART1』の読者投稿欄を読めば、当時の全国の小学生、一部には中高生、女児や一部のマニアっ気がある女子高生たちにも大反響を巻き起こしていたことがわかる。


 『ザ・ウルトラマン』に改題して再連載されて以降は、単行本での収録時も含めて、


・4~5月号掲載分を『ジャッカル対ウルトラ兄弟 姿なき強敵』
・6~8月号掲載分を『あやうし! ウルトラの国』
・9~2月号掲載分を『なぞの超人現わる!』
・3月号掲載分を『復活! ウルトラ兄弟


 というサブタイトルを付け直して収録している。



――『レオ』の後、オリジナル作品『さよならウルトラ兄弟』が生まれた経緯は?
「TV放映は無くなったけど、円谷プロとの独占契約は続いていたんで何かやらなきゃってことでね。それで内山先生に新たなウルトラを描いてもらおうってことで、私が企画したのが、ウルトラ兄弟最後の戦い『さよならウルトラ兄弟』だったんだ。普通のウルトラマンの話ではおもしろくないんで、どんどん兄弟が死んでいく話にしようって。とにかく、それまでのウルトラマンの常識を破ってやろうって気持ちでね。それを円谷プロに持って行って、承諾をもらってね」


――内山先生との作業はどのように行われていたのですか?
「まず私がシナリオを書いて、それでコマ割りをしてもらうという作業だったんだ。私も入社以来『帰ってきたウルトラマン』からずっとウルトラ担当だったから相当くわしかったからね。ウルトラ兄弟の仇役に苦手な怪獣を出そうとしたりしてね」


――メロスやジャッカルなどオリジナルキャラクターも魅力的でした。
「メロスは西洋甲胄(かっちゅう)のイメージ、但(ただ)し仮面は日本の甲胄の面頬(めんぽお)にしようってことでね。資料をいろいろコピーして渡したのを憶えてるな。本当のことを言うと、メロスの名前は内山先生が『走れメロス』からとって命名したんだけど、私はあんまり気に入ってなかったんだ。まァ、先生がやけに入れ込んでいたんで、じゃあそれでOKって(笑)。まァ、ジャッカルも小説『ジャッカルの日』(引用者註:71年のベストセラー海外小説・73年に映画化)から取ってるんで、案外それと近い思いつきだったんだよね(笑)。
 実は『ザ・ウルトラマン』は『コロコロ』で人気が出てアニメ化するってことで話が進んでたんだ。結局、ウルトラマンは(カラータイマーの)3分間の制約とかさまざまな約束事があって成立してるんだからってことで、円谷プロの方からNGになっちゃったんだ。それがタイトルだけ残した『ザ★ウルトラマン』になったんだよね。あのときは少しがっかりだったな」

(『ウルトラコレクションボックス ザ・内山まもる』特典 特別復刻コミックス『ウルトラ戦士銀河大戦争』「内山まもる担当編集者に聞け!!」「小学三年生」編集部(当時)八巻孝夫(やまき・たかお)インタビュー)



 なんと! 『ザ・ウルトラマン』には原作者がいたのである! 内山大先生はコマ割りをしていたのだともいう! ……まぁ、そんなものなのかもしれないが(笑)。
 もちろん内山大先生の意向も相応に入っていただろうから、厳密には共作というべきなのかもしれない。この作品にかぎらず、小説や漫画やテレビドラマの脚本などにもいえることだろうが、厳密には担当編集者やプロデューサーからのオーダー(注文)や、彼らとの二人三脚でこれらの作品はつくられているのだと見た方がよいのだろう。



 ところで、70年代後半の『コロコロ』世代にとっては、ウルトラマンとは着ぐるみのスーツ姿だけではなく、筋肉質の身体にボディペンティングで模様が書いてあるといった趣でありながらも、手袋とブーツのつなぎ目のラインはハッキリと表現されており、やや面長な顔に端正な目をしていた、内山ウルトラマンとしての姿の方もインパクトが強かったのではなかろうか?



