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マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 ~『まどマギ』が「特撮」から受けた影響&与えた影響!

2020年冬アニメ『映像研には手を出すな!』 ~イマイチ! 生産型オタサークルを描くも不発に思える私的理由
2020年冬アニメ『異種族レビュアーズ』 ~異世界の性風俗を描いたアニメで、性風俗の是非を考える!?
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[アニメ] ~全記事見出し一覧


『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』 ~『まどマギ』が「特撮」から受けた影響&与えた影響!


(文・T.SATO)
(2020年3月3日脱稿)


 2010年代のTVアニメ史に残る名作深夜アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120527/p1)。
 その世界観を借りて、ご町内レベルの平和を守る女子中学生であれば、別の街々でも魔法少女たちがひそかに魔物と日夜戦っていても不思議はナイだろうと、放映当時から世界観は同じでも市町村や主人公集団を別とするマンガ作品などがメディアミックスで展開されてきた。
 本作はその手法で、本家が続編劇場版(13年)をもって完結したあとに、改めて公式の製作委員会が本格的に製作を開始した本流作品となる。


 ただし、まずはスマホゲームでの展開で、次に2.5次元のミュージカルで。ビッグタイトルのゲーム化なので、ゴールデンタイムでもフィギュアスケートの外人少女をフィーチャーしたCMをゴールデンタイムで長期にわたってバンバン流していたので、2020年冬季では一番知名度が高いオタ向け深夜アニメであることは間違いない。


 原典たる『魔法少女まどか☆マギカ』を大雑把に云えば、女児向けアニメ『美少女戦士セーラームーン』(92年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20041105/p1)以来のヒロイン戦隊vs悪の組織との攻防をハイブロウに、ヒーローロボットアニメに対するリアルロボットアニメのような手法で描きつつ、魔法少女同士も抗争する姿を描いた作品であった。
 もちろん13人の仮面ライダーがそれぞれの夢を叶えるためにバトルロイヤルしたTV特撮『仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(02年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20021109/p1)の大ヒットの影響は大きい。この作品以降、ゲームやアニメでは『龍騎』の影響を受けた同工異曲の作品が氾濫! 同じくバトルロイヤルものの『Fate/stay night(フェイト/ステイ・ナイト)』(06年)シリーズの原作者をはじめ、作り手側も『龍騎』からの影響を公言してはばからなかったモノだけど、本作の脚本を務めたゲームライター上がりの虚淵玄(うろぶち・げん)もそれを公言。
 この作品でその実力が認められて、その後は深夜アニメ『サイコパス』(12年)、ロボットアニメ『翠星(すいせい)のガルガンティア』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140928/p1)や『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)、セル画ライクな3D-CGアニメ映画『楽園追放』(14年)や『GODZILLAゴジラ) 怪獣惑星』シリーズ3部作(17~18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171122/p1http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180622/p1http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181123/p1)などで八面六臂の活躍をすることになるのはご承知の通りである。


 ただし、原典たる『まどマギ』もあまたのバトルロイヤルものと同様、作り手や評論オタが騒ぐほどに価値相対主義を訴えるものではなく、まわりがミーイズムやせいぜいが公共よりも身内・仲間・恋人のみを優先、アナーキズム(無秩序・無政府主義)やサイコパス(先天的な冷血や嗜虐的な性格異常)からバトロワに参戦していたとしても、だいたい主人公はバトルロイヤルをとめるべく邁進している善人であり(笑)、『まどマギ』の主人公も同様であってそれを貫いていく。
 『龍騎』でも『Fate』でも『コードギアス 反逆のルルーシュ』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20081005/p1)などでもバトルロイヤル・システムを構築した御仁が仮に登場したとしても、その正体はチンケな小人物であったり彼なりの同情すべき動機があったり、単に時系列の最初に位置していただけであってラスボスたりえず、一応の巨悪は別に設定されたりもした。
 仮にシステムを構築した御仁を打倒できたとしても、人間の欲望や動物的本能にも根差したバトルロイヤル・システム自体は止まらずに動きつづけるあたりが、専制的な王さまや安倍ちゃんやトランプなどの人格悪を首チョンパさえすれば即座に平和が訪れるというような「革命幻想」・旧態左翼的な「階級闘争図式」――熟議による求心的な議会制民主主義ではなく、単なる遠心的な無政府主義に陥りがちなソレ――を乗り越えており、ついにジャンル作品もココまでの境地に達したか……と感慨深いものがあった。


 そう、『まどマギ』でも白い小動物型マスコットキャラ・キュウべぇはラスボスや人格悪ではなかったのである。真のラスボスと目されるべきはもっと上位の事象にあった。人間が動植物を食するように、高次元宇宙の存在であるマスコットキャラもまた人間の精神エネルギーを補給しないと絶滅してしまうという食物連鎖の生態系、あるいは劇中世界における「宇宙の法則」(システム!)それ自体! という抽象的なモノが根本原因・ラスボスであったというオチ!
――『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1)でも星間文明存続を審判する役割を務めているロボット怪獣ギャラクトロンが、低次で残酷な「食物連鎖の生態系」を持つがゆえに全地球生命を滅ぼそうとする前後編があったなぁ(汗)――


 そんなモノは解決不能な宿痾なのだけど、そこは広義でのSF。それまでの展開における幾度もの時間ループ要素で蓄積した「因果のエネルギー」という仮想的な要素を援用して、宇宙の法則・システム・ルールの土俵それ自体をズラして改変を試みる!――単なる代案なき反体制ではなく、真の意味での民主主義的立法!――


 超過去~超未来に至るまでの歴史の大局を変えずに、人生途上における切実な選択や決断、街の平和を守るための正義感やヤリ甲斐、その過程でできた仲間・戦友たちとの小さな喜びや充実感などは肯定しつつ、魔法少女たちとマスコットキャラがその最期(さいご)に到着する運命(不幸)だけをなかったことにして、一応の各話における暫定的な敵の化け物でもあり、古今東西に出現していた「魔女」を「魔獣」で代替し、歴史上のすべての魔法少女とマスコットキャラの両者を救う歴史改変を行なう代わりに、我が身自体を空間的には「宇宙」全体、時間的にも超過去~超未来を貫く「時空」それ自体に超拡張!
 神そのものではナイけれども神近き存在、魔法少女たちが死後に魔女にならずに救済を与えるように、キュウべぇの故郷よりもはるかに高次な高次元世界・天上世界から永遠に地上へ超過去~超未来へわたって干渉しつづける、既存の「宇宙の法則」の一部に新たに上書き・付加された新しい「宇宙の法則」を担う一端・概念・作用にすら昇華して、現世や歴史からはその痕跡を永遠に消滅させて、最初から存在しなかったことになってしまう究極の自己犠牲が描かれることで、視聴者に滂沱の涙をこぼさせる。


 しかしこのオチは、よりリベラルな御仁たちからは、中学生の少女ひとりにここまでの滅私奉公・キリスト的な受難を背負わせる作劇自体がヤリ過ぎで封建的ではないのか? といった反発をも惹起したものだ。
――こう書いてくると、『龍騎』の影響で誕生した『まどマギ』は、今度は『仮面ライダービルド』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181030/p1)と『仮面ライダージオウ』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191020/p1)における、ライダーも怪人も存在しなかったことになった歴史改変ラストにも逆影響を及ぼしていたことが見て取れる。『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)冒頭でウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングが超時空消滅爆弾で破壊された並行宇宙のひとつを救うために、そこの宇宙で宇宙大に拡大して宇宙と一体化、破壊された大宇宙自体を弥縫・縫合していたのもまた同様――。


 そーいうワケで、作品世界の大ワクはすでに確定してしまっている作品なので、作劇の自由度が狭まるかもしれないのだけど、この外伝『マギアレコード』は敵の不定型生物が「魔獣」ではなく「魔女」の名称のままなので、歴史改変前の時空を舞台としていることがわかる。


 で、観てみた……。


 ウ~ム。個人的にはあまり面白く感じられないなぁ。


 たしかに安直な作りの外伝ではない。原典と同じことをしてもインパクトはナイから、別の要素――新主人公少女の世界では物理的な記録からは消えてしまっているらしい、主人公の「妹」探し――を投入して、そこで引っ張ろうというのもまぁ作劇アイデア的には正しいとも思う。
 しかし……。なにか爽快感やカタルシスがナイよなぁ。果たして、その原因とは何か?


 コレを脚本家や総監督の交代に求めるのはトートロジー・同語反復にすぎず、作劇術の分析にはなっていないだろう。
 そうか、わかってきた。筆者も先に本作の原典作品のドラマ・テーマ・SFギミックの解題などを散々にやってきていてナニだけど、そこだけを腑分け・解剖して俎上に上げてみせても、その作品のトータリティをわかったことにはなっていなかったのだ。


 やはり、ドラマやテーマ以前の作品のインフラ次元における基本フォーマットといった下部構造にも作品は規定されており、原典作品でも結局はヒロイン(魔法少女)vs敵怪人(魔女)との美麗な異空間での戦いの場面が各話のクライマックスとなることで、そこで勝利も描かれて強制的に各話にカタルシスも発生し、それにより各エピソードのメリハリや起承転結感も強めていたのであったのだ。


 そしてこの外伝作品は、各話のアクロバティックな魔法少女vs魔女との壮快な戦いの場面よりも、ドラマ・テーマを描いたシーンをクライマックスとすることで、皮肉にもかえってドラマやテーマが埋もれてしまっているのである。
 やはりインフラ・ハードウェアといった基盤、ひいてはグーデンベルグの「活字印刷」や蔡倫が発明した「紙」や勧善懲悪物語の「型」といったベースがあってこその、その上に乗っかるモノとしての「文学」や「人間ドラマ」や「社会派テーマ」や「近代的自我」やイジイジした「内面描写」なのである(笑)。
 そして、この外伝作品はヒロイズムや戦闘のカタルシスを軽視することで、かえってそのトッピングであるドラマやテーマとの相対的な落差も減ってしまって際立ってこないのだ。
 原典作品では「戦闘場面」での「異世界背景美術」や「魔女のデザイン」といった、「特撮」でいうなら「特撮班」「特撮美術デザイナー」「特撮監督」に相当する役職を担当していた「劇団イヌカレー」のメンツが脚本&監督に昇格しても、こーなってしまうとは何たる皮肉!


 古い世代のオタクが挙げる例で恐縮だけど、1970年代前半の第2期ウルトラマンシリーズでは、、それを先駆けるところの60年代後半の第1期ウルトラシリーズとは異なり、「怪獣」や「SF性」や「事件」に対する驚きよりも、時代の空気やTV局側の担当プロデューサー・橋本洋二の意向もあってドロくさい「人間ドラマ」や「社会派テーマ性」を重視した。
 しかしそれは、同時期に同じTV局の担当プロデューサーが担当した児童向け実写TVドラマ群と比しても、そのドラマ性やテーマ性がカナリ重たいものなのだ。


 憶測するに「ウルトラマン」などの戦闘ヒーローものは最後の必殺ワザで敵を倒してしまえることで、そこに強制的にカタルシスが発生して物事が晴れて見えてしまうので、むしろプロデューサーもイイ意味でそこに無意識に甘えて重たいドラマやテーマを各話の脚本家に要求し、あるいは脚本家の側も直感的にそのように執筆してしまい、それでも番組の様式美的なアクションやヒロイズムとの対比で「テーマ」の方もかえって際立ったのではなかろうか?
 そして、この機微が――筆者も含めて――判っていなかったがために、後年のマニア上がりが作ったシリアス志向・テーマ志向のジャンル作品群が概してツマラなくなってしまったのではなかろうか? ドラマやテーマの基盤となるインフラ、シリーズのフォーマット・型を作ってきた、昭和の「ウルトラマン」であれば金城哲夫(きんじょう・てつお)、昭和の「仮面ライダー」であれば伊上勝(いがみ・まさる)に対しても、そのような観点からの深掘りが改めて必要なようにも思うのだ。


 結論。筆者も先年観劇したアイドルグループ「けやき坂46(フォーティシックス)」(現・日向坂(ひなたざか)46)が演じた2.5次元ミュージカル版(18年)の『マギアレコード』の方がドラマ的にもエンタメ的にも良作だと思う(笑)。イヤ、マジで。機会があれば詳述したいと思います。


(了)
(初出・当該ブログ記事~オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.84(2020年3月8日発行予定も延期分)


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『異種族レビュアーズ』合評1 ~東京MXでの放映打ち切りをドー見る!?


(文・久保達也)
(2020年2月20日脱稿)


 人間・エルフ・妖精・獣人・魔族・妖怪・天使・悪魔などが共存する世界で、黒髪ロン毛の風来坊の人間男性と金髪小柄なエルフ男性の主人公が、あらゆる種族とエッチをするために怪物退治などをしつつも各地の風俗店をめぐる大冒険を繰りひろげ、そのエッチの相手をクロスレビューで評価するという内容だ。


 たしかにかなり過激な性描写が目についたとはいえ、その作風はきわめて陽性でカラッとした明るさにあふれていたことから、個人的には本作に対しては低俗だの下劣(げれつ)だの不快だのといったマイナスイメージはほとんど感じられなかったものだ。


 だが、同じ地上波でもKBS(ケイビーエス)京都とサンテレビ、そしてBS放送のBS11(ビーエス・イレブン)では放映を継続し、CS放送のAT‐X(アニメシアター・エックス)では無修正版まで放映しているにもかかわらず、唯一(ゆいいつ)TOKYO‐MX(東京メトロポリタンテレビジョン)のみ放映打ち切りとなってしまった。


 ただ、外見は美少女だが実際は500歳のバアさんのエルフを推(お)す人間男性と、人間の50歳の太ったオバサンの風俗嬢を推すエルフ男性が云い争いになり、獣人や妖怪などさまざまな種族に判定させたら人間の太ったオバサンの方が高い評価となってしまう場面は、そうした多様な価値観の尊重を描くことで、さまざまな種族が共存可能である世界に説得力を与えているとさえ思えたほどだ。


 またここに書くのもはばかられるほどの主題歌の過激な歌詞の中でも、「同じ(風俗)店に行ったら種族が違っていても仲間だ」という一節は、趣味を共有できる仲間を求める我々のような種族にはおおいに共感できるものではなかろうか?


 少なくとも同じように人間・ウルトラマン・宇宙人・アンドロイドなどの「共存」を訴えながらも、実に湿っぽい陰鬱(いんうつ)な話に終始していた『ウルトラマンタイガ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200108/p1)に比べれば、たとえエロ描写ばかりとはいえ、本作の方がその「理想郷」をはるかに的確に描いていたのではないのか?


 意外にも、TOKYO‐MXでの打ち切りをネット上では「当然だ」「しかたがない」「どうでもいい」とする声ばかりで「残念だ」との声が皆無(かいむ)に近い(!)のは驚きだが、「表現の自由」が次第に失われつつあるこの国の風潮(ふうちょう)に、我々はもっと危機感を持つべきだと個人的には考えるのだ。


 案の定、この『異種族レビュアーズ』は2020年1月28日にBPO(ビーピーオー=放送倫理・番組向上機構)で開かれた「第221回 青少年委員会」の席上において、


・「性的なアニメが年齢制限もなしに青少年が観られる現状に憤(いきどお)りをおぼえる」
・「風俗店を男性が評価しており、女性キャラクターを蔑視(べっし)している」
・「下ネタばかりのアニメは子供に悪影響を与える」――深夜25時30分に子供にテレビを観せている親の方がよほど問題アリかと思うが(大爆)――


といった視聴者からのクレームによって審議されたものの、


・「気持ち悪いから」「下品だから」という視点での評価は、言論・表現の自由との関連で慎重に扱わねばならない。
・遅い時間帯の子供の視聴については、保護者にも配慮してもらいたい――当然だ(笑)――。
・テレビは子供だけを視聴者として対象にしているものではない。
・こうしたものが深夜枠から普通の時間帯に入ってくることには気をつけておくべきだ。


との意見が大勢を占め、BPOとしては本作を決して否定することなく、静観する構えを示したのだ。


 だからこそ、TOKYO‐MX以外の局では放映を継続することが可能となっているワケであり、TOKYO‐MXの過剰(かじょう)反応がより不可解に思えてくる。


 すっかりマニア御用達(ごようたし)の局となっているTOKYO‐MXではあるが、実は一部の報道番組やワイドショーの内容が、あまりにも安倍(あべ)政権に忖度(そんたく)しすぎとの批判がよく見られることからしても、今回の件は「巨悪」が濫用した大きな力にTOKYO‐MXが萎縮(いしゅく)したことによる自主規制なのか? と勘(かん)ぐらずにはいられないものがあるのだが。


 実際、BPOに同様のクレームが寄せられたアニメ『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』(14年)は当初土曜22時30分に放映されていたのを、第5話以降土曜26時に枠を変更することで放映を継続できていたのであり、それよりも遅い枠だった『異種族レビュアーズ』のみが打ち切りとなるのはやはり不自然極まりないだろう。


 本作が打ち切りとなった真の理由は不明だが、これを前例として認めてしまったら、ヘタをすれば将来的にはTOKYO‐MXの深夜アニメの放映が激減することにもなりかねないのではないのだろうか?
 繰り返す。これは断じて許してはならない暴挙なのだ。


(了)


『異種族レビュアーズ』合評2 ~異世界性風俗を描いたアニメで、性風俗の是非を考える!?


(文・T.SATO)
(2020年3月3日脱稿)


 異世界モノもジャンルの長い歴史の果てに、勇者ではなく魔王になったり、食堂・喫茶店・居酒屋を開店したり、冒険者だけど子育てがメインだったり、勇者だけどペットショップやプロレス興行(笑)していたり、書籍を作って司書になろうとしたり、中世に近代社会を招来せんとしたり(!)、ありとあらゆる職業を題材としたヒロイズムとも程遠い異世界作品が勃興して、異世界を舞台にヒトのすべての営みを包含せんとするメタ・ジャンルといった感を呈しており、爛熟の極みに達している。


 この作品はその中でも極め付け、異世界の「性風俗」(爆)を題材とした作品だ。より正確に云うならば、異世界の繁華街にある風俗街に足繁く通ってムッフンしたあとに風俗体験レビューの記事を書いて、それを冒険者が集うギルドの館のロビーの壁に貼り付けることで、小銭を稼ぐという作品である。
 もう少し云うなら、人間・妖精・獣人・悪魔・天使などとの異種通婚(姦通?)モノでもある。ぶっちゃけ、行き着くところまで行き着いた感もある。


 しかし、ワンアイデアだけの出オチ作品といった感じで、個人的にはあまり面白くない。しかもエロくない。具体的なサービスなり決定的な瞬間も描かれない。絵柄もリアルでナマっぽい肉体性を感じさせるモノではなく、まるっこくて柔らかそうなデフォルメされたモノである。
 もちろんそれが悪いというのでなく、だからこそリアリティの階梯も下がってコミカルなギャグとしても成立するのであって、コレをナマっぽい肉体性も感じられる絵柄で演じられたらシャレにならないとは思うけど(笑)。


 リアル寄りな背景美術やキャラデザだと、自然と作品世界のリアリティの階梯もあがってしまう。仮にお話のスジ的にはまったく同じストーリーであったとしても、非リアルな作品と比したらもっとインモラルに感じられてくるであろう。
 女を買いに行っている野郎も十人十色で、身勝手・喜悦だけの輩から逡巡・プチ罪悪感を抱いている輩まで。
 春を売っている女の方にも、イヤイヤ仕方なくから天性のビッチまで、あるいは地味な反復の炊事家事洗濯・農作業・職人仕事はタイクツで、華美な服装をして虚栄心も満たして異性とムダなおしゃべりでテンションを終始上げていたい! マジメで無口な男なんてツマラなくて大キライ!(爆) みたいな内面・自意識・各自の境遇、生まれついての「性に奔放」や「性に保守的」といった価値観の相違や先天的な性格の違い。
 リアリティの階梯があがれば、そんなモノまで浮上してきて、視聴者にもヒシヒシとそれを感じさせてしまうだろうとも思う。


 フィクションとはいえ、個人的にはそーいう多様な女性キャラ像をぜひとも観てみたい! とは思うのだけれども、往年の人気美少女アニメかんなぎ』(09年)非処女騒動なども思い返すに、おそらく潔癖なオタク視聴者の大勢にはウケないだろうとは思うので(汗)、本作のような記号的な絵柄と描写が適度な塩梅なのだろう。


 まぁフェミニズム的には性風俗・売買春なんぞは男尊女卑・ミソジニー女性嫌悪)な風潮に基づく社会的制度・文化的装置であり、近年の最新フェミ思想はともかく80~90年代においては、


「人間という存在は動物とは違って『性欲』という『先天的な本能』が壊れており、『後天的な文化』によって『性欲」が誘発されるだけであり、今ある男尊女卑的な文化を抹消して新たに「政治的に正しい」文化(笑)を樹立さえできれば、真の意味での男女対等な性愛文化も構築できるのだ!」


なる主張をしていたモノだ。


 もちろん野郎であれば、女の子のパンツ見たい・オシリ見たい・オッパイ見たい・裸を見たいという、個人差はあれども思春期以前の幼少時からある「性欲」が「本能」ではナイという言説は、実感的にもアリエないし生物学的にもナンセンスではある。
 心理学者・フロイトが喝破したように、人間は啓蒙思想的な「理性」だけでも動いておらず、「無意識」や「性欲」や動物的な「リビドー」などの鼻の先のニンジンでも駆動されている事実に到達した西欧思想史には疎い連中が、赤勝て白勝てレベルでフェミニズムになびいているようでもある。


 筆者からすれば、フェミニズムに一理も二理も認めつつもプチ違和感も手放さないのであれば、「男性中心主義」でも「フェミニズム」でもない「第3の学問」を樹立する絶好の契機であり、それこそが真の意味での理性的なふるまいではないのか? とは思えるものの、本作ごときのレビューにそのような大仰な話題は似つかわしくない(笑)。



 性風俗や売買春を積極的には肯定しないし減らすべきではあったとしても、人間に……特に男性側に男尊女卑以前の動物・オス的な本能がある以上は、そして禁酒法が施行されようが飲む・打つ・買いたい人間も相応にいるからには、かえってアル・カポネのようにウラ稼業でヤクザが肥え太るのが世の習いである以上は、日本でも売買春は禁止されているのに実際にはソープランドでは本番が可能というダブル・スタンダードで適度に発散させるのが、現実的な落としどころだとは思うのだ。


 性にまつわる問題といえば、古い世代には名作と名高い名脚本家・山田太一による往年のNHK土曜ドラマ男たちの旅路』第4部の第3話「車輪の一歩」(79年)で、車椅子の青年が両親も笑顔での公認で念願のソープ――当時はトルコ風呂と呼称――にひとりで行くも、あまたのお店で断られて終わって屈辱にまみれる名エピソードなども思い出す……。
 この作品のことも思い返すに、今や東京大学の総長にまで登り詰めた日本のフェミニズムのドン・上野千鶴子センセイは90年代、性的弱者の男性に対して「自力で女性をゲットできないモテない男性はひとりでセンズリしながら死んでいってください」と語っていたモノだけど(爆)、一理はあるにしてもそこまで逡巡なく断言してしまってイイのであろうか?
 筆者には昨2019年のエリート私立小学生20名を斬りつけて自殺した男に対して「ひとりで死ねばイイのに……」と語っていた言論人たちと、依って立つ立場&敵認定の対象が異なっているだけで、メタレベルでは同じ思考形態だとしか思えない。


 とはいえ、欧米に習って売春を禁止したのに、当の欧米では女性や障害者の「性的自由」の名のもとに「売春」や「身体障害者の買春」まで公認、国家が売春婦を登録制で管理する動きが90年代以降、拡充しているのは皮肉だ。
 たしかにヤクザやギャングが売買春を管理・搾取するよりかは、いっそ国家が管理するのも完璧とはいわずとも一理はあるのだろう。


 この延長線で、近年では往時の日本にだけ奴隷のように存在していたとされてしまった従軍慰安婦の世界的な見直しも望みたいところではある(爆)――むろん正当な商行為ではなく、女衒(ぜげん・仲介・ブローカー)にダマされて慰安婦になった女性や慰安所外で性暴力にあった女性の救済は必須――。
 仮にアナタやワタシには不要であっても、幼稚園~小中高の同級生たちのヤンキーDQN(ドキュン)やヤンチャな男子の比率を思えば、良心からではなく罰則があるから悪事をしないだけの人間が人類の過半なのであるから(汗)、前近代的・古代中世的なメンタル以前に食欲や性欲をも併せ持つ「動物」でしかない人間一般の性情をも見据えて、先回りして網も張ることが、真の意味での合理的な制度設計・社会デザインではないのかとも思うのだ。


 ただまぁ結婚制度や性道徳も地域・時代・個人で異なる相対的なモノではある。
――15年ほど前に(2004年)10代の女子ふたりがダブル芥川賞を受賞した際、清純派ではなくギャル子ちゃんの方の受賞作『蛇にピアス』で、ピアスを付けたワルの感じがする男にしか惹かれないギャル主人公が「健全とは何か? 餓死するくらいなら風俗で食べていく方がよほど健全だと思う」との価値観を躊躇なく語っていたくらいだし(笑)――


 だから、「性的自由」や「不倫」さえをも賞揚し、配偶者以外の第三者や社会が「不倫」を批判する必要はナイとする意見が一部のリベラル文化人の間では勃興している。
 しかし、コレは3手先・4手先が見えていない浅知恵に思える。この流れは男女対等の自由な性愛ではなく性的「新自由主義」となり、不倫や一夫多妻制もオールOK、女性の側でも金持ち男の2号・3号となっても豪奢な生活をしたい! という性道徳の自堕落な変容が起こって、数十年後にはディストピアが到来すると予見(爆)。


 天地創造の神さまが定めた「絶対普遍の正義」ではなく、人間社会の「便宜的な取り決めごと」にすぎなかったとしても、最大多数の最大幸福は一夫一婦制、不倫も実態はともかく社会的には糾弾しておこうというタテマエにしておいた方が、社会の安定や子供たちの感情の安定のためにも無難だとも思うゾ。
――むろん離婚しちゃイケナイとか、不倫は石打ちの刑に処すべきだ! とまでは云わないが(笑)――


 エッ、東京MXにつづいて神戸サンテレビや海外でも放映・配信中止なのが「表現の自由」に対する侵害だって? そんな「弾圧されてる俺、カッケーーー」みたいな映画『新聞記者』(19年)みたいなモノではないだろう。BS11やAT-Xでは観られるどころか、新たに岐阜では放映開始だし。
 つーか、コミケで販売中止処分を喰らうとハクが付くエロ・コスプレ円盤同様、放映中止になることを作り手・受け手も共犯関係で見越していて、放映中止自体でハクを付けたりネタや祭りにしてもらうことが前提の出来レースだ! くらいのことは云おうヨ(笑)。


(了)
(初出・当該ブログ記事~オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.84(2020年3月8日発行予定も延期分)


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『映像研には手を出すな!』 ~イマイチ! 生産型オタサークルを描くも不発に思える私的理由

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映像研には手を出すな! ~イマイチ! 生産型オタサークルを描くも不発に思える私的理由

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[アニメ] ~全記事見出し一覧

『映像研には手を出すな!』 ~イマイチ! 生産型オタサークルを描くも不発に思える私的理由


(文・T.SATO)
(2020年3月3日脱稿)


 高校の部活動である映像研究会、実質的にはアニメを製作するサークルが舞台のNHKで放映中の深夜アニメ。


 こう書くと、山脈が近くに見える地方の高校のアニメ研究会でアニメ製作にいそしんでいた美少女キャラ5人が上京してアニメ業界の底辺で右往左往する大ヒット深夜アニメ『SHIROBAKO』(14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20151202/p1)や、暑苦しい黒縁メガネのオタク少年が学園№1や№2の美少女――その実態はガチな女オタク(笑)――たちとゲーム製作に明け暮れる大ヒット深夜アニメ『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191122/p1)の二番煎じや三番煎じを想起する。


