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機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ ~環境テロと金髪ビッチヒロイン。地味シブ作品なのに流通してしまう!

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(15年) ~ニュータイプやレビル将軍も相対化! 安彦良和の枯淡の境地!
『機動戦士ガンダムNT』(18年) ~時が見え、死者と交流、隕石落下を防ぎ、保守的家族像を賞揚の果てに消失したニュータイプ論を改めて辻褄合わせ!
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 2023年1月15日(日)から映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(21年)がテレビで30分ワク全4話に再編集されて放映記念! とカコつけて……。『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』評をアップ!


機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』 ~環境テロと金髪ビッチヒロイン。地味シブ作品なのに流通してしまう!

(文・T.SATO)
(2021年12月10日脱稿)


 人類がその増えすぎた人口を地球の衛星軌道上に浮かべた数キロ規模の巨大円筒状・宇宙コロニーに植民させるようになった近未来。人類が宇宙に植民を開始した時点を宇宙世紀元年とする宇宙世紀0079(ダブルオー・セブンティナイン)年を舞台に、地球連邦政府と宇宙植民国家との間での戦争を描いたリアルロボットアニメの金字塔、40年以上の歴史を誇る『機動戦士ガンダム』(79年)シリーズの新作映画。


 ご存じの通り、『ガンダム』シリーズは初作の数年後や数十年後、はたまた5千年だか1万年後を描いてきた通称「宇宙世紀」シリーズと、それらとは無関係であり世界観を刷新したシリーズの2種に分かたれている。


 本作は前者であり、シリーズの隙間を埋める宇宙世紀0105年を舞台とした作品である。そして、本作のややサメており諦観や達観をも感じさせる主人公ハサウェイ・ノア青年は、初作で主人公少年が所属していた宇宙母艦のブライト・ノア艦長の息子でもある。
 彼は宇宙世紀0093年を舞台とした映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(88年)などでもミドルティーンの少年として登場し、同シリーズの巨大人型ロボット兵器ことモビルスーツにも無断搭乗(汗)するかたちにて活躍。好ましく想っていた少女が彼女の操縦していた巨大ロボットもろともに戦場にて戦死してしまう光景を目撃して深甚なるショックを受けてしまう、当時でも『ガンダム』シリーズにおいてはすでにややテンプレ・陳腐化(汗)もしていた、お約束シチュエーションによる悲劇的な役回りを与えられることとなっていたキャラクターでもあった。



 本作『閃光のハサウェイ』は、前述した『逆襲のシャア』公開の翌1989(平成元)年に『ガンダム』初作&「宇宙世紀」シリーズの生みの親である富野由悠季(とみの・よしゆき)カントク自身によって執筆された小説を原作とする、しかしてこの劇場アニメ版のカントク職には富野以外の人材を当てている3部作映画の第1部でもある――信者の方々には申し訳ないけど、『ガンダム Gのレコンギスタ』(14年)の出来も見るにつけ、富野御大が手掛けなくてホントによかったとも思う(汗)――。


 ただし、この1988~89年の軽佻浮薄な風潮も極まっていたバブル期には、初作の総集編映画の第1作目が劇場公開された81年早春、新宿東口のアルタ前に1~2万人のファンが集まって「アニメ新世紀宣言」がなされたようなオタにとっての高揚感あふれる時代はとうに過ぎ去ってもいた。


 早くも1982~83年にかけては、「ネクラ」や「オタク」といったネガティブ・ワードが誕生。「アニメファンはクラい」という実に正鵠を射ていた言説(爆)が若者間でも流通。若者vs大人ではなく若者世代内部でも細分化の果てに後年で云うイケてる系/イケてない系といったカーストも急拡大。


 コレらの事態をオタキングこと岡田斗司夫(おかだ・としお)などは「80年安保の挫折」と呼称した……。オジサンの筆者なども中学生までは級友たちともフツーにアニメの話ができていたのに、高校に上がるや今で云う「アニメ? 何それ喰えるの?」的にアンタッチャブルなモノへと変貌していったことを疼きとともに思い出す(汗)。


 今に至るオタク趣味やアニメ趣味はダサいといった風潮がすでに定着しきっていたバブル経済期の89年当時には、かつては『ガンダム』初作に夢中になったご同輩たちでも、『閃光のハサウェイ』原作小説自体の存在や主人公がブライト艦長の息子であることなどは表紙カバーのアラスジ紹介などでは知ってはいても、実際にも購入して読んでみたという御仁は少なかったとは思うのだ――富野信者やガンダム信者の方々にあられては、ご不興な話でしたならば申し訳がない――



 小説『閃光のハサウェイ』の映像化作品たる本映画の内容は以下の通りだ。


 ファーストクラスの豪華な客室に地球政府の高官たちやその家族を主に乗せていたスペースシャトル型の宇宙船が地球へと帰還してくる。
 そこには植物監査官候補でもあるハサウェイ青年、中央通路を挟んだその隣席には金髪ロングでアンニュイかつプッツン(死語?)といった感じの美少女ギギも搭乗していた。


 ところが、大気圏突入時に幅寄せしてきたナゾの宇宙船からの闖入者によってハイジャックをされてしまう! ハイジャック犯たちはかつての「シャアの反乱」同様に、グリーンピースならぬ地球環境保全のためにテロ活動を実践している組織・マフティーのメンバーを名乗った。
 しかし、隙を見てハサウェイ青年&地球連邦軍の青壮年大佐の機敏なる連携プレイによってハイジャック犯たちを見事に鎮圧!


 事が事だけに事情聴取目的で高官たちと同じ高級ホテルに留め置かれたハサウェイと金髪美少女はしばしの交流を温める。天衣無縫な彼女は自身の美貌や魅力に自信があるのか、ハサウェイにその顔面を近づけたり自分の部屋に泊まれとオトコを誘うような言動も見せる。かと思いきや、先の連邦軍の青壮年大佐と鉢合わせになったり会食をともにすれば、彼にもイロ目を使い出す。
 環境テロ組織が地球政府高官の殺害をねらって深夜にモビルスーツでホテルや街を襲撃してきて、ハサウェイと金髪美少女も逃げ惑った末に青壮年大佐に再会できれば、大佐に抱きついたり持たれかかったり。
 しかして、再びハサウェイ青年とふたりきりになれば彼にしなだれ、自分が口をつけたマグカップを彼に差し出したりもする――もちろん彼女と『逆シャア』での若き日のハサウェイを翻弄していた少女との類似の想起も点描されている――。



 彼女は美少女だから下品には見えないけど、要はいわゆる周囲のオトコどもに少々の媚びを売って、連中が自身にナビいたりナビかなかったりなどの値踏みや駆け引きをして悦に入っているビッチなのである(笑)。
 善くも悪くも本作の原作者でもある富野御大は、我々オタク一般とは異なりこーいう女性がスキなのであろう。初作ではともかく、その直続編『機動戦士Z(ゼータ)ガンダム』(85年)以降に富野カントクがこだわってきた、このテの女性キャラクターに対するイロ気もある仕草演出。ただし、それは正直に云ってウマくいってはいなかったし、物語としても馴染んではいたとは云いがたかったけど(爆)。


 加えて、やはり初作が大ヒットしていた時代とは異なり、その後に残ったガンダムオタクたちは「メカ」&「戦闘シーン」だけに関心があるのであって、そのテの女性キャラの演出などにはまるで感度がない(汗)。
 よって、決してウマくはいっていない女性キャラ演出と、そこに対するセンサーがそもそもないガンオタの野合といった構図が、富野ガンダム作品の受容のされ方の基本型にもなっている。


 ソレらと比すれば本作の場合は、被写体や背景がそこにあって実際のレンズで切り取ったかのようなリアルな映像で、高精細に作画されたメインヒロインが織り成すアニメくさくはないナチュラルなお芝居自体はウマくはいっており、しかしてやはりソコには感度がなかったガンオタたち……(汗)といった、富野ガンダムの受容のされ方と比すれば多少はマシでも、同じような問題点がハラまれた消費のされ方にはなっているようには思うのだ。


 強いて云うならば、宇宙世紀0096年を舞台とした『機動戦士ガンダムUCユニコーン)』(10~14年)と翌97年を舞台とした『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』(18年)。飛んで、0123年を舞台としていた映画『機動戦士ガンダムF91(フォーミュラ・ナインティワン)』(91年)。
 この両者の隙間の時代を埋めることになる宇宙世紀0105年という時代を映像化した作品を、「観賞」ではなく「確認」をすることで、「物語」を味わうというよりも「歴史年表」的な興味関心を満たしているだけである……といったところが、失礼ながらも筆者が見立てているガンオタの在り方と作品受容のされ方なのでもあった。
――むろんサンライズバンダイ側でも、カネ払いがよいロートル観客たちをねらって『ガンダム』でしばらくは食べていこうという企画意図は当然にあるのだろう――



 そーいった意味では、本作が興行収入20億を突破したことについても手放しでは喜ぶ気になれない。とはいえ、本映画自体がダメダメだったと思っているワケでもない。


 放映当時は


「コレは『ガンダム』ではない」
「(複数名の美少年キャラ押しにより)『ガンダム』であることを捨てた作品だ!」


などと月刊アニメ雑誌の誌面を使ってまでクマさんことアニメライター・小黒祐一郎なども酷評していたTVアニメ『新機動戦記ガンダムW(ウイング)』(95年)――筆者個人は傑作だと思う――などのキャラデザ・原画マン上がりで、近年では深夜アニメ『GANGSTA(ギャングスタ)』(15年)やアニメ映画『虐殺器官』(17年)などの良作の監督も手掛けてきた村瀬修功カントク。


 そして、『ガンダムUC』全話を手掛けたむとうやすゆき脚本による「漫画アニメ的なナンちゃって感」は皆無な、「コレ見よがし」のリアリズムではなくナチュラリズムをねらったとおぼしき本作には特に拙(つたな)いところは散見されない。


――とはいえ逆に云うと、キョーレツなツカミには欠けているようにも思うけど。もちろん富野御大の演出も漫画アニメ的ではないのだけど、ナチュラルというモノでもなく、そのセリフ廻しも含めてやや「新劇」(明治以降の舞台での現代劇)的なモノではあったので――



 事情聴取を無事に凌いだハサウェイ青年は郊外~海辺~小舟を乗り継いでいく。それまでにも地球環境保全&反地球政府を訴えるマフティーを勝手に名乗っている同名組織が複数は存在することが語られている。
 街々の庶民と交わる中でも彼らのテロ行為に喝采を送る者、しょせんは政府ともまた異なる意識高い系のエリート連中による生活軽視で思想重視の活動に過ぎなくて、庶民にも被害が及んでいるテロ活動によって最後は人々にも反発されて自滅するだろうと冷笑する者、双方に理があるリアクションも点描していき、ハサウェイ青年もつい考えこんでしまうといった姿が描かれる。


 そして、向かった先の島嶼の隠し工場のようなアジトで彼の真の正体も判明する。彼こそが地球環境保全のための反地球連邦組織のリーダー・マフティーであったのだ! ……といったところで、人間ドラマ的には幕となる。


 その後はメカロボアクション! 隠していた多段式ロケットを打ち上げて、成層圏上に待機させていた巨大カプセルに乗り移ったハサウェイ青年は地表へと自由落下。内部に隠していた無骨な新型ガンダムを操縦して、先にも面通しをしていた青壮年大佐の部下である若造パイロットとも一戦を交えることとなる……。


 富野ガンダムとも同様に、物語の序盤で主要人物同士を面通しさせて「因縁」を作っておいて、そんな彼らを敵味方として戦場で激突もさせるといったあたりは、実は確率論的にはちっともリアルではなくご都合主義でもあるのだけど(汗)。しかし、善くも悪くも「物語」というものは、そーいった作り方をしなければ成立しにくいモノだろう。だからそこには過剰にケチはつけない。


 初作にはなかったものの続編『Zガンダム』以降は、敵味方が通信で会話をしまくれる……といったあたりも、初作の世代人としては引っかかりはあるのだけど、今のガンオタたちがそのへんを歌舞伎的様式美だとして割り切れていることを考慮すれば、バトル中でも人間ドラマを継続可能とさせる手法としては認めてもイイのかもしれない。



 環境ネタについては、0093年を舞台としていた『逆襲のシャア』で初作の金髪美青年ライバルであったシャアが地球環境保全をお題目として戦争を引き起こしたことの継承でもある。
 しかし、環境問題について富野ガンダムに先見の明があったということでもない。当時も世間で環境ネタは騒がれていたし、70年代前半に公害が隆盛を極めていた時代にも環境問題が叫ばれていたモノである。


 それよりも古いマニアとしては、『Zガンダム』では地球環境のことについての言及などはまるでなくて、その次作『機動戦士ガンダムZZ(ダブルゼータ)』(86年)終盤に至っては妹のセイラ女史をして


「兄は宇宙との調和のようなモノを目指している」


うんぬんなどとオカルト・精神世界方面への傾斜が示唆されていたシャアなのに、シリーズとしての「伏線」は一切ナシで唐突に巨大隕石を地球に落下させて「核の冬」――東西2大国の核戦争によって舞い上がった粉塵で太陽光が遮られることでの氷河期襲来といった80年代に流通していた学説――を引き起こして、地上の人類は滅ぼしてでも地球環境を保全せんとした超展開についての、30数年前に抱いた違和感もかすかによみがえってくるのであった(汗)。


 もちろんそれは、初作の主人公アムロと宿敵シャアを再び戦わせるため、映画としての大掛かりな映像的背景舞台装置も必要だったから……といった作品の外側にあった事情については承知をしてはいるものの。



 本作に対するマニア間での世評はやや高すぎるとは思うし、ホントウにガンオタたちが本作の内容についても理解をしているのかについては疑問符もつく(汗)。とはいえ、傑作だったとは思わないまでも、まぁまぁの良作だったとは私見するのだ。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.88(22年1月16日発行))


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『発表! 全ウルトラマン大投票』 ~第2期ウルトラ再評価の達成!? 番狂わせ!? ウルトラ作品の評価軸の多様化!

(文・久保達也)

*第2期ウルトラシリーズ再評価のようやくなる達成!?


 2022年9月10日(土)22時から翌日午前0時にかけて、BSデジタル放送「NHK-BS(エヌエイチケイ・ビーエス)プレミアム」で『発表! 全ウルトラマン大投票』なる特番が2時間にわたって放送された。


 20世紀のむかしから――といっても、70年代末期に発行された本邦初の青年マニア向け出版物における記述以降――、2000年代前半あたりまでは、この手の人気投票企画を実施すれば、


●第1期ウルトラシリーズ(『ウルトラQ(キュー)』(66年)・初代『ウルトラマン』(66年)・『ウルトラセブン』(67年)が「頂点」!
●第2期ウルトラシリーズ(『帰ってきたウルトラマン』(71年)・『ウルトラマンA(エース)』(72年)・『ウルトラマンタロウ』(73年)・『ウルトラマンレオ』(74年))が最底辺の「ドン底」!
●平成ウルトラ3部作(『ウルトラマンティガ』(96年)・『ウルトラマンダイナ』(97年)・『ウルトラマンガイア』(98年))が再度の「頂点」!


といった結果になっていたことであろう。それが往時の特撮マニア間でのウルトラシリーズに対する最大公約数的な見解でもあったからだ。そして、「本邦国産SF特撮の最高傑作」(汗)として『ウルトラセブン』が従来どおりに第1位となっていたことであろう。


――厳密には、80年代の中盤には特撮評論同人界では、第2期ウルトラシリーズの再評価ははじまっていて、それが特撮雑誌『宇宙船』(80年~)の同人誌コーナーなどでは紹介されていた。しかし、我が身の非力さを嘆(なげ)くばかりではあるけれど、それらの知見が一般(?)のマニア層にまで大きく還流していくことはなかったのであった(汗)――


 しかし今回の企画では、永遠の第1位かと思われていた『ウルトラセブン』がトップの座からは陥落(かんらく)して、第2位となってしまったのだ!


 初代『ウルトラマン』に至っては、第5位にとどまってもいる! VTRインタビューで、初代『マン』の主人公・ハヤタ隊員を演じた黒部進(くろべ・すすむ)氏はこの結果に冗談まじりに不満を呈していたほどであった(笑)。


 今回の投票企画の結果は、「作品」ではなく「キャラクター」、「ウルトラヒーロー」としての「ウルトラマン」の人気投票であったので、ウルトラヒーローが登場しない元祖『ウルトラQ』は含まれてはいない。
 しかし、「ゲストヒーロー」や作品中で「2号ウルトラマン」として登場したキャラクターではなく、「看板作品を背負っているヒーロー」に対しての人気投票である場合は、そこにはおのずからヒーロー単体としての魅力だけではなく、「看板作品全体に対する好悪や評価」が半ば以上に含まれてしまっていることであろう。
 つまり、実質的には「キャラクター」のみならず「作品」それ自体に対する人気投票といった気配も濃厚になってきてしまうのだ!


 そして、筆者のようなロートル世代からすれば驚愕(きょうがく)の結果であったのが、我が愛しの高く評価もしてきた「昭和」の第2期ウルトラシリーズの各作品が、最底辺の「ドン底」にはランクはされてはいなかったことなのだ! どころか、第10位前後~10位台の前半にそろってランクインまでしていたのであった!


●9位  ウルトラマンタロウ
 (『ウルトラマンタロウ』(73年))
●11位 ウルトラマンエース
 (『ウルトラマンA(エース)』(72年))
●13位 ウルトラマンジャック
 (『帰ってきたウルトラマン』(71年))
●14位 ウルトラマンレオ
 (『ウルトラマンレオ』(74年))


 「たかが10位台の前半にしか過ぎない!」などと侮(あなど)ることなかれ! ウルトラヒーローは「キャラクター」としては現在では約50人もいるのだ! 「看板作品」としてのカウントをしても約30作品も存在しているのである。


 つまり、ウルトラシリーズ全体の中でも、かつては酷評の憂き目に遭(あ)ってきた第2期ウルトラシリーズが、今では上位の存在だとして老若のマニア間では認知されていることのこれは証明でもあるのだ!


 対するに、マニア間での世評が高かった平成ウルトラ3部作は、第1位に輝いた『ウルトラマンティガ』はともかくとしても、


●12位 ウルトラマンガイア
 (『ウルトラマンガイア』(98年))
●17位 ウルトラマンダイナ
 (『ウルトラマンダイナ』(97年)


 上記のとおりで10位台にとどまってしまっている。往時のように第2期ウルトラシリーズをはるかに上回った高品質な作品なのだ! なぞといった評価にはなってはいない。むしろ、第2期ウルトラ作品とも同等、あるいはやや第2期ウルトラ作品の方が優勢! といった評価になっている印象さえをも受けるのだ。


――『ダイナ』が第17位にとどまったことに対して、『ダイナ』の主人公・アスカを演じていた、メインのコメンテーターとして登場していたつるの剛士(つるの・たけし)は「ナットクできない」などと苦言を呈していた……(もちろん、その場の空気を不快にさせない常識の範疇にて軽妙にではあったけど!・笑)。各作品に対する個人ごとの評価は別として、作品の関係者かつ代表者としては、それくらいの自信を持って意気込みを見せてくれた方がよいだろう! といったことは付言しておきたい――



 そして、筆者はこのランキング結果に「第2期ウルトラシリーズの再評価の達成」をようやくに見るのでもあった……。


――これ以上の評価の上昇はムズカしいことだろう。そして、これはそれなりに正当で妥当な評価でもあって、ついにそこに帰結したのだとも見るべきなのであろう。……長きにわたった戦いはついに終わったのであった!? 一部の狂信的な第2期ウルトラ擁護派も、逆効果になってしまうようなヒステリックな論法は今こそホコに収めて妥協すべきところではなかろうか?(汗)――


*平成ウルトラ3部作の『ダイナ』『ガイア』よりも、『コスモス』『ネクサス』が上位にランクの意味!


 さて、この投票が行われた2022年といえば、巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ(95~21年)の監督として広く知られる庵野秀明(あんの・ひであき)氏が初代『ウルトラマン』を再構築した映画『シン・ウルトラマン』(22年・東宝)の大ヒットが記憶に新しいところだ。
 投票期間の2022年7月中旬から8月中旬は『シン・ウルトラマン』の公開から数ヶ月を経た時期であり、その大人気の余波がいまだ冷めやらぬころであった。


 その最中に行われた投票でもあったのに、日本人の大半に広く知られているかと思われる初代ウルトラマンが、「ウルトラヒーロー」部門のランキングで首位どころかベスト3(スリー)にも入らず、第5位にとどまってしまった事実に驚愕した人もきっと多かったことだろう。


 「ウルトラヒーロー」部門にかぎらず「ウルトラ怪獣」部門にしろ「ウルトラメカ」部門にしろ、「平成」時代のウルトラマンシリーズ、あるいは「ニュージェネレーションウルトラマン」と呼称されている2010年代以降のウルトラマンシリーズに登場したキャラクターやメカの数々が、まさに「昭和」のウルトラマンを圧倒するほどに大躍進をとげていたのだ。



 本企画で投票した人々の世代別の割合を見ると、以下のとおりであった。


●19歳以下  (2003年以降生まれ)      21.6%
●20歳~29歳(1993年~2002年生まれ)  32.6%
●30歳~39歳(1983年~1992年生まれ)  16.9%
●40歳~49歳(1973年~1982年生まれ)   8.2%
●50歳~59歳(1963年~1972年生まれ)  15.3%
●60歳以上  (1962年以前生まれ)       5.3%


 私事で恐縮だが、西暦2000年生まれの甥(おい)は、4歳で『ウルトラマネクサス』(04年)、5歳で『ウルトラマンマックス』(05年)、6歳で『ウルトラマンメビウス』(06年)を観て、地球人側の防衛組織のスーパーメカに夢中になって、2022年現在はもう就職して働いてすらいる。そんな世代がすでに立派な社会人となっているワケである。


 世代別では、インターネット・ネイティブでもあるこの「20代」が全体の3割以上を占めており、2位である10代を10%以上も引き離していて圧倒的に多い!
 この世代は、20代の上の方であれば1996年~1999年にかけて放映された『ティガ』『ダイナ』『ガイア』の平成ウルトラ3部作、20代中盤であれば2001年~2002年に1年半にわたって放映された『ウルトラマンコスモス』、20代の下の方であれば2004年~2007年にかけてTBS系列の中部日本放送が製作・放映した『ネクサス』『マックス』『メビウス』の直撃世代に該当している。


 しかし、その圧倒的な占有比率のワリには、第1位に輝いた『ティガ』などはともかくとしても、同じく世評は高い平成ウルトラ3部作の作品であった『ダイナ』や『ガイア』なども、10位以内にはランクインを果たしてはいないのだ。
 つまりは、20代の上の方や30代の世代は必ずしも自身が幼少期に遭遇した当時の最新作であった平成ウルトラ3部作には投票していなかったという分析もできるのだ(汗)――どういったキャラクターに分散投票がなされたのかについての分析は、後述していこう――


 むしろその逆に、平成ウルトラ3部作よりも子供人気のバロメーターともなりうるオモチャの売上・視聴率などではたしかに劣っており、当時の年長特撮マニア間での評価の方も必ずしも高くはなかった「怪獣保護」を唱えていたマイルドな異色作『ウルトラマンコスモス』の方が、『ダイナ』や『ガイア』よりも投票数が多くて、第10位にランクインすらしていたのだ!


 同様に、直前作である『コスモス』とは一転して、共生不可能な怪獣の根絶に振り切っていたシリアスにすぎる作品内容や、玩具の不人気によって放映当時は打ち切りの憂き目に遭ってしまった『ウルトラマンネクサス』も、『ダイナ』『ガイア』『コスモス』をすら上回って、第9位となっているのだ!


 世俗のもろもろの人気投票にかぎらず国政選挙などでも、その選挙結果の読み方は、単一のモノサシではなく、投票者の世代別割合・世代ごとの支持政党や無党派に無投票などの割合・男女差・地域差などなど、いかに複数の直線定規・直角のT字型定規・三角定規・分度器・巻き尺なども同時に駆使してみせて、より立体的・多角的で正確に深度を計ってみせるのかで、評者のセンス・見識・器量なども読者に試されてしまうものだ(汗)。
 おそらくは、「世代論」や「幼少時に遭遇したファースト・インプレッション・ヒーローが絶対である!」といった「神話」自体は、今でも相応には有効ではあっても、決して万能なモノサシなどではなかった! といったところが結論なのであろう。


 もちろん、世代人の方々で『コスモス』や『ネクサス』に対して無条件で思い入れのある方々に対しては非常に申し訳がないことだけれども、あの時代の空気を知る者としては、当時の子供たちの平均層に対して『コスモス』や『ネクサス』が圧倒的にウケていた……といった感覚・手応えなどもなかったものなのだ(汗)。
 だから、当時の世代人の子供たちの全員が、『コスモス』や『ネクサス』に投票していたとはとても思えないのだ。『コスモス』や『ネクサス』の世代人であるウルトラシリーズのファンではあっても、その投票先は必ずしも『コスモス』や『ネクサス』ではなかったのではなかろうか?


――世代人の全員がファースト・インプレッションのヒーロー作品に投票するのであれば、放映当時は『ネクサス』よりも人気があったハズである後番組『ウルトラマンマックス』(05年)の方が、『ネクサス』よりも上位にランクインしていたハズである。しかし、同作が20位以内にもランクインができなかったことが、「世代論」だけでも説明がしきれないことの何よりの証左にもなるだろう!――


 そんな異色作・変化球の作風だったがために、同時期に放映されていた平成仮面ライダースーパー戦隊シリーズには人気や商業面で負けており、リアルタイム世代にも支持層がウスかったかと思われるウルトラマンコスモスウルトラマンネクサスが、その世代の投票だけでベストテン入りを果たすことはムズカしかったことだろう。


 しかし、放映当時はともかく、たとえば後年のヒーロー大集合的な作品などでは、ウルトラマンタロウウルトラマンメビウスウルトラマンゼロウルトラマンゼットといった正統派のウルトラマンが勢ぞろいしている中に、ウルトラマンコスモスウルトラマンネクサスが混じっていた場合に、逆説的なのだが個性的で実に目立っていたりもするのだ(笑)。


 そして、そんな彼らを、後続の映像作品やライブステージなどの仮面劇のドラマの中であっても、そのキャラを立たせるためにか、コスモスの怪獣保護の「慈愛」の精神といった個性や、ネクサス(=ウルトラマンノア)の「神秘性」といった個性を、出典作品にも準拠して反復・強調してみせることで、その他のウルトラマンたちとは明確に異なる別格の個性を持った存在だとして描くことも実は多ったりもしてきたのだ。


――往時は不人気であった昭和の異色作である『ウルトラマンレオ』(74年)、昭和ライダーであれば『仮面ライダーアマゾン』(74年)なども、「異色作であった!」といったことだけでも目立っているのだが(笑)、それに加えて後年のシリーズ作品でも、彼らには別格の特別な扱いや役回りを与えてみせることが多いので、往時はともかく今となってはよけいに目立ってくることとも共通なのだった――


 そうなると、世代人ではない後続の若い世代の子供やマニアたちの方こそ、『コスモス』や『ネクサス』とは何ぞや!? といった興味関心を惹(ひ)かれてしまうといったことは、それが多数派・主流派ではなかったとしても相応の数で存在してきたことであろう。
 そして、そんなかつての不人気だった弱者もとい作品に対してこそ、「判官びいき」で妙に肩入れをしたくなってしまうというメンタルを持ってしまうような、気持ちがやさしい人間も、特にウラぶれたオタク人種(笑)たちの中には一般ピープルよりもはるかに高い比率で存在していることであろう。
 しかし、そんな不人気な存在こそをおもわず、悪平等(爆)ではあっても支持をしてしまうような、マイナー志向の好事家や悪食(あくじき)志向(失礼)のマニアたちのそんな気持ちも、我々のようなオタクであれば実によくわかる心理なのではなかろうか?


 けれど、だからといって、実際に『コスモス』や『ネクサス』に対して、筆者が一票を投じてみせるのかについては別なのだけど(笑)。それに「判官びいき」にしたいキャラクターや作品は人それぞれであって、その対象もまた人によってやはり別々のものにはなってしまうものだろうし。


――とはいえ、往時の毎夏の催事イベント『ウルトラマン フェスティバル2006』において、当時放映中であった『ウルトラマンメビウス』の役者陣も登板した「スペシャルナイト」に登場した、前作『ウルトラマンマックス』の2号ウルトラマンであったウルトラマンゼノンに対して、執拗に大声で応援していた子供がいたという話も聞いたことがあった。実際の劇中でのゼノンの扱いはヒドいものではあったけど(汗)、それであっても応援してみせたくなる健気な子供のその気持ちについてもイタいほどによくわかるのだ――


 つまり、世評やマニア間での平均的な評価は必ずしも高くはなかったのに(汗)、この手の人気投票企画では彼らのような不遇の弱者ヒーローにこそ「慈愛の精神」が発揮されてしまって(笑)、このような高いポジションにランクインされてしまっていたのではなかろうか!?


 その心意気は壮とすべしであっても、その意味では「作品批評」的な意味合いでは正当なランキングにはなってはいなかったのかもしれない。しかし、だとしても、2大異色作となっていた『コスモス』や『ネクサス』が高いランキングになったからといって、特撮マニアの巷間(こうかん)においても、


「今後の「ウルトラ」こそ、『コスモス』や『ネクサス』のような作品を目指すべきなのだ!」


などといった声がモクモクと盛り上がっているといったことなぞはまるでなくって、そのような意見は見掛けたことすらないのだ(笑)。ということは、これらの作品を推している彼らもまた、さすがに『コスモス』や『ネクサス』のような作品こそが絶対正義なのだ! などといったことまで主張するようには思い上がってはいないのだ! といった「読み方」も可能ではあるのだろう。


 『コスモス』や『ネクサス』といった作品の方向性それ自体は、自分たちの志向とも同様にウルトラシリーズの中では決してメジャーではありえない。自身は『コスモス』や『ネクサス』の世代人でもない。そして、ほかにも自分にとってのベストワンのウルトラヒーローやウルトラ作品は存在している。
 しかし、それでもオレはこの作品がまぁまぁスキだからあえて投票してみせる! などといった主張をしてみせるような若年マニアが相応の数で存在していたことが、この両作品の主人公ヒーローがベストテン入りを果たすことができたことの理由であったといった解釈も可能である!? などと思ったりもするのだ。



 なお、00年代中盤に放映された作品の中ではダントツのトップで、ウルトラマンメビウスもまた初代マンの第5位につづく第6位として、非常に高い人気を獲得できていた。
 『メビウス』については本放映当時の子供たちはもちろん、その「昭和ウルトラ」シリーズの直系の正統続編として製作されたことで、熱狂的な歓迎をもって年長マニア諸氏からも迎えられていたし、あの当時の2ちゃんねるの『メビウス』板も、『メビウス』や第1期ウルトラシリーズのみならず、全ウルトラシリーズを等しく愛する物知りたちが集ったウルトラシリーズ総合スレッド! といった様相を呈していたほどだった。
 『メビウス』を鑑賞して第2期ウルトラシリーズも改めて再評価するようになったといったという第2期ウルトラの世代人(爆)――70年代末期のマニア向け書籍の影響で、第2期ウルトラの世代人にも第2期ウルトラ酷評派は実に多かったのだ(汗)――、どころか第1期ウルトラの世代人の中にも少数派ではあるのだが、自身の子供たちによるマニアックではない実に素朴な反応(笑)から第2期ウルトラを容認するように変化していく流れも生じていたほどだったので、これもまた幅広い世代の支持を得ていた作品ゆえの実に妥当なランキングでもあるだろう。


 こんなところにも、単純な「世代論」だけでも決して測れない、作品人気の在り方が現われてもいたのだ。


――まぁ『メビウス』自体は、その作品世界の設定が「昭和ウルトラ」の直系だったというだけであって、その作劇術自体は「少年マンガ」的だったのであり、「昭和ウルトラ」での作劇術や作風ともまたそうとうに異なるものでもあった。しかし、そんなことはドーでもイイ! エンタメとして面白ければそれでイイのだ!(笑)――


*初代マンを差し置いて、ゼロが4位! ゼットも3位に押し上げたZ世代が、タロウ&レオにも投票!?


 「20代」に次いで多いのは、2003年以降に生まれた「19歳以下」である。10歳未満の児童や幼児はあまり投票していないだろうことを思えば、実質的には「10代」、つまりは小学校高学年の10歳~高校卒業直後の19歳の世代だと解釈しておきたい。


 そして、この10代の世代であれば、2009年に公開された映画『ウルトラ銀河伝説』にはじまったウルトラマンゼロが主役の劇場映画やオリジナルビデオ作品、ゼロがホストを務めていた再編集番組『ウルトラマン列伝』(11~13年)、そして『ウルトラマンギンガ』(13年)にはじまる「ニュージェネレーションウルトラマン」シリーズなどといった、ほぼ毎年ごとに製作されてきた新作の「ウルトラマン」作品を観てきた世代でもあるだろう。


●3位  ウルトラマンゼット
 (『ウルトラマンZ』(20年))
●4位  ウルトラマンゼロ
 (映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー))
●7位  ウルトラマンオーブ
 (『ウルトラマンオーブ』(17年))
●15位 ウルトラマンジー
 (『ウルトラマンジード』(18年))
●16位 ウルトラマンエックス
 (『ウルトラマンX(エックス)』(15年))
●20位 ウルトラマントリガー
 (『ウルトラマントリガー』(21年))


 『ジード』『X』『トリガー』は、10位台の前半につけていた第2期ウルトラシリーズよりも下位にはなったものの、10位台の後半のランキングをキープできているのであれば、2010年代のウルトラマンシリーズ作品群も充分に健闘できている! といった分析をしてみせてもよいのではなかろうか!?


 筆者のような高齢オタクであっても、これらのニュージェネレーションウルトラマン作品を楽しんでいるような御仁はいるにはいるだろうが、我々の世代の中では決して多数派ではないであろう(汗)。よって、おそらくは2010年代のウルトラマン作品は2003年以降に生まれた若年層の「10代」が投票しているのだろう……といった見方でも、まだまだ浅いのであろう(笑)。


 だいたいマニア連中とは、いつまで経(た)っても子供向けヒーロー番組を卒業ができないものだと相場が決まっているものだ(汗)。よって、2010年代のウルトラマンシリーズも熱心に観てきたマニア層とは、10代のみならず、その上の20代や30代のマニア層も同様ではあっただろう。つまり、このへんの世代が満遍なく2010年代のウルトラマンシリーズにも投票していたのだ! と解釈してもよいだろう!?


 そして、ある程度の予想はマニア諸氏にもついていただろうが、2010年代のウルトラシリーズにおける「先輩ウルトラマン」の役回りとして、ここ10年強のシリーズを牽引(けんいん)してもきたウルトラマンゼロが第4位! つい最近に放映されたばかりで圧倒的な大人気を誇っていたウルトラマンゼットに至っては、ゼロすら上回って第3位を獲得してすらいるのだ!


 この両者の非常に高い人気については驚かされるとともに、多くの特撮マニア諸氏も今となっては「妥当」であり「ナットク」であるとの想いを逞しくしているのではなかろうか? もうあとに残っているのは第1位のウルトラマンティガと第2位のウルトラセブンのみなのであって、第5位の初代ウルトラマンよりもこの両者は高い人気を獲得できてもいるのだ!



 その次に多い「30代」は、1990年代初頭生まれの30代前半であれば、20代の上辺とも同様に平成ウルトラ3部作の直撃世代にあたってはいる。
 しかし、先述してきたとおりで、第1位の『ティガ』はともかく、往時の年長マニア間では第2期ウルトラよりも高品質である! と評されてきた『ダイナ』と『ガイア』は実は10位以下にとどまっていたのだ(汗)。つまり、今となってはウルトラシリーズファンの多数派である彼ら20代の上辺と30代の下辺の世代については、必ずしもこれらの作品には投票していなかったことにもなるのだろう。それはナゼだったのであろうか?


 30代後半の世代がまだ子供時代であった1980年代末期~90年代前半は、テレビ東京系列で『ウルトラ怪獣大百科』(88年)にはじまるミニ番組『ウルトラマンM715(エム・ナナ・イチ・ゴ)』(90年)などが放送されていたころでもある。
 1990年には『ウルトラマンG(グレート)』(90年・バンダイビジュアル)、1993年には『ウルトラマンパワード』(93年・バンダイビジュアル)といった海外との合作がオリジナルビデオ作品としてリリースされ、30分のテレビシリーズの新作はなくとも「昭和」のウルトラマンを身近に感じられた世代なのだろう。


 その当時は現在とは違って地域によって差はあれど、地上波テレビでウルトラマンシリーズの再放送が早朝や夕方などに繰り返されていた。80年代末期はちょうど家庭用ビデオデッキが一般家庭にも普及しきったこともあって、彼らは往時に隆盛を極めていたレンタルビデオ世代でもあったのだ。



 ところで、第9位のウルトラマンタロウと第14位のウルトラマンレオについてのみ、投票の男女比や世代比が公表されている。


 タロウは、世代比では1位が世代人である50代で24.3%を占めているのだが、40代を飛ばしたところでのこの30代が2位として21.6%をも占めていたのだ――20代も18.6%。10代も15.9%を占めている。しかし60代では4.7%と圧倒的に少ない(汗)――。


 レオも、世代比では1位は世代人の50代で24.1%を占めているが、飛んでこの30代が3位として19.9%もの高い比率を占めているのだ。


 つまり、この平成ウルトラ3部作の直撃世代であっても――の中でも長じてから特撮マニアとして残ったタイプにとっては――、ウルトラマンタロウウルトラマンレオを支持しているようなマニア諸氏が相応の規模で存在はしていた! といったことにもなるのだ。


 ちなみに、レオの投票世代比における2位は、この30代よりも下であって、『レオ』に対してもはるかに馴染みがないようにも見えてしまっていた20代の22.7%であった! さらにその下の10代でも4位として16.4%をも占めていた!
 これはやはり、『ウルトラマンメビウス』(06年)第34話における魅惑的なレオ客演回! そして、その後続シリーズにおけるウルトラマンゼロの師匠としてのレオの再登場! それらの続編作品群でも「強者」としての大活躍! といった描写が連発されてきたことで、レオが魅力的に映ってきたがゆえの、彼の看板作品をまるごと含めた上での再評価の達成! といったところに起因するのであろう!
――タロウももちろん同様で、『メビウス』以降、そして2010年代のウルトラシリーズでも重要な役回りを演じてきたゆえだろう――


 しかし…… 「60代」では、タロウは4.7%、レオに至っては1.1%しか占めていない。いかに『ウルトラマンタロウ』や『ウルトラマンレオ』が第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちから往時はモーレツな酷評の憂き目に遭ってきたか、そして彼らがいまだに『タロウ』や『レオ』のことを認めてはいなかったのだ! といったことを、読者諸氏も偲(しの)んでみてほしい(汗)。それを考えると今はまさに夢のようでもあるからだ(笑)。



 70年代前半の第2期ウルトラシリーズにリアルタイムで夢中になった、1963年や1964年生まれの50代の上辺であれば66~67年放映の初代『マン』や『セブン』もカジることができていて、1972年生まれの50代の下辺であって第2期ウルトラシリーズそれ自体はリアルタイムでは未体験ではあっても70年代末期の第3次怪獣ブームで第1期ウルトラ~第3期ウルトラシリーズまでのすべてのウルトラシリーズ作品を一応の等価なモノとして享受してきたような「50代」。
 そんな彼らよりも年下の「40代以下」の若い世代の方々の方がはるかに多数派を占めるに至ってしまった現在、もはやウルトラファンの間でも世代交代が完全に達成されてしまったのだと解釈すべきところだろう。


 よって、初代『マン』や『セブン』をリアルタイムで視聴してきた、すでに還暦(汗)を迎えてしまった「60代」の第1期ウルトラ世代の方々が今では少数派となってしまったことからすれば、「最近のウルトラマンはしゃべりすぎだ! 神秘性がなくなる!」などといったウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツの嘆き(笑)に対しては過剰に耳を傾ることなく、最も支持をしてくれている世代に向けた番組づくりをすべきだろう。


*「空白の15年」に相当する40代の真相! それと、現行作の人気の高低に相関関係はアリやナシや!?


 さて、先に挙げた世代別割合で悪い意味で注目せざるを得ないのが、今回の人気投票における「40代」が占める割合がその前後の世代との比較で突出して低いことだ。30代や50代が占める比率のその約半分程度の数字しかないのであった。


 『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)の放映が終了した1981年3月~『ウルトラマンティガ』の放映が開始された1996年9月に至る15年半もの長期にわたって30分のテレビシリーズが途絶えてしまったことで、「ウルトラマンを知らない子供たち」が多く生みだされてしまったのだが、その過半を占めているのが2022年現在の40代なのだ。
 特に1970年代後半から1980年代初頭に生まれた現在40代前半の世代は、物心がついたときには『80』は終了しており、先述したテレビ東京のミニ番組がはじまるころにはすでに成長してヒーロー番組から足を洗う年頃に達していた場合も多かったことだろう。


 ただ、先にも述べたが、この世代もまた地上波テレビでのウルトラマンシリーズの再放送や、レンタルビデオの世代でもあったのだ。この世代のウルトラシリーズファンの絶対数自体は少ないのかもしれないが、それでも幼少時から夢中になって卒業もせずにマニアとして長じてくれたタイプの人種たちには(感謝!・笑)、かなり熱心なタイプも多いようなのだ!


 私事で恐縮だが、筆者が上京して東京に在住していた1989年5月~1994年12月までのわずか5年半の間にTBSでは、


●初代『ウルトラマン』が1990年・1992年・1994年
●『ウルトラマンタロウ』が1988年・1990年・1993年
●『ウルトラセブン』が1989年
●『帰ってきたウルトラマン』が1991年


に再放送されていた。そして、89年~93年にかけては開局間もない今は亡きBSアナログ放送局であったNHK-BS2でもアニメシリーズ『ザ☆ウルトラマン』(79年)を除いた昭和のウルトラシリーズが平日深夜枠や平日夕方枠で放送されていたのだ。BS受信機の方はまだまだ普及率が低かったので、そちらを観ていた子供たちは少なかっただろうが、それでもネットを徘徊していると、幼少期に観たNHK-BS2での再放送でウルトラシリーズに開眼したという世代人のことを散見する。


 それだけの頻度(ひんど)で行われていたらば、新たなファンも確実に生みだされていたことであろう。当時は存在していた新聞のテレビ欄の読者投稿欄などにも「子供が早起きして兄弟そろって観たがっていて、いつの時代も子供たちは変わらないものだなとは思うのだけど、さすがに早朝5時台の再放送はやめてほしい」といった趣旨のクレームが掲載されていたほどなのだ(笑)。


 2010年代のウルトラマンシリーズには深夜番組『ウルトラゾーン』(11年)から参加している田口清隆(たぐち・きよたか)監督が1980年生まれなので、まさにこの世代であった。監督も早朝や夕方ではなく深夜に再放送がされていた『ウルトラQ』『マン』『セブン』の再放送を親の目を盗んで観ていた悪い子供だったそうだ(笑)。似たような経緯で特撮マニアとして成長した同世代の人々もきっと多かったことであろう。


 だがその当時は、『キン肉マン』(83~86年・東映動画→現東映アニメーション 日本テレビ)・『北斗の拳(ほくとのけん)』(84~88年・東映動画 フジテレビ)・『ドラゴンボール』(86~97年・東映動画 フジテレビ)・『聖闘士星矢(セイント・セイヤ)』(86~89年・東映動画 テレビ朝日)などの「週刊少年ジャンプ」連載の人気漫画のアニメ化作品、70年代後半に発売されたお菓子のオマケのシールを母体とした『ビックリマン』(87年・東映動画 朝日放送)といったテレビアニメが子供たちの間では大人気となっていた時代でもある。
 特撮ヒーロー作品では、「スーパー戦隊」以外にも『宇宙刑事ギャバン』(82年・東映 テレビ朝日)にはじまる「メタルヒーローシリーズ」が継続して放映され、『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(87年)と『仮面ライダーBLACK RX(アールエックス)』(88年)で「仮面ライダー」も一時的に復活を果たしていた時期であった。


 現在の一般層の40代にとってのヒーローといえば、やはりそれらの作品が主流であって、「ウルトラマン」を一応は知ってはいても最新作としての「ぼくらのウルトラマン」がつくられることがなかったことで、それらのアニメやヒーローほどには「ウルトラマン」に対して想い入れが強い人間はどうしても少数派になってしまったといったところだろう。



 社会の中核を占めており決定権を握れるようにもなっている40代のファン層がウスいことは、商業的な企画の決定においてはややよろしくはないことであろう。「ウルトラマン」の番組なり何らかの「ウルトラマン」関連の企画を通してみせたい場合に、世代人としての思い入れがあるか否かによってもその営業力はやや劣ってしまうこともあるだろうし、交渉された相手の方でも食指が動きやすいか否かといった相違によって、どうしても背中を押してくれる決断の相違といったものが生じてしまいがちになってしまうからだ。


 ただし、2010年代の「ニュージェネレーションウルトラマン」の知名度・浸透度が、「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」に比べて格段に低いことは、ウルトラマンを観てくれるような子供たちを育てている30~40代の世代もまた「ウルトラマン」をよく知らないから、あるいは想い入れがあまりなかったからだ……といった分析は俗説の類いにすぎるだろう(笑)。


 もしもそのような分析がホントウに正しいのであれば、80年代の「週刊少年ジャンプ」原作のアニメにしろ、90年代後半の『ポケットモンスター』にしろ、2010年代前半の『妖怪ウォッチ!』にしろ、その子供たちの両親の世代もまたそれらの作品を観ていたからである! といった理屈になってしまうからだ(汗)。
 そんなワケがないのだ。両親の世代や作り手側が子供であった時代に、「ジャンプ」も『ポケモン』も『妖怪ウォッチ』などはカケラもなかったのだ(笑)。


 つまり、作品自体にパワーさえあれば、子供たちは大人の目を盗んででも、絶対に観たがるものなのだ。よって、残念ながら「ウルトラマン」――にかぎらず「仮面ライダー」でも「スーパー戦隊」でも――という作品・コンテンツそれ自体に、現在ではそこまでの子供たちの全員を無条件で吸引するような勢いはないのだともいえるのだ(汗)。


 しかし、作品・コンテンツの勢いとはいったい何なのか? ドラマやテーマといった作品の「質」のことなのか? カッコよさや爽快感といった「戦闘色」といったことなのか? おそらくそれらは魅力の一部であって、総体的に見れば違うだろう。どれもこれも大人になってみて振り返るに、大同小異の勧善懲悪ものなのである(笑)。


 強いて云えば、戦後の高度経済成長期やその余波で、科学やSFや重工長大な重化学産業などが輝いて見えた時代に、金属の銀色の輝きを持っていたロケットやコンビナートやメカなどにも通じて見えた銀色の巨大超人・ウルトラマンが、時代にマッチした新しいヒーローとして見えていただけだった……といったことに過ぎない。
 ということは、子供の目から見て、作品の内容それ自体ではなく、意匠・パッケージが新しく見えている作品こそが「新しい!」と誤認(笑)されて大ヒットしているだけなのかもしれないのだ(汗)。


 そういった意味では、「ウルトラマン」や「仮面ライダー」といった存在は、どうやっても「新しく」はなりようがない、日本の子供たちにとってもやや「既知」の今さらの存在にはなってしまっているのだ。


 つまり、原理的にも「ウルトラマン」や「仮面ライダー」といった古典の特撮ヒーローたちは、今後とも60年代後半の第1次怪獣ブーム~70年代末期の第3次怪獣ブーム、あるいは初登場時の『ポケモン』や『妖怪ウォッチ』に比肩する、児童間での大ブームが再燃する可能性は、作品自体の罪ではないものの、極めて困難ではある可能性も高いのだ(汗)。


 そうなると、子供番組のつくり方としてはやや邪道ながらも、細々とでも長生きができるように、子供層からマニア層からパパ・ママ層まで幅広くゲットして、そして子供たちが成長して親の世代になったときに自身の子供たちにも見せたい! あるいは見せてもイイか! そして関連玩具を買い与えてもイイや! といったことの敷居を少しでも下げさせるためにこそ(笑)、延々と商売をしていくといったことでもよいのだし、それがまた会社経営としても現実的な方策なのではなかろうか?