ウルトラマンを描く時には、とにかく「きれいなラインの体を描こう」と心がけました。あまりマッチョな体型にしてしまうと、ウルトラマンの体に走るラインの美しさが殺されてしまうんです。イメージとしては、女性の体に筋肉をつけた感じで描いていましたね。首元の後ろのラインを少しふくらませて描いたのもこだわりです。ちょっと波打つ感じにしたんですが、首を振った時にこのラインが覗くだけでもアクセントになりますしね。
 ウルトラマンで特に気を使ったのは目や口元の表現です。そのまま絵にしてしまうと、どうしても表情が固いんです。ウルトラマンの口は、かすかに開いた形になっていましたから、真一文字の単調なラインにならないよう、口の中央部分で一度フッと線が途切れるようにペンを入れていました。これは連載を続けていくうちに、まとまっていきました。目に関しては覗き穴のラインも意識して線を描いています。
 ただ、ウルトラセブンに関しては構成するラインも多く、メカニカルなイメージもあって、口元はそのままにしました。何度か他のウルトラマンと同じような口元をセブンにも描いてみたんですけれど、やっぱり似合わなかったんです。
 一番好きなウルトラマンゾフィーでしたね。ウルトラ兄弟の長兄ということもあり、また、なかなか姿を現さない神秘性もあって、子どもたちの人気も高かったんですよ。だから、登場する時はよりカッコ良くと、僕も力を入れて描いていました」

(『帰ってきたウルトラマン完全復刻版』「ボクの青春時代だったウルトラまんが」内山まもる



「私はウルトラマンと怪獣が大好きな高一の女の子です。内山先生のかくウルトラマンはとってもいいんです。ハンサムなんて変ないい方だけど、他のまんが家のウルトラマンは、ブ男だと思います。そして先生のえ(絵)はやさしさがあります。先生はまさしくウルトラまんがの巨匠です。内山まもる バンザーイ!」(東京都・HRさん)

(『コロコロコミック特別増刊号 ウルトラマンPART1』「コロコロウルトラファンプラザ」(読者投稿欄))



 腐女子の元祖(笑)からお墨つきをもらったくらいだから、同時期の第1次アニメブームからはじまる女性マニアたちが執着するような絵柄・線線・ストーリーなどの要素すらも、内山大先生が描いたウルトラマンたちはすでに兼ね備えていたのである!



 そんな世代に向けての新作ウルトラマンが、折りからのアニメブームや予算の問題もあって、アニメによる『ザ★ウルトラマン』となったことは、ある意味では正しい判断ではあった。
 従来のシリーズとは世界観的にはつながりがないこの作品は、オーソドックスな怪獣ものであった第1クールを終えるや第2クールの中盤から、この作品におけるウルトラマンの故郷であるウルトラの星・U40(ユーフォーティ)を登場させて、その歴史や10億年にもわたる因縁の宿敵、爬虫類から進化したためにコミュニケートも不可能だというバデル族が率いる宇宙艦隊数千隻との宇宙大戦争を繰り広げるようになる。
 同作の主人公ウルトラマンの本名がジョーニアスであることもここで明かされて、その母星にはエレク・ロト・アミア・5大戦士――シナリオによれば、ノア・ミゲル・メレグと都合3名の名称が設定されている――といった、ジョーニアスとほぼ同格のウルトラ戦士たちも登場する。
 彼らはシリーズ後半になると度々、ジョーニアスの危機に助っ人参戦を果たすようになり、その最終章4部作(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200508/p1)ではその全員が勢ぞろいして大活躍をしてくれたのだ!


 この作品もまた内山大先生の間接的な影響下にあった作品であったことは間違いがないだろう。しかし同作は、ウルトラシリーズの正当続編ではなかったことが少々水を差していた。


 そこで翌年には『ウルトラマンレオ』の5年後の世界を描いている実写特撮の『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)が登場した。
 しかし、70年代末期に発売された本邦初のマニア向け書籍における「ウルトラ兄弟という設定はヒーローの神秘性をスポイルして堕落させるもの」という主張が、誤ったメッセージを製作スタッフたちに与えてしまっていたのだろう。同作では頑なにウルトラ兄弟を客演させることがなかったのであった……


 しかし、この『ザ★ウルトラマン』と『ウルトラマン80』が放映されていた第3次怪獣ブームの時代には、同様に復活を果たした第2期ライダーシリーズの第1作目である『(新)仮面ライダー』こと通称「スカイライダー」も放映されていた。
 そして、そのシリーズ中盤からは、先輩ライダーたちが次々と客演を果たすようになる。1年間の放映期間のちょうど折り返し地点である第27話~第28話の前後編、そしてその最終章3部作では、8人の仮面ライダーが全員集合して巨悪に立ち向かうことで、絶大なるスケールと盛り上がりを達成していたのだ!