 あるいは、00年代からあったような、高校大学や校内校外を問わない、生産者型から消費者型までさまざまなオタク系サークルを描いたマンガやアニメ――『けんしけん』(02年・04年に深夜アニメ化)や『ヨイコノミライ』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071021/p1)――。超メジャーなところだと、マンガ家を目指す少年たちがその作劇術をメタ的に開陳もしていく群像劇を熱血に描いた『バクマン。』(08年・10年にTVアニメ化・15年に実写映画化)といった「週刊少年ジャンプ」連載の大人気マンガなども想起する。


 そーいう意味ではオタク的な気質がある人間の全員とはいわずとも、本作のようなオタ趣味それ自体を単なる消費で終わらせずに批評・生産・創作に昇華していかんとするオタク集団を描く物語についつい惹かれてしまう御仁も多いことであろう。


 本作の場合も、小学6年の夏に引っ越した先の高層団地群をつなぐ高架の通路やそこから見下ろせる光景や足許のコンクリ河川を、もう思春期に入る時期であろうに精神年齢幼稚園児の純粋さ(半分揶揄・笑)で、冒険物語の舞台に見立ててコーフンしてハシャギまわり、そんな彼女が深夜に布団に隠れて、宮崎駿が初カントクした往年の名作アニメ『未来少年コナン』(78年)そのものモドキの劇中アニメを鑑賞して激甚なショックを受けるサマが描かれる。
 コレをもってして人生を変えられた彼女は、アニメ研究会がある高校に入学するも、諸般の事情でそれとは別の映像研究会を立ち上げることになる……といったのが、本作の導入部。


 ウ~ム。題材は面白いハズなのに、出来上がった作品は個人的にはあんまり面白くないなぁ――本作を評価する方々にはゴメンなさい(汗)――。


 多少の異世界感を作品世界に醸すためか、この作品はSF洋画の名作『ブレードランナー』(82年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171110/p1)的なウス汚れた東南アジア的な近未来の日本を舞台としているけど、その舞台設定って意味があるのかなぁ。
 むしろ背景美術に「非日常」的な要素が混入すると、主人公たちが作ろうとしている冒険アニメの「非日常」的な妄想の映像表現部分との「落差」が減ってしまいメリハリも弱くなってしまっているような……。


 そして、小柄な主人公少女のメンタルやルックスにそのボイス。
 意識的にか無意識にか男に媚びている気配がまるでないガラっぱちなところからして、往年の『ジャリん子チエ』(78年・81年に劇場&TVアニメ化)みたいな感じなのだが(笑)、それならば性別は少年でもよかったのではないかしら? 性別が少女であることに意味がナイといおうか、むしろ女性の方が男性よりも同性内でのファッション&スイーツなカースト優劣意識が強いことを思えば、今どき化粧っ気もなくてボサボサ髪の女子高生の彼女が、クラスメートたちにそーいう目線で見られて少々の劣等感やダメ意識をいだくことがフツーのハズだと思えるのに、この作品世界は1970年代以前の学校の教室ですか?(爆)


 今季2020年の冬アニメだと、アイドルアニメも爛熟の果ての変化球で、『22/7(ナナブンノニジュウニ)』では主人公のアイドル少女が、『推しが武道館いってくれたら死ぬ』では主人公のヤンキー女子に推されているアイドル少女が両方ともに極度に内気なコミュ力弱者で、かたや浮わついたことがキライだけど成り行きで母子家庭の貧困のタシのために、かたや歌や踊りがスキでも(ヘタだけど・汗)人前トークはあまりできないというキャラ付けで、昆虫パニックものの『7SEEDS(セブンシーズ)』でもロリ可愛いけどそれを端(はな)にかけて媚びたりはせずに単に意志薄弱でトロいだけなのに、コレまた女リーダーに「ドジっ娘を演じて男に助けてもらおうと媚びるのはやめなさい!(大意)」――一般的には正論なのだが、彼女の場合は素でトロいのに……(爆)――などという人物描写をスパイスで入れることで、ストーリー展開以前のところで視聴者の感情移入の端緒を作って、それがフック・引っかかりにもなっていくのだけれども、本作にはそーいう創作活動の触媒にもなりうる劣等感・欲求不満・内的葛藤といった、オタク視聴者にとっての感情移入のフックがさしてナイように思えるのも個人的には引っかかる。


 良くも悪くも、というか悪しきことに、コレだけスクールカーストコミュ力ルッキズム(見た目至上主義)に苦しんでいることが、日本のみならずアメコミ洋画『スパイダーマン:ホームカミング』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170901/p1)や『パワーレンジャー』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170715/p1)などでも議題となって先進各国共通の若者間でのテーマとなっているご時世だというのに……。
 まぁそもそも本作では、放課後の部活動の光景のみが描かれて教室やクラスメートがほぼ出てこないので、そこは意図的な除外なのやもしれないけれども、その意図が成功しているようには見えずに不自然さに帰結している……というのが、筆者個人の私見である。


 同じような議論は、小学校低学年ならばともかく、とっくにイロ気付いているハズの小学校高学年なのに色恋やスクールカーストの匂いがしてこない部分が不自然……といった議論もあった、かつて同じくNHKで放映された地方都市を舞台にVR(仮想現実)ならぬAR(拡張現実)を題材とした、インテリオタ間では高評価であった『電脳コイル』(07年)という作品をめぐってもあったけど。


 加えて、美少女であるとも平均的な少女だとも描かずに醜めにクズした絵柄の女の子キャラたちは、良く云えば挑戦的だけど、良くも悪くも通俗エンタメの本質とは文芸批評用語で云うところの「俗情との結託」であり、無意識的な男尊女卑感情も視聴時のモノサシに入ってくるので、この絵柄だと健気な美少女キャラだから応援してあげよう! という情動はまずは喚起はされまい(汗)。
 もちろんその代わりに、アニメ作りにおける艱難辛苦(かんなんしんく)を突破していく少年マンガ的な熱血ド根性で視聴者の感情移入やストーリー展開を強制的に駆動していく手法もあるけれども――アマゾンが「あなたにおすすめです」と教えてくれた月刊「ジャンプSQ(スクエア)」連載で本作と同じく高校の生産型アニメ研を舞台としたマンガ『戦場(いくさば)アニメーション』(13年)などはそーいう少年マンガ的な作りで駆動されており面白かったけど――、本作はそーいう感じの作りでもなく、ひたすらに淡々と展開していく。


 作品を作る前に主人公少女が開陳する、往年の月刊模型誌に連載された『宮崎駿の随想ノート』(84~90年・97年に書籍化・ISBN:4499226775)みたいなラフな鉛筆書きのデッサンに淡彩画のような色彩を付けた架空メカや背景美術に、細々とした手書き文字でビッチリとウラ設定や演出意図が描き込まれたノートみたいな「妄想」も映像化されていくのだけれども、あくまで劇中キャラの脳内妄想にすぎず、アニメ製作における実際には直結していかないので、達成感のようなカタルシスにも帰結しない。
 だけれども、「カタルシス発生装置としての物語」という下部構造・インフラ部分には眼を向けずに、社会派テーマだの良心的な作風といった上部構造のみで判定してしまうプチインテリオタクの皆さまがいかにもホメそうな作品には仕上がっているとは思う(汗)。


 深夜アニメ『四畳半神話体系』(10年)やその変型続編映画『夜は短し歩けよ乙女』に『夜明け告げるルーのうた』(共に17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190621/p1)や『デビルマン crybaby』(18年)といった佳作をものしてきた湯浅政明カントクにしても、原作マンガありきとはいえこの程度の作品に留まってしまった……というのが、あくまでも筆者個人の感慨にすぎないけれども極私的な見立てである。


(了)
(初出・当該ブログ記事~オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.84(2020年3月8日発行予定も延期分)


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トクサツガガガ』(TVドラマ版)総括 ~隠れ特オタ女子の生態! 40年後の「怪獣倶楽部~空想特撮青春記~」か!?

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『怪獣倶楽部~空想特撮青春記~』に想う オタク第1世代よりも下の世代のオタはいかに生くべきか!?

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冴えない彼女の育てかた♭(フラット)』 ~低劣な萌えアニメに見えて、オタの創作欲求の業を美少女たちに代入した生産型オタサークルを描く大傑作!

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ヲタクに恋は難しい』 ~こんなのオタじゃない!? リア充オタの出現。オタの変質と解体(笑)

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『映像研には手を出すな!』 ~イマイチ! 生産型オタサークルを描くも不発に思える私的理由

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『異種族レビュアーズ』 ~異世界性風俗を描いたアニメで、性風俗の是非を考える!?

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2020年冬アニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』 ~『まどマギ』が「特撮」から受けた影響&与えた影響!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200329/p1(3/29、UP予定)



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#アニメ感想 #映像研 #映像研には手を出すな #湯浅政明



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騎士竜戦隊リュウソウジャー最終回・総括 ~ラスボスの正体・善悪反転の終盤・作品総括・賛否合評!

『スーパー戦隊レジェンドヒストリー』 ~神秘・恐怖から親近感・コミカルへ。日本特撮の画期にして文化・歴史となった「戦隊」!
『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』 ~水準作だが後見人&巨大戦カットをドー見る!?
『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』 ~劇場先行お披露目で戦隊の起死回生は成功するのか!?
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『騎士竜戦隊リュウソウジャー』最終回・総括 ~ラスボスの正体・善悪反転の終盤・作品総括・賛否合評!


『騎士竜戦隊リュウソウジャー』最終回・総括・合評1

(文・戸島竹三)
(2020年3月2日脱稿)


 本作のラスボス・エラスの正体は、いわゆる「絶対的正義」とでもいうべき存在であった。この設定に『機動戦士ガンダム』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990801/p1)の富野由悠季(とみの・よしゆき)監督が手掛けた往年の合体ロボットアニメ『無敵超人ザンボット3(スリー)』(77)を連想した人は少なからずいた――筆者のツイッタ―検索による結果――。
 『サンボット3』最終回に登場したコンピューター・ドール第8号も同族間で争う人間を、地球のひいては宇宙の害悪と見なし「正義」のために始末することが目的だった。
 当時はかなり衝撃的な展開だったが、それから40年以上。ジャンル作品におけるこのパターンは決して珍しくはなく、むしろテンプレ化している――寄る年波でポンポンと例を挙げられないのはご容赦――。


 とはいえ、まさかスーパー戦隊で導入されるとは意外で驚いたのも事実。
 もちろんレギュラーキャラが次々と散っていく『ザンボット』最終回のようなハードな展開ではない。だが比較的ラクな展開になる(はずと思われる)「力は正義だぜ、ヒャッホー!」的な単純悪の敵ではなく、あえてこの設定を導入したことは評価したい。子どもたちがやがてこの作品を思い出す時、はたしてこの要素をどう語るのか? ちょっと気になる。


 あと団時朗(だん・じろう)氏演じるリュウソウ族の長老が、何と人間世界で事業に失敗していたという衝撃。もちろんギャグ要素ではある。だが特撮ヒーロー番組の長老(聖人君子の象徴)が俗物の極みであったという事実が、人間こそが悪という展開に厚みを加えていたと感じたのは、ひいきの引き倒しか?


 そしてリュウソウピンク・アスナの存在。演じた尾碕真花(おさき・いちか)の好演もあいまって、可愛いけれども大食&力持ちキャラとして見事に花開いた。
 というのも、筆者はエラスの計画――戦隊の6人に幸せな夢を見させたまま葬る――の描写に無理を感じていた。それまでの戦いで絆を深めた6人。その6人の各々の理想の夢の世界に他の戦隊メンバーが1人も出てこないというのはあまりに不自然ではないか? 「他の5人がいない夢の世界なんてゴメンだ!」的な反論を言わせたいがための作為的な設定にしか思えず納得がいかなかった。


 そんな中、アスナの「夢で食べても満腹にならない!」(大意)という原始的な叫び。これはまさに正論中の正論として恐るべきリアリティーをかもし出し、展開の穴を力技でふさいだ感がある。
 リアリティーといえば、戦いを一時終え龍井宅に戻った彼女。すぐさまお菓子をボリボリ食べはじめる様子を、特にギャグ場面として強調せず「燃料補給」として淡々と描いていたことには静かな感動を覚えた。すでにアスナの大食いは日常であるという、作り手と我々視聴者の共通認識が生んだ隠れた名場面だと思う。


 最後に書いておきたいのが、最終回序盤の巨大ロボット戦。今やCGがメインのロボ特撮。そんな中、オープンセットというかミニチュアなしの広い屋外で複数の着ぐるみが並ぶ画(え)は、いい意味でのチャチさが久々に味わえうれしかった。もしかしたらレジェンド・矢島信男特撮監督へのオマージュ?


(了)


『騎士竜戦隊リュウソウジャー』最終回・総括・合評2

(文・久保達也)
(2020年3月8日脱稿)

*ようやく加えられた「縦糸」の魅力!


 騎士と恐竜をモチーフにしたヒーロー&ヒロインのデザイン自体はカッコいいにもかかわらず、毎回登場する怪人=マイナソーが人間のマイナス感情を利用して生み出される設定だったがために、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190602/p1)の第2クールくらいまでの作風には、個人的にはどうしてもやや陰鬱(いんうつ)で湿っぽい印象が強かった。
 だが映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE(ザ・ムービー) タイムスリップ! 恐竜パニック!!』(19年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190818/p1)に登場した6500万年前のリュウソウ族・ヴァルマが、敵組織・ドルイドンとの対戦用に開発したメタリックパープルの鎧(よろい)・ガイソーグを装着して変身する7人目の戦士・ナダが新たに加わる第26話『七人目の騎士』以降、その印象は個人的にはガラリと変わり、従来のスーパー戦隊と変わらぬような「王道」モードへと突入したように感じられたものだ。


 ナダがコウ=リュウソウレッドの師匠(ししょう)・マスターレッドの弟子としてバンバ=リュウソウブラックとともに修行していたものの、リュウソウジャーに選ばれなかったために周囲を見返す力がほしいとの想いで最強の鎧・ガイソーグを装着するようになった経緯は、『ウルトラマンオーブ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170415/p1)のレギュラー悪で、ウルトラマンに選ばれなかったがために悪の道へと走ることとなったネタキャラ(笑)=ジャグラス・ジャグラーを彷彿(ほうふつ)とさせるものだ。
 そしてナダの前にガイソーグを装着していたのはバンバの弟・トワ=リュウソウグリーンの先祖であるマスターグリーンだったが、鎧の呪(のろ)いのために仲間を殺害した末に人知れず亡くなった過去話なども語られることにより、第2クール(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191102/p1)までは圧倒的に欠けていた、6500万年に渡る登場キャラの間の深い因縁(いんねん)を活(い)かした縦糸となる要素が、第3クール以降では濃厚に感じられるようになったのだ。
 また当初は関西弁で話す気のいいにいちゃんとして描かれていたナダが、回が進むにつれて次第に本性を見せるようになり、それでも仲間として受け入れようとしたコウを「おまえのそういうとこがホンマに嫌い」として、その長剣で斬りつけるに至るのは、敵が味方に味方が敵にとキャラの立ち位置をシャッフルさせて盛りあげる手法を常套(じょうとう)とする、近年の仮面ライダーシリーズの作劇と共通するものであった。


 だが第32話『憎悪(ぞうお)の雨が止(や)む時』でせっかく鎧の呪いから解放され、自分の意志でガイソーグに変身できるようになったナダが、つづく第33話『新たなる刺客(しかく)』で自己犠牲でリュウソウジャーを助けて早くも退場となってしまったのにはさすがに早すぎると感じてしまい、せめて最終展開までは7人体制で盛りあげてほしかったものだ。
 ただナダの魂(たましい)=ソウルがマックスリュウソウチェンジャーへと変化し、それを継承したコウがリュウソウレッドにガイソーグの鎧をまとわせたようなメタリックレッドの最強形態・マックスリュウソウレッドへとパワーアップを遂(と)げるさまを、ナダとコウの関係性の変化と心の変遷(へんせん)の象徴として描くことでよりドラマ性を高める作劇がなされていたのは好印象だった。


 第31話『空からのメロディ』で、それまでペンギンのぬいぐるみみたいな姿で「ピーたん」と呼ばれていた空の騎士竜・プテラードンが、


「空を見ろ! 鳥か? 飛行機か? いや、プテラードンだ!」


と、我々よりもはるかに上の世代がリアルタイムで観た(笑)テレビシリーズ『スーパーマン』(1952~1958年・アメリカ。日本では1956年にKRテレビ→現TBSで初放映)の名フレーズにて本来の翼竜型の巨大な姿となったのも、カナロ=リュウソウゴールドの妹・オトの危機を前に、自身にかけられていた封印を自ら解くことで登場したものであり、これもマックスリュウソウレッドと同じ作劇的技巧によるものだといえるだろう。


 そのプテラードンからリュウソウルを手渡されたリュウソウレッドが背中に青い翼を翻(ひるがえ)して華麗に空を舞う姿までもが描かれたが、『リュウソウジャー』はそれ以降もビジュアル的にもドラマ的にもかなりにぎやかになっていった。


*「地球最大の決戦」! ゴジラもウルトラも大好きな荒川センセイ(笑)


 ナダの退場と入れ違うかのように第34話『宇宙凶竜現る!』で新幹部としてプリシャスが登場して以降、それまでコミカルキャラのクレオンと愉快犯的なワイズルーのコンビ以外は戦闘員のドルン兵のみという、悪の組織としてはあまりにスケール感が不足していたドルイドンにも、ウデン・サデン・ガンジョージ・ヤバソードと次々に新たな幹部級の武闘派怪人が加えられ、第3クールから第4クールにかけては悪側の群像劇も描かれるようになったのだ。


 第34話&第35話『地球最大の決戦』ではいつもの怪人・マイナソーではなく、これまで100以上の星を滅ぼしたスペースドラゴン(!)を近年のウルトラマンシリーズに登場するような外見的にケバケバしいデザイン・造形の宇宙大怪獣として出すことで、それを宇宙から呼び寄せた新幹部・プリシャスをより強敵として印象づけることに成功していた。
 もちろんこれは年末商戦販促用の合体ロボの新たなバリエーション、陸・海・空の騎士竜が合体したキングキシリュウオーの登場を最大限にカッコよく描くための作劇でもあるのだが、その前段としてリュウソウジャーが世話になっている古生物学者・龍井尚久(たつい・なおひさ)に憑依(ひょうい)しているリュウソウ族の伝説の偉人・セトーによってリュウソウジャー全員が試練を課せられ、それを乗り越えるさまが描かれることで本編ドラマと特撮の巨大戦のクライマックスを絶妙に融合させていたのだ。


 まぁサブタイトルにしろスペースドラゴンの設定にしろ、明らかに東宝が製作したゴジラシリーズの怪獣映画『三大怪獣 地球最大の決戦』(64年・東宝)と、それに初登場した宇宙超怪獣キングギドラに対するオマージュだろうが、今回久々に登場したリュウソウ族の長老は、新たに経営をはじめたカフェ・ケボーンでバイトに来てるオトの名前を「アキちゃん」だの「るみちゃん」だのと呼びまちがえてしまう……
 これは長老を演じたのがかつて『帰ってきたウルトラマン』(71年)で主人公の郷秀樹(ごう・ひでき)=ウルトラマンジャック役で主演した団時朗(だん・じろう)氏であり、その『帰ってきた』でヒロインの坂田「アキ」を演じたのが女優の榊原(さかきばら)「るみ」氏だったことを指(さ)す、おもいっきりの楽屋(がくや)オチなのだ。
 脚本を担当した荒川稔久(あらかわ・なるひさ)センセイは「ウルトラマン」を書きたくて脚本家になった人なので、このネタがわからなかった若い層の視聴者はどうか許してあげてください(爆)。
――この前後編では「美女がおまえ?」との兄・カナロの発言に妹・オトがグーで腹パンチをかます際、オトが「爆弾パンチ!」と叫んでいるが、これも往年の東映特撮ヒーロー『超人バロム・1(ワン)』(72年)の必殺技からの引用(笑)――
 ただそれらのネタはともかく、この前後編はスーパー戦隊の大ベテランとしての荒川氏の底力を見せつけるかのような傑作であったことは確かだろう。


*坂本監督の熱血演出が作品温度を上げた最終展開


 さらに第38話『天空の神殿』にて、かつてリュウソウ族がドルイドンの首領的存在・エラスを封印するために使った伝説の聖剣・リュウソウカリバーが新アイテムとして登場し、リュウソウジャー全員を強化形態にチェンジさせるのみならず、彼らとドルイドンとの間に6500万年にも渡る因縁の象徴として最終章に至るまで描かれることとなった。
 再びセトーに課せられた試練の中で「使命と仲間のどちらかを選べ」と問われ、仲間=「私(わたくし)」を選んだコウと使命=「公(おおやけ)」を選んだカナロは、伝説の聖剣=「おおいなる力」をめぐって「はじまりの神殿」の中でガチンコ勝負を繰りひろげる!
 一方、第2クールでリュウソウジャーに倒されたかに見えたものの、第3クールで再び登場するようになったドルイドンの幹部・ガチレウスが、プリシャスに忠誠を誓うために奪われていた心臓を取り戻すため、リュウソウジャーに最後の決戦を挑(いど)む!


 課せられた試練の中で大量に火薬を使用することでコウがいつもの採石場で吹っ飛びまくったり(笑)、合体ロボのラストバトルが実景のダムに合成された臨場感あふれるカットや、リュウソウカリバーをともに手にすることとなったコウ=レッドとカナロ=ゴールドが初披露する黒や金のゴージャスなマントを翻す最強形態……と、コウVSカナロとガチレウスVSリュウソウジャーが全編に渡って並行して描かれたこの回では、坂本浩一監督による白熱したバトル演出の中で、長年に渡る因縁ドラマのクライマックスが点描されていった。
 そしてガチレウスとの戦いはいわゆるクリスマス編のコミカル回ながらも、リュウソウジャーがドルン兵と戦いながら名乗りをあげる坂本監督らしい華(はな)のある演出、実景の都心のビル街に合成された巨大化したガチレウスとキングキシリュウオーとのラストバトルを宙から俯瞰(ふかん)してとらえる一方、オープンセットで真下からあおりでとらえ、ともに360度回転させて見せる臨場感のある演出がなされた第39話『奪われた聖夜』に持ち越され、プリシャス曰(いわ)く「ガッちゃん(ガチレウス)、使えなかったなぁ」(笑)として決着した。


 なお、第38話では先述した映画『タイムスリップ! 恐竜パニック!!』の限定キャラだったリュウソウ族の先祖・ユノが残留思念のかたちで登場し、映画と同じくアイドルグループ・AKB48(エイケービー・フォーティエイト)の元メンバーだった北原里英(きたはら・りえ)氏が演じることで、リュウソウカリバーに「伝説の聖剣」としての説得力を与えることにおおいに貢献(こうけん)していた。
 また、第39話でバンバが面倒を見る保育園の保母・あかりを演じた小松彩夏(こまつ・あやか)氏は、実写版『美少女戦士セーラームーン』(03年・東映 中部日本放送https://katoku99.hatenablog.com/entry/20041105/p1)で愛野美奈子(あいの・みなこ)=セーラーヴィーナスを演じた過去があり、リュウソウジャーの師匠だったマスターレッド・マスターブルー・マスターピンクにつづく実写版『セーラームーン』出身者の登場には、実写版を「黒歴史(くろれきし)」扱いするテレビアニメ版(92年)至上主義者の人々にはトラウマを呼び起こすこととなってしまったかも(爆)。
 こうしたマニア向けのサプライズもまた、坂本監督ならではのものだろう。


 そして第38話でユノが「本当の試練のはじまり」と語り、そのラストでプリシャスが鼻歌混じりで「順調順調」とつぶやくのが伏線となっていたのだが、これまで描かれてきたリュウソウジャーの戦いは、宇宙から次々と強敵が現れることにより、エラスを封印してきたリュウソウカリバー=「おおいなる力」をリュウソウジャーが使わざるを得ない状況に至らせてエラスを復活させるという、プリシャスの手の中で踊らされてきたものであったことが、第45話『心臓を取り戻せ』で語られるのだ!
 その前段となる第44話『試されたキズナ』ではオトがリュウソウカリバーを狙うドルイドンによって人質とされるが――コウがカリバーを渡すフリをしてその背後からメルト=リュウソウブルーが急襲するあざやかな、いや実に卑怯(ひきょう)な(爆)描写や、森の中でリュウソウジャーがドルン兵と戦いながら名乗りをあげる演出が光る!――、この回ではメルト・トワ・バンバ・カナロが先述した「はじまりの神殿」へと向かったために、市街地で暴れるプリシャス・ヤバソード・ガンジョージの3大幹部に大苦戦するコウ=レッドとアスナリュウソウピンクの危機に、オトがプテラードンが変形した巨大ロボ・ヨクリュウオーを自ら操縦して駆けつけるのだ!


 これは同じ坂本監督による『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)で悪の超人・ウルトラダークキラーに昭和の時代のライダーガールズのように人質にされてしまい、それを助けようとして囚(とら)われの身となってしまったウルトラマンゼロの足をひっぱっているだけに見えかねなかったウルトラウーマングリージョが、終盤で「私だってウルトラマンです!」と敵に一矢報(いっし・むく)いるかたちで、全身から光を放ってダークキラーとゼロの偽物・ゼロダークネスを勢いよく吹っ飛ばすさまを彷彿とさせたものだ。
 先述した第31話でオトがプテラードンを自ら封印を解かせるに至らせたのもそうだったが、こうした周辺キャラ、いや深夜アニメに登場するような妹キャラ(笑)にまでも活躍の場を与えてしまう坂本演出にはやはりすがすがしいカタルシスを感じずにはいられないのだ。


 この際アスナがプリシャスに語る


「いつも都合のよいときに来る。それが仲間!」


という主張も、まさにヒーローものや少年漫画や娯楽活劇作品の本質とは「ご都合主義」そのものであることを自己言及的に指摘してみせたものである(笑)。
 しかし、現実世界が実際にそうなっているかはともかく、「悪であっても力さえ強ければ勝てる世界」ではなく「道理や正義がある方にこそ勝ってほしいという願望」が込められた「ご都合主義」こそが、実はこの手の変身ヒーローものにおいては登場人物に魂(たましい)を与えて「人間ドラマ性」や「道徳テーマ性」をも高めるための作劇的な技巧だと実感させてしまうほどに説得力にあふれたものではなかったか?


 また第44話で初登場となるマスターブラック=先代リュウソウブラックを演じたのは実写版『セーラームーン』の出身者ではなく(爆)、『未来戦隊タイムレンジャー』(00年・もう20年も前!・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001102/p1)で浅見竜也(あさみ・たつや)=タイムレッドを演じ、その後俳優と並行して各局のスポーツ系バラエティ番組に多数出演したことで一般的にも知名度が高い永井大(ながい・まさる。『タイムレンジャー』当時の名義は「永井マサル」)氏だったのだ!
 プリシャスを倒すために300年前にサデンを倒して入れ替わったマスターブラックがサデンの仮面を脱ぐ場面で、おもわず狂喜してしまった往年のファンも多かったことだろう。正直個人的には氏は『タイムレンジャー』当時よりも現在の方がずっとカッコよく思えてしまい、自分が女子ならおそらく黄色い声をあげていたかと(爆)。


 第45話のクライマックスでは人間態のままで戦いながら名乗りをあげたリュウソウジャーが主題歌が流れる中、炎を背景にいっせいに変身する華にあふれるカットをはじめ、大量に火薬を使用することで炎と白い噴煙があがる中で繰りだされるバトルアクションが絶品だった。
 しかも第44話のアスナのセリフ「それが仲間!」と係り結びとなるかたちでマスターブラックがプリシャスに語る「あいつらは仲間に裏切られるとは微塵(みじん)も思っていない」や「おまえはひとりだ」は、『リュウソウジャー』最大のヤマ場の中で高いドラマ性を宿らせたものとなり得ていたのだ。


 そして重戦車のようなデザインのガンジョージが「プリシャスが喜ぶなら本望(ほんもう)」と、リュウソウジャーを倒すためには自爆も辞さない覚悟だったのに対し、閻魔(えんま)大王をモチーフにしたかのようなヤバソードは「ドルイドン倒す! リュウソウ族倒す!」と巨大化し、双方を攻撃してリュウソウジャーとドルイドンを混乱させてしまう!