 「そんなウルトラマンであれば、いっそ滅びてしまえ!」といった意見にも一理はあるとは思う。しかし、それもまた寂しいでしょ?(笑) とにかく延命さえしていれば、間違って時には中ヒットや大ヒットを成しとげて、児童間や一般層での高い人気を獲得できる可能性もゼロではないのだし……


 そして、そういったことの成功例が、各作品を単独作品としては終わらせずに、同一世界での出来事だとしてユルやかに連続ドラマ性を持たせたり、時にはヒーロー大集合映画を挟んでいくことで、観客の興味関心を長期にわたって持続させることに成功して、2010年代には世界的な大ヒットを記録することになった、1960年代出自(爆)のヒーローたちのリメイクでもあったアメコミ(アメリカンコミック)洋画のシリーズなのである。


 2010年代の東映特撮やウルトラマンも、同じような路線を歩める可能性はそこかしこにあったとは思うのだ。そして、子供のみならずコアなマニア層も周辺のライト層をも興奮させて、もっと高い人気を特撮ヒーロー作品は獲得できていたとも思うのだ。
 しかし、正月の新旧2大ライダー共演映画や平成ライダー勢揃い映画とは異なり、毎春の『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』シリーズの映画はイマイチ・イマニの出来だったために不人気の果てにポシャってしまった。2代目・宇宙刑事たちが活躍して東映オールドヒーローたちともチームを組めるハズの「スペース・スクワッド」シリーズも継続には至っていない。このへんにも興行的な鉱脈があったハズなのに、そこに喰らいついて開拓していくようなセンスもある製作会社側のプロデューサーなり玩具会社側のプロデューサーがいなかったことが非常に残念でもあったのだ(汗)。


 そう、もう「ウルトラマン」や「仮面ライダー」といった「既知」のキャラクターでは、「目新しさ」といった要素はないので、その方面での単純な大ヒットは飛ばせないのだ。しかし、「既知」のキャラクターたちを組み合わせたりシャッフルすることで、時に単独のヒーローでは敵わない巨悪と戦わせたりすることでの連続性! といった要素でならば、この手のジャンル作品の古典ヒーローたちはまだまだ延命ができる! と信じて疑わないのだ。



 とはいえ、『80』~『ティガ』の間の「ウルトラマン」の新作テレビシリーズ未放映期間である「失われた15年半」はやはり、今ここに来て「ウルトラマン」にとっての逆風にはなっているだろう。


 しかし一方で、『ウルトラマンギンガ』以降のニュージェネレーションウルトラマンはたとえ放映期間は半年間ではあっても、かつてのような大赤字になって製作続行が危ぶまれている……などといったウワサは、平成ウルトラ3部作~00年代中盤までのウルトラシリーズの時代とは異なり、今ではいっさい聞こえてこないことも事実なのだ!
 これは素晴らしいことである。会社経営の成功でもあるのだ! 円谷一族の同族経営や失礼ながら高野・満田コンビによる経営では果たせなかったことなのだ。


 その意味では実質的にバンダイの傘下に入って、00年代中後盤にバンダイから出向してきた世代人プロデューサー・岡崎聖の往時の『メビウス』大人気の分析発言――せっかくの「昭和ウルトラ」の遺産もおおいに活用したことでの人気!――にもあったとおりで、玩具による収益向上も達成できるようにチューニング(調整)されたBS放送の『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年)にはじまって、2013年に地上波でスタートしたニュージェネレーションウルトラマンシリーズもまた、2023年で早くも10年間も継続できていることになるのだ。


 それを思えば、したり顔の憂国(ゆうこく)の紳士気取りでエラそうに嘆いてみせる必要などはまるでなく(笑)、長期的にはいずれ風向きも変わってくることを軽やかに待っているだけでもよいのだろう。



 ところで、当番組の公式ホームページでは投票者の男女別比率も掲載されている。それによると、男性が78%、女性が18.5%、その他3.5%であり、男性の占める割合が圧倒的に高い。
 まぁ、これは当然といえば当然なのだが、筆者がリアルタイムで『ウルトラマンA』や『ウルトラマンタロウ』を観ていた当時は、ウルトラマンを好きだった女子がけっこういたものなのだ。今回の「ウルトラヒーロー」部門で第9位となったウルトラマンタロウだけは現在でも女性人気が高いようだが。


 単純には云えないが、仮面ライダースーパー戦隊に出演した若手役者のほとんどがブレイクしてドラマや映画に引っぱりだことなるのに対し、ウルトラマンの役者がそこまでいかないことが多いのは女性のファン層のウスさにも一因があるのだろう。
 「ウルトラマン出身」として注目が集まるのは役者の将来はもちろんのこと、ウルトラマンのブランド力を高めることの一助にもなるのだから、今後はもう少し女性層を意識した作風・展開とすることにも一考を要するべきだろう。


 とはいえ、主人公ヒーローをいっそのこと、女性のウルトラマンにしてしまえ! などといった極論などは主張できないであろう。思春期以降の青年マニア向けの作品であればともかく、男児がスーパーヒロインにベタに感情移入をすることは困難なのだし、あるいは男児であるからこそ本能的・性的にも気恥ずかしくなってしまって遠ざけてしまうであろうことは必定だからだ(笑)。そうなってしまっても本末転倒なのである。
 そういった意味では、『ウルトラマンUSA』(87年・89年日本公開)や『ウルトラマンR/B』のように、3番手くらいに女性ウルトラマンが存在するのであれば、男児層でも抵抗感なく鑑賞してくれるのかもしれない。



 ちなみに、マニア諸氏にはご承知おきのことだろうし、NHKの公式ホームページ上でも半永久的にランキングのページは残るのだろうが、「ウルトラヒーロー」部門のランキングは以下のとおりであった。


 ここまでの論考も踏まえて、改めてそのウラ側にあるタテ糸やヨコ糸や歴史の拡がりまで含めて、その複雑多彩な興趣(きょうしゅ)を味わっていただきたい。


「ウルトラヒーロー」部門(以降、キャラクター名・初登場作品を列記)
●1位  ウルトラマンティガ
 (『ウルトラマンティガ』(96年))
●2位  ウルトラセブン
 (『ウルトラセブン』(67年))
●3位  ウルトラマンゼット
 (『ウルトラマンZ』(20年))
●4位  ウルトラマンゼロ
 (映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー))
●5位 (初代)ウルトラマン
 (『ウルトラマン』(66年))
●6位  ウルトラマンメビウス
 (『ウルトラマンメビウス』(06年))
●7位  ウルトラマンオーブ
 (『ウルトラマンオーブ』(17年))
●8位  ウルトラマンネクサス
 (『ウルトラマンネクサス』(04年))
●9位  ウルトラマンタロウ
 (『ウルトラマンタロウ』(73年))
●10位 ウルトラマンコスモス
 (『ウルトラマンコスモス』(01年))
●11位 ウルトラマンエース
 (『ウルトラマンA(エース)』(72年))
●12位 ウルトラマンガイア
 (『ウルトラマンガイア』(98年))
●13位 ウルトラマンジャック
 (『帰ってきたウルトラマン』(71年))
●14位 ウルトラマンレオ
 (『ウルトラマンレオ』(74年))
●15位 ウルトラマンジー
 (『ウルトラマンジード』(18年))
●16位 ウルトラマンエックス
 (『ウルトラマンX(エックス)』(15年))
●17位 ウルトラマンダイナ
 (『ウルトラマンダイナ』(97年))
●18位 ウルトラマンアグル
 (『ウルトラマンガイア』)
●19位 ゾフィー
 (『ウルトラマン』)
●20位 ウルトラマントリガー
 (『ウルトラマントリガー』(21年))



 ちなみに2019年にも、ウルトラシリーズ以外の円谷プロダクション製作作品も含めての「総選挙」企画が実施されて、その得票数の順番に翌2020年からマニア向けグラビア書籍『ウルトラ特撮PERFECT MOOK(パーフェクト・ムック)』が全40巻で刊行されている。NHKの「大投票」ともだいたい同様の結果が出ているという解釈もできるし、細部ではかなり異なる結果も出ている。マニア向け書籍にまつわる「総選挙」の投票者はややコア層に寄っており、NHKの「大投票」ではややライト層に寄っているのではなかろうか?
 いずれにしても、こちらでも第2期ウルトラシリーズの作品人気は高くなっている。2010年代の作品の中では『ウルトラマンオーブ』の人気が特に高いこともわかる――刊行時期的に2020年放映の『ウルトラマンZ』は投票対象には含まれていない――。しかしここでは、『ウルトラマンネクサス』と『ウルトラマンコスモス』の人気が高くはない結果となっていた。多角的に状況を検討するための参考として、vol.1~vol.28までの対象作品を列挙しておこう。


●vol.1 『ウルトラセブン
●vol.2 『ウルトラマン
●vol.3 『ウルトラマンティガ
●vol.4 『帰ってきたウルトラマン
●vol.5 『ウルトラマンメビウス
●vol.6 『ウルトラQ
●vol.7 『怪奇大作戦/恐怖劇場アンバランス』(68年・73年)
●vol.8 『ウルトラマンゼロウルトラギャラクシー大怪獣バトル
●vol.9 『ウルトラマンレオ
●vol.10『ウルトラマンA』
●vol.11『ウルトラマンタロウ
●vol.12『ウルトラマンオーブ
●vol.13『ミラーマン』(71年)
●vol.14『ウルトラマンガイア』
●vol.15『ウルトラマンジード』
●vol.16『電光超人グリッドマン』(93年)
●vol.17『ウルトラマンネクサス
●vol.18『ウルトラマンG/ウルトラマンパワード
●vol.19『ウルトラマンX』
●vol.20『ジャンボーグA(エース)』(73年)
●vol.21『ウルトラマン80』
●vol.22『ウルトラマンダイナ』
●vol.23『ウルトラマンマックス
●vol.24『ウルトラマンタイガ』
●vol.25『ウルトラマンR/B』
●vol.26『スターウルフ/プロレスの星 アステカイザー』(78年・76年)
●vol.27『ウルトラファイトレッドマントリプルファイター』(70年・72年・72年)
●vol.28『ウルトラマンコスモス


*「ウルトラ怪獣」部門で、バルタン星人が1位じゃない! ジャグラスジャグラーも2位!(爆)


 さて、「ウルトラヒーロー」部門での初代ウルトラマンの第5位もそうだが、「ウルトラ怪獣」部門であの宇宙忍者バルタン星人が第3位となったことにも驚いた人はきっと多かったことであろう。


 第1位が初代ウルトラマンを倒した最強怪獣である宇宙恐竜ゼットンであったことに対しては異論もないのだが、従来であればバルタン星人に次いでの第2位といったところだっただろう。
 バルタン星人といえば、少し前ならばウルトラ怪獣の中でダントツの知名度と人気を誇り、ウルトラマンにはくわしくない一般人でも誰もが知っているキャラクターとされてきたからだ。


 ただ、筆者もそうだったが、この結果に「ああ、やっぱりな」との感想をもらした人も少なからずいたかと思われる。


 初代『ウルトラマン』(66年)で計3回登場し、平日夕方の帯番組として放映された『ウルトラファイト』(70年)では造成地や海岸などでアトラクション用の怪獣たちと激闘を繰りひろげる「星人」名抜きの「バルタン」が登場!
 『帰ってきたウルトラマン』(71年)には初代バルタンの息子と名乗るバルタン星人ジュニアも登場。テレビアニメシリーズの『ザ☆ウルトラマン』(79年)でも登場したのにつづいて、『ウルトラマン80』(80年)にも計2回、それもどちらもチンピラ宇宙人(笑)として登場したバルタン星人は、「昭和」の作品群ではその人気の高さを反映して何度も再登場を果たしていた。


 だが、ビデオ販売作品や映画を除く「平成」のテレビシリーズでは『ウルトラマンマックス』に登場したのみであって、それ以降は映画『ウルトラ銀河伝説』でウルトラマンベリアルがあやつる100匹の大怪獣軍団の中の1匹として、映画『劇場版 ウルトラマンX きたぞ! われらのウルトラマン』(16年・松竹)でも導入部のイメージシーンとして初代マンと戦う描写がごく短く演出された程度だったのだ。


 周知のとおり、「ニュージェネレーションウルトラマン」では製作予算を軽減する手段として過去の人気怪獣を何度も使い回す手法がとられている。しかし、その中でもバルタン星人はただの一度も再登場はしていない。


 これとは対照的に今回の第1位となったゼットンは、「昭和」の時代では『帰ってきたウルトラマン』最終回(第51話)『ウルトラ5つの誓い』に2代目が登場した程度だったが、「平成」になると『ウルトラマンマックス』第13話『ゼットンの娘』を皮切りに『ウルトラマンメビウス』・『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』・『ウルトラ銀河伝説』と毎年のように立て続けに再登場を繰り返し、映画『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹)ではハイパーゼットンなる新種も登場していた。
 2010年代のウルトラシリーズでも、『ウルトラマンギンガ』・『ウルトラマンX』・『ウルトラマンタイガ』に登場したきた。


 ゼットンはあまりに登場しすぎであって、初代ウルトラマンを倒したほどの強敵感が21世紀以降の作品ではなくなってしまっている! といった苦言もある。そういった意見もよくわかるし同意はするのだ。しかし、折にふれてゼットンが再登場していたことで、若い世代にとっても印象的になっているのだろう。そういったことを思えば、バルタン星人がゼットンに首位を奪われたのも必然だというべきだ。


 とはいえ、00年代の中盤以降、毎年のように再登場を果たしてきたゴモラ・キングジョー・エレキングなどよりも、一度も映像作品で本格的な参戦を果たしていないバルタン星人の方がいまだに高い人気を誇っているといった、先の主張とは明らかに矛盾が生じてしまっている現象については…… ご容赦を願いたい(笑)。


 先述した映画『シン・ウルトラマン』なども含めて、バルタン星人を登場させていない理由については、バルタン星人のデビュー作となった初代『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』の脚本を千束北男(せんぞく・きたお)のペンネームで執筆して、同話の監督も担当したことでバルタンの生みの親として知られており、2021年にお亡くなりになられた故・飯島敏宏(いいじま・としひろ)氏の意向を尊重・忖度(そんたく・笑)しているからだとの見方が一部にはある。
 宇宙旅行中に発狂した科学者の核実験で母星を失ったことから住める星を求めて地球にたどり着いたといった悲劇的な背景や、映画『劇場版 ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT(ザ・ファースト・コンタクト)』(01年・松竹)や『ウルトラマンマックス』での再登場時に飯島監督が描いたように、地球人との友好関係を築(きず)ける可能性を秘めた存在としてバルタンを描くべきであり、単なる悪い宇宙人として描くことは好まない……などと90年代以降、生前の氏が語っていたことは確かなのだ。


 この氏の主張がそこまで尊重されるべきであったのかについては個人的には疑問である。たとえば、氏が描いたバルタン星人ひとつをとってみても、初代『マン』に登場した「生命」の概念を知らないSF的な存在であったのが初代バルタン星人であった。
 しかし、『80』に登場したベテラン脚本家・石堂淑朗(いしどう・としろう)先生が執筆されたチンピラ宇宙人(笑)としてのバルタン星人とはたしかに異なってはいたものの、90年代の氏による未映像化脚本や『コスモス』『マックス』などに登場したバルタン星人は、その正体が美少女であったりファンタジックな存在と化してしまっており、これもまたそうとうに初代バルタン星人とは別モノといってもよいくらいにイメージがちがいすぎるだろ!(笑)


 あまりにバルタン星人を自由に描けなかったことで、このようにトップから陥落してしまったと観て取ることは可能だろう。しかし、それでよいのであろうか? なにか本末転倒な事態が起きているのではなかろうか?


 かつては「卑怯もラッキョもあるものか!?」などといった迷言を年長マニアにはさんざんに罵倒されてきたメフィラス星人2代目が、今では一周まわって皆に愛されて、そのセリフまでもが引用されているように、バルタン星人もムズカしいことはともかく下品に哄笑してみせる大悪党キャラとして、改めて「限りなきチャレンジ魂」を見せてほしいものである!(笑)



 しかし、「ウルトラ怪獣」部門の第2位が、『ウルトラマンオーブ』のライバル・キャラクターであった無幻(むげん)魔人ジャグラス ジャグラーであったというのには……


 これもまた、純粋な「怪獣・怪人」としての「変身後の姿」に対しての人気などではなくて、むしろ「変身前の人間態」の姿を演じていた青柳尊哉(あおやぎ・たかや)氏の人気、およびその怪演に対する評価だろ!(笑)


 第33位にはのちにウルトラウーマングリージョに変身できるようなる女子高生・湊アサヒ(みなと・あさひ)ちゃん、第73位にもグリージョ襲名の元となった永遠の17歳(爆)こと美少女・美剣サキ(みつるぎ・さき)ちゃん、第108位にも『マックス』の美少女型ロボット隊員・エリー、第117位に男女合体変身でウルトラマンエースに変身していた南夕子までもがランクインしている。彼女らを「ウルトラ怪獣」扱いしてもよいのであろうか?(爆)


 とはいえ、だからこそ、そこに入れても遜色がなかったどころか、バルタン星人をも上回ったジャグラスジャグラー人気の高さがわかろうとはいうものだ(笑)。


*「露出」を常に絶やさないことの重要性の是非!?


 ゼットンもそうだったが、「ウルトラヒーロー」部門でウルトラマンゼロ初代ウルトラマンの人気を上回る第4位、その宿敵として描かれてきた悪の黒いウルトラマンことウルトラマンベリアルも「ウルトラ怪獣」部門で第6位に輝いていたことも、繰り返して描きつづけることの重要性を示す結果だろう。


 ゼロのデビュー作となった映画『ウルトラ銀河伝説』はそこそこ注目された。しかし、翌2010年度はイベントでのアトラクションショーで活躍するのみでゼロが主演するテレビシリーズが製作されなかったり、宣伝の圧倒的な不足の影響も災いしてか、同年末に公開された主演映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』は作品自体の質は高かったものの、興行的には大コケしてしまった。
 この時点ではゼロはヘタをすれば、映画限定のウルトラマンとして2本ぽっきりで忘れ去られてしまう危険性すらあったのだ。


 だが、先述した『ウルトラマン列伝』の枠内で放映された短編シリーズ『ウルトラゼロファイト』(12~13年)での主演、そして映画『劇場版 ウルトラマンギンガS(エス) 決戦! ウルトラ10勇士』(15年・松竹)で新人のウルトラマンギンガとウルトラマンビクトリーを特訓する役回りを演じたのを皮切りに、『ウルトラマンX』(15年)でもその第5話で早々に助っ人参戦を果たして以降、「ニュージェネレーションウルトラマンシリーズ」では常に頼れる先輩ウルトラマンとして描かれつづけてきたのだ。


 それも、先述した映画『ゼロ THE MOVIE』で、いくつもの世界(宇宙)が並行して存在しているという、実際の物理学の理論でもあった多元宇宙(並行宇宙)=「マルチバース」の世界観が導入されて、ウルトラマンゼロがその中を自在に行き来する超能力をウルトラマンノアから授かったウルトラ戦士として設定されていたことも大きかったのだ。
――『シン・ウルトラマン』でもマルチバースに言及されており、それをアメコミ洋画『アベンジャーズ』シリーズのマネだ! などとアメコミ洋画ファンが批判していたけど、映像作品としてはウルトラシリーズでの投入の方が先だったので念のため!(笑)――


 『ウルトラマンジード』ではジードとともにダブル主人公を務めて、『ウルトラマンZ』ではゼットが勝手に師匠(ししょう)としてあがめる存在として近年でも露出度が実に高かったウルトラマンゼロ。そして、そのゼロとも因縁(いんねん)が深い強敵としてゼロの登場作品でほとんどワンセットで扱われてきたといっても過言ではないウルトラマンベリアルが、いまやウルトラマンシリーズを代表する重要な存在にまで登り詰めている。
 そのことからしても、各作品ごとの一過性の興味で終わらせるのではなく継続させることで、すべてのウルトラマンの世界を関連づけて描いてきた「ニュージェネレーションウルトラマン」の作劇それ自体は正しかったことを象徴するものであろう。



 とはいえ、00年代中盤以降はほぼ毎年のように映像作品に登場して「露出」を常に絶やさないできたのに、かつてであればトップスリーには入っていたであろう、どくろ怪獣レッドキングは第22位にとどまってしまってもいる、筆者にとっては実に都合の悪い事実も発生している(笑)。同様に、2010年代以降はほぼ毎年登場してきたテレスドンネロンガ・ゴメス・グドンといった中堅人気怪獣に至っては100位前後ではあったのだ(汗)。


 しかし、筆者も読者諸氏も歳若いウルトラシリーズマニアであっても、これらのウルトラ怪獣のことが大スキであろう。そもそもウルトラ怪獣の総数自体が1000数百体以上にも達しているのだ。それを考えれば100位前後でも充分に人気怪獣なのである!


 だから、登場回数や観客に対する接触面積の多さも重要ではあっても、それだけでも決定打にはならない! といったところなのであろう。そのキャラクター単独での存在感! といった要素もまたデカいのだ。ここでもまたモノサシはひとつだけではなかったのであった(汗)。



 「ウルトラ怪獣」部門は200位(同点198位が3体)まで公表されている。参考までに20位までを列挙しておこう。


ウルトラ怪獣」部門(以降、キャラクター名・初登場作品を列記)
●1位  宇宙恐竜ゼットン
 (『ウルトラマン』最終回(第39話)『さらばウルトラマン』)
●2位  無幻魔人ジャグラス ジャグラー
 (『ウルトラマンオーブ』第1話『夕陽の風来坊(ゆうひのふうらいぼう)』)
●3位  宇宙忍者バルタン星人
 (『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』)
●4位  古代怪獣ゴモラ
 (『ウルトラマン』第26話『怪獣殿下(前篇)』)
●5位  宇宙ロボットキングジョー
 (『ウルトラセブン』第14話「ウルトラ警備隊西へ(前編)』)
●6位  ウルトラマンベリアル
 (『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』)
●7位  幻覚宇宙人メトロン星人
 (『ウルトラセブン』第8話『狙われた街』)
●8位  宇宙怪獣エレキング
 (『ウルトラセブン』第3話『湖のひみつ』)
●9位  邪神ガタノゾーア
 (『ウルトラマンティガ』第51話『暗黒の支配者』)
●10位 棲星(せいせい)怪獣ジャミラ
 (『ウルトラマン』第23話『故郷は地球』)
●11位 虚空(こくう)怪獣グリーザ
 (『ウルトラマンX』第21話『美しき終焉(しゅうえん)』)
●12位 友好珍獣ピグモン
 (『ウルトラマン』第8話『怪獣無法地帯』)
●13位 ウルトラマントレギア
 (映画『劇場版 ウルトラマンR/B(ルーブ) セレクト! 絆(きずな)のクリスタル』(19年・松竹))
●14位 コイン怪獣カネゴン
 (『ウルトラQ(キュー)』(66年)第15話『カネゴンの繭(まゆ)』)
●15位 悪質宇宙人メフィラス星人
 (『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』)
●16位 暴君怪獣タイラント
 (『ウルトラマンタロウ』第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』)
●17位 イーヴィルティガ
 (『ウルトラマンティガ』第44話『影を継ぐもの』)
●18位 宇宙大怪獣ベムスター
 (『帰ってきたウルトラマン』第18話『ウルトラセブン参上』)
●19位 三面怪人ダダ
 (『ウルトラマン』第28話『人間標本5・6』)
●20位 完全生命体イフ
 (『ウルトラマンマックス』第15話『第三番惑星の奇跡』)



 定番の初代『マン』と『セブン』の人気怪獣に列伍して、


●2010年代の作品からは、『X』のラスボス怪獣である虚空怪獣グリーザ
●2000年代の作品からは、『マックス』に登場した強敵怪獣であった完全生命体イフ
●1990年代の平成ウルトラ3部作からも、『ティガ』のラスボス怪獣・邪神ガタノゾーア
●1970年代の第2期ウルトラシリーズからも、かつては往時の第1世代マニアに合体怪獣は邪道だとして酷評されてきたものの、下の世代からは高い人気を誇ってきた暴君怪獣タイラント、そして宇宙大怪獣ベムスター


 それら各時代ごとの人気怪獣たちが、かの第1期ウルトラシリーズ出自の人気怪獣レッドキング以上の順位でランキングされているのだ!


 ウルトラマンベリアルに比べて低人気だと叩かれがちな悪の青いウルトラマンことウルトラマントレギアも、ティガの偽ウルトラマンに相当するイーヴィルティガの第17位よりも高い、第13位にランクインされていたのであった!


初代ウルトラマンウルトラセブンウルトラマンティガの高人気をドー位置付けるべきか!?


 さて、初代『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』のリアルタイム世代を含んでいる60歳以上の投票比率が最も低かったのにもかかわらず、「ウルトラヒーロー」部門ではウルトラセブンが第2位、初代ウルトラマンが第5位と上位で健闘している。これは「40周年」「45周年」「50周年」「55周年」などとして5年周期で周年イベントが展開されてきたことで若い世代にも注目されてきたことが大きかった……
 といったことではおそらくなくて(笑)、この2作品の作風もまたそれぞれで異なってはいるものの、やはり後代のシリーズ作品と比べてみればシンプルではあっても、それゆえの普遍的な面白さがあったから……といったことにも尽きるだろう。


 しかし、それでは後続のシリーズ作品群には普遍的な面白さなどはなかったのだ……などといったこともまた云えないであろう。それぞれの作品に、それぞれなりの見過ごしにできない良さがあったと信じるからだ。


 その一方で、いつものことなのだが、2021年で「50周年」であった『帰ってきたウルトラマン』、そして2022年で「50周年」となった『ウルトラマンA』に関しては表立った動きはほとんど見られずに終わってしまっていて、非常に残念なのであった。


 『ウルトラマン80』が放映30周年を迎えた2010年には、CS放送・ファミリー劇場での再放送や同局での情報番組『ウルトラ情報局』なども含めて、「ウルトラマン80 30周年記念」といったロゴまでつくって一応はプッシュする動きなどもあった。おそらくは往時まだ円谷プロダクションに在籍していたらしき特撮ライター・秋廣泰生氏あたりの発案ではなかったかと憶測している。
 そして、結局はこのような動きは会社などではなくヒト・人材・人間力・プレゼン(テーション)力といったものでも決まるので、そのような企画をたとえ心の中で思っていたとしても、それを実際の行動に移せる御仁がいなければ実現しない! といったことなのでもあるのだろう――コミュニケーション弱者であることが相場である典型的なオタクでもある筆者が「どの口で云うのか?」といった話ではあるけれど(汗)――。



 よって、ウルトラマンティガが「ウルトラヒーロー」部門で第1位となったことは元々の人気の高さもあったのだろうが、2021年に放映「25周年」が派手にクローズアップされ、その世界観を継承したとされる新作の『ウルトラマントリガー』までもが製作・放映されたことも首位獲得に大きく貢献(こうけん)していたのだ……とも考えにくい。良くも悪くも『ティガ』は、本放映時から当時の年長マニア間では絶賛されてきており、その評価が途切れることなく継続されることでブランド化することに成功したのだともいえるだろう。


――ただし、筆者個人はそこまで『ティガ』が別格の優れた作品だったとは思ってはいない。個人的には2010年代のニュージェネレーションウルトラマンシリーズ作品の方がスキだし、「価値判断」としてはそちらの方に作品的な評価をしていたりもする(汗)。しかし、筆者の実に個人的な見解なぞはともかく、2022年時点での世評の大勢が『ティガ』を第1位として評価しているという「事実」そのものについては認めなくてはいけないのだ。個人としての「価値判断」と「事実」とは別々のものだという認識ができなければ、「分析」それ自体が「願望」へと堕してしまう、それでは近代的合理人・近代的自我の持ち主だとはいえない、未開の原始人にすぎないのだとも、20世紀初頭の社会学の中興の祖であるマックス・ウェーバーも云っていたのだ(多少、誇張表現をしております・爆)――


 事実、ティガが第1位となって、VTR映像として『ティガ』最終章3部作の第1部である第50話『もっと高く! ~Take Me Higher!~』終盤における、女性隊員・レナが操縦する後部座席でダイゴ隊員がティガに変身する直前のシーンでのレナの独白シーンが流されて、昭和ウルトラや2010年代のウルトラシリーズにも非常に造詣が深い中堅声優・潘めぐみ(はん・めぐみ)氏は、同時に彼女にとっての最初の新作ウルトラマンが『ティガ』でもあったためでもあろう、このシーンの映像では人前をばかることなく滂沱(ぼうだ)の涙を流しつづけて止まらなくなって声を震わせていたのであった…… たとえ『ティガ』否定派であっても、こういった自分の価値判断とは異なるものとしての他人の作品に関しての好意表明に対しては、決して否定をしてはならないのだ。



 といったところで、当番組の司会者にもふれておこう。


 1990年代末期から2000年代に若者たちに人気があったボーカリストで、近年はアニメソングを多数歌唱していることでオタク層にも知名度の高い西川貴教(にしかわ・たかのり)氏と、NHKの局アナ・杉浦友紀(すぎうら・ゆき)氏。


 そして、「ウルトラマンシリーズゲスト」として


●『ウルトラマンダイナ』(97年)の主人公アスカ・シン=ウルトラマンダイナを演じたつるの剛士
●『ウルトラマンコスモス』(01年)の主人公春野ムサシ(はるの・むさし)=ウルトラマンコスモスを演じた杉浦太陽(すぎうら・たいよう)氏
●『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)の主人公ナツカワ・ハルキ=ウルトラマンゼットを演じた平野宏周(ひらの・こうしゅう)氏


のお三方が招かれていた。


 さらに、「ファンゲスト」として


●往年の東宝特撮映画に多数登場した怪獣・ゴジラの大ファンとして知られ、『ウルトラマンマックス』(05年)でナレーションを担当、さらに『ウルトラマンオーブ』(16年)第24話『逆襲の超大魔王獣』~最終回(第25話)『さすらいの太陽』では防衛組織・ビートル隊日本支部の菅沼(すがぬま)長官を演じた俳優の佐野史郎(さの・しろう)氏
●バラエティ番組『欽ちゃんの週刊欽曜日』(82年)でデビュー以来、歌手・タレントとしてアイドル的人気を獲得、先述した『ウルトラマンコスモス』の劇場版全3作品(01~03年・松竹)に防衛組織のキド隊員 → キド隊長として連続出演を果たしたほか、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・松竹)や映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・松竹)のゲスト出演、さらに『ウルトラマンタイガ』(19年)に佐倉警部役でセミレギュラー出演した俳優でタレントの風見しんご(かざみ・しんご)氏
●大の特撮好きで知られ、仮面ライダースーパー戦隊で数多くのヒーローや悪役の声を演じ、ウルトラシリーズでは映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE(ザ・ムービー) 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹)以降の炎の超人・グレンファイヤーの声や、映画『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』(13年・松竹)以降の異次元宇宙人イカルス星人の声などを担当した声優の関智一(せき・ともかず)氏
●『ウルトラマンジード』(17年)以降のペガッサ星人ペガの声のほか、『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀(いんぼう)』(20年)では性別がハッキリしない戦士であったウルトラマンジャスティスや青いウルトラ族の少女・ソラの声、WEB(ウェブ)アニメ『怪獣娘 -ウルトラ怪獣擬人化計画-』(16年)のエレキングや3DCG作品『ULTRAMAN(ウルトラマン)』(19年)の北斗星司(ほくと・せいじ)の声など、近年では円谷プロ専属になったのか?(笑) との印象すらある声優の潘めぐみ


といった豪華な顔ぶれも出演している。


 「解説」の担当はロートルオタクであればご存じ、往年の今は亡きアニメ雑誌アニメック』(78~87年)の編集者上がりで、角川書店の月刊アニメ雑誌ニュータイプ』(85年〜)の立ち上げに参加して編集長に登り詰め、一時は角川書店の社長も務めていた、今でもKADOKAWAの副社長でもある井上伸一郎氏が担当していた。氏は特撮マニアであれば、往年の東映特撮『人造人間キカイダー』(72年)のリメイク映画『キカイダー REBOOT(リブート)』(14年)の実質的な発案者・製作者であったことでご承知のことだろう。


 ただし、氏が『ウルトラマンネクサス』を「早すぎた傑作」であったかのように評していたことには同意はできない(笑)。こういった意見は氏にかぎらず各所で散見されるのだが、むしろ同作は「遅すぎた傑作」であったというべきであろう。


 たとえば、西暦2000年に放送された非常にチャイルディッシュな作風であった『百獣戦隊ガオレンジャー』(00年)は開設間もないネット上の超巨大掲示板2ちゃんねるでは、まだハード&シリアス&大人向け指向の価値観が強かった特撮マニアたちによって猛烈に酷評されていた。
 しかし、2001~03年にかけて、大きな価値観の地殻変動が起きている。数多くの口汚い論争の果てに(笑)、子供向けの特撮変身ヒーロー作品をハード&シリアス&大人向けといったモノサシで測ること自体が滑稽(こっけい)だ! 中二病だ! といってバカにするような価値観の方が勝利を収めていったのだ。


 そして、『ウルトラマンネクサス』はその高いドラマ性やテーマ性や志を認めた上でなお、子供向けの特撮変身ヒーロー番組のつくり方としてはドーなんだよ!? といった意味合いでの批判が渦巻いていたのであったのだ。その意味では、あと数年早くつくっていれば、子供間での人気はともかくマニア間での人気は高かったのかもしれない(笑)。
――筆者も80年代前半までにあういったつくりの「ウルトラマン」を見せられれば高く評価していたかもしれない。しかし、80年代後半以降に遭遇していたならば、もう評価はしなかっただろうな(爆)――


*「ウルトラメカ」部門ランキングにも、マニアの価値観の大地殻変動を見る!


 放送前の2022年7月15日から8月21日にかけて設けられた投票期間に寄せられた総投票数は35万5563票であり、その集計結果をもとに決定した「ウルトラヒーロー」「ウルトラ怪獣」「ウルトラメカ」の部門別ランキングが発表されていた。


 ここまで言及ができなかった「ウルトラメカ」部門は、以下のとおりであった。


「ウルトラメカ」部門(以降、メカ名・所属防衛組織・初登場作品を列記)
●1位  特空機1号セブンガー・ストレイジ
 (『ウルトラマンZ』)
●2位  ウルトラホーク1号・ウルトラ警備隊
 (『ウルトラセブン』)
●3位  ポインター・ウルトラ警備隊
 (『ウルトラセブン』)
●4位  ガッツウイング1号・GUTS(ガッツ)
 (『ウルトラマンティガ』)
●5位  特空機3号キングジョーストレイジカスタム・ストレイジ
 (『ウルトラマンZ』)
●6位  ジェットビートル・科学特捜隊
 (『ウルトラマン』)
●7位  ガンフェニックストライカー・CREW GUYS(クルー・ガイズ)
 (『ウルトラマンメビウス』)
●8位  ガッツイーグル・スーパーGUTS
 (『ウルトラマンダイナ』)
●9位  ナースデッセイ号・GUTS‐SELECT(ガッツ・セレクト)
 (『ウルトラマントリガー』)
●10位 マットアロー1号・MAT(マット)
 (『帰ってきたウルトラマン』)
●11位 ハイパーストライクチェスター・ナイトレイダー
 (『ウルトラマンネクサス』)
●12位 XIG(シグ)ファイターEX(イーエックス)・XIG
 (『ウルトラマンガイア』)
●13位 特空機4号ウルトロイドゼロ・ストレイジ
 (『ウルトラマンZ』)
●14位 マットビハイクル・MAT
 (『帰ってきたウルトラマン』)
●15位 GUYSガンフェニックス・CREW GUYS
 (『ウルトラマンメビウス』)
●16位 アートデッセイ号・GUTS
 (『ウルトラマンティガ』)
●17位 マグマライザー・ウルトラ警備隊
 (『ウルトラセブン』)
●18位 GUTSファルコン・GUTS‐SELECT
 (『ウルトラマントリガー』)
●19位 マットジャイロ・MAT
 (『帰ってきたウルトラマン』)
●20位 スペースペンドラゴン・ZAP SPACY(ザップ・スペーシー)
 (『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』(07年))


 ここでも恐るべき結果が出ていた! 従来であれば、ダントツで第1位や上位を占めていたであろう、『ウルトラセブン』の怪獣攻撃隊である地球防衛軍ことウルトラ警備隊のスーパーメカの数々を差し置いて、『ウルトラマンZ』に登場した怪獣攻撃隊であるストレージが建造した巨大ロボット・セブンガーが第1位を獲得していたのだ!(笑)
 そして、同作からは3号ロボット・キングジョーストレイジカスタム、闇落ちしてしまったウルトラマン型の5号ロボット・ウルトロイドゼロまでもがランクインを果たしているのだ!


 「ウルトラメカ」のランキングも、第1期ウルトラシリーズのメカのみならず、


●2010年代からは、『Z』の巨大ロボットや『トリガー』の飛行メカ
●2000年代からは、『ネクサス』『メビウス』『大怪獣バトル』の飛行メカ
●1990年代からは、『ティガ』『ダイナ』『ガイア』の飛行メカや宇宙戦艦
●1970年代からは、『帰ってきた』の飛行メカ


といった塩梅で、見事に各時代ごとに票が分散されていたのであった……


*得票結果から読み込む「ニュージェネレーションウルトラマンシリーズ」の諸相!


 投票対象としてはシリーズ最新作にあたる『ウルトラマントリガー』の主役であったウルトラマントリガーの「ウルトラヒーロー」部門での順位は第20位。その元ネタとなったティガの第1位とは異様なまでの差が見られる。
――投票期間直前の2022年7月上旬に放映を開始したばかりの『ウルトラマンデッカー』(22年)は今回の投票対象には当然のことながら含まれていない――


 マニア諸氏であればご承知のとおりで、この投票結果を見るまでもなく、若年マニア間では『トリガー』の人気が放映当時から著(いちじる)しく低くて、ネット上でも酷評されまくっていたことは承知の事実であるだろう。Amazon(アマゾン)での同作のDVDレビューや、アマゾンプライムビデオのコメントでも酷評ばかりが並んでいる。


 筆者個人も実は同作のことをあまり評価はしていなかったのだが(汗)、そのこととも別に『トリガー』酷評の原因は2つあったと思うのだ。


●1つ目は、大人気番組となった『ウルトラマンZ』の後番組となってしまったために、大人気番組の後番組にはアリがちなことなのだが、それと比べて物足りなく思えてしまったことで、相対的にキビしく観られてしまったこと
●2つ目は、『ウルトラマンティガ』へのオマージュだと謳(うた)いながらも、それは営業的なセールストークで、実は『ティガ』っぽくする気はなかったらしいこと(笑)


 以上の2点に尽きるだろう。しかも、『Z』を愛するウルトラファンと『ティガ』を愛するウルトラファンとは、重複する場合もあるのだろうが、基本的には同じウルトラファン・特撮マニアだとはいってもやや別傾向の存在ではあるだろう。しかし、そのへんの相違は突き詰められずにフワッとした野合(笑)となることで、依拠する立場が異なる2つの陣営からの挟撃によって酷評されていた! といったところが、より正確な実態だったのではなかろうか? といった分析などもできるのだ。


 とはいえ、それもそれで単なる分析にすぎない。『トリガー』という作品それ自体に、『Z』や『ティガ』といった作品にも負けないだけの「強度」さえあれば、そんな批判をモノともせずに、独自の人気を獲得することもできたハズであろうからだ。


 その一方、『トリガー』の前作『ウルトラマンZ』の主役だったウルトラマンゼットは、「ウルトラヒーロー」部門で彼の師匠のウルトラマンゼロをも上回る第3位を達成している。
 そればかりか「ウルトラ怪獣」部門では、『Z』で防衛組織・ストレイジのヘビクラ隊長を仮の姿としていたジャグラス ジャグラーが第2位、「ウルトラメカ」部門では『ウルトラマンレオ』第34話『ウルトラ兄弟永遠の誓い』に怪獣ボールとして登場していたセブンガーを元ネタとした特空機1号セブンガーが第1位に輝いて、放映終了から1年半を経ても『Z』がいまだ根強い人気を誇っていることが示される結果となったのである。


 「ウルトラヒーロー」部門で第3位に輝いたウルトラマンゼットといえば、敬語とタメ口を混同したあまりにデタラメな日本語で変身前の主人公・ハルキと交わす軽妙で爆笑モノの絶妙なやりとりが多くの視聴者に強烈な印象を残すことに成功していた。
 ゼットの仮の師匠(汗)であり、第4位となったウルトラマンゼロもまた「しゃべりまくるウルトラマン」の元祖であって、従来は圧倒的に優等生タイプが多かったウルトラマンのイメージを完全にひっくり返したベラんめぇ口調のヤンキー兄ちゃん(笑)として描かれていたのだ。


 その両者が第3位と第4位に輝いたということは、近年のウルトラマンを支持する若い層にとってはゼットやゼロのようなキャラクターこそが、もはやスタンダードなウルトラマン像として定着しているということなのであろう。


 その意味では、トリガーも「しゃべりまくるウルトラマン」にしておいた方が、ゼットやゼロを支持する若い層にもっと受け入れられたのかもしれない。
 いや、繰り返しになるが、もちろん作品評価や作品人気のモノサシはひとつだけではない。「しゃべりまくり」さえすれば、それだけで高い人気が誇れるウルトラマン作品になれるワケでもない。事実、2022年に公開された映画『シン・ウルトラマン』では、ウルトラマンがベラベラとはしゃべってはいないのに、実に高い興行収入を上げていたからだ。そこは盛大にツッコミを浴びてしまう前に先回りをして釈明しておこう(笑)。



 とはいえ、「しゃべりまくるウルトラマン」は、決してB級でコミカルなばかりの低劣な存在に堕(だ)してしまったワケでもないのだ。


 ウルトラマンたちがその必殺ワザの名前を、昭和の仮面ライダーや合体ロボットアニメの主人公たちのように絶叫する2010年代以降に入ってからの演出は、たしかに先人の第1期ウルトラ至上主義者たちが20世紀のむかしから主張してきたように「ウルトラマンの神秘性をウスれさせてしまう側面」「作品をハイブロウではなく子供向けにしてしまう側面」があったことも事実なのだ。


 しかし必殺ワザ名の絶叫で、そのヒーロー性や彼らの人間像、戦闘シーンで強敵を倒す際のカタルシス・熱血活劇度を倍増させることができるといった効用があることもまた事実なのである。変身ヒーロー作品にとっては「神秘性」うんぬんを上回ってあまりあるメリットの方がはるかに大きい! とすら思うのだ。


 そういった意味では、そうした効用を十全に発揮していたゼットとゼロが第3位と第4位を占めていたのだから、今後のウルトラマンも、必殺ワザの絶叫路線を継続していった方がよいと思う。
 まぁ、筆者が特に力説などしなくても、2010年代のウルトラシリーズはそうした演出をしてきたのだし、今のスタッフたちもそうした子供たちが喜ぶであろう機微やツボについては百も承知であろうから、そこについては特に心配もしてはいないのだが。


 必殺ワザ名を絶叫していても、地球人にはその声は聞こえていない! ヒーロー名を絶叫しながら変身していても、その瞬間にはナゾの異空間に入っている! といった、我々のようなスレすぎて一回転してしまったマニア側での好意的なSF考証・脳内補完も可能なのだし(笑)。



 しかし意外や意外、『トリガー』の玩具の売り上げは、マニア間でも大人気であったハズの『Z』の数倍(!)であったというデータも出てきてはいる。ということは、『Z』ファンとも『ティガ』ファンともまた異なる価値観を持った、第3極としての子供間での人気は相応にはあったという分析もできるだろう。
――ただし、2021年度の玩具売上は、『Z』の売れ行きの好調で小売店が発注を増やしたために出荷数が倍増したのであり、実売の数字ではないという説もある――


 ということは、本放映当時には決して評判がよくはなかった『コスモス』や『ネクサス』が今回は大健闘していたように、20年後の「大投票」企画では『トリガー』も意外なダークホースとなっているのかもしれない。


 ともあれ、作品憎しのあまりに、自分では少数派の意見のレジスタンスのつもりでその実、その下の世代にとっては抑圧的な多数派によるふるまいでしかなかった! となってしまっては、かつての安保闘争学生運動を牽引していた終戦直後生まれの「団塊の世代」が、実際にはその10歳強ほど下の「新人類世代(=オタク第1世代)」の上辺世代に対しては非常に高圧的なふるまいをしてきており、実に閉口していたといった証言も多々あったことの滑稽な繰り返しにもなってしまう。後続世代である我々もまた今こそ歴史に学んで、そういった愚行を繰り返してはならないのだ。


*得票結果から読み込む「ウルトラマン」が目指すべきものとは!?


 ところで、そういった堅苦しい話はともかく(笑)、「ウルトラマン」にかぎらず「仮面ライダー」にしろ「スーパー戦隊にしろ」、若い層のファンがネット上で発信するコメントを読んでいると、それらに登場するキャラクターが「ネタキャラ」としていかに笑えるか、そしてファン同士でどれだけ「ネタ」として楽しめるかという観点を重要視している傾向がうかがえる。


 それが特撮変身ヒーロー作品を視聴する姿勢として正しいかどうかは別として、たしかに「ウルトラ怪獣」部門でジャグラス ジャグラーが第2位、「ウルトラメカ」部門でセブンガーが第1位と、「ウルトラヒーロー」部門で第3位のウルトラマンゼットと併せて、『ウルトラマンZ』のキャラクターが各部門の上位を独占したことからすれば、若い世代にとって『Z』は「ネタキャラ」の宝庫として人気を集めた面もあったかと思えるのだ。


 ただ、注意しておかねばならないのは、単に面白いキャラを見たいだけならばお笑い芸人が多数出演するバラエティ番組を見れば済むワケである。そして、特撮ヒーロー番組は本来そんな需要を満たすための場ではない、ヒーローによる戦闘のカタルシスを満たす場であるということである。


 ジャグラーのデビュー作となった『ウルトラマンオーブ』でジャグラーを演じた青柳尊哉氏は「観ている子供たちを心底こわがらせるために」各話で妙なテンションで怪演していたのが、結果として大きなお友達である我々マニア視聴者にはそれが「お笑い」にも見えてしまった代表的な例なのだ。
 本来の「ネタキャラ」とはジャグラーのようなキャラを指す用語なのであり、コミカルなキャラならなんでもかんでも「ネタキャラ」と呼んでしまう近年の用法は誤りなのだが、それはひとまず置いておく。


 ジャグラーが「ウルトラ怪獣」部門で第2位を獲得するほどの支持を集めた理由としては、「ネタキャラ」うんぬんのことは重要ではあったかもしれないけど、それだけでもなかったからだと思えるからだ。


 『オーブ』から『ウルトラマンジード』の劇場版などを経由して『Z』へと至るまで、敵が味方に、味方が敵に、はたまた敵にと実にめまぐるしく矢継ぎ早にその立ち位置を変化させてきたことで、次はいったい何をやらかしてくれるのか? と視聴者に常にビックリ箱的な興味・期待を与えつづけて、番組をおおいに盛り上げてくれたことこそが、ジャグラー最大の魅力ではなかっただろうか? 通常ならば過去作品の敵キャラが最後に防衛組織の隊長の座におさまるなんぞ、とうていあり得なかったワケなのだから(笑)。



 それとは対照的に、『Z』同様に一見は「ネタキャラ」の宝庫だったように見えたにもかかわらず、『Z』の前作『ウルトラマンタイガ』が、その前作『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年)も、まだファンの記憶に新しいハズの近年の作品のキャラクターが各部門でほぼ圏外となってしまったのはナゼだったのであろうか?