 この『スカイライダー』も序盤の原点回帰である怪奇路線が優れていて、シリーズ中盤からの歴代ライダーぞくぞく登場編は堕落である! なぞという寝ぼけた批評が長年まかり通ってきた(笑)。
 しかし、当時の子供たちが観たかったのは、月に1回くらいは先輩ウルトラ兄弟が客演して、シリーズの折り返し地点や最終章ではウルトラ兄弟が全員勢ぞろいをするような、この『スカイライダー』のごとき新作ウルトラマンであったと思うゾ!


 第3次怪獣ブームがある時点で急速に失速していったのは、そういうことが理由だろう。『ウルトラマン80』もたとえ序盤の人間ドラマ重視の「学校編」の中ではあっても、第1話の冒頭でウルトラ兄弟を勢ぞろいさせてエイティを地球へと送り出すシーンがあったり、月に1回は先輩ウルトラ兄弟が助けに来たり、中盤ではウルトラ兄弟全員登場の前後編があったり、ウルトラサインで呼ばれて宇宙の小惑星上などで30分まるまる仮面劇でウルトラ兄弟たちと怪獣軍団が戦っているだけの番外編などがあった方がよかったのではなかろうか!?(笑)


 余談になるが、ウルトラマンエイティは長らくウルトラ兄弟の一員ではないとされてきた。しかし、ウルトラ兄弟の候補生ではあり、その功績次第でウルトラ兄弟に昇格するという設定が存在していたのだ。これは当時の『てれびくん』や『コロコロコミック』でも言及されていない設定である。実はこの設定は『小学三年生』のみでの独自設定であったようである?
 歴代のウルトラ兄弟とも因縁を持たせて、その世界観をワールドワイドに拡張したように、子供たちにも感じさせようとするこの手法。これは先の『ザ・ウルトラマン』こと『さよならウルトラ兄弟』の原作者を名乗る担当編集者・八巻孝夫氏によるアイデアではなかろうか!?――もちろん憶測です・汗――



 なお、ウルトラ一族が操艦する巨大な「ウルトラ戦艦」が登場して宇宙海賊スペース・パイレーツの宇宙戦艦と砲撃戦を展開する、78年の第3次怪獣ブーム時代の『小学三年生』78年10~11月号に掲載された『げきとつ! ウルトラ兄弟』も、『てんとう虫コミックス』レーベルの単行本『ザ・ウルトラマン』第3巻(ASIN:B017TYZ8L0)に『闘え! ウルトラ兄弟』と改題されて収録されている。続く第4巻については後述としたい。


『飛べ! ウルトラ戦士』作品リスト

ザ・ウルトラマン 4 (てんとう虫コミックス)

*79年4月号(サブタイトルなし)


*79年5月号『死闘! ウルトラ月要さいの巻』


*79年6月号『バルタン帝国の巻』


*79年7月号『死闘! エルフ対タロウの巻』


*79年8月号『ウルトラ特攻大作戦の巻』


*79年9月号『のこるは3人の巻』


*79年10月号『最後の決戦の巻』


*79年11月号『暗殺宇宙人の巻』


*79年12月号『たおせ! アサシンの巻』


 これらの作品は、『ザ・ウルトラマン』名義の単行本に収録された際には、


・4~5月号掲載分を『月面要さい大作戦 -対ベーダー』
・6~7月号掲載分を『友情は永遠に…… -タロウとエルフ』
・8~10月号掲載分を『1ダースの特攻隊 -対アヌビス』
・11~12月号掲載分を『ゾフィーの危機 -対アサシン』