 ラストカットで鼓動(こどう)をあげながら赤い光を明滅させる抽象(ちゅうしょう)的な謎の存在としてエラスが描かれるに至るまで、これだけ坂本監督が最高のお膳立てをしてくれたのだから、『リュウソウジャー』も従来のスーパー戦隊と同様に、最終章はおおいに盛りあがるに違いないと、個人的には期待していたものだ。
 だが、むしろ今ではそんな過度な期待をさせた坂本監督のことを、つい恨(うら)みたくなるほどなのだが(爆)。


*『平成ウルトラセブン』みたいな最終章……


 第46話『気高(けだか)き騎士竜たち』・第47話『幸福と絶望の間で』・最終回(第48話)『地球の意思』と、メイン監督の上堀内佳寿也(かみほりうち・かずや)監督――ただし計9話しか撮っておらず、坂本監督の計11話よりも少ない(汗)――による『リュウソウジャー』の最終章三部作には、個人的には唖然(あぜん)とするしかなかった。
 まるで先述した『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』の続編として製作されたハズなのに、回を重ねるごとにまったく違う作風へと至ってしまった『ウルトラマンタイガ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200108/p1)を観せられたときのように(大爆)。


 第46話ではプリシャスによってリュウソウジャー、そしてドルイドンの出自の真実が語られる。
 それによれば、今はドルイドンの首領として君臨するエラスが地球で最初に生み出したのは実はリュウソウ族であり、そのリュウソウ族が身勝手な理由で争いばかりする愚(おろ)かな存在となってしまったがために、それを駆逐(くちく)しようとしてエラスはドルイドンを生み出したのだと。
 そのドルイドンまでもがどうしようもないために、エラスは双方を滅亡させて地球をつくりなおそうとしているのだ……


 このノリはまさに先述した『未来戦隊タイムレンジャー』でユウリ=タイムピンクを演じた勝村美香(かつむら・みか)氏が、のちに防衛組織・ウルトラ警備隊のキサラギ・ユキ隊員役で出演したオリジナルビデオ作品、「平成」『ウルトラセブン』シリーズ(98年・99年・02年 バップ)と同様の、いわば「厨二病(ちゅうにびょう)」的世界観なのではあるまいか?
 地球の平和を守る正義のヒーロー&ヒロインとして描かれてきたリュウソウジャーの先祖・リュウソウ族は、エラス曰く「争いでしか存在を主張できない害虫ども」(苦笑)だったのであり、その敵として描かれてきたドルイドンこそが、実はリュウソウ族から地球を守るために生み出されたヒーロー的存在だったのだ(笑)。
 もうまんま『ウルトラセブン』(67年)第42話『ノンマルトの使者』そのものなんだよなぁ…… こうなるとリュウソウジャーに対してではなく、おもわずエラスに感情移入してしまうものがある。つーか、そもそもエラスって「悪」じゃないよな(爆)。


 すっかりやさぐれた中年の筆者にとっては、正直この設定は実におもしろく、一種の小気味良さすら感じられるほどであり、座布団(ざぶとん)3枚はあげてもいいかと思える(大爆)。
 ただ、たとえば深夜アニメでこうしたかたちで従来の変身ヒーロー作品のフォーマットを徹底的にちゃかすことで笑いをとるのなら大賛成だが、果たしてコレは日曜朝の「子供番組」の枠でやっていいモノなのか? と考えるならおおいに疑問が残るところだ。


 もしどうしてもこういうのをやりたいのなら、これまで「正義」の名のもとに、本来は地球を守る存在だったハズのドルイドンの幹部・怪人・戦闘員の多くを殺害してきたことに対して、リュウソウジャーがまずは謝罪をするのが筋ではあるまいか?
 だが、リュウソウジャーは最終回に至るまで、ドルイドンにもエラスにもただの一言も謝罪せず、第40話『霧の中の悪夢』でコウが「明るい未来をかたちにするのがオレたちの騎士道」と結論づけたように、エラスと戦う理由として彼らはひたすら「未来」を口にするばかりであった。
 これではまるで太平洋戦争時の過去のあやまちはあくまで先祖がやったことで、自分たちには責任がないとして中国や韓国にいっさい謝罪せず、ひたすら「未来志向」を口にする安倍晋三(あべ・しんぞう)政権の外交姿勢と同じではないのか?(苦笑)


 実際第47話ではカナロが「これ以上戦う意味があるのか?」との疑問を示したことに、抽象的な存在から怪人態となったエラスを前に、リュウソウジャー全員が絶句して固まってしまう(笑)。
 その前段としてエラスがリュウソウジャーを含めた全人類を眠りにつかせ、争いも心配も絶望もない、ただひたすら幸せな夢を見せる場面があったのだが、カナロはそれを指して「このままみんなが眠りつづけた方が幸せだ」と主張するのだ。
 個人的にはそれにおおいに共感してしまったのだが(爆)、あくまで「地球をつくりなおす」と主張するエラスに対し、紅一点のアスナが「それはアンタの都合だろ!」とタンカをきる!


 そして変身ヒーローアニメ『SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190529/p1)第9話『夢・想』にて、有象無象怪獣バジャックに幸せな夢を見せられた怪獣オタクの男子高校生・内海将(うつみ・しょう)が、「ここにはオレの友達がいない」と夢から覚めた際のセリフをアスナはまんまパクって(笑)、「その夢の中には仲間がいなかった!」と叫ぶのだ。
 だが夢から覚めた内海が「やるべきことが!」と怪獣退治=「公」のために駆けだしたのとは対照的に、アスナは私は仲間とずっといっしょにいたい、笑いたいなどと、ひたすら「私」のことばかりを口にする。
 それもアンタの都合だよな(爆)。


 アスナが口火を切ったのにつづき、ほかのメンバーも口々に戦う動機を叫ぶのだが、リュウソウ族もドルイドンもどうしようもないから地球をつくりなおすという、エラスのあまりに明確で一種の正当性すら感じられる動機を上回るほどの説得力のあるものは皆無(かいむ)に近かった。
 おかげでリュウソウジャーの最後の変身や名乗り、そして騎士竜の総登場が、クライマックスで盛りあがりを見せずに終わってしまった感がある。
 それにしても、リュウソウジャーにとっては6500万年もの因縁関係にあったハズのドルイドンに対する彼らの想いがここでまったく語られず、完全に蚊帳(かや)の外に置かれていたのはいったいどういうワケだろうか?


*地球での共存を許されずに終わったドルイド


 『リュウソウジャー』の後番組としてスタートした『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年・もうコレに期待するしかないだろ・笑)が宝石と車をモチーフにしていることから、車つながりで動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)で配信が開始された『激走戦隊カーレンジャー』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110521/p1)では宇宙の暴走族(笑)・ボーゾックが悪の組織として描かれてきたが、終盤で彼らは全宇宙を支配する暴走皇帝エグゾスにだまされていたことに気づき、最終回(第48話)『いつまでも交通安全』(爆)でボーゾックはカーレンジャーと共闘してエグゾスを倒したのだ!
 また先述した『ウルトラマンタイガ』の最終回(第25話)『バディ ステディ ゴー』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1)でも、侵略宇宙人の組織・ヴィランギルドに所属するサーベル暴君マグマ星人と宇宙商人マーキンド星人が、レギュラー悪のウルトラマントレギアが起こした地球に迫る危機を前に、民間の警備会社・E.G.I.S.(イージス)の作戦に協力する姿が描かれていた。


 だから『リュウソウジャー』でもドルイドンでわずかに生き残ったプリシャス・ワイズルー・クレオンと、まずは和解の握手でもかわした上で、リュウソウジャーとドルイドンが共闘してエラスを倒すさまを、6500万年にもおよぶ因縁バトルに決着をつける意味でもキッチリと描くべきではなかったのか?
 クレオンは第41話『消えた聖剣』にてプリシャスに渡せば手柄として認めてもらえるハズのリュウソウカリバーを危機に陥(おちい)ったリュウソウジャーに投げ渡したり、第42話『決戦のステージ』でリュウソウレッドに敗れたワイズルーを「ボクを認めてくれた」存在として別れを惜しむなど、幹部たちに翻弄(ほんろう)されてきた中で心の変遷や承認欲求がていねいに描かれていただけに、そのドラマ性を高めるためにもエラスに致命傷を与えるくらいの活躍をさせるべきだったろう。
 だがドルイドンの3人は第47話から最終回に至るリュウソウジャーとエラスのラストバトルの間はずっと不在であり、エラスが倒されるとやっと出てきて「クレオンの星に行く」としてそそくさと退場する始末だったのだ。


 そういや『リュウソウジャー』と同じく恐竜モチーフだった『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)でメイン監督の坂本監督が撮った終盤では、敵組織・デーボス軍の女幹部でアイドル声優・戸松遙(とまつ・はるか)が声を演じたキャンデリラが、ラストバトルでキョウリュウジャーと共闘して幹部の百面神官カオスを倒したり、親とはぐれて泣いていた少女をクレオンみたいなコミカルキャラ・ラッキューロと世話をするさまが描かれていた。
 すでに「悪」ではなくなった、いや、元々「悪」ではなかったといえるプリシャス・ワイズルー・クレオンのそうした姿をラストで描くことで、リュウソウジャーが再三口にした「明るい未来」のかたちとは、それこそ『ウルトラマンタイガ』みたいにリュウソウ族・ドルイドン・人類が共存する理想社会の実現とすべきだったように思えてならないのだ。


*コミカル演出のマズい使い方


 あと第46話で気になったのが、リュウソウ族の伝説の偉人・セトーがリュウソウブラウンに変身して以降の描写である。
 このセトーはリュウソウジャーが世話になる古生物学者・龍井を演じる著名な俳優・吹越満(ふきこし・みつる)氏が二役で務め、飄々(ひょうひょう)としたキャラの龍井に時折セトーが憑依(ひょうい)しては助言を与えたり試練を課したりする、いわば神秘的な存在として描かれてきた。
 同様の事例としては『天装戦隊ゴセイジャー』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20130121/p1)のゴセイジャーの指導者的存在・マスターヘッドが、ゴセイジャーが世話になる天文学者・天知秀一郎(あまち・しゅういちろう)博士に終盤で憑依し、天知博士の姿でゴセイジャーに助言を与える描写があったが、これも漫才コンビ髭男爵(ひげだんしゃく)の山田ルイ53世氏が、コミカルな天知博士と神秘的な存在のマスターヘッドを器用に演じわけていたものだった。


 セトーがリュウソウブラウンに変身した際、アスナが「リュウソウ……茶色?」(笑)とボケるのはむしろ微笑(ほほえ)ましいと思えるくらいだ。だが、強敵のプリシャスを前に「見た目は騎士だが中身はオッサン」と語って以降、リュウソウブラウンのアクションはまともに戦闘もできないような、単に足をひっぱるだけの存在として演出されていたのだ。リュウソウジャー全員が揃って名乗りをあげる場面で、ブラウンが「これがやりたかった」とボソッとつぶやくに至っては明らかに興(きょう)ざめであり、正直不快にすら思えたほどだった。コレはセトーのキャラではなく、むしろ龍井のキャラなのではあるまいか?


 スーパー戦隊の年寄りヒーローとしては先述した『獣電戦隊キョウリュウジャー』の初代キョウリュウバイオレット(紫色)の前例があり、変身直後にギックリ腰となってキョウリュウジャーとデーボス軍の双方をコケさせたものだが(笑)、これは変身前のドクター・ウルシェードが、彼を顔出しの生身で演じた大ベテラン声優・千葉繁(ちば・しげる)氏(!)のキャラをまんま活(い)かしたファンキーおやじだったからこそ、そのカッコ悪さも違和感なく楽しめたのだ。
 だがセトーはそんなネタキャラどころか、これまでリュウソウジャーの指導者的存在として崇高(すうこう)に描かれてきたのだ。にもかかわらず、変身後の方がカッコ悪く描かれることで、本作最大のクライマックスバトルのカタルシスを台無しにしてしまうとは何事か? これでは『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181104/p1)前半に登場した悪のネタキャラ・愛染(あいぜん)マコトが変身したウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツのように、「神秘性がなくなる!」(爆)とボヤきたくもなるというものだ。


 誤解のないように主張しておくが、筆者は近年のスーパー戦隊仮面ライダーがコミカル演出を多用していること自体には賛成の立場である。
 ましてや『リュウソウジャー』の最終章三部作が「厨二病」的世界観として描かれた以上、「子供番組」としてのバランスをとるためにもむしろ笑える場面がもっとほしいと思えたほどだ。
 だが、バトル場面の中でコミカル演出を点描するなら、たとえば第44話の前半でメルト=リュウソウブルーの機転で助けられたオトが元々好意を感じていたメルトに「メルトくん」と抱きつくさまを見て、兄のカナロが「おまえを弟と認めよう……」とつぶやいて呆然(ぼうぜん)としてしまう(笑)といった調子で、各キャラがいかにもな行動を示すかたちで描かれるべきだろう。
 まぁ、先述した『激走戦隊カーレンジャー』に登場するボーゾックの怪人が、地球の和菓子屋・芋長(いもちょう)の芋ようかんを食べると巨大化する――ちなみにコンビニ売りの芋ようかんを食べると逆に体が縮小してしまう(爆)――、なんてユルユルな世界観が最初から示されていたのなら、リュウソウブラウンが最終決戦でボケまくるのも違和感があるどころか、むしろ当然だったかもしれないが。


 こんなことならせっかく第44話で初登場となったマスターブラック=先代リュウソウブラックこそ、ラストバトルに参戦させてほしかったものだ。ましてや先代ブラックのスーツアクターを務めたのは、「平成」仮面ライダーシリーズで主人公ライダーを長年演じつづけ、改元とともに後進に道を譲った、かつてはタイムレッドも演じた高岩成二(たかいわ・せいじ)氏だったのだから! だが第45話でプリシャスから心臓を取り戻したばかりで体が本調子じゃないからと、バンバのよけいな配慮(笑)によってマスターブラックは最終章三部作ではまともな見せ場がないままに終わってしまった。


 ついでにいうなら、最終回のラストでリュウソウ族の長老が「フィットネスクラブの経営失敗」云々(うんぬん)と語るのにも「神秘性がなくなる!」と叫びたくなったが(爆)。


スーパー戦隊最大の様式美をこともあろうに排除(!)


 さて本作でリュウソウジャーの相棒として何種類も登場してきた、人間の言葉で話す恐竜型の機械生命体・騎士竜こそが、メインターゲットの子供たちにとっては最も注目する存在であったことと思える。
 第46話でコウの相棒・ティラミーゴは、エラスの封印こそがオレたち騎士竜の使命だとして「おまえが大好きだ。おまえのためなら封印されてもいい」とまで語り、別れを惜しむコウに「どこにいてもソウルはひとつ」と、ふたりの絆(きずな)の強さを示していた。
 最終決戦でリュウソウカリバーに融合したすべての騎士竜は再び封印されることとなったのだが、エラスが消滅するカット――大量の火薬が爆発して炎がブチあがるのではなく、CGでガラスのように砕(くだ)け散るその最期(さいご)もカタルシスに欠けるものだったが……――のすぐ次の場面で、騎士竜たちがもう石像と化してしまっているのには唖然としてしまった(笑)。
 本来ならリュウソウジャー全員がそれぞれの相棒の騎士竜とメッセージをかわして別れを惜しむ描写があって然るべきかと思えるのだが、彼らの関係性はこんなにもクールに完結されてしまう程度のものだったのか?


 だが、『リュウソウジャー』ではもっと問題にしたいことがある。
 まだ変身ヒーロー作品の地位が現在よりもずっと低かった時代に、スーパー戦隊に対する揶揄(やゆ)として「なんで戦隊の名乗りの間に悪の組織は攻撃せぇへんのや~!」なんてのがあったものだ。
 先述したウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツからすれば、それは「ルール違反なんだぞ~!!」だったのだが(爆)、スーパー戦隊の元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)で「5人そろって、ゴレンジャー!」とキメて以降、その様式美は実に半世紀近くにも渡ってシリーズを通して継承されつづけてきたのである。
 だが、『リュウソウジャー』の多くの回ではこの様式美をよりによって省略してしまっていたのだ!


 今回話題にした第31話から最終回に至る計18話の中で、リュウソウジャーの名乗りが描かれたのは第39話・第40話・第43話・第44話・第45話・第46話・第47話の計7回しかなく――最終回ですら描かれなかった!――、それも最終決戦を描く第4クールに集中していたのである。
 まさか「名乗りなんてガキっぽい演出はもうやめましょう」なんて、プロデューサー・メインライター・本編監督たちとの間で妙な申し合わせがされていたワケではないだろうな? スーパー戦隊最大の様式美をはしょっておいて、「王道」志向も何もあったものではないと思えるのだが…… まさにこれこそが、『リュウソウジャー』の作風を最大に象徴するものではなかろうか?


 『リュウソウジャー』で東映側のプロデューサーを務めた丸山真哉(まるやま・しんや)氏は、かつて『ビーロボ カブタック』(97年・東映 テレビ朝日)・『テツワン探偵ロボタック』(98年・東映 テレビ朝日)・『燃えろ!! ロボコン』(99年・東映 テレビ朝日)などのコメディ色が強い作品群や――マニアたちの間では『カブタック』と『ロボタック』はいわゆるメタルヒーローシリーズには含まないとする見方が強い――、先述した実写版『美少女戦士セーラームーン』でサブプロデューサーを務めて以来、スーパー戦隊仮面ライダーといった正統派の変身ヒーロー作品にはほとんど関わったことのない人物である――『リュウソウジャー』に実写版『セーラームーン』出身者が多く出演することとなったのは、氏の人脈によるところが大きいのかと――。
 またメインライターを務めた山岡潤平(やまおか・じゅんぺい)氏は特撮どころかアニメやゲームの脚本すらも書いたことがない、いわばジャンル作品については完全な初心者だった。
 氏は1983年生まれなのだが、ひょっとしたら中高生のころに先述した『平成ウルトラセブン』や「平成」ウルトラマン三部作(96~98年)、怪獣映画「平成」ガメラシリーズ(95~99年・角川大映)などを楽しんでいたのだろうか?(笑)


 大の大人が変身ヒーロー作品を楽しみたいがために「ウルトラマンを子供からとりあげろ!」(大爆)などとして、テーマやドラマばかりを偏重(へんちょう)した「大人の鑑賞に耐える作品」が求められていた1990年代後半から2000年代初頭の感性でつくられてしまったような印象が、全面的にではないが『リュウソウジャー』にはどこか透けて感じられてならなかった。
 巨大メカ戦の演出に定評があり、「巨大戦の達人」とまで評されるほどの竹本昇(たけもと・のぼる)監督が最後までローテーションに加えられなかった一方で、「平成」仮面ライダーアバンギャルドな演出を得意とした若手の上堀内監督をメインに起用したのも、今思えばそんな感性を如実(にょじつ)に象徴させるものであり、「子供番組」というよりは「オレたちが観たいもの」を撮らせていたような感がある。
 『リュウソウジャー』と同じく恐竜モチーフの戦隊だった『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120220/p1)で監督デビューを果たし、30年近くに渡ってスーパー戦隊を演出しつづけてきた大ベテランの渡辺勝也(わたなべ・かつや)監督が、第25話『踊るクレオン』を最後に本作を離れたのは、そんな現場に対する抵抗だったのだろうか?――なお第25話が序盤の勢いに迫る3.6%もの視聴率を記録して以降、『リュウソウジャー』は3%の壁をついに一度も超えられなかった(大汗)――


 『リュウソウジャー』の作風は1990年代後半から2000年代初頭ならば、マニア間で「傑作」と評されていたかもしれない。
 なんせその時代は「王道」だった『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1)が、インターネットの巨大掲示板・5ちゃんねる――当時は「2ちゃんねる」――でボロカスに酷評されたほどだったのだから。
 もっとも筆者とて、先述した『激走戦隊カーレンジャー』の当時はまだ東宝・円谷至上主義者の気が残っていたので、「完全なガキ向け」としてバカにしていたのだが(汗)、今ではあまりにユルユルな『カーレンジャー』のことが愛(いと)おしく思えてならないほどだ(爆)。


 だが、あれから20年も経った「新時代」の現在では、ネット上で『リュウソウジャー』を「つまらない」どころか「ゴミのようにつまらない」(大汗)との酷評がなされ、それに多数の賛同意見が寄せられてしまうまでに至っている。
 特撮マニアの多くが現在の作品に求めているものも、「あのころ」とは完全に異なっているのだから、まずは製作側の意識改革こそが先決ではないのだろうか?
 まぁ、ここまでドハデに大失敗をやらかした以上、その反動で『魔進戦隊キラメイジャー』はきっと良くなることだろう(笑)。


2020.3.8.
(了)
(初出・『仮面特攻隊2020年春号』(20年3月8日発行予定分)所収『騎士竜戦隊リュウソウジャー』総括・合評より抜粋)


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『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』 ~劇場先行お披露目で戦隊の起死回生は成功するのか!?

(2020年2月8日東映系公開)

『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』合評1 ~短評・そういえばファーストガンダムのTV版の挿入歌に、「きらめきのララァ」ってのがあったね(マテ)

(文・仙田 冷)
(2020年2月29日脱稿)


 せいぜい10分くらいの短編だろうと思っていたら、あにはからんや、30分近く使っての、事実上の第1話。今後はこういうフォーマットで行くんだろうか。
 まあ、聞くところによると、前作『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190602/p1)の営業成績も今一つだったらしいし、ここは新戦隊をどーんと押し出していこうということなのかも知れない。


 で、本作を見て思ったことを箇条書き。

・お姫様のビジュアルがちょっと怖い

 宝石の国クリスタリアから逃げてきたマブシーナ姫、見た目がちょっと怖い。子供が見たら泣くんじゃなかろうか。せめて地球にいる時は、人間の女性に化けるとかした方がいいのでは。

・人間関係は謎だらけ

 来る日のために、キラメイジャーのための防衛組織「CARAT」を整えていた博多南無鈴(はかたみなみ・むりょう)。彼とクリスタリアのオラディン王は、どこでどんな経緯で出会ったのか。また、オラディンの弟・ガルザは、何を思って故国を裏切ったのか。その辺は、これから追い追い説明していくのだろう。

・あまり神秘の秘宝っぽくないキラメイストーン

 う~ん……クリスタリアの秘宝であるはずのキラメイストーンが、あんまりそれっぽく見えない。何と言うか、余りに気さくにしゃべりすぎで、神々しさに欠けるんだな。レッドの宝石のキャラなんか、もろに『仮面ライダー電王』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080217/p1)の赤鬼モモタロスだし。

・少しは悩め、おまいら

 今回は、レッド以外の4人がマブシーナにスカウトされるわけだが、マブシーナは彼らを戦いに巻き込むことに悩んでるというのに、当の本人たちはぜんぜん悩んでないように見えるという、ちょっと変なことになってる。
 本来ならそれこそ女児向け『プリキュア』(04年~)シリーズ序盤みたいに、一人スカウトするのに一話かけてもいいようなものだが、それを30分でやろうってのがそもそも無茶ってもんだろう。


 てなわけで『キラメイジャー』、期待していいのか悪いのか、よくわからんことになってる。プリキュアと一緒になって踊ってる場合じゃないかも知れない。これがほんとの「キラやば~っ☆」ってやつ?


(了)


『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』合評2

(文・フラユシュ)
(2020年2月29日脱稿)


 うーむ、あの宝石宇宙人が昔のスーパー戦隊っぽいけど(デザイナー・出渕裕(いづぶち・ゆたか)あたりが絡んでた80年代頃)、少し気味が悪いような? 敵の攻撃母船というか、怪獣がクラゲっぽいのも80年代のスーパー戦隊を思い出す。


 えらく気弱な宝石宇宙人の姫様で、変身アイテムも動いてしゃべる宝石とは! なんか往年の東映不思議コメディシリーズを手掛けた浦沢義男チック? 脚本には荒川センセも絡んでたのでなんか納得。


 そしてスカウトされた四人といえば、時代劇役者・eゲーマー・女医・女性アスリートというメンツ。
 事前の噂だとランナーの姉ちゃんが人気出そう。女医は若い頃の大場久美子に似てるような? eゲーマーというのが今風?


 でも四人とも心配無用で、戦闘力はそこそこあるのね。まぁ尺の都合か戦隊メンバーになることを割とあっさり受け入れて戦ってますが、あとで葛藤劇はあるのかな? あのオチは驚きましたが、そこは観てのお楽しみ。


 あの防衛組織の社長と宝石宇宙人の王様、どういう経緯で友達になったか気になりますが。今回の戦隊基地は昔のマッドアートっぽくてなんか懐かしい。


 肝心のレッドは高校生ですが、躁鬱と集中力の激しいイラスト描き好きの人みたいで、クラスでは少しバカにされている? 今回絵のモデルになってくれた女子グループの子はヒロインになるのだろうか? なんか角度美人っぽい子の印象でしたが。


 このレッドも戦力・実力よりは強い信念のイマジネーション重視派? ここ数年のスーパー戦隊や女児向けプリキュアの主人公ではトレンドなのか? おそらくテレビでレッド加入編をやるんでしょうな。今回は顔見せ&レッド以外のメンバー加入編のAパートという感じで、テレビ放送時は視聴停止せずに見続けられるのか、まだ気持ち半分といったところ。


 しかし、なんで本作は2大新旧戦隊VSに乱入する新戦隊パターンをやめたんでしょうね?