 『タイガ』でウルトラマンタロウの息子として華々(はなばな)しくデビューを果たしたウルトラマンタイガに、その仲間のウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマのトリオも、放映序盤ではベラベラと饒舌にしゃべりまくっており(笑)、ネット上の反響を見るかぎりでは若年特撮オタクたちの大きな支持を集めていたものだ。『タイガ』という番組がその勢いを持続させて完走できていたならば、今回の「大投票」でも一定の得票数を集めていたかと思われる。


 だが、1話完結形式の「昭和ウルトラ」の時代のような「つくり」に戻したいというチーププロデューサーの意向があったことも明かされているとおりで(汗)、実際の同作のシリーズ中盤以降では、タイガ・タイタス・フーマの掛け合い漫才的なコミカルなやりとりの描写が減少してしまっていた。そして、各話のゲストの人間ドラマを重視せんとばかりに、毎回のドラマ自体があまりに陰鬱(いんうつ)な作風の話がつづいてしまったのだ。
 そして皆が期待していた、タイタスの同族であるウルトラの星・U40(ユーフォーティ)出身であるウルトラマンジョーニアスの助っ人参戦! フーマの同族であるO50(オーフィフティ)出身のウルトラマンオーブウルトラマンルーブなどの助っ人参戦! といったイベント編などもなかった。何よりもタイガの父であるウルトラマンタロウも『劇場版 タイガ」ではともかくテレビシリーズ本編では助っ人参戦をしなかった(汗)。


 それらもろもろのために、本来であれば『仮面ライダー電王』(07年)に登場した正義の怪人4人組のモモタロス・ウラタロス・キンタロスリュウタロスや、映画『ウルトラマンゼロ』に登場したウルトラ族以外のヒーローであったミラーナイト・グレンファイヤー・ジャンボットたちとも同等の高い人気が誇れるだけのポテンシャル(潜在能力)があったタイガ・タイタス・フーマだったのに、そこまでのブレイクができなかったといったところでの分析もできるだろう。


 『タイガ』放映開始当初の特にウルトラマンタイタスの筋肉マッチョにして賢者(笑)でもあるというキョーレツな「ネタキャラ」ぶりも大好評であったというのに、番組中でのヘンな抑制の効かせ方については、非常に残念でならないのだ。



 また、タイガ・タイタス・フーマがあくまで日常場面でコミカルなやりとりを交わしていたのに対して、『R/B』の場合はウルトラマンロッソとウルトラマンブルの兄弟が戦闘の最中にも兄弟ゲンカをしてしまうのをはじめ、変身後のウルトラマンをコミカルに描く演出が目立っていた。
 そういったところで、変身ヒーロー作品としての戦闘のカタルシスをウスめてしまったことも、得票数を減らしてしまったことの原因であったのかもしれない――筆者個人は往年の少年ふたりが合体変身して誕生する『超人バロム・1(ワン)』(72年)みたいだ、スーパー戦隊でもよくあったような戦闘中の不和だよな、などと思ってそこはあまり気にしてはいなかったけど(笑)――。


 『R/B』のシリーズ前半のレギュラーとして登場した愛染マコト(あいぜん・まこと)社長=ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ(笑)も、先述したジャグラーの「ネタキャラ」ぶりとは違って最初から視聴者の笑いをとる気マンマンのキャラとして描かれていた。
 おそらく愛染社長を演じた役者さんの力量でスタッフの想定以上にそのキャラクター人気が膨らんでしまったところで(笑)、2010年代のウルトラシリーズは撮影に入る前にほぼ全話のシナリオが完成しているようなので(?)、当初のシリーズ構成どおりにシリーズ中盤では退場してしまったことによる「残念感」もまた、『R/B』という作品をやや失速させてしまった原因でもあっただろう。
 すべてが計算ずくでつくりきれるワケでもない、水モノ・ナマモノでもある総合芸術としてのフィクション映像作品の構築における、想定外のムズカしいところでもあったのだ……



 もちろん、大勢による人気投票の結果と個人による作品評価は別モノであってよい。筆者個人のウルトラシリーズ各作に対する作品評価ランキングと今回の人気投票の結果もまたそうとうに異なったものではある。20位以内にランクインできなかった作品の中には筆者が個人的には高く、または相応に評価もしてきた作品も含まれていたかもしれない。そして、そこに対して残念には思ったものの、卑屈に思ったり憤(いきどお)ったりするような小物チックな言動をするつもりもまたない(笑)。


 それはさておき、ニュージェネレーションウルトラマンシリーズの『ギンガ』『ギンガS』『R/B』『タイガ』といった作品が20位以内には入れなかった理由もまたさまざまではあったのだろう。しかし、各作品のファンはそれについても卑屈に思う必要はないだろう。


 不当である! この作品にはこういった良い要素もある! と思うのであれば、各人がそれを堂々と論理的に明るくカラッと主張していけばよいだけのことなのだから!(笑)


 『ウルトラセブン』が第1位にはならなかったり、かつて長きにわたって酷評されてきたハズの第2期ウルトラシリーズウルトラマンたちが平成ウルトラ3部作の『ダイナ』や『ガイア』に劣ることなく10位前後に並んでいたり、ニュージェネレーションウルトラマンが早くも上位にランクインしていたりもした今回の投票結果。
 それは、古典も新作も、シリアス系もコミカル系も、ハード系もマイルド系も、それらすべてが肯定されて併存がなされている点で、ウルトラマンの人気や作品評価をめぐる状況が、21世紀の今となっては実に理想的な状態となっていることの証しなのではなかろうか!?


 70年代末期~2000年代の半ばに同様の投票が行われていたのならば、本論の冒頭で論述してきたとおりで、第1期ウルトラ作品だけが最高で、第2期ウルトラは酷評されて終わっていたであろうから(笑)。


 この結果を1回こっきりの特番企画に寄せられた声として終わらせてしまうのではなく、今後の「新しいウルトラマン」が目指すべき指針・方向性として的確に読み込んで、そしてそれを最大限にいかしてみせることこそが、ウルトラマンシリーズの人気を拡充させることに寄与するだろう。

2022.10.28.
2022.12.24.改稿


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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エロマンガ先生』『妹さえいればいい。』『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』『干物妹!うまるちゃん』『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』『ささみさん@がんばらない』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』 ~7大・妹アニメ評!

(文・T.SATO)

エロマンガ先生』(1期)

(2017年春アニメ)
(2017年4月27日脱稿)


 ヒドいタイトルの作品である。


 てっきりアパート住まいの売れない男性マンガ家のムサ苦しい日常生活を描く作品なのかと思いきや……。


 蚊の鳴くような小声でボソボソと伏し目がちにしゃべる銀髪ロングの儚げな中学1年の美少女イラストレーターのペンネームがエロマンガ先生なのだと!


 フザケるのも大概にしろ!(笑) いやしかし、良くも悪くもインパクトはあるタイトルではある。


 それでもって、この美少女キャラの完成度が非常に高い。


 冒頭は連れ子同士の再婚で血のつながらない兄妹となったふたりの初対面。


 いかにも気弱で人見知りでシャイであることを如実に示す、間が持てなくて母の背中に隠れてしまう幼いころ(1年前?)の妹キャラの描写が鮮烈。


 ン、でも兄妹間の近親相姦(汗)を描いた深夜アニメ『ヨスガノソラ』(10年)でも、まったく同じような構図・挙動・「銀髪」だの「儚げ」だのといった語彙を含んだ兄貴のモノローグがカブるカットを観たことがあるような。ねらってる?(爆)


 しかも、このキャラデザ&ラノベ原作者は、深夜アニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(10年)と同じコンビだよネ? まさかの第2期の最終展開(笑)では近親相姦エンドの悪夢ふたたび!?


 エッ? 『ヨスガノソラ』? アレは冒頭からして不健全で隠微な感じを醸して「伏線」を張っていたから問題ありません!? さかのぼれば手塚治虫先生の名作マンガ『奇子(あやこ)』(72年)などもあるのです!(笑)


●雨戸を閉じた暗い自室に閉じこもり、炊事・家事・洗濯をまったくヤラない妹ヒロイン
●床を無言でドンドン叩いて、階下の兄貴を呼びつけて自室のドアの前に食事を運ばせる妹ヒロイン
●兄貴に自分の下着を洗濯させる妹ヒロイン(汗)


 世間一般的にはダメすぎるけど、しょせんはアニメだし、しかも美少女キャラだから許せると思うのだ(オイ)。


 しかも、兄貴は高校生にしてライトノベル作家!(笑)


 そのラノベの挿絵を担当していたナゾのイラストレーターが覆面をして、タブレット&電子ペンで微エロイラストの執筆過程をニコニコ動画(?)で披露しつつ、一応は饒舌(?)にナマ中継する姿を自宅のPCで観ていた彼は、その背景のウス暗い部屋が妹の部屋であるらしいことに気付いた!


 そして、放送を終了したつもりでカメラを切り忘れていた彼女が鼻歌を唄いながら着替えを始めてしまい(!)、世間に彼女の正体バレか裸露出(笑)のピンチが迫る!


 逡巡の末に2階に駆け上がってドアを叩いて大声で危機を訴える兄貴!


 オズオズと1年ぶりにドアのスキ間から対面して、恥じらったり上目使いにソッと見たりすぐに逸らして涙目でヒステリーを起こしたり……。といった一連の表情芝居が、シンプルだけれども最高級の繊細ナイーブな萌え描線で表現されており素晴らしい。美少女アニメはかくあるべし!(笑)


 まぁ、兄貴がラノベ作家で、妹がその挿絵師で、しかもそれは偶然で、さらには彼らの周辺には10代のラノベ業界関係者がワンサカといるだなんて、漫画アニメ的な設定以外の何物でもナイ――悪気はないけどオタや引きこもりの人間たちの気持ちがわからない、快活でリア充な茶髪ポニーテールの学級委員の美少女キャラを「対比」として登場させて、今後のディスコミュニケーション・ドラマも予感させてるあたりなどは、とてもイイけれど――。


 とはいえ、そのご都合主義的キャラクターたちの配置や彼らによるストーリーがあまり鼻に付かない(?)のは、劇中でも「天文学的確率である」というセルフ・ツッコミも入っているけど、作品の「面白さ」や「クオリティ」といったモノの本質は、陳腐凡庸・アリがちなモノも含めた「基本設定」それ自体にあるのではなく、むしろ「文体」や「叙述」に「語り口」といったモノから来る「味わい」といったモノにあるからではなかろうか?


 本作の場合、それは主人公である兄貴キャラの適度に文学的かつセルフ・ツッコミもあるモノローグの語り口から来る「味わい」&「話運び」に依拠する部分が大のようにも思うのだ。


 ……まぁ、多分にイビツな筆者の主観&好みもあるので、本作を愚作だと断じる方々を説得する自信もナイけれど(汗)、序盤にかぎればイイ感じだとは思うのだ。
「妹とラノベ企画を創ろう」

エロマンガ先生
エロマンガ先生 6(完全生産限定版) [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.69(17年5月4日発行))


(後日付記:その後のストーリー展開もイイ感じで進んでいきました!)


妹さえいればいい。

(2017年秋アニメ)
(2017年12月13日脱稿)


「お兄ちゃん、オッキッキ」


 朝に目が覚めると、日差しを模したナゾの透過光で局部や胸は隠されるも、金髪ツインテールで全裸(爆)の妹が、ベットで寝る兄貴の布団の上にまたがっている。


 もちろん、オッキッキとはアレとコレとの掛け言葉であろう(笑)。


 妹との唾液の糸を引く濃厚なディープキスを経て、妹の残り湯で洗顔し、妹のブラジャーで顔をふく。食卓には死んだハズの無表情な女性キャラもいて、朝食では妹のパンティを食べてしまう……。


 といったナンセンスな導入部で筆者はゲラゲラと笑っていたのだけど、畏友の同人ライター氏はこの導入部にドン引きしたそうで……。多分、筆者の方が毒されており、彼(か)のヒトのリアクションの方が正しい(汗)。


 この導入部は20歳ちょい過ぎのライトノベル作家の主人公青年が、自身のラノベのナンセンスな番外編(?)として考えた、妹を持つ兄貴のモノローグが主体の小説原稿にすぎなかったことが、担当編集者の激怒で明かされることで、兄妹愛を倫理的に肯定しているワケでもなかったことから、理性的で冷静なセルフツッコミもバッチリだ!(ホントか?)


 ラノベ作家が主人公で、同年代の同業ラノベ作家がお仲間やヒロインで、全裸にならないと執筆ができない女性作家や(笑)、その彼女が作家になった動機は、かつて引きこもり状態で失意の底にあったときに主人公青年が書いたラノベにカンドーしたからだとか、同年2017年春の『エロマンガ先生』ともネタがカブってるやないけー!――ググってみると原作ラノベも『エロマンガ先生』の方が先だった(汗)――


 社会人経験に乏しい若手ラノベ作家が、学園モノ以外のネタを探すとしたら、自分が所属するラノベ業界ですか? と揶揄したくなるところだが、多分そうではなくって、ラノベを愛好するような大むかしであれば文学青年や文学少女になったであろう人付き合いが苦手な読者たちにとっては、実社会に出るよりも机に向かってコツコツと執筆をしているような職業に憧れを持つのであろう。わかります(爆)。


 でも、スマホやネットでの暇つぶしツールが普及するばかりで書籍は売れなくなる一方の当今、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150403/p1)の原作をものしたラノベ作家先生がマーベラスエンターテイメントの宣伝部の正社員であるのと同様に、潰しが効くように二足のワラジを履いていた方がイイとは思うゾ(笑)。


 とはいえ、メインヒロインたりうる肝心の劇中リアルの妹キャラは出てこないし(一応)、主人公青年は『エロマンガ先生』主人公の高校生作家クンとは異なり、かなりのクズだし(爆)、主人公青年に下ネタで誘惑ばかりする金元寿子(かねもと・ひさこ)嬢が演じる歳下の銀髪ロリのラノベ作家女子は、主人公青年との初対面では緊張のあまりゲロを吐いて彼の服を汚したというから、『エロマンガ先生』とはかなりテイストは異なっている(笑)。元より本作は私的には怪作だと見ているラノベ僕は友達が少ない』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201011/p1)のヒトの作品だから、似るハズもなかった?(汗)


 あくまでも私見だけど、この作家センセイは良くも悪くも情よりも理が少々勝っていて、物語執筆に没入するソバからすぐに冷めてシラケてしまって、それがニジみ出てきてドコかで投げやりな作風になっている気がする。ただし、それが作家としての致命的な弱点だというワケではなく、メタ的な流儀に慣れた現代とラノベ業界にはマッチした個性でもあるようなナイような……。
妹さえいればいい。 Blu-ray BOX 上巻

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.70(17年12月30日発行))


『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』

(2018年12月13日脱稿)


 また出た! 21世紀以降、星の数ほどある妹モノであり、そこに加えて近年ノシてきた、主人公少年や青年が若きライトノベル作家で、ご都合主義にも彼の周辺の親族や知己もラノベ業界の関係者でもあるという、ラノベ原作の深夜アニメ『エロマンガ先生』や『妹さえいればいい』(共に17年)に続く三番煎じ!


 バカバカしいと切って捨てるのはカンタンだけど、やはり思春期になっても異性のハンティングには乗り出す胆力もなく、そもそも頼れるオスとして見てもらえるルックスや運動神経(腕力)や話術(コミュ力)などの甲斐性にも欠けるような我々のような人種は、女性からは異性のお相手としては見てはもらえないので(爆)、自宅警備員としてシコシコとラノベ作家などのオトコらしくない文筆業に励めてそれで食べていけたら、どれだけラクができることか!?(わかります・笑) といった欲求をツカミとして当て込んだネタである。


 常に一定の比率で人類にはそーいう内向的な性格類型が誕生している必然を思えば、「ラノベ作家ネタのライトノベル」といったメタ・ネタ作品は、職業選択の自由の前で怖気づいてしまう若き青年オタらに訴える普遍的なジャンルとして、時代を超えて継続・定着していくのではあるまいか!?


 本作の場合は、主人公少年はラノベ作家を目指して大賞に応募するようなモノ書きオタだけど、兄貴に対して世話女房的に丁寧語でツンツンしてくるウス紫ロングヘアのメインヒロインである妹は弱そうでも張り詰めた学級委員タイプの健気な女のコ。


 その妹が非オタでありながらも試しに「お兄ちゃん、スキスキ大スキ」パターンの兄妹ものラノベ(笑)で応募してみたら、一発で大賞を受賞して(オイ!)、00年代末期に流行った妹が兄貴に「人生相談、あるんだけど」パターンで(『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(10年))、大賞受賞を報告してくることで開幕する。


 で、妹の代わりに兄貴が作家のフリして受賞式に出席したらば、


●式典パーティーで黒スーツ姿のクールな眼鏡の担当女性編集者が「経験」と称して強引にオッパイをさわらせてきたり(笑)
●主人公が私淑するラノベ作家の正体がとてもオタには見えない快活そうな同級生(!)の赤髪ショート女子であったり
●担当の女性挿絵師のペンネームが先行の『エロマンガ先生』を意識しつつも、その斜め上を行く「アヘ顔W(ダブル)ピース先生」であったり(爆)


 毎度おなじみ作家&読者も共犯の「ココにツッコミを入れてください」的なご都合主義の連発で、作品世界が構築されている。とはいえ、そのことがダメだと思っているワケではなく、この漫画アニメ的なリアリズムが優先されない世界観のジャンル作品の歌舞伎的な様式美を楽しむには、むしろかえって充分な作りだとも私見をするのだ。



 #1だけ観て、あとでまとめて観ようと積ん録しておいたら……。イヤでも「OK、グーグル先生」が本作の作画崩壊ニュースを教えてくれる(笑)。


 で、#2以降も観てみた……。ウ~ム。絵コンテや演出単体は悪くないと思う。背景美術も崩れていない。しかし……。


 演出を体現すべきキャラ作画やその表情芝居が悪いと、ドラマ的・テーマ的にはまったくの同一であっても、こうも与える情緒やテンションは変わってしまうモノなのだナ、と改めてアニメにかぎらず映像作品全般における作画(キャラの表情に芝居)や、実写作品であればナマ身の役者さんの演技が、作品に魂を吹き込んでいることの重要性にも思い至った次第でもある――純・脚本面での作劇の巧拙やテーマの方にこだわることが無意味だと云っているワケではないので、誤解のないように!――。


 エンディング・テロップも見るに、作画は中国でも2流3流の下請けスタジオに丸投げのようだ。要するに低予算作品なのである(汗)。


 ググってみると、深夜アニメ『はじめてのギャル』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201220/p1)を手掛けた2010年代設立のアニメスタジオ&脚本&監督トリオの布陣。あの作品も高作画作品ではなかったけど、汚ギャルたちがメインの下品な作品なので、作画がイマイチでも間は持っていた(笑)。


 しかし、あの作品よりも作画がヒドく(爆)、美麗な作画・表情・小芝居・仕草で、繊細デリケートな萌え感情や庇護欲感情を美少女キャラに惹起させようとすることがキモとなるこのジャンルにおいては……残念な事態になったのやもしれない。


 アニメ業界や声優業界のウラ側をコミカルに描いた深夜アニメ『ガーリッシュナンバー』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220703/p1)では、悶着の果てに作画崩壊状態で放映された深夜アニメを観て、口下手のコミュ力弱者で友人も非常に少ない黒縁メガネの原作者のラノベ作家先生が、深夜に暗い自室でひとり泣き崩れているシーンがあった。
――業界あるあるネタなのであろう。同作では「アニメがクソだから原作も読まない!」「終ワコン!」連呼などのネット民の発言に、まだまだ青二才の青年ラノベ作家センセイが満身創痍になっていく描写などもあった(爆)。冷静で理知的な批判ならばイイけれども、オタのクセに中坊・ヤンキー的にイキがってワルぶった造反有理愛国無罪な下品でヒステリックなマニアの物云いの数々がいかにヒトの世の「礼節」を毀損しているのかについても痛感してしまう――


 本作もまた、ウラ側ではリアルで同じような事態になっていたりして(汗)。


 2018年夏アニメの『はねバド!』同様に、製作スケジュールの破綻か、同じ話数を2週連続で放映する事態にまでなっているけど、2018年冬アニメ『メルヘン・メドヘン』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190908/p1)や『BEATLESS』につづいて、総集編特番や作画崩壊に陥った先の再放送の連発の果てに最終回まで完走できない事態を恐れる……。もとい、「ヤラかしやがった!」的な「祭り」の到来を楽しみにしている(笑)。
――まぁヒトが死ぬワケでなし、子供向けアニメでもないのだから、いたいけな少年少女の夢を壊すワケでもないので、我々のようなスレたオタクたちはアクシデントすら楽しもうではないか!?――
俺が好きなのは妹だけど妹じゃない

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.81(18年12月29日発行))


『干物妹(ひもうと)! うまるちゃん』(1期)

(2015年夏アニメ)
(2015年8月12日脱稿)


 イスラム教2代目カリフの名前みたいな「うまる」ちゃん。干物妹(ひもの・いもうと)と書いて、ムリやりに「ひもうと」と読ませている(笑)。


 そーいえば、中高生に大人気だったラノベ原作がTVアニメ化されて成人マニアの衆目にふれるや酷評の嵐に晒された『魔法科高校の劣等生』(14年)に出てきた天下の早見沙織ちゃん演じる妹キャラは、各種まとめサイトを見るに「キモうと」(汗)とアダナされていたけど、本作の原作漫画のタイトルからの転訛であったのか!?


 恋愛には草食で、オウチでは女子力低くてゴロゴロしている「干物女」(ひもの・おんな)のフレーズといえば、女性向けマンガ原作(04年)で綾瀬はるか主演で実写化もされたTVドラマ『ホタルノヒカリ』(07・10年)を想起する。本作はそれを「干物妹」と言い換えただけの安直なオタ向け版アニメ。いや、安直なオタ向け翻案企画だから、ダメだということもナイのだけれども。


 本作のようなノリの作品は、生粋のオタ系出版社出自なのだろうと思っていたところが……。「週刊ヤングジャンプ」連載マンガが原作だって!? まぁ「ヤンジャン」にかぎらず、最近はメジャーな少年・青年マンガ誌でも1~2本はオタ系マンガのワクがあるからネ。


 オソトでは文武両道・才色兼備、常にニコヤカで背スジを伸ばしたお上品な立ち居振る舞いで澄ましつつも、高飛車ではなく親しみやすそうで、「美人系」というよりも「かわいい系」の、ボリュームがある腰までかかる亜麻色ロング髪のお嬢さま。


 オウチに帰宅するや、突如脱力して、頭まであるフードつき動物キャラ風パジャマをまとった、ヨコ広がりの2等身のSD(エス・ディー=スーパー・デフォルメ)キャラへと変貌して、ダラシな~く大きなお口を開けてヨダレを垂らしながら「ぬへへへへ」と奇妙な笑い声をあげている!


 グダグダでゴロゴロで、炊事・家事・洗濯などは一切せずに(多分)、寝転がってTV・アニメ・ゲーム・カウチポテト(死語?)な廃人生活を送って、かわいい甘ったるい声で「お兄ちゃん(ハートマーク)」の呼び声とともにツンデレ的にワガママに甘えまくって、メガネの社会人の兄貴の方もまんざらでもナイ(?)といった風で、下僕として仕えている作品といったトコロである!?(エッ、ちがう?・汗)


 引きこもりの美少女が主人公で、顔を写さないで描かれる歳の離れたオジサン入っている兄貴が面倒を見ていた深夜アニメ『ささみさん@がんばらない』(13年)などとも似たような構図だともいえるのだ(構図だけだヨ!)。


 オタクの巷(ちまた)を見ていると、たまに女性声優さんが、「自身の趣味がゲームだのアニメだのとインドアで、自分は引きこもりで実は内向的なのダ!」などとダウナーな発言をしていることがあって、その発言に「誘蛾灯」に惹かれるようにコミュニケーション弱者である野郎オタどもが集まっていってバチバチと感電死(笑)、もとい「お前はオレか!?」的に妙に親近感をいだいたりしてコロッとイカレている図を、各種まとめサイトなどで見かけたりもするけれど。


 それと同じトコロを当て込んでいる自堕落な、もとい特定ターゲットを狙い打ちにせんとする、マーケティング的にも実に巧妙な商売(笑)をもくろんでいる作品であるのだとも思われるのだ!? ……まぁ、実は作り手たちは脳ミソが空っぽで、単に何も考えてなくって天然で、「動物化するポストモダン」をした果てに、この作品のシチュエーションに至っているだけのような気配を感じなくもナイけれど(汗)。


 しかし、ウラ方の作り手の方にまわって文や絵などの二次表現で勝負するのではなく、ガチンコ対面な一次表現である「全身」での演技や自分の「声」などで自己実現をしようとする、しかもわざわざオーディション面接に繰り出してまで「役」を勝ち取ってこようとする、役者サンや声優サンたちのような本質的には「目立とう精神」の人種たちが云う「インドア指向」などはたかが知れている! 我々のような文弱のオタが云う「インドア指向」とは次元が異なっているのだ!?


 我々のような真性のコミュニケーション弱者であるオタと比すれば、やはり何倍ものコミュニケーション強者・コミュニケーション巧者であろうとは思うのだ(汗)。


 だから、彼女らに期待をしてはイケナイ! 信じちゃイケナイ! 彼我の差を鑑みて絶望する前に、裏切られる前に、事前にバリアーを何重にも張っておけ!


 うまるちゃんみたいなオタク系の美少女がいても、彼女らにも男を選ぶ権利はある! キモオタはお相手に選ばれやしない!


 ……フン、ちっとも悔しくなんかナイんだからネ!! 筆者は心の底からそう思うのであった(笑)。
干物妹!うまるちゃん

うまるの日々
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.71(15年8月14日発行))


最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』(実写映画版)

(2014年5月17日(土)公開)
(2014年7月5日脱稿)


 まずはTVアニメ版(14年)の感想から。


 また「妹モノ」かヨ! 志が低いよナ! と思いつつも、「妹モノ」の作品群は「ネタ」化が著しくて、作品の「タイトル」自体も実に秀逸で(笑)、本作のそれもビミョーに隠微かつ「ネタ」っぽくてウケるから、妙に観たくなってしまうのだ――誓って筆者個人の特殊な性癖のせいではナイ!?――。


 でも、ドー云い繕おうとも、妹モノは弱者男子にとっての都合のいいファンタジーではある。


 ファースト『ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)のヒロインたちを例えに云わせてもらえば、外の世界でオトナの女性っぽいセイラさんみたいな異性を引っかけてくるのではなく、フラウボゥみたいな幼なじみと引っつく方へと退行して――すでにファーストガンダムがオタの共通言語ではナイという話は置いといてください(汗)――、さらにはオタにとっては縁遠い「異性との出逢い」描写をハブくことができてもしまう、最初から異性と出逢っており同一空間で共同生活もしている「妹モノ」の勃興ヘ……。


 本作もそんなオタ向け作品の歴史的な退行文脈の一環であり、罵倒してやろう(笑)と手ぐすね引いて待っていたのだけれども!?


 ピンクのネグリジェの肩ヒモがズレ落ちてノーブラの胸の谷間も見せつける、ゆるふわ栗色ヘアにピンクの巨大リボン、背には小さな天使の羽を生やした美少女。彼女がイタズラっぽく微笑みながら、オボこい黒髪女子高生の両手を奪ってベッドに押し倒し、股の間に割って入ってイヤがる相手のホッペにチュッ♪
 黒髪女子高生の肉体に憑依するや、胸とアソコをまさぐって自慰にふけって悶えまくる! 分離しても同じ場所を攻め続け、首スジやホッペをナメるや唾液が糸を引き、耳を甘く噛み、女子高生は絶頂へ……。


 この作品は、「妹モノ」じゃなくて「百合モノ」だったのか!?――ってソコじゃなくて――


 基本設定がヒドすぎる(笑)。ネグリジェ少女が成仏するためには、生前にスキだった男子高生とイチャコラせねばならない。そのために男子高生の義妹に憑依して、ハート型の小さな計測器がついた黒色の脱げないTバック型の「TST」なる「貞操帯」(笑)を装着。しかも用を足す3分間だけ外れるけど以降1時間は外せない。トイレで尿意をガマンする羞恥プレイ、ついには保健室の花瓶に四つん這いでお小水を。それを義兄に見られてしまう義妹女子高生!


 後学のために(?)、実写映画版(14年)も観に行ってみた。前述の描写をあまさず映像化している!


 後学のために、原作漫画版(10年)も読んでみた(汗)。ン? 聖水プレイは現実の出来事ではあっても、寸止めで、その描写自体はなかったぞ。


 後学のために、BD版とTV放映版の比較検証サイトも見てみた。BD版では内股を伝う雫(しずく)が黄色く着色されている……。


 ……TVアニメ&映画版スタッフは頭がオカシい!(笑)


 本作を否定することは「表現の自由」への侵害になるのだろうか? 「表現の高度さ」というモノは「エロ」ではなくて「テーマ」とか「映像センス」のことだったのではなかろうか?


 かの「アニメ新世紀宣言」から30余年。ボクらが夢見たアニメの未来はコレだったのであろうか?(笑) そんな一歩も二歩も引いた視点もロートルとしては手放したくはないのだった。


 一方で、マンガ・アニメなんて低俗でイイじゃん? 浮き世離れして頭デッカチな高尚・ハイブロウな作品に走ってしまうよりも、地に足の着いた身の丈の手触り・肌触りを感じられるミクロな作品をこそ重視べきじゃネ? とも思ってしまうところがあることも事実なのだ。


 この両極端を架橋して、その両極端を同時に肯定してみせる「統一理論」がナイものかと思ってウン十年。いまだにそのようなご大層な理論を構築できる手立てなどはツカんでおらず、筆者個人も取っ散らかったままでジャンル作品を語りつづけておりますけど……。


 はてさて、この実写映画版。個人的には擁護してみせたい(……震え声)。


 3次元の媒体で2時間に再構築するならば、こーいうアレンジで妥当なのではなかろうか? そして、なんとTVアニメ版の全1クールの主要イベントをほぼ網羅もしていたのだ!


 ただ、異性が苦手で話しかけるのにも勇気を振り絞っている弱さを、「ツンツン」した態度&首アゴ前の大きな赤マフラーで鎧(よろ)っているような黒髪制服少女であった高校1年生の義妹の描写は少々軟化されており、共通の音楽趣味を持った同性の友達がクラスにできる姿なども点描されている。


 そんな彼女に憑依する、甘え上手な「デレデレ」担当のネグリジェ少女も、原作マンガやTVアニメ版よりも少し余裕がアリげな黒髪ストレート女子に変更されている。


 これらのキャラの微改変でアラスジは同じでも作品のテイストが少々変わってくるのも事実である。そこに抵抗を覚える原作至上主義者もいるのだろうけど、いかにもオタ向けな記号的キャラクターをジャンルファン以外に流通させるためにも、この微調整は適切なのではあるまいか!?


 原作マンガ版やTVアニメ版だと三角関係の一角になる隣家の高校3年生のお姉ちゃんは、温泉でナマ巨乳を披露するあたりは同じでも(笑)、この実写映画版では教育実習生に変更されて色恋にはノータッチであった。


 最大の改変は主人公少年である高校2年生の兄貴だったとも私見する。原作マンガでは、(ひとり)ボッチものでもあった少女漫画『君に届け』(05年・09年に深夜アニメ化)のサラサラ黒髪さわやかイケメン君みたいな見てくれで、義妹が義兄を好ましく思う展開もギリギリありかも!? と、ドラマ以前のルックス面でも補強してくるけど、同時に色事には鈍感過ぎでも「見た目がイイ男にすぎるだろ!」的なプチ反発も少々覚えてしまうのだ。


 こういったキャラクター設定に、アニメとして「色」や「声」や「動き」がついたり、実写ドラマだったならばもっとハナについてしまうかも!? ということを配慮してか、TVアニメ版ではちょいとモサッとした感じ、実写映画版でも短髪でポーカーフェースの剣道少年にして、透かし過ぎていないところでの異性に対するストイックな雰囲気も醸し出してくるのだ。


 2次元キャラだと喜怒哀楽を多少大仰に表現しないと観客にはやや通じにくくなるけど、3次元媒体でエロ事やいわゆるラッキースケベに遭遇した際の「動揺」を顔に出しすぎてしまったりするのは、たとえイケメン男子が演じていたとしても少々イヤラしくなってしまうことも傾向としてはあるので、コレらは適切なアレンジだったかとも私見をするのだ――2次元と3次元の媒体の優劣の話をしているワケではナイので、くれぐれも念のため――。


 本作はジャンル作品の実写化を蓄積し、10年単位で他業種とも協業して、旬の若手役者も起用してヒットさせれば高収益ともなる映画ビジネスへの角川書店(KADOKAWA)による実験的な布石なのかも? とも憶測している。オタ側もこういったことに慣れて、媒体ごとのアレンジの妙を楽しむ流儀が普及して、ジャンル作品の実写化に対して無闇に反発したことを反省する日が来ることを切に祈りたい。
最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。DVD

最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。ディレクターズ・カットBlu-ray
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.62(14年8月15日発行))


ささみさん@がんばらない

(2013年冬アニメ)
(2013年5月29日脱稿)


 ドコかで視聴を打ち切ろうかと思いつつも、間違って全話を観てしまった深夜の美少女アニメ


 自宅に引きこもって、ネット・通販・ゲーム三昧。自室の棚には合体巨大ロボットのフィギュアが立ち並ぶ、「俺の妹がオタク系」の廃人美少女。彼女は生活力もゼロであり、炊事・洗濯・喰う・メシ・風呂・寝る、すべてを「妹ラブ」で画面に顔を見せずに戯画的に描かれる変態アニキが面倒を見る毎日。
 そんな彼女がじょじょに人間としてリハビリして、外の世界にも関わって、お友だちを作っていく……ような展開だったらイイのにな(笑)。


 野郎キャラだとその「苦悩」や「不器用さ」が生々しくなってしまったり、たとえ無意識でも「男なのに情けない」といった感慨が微量にでも脳裏に発生してしまうことで、シャレとして流しにくくなってしまって、やや深刻で重ためにもなってしまうところを、甘ったるい美化をも含んだかわいい女性キャラに「煩悶」を肩代わりさせることでオブラートに包んで、安心して野郎オタの視聴者にもその「孤独」や「苦悩」に対して、ソフトな共感や憐憫(れんびん)――実は自己憐憫(笑)――を喚起してみせる。


 ここ10年ほどで意図的にか無意識にか自然発生的に発達してきたジャンル作品における手法ではある。近年では「野郎の性的欲情」さえをも女性キャラに肩代わりさせてハァハァさせて、自身(野郎)の醜い「似姿」に直面化させないように用意周到に進化(笑)してきて、オタク視聴者の代わりに女性キャラが別の女性キャラに迫ってくる百合的な構図までもが出現。女性オタクによる「BL(ボーイズ・ラブ)消費」(=旧「やおい消費」)の性別逆転版のような現象まで生じてきている。


 状況ウォッチャーとしてはネタの宝庫なのだが、冷静に考えると袋小路な奇形的進化である可能性もあって、世も末なのかもしれない(笑)。


 などと上から目線で見下しつつも、カミさん子供も養わずにオタクライフを満喫し、こんなウォッチをして悦に入っている筆者こそが、徳義面でもダメじゃん! といった自己懐疑に答えを見出せないまま齢を重ねて、つい逆汚染で萌えの感性が訓練・開拓されてミイラ盗りがミイラになって、筆者もジャンルといっしょに共倒れで心中してしまいそうだけれども……。
 いや、心中以前に筆者自身が元から趣味活動を優先して生活が破綻している廃人だったよナ(汗)。


 そんな不全感に満ち満ちたヒッキー(引きこもり)な主人公を配置することで、オタク視聴者の親近感・感情移入を惹起する。
 それと同時に、矛盾したことではあるけど、実はそんな彼女こそが日本神道最高神こと女神でもある天照大神アマテラスオオミカミ)の力 = 世界秩序の維持 = 世界改変の力 = 目的願望達成能力(笑) といった全能感に満ち満ちた超能力を、代々引き継いでいる神社の家系の娘でもあったのだ!


 ……といった、「オレもいつの日かホンキ出せばこんなモンじゃねー!」的な思春期の中2病的な全能感をも刺激してみせるのだ――とはいえ、「世界改変」とはいっても、街がチョコレート化したり(!)、主人公少女の胸からもう1本の腕が生えてくる程度のモノだけど(汗)――。


 でも、そんな万能感ネタも、批評オタク的な読者や視聴者からツッコミされる前に、「わかってますョ!」「あえてやってます!」「すべてシャレです!」「ノリつつ、シラケてます!」みたいな多弁症的な「云いワケ」感があるのだ。


 少しでも「真っ当」で「道徳的」で「感動的」、しかして、いわゆる「ベタな展開」(汗)になりそうになってくると、「テレ隠しのナンちゃって楽屋オチ感」にも満ち満ちたストーリー展開へと変転していくのであった(笑)。


 シリーズ中盤における母子葛藤の一連や、シリーズ終盤における「九尾の狐」のライバル美少女との対立などもその典型。エグい悪辣な対立展開を先にやっておいてからであれば、安心して(?)そのキャラクターのヒューマンなドラマや人間的にイイ面、おふさげシーンも描けます! みたいな。


 「お外恐怖症」で自宅から一歩でも外出するとプレッシャーで押しつぶされそうになっていたシリーズ序盤から、じょじょに登校して、学友たちと旅行にも出掛けられるようになるシリーズ構成も、結局それ自体は本作のサブテーマとして昇華しているワケでもない。


 別に本作の作風が特別にシニカル(冷笑的)だというワケでもないのだけれども、「キバって何かを実行したからといって、常にウマくいくワケでもないのだから、マイペースでグダグダとやっていきますよ~」といったテーマとして決着させて、そこでテーマ的な首尾一貫性を出せたワケでもなく、ひたすらに何事も散文的な点描で終わっているような……(笑)。


 美少女ハーレムアニメの常道にも則(のっと)って、


●チビチビの姉御ハダ女教師
●無口黒髪おかっぱ美少女
●天真爛漫ハクチ美少女


なども取りそろえて、彼女らのひとりには昨今流行りのプチ百合描写でハァハァ悶えさせもする。


 美少女ハーレムな彼女たちの正体も日本神話の神々だった! というワリには、古式ゆかしい神々には似つかわしくなく、腕が近代的な大型銃器に変型したり、空を飛んで高速バトルをしたりする!(笑)


 コレまた、ヤンキー漫画的な恫喝・威嚇がムキ出しのガチンコな殴り合いは痛そうだから苦手だったりするけれども、腕が武器や銃器に変型したり、巨大ロボに搭乗して戦うような、フィクション成分が高いバトルだと、生々しさがウスれて安心して疑似的に「暴力衝動」を発散することができるという、我々オタの心性にも即してはいるのだ。


 そんなワケで、筆者個人の趣味には合ってはいない……ハズだと思う。合っていないとイイな(笑)。


 でも、自分が10代前中盤のときに本作を鑑賞したならば、ベタな美少女アニメへのアンチとして、このテのやや頭デッカチかつ適度にクダけてもいる作品を持ち上げかねないとも思うのだ。
 身の程知らずな仮定だけれども、間違って筆者が作家にでもなっていた日には、こんな頭デッカチな作品を書いていそうな気もしてゾッとする(汗)。……などという物言いは、本作とそのファンに対してあまりにも失礼なのでアレですけど。


 でもまぁ、作品自体はトータルでなぜだかそれらしくまとまってはおり、最終回でも南洋の孤島での大バトル・大攻防劇で、30分の尺に収まるのかと思いきや見事に収まっていて、大声ではケナしにくい出来にも仕上がっていたのであった(笑)。
ささみさん@がんばらない 1(通常版) [DVD]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.57(13年6月24日発行))


俺の妹がこんなに可愛いわけがない

(2010年秋アニメ)
(2010年12月執筆)


 高校生であるオレの妹が中学生で、思春期にありがちロクに口もきかずに、きいても拒絶の暴言しか吐かない「ツン」属性なのに――そこまでは実にリアルな妹描写だ!――、深夜に就寝中のベッドの上から人生相談をしてくる!――ここで「デレ」属性も獲得する!――


 「自分は妹萌えエロゲーオタだ!」とカミングアウトすることで、実に楽しい虚構物語へと跳躍していくのだ!


 「こんな妹や彼女がいたら……」と自堕落にもついつい妄想してしまうようなオタの中での「ベタ層」から、作品名からして「アリエナイとわかって観てますよ!」的なメタな言い訳を必要とする「批評オタ」をも総ざらえする小ズルい作品としても仕上がっている(笑)。


 自分の趣味を共有してくれるオタクな彼女がいてくれたらば……といった男オタクの願望。
 オタクである妹に頼られて年長目線でオタク趣味の理解者として公平・理想的にジャッジしてみせる非オタな兄貴のオレ。


 しかし、現代オタクの消費ライフの戯画(ぎが)に加えて、実に深刻なダークサイドも描かれているのだ。


●当然のことながら、自分のオタク趣味を恥じており、隠してもいるオタクな妹


●トドメには、ネット上でオタ友を見つけて、3次元世界でリアルにオフ会に参加するも、そこで自分を開放してホンネで自分のスキを公言できるのかと思いきや! ……気後れ・萎縮してしまって、しゃべれなくなってしまうオタクな妹


 たいていはコミュニケーション弱者でもあるハズの男オタクたちの「ベタ」や「メタ」な「感情移入」のフック・引っかかりを多数めぐらして、特にオタクでもある妹ヒロインにはダブルどころかトリプルなミーニング・意味付け・投影なども施(ほどこ)されているのだ。



 男オタクにとっての憧憬対象でもあるコケティッシュな美少女キャラでありながらも、シャイ・内気なコミュニケーション弱者である男オタクの自己投影・自己憐憫(笑)の対象としても描かれていたという!


 彼女が中学生なのに、高額な18禁の美少女エロゲ(ーム)を所有している理由付けとしては、容姿端麗な美少女でもあってモデル業の稼ぎもあるからだとしてみせる――モデル業を両親が許可した交換条件として、「学業成績・スポーツ万能属性」までをも獲得!(笑)――。


 そしてその、いわゆるイケてる系の人種たちが集っているモデル業界を舞台の一部としたことで、そこからオタクにとっての「外部視点」までをもキチンと導入! 彼女のオシャレ系のモデル友だちから見えている、たとえ偏見が混じっていようが、オタクの異質さ・キモさ(気持ち悪さ)も逃げずに描いて客観視までしてみせる!


 とはいえ、オタクたちも、そして本作のオタクでもある妹ヒロインも、決して無垢(むく)であったり無罪であったりする人種として、単なる被害者として自己を正当化・美化だけしているワケでもないのだ。
 イザとなれば、連れ立って楽しく歩いてきたオタク友だちとは同類視をされまい! として、条件反射的についつい他人のフリをしてしまう自己保身! そして、そんな行為を採ってしまった、自分に対しての良心の呵責なども描いてみせるのだ!


 やはりオタクを描いていた大むかしの『こみっくパーティー』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071021/p1)、近年の『乃木坂春香の秘密(のぎざか・はるかのひみつ)』(08年)など、本作のこのような描写こそを見習え! などと云うのは過大な要求なのであろうか?


 オタクの内実を虚構作品だとはいえ、過剰に美化して「楽園」としてのみ描くだけであるのならば――もちろん、そーいう作品もあってもイイのだけれども――、オタクたちに甘いだけの自堕落な作品だよナ、児ポ法児童ポルノ禁止法)推進者やアグネス・チャンの百倍も、君の職場にいる一般女性の同僚はオタクやアニメ絵・萌え絵をキラっている現実を思い知れよ! などと筆者のようなネジくれた人間は、同族嫌悪で叩きたくなってしまったところだったので(汗)。


 本作の作者がスゴいのか、頭のイイ編集者が作家センセイに対して入れ知恵をしていたのか、本作には筆者がツッコミを入れたくなるような、オタクに対するムダな美化といった要素が実に少ないのだ。それは感心するほどである(笑)。


 イイ歳こいて、『らき☆すた』(07年)・『けいおん!』(09年)・『涼宮ハルヒの憂鬱』(06年)の「祭」なんぞにベタに参加するかよ!? とマジで鉄壁のガードを固めている筆者なども、本作にはダマされてしまいそうだ。(←我ながら、正直に本作にはハマっていると云え!・笑)


 とはいえ、本作にはまったく隙がないワケでもない。適度に強気な性格で、ルックスにも恵まれている妹ヒロインが、自信なさげなコミュニケーション弱者であろうワケもなく、同世代のオタ同士のオフ会ではしゃべれなかった! ……などということは、真にリアルに考えてみればおおよそアリエなさそうにも思えることで、むしろ参加者の過半がオズオズとしており会話が弾んでいなかった場合には、逆に気を遣って皆に話題を振って会話を盛り上げようとしたり、お店でも声を上げて店員さんを呼んで皆の注文を差配してあげたり、鍋奉行などになったりしそうな気がするのだ(笑)。


 ただまぁ、そこまでサバけた完璧ヒロインであったのならば、妹ヒロインに発生する人間ドラマは起伏に乏しいモノにはなってしまっただろうし、そうなると彼女に対する憐憫の情や感情移入の度合いも下がってしまう。
 そして、コレは媒体の優劣の意味ではなく云うのだけど、実写作品ではなくアニメ(ラノベ)作品であるからか、リアル度は中和されることで、ふだんは快活な妹ヒロインがオフ会では気後れしてしゃべれなかったというあたりも、実は少々気にはなっても、本作の致命的な欠点だとは感じられないのだ。


 初参加のオフ会でも器用に立ち回っていたのならば、やはりオタク視聴者の憐憫対象にはなれずにドン引き、もしくは敬遠されていたかもしれないのだし(笑)。



 物語は途中から人気長寿マンガ『課長 島耕作』シリーズ(83年~)のような要素までをも導入! ギョーカイ成功物語のような一面も醸し出してくる!


 ペンネームで発表した妹オタの畸形的(きけいてき)な願望や自意識まる見せスッポンポンの稚拙(?)な小説が大ヒットを果たしてしまうのだ!――この一連のオリジナル展開が、本作の熱烈な原作ファンたちによって「原作の改竄だ!」と糾弾されていることは置いておいて――


 いくら何でも展開が飛躍しすぎで、非・リアルにすぎるだろ! と思いきや、この小説のアニメ化(!)にまつわる騒動まで描いて、そこにヒネりを入れてくることで、ストーリー展開の突飛さに手綱を引いてくれるのだ。


 原作のイビツな箇所を、万人向けに微調整せんとしようとするアニメ化のスタッフたち。しかしそれは、原作のキモをも改変する域に達していたのだ!


 ここで悪者として描かれてしまうメガネの痩身脚本家の発言。


 いわく「稚拙」「妹ばかり」「リアリティがない」「どこが面白いのかわからない」(大意……・爆)。


 妹ヒロインの小説の商業的な成功に対して、内心では嫉妬の炎を燃やしていたオタク友だちで、アマチュア同人作家でもあるゴスロリ少女こと「黒猫」もその発言に対して、心中では溜飲を下げている。……お前らはオレか!?(笑)


 あぁ、どうもスイマセン! それらの表現を発露したり好んだりする、ある種の人種の内的必然性を今まで軽視してきたワタクシが悪うございました!――ま、反省は5秒間ほどであって(笑)、今後もジャンル作品に対してのツッコミはしつづけるけど、チョットだけ自己相対視はしてみました(汗)――


 イジワルに見てしまえば、この妹ヒロインが男オタクたちが愛好する美少女たちが主人公であるエロゲマニアではなく、女オタクたち(の一部?)が愛好するBL(ボーイズ・ラブ)ファンであったのならば、この作品は妹ヒロインに対しての男オタクたちの自己投影度が下がって成立しなかっただろ!? とか、やや偽悪的に面倒クサげにしている兄貴キャラも、同季の深夜アニメ『えむえむっ!』(10年)の主役のオトコのコとも同様に、何だかんだとオトコ気があって頼りになりすぎるご都合主義も少々引っかかるところだけど(笑)、本作のメインタイトル自体が、そうしたツッコミに対する「云い訳」のバリアと化していて、正面から突破のツッコミがしにくいのだ。


 BL作品それ自体ではなく、BL作品を読んでハァハァと欲情している女オタクの姿に、我々男オタクがコーフンしているような構図もあるマンガ『となりの801(やおい)ちゃん』(06年)のような流通はオタクの中でも多数派ではないのだろう。


(↑:2012年10月・後日付記:そーでもなかったのかもしれない。美少女ハーレムアニメにBL好き美少女が混ざる割合が近年では急速に増えてきたのであった(汗)。
 ……10年後の2022年12月・後日付記:ハァハァとコーフンしているBL愛好美少女やロリ娘を愛好している美少女キャラの姿に対して、男性オタク視聴者の側が萌えているという、ネジくれた構図は今ではすっかり定着してしまいましたとサ!・爆)


 そういったことに対するセルフ・ツッコミなのでもあろう。原作未完ゆえにTVアニメ版のオリジナル点描なのかもしれないけど、本作(後日付記:2010年放映の1期)の最終展開では、これまたBL好きのオタクの妹を持っている端役の兄貴キャラなども、主人公兄妹の鏡像かつオルタナティブ版としてであろうか登場させてもいるのだ!