 というサブタイトルに変更している。


 いずれも、宇宙でのウルトラファミリーの中規模の戦いを小気味よく描いた粒ぞろいの良作であり、内山大先生のストーリーテリングもより優れたものとなっている。


 内山大先生による『ザ・ウルトラマン』は、テレビアニメシリーズ『ザ★ウルトラマン』の放映と時を同じくして、79年度の『小学三年生』4月号から12月号にかけて、『飛べ! ウルトラ戦士』というタイトルで連載されて、『てんとう虫コミックス』の『ザ・ウルトラマン』第4巻(ASIN:B017TYZ8I8)として80年1月25日に単行本化されている。


『ウルトラ戦士銀河大戦争』作品リスト

ウルトラコレクションボックス ザ・内山まもる: 完全部数限定 ([BOX商品])

*81年6月号『死ぬな! ゾフィーの巻』

 宇宙忍者バルタン星人軍団・異次元超人エースキラー軍団登場

*81年7月号『宇宙最強のウルトラ戦士 アンドロ・メロス大登場!』

 宇宙忍者バルタン星人軍団・異次元超人エースキラー軍団登場

*81年8月号『なぞの男メロスのすさまじい武器がつぎつぎと登場!!』

 宇宙恐竜巨大ゼットン(!)登場

*81年9月号『ゾフィーが死んだ! セブンが死んだ! どうなるウルトラ戦士!!』

 サーベル暴君マグマ星人軍団&ゴッドマグマ登場

*81年10月号『ウルトラ戦士とメロスのピンチに 新しき味方メロスⅡ大登場!』

 悪質宇宙人メフィラス星人軍団&ツアー・メフィラス登場

*81年11月号『ウルトラ兄弟をすくいに向かったメロスたちに最大のピンチが!』

 凶悪宇宙人ザラブ星人軍団&ザラブ・シーザー登場

*81年12月号『ついにおそるべきてき(敵)ジュダが メロスとウルフを殺す!!』

 凶悪宇宙人ザラブ星人軍団&ザラブ・シーザー、魔人ジュダ登場
 (本号の巻頭グラビアで、メロスⅡの正体がアンドロウルフだと判明する)

*82年1月号『キングジョーのかい力をふせげるか? メロス!』

 暗殺宇宙人ナックル星人軍団&ナックル大帝・宇宙ロボットキングジョージャイアント(!)・魔人ジュダ登場

*82年2月号『ついにジュダとウルトラ戦士の死とうが始まる!!』

 魔人ジュダ登場

*82年3月号『ジュダの剣のえじきになるか? ゾフィー最大のピンチだ!』

 魔人ジュダ登場



 『ウルトラマン80』終了直後の81年度の小学館の『てれびくん』や『コロコロコミック』などの各誌では、内山ウルトラ漫画に登場した宇宙警備隊アンドロメダ星雲支部隊長である鎧(よろい)を着用したウルトラ戦士・メロスから着想を得た、メロス支部隊長とはまた別の新戦士が活躍する、ウルトラシリーズともつながっている番外編である『アンドロメロス』なる企画が展開された。
 それと連動して、『飛べ! ウルトラ戦士』の連載終了から1年半ものブランクを経て、『小学三年生』81年6月号から82年3月号にかけて、再び内山大先生による『ウルトラ戦士銀河大戦争』が巻頭カラーグラビア記事との連動で連載が開始されたのだ。


 『ウルトラ戦士銀河大戦争』は、本来ならば『ザ・ウルトラマン』の第5巻として発売されるべきものであったのにもかかわらず、第3次怪獣ブームの終焉(しゅうえん)もあってか、単行本化がなされなかった。
 以来ずっと復刻の機会には恵まれず、『コミックボンボン』(81~07年)に連載された、90年代の児童向け漫画の大傑作『ウルトラマン超闘士激伝』(原作/瑳川竜 まんが/栗原仁 93~97年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210131/p1)の最終2大編「ゴーデス編」や「エンペラ星人編」のような不遇な作品となってしまっていた。


 今回の『ウルトラコレクションボックス ザ・内山まもる』では、この『ウルトラ戦士銀河大戦争』が特典として、新書版で待望の復刻を果たしている。
 本来ならば、『かがやけウルトラの星』ではなく、こちらの方がメインではなかろうか? と考える80年代世代の方々も相応にいるだろうし、79年度の『飛べ! ウルトラ戦士』も含めて語りたかったのだが、当初の想定を大幅に上回る紙数となってしまったことから、別の機会に言及させていただくこととしよう。