(了)


『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』合評3

(文・久保達也)
(2020年2月24日脱稿)


「テレビスタートまで待てない! キラメイジャー誕生を映画で目撃せよ!」(キャッチコピー)


 「新元号」初のスーパー戦隊として2020年3月8日にスタートする『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年)の前日譚(たん)となる映画『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20年・東映)が、放映開始1ヶ月前の2020年2月8日に『スーパー戦隊MOVIE(ムービー)パーティ』の1本として公開された。


 近年では『ウルトラマンタイガ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200108/p1)の前日譚的内容の『ウルトラマンタイガ』第0話が動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)のULTRAMAN OFFICIAL(ウルトラマン・オフィシャル)で放映開始前に配信された例があり、もっと遡(さかのぼ)れば『ウルトラマンコスモス』(01年)の前日譚として、主人公・春野ムサシが小学校5年生のころに初めてウルトラマンに出会う話を描いた映画『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT(ザ・ファースト・コンタクト)』(01年・松竹)が放映開始直後に劇場で上映された例もあるが、スーパー戦隊としてはこれは初めてのこととなる。


 『キラメイジャー』の前作『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191102/p1)の放映前に『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190406/p1)が放映されたように、近年ではその人気や視聴率・玩具の売り上げにやや翳(かげ)りが見えてきたスーパー戦隊の新作放映開始前の約1ヶ月間を、徹底して番組の周知・広報期間と位置づける一環として本作は製作される運びとなったのかと思われる。


 なお『キラメイジャー』の東映側のチーフプロデューサーには、早稲田大学在学時に学内の特撮サークル・怪獣同盟に所属し、『特捜戦隊デカレンジャー』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041112/p1)・『魔法戦隊マジレンジャー』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110228/p1)・『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080817/p1)に『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100809/p1)や『仮面ライダーフォーゼ』(11年)などでチーフプロデューサーを務めていた塚田英明氏がかなり久々の復帰を果たしている。
 近年の氏は長寿ドラマ『科捜研の女』シリーズ(99年~・東映 テレビ朝日)や、テレビ朝日の報道番組『報道ステーション』(04年~)でかつてメインキャスターを務めたものの、安倍晋三(あべ・しんぞう)政権に忖度(そんたく)する局上層部の意向で番組を追放された(汗)古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)の司会による歴史バラエティ『古舘トーキングヒストリー』(16年~)などのチーフプロデューサーを担当しており、東映変身ヒーロー作品からは長らく離れていた。
 その塚田プロデューサーが、メインライターとしては『海賊(かいぞく)戦隊ゴーカイジャー』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)以来となる大ベテランの脚本家・荒川稔久(あらかわ・なるひさ)氏とともに呼び戻されたのは、やはり製作側の危機感の表れであり、今度こそスーパー戦隊を本当の「王道」作品として復興させようとする決意からのものだろう。


 さてテレビシリーズの『キラメイジャー』の前日譚となる『エピソードZERO』では、すべての建築物がキラキラと輝く宝石の国・クリスタリアの王・オラディンが、その弟・ガルザに謀殺(ぼうさつ)されたあげくに闇の軍団の侵攻によって国は滅亡してしまう。
 ただひとり生き残った姫・マブシーナ(笑)はクリスタリアの秘宝である5色のしゃべる宝石・キラメイストーンとともに、次にガルザの軍が侵攻すると思われる地球に向かい、キラメイストーンと惹(ひ)かれあうキラメンタルを持つ5人の戦士を探し集めていく発端(ほったん)の物語が描かれる。


 『キラメイジャー』は宝石と車をモチーフとした戦隊だが、この導入部は車つながりとして東映特撮YouTube Officialで配信が開始された『激走戦隊カーレンジャー』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110521/p1)第1話『戦う交通安全』(笑)で、宇宙の暴走族・ボーゾックに故郷を滅ぼされたハザード星の戦士・ダップが、クルマジックパワーに共鳴する戦士を求めて地球に来訪したのを彷彿(ほうふつ)とさせるものだ。
 ダップは人気SF映画『スター・ウォーズ』シリーズ(77年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200105/p1)に登場するキャラ・ヨーダの完全なパクリみたいなデザインだったが(爆)、まん丸の大きな目が開閉するギミックは結構かわいかったものだった。
 これに対してマブシーナは青くて丸い大理石をそのまま頭にしたかなりゴツい大仏みたいな印象のキャラデザインであり、少女キャラなのに正直全然かわいくない(笑)。


 にもかかわらず、キラキラつながりで女児向けヒロインアニメ『キラキラ☆プリキュア アラモード』(17年)の途中追加戦士・キラ星シエル=キュアパルフェの声を演じた人気アイドル声優・水瀬(みなせ)いのりを起用するとか、ジョーダンもほどほどにしろ(大爆)――個人的には彼女の主演作としては、父の不倫を目撃したがために家庭の崩壊を招いた主人公少女が自らの発話を封印してしまうアニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』(15年・アニプレックスhttps://katoku99.hatenablog.com/entry/20191104/p1)が鮮烈に印象に残っている――。


 またレッドキラメイストーンの声を東映ヒーロー作品での声の出演が多い鈴村健一が務めるほか、キラメイストーンがしゃべくりまくる宝石として描かれているのは、動物と乗りものの属性をあわせ持つ機械生命体・炎神(えんじん)がしゃべくりまくっていた『炎神戦隊ゴーオンジャー』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1)を彷彿とさせるものでもあり、これらはメインターゲットの子供たちと声優ファンの注目を集めそうではあるだろう。


 エレクトロニック・スポーツの選手がイエロー、時代劇で活躍する人気アクションスターがブルー、陸上の女子選手がグリーン、外科の女医がピンクと、キラメイストーンが次々に戦士をスカウトしていく中、肝心のレッドがスカウトされる場面だけは今回描かれずに終わってしまう。
 レッドキラメイストーンがすさまじいキラメンタルの気配を感じる人物だけは一応登場するのだが、それは休み時間の教室で「アイツなんかヤバくね?」と周囲がひいてるにもかかわらず、机の上でイラストを一心不乱に描きまくる(ひとり)ボッチ男子高校生なのだ!(大爆)


 まぁ、スーパー戦隊にはボッチヒーローの前例としては『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)の「6番目の戦士」なのに、子供のころから体も気も弱かった(笑)門藤操(もんどう・みさお)=ジュウオウザワールド(黒・金・銀が混ざった色の戦士)がすでに存在するのだが、今回のレッドとなりそうな男子高校生は同じボッチでも操みたいな妙にイジケたタイプではなく、ボッチアニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(第1期・13年 第2期・15年 第3期が20年4月スタート!・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150403/p1)の男子高校生主人公・比企谷八幡(ひきがや・はちまん)みたいにやさぐれているワケでもない。
 どちらかといえば深夜アニメ『厨病(ちゅうびょう)激発ボーイ』(19年)に登場した戦隊オタクの男子高校生でヒーロー部に所属し、転校生の主人公女子を「おまえはピンクだ!」とスカウトしようとした(笑)野田大和(のだ・やまと)みたいな、ファンキーすぎて空回りしているといった感が強いキャラである。


 彼をイジろうとして近づいた女子――凶悪な目つきの表情演技が絶品!(爆)――は似顔絵を描いてもらうこととなるが、ひたすら描くのに夢中になっている彼の姿に心の変遷(へんせん)を遂(と)げたかのようなやさしいまなざしを向けたのも束の間(つかのま)、天才画家・ピカソの『泣く女』を『怒る女』(笑)にしたかのような、彼のあまりにアバンギャルドな作風に、その女子は再度彼を「ば~~~か!」と罵倒(ばとう)して教室を飛び出してしまう。
 いやぁ、コレはおもわぬイイものを観せてもらった、ってこういうものを観に来たワケではないのだが(笑)、「史上最弱の仮面ライダー」としてナヨナヨした青年・野上良太郎(のがみ・りょうたろう)が主人公となったことで、「こんなんで大丈夫なのか!?」と当初心配した『仮面ライダー電王』(07年)が大人気となった前例もあるのだから、「新時代」の新たなヒーロー像として期待してもいいのかもしれない。


 このボッチ主人公にも確かに驚いたのだけれど、『リュウソウジャー』のエンディングダンス『ケボーン! リュウソウジャー』を戦隊ヒーロー&ヒロインたちが踊るのはともかく、『HUG(はぐ)っと! プリキュア』(18年)・『スター☆トゥインクルプリキュア』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191107/p1)・『ヒーリングっど♥プリキュア』(20年)のヒロインたちもが競演したあげくに、2020年3月20日公開のアニメ映画『プリキュアラクルリープ みんなとの不思議な1日』(20年・東映)の予告編が流れたことで、筆者は今回いったい何を観に来たのか、ますますわからなくなってしまった(大爆)。
 ただ『ふたりはプリキュア』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1)以来継続している『プリキュア』シリーズもまた、スーパー戦隊と同様に長期低落傾向が近年は顕著(けんちょ)となっているだけに、こうしたコラボレーションはおおいにアリだととらえるべきだろう。
 特に大きなお友達の中では戦隊と『プリキュア』を両方観ている人々も多いのだから、いっそのこと『スーパー戦隊プリキュアMOVIEパーティ みんなでキラキラ!』(爆)と名づけて、映画『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200321/p1)も含めた3本立てで興行するのもよかったのかもしれない。
 いや、2021年度以降はぜひそれでお願いしたい(笑)。


2020.2.24.
(了)
(初出・『仮面特攻隊2020年春号』(20年3月8日発行予定分)所収『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』合評より抜粋)


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『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』合評1 ~短評・騎士と怪盗と警察と

(文・仙田 冷)
(2020年2月29日脱稿)


 まず前提として、ヒーローの競演というネタは無条件に燃える! ということは最初に明言しておきたい(爆)。その上で、思ったところを二、三。


 まず、今回はキャラの交通整理がいい感じにまとまっていたと思う。
 このキャラならこう動くだろうなというのが、違和感も過不足もなく描かれ、極端な話、今回競演した2作(3戦隊)を見たことがなくて本作が初見という人が見ても、キャラの人となりがある程度わかるようになっている。
 マイナソー怪人や敵幹部クレオンがルパンレンジャーのメンバーを襲うくだりや、カナロ(リュウソウゴールド)がつかさ(パトレン3号)にモーションをかけるくだり、抜き身の剣をぶら下げて臨海公園に現れたバンバ(リュウソウブラック)とトワ(リュウソウグリーン)がパトレンジャーに逮捕されるくだりなどは、競演させる以上はこういうのが見たかったんだよというのを見せてくれている。


 次に、危機的状況の設定の仕方が面白い。
 今回の敵怪人、ガニマ・ノシアガルダは、体に5つの金庫を持ち、1個に1体ずつの騎士竜を閉じこめている。
 で、金庫は5つ同時に開けなければ開かず、しかも騎士竜の力を取り込んでパワーアップしたために、1つの金庫を開けるのにダイヤルファイターが2ついるという、にっちもさっちも行かない状況。
 最悪、世界平和のためには敵を倒すことを優先して騎士竜たちを犠牲にするのもやむを得ないというところまで追い込まれる。
 その状況を突破する鍵となるアイテムが、最初から画面に出ているというのも、伏線の張り方としてはフェアで良い。


 で、気がつくと今回は、巨大戦がなかった。だがまあ、これはしょうがないかも知れない。正直最近の戦隊ロボは、合体の関係が複雑で、ちょっとついてけないものも感じていたのだが、特に『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190401/p1)の場合は、事実上2つの戦隊の巨大メカが入り乱れてくんずほぐれつ状態で(個人的には、番組の受けが良かった割に玩具が売れなかったのは、その辺の複雑さも一因ではないかと思っている)、それに『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(2019)のロボット型恐竜・騎士竜たちまで加わった日には、混乱に拍車がかかること請け合い。見ている子供たちもこんがらがるかも知れない。
 そういう判断があったのかどうかは知らないが、今回は等身大戦だけでけっこうきれいにオチがついており、巨大戦をやっても蛇足にしかならない感じもなきにしもあらず。個人的には、『バトルフィーバーJ』(1979・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120130/p1)以来、ルーティンのように続いてきた巨大戦を、ここらでちょっと見直してみた方がいいのではないかとも思うのだがどうか。
 本作については、だいたいこんなところである。


(了)


『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』合評2

(文・フラユシュ)
(2020年2月29日脱稿)


 さてあの年は、『HUG(ハグ)っと!プリキュア』と『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』(共に18)にハマっていたので懐かしくかつ嬉しい作品でした。きちんと後日談になってるし。


 ところで『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190602/p1)放映開始直前の『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』(19・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190406/p1)の時点で直前作『ルパパト』の最終回から一年後という噂を聞いたが、今回の話はいつの時期?


 しかし、今回はかなり気になる情報も。
 結局、ルパンブルー・透真(とおま)は蘇らせた恋人と距離を置いているとか、ルパンイエロー・初美花(うみか)は専門学校生(?)に、ルパンレッド・魁利(かいり)はこの二人と一人距離を置いて探偵稼業をしているらしいことが示唆されているが、パトレン3号(ピンク)・つかさ先輩の発言からまだ指名手配はされているらしい気配もあり、またテレビシリーズの最後で蘇らせた三人のうち魁利の兄のみ語られないのも不安が残る。
 ルパンレンジャーの変身前の3人は罪には問われなかったのかもしれないが、立場的に警察にはマークはされているのだろうな。


 初美花の親友はある劇中の事象から大人気漫画家として活躍中が示唆されて、ルパンレンジャーの後見人・小暮さんも今回のメール(LINE(ライン)だったかも)の内容からいまだに彼らに資金的な支援はしているらしいことを示唆するかたちでのみ言及。パトレンジャー側の可愛い事務方ロボット・ジムカーターも出番があるとは! が、パトレンジャー側の黒人上司・ヒルトップ管理官は未出演か。彼の謎のワイフが遂に登場か? と期待したのだが。飄々としたルパンエックス(パトレンエックス)のノエル君は相変わらず変わらんな……。
 彼らのこの近況だと『ルパパト』最終回後に何があったかすごく気になるぞ。うーむ小説版かなんかでフォローしてくれないかな?


 で、肝心の内容の方は、ルパンレンジャーとパトレンジャーがリュウソウジャーのメンツと絡むならこうだろうという理想的なからみ方で、理詰め的な作劇というかとにかくこうなるだろうなという連続。
 『ルパパト』側のヒロイン・つかさ先輩や初美花を結婚前提で口説くリュウソウゴールド・カナロとか(笑)、精悍になったというか逞しくなったパトレン2号(グリーン)・咲也がリュウソウグリーン・トワ少年を拘束して取り調べるとか、お互いに堅物であるパトレン1号(レッド)・圭一郎とリュウソウブラック・バンバの融通の利かなさのやり取りとかね。
 群像劇としてもよくできている。各キャラの性格のクセが強い『ルパパト』のメンツは話を動かしやすいのかも? 脚本は『ルパパト』側のメインライターだった香村純子さん。道理で。パトレンジャーら国際警察から見たファンタジックなリュウソウジャーへの銃刀法的には違法な武器の所持への追及とかは好きだな。まぁ違法性を示唆するだけで深くは追及しないのがお約束(笑)。


 映画の内容としては、『ルパパト』の悪の組織・ギャングラー残党の暗躍――親分のドラグニオー・ヤーブンはどうした?――と、それによる、いわゆる大の虫を生かすために小の虫を殺すか否かの「トロッコ問題」。これは『リュウソウジャー』初期編でも人間のマイナス感情から誕生するマイナソー怪人を倒すのに、発端となった人間が死亡すれば解決するのだという、子供番組としてはやや重たすぎる設定の問題提起があったのだが、それを角度と題材を変えてもう一度問い直してみたか? まぁスーパー戦隊的になんとか解決してしまう作品でしたが――お祭り映画だしね――。十分楽しめました。


 ア、今気づいたけど、『リュウソウジャー』側含めて巨大ロボ戦がないや。こりゃ珍しい。まぁドラマ性重視の『ルパパト』なら巨大ロボ戦なしもさもありなんだからか、3大戦隊のメカの数が多いから尺が取られるのでいっそ削ちゃえー! となったのか? 巨大ロボ戦がないということは昔のスーパー戦隊ならばありえないことだが、そのあたりは臨機応変になってきたという好意的な解釈で。


 まぁ20世紀の特撮マニアみたいにスーパー戦隊にはよけいな巨大ロボ戦があるから人間ドラマを描けなくなったとか、近年のように子供向け娯楽活劇なのだから必ず巨大ロボは出すべきだという様式美至上的な意見まである中で、それこそどちらかに絶対主義的に気張らずに臨機応変でやるのが一番いいのでは? と感じたりもする。まぁリュウソウジャーの恐竜ロボットたちの方が子供たちにはインパクトがありすぎてフェアに見えなくなるからなどの推察もできますが。


 同窓会のような作品で楽しかった。またいつか彼らに会えんことを。


補足
 女児向けアニメの近年の3大『プリキュア』との合同ダンスの特殊エンディングの実現は、モーションキャプチャーによる3DCG技術の向上と少子化対策と『ルパパト』放映途中での時間帯変更ゆえか? むかし円谷プロが目指した特撮とアニメの融合がここで達成されている!(そうか?)。
 ただもう少しプリキュア側の説明とアピールとスーパー戦隊側の素顔の踊りも見たかったが、比較的シリアスな『ルパパト』メンツだとギャップがあるのかも。
 まぁ来年以降に期待としておきますか。あくまでも噂ですが、白倉さん曰く「しばらくライダーと戦隊の競演はない」という話もあるから、『プリキュア』との共演を狙っているのか?


(了)


『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』合評3

(文・久保達也)
(2020年2月22日脱稿)

*「VS映画」、3年ぶりのロードショー公開!


 2017年1月14日に公開された映画『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャーVS(たい)ニンニンジャー 未来からのメッセージ from(フロム)スーパー戦隊』(17年・東映)以来、現在放映中の最新作と直近の前作の世界観をクロスオーバーさせるスーパー戦隊シリーズの「VS映画」が、実に3年ぶりに帰ってきた!


 もっとも厳密には『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年)と『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年)をクロスオーバーさせた映画『キュウレンジャーVS(ブイエス)ルパンレンジャーVS(ブイエス)パトレンジャー』(19年・東映)が、2019年5月3日から3週間の期間限定で公開されてはいるのだ。
 ただ『キュウレンジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』は東映ビデオが劇場先行公開と映像ソフトの発売で展開するブランド『東映 V CINEXT(ブイ・シネクスト)』の一環として公開されたため、その上映館は全国で40館にも満たず、お住まいの地域によっては劇場で観るのがかなわなかった人も多かったことだろう。


 前作『ジュウオウジャーVSニンニンジャー』との間に2年4ヶ月ものブランクをはさんで公開された『キュウレンジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』がそのような変則的な上映となったことから、今後の「VS」映画もやはり『東映 V CINEXT』として一部の劇場のみの公開となってしまうのか? と危惧(きぐ)したのは決して筆者だけではあるまい。
 なので今回の『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVS(ブイエス)ルパンレンジャーVS(ブイエス)パトレンジャー』(20年)が従来のスーパー戦隊仮面ライダーの劇場版のように全国ロードショー公開となったことをおもわぬ朗報だと喜んだ人々は多かっただろうが、筆者はこの『リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』は、当初『東映 V CINEXT』の一環として製作されたかと思えてならないものがあるのだ。


*『V CINEXT』的な「VS」映画


 まず従来の「VS」映画の尺が70分前後あったのに対し、今回は60分弱であり、これは『帰ってきた侍戦隊シンケンジャー 特別幕』(10年・東映ビデオ)から『帰ってきた動物戦隊ジュウオウジャー お命頂戴(ちょうだい)! 地球王者決定戦』(17年・東映ビデオ)に至る、放映終了後のスーパー戦隊の「その後」を描いてきたオリジナルビデオ作品である歴代の『帰ってきた』シリーズと一致するのだ。
 もっとも『リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』は従来の「VS」映画が単品で公開されてきたのとは異なり、『スーパー戦隊MOVIE(ムービー)パーティ』なる新たな番組名にて、『リュウソウジャー』の後番組として2020年3月8日にスタートする新番組『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年)の前日譚(たん)となる映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20年・東映)と同時上映となったことから、その分尺を短くした可能性はたしかにある。


 ただ今回気になるのが、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年)の後見人のレギュラーキャラで、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(93年・東映 フジテレビ)の怪人・フライドチキン男や、映画『ガメラ2 レギオン襲来』(96年・角川大映)に映画『ゴジラ×(たい)メカゴジラ』(02年・東宝)などの出演歴もある著名な俳優・吹越満(ふきこし・みつる)――往年の金曜ドラマ『ランデヴー』(98年・TBS)では『快獣ブースカ』(66年・円谷プロ 東宝 日本テレビ)の主人公キャラ・ブースカの人形を大事にするがために妻に家出される怪獣オタクの夫を演じていたことから、「怪獣オタクに対する差別を助長するものだ!」として当時筆者はTBSに抗議文を出してしまったものだ(大汗)――が演じる古生物学者・龍井尚久(たつい・なおひさ)とその娘・ういの親子がいっさい登場しないことだ。
 ういは第42話『決戦のステージ』で「アメリカに行く」と称して実質的な途中退場していることから――いくら最終展開とはいえ、こうしたキャラをもてあますようではダメだろう――、映画公開のタイミングで不在なのは当然すぎるくらいなのだが、一方の龍井は『リュウソウジャー』にこれまで1話も欠けることなくパーフェクトに登場していることから、今回のみ出てこないのはやはり奇妙に思えるのだ。
 リュウソウジャーがアジトとする龍井家の応接室のセットすらも使われていないのだが――ただしガレージのセットは使用されている――、本作の時系列がテレビシリーズの時間軸内で起きた出来事とするならこれは不自然でもある。


 最初はビデオ販売のみのかなり低予算な作品として製作されており、だから高額なギャラが必要となる『リュウソウジャー』の後見人・吹越満、『ルパンレンジャー』の後見人であるコグレさんこと温水洋一(ぬくみず・よういち)、『パトレンジャー』の黒人上官・ヒルトップ管理官ことアイクぬわら氏などは使えなかったのではなかろうか? 当初からロードショー公開を前提として製作していたのなら、吹越氏クラスの著名な俳優を出してハクをつけるくらいのことは当然やったのではあるまいか?


 つまり、本作は時系列としては『リュウソウジャー』の「その後」を描いているようにも解釈可能なのだ。クレオン以外のレギュラー悪の戦闘民族・ドルイドンの幹部たちがいっさい登場しないこともあるのだが。
 クレオンは第46話『気高(けだか)き騎士竜たち』のラストでドルイドンの首領的存在・エラスに取りこまれて姿を消していることから今回の映画が第42話と第46話の間の出来事と解釈することも可能だが、終盤で改心の情を見せたこうしたコミカルキャラは、最終決戦でも倒されずに終わる場合もあるために、本作がテレビシリーズの続編として製作された可能性が捨てきれないのだ――放映前に予想するが、おそらくクレオンは最終回でエラスと切り離されて復活するだろう(笑)――。
 ちなみに本作のキャッチコピーは「騎士竜たちと永遠の別れ!? 最強の敵を前に試されるそれぞれの正義!!」だが、時系列が放映中の時間軸なら『リュウソウジャー』最大のウリである騎士竜と「永遠の別れ」になるハズもなく(笑)、これもまた本作の時系列が「その後」であろうことをにおわせるものとなっている。


 だが何といっても本作が当初『東映 V CINEXT』の一環として製作されたのかと筆者が思ってしまう最大の理由は、従来の「VS」映画のように現行作品の次にスタートを控える新番組の戦隊ヒーロー&ヒロインの競演が描かれなかったことだ。
 ところで『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』と『リュウソウジャー』の間に放映された『4週連続 スーパー戦隊最強バトル!!』(19年)が印象づよく残っている人々はきっと多いことだろう。
 これは『ルパVSパト』がマニア間では絶大な人気を博した反面、玩具の売り上げは前作『キュウレンジャー』より大幅に落ちこんで、21世紀のスーパー戦隊中でも最低を記録したことから(爆)、歴代スーパー戦隊の華麗な競演の中に新番組『リュウソウジャー』のキャラや世界観を事前に点描することで、『リュウソウジャー』を商業的になんとしてでも成功させようとする東映バンダイテレビ朝日の思惑(おもわく)を背景として製作されたのだと筆者は考える。


 だが『キュウレンジャー』と『ルパVSパト』がともに平均視聴率3.0%だったのに比べ、『リュウソウジャー』は第44話『試されたキズナ』の時点で平均が2.6%とさらに落ちてしまった。
 玩具の売り上げも筆者が知る範囲の店で、放映終了間近になっても『戦隊ヒーローシリーズ』のソフビがほぼ全種残っているのは『リュウソウジャー』が初めてだ(大汗)。
 あの国民的人気アニメ『ドラえもん』(79年~)と『クレヨンしんちゃん』(92年~)ですらも、ついに金曜19時台から土曜夕方の枠へと追いやられたほどなのだから、子供番組全体が苦境に立たされているのだろうが、先述した『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』も『4週連続 スーパー戦隊最強バトル!!』と同様に、今度こそ失敗はできないとする製作側の危機感から急遽(きゅうきょ)製作・公開されるに至ったのかと思える。


 とはいっても30分の『エピソードZERO』のみを公開するワケにもいかないことから、『東映 V CINEXT』としておそらくは春以降に公開する予定だった『リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』を急遽繰り上げ、『スーパー戦隊MOVIEパーティ』として『エピソードZERO』と同時上映する運びとなったのでは? と筆者は推測するのだが。


 もっとも『リュウソウジャー』の視聴率が低下したのは決して作品のみの責任ではなく、先述したように「VS」映画は『ジュウオウジャーVSニンニンジャー』、春に公開されてきたスーパー戦隊仮面ライダーのコラボ作品『スーパーヒーロー大戦(たいせん)』シリーズは映画『仮面ライダー×スーパー戦隊 超スーパーヒーロー大戦』(17年・東映)で打ち止めとなってしまい、2018年度以降のスーパー戦隊劇場版が夏に公開される単独映画だけとなったことが、スーパー戦隊シリーズ自体の人気や商品的価値に悪影響をおよぼした面は否(いな)めないのではあるまいか?
 おそらくは2020年度も東映としては従来の「VS」映画はやらないつもりだったのが、『リュウソウジャー』、ひいてはスーパー戦隊シリーズの危機的状況により、あらたに『スーパー戦隊MOVIEパーティ』を立ち上げざるを得なくなったというところだろう。


*「VS」映画としての達成度は?