 妹ヒロインがネットでゲットできた同性のオタク友だちらも、


●オフ会主宰の瓶底メガネの背高の姉ちゃんの、いかにもな自身のキャラを作ってみせている、発言の末尾が「ござる」口調
●80~90年代だったならば、お姫さまロングドレス的なピンクハウス(ブランド名)の服を着ていたような性格の娘が、昨今ではそれだとバカにされてしまうので、チョイ悪(ワル)で鎧(よろ)って対人バリアにしているとおぼしき、ゴスロリ(ゴジックロリータ)黒服ファッションの黒猫美少女


といったキャラクターたちも、アニメ的なキャラ立てにとどまらずに昨今のオタクの反映・風刺図にもなりえてもいる!


 しかし、彼女ら女オタクたちもその言動や出で立ちは奇矯ではあっても(笑)、けっこう友だち思いでモラルもあって性格もイイ奴らでスキだよ! ……といった美談でオトして、この文章を終わらせるのも癪だよなぁ(汗)。


 若年オタ用語でいうところの「邪気眼」描写、和室の自室でゴスロリ少女が自作同人誌の擬古文調のセリフを自己陶酔しながら音読している奇人変人なサマを、彼女の幼い妹たちふたりが廊下からドン引きしながら、恐る恐る見詰めているシーンなどはサイコー!(笑)


 「ブラック・イズ・ビューティフル」や「オタク・イズ・ビューティフル」や「オタク・エリート説」などではなく、「オタクや女性や黒人の方でも改善すべきトコロがあるんじゃネ?」といった発言をすると、「一般大衆や男性や白人の方が悪い! 敵に利する発言をするヤツは獅子身中の虫である!」といったヒステリックな反発を返してきがちだった、大方の1960年前後生まれのオタク第1世代や70年前後生まれの第2世代的な価値観などとは異なり、オタクである自分自身に対する自己相対視・自己客演視・引いた視点が最初からナチュラルにあるあたりが、80年前後生まれのオタク第3世代のアドバンテージ・優位点だとも思うのだ。


 筆者のようなオタク第2世代のオッサンオタクからすると隔世の感ではあり、その一点においては実に成熟したイイ時代になったとも思うのであった。
俺の妹がこんなに可愛いわけがない 1 【通常版】 [DVD]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.52(10年12月30日発行))


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俺たち賞金稼ぎ団 ~ヒーロー経験者と「獣電戦隊キョウリュウジャー」の面子で、同作メイン監督・坂本浩一が手掛けた良作バカ映画!

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 『ウルトラマンデッカー』(22年)#18~19に坂本浩一カントクが登板記念! とカコつけて……。坂本浩一カントクが手掛けた、戦隊OBも大挙出演していた映画『俺たち賞金稼ぎ団』(14年)評をアップ!


『俺たち賞金稼ぎ団』 ~ヒーロー経験者と「獣電戦隊キョウリュウジャー」の面子で、同作メイン監督・坂本浩一が手掛けた良作バカ映画!

(文・久保達也)
(2014年7月19日脱稿)

「イケメンヒーローブーム」の系譜! 批判ではなく、それすらも善用してみせよ!


「仮面を脱ぎ捨てたヒーローが新たなステージへ挑む」


 こんなキャッチフレーズにより、


●『PIECE(ピース) ~記憶の欠片(かけら)~』(2012年9月公開)
●『ぼくが処刑される未来』(2012年11月公開)
●『恋する歯車』(2013年2月公開)


といった作品が製作されている。それぞれで、


●『仮面ライダーオーズ』(10年)で火野映司(ひの・えいじ)=オーズを演じた渡部秀(わたべ・しゅう)
●『仮面ライダーフォーゼ』(11年)で如月弦太朗(きさらぎ・げんたろう)=フォーゼを演じた福士蒼太(ふくし・そうた)
●『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・)でキャプテン・マーベラス=ゴーカイレッドを演じた小澤亮太(おざわ・りょうた)


が主演し、『TOEI HERO NEXT(東映・ヒーロー・ネクスト)』と題して、実質的には低予算のVシネマとして製作され、劇場公開もされていたことは記憶に新しいところである。


 これらを製作した意図として、東映プロデューサー・白倉伸一郎(しらくら・しんいちろう)は、東映ヒーローを演じた役者たちに次のステージを用意したい、という趣旨の発言をしていた。


 90年代以前、変身ヒーロー作品で主人公を演じた役者たちは、ごく一部の成功例を除き、世間に根づいたそのイメージを払拭(ふっしょく)することができず、その後は仕事が来なくなるという苦境に立たされる者が多かった。
 具体的な言及はここでは避けるが、中にはその果てに、人生を転落させた者もいたほどだったのである。


 芸能事務所が新人俳優にこぞって特撮変身ヒーロー作品のオーディションを受けさせたり、放映終了後に主演俳優に対して一般向けドラマの出演オファーが殺到する、というような具合いに風向きが変わったのは、一部では「ホスト・ギンガマン」(笑)と称されていた『星獣戦隊ギンガマン』(98年・)あたりから萌芽(ほうが)はあったものの、『仮面ライダーアギト』(01年・)の放映により、「イケメンヒーローブーム」が巻き起こった00年代以降のことなのである。


 その好況が現在に至るまで続いていることを考えれば、東映があえて若手俳優たちに次のステージを用意してあげる必要性は、さほど感じられないようにも思える。
 しかしながら、平成ライダースーパー戦隊を演じたからといって、そのすべての役者がメジャーな存在になれるとはかぎらないのだ。よく思い返してみれば、最近すっかりご無沙汰になってしまっている者も存在するハズである。


70年代的な先輩ヒーロー客演の再定着! ライト層や子供層の「卒業」も遅延させよ!


 そして近年(2014年)では、平成ライダーが毎年12月()、スーパー戦隊が毎年1月()に、現行ヒーローと前作ヒーローがコラボする映画が、さらには歴代ライダーや歴代スーパー戦隊が大集合する映画()が毎年春に公開されるのが慣例となっている。


 通常、オタク予備軍以外の子供たちは、進級するにつれて、非日常を描いている特撮変身ヒーロー番組から卒業して、もう少し日常に近しい世界を描いている少年漫画やアニメや一般の大人向けドラマへと興味・関心を移していく。あるいは、同級生たちの空気・同調圧力もあって特撮変身ヒーロー番組などは「幼稚」なものだとして認定していく。
 それ自体は必ずしも間違っているワケではないので(汗)、子供一般の成長過程においては否定されるべきことでは決してない。しかし、日本の特撮変身ヒーロー番組やその劇場版映画のファンの増員や売上自体を上げていくうえでは望ましいことではないことは事実だった。


 1990年前後からは特撮変身ヒーロー番組は年長マニアを除けば幼児のみで小学校に上がったタイミングですでに卒業しているような状態が一般化してしまった。
 しかし、筆者のようなオッサン世代は覚えていることだろう。1980年前後までの子供たちは特撮変身ヒーロー番組を小学校中高学年になっても視聴していたことを……
 一度は卒業した子供たちであっても、70年代末期に到来した第3次怪獣ブームの時代は、ウルトラマンシリーズと仮面ライダーシリーズだけは別だ! とばかりに、小学校の高学年や中学生に上がっても再放送を視聴したりシリーズ最新作を試しにチョコチョコと鑑賞するようなことはあったものなのだ。


 けれど、1980年代~00年代前半にかけては、特撮ジャンル作品の続編やシリーズ化は「悪」だとされて、シリーズ初作や初期シリーズだけが「正義」だとされた悪影響で、作品世界を刷新したヒーローや怪獣が初登場したリアルシミュレーション的で原点回帰的な作品ばかりが賞揚されてきた。それはそれで単発的には一般層をゲットできたり、相応の作品的・興行的な成果もあっただろう。


 しかし、00年代後半からは、70年代までの特撮ジャンル作品と同様に、シリーズ作品が同一世界を舞台とすることで、先輩ヒーローが後輩ヒーローの助っ人に参戦してくれても不思議ではない作品が、ウルトラにしろライダーにしろ戦隊にしろ、ふたたび続々と製作されるようになってきた!


 そうなると、そろそろ子供番組を卒業しようと思ってしまうような子供たちも、自身が幼少時なり昨年度に鑑賞していたヒーローたちが、そのシリーズの続編・新旧2大ヒーロー共演映画・スーパーヒーロー大集合映画に再登場すると知れば、オモテ向きは冷静を装っても内心では秘かにワケもなく興奮させられてしまって(笑)、それらの作品を映画館で鑑賞してみよう!
 あるいは、シリーズの続編作品群でも、幼少時のようには純真には観られなくなっても継続して鑑賞していこう! と思ってしまうような子供たちも一定数は存在することであるだろう。


 つまり、これらの同一世界を舞台とするシリーズ作品や映画は、特撮変身ヒーロー作品からの「卒業」を遅延(ちえん)させる役割を立派に果たしている。それが証拠に、近年では以前は見られなかった小中学生の男子の姿を、劇場でよく見かけるようになっていたのだ。これは実に喜ばしいかぎりではある。


 同じようなことは、そのシリーズ全体に対する特撮ファンではない、その作品単独の年長ライト層や役者ファンにも拡張して応用ができるだろう。彼らライト層にも個別単独の作品ファンだけにとどまらせないためにも、シリーズ次作などに彼らを先輩ヒーローとして再登場させる手法は、そういった面からも一粒で三度も四度もオイシいといった効用があるものなのだ!


ヒーロー経験役者たちによる「ネキスト」としての『俺たち賞金稼ぎ団』!


 しかしながら役者さんにとっては、放映終了後も数年間にわたって、同じヒーローを演じつづけることになるワケで、かつてのヒーローOBたちのように、そのイメージから逃れられなくなる危険性をかかえていることも、一方ではまた事実なのであった。


 その意味では、同じヒーローではなく別人の役を演じさせる作品をつくる手法もおおいにアリだろう。これによって、役者ファン・特撮ファン双方をたとえ小規模でもゲットができるのだ。そして、若手役者さんたちには演技の経験の幅を広げさせ、スタッフたちにも特撮変身ヒーロー番組とは異なるジャンルの作品を経験させて、我々オタクたちにもジャンル作品以外の作品に対する見識を広げさせられる(笑)、そういったメリットも確実にあるハズなのだ。


 『TOEI HERO NEXT』製作にあたっては、そうした意図も少なからずあったかとは思われるのだ。



●ホラー・サスペンス
●近未来SF
●純愛ミステリー


と続いてきた『TOEI HERO NEXT』。


 『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)の若手役者さんたちに用意された「次のステージ」は、2014年5月10日(土)から順次劇場公開された『俺たち賞金稼(かせ)ぎ団』!
 同作はそれまでのややハイブロウな「TOEI HERO NEXT」作品とは打って変わって、『キョウリュウジャー』をメインで撮影していた坂本浩一(さかもと・こういち)監督による「バカ映画」にもなっていた!(笑)
――いや、原典である『キョウリュウジャー』自体も良い意味での「バカ映画」だったのだけど(笑)――


 もちろん、興行的な大ヒットは見込まれない作品なので(汗)、予算は掛けられないから、そこで起きている事件は「地球存亡の危機」などではまるでない。それらと比較すれば、かなりミニマムな事件なのである。


 「劇団バズーカ」を主宰する金原寿朗(きんばら・としろう)――キョウリュウゴールド=空蝉丸(うつせみまる)役だった丸山敦史(まるやま・あつし)――。


 彼はもともとは刑事であった警官であった青木純蔵(あおき・じゅんぞう)――キョウリュウブルー=有働ノブハル(うどう・のぶはる)=役であった金城大和(きんじょう・やまと)――から、かつて自身が逃がしてしまった母親を放火殺人した容疑者・リコに、300万円もの懸賞金が懸けられているという話を聞かされた。


 劇団の自主公演の資金繰りにも悩んでいた金原は、懸賞金を目当てに(笑)、劇団員たちを率(ひき)いてリコの行方を捜索をはじめる! すると、そのうちに意外な事実が次々に明らかになっていく……といったストーリーなのである。



 ちなみに、事前に告知されていたとおりで、同作は一応、『キョウリュウジャー』とも同一の世界を舞台とした、同作終盤ともリンクしている物語ともなっている。それによって、少しでも同作のファンにも本作に親しみを持ってもらったり、劇場に足を運んでもらおうといった算段だろう。


 劇中のテレビでは『キョウリュウジャー』の悪の軍団・デーボス軍の侵攻が緊急生中継されていた。金原が青木に懸賞金の話を聞かされた喫茶店も、キョウリュウジャーたちのタマり場だった喫茶店「TIGER BOY(タイガー・ボーイ)」だったりするのだ。キョウリュウブルー=ノブハルが経営していた「なんでもや まるふく」の軽トラックが登場する場面まであったのだ(笑)。


 もちろん、お遊び程度の点描(てんびょう)であって、キョウリュウジャーやデーボス軍がストーリーにカラんでくることは一切ないという点では無意味なシークエンスともいえるのだ。とはいえ、ストーリー自体の理解に対する支障になるようなものでもないことを考えれば、わかるヒトだけわかる描写にすぎなくても内輪ウケだとして目クジラを立てて否定すべきようなものでは決してないだろう。


 それにやはり、一応の『キョウリュウジャー』とも同一世界での出来事だと聞かされてしまうと、たしかに特撮ファンとしては不思議なもので俄然、本作に対して親近感がわいてくるのも否(いな)めないのであった。こうやってゴキブリホイホイ(笑)に引っかかってしまうような特撮マニア諸氏も相応数はいたことであろうし。



 金原は聞きこみや張りこみ、真の悪党をこらしめる方法などについてはその都度、台本のかたちで執筆して、劇団員に手渡してみせる「ルーティン」とすることで、それをこの作品における「お約束」の「反復ギャグ」ともしている。
 そして、本作の全体のノリを一言で要約するならば、彼の最後の台本のタイトルでもあった『過剰(かじょう)サスペンス劇場』(笑)のようなものなのだ。つまり、「家政婦」や「掃除のオバサン」をはじめ、ありとあらゆる職業の人間たちが名探偵となっている、「なんでアンタらが事件を捜査するんや!」とツッコミしたくなるような、コメディタッチの2時間サスペンスドラマといった趣なのである。


 今どきそういったコメディ・サスペンス作品を「リアルじゃない!」などと云って批判をするようなヤボ天はもう少ないことだろう。むしろ、「非リアル」であることを承知で、「事実よりも真実」、リアリズムやドキュメンタリーではない虚構・フィクションやギャグ中心の作品の中にあってさえも、なんらかの真実や人間の真情を宿らせることはできるのだ! と見ることができるのが、「近代」後期の成熟社会を生きている先進国のイイ意味でスレてしまった庶民・大衆たちなのである。


 よって、本作のような小品で、そういった出来事を面白く見せようとするのであれば、これはもう「バカ」や「喜劇」を徹底するしかないワケである(笑)。


 そして、だからこそ、『キョウリュウジャー』の若手役者たち6人が、『キョウリュウジャー』における役柄と似ているようでも違っていたり、あるいは全然まったく違っていたりと、彼らが正義のヒーロー&ヒロインしか演じられないワケでは決してないのだ! と、同作を観ていたファンたちにも強力にアピールすることもできるし、役者さんたちの新境地を開拓することにつながるワケである。


桐生ダイゴ=キョウリュウレッドを演じた竜星涼が、真逆なオタク青年を演じる!


 桐生ダイゴ(きりゅう・だいご)=キョウリュウレッド役であった竜星涼(りゅうせい・りょう)が本作で演じた主人公青年は、「憑依(ひょうい)の役者」こと赤井達也(あかい・たつや)である!――オープニング映像ではこの「憑依の役者」と彼が演じた「役名」が、スーパー戦隊の「名乗り」の合成シーンのようにテロップされている!(笑)――。
 『キョウリュウジャー』では「キング」のアダ名で、若造なのに自身満々な役柄だったのだが、なんと本作ではそれとは真逆な役柄を演じていて、就職活動に失敗しつづけるオタク青年という設定なのだ!


 竜星は本作の1ヶ月後に発売されたオリジナルビデオ作品『獣電戦隊キョウリュウジャー 100 YEARS AFTER(ハンドレッド・イヤーズ・アフター)』(東映ビデオ・14年6月20日発売)でも、ダイゴとは正反対の気弱な曾孫(ひまご)であるダイくん(笑)を演じていた。
 だが、本作ではオカッパ頭にメガネをかけることによって、そうしたキャラをさらに徹底! しかも、赤井は『キョウリュウジャー』の次作である『烈車(れっしゃ)戦隊トッキュウジャー』(14年)のカグラ嬢=トッキュウ5号(戦隊ピンク)の


「私は強い、私は強い、私は強い、私は強い!!」


といったお約束の定番セリフのように(笑)自身が幼少時から大スキであった、同作の劇中世界における往年の特撮変身ヒーロー作品『ヘルズフェイス』の主人公になりきって、


「地獄の業火(ごうか)で焼かれてみるか!?」


などという決めゼリフを口にして、メガネをハズした途端に凶暴になってしまうのだ!


――赤井はやたらと、「まるで『ヘルズフェイス』第3期24話みたいだ!」などと、オタッキーな「例え」を口走って周囲にイヤがられているのだった(笑)――


 もっとも、悪党どもに立ち向かうにしろ、赤井の『キョウリュウジャー』で云うところの「ブレイブ」ぶりはともかく、彼の「ブレイブ」は単に両腕を振り回して突進していくというバトルスタイルであって、その周囲で悪党どもが勝手に自滅していくといったアクション演出になっていた(笑)。


 これまでの坂本監督作品からすれば、本作は「アクション」が占める比重が非常に少ない印象があるのは否めない――それでも「階段落ち」ならぬ「エスカレーター落ち」という、まさに命がけのアクションシーンはあったが!――。


 しかしながら、そういった「アクション」については本家『キョウリュウジャー』でも充分に描かれてきたのだから、変身ヒーロー役者に「次のステージ」を用意するといった製作意図からすれば、本作は「アクション」よりも、役者たちの「演技」や彼らの別の「一面」を強調することが、的確な作劇であり演出ではあったのだ。


熱血でもコミカルな作風だが、それはコテコテの古典的なギャグ喜劇でもあった!


 コメディ劇の観点からすると、本作の脚本や坂本監督の演出センスは正直「都会的」ではなかった。金原が悪党に対して、ヘンな拳法のポーズを繰り出したあげく、足のニオイをかがせて気絶させるとか(笑)。
 むしろ「コテコテ」なお笑いであって、それこそ大阪の「吉本(よしもと)新喜劇」や、1970年代に大人気を博していたコント55号ザ・ドリフターズを彷彿(ほうふつ)とさせる古典的なものなのだ。つまり、体を張った繰り返しによるギャグ演出なのであった。


 一例を挙げるなら、リコに殺されたとされる実の母について、金原が聞きこみをする場面。美人だったリコの母と仲がよかったことを、得意げに語る同僚のオッチャンに対して、おだてながら聞きこみをする金原だったが、


オッチャン「オッチャンじゃねえよ。ジェントルマンだよ!」


などと返されて、そのたびにアタマを盛大にハタかれて、事務所に積まれていたダンボール箱に何度も頭から突っ込んでしまうのだ(笑)。



 これは『キョウリュウジャー』と同時期に放映されていた『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・)でのバトル演出でもよく見られるものである(笑)。……冗談はともかく、たしかに軽妙なセリフ回しによるお笑いもイイのだけれど、やはり視覚的にインパクトが強いこうしたギャグ演出の方が、個人的には「王道」であって「普遍性」もあるようには思えるのだ。


 ちなみに、このオッチャンを演じていたのは、女丈夫でも良家の子女であったキョウリュウピンク=アミィ結月(あみぃ・ゆうづき)の執事「ジェントル」役を務めていた島津健太郎(しまづ・けんたろう)である。「ジェントルマンだよ!」という反復セリフは、それ単独でも笑えるものにはなっているのだが、『キョウリュウジャー』を視聴していた我々「大きなお友だち」には二重の意味で笑えるギャグでもあったのだ。


 しかし、一歩引いてマニアックに観てみれば、『キョウリュウジャー』とは完全に差別化ができていた竜星の演技もたしかに見事だったのだが、おもいっきりのブルーカラー(肉体労働職)とホワイトカラー(事務職)で両極端なキャラクターを、完全な別人として器用に演じ分けてしまっている島津の技量にも脱帽なのだった。


 さらにマニア的には、『キョウリュウジャー』の悪の軍団・デーボス軍のレギュラー幹部であった「怒りの戦騎ドゴルド」のスーツアクターでもある、JAE(ジャパン・アクション・エンタープライズ)所属の清家利一(せいけ・りいち)が年輩のチンピラ役で顔出し出演しているばかりか、ドゴルドの口癖だった「腹立たしいぜ!」を叫んでみせていることには、個人的には感涙した(笑)。


スーパー戦隊OBばかりで脇役が埋まっていたという、マニア歓喜のキャスティング!


 いや、特撮変身ヒーロー番組マニアから見たお楽しみは、こればかりではない!


●放火犯のリコは杉本有美(すぎもと・ゆみ)!(『炎神戦隊ゴーオンジャー』(08年)須塔美羽(すどう・みう)=ゴーオンシルバー)
●リコの母は斉藤レイ!(『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)敵組織オルグの女幹部ツエツエ)
●リコの母の主治医は榊英雄(さかき・ひでお)!(『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)黒木タケシ(くろき・たけし)司令官)
●詐欺師・ワタルは山田裕貴(やまだ・ゆうき)!(『海賊戦隊ゴーカイジャー』ジョー・ギブケン=ゴーカイブルー)
●不動産屋は伊藤陽佑(いとう・ようすけ)!(『特捜戦隊デカレンジャー』(04年)江成仙一(えなり・せんいち)=デカグリーン)
●強盗は山本康平(やまもと・こうへい)!(『忍風戦隊ハリケンジャー』(02年)尾藤吼太(びとう・こうた)=ハリケンイエロー)
●ヘルズフェイスは相馬圭祐(そうま・けいすけ)!(『侍戦隊シンケンジャー』(09年)梅盛源太(うめもり・げんた)=シンケンゴールド)
写真屋店員は海老澤健次(えびさわ・けんじ)!(『炎神戦隊ゴーオンジャー』石原軍平(いしはら・ぐんぺい)=ゴーオンブラック)
●ニュースキャスターは平田裕香(ひらた・ゆか)!(『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年)女敵幹部メレ)
●ランジェリーショップ店員は小宮有紗(こみや・ありさ)!(『特命戦隊ゴーバスターズ』宇佐見ヨーコ=イエローバスター)
●ホステスは山崎真実(やまざき・まみ)!(『轟轟(ごうごう)戦隊ボウケンジャー』(06年)敵女幹部・風のシズカで、本作での役名も風間静香(かざま・しずか)!・笑)
●赤井の父である警視総監(!)は山下真司(やました・しんじ)!(『獣電戦隊キョウリュウジャー』でも主人公ダイゴの父・桐生ダンテツ=キョウリュウシルバーを演じていた!)


 これではもう、完全に『スーパーヒーロー大戦(たいせん)』である(笑)。いや、スーパー戦隊に出演後、「次のステージ」を重ねてきたことにより、当時のイメージを払拭したどころか、なかには面影(おもかげ)をも残していない者もいるくらいなのであった。詐欺師ワタルを演じていた山田なぞは、短髪になっただけのハズなのに、云われなきゃ全然誰だかわからない!


 個人的には、


●おもいっきりのチャラ男の不動産屋を演じた伊藤
●妙な威圧感があったファンキー野郎の写真屋を演じた海老澤


 このふたりの演技が、気弱なオタクとして設定された赤井が最も苦手であろう性格類型の人物として、その芝居によっても絶妙に表現されていることが印象に残った(笑)。


 特に伊藤は、面接場所を間違えた赤井を徹底的にバカにするかなり長いセリフを、ワンカットの長回しで云い切っているさまが実に見事であった――デカグリーン=江成が得意としていた「逆立ち」を、ナゼか彼が事務所で披露するあたりは完全な楽屋オチであったが――(笑)。


 彼らスーパー戦隊OBの熱演には、『キョウリュウジャー』の役者さんたちもこんなふうに成長していく姿を、今後とも暖かく見守ってあげねば……と思わせてくれるほどのものもあったのだ。もっとも、本作での好演を見るかぎりでは、将来のことをそれほど心配する必要もないようにも思えたものだけど。


性的多様性の実現なのか!? ギャグでもBL描写が当たり前のように実現してしまう当今!


 「妄想(もうそう)の役者」こと黒田賢(くろだ・けん)を演じたのは、イアン・ヨークランド=キョウリュウブラック役の斉藤秀翼(さいとう・しゅうすけ)。これまたプレイボーイのナンパ師だったイアンとは正反対の女性恐怖症であり、しかも蚊の鳴くような声でボソボソとしゃべるばかりか、アヒル口になったりもするのだ(笑)。


 その黒田は、同じ劇団の「切れ者の役者」こと緑慎太郎(みどり・しんたろう)に恋をしていたりもする(爆)。
――緑慎太郎も立風館ソウジ(りっぷうかん・そうじ)=キョウリュウグリーン役の塩野瑛久(しおの・あきひさ)が演じたが、緑自身はソウジとあまり変わらないキレやすいキャラであった(笑)――


 黒田の「妄想」として、両腕を広げて黒田を迎え入れようとする全裸姿の緑などという、ボーイズ・ラブ描写が何度も挿入されたりもする(爆)。
 現在でもスーパー戦隊の男性キャラを題材にした、20世紀だと「やおい」と呼称されていた「BL」同人誌が市場をにぎわせているようであるが、本作ではついにそれが映像化されてしまったのであった! 「BL」についても、男性オタク間でも「一部の女子オタ間ではそういう受容がされていることを空気のように知っていて、今となっては特に驚きも反発もしなくなった……」どころか好意的な「笑い」としても機能する! といった意味では、世の中は筆者も含めて悪い意味ではなく随分と変わったものだよなぁ。都心の劇場などではやはり黄色い悲鳴が飛びかっていたのであろうか?(笑)


 ただ、同じ坂本監督が手掛けた地下女子プロレスを描いていた映画『赤×ピンク』(14年・角川映画・)におけるヒロインたちのレズ場面などもそうであったが、白バックを背景に黒田と緑がカラんでいる場面もまた、実に美しい映像に仕上がっており、まったくイヤらしい印象は感じない。むしろ、実に「神聖」なものとして表現されているような印象すらをも受けるのだ。


 その逆に、デパートの女性向けランジェリー売場で黒田と緑が抱き合ってキスをしたのを見て、BL好きであったのか大興奮して失神してブッ倒れてしまったランジェリーショップ店員・小宮有紗の太モモを強調したフェッティッシュなアングルで捉えたカットの方が、倒錯的だがイヤらしいものがあった(笑)。


 「ドS(エス)の役者」こと女子高生・桜川カオリ(さくらがわ・かおり)がその色香(いろか)で、担任のマジメそうな教師――なんと、東映の諸田敏(もろた・びん)監督が演じたが、あまりにもそれっぽい!――を職員室で骨抜きにする場面にしてもそうだったが、坂本監督は「日本でいちばん制服姿の女性をエロく撮れる監督」であるようだ(爆)。


――カオリはキョウリュウピンク=アミィ役だった今野鮎莉(こんの・あゆり)が演じていた。やたらと「ウザっ!(ウザったい)」というセリフを連発して、あらゆるキャラに蹴(け)りを入れまくるだけの暴力女キャラであった(笑)。長身で元気そうでカラッとしたまだ女子高生の彼女にはピッタリな役だったが、彼女だけは演技力がまだまだ未熟なので、さらなる「次のステージ」を用意してあげた方がよいのではなかろうか?(笑)――



 個人的には『仮面ライダーウィザード』(12年)の3大ヒロインである、


●薄幸のメインヒロイン・コヨミを演じた奥仲麻琴(おくなか・まこと)
●稲森美紗(いなもり・みさ)=敵女幹部メドューサと、稲森真由(いなもり・まゆ)=仮面ライダーメイジを二役で演じた中山絵梨奈(なかやま・えりな)
●サブヒロイン・大門凛子(だいもん・りんこ)刑事を演じた高山侑子(たかやま・ゆうこ)


を主役に据えた『TOEI HERO NEXT』ならぬ『TOEI HEROINE(ヒロイン・笑) NEXT』を、坂本監督にぜひとも撮ってほしい(爆)。


 本作『俺たち賞金稼ぎ団』の主題歌は、この奥仲麻琴が所属するアイドルグループ・PASPO(パスポ)によるものだった。そして、本作の公開初日の舞台挨拶でともに立った奥仲の姿に坂本監督は、


「PASPOの姿の『まこっちゃん』を初めて見て、鳥肌が立った!」


と、すっかり鼻の下を伸ばしていたそうだし(笑)。


しかし、マニア受けする「ネタ」だけで語るなかれ! 「ドラマ」たりえてもいたのだ!


 スーパー戦隊OBネタだけを羅列してしまうと、本作にはそれしか見どころがない作品なのかと思われてしまって、逆効果になってしまうかもしれないので大急ぎで補足しておくが、本作はコミカルながらもドラマ自体はキチンとしていたのだ。


 自身には他の劇団メンバーとは違って演技力には欠けていると悩んでしまう主人公青年・赤木の葛藤。


 リコを逃がしてしまったのではなく、彼女の無罪を直観したから、実は見逃してしまったのだと語ってみせた警官・青木。


 赤木もリコに遭遇して、シングルマザーとして生きている彼女の生真面目な人格から無罪を直観して、劇団の仲間たちにはないしょにしてしまう。


 ないしょにしていたことがバレてしまって、劇団メンバーとの間で起きる悶着。


 ラストに全員の大奮闘の末に明かされる、放火殺人事件の真相!


……といったところで、そういった意味ではイロモノのテキトーで退屈な作品などでは決してなく、ストーリーの起承転結も実にハッキリとしており、登場人物たちへの感情移入もさせられる、物語の基本・いろはを満たした良作にも仕上がっていたのだった。

2014.7.19.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2015年準備号』(14年8月15日発行)~『仮面特攻隊2015年号』(14年12月28日発行)所収『俺たち賞金稼ぎ団』評より抜粋)


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 深夜アニメ『モブサイコ100(ひゃく)』(16年)の第3期『モブサイコ100 III(ひゃく・スリー)』(22年)が放映中記念! 『ウルトラマンデッカー』(22年)#18~19に坂本浩一カントクが登板記念! とカコつけて……。坂本浩一カントクが手掛けた深夜ドラマ『モブサイコ100(ひゃく)』実写版(18年)評をアップ!


『モブサイコ100』(実写版) ~「いいヤツ」とは何か!? 「ワンパンマン」のONE原作漫画を、坂本浩一×吉田玲子×濱田龍臣トリオで実写ドラマ化!

(文・久保達也)
(2018年11月11日脱稿)


 第2期の深夜アニメの放映が2019年春期に予定されている傑作コミック『ワンパンマン』(初出・09年。漫画連載12年。アニメ1期・15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190303/p1)で知られる漫画家・ONE(ワン)。


 彼が手がけた原作コミック『モブサイコ100(ひゃく)』(漫画・12年。アニメ1期・16年。2期・19年。3期・22年)は、小学館の漫画配信サイト『裏サンデー』、のちにスマホ用漫画アプリ『マンガワン』で連載されて、本稿で語る同作の実写深夜ドラマ版の放映直前である2017年末に全16巻で完結した。


 すでに2016年夏期にTOKYO-MXやBSフジでは深夜アニメ版が放映され、来たる2019年1月からはその第2期の放映が予定されているほどに、『モブサイコ100』はそれなりに人気・評判が高い作品なのだ。



 主人公・影山茂夫(かげやま・しげお)は勉強も運動も人づきあいも苦手である。「坊(ぼっ)ちゃん刈り」のヘアスタイルで終始無表情で感情にもとぼしくてルックスにも恵まれていない。おまけに、その場の空気を読むこともできない、ということで人格的にも少々の難がある。
 その愛称が「モブ」であるほどに、主人公なのにモブキャラみたいな中学2年生なのであった!――ちなみに、「モブ」の語句に「漢字」を強引に当てはめて、訓読み(くんよみ)にしたのが「茂夫」のネーミングの由来だろう(笑)――


 しかし、そんな彼は実は超能力者でもあった! その力を発動した際の彼は、髪の毛が逆立(さかだ)ってその表情と口調もまさに「変身」をとげるのだ!



 そんな作品の実写化である深夜ドラマ『モブサイコ100』(18年)が、2018年1月からテレビ東京にて『木(もく)ドラ25』なる深夜枠にて全12話で放映された。


 その内容は、


●モブが怪しい宗教団体に勧誘されたのを発端に波乱が起きる「(笑)(カッコ・わらい)編」
●モブが学園どうしの対立抗争に巻きこまれる「番長編」
●モブの弟である律(りつ)が超能力に覚醒する「律編」
●モブが超能力で世界を支配しようとたくらむ悪の組織と対決する「爪(つめ) 第7支部編」


と、原作コミックの初期作品が順を追って映像化されていたそうだ。


 主演と監督の布陣は、同作放映の直前である2017年末に放映を終了した『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)の主人公・朝倉リク=ウルトラマンジードを演じた濱田龍臣(はまだ・たつおみ)とメイン監督・坂本浩一で、彼らが再びコンビを組んでいる。


 そして、2010年代以降の「ウルトラマン」・「仮面ライダー」・「スーパー戦隊」の監督でもおなじみ、本作の映像化を手掛けた坂本監督ならではの派手なアクション演出や、さわやかにエッチでフェティッシュなアングル(笑)を主体にしながらも、吉田脚本の細かな心情描写が絶妙に効いた、娯楽性とドラマ性を両立させた仕上がりとなっていた!


 ただし、製作は「ウルトラマン」の円谷プロではなく東映本社でもなく東映ビデオであった(汗)。そして、過去の坂本監督作品の参加者にかぎらず、近年の仮面ライダースーパー戦隊の出身俳優も大挙して出演していることも、特撮マニア的には見どころだ。


 主なところでは、


●脳感電波部・部長である暗田トメ(くらた・トメ)が、山谷花純(やまや・かすみ)
(『手裏剣(しゅりけん)戦隊ニンニンジャー』(15年)の百地霞(ももち・かすみ)=モモニンジャー)


●超能力覚醒ラボ所長・密裏賢治(みつうら・けんじ)が、久保田悠来(くぼた・ゆうき)
(『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)の呉島貴虎(くれしま・たかとら)=仮面ライダー斬月(ざんげつ)、『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180310/p1)の敵幹部・スコルピオ)


●超能力者・白鳥大地(しらとり・だいち)が、塩野瑛久(しおの・あきひさ))
(『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)の立風館ソウジ(りっぷうかん・そうじ)=キョウリュウグリーン)


●生徒会長・神室真司(かむろ・しんじ)が、國島直希(くにしま・なおき)
(『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)の門藤操(もんどう・みさお)=ジュウオウザワールド)


●他校の番長・枝野剛(えだの・つよし)が、根岸拓哉(ねぎし・たくや)
(『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)&『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)の礼堂ヒカル(らいどう・ひかる)=ウルトラマンギンガ)


●テロ組織の幹部・桜威(さくらい)が、出合正幸(であい・まさゆき)
(『轟轟(ごうごう)戦隊ボウケンジャー』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070108/p1)の高丘映士(たかおか・えいじ)=ボウケンシルバー、『獣電戦隊キョウリュウジャー』の鉄砕(てっさい)=キョウリュウグレー)


●テロ組織の幹部・誇山(こやま)が、岩永洋昭(いわなが・ひろあき)
(『トミカヒーロー レスキューフォース』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090404/p1)の石黒鋭二隊長=R5(アール・ファイブ)、『仮面ライダーOOO(オーズ)』(10年)の伊達明(だて・あきら)=仮面ライダーバース、映画『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE(ザ・ムービー)』(12年・東映)および、その続編オリジナルビデオ『宇宙刑事 NEXT GENERATION』シリーズ(14年)での烏丸舟(からすま・しゅう)=2代目・宇宙刑事シャイダー


といったところであり、特撮ファンにはおなじみの役者たちであふれていたのだ。


 また、本作のアニメ版(16年)でも悪霊であるマスコットキャラ・エクボの声を演じて、『宇宙戦隊キュウレンジャー』では着ぐるみの宇宙人キャラであるチャンプ=オウシブラックの声を演じたベテラン声優・大塚明夫が、今回の実写版でもエクボの声をコミカルに演じていた。


 なお、メインライターはアイドルグループ・でんぱ組inc.(インク)を主演に据えていたネット配信の実写ドラマ『白魔女学園(しろまじょ・がくえん)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220227/p1)シリーズでもすでに坂本監督作品ともタッグを組んでいる、『けいおん!』(09年)・『ガールズ&パンツァー』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190622/p1)・『弱虫ペダル』(13年)・『たまこまーけっと』(13年)・『チア男子!!』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190603/p1)などの数々の人気アニメを手がけた吉田玲子(よしだ・れいこ)であった。



 ところで、主人公少年・モブが通っているのは「塩(しお)中学校」という名前である(笑)。


 同校との対立抗争が描かれる、


黒酢くろず)中学校
●醤油(しょうゆ)中学校
●味噌(みそ)中学校


など、市内の中学はすべて調味料の名前から取られている。なにせ所在地も「調味市」なのだ(笑)――



 そんないかにも漫画な架空の場所を舞台に対立している、


黒酢中学の不良生徒たち
●超能力覚醒ラボの超能力者たち
●テロ組織・爪の構成員たち


などの多数のキャラの思惑(おもわく)が複雑に交錯する群像劇としての趣(おもむき)が強いのが本作である。


 しかし、その主軸となっているのが、主人公・モブと弟・律との関係性であった。


 先述したように、モブ役の濱田が『ジード』で演じていた主人公・朝倉リクというキャラクターは、早朝の子供向け特撮変身ヒーロー作品にふさわしく、漫画・アニメ的でひたすらに明るくてさわやかで悪意のない天然キャラであった。イヤミのない無邪気な性格でダブルヒロインとの三角関係にもなっていったほどだ(笑)。


 彼とは対称的に、氏が本作で演じているモブは、クラスでは徹底的にバカにされている(爆)。幼いころから秘かに想いを寄せていた同級生の美少女・つぼみにも、まともに相手にされていない。


 そんなヘタレだからか、筋力増強のトレーニングを行なう筋肉バカ(笑)の部員ばかりの「肉体改造部」などにも入部する――虚弱体質だった作家の三島由紀夫古代ギリシャの健全なる肉体&精神を目指してボディービルディングで肉体改造に成功した話からの引用だろうか?(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200809/p1)――。しかし、三島由紀夫とは異なり、彼はそこでは足手まといとなってしまうのだ!(笑)


 怪しい宗教団体こと「(笑)」(カッコ・わらい)の勧誘にもあまり疑わずにノコノコと付いていく。しかし、そのために危機にも陥(おちい)ってしまうのだ!


 ニセのラブレターにもダマされて公園におびき寄せられてしまう。そして、不良生徒どもに人質にされてしまう!


 モブはさんざんな目に遭(あ)いつづけているのだ。そして、そのすべての行動の動機は「モテたい」の一心なのだった!(笑)



 体育の授業中には、バレーボールが彼の頭を直撃してしまう!


 その瞬間をつぼみに笑われてしまったのを、


「笑った…… ボクを見て、笑った……」


などと、自身に対する「好意」だとしてカン違いをしたモブは、つぼみにドモり口調で、


「笑顔を、ありがとう」


などと述べて感謝するほどに、人情の機微や女子による強い男子を求めるような心情には疎(うと)いのであった(笑)。


 思春期のころに、いや、現在でも真っ只中で「非モテ」で苦しんでいる立場からすれば、大なり小なりそんなふうに思いこんでしまう心情を充分に視聴者に理解させられるほどに、先のリク青年とは完全に相反しているモブなるキャラを演じている濱田の器用な演じ分けは実に絶品でもあった!


 対するに弟の律は、そのような兄のモブとは正反対に、成績優秀・スポーツ万能なイケメンで、生徒会の役員まで務めている。そして、いつもつぼみと親しく話をしており、モブは律をうらやましがってもいる。


 しかし、一方の律もまた、


「ボクにないもの、兄さんは持ってるだろ」


などと、自分には超能力がないことがコンプレックスとなっているのだ。


 ヘコみがちなモブに常に暖かく接している律は、一見は「兄想いの良き弟」として映ってはいる。しかし、「超能力」を使えるモブのことを単にうらやましがっているのではない。そこには「嫉妬(しっと)」や「恐怖」の感情も入り混じっているのだ。兄であるモブにどことなく遠慮がちに、陰のある表情で恐る恐る話しかけるような律を演じているお若い役者さんである望月歩もまた、モブを演じる濱田に決して負けてはいないのだ。


 モブと律の兄弟は、小学生のころに不良高校生どもに「お年玉」をカツアゲされた過去がある。その際に「超能力」を暴走させてしまったモブは高校生のみならず、律にも重傷を負わせてしまっていたのだ! そのことが兄弟双方のトラウマとなっていることが、本作のタテ糸や彼らの行動原理としても重要な位置を占めてくるのだ。


 この過去場面が回想シーンとしてたびたび挿入(そうにゅう)されていることが、彼らのフラッシュバック的な心理描写・トラウマ(心的外傷)描写としても実に効果的なのだ。


 この事件を契機にモブは「超能力」を決して人には向けないと決意しており、何度となくおとずれる危機の中で「超能力」を使おうか使うまいか、モブが葛藤するスリリングな展開となる以前に、彼自身も生来から消極的な性格だったのだろうが、そもそも「超能力」の暴走を避けるためにも、モブは常日頃から自身の感情を極力おさえているのだ……という、念押し的なキャラクター設定がなされていたのであった。
――もちろん、抑えに抑えていた感情が次第に高まって爆発してしまうこともあるワケで、この状態を「100%」だと表現することで、本作のタイトルの由来ともしている――


 一方の律も、モブが再びその「超能力」を暴走させることを恐れている。「超能力」を持っているモブを尊敬する……というよりかは、むしろ恐怖の念から、モブの気分を害することのないように(汗)、常に暖かい態度で接しているという、実に複雑で多面的な人物像を造形することにも成功しているのだ。


「モブな兄貴」と「主役な弟」との関係性! それでも「いいヤツ」であれ! という主張!


 このモブと律との互いに対する「嫉妬」が根底にある兄弟関係は、本作実写ドラマ版のシリーズ中盤ではいったん危機を迎えることとなった。


 生徒会長が強行した「大掃除実行計画」。それは不良生徒たちが女子の下着・上履き・リコーダーなどを盗んだように偽装することであった! その「計画」に加担してしまって、いくらワルとはいえ無実の生徒たちがクラスで非難されて、居場所を失っていくのを目のあたりにした律。
 彼は自身の行為も含めて「最悪だ」と心を痛めてしまうのだ。そして、その罪悪感から彼にも「超能力」が覚醒するのだ! しかも、他校の不良生徒たちとの乱闘騒ぎを起こすまでに至るのだ!


 騒ぎの場に駆けつけてきたモブ。彼に対して律は、


「ずっとあこがれと劣等感をいだいていた」


と告白をはじめる。そして、


「仲良し兄弟は今日で終わり」(!)


と絶交してみせる!


 しかしモブは、律が「超能力」を悪用して徹底的に痛めつけたワルどもに、


「ボクの弟が…… スイマセン……」


などと云って土下座をしたうえで、律に対して、


「ボクを引き離すことはできないよ。兄弟なんだから」


と、実にカッコよくも云い放ってみせるのだ!



 最終展開でもモブと間違えられてしまった律は、「超能力」を持った少年少女を革命戦士に仕立てようとたくらむ秘密組織「爪(ツメ)」によって、覚醒ラボの超能力者たちとともに拉致(らち)されてしまっていた。
 しかし、モブたちの活躍でこの組織が壊滅した最終回のラストで、律は「これからはモブみたいな『いいヤツ』になる」と語ってみせたのであった……


 モブに対してあこがれていたのは、決してその特異な「超能力」だけではなく、モブが「いいヤツ」だったからだと、律はようやく気づいたのだ。
 もしくは、愚直なまでの「いいヤツ」ぶりの愚かさや人情の機微への疎さに対して気恥ずかしかったりイラ立ってはいたものの(笑)、その欠点はそのままで直っていなかったとしても(爆)、一周まわってモブのそんな「欠点」とも表裏一体の「長所」をも、彼の度量が大きく成長をとげたことで、受けとめてみせて包容までできるほどに、律の人格も大きくなったといったところなのであろう!