その後の内山ウルトラ作品リスト

ウルトラマンメビウス外伝 超銀河大戦 戦え!ウルトラ兄弟 (内山まもるコレクション)

*『ウルトラマンティガ』『~いざ鎌倉~』

 (『宇宙船』VOL.81(97年))

*『ザ・ウルトラマンメビウス

 (『ウルトラマンメビウスDVD』(06年)VOL.2~13)

*『ザ・ウルトラマンヒカリ』

 (『ウルトラマンメビウス外伝 ヒカリサーガDVD』(07年・ASIN:B000SAXNVU))

*『ウルトラマンメビウス外伝 超銀河大戦 巨大要塞を撃破せよ!!』

 (『コロコロイチバン!』07年14号~15号)

*『ウルトラマンメビウス外伝 超銀河大戦 戦え!ウルトラ兄弟

 (『てれびくん』07年6月号~08年2月号・ASIN:B01CG0VDJI

*『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』

 (『てれびくん』08年3月号~09年3月号(08年10月号除く・ASIN:B01CG0VDI4

*『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』

 (『てれびくん』08年10月号)

*『ウルトラマンメビウス外伝 ゴーストリバース ウルトラ兄弟VS暗黒大軍団』

 (『てれびくん』09年4月号~09年12月号)

*『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』

 (『てれびくん』10年1月号~10年3月号)

*『戦え!ウルトラ戦士 出撃!宇宙警備隊』

 (『てれびくん』10年4月号)



 上記のうち、『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』については、項目を独立して細かく語らせていただいたので、詳細についてはそちらを参照されたい。


katoku99.hatenablog.com



・近年のウルトラマン映画における、ウルトラ兄弟やウルトラ一族 VS 怪獣や宇宙人との集団戦!
・巨大ヒーローの身長を上回る、超巨大な怪獣の登場!
・テレビ本編の前日談や後日談!
・人間キャラクターが登場しない仮面劇!
・歴代シリーズのキャラクターが結集してきての最後の総力戦!


 以上の項目を列挙してきて、おわかりになったことと思うが、実はそのほぼすべてが内山ウルトラ漫画がルーツであったのである! 今後のウルトラシリーズの映画やテレビにおけるそのシリーズ構成、イベント編や最終章がどのようにあるべきかについては、もうおわかりになったことと思う。


 これは学年誌の各誌が100万部前後の発行部数を達成して、ご近所での回し読みも入れれば莫大な影響力を発揮していた時代、幼児だけではなく小学生の間でもウルトラマンの人気が高かったころを回想し、「あのころが懐かしい」「あのころはよかった」などという懐古趣味だけを煽っている論述ではない。


 学年誌や児童誌とのメディアミックスによるウラ設定・長大なる歴史・広大なる世界観で、後年の『ビックリマン』や『ポケットモンスター』や『遊☆戯☆王』のように、幼児のみならず児童の知的関心・収集癖をも惹起して、主役級のヒーローが大挙して共演して、秘術や得意技を尽くしてカッコよく戦うバトルのカタルシスで、娯楽活劇作品としても子供たちを大いに興奮させる、「ウルトラの星」の輝きを取り戻すための、あくまでも未来への提言なのである。



<参考文献>
同人誌『ザ・ウチヤママモル』(宇宙囚人207・02年12月29日発行)ほか


2010.10.21.
(改稿)2010.11.10.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2010年準備号2』(10年11月23日発行)~『仮面特攻隊2011年号』(10年12月30日発行)所収『内山ウルトラマン漫画総覧』より抜粋)


[関連記事]

コロコロコミック特別増刊号 ウルトラマンPART1』&『PART2』 ~『ザ・ウルトラマン』&『コロコロ増刊』ウルトラ特集記事の時代!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1

ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』 ~前日談『ザ・ウルトラマン』をも上回る!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210117/p1

内山まもるウルトラマン』漫画1971~2010総覧! ~『ウルトラコレクションボックス ザ・内山まもる

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210124/p1(当該記事)