 さて今回は『リュウソウジャー』の敵・ドルイドンのコミカルキャラ・クレオンが洞窟(どうくつ)内で牢(ろう)に囚(とら)われの身となっている前作『ルパパト』の敵・異世界犯罪集団ギャングラーの残党怪人を発見、その残党怪人のマイナス感情から『リュウソウジャー』に毎回登場する怪人・マイナソーを生みだし、連中たちと共闘することとなる。
 残党怪人はその体に5つの金庫を持つが、『ルパパト』でギャングラーが集めていたルパンコレクションではなく、リュウソウジャーの相棒である騎士竜たちを金庫内に閉じこめ、その強大な力を発揮する怪人のためにコウ=リュウソウレッドらは序盤の戦闘で危機に陥(おちい)ってしまう。


 そんな出だしでコウと夜野魁利(やの・かいり)=ルパンレッドが出会うのをはじめ、バンバ=リュウソウブラックとトワ=リュウソウグリーンの兄弟は公道でリュウソウジャーたちが常備するリュウソウケン(剣)を所持していたために、国際警察の朝加圭一郎(あさか・けいいちろう)=パトレン1号(レッド)と陽川咲也(ひかわ・さくや)=パトレン2号(グリーン)に「銃刀法違反」で逮捕され(笑)、メルト=リュウソウブルーとアスナリュウソウピンクはギャングラー怪人の金庫を開ける方法を高尾ノエル=ルパンエックス=パトレンエックスにたずねるが、マイナソーはその金庫を開けるアイテム・ダイヤルファイターを奪おうとルパンレンジャーたちをつけ狙う……
 といった具合に、『ルパパト』のメインライターだった香村純子(こうむら・じゅんこ)と『リュウソウジャー』にサブライターとして参加した荒川稔久(あらかわ・なるひさ)の共同脚本によって、無理なく融合した『ルパパト』と『リュウソウジャー』の世界の中で強者が集結していくさまは、『リュウソウジャー』はともかく(笑)、いまだに『ルパパト』に想いが強い筆者は心の中で歓声をあげずにはいられなかったものだ。


 特にお気に入りのユルキャラのフィギュアを当てるためにガチャガチャ自販機の前で悪戦苦闘していた明神(みょうじん)つかさ=パトレン3号(ピンク)に、そのフィギュアがダブったからとカナロ=リュウソウゴールドが近づくことに成功、「お礼に」とつかさがカナロを連れていったカフェは奇(く)しくも宵町透真(よいまち・とうま)=ルパンブルーが経営しており、つかさと透真が旧知の間柄と知ったカナロが「恋人?」と落胆したり(笑)、つかさと「今度結婚するんです!」と勝手に口走ったカナロに透真が真顔で「おめでとうございます」(爆)と祝福する一連の場面は、それぞれのキャラの特性を最大に描き尽くしたものだろう。
 また大事な人たち=兄・婚約者・親友をせっかく取り戻したハズのルパンレンジャーの3人が、再度彼らと離れて生活している理由をつかさが透真に問いつめるのも、『ルパパト』の「その後」としては見逃せない部分だ。
 さらにノエルが取り戻したいと願う快盗=アルセーヌ・ルパンがかつて海のリュウソウ族と出会っていた(!)とされたことで、海のリュウソウ族であるカナロの妹・オトが落としたルパンに関する書籍が契機となって早見初美花(はやみ・うみか)=ルパンイエローとオトが出会うのもさることながら、ルパンが海のリュウソウ族から受け取り、今はノエルが所持していた「はじまりのリュウソウル」によってリュウソウレッドがルパンレッドに、リュウソウブルーがルパンブルーに、リュウソウピンクがルパンイエローへとチャンジするクライマックスは、ヒーロー&ヒロインの強化形態自体に単にイベント性のみならず高いドラマ性とキャラクターの魂(たましい)を宿らせる作劇的技巧が光っていた。


 そして『ルパパト』の続編としてとらえるなら、夜の歩道橋の上で圭一郎=圭ちゃんに好物の缶コーヒーを手渡した魁利が「おにいさん」(!)と話しかけるのには、『ルパパト』第49話『快盗として、警察として』で同じく歩道橋の上で、


「警察の立場ゆえに、目の前の君たちを救えないのなら……、オレは警察をやめる!!」


と圭ちゃんが宣言したことで、魁利にとって圭ちゃんが「熱血おまわり」からもうひとりの「にいちゃん」となった名場面――ふたりに昇る朝日が照らされるのが、その関係性の変化を最大に象徴していた――を彷彿(ほうふつ)とせずにはいられなかった観客も多かったことだろう。
 この「にいちゃん」もそうだが、ラストシーンでコウが魁利を指(さ)して「オレと同じで素直だから」と語り、「んなこと初めて云われたよ」と謙遜(けんそん)する魁利の姿もまた、その成長ぶりを如実(にょじつ)に感じさせるものとなっていた。
 本作は2020年2月7日および8日に公開された映画の中で、『ぴあ』映画初日満足度ランキングで第2位(!)となったが、それはやはりキャラクタードラマとしての充実度の高さゆえのものだろう。


 ただそうした調査に本来のメインターゲットである子供たちが投票するハズもないことから(笑)、少し別の視点で本作をとらえてみると、やはり「特撮ヒーロー作品」としては見せ場が少なかったという印象が残る。
 『リュウソウジャー』のドルイドンが悪の組織としてのスケール感には最終展開直前まで欠けていたことから、今回は劇場版としてそれなりの巨大さが描かれるか? と少し期待していたのだが、出てきたのは先述したギャングラーの残党怪人とマイナソーとクレオンの3人以外はギャングラーとドルイドンの戦闘員のみであり、テレビシリーズとさほど変わりがなかった(笑)。
 残党怪人にギャングラーの女幹部だったゴーシュ・ル・メドゥの実験台としての出自が語られたり、マイナソーが頭部の冠(かんむり)が首領のドグラニオ、鼻が幹部のデストラ、両腕は魁利の因縁(いんねん)の敵だった氷結怪人ザミーゴの二丁拳銃など、ほかにもゴーシュやライモン、戦闘員のボーダマンに至るまでが体の各所にモチーフとされる、まさに『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100211/p1)や映画『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1)に登場した暴君怪獣タイラントみたいなカオス的デザインなのは、タイラントウルトラ兄弟に倒された怪獣たちの怨念(おんねん)の結晶だったのと同じく、高いドラマ性とキャラクターの魂のみならず、シリーズとしての連続性をも宿らせた完成度の高さが感じられるものだ。
 ただそれだけに、連中が暴れるシーンは中盤で都市を破壊する場面がほんの十数秒あるだけで(爆)、全世界的・地球的規模の危機がほとんど描かれなかったのはやはりもったいなく、映画ならではのスケールの大きさが感じられることはなかったのだ。


 また残党怪人の金庫から助けられた騎士竜たちが、残党怪人とマイナソーに逆襲をかける、つまり合体して巨大ロボットとなる描写すらもなかったのだ。
 これはスーパー戦隊の魅力のひとつであるハズの「巨大戦」がやや軽視されてきたり、時に全カットされてきた先述したオリジナルビデオ作品『帰ってきた』シリーズとも共通する作風であり、やはり本作が当初は『東映 V CINEXT』の一環として企画されたがために、巨大戦がなくても満足してくれる年長マニア向け、あるいはハデな都市破壊場面や巨大戦を描くことができないほどに低予算だったのかと推測される。


 動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)で全13話が配信された『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)の前半ではウルトラマンゼロが悪側によってずっと闇の空間に閉じこめられるものの、後半で後輩ウルトラマンたちに救われるのみならず、後輩たちからこれまでの恩返しとして贈られたパワーで最強形態・ウルトラマンゼロビヨンドへと進化する最大の見せ場が与えられたものだった。
 今回の騎士竜たちもずっと割を食ってきたのだから、クライマックスでよりドラマ性を高めるためにもその活躍を描くべきではなかったのか?
 騎士竜たちのパワーを失ったことでさほどの強敵ではなくなった残党怪人とマイナソーを、リュウソウジャー・ルパンレンジャー・パトレンジャーの13人がかりで痛めつけるさまは、正直集団イジメにしか見えなかった(爆)。


 『ウルトラギャラクシーファイト』の終盤で因縁の敵、悪の超人・ウルトラダークキラーが一度倒されるも復活して超巨大化したように、今回も残党怪人が超巨大怪獣となり、先述した「はじまりのリュウソウル」=アルセーヌ・ルパンと海のリュウソウ族の絆(きずな)の象徴でパワーアップした騎士竜たちが合体して新型ロボットが誕生、リベンジ戦を展開することで、それまで描かれてきた3大スーパー戦隊の物語にさらに高いドラマ性とキャラクターの魂を宿らせることができたはずだと思えるのだが。


 なお、本作のメガホンをとったのはスーパー戦隊の大ベテラン・渡辺勝也監督だが、氏は第25話『踊るクレオン』――これが3.6%だったのを最後に、以後『リュウソウジャー』は視聴率で一度も3%以上を記録していない(汗)――を最後にテレビシリーズは1本も撮っておらず、テレビ朝日側のチーフ・プロデューサー・佐々木基(ささき・もとい)氏の途中降板も含め、『リュウソウジャー』の現場では相応の確執があったのかと推測される(大汗)。


 まぁ、先述してきたように本作が本来は高額な映像ソフトを購入するような熱心なマニア層に向けた『東映 V CINEXT』として製作されたのだと仮定するなら、今回のような作風になったのもある意味必然だったのかもしれないが。
 いずれにせよ、スーパー戦隊を未来永劫(えいごう)継続させるなら、この『スーパー戦隊MOVIEパーティ』は決して休止させることなく、毎年の恒例(こうれい)行事としてその存在を世間にアピールしていくべきだろう。


2020.2.22.
(了)
(初出・『仮面特攻隊2020年春号』(20年3月8日発行予定分)所収『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』合評より抜粋)


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スーパー戦隊レジェンドヒストリー ~神秘・恐怖から親近感・コミカルへ。日本特撮の画期にして文化・歴史となった「戦隊」!

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[戦隊] ~全記事見出し一覧


『企画展 スーパー戦隊レジェンドヒストリー ~ゴレンジャーからリュウソウジャー、そして未来へ~』 ~神秘・恐怖から親近感・コミカルへ。日本特撮の画期にして文化・歴史となった「戦隊」!


(文・犬原 人)
(2020年1月4日脱稿)


 今年度2019年のスーパー戦隊シリーズ『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191102/p1)がシリーズ43作目という中途半端な時期にこの企画展を考えた、横浜情報文化センター・放送ライブラリーにはどういう腹があったのだろう……と考えつつ、入場無料の惹句(じゃっく)に魅かれて行ってしまった。


 知らない人のために解説すると、横浜情報文化センター・放送ライブラリーは神奈川県庁の向かい、みなとみらい線日本大通り駅の真上にある。テレビ放送の歴史やシステムが勉強できるばかりか、さすがに全部というわけにはいかないが、過去66年分のテレビ番組が史料として閲覧できるという施設である。
 付属の情報文化ホールでは「企画展」と称してジャンル別にテレビ番組の歴史を定期的に紹介していたりしているのだが、ついに我らが『スーパー戦隊』がその対象に選ばれたということなのだ。


 ちなみに同施設では、「公開セミナー 制作者に聞く! ~番組制作の現場から~」という不定期枠もあって、今年2020年の2月15日(土)には、スーパー戦隊シリーズの番外(……と言えるのか?)『獅風怒濤ジュウショウワン』……じゃなかった、NHKで放映された隠れ特撮オタク女子を描いたTVドラマ『トクサツガガガ』(2019・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190530/p1)が企画されている。


 来場したのが冬休み二日日の2019年12月26日(木)だったので、親子連れも当然多かったのだが、平日の午後でもあったせいか「かつての我々」ともいえる男子中学生の二人連れだったり、「我々の分身」ともいえる腐女子やサラリーマンのやはり二人連れだったり、こんなところに何故? という感じの六十代の男性だったり、今風の若者と考えれば違和感がないはずの休業中の力士だったり――この寒いのに浴衣姿だった――と、入場者がバラエティに富んでいたあたり、やはり『戦隊』は国民的番組だったのだな……と、妙な一体感に浸る。


 会場に入ると戦隊シリーズ第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975)の立像がまずお出迎え――おそらくは『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011)の第1話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)で全戦隊が勢揃いの際に新造された奴だろう――。
 それとは別に、奥の方には歴代レッドの立像が並ぶ上映室があったのだが、オリジナルの5人が揃ってのお出迎えは迫力があり、戦隊イベントのエントランスはこうでなくてはと素直に思った。


 で、壁の反対側には『ゴレンジャー』以下の脚本で知られる上原正三氏と吉川 進プロデューサーのコメントが張り出され、それぞれにこの企画展に寄せて、色紙まで下さっていた。
 特に上原氏の登場は、私淑する者としては非常に嬉しかったりする。彼の残したキレンジャーや日輪仮面の誕生秘話には納得のいくものがあった。


 ムードメーカーである三枚目キャラクターのキレンジャー・大岩大太が特に好きだと公言し、子供たちの多くが好物のカレーを大食いさせる趣向も、「神秘性」ではなく「親近感」のある身近なヒーロー像を構築するための道具立てとしての狙いであった。
 敵のゲスト怪人の方も同様である。『ゴレンジャー』も第1クールでは「恐怖性」のあるミステリアスなデザインのクールな怪人だったのだが、原作漫画家・石森章太郎による突飛なデザイン、インカ帝国由来で中南米諸国の国旗にも図版化されている「太陽に顔をあしらったデザイン」を巨大な顔面に据えた真っ赤な全身タイツ姿である、第2クールの前中盤に登場した幹部怪人・日輪仮面の突飛なデザインに、従来のヒーロー番組とは異なるものを感じて、非常に乗り気で書いたのだそうである。
 ド派手な悪役で、キャラクタードラマに新たな地平を築いた『戦隊』ならではのエピソードであったと思う。


 「神秘性」や「恐怖性」ではなく「ギャグ」や「コミカル」でもある存在としてもヒーローや敵怪人を描くことが、一時はマニア間では大いに批判されるも、それを乗り越えて今ではむしろ鉄板の王道にすらなっている。その画期もまた、まさにスーパー戦隊の第1作目『ゴレンジャー』だったのであり、それもまた日本特撮を代表する脚本家であり、マニア間でもシリアス・テーマ志向の巨頭と目されてきた上原正三の筆によるものでもあったのだ!


 そんなゴレンジャーの必殺武器・キック爆弾エンドボールの実物も拝見。ラグビーボールの実物を塗り直して木の翼以下、付属物をつけただけというものであったが、よく45年近く残っていたなと感動。


 以下、続いて1作品1枚という感じでシリーズ各作品がパネル展示されて、『戦隊』の歴史が紹介されていく。過去42作品もあるというのに、どれもオリジナルが主張できている、同じ作品を作らない、ヒットしたからといって続編もリメイクも作らないというスタッフの姿勢には深々と頭が下がる。
 と同時に、その作品解説の下に放送年の出来事や流行語、封切映画の紹介があり、このシリーズが戦後日本人の「示準化石」たりうる証左だということを如実に物語っているともいえた。我々のような「例外」は別として、見ず知らずの相手とチャットするにしても、「貴方の戦隊は?」と訊けば、その答えでその年齢や成育史が、ある程度想像できてしまうのである。


 その合間に戦隊ヒーローの持ち道具や武器といったプロップ、そして巨大ロボットの立像が展示されている。武器類は基本的に木製で、本当に1年間使い込んだのだと分かるくたびれぶりには感じ入るものがあった。
 一方、今回立像として展示されたフラッシュキング(『超新星フラッシュマン』(1986))、オーレンジャーロボ(『超力戦隊オーレンジャー』(1995・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110926/p1))、ガオキング(『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1))の変遷を見て、作品を追うごとにプロポーションがよくなっていること、顔を小さくしながら「中の人」を感じさせない工夫がなされていることがよく分かった。
 しかし、3体とも「何処から外を見てるんだろう?」ということがわからず、結局は「見えないまま演じていた」と結論付けるよりほかになかった。矢島特撮――特撮研究所・社長の矢島信男による特撮――の伝統で、画面フレームに顔が出ないときは「中の人の顔まる出し」という可能性もあっただろうが。


 そして全シリーズの最終回の台本が一斉展示――『リュウソウジャー』のはさすがになかった――。
 ただこれもまたやはり東映の著作物という意識が芽生えたらしい。『侍戦隊シンケンジャー』(2009・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090712/p1)のそれから表紙に転売、無断公開禁止の警告が載る。『獣電戦隊キョウリュウジャー』(2013)以降は「これを買い取った古物商は警察に届け出ること」という警告文が掲示されるに至っている。
 『まんだらけ』で台本を買って二次創作のモトネタにしていたアマチュア作家の筆者は、「運がよかった」だけだったのだ、いやはや隔世の感……と、ある種の世知辛さを思うのであった。
 まぁ考えてみれば今の世の中、台本を自炊してネットに流せば、ネタバレは避けられないからね。


 そこを過ぎると、歴代レッドの立像が集結する中、巨大モニターで歴代作品のオープニングがエンドレス上映。
 「ヤメヲタ」として『特捜戦隊デカレンジャー』(2004・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041112/p1)あたりで見るのをやめていたので、それ以後を見るのは初めて、家にたまったVHSビデオを整理しているうちになくしてしまった『忍者戦隊カクレンジャー』(1994・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120109/p1)以後のオープニングを見るのは久しぶりで、「あぁあった、こういうの」とノスタルジーに浸ったり、「えっ、こんなのアリ?」と新奇なキャラクターや世界観に驚いたり、「スゴイ、凄い!」と斬新な演出やカット割りに舌を巻いたりと、43本分の長さがあっという間に過ぎてしまった。


 実はこの企画展、1日12話の密度でシリーズの傑作選を別会場で日替わり上映していたのだが、それを忘れるほどに見入ってしまったのである。30代前後のお父さんが『魔法戦隊マジレンジャー』(2005・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110228/p1)を見て「懐かしい」とこぼしていたのを拾い聞きして、ああ自分も年を取ったのだな……とウツ入ったのもいい思い出だ(笑)。


 それを出ると今回招待された過去のシリーズの関係者の記念色紙の掲示
 世代的には、ピンクファイブ・桂木ひかる役の牧野美千子氏(『超電子バイオマン』(1984))、レッドターボ、炎 力(ほのお・りき)役の佐藤健太氏(『高速戦隊ターボレンジャー』(1989・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191014/p1))、ブラックコンドル・結城 凱(ゆうき・がい)役の若松俊秀氏(『鳥人戦隊ジェットマン』(1991・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110905/p1))、メガイエロー・城ケ崎千里(じょうがさき・ちさと)役の田中恵理氏(『電磁戦隊メガレンジャー』(1997・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111121/p1))、そしてシリーズ育ての親、鈴木武幸(すずき・たけゆき)プロデューサーのサイン色紙が印象に残った。


 有料にしたらもっとすごい展示になっていただろうが、入場無料でもずいぶんお腹一杯になれる展示ではあった。
 規模には劣るが、『特撮博物館・ミニチュアに見る昭和平成の技』(2012・東京都現代美術館ほか)の展示が東宝・円谷に偏重していて、東映作品を全無視していたモヤモヤが、ここでいくぶんか晴れたような気もした。
 このイベントは2020年2月16日(日)まで行われているので、近くの人は足を運んでみるといいかもしれない。



 最後に苦言をふたつ。


 海の向こうでリメイク映画『パワーレンジャー』(2017・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170715/p1)として、日本ではまだ手にしていない「ポリティカル・コレクトネス」をシリーズとして手に入れた『戦隊』だが、『パワーレンジャー』(1993~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1)海外放映での反応はどうだったのだろうか? という点にも言及してほしかったように思う。


 そしてあとひとつは、「『アキバレンジャー』(2012・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200223/p1)は、やはり『非公認戦隊』のままだったのか?」という(笑)。


(了)
(初出・『仮面特攻隊2020年冬号』(20年2月9日発行)所収『スーパー戦隊レジェンドヒストリー』展評より抜粋)


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戦隊レジェンドヒストリー2
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戦隊レジェンドヒストリー1
#特撮感想 #戦隊 #ゴレンジャー #スーパー戦隊 #スーパー戦隊レジェンドヒストリー



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落語家・立川志らく論 ~人物・騒動・発言・弱点・文春砲・修羅場の人!

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 かつての「お笑い芸人」は、教室の中心にいる出たがり・目立ちたがりの人気者・お調子者、つまりは強者がなる職業であった。
 しかし、人気深夜番組『アメトーーク!』(03年~)の「中学の時イケてない芸人トーク」(09年~)に象徴されるように、1990年代末期あたりからは教室のスミっこにいたような弱者が自分を変えるため、リハビリのために(笑)「お笑い芸人」になったような連中が勃興しだすようになる。


 拙ブログ主宰が見るところ、そんな彼らに10年先行していた第1号でもあるようにも思える落語家・立川志らくがいま話題になっているのにカコつけて……。
 『立川志らく』評をアップ!


落語家・立川志らく論 ~人物・騒動・発言・弱点・文春砲・修羅場の人!

(文・田中雪麻呂)
(2020年3月9日脱稿)


 オレの大好きな立川志らくが大変だッ(笑)。


 立川志らく(たてかわ しらく)、56歳。
 人気落語家にして、俳優、映画監督。劇団を主宰し、権威あるお笑いコンテストの審査員も務め、近年は朝のワイドショーのMCに起用される。落語家団体の大幹部でもある。


 文化人。旬の人物である。


 TVタレントとしての魅力は、端正な容姿でぐさりとやる社会風刺、毒舌の意外さ。カルチャー番組における、創造的才能。そして、世間一般との埋められない感覚のズレ(笑)などが挙げられるだろう。


 ズレているというくだりは、決して悪口(あっこう)ではない。メンタルの強さであり、プライドの堅持に必要だし、芸人としては得難い愛嬌(あいきょう)にもなっている。


 志らくは、社会人としてちょっとズレたまま、若くしてお笑いスターとしてブレイクした。
 還暦近い年齢だが、二十代のときの了見(りょうけん)で、未だに理解し、考え、喋っているように見える。うん、多分そうだ。
 志らくは、タレントとしてはSNSで何度も炎上しては、焼け太りのカタチで大きくなってきたタイプだ。彼の隙(スキ)だらけでキッチュな物言いに反応する層が多かったのだろう。


 志らく自身が名言を残している。


「私(志らく)に噛みつくのはバカな奴らで、賢い人たちはそもそも相手にしないんです。」と。


 志らくの著書を何冊も購入して熟読したが、何というか、ヤバいヤツである(笑)。
 カゲキなことを言うのが、即ちアウトローであり、芸人だと思い込んでいる。
 目に入るものを、片端から否定、攻撃する。ポリシーがないから、いきおい、自分と自分の半径百メートルを除いて、全て艦砲射撃で焼け野原にする。
 それについてのオチはない。レトリックもない。逆に「ワタシは落語家ですから。」と威張って見せている。


 筆者は志らくのことが、当初嫌いだった。
 何という我が儘(まま)勝手だ。芸は一流かもしれないけど、人間としてそれじゃダメだよッ(笑)。


 でも違う。そうじゃない。


 志らくは「好きなこと以外はどうでもいい」のだ。
 つまり、同人(どうじん)なのだ。筆者と同類だったのだ。筆者が感じた嫌悪感は、「近親憎悪」だったのだ(笑)。


 志らくの監督した映画、演出した舞台の特性を思い出して頂きたい。
 ほぼ全てが彼の本業の落語と、愛好する映画とを掛け合わせたものだ。
 それも、それぞれのキャラクターを彼の価値判断で分析、融合、関係付けしたパロディ作品である――だから、ダサくて恥ずかしいのだが――。
 既にある作品に立脚して、擬似的に成立したものだ。同人的な趣向と大きく重なる。


 出役(でやく)としての華(はな)、芸術を分析する理解力、広範な作品を統(す)べる記憶力、加えて行動力と鈍感力、そういう才能を全て持ち得たのが志らく志らくたる所以(ゆえん)であって、彼の現在の栄華に繋がっている。



 で、まあ、文春砲である(笑)。


 「週刊文春 2020年3/12号(文藝春秋)」(2020年3月5日(木)発売・ASIN:B085FR6N75)に、彼ではなく、彼の妻君の不倫疑惑が報じられた。
 志らくの自宅――元々は彼の師匠である故・立川談志(たてかわ だんし)の私邸――に横付けされた自動車の中で、イケメンの志らくの元弟子と過分に戯れていたのが、写真付きで報じられたのだ。


 無名のアイドル上がりのこの妻君は38歳。志らくとの間に二児もある。志らくの劇団とは別に、自身でも劇団を主宰している。
 25歳のこの元弟子は、志らくの落語家としての弟子であったが、それを休業して妻君の劇団の役者に移ったという変わりダネだった。


 情報としてまず奇矯(ききょう)だ。


 雑誌発売日の当日の朝、志らくはMCを務める生放送のワイドショー『グッとラック!(TBS系)』で、冒頭にコメントを発表。


 異例だった。
 昨2019年の9/30に鳴り物入りで始まった同番組だったが――惹句は「落語界のハリー・ポッターが降臨!」――、お昼のワイドショー『ひるおび!(TBS系)』(2016年~)のコメンテーターでは鳴らしたものの、志らくのキャラクターが朝から受け入れられず、視聴率低迷が続いていた。
 番組はスタジオの志らくからではなく、VTRから始めたりと、次第に「志らくを避けるように」なっていた(笑)。


 志らくのコメントは想像通りだった。


 「自分は妻を信じているし、離婚は絶対にない。」というような、自分の家族の都合だけを一方的にまくし立てた。


 弟子は、まず他人(ひと)様の大切な子どもであり、預かりものであるというような気遣いは感じられなかった。


 その日の番組の締めでは、古典落語『紙入れ』の山場を志らくは熱演。やっぱり巧いなぁ。それが仕事だとはいえ、強く惹き付けられる。


 だが、その動機付けが良くない。同誌の口絵で、「志らくの『紙入れ』」と揶揄(やゆ)されたからだ。
 『紙入れ』は女房を間男(まおとこ)に寝とられるマヌケな亭主を嗤(わら)う噺だ。


 熱演して、「この落語はそういう解釈じゃないッ! シロウトが何を言うか!」と胸を張ったところで、番組は終わった(笑)。


 人物造形として鑑(かんが)みても一貫性がある。
 こういう人格の人間ならばこう云うだろう、こう動くだろうとのヒトの期待に応えてやまない(笑)。



 立川志らくは、落語界のエリートである。
 日大芸術学部落語研究会で、人気放送作家高田文夫(たかだ ふみお)に見出だされ、憧れの天才落語家・立川談志に弟子入りを許されるという、この上ないスタートだ。


 立川談志は落語の名人だが、荒っぽくて気難しいというイメージがあった。しかし残されたものを読むと、思索家にして繊細、質よりも量、研鑽(けんさん)よりアイディアの斬新さを買う才人であったようだ。
 その基準が、志らくのキャラと合致した。


 元々お坊っちゃんで、物怖じせぬ志らくは、その目鼻立ちの整ったアイドル的容姿も手伝って、談志のお気に入りの弟子になった。
 立場に慢心することなく、落語愛も薄れず、さらに談志の趣味嗜好のカルチャーの幾つかを同好するに至って、志らくは談志自慢の愛(まな)弟子となる。


 若手お笑いで深夜番組『アンモナイトテレビ東京)』(1993年)に出れば、折からの落語ブームで大人気。当時は浅草キッド爆笑問題と肩を並べる、新進のムーブメントの旗手の一人だった。数多(あまた)の女性からアイドル的な人気も博した。


 だから志らくにコンプレックスがあるとすれば、彼の魅力のひとつでもある眉目秀麗(びもくしゅうれい)な容姿が起因している。
 自分は、見た目で大衆の歓心を引いて、中央に出てきた訳ではない、と折に触れて力説する。


 従って、セクシャルな事象には否定的である。
 落語の廓噺(くるわばなし)は達者な彼ではあるが、タレントとしてピンク女優と絡むなどの柔らかい仕事は御法度(ごはっと)である。
 有名なアイドル・グループへの賑やかし役で、高値で起用されたのに気が乗らなかったから途中で帰ってやったと、伝説として自分で語っている。


 師匠の立川談志は意気に感じればポルノ映画にも出演した洒落者だったが、その談志のツテで官能小説家・団鬼六(だん おにろく)からSM作品のオファーが来たときは、志らくは飛んで逃げて拒否していた(笑)。
 性的な興味で自分を見に来るとおぼしい同性の客にも「薄気味悪い!」とバッサリである。


 どんな客がいたって、いいだろ別に(笑)。



 唯一、志らくは若手タレントのとき、深夜番組でAV女優と絡むコーナーを持っていたことがあり、余程それが黒歴史(くろれきし)なのか、セクシー業界を敵視、蔑視した発言は多い。


 志らくは、そういう生まれ育ちだ。
 だから今回の愛妻のスキャンダルというか下ネタの報道は、さぞやメンタルにこたえたことだろう。


 しかし、地上波TVは結果的に志らく擁護(ようご)に動いた。
 週末の所謂(いわゆる)「閻魔帳(えんまちょう)」番組でほぼこの件が取り上げられることはなかったのである。ラッキーなことに「スキャンダルは漏らさず発言する」が信条の松本人志(まつもと ひとし)の日曜午前の芸能番組『ワイドナショー(フジテレビ系)』(2013年~)も、マラソン中継で休止になっていた(笑)。


 志らくは各局に看板番組があり、新型コロナウィルスという国家的災厄が続いており、「志らく自身のスキャンダルではない」ということに加えて、あまりに彼の妻君のはっちゃけは「ハードコア」過ぎて、茶の間で叩き辛かった(笑)。
 こんな風に、世情に微妙に赦(ゆる)されるというのも、志らくらしい間の抜け方というか、はたまた彼の人徳の成せるわざか。



 他所で、もうひとつの奇跡(きせき)が起こった。


 件(くだん)の『文春』が発売された同日、人気週刊漫画雑誌『モーニング 2020年3/19号(講談社)』(ASIN:B085C763L8)に話題作が掲載されていた。


 『修羅場(ひらば)の人』。


 ちなみに読みは「ひらば」で正しい。講談(こうだん)という芸能の用語で、「修羅場(ひらば)読み」とは独特の蕩々(とうとう)と流れるような読み方のことだそうだ。


 女盛りの女性講釈師(こうしゃくし=落語に対する咄家(はなしか))がヒロイン。「落語」に比べてマイナーな「講談」の世界が舞台。38歳のヒロインは夫のある身ながら、23歳の弟弟子(おとうとでし)を憎からず想い、芸がメロメロになる。


 え? これって志らくのとこのスキャンダルじゃね?(笑)。


 講釈師のヒロインにはトラウマがある。
 女の自分を芸でなく、性的興味や可愛い綺麗で見てくる男の客に傷ついている。


 え? これって志らく自身のことじゃん(笑)。


 そう思って監修者を見たら、何とこの2020年2月に襲名したばかりの(6代目)神田伯山(かんだ はくざん)――神田松之丞改め――の名前が! カラーの口絵に頁(ページ)丸々彼の近影も掲載されている! 凄いなぁ、やってるなぁ伯山!(笑)


 神田伯山は講談界の新星にして、TVでも大人気のトリック・スターである。
 毒舌家としても鳴らしていて、多くの先輩タレントに噛み付く芸風も持つ。浅学なのに社会風刺をしてスベリ倒す立川志らくをよくイジっている。


 って、やっぱ志らくの家のことじゃんか!(笑)


 『修羅場の人』は一旦休載するが、今夏から腰を据えて『月刊モーニング・ツー講談社)』で連載する予定だという。


 まだまだ志らくの家の物語は続くようだ(笑)。



 みんな、どうしてこんなに立川志らくのことが好きなのだろう。
 やはりスターなのだ。彼が何か呟(つぶや)いても、嗤(わら)っても、咳をしても、皆その度に志らくのことが気になってしまう。


 こんなにスターなのに、今朝も心ここに有らずで、ズレた焦点に目を泳がせ、居心地が悪そうにスポットライトを当てられている志らくは何を思うのか。


 立川志らくは何処へ行く……。


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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『ウルトラゼロファイト』 ~おかひでき・アベユーイチ監督がまたまた放った大傑作!