 原作漫画ありきの作品なので、本作を手がけた吉田玲子脚本作品の過去作との類似を指摘するのは的ハズレなのだろうが、


●『ガールズ&パンツァー』で、「戦車道」をめぐって対立していた主人公・西住みほ(にしずみ・みほ)と姉のまほが、最終回で直接対決の末に妹のみほが勝利して和解
●アニメ映画『映画 聲(こえ)の形』(16年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190901/p1)で、耳が不自由な少女・西宮硝子(にしみや・しょうこ)を小学生のころにいじめていた主人公・石田将也(いしだ・しょうや)が、高校生になって再会した硝子にいだいた恋愛に近い感情


など、登場キャラのハートウォーミングな関係性の変化を彷彿(ほうふつ)とさせるものもあった……



 ところで、「仮面ライダー」・「スーパー戦隊」・「ウルトラマン」などの「子供番組」では決して描かれないような「流血」もひんぱんに見られるほどの徹底した「バイオレンス描写」を、坂本監督はほぼ各話で遠慮することなく本作では演出してみせていた! 超能力者たちのサイキックバトルや学園抗争の場面で特にそれは顕著であった。


 生徒会が権力を行使して不良生徒を排除する描写も含めて、「アクション場面」では「超能力」のみならず「力」そのものを、物理的な「実力」行使そのものを「悪」として描いていた印象が強いのだ。


 特に第5話では、周辺キャラたちの「日常描写」が点描される以外に、全編にわたってモブが黒酢中のウラ番長でもあり「超能力者」の花沢輝気(はなざわ・てるき)に徹底的に痛めつけられていく姿が描かれていた。
 しかし、幼少時の律に重傷を負わせてしまった自身の「超能力の暴走」を回想していたモブが花沢に対して、


「超能力を人に向けてはダメだ!」


と説得をつづけつつ、


「ボクは変わるんだ。いいヤツになる!」


などと、決意を新たにするストーリー展開となっていたのだった。


 時折り不快とさえ思えるほどのヒドすぎる「暴力」描写は、まさにこの作品テーマを主張するために、確信犯的に爽快感ではなく不快感をもたらすための演出だったと解釈すべきものである。


 そして、たとえ「筋肉バカ」ではあろうとも、その強靱な肉体を物理的な「暴力」の行使である「ケンカ」に使うことには断固拒否してみせるストイック(禁欲的)な肉体改造部員たちの描写! それは、花沢・不良生徒たち・爪の幹部連中らとの絶妙な対比としても機能していたのだ。


 生徒会にハメられて居場所を失ってしまった番長・鬼瓦(おにがわら)。彼に対しても、そのくやしさを「肉体改造」にブツけろ! と入部をすすめて、


「こんなオレでも受け入れてくれるのか?」


と、鬼瓦を感動させた肉体改造部員たち…… そんな彼らの描写も、単なる物理的な「力」の卓越性ではなく、その人格面でのそれまで敵対してきた他人をも受け入れるだけの器量の大きさ、つまりは「いいヤツ」であることが強調されていたのだ。
――まぁ、「肉体改造」自体も「軍備増強」のミニマム版みたいなモノだともいえるし、「いいヤツ」であること自体が「人格力」という広義での「力」ではあったり(笑)、その「力」を延長していくと「カリスマ力」、要は他人を自身に従わせる「影響力」といったモノにもなっていくのだけど……。話が煩雑になるので、今回はこのへんの話はオミットさせてください(汗)――



 超能力者の「サイキックバトル」を描いてきた本作は、視聴者に「いいヤツ」になれ! というメッセージを発信して完結することになった。


 それにはモブが「師匠」として崇(あが)めている主要キャラ・霊幻新隆(れいげん・あらたか(笑))の存在が大きいのであった。


 深夜アニメ版では人気絶頂の中年アイドル声優(笑)こと櫻井孝宏(さくらい・たかひろ)が霊幻の声を演じていた。しかし、実写ドラマ版では特撮変身ヒーロー作品『幻星神(げんせいしん)ジャスティライザー』(04年・東宝 テレビ東京http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041109/p1)に登場した悪の変身ヒーロー・神野司郎(じんの・しろう)=デモンナイトや、深夜特撮『ライオン丸G(ジー)』(06年・「G」製作委員会 テレビ東京http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061229/p1)の主人公・獅子丸(ししまる)=ライオン丸、さらに『仮面ライダー鎧武』のシド=仮面ライダーシグルドなどを演じた波岡一喜(なみおか・かずき)が、その正体は詐欺師(さぎし)ながらも(!)、実に人情味にあふれる霊幻をコミカルに好演していたのだ。


 霊幻は「霊とか相談所」(笑)という心霊現象相談所を経営している。ストーカー被害を相談に来た巨乳の女性に対しては、悪霊が憑(つ)いていると偽って胸をマッサージしてカネを取るなど、なんでも霊にカコつけて悩みを相談に来た客をテキトーにまるめこむ商売をしているのだ(爆)――さすがの坂本監督も実写作品だからか、女性の胸のマッサージは映像化はしなかったが(笑)――。


 モブはこの相談所では除霊のアルバイトをしている。先述したように、弟の律にも重傷を負わせたほど「超能力」を制御できなかった小学生当時のモブが、ここに相談に訪れたことがその契機となったのだ。


 この際、霊幻は「超能力」も「ひとつの個性」だとしたものの、その能力を自己顕示(じこ・けんじ)的には他人に対してヒケらかしたり、他人に対して発動したりはせずに、「いいヤツ」になれ、とモブに対して云い聞かせていたのだ。


 そして、これは霊幻自身の体験にもウラ打ちされたものだったのだ。以前に勤務していた会社で、霊幻はプロジェクトが失敗した責任を上司にすべてなすりつけられて、退職に追いこまれてしまった過去があったからなのだ。


 実写ドラマ版シリーズの最終回では、爪の幹部たちに対して霊幻が会社員時代に


「弱い者を踏みつけて、ノシ上がったヤツらをさんざん見てきた」


などと語っていたが、それはシリーズ途中でも語られてきた、まさにこのことだったのであった。霊幻は「力」を悪用して社会的カーストの上位に立とうとした過去の「上司」と「爪」の連中を、その品性下劣さにおいては同一の存在だと見なしていたのだ。


 しかし、霊幻を退職に追いやった当の上司もまた良心がなかったワケでもない。そのような学術用語で云うところの「悪魔化」された単純で一面的なキャラ造形はされてはいないのだ。これは実写ドラマ版のオリジナル描写であったようだが、シリーズ終盤ではこの上司は過去に部下を退職に追いやったことが原因で不眠症で苦しんでいた真相が明かされる!


 そんな彼もまた「霊とか相談所」を訪れたものの、霊幻が所長であることに最後まで気づかない、あるいは部下を退職に追いやったことは後悔・疼(うず)きとともに覚えてはいても、その部下の顔と名前――つまりは彼個人の人格や人となり――は覚えていないという、是々非々な描写がまた絶妙な「リアル」さをも醸(かも)し出してくるのだ(汗)。


 会社員時代のマジメな黒髪短髪とは打って変わって金髪となり、たまたま花粉症のために風邪マスクをしていたとはいえ、目の前の霊幻がかつての自分の部下であることにも気づかない元・上司。「力」をヒケらかすヤツにとっての「弱者」とは、その程度の存在にすぎないところもあるのだろう。
 そして、元上司が「ずっと後悔してた」と云うワリには、自分が追いつめてしまった霊幻のことを「目の細~いアイツ」と繰り返して表現する言動には、明らかに蔑視(べっし)の感情も込められていたのだ。


 しかし、こんなカーストの上位にいる他人や弱者に対する共感性には乏しい「強者」はこのまま死ぬまで不眠症で苦しめばいい! その苦悩に対しては手を差し伸べてはやらない! 死ねばイイのに! ……などと思ってしまう「弱者」の想念がまた「悪」にもなってしまうのだ……
 たとえ時系列的には「強者」の側に先に原因があったのだとしても、「弱者」の方が過剰防衛としての「力」や「実力」や「暴力」を行使してしまうことで、かえってもともとの「強者」よりもはるかに大きな「悪」として逆転してしまったりもする現象も発生してしまうという逆説・パラドックスも世にはあるものなのだ(爆)。
 社会に対する恨みで無差別殺人を犯すような輩もまた、この類いなのである。もちろん、一片の同情の余地はあっても、同じような環境にあっても犯罪を犯さない人間の方が圧倒的な大多数であることを考えてみれば、それらの無差別犯罪はやはり唾棄(だき)すべき「悪」となってしまうものなのだ。読者諸兄も心して気を付けられたし――もちろん、自戒も込めてではある――。


 霊幻はベッドに寝かせた元上司に対して、当初は明らかに私怨(しえん)が込もった乱暴なマッサージをしていく(笑)。しかし、上司が霊幻を退職に追いこんだ過去を話しはじめて、それを後悔していると語るや、上司に向けていた霊幻の矛先(ほこさき)は次第にまるくなっていく。


 「ありがとう」と丁重(ていちょう)に礼を云った上司が立ち去るや、霊幻は「メチャクチャいいヤツだな」とつぶやく。「いいヤツ」が元上司のことで、彼の悪事のすべて許してしまった意味の言葉であったとしたら、ここの挿話(そうわ)はあまりにキレイごとの単なる茶番劇にしか見えなかったことだろう。
 だが、霊幻は「メチャクチャいいヤツだな」というセリフにつづいて、ひと呼吸を置いてから「オレ」とつぶやくのだ。そう、「メチャクチャいいヤツ」なのは、上司ではなくオレこと霊幻、つまり自分のことを指していたのだ。つまり、霊幻は悪人ではないかもしれないが、最上級の善人でもなかった(笑)。しかし、過去に遺恨(いこん)のあった人間とも付かず離れずを実践できる人間ではあったのだ。


 もしも、心の狭い筆者(汗)が霊幻の立場だったとして、この上司がたずねてきたならば「帰れ!」と怒鳴って追いはらっていたことだろう(爆)。
 そう。個人レベルでも他人と和解できないのだから、学校のクラスの全員と…… ヤンキーDQN(ドキュン=不良)と…… ファッション&スイーツな輩と…… 世代の異なる人間と…… あるいは、世界中のさまざまな国々の人々とも仲良くすることなどは、残念ながらも絶対に不可能だ! 世界中から争いや戦争を根絶することも原理的に不可能なことなのだ! とまでは云わないけど、やはり非常に困難で不可能に近いことではあるのだろう……


 キライな人といわず苦手な人や初対面の人、言語も習慣も価値観も異なる外国人とも、同一空間で長時間いっしょにいることには、人見知りで内向的な人間であればあるほど、悪気はなくてもこれほどまでにツラいことはないだろう。異なる性格の持ち主との同席や、異文化コミュニケーションとは、ことほどさようにムズカしいことなので、それが出来もしない我々のような内向的な人間が、口先だけで歯の浮くような「みんなと仲良くしましょう」などと幼稚園や小学校の先生レベルのキレイごとを平気で主張することには矛盾を感じないのであろうか?(汗)
――だからといって、殺し合ったり、外国とは戦争をするしかないのだ! などと云っているワケではないので、くれぐれも念のため(汗)。しかし、他人や外国ともベタベタせずに争いもせずに付かず離れず、適度な距離感で……といったところが現実的な処方箋(しょほうせん)にはなるであろう。2500年も前に孔子も『論語』で「君子の交わりは水のごとし」と云っていることでもあるのだし!――


 とはいえ、霊幻だって決して上司のすべてを許したワケではないのだろう。しかし、そんな相手に対しても彼が自身の行為を後悔していると知れば、態度を軟化させて冷静な態度でオトナの対応を示すことができた霊幻は、やはりそのかぎりでは最上級ではなくても「いいヤツ」なのであった!


 心の一部には「恨み」を残しながらも、そのまた一部では悪人のことをも「許し」てもみせている。もちろんギャグにまぶされてはいるのだけど、キリストが「七度の七十度、許せ」(無限に許せ)、仏陀も「慈悲忍辱(じひ・にんにく)」(慈悲心をもって悪人からの辱めにも堪えよ!)と説いていたように、何気に「高邁(こうまい)なる精神とは何ぞや!?」といったことを、ここでは語ってもいるのであった!(……ホントかヨ!?・笑)


 そんな霊幻の「いいヤツ」ぶりは、最終回でも全開となっていた。律や仲間たちの危機に対して、「爪」の幹部連中を相手に「超能力」を使うか使わまいか、葛藤していたモブの前に現れた霊幻。彼はモブを過去の自身と同一視したかのように、


「そこまで追いつめられていたのか。ツラかったな」


と暖かく声をかけて、「爪」の幹部たちに


「弟子によけいなストレスをためさせるな!」


と絶叫してみせる!


 「爪」からの攻撃が激しくなり、何度も「超能力」を使おうとしたモブに反撃しないように説得をつづけた末に、霊幻はモブに対して、


「イヤなときは、逃げたっていいんだ!」


と叫ぶのだ!


 20世紀までの「逃げちゃダメだ!」ではなく、「イヤなときには逃げたっていい」といった言説は、21世紀以降の今の日本ではけっこう普及している……といった意味では、今となっては特に新鮮ではなくは陳腐(ちんぷ)ですらあるのかもしれない。
 とはいえ、たしかに常に「逃げてばかりいてもダメ」なことも事実だし、そういった逃げグセ・負け犬根性が身に付いている人間に対しては害毒がある言説なのかもしれない(笑)。
 しかし、いつも頑張りすぎていたり、自身の不得手な分野で勝てようもない負け戦さをしている人間に対しては「イヤなときには逃げたっていい」という言説は実に有効ではあるようには思えるのだ。


 意外と云っては失礼だが、霊幻を演じていた波岡は幼いころに保育園でいじめられ、小学校に進学するまで登園拒否をつづけていた過去(!)について、自身のブログで語っている。そんな氏が演じる霊幻が「逃げたっていい」と語ったことには、同じような悩みをかかえる視聴者には、実に説得力をもって響いていた!
 ……といったような、作品の外側にあるプライベートな情報を検知して、その作品の感動をも倍増させるようなエスパー・超能力者じみた視聴者などは実在しない以上は、あるいはそういった完成フィルム以外の要素を持ってきて、その作品を持ち上げてみせる論法自体が邪道でもある以上は、そのような陳腐凡庸でクサいロジックなどは筆者も採用しないことにしよう(笑)。



 モブを説得する霊幻が、「爪」の幹部のひとりが武器とする妖刀によって背後から斬られて倒れてしまうことで、視聴者にも衝撃を与える!


 しかし、すでにモブから「師匠にまかせる」と云って「超能力」を預けられていた霊幻が、インチキにもすぐに復活して立ち上がって、「爪」の幹部にドロップキックをカマすなどして大乱闘をはじめてしまうことは、この手の超人ヒーロー・怪人・超常現象などを扱った一連の作品のお約束ではある(笑)。


 けれど、実力的にも敵(かな)うハズがないであろう超能力者たちを相手に、


「ここはオトナのオレがなんとかする!」


などと、モブに頼もしくも語っていた霊幻が有言実行を実践することとなる、ドラマ的には実にカタルシスにあふれるストーリー展開にはなっていたのだ。



 それにしてもシリーズ終盤で、行きつけのバーから最終決戦場へと向かう霊幻自身が、まるで「爪」のボスであるかのように視聴者に思わせてしまうミスリード演出は、特撮ジャンル作品を長年追いかけてきている者であれば、『仮面ライダージオウ』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190126/p1)で坂本監督が担当した第5話~第6話で、「キーワードは流れ星」として年長マニア諸氏に対しては『仮面ライダーフォーゼ』(11年)の2号ライダー・朔田流星(さくた・りゅうせい)=仮面ライダーメテオのサプライズ登場があるのかも!? とにおわせて、そうはならなかったことを想起させるものがあった(笑)。こうした詐欺演出、いや、実に巧(たく)みなトリッキー演出でも、視聴者の興味を引いていく坂本監督の手腕もさすがといったところだ。


 「爪」のボスの正体は、霊幻がいつもモブにお使いに行かせていたタコ焼き屋台の初老の店主であった! 「ひさしぶりにいいタコが入りそうだ!」と狂喜する描写や、シリーズ終盤で霊幻が通りかかった際に屋台が不在だったりと、一応それなりに伏線が張られていたとはいえ、常にモブに温かい励ましの言葉をかけてくれていたキャラであっただけに、この意外性もまた絶妙であった。



 最終決戦の直後、


「自分が主役だとカン違いして力をヒケらかすヤツは、どこの世界でも消え去る」


などと、それは事実というよりも弱者の願望(汗)であるような、因果応報な道徳説話的なことを述べた霊幻は、ラストのナレーションでも、


「世のため人のために、ヒケらかすことなく、こっそりと力を使う超能力者のことを、『目立たないけど、いいヤツ』だ」と定義してみせていた。


 イエス・キリストも「人に隠れて善行せよ」と云っている。これは「人に見せびらかすように善行をする輩は、そこに虚栄心が宿っているからだ。あるいは、虚栄心が宿ってしまうから、それは避けるべきなのだ」といった意味であろう。
 しかし、キリスト教的な慎ましい道徳が普及していた西欧社会でも、「近代」以降は「謙譲(けんじょう)」や「謙遜(けんそん)」よりも「自己主張」が望ましいことだとされて、「事故」を起こしても「謝ったら負けだ」とばかりに謝罪などもあまりしない殺伐とした社会へと化していった(汗)。
 特にアメリカではそういった傾向が強くて、「人に隠れて善行する」ような『あしながおじさん』のような逸話は欧州とは異なりキラわれているらしい。つまり、アメリカ人はコレ見よがしにチャリティーや寄付をしたがっているのだ(爆)。これは仏教でいうところの増長・増長慢にもつながっていく行為ではあるだろう。


 戦後の日本社会も基本的には「謙遜」よりも「自己主張」を絶対視するような方向へと進んでいって、就職の面接でも恥じらいもなく自己アピールできる品性下劣な人間ごときが高く評価されるようになってしまった(汗)――まぁでも、現状がそうなっている以上は、働いて喰っていくためにも、就職面接の場では不器用な人間であればあるほど、「必要悪」として多少ウソでも調子のいいことを云っておいた方が世渡り的にはよいとは思うゾ(笑)――
 もちろん、だからといって戦前の日本社会の方が良かったとも云えない。しかし、戦前と戦後のそんな二元論だけでは、「近代」の宿痾(しゅくあ)を超えた、新しい次代の理念、あるいは時代を超えた普遍的な理念を提示することなどはできないのではなかろうか?


 どんな行為が、どんな人格が、いわゆる「いいヤツ」を指し示しているのか? 真の意味での「善」や「正義」や「モラル」とは何なのか?
 そういったことを深く考える行為こそが、「近代」の理念である「自由」や「平等」を念仏のように唱えることよりも、よりマシな社会や世界を招来できるようにも思うのだ。
 「自由」だけではミーイズムでエゴイズムで過当競争な「新自由主義」となってしまう。「平等」だけでも旧・ソ連のような共産党独裁による「共産主義社会」となってしまう。「新自由主義」や「共産党独裁」にも陥らせないための方策。それこそが「いいヤツ」や「善」や「正義」や「モラル」といったものでもあるのだ。逆にそれらがあってこそ「自由」や「平等」もその極端化を避けるためのブレーキがあって正常に機能することもできるのだ。
 つまりは、「自由」や「平等」に先立って、「いいヤツ」や「善」や「正義」や「モラル」といったモノが存在していなければならないのである!



 本作と同じくONEが原作の『ワンパンマン』もまた、かなり暴力描写が目立つ作品ではあった。
 そして、頭がツルっぱげでアメリカのスーパーヒーローの元祖・スーパーマンのようなマントをひるがえした、一見サエない感じの主人公・サイタマ青年ことワンパンマン(笑)が、パンチの一撃だけでどんな敵でも簡単に倒してしまうがために、地球上に自分の相手がいなくなったと嘆く描写があった。
 これもまた、広義では「力」の否定ではある。しかし、単なる偽善的で平和主義的な「力」の否定などではなかった。おもいっきりのアクション、つまりは暴力(笑)のカタルシスを我々観客にも味あわせてもいた作品でもあったからだ。つまり、人間とは親の教育や社会の風潮とも無関係に「暴力」「アクション」といったものを不謹慎にも楽しんでしまうような肉食動物的な本能が組み込まれた存在でもあったのだ。


 よって、「力」を否定してみせても、「力」自体がなくなることはない。そうである以上は、「力」の悪用ではなく「力」の善用こそが目指されるべきなのではなかろうか!?


 しかし、「いいヤツ」や「善」や「正義」や「モラル」とは何なのか? その定義もまた不可能とは云わずとも、厳密には困難を極めることではあるだろう。あるいは、一時は「正義」であったとしても、それもまた堕落して暴走するという危険性はないのか? といった堂々めぐりになってしまう可能性はあるのだろう。


 けれど…… 本作のモブにしろ、『ワンパンマン』のサイタマ青年にしろ、ある一定の幅で「いいヤツ」や「人格者」、少なくともチャランポランのようでも一線を踏み外すことは決してない! といった最低限の善良なる人格といったモノは実在するに違いない! といったことが、これらの作品では提示されていたのではなかったか!?


 その意味では、特定の宗教・イデオロギー・特定の国家・民族といったものともまた別に、それらとは独立して「善悪」や「正邪」といったモノは存在してはおり、平時における殺人や強盗などは基本的にはやはり「悪」ではあって、その意味では「善悪」が完全に「相対的」なモノであるとはとても思えないのだ。
 国家間での戦争や宗教・民族同士の戦争ともまた別に、もしも「善悪」が完全に相対的なモノだというのならば、政治家や犯罪者などの悪を否定したり罰したりする行為や、弱者への人助けなどの善行もまた無意味になってしまうのだ。そして、我々が愛する正義の味方のヒーロー作品をも捨て去って、それらを幼少時からおおいに楽しんできた我々自身の過去のすべても完全否定をしてみせた方がスジも通るというものだ(爆)。


 しかし、筆者には「善悪」がそこまで相対的なモノだともとても思えない。やはりどこかに「正義」は漠然とではあっても実在すると思ってしまうのだ。そして、そうでなければ、正義の味方のヒーロー作品を肯定・論評する資格もまたないのだ! とも思うのではあった……

2018.11.11.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年号』(18年12月29日発行)所収『モブサイコ100』評より抜粋)


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『境界戦機』『メガトン級ムサシ』『マブラヴ オルタネイティヴ』『サクガン』『逆転世界ノ電池少女』『闘神機ジーズフレーム』『蒼穹のファフナー THE BEYOND』『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』 ~2021年秋8大ロボットアニメ評!

(2021年秋アニメ)
(文・T.SATO)
(2021年12月25日脱稿)

『境界戦機』(1期)


 「戦記」ならぬ「戦機」というタイトルである。


 陽光に照らされた近未来の山陽山陰を舞台に、10代中盤のメカ好きでヒトも良さそうな不良性感度ゼロの少年が、偶然から中型ロボットを復元・操縦してしまい戦争に巻き込まれていくという作品だ。


 2021年秋には巨大ロボットアニメが多数出揃った――もちろん単なる偶然で、そこに神意を読みとるのは縁起担ぎがジンクスねらいの類いで、前近代的なメンタルだとも思うけど(笑)――。それらの中では個人的には本作が一番面白かった。


 メカ好きな少年が戦争に巻き込まれてパイロットとして活躍するも、そんな自身の姿に悩むというのは、云わずとしれたファースト『ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)のパターン。
 悩みはするけど、生存のために結局は戦って、巨大ロボットの性能なのか少年の才能なのかは判然とはしなくても、敵のロボットに対して「勝利」を収めて「カタルシス」、「めでたしメデタシ」といった気分が折々に発生することで、「起承転結」が明瞭な「エンタメ活劇」としても成立していて観やすい。
 このへんが同季のあまたの巨大ロボットアニメとの決定的な相違でもあり、筆者個人のあるべき「巨大ロボアニメ」や「娯楽活劇」像とも合致しており、他人にもお勧めしやすい。主人公が少年マンガ的な熱血漢ではないあたりも大衆向けにはともかくオタにはお勧めだ。


 戦争とはいっても、沖縄戦朝鮮戦争ベトナム戦争といった常に大量の砲弾が飛び交って一面が焼土化する戦争ではない。日本が諸国によって4分割されて各国に統治されている以外は、日常の生活や商業活動も継続されており、たまに散発的な抵抗や横暴な占領軍がいるといった程度だ。その意味では現今のイラクやアフガンとイコールではなくとも近しい。
 いや、彼の国の民は反米の果てにメリケンを追放したワケであり、ギブミーチョコレートで家畜人ヤプーで卑屈な我が日本民族のコレも写し絵といったところか? かのベテラン脚本家・上原正三先生ではないけれど、日本も往時に沖縄だけを犠牲にせずに本土決戦もしていた方が、膨大な人命の対価ともまた別に、たとえ誤りでも一応の理念やスジは通せたという想いで背筋をピンと伸ばせた国民性にはなれていたのかもしれないが(汗)。


 そーいう意味では、序盤は実にミニマムな戦闘しか起こらない。国境の内外周辺をウロついている感じである。ロボットの本来の持ち主であるゲリラ組織に成り行きで参加して、そこで理不尽さも込みでの同世代の厳しい同僚にも鍛えられる。敵地でも日本家屋の老夫婦にかくまわれ、占領軍の理不尽な横暴にはロボットをつい持ち出して戦ってしまう。


 つまり、リアルなミリタリーなように見せつつも勧善懲悪の快楽も提供しているのだ。山奥の廃村を難民のために整備して井戸掘りをしたり水力発電を可能にするためにロボットを使うあたりも泣かせる。むろん、最終回まで小規模な戦闘だけで済むワケはないにしてもだ。


 大文字の「天皇制」などではなく、2021年のご当地深夜アニメ『や(焼)くならマグカップも』的な田舎の伝統工芸でもある「陶器の焼き物」や「窯」といった小文字の「文化アイコン」、それらが占領軍に接収されているといった遠景でも、占領地の民の忸怩(じくじ)たる想いを点描させているあたりも大きい。


 中CMでもバンバン流されている通りで、バンダイサンライズがヒーロー性もある白い人型兵器ロボの玩具を販促するための深夜アニメでもある。顔面が人間のそれに近い味方機のロボは白や金、敵機のロボは単眼で非人間的かつ褐色の体色といったあたりも絵的にはわかりやすい。


 監督は『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181020/p1)では叩かれた羽原信義(はばら・のぶよし)――筆者個人は『2202』肯定派だけど(汗)――。同作やリアルロボットアニメ『蒼穹のファフナー』(04年)やその続編(15年)など、一見は「リアル志向」な作品でも「グダグダな膠着戦闘」は描かずに、危機に陥っても知謀や超常現象で「発散」! 「無双状態」となって「逆転勝利」! といったベタ要素を押さえる監督といった印象はあり、本作の成功要因もそこにあると私見するのだ。
境界戦機

ROBOT魂 境界戦機 [SIDE AMAIM] ケンブ 約138mm ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア BAS61868
起動
(了)


後日付記:


 ナンと! 2022年2月下旬にはロシアによるウクライナ侵攻が勃発! すると、同時に中国による台湾の武力での併合も念頭に登ってきてしまう。台湾併合を円滑に進めるためには、日本の在日米軍基地や自衛隊基地からの妨害を避けるためにも攻撃! ひいては占領! ……といった未来図も小さな可能性としては浮上せざるをえず、日本が諸国によって分割統治されているといった本作の世界観が実にタイムリーなものともなってしまった(汗)。
 しかし……。全2期(全2クール)だけでは完結不可能な膨大な情報量や世界観設定もあったハズなのに、ロボット玩具が売れなかったせいなのか、最も日本に友好的に見えていたアメリカもどきが急に最終敵に昇格して、他国と協力することでアメリカもどきを排していくかたちで、戦争自体や占領統治自体はさすがに解消させていないけど、いささか唐突で強引に「占領統治といった事態が解決するかもしれない、希望の見えるラスト」(笑)としての完結の憂き目にあってしまった『境界戦機』2期(22年)については……。
 もちろん評価はできないものの、個人的な好悪の次元ではキライになれない。ムリやりにまとめたり大状況の解決への糸口が見えた! といったエンドではなく、とりあえずの局地戦を勝ち抜けての勝利のカタルシスでひと段落といったところで、いわゆる「オレたた」エンド――「オレたちの戦いはコレからだ!」エンド――などにしておいた方がまだしもリアル・現実的だし、その方が視聴者もナットクできたのではなかろうか?(汗)


『サクガン』


 『サクガン』は「削岩」の意味。未来が舞台でもクリーンな未来ではなく、主に地底を舞台に荒くれ者の炭鉱夫たちが掘削にコレ務めている作品である。


 地表が主要舞台とは云いがたいが、テイストとしては乾いた大地を舞台に荒くれ者が跋扈して、しかしそんな彼らと丁々発止で渡り合える強気で可憐な主役ヒロインがいるというあたりは、昨2020年夏の深夜アニメ『デカダンス』などにも似通っている。しかし、本作でその位置にいるのは、可愛くても媚びた感じはまるでない手足体が棒な金髪ロングの9才の幼女である(笑)。



 すでに大卒(汗)でメカも得意な主人公幼女が飲む・打つ・買う3拍子がそろった肉体労働者の父と、ブルドーザーなどの重機に近い2脚歩行の中型ロボに同乗して活躍するというお話。


 特に拙いところはないのだが、「敵をやっつけた!」「危機を切り抜けた!」といった感覚には弱く思える。ロボットの「強さ」「カッコよさ」といった方向には焦点向かっていかないので、筆者個人の好みや美学にはやや合わないところもある。


 ググってみると、番組公式ホームページなどでもこのロボットは紹介されていないので、ひょっとしてロボットアニメとは云いがたい? バンダイ・創通(広告代理店)が製作に連なっているのに、そーいう作品ではないということか?
サクガン

サクガン

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(了)


『逆転世界ノ電池少女』


 漫画・アニメ・特撮・ゲーム・アイドル・サブカルが弾圧されている世界で、その正体はオタクでもある歌舞伎町の人気№1ホスト(爆)のメガネ少年が3頭身の丸っこい人型中型ロボットに搭乗して、日本上空に天地逆で出現した太平洋戦争に勝利して軍国主義の歴史を辿っている大日本帝国の占領軍と戦うという作品。


 そして、このホストの少年は往年のマイナーな特撮変身ヒーロー作品モドキのTVアニメを愛しており、彼自身の一応の行動原理の根っ子にもしているらしい(そのワリにはホストだが・汗)。


 こう書くと、作品の出来・不出来を検証する以前に、テーマ・題材だけで喜んでしまうような御仁たちが、「現代日本への風刺性」でうんぬん……などと高い評価を与えそうだ(爆)。しかし、「リアル」というよりも「ポップ」なキャラデザ、「3頭身のメカロボ」、敵の丸っこい量産ロボットも「可愛い犬のお巡りさん」(笑)を模しているあたりが象徴する通りで、ナンちゃって感が随所に漂っている……。という以前に、ネタが空回りしてチグハグな印象を醸しているようにも私見する。


 コレならば「虚構への耽溺は危険だから現実へ帰れ!」という理念で、「超常現象ネタ(心霊・占い・宗教)」から始まって遂には「物語」全般までをも「禁止」にした近未来社会を描いていた前季2021年夏アニメ『NIGHT HEAD 2041』も、作品的には評価はしないけど、まだマシだったようにも思えてきてしまう。


 「国家」に弾圧されてソレに抵抗する「ヒロイズム」。ソレには一理はあっても万能ではない。抵抗している自分を絶対視・自己陶酔してしまう危険性もある。むかしの左翼風に云うならば、自分に対する「弁証法的な自己否定・自己批判」がなくなってしまうからだ。


 「ロックダウン」や「管理社会」よりも、「経済」を動かしたくて、「自由化」「規制緩和」で「庶民放置プレイ」な、「経済」が回転していれば何でもイイという「新自由主義」的な「小さな政府」が90年代以降の先進各国での問題である。むしろ、「文化」や「表現」への「抑圧」は左側の「キャンセルカルチャー」や「フェミニズム」(の全部ではない)からの動きの方が強い。それなのに20世紀前中盤までの「警察国家」「軍事国家」に対してだけ有効だったようなだけの「批判」にいまだにとどまっているのだ。


 そのへんをも警戒・風刺するような作品こそが真の意味での現代的な作品なのだとも思うけど、まだまだそーいう作品は登場しませんかネ?――安倍ちゃん・中国を双方ともに揶揄していた河崎実カントクのバカ映画『地球防衛未亡人』(14年)はその意味ではエラかった(笑)――


 まぁ、主役ロボットの動力が「電池少女」なる人間(?)の美少女キャラで、その充電もオタク・サブカル文化の享受だといったあたりで、どんなに本作を社会風刺的な意味で正当化しようともムダな抵抗なのだけど(笑)。


 それでも、ロボットの「起動」「発進」「出撃」や「戦闘アクション」「必殺ワザのカタルシス」などで、「起承転結」のいわゆる様式美的な「ワンダバ感」、メリハリが強調されていれば、それだけで盛り上がるし楽しめもするのだけれども、私見ではそーいう感じの作りでもない。


 本作も番組公式ホームページを覗きに行くと、敵味方の3頭身ロボットたちが紹介されていない! ウ~ム。ロボットが看板の作品ではなくても、紹介くらいはするべきなのでは?(汗)
逆転世界ノ電池少女

TVアニメ『逆転世界ノ電池少女』オリジナルサウンドトラック
(了)


マブラヴ オルタネイティヴ』(1期)


 現実世界とは20世紀中葉からパラレルな分岐並行歴史を辿った世界。火星や月を占拠していた、意思疎通が不能で攻撃的な地球外生物ことBETA(ベータ)の大群が70年代前半の地球に襲来!
 それから数十年間、世界各国はこの異生物との戦争に明け暮れるも、劣勢になっており人口もついに半減。異生物が次第に地上での勢力圏を増す中で、人類は高速機動の人型中型ロボットを建造して辛うじてコレを凌いでいる。


 90年代末期にはついに我らが日本にも侵攻! そんな世界で男子高校生であろう主人公と同世代だろう少女たち複数名が寄宿舎で暮らして、時に空飛ぶロボットでも出撃して敵性生物との壮絶な戦闘を繰り広げるという作品である。


 10代の少年少女がパイロットだという設定は、毎度おなじみこのテの作品恒例のインチキなのだが(笑)、思春期の若者たちのイイ意味でのバカバカしい「試行錯誤」やその「成長」が描けるという意味では、ジャンルの歌舞伎的な様式美でもある。


 敵も人間ではなく、ヒト型の頭部に眼はないけど歯グキがむき出しの喰いしばった歯がある巨人であったり、人間の両脚の直上にカタツムリの巨大な黒目がちの両眼だけが付いた小人だったり……。なまじ人間に近い部分があるだけに逆に意志疎通不能感がデザイン的にも際立つ――大ヒット漫画『進撃の巨人』(09年・13年にTVアニメ化)にも通じている趣向だけど、本作の原作ゲームの方が実は先だった!――。


 そーいう意味では「巨悪に立ち向かうヒロイズム」で、「ヒーローロボ寄り」/「リアルロボ寄り」のいずれでも「ロボットアクション」によって局所的にでも「勝利の快感」の「ヤマ場」を作れるハズなのだが、そーいう感じにはなっていない。
 原作ゲームがそーいう戦闘が膠着したノリなので(?)ソコは変えないということなのだろうか? 逆に云えば、本スジは同じでも、ソコさえ微調整して「盛り上がり」を作ることができれば万人向けに観られる作品になるハズだとも思うけど、そーではないあたりで個人的には歯ガユい。


 筆者もオタなので、本作と世界観を共有するロボットアニメ『トータル・イクリプス』(12年)や『シュヴァルツェスマーケン』(16年)などもお勉強的に当時も観てはいるし――ツマらなかったけど(爆)――、作品世界の理解も一応はできる(笑)。しかし、コレらの作品とも同様に本作もまた世間一般的には「一見さんお断り」な作りである。よって、個人的な好悪や美学で云わせてもらえば、「好みではない」(汗)。


 20世紀の『ガンダム』オタクや『エヴァンゲリオン』オタクのように「設定フェチ」な人種は良くも悪くも絶滅寸前危惧種となって、アニメオタクも「萌え4コマ動物化」して久しい。だから、こーいう作品にはドーやっても人気が集まらないであろう。もう少しだけ大衆や今のオタにも媚びてわかりやすく作っても罰は当たらないであろうに。


 まぁ、『トータル・イクリプス』も全話の予算を使い切るかのような#1~2における壮絶なBETA日本侵攻や、左右の政治的な争点にはならないような由緒ある京都の古寺・古拙などを次々に破壊して、本作『オルタネイティヴ』の#1でも、古き良き佐渡島が同様の憂き目に遭うサマを見せつけることで、物理面のみならず心理面・文化面でも蹂躙感&喪失感を出すあたりは実にウマい――むろん、仮に外国が舞台であれば、ココには彼の地の文物を代入すればイイ――。


 しかし、この序盤にはまったくつながらないかたちで、主役級の少年少女キャラが登場してくる序盤以降の各話の平穏ぶり&テンションの低さがなぁ……。


 さらに加えて、本作には「並行世界」ものの要素もある。主人公少年は分岐した未来から現時点に戻ってきて、未来の知識を基に歴史をオルタナティブ(代替的)にヤリ直そうとしているのだ。筆者もオタクなので、やはりそういったねらい自体は即座にわかる。
 しかし、原作ゲームがそーいう導入部で、その大元の原典ゲームを過半のユーザーはプレイ済だろうと略したモノであって(?)、かつ本来の大元のゲームのアニメ化はせずに、その分岐・並行した歴史の側だけをアニメ化したのだろうから、少々の説明的なアレンジなどは必須だったのでは?


 #1(厳密には#2)の前半Aパートで主人公少年がいきなり朝に起床して、そこで前世を冷静に回顧するかたちでの世界観説明などではなくって、1話をまるまる使って前世の未来での壮絶な戦争体験などを主人公の主観体験的に描いて、そこでの敗北&未練の果てに、奇跡の過去への転生も果たせてしまった! そして、その過去の世界でも将来に待ち受けているであろう破滅を回避するための決意も新たにする! といった主人公の行動原理の確立を描いた展開でもあれば、作品の腰の据わりもよくなって感情移入もしやすくなったとは思うのだ。
 しかしそーいうアレンジは、原典ゲームの信者さま的には改悪ですかネ?(汗) 原典自体が約20年も前に誕生したゲームなのだから、コアユーザーも中年化して枯れてしまって、もうクレーマー的にクチうるさく云ってくることもないのでは?(笑)


 そーいった物語や登場人物の行動原理のツボを押さえていないので、あとは味気ない出来事の羅列がつづくといった印象。いやまぁ、原典はリアルロボットアニメの皮をかぶったギャルゲー(ム)・恋愛シミュレーション・ハーレムラブコメだから! といった反論はあるのだろうし、ソレもわかるのだけど、それはそれとしてそういった要素を押さえつつも、同時にもう少し大衆向けなりオタの中でのライト層向けにも開けたかたちで作劇できないモノなのか?


 ソコをも押さえつつ、曲がりなりにも巨大ロボットが存在する世界観であれば、ソレに必然性を持たせるためにも「ロボットアクション」をストーリー的な「ヤマ場」にした方が間口を拡げられるハズだとも思うけど。ややハイブロウなアニメを放映しているフジテレビ深夜の「プラスウルトラ」枠でこーいうエセ高尚アニメを放映するというのは……(以下略)。
マブラヴ オルタネイティヴ

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(了)


――後日付記:本作1期終盤では、宇宙から来た侵略的外来種とのバトルをそっちのけで、本作における日本が近代市民社会化されつつも、征夷大将軍徳川将軍家モドキと天皇家モドキに戦前の226事件における憂国青年将校たちのような陣営が三つ巴や四つ巴で抗争して、そこに一応の友軍でもある米軍もカラんできて、反米保守vs親米保守の戦いといった様相をも呈していく(といっても、90年代末期のリアルロボアニメ『ガサラキ』(98年)終盤など、前例はなくもない)。
 しかし……。題材としては面白いのだけど、序盤にそーいうネタが伏線としてまったく散りばめられていなかったので実に唐突で、『ガサラキ』同様に浮いてもいるし(笑)、ドコとなくナンちゃって感も漂っていて、説得力も風刺性もナイような(汗)――


『メガトン級ムサシ』(1期)


 『妖怪ウォッチ』やサッカーもの『イナズマイレブン』にプラモ製作もの『ダンボール戦記』などのゲーム・アニメを2010年前後からオタク間ではなく児童間で大ヒットさせてきた日野晃博(ひの・あきひろ)が率いるゲーム会社・レベルファイブ
 ヒットメーカー・日野は、親子孫と主役を変えていくTVアニメ『機動戦士ガンダムAGE(エイジ)』(11年)なども任されているが、同作はヒットはしなかった。
――個人的には本家・富野ガンダム機動戦士ガンダムF91(フォーミュラー・ナインティワン)』(91年)や『機動戦士V(ヴィクトリー)ガンダム』(93年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990803/p1)での世代を紡ぐ家族賞揚ネタを発展させたモノとして高く評価している。しかし、日野が脚本も務めるのであれば、ガチの子供向け勧善懲悪『ガンダム』などを作ってほしかったのに!――


 そんな同社のゲームが主導で、メディアミックスの一環でもある巨大ロボットアニメが登場。
 90年代OVAのリメイク版『ジャイアントロボ』や『THEビッグオー』に00年代のリメイク版『GR ジャイアントロボ』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080323/p1)などの主役ロボットたちのように、巨大感・重厚感を強調するために、「前腕」や「膝下」などの末端が肥大化したデザインで、アレで殴られたり蹴られたりしたら質量×運動エネルギーで威力も倍増しそうな直感的な強さは感じられる。
 巨大ロボットは今どきの作品なので、もちろんCG表現なのだが、セル画ライクな2D-CGではなく金属チックな質感を表現した3D-CGであるのが独特。


 主役少年は学生服の下に赤いシャツを来た熱血不良中学生らしくて、警察の留置所内(!)にいるシーンで初登場(笑)。そこに主人公と同じ学生服をキチンと着こなした眼鏡のインテリ風でも不敵で胆力はアリそうな少年がナゼだか身元引き受けに来て、連れていった先で学ラン制服の大柄な金髪浅黒不良少年と喧嘩をさせる(!)といった導入部である(笑)。


 少年漫画・ヤンキー漫画的な不敵なキャラばかりが登場して、ファースト『ガンダム』やオタ向け作品のような繊細ナイーブさはカケラもないのだ。キャラデザも繊細な萌え曲線などではなくて児童向けのシンプルで直線的な描線なのだけど、ソレはソレでそーいうモノとして了解ができるのだし、この作品における主要キャラはこの3人だといったことを明示もできていた#1であった。


 眼鏡少年はこのふたりを秘密基地(!)へと連れていって真相を明かす。ここは平和な日本かと思えば、この世界は実は地底の箱庭世界であり、地表は宇宙からの侵略ですでに荒廃! 敵によって地球自体も内部が空洞へと改造!
 この悲惨な現実に堪えられずに心を病む者が続出したために、やむをえず市井の庶民たちを洗脳したのだと。そして、適性がある君たちに巨大ロボットを操縦して侵略者に立ち向かってほしいのだと。
 驚愕しつつも半信半疑の主人公に、ダメ押しで妹&両親が敵襲で死亡した際の悲惨な記憶を甦らせることで、彼の背中も押していく。


 ……といったあたりで、キチンとした作劇的な段取りを踏んでいくことで「戦う動機」も確保ができている。その直後に都合よく敵のロボット軍団が襲来! 彼らがすぐに巨大ロボットで発進していくのはやはり物語的なインチキではある(笑)。
 しかし、巨大ロボットでは戦わないまでも、勇ましく出撃していくサマまでは描いてくれないと、ロボットアニメとしての作品のエッセンスもシンボライズすべき#1としてはピンボケにはなる。すでに実は睡眠学習を施されていたというエクスキューズも付けることで、#1の終盤はグイグイと戦闘シーンへの転換へと畳み掛けていくのだ。


 秘密基地の管制室に務めていたのは商店街のオジサン・オバサンだったというシチュエーションは、腐れオタク的には巨大ロボットアニメ『蒼穹のファフナー』(04年)を想起するけど、前例があるからダメだとは云わない。#2からは敵の宇宙人軍団にも、いかにも悪者そうで呪術テイストな悪のヒエラルキー組織の幹部たちも登場。


 で、ココまでホメてきてナンだけど、それではムチャクチャ本作が面白いかというと、個人的にはそーでもない。単なる筆者個人の好みの偏りが大なのであろうけど、ヒーローロボットというよりかはややリアルロボットもの寄りな戦闘シーンのノリや意匠などに、プチ・ノレない感があるのだ(汗)。


 戦闘時のコスチュームが白くてブ厚い宇宙服のような、スマートな3原色ではなかったとか、主役の巨大ロボットもデザインは基本的にはあのままでイイけど、そこにさらに赤いラインでも入っていれば、ヒーロー性が高まってナットクして観られるような気はする――あくまでも筆者個人が(笑)――。
メガトン級ムサシ シーズン1特別篇

メガトン級ムサシ 超弩級シリーズ メガトン級ムサシ
(了)


『闘神機ジーズフレーム』


 オープニング主題歌テロップの製作・プロデューサー陣を中国人だけが多数連ねており、ググるアニメ製作会社も中国の会社なので、中国主導なのであろう巨大ロボットアニメ。脚本もエンディング主題歌テロップでは中国人だが、公式ホームページでは日本のベテラン勢であり、絵コンテ担当者も日本人の中堅クラスになっている。ドーいうこと? 作画スタッフだけは完全に中国勢だとも私見


 しかし、日本アニメとはもう区別がつかない。2010年代中盤からは中国のハオライナーズ社製作の深夜アニメがほぼ毎期に登場するも#1切りしてきた(汗)――台湾や韓国製の深夜アニメの方が良質だし、日本製のアニメだと云われても違和感がナイくらいであった――。しかし、2021年夏季の中華ファンタジーの深夜アニメ『天官賜福(てんかん・しふく)』あたりだと作画&動きも超一級に仕上がっている。
 本作も絵的には一級ではないけれども美麗な部類だし、街の看板が中国語だという違いだけでしかない。


 キャラデザもデッサン骨格しっかり系ではなく淡泊な萌え系で、一般向けにはともかく日本のオタ向けには万全だ! そう、美少女だらけのロボット部隊を描くロボットアニメなのである。


 もちろん、少女だけのロボット部隊であることの言い訳も付けている。宇宙から襲来してきたクラゲ状生物の大群に立ち向かえるのは、世界各地の古代遺跡から発掘された巨大ロボットで、異星人との混血の子孫でもあり少女の年齢にある彼女らだけがコレらのロボットを操縦できるのだと(笑)。


 だからといって、強敵と戦うロボット部隊が特に猛々しくもなくて体育会系でもナイような一般少女が応募するような人気職業になるのか? とは思うものの、キャラデザ的にもリアリズムが優先される世界観ではないので、ソコはサクサクとテンポよく流すのが演出のマジックである。


 とはいえ、韓流ドラマ『冬のソナタ』(02年)#1でもやっていた、寝坊して「遅刻、遅刻ゥ~」といった、往年の人気マンガ『サルでも描けるまんが教室』(89年)でも揶揄的に指摘された少女マンガの鉄板描写で、「温かい家庭」に生まれて「優等生ではなく気さくなフツーの女子高生」でもあることを活写。
 その上で彼女の姉も実はロボット乗りで行方不明であることをほのめかしていくかたちで、彼女の人となり&ロボット乗りに志願する動機を自然に手堅く描いてもいく。
――プロペラユニットを両脚にハメて戦う深夜アニメ『ブレイブウィッチーズ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201101/p1)や近作アニメ映画『フラ・フラダンス』(21年)などでも見られた設定だけど、主役の動機固めとしては普遍の王道!――


 しかし、筆記&面接の入隊試験には不合格となることで彼女の「凡人」設定をダメ押ししつつも、繁華街にて宇宙クラゲの大群の襲撃に巻き込まれて大惨禍となったところで、飛来してきた巨大ロボットの牽引ビームに友人ともども収納。
 360度モニターの操縦室内で敵を拒絶するかのように自身の左手を振り払ったら、脳波コントロールか巨大ロボットの左手からも薙ぎ払うかのようにビームを斉射されて宇宙クラゲ群を一掃! といったあたりで「戦闘」&「勝利の快感」をも味あわせてくれるのだ。


 てなワケで、特に志が高い作品ではないけれど、ムダに無意味な難解さはカケラもなく、見晴らし・見通しのよい作品にはなっている。まぁ、厳しい女上官がロボット部隊の宣伝も兼ねてアイドル風のPV(プロモーション・ビデオ)を披露しているとか、おかしなところもあるけれど(笑)、絵柄的にもリアリティーの喫水線は低いので過剰には気にならない(多分)。競馬を擬人化した『ウマ娘』でレースが終わるとアイドルユニット風のPVが流されるようなモノだろう!――そうなのか?(汗)――


 ただまぁ、もちろん一般層が観たらばキツいアニメではあろうけど、オタが観る分には及第点ではある。でも、ズバ抜けて面白い! とまでは云えないあたりで、他人にはお勧めしにくい。
闘神機ジーズフレーム

(了)


蒼穹のファフナー THE BEYOND 第十話・第十一話・第十二話』


 00年代中葉に意識高い系のロボアニメを求める当時の青少年オタ層には程々に人気を集めた巨大ロボットアニメ『蒼穹のファフナー』(04年)。やや年下の世代が後輩として登場する続編『蒼穹のファフナー EXODUS(エグゾダス)』(15年)も製作されて、さらなるその後を描いた『蒼穹のファフナー THE BEYOND(ザ・ビヨンド)』が2019年から3話ずつ劇場公開されている。


 要約してしまうと、まだ初作当時は強烈な残滓があった巨大ロボアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)モドキで、「あなたはそこにいますか?」と精神感応しながら融合しようとしてくる宇宙から来た不定型巨大生命体群に対して少年少女が操縦する巨大ロボで立ち向かうといった作品内容であった。


 直近に若年女性オタにも大人気を博した『機動戦士ガンダムSEED(シード)』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060324/p1)を手掛けた平井久司(ひらい・ひさし)による同系キャラデザも採用して、人気を取りにも行っていた。筆者個人の評価は前半第1クールはツマラない。メインライターが今を時めく人気小説家・冲方丁(うぶかた・とう)に変更になった後半第2クールは、この動く孤島で適合者である少年少女たちをロボットで戦わせざるをえない島民兼、防衛組織のオトナたちのありうべき心情も描いていくことで持ち直して面白くできていたといったモノ――製作内部でも悶着があったのだろうと勝手に邪推(汗)――。


 続編『EXODUS』ではその名の通り、「出エジプト」な預言者・モーゼの逃避行といった内容に、若手の後輩の活躍と初作の正副主人公を頼れる先輩として活躍させるといった内容になっていて、フツーに面白く観られた――ネット上では30分前の枠で放映されていた『ガンダム Gのレコンギスタ』(14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191215/p1)の口直しとも云われていた(爆)――。


 しかし、本作『BEYOND』では一転。個人的にはイマイチどころか観ていてタイクツで苦痛といった感想を抱いている。その理由は何なのか?