ウルトラマン超闘士激伝』 ~オッサン世代でも唸った90年代児童向け漫画の傑作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210131/p1


[関連記事]

ザ・ウルトラマン ジャッカル対ウルトラマン』 ~日本アニメ(ーター)見本市出展作品!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160914/p1

ウルトラマン80 宇宙大戦争』 ~マンガ版最終章は連続活劇! TVでも観たかったウルトラ兄弟vsバルタン軍団総力戦!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110107/p1

コンビニ漫画『ウルトラマンレオ 完全復刻版』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061028/p1


[関連記事]

ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)序盤総括 ~セブンガー大活躍! 「手段」ではなく「目的」としての「特撮」!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1

ウルトラマンタイガ』(19年)序盤総括 ~冒頭から2010年代7大ウルトラマンが宇宙バトルする神話的カッコよさ! 各話のドラマは重めだが豪快な特撮演出が一掃!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1

『ウルトラギャラクシーファイト』(19年) ~パチンコ展開まで前史として肯定! 昭和~2010年代のウルトラマンたちを無数の設定因縁劇でつなぐ活劇佳品!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1

ウルトラマンタイガ』『ウルトラギャラクシーファイト』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1


[関連記事] ~70年代末期の第3次怪獣ブーム作品! 中盤や終盤でヒーロー大集合!

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #50「ウルトラの星へ!! 完結編 平和への勝利」 ~40年目の『ザ☆ウル』総括!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200508/p1

仮面ライダー(新)』(79年)総論 ~スカイライダーの〈世界〉!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1



配信中の『ウルトラギャラクシーファイト』の原点!
#ザ・ウルトラマン #アンドロメロス #内山まもる #ウルトラギャラクシーファイト



[ウルトラ] ~全記事見出し一覧
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧

ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!! ~前日談『ザ・ウルトラマン』をも上回る!?

『コロコロコミック増刊号 ウルトラマンPART1』&『2』 ~『ザ・ウルトラマン』&『コロコロ増刊』ウルトラ特集記事の時代!
『ザ・ウルトラマン ジャッカル対ウルトラマン』 ~日本アニメ(ーター)見本市出展作品!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[ウルトラ] ~全記事見出し一覧


 歴代ウルトラマンたちが大宇宙を舞台に大活躍を繰り広げるネット番組『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)が配信中記念! とカコつけて……
 ウルトラ一族が大宇宙を舞台に活躍する作品の元祖でもある、往年の大人気連載マンガ『ザ・ウルトラマン』(初出・75年)「ジャッカル大魔王」編の33年後の後日談でもあった、幼児誌『てれびくん』で2008年度に連載されたマンガ『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』評を発掘アップ!


ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』 ~前日談『ザ・ウルトラマン』をも上回る!?

(文・久保達也)
(2010年4月25日脱稿・11月10日改稿)



 第2期ウルトラシリーズの最終作である『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)の放映が終了した直後の1975年度の『小学三年生』に1年間連載された漫画『さよならウルトラ兄弟』。この作品は1978年に創刊間もない時期の児童漫画誌コロコロコミック』や『コロコロコミック特別増刊号 ウルトラマンPART1』&『PART2』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1)に『ザ・ウルトラマン』と改題・再連載されて大ヒットを放った。


 この通称「ジャッカル大魔王」編の後日談としても描かれた、2008年度の『てれびくん』にされた漫画『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』(小学館・09年5月29日発行・ASIN:B01CG0VDI4)について、本項では語らせていただこう。



 『帰ってきたウルトラマン』(71年)第45話『郷秀樹を暗殺せよ!』に登場した電磁波怪人メシエ星雲人(!)との平和調停を1週間後に控えた、ウルトラ一族の故郷でもあるウルトラの星である光の国(=ウルトラの国)……
 『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)第25話『燃えろ! ウルトラ6兄弟』にも登場したウルトラタワーが倒壊して、その地下に保管されていた平和の鐘(かね)である「ウルトラ族の心の調べ」=「ウルトラベル」と、その力で封印されていた「アーマードダークネス」――ウルトラマンメビウス(06年)がその最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070505/p1)で遂に倒した、ウルトラ一族の3万年にもおよぶ因縁の宿敵・暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人が装着するはずだった鎧(よろい)!――が紛失する騒動から物語は始まる。