バカかっこいい作劇&映像の『ウルトラゼロファイト』!

(文・久保達也)
(2013年4月10日脱稿)


 ウルトラシリーズの最新ヒーロー・ウルトラマンゼロは、2009年度の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)で、かのウルトラセブン(67年)の息子にしてウルトラマンレオ(74年)の弟子である存在として、鮮烈なデビューを飾った。


 2010年度には幼児誌のカラーグラビア記事と連動し、年末には映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)が公開されて、その前日談として映画に先行してビデオ販売作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』(10年・バンダイビジュアルhttps://katoku99.hatenablog.com/entry/20200125/p1)の前後編も発売される。


 つづく2011年度も同様の展開がなされて、公開は年末ならぬ2012年3月にズレこむも、映画『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1)が公開。やはり現役テレビシリーズがないことによる知名度不足を補って『サーガ』の集客をうながすためか、テレビ東京系で過去のウルトラシリーズのエピソードや総集編を流す週1のテレビシリーズ『ウルトラマン列伝』(11年)の放映も開始。年末には『サーガ』の前日談としての位置付けでビデオ販売作品『ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』(11年・バンダイビジュアル)の前後編も発売されている。


 しかし、思ったような商業的成果が出なかったためか、2012年度は路線を変更した。『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』も『キラー ザ ビートスター』もわれわれマニアが見ればおおいなる工夫が見られても、あきらかに低予算な作品であることが透けて見えたが(笑)――そのこと自体は作品のクオリティとはまた別次元の話である――、われらがウルトラマンゼロを主人公とした新作はついにビデオ販売作品や新作映画ではなく、それらよりははるかに桁違いに多くの子供たちの眼にふれるであろう地上波の『ウルトラマン列伝』放映枠の一角を使って、1話3分程度の全8話や全15話といったミニシリーズ『ウルトラゼロファイト』での展開となったのだ!


 この『ウルトラゼロファイト』では、同作のタイトルの元ともなった往年の平日5分枠の帯番組『ウルトラファイト』(70年)を模して、ついに人間の役者の登場は廃され、ヒーローや怪獣・宇宙人たちの着ぐるみだけが登場して、しかも完全新造の着ぐるみはもはや造形されずに既存の着ぐるみだけを流用、ヒーローの方も着ぐるみの色の塗り替えや玩具の型の微改修で安く済ませることができるタイプチェンジによる新キャラクターの登場という方策を採った。
 もちろん費用がかかるロケには外出せず、背景美術も全編を高精細なCG背景の合成にもせず、旧来からのアナログなセットまるだしの特撮スタジオ撮影も適宜用いることで、いかにも厳しい台所事情も忍ばれてくるのだ……


 そんな逆境下でつくられた2012年度の「ウルトラマンゼロ」の商業展開である短編シリーズ『ウルトラゼロファイト』なのだが、驚くなかれ! ここ数年でも桁違いで最も低予算な作品となったが(汗)、それとはウラハラに実に大胆な特撮映像・超絶アクション演出・痛快娯楽活劇としての作劇センスは秀逸なばかりであり、誤解を恐れずに正直に云えば「ウルトラシリーズ」最高傑作にして次代の典範・スタンダードとなりうる作品が遂にここで誕生したのでは!? と思えるほどの出来なのだ!


 ともに大傑作である『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』や『ウルトラマンサーガ』も手掛けたおかひでき監督による、2012年8月から9月にかけて『ウルトラマン列伝』の枠内にて全8回の話数で放映された『ウルトラゼロファイト』第1部『新たなる力』。
 やはり大傑作であった『ウルトラマンメビウス』(06年)第24話『復活のヤプール』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061112/p1)や『ゼロ THE MOVIE』を手掛けたアベユーイチ監督による、同2012年12月から13年3月にかけて、同枠内にて全15回の話数で放映された『ウルトラゼロファイト』第2部『輝きのゼロ』。
 この2作品に共通する特徴は、1970年代後半~2000年前後に特撮マニアの過半が理想としていた「ハードでシリアスでリアルシミュレーションな作風」が「日本特撮の再興」につながる(笑)という、かつては理想とされてきた方向性とは真逆な、良い意味での半分笑ってしまうような「バカっぽさ」と、しかしてそれでも超絶に「カッコいい」という感覚の同時両立なのだ。
 この玄妙なセンスを文中でいちいち表現するのは煩雑にすぎるので、今回は造語として「バカかっこいい」(笑)なる表現とさせていただき、本作の尽きない魅力についておおいに語らせていただくこととする!


『ウルトラゼロファイト 第1部 新たなる力』(12年)


 『ウルトラゼロファイト』第2部『輝きのゼロ』(12年)第1話も、第1部『新たなる力』の総集編であった。


 映画『ウルトラマンサーガ』でウルトラマンダイナ・ウルトラマンコスモスと共演、彼らと合体してウルトラマンサーガなる超存在にも強化変身したウルトラマンゼロは、彼らと分離したあともダイナとコスモスから「新たなる力」を授かったことを心のうちに感じていた。
 そんなゼロが、『サーガ』にも黒幕として登場してそのラストでは宿敵・宇宙恐竜ハイパーゼットンイマーゴとともに倒された触覚宇宙人バット星人の別個体こと個人名・グラシエが操る怪獣軍団との対決を、映画『ウルトラ銀河伝説』にも登場した宇宙の彼方の怪獣墓場で繰り広げるさまを描くという、まさに『サーガ』のストレートな後日談としてつくられたこと自体が喜ばしいし、この第1部もまた実に「バカかっこいい」魅力にあふれていた。


 怪獣墓場という荒野が舞台だからか、まさに「荒野の用心棒」といわんばかりの、西部劇風のボロボロな布製のマントを身につけたウルトラマンゼロ。これは1970年代に児童誌『コロコロコミック』で連載された、かたおか徹治先生が手掛けた宇宙の星々を舞台にウルトラ一族が活躍する漫画『ウルトラ兄弟物語』(78年)からの引用であろう。


 そこに宇宙怪獣ベムラー・地底怪獣テレスドン・岩石怪獣サドラ・古代怪獣グドンが出現!
 前2者は初代『ウルトラマン』(66年)出自、後2者は『帰ってきたウルトラマン』(71年)出自の人気怪獣で、近年のウルトラシリーズ作品で再造形されて再登場してきたものの流用だが、いきなり超豪華!!


 ベムラーが口から放った青い火球を左手で受け止めることでゼロの強さを示しつつ、その手でマントを脱ぎ捨てるゼロ! これこそ「バカかっこいい」!(笑)


 基本形態が赤と青のボディーであるウルトラマンゼロだが、ウルトラマンダイナの赤いパワー形態「ストロングタイプ」とウルトラマンコスモスの赤い戦闘形態「コロナモード」の力を引き継いだ、全身が赤いボディーのその名もそのまんまな「ストロングコロナゼロ」にタイプチェンジ!
 グドンに飛び回し蹴(け)り! サドラに飛びひざ蹴り! これだけで爆発四散する怪獣たち! と序盤から圧倒的な強さが描かれる!


 そして、ウルトラマンダイナの青い高速戦闘形態「ミラクルタイプ」とウルトラマンコスモスの青い慈愛の形態「ルナモード」の力を引き継いだ、全身が青いボディーの「ルナミラクルゼロ」にタイプチェンジ!
 頭頂部のふたつのトサカ部分を外して放ったブーメラン武器であるミラクルゼロスラッガーは、投げられるや一旦ふたつが宙で向き合って高速回転するや花びらのように多数に見えてきて、それが錯覚ではなくホントウに多数に分裂したゼロスラッガーとしてベムラーテレスドンの周囲を渦巻くという芸の細かさ!


 赤い「ストロングコロナゼロ」の力強さと、青い「ルナミラクルゼロ」の幻惑的な能力、それぞれの特性の違いが端的に「バカかっこよく」描かれている!


 さらにどくろ怪獣レッドキング、宇宙大怪獣ベムスター、奇獣ガンQ、フィンディッシュタイプビースト・ガルベロスが一斉に出現!
 怪獣の紹介順でいうと、第1期ウルトラシリーズの初代『ウルトラマン』、第2期シリーズの『帰ってきたウルトラマン』、平成ウルトラ3部作の『ウルトラマンガイア』(98年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19981206/p1)、21世紀のシリーズである『ウルトラマンネクサス』(04年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060308/p1)と、怪獣のセレクトも一時の第1期ウルトラ怪獣至上主義ではなく実に公平であり、いずれも強敵で知られた人気怪獣たちの復活である!
 そして、バット星人・グラシエによって「地獄の四獣士(よんじゅうし)」と紹介される! って、これまたハイブロウなSF性は皆無でも、暑苦しい少年漫画チックなノリのネーミングであり、実に「バカかっこいい」!


 なんとゼロ、バット星人によって、自身が初登場した映画『ウルトラ銀河伝説』において、師匠(ししょう)のウルトラマンレオから特訓を受けていた際の訓練用拘束アーマーを身につけた「テクターギアゼロ」の姿にされてしまう!
 マニア的に引いて観てしまえば、既存の着ぐるみを次々と流用してタイプチェンジをつづけることで、画面を単調にせず変化を付けるための意図が見て取れる(笑)。しかし、意味もなくその形態が変化したのではなく、ウルトラ一族に倒されてきた怪獣たちの怨霊(おんりょう)が彼に取り憑いて「テクターギア」のかたちを取ったのだ! と科学的・SF的な合理性ではないけれどオカルト的な合理性で――つまりはまったくのデタラメではなく一応のリクツや因果関係はあるのだ!――、この事象がバット星人によって説明されるあたりはていねいだし、敵の策略のスゴさも感じられる趣向なのでカンゲイである。
 しかも、それを受けて立ったゼロに「怪獣たちの恨みも、このオレがすべて引き受けてやる!!」と豪語させて、ゼロの見上げた心意気も描くことで彼のキャラを立て、ドラマ的にも盛り上げるあたりは好印象!


 加えて、怪獣軍団の一体・レッドキングまでもがタイプチェンジ! 長くて太っとい腕が特徴であるEX(イーエックス)レッドキングと対決するハメになる! ――ちなみに、EXレッドキングの初出はゲーム版『大怪獣バトル』、テレビシリーズでの初出は『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100331/p1)――


 テクターギアゼロの目線、および怪獣墓場でやはり甦った人間大サイズの可愛い怪獣・友好珍獣ピグモンの目線であおりでとらえることにより、EXレッドキングがそれこそバカみたいに長くて太っとい腕でゼロに殴りかかってくる猛威を絶妙に表現できている!


 また、EXレッドキングにやられて倒れこんだテクターギアゼロの顔面の上に舞い降りる、今回の黒幕である人間大サイズのバット星人・グラシエの軽薄な丁寧語でしゃべるふるまいやトークで、その愉快犯的なキャラクターも端的に描くことができている。
 バット星人に「目障りです!」と名指しされてEXレッドキングがふりおろす豪腕でつぶされそうになって、高い岸壁の上で思わず身を伏せた人間大サイズのピグモンを画面手前に配置し、それをとっさに背中で防いだ巨大超人・テクターギアゼロの顔面を中央に、その背後にはEXレッドキングをおさめた特撮合成カットも臨場感にあふれていてよい!


 ストロングコロナゼロに戻ったゼロは「ウルトラハリケーーン!!」と叫んで、マニアならばご存じで驚愕と同時に嬉しくもなってしまう、『帰ってきたウルトラマン』(71年)最終回(第51話)『ウルトラ5つの誓い』で帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックが宇宙恐竜ゼットン二代目に最後に放ったのと同一の技(!)を披露! EXレッドキングを豪快に宙へと放り投げると、その回転の勢いで軌跡に竜巻まで巻き起こしながらEXレッドキングは上空へと飛んでいく!
 そして、ウルトラマンダイナ・ストロングタイプの必殺技・ガルネイトボンバーを継承した、ストロングコロナゼロの右腕から放つオレンジ色の高熱のエネルギー弾流・ガルネイトバスターで、宙に放り投げられたEXレッドキングにトドメを刺すゼロ!


 その瞬間は地面から見上げた斜めに傾いた構図で、右腕を高々と掲げたゼロと、はるか上空で爆発するEXレッドキングの両者が捉えられることにより、勝利の凱歌(がいか)が絶妙にうたわれる! これまた「バカかっこいい」!


 ラウンド2はガルベロスがつくりだした幻影の偽ストロングコロナゼロ(!)との対決! 本作で初登場したばかりのストロングコロナゼロが早くも偽者として登場してしまう! よほど製作予算がないのだな(笑)。
 なんと本物の赤と青の基本形態のゼロと偽物の赤いストロングコロナゼロの両者、額をぶつけてガン(眼)を飛ばしあったそばから、両者が額(ひたい)のビームランプから黄緑色のシャープな光線技・エメリウムスラッシュをほぼゼロ距離の至近距離でぶつけ合って、横走りで画面手前に駆けてくる!


 まさにタイマンの張り合い! って、いくらなんでもガラ悪すぎやろ! いや、これこそまさに「バカかっこいい」のだ!


 そしてラウンド3。敵の戦闘方法を逆手に取り、ベムスターの五角形の腹に突入してガンQの超巨大な単眼から飛び出して、両者を撃滅するルナミラクルゼロの奇抜なバトル描写は、『ウルトラセブン』(67年)第38話『勇気ある戦い』でゼロの父・ウルトラセブンがミクロ化して、防衛組織・ウルトラ警備隊のフルハシ隊員が手にしていた銃に潜入、銃撃とともに巨大化しながらロボット怪獣クレージーゴンに体当たりしたステップショット戦法を彷彿(ほうふつ)とさせるものがある!
 この必殺技はウルトラシリーズのファンの大勢がきっと幼少のころからとても印象深かったであろう特撮シーンなのだが、あの「マジメでシリアスでSFである」「大人の鑑賞にも堪えうる」(笑)と第1期ウルトラ至上主義者たちに長年絶賛されてきた『セブン』の中でさえも、実はこのような稚気満々(ちきまんまん)でアイデアあふれるカッコいい戦闘が描かれていたんですよ!
 やっぱりドラマやテーマよりも、こうしたビジュアルや戦闘シーン、ヒーローの強さや超越性に対する驚きこそが、「特撮」ジャンルの最大の魅力なんですよ! これこそまさに「バカかっこいい」!


 最終ラウンドは、倒された「地獄の四獣士」こと怪獣たちの赤い人魂を吸収して巨大化したバット星人とゼロとの決闘!
 バット星人は長剣を用い、ゼロもふたつのゼロスラッガーを合体させて半月刀状にしたゼロツインソードで剣戟(けんげき)バトルを展開する!


 「自分を倒せば怪獣墓場から復活させたピグモンも死ぬぞ!」とバット星人はゼロを脅す!
 動揺したゼロはゼロツインソードをはじき飛ばされる! 大地に突き刺さったゼロツインソードを画面中央手前に配し、ロングで両者の対峙をとらえる描写が最高!
 最終決戦だからとばかりに、背景が星々の輝く黄緑の明るい宇宙空間であるCG背景から、セットのホリゾントをライトで照らしただけの夕焼け空に染める演出もマル!


 「自分の命は惜しくない」という健気な想いを抱いていることをピグモンの表情から悟(さと)って、その心意気に打たれたゼロは、なんと背中合わせでストロングコロナゼロとルナミラクルゼロに分身!
 なんでやねん!? そんな超ご都合主義(笑)により、ストロングコロナゼロの光線がバット星人にトドメを刺し、ルナミラクルゼロのバリアーがピグモンを救う!
 超ご都合ではあるけれど、そんな超能力を発揮するのが一般ドラマのふつうの人間キャラであったら興醒めだが(笑)、神秘の超人ヒーローだからこそ好意的に解釈ができて一応許せてもくるし、むしろ爽快感やヒーローに対するあこがれにも昇華していくのである。つまり「バカかっこいい」からこれでいいのだ!(笑)


ゼロ「第2部、楽しみに待っててくれよな!」


 ゼロ、右手人差し指と中指でVサインすることで「2」を表現し、右腕をグルグル回して視聴者の方を指(さ)す!
 これが象徴するように、『ウルトラゼロファイト 第2部 輝きのゼロ』(12年)もまた、監督はアベユーイチに交代するも、やはり「バカかっこいい」展開&特撮ビジュアルが連発する大傑作だったのだ!


『ウルトラゼロファイト 第2部 輝きのゼロ』(12年)


 バット星人に勝利したウルトラマンゼロが映(うつ)る床面の巨大モニターを踏みつける、悪質宇宙人メフィラス星人・魔導のスライ……、って導入部からしてもう「バカかっこいい」!
 メフィラスを中央に、宇宙人軍団が円陣を組んでいるさまは、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070128/p1)の強豪宇宙人軍団を彷彿とさせる!


 敗北したバット星人について、グローザ星系人・氷結のグロッケンが、


「触覚の役目は果たしたってところだな」


と吐(は)くセリフも、アレだけの強敵が触覚=先兵にすぎなかった! という、少年漫画にアリガチな既視感バリバリなセリフなのだが(笑)、それでも彼ら新敵たちが、その戦闘シーンを描かずとも先兵をも上回る強敵たちであることを示唆するワクワクさせられる描写なのであり、実にセンスがいい!


 闇の支配者に仕(つか)える、赤い目をした5人の凶悪宇宙人軍団! その名は、


「われら、ダークネスファイブ!!」


って、スーパー戦隊かおまえら!(笑)


 ダークネスファイブが揃い踏みするや、青い稲妻がほと走り、その背後にはビデオ作品『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス』(08年・バンダイビジュアルhttps://katoku99.hatenablog.com/entry/20080914/p1)前後編やテレビシリーズ『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEVER ENDING ODISSAY』(08年)終盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100312/p1)に登場した、巨大な暗黒の鎧(よろい)・アーマードダークネスの幻影が浮かびあがり、その周囲が炎に包まれる!


 超「バカかっこいい」!(笑)


 古代遺跡風の建造物が並ぶ惑星ファネゴンに、テレビシシリーズ『ウルトラマンティガ』(96年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19961201/p1)第26話や映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1)に登場した剛力怪獣シルバゴンが出現!
 コイン怪獣カネゴンみたいな提灯(ちょうちん)のように飛び出た目玉にガマ口のような頭部のファネゴン人たちがシルバゴンの手前を逃げまどうが、こうしたかたちで宇宙人の「民間人」が登場するのって、まさに1970~80年代に内山まもる大先生やかたおか徹治先生や居村眞二先生が小学館学年誌や児童誌『コロコロコミック』に幼児誌『てれびくん』などで描いてきた、大宇宙の星々を舞台としたウルトラシリーズのオリジナル漫画作品を彷彿とさせ、実に嬉しいものがある!


 映画『ゼロ THE MOVIE』以降、定番で流れている「ウルトラマンゼロのテーマ」曲とともに、ウルトラマンゼロが登場!
 ウルトラハリケーンでシルバゴンを宙に吹っ飛ばすや、そのシルバゴンの周囲をルナミラクルゼロが高速回転、右手からウルトラマンコスモス・ルナモードの技・フルムーンレクト由来の青い光・フルムーンウェーブを放つことで、その怪獣本来の落ち着いた気持ちを取り戻させて、退治せずに次元の裂け目から元の世界へと戻してあげる優しいゼロ。
 画面左手前にファネゴン人たち、右にゼロ、中央左寄りに裂け目から元の世界へノソノソと帰っていくシルバゴンと、やはり臨場感あふれるカットがよい。


 そこに現れたのはウルトラ兄弟たちの母でもある「ウルトラの母」! 崖(がけ)の上に立つウルトラの母、なんと後光(ごこう)が輝いている! まさに荘厳(そうごん)な趣(おもむき)が感じられるのだが、これまた「バカかっこいい」!


 ウルトラの母からゼロの仲間たち、ミラーナイト・グレンファイヤー・ジャンボット・ジャンナインらで結成した新宇宙警備隊ことウルティメイトフォースゼロに危機が迫っていると聞かされたゼロは、母とともに「ひみつ基地」マイティベースへと急行する!


 このマイティベース、『ウルトラ銀河伝説』以降に描かれてきた実在感あふれる高精細なCGによる光の国の建造物同様、青緑色のクリスタル状であり、ほとんどM78星雲・ウルトラの星にある宇宙警備隊本部の建造物と同じ形態――単にCGデータをそのまま流用?(笑)――であるのが統一感があってマル。
 つーか、「ひみつ基地」なるあまりにも懐かしいフレーズをわざわざ、一周まわった子供向けとして、ひらがな混じりのテロップで流すセンスが「バカかっこいい」!(笑)


 マイティベースに着くや、『ウルトラマンA(エース)』(72年)第26話『全滅! ウルトラ5兄弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061030/p1)~第27話『奇跡! ウルトラの父』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061105/p1)の前後編や映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』に登場した地獄星人ヒッポリト星人が、その特殊液体でウルトラ兄弟をブロンズ像として固めてしまったように、ゼロはミラーナイトとグレンファイヤーがブロンズ像として固められていることに仰天(ぎょうてん)する。


ゼロ「おまえたち、そのポーズは!?」


 ブロンズ像として固められてしまった方ではなく、珍妙なポーズの方を議題とすることで、ダブルミーニング大きなお友だち向けのギャグとしての意味合いも持ってきて、「笑い」までをも取りに行ってしまうのがまた、ハードでシリアス一辺倒ではあった20世紀の特撮マニア向けではなく、ネジくれたギャグもまた高踏(こうとう)センスとして許容するように進化した(堕落した?)21世紀の今を生きるスレた特撮マニア向けのギャグ演出でもある(笑)。
 しかし、ゼロが首を傾(かし)げたほど、ミラーナイトとグレンファイヤーはどう見ても、踊っている最中にブロンズ像にされたとしか思えないほど、超ヘンなポーズであった(爆)。


 ウルトラの母、『超ウルトラ8兄弟』に登場した方の地獄星人スーパーヒッポリト星人の別個体としての正体を現して固有名詞も名乗るが、


スーパーヒッポリト星人「地獄のジャタール!」


と名乗るカットに入る、画面の周囲から中央に向かう無数の集中線の画面効果は、ほとんど少年マンガのコマ風だ(笑)。これぞまさに「バカかっこいい」!


 ゼロ、スーパーヒッポリトに右手をブロンズ化されてしまうが、すかさず硬化した右手でヒッポリト星人を殴りつける! 「カ~~ン!!」というコント劇みたいな効果音とともに吹っ飛んでいくヒッポリト(笑)。


 『ゼロ THE MOVIE』に流れた名曲「すすめ! ウルトラマンゼロ」のインストとともに、ゼロの大逆襲が始まる。


ゼロ「ブサイクなツラして、ウルトラの母に化けるたぁ許せねぇ!」


って、いくら相手が悪の宇宙人でも、「ブサイクなツラ」は云うたらいかんやろ(笑)。


 ゼロ、ヒッポリトを連発で殴りつづけたまま、マイティベースを高速で飛び出してくるが、


「ア~ラアラアラアラアラアラアラ~ぁ~!!」


と、例によって、1980年代に集英社週刊少年ジャンプ』に連載されていた名作マンガ『北斗の拳』(83年・84年にテレビアニメ化)の主人公・ケンシロウみたいな、いわゆるカンフー映画の立役者、ブルース・リーにはじまる「怪鳥音」と称される奇声をあげつづける! やっぱ「バカかっこいい」!(笑)


ゼロ「これでトドメだ!」


 殴られた勢いで宙空に浮かんでいた小惑星にメリこんでしまうヒッポリト!
 ゼロ、その右腕から熱弾・ガルネイトバスターを発してヒッポリトを小惑星ごと炎上させる。ゼロが右腕を振りおろすと同時に爆発!
 しつこいようですが、「バカかっこいい」!(笑)


 つづいて登場したのは、『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)第33話『ウルトラの国 大爆発5秒前!』~第34話『ウルトラ6兄弟最後の日!』前後編や映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』に登場した極悪宇宙人テンペラー星人
 そして、『ウルトラマンタロウ』第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』や『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEVER ENDING ODISSEY』中盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100211/p1)に映画『ウルトラマンサーガ』で惜しくもカットされた部分(後日編注:初出公開版)にも登場していた暴君怪獣タイラント
 「極悪のヴィラニアス」と固有名詞を名乗ったテンペラー星人。そしてタイラント。それぞれが左腕と右腕を高々と掲げてガッチリとクロスさせて「極暴タッグ!」と名乗りをあげる! この瞬間のシーンでも、やはり無数の集中線の画面効果が合成されて、マンガのコマ風(笑)。


ゼロ「ハハハ、ダッセェ~名前つけやがって、笑っちまうぜ!」


 ゼロはバカにしているが、やっぱりこれも「バカかっこいい」!(笑)
 そもそも『ウルトラマンタロウ』では両者がともにタロウのみならず並みいるウルトラ6兄弟をも窮地に追いやっており、後者に至っては竜巻怪獣シーゴラス・異次元宇宙人イカルス星人・宇宙大怪獣ベムスター・殺し屋超獣バラバ・液汁超獣ハンザギラン・どくろ怪獣レッドキング・大蟹超獣キングクラブの怨念が集合した合体怪獣でもある、通常回よりも格上の宇宙人と怪獣であるテンペラー星人タイラントがタッグを組むこと自体が「バカかっこいい」! いや、「めちゃくちゃカッコいい!」ことではないか!?