 本シリーズでは小ムズカしいことをやっていたり巨大ロボットが苦戦をつづけても、最終的には搭乗者に超常的な進化が起きて「大逆転」! といったリズムがあることでメリハリが付いていたと思うのだ。しかし、本作にはそれが乏しいのだ。脚本は冲方丁で同じである。よって、筆者は初作と続編の監督を務めた羽原信義(はばら・のぶよし)が降板したことによる、戦闘演出の微差に理由を求める仮説を立てている。
蒼穹のファフナー THE BEYOND

(了)


『EUREKA(エウレカ)/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』


 00年代中葉に意識高い系のロボアニメを求める当時の青少年オタ層には程々に人気を集めた巨大ロボットアニメ『交響詩篇エウレカセブン』(05年)のリメイクアニメ映画『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』シリーズ第3弾にして最終作。
 第2弾『ANEMONE(アネモネ)/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211031/p1からして、TVシリーズとはまったくパラレルの内容であったが、同作ラストで地球と『エウレカセブン』の世界の一部が融合したあとの世界の10年後を描くといった作品である。


 そもそも、原典では舞台となる世界は地球人が移民した植民惑星であったハズだが、本映画ではタイムパラドックスうんぬんの議題などは一切出ずに、単純に相手も地球人だと名乗る異世界人扱いで話が進行している。まぁ、原典も故郷の地球が大きく話題に登るような「宇宙SF」ではなかったし、映画前作でもTV・漫画・小説をすべて並行宇宙として肯定する旨のメタ表現がされていたので、本映画も現代と未来ではなく並行宇宙の接合ということでイイのだろう。話題にしながらナニだけど、筆者もソコは気にしていない。


 それで、本作ではタイトルの通り、原典では青緑色のショートヘアだったメインヒロイン・エウレカ嬢が主人公で、10年が経ってリアルなキャラデザの成人した8頭身の女性となって、近未来の地球というかドイツで特務機関の人間として働いており、自身と同じ青緑色髪で異能力も持っている少女を警護するために逃避行を重ねていく……といった内容となっている。もう原典とは完全に別モノ作品ではあるけど。


 とはいえ、同じく原典とはまるで別モノでも傑作に思えた映画前作と比するとかなり見劣りがして、フツーよりかはやや上程度の作品ではあっても、個人的な好みで云うならば、さほどには面白くなかった(汗)。


 でもまぁ、原典の体育会系気質で怒鳴ったり鉄拳制裁をしたりといったオトコくさい部分を、当時の意識高い系のオタクたちは華麗にスルーしていたようには思うので(爆)、ヒロインズに特化したリメイクは商業的には正しかったとは思うのだけど。
EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション

交響詩篇エウレカセブン
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.81(21年12月30日発行))


[関連記事] ~巨大ロボットアニメ評

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創聖のアクエリオン』序盤寸評 ~2005年春アニメ評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20051021/p1

鉄人28号』 ~2004年春アニメ評! 『花右京メイド隊』『美鳥の日々(みどりのひび)』『恋風(こいかぜ)』『天上天下

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040407/p1

超重神グラヴィオン ツヴァイ』 ~2004年冬アニメ評! 『超変身コス∞プレイヤー』『ヒットをねらえ!』『LOVE♡LOVE?』『バーンアップ・スクランブル』『みさきクロニクル~ダイバージェンス・イヴ~』『光と水のダフネ』『MEZZO~メゾ~』『マリア様がみてる』『ふたりはプリキュア

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1

宇宙のステルヴィア』『ASTRO BOY 鉄腕アトム』 ~2003年春アニメ評! 『妄想科学シリーズ ワンダバスタイル』『成恵(なるえ)の世界』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040403/p1

ウルトラマンデッカー前半総括 ~熱血でも『ダイナ』と別モノ!  防衛隊のGUTSグリフォン・テラフェイザーも敵怪獣を撃破!

『シン・ウルトラマン』徹底解析 ~賛否渦巻くワケも解題。映像・アクション・ミスリードな原点回帰・高次元・ゾーフィ・政治劇・構造主義・フェミ!
『ウルトラマントリガー』最終回 ~新世代ウルトラ各作終章の出来も含めて賛否総括! 光と闇を包摂する真理!?
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 『ウルトラマンデッカー』(22年)がシリーズ後半に突入記念! とカコつけて……。『ウルトラマンデッカー』序盤合評をアップ!


ウルトラマンデッカー』前半総括 ~熱血でも『ダイナ』と別モノ! 防衛隊のGUTSグリフォン・テラフェイザーも敵怪獣を撃破!

(2022年8月~9月脱稿)

ウルトラマンデッカー』前半合評1 ~若き力が未来を切り拓く!

(文・J.SATAKE)


 ウルトラマンシリーズの最新作『ウルトラマンデッカー』(22)は前作『ウルトラマントリガー』(21)の世界を引き継いで展開する物語だ。
 マルチバース設定を取り入れてそれぞれが別世界での物語としてきた近年のニュージェネレーションウルトラマンであるが、『トリガー』が『ウルトラマンティガ』(96)の物語を基に製作されたこと、そして『ティガ』の続編でもある平成ウルトラマン第2弾『ウルトラマンダイナ』(97)をモチーフに本作が作られるならば自然な流れではあるだろう。
 しかし基本は同じでも登場するキャラクタ-が違いそのリアクションも変化してゆく。新たな主人公たちはウルトラマンそして怪獣とどのように向き合ってゆくのか。初期編から筆者が気になったところをあげてみたい。


 『トリガー』の物語から7年後。怪獣の出現も途絶えて火星への旅行も盛んになった地球は「ネオフロンティア時代」へと向かおうとしていた。
 そこに突如あらわれた怪物体・スフィアの攻撃! 街や人々を容赦なく襲うスフィアと怪獣・スフィアザウルスに怒りを燃やし立ち向かう青年・アスミ カナタ。絶体絶命の彼を「光」が救う。そして巨人から「力」を託されたカナタはウルトラマンデッカーへ変身する!


「輝け! フラッシュ!!」


 ウルトラマンデッカーのデザインはダイナをもとにしながら「アシンメトリー」(非対称)をポイントにしているのが印象的だ。ダイナのボディカラーを踏襲しながら身体各所に左右非対称に装甲を施す。そして胸まわりと頭頂部に「宇宙にきらめく星の画」を配置! これは造形上の差異だけでなく配色でのさらなる印象の変化を求めた挑戦であろう。
 さらにカラータイマーは胸中央ではなく左胸にセットされている。これはアシンメトリーにこだわりすぎたかも、という気もする。
 以前にも『ウルトラマンナイス』(99)が同じく左胸にカラータイマーがセットされていたが、人は重要なものがこれまでと同じところにないとちょっと不安になってしまうためだろう。


 変身アイテムであるディーフラッシャーはダイナのリーフラシャーと同じスタイルに寄せつつ、ウルトラディメンションカードでデータをスキャンすることでデッカーがフラッシュ・ストロング・ミラクルへとタイプチェンジする機能が付加されている。
 時代の変化で商業的要請の産物でもあるわけだが、怪獣カードによってデッカーがカプセル怪獣ミクラスを召喚するシーンが登場! 怪獣を各作品独自のシステムで変換した能力を利用する、といったパターンが近年多かったが本作ではストレートに助っ人怪獣として参戦。
 デッカーとミクラスが協力して怪獣を押し負かし、コンビネーションでダウンさせる! これからも「切り札」として要所で活躍してほしい。


 本作では地球平和同盟TPUは怪獣対策から宇宙開発へと主力を移しており、防衛の最前線であるGUTS―SELECTも省力化。
 汎用戦闘機ガッツファルコンはもちろん航空母艦ナースデッセイもリモート操艦となっていたが、スフィアの地球侵攻で全域にエネルギーフィールドが張られスフィアが融合した怪獣によって電波障害が発生。
 これに対抗するための人材が必要となったという設定で、新たなGUTS―SELECTに若い力が選ばれる!


 主人公・カナタはせんべい屋の息子。じいちゃんとともに家業にはげむ快活な青年だ。瓦礫に挟まれた人を救助しようと奮闘、その元凶であるスフィアに無謀にも突っ込んでゆこうとする血気盛んな性格でもある。
 キリノ イチカは宇宙飛行士を目指しTPU宇宙開発課に所属。押しに弱い性格だが、幼いころから始めた柔道で鍛えた精神力でチームをまとめる役もこなす。
 リュウモン ソウマは怪獣災害でTPU隊員に助けられたことでこの道を選んだ。寡黙だが着実に任務をこなす、内に秘めた情熱はカナタにも引けはとらない男だ。


 スフィアの襲来を機にTPU訓練校で経験を積んだカナタは、イチカとソウマとともに新生GUTS―SELECT入隊の最終試験を受ける。怪獣出現で試験は中断となっても彼ら3人は協力して目の前の被災者を助けるために自分たちができる最大の努力を惜しまない。


 その勇気と行動力を見込んで正隊員へと昇格させたのがムラホシ タイジ隊長だ。危機的な状況だからこそまだ未熟だが若い力を育てて、また次の世代へとつなげるためにカナタたちを選んだ彼。
 訓練校校長でもある彼はパイロットとしての経験もあり、どんな場面でも生命を大切にし生還することを貫こうとする精神の持ち主だ。ウルトラマンの存在には幾分懐疑的であり冷静な判断を下す指揮官でもある。東映仮面ライダーシリーズにも出演している黄川田雅哉氏がどのような隊長を演じるのか期待したい。


 再び有人機となったナースデッセイのオペレーションと操舵手となったのはカイザキ サワ副隊長。怪獣研究室で研究を続けてきたが、スフィア襲撃の人材不足を補うため最前線へ立つことに。
 ムラホシ隊長と旧知の仲のようだが、ウルトラマンへの希望を隠さない。そして彼女は新人3人を引っ張る姉御的キャラも持ち合わせている。これは役を担当する宮澤佐江氏が出演した映画『ウルトラマンサーガ』(12)での地球防衛隊チームUのメンバー・サワのキャラクターの影響もあるのだろう。


 新生GUTS―SELECTの技術開発を担当するのはアサカゲ ユウイチロウ。ガッツファルコンのリモート操縦を担当するAI=HANE2を開発し、新型機であるガッツホークを導入したのも彼の功績だ。
 映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10)でウルトラマンゼロと一体化した青年・ランを演じた小柳 友氏が若き科学者を好演。過去作品のキャストが脇を固めるこのシフトは長年のファンには楽しく嬉しくもあることなのだ。


 AI=HANE2は『ダイナ』のハネジローが元になっている。元のキャラを球形に落とし込んだメカデザインが可愛い。そしてカナタが戦いを通して理解を深め彼をハネジローと名付けるのだ。親しくなったからと急にタメ語口調にキャラ変するハネジローも楽しい!
 そしてカナタがウルトラマンであることを唯一打ち明けている関係も『ダイナ』の主人公アスカとハネジローとリンクしている!


 新型機ガッツホークは三角翼ステルス機のようなスタイルに大型のアームが特徴だ。さらにガッツファルコンの上部にガッツホークが合体! ホークの機体が180度展開することでファルコンがサイズアップしたバランスとなるガッツグリフォンが完成するのだ!!
 これにより2機分のエネルギーを使った攻撃も可能となる。そしてカナタとハネジローがパイロットなのでカナタがデッカーに変身した後のアリバイ工作もやりやすくなっている! 初回はハネジローの声まねがAIなのにグダグダだったが、理屈つけとコメディシーンを同居させる好シーンであった。


 登場怪獣はスフィアザウルスは新デザインであったが、ゴモラがスフィアと融合したスフィアゴモラは改造キャラ、次のモンスアーガーはそのままと既存の怪獣の再起用は継続されている。
 ただ、再登場でもその怪獣の特性を活かした展開・バトルが用意されていればファンは納得してくれると思う。近年はそうした演出も増えており継続して製作されているメリットではあろう。
 反面、ナースデッセイやガッツファルコンがそのまま使われるのは続編でなければ難しかったわけで、その魅力をアップさせるガッツホークのアイディアや限られた予算を活用するスタッフには敬服するしかない。


 ミニチュアや自然を利用したオープンセット、被写体を多様に捉える柔軟なカメラワークが実現できるカメラ機材の進化とそれをサポートする最新のCGワーク。特撮作品だからこその複合的に絡み合う撮影素材を組み合わてゆく画作りは相当な労力が求められる。


 これからもウルトラマンシリーズ特有の巨大怪獣が巻き起こす事件とそれに立ち向かう人間とウルトラマンが織り成すドラマをしっかりと見せていただきたい。


(了)


ウルトラマンデッカー』前半合評1 ~7話までのところは好印象!

(文・仙田 冷)


 正直、2022年7月2日放送の『直前スペシャル』が、個人的にはあまり視聴意欲をそそる出来ではなかったので、あまり期待もせずに見始めたのだが、これがけっこう面白い。未見でたまっていた回をほぼ一気見して、8月27日放送の第7話「希望の光、赤き星より」まで追いついた。というわけで、思ったことを箇条書き式に書いていきたい。


・主人公アスミ・カナタの実家の描写を筆頭に、何だか皆、原典の『ウルトラマンダイナ』(1997)に比べて、地に足がついている印象がある。第2話「決意のカナタ」では、きっちり訓練をした上で、GUTS-SELECTのメンバーを選んだりして。
 ネオ・フロンティアをテーマとした設定で皆が宇宙ばかり見ていた『ダイナ』と違い、宇宙から飛来したスフィアが張ったバリアで、地球と宇宙との行き来ができなくなったという設定で、まずは足元を固めざるを得ない本作との作風の違いということか。


・人物描写はけっこう丁寧。『ウルトラマンA(エース)』(1972)の主人公・北斗星司っぽいところがあるカナタと、同じく『A』の山中隊員と『帰ってきたウルトラマン』(1971)の西田隊員という、主人公と敵対するイジワルな隊員を足して2で割ったようなリュウモン・ソウマ隊員、そのふたりをまとめつつ巧みに制御するキリノイチカ女性隊員という感じで、キャラ立ちがうまくいっている。さて、最後までその調子で完走できるか?


・謎の敵の襲来によって本来、宇宙開発を目指していた人材を戦闘に狩り出さざるを得なくなる…… なにかデジャブだなと思ったら、思い出した。00年から01年にかけてテレビ東京の深夜枠でやっていたロボットアニメ『アルジェントソーマ』(2000 サンライズビクターエンタテインメント)だ。ぶっちゃけ、その一点以外は、あまり似ていないのだが。しかし、スフィアの襲来の理由が、同作のエイリアンのようにいささかしょーもない(失礼!)ものだったらどうしようとは思った。詳細は検索されたし。


・第1話のラストでスフィアのバリアによって封鎖された地球。これは今の世界を覆うある種の閉塞感のメタファーではないかと思える。まだ未来に希望を持つことができた『ダイナ』の当時と違い、今はどっちを向いても希望の「き」の字もない。自己保身しか頭にない人間のクズばかりがでかい面してのさばりかえり、力ある者は力にものをいわせて自分勝手なことばかりして世界を混乱に陥れる。力なき者はただ踏みつけにされ、振り回されるだけ。今はそんな時代だ。
 そんな閉塞感を、デッカーはどう破ってくれるのか。その辺が、本作の最終的な評価を決める気がする。


・第5話「湖の食いしん坊」。宇宙旅行中に事故で地球に漂着し、そこでスフィア事変に巻き込まれ、仲間と連絡が取れなくなったピット星人の少女が登場する。彼女が飼っていたペットのエレキング(エリー)が、地球の環境下で巨大怪獣と化し、変電所を襲撃。その事件をきっかけに、GUTS-SELECTのキリノイチカ隊員は、ピット星人の少女と交流を持つが……って、なにかデジャブだなと思ったら、もしかしてこれは空飛ぶ空中戦艦の活躍を描いていた『戦え! マイティジャック』(1968 円谷プロ・フジテレビ)第16話「来訪者を守りぬけ」に対するアンサーエピソードでは!? と思い至った。
 ……まあ、本話のスタッフが『戦え!MJ』を意識していたのかは不明だが、本作では本作なりのほっこりするオチがついている。『戦え! MJ』のような悲惨なことにはなってないので、そこはご安心いただきたい。


 これは他同人誌での某ライターの指摘だが、本作の場合、スフィアのバリアのおかげで、殺す必要のない怪獣を宇宙に放逐するという手が使えないので、この回で初登場したデッカー・ミラクルタイプの設定がその辺で生かせるのではないかという指摘があり、その後の本編を見て、怪獣をミラクルタイプの能力でミクロ化させるオチとしており納得した。実はウルトラマンレオも同じようなことをしている。詳しくは『ウルトラマンレオ』(1974)第10話「かなしみのさすらい怪獣」を見てほしい。さらに、ウルトラマンジョーニアスやウルトラマンエイティも同じことをしている。『ザ☆ウルトラマン』(1979)第5話「パッセージャー号地底突破!!」や『ウルトラマン80(エイティ)』(1980)第15話「悪魔博士の実験室」を確認してほしい。
 しかし本編を見終わってほっこりした後に、予告編で「特別総集編 マルゥルの帰還」とやっていて、この世界ではメトロン星人マルゥルのように防衛チームに宇宙人の協力者がすでにいるわけだから、宇宙人=侵略者と見なされるような事態はまずあり得ないわけかと気がついた。これはしたり。


・これも他誌での別のライターの指摘だが、第1話「襲来の日」と第2話の間で1年の時間が経過していることについて、その間スフィアの侵攻はなかったのだろうかという指摘があった。そこでその辺を注意して見ていた。一応、第3話「出動! GUTS-SELECT」で、地球を覆うバリアはスフィアが自らを粒子状に分解して再構成したものだという説明があった。しかし、同話でスフィアソルジャーが怪獣ゴモラと融合する描写があるので、スフィアがバリア化していたことが侵攻がなかった理由だとするのはちょっと弱いかなと。
 それで、第7話を見ると、どうやらスフィアは火星の攻略に意外に手間取っているらしい。地球をバリアで覆ったままほったらかしなのは、そのせいもあるのだと解釈してもよいか?
 前作『ウルトラマントリガー』(2021)のトリガーについては、スフィア事変の当初から、自主的に火星防衛の任についているのか、それとも同話でユザレ(の見た目違い)にアイテムを渡されたことで改めて変身可能になったのかが、作品にとっては些事かもしれないが、気にしてみるとよくわからない。


・本作の今のところ唯一の問題点。カプセル怪獣(本作ではディメンションカード怪獣)の扱いが尺の都合もあるのだろうが、一瞬だけの登場で済まされてしまうのでイマイチ良くない。
 怪獣ミクラスは第2話と第5話の2回登場しているが、ちょっとダメージを受けたところで撤収。怪獣アギラは第6話「地底怪獣現わる! 現わる!」に登場したが、出てきてすぐテレスドンにツノを発光させての突撃を敢行、テレスドンには勝利したが、道連れにしたような感じで自身もすぐに消滅してしまう。怪獣ウインダムは第7話時点ではいまだに出番なし。この辺は今後の改善の余地あり、という感じである。


 以上、『ウルトラマンデッカー』について、思うところを書き連ねてきた。人間の評価が棺の蓋を覆うまでわからないように、作品の評価も最終回を迎えてみなければわからない。途中までいい線を行ってたのに、最後の最後でずっこけた作品だっていくらもある。とりあえずは、今後を見守るとしよう。


(了)


ウルトラマンデッカー』前半合評3 ~『ウルトラマンデッカー』序盤評

(文・犬原 人)

第1話『襲来の日』

(脚本:根本歳三 /監督:武井正能)


 火星に造営された移民都市を、謎の球体群「スフィア」(この時点でその名前は明らかになっていない)がいきなり襲う。
 『ウルトラマンデッカー』の世界では『ウルトラマンダイナ』(1997)に同じく、宇宙や大自然はもはや畏怖や畏敬の対象ではなく、「ネオフロンティア」として、専ら開発するもの、人類の未来の進出先として扱われている。


 そんなこととは無関係に、地球の下町で手作りせんべい店「明日見屋」の手伝い(店主の孫)に励む青年アスミ・カナタ(演:松本大輝)。


 とにかくカナタは宇宙港に商品の納品に行くことになり、そこでスフィアの襲撃を受けることになるのだが、前後してコンコースで邂逅するカイザキ・サワ(演:宮澤佐江)とムラホシ・タイジ(演:黄川田雅哉……『仮面ライダー THE FIRST』(2005)の主演俳優・黄川田将也氏が本名で出演)。二人は前作『ウルトラマントリガー』(2021)世界での戦友であるらしく、同作終了後に別の道を歩むようになっていたようである。


 地球平和連合TPUの怪獣対策課に残ったサワは平和が続いて、予算も人員も減らされる一方だと嘆き、養成学校の校長になったムラホシは、その育てた生徒らが火星に送られていくことを、複雑な心境で見守っていた。
 火星行きのメンバーに人選として外され、宇宙港の警備をさせられていたキリノイチカ(演:村山優香)に、店のせんべいを売り込むカナタ。やって来た仲間のリュウモン・ソウマ(演:大地伸永)に彼女が連れ戻されてその場は残念な首尾に終わったが、その直後、火星の惨状がニュースとして流れ、地球もまたスフィアの襲撃を受ける。


 しかし頻繁に宇宙ロケットが飛び交うこの作品世界、とことん地球にやさしくない(ロケット一発飛ばすだけで、どれだけの温室効果ガスが大気中に撒き散らされていることか)。そんなところが気になるあたり、筆者はフィクションが純粋に楽しめなくなっているのだろう。『ウルトラマンティガ』(1996)~『ウルトラマンダイナ』に登場したエンジン・マキシマオーバードライブよろしく、いわゆる光子力エンジンであれば、すべて無公害なのかもしれないが。


 ニューヨーク・シドニー・パリ・エジプトのギザ、そして東京の空に奇怪な塊が現れ、その中から湧いて出たスフィアの大群に挑む戦闘機・ガッツファルコンと空中母艦・ナースデッセイ号。『トリガー』で使われたメカが、無人操縦の上に多勢に無勢。そんな抵抗などものともせず、塊は拡張し、協働して地球上空に勢力圏を押し広げていく。


 スフィアの攻撃で建物が崩れ、女性が下敷きになった。瓦礫をどけようと必死になるカナタ。イチカとソウマも手伝うが、スフィアの攻撃は続く。銃を手に援護に来たムラホシだったが、その前に巨大怪獣スフィアザウルスが出現、スフィアと融合してより凶暴になった。逆上したカナタは女性を救出したのち銃を拾い、「地球人ナメんな!」とばかり、単身でスフィアに銃撃戦を挑むが、逆にスフィアに呑み込まれてしまう。
 スフィアは人間の自我を奪う能力を持っているように演出されていたが、カナタが「俺はアスミカナタだ!」と絶叫することによってスフィアの壁をぶち破り、壁の向こうに立っていた光の巨人と邂逅。精神感応で「デッカー」と名乗る彼から変身道具「Dフラッシャー」を託される。カナタはウルトラマンデッカーとなり怪獣を倒すが、スフィアの拡張は続く。大気圏に飛び、スフィアを次々撃ち落とすデッカーだったが、スフィアは一致協力してバリアを地球の空全体に張り、地球人は宇宙との交信も往来も出来なくなってしまった。


 生還したカナタはソウマに怒られるが、ムラホシは「もし君に意思があるのなら、いつでも連絡してください」「大切な者を守る意思です」と、カナタにTPU入りを暗に勧める。
 TPU訓練校は怪獣対策要員養成校と教育方針を変更し、カナタは新人訓練生として入学を決めるのだった。



 ……個人的に気になったのは、カナタの家が何故せんべい屋なのか、何故そのように設定されたのか? に説明がなかったことで、同じ下町の自動車修理工場に住み込みで働いていたウルトラマンジャック=郷 秀樹(『帰ってきたウルトラマン』(1971)の主人公)が「レーサーになってカネを稼ぎ、田舎から母を呼んで一緒に暮らしたい」という夢を、同じ第1話で語っていた事実と、つい比較してしまった。
 せめて店の目玉商品「宇宙せんべい」に、何かドラマがあればいいのだが。当然番組の本筋に絡むような内容の。
 さらにはアスミカナタのキャラクターが「無鉄砲な熱血漢」であることは分かったが、それでも『ダイナ』の独断専行型の主人公・アスカ・シン(演:つるの剛士)ほどのインパクトもなかった。瓦礫の下の女性を助けるシーンで、ソウマやイチカとのチームプレイを演出したせいだが、これが吉と出るか凶と出るか?


 今回の怪獣スフィアザウルスは、スフィアと融合することで凶暴かつパワーアップするようだが、CGか着ぐるみかの違いだけで、ソーシャルゲームモンスターハンター』(カプコン)のモンスターと大して変わらない存在感だったのも不満ではあった。杵(きね)のように巨大な前足というのは、たしかに今まで有りそうでなかったビジュアルには違いなかっただろうが、見た目のインパクトだけで勝負できると考えたら、ウルトラ怪獣失格である。
 強くて怖くて憎々しい。特撮番組第1話の怪獣は、ヒーローを引き立てる必要から、東映でも円谷でもそう描かれるべきなのだが、この扱いは残念極まる。
 いちおう電波障害を起こせるという設定だったが、この怪獣自体の能力なのか、『デッカー』に出てくる怪獣(融合獣)全部がそうなのかは、この時点ではまだわからない(多分後者だと思うが)。
 当初に書いた設定が説明されれば、ひねりのないその名前同様、今回はそれでいいという割り切りか。


第2話『決意のカナタ』

(脚本:根本歳三 /監督:武井正能)


 第1話の事件から1年、人々の生活も安定を取り戻しつつあったが、TPU訓練校の過酷な訓練は続き、地球に張られたバリアもそのままだった。福引特等の旅行で火星に置き去りにされた両親が気になる中、自分があれ以来ウルトラマンデッカーにもなれないことも気になっていたカナタ。訓練校には一応12人の候補生がいたようだが、カナタの成績は最下位。


 そんな中、TPUは『GUTS-SELECT』という精鋭部隊を組織することを決定し、その選抜のため60キロの行軍訓練を実施する。
 3人1組で行軍しタイムを競う。イチカ・ソウマと組むことになったカナタはチームの足を引っ張ってばかり。仲間を無視して先行するソウマをたしなめるイチカだが、ソウマは足をくじいたカナタを理由に、本部にリタイアを報告しようとする。冷静な判断と状況判断を優先したソウマと、限界まで戦い抜くことをポリシーとするカナタ。一触即発のムードを、使命感で訓練に臨んでいたイチカが何とかとりなす。
 そこへ怪獣デスドラゴが出現。左右一対のツノを片方だけでも破壊すれば戦意喪失するはずが、ムラホシの乗ったガッツファルコンの攻撃でも怪獣は暴れるのをやめない。
 イチカの言葉に背中を押され、カナタはウルトラマンデッカーに変身。くじいた足で思うように戦えない中、デッカーは怪獣カードからディメンションカード怪獣ミクラスを召還、怪獣は倒された。
 勝手に戦線離脱したカナタを睨むソウマ。しかし打ちひしがれた被災者を目の前に見て退避命令を無視した3人を見たムラホシは、彼らを救護するこの3人を、『GUTS-SELECT』に迎え入れるのだった。



 ……この話のキモは、カナタ・ソウマ・イチカ三者三様のキャラクター描写だろう。『ウルトラマン』でなければそのまんま『ゲッターロボ』(1974・東映動画)か『無敵超人ザンボット3』(1977・日本サンライズ)か、とにかく3機合体の巨大ロボに乗せた方がむしろいいんじゃないか? と思わせるような描き分けがなされていた。円谷プロだから合体ヒーロー『トリプルファイター』(1972)という選択肢もあるが、彼らだけで防衛チームを組織して変身させ、地球の平和を託すには正直不安が残ってしまう(笑)。
 相変らず熱血バカのカナタを、「そんな甘い考えで実戦は戦えない」と、自分も若いクセしてクールに突き放すソウマ、そしていがみ合う2人をとりなしながら、「やらずにいられないからやっている!」と、使命感で戦っている自分を吐露してしまうイチカ
 現在はとりあえずソウマがリーダーになっているようだが、ムードメーカーのカナタに調整役のイチカ。そして人々を救いたい思いでムラホシの退避命令を無視する根性は三人共通。いいトリオではある。


 もう一つのキモはミクラスの登場。『ウルトラセブン』放映55周年記念としてのファンサービスだそうだが、『セブン』名物のカプセル怪獣をカードで召喚! というあたりに時代を感じた。ウルトラマンアーケードゲームフュージョンファイト!』で早速使えるのかどうか、カードの発売が気になるところである。


第3話『出動! GUTS-SELECT』

(脚本:根本歳三 /監督:武井正能)


 GUTS-SELECTの装備担当のアサカゲ・ユウイチロウ博士(演:小柳 友)が紹介され、主力戦闘機「ガッツファルコン」のパイロットを選抜しようという話に。AIロボット・HANE2(エイチエーエヌイーツー)――声の土田 大は、『忍者戦隊カクレンジャー』(1994)のニンジャブルー・サイゾウ役だった人――が操縦する新型戦闘機「ガッツホーク」との連携ができるか、シミュレーションをそれぞれにしてもらうことになった。カナタ・ソウマ・イチカがそれぞれ挑戦するが、全員が散々な結果に。


 一方、サワは一年かけてスフィアの研究をしており、塊としての「キングスフィア」と戦闘形態としての小型円盤「スフィアソルジャー」があり(第1話で語った「スフィア」とは後者のこと)、ふだんは粒子状に浮遊して地球上空にバリアを張っており、さらには第1話に登場したスフィアザウルスは巨大な前足で地球のエネルギーを吸収しようとしていた。スフィア襲来の理由と怪獣頻出の理由、そしてウルトラマンの関係は未だ不明だとムラホシに語る。


 訓練の失敗をHANE2のせいにしたカナタたちは、彼と会話の席を設けるが、HANE2は平板な模範解答を繰り返すばかり。
 シミュレーターの難易度を上げ、また訓練を繰り返すカナタたち。そこへ古代怪獣ゴモラが街中に出現、街を破壊する。カナタは実戦としてファルコンに搭乗するが、無人機だったガッツファルコンは乗り心地は最悪だ! と、ムラホシは「いい話」として教える。
 とりあえずガッツホークとの連携が上手く行って、ゴモラの尻尾を焼き切ることに成功したが、スフィアソルジャーの大群がゴモラに取りつき、スフィア合成獣と化した。カナタはHANE2にガッツファルコンを同期させることを頼むと、ウルトラマンデッカーに変身して、ファルコンを飛び出した。
 戦うがパワーが足りず、再生した尻尾で張り飛ばされるデッカー。そこへ赤いストロングタイプへの変身を促すカードが現れ、デッカーはタイプチェンジする。押し相撲でゴモラを圧倒し、掴んだ尻尾でジャイアントスイングを決めるデッカーは必殺のパンチ「トルネイドブレイカー」で勝利した。


 三人の功をねぎらうムラホシだったが、カナタはHANE2のよそよそしさが気になり、ハネジローと命名し直した上で、そのかしこまった喋りもやめろと命令する。言われた通り喋りを改めたハネジローは、いきなり人格まで変わってしまうほどの砕けっぷりを披露するのだった。



 ……何はともかくゴモラである。『ウルトラマン』第1作(1966)に登場し、その尻尾で大阪の街を派手に破壊した人気怪獣が、21世紀以降は衝撃波という飛び道具を持って復活している。『ニュージェネレーション』においてこのゴモラ、常連な存在になりおおせているが、今回はスフィアと合体することで、オリジナルを主張した。
 その都市破壊もリキの入った特撮で表現され、足りないのはエキストラの数だけというのは、現在のテレビシリーズにしてはよくやったということか。


 自衛隊の出動こそなかったが、「ワンダバ」のBGMで弾丸を装填されるGUTS-SELECTの装備としての小銃描写がやけにリアル。昔のシリーズを見ていて、巨大怪獣相手にマットシュートやタックガンのような拳銃で挑むのは無謀に過ぎると子供心に思ってはいたが、こうもリアルな銃火器として玩具販売されるのであれば、母親層から抵抗が出るのではないか? と心配になった(『ウルトラマンネクサス』(2004)のナイトレイダーから始まったトレンドではあったが、『ネクサス』は作品自体地味だったし)。


 世相を憂うという意味ではハネジローの存在も気がかりだ。元ネタ『ウルトラマンダイナ』では可愛いだけの宇宙珍獣だったが、今回は戦闘機の操縦もやってしまう高機能ロボットとして登場した。
 『男はつらいよ』(1969~1995)が『釣りバカ日誌』(1988~2009)へ、さらには『築地魚河岸三代目』(2008)へと、松竹喜劇映画の主人公が、テキ屋からサラリーマン、さらには自営業者と、「社会の役に立つ」キャラクターに変貌していった過程にこれがかぶって、「役に立たないなら出て来るな」と、子供に社会的偏見を植え付けやしないか心配になった(笑)。
 なので、自分より高性能なロボットの登場に「僕はもういらないんだ」と、科学警備隊の情報分析ロボットが戦闘機で家出するほどの展開になってしまった『ザ・ウルトラマン』(1979)第7話『攻撃指令! 目標はピグ!!』(脚本:若槻文三)のように、ハネジローが絶望してしまうドラマを期待してしまうのだ。


 とりあえず3話まで見た感想は、『ウルトラ』にしては「可もなく不可もない導入部」ということだった。登場人物や世界観の紹介、キャラクター描写、派手な特撮による都市破壊と怪獣出現、そしてウルトラマンとの出会いと変身といったシークエンスがハイペースで展開され、予定調和のようにカナタは防衛隊の正隊員になって終わる。


第4話『破壊獣覚醒』

(脚本:中野貴雄 /監督:辻本貴則)


 仮想空間において宇宙怪獣ベムラーが襲う中、ビルに立てこもった侵略者(『ウルトラセブン』(1967)に登場したシャプレー星人)を掃討するという訓練に失敗するカナタ。どうもその失敗は、ウルトラマンデッカーに変身してしまおうというカナタの驕りが引き寄せたようなものだ! と、前話のせいで人格まで変わってしまったハネジロー(笑)は喝破した。
 定時のブリーフィングで、スフィア合成獣の脅威を説明されながら、ガッツファルコンとガッツホークを合体させたガッツグリフォンを開発したという発表を受けるGUTS-SELECT。


 さて、そんなこととは無関係に、ユノハナ町という温泉町で、温泉掘削用のドリルが、何かに当たって折れてしまうという事件が発生した。突然、地面からせり上がる巨大な発光体。GUTS-SELECT出動。スフィアの影響か知らないが、最近お湯が涌かなくなって、温泉街としてピンチだったと町長(演:堀内正美)が述懐する。
 発光体は何かのカプセルで地球の物体ではなく、定期的に同じ波長を繰り返して発信しているところから察するに、言語を発しているとサワは推論を立てた。一方、過去にこの街に来たことがあるイチカは、街にある『阿賀神社』のいわれを解説する。UFOか隕石か、とにかく大昔(1300年前)に何かが落ちて来たのを祀っているのだそうだ。町長はこの敷地にドリルを突き刺したバチが当たったと後悔するも、これも町のためだったと開き直る。


 カプセルから赤い煙が噴き出し、破壊獣モンスアーガーが出現した。その表皮はダイヤモンドより硬く、通常兵器では破壊不可能とハネジローは分析した。その一方、サワはカプセルの言葉を翻訳することに成功し、ユノハナ町の防災放送はそのメッセージを放送した。
 モンスアーガーは宇宙に進出する文明から星の自衛のためにと、メラニー遊星からセールスされた怪獣兵器だったのだ。「怪獣の通信販売かよ!」と怒るカナタはデッカーに変身するが、モンスアーガーは強い。
 ハネジローはカナタがデッカーに変身したので無人になったために不時着したガッツファルコンの真下にある地下水脈を攻撃するようデッカーに提案する。吹き上がった間欠泉により空中に持ち上げられた無人のガッツファルコンと、ハネジローが操縦するガッツホークが空中で合体! ガッツグリフォンのビームで、モンスアーガーの弱点の頭頂部は撃破され、ユノハナ温泉も復活するのだった。



 ……一応、今回から通常編ということになるのだろうか? 前回のハネジローに危惧した筆者だが、カナタと秘密を共有して相談相手になり、アリバイ造りの共犯にもなってしまうという使われ方は、脚本の勝利だと素直に感心した。
 脚本の勝利といえば、モンスアーガーの出てきた理由も。人類が宇宙に進出するようになって、邪魔な侵略者に悩まされるかもしれないことを予測し、よけいにも防衛用の怪獣をセールスしてきたメラニー遊星の存在を、何かの風刺か? と勘繰ってみたり。しかし自衛用の怪獣兵器なのだから制御手段も必要ではないのか? その説明がほしかったところだ。
 それはともかく、宇宙からのメッセージと神妙になっていたGUTS-SELECTの面々が、内実を知って腰砕けになるあたりとか、第3話で紹介されたイチカのツーリング趣味が、神社の説明として早速反映されている辺りが印象に残る。
 しかし怪獣災害で甚大な被害が出て、頭を抱えなければならないところを、温泉が復活した! とカメラ振り回して狂喜乱舞する町長の能天気加減には、見ているこっちが頭を抱えてしまった(笑)。堀内正美といえば『ウルトラマンネクサス』でのシリアスな役柄の印象が強すぎて、ギャップが……。個人的には正直言って勿体無い使われ方だった。
 そしてせっかく温泉が復活したことだし、怪獣も倒されたのだから、視聴者サービスとしてイチカの入浴シーンを期待したものだが、このご時世、それは無理! という現実を思い知らされた(笑)。


第5話『湖の食いしん坊』

(脚本:継田 淳 /監督:辻本貴則)


 湖畔の民家で停電が相次ぐとある湖に、いきなり宇宙怪獣エレキングが出現、沿岸の変電所から電気を吸い取って暴れた。GUTS-SELECTが攻撃に現れたが、変電所の職員を避難誘導していたイチカは、そこで不思議な少女・ユウコ(演:中村守里)と出会う。エレキングを庇う彼女は、ピット星人としての正体を現すが、折悪しく脳天に瓦礫が当たったイチカは、その場に気絶してしまう。
 目が覚めるとユウコの住むアパートの中。基地に連絡しようとしたイチカを止めるユウコ。


 彼女が語るには、地球に不時着して母星に助けを求めたものの、スフィアに邪魔され救援が来れなくなったという。エレキングは地球で生活する彼女にとって、「エリー」というペットが唯一の友達だった。本来なら乾電池レベルの電気で満腹する彼だったが、餌のやり過ぎか地球の環境に適応しすぎたのか成長が促進され、飼い切れなくなって湖に隠したのである。


 エレキングのことを基地に報告しようとするイチカ。しかしGUTS-SELECTの隊員である以上、エレキングは殺すしかない。エレキングを殺さずに済ませるため、TPUの大容量バッテリーを秘密裏に調達しようとするイチカだったが、ソウマとカナタに見つかってしまう。ムラホシは彼女に失望しながらも、同じスフィアの被害者同士、エレキングの保護を決断した。その電気を食べるエレキングに、子供の頃に飼っていた犬を重ねるイチカ。しかしエネルギーの食い合わせが悪かったのか、エレキングは暴れ出してしまった。


 彼を止めるためデッカーに変身するカナタ。ウルトラマンのエネルギーまで食ってしまうエレキングにたまりかね、怪獣ミクラスを召還したが、ミクラスは電撃で瞬殺された。苦戦するデッカーの前に現れたミラクルタイプのディメンションカード。
 ミラクルタイプに変身したデッカーはエレキングを幼生体に戻した。事件が終わって怒るサワを前にして、ムラホシはイチカの純粋さを讃える。サワはエレキングを二度と巨大化させないため、動画を作って正しい飼い方をユウコにレクチャーするのだった。



 ……『ウルトラマンコスモス』(2001)を引き合いに出すまでもなく、怪獣を殺すばかりが円谷じゃない。『ミラーファイト』(1974)の第1話『怪獣は死ね!』が遠くに思える昨今ではある。

 『ミラーファイト』とは、初代『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』の格闘シーンにプロレス風の実況をつけて挙句の果てには着ぐるみ同士の寸劇で誤魔化してしまったミニ番組『ウルトラファイト』(1970)を、同じ円谷プロの『ミラーマン』(1971)でやってしまった超マイナー作品。見ていて面白いことは面白いのだろうが、あのミラーマンを鏡 京太郎(変身前のナイーブな青年)だと思いたくない女性ファンは多かろう(笑)。

 オリジナルはウルトラセブンアイスラッガーで首と尻尾を切断されたものだが、その優美なフォルムのせいか、エレキングは女性と相性がいいようで、操るピット星人自体が美少女に変身するし、『ウルトラマンマックス』(2005)の第2話に再登場した時は、孤独なOLが飼っているという設定だった。
 何より、オリジナルのピット星人も侵略者には違いなかったが、エレキングに都市破壊はさせてなかったし、自ら人間を殺すような真似もしなかったので、「殺すには忍びない」という感情を起こさせる奴ではあった。だから今回は善玉宇宙人として復活できたのだろう。


 それはともかくとして、可哀想な動物を親に内緒で助けようとするのは子供共通の心情であり、一緒に見ている大人も、子供の頃にかつては経験している心情だろうから、『デッカー』はちゃんと立派にファミリー番組なのだなあ。イチカちゃんの好感度もアップしただろう。第一、放電ごときでモンスターを殺してしまったら、『ポケモン』のピカチュウも殺さなければならなくなり、テレビ東京の反発は必至だったろうし(笑)。
 放電といえば、放電美少女・ラムちゃんエレキングに見立てて、大人気漫画『うる星(せい)やつら』(高橋留美子小学館・78~87年)とコラボさせた二次創作パロディーの大ヒット同人誌『うる星セブン』などというものも80年代後半にはあったなあ。今となっては年寄りの思い出話である。


 とりあえずここが『ウルトラマンデッカー』の世界でよかった。ここが『シン・ウルトラマン』の世界だったら、今頃は怪獣ネロンガ同様、容赦なくスペシウム光線の餌食だよ! ……と思ったが、今回のエレキングは『帰ってきたウルトラマン』第18話に登場してウルトラマンスペシウム光線も食ってしまう食欲の持ち主だった宇宙大怪獣ベムスター並の食欲を持っていたから、結構な強敵になっていたかもしれない!?