 手がかりがないまま1週間が過ぎて、平和調停の当日となった。
――なんとその広大な議場には、『ザ・ウルトラマン』名義の「てんとう虫コミックス」レーベルの単行本にも収録されている、1979年度の『小学三年生』に連載された『飛べ! ウルトラ戦士』が初出である『月面要塞大作戦』冒頭で描かれたウルトラの国のやはり広大な議場で開催されていた最高会議にも出席していた、アンドロメダ星雲支部代表のゾルビー長官の姿も! そのご尊顔は「ジャッカル大魔王」編で初登場した宇宙警備隊アンドロメダ星雲支部隊長であるウルトラ戦士・メロスに酷似しているものの、ウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングアゴ髭(ひげ)にならったのか、ウルトラ一族の中でも年長者キャラを意味させているチョビ髭姿がなんともカワイイ――。


 このメシエ星雲人の使節団の護衛には、宇宙警備隊・勇士司令部(!)――ウルトラ兄弟の3番目・ウルトラセブン(67年)の実父が長官を務めており、ウルトラマンネオス(95年)もこの部署に所属していることでも有名!――の精鋭部隊がついていたが、何者かの攻撃でこの精鋭部隊は全滅!


 ウルトラ一族が設立した宇宙警備隊の大隊長でもあるウルトラの父は、メロスと直近テレビシリーズの主人公ヒーローであるウルトラマンメビウスを現場に派遣するが、


「私もいくわ!」


 と志願するウルトラの女戦士がいた!



ウルトラの母のほかにも、女性のウルトラ族を出してえ! 内山先生、おねがい!」(愛知県・IKさん)

(『コロコロコミック特別増刊号 ウルトラマンPART1』(小学館・78年7月24日発行・6月24日実売)『コロコロウルトラファンプラザ』(読者投稿欄))



 律義な内山まもる大先生はこの女の子の願いを忘れず、30年後にようやくかなえてくれたのであった(笑)。


 このアウラなる女戦士の出自の設定がまた秀逸である。
 『ザ・ウルトラマン』の「ジャッカル大魔王」編でウルトラ兄弟の長男・ゾフィー隊長の協力を断り、単独でジャッカル軍団と戦って苦戦したメロスをかばって命を失ったウルトラ28人衆のひとり、あの印象的なウルトラ族の一般兵士こそがアウラの父だというのである!
 たった3コマにしか登場しない、しかしとても印象深かった名シーンの名もなきウルトラの一般兵士を、ここまでの存在に昇華してしまうとは!(涙)


 メロスはその恩返しとして、アウラを一人前の宇宙警備隊員として鍛え上げたというのである! 気丈でワガママな性格もメロス譲りだとか。
 『コロコロコミック特別増刊2号 ウルトラマンPART2』(78年)巻頭のカラーグラビア『初公開! ウルトラひみつリスト ウルトラSFの世界』記事(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1)に準じるならば、おそらくはアウラもタロウ同様、優秀ってことで1万2千才で宇宙警備隊に入隊したのだろうか?(笑) しかも彼女はすでにメロスと同格である宇宙警備隊のS・P5星雲の支部隊長でもあるというのだ!


 この連載漫画『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』が再録された『てれびくんデラックス愛蔵版』の中では、『ザ・ウルトラマン』の「ジャッカル大魔王」編を


「大昔のウルトラ兄弟とジャッカル軍団の戦い」


 としてダイジェストで紹介している。


 この「大昔」(!)という表現は、幼児誌『てれびくん』のメインターゲットである2008年度の幼児層から見て、「ジャッカル大魔王」編の事件が起きたとおぼしき『ウルトラマンレオ』放映終了直後の1975年の時代がもう33年も前のことだからと「大昔」と云っているだけであって、あくまでも西暦2008年の今が舞台なのだろうか? それとも『メビウス』の時代から100年~1000年くらいが経っているような未来の宇宙を舞台とした最新テレビシリーズ『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)のように、1975年の「ジャッカル大魔王」編や2006年の『ウルトラマンメビウス』の時代からでも、す