 もっとも今回のテンペラー星人の着ぐるみは、『タロウ』版の再現ではなく、『メビウスウルトラ兄弟』版の流用による別個体設定だが、「極悪」宇宙人というより「極道」宇宙人(笑)との別名をつけたくなるほど、『メビウスウルトラ兄弟』版のテンペラーはヤクザ系宇宙人としての風格にあふれており、個人的には大のお気に入りなのである。


 ただ『タロウ』版の、


ウルトラ兄弟!! ……ド~コ~だ~よぉ~~」


のかなりおマヌケなテンペラーを否定しているワケではないので誤解のなきように。あれもまた、「バカかっこいい」のである(笑)。


 いっそのこと、往年の昭和ウルトラ怪獣たちのように、


・『帰ってきたウルトラマン』に登場した用心棒怪獣ブラックキングは「兄」
・初代『ウルトラマン』に登場したどくろ怪獣レッドキング「弟」


・『帰ってきたウルトラマン』に登場した凶暴怪獣アーストロンは「兄」
・同作に登場した爆弾怪獣ゴーストロンは「弟」


・初代『ウルトラマン』に登場した地底怪獣テレスドンは「兄」
・『帰ってきたウルトラマン』に登場した地底怪獣デットンは「弟」


・初代『ウルトラマン』のメフィラス星人は「兄」
・『ウルトラマンタロウ』のメフィラス星人二代目は「弟」


といった、学年誌や子供向け書籍で散々に解説されてきて、当時の子供たちも素朴に喜んで小学校などで吹聴(ふいちょう)してきたウラ設定の数々のように、『ウルトラマンタロウ』のテンペラー星人が「兄」で『メビウス&兄弟』版のテンペラー星人「弟」として、今からでも遅くないので、改めて公式設定にするべきではないか!? と思うのだけれど。


――地球怪獣であるレッドキングと宇宙怪獣であるブラックキングがドーして兄弟なんだよ!? と子供のころはともかく、長じてからはツッコミの余地がある設定の数々なのだが、これも80年代あたりから特撮評論同人界隈では、レッドキングの細胞や遺伝子を操作して誕生したのがブラックキングなのだと当時の作り手たちが考えてもいなかったことを、勝手に好意的に優しいウソに優しいウソを重ねつづけて楽しく解釈してきたものである(笑)――


 ゼロが頭頂部のふたつのゼロスラッガーを放つのと同時に、タイラントがその腕の長いムチをゼロに向けて放つ!
 ゼロは右手でムチをはらいのけ、タイラントも右手でひとつのスラッガーをはらいのけ、テンペラーはもうひとつのスラッガーを堅い背中の甲羅でかわす!
 ゼロが両腕をL字型に組んで光線技・ワイドゼロショットを放つや、テンペラーをすかさずかばったタイラントがその腹部のパーツである宇宙大怪獣ベムスターの五角形の腹で光線を吸収!
 ゼロが額のビームランプから放った必殺光線・エメリウムスラッシュが、往年の大ヒットアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101207/p1)の冥王星での戦闘で有名な敵・ガミラス帝国による可動式鏡面を備えた人工衛星を経由してレーザー攻撃する「反射衛星砲」のように、宙に浮遊するゼロスラッガーに角度を付けて傾かせてその鏡面状の側面に反射させることで、あらぬ方向からテンペラーを急襲!
 テンペラー両手を組んでかわすが、少々ダメージを受ける!
 ゼロ、ふたつのスラッガーを両手でカチンと鳴らしてから、タイラントに飛びかかる!
 この超スピーディなバトルの流れ、「バカ」、いや、「めちゃくちゃカッコいい」!


 テンペラー、両腕を大きく開いてから、それを同時に前方に突き出すという、原典の『タロウ』で初代テンペラー星人ウルトラ兄弟を攻撃した技の再現でもあるおなじみのポーズで「ウルトラ兄弟必殺光線!」を発射!
 タイラントに羽交(はが)い締めにされたことで、まともにこれを食らうゼロ!


 勝利を確信したテンペラーがヒッポリトを「あんな奴……」とバカにする発言をしたために、ゼロが「奴は仲間じゃなかったのか!?」と問うや、


テンペラー「笑止、弱い者など仲間とは云わん!」


 この発言がゼロに逆転の機会を与えてしまう。そういう不道徳な発言が最もゼロをキレさせて奮起させるってことが、なんでわかんねえのかなぁ(笑)。


ゼロ「おまえみたいなのが一番ムカつくぜ!!」


 ゼロ、タイラントに飛び回し蹴り! その下敷きとなってしまったテンペラー、ついさっきまで仲間扱いしていたタイラントを「役立たず」扱いにする!


ゼロ「コロコロ手のひら返す奴が、仲間の価値を語ってんじゃねえ!!」


 こうした「バカかっこいい」バトルの中でも、ちゃんと必要最小限なメッセージが含まれているのである! つまり、道徳的なメッセージを鼻白(はなじろ)んでしまうような説教くさくて退屈なドラマの中で描くのではなく、こうしてさりげなく子供が最も熱中して見ているバトルの中に織り込ませて退屈させずにスンナリと伝えることこそが、子供向けヒーロー番組や娯楽活劇作品一般におけるテーマの伝え方の理想形ではないだろうか!?


 優勢となったゼロだが、そこにメフィラス星人・魔導のスライが出現! メフィラスの手には人質とされてしまったピグモンの姿が!
 このメフィラスの姿は実は幻影・立体映像であり、ピグモンを助けたければ、メフィラスとピグモンの本体がいる怪獣墓場まで来るように迫られるゼロ!


ゼロ「どいつもこいつもイケすかねえ奴らばかりだぜ!」


 ゼロがテンペラーと決着をつけて怪獣墓場に急行しようとするや、冷気がゼロを襲ってきて右足が凍結してしまう!
 グローザ星系人・氷結のグロッケン、そしてデスレ星雲人・炎上のデスローグが出現!


 両者ともに同族の別個体であるグローザ星系人こと冷凍宇宙人グローザム、デスレ星雲人こと策謀宇宙人デスレムが、『ウルトラマンメビウス』終盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070422/p1)で3万年前に昭和ウルトラマンたちの故郷「光の国」が怪獣軍団に侵略された伝説の戦い「ウルトラ大戦争」のころから暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人に仕えていた暗黒四天王の一員として登場していたが(要は着ぐるみの使い回し・笑)、今回は別個体であることからそのキャラクターは完全に変わっている。
 『メビウス』ではクールな印象だった冷凍宇宙人は今回は完全にただのチンピラ型(笑)。一方、ヤクザ系だった策謀宇宙人は今回はナゼか寡黙(かもく)である。
 今回の強豪宇宙人軍団のキャラシフトを考えてみれば、メフィラスは相変わらずの紳士型、テンペラーはヤクザ系、バット星人が愉快犯、スーパーヒッポリトがおマヌケ役(笑)と見事なまでの差別化がなされており、それらの幹部級宇宙人とキャラがかぶらないようにと、グロッケンをどチンピラ、デスローグを無口な奴として、設定が変更されたのは大正解だったと思うのだ!


 テンペラー・タイラント・グロッケン・デスローグは、ゼロを取り囲み、一斉にゼロを袋叩きにする!
 しかし、右足が凍っているにもかかわらず、そいつら相手にいつもと変わらぬ豪快なアクションを展開するゼロ! もう驚くばかりの「バカかっこよさ」である!(笑)


 だが一斉光線を浴びてしまい、さすがのゼロも大ピンチに!


 そこに駆けつけたのは、


グレンファイヤー「じゃじゃ~~ん!」


って、自分で登場ブリッジを叫ぶなっちゅーの!(笑)


 高い崖の上に揃い踏みしているグレンファイヤー・ミラーナイト・ジャンボット・ジャンナイン!
 こちらもまた、ダークネスファイブ同様、スーパー戦隊風の名乗りをあげるのだ!
 これこそまさに、最大限に「バカかっこいい」のである! こうなったら次回作でウルトラ兄弟が登場する際にも、オリジナルキャストの声で「戦隊名乗り」をやってほしいものである!(笑)


 ここですかさず流れるのが「ウルトラマンゼロのテーマ」曲だが、やはりこの名曲は「ウルティメイトフォースゼロのテーマ」として使用される方が、いっそう高揚(こうよう)感が増すのである!
 グレンファイヤーたちが一言ずつゼロに語りかけるが、各キャラが語り掛ける際に各々(おのおの)が画面の中央に来るように、その都度カメラを超高速で歯切れよく横移動させていく演出もカッコいい!


ゼロ「上等だぜ、おまえら!」


 「上等」って、ピンチを救いに来てもらって云うセリフか!?(笑) しかし、鼻をすするような仕草をして、少し感涙しているのかもしれないという芝居を、過剰にシミたったれた域には達しない範疇でカラッとスーツアクターは見せている!


 宇宙人軍団とタイラントを彼らにまかせて、ピグモンを救うために怪獣墓場へと急行するゼロ!


・グレンファイヤーVS氷結のグロッケン!
・ミラーナイトVS炎上のデスローグ!
・ジャン兄弟VS極暴タッグ!


 彼らのバトルと怪獣墓場へと高速飛行するゼロを正面からとらえたカットを交互に交錯させる演出が実にいい! 父であるセブンと同じ飛行音で、ゼロが怪獣墓場へと急行する!


 怪獣墓場にたどり着いたゼロは、メフィラスを前に、


「てめえ、覚悟はできてんだろうなぁ!」


って、いつもと比べて妙にドスのきいた声、しかもメフィラスを指さした右手をクルッと裏返して「コッチへ来やがれ!」という仕草をしながらこのセリフを吐くものだから、マジでコワいぞコレ! いや、実に「バカかっこいい」!


 だが、メフィラスも余裕の表情であり、


「卑怯(ひきょう)もラッキョウもありませんよ」


って、初代メフィラスの紳士型を継承していたハズなのに、『タロウ』に登場した方のメフィラス星人二代目の迷セリフ、かつては中二病的なハードでシリアス志向な第1期ウルトラ至上主義者たちに「ウルトラシリーズの堕落と変節の象徴!」「宇宙の神秘・未知の脅威といったSF性ではなく、単なる宇宙人のチンピラ化の象徴だ!」と散々に酷評されてきたこのセリフが一周まわって許せてしまい、マニアのツボを突いてプッと吹かせてしまうギャグとしての意味合いで流通してしまうとは!? 特撮マニアの価値観も二転三転して成熟していくものなのですねぇ(笑)。


 しかも、メフィラスが名乗りをあげる際、一瞬だけ初代のメフィラスの声を演じた大ベテラン声優・加藤精三(かとう・せいぞう)の声にエコーを付けた「フゥゥンッッッッ!!」なる唸るような掛け声が効果音的に入る演出がまたたまらん!
 本作『ウルトラゼロファイト』が放映されている『ウルトラマン列伝』は基本的にはテレビ放映のみで映像ソフト化はされないので、JASRACジャスラック日本音楽著作権協会)などへの支払は発生しない。しかし、過去のウルトラシリーズの歴代宇宙人の紹介などでは、宇宙人がしゃべるセリフはカットしても、その高笑いや叫びや唸り声だけは「効果音」のような扱いとして使用していることがある。
 けれど、今回の新作『ウルトラゼロファイト』は映像ソフト化が前提のハズだ。ならば、この「フゥゥンッッッッ!!」なる加藤精三による掛け声を「効果音」のように使用してしまってもよいのであろうか?(汗)
 実はこの「フゥゥンッッッッ!!」なるメフィラスの加藤精三の掛け声は、1970年頃に朝日ソノラマから発売されたいくつかのウルトラ関連書籍に添付されていたソノシート(廉価アナログ・レコード)に収録されていた音声ドラマ『ウルトラセブン対宇宙怪獣連合軍』においても、分身宇宙人ガッツ星人の声(笑)として使用されていたものなのである。これは当時飽きずに繰り返して聴いたものであった。
 だから、この掛け声は当時から「効果音」扱いとして録音されたものなのかもしれないと云いたいところだが、1960~70年代に声優の音声を「セリフ」と「効果音」に分けて契約するような商習慣があったとはとても思えない――そもそも契約書があったかすら怪しい(笑)――。
 昭和ウルトラシリーズが1980年代後半~90年代にかけてLD(レーザー・ディスク)化された折りには、セリフ抜きのSE(サウンド・エフェクト)テープのみを収録した音声チャンネルがあったものだ。初代『ウルトラマン』のLDをお持ちの方々は、このメフィラスの掛け声がセリフのテープ側の音声であったかSEテープ側の音声であったか教えていただけないだろうか?
 よって、意味のある言葉である「セリフ」とは異なる「掛け声」だから、勝手に「効果音」として扱っているようでもあり、かぎりなくグレーな気配もするけれど、もちろん個人的には大カンゲイなので、皆さんも関係各位に通報するなどのよけいなことをするのはやめましょうネ――映像ソフト化された際に、加藤精三の掛け声が消されていたらイヤでしょう(笑)――


 しかし、今回の『ウルトラゼロファイト』第2部は、まさに『ウルトラセブン対宇宙怪獣連合軍』ならぬ『ウルティメイトフォースゼロ対凶悪宇宙人連合軍』なんだよなぁ! 四十数年を経(へ)て、あのころの夢がテレビ画面で実現するとは!(感涙)
 なお、今回のメフィラスは、初代『ウルトラマン』や『ウルトラマンメビウス』や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEO』で歴代メフィラスのそれぞれ別固体の声を演じつづけてきた加藤精三ではなく別人が演じている。けれども、同時期の携帯電話・auのCMでは、往年の大人気野球アニメ『巨人の星』(68~71年・東京ムービー→現トムスエンタテインメント よみうりテレビ)の主人公・星飛雄馬(ほし・ひゅうま)の父・星一徹(ほし・いってつ)の声を元気に演じていたりする。やはり、超低予算作品ゆえに、おカネのかかる大ベテラン声優は使えなかったといったところか?(爆)


 第1部でガルベロスがつくりだした幻影の偽ストロングコロナゼロと対決したゼロがそうだったように、グレンファイヤーと氷結のグロッケンもまた、頭をぶつけ合ってタイマンを張り合う! 完全にヤンキーとチンピラのケンカである(笑)。


 一方、ミラーナイトを画面手前に配し、彼の背後に左手から炎の球を放とうとしている炎上のデスローグ。炎の球が放たれるやミラーナイトが即座に振り返って十文字型の光の刃(やいば)を放つシルバークロスを発射して、炎の球はあえなく四散! この一連の戦闘を斜め上方から見下ろして1カットで納める映像美もさることながら、ミラーナイトの機敏さと強さを同時に表現ができており、最高にカッコいい!


 そして赤バックで描かれる、ジャン兄弟VS極暴タッグの空中戦!
 ジャンボット、額から光線「ビームエメラルド!」を発射!
 つづいて背部から放った多数の「ジャンミサイル!」を、テンペラーは電磁ムチで次々に叩(たた)きおとす!
 ジャンナインはタイラントめがけて、胸部に6カ所ある発光部から「ジャンフラッシャー!」、右腕の2連装の砲口から「ジャンキャノン!」、腰部が展開して「ジャンバスター!」と次々に光線兵器を繰り出す!
 ジャンボットとジャンナイン、ジャン兄弟の力を合わせて「ダブルジャンナックル!!」なるダブルロケットパンチを発射! 武器や技の名前をいちいち口に出して叫ぶあたりもさりながら、70年代に大隆盛を誇った合体ロボットアニメで育ったわれわれオッサン世代にはたまらない趣向でもある。


ゼロ「オレたちはウルティメイトフォースゼロ! 宇宙のワルは全部ブッ倒す!!」


 もう全部が最高に「バカかっこいい」!(笑)


 ルナミラクルゼロはミラクルゼロスラッガーを、手首のウルトラゼロブレスレットを変形させた槍(やり)・ウルトラゼロランスを振るうことで操って、高速で上空へと離脱していくメフィラスを多数のゼロスラッガーが取り囲む!
 そして、ゼロランスを手にしたゼロがメフィラスに突撃することで、あわやピグモンを見捨てたか!? と思いきや、爆炎が晴れるとウルトラゼロブレスレットの原典であるウルトラマンジャックのウルトラブレスレットが変形した巨大な盾(たて)・ウルトラディフェンダーと同様に、遠隔操作で飛ばしたウルトラゼロディフェンダーピグモンを守っていた!
 ゼロの上半身と小高い岩盤の上のピグモンを、視線を同じ高さに合わせて見せているカットが秀逸(しゅういつ)である!


 だが、青い稲妻が光り、雷鳴が轟(とどろ)く中、そそり立った高い絶壁の頂上に、メフィラスが云うところの「あのお方」が遂に降臨する!


メフィラス「控えよ! 暗黒大皇帝・カイザーダークネス陛下(へいか)の御前(ごぜん)である!」


って、名作長寿時代劇『水戸黄門(みと・こうもん)』(69~11年・東映 TBS)かい!(笑)


 カイザーダークネスの鎧(よろい)の頭部が稲妻の直撃ではじけて落下!
 なんと、自身でそれを踏みつぶすカイザーダークネス!
 そして、鎧をかぶっていた「あのお方」が、地獄の声を響かせる!


ウルトラマンベリアル「久しぶりだな、会いたかったぜ、ゼロ!」


 ベリアル、左手の鋭くとがった爪で右の頬を撫(な)でるや、そこに短く流れるのは『ゼロ THE MOVIE』で多用されたおどろおどろしくて重厚(じゅうこう)な「ベリアルのテーマ」曲! やっぱ、超「バカかっこいい」!


 「つづく」!


 各話のラストで画面を覆い尽くすほどに馬鹿デカい筆書体で「つづく」のテロップが入るが、いまどき「つづく」はないよな。ふつうはやっぱオシャレに「to be continued」のハズだよな。なのに、あえてオシャレに行かずに野趣(やしゅ)あふれる方向を取るあたりのセンスも含めて、『ウルトラゼロファイト』はやはり「バカかっこいい」のである!


 この「つづく」のやたら乱雑な書体を見て、筆者は往年のテレビアニメ『男一匹ガキ大将』(69年・東京テレビ動画 日本テレビ)――ちなみに東京テレビ動画は現在封印されてしまっている『ドラえもん』(73年版)の製作会社でもある――を思い出してしまった。もっともこの作品ではあんなに馬鹿デカい字で「つづく」とは表記されていなかったのだが(笑)。
 この『男一匹ガキ大将』は、もともと本宮ひろ志(もとみや・ひろし)によって、集英社週刊少年ジャンプ』に、創刊当初の1968年から1973年の当時としては異例の5年間もの長期に渡って連載された大人気漫画を原作としている。主人公のガキ大将・戸川万吉(とがわ・まんきち)がケンカを通して次々に子分を増やしていき、日本中の番長を従える総番にまで登りつめ、しまいには日本自体を動かすほどの存在となる(笑)。なんせ連載終了間際の73年秋に起きた第1次石油ショックの際には、全国の不良たちを率いて、中東まで原油の買いつけに行ったくらいなのである(爆)。これぞまさに、元祖「バカかっこいい」なのである!


 思えば『ゼロVSダークロプスゼロ』とか『ゼロ THE MOVIE』も、こういうノリに近かったような気もする。後者と同じく今回の『ウルトラゼロファイト』第2部もアベユーイチが監督しているのだが、ひょっとして氏は「ウルトラ」で『男一匹ガキ大将』をやろうとしているのか!?(笑)


 たしかにピグモンやファネゴン人などの民間人や日常生活を守るための戦いも描かれてはいる。だが、今回のウルティメイトフォースゼロVS宇宙人軍団の戦いは、正義や平和を守るための戦いというよりは、まさに「光の国高校VSダークネス学園の抗争」というノリである。ベリアルなんか完全に番長じゃん!(笑)


 「そんなものは断じてウルトラではない!」、「ウルトラは少年漫画などではなく、巨大怪獣ものなのだ! SF作品なのだ!」とお怒りの御仁(ごじん)もきっといらっしゃることであろう。
 ひと昔前、「ブサイクだけどかわいい」を略した「ブサかわいい」――ピグモンなんかはまさにその部類である――という造語が流行したものであった。今回筆者が多用した「バカかっこいい」は、「バカすぎるけどカッコいい」を要約したものである。バカも度をすぎるとカッコよく見えることもあるのである(笑)。


 筆者個人は世代的にもそんなにくわしくはないのだが、そもそも1980年代以降、児童たちの人気の中心となった一連の『少年ジャンプ』の漫画こそ、往年の学園がリングに変わったり核戦争後の地球に変わったりファンタジックな異世界に変わったり、番長が宇宙人のズッコケ超人になったり神秘の鎧をまとったり北斗神拳やカメハメ波の使い手になったりして表層的な意匠こそ変わったものの、荒唐無稽な秘術や体技を尽くした「戦い」を見世物にするバトル漫画の伝統こそが、この「バカかっこいい」に該当するものではなかったか?
 そして、冷静に振り返ると、どうしようもないほどのバカバカしいバトルばかりが描かれてはいたのだが(笑)、その中には少年の読者たちに向けて、今後の人生の中で大事にしてほしい友情や道徳の大切さなどがさりげなくメッセージとして伝えられていたのではなかったか? 普段があまりにもバカで通されていたからこそ、それらの道徳めいたものがたまに描写されるとよけいに宝石のように輝いて見えたのではなかったか?


 「ウルトラ」の商品的価値がすっかり凋落(ちょうらく)してしまった今、たしかに遅きに失した感は否(いな)めない。だが、その「バカかっこいい」を創刊以来40数年継続させている『少年ジャンプ』に掲載された漫画群が息長く連載されていたり、連載が終了して10数年を経てもいまだに根強い人気を保って続編がつくられたり、再映像化までされている昨今を考えれば、やはりそうしたノリは決して一時的な流行であったのではなく、ヘタをするとSFや怪獣もの以上に、少年たちに受ける普遍的で王道的なものでもあったのだと思う。
 そして、それに近しい作風を持った『ウルトラゼロファイト』を、「ウルトラ」の将来的な展望・可能性・マーケティング性から考えてみても、おおいに支持をしたいと思うのだ。


 テーマやドラマを語るのではなくセリフ漫才を軽妙に演じる声優たちと、それを指先などのコミカルな仕草(しぐさ)と全身を使ったボディランゲージで表現しつつ、豪快な肉体アクションをも披露するスーツアクターたちとの素敵なコラボレーションにより、見事なまでに生命が宿(やど)ったヒーローと悪党キャラクターたちが繰り広げる「夢と冒険の世界」が、華麗なまでの映像表現で描かれる。特殊技術な「特殊映像」と特殊技術な「特技アクション」、やはり「特撮」ジャンルの最大の魅力とは、そのような奇抜なもの・珍奇なものを観てみたい! というところにこそあると考えるのである。


 もっとも、たった数分の枠での週1の放映では、世間での認知度もなかなかあがるものではなく、「平成仮面ライダー」と「スーパー戦隊」の牙城(がじょう)を崩せるものとはなりえないであろう。マジでもったいない!


 ちょうど半分の8回目を終えたところで、ウルトラマンゼロの宿敵・ウルトラマンベリアルが登場! さらに怒濤(どとう)の展開となるのだが、執筆の時間的都合と掲載のキャパの問題もあり、今回はここまでとさせて頂きたい。


 そんなワケで、「つづく」(笑)。


2013.4.10.
(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2013年春号』(13年4月14日発行)~『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『ウルトラゼロファイト』合評2より抜粋)


『ウルトラゼロファイト パーフェクトコレクション』

(文・久保達也)
(2013年6月21日脱稿)


 2013年6月21日(金)にバンダイビジュアルから発売されたDVD『ウルトラゼロファイト パーフェクトコレクション』についてレポートさせていただく。


 『ウルトラマン列伝』(11~13年)の枠で放映された、『ウルトラゼロファイト』(12年)第1部『新たなる力』(監督・おかひでき)全8話、および第2部『輝きのゼロ』(監督・アベユーイチ)全15話を完全収録。
 さらに放映分全23話を両監督の監修によって再構成・一本化した64分の『W(ダブル)ディレクターズ・エディション』、その音声特典として両監督によるオーディオコメンタリーも収録されている。


 このオーディオコメンタリーで語られる裏話がかなり楽しめる内容であり、これは意外なもうけものであった。
 第1部の第1話でウルトラマンゼロが身につけていた、西部劇風のマントは、実はグレンファイヤーからもらったものであるという設定だとか。そのマントを第2部に登場するファネゴン人にまんま流用しているだとか。


 第2部でゼロの危機にウルティメイトフォースゼロが駆けつけた際、グレンファイヤーが、


「じゃじゃ~~ん!」


と叫ぶのは、声を演じる関智一(せき・ともかず)の完全なアドリブだったとか(笑)。


 また、アフレコではウルティメイトフォースゼロを演じる声優たちが全員揃うことがほとんどなく、第2部の最終回の収録は皆が単独で行い、しかもアドリブが続出したらしい。それであの「セリフ漫才」が完成してしまうのだから、彼らの力量には驚くばかりである!


 さて、肝心の『Wディレクターズ・エディション』であるが、当然ながら放映分の各冒頭にあった『ウルトラゼロファイト』のタイトルロゴと、例の「つづく」(笑)はカットされている。
 冒頭には新規のタイトルバックが配されているが、まさに『ウルトラゼロファイト』の元祖である平日夕方の帯番組『ウルトラファイト』(70年)の炎を背景に黒字のタイトルが浮かび上がるオープニングを模したものである。ただし、その書体は「つづく」同様に筆文字のようでもあり、しかも縦書きになっている(笑)。
 あと、第1部の総集編となっていた第2部の第1回も、当然ながら流用映像の部分はまるごとカットされており、第1部と第2部のインターミッションとして、宇宙空間を描写した映像に差し替えられている。


 実は放映分との違いはそれくらいのものであり、『Wディレクターズ・エディション』といいつつ、単につなげたのみという印象が強い。強いて云うなら、放映分の各ラストでブリッジ的に使用されていた短い音楽が、つなぎをよくするためにカット、あるいは別の音楽に差し替えられている程度のものである。本編未使用カットなどがあるんじゃないかと期待していただけに、その面では少々期待はずれではあった。


 むしろオーディオコメンタリーや解説書で語られていた、第1部の当初構想されていた結末の方にこそ、驚くべきものがあった。それは、友好珍獣ピグモンが死ぬという展開である!
 オリジナルビデオ作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』(10年・バンダイビジュアル)や、映画『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹)などの、おかひでき監督作品で画コンテを担当してきた監督の友人である漫画家・松原朋広(まつばら・ともひろ)による『ウルトラゼロファイト』第1部の当初の画コンテでは、ピグモンが光に包まれて消滅し、空に立ちのぼる光の中を、風船が舞い上がっていくイメージが描かれていたのである!
 だが、メイン視聴者の子供たちへの配慮を大きな理由として「なんとかピグモンを救えないか」とクランクイン前日に急遽(きゅうきょ)完成作品のようなラストに変更になったそうである。


 ゼロがストロングコロナゼロとルナミラクルゼロに分身するのも、ピグモンを生存させるための苦肉の策として編み出されたものであり、むしろこれは「禁じ手」とさえ考えられていたらしい。
 しかしながら、ピグモンの生存がなかったら、第2部『輝きのゼロ』でゼロが大逆転する展開はありえなかったわけであり、それを考えればこの改変は大正解であったと思えるのだ!
 ただ、当初は触覚宇宙人バット星人・グラシエは「地獄の四獣士」の魂を吸収したあと、それらの4大怪獣たちの特殊能力を披露しながらゼロと戦うことになっていたそうであり、これはやはりそのまま残してほしかったようには思う。


 実は『Wディレクターズ・エディション』のラストには、ホンの短いカットではあるのだが、重要な場面が追加されている。ネタバレで申し訳ないのだが、局所的な「時間逆行」によるウルトラマンベリアルの肉体含めての復活と同様に、地獄星人ヒッポリト星人・地獄のジャタールも、ちゃんと生きかえってました! 明らかに放映分と異なる部分って、これくらい(笑)。


 それこそ個人的にはこちらの方がよほど「禁じ手」かと思える、第2部後半戦のクライマックスで描かれた「時間逆行」も――世代人のジャンルファン的には往年の映画『スーパーマン』第1作(78年・日本公開79年)ラストで採用された大ネタという印象が実に強いが――、アベ監督的には今回のベリアルやダークネスファイブはピグモンを人質にしたくらいであり、実際には何も悪事を働いていなかったために(笑)、素直に倒すことができなかったのだそうで……
 そして、やはり「学園バトル漫画」みたいにつくろうという意図はあったようだ。最終回でひみつ基地・マイティベースへと徒歩で帰る際のウルティメイトフォースゼロのメンバーたちの会話は、男子校の通学路における部活帰りの生徒たちのイメージだとか(笑)。


 まぁ、せっかくそこまでしてウルトラマンベリアルやダークネスファイブにトドメを刺さずに、敗退のみで生かしてあげたのだから、今度こそ彼らに徹底的に悪事を働かせて、


ゼロ「オレたちはウルティメイトフォースゼロ! 宇宙のワルは全部ブッ倒す!」


をやる計画がきっとあるのだろう!?


 映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー)でのデビュー以来、映画・オリジナルビデオ作品・ライブステージ・短編『ウルトラゼロファイト』など、いささかイレギュラーなかたちでの活躍を強(し)いられてきたウルトラマンゼロ
 しかしながら、それらはすべて世界観が統一され、前作とのつながりもある一連のシリーズ物語として続編が製作されつづけてきたのであった。せっかく紡(つむ)いできたこの連続ドラマを、子供たちやマニアたちの興味関心を持続させるためにも断じて「リセット」してはならないと考えるものである。


『ウルトラゼロファイト』と次作『ウルトラマンギンガ』の関係はドーなる!?