『特別総集編1 マルゥルの帰還』

(構成:足木淳一郎 /演出:村上裕介)


 スフィアの襲来に晒され、宇宙への往来を封じられた地球。しかしそれに抗うものが現れた。光の巨人ウルトラマンデッカー、そして地球防衛チーム・GUTS-SELECTである。
 ではそのGUTS-SELECTの装備の開発をしている、陰の立役者を知っているだろうか?
 地球平和同盟TPU・その技術部特務3課の責任者ホッタ・マサミチ(演:田久保宗稔)。彼は前作『ウルトラマントリガー』の頃からこの部署で活躍していたエンジニアである。


 予算も人員も削られる中、納期に追われる日々を送る彼。思わず机から崩してしまった書類の中に、メトロン星人マルゥル(演:丸田聡美 /声・M・A・O…『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011)でゴーカイイエロー=ルカを演じた市道真央氏の声優仕事をする際の名称)とのスリーショット写真を見つける。
 彼らの開発したナースデッセイ号やガッツファルコンはまだ現役だが、無人機にしたはずがスフィアのせいで有人機に逆戻りという現実を嘆く。


 そこへマルゥルが帰ってきた。特務3課に今日付けで配属になったのだ。『トリガー』終了後も地球に居続けていたようだったが、再会を喜んだホッタは今の仕事として、マルゥルにガッツホークとガッツグリフォンを紹介する。
 嬉々として解説するホッタだが、マルゥルは設計者が別にいるだろ? と意地悪な質問をする。第3話で初登場したアサカゲ・ユウイチロウ博士の存在を白状するホッタ。10年前と今を比較し、話はようやくウルトラマンへと進む。ストロングタイプ(パワータイプ)はトリガーにもあったが、ミラクルタイプへの変身やディメンションカード怪獣の召喚はオリジナルだよなぁとマルゥル。ウルトラマンデッカーにはまだ謎がありそうだとマルゥルは言うが、どうやらウルトラマンは人間が変身するものだということについての機密事項までは、ホッタは知らなかったようである。


 トリガーの最終決戦とその後の顛末も語られる。トリガーの偽者のような存在・イーヴィルトリガーが『トリガー』終了2年後に現れ、ウルトラマンゼットなども呼び寄せての総力戦が行われたのだ。
 ホッタはマルゥルに開発中の新兵器の設計図を見せ、一緒に仕事に取り掛かろうとするが、経理担当のテルミ(名前だけの登場。さっきのスリーショット写真の3人目の若い女性だそうだ)が、この10年で冷徹に磨きがかかったと彼から聞かされ、マルゥルは戦々恐々となるのだった。



 ……総集編。夏休みだからこそ、リキ入れた超大作を、タイアップでいいから地方ロケで撮らねばならないと筆者は思うのだが、円谷プロとしては、一般企業もお盆休みになったので、今になって我が子と一緒に『デッカー』を見ようとした親御さんを、あわよくばファンにしてしまおうと考えた「新規開拓」になっているのかもしれない(この回の放送は首都圏で2022年8月13日)。
 基本的には過去回のライブフィルムと、特務3課が出ずっぱりの中で繰り広げられるホッタとマルゥルの会話で構成されているのだが、ホッタがガッツファルコンとガッツホークの変形機能をミニチュアで実演したりするなど、玩具の売り込みも忘れていない辺り、ソツがない。


 今回の発見は、メトロン星人の手に5本の指があることが明らかになったこと。たしかに紙巻きたばこに結晶体を混ぜたり、携帯電話に細工したりなどは、折った竹のようなあの手じゃできない。隠してたわけだ(笑)。
 天才ではあるのだろうけど小生意気なマルゥルのキャラクターは、生意気盛りの中学生という感じの年齢設定からだろう。かつて『ウルトラマンマックス第24話 狙われない街』(脚本:小林雄次 /監督:実相寺昭雄)で、メトロン星人は「街じゅう猿だらけ」と、地球に愛想を尽かして去って行ったはずなのに(笑)。


第6話『地底怪獣現わる! 現わる!』

(脚本:中野貴雄 /監督:辻本貴則)


 120年に一度しか咲かず、天変地異の前触れと恐れられたサザメダケの花が咲き、その翌朝、花が咲いたソラフネシティの空に、虹のような不気味な発光現象が発生した。そして地を割いて現れる地底怪獣パゴス。
 パゴスの出現は今に始まったことではないが、今回のパゴスは地に潜りながら、1時間に2キロも動く敏捷さが謎だというGUTS-SELECTの分析。


 ソウマとカナタが現場調査に赴くが、聞き込みで出会った老婦人(演:小貫加恵)は、地下3200メートルから採掘した超臨界メタルを精製し、エネルギー結晶を作る工場がこの街にできてからというもの、地震が絶えなくなり、その挙句に怪獣が出た、これは土地神さまのお怒りだと聞かない。


 そこへまたパゴスが出現、立ち向かったソウマはパゴスの攻撃で負傷してしまう。
 発光現象はパゴスの出現による地磁気の乱れで空気中のイオンがプラズマ化したものであり、生物学的にはオスのセックスアピールだという分析を立てたハネジローとイチカ。軽傷で帰還し、休養をとることになったソウマだったが、彼はその間も鍛錬を欠かさなかった。裕福な家に生まれ、何不自由なく育った過去が逆にコンプレックスになっており、成果を上げねば全ての努力は無駄、ましてや人を救う仕事にミスは許されないと気負っていることを吐露するソウマ。


 パゴスはやはり地底の超臨界メタルを食料としており、縄張りと主食を人間に奪われたことで暴れ出したとGUTS-SELECTは結論を出した。そしてパゴスの今までの出現地点を分析した結果、環状に繋がっており、その中心に巣があるのではないか? と、ニュートリノ・スキャナーで空からの探査を決行するが、その最中にまたパゴスが出現した。


 カナタはデッカーに変身するが、戦いのさなか、その足を地底から絡め捕る触手があった。何と相手は同じ地底怪獣のグドン。二匹目の強敵に地下空洞に引き込まれるデッカー。パゴスとグドンがデッカーを襲う。無謀にもその空洞にガッツファルコンで突入するソウマ。しかしそこで彼が見たのは、3匹目の地底怪獣テレスドンと、グドンの食料と思われる古代怪獣ツインテールの大群だった(字幕での別名は「地底怪獣」だったのだが、『ウルトラマンメビウス』(2006)で、元は海の生物だったと紹介されていたことを知っていたので古代怪獣として記した・笑)。


 デッカーはディメンションカード怪獣アギラを召還してテレスドンを退治するが、多勢に無勢はどうにもならない。ソウマはニュートリノマーカー弾をパゴスに射ち込み、上空で待機していたナースデッセイ号のニューマキシマナースキャノンで地底怪獣を殲滅。残るグドンもミラクルタイプに変身したデッカーに退治された。
 今回の作戦におけるソウマの活躍と天才ぶりを讃えるサワとムラホシ。しかしソウマは子供のころ怪獣災害に遭った経験……思いの核心をカナタに語り、慢心することなく今日も任務に精励する。



 ……映画『シン・ウルトラマン』(2022)にもカメオ出演したものの、顔の造形が変えられていた『ウルトラQ』(1966)の怪獣パゴスが、オリジナルそのまんまの造形で、やはりその登場話である第18話『虹の卵』そのまんまのシチュエーションを背負って登場。お父さん通り越して『おじいさん対策』ですか? と勘繰ってみたり(笑)。工場の開発で地底から怪獣が出るというのも、まさにオーソドックスな怪獣ドラマだし。地下3200メートルという大深度なら、この現代でも未知の世界だし(しかしグドンの触手がそこまで伸びるものなのか? という新たな謎が・笑)。
 しかもその当時(1960年代)、マンガで流行っていた「忍者もの」の定番「双子……ひとりと思っていた敵が、実はもうひとり別のところに隠れていたネタ」(後年、かわぐちかいじの『沈黙の艦隊』(講談社)での、原子力潜水艦やまと対シーウルフ戦にも使われていた)で、敵の敏捷さに説明をつけ、さらにはその設定から2対1のハンディキャップマッチのサスペンスを引き出し、ダメ押しで3匹目の強力怪獣を出しバトルを盛り上げる(しかし公式体重12万トンのテレスドンを、わずか1万2千トンのアギラが倒すって、相撲で言ったら殊勲賞ものの大金星ではなかろうか?・笑)、そしてナースデッセイ号の変形、さらにはパゴスの「金の虹」や、その出現理由にも科学的設定を用意して解説させるなど、サービス精神旺盛な回であった。


 そして豪勢な都市破壊とソウマのドラマ。昭和ウルトラのテンポで行ったら、これ絶対に前後編になるよねえ? 今の『ウルトラ』にはそんな余裕もないのか? ニューマキシマ・ナースキャノンで大穴が開いただろう街の復興も、これでドラマができるほどの大変さだと思うし。地下3200メートルの巨大空洞をどうやって塞ぐのか?
 アイデアとして、殲滅を生き残ったウルトラ怪獣一の美味・ツインテールを飼育してその空洞を牧場にし、食肉産業に提供する! とは考えたけど、管理はともかく地下3200メートルでは輸送も大変だし第一、誰がどうやって捌くのかという疑問もある。他の怪獣に同じく超臨界メタルという得体のしれないものをエサにしているのであれば、肉自体の安全性を農林水産省は保証できるのか? という疑問も残るし…… そんなところが気になるあたり、やはり筆者には(以下略)。


第7話『希望の光、赤き星より』

(脚本:ハヤシナオキ /監督:坂本浩一


 地球同様、スフィアに封じられた火星。その荒廃しかけた植民都市で、花に水をやる少女をいたわる謎の青年。彼は幻影で見た前文明人・ユザレ(演:豊田ルナ)から謎の剣とカードを託されてしまうが、その直後、不吉なイメージを直感してしまう。


 そこへスフィアの空襲。彼はウルトラマントリガー=マナカケンゴ(演:寺坂頼我)であり、変身してスフィアを撃退した。しかしそんな彼でもスフィアのバリアを突破できず、むしろ火星の民を笑顔にすることが大事だと、地球のことを諦めつつあった。
 しかし、かつての仲間はスフィアの特性をカードに記録させることに成功。これを使って体表をスフィアに擬態できればバリアを突破できるかもしれない、だから地球に行けと勧める。


 一方、地球では都会の地底に「スフィア」と「闇」の二つが融合した高エネルギー反応が地上に向かっているとGUTS-SELECTが検知していた。10年前の激闘を思い出し、その闇のエネルギーの存在に戦慄するムラホシ。
 ガッツファルコンで現場に向かうカナタだが、空に歪みが発生したと基地に報告するや謎の触手に捕らわれてしまう。


 カナタはデッカーに変身するが、地の底から湧き出る無数の触手に苦戦。そこを救ったのがウルトラマントリガーとして地球にやって来たケンゴだった。


 基地にケンゴを招待するカナタ。ソウマはどうやってバリアを超えて地球に来たのか不審に思うが、何とかカナタがウヤムヤにする。
 出自が違うとはいえ、同じウルトラマン同士、私室で語り合うカナタとケンゴ。ケンゴは「みんなを笑顔をする」ために戦ってきたが、前作『トリガー』に出てきた闇のウルトラウーマン・カルミラ(演:安川桃香 /声:上坂すみれ)のように救えなかった、笑顔に出来なかった存在もいた。だからカナタも焦らずに自分の使命としてのウルトラマン像を探れと勧める。


 闇の竜巻が起き、その中心から邪神スフィアメガロゾーア(第二形態)が現れる。スフィアと融合したというより、一度トリガーとGUTS-SELECTに倒されながら、スフィアのエネルギーを利用して再生したというべきだろうと解釈するサワ。ナースデッセイ号も撃墜され、カナタとケンゴはそれぞれ変身するが、2対1でも相手は倒せない。デッカーはメガロゾーアの触手を引き受け、その隙にトリガーはその懐に潜り込んで、火星でユザレから託された新兵器・ウルトラデュアルソードでメガロゾーアに打撃を与えたはずだったが、その中にカルミラの姿を見たトリガーは、驚愕のあまりメガロゾーアを取り逃がしてしまう。


 ……第7話にして先輩ヒーローの登場。これは織り込み済みのストーリーである。ふつうは特撮ものにおいて第7話といえばその番組のカラーが最も現れる(初期設定が紹介され、スタッフもそれがこなれて来た頃の話で、かつまだ路線変更もされてないから)、どうしても1本だけしかその番組を見てはいけないというのであれば第7話を見ろとまで極論を言われる話だと言われているので、その解釈に則れば、「『デッカー』は『トリガー』の姉妹作です」と、番組自体が宣言しているようなものだ。


 まあ、たしかにそれまでラスボスだと思っていたスフィアを、これ幸いと利用するしたたかさを持ったメガロゾーアは、番組世界をひっくり返すに相応しい強敵だった。さらにはトリガーとカルミラの因縁話までついてきては、番組としての『ウルトラマンデッカー』が前作に食われてしまったも同然であり、今後の展開としては、これを受けたデッカー=カナタがどのように成長して、主役として番組の主導権を取り戻していくかを描くしかないだろう。
 何と言っても先輩ヒーローは現役ヒーローに超えられるべき存在には違いないのだから。そういうわけで次回がやたら気になるのだ。



 ……第2話の時点で気になってはいたのだが、スフィアが張ったバリアは、地球上空のどのくらいの高度で張られたのだろうか? 
 単に大気圏外に物理的障壁として張られたのであれば、有害な宇宙線や隕石から地球を守ってくれるので有益ともいえるし、太陽熱も遮断するだろうから、地球温暖化も落ち着きを見せるだろう。日照不足に悩む北欧諸国が大変なことになりそうな気もするが、この番組でその辺が描写されることはあるまい。
 でなければ、衛星軌道外に張られたというのであれば、GPSや衛星放送が使えなくなるということもなく、「火星移民は火星移民で、何とか勝手にやってください!」と、地球ファーストを決め込むこともできてしまう。そう言い出す一派が現れ、主人公らと対立する、そんなドラマも期待してしまう。
 逆に衛星軌道の下で張られたというのであれば、そのGPSや放送衛星気象衛星、さらには軍事衛星も使えなくなるので、世界中が大混乱になっているはずだ。その辺の説明はスルーされたようで、人々の日常は戻ったと劇中では説明されていた。


(了)


ウルトラマンデッカー』前半合評4 ~『ウルトラマントリガー』の続編か!? 新しいウルトラマンストーリーか!?

(文・中村達彦)

第1話「襲来の日」


 映画『ウルトラマントリガー エピソードZ』(2022)から7年後。怪獣の来襲は途切れており、人々はネオフロンティア時代に向かって宇宙進出を進めていた。煎餅屋のアスミカナタは、面倒見の良い明るい青年。火星へ旅行に出かけた両親に代わって店を切り盛りしていた。地球平和同盟・TPUは怪獣対策の規模が縮小されており、そのことを懸念するムラホシタイジ訓練校校長。宇宙港には訓練生のキリノイチカリュウモンソウマらが手伝いで来ていた。そこへ煎餅の荷下ろしでカナタも来訪。
 3人の若者が出会った直後、宇宙から謎の巨大球体・スフィアが出現、小型のスフィアソルジャーを大量に放出して地上への光線攻撃を開始する。ムラホシはリュウモン・イチカら訓練生を率いて戦う。カナタも攻撃で瓦礫の下敷きになった人を助け、次第に戦いへ巻き込まれていく。
 そして、精強融合獣スフィアザウルスが出現。『トリガー』時代の防衛組織・旧GUTS-SELECTの空中母艦・ナースデッセイ号と戦闘機・GUTSファルコンが迎撃するが、無人での無線操縦が災いしてスフィアザウルスの衝撃波による電波障害で墜落する。


 カナタはスフィアソルジャーに飲み込まれるが、そこでウルトラマンデッカーと会い、変身アイテム・ウルトラDフラッシャーとウルトラディメイションカードを手にする。心に呼びかけてくる声に従って操作。ウルトラマンデッカー・フラッシュタイプへ変身する。スフィアソルジャーを蹴散らし、スフィアザウルスへ立ち向かう。大怪獣に必殺技のセルジェント光線を浴びせて撃破した!
 続けてデッカーは宇宙へ上がろうとしたが、スフィアは地球各所に出現しており、地球全体の上空をバリアーで覆っていた。デッカーは突破できずに墜落。人間の姿に戻ったカナタはムラホシに声をかけられ、TPU訓練校・怪獣対策科に入ることになった。



 脚本は『ウルトラマンジード』(2017)中盤で初参加し、本作で遂に「シリーズ構成」に昇格した根元歳三。あまたのアニメ脚本も手がけている中堅作家だ。監督は武居正能で、『ウルトラマンオーブ』(2016)から参加している。前作『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』(2021)と同じ世界でその後の時代が舞台なのだが、観ていて特別に『トリガー』と同じ世界だとは感じさせない。
 『ウルトラマンダイナ』(1997)#1は、前作『ウルトラマンティガ』(1996)の同じく7年後の世界だったが、劇中でもダイナのことをティガだと誤認されたりして直系の続きだと感じさせて高揚感を与えてくれた。『デッカー』#1では劇中キャラの誰もウルトラマントリガーの名前を出さない。火星への進出はさらに進んだようだが、むかし闇の巨人と戦った名残も全くない。『トリガー』最終回では、戦っているトリガーに子供たちが声援を送っていたが……。超エネルギー物体・エタニティコアやルルイエの花はどうなったのか? 『トリガー』にも登場したGUTS-SELECTも平和が続いているため、規模が縮小されて無人化されているという設定で、#1では颯爽と活躍することはない。


 主人公のアスミカナタは、他人のことを優先する行動派の姿は好感が持てる。会ったばかりのヒロイン・イチカに、自分の店の煎餅をあげるのは、親切の押し売りっぽい気がするが、それがキャラ付けなのだろう。そして厳しくあたってくるリュウモン。カナタ・リュウモン・イチカの3人は、『ウルトラマントリガー』のケンゴ・アキト・ユナの3隊員のキャラシフトも彷彿とさせるが、差別化はできている。
 #1からスフィアの大掛かりな攻撃を披露。奮闘するもなす術がない地球人。ナースデッセイ号も墜落してしまうさまも圧巻だ。
 カナタは拾った銃で応戦して突進していたところで、スフィアソルジャーに飲み込まれてしまい、スフィアソルジャーの中で(!)デッカーの意志・精神体(?)と接触してウルトラマンデッカーに変身する。よりにもよって宿敵であるスフィアソルジャーの中でデッカーの意志に遭遇してしまうのが、いささか急展開で強引な気が。
 変身アイテム・ウルトラDフラッシャーとウルトラディメイションカードは玩具を売らせようという思惑がはっきり見えていて、古い世代としては個人的には少々抵抗がある。
 スフィアザウルスは、その太くて長い前足を強調したデザインはバランスの悪さを感じるも、力強い雰囲気は申し分ない。
 怪獣を倒したあと、デッカーは宇宙へ。地球全体がスフィアのバリアーに覆われており、デッカーも突破できない。今までになく、本作の原典『ダイナ』にもなかった展開となったが、カナタがムラホシから入隊を薦められることも含めて、次回も見逃せない気持ちにはさせられる。


第2話「決意のカナタ」


 スフィア襲来から1年後(!)。TPU訓練校に入ったカナタは、リュウモン・イチカらと訓練に明け暮れる日々。地球はスフィアのバリアーに覆われたまま。1年前のあの日以来、カナタはデッカーに変身できないでいた。
 そんな時、ムラホシは新生GUTS-SELECT編成を進めていた。新隊員は訓練生の中から選抜されることに。そのための3人1組の行軍が行われ、カナタ・リュウモン・イチカで班が編成された。山道を行くが途中で地震に遭遇。カナタは足を挫いてしまい、他の2人から遅れてしまう。見かねたリュウモンは行軍を中止しようと言うが、これに対してカナタは行軍を続けようと対立。イチカの進言もあり続けることに。山中で再び地震が。破壊暴竜デスドラゴが目覚めたのだ。報を受けたムラホシは有人機に改良されたGUTSファルコンで出撃する。カナタたちは避難するよう命じられるが、逃げている人々を放っておけず、彼らの避難を助ける。迫ってくるデスドラゴを攻撃するファルコンは、眼下のカナタたちを見て助けようとして撃墜される。


 その最中、カナタはウルトラDフラッシャーの接触を受けてデッカーに変身したが、足の負傷が響いてうまく戦えない。しかし新型戦闘機・GUTSホークが駆けつけてくる。
 デッカーの中にいるカナタの許には新たなディメイションカードが現われる。カードからディメイションカード怪獣ミクラスが召還された。怪力でデスドラゴを抑えつけ、そこへセルジェント光線が突き刺さる。
 ムラホシは命令を聞かず、人々の避難を手伝ったカナタたちを咎めるも「今できることをやろうって決めました」と言う言葉を聞き、「無茶はしないように」と続いて暗にGUTS-SELECT隊員に任命するのであった。



 前話同様、脚本は根元歳三。監督は武居正能。前話の#1から引き続いた話だが、スフィア襲来から1年も経過したという。煎餅屋の青年がすぐ防衛チーム隊員になるのは、むかしのウルトラシリーズではよくあったが、今では無理があるので妥当な処置だろう。しかし1年もの間、スフィアは地球を覆ったまま何もしなかったのだろうか?
 カナタ・リュウモン・イチカがGUTS-SELECT隊員になるが、イマひとつ説得力には欠けるかも。訓練校の成績がビリなカナタは行軍でも遅れていた。それが怪獣デスドラゴ出現で、自分たちの安全より人々の避難を優先して行動したことが評価されて選抜されたというのは、その行為をドラマとして道徳的に肯定したいことはわかるが、現実的には説得力が弱いような……。3人の他にも、行軍を行っていた訓練生はいる。彼らはどう行動したのか? そういった話もこれから出てくるのだろうか?


 遅れるカナタの姿に行軍中止を言い出して残りふたりとぶつかるリュウモン。成績の悪いカナタにキツくあたっても、住民の避難を助けていることからも過度にイヤな奴ではなさそうだが。主人公・カナタは自分のことより他人のことを優先する感情的な熱血漢。リュウモン同様に背が高く細身でも体格はがっしりしている。2人の対立に割って入ったヒロイン・イチカリュウモンの気持ちを理解しつつ、カナタの立場も尊重し、自分の宇宙へ行きたいという気持ちも吐露して、3人の性格設定を固めていた。
 それぞれの気持ちをぶつけ合う姿は、本稿執筆の2022年8月現在、放送中の陸上自衛隊を舞台に若者の群像劇を描いたテレビドラマ『テッパチ!』とも重なって見える。


 ナースデッセイ号内で編成が進む新生GUTS-SELECT。女性の副隊長カイザキサワや、GUTSホークを操縦していた電脳友機と称されている人工知能・HANE2(エイチ・エー・エヌ・イー・ツー)、そして隊長でパイロット出身のムラホシ。ちなみに、現在のTPUの長は前作『トリガー』同様、シズマ財団のシズマだろうか? それとも……。ムラホシは知的で常に礼儀正しい姿が今までのウルトラシリーズに登場した防衛隊の隊長とは異なっている(歴代の防衛チームの隊長に駄目な奴はいなかったが)。彼はデッカーを、自分たちを守ってくれる存在としては、この段階ではまだ認めていないようだが。


 今回の怪獣デスドラゴは前作『ウルトラマントリガー』に登場したデスドラゴと同種で、『トリガー』ではシズマが搭乗した戦闘機・ガッツウィングの攻撃で片方のツノが半分折れた状態の個体だったが、今度は左右両方に完全なツノがある。山中で目覚めて橋を壊して市街へ出てくる。ディメイションカードでミクラスも召還される。デスドラゴに対して優勢だったが、すぐにカードに戻ってしまった。時間制限があるのか? ミクラスウルトラセブンが使役していた怪獣だが、デッカーはモチーフとしたウルトラマンダイナとは異なり、セブンと同じ光の国のウルトラマンなのだろうか?


第3話「出動! GUTS-SELECT」


 カナタたちは、GUTS-SELECTの技術部・アサカゲ博士の協力で有人戦闘機となったGUTSファルコンのパイロットのシミュレーション訓練に従事するが、うまくこなせない。イチカ隊員から人見知りしない性格を指摘されたカナタは、HANE2にお茶とお煎餅を持っていき、コミュニケーションを取ろうとする。そこでHANE2が本来は宇宙用の無人艇で開発されたことや、リュウモン隊員がむかし怪獣災害にあったこと、GUTSファルコンとGUTSホークはいずれ合体することになると語る。若い隊員を選抜したことは、戦いのあとの遠い未来を見据えた処置だったともムラホシ隊長は言う。


 古代怪獣ゴモラが市街地に出現。GUTS-SELECTが事態に対処するが、カナタがGUTSファルコンに搭乗し、HANE2が操縦するGUTSホークと空から、リュウモンとイチカは地上から攻撃する。GUTSホークとGUTSファルコンの空からの連携攻撃でゴモラのシッポを引き裂く。しかし出現したスフィアがゴモラに取り憑き、醜悪なスフィアゴモラへと変貌する。
 カナタはホークのHANE2に口止めするとデッカーに変身した。スフィアゴモラは強さも凶暴さも増し、さらに避難中の病院が先にあり、デッカーは苦戦を強いられる。しかし強い力を求めるカナタの想いに応えるように、新たなディメンションカードが出現。その力でウルトラマンデッカーは赤いストロングタイプへタイプチェンジ。そのパワーはスフフィアゴモラを圧倒し、右手にパワーを集中してパンチする必殺技・トルネードブレイカーで空高く突き飛ばして粉砕した!


 戦いが終わったあと、ムラホシやサワに初陣を労われる隊員たち。カナタは「HANE2」をその名前が味気ないからとローマ字読みと和名の合体で「ハネジロー」と命名、自分がウルトラマンデッカーであることを再び口止めするのであった。



 脚本は根元歳三。監督は武居正能。#1~#3の基本設定編を、新生GUTS-SELECTの初陣までうまくまとめてくれていた。
 アサカゲ博士を演じる小柳友、サワ副隊長を演じる宮澤佐江、ムラホシ隊長役の黄川田雅哉。3人ともウルトラシリーズ出演の過去がある。黄川田は実写版『美少女戦士セーラームーン』(2003)・『仮面ライダー THE FIRST』(2005)・『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(2019)と複数の東映特撮作品で好演している。


 カナタがHANE2と話をして(煎餅はお店をひとりで切り盛りしている実家のお爺ちゃんからの差し入れ?)、それがきっかけで宇宙へ行く夢を持つイチカが同調したり、リュウモンの過去が語られたり、さらにカナタがデッカーの名前を口にしてしまい、「なんで?」とイチカに突っ込まれると「あ、あの、デッカくてカッコいいから」とごまかしたりといろいろ面白い。
 ウルトラマンダイナも「ダイナミック」と「ダイナマイト」のみならず、その最終回では「大好きな~」も名前の由来だったとヒロインが明かしたし、前作『トリガー』の主人公・ケンゴも「鳥がー」とごまかしていたが(笑)。イチカにツッコミされたカナタの横にムラホシ隊長もいて、「デッカくてカッコいいからデッカー、それ良いですねー」と言って認めてあげるシーンもほしかった。


 なんだかんだ厳しく言いながらもリュウモンはカナタに応じてあげているし、イチカも活発なヒロイン役で、若者らを優しく見守るサワ副隊長やムラホシ隊長も優しくてよい。先代のGUTS-SELECTとは違った雰囲気を確立している。
 HANE2はなんとGUTSファルコン操縦中にカナタの正体がウルトラマンデッカーであることの秘密を知ってしまう! この回ではハネジローとも命名される。『ウルトラマンダイナ』#11に登場してレギュラーとなるミニ怪獣・ハネジローがモデルなのは、名前からもその姿からも明らかだ(よく見たら、ハネジローの顔って『ウルトラマンレオ』(1974)などに登場したマグマ星人の顔に似てないか?・笑)


 怪獣ゴモラは初代『ウルトラマン』(1966)で初登場し、その前後編で圧倒的な暴れっぷりを見せてくれていた。その後のウルトラシリーズでも度々出演し、人間の味方になったり、ロボット化したりも。市街地で暴れてシッポを千切られると初代『ウルトラマン』オマージュも見せてくれた。しかしスフィアに憑りつかれて、鋭いツノが生える尻尾が刺々しく再生され、凶暴な姿のスフィアゴモラに変化する。それに対して、デッカーのストロングタイプは物凄いパワーを発揮し、光線技ではなく肉弾戦で打ち倒す! 圧倒される戦い方だ。


第4話「破壊獣覚醒」


 GUTS-SELECTの訓練。カナタは突出してミスが続く。ハネジローに気合いで乗り切ると言うが、非科学的だと否定される。アサカゲ博士からは、スフィアに対抗するためのGUTSファルコンとGUTSホークの合体による強化案が説明される。同じ頃、温泉街のユノハナ町では温泉が出なくなり、阿賀大明神が降臨した伝説の阿賀神社に地底掘削ドリルを入れたが、青い巨大カプセルが姿を現す。急報に出動するGUTS-SELECT。カプセルは地球外の物体で1300年前に飛来したと判明する。カナタはGUTSファルコンで到着、ハネジローのGUTSホークもこれに続く。カプセルから現れた巨大怪獣・破壊獣モンスアーガー。メラニー遊星から通信販売で送り込まれたと音声が流れてくる。モンスアーガーを攻撃するが、怪獣の皮膚は厚くて破れない。


 戦闘で墜落するファルコンからカナタはデッカーに。変身したことをゴマカすためハネジローがカナタの声を似せてしゃべる。デッカーはストロングタイプにタイプチェンジしてもモンスアーガーを倒せないが、頭部の皿状の部分に神経が集まっていて弱点と判明する。GUTSホークのエネルギーでも足りない。ハネジローが再浮上したGUTSファルコンとGUTSホークを操り雲海の上で空中合体を成功させ、GUTSグリフォンの登場! デッカーが猫だましをかけて、モンスアーガーの気をそらした直後に、かかと落としをかけ、GUTSグリフォングリフォンタロンビームが頭部に突き刺さって爆散した! 戦いの中でユノハナ町の温泉も蘇った。



 脚本は中野貴雄。AV監督の顔も持ち、『ウルトラマンギンガS』(2014)から参加している。監督は辻本貴則。氏も特撮ファンで深夜特撮『ウルトラゾーン』(2011)以来、ウルトラシリーズに参加し、力の入った演出で撮っている。
 見どころが多い。まずGUTS-SELECTの訓練。『ウルトラセブン』(1967)のシャプレー星人と初代『ウルトラマン』(1966)の怪獣ベムラーがホログラフィで出演。突出してしまったカナタはやられるが、寸前に本人の意志と関係なく、変身アイテム・ウルトラDフラッシャーが眼前に出現してしまう。これまでのウルトラシリーズと違って、ふだんは変身アイテムを携行しておらず、いざという時、自動的に姿を見せるとわかる。


 モンスアーガーは『ウルトラマンダイナ』(1997)とも戦った怪獣だ。厚い皮膚に覆われた紅一色で単調な構造で、正統派宇宙怪獣といったところ。『ダイナ』では地球に接近したメラニー遊星の生物兵器で、遊星を訪れた異星人を攻撃していたが、本作では1300年前に地球にやってきたとされていた。同封されていたメッセージは以下の通り、


 「全宇宙の皆さん、こんにちは! こちらはメラニー遊星です。皆さんは勝手に宇宙に進出してくる不愉快な文明に悩まされていませんか? そんな時にはこのモンスアーガーシリーズ。きれいさっぱり邪魔な文明を根絶してくれます。これは皆さまに性能をご覧いただくためのデモプレイです。数に限りがありますので、ご注文はお早めに」


 TVでよく見かける通信販売のメッセージではないか。似たアイデアのシーンは何かの特撮作品でもあったような。
 今回の鍵はハネジローである。カナタの気合いで乗り切るという精神主義を否定したが、GUTSファルコンとGUTSホークの合体はテストもなくイチかバチかの実戦だった(笑)。こういった話のお約束パターンだ。ふだんは丁寧な話し方だが、カナタと砕けた会話をする時はその落差が大きい。黄色いGUTSファルコンと赤いGUTSホークの合体で誕生するGUTSグリフォンはカッコよい。『電人ザボーガー』(1974)最終第4クールに登場するストロングザボーガーの合体シーンや、5体合体の『超電磁ロボ コン・バトラーV』(1976)の合体シーンのイメージが入っている。


 町長役の堀内正美ウルトラシリーズほか特撮作品に度々出演しているが、今回はコミカルな演技で笑わせてくれた。


第5話「湖の食いしん坊」


 突然、湖から現われた宇宙怪獣エレキング発電所へ向かってくる。迎え撃つGUTS-SELECT。イチカ隊員は少女ユウコと出会う。少女は変身怪人ピット星人であったが、悪意はなかった。イチカがユウコのアパートで目覚めた時、事情を説明する。ユウコはエレキングの幼体・エリーをペットにして宇宙を旅していたが、宇宙船が故障して地球に不時着したあと、スフィアが張ったバリアによって地球から出られなくなる。ユウコは地球人の姿で生活していたが、エリーはエサの乾電池をやりすぎたせいか地球の環境のせいか、異様に巨大化してアパートでは飼えなくなり、湖に放し飼いに。その後もエリーは電気を吸い続け、巨大化が止まらなかった。事情を聞いたイチカは彼女を助けることに。


 しかしGUTS-SELECT基地に戻ってから対災害用バッテリー・MEGA-EARTH(メガ・アース)を独断で持ち出そうとしたのを、カナタやリュウモン隊員に見つかってしまい、ムラホシ隊長にも知られることに。隊長は叱責するも、GUTS-SELECTはエリーを助けることにする。
 夜間の湖にMEGA-EARTHがセットされる。だがその電流はエリーことエレキングを凶暴化させる。カナタはデッカーに変身。ミクラスも出現して対するが、エリーの電撃を浴びて敗退・消滅する。デッカーは一時、エリーを手なずけたと思ったのも束の間、襲いかかられる。そこで新たな形態である青いミラクルタイプにタイプチェンジした! その超能力でエリーは元の小さい姿に戻った。
 その後、生物学の権威であるサワからユウコにエレキングの正しい飼い方を伝える動画が送られ、アパートで元の生活に戻ったユウコはイチカやエリーと見入っていた。



 脚本は継田淳。監督は辻本貴則。印象深いカットが眼につく。『ウルトラセブン』などに登場したエレキング。#3のゴモラとともに人気怪獣で、飼い主のピット星人とともにウルトラシリーズに幾度も登場している。手乗りサイズのマスコット・キャラとして登場したことも。今回は巨大怪獣としての暴れっぷりを見せたが、同時にユウコに従っていろいろなポーズを取るなど愛嬌も見せてくれた。エレキングを殺さなかった結末にホッとした人も多かっただろう。デッカーに懐いたと見せかけ攻撃するような小ズルさも見せたが。あちこちに『ウルトラセブン』#3を意識したシーンもあった。
 前話は通信販売で怪獣を送り込んだ宇宙人で、続けて宇宙人が連れてきた怪獣の話だが、今回のピット星人に悪意はない(もっとも原典のピット星人は、『セブン』#3で「地球人の男は美少女に弱いことが判明した」と言い、以後も悪い宇宙人として登場しているが)。GUTS-SELECTもエレキングを殺さないよう頑張っている。過去の防衛チームもむやみに怪獣を殺さず、時折り保護にも努めたが。しかし今回はミラクルタイプが現われなかったら、どうしようもなかっただろう(笑)。


 話の中心はヒロイン・イチカだ。前話ではツーリングが趣味でユノハナを訪れたことがあると言った。むかし犬を飼ったことがあり、エリーを可愛がっているユウコの気持ちを理解した。ハネジローにMEGA-EARTHのことを聞き出して口止めした。その後、ハネジローはカナタから変身することを口止めされていることと併せて「隊員たちは秘密が多い」と独り言をするのはその通りで笑う。
 イチカの独断行動は許されるものではないが、GUTS-SELECTはエレキング保護に向けて動き出した。ムラホシがいつもの丁寧な口調で、勝手な行動を咎めつつ、彼女が思うような頭の固い組織ではないと言うのは彼らしい。
 誤ってMEGA-EARTHがエリーを暴走させてしまう。その後、サワ副隊長が赤ぶちメガネの教師姿でエレキングの正しい飼い方を伝えるが、怪獣のことを詳しく知っているなぁ。


 冒頭でエレキング襲来で気絶したイチカをユウコはひとりだけでよく自身の下宿まで運んできたな。ユウコを演じた中村守里(なかむら・しゅり)は、NHKの特撮変身ヒーロー『超速パラヒーロー ガンディーン』(2021)でも清名理央を演じていた(『ガンディーン』も続編を希望!)


特別総集編1「マルゥルの帰還」


 これまでのウルトラシリーズでも、前回までの映像を繋ぎ合わせて「総集編」は作られてきたが、今回はちょっと違う。
 TPU技術部・特務3課課長のホッタマサミチは、多忙な日々を送っていたが、そこへかつていっしょに仕事をしたメトロン星人マルゥルが戻ってきた。GUTS-SELECTのメンバーで前作『トリガー』にもレギュラー出演していたマルゥルの口からマナカケンゴがウルトラマントリガーだと明かされる。映画『ウルトラマントリガー エピソードZ』の映像も交えて、ケンゴが超エネルギー・エタニティコアを制御して帰還し仲間たちから迎えられたことや、その時に起きた戦いについて語られた。『ウルトラマントリガー エピソードZ』をまだ観ていない人にも嬉しい趣向だ。
 これからもマルゥルとホッタは、作品世界のウラ側でGUTS-SELECTの新兵器開発に頑張るのだそうだ……。


第6話「地底怪獣現わる! 現わる!」


 ソラフネシティの市民公園でササメダケの花が120年ぶりに咲いて不吉な予感が。空に虹が出現した直後、地底怪獣パゴスが姿を見せた。カナタとリュウモン隊員は調査に。地下の鉱物を採掘する工場が建てられ、それが原因で暴れているらしいと推測する。直後にパゴスが姿を見せる。
 出現してからの移動距離が大きいことに疑問を持ったサワ副隊長。リュウモンは工場を破壊するパゴスに立ち向かって負傷。傷は大したことはなく、復帰したリュウモンはトレーニングを続けながら、カナタに人を救う自らの任務を完璧にやり遂げなくてはいけないと告げる。パゴスの出現地点から地底の生息地点も分析した。ムラホシ隊長はカナタとイチカに周辺住民の避難を、リュウモンにGUTSファルコンでの出撃を命じた。


 住民避難が進んだところで、ファルコンも地底のパゴスを発見した。カナタはデッカーに変身して戦うが、地面から突き出したムチが足に絡みつく。新たな地底怪獣グドンだ! パゴスとともにデッカーを地底に引きずり込む。追うファルコン。やがて地下に開けた大空洞があり、続いて地底怪獣テレスドン、地底怪獣ツインテールの群れも姿を見せる。光線や火炎攻撃をデッカーに。空洞空間で巧みに飛行してデッカーを援護するファルコン。ディメンションカードで怪獣アギラを出現させ、アギラはツノにエネルギーを集中した体当たりでテレスドンを葬った!
 さらにファルコンから撃ち出されたマーカー頼りにムラホシ・サワの搭乗するナースデッセイ号からのネオマキシマ・ナースキャノンがパゴスやツインテールを粉砕! グドンもミラクルタイプの超能力で倒された。


 戦いが終わったあと、リュウモンは自分も実はむかし、TPU隊員に助けられたことがあると告げた。



 #4同様、脚本は中野貴雄。監督は辻本貴則。セットを用いた特撮カットが目立つ。迫るパゴスに逃げ出す人々を建物の室内から描き、次に建物の外からパゴスが突っ込んで建物を壊す様子を撮った。
 パゴスは『ウルトラQ』(1966)に登場し、『ウルトラマンタイガ』(2019)以降のウルトラシリーズにも毎回出演。今回も「ササメ竹の開花」や「空に虹」など『ウルトラQ』#18に通じるシーンもある。『ウルトラマントリガー エピソードZ』にも登場したばかりで、そのことにも言及されていた。


 前回のイチカに続いてリュウモンが主役の話。ぶっきらぼうな言い方をし、#1~2ではカナタと衝突したが、自らの任務に完璧を期している責任感が強い人物として描かれた。いつもカナタとは会話で毒づいているが、ちゃんと応じているし、カナタが人に隠れて努力していることも知っていたことが語られることで、根拠のない空元気のように見える主人公・カナタのキャラも立てている。最後にカナタにニヤリと笑ってみせる。むかし彼を助けたTPU隊員とは誰で、今後に判明して登場するのだろうか?


 パゴスがメインと思ったが、後半では、『ウルトラマン』(1966)のテレスドン、『ウルトラセブン』(1967)のアギラ、『帰ってきたウルトラマン』(1971)のグドンツインテールと次々に怪獣が出てきた。予想外の出演だ。ウルトラ怪獣ファンは狂喜しただろう。観たところ造形もオリジナル通りで、ツインテールの群れもマニア向けの出来のよいリアルな高額ソフビ人形をデジタル合成で膨大な数に見せている。


 ストーリーの進み方だけでいえば、パゴスとグドンだけでも済んだのだろうが、他の怪獣が登場することでイベント的には盛り上がる。グドンはいつの間に光線を撃てるようになったのか? アギラもツノにエネルギーを集中させて突進し、テレスドンを倒すなんて強くなったなぁ。


 ちなみにパゴスは『ウルトラセブン』の初期企画ではカプセル怪獣で使用される予定だったことが70年代末期に発行されたマニア向け書籍『別冊てれびくん② ウルトラセブン』(78年)で明かされて以来、そのことが知られている。グドンツインテールと捕食関係にあり両方ともにムチを持つ。『帰ってきたウルトラマン』#5でも同時に登場したが、設定を聞かされておらずデザインした池谷仙克いけや・のりよし)は困惑したとか。


 地底の空洞空間での戦いは、注意して見ると幾つか「?」が(科学考証などに詳しいわけではないが)。デッカーがパゴスとグドンに地下に引きずり込まれたあと、その穴にファルコンも垂直に急降下していって地底空洞に入るが、そんなにうまく操縦できるのか?(笑) マーカー頼りにネオマキシマ・ナースキャノンを撃ち込むが、エネルギーの束が穴から一直線にパゴスに命中するのも都合が良すぎる気が。


 #3ではゴモラに憑りついたスフィアは、#4からずっと登場していない。


第7話「希望の光、赤き星より」


 スフィアが地球全体に張ったバリアにより地球と連絡が取れないままの火星。人々を励まして戦っている前作『トリガー』の主人公・マナカケンゴ。共に戦うタツミ元隊長ら旧・GUTS-SELECTの元隊員たち。そんなケンゴの前に姿を見せた超古代文明の巫女の亡霊・ユザレは地球を守ってくれと訴え、新アイテム・ウルトラデュアルソードや新カードを託す。スフィアとの戦い後、アキトがカードからスフィアの特性を分析し、スフィアに擬態しバリアを突破して地球に潜入することができるようになる。
 ケンゴはウルトラマントリガーに変身して地球に。一方、地球では地下からの異様な気配を検知していた。ファルコンで調査に向かうカナタを、地面から複数の植物の蔓が襲う。ウルトラマンデッカーに変身したが、蔓に捕まってしまう。そこへスフィアのバリアを突破したウルトラマントリガーが蔓を掃討する。人間の姿に戻って対面するケンゴとカナタ。互いに笑い合う。


 ケンゴは空中母艦・ナースデッセイ号の艦橋でムラホシら現・GUTS-SELECTメンバーと言葉を交わす。ケンゴはどうやって火星から地球に来られたのか、カナタのフォローもあってゴマカす。その後、カナタとふたりだけで語り合う。人それぞれにできることは違う。自分に何ができるのか、何をしたいのか、いつか自分自身で答えを出す時がきっと来ると言う。
 直後に前作『トリガー』のラスボス怪獣・邪神メガロゾーアがスフィアを取り込んで復活、都市を襲う。地面に不時着してしまうナースデッセイ号。意を決したケンゴとカナタはトリガーとデッカーに変身する。
 メガロゾーアの触手をかわしながら、ウルトラマントリガー・パワータイプとウルトラマンデッカー・ストロングタイプに変身して攻撃! さらにトリガーはウルトラデュアルソードで斬りつける。だがメガロゾーアの奥に死んだはずの悪の女ウルトラマン・カルミラの影を感じてひるんでしまい、トドメが刺せなかった。



 脚本はハヤシナオキ。監督は坂本浩一。前作『ウルトラマントリガー』のメインスタッフで、同作の序盤と結末も手掛けた。今回のトリガー客演編に相応しい人選だ。実際、ヒーロー共闘のイベントを見事に「こういうのを見たかったんだ!」とアクション付きで撮ってくれていた。
 『デッカー』の世界は『トリガー』の世界と同じでその未来の時代なのだ。火星で頑張るケンゴの姿に加え、アキト隊員やタツミ隊長の姿も。サクマやヒマリ隊員も火星にいた。「ウザい」や「スマイル、スマイル」と前作でもよく出ていた定番台詞も飛び出し、アキトからユナを案じる言葉も。敵は前作最後の強敵・メガロゾーアが、本作の主敵・スフィアを取り込んで復活。相手にとって不足はない。


 我々視聴者には1年、劇中では10年の時が流れている。1年前の『トリガー』#7~8の前後編にはケンゴと『トリガー』の前作『ウルトラマンZ』(2020)の主人公・ハルキとゼットとの共演があり、さらにその1年前の『ウルトラマンZ』#6~7の前後編ではハルキ&ゼットと『ウルトラマンジード』(2017)の主人公リク=ジードとの共演編があった。『Z』以降のここ3年のウルトラシリーズの序盤は、先輩ウルトラ戦士の共演が恒例イベントとなっている。
 先輩たち同様、仲良くなるケンゴとカナタ。ケンゴが述べたことは先の戦いで学んだことのアドバイスだ。他にもケンゴの回想で『トリガー』最終回ラストでの消滅するカルミラのシーンが流れたり、カナタからデッカーとの出会いを聞いいたケンゴはウルトラマンリブットからダンスを学んだ(!)ことを語ってカナタと踊るなど(笑)、『トリガー』を思い出させるシーンがあちこちに。邪神メガロゾーアとの戦いでも、バックで『トリガー』の主題歌「Trigger」が流れればもっと盛り上がったと思うのだが……。


 冒頭に登場した巫女ユザレは、前作『トリガー』での衣装とはちょっと違う。トリガーとデッカーは出自が違うウルトラマンで、カナタもトリガーがケンゴ本人(前世での姿・トリガーダークに芽生えた良心の輪廻転生)だとはまだ知らない。そういえばケンゴの育ての母・レイナは再登場しなかったが、今どうしているのだろう? 火星へ町内会での旅行中だったカナタの両親の安否については言及されていた。
 ケンゴが火星から地球へ来たことが、ムラホシ隊長らからどうやって来たのか問われて曖昧にはぐらかされている。この手の番組ではいつものことだが、カナタがファルコンで発進してから蔓に落とされたものの、どうやって無事に帰還したのか説明されていなかったし、メガロゾーアの攻撃でナースデッセイ号が不時着したあと、ケンゴとカナタは変身して出撃していったが、戻ってからその不在をどう説明したのか? 都市の光景には新宿都庁ビルも見える。ウルトラデュアルソードは、バンダイの意向がミエミエの玩具っぽいデザインだ。


 共闘は次回も続く。『デッカー』はますます面白くなる。


第8話「光と闇、ふたたび」


 邪神メガロゾーアを逃がしてしまったケンゴを咎めるカナタ。地上では人々が急に倒れ出すという事態に。駆けつけたカナタ・イチカリュウモン・ケンゴ。そこで前作『トリガー』でケンゴが鉢植えで育てていたルルイエそっくりの花を見かけて、直後にカナタは花の香りを吸って気を失う。夢の中で煎餅を売るカナタだが、この行為が今やりたいことではないと目覚めた。
ケンゴはかつて育てたルルイエのせいだと言うが、GUTS-SELECT作戦室に入場してきた前作『トリガー』のヒロイン・ユナは、あの花はルルイエとは違う、以前にカルミラがエタニティコアと接触した時に取り付いたギジェランという植物であると指摘した。


 ユナは父であるシズマ財団のシズマ総帥の秘書としての仕事から笑みを顔に出さずに報告したあとで、ケンゴとの再会を喜び合う。除草剤が準備され、ギジェラン攻撃が準備される。ケンゴとユナもむかしの隊員服で作戦遂行に参加することに。


 夜間の戦い。巨大化した植物ギジェランが除草剤で弱ったところへナースデッセイ号が迫るが、メガロゾーアが立ち塞がる。ケンゴとカナタはウルトラマンに変身して立ち向かう。戦闘中に再びカルミラの気配も感じた。カルミラを今度こそ救おうとするトリガー。デッカーもミラクルタイプで、リュウモンやイチカも攻撃。ユナも自らの力を振り絞って超古代の前世での姿である巫女ユザレに変身する。


 皆の力でカルミラはメガロゾーアの中から引きずり出された! カルミラも「情熱的にいくよ!」と宣言して対メガロゾーア戦に参戦。トリガー・デッカー・カルミラ3人の攻撃がデモンゾーアに突き刺さる。
 戦いのあと、まだ自分が戦う意味がわからないカナタにケンゴは笑顔で応じ、ウルトラデュアルソードを預けるのであった。ケンゴはユナに見送られ、カルミラと宇宙へ飛び立った。



 前話同様、脚本はハヤシナオキ。監督は坂本浩一。ユナやカルミラも再登場し、デッカーとトリガーの再共演、新旧GUTS-SELECT共同作戦の構成展開は、多くの特撮作品でもヒーロー共闘を撮ってきた坂本が適任だったと思う。『ウルトラマンX』(2015)#12~14の3部作や『ウルトラマンZ』#6~7同様の出色の出来だった。カルミラとよりを戻したトリガー……。
 本話では、『ウルトラマントリガー』のBGMも効果的に使っており、メガロゾーアとの戦いの前半では『デッカー』の主題歌「Wake up Decker!」を、続いて『トリガー』の主題歌「Trigger」が流れて、ドラマ的にも盛り上がる。前回の戦いで「Trigger」が流れなかったのは、今回のために取っておいたのだろう。


 ケンゴから問われ、ギジェランの花粉を受けたカナタが、何のために戦うのか悩み、まだ確固たる答えを出せていないあたりも、安直ではなくリアルな感じで良い感じだ。しかし、それはわからなくても、いま自分がやりたいことはこれだと進む。主人公の成長話としても良い。
 ケンゴは前作『トリガー』最終回でカルミラを救えなかったことを気にかけており、今回は光落ちとして救うことができた。しかしやや釈然としない。カルミラは超古代文明の時代から悪行を続けてきたし、メガロゾーア誕生もカルミラによるものだ。カルミラから悪行を悔いる台詞がほしかった。最後にカルミラの同胞でもある前作の悪のレギュラーであった闇の巨人・ヒュドラムとダーゴン復活の兆しさえも。それで良いのか?(笑)


 カルミラの声を演じた中堅アイドル声優上坂すみれは、『トリガー』最終回のすぐあと、またカルミラが出ると聞かされていたそうだ。余談だが、今年2022年のウクライナの戦争で、慶応大学を首席で卒業したとのウワサまで出たほどの才媛・上坂が大好きで学術的にも造詣が深かったロシアが悪者になってしまった。可哀想に。


 ギジェランは枯れていたが、ナースデッセイ号にトドメを刺されなかったみたいで。ナースデッセイ号は前話でメガロゾーアに不時着させられていたが、すぐに直ったのか? ルルイエも10年以上も咲きっぱなしなのか? #7に登場した服装が異なるユザレは『トリガー』に登場していたユザレとは別人なのか? ケンゴはマルゥルにも再会したのか?(そういえば、ホッタマサミチ役の田久保宗稔は、『デッカー』と並行して放映中の朝のNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』(2022)に主人公の兄をダマす詐欺師役で出演している。『ちむどんどん』には特撮出演者のキャストが多いのだ)


 カナタの夢の中で煎餅を買う客たち。よく見ると、ハネジローはじめGUTS-SELECT隊員たち。皆ノリノリの演技だ。


第9話「誰がための勇姿」


 街をパトロール中のカナタは少女ミカの接触を受ける。ミカはカナタの正体がウルトラマンデッカーだと知っており、自分の父である宇宙格闘家グレゴール人・グレースと勝負してほしいと言う。ミカとグレースはむかし前作のヒーロー・ウルトラマントリガーと勝負したさに来訪したが、スフィアの来襲でバリアを張られて宇宙に帰れず、地球に残留したままであった。カナタはグレースとも会ったが、彼は礼儀正しく卑怯なことを嫌う性格だった。


 その後、カナタはナースデッセイ号に戻り、GUTSグリフォン武装強化についての説明をアサカゲ博士から聞く。市街にどくろ怪獣レッドキングが出現。カナタらは出動する。そこにグレースが巨大化変身してレッドキングに戦いを挑んだ。善戦するが、彼の体の不調から不利に。カナタが繰り出したディメンション怪獣ウインダムやGUTS-SELECTの攻撃でレッドキングは退散する。


 GUTS-SELECTと対面するグレース父子。ムラホシ隊長はグレースとの試合を快諾する。特訓に興じる両者。ムラホシは貧しい生活を過ごすグレース父子のためお手製の食事を作ってあげる。


 郊外でのグレースとGUTS-SELECTとの特訓としての戦い。そこにスフィアに憑りつかれたどくろ合成獣スフィアレッドキングが出現! カナタはデッカーに変身してスフィアレッドキングに立ち向かうが、ムラホシにはグレースとの試合を続けるように手振りで伝える。だがスフィアレッドキングに苦戦するデッカーを見て、グレースはGUTS-SELECTに勝ちを譲って、スフィアレッドキングを羽交い絞めにして「自分ごと撃て!」と叫ぶ。
 GUTSグリフォンの新兵器・ハイパーソーンレーザーが発射される。爆発直前、ディメンション怪獣であるウインダム・ミクラス・アギラが召喚されてグレースはスフィアレッドキングから引き離された。グレースはムラホシの計らいでTPU医療施設に入院できることになった。



 脚本は皐月彩。小説家やマンガ原作者の顔も持つ、まだ20代の才媛だ。監督は#8~9のトリガー共演前後編に続いて坂本浩一
 宇宙格闘家が侵略の意図はなく勝負してほしいとウルトラマンに挑む異色の話。グレゴール人は同族の別個体が、『ウルトラマンダイナ』#31にも登場していた。ストーリーもそれを意識したところがあちこちにある。その時は『デッカー』#4にも登場した、『ダイナ』#11に登場した怪獣モンスアーガーの2代目を連れていて、ダイナとの勝負前座で倒してみせていた。本話で再び、周囲に剣が突き立ったようなプロレスのリングを押し立てる演出を見せ、変身直後に放った「滅亡へのスリーカウントを始めろ!」という台詞はリアルというより劇画チックだがカッコよい。


 前半のレッドキングとの戦いでも健闘し、街の人たちから讃えられている。そしてレッドキング。『ウルトラマン』(1966)での初登場以来、度々ウルトラシリーズに登場している人気怪獣だ。後半でスフィアに憑りつかれスフィアレッドキングと化したが、スフィアゴモラ同様に両肩や全身から水晶状の鋭いツノが突き出し、顔が凶暴でカラーリングはその名の通り本当に赤くなった。


 グレースと娘のミカ。グレースは格闘家としてのプライドは持つが、卑怯なことを好まず礼儀正しい好人物。ミカはカナタがデッカーと知ってそれをエサに試合を強要しようとするも、本当に父親が大好きでその身を案じている良い娘。グレース役の中村浩二はウルトラマンティガウルトラマンダイナ・ウルトラマンガイアの主に赤いパワータイプや強化タイプなどのスーツアクターも担当していたアクション俳優だ。


 スフィアにより母星へ帰還できず、貧しいが必死に生きている悪人ではないグレースとミカ。#5のピット星人もそうだったが、『ウルトラマンタイガ』に登場した地球の庶民にまぎれて生活している宇宙人たちのように、『デッカー』では他にも同じような境遇の宇宙人が登場しても設定的に問題ないと思う(『ダイナ』繋がりでコミカルなミジー星人やチャダビン星人などの再登場を希望・笑)。スフィアを新型コロナウイルスや戦災、宇宙人をコロナに苦しむ人々や戦災難民に置き換えてみれば現在の世相にも通じている。


 グレース親子に親切に接するムラホシ。料理が好きで、隊員たちにも料理を作っていると言う。エプロン姿も披露。サワ副隊長も交えてGUTS-SELECT全員でトレーニングするが、グレースに対して銃撃や戦闘機で攻撃することが特訓や勝負になるとは何か違うような(笑)。この試合の意図は冒頭でのカナタのように緩みがちなチームに喝を入れるためだったと解釈したい。


 グレースがスフィアレッドキングを羽交い絞めにし、「自分ごと撃て!」と言った時、デッカーがウルトラデュアルソードでウインダム・ミクラス・アギラの3体をいっぺんに呼び出して引きはがしたことに嬉しさを感じた人は多かったことだろう。もちろんデッカーがストロングタイプの力でそのまま引きはがした方が早かっただろうけど、それが作品のサービス精神というものである(笑)。


 なお、本話ではデッカーではなく、GUTSグリフォンが怪獣に対してトドメを刺すことで、防衛隊の有用性や存在意義を示すこともできていた。


第10話「人と怪獣」


 怪獣キングゲスラを倒して地下へ消えていく謎の怪獣が。サワ副隊長はその正体を探り、徹底した捜索を進めるも有力な手掛かりが見つからない。TPUでは新兵器・DG001(ディージー・ゼロゼロワン)の配備が間近であった。悩むサワを気遣う隊員たち。サワはむかし怪獣災害にあって、怪獣と人間との共存について考えるようになったことが「怪獣学」を学ぶきっかけになったと話す。続いてリュウモン隊員が怪獣の挙動からその怪獣が操られている可能性を指摘。サワは恩師・シゲナカマキのことを思い出す。
女博士でもあるシゲナカはかつて怪獣学の権威であったが、5年前に怪獣たちの遺伝子から新怪獣を作ってしまったことから、サワの反発を招いてTPUを去っていた。カナタとサワは山中の施設へ赴き、待っていたシゲナカと対面する。


 怪獣を操る力を手に入れたと語るシゲナガは、新創獣ネオメガスを目覚めさせる。崩れる瓦礫の中で、カナタはデッカーへと変身、手のひらにサワを乗せて救いだす。ネオメガスと戦うデッカー。サワは駆けつけたイチカリュウモン隊員の援護でシゲナガを拘束し、ネオメガスを操っていたペンダントを破壊する。
 しかしネオメガスは凶暴化! ウルトラデュアルソードやセルジェンド光線を寄せ付けず、口からの光線連打で圧倒する。正面からの光線撃ち合いでデッカーは負けたと思いきや間一髪、駆けつけたGUTSホークに救出される。空中でデッカーはストロングタイプに変身し、ネオメガスに必殺技・トルネードブレイカーを食らわし爆砕する。


 連行されるシゲナガにサワは、


「私は(怪獣との)共存なんて大それたことは考えていません。自分にそんなことが成し遂げられるとも……。ただ……出来ることをしたいだけです! 無駄な争いを避け、ひとつでも多くの命を守れる道を探したい! 人の命も、怪獣の命も! それだけです」


と主張する。


 脚本はストーリー構成(メインライター)を担当し、#1~#3も執筆した根元歳三。監督は越知靖。『ウルトラマンマックス』(2005)から助監督、『ウルトラマンタイガ』(2019)で監督デビューした御仁だ。


 これまでもウルトラシリーズで問いかけられてきた人間と怪獣の共存を扱った。このテーマを作品全体のテーマとしていた『ウルトラマンコスモス』(2001)を思い起こす。『ウルトラマンダイナ』(1997)#16「激闘! 怪獣島」をベースにしていて、同話でもネオメガスならぬハイパークローン怪獣ネオザルスが登場している。本話のTV-CMにウルトラ怪獣を育成するゲーム『ウルトラ怪獣モンスターファーム』が流れるのは皮肉だが。
 怪獣災害に対抗し、ウルトラマンに替わる強い力を持とうとネオメガスを作ったシゲナガ。我々の周りでも、熊や猿、鹿や猪の獣害が年々激しくなり、問題になっているのを思い起こす。しかし怪獣が一方的に操られるはずがない。


 ウルトラシリーズでもこれまで怪獣を作るマッドサイエンティストは登場したが、シゲナガのような女性博士は珍しい(『仮面ライダー』(1971)ではコブラ男を改造した綾小路律子がいるが)。スポンサーとなった国家や企業があるとされ、冒頭の怪獣出現はデモンストレーションだったと言う。シゲナガは自分が作ったネオメガスへ愛情を感じていない。


 対するサワのセリフは、『ウルトラマンコスモス』並みの非現実的で楽観的・牧歌的な「怪獣と人間との共生」とは一線を画しているあたりが、現実的で好感が持てる。しかし#5でもエレキングの飼育に賛成したように、彼女は怪獣を根絶してしまうような対処には懐疑的だろう。
 本話のラストではサワが「怪獣に対する正しい手段を見出せないが、それでも被害や不幸を最小限にするための努力を続けていく!」とシゲナガに宣言するシーンと、サワを演じる元アイドルでAKB48出身の宮澤佐江の涙目だが腰の据わった熱演も実に決まっている。コミカルなマッドサイエンティストとして描かれていた『ウルトラマンZ』のアイドル系サブヒロイン・オオタユカ隊員の態度とも比べてしまった(笑)。しかし、サワにはオドけた態度のムラホシや根を詰めている姿を案じてくれる隊員たちという仲間がおり、シゲナガと違って決して孤独ではない。


 ネオメガスは巨大な背ビレが特徴だ。黒と赤のカラーリングで、鋭い棘や白目は見るからに凶暴で、実際にも強い。冒頭でネオメガスに倒されたのは海獣キングゲスラ。映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(2008)以来、度々再登場している怪獣だ。
 デッカーが出現した際、助けられた手のひらの上にサワがいて、遠方に対峙しているネオメガスの手のひらの上にもシゲナガの姿が……。カメラが別撮りの怪獣と人間の被写体を回り込むように移動していくが、両者の合成がズレずに見事に決まっている。ネオメガスに苦戦するデッカーがGUTSホークに助けられ、デッカーはGUTSホークをアーマーをまとうように合体して飛行! 防衛チームメカとウルトラマンが一体化するなんて実写作品では初めてだ。
 「俺がよける! お前はまっすぐ前だけ見てろ!」。GUTSホークを操縦する人工知能・ハネジローの絶叫台詞もシブいし、飛行可能なウルトラマンに防衛隊の戦闘機が合体したことにも理由を付けることに成功している。必殺技・トルネードブレイカーを喰らいネオメガスが全身を発光させながらデッカーの肩に噛みつくシーンもCGながらお見事。
 本話は脚本も特撮も決まった秀作エピソードとなった。


第11話「機神出撃」


 DG001ことGUTS-SELECTの巨大ロボット・電脳魔人テラフェイザーが完成。稼働実験が行われ、カナタたちも立ち会うことに。だがテラフェイザー空輸中に変形闇怪獣ガゾートが襲いかかり、続いて到着時に入れ替わりで稲妻怪鳥ライバッサーが襲来する。アサカゲ博士に操作されるテラフェイザー。前作『トリガー』のレギュラー悪であった闇の3巨人との戦いを想定したロボットで、以前から開発が進められていたとされる。
 TR粒子をエネルギー源とし、強力な武装を持つ。怪獣ゴモラやデスドラコがスフィアを警戒していたように、出現したガゾートやライバッサーもデスフェイザーを警戒しているのでは? と危惧するムラホシ隊長。ライバッサーに稼働実験を兼ねて挑んだテラフェイザーだったが、実戦経験も少なくて電撃を受けて中枢を焼き切られて倒される。


 カナタやリュウモン、イチカやアサカゲ博士は、人工知能のハネジローをテラフェイザー内部に組み込むことで再起動させようと平原で準備するが、ライバッサーに代わって幼体で人間サイズの稲妻怪鳥ヒナバッサーが複数で襲いかかってくる。必死に駆ける4人。カナタがヒナバッサーに捕まって空へ連れ去られる。カナタは変身して等身大サイズのウルトラマンデッカーとして地上へ着地。リュウモンやイチカを援護する。


 デッカー・ミラクルタイプの超能力での瞬間移動でテラフェイザーの中へ入れたアサカゲ博士は再起動に成功。テラフェイザーはライバッサーと再戦。TRビーム砲も駆使して圧倒的な力で優勢に戦うが、オーバーヒートを起こして再び停止する。デッカーは巨大化して戦いを引き継ぐ。ウルトラデュアルソードを振るってライバッサーを撃破! 戦いが終わってからカナタの姿へと戻って皆の許に帰ってきて、空中でデッカーに助けられたと釈明する。皆もそれを疑わない。無事だったアサカゲ博士も笑顔で駆け寄ってきた。



 監督は前話同様に越知靖。脚本は足木淳一郎。再編集番組『ウルトラマン列伝』(2011)では複数名が担当していた「構成」(放送台本)職のひとりや音響効果として参加。『ウルトラゼロファイト』第2部(2012)で映像作品の脚本家としてデビュー。2010年代のTVのウルトラシリーズでも総集編の「構成」で活躍。並行してイベント『ウルトラマンフェスティバル』(1989~2020)や『お正月だよ! ウルトラマン全員集合!!』(2010頃~)転じて『ウルトラヒーローズEXPO(エキスポ)』(2015~。2021年から『ウルフェス』の後継イベントとして夏にも開催)のライブステージの脚本&演出も担当している。TVシリーズでも『ウルトラマンタイガ』(2019)でデビュー。前作『ウルトラマントリガー』から「シリーズ構成」のサブ職に昇格し、総集編を含めて複数本の脚本を担当してきた御仁だ。


 ロボット兵器・テラフェイザー配備をめぐる話となっている。テラフェイザーは映画『ウルトラマンティガウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』(1998)に登場した電脳魔神デスフェイサーが元ネタ(デスフェイサーは地球平和連合・TPCが建造した電脳戦艦プロメテウスが侵略宇宙人によって人型に変形させられた姿だった)。冒頭の雲の中を空輸される姿は、巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)#18に登場したエヴァンゲリオン3号機も連想させる。スフィアに憑りつかれて悪役へと転じてしまうと誰もが想像していただろうが……。


 テラフェイザーを攻撃するライバッサーは鳥型の怪獣で、『ウルトラマンオーブ』(2016)#1のマガバッサー、『ウルトラマンR/B』(2018)#5に登場したグエバッサーの着ぐるみの色替え微改造であることは我々マニアにはミエミエだが、並行宇宙の地球であればどこにでも存在する近縁の怪獣だとの怪獣博士的な解釈もできて楽しい。人間と同じ大きさの幼体・ヒナバッサーも複数連れており、GUTS-SELECT隊員たちとの等身大サイズでの戦いも披露するパターン破りの楽しさも披露する。
 怪獣ガゾートも前作『トリガー』や映画『トリガー エピソードZ』に登場していた怪獣だが、原典のガゾートはもちろん『ウルトラマンティガ』(1996)で2回登場したのが初出。今回は顔見せだけで、さっさと引き揚げたが。


 テラフェイザーの姿に、カナタはむかし巨大ロボット・キングジョーストレイジカスタムが出現したことを思い出す。そこに前作『ウルトラマントリガー』#7に登場した際の前々作『ウルトラマンZ』中盤から登場した防衛隊の巨大ロボ・キングジョーストレイジカスタムの映像がキチンとインサートされるのも嬉しい。
 テラフェイザーがもともと闇の3巨人との対抗用に開発が始まったとも語られているのも劇中世界内での理に適っていてこれも嬉しい。#10でもサワがエタニティコアについて語るなど、むしろ子供たちこそが好きそうな過去のウルトラシリーズの設定との関連性を忘れずに拾ってきて、たとえ虚構の作品でもこういった処置に子供もマニアも世界観に深みや広がりや実在感を感じて喜ぶのだ。こういう要素は年長マニアだけが喜ぶような、悪い意味でのマニアックさではない。


 テラフェイザーは重武装だが、搭載したTRビーム砲が空中で突然反射してライバッサーを追跡までしている! どんな原理で?(ウラ設定を調べてみると周囲に散布されたTR粒子を用いて屈折させているそうだが、劇中では説明がない) 起動実験シーンにTPUの一般隊員が多数いることでリアリティーも醸している。途中でいなくなりラストの片づけでは姿が見えるが、カナタたちがハネジローをラグビーで運んでいた時、どこにいたのだろう?(笑) カナタ・リュウモン・イチカ・アサカゲ博士が走ってハネジローを運ぶシーンはラグビーというか、年長世代は『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975)の必殺技・ゴレンジャーハリケーンのシーンも連想する。等身大のデッカーはリュウモンやイチカに身振り手振りで意志を伝えるのに苦労し、ハネジローに通訳してもらったが、ウルトラマンも日本語を喋れるんじゃないか?(笑)


第12話「ネオメガスの逆襲」


 #10で爆砕した怪獣ネオメガスの残骸のトゲにスフィアソルジャーが憑りつき、新創合成獣スフィアネオメガスが誕生する。テラフェイザーは調整中。GUTS-SELECTは市街へ向かうスフィアネオメガスを迎撃する。GUTSホークの攻撃でツノを破壊するも、傷跡にスフィアソルジャーが取り着いて即座に再生される。
 やむをえずGUTSホークの操縦を補佐していた人工知能・ハネジローはパイロットのカナタをコクピットから強制的に放出して強引にデッカーに変身させる! スフィアソルジャーに援護されたスフィアネオメガスは強くなっており、デッカーを圧倒する。リュウモンとイチカを助けようとして敗れるデッカー。
 その後、スフィアネオメガスは#1に登場した怪獣スフィアザウルスの巨大な前脚のように両腕を地面に打ち込み、エネルギーを地底に注入する。再戦を期するムラホシ。カナタは自分自身を越えようと体を鍛え、リュウモンやイチカもこれに続く。


 諦めずに特訓するカナタを知ったハネジローから、テラフェイザーの切り札・TRメガバスターの使用が提案され、ムラホシやアサカゲ博士は承認する。サワ副隊長がカナタ・リュウモン・イチカ、その他TPU隊員を率いて指揮する。ハネジローが操作するテラフェイザーがスフィアネオメガスを攻撃。サワや隊員たちはスフィアソルジャーに対する。
 戦いの中でカナタはデッカーに変身し、テラフェイザーとともにスフィアネオメガスへ。ウルトラデュアルソードによるデッカーミラクルタイプとトリガースカイタイプのカードの力で張ったバリア技・ミラクルスカイスクラムで護られたテラフェイザーからTRメガバスターが発射! 高エネルギーの濁流はスフィアネオメガスを撃破した。


 だが戦いが終わってから、ハネジローのデータを解析していたアサカゲ博士は、ロックされていたデータの中を開けてカナタの正体がデッカーだと知ってしまう。



 前話同様、脚本は足木淳一郎。監督は越知靖。#10で登場した怪獣ネオメガスがスフィアネオメガスとして復活。デッカーとの再戦で勝利し、テラフェイザーと再戦する。「人と怪獣の関係」について#10でも問うていたが、本話で本作の人類は強い武器を手に入れた。人類が強い武器を手に入れたことの危険性は、『ウルトラセブン』(1967)#26を発端に21世紀以降のウルトラシリーズでも度々問われてきた。『ウルトラマンZ』(2020)終盤でも防衛隊の巨大ロボこと特空機4号・ウルトロイドゼロをめぐってじっくりと描かれていたことが記憶に新しい。もっとも本話では、その問いかけがされておらず、テラフェイザーを加えたGUTS-SELECTがスフィアネオメガスを倒す話が軸になっているが。


 #9でGUTSファルコンとGUTSホークが合体したGUTSグリフォンが放ってスフィアレッドキングを粉砕したハイパーソーンレーザーをDG計画001に搭載、TRメガバスターとして使用されることに。#10ではDG計画001ことテラフェイザーの存在が明かされ、#11では稼働試験でお目見え。そして本話で本格的に実戦に参加。必殺技・TRメガバスターが発射された。発射シークエンスのディテールが丁寧に描かれ、胴体中央の発射口からエネルギー流が放出するさまは圧巻。発射された衝撃でテラフェイザーの表面が剥がれたり、風圧でサワやイチカが飛ばされそうになったり、宇宙戦艦ヤマト(1974)の波動砲機動戦士ガンダムシリーズのハイパーメガ粒子砲を彷彿させる。


 スフィアに憑りつかれて、トゲだけから再生したスフィアネオメガス。スフィアの白いトゲが追加され、重量感がアップしている。デッカー・ストロングタイプとも互角に戦い、スフィアソルジャーの援護もあって倒してしまった。


 敗れたデッカーことカナタが落ち込まず、すぐに自分に特訓を課す姿は新鮮。その姿はハネジローをも刺激する。戦う意味を問われて、眼の前に困っている人がいるから頑張ると言うカナタに、アサカゲ博士は


「善意というものは、逆に人を傷つける結果になることもある」


と話している。これは『デッカー』のシリーズ後半の展開とも重なっていく伏線としての言葉なのか? そしてアサカゲ博士はハネジローのデータを調べて、カナタがデッカーだと知ってしまうが……。


 ハネジローがカナタを飛行中のファルコンから強制排出したり、自身が操縦しているテラフェイザーをワザと横転させてその土煙に紛れてバレないように変身させるなど、カナタをリードしている。ハネジロー初登場の時点からは想像もできない関係性になった。


 本話の後半の戦いや先の#10前半のロケはお台場で行われたようだ。はるか先に我らが東京ビッグサイトが見える(笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2022年9月号』(22年9月25日発行)所収『ウルトラマンデッカー』前半合評より抜粋)


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スーパー戦闘 純烈ジャー ~「ユルさ」&「王道」の接合にこそ、戦隊・日本特撮・娯楽活劇の存続がある!?

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 映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』(21年)第2作『スーパー戦闘 純烈ジャー 追い焚き☆御免』(22年)が公開記念! とカコつけて……。映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』評をアップ!


映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』 ~「ユルさ」&「王道」の接合にこそ、戦隊・日本特撮・娯楽活劇の存続がある!?

(2021年9月10日東映系公開)
(文・久保達也)
(2021年10月3日脱稿)

*「ラブ・ユー・チェンジ! スーパー戦闘、純烈ジャー!!」


 ムード歌謡コーラスグループ「純烈(じゅんれつ)」が初主演した、彼らが同姓同名で登場して戦隊ヒーローにも変身して戦う! といった特撮映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』(21年・東映ビデオ)が、全国77館という小規模な興行ながらこのほど公開された。



 「温泉の神」(笑)が正義のヒーロー「純烈ジャー」として選んだ者に手渡した変身アイテム「純烈マイクチェンジャー」。それは、赤・青・紫・緑と各自に色分けされただけの単なるフツーのマイクロフォンであった(笑)。


「愛の熱湯、火傷(やけど)にご注意! 純レッド!」


などと名乗る際もそのマイクをまんま使用する。


 そして、変身直後の「純烈ジャー」は、左手に各自の色に染まるバスタオルが入った黄色い洗面器をかかえている(爆)。


 また、クライマックスにおいて、「温泉の神」は「純烈ジャー」に最強の飛行メカとして「スーパー銭湯機(せんとうき)・純烈026(おふろ・笑)号」を与える!


 これは、


主翼の両端にはシャンプーとリンスのボトル
コクピットの上には水とお湯をひねり出す栓(せん)
●それと尾翼をつなぐかたちでシャワーホースがそびえ
●機体底部には水道の蛇口とやはり洗面器


などがゴテゴテと装飾された、一見とんでもないデザインの戦闘機なのだ!


 だが、それらは決してギャグとして機能させるためだけに描かれたものではない。


 単なるマイクにしか見えないマイクチェンジャーで「純烈」が「ラブ・ユー・チェンジ!」と声をそろえて叫ぶ、様式美としての変身アクション!


 「スーパー銭湯」ならぬ「スーパー戦闘、純烈ジャー!」の名乗りとともに、近年では「本家」でもあまり見られない


●赤
●青
●紫
●緑


ときれいに色分けされた噴煙が各自の背景にドカ~ン! とわきあがる華(はな)のある演出!


 そして、


●「純レッド」が日本刀
●「純ブルー」がハンドガ
●「純バイオレット」がロッド型武器
●「純グリーン」が二刀流


となる短刀などのさまざまな「マイク・ウェポン」(笑)を召還し、それを手にした「純烈ジャー」が敵集団を倒すカタルシス


 軽自動車の車内で撮影された(笑)、あまりに狭苦しいコクピット内で「純烈」は口々にボヤく。


 しかし、「FLY(フライ)」なるボタンが押されるや、発進ゲートが開いて「026(おふろ)号」を乗せたカタパルトがゆっくりとせり上がる!


 合成された御老公の湯の屋上から発進して高速飛行し、時空転移能力までをも披露する、実にリアルでSFチックな特撮メカ描写!


 一見おマヌケに見えるアイテムやメカがカッコよく見えるように心血が注(そそ)がれた「アクション演出」と「特撮演出」はまさに本気度満点であり、これらは「本家」のスーパー戦隊にも見られる演出センスそのものなのだ!


 なお、「純烈ジャー」の変身時やマイク・ウェポン召還時の「スーパー銭湯機・純烈026号」の描写などには、『仮面ライダー電王』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)の正義側のイマジン(怪人)・リュウタロスや、近年では『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220503/p1)の魔進ファイヤ=レッドキラメイストーンなどを演じ、大の特撮好きで知られる声優の鈴村健一氏がリュウタロスや魔進ファイヤのようなはっちゃけた口調とは180度異なる、かなりシリアスな声でナレーションを入れており、画面に説得力とカッコよさを加味するのにおおいに貢献していた。


 さらに、最も秀逸かと思えるのは、「純烈ジャー」のデザインである。黒地に各自のパーソナルカラーのラインが走り、胸のプロテクターにはそれぞれの色で「純」と書かれている。頭部や両肩のメタリックな印象、さらに両足の関節部分にはまるで可動フィギュアのようなパーツ分けが施(ほどこ)されており、どちらかといえば戦隊ヒーローというよりメタルヒーローの趣(おもむき)が強いのが全員に共通する意匠(いしょう)なのだ。


 そして、


●白川が変身する純レッドには、カブトムシの触覚!
●酒井が変身する純バイオレットには、猛牛のツノ!
●小田井が変身する純ブルーの両耳部分には、ロッドアンテナ状のパーツ!


がそれぞれの頭部にデザインされている。


 これは明らかにかつて、


●白川氏が変身した、カブトライジャー
●酒井氏が変身した、ガオブラック!
●小田井氏が変身した、仮面ライダーゾルダ!


をモチーフとしており、往年のファンとしては狂喜せずにはいられなかったものだ。


 なお、劇中キャラと演者が同姓同名であるために、「現実世界」の歌謡グループである「純烈」メンバー諸氏の場合には「敬称」をつけ、「劇中キャラ」として登場する「純烈」メンバーは「敬称略」として表記していく。



 ちなみに、後述する後上(ごがみ)が初変身した「純グリーン」の頭部には、ゴーグルの上に「ふたつの星」が重ねてデザインされている。これは新星=ニュースターとしての意匠と解釈すべきところだし、後述するがもっと深い意味もある。


 そして、「純グリーン」の両腕にのみ、まるで1950年代におけるロック音楽の創始者のひとりである伝説の歌手として名高い故・エルヴィス・プレスリーを彷彿(ほうふつ)とさせる緑のビラビラ――正式な名称がわからない(汗)――がデザインされている! 左腕には熱湯と冷水を出すためのハンドルまで装着している特別仕様だ!


 「なんか、おまえだけメッチャ豪華やなぁ~」と、現実世界でも空想世界でも後上にうらやましがられてきた先輩たちが、逆にグリーンをうらやましがるのは微笑(ほほえ)ましいだけではなく、メンバー間の関係性の変化を最大に象徴する実にドラマ性の高い描写に仕上がっていたのだ。


*「純烈」 ~栄光までの軌跡(きせき)!


 一応の説明をさせていただくと「純烈」とは、


酒井一圭(さかい・かずよし)氏→『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1)の牛込草太郎(うしごめ・そうたろう)=ガオブラック
白川裕二郎(しらかわ・ゆうじろう)氏→『忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャー』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021110/p1)の霞一甲(かすみ・いっこう)=カブトライジャー
小田井涼平(おだい・りょうへい)氏→『仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021109/p1)の北岡秀一(きたおか・しゅういち)=仮面ライダーゾルダ――『龍騎』出演時の名義は「涼平」――
後上翔太(ごがみ・しょうた)氏


と、4名の内3名がかつて東映ヒーロー作品にレギュラー出演した経歴をもつメンバーで構成される歌謡グループである。


 ちなみに、『仮面ライダーアギト』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)に葦原涼(あしはら・りょう)=仮面ライダーギルス役で出演していた友井雄亮(ともい・ゆうすけ)氏も過去に所属していたが、ご存じのとおりで氏は2019年に女性がらみのパワハラのスキャンダルが大きく報じられたことにより、純烈の脱退どころか芸能界引退にまで追いこまれてしまった(汗)。2021年現在、友井氏は出身地の大阪市にある焼肉店の店長として勤務しているそうだ。


「夢がなくても生きていける……」


 かつて、仮面ライダーギルス=葦原涼はそんなセリフを吐いていた。まさに至言であろう。たいていの人間はそんなに明瞭な夢や大それた夢などは持っていない。夢を持っていた場合でも、それが実現できるとは思ってはいない。だからといって、人生に完全に絶望しているワケでもない。そんな中途半端な状態や適度にアキラめた状態が、大半の人間のリアルというものだろう。狭いながらも楽しい我が家や、たとえ孤独でも人付き合いに煩わされない気安さや平穏の価値も「ネクラ」や「陰キャ」だと否定せずに認めてあげるべきなのだ。
 しかしそういった心の平安は、現代社会ではふつうは「夢」とは認められずに、後ろ向きなものとして否定されてしまう。そして、むしろ「夢」を持て! 持たない方がオカシい! として、人々や特に内向的だったり謙虚だったりする子供たちや若者たちに、プレッシャーを与えてかえって厭世的にしたり劣等感を持たせてしまっているのではあるまいか!?


 友井雄亮氏と葦原涼を同一視するワケにもいかないが(笑)、そのセリフにかつて勇気づけられた視聴者としては、その返礼として友井氏の第二の人生にもエールを贈りたいところだ。



 さて、「親孝行」「紅白歌合戦出場」「全国47都道府県で唄うこと」を結成以来の目標としてきた「純烈」の誕生は15年近く前の2007年にさかのぼるそうだ。


 かのバカ映画の巨匠・河崎実(かわさき・みのる)監督作品の常連俳優でもあり、ものまね芸人で映画監督の顔ももつレイパー佐藤氏が監督したヒーロー映画『クラッシャーカズヨシ 怒る』(07年・Otaku Production――オタク・プロダクション(笑)――)に主演した酒井氏は、撮影中に右足を複雑骨折して40日間も入院するハメになった。


 その入院中、氏は昭和を代表するムード歌謡コーラスグループであり、筆者のような昭和の特撮世代にとっても、当時としても「懐メロ」として、テレビの歌謡曲番組などで散々に耳になじんできた『長崎は今日も雨だった』(69年)・『そして、神戸』(72年)・『東京砂漠』(76年)などの数多くのヒット曲を誇る「内山田洋(うちやまだ・ひろし)とクール・ファイブ」の夢を何度も見たらしい。


 これを「神」からの啓示(けいじ・!)だと考えた酒井氏は(笑)、「クール・ファイブ」のような歌謡グループの結成を思いつくに至った。そして、先述した白川氏・小田井氏・友井氏・後上氏にロックバンドの元ボーカルだった林田達也(はやしだ・たつや)氏を加えた計6人で「純烈」はスタートしたのだ――林田氏は家庭の事情で2016年末に脱退した――。


 林田氏以外のメンバーはほとんど歌の経験がなかったことから、数年間のボイストレーニングや下積みを経て2010年にようやくデビューを果たしたものの、2012年に早くも当時所属していたレコード会社との契約を打ち切られるハメになったそうだ(汗)。


 「純烈」は歌える場所を求めて「キャバレー」や「健康センター」、そして流行りの「スーパー銭湯(せんとう)」など、全国各地を巡業の旅で回った。この地道な営業努力がやがて追い風となった。


 健康センターやスーパー銭湯に客として訪れていたオバチャンたち、もとい熟女・マダムのみなさま(笑)に、「純烈」のステージは熱狂的な大歓迎を受けることとなったのだ!
 2016年に発売した7枚目のシングル『幸福あそび・愛をありがとう』がオリコン演歌・歌謡曲ウィークリーチャートで初の第1位(!)となって以降、リリースしたシングルは同部門でそのすべてが第1位を獲得!


 2018年の大晦日(おおみそか)に放送された『第69回NHK紅白歌合戦』に、「純烈」は9枚目のシングル『プロポーズ』で初出場を果たしたのだ!


 ある意味では頂点に登り詰めたのにも関わらず、『紅白』の終了直後にも、「純烈」は本来のホームベースである関東圏内の「健康センター」をそのまま回り、深夜に待ちかまえていた大勢のファンに対して「凱旋(がいせん)ライブ」を行ったそうだ!
 これまで最も支えてくれた人々へのそうした配慮・姿勢こそが、「純烈」がその後も快進撃をつづけるに至った秘訣なのだろう。


*虚実ごちゃまぜで「純烈」をカッコよく描く!


 さて、本作は、


スーパー戦隊仮面ライダーの出身者が主演するのみならず、酒井氏が製作にあたって「僕らがかつて観ていた『電子戦隊デンジマン』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120205/p1)や『太陽戦隊サンバルカン』(81年)などのとてつもなく熱い部分を継承したい」と切望したこと
●後上氏が変身する純グリーンを、『電撃戦隊チェンジマン』(85年)のチェンジフェニックス以来、主に女形(めがた)のスーツアクターとして活躍してきた大ベテランの蜂須賀祐一(はちすか・ゆういち)氏
●白川氏が変身する純レッドを、『仮面ライダーバイス』(21年)の仮面ライダーリバイや『仮面ライダーゼロワン』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200921/p1)の仮面ライダーゼロワンなど、近年の主人公ライダーを務める若手の縄田雄哉(なわた・ゆうや)氏
スーパー戦隊超新星フラッシュマン』(86年)から『天装戦隊ゴセイジャー』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20130121/p1)に至る四半世紀に渡ってスーパー戦隊のアクション演出を手がけつづけた竹田道弘(たけだ・みちひろ)アクション監督が、実に10年ぶりに(!)戦隊に帰ってきたこと
●『地球戦隊ファイブマン』(90年)以来、スーパー戦隊メタルヒーロー仮面ライダーなど、東映ヒーロー作品の特撮を一手に担(にな)ってきた佛田洋(ぶつだ・ひろし)特撮監督が、特撮のみならず本編をも演出していること――佛田監督が戦隊の本編を演出するのは『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)以来だ――


 つまりキャストもスタッフもすべてが「本物」であって、バラエティ番組などによくある単なる「戦隊パロディ」のような安直な作りではないのだ。


 だが、本作に注目すべきところは決してそればかりではない。


 先述したようにムード歌謡コーラスグループ「純烈」の大きな特徴として、


●メンバー4名の内3名が元特撮ヒーロー役者であり、最年少の後上氏のみが特撮どころかそもそも演技が未経験だったこと
●グループ結成へと至ったのは、リーダーの酒井氏が「神」からの啓示を受けたこと(笑)
●結成からしばらくは苦難の道がつづいたが、健康センターやスーパー銭湯につめかけたオバチャンたちの大声援によって一躍メジャーな存在へと押し上げられたこと


 以上の3点があげられるのだ。


 本作で秀逸(しゅういつ)だと思えるのは、空想世界の戦隊ヒーロー「純烈ジャー」をカッコよく描くために、現実世界の歌謡グループ「純烈」の先述した大きな特徴をそのまま活(い)かすかたちで設定や物語が構築されていることだ。


 冒頭で「純烈」のメンバーがオープンセットのミニチュアのビル街に巨大化した姿で現れたと思いきや、同じミニチュアセットが背景に飾られた健康センターのステージで等身大の「純烈」が歌いだす描写が、本作の世界観を如実(にょじつ)に象徴している。


 本作に登場する「キャラクター」としての「純烈」を、「純烈ジャー」に変身する以外は現実世界に存在する「歌謡グループ」の「純烈」とほぼ変わらない姿で描いた作劇は、特撮ファンとしての視点・観点で捉えた場合にも地に足のついたリアルな印象が感じられたのは確かである。


 だが、その手法が用いられたのはスーパー戦隊仮面ライダーの「まじめ」な視聴者・観客の目線以上に、やはり「純烈」の最大の支持層であるオバチャンたち、もとい熟女・マダムのみなさまを意識してのものだろう。


 いくらヒーロー作品だとはいえ、あまりにも浮き世離れした印象だけを観客に与えたら、「アタシたちの純烈」(爆)もどこかに行ってしまうのだ。着ぐるみ怪人や怪獣・合体巨大ロボの登場や、戦隊ファンしか喜ばないような楽屋オチなどをあえて排除した最大の理由は、まさにそこにあるのだろう。


 そんな印象をギリギリ回避するために、オバチャンたちの目線からしたらウソ・絵空事にすぎるヒーロー誕生・変身・スーパーメカ・必殺技などの要素に、現実世界の「純烈」の特徴を絶妙にブレンドすることで説得力を与えた本作の作劇は、特撮ファンへの内輪ウケだけにとどまらない、「純烈」最大の支持層をスクリーンに釘づけにすること必至の完成度の高さも感じられたのだ。


*空想と現実にまたがる最年少メンバーの成長物語!


 本作で実質的な主役となるのは「純烈」のメンバーの中で最年少であり、特撮ヒーロー作品、そして演技の経験が初となる後上氏だ。
 ふつうに考えれば、すでに特撮を経験済みの酒井氏・白川氏・小田井氏のいずれかが中心となるところだろうが、あえてそうではない後上氏を主役に据(す)えたこと自体がまず秀逸である。


 劇中の「純烈」は現実世界同様に、健康センターやスーパー銭湯でのライブステージでオバチャンたちの熱い視線・声援を浴びる歌謡グループとして描かれている。
 だが、酒井=純バイオレット・白川=純レッド・小田井=純ブルーの3名には実は温泉の平和を守る伝説の歌い人「純烈ジャー」としてのウラの顔があり、とある浴場で高齢の男性が変死した事件に遭遇したのを機に、彼らは唯一(ゆいいつ)、「純烈ジャー」ではない後上に知られないように、極秘に捜査活動を展開するのだ。


 先輩たちが自分には何も云わずに陰で謎の行動に出ていることに、蚊帳(かや)の外にされた後上は苦悩する……


 本作のパンフレット(東映ビデオ・2021年9月10日発行)掲載のインタビューによれば、後上氏は自身のみが特撮ヒーロー未経験の元・大学生――東京理科大学!――であることについて、健康センターのオバチャンたちには「カタカナのヒーローの名前」よりも「大学の名前」の方が覚えてもらえる(笑)と、特にコンプレックスとは感じなかったそうだ。


 ただ、活動当初のころは「みんなヒーローなんだよな、いいなぁ」などと思っていたそうであり、本作で「スーパー戦隊」の撮影現場に20年ぶりに戻ってきた酒井氏・白川氏・小田井氏がスタッフたちと久々の再会を果たして、昔話に花を咲かせていたのを見て、やはりうらやましかったと語っている。
 なにか現実のアイドルグループに実写映画やアニメの劇中内アイドルを演じさせるような作品(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200621/p1)にも見られるダブル・ミーニングな作劇なのだが(笑)、そんな「純烈」のメンバー間の微妙な距離感をそのまま活かすように務めた作劇によって、特撮作品そして演技自体が初体験であった氏の成長物語が名実ともに描かれたことで、「純烈」ファンのオバチャンたちの感情移入を高めるには絶大な威力を発揮したかと思えるのだ。


 詳細は後述するが、劇中の後上は「4番目の新戦士」=「純グリーン」への変身能力を得るに至った。


 本作では「グリーン=緑」が「未熟」を意味するとされており実際、英語では「幼い」「若い」「青二才」などの表現を果実が熟していない色である「green(グリーン)」と呼称する用法があるそうだ。


●『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)の最年少メンバー・明日香健二(あすか・けんじ)=ミドレンジャーから、
●近年の『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191102/p1)のトワ=リュウソウグリーン
●『魔進戦隊キラメイジャー』(20年)の速見瀬奈(はやみ・せな)=キラメイグリーンに至るまで、


スーパー戦隊によっては「緑」のメンバーが存在しない事例もあったが、たしかに「緑」は「若さ」を最大にイメージするキャラに割り振られてきた色だった。


 「緑」=「未熟」という、万国共通かもしれないイメージは「純烈ファン」のオバチャンのみならず、我々特撮ファンにも説得力をもって伝わることだろう。


 もっとも、『魔法戦隊マジレンジャー』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110228/p1)では、小津(おづ)家の長男・蒔人(まきと)=マジグリーンが「緑」だったが、序盤では三男で末っ子の魁(かい)=マジレッドと戦闘中に兄弟ゲンカ(汗)する場面があったので、その意味では「未熟」ということだったのかもしれない?(笑)


*おもしろカッコいい=「本家」にあふれる魅力がここでも!


 さて、先述したように現実世界に「純烈」が誕生したのは、リーダーの酒井氏が「神」の啓示(笑)を受けて、「内山田洋とクール・ファイブ」のようなグループを結成しようと思いついたのが発端(ほったん)だった。
 その「クール・ファイブ」のメインボーカルを務めて、近年はソロ活動が多い大物歌手・前川清氏(!)が、本作では「温泉の神」=「御前川清(おまえかわ・きよし)」(笑)を演じているのだ!


 「神」はあくまでウラの顔であり、御前川はふだんは温泉施設「御老公の湯」(笑)で売店の店長を務めている。、カウンターでガーガーいびきをかいて寝てみたり、商品の菓子を平気でつまみ食いしたり、女店員とイチャついてみたりと職務怠慢もはなはだしい(笑)――女店員を演じたのは、『帰ってきたウルトラマン』(71年)のヒロイン・坂田アキを演じたことで有名な榊原(さかきばら)るみ氏の実の娘・松下恵(まつした・めぐみ)氏だ!――。


 筆者のようなロートル世代には、前川氏といえばバラエティ番組『欽(きん)ちゃんのドンとやってみよう!』(75~80年・フジテレビ)でコメディアンの萩本欽一(はぎもと・きんいち)氏にイジられたのを機にお笑いの才能を発揮して以降、その裏番組だった『8時だョ! 全員集合』(69~85年・TBS)や『ドリフ大爆笑』(77~98年・フジテレビ)など、お笑いグループのザ・ドリフターズ冠番組にたびたびゲスト出演しては、そのすっとぼけたキャラでお茶の間をわかせてくれた姿が印象深いところだろう。


 前川氏も「神」役での出演とはいえ、現実世界での氏のキャラとほぼ変わらぬ役どころであり(笑)、やはりステージでの軽妙なトークでオバチャンたちを笑いの渦に包んでいる「純烈」と氏によるボケとツッコミの掛け合い漫才的なやりとりが実に楽しいのだ。
 日曜朝放映の本家・スーパー戦隊も、元祖『ゴレンジャー』の時代はともかく、昭和の末期~平成の初頭からすでにそんな作風になって久しい。コミカル色の強い演出もまた、違和感どころかむしろ「スーパー戦隊らしさ」を感じさせるほどだった(笑)。


 さらに、「温泉の向こう側」(笑)=「別の時空」(!)に存在する「悪」として登場する、敵組織の描写も好印象だった。


 自身の永遠の美しさを保つために全人類から「若返りエキス」を奪おうとたくらむ、大物演歌歌手・小林幸子氏(!)が演じる「女王フローデワルサ」!


 その配下として、フローデワルサ四天王(してんのう)――「風呂で悪さしてんの~」の語呂遊びネーミング(爆)――が「純烈ジャー」の前に立ちはだかる!


●ザウナ
●ゾープ
●ガラン
●ジャワー


と名前こそは風呂に由来するものが元ネタであり、しかも全員の額(ひたい)には温泉を表す地図記号の刺青(いれずみ)があるが(笑)、


●ザウナは怪力!
●ゾープは剣術!
●ガランは射撃!
●ジャワーは格闘!


と、「本家」の敵幹部でさえ近年ではあまり見られないような、各自の特性を明確に差別化しているのには目を惹(ひ)いた。


 また、先述したように若返りのために人類からエキスを奪うフローデワルサの作戦自体は、良い意味で笑ってしまうものがあるが、それを忠実に実行する四天王は近年では珍しいほどに非情に徹した凶悪・凶暴な集団として描かれており、このバランス感覚の良さも「本家」ゆずりのものだろう。


 この四天王を演じた役者たちも、まるで「純烈」に合わせたかのように


●ザウナ役は、『仮面ライダーOOO(オーズ)』(10年)の伊達明(だて・あきら)=仮面ライダーバースや、オリジナルビデオ作品『宇宙刑事シャイダー NEXT GENERATION(ネクスト・ジェネレーション)』(14年・東映ビデオ)の烏丸舟(からすま・しゅう)=二代目宇宙刑事シャイダーなどを演じた岩永洋昭(いわなが・ひろあき)氏
●ゾープ役は、『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)の初期に登場した悲劇的キャラ・初瀬亮二(はせ・りょうじ!)=仮面ライダー黒影を演じた白又敦(しらまた・あつし)氏
●ガラン役は、『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)の防衛組織・Xio(ジオ)の隊員・貴島ハヤト(きしま・はやと)や、『仮面ライダーエグゼイド』(16年)の花家大我(はなや・たいが)=仮面ライダースナイプを演じた松本享恭(まつもと・うきょう)氏


と、4名中3名が特撮経験者であるのには注目せずにはいられない。先述した作品群では正義側・主人公側を演じることが多かった諸氏の徹底した悪役ぶりも大きな見どころのひとつだろう。


 なお、白川氏がかつて出演した『忍風戦隊ハリケンジャー』で尾藤吼太(びとう・こうた)=ハリケンイエローを演じた山本康平(やまもと・こうへい)氏も、「御老公の湯」に勤める垢(あか)すり職人であり、御前川の正体を知る三井康助(みつい・こうすけ)役で出演している。


*オバチャンたちの疑似体験としてのヒーロー誕生・変身・バトル!


 さて、本作最大のキモかと思えたのは、先述したムード歌謡コーラスグループ「純烈」の特徴のひとつである「オバチャンたちの熱狂によってメジャーな存在に押し上げられた」を、「純烈ジャー」の誕生・変身・バトルなどに絶妙に取り入れることでオバチャンたちの「願望」を実現させ、感情移入を大きくさせていることである。


 「純烈ジャー」の変身システムは、「純烈」が「純烈マイクチェンジャー」で「ラブユーチェンジ! カモン!!」と叫ぶことで、「神の湯」の女神たちであるアフロディーテならぬオフロディーテ(笑)が召還され、「純烈」と「合体変身」(!)をとげるかたちとなっている。


 これはまさに、


●『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)のダブル主人公で防衛組織・TAC(タック)の隊員・北斗星司(ほくと・せいじ)と南夕子
●『超人バロム・1(ワン)』(72年)のダブル主人公でガキ大将の木戸猛(きど・たけし)と優等生の白鳥健太郎(しらとり・けんたろう)


などの「合体変身」を彷彿とさせるものだ。


 いや、「合体変身」のビジュアル自体は、『A』や『バロム・1』をはるかに超越しており、各メンバーと降臨してきたオフロディーテが抱きしめあいながらグルグルと回って「純烈ジャー」に変身する(爆)。


 実際、戦闘中にオフロディーテは「背後に怪しい気配を感じる」と危険を知らせたり、「ハウリング攻撃(笑)を使うのよ!」などと有効な戦術を教えてくれたり、かと思えば敵であるザウナの逆三角形型のマッチョ体型に大喜びしたりするのだ(笑)。


 「ふたりでひとり」による変身やバトルは、オバチャンたちそれぞれのお好みのメンバーと「ひとつ」になれる疑似体験とでもいうべきであり、これ以上に感情移入を呼び覚ますものはないだろう。


 後上に先行して酒井・白川・小田井がそれぞれのオフロディーテと出会った際の回想場面が、それを強烈に象徴する。


●公園のベンチでくつろいでいた白川を、健康センターの寝間着(ねまき)みたいな赤い衣装を来たショートカットのオバチャンがすべり台から降りてきて背後からいきなり抱きしめてみたり
●映画を観ていた酒井に、山盛りのポップコーンをトレーに乗せたハワイアンみたいな紫のムームーを着たソバージュ髪のオバチャンが近づき、ポップコーンをひっくり返しながら酒井の隣の席をゲットしてもたれかかってみたり
●神社にお参りしていた小田井のもとに、色白で髪を束ねた青い巫女(みこ)姿のオバチャンが現れて鬼ごっこをしてみたり


 もうみんなが満面の笑(え)み(爆)。


 このオフロディーテを演じた女優たちも、「紫のオフロディーテ」役のしのへけい子氏は、『仮面ライダーフォーゼ』(11年)でゴス少女・野座間友子(のざま・ともこ)の母を演じたほか、近年の仮面ライダースーパー戦