 2013年7月10日は、1966年7月10日に初代『ウルトラマン』(66年)第1話の日曜夜7時の放映を翌週に控えて、同枠で放映された宣伝番組『ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生』が放送されたことから、近年では同日は「ウルトラマンの日」とされている――なお、同日にはバンダイビジュアルから初代『ウルトラマン』のブルーレイBOX第1巻(ASIN:B00BLWNH38)も発売される――。
 そんなめでたい日に、同年7月から『新ウルトラマン列伝』(13年)と改題された枠でスタートする新番組『ウルトラマンギンガ』(13年)は、どうやら「ウルトラマンゼロ」が登場してきた作品群とは世界観を共有する設定とはなっていないようである。


 しかしながら、『ギンガ』は2013年の夏休みと年末の時期に集中して、1話30分の作品が全9話で放映されるスケジュールであるとのこと。
 であるならば、その空白期間にぜひとも『ウルトラゼロファイト』第3部を放映し、ウルトラマンゼロを主人公にしてこれまで描かれてきた世界観を継承しつつ、『ギンガ』とも接点を持たせた物語を描くべきではなかろうか!? 「円谷プロ創立50周年」の記念すべき2013年に、商業的失敗を招くことは断じて許されないのである。


 『新ウルトラマン列伝』の主題歌は、これまでゼロの声を務めてきた宮野真守(みやの・まもる)と、THE ALFEE(ジ・アルフィー)の高見沢俊彦(たかみざわ・としひこ)とのコラボレーションによるものになるらしい。
――NHK-FMで毎週水曜(『列伝』放映と同じ曜日!・笑)23時に放送されている『THE ALFEE 終わらない夢』において、高見沢は自身がウルトラファンであることを何度も公言している。そればかりかメンバーの坂崎幸之助(さかざき・こうのすけ)は、まだALFEEが結成される前に高見沢がピグモンのコスプレ姿で六本木の街を歩く姿を目撃したと暴露(ばくろ)している・爆――


 そうなると、まだウルトラマンゼロにも活躍の余地は残されているのかとも思える。
 もし『ウルトラゼロファイト』が第2部で最後だったとしても、それこそ東映が近年展開している新旧「スーパー戦隊」共演映画、新旧「平成ライダー」競演映画や、昭和から平成までのライダー&戦隊が全員集合したオールスター映画のように、たとえ世界観が異なろうとも『ウルトラマンギンガVSウルトラマンゼロ』のようなゴージャス感があり両方のファンもゲットできるような競演映画などをつくるべきではなかろうか?
 最新ウルトラマンであるギンガと直前作ウルトラマンであるゼロを共演させ、『ギンガ』の続編であり『ウルトラゼロファイト』の続編でもあるかのようなストーリーにしたり、あるいは『ウルトラゼロファイト』の続編自体にギンガもゲスト出演させたり、『ギンガ』の方にもゼロをゲスト出演させるくらいの、幼稚園児はともかく小学生レベルであれば理解ができるような、そして年長マニアも喜ぶような、両者の世界観を越境して共演を可能とする知的なSF舞台設定の仕掛けも助走台として用意しつつ、結局は問答無用な大バトルへとなだれこむ(笑)ようなリンクをつくっておかねば、今後もウルトラの商品的価値の凋落(ちょうらく)は避けられないようにも危惧してしまうのだが。


2013.6.21.
(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2013年初夏号』(13年6月23日発行)~『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『ウルトラゼロファイト パーフェクトコレクション』評より抜粋)


『ウルトラゼロファイト』第2部・全15話、怒濤の完結!

(文・T.SATO)


 『ウルトラゼロファイト』第2部の前半戦は大いに盛り上がる!


 往年の『ウルトラマンタロウ』(73年)中盤でその存在が語られて、『ウルトラマンメビウス』(06年)終盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070505/p1)では映像での初登場も果たし、3万年前に昭和ウルトラマンたちの故郷であるM78星雲「光の国」を怪獣軍団を率いて襲ったこともある暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人。
 そのエンペラ星人がその身にまとう予定であったと後付けで設定された暗黒の鎧(よろい)、アーマードダークネスがビデオ販売作品『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス』や『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』(共に08年)につづいて、本作中盤では再三の登場を果たす!
 しかも、今回その暗黒の鎧をまとったのは、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年)や『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10年)にも連続登場して、遂に肉体を失い霊体のみの存在となっていた悪の黒いウルトラマンこと因縁のウルトラマンベリアルであった!
 さらにベリアルはゼロに憑依(ひょうい)することで、その強靱な肉体を乗っ取り、黒い体色と化したゼロダークネスへと変身して暴虐を働くも、最後はベリアルが闖入しているゼロの精神世界の中に出現した金ピカの最強形態・シャイニングウルトラマンゼロによって撃退される!


 本作の後半戦ももちろん大いに盛り上がりはするのだけれども、チョットだけビミョーな感じもある。いや決して悪くはないし、拙(つたな)い出来でもないし、むしろ演出技巧的にも映像的にも優れてはいるのだけれども。


 各話3分の尺の中で、次々と事件が起きて、畳みかけるようにテンポよく、衝撃! 衝撃! また衝撃!
 優勢! 劣勢! 逆転! 反撃! また劣勢! といった怒濤の展開を魅せてきた本作の前半戦。


 しかし、ドコかシットリとしたエモーション(情緒)にも訴えて、緩急を付けようとしたようにも見える後半戦の演出は、フツーのヒーローもの作品であれば並み以上のハイテンションではあるハズなのだけど、シーソーバトルの連発がつづく前半戦があまりにも「神展開(かみ・てんかい)」だったモノだっただけに、ホンのもうチョッピリだけワリを喰ってしまったようにも思うのだ。


 追いつめられて絶対絶命になった末の、ほとんどご都合主義(笑)の「奇跡の大逆転」! という展開は、このテの娯楽活劇作品の常套なのであり、一時的にでも苦戦・苦悶・閉塞したからこそ、対比として開放・カタルシス(爽快感)も際立ってくるのだから、そこにケチをつける気は毛頭ナイ――終始、優勢のままで勝ち抜いちゃったりしたら、そりゃあイジメだよ(汗)――


 だから、未見の方々にはネタバレになるけれど、あまりにあんまりなほとんど禁じ手であるハズの、物理法則を破っての「時間を逆行」! 渦中のキャラクターたちの精神・記憶はそのままに、もろもろの物理的・肉体的なことどもだけを時間逆行で元に戻して復活させる……、どころかそんなことは無かったことにしてしまう!(笑) という大ネタも、個人的には許容範囲だし、イイ意味で半分笑いながらもカッコえええーーー! と感嘆しつつ観ていることができた。
 ……とはいえ、小学生ならばともかく幼児にはよくわからないであろうネタだけど、要は初代『ウルトラマン』(66年)最終回「さらばウルトラマン」のように、宇宙恐竜ゼットンにやられて一度死んじゃったけど、ウルトラ兄弟の長男・ゾフィー兄さんによって初代ウルトラマンがまた生き返ったのだ! という大スジがわかりさえすればストーリーの理解に支障は生じないので問題はナイのである……。


 しかし、これにつづく、戦闘シーンがなくて最終バトル後の長めなエピローグが描かれる、延長拡大版の最終回はドーなのであろうか?(笑)


 我らが正義のヒーロー・ウルトラマンゼロが率いるヒーロー集団・ウルティメイトフォースゼロこと、復活したミラーナイト・グレンファイヤー・ジャンボット・ジャンナイン、そしてウルトラマンゼロの5大戦士!


 そして、悪のウルトラマンことウルトラマンベリアル率いるダークネスファイブこと、メフィラス星人・魔導のスライ、ヒッポリト星人・地獄のジャタール、テンペラー星人・極悪のヴィラニアス、デスレ星雲人・炎上のデスローグ、グローザ星系人・氷結のグロッケン!


 最終回では、この善悪2大陣営の強者たちのガチンコ集団戦に流れこんで、それまでの鬱憤を晴らすかのように、正義のヒーロー集団が勝って勝って勝ちまくる! そして、ウルティメイトフォースゼロが大勝利!! めでたし、めでたし……の絵になるのが、最終回としてはアリガチ凡庸でも正しかったのではあるまいか?
 多分、幼児であっても、そーいう展開になるだろうと踏むだろうし(笑)、またそーいった展開を心から望んでいたとも思うのだ。
 平成ライダー第1弾の『仮面ライダークウガ』(00年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20001111/p1)や、合体ロボットアニメ『勇者指令ダグオン』(96年)最終回などでも、その前話までに最終バトルは終わってしまって、ヒーローも合体ロボットも戦闘も描かれない最終回というのは、すでに長いジャンルの歴史の中では前例はあるのだけれども、年長マニアたちの評判はともかく幼児たちの評判もよかったという話は寡聞にして知らないので(笑)。


 むろん個人的にはウルティメイトフォースゼロのメンツの仮面劇によるユカイでおバカな漫才会話も大スキなので、あの漫才会話だけで終わっていく長尺のシットリとした最終回もキライではないのだけれども。ただ自分の好みをカッコにくくって棚上げして冷静になって振り返ってみれば、「戦闘シーンが観たくて観たくて堪らない子供たちにとってはドーであったのであろうか?」ということに思いが至ってしまうのだ。


 てゆーか、時間を巻き戻したのも、『ウルトラゼロファイト』第2部の前半戦までの時点であろうから(?)、その日の範囲内か、せいぜい2日くらい前までにさかのぼっただけじゃあナイのかとも思うけど。
 にしちゃあ、もっとはるか前の2年3ヶ月前に封切された映画『ゼロ THE MOVIE』ラストで死んでしまって怨霊になっていた悪のウルトラマン・ベリアルさまが、時間逆行のせいで肉体も含めて完全復活したことになっている!! って時間軸的にオカシくないか!?
――ネタとしてツッコミしているだけであって、マジなツッコミではないので念のため。まぁ好意的に解釈するならば、時間逆行にもムラやバラつきがあって、ゼロと近接戦闘していたベリアルさまだけは局所的に最も古い時点に時間逆行してしまったがために肉体を含めて復活ができたのだ、というような好意的なSF考証ができなくもナイのだけれども(笑)――


 てか、ベリアル陛下に至っては2年3ヶ月(笑)もさかのぼってしまったくらいなのだから、近過去の『ウルトラゼロファイト』第2部・前半戦の時点で死亡したダークネスファイブのおひとり、ヒッポリト星人・地獄のジャタールさんは、その復活が描かれなかったけれども、彼も当然復活してるんだよネ? 次回作ではシレッと再登場だよネ? てか復活してくれ!
 もしもそーならば、そもそも本作ではダークネスファイブはひとりも死ななかったことになる!? 『ウルトラゼロファイト』第3部があるのならば、彼らとのリベンジ戦をやることがミエミエじゃん!?――いやまぁ大カンゲイなんですけれどもネ――


次作『ウルトラマンギンガ』にも『大怪獣バトル』や『ウルトラゼロファイト』的なテイストを導入してほしい!


 しかし今年2013年は、この4月にシルエットが雑誌媒体にて解禁されて、2009年デビューのウルトラマンゼロ以来、4年ぶりの新ウルトラマンとして高校生が変身するという(!)“ウルトラマンギンガ”が円谷プロ50周年記念の4月12日(金)にそのお姿を初お披露目した――往年のウルトラマンエース(72年)の頭部に似ているようにも思えるデザイン!?――。


 となると、『ウルトラゼロファイト』の行く末と『ウルトラマンギンガ』との兼ね合いはドーなってしまうのであろうか!? まさかきょうび、ウルトラマンゼロの去就がなしくずし的に雲散霧消して、その決着が描かれないなどという無慈悲な扱いになることもナイと思いたいけれども(汗)。


 マスコミに発表された情報だと、7月以降のリニューアル『新ウルトラマン列伝』週1放映ワク内にて、30分ワクをまるまる使って7~8月と年末に30分ワク6話+5話の全11話という変則的な構成で放映。9月と来春3月に映画版をさらに2本も制作するという。ま、現状の『ウルトラ』の商業的規模・年間売上高で、週1放映・30分ワクの完全新作を半年・1年ゲットできるとも、ゆめ思ってはいなかったけれどもネ。


 もちろん結果的に面白ければナンでもオッケーだし、前例のない実験的なこともドンドンやればイイとは思う。


 けれども、個人的には、


・昭和ウルトラ直系の未来世界でありながらも、「ギャラクシーインパクト」なる宇宙規模での時空異変をウラ設定に、平成ウルトラ怪獣も登場できる世界が舞台で、遠宇宙の未知の惑星を舞台にロケなしのスタジオ撮影、比較的に低予算での製作も可能にした『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080427/p1)シリーズの路線


・同じく先輩ヒーローが大ピンチのときには駆けつけるであろうという、潜在的にはオールスターものになりうる可能性を感じさせつつ、しかして人間キャスト不要の着ぐるみ仮面コント劇(笑)で、宇宙を舞台に少年マンガ的なバトル&冒険を、映画や外伝ビデオや短編作品で斬新に展開してみせた『ウルトラマンゼロ』シリーズの路線


 これらの作品群は予算面・玩具展開面・映像面・アクション演出面・作劇面でも大いに可能性と鉱脈があったと考える者なので、この偉大なる2大路線とは世界観や連続ストーリー的な接点がなさそうに見える『ウルトラマンギンガ』には少々不安が募るのだ。


 映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年)、映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年)、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年)の中ヒット要因のひとつは、やはりそれらの作品がヒーロー大集合モノであり、作品に華(はな)があったがゆえだろう。
 対するに、OBヒーローの顔見せは冒頭と巻末にあったものの、基本は単独ヒーローものとして作られた『ウルトラマンゼロ THE MOVIE ベリアル銀河帝国』(10年)は興行的には大苦戦を強いられた。


 『ゼロ THE MOVIE』自体はクオリティが非常に高い傑作であったと筆者は信じる者だけど、その苦戦の原因のひとつは、やはりオールドヒーローたちの頭数や活躍のボリューム不足、ひいては華の欠如にも一因はあったと思うのだ。もちろん、ミラーナイトやグレンファイヤーにジャンボットらはとてもよいキャラなのだけど、ご存じキャラではなく実質、初登場の新キャラクターではあったので、彼ら新キャラクターのオリジナルであるミラーマン(71年)やファイヤーマン(73年)などが血族のチョイ役としてでも出演してくれないことには、幅広い客層や特撮マニアのロートル層への客引きには弱かったのかもしれない……。
――新作TVシリーズが放映されていなかったという理由はもちろん大前提。でもそれは『超8兄弟』(08年)~『ウルトラマンサーガ』(12年)まで同じ条件下での上映ではあったので――


 東映の『スーパー戦隊VS(バーサス)』映画シリーズにたとえて云うならば、映画『ウルトラ銀河伝説』(09年)の内実は実質的には『大怪獣バトルVSウルトラマンメビウス』であった。つまり、当時の幼児にもっともなじみが深いその時代の最新作『大怪獣バトル』(07年)と準新作『ウルトラマンメビウス』(06年)の2大コラボ作であったワケなのだ。そしてその終盤に、次代の新ヒーロー・ウルトラマンゼロが幼児たちへの宣伝がてらの初お披露目を果たしてバトンタッチをしたワケなのである。


 その伝で行くならば、次の映画『ゼロ THE MOVIE』(10年)はそのものズバリ、『ウルトラマンゼロVS大怪獣バトル』として製作した方が、『大怪獣バトル』になじみがあった子供たちにも接点を持たせられるし、その点でももう少し客引きができたようにも思うのだ。
 ゼロと合体した人間の青年・ラン役の小柳友(こやなぎ・ゆう)もイイ役者さんだとは思うけど、事務所の方針かウルトラ関係のイベントには全然登場せず、『大怪獣バトル』シリーズの主人公・レイ青年の方が毎年毎年、年末年始は休みなく出ずっぱりで東京ドームシティ・プリズムホールでイベント「お正月だよ!ウルトラマン 全員集合!!」などにも出演してくれていたことを思うと、彼にもビデオ作品『ゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』までではなく、まだまだ後続作品群にも再登場させて、その功労に報いてあげてほしかったし、ショービジネス的にも相乗効果は高かったハズだとも思うので。
 それこそレイ青年がウルトラマンゼロと一時的に合体してもよかったとすら思うのだ! 『ゼロ THE MOVIE』のラン青年、『サーガ』のタイガ青年、あるいは舞台版『ウルトラマンプレミア2011』のモロボシ・シン青年――その東京公演ではゼロの声をアテていた声優・宮野真守(みやの・まもる)本人が生身で演じた!――につづいて、レイ青年が4人目のゼロと合体した人間となれば、ウルトラシリーズの正史にもハッキリと記録が残ることになる! ドラマ的にも共に同じく悪魔のレイブラッド星人の遺伝子&闘争本能を受け継いで、ウルトラマンベリアルと鏡像関係にあるともいえるレイ青年にこそウルトラマンゼロと合体してもらって、ゼロ以上に強いかもしれないベリアルとの強い因縁や接点を持たせることができたかもしれないのだし!


 その観点から行くと、最近の映画『特命戦隊ゴーバスターズVS(たい)海賊戦隊ゴーカイジャー THE MOVIE』(13年)はエラいと思う。例年だと圧倒的な強さを見せつけこそすれ、脚本執筆&撮影の時期的にも設定がまだ固まっていないからかホンのチョットだけしか顔見せゲスト出演をしない来年度の新スーパー戦隊が、『ゴーバスターズ』の商業的苦戦を受けてか今回は新スーパー戦隊『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)のバトルを延々と数分かけてジックリと描写しているあたりで、アレは東映さんのそーいう用意周到な熟慮に基づいた幼児たちへの少しでもの導き、マーケティング戦略なのだとも思うけど(笑)。


 東映が新旧ヒーロー2大競演モノどころか、オールスター大集合映画を連発している昨今、番宣写真で主人公の高校生が胸ポケットにウルトラマンタロウのソフビ人形を忍ばせているとはいえ、ウルトラマンギンガを基本的には単独ヒーローものとして放とうとしているあたりに、個人的には危うさを感じなくもない。
 やはり、新ウルトラマンことギンガは、ウルティメイトフォースゼロの新たなるメンバーだ! みたいな前作との連続性なり接点はあった方がイイとも思うのだ。つまりは明確にバトンタッチの描写はあった方がイイ。


 海の向こうのアメコミヒーロー映画だって、ややマイナーなヒーローたちが集合する映画『アベンジャーズ』(12年)なる作品を製作している。そのうちのひとりでもある『アイアンマン3』(13年)は『アベンジャーズ』の戦いから1年後が舞台であるともいう。さらには再来年には『アベンジャーズ2』(15年)の公開も決定しているほどだ――後日付記:のちに正式タイトルが『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』に決定――。
 世界観を共有はするも主役を張る主人公は別であるという作品はメリケンの地でもやっていて、単独作品としても楽しめつつ、シリーズ作品としてもマニア的気質のある人間の関心を長期に渡ってゲットして、かつ関連グッズの売上でイタイケな消費者を搾取(笑)、もとい楽しませてもいるのが現状なのである。


 いや、日本でも江戸時代の歌舞伎のむかしから、「忠臣蔵四十七士」のひとりひとりにスポットを当てたり、そのうちのひとりは「四谷怪談」の幽霊・お岩さんの情夫であったという、「世界観」を共有しつつも主人公は別である! という路線がすでにあったではないか!? それと同じことなのである(……あまりイイ例えではなかったナ・笑)


 制作予算の問題からか、ギャラを安く抑えられる子役同然の高校生キャスト、おカネのかかる防衛隊の基地セットや制服のオミットなども、ひとつのテとしてはよくわかる。よくわかりはするのだけど、子供たちがもっとも見たいであろう熱血バトル面でのパワーダウンについては危惧をするところである――実は少年であろうがオトナであろうが女性ファンであろうが、言語化・意識化していないだけで、タテマエでは良心的なドラマやテーマを! と叫んでいたとはしても、ホントはこーいうカッコいい戦闘シーンをイの一番に観たかったり、イザ観てみればそーいうシーンに最も興奮しているのだとも思うのだけれどもネ(笑)――。


 とはいえ、まだ始まってもいない番組に、先入観やある種の価値観のモノサシを当てハメすぎるものよくはないよネ。とも思いつつ、今どきの飽きっぽいガキんちょどもをタイクツさせないように、従来の『ウルトラマン』らしさに過剰に捉われることなく、よくできたハートウォームな少年青春ドラマ路線に過剰にシフトしたりすることもなく、Aパートから等身大サイズのウルトラマンに変身して敵の戦闘員(仮)と街中や校舎ウラでバトルするようなノリでキビキビ、サクサクと各話を展開させてほしくもあるのだけど(笑)。


 エッ、『仮面ライダーディケイド』(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090308/p1)や『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111107/p1)パターンで、カードやレンジャーキーならぬソフビ人形の新旧ヒーロー&怪獣を、現実世界で実体化させるらしいんだって!?
 コレは古典的な特撮マニアが激怒しそうな設定だけれども、個人的には怪獣ソフビ人形それ自体にSF・魔法的な意味を持たせながら劇中に登場させて重要アイテムとしても扱うことで、子供たちに直接訴求して関連玩具の売上も増大させようとする手法は、たとえ三番煎じではあっても期待はできる。もちろんこの『ウルトラマンギンガ』についても、項を改めて追々語っていく所存である。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2013年春号』(13年4月14日発行)~『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『ウルトラゼロファイト』合評1より抜粋)


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この世界の(さらにいくつもの)片隅に ~意外に豊かでモダンな戦前!? 終戦の日の慟哭・太極旗・反戦映画ではない説をドー見る!?

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 2019年12月20日(金)からアニメ映画『この世界の片隅に』の増補版『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開記念! とカコつけて……。
 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(19年)評をアップ!


『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 ~意外に豊かでモダンな戦前!? 終戦の日の慟哭・太極旗・反戦映画ではない説をドー見る!?


(文・T.SATO)
(2020年3月2日脱稿)


 2016年下期は『シン・ゴジラ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160824/p1)、『君の名は。』、『映画 聲(こえ)の形』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190901/p1)とジャンル系作品が邦画の話題をさらったが――個人的にはここに感涙の大傑作アニメ映画『planetarian~星の人~』も末席に連ねさせたかったけど、マジメでもややオタッキーな作品でしたからネ(汗)――、年の瀬も迫った時期に公開された、戦前~戦中の広島の庶民を描いた大傑作『この世界の片隅に』でトドメを刺された感がある。しかも大資本と組んだ作品ではなく、クラウドファンディングで作られて、ロクに宣伝もされていないのに興行の上位にランクイン。


 良くも悪くも『君の名は。』が連日の満員で劇場に来ても同作を観られなかったデート層が、あるいは同作に感銘してアニメ映画も悪くないと思った一般層が、『聲の形』と『この世界の片隅に』にも流れて、もっと低興収で終わったであろうこの両作の興行を押し上げたのが、2016年の秋だったと私見する――ここでは各作に対する個々人の好悪や評価は置いといてくださいネ――。


 戦前~戦中における庶民のやや単調だけれども慎ましくて、小さな出来事に喜びを感じるような日常の炊事家事・洗濯掃除といった光景の細部をていねいに丹念にリアルに、しかして柔らかい描線のキャラデザ&淡い色彩の背景美術で追っていくことで、作品世界に没入させていくこの作品。もちろん終盤では戦争の影響が及んできて、配給やら昼夜を問わない空襲警報やら機銃掃射、焼夷弾攻撃も描かれるのだけど、爆心地が舞台ではないことで原爆それ自体は遠景として描かれて、後日に現地入りすることによってかえって異彩を放って、終戦の当日や戦後の混乱期をも駆け足で描いていく。


 そこに声高に登場人物の絶叫セリフで語ってしまうような明確な「反戦」テーマはない。もちろん好戦や軍国主義の肯定を謳うものでは毛頭ナイけれど、もっと猥雑で良くも悪くも日々をテキトーに、そして戦後の後出しジャンケン歴史観で見えにくくなってしまった、あるいは戦前/戦後といったあまりに善悪二元論でグラデーションを無視した二者択一な歴史観で黙殺されてしまったディテールをも描写し尽くすことで、あの時代のすべてといわずとも全的……というと語弊があるけど、俗世間に流通している定説・通説をイチイチ覆そうとしているようにも思える。


クリスマスも横文字もある意外と豊かな戦前に、モダンガールなる存在も!


 まずは元号抜きの「8年」として描かれる昭和8(1933)年の光景である。ここに描かれる地方都市のビル街にはネオンも灯り英語や外来語のコピーもおどる年末商戦・クリスマス商戦の光景は、まぁまぁ豊かさを感じさせるモノであり昭和中期(昭和30年代=1950年代後半~60年代前半)の光景とも大差はナイ。コレは戦前は暗黒の時代であり、敵性外来言語も禁止されて特高警察がにらみを効かせて庶民が息を潜めて生きていた……といったイメージとは異なるものである。しかし、歴史オタクの諸兄であればご存じの通り、昭和8年の経済水準は戦後の昭和32年と同じなのであり、コレは風景的にも正しい描写なのである。


 しかし、そんなモダンな描写の一方で、婚姻については保守的であるサマも描かれる。主人公少女のすずさんは、ある日、知らない男性とその父親が自宅に来訪しており、お見合いを所望されていることを、電話がない時代ゆえに外出先で口頭で知人から知らされる。もちろん逡巡の末に気恥ずかしくて、窓の外からそっと覗き込むだけで初見は終わるし彼女に否を唱える権利もあるのだけれども、さして大きな葛藤はナシに「まぁイイか」的に婚姻を決めて相手先へと嫁いでいく。
 左翼リベラルな立場からはこんな唯々諾々としたリアクションはアリエナイ、けしからん! 結婚強制社会を描いたスマホ漫画原作の『恋と嘘』(14年・17年に深夜アニメ化&実写映画化・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200202/p1)を見習え! という描写であろうけど、昭和の中後期生まれのオッサンである筆者の父母の世代である昭和10年前後生まれで昭和30年代に結婚したような世代、昭和中後期の都市近郊の新興住宅街に育った身である筆者のご近所のオジサン・オバサンたちの馴れ初めでも、同様に職場の近辺で見掛けて気に入った女性を世話焼き好きな親族主導で結婚も見据えた真剣交際を説きに行ったゆえといった話も時折、聞いたモノである。


――むろん1980年代以降だと成熟していない男性扱い、ヘタをするとストーカー扱いでキモがられて通報されてしまうような所業ではあり、女性の側も自分を高く見積もっていない御仁が多かったので「他にもっとイイ人がいるかも……」とは思わずに、現今の非モテ男女のように「これが運命のヒトかも……」と勝手に思い込んでくれたということも大いにアリそうではあるけれど(笑)――


 要はお見合い結婚でも幸福な家庭を築けることはあるだろうし、自由恋愛でも不幸な生活を送ることもある。後者にやや分があっても100かゼロかという絶対正義と絶対悪の関係ではナイということでもあるのだ。


 嫁ぎ先でのすずさんは、幸いにしてソコの姑さんが温厚であったことにより、前近代的な家父長制・イエ制度的な嫁イビリにはあったりはしない。しかし、市街の中核はともかく一般家庭に家電製品などはなく、朝から晩まで炊事家事・洗濯掃除・裁縫・井戸での水汲み・畑仕事に明け暮れている。ただし、そこでの奴隷的労働を糾弾するでもなく、かといってその逆張りで労働の喜びを賞揚するのでもなく(笑)、この作品はそんな情景は生活をするための当たり前の日常としての意味合いだけで描いていく。


 とはいえ、やはりそこに逆張りがまったくないワケでもなく、嫁ぎ先の義姉はそんな従順でトロトロボケボケしているすずさんを見くだしてもいる。彼女は当時流行りのモガなのだ。モガとはモダンガールの略であり、この略称も本来は当時の良くも悪くもマジメで潔癖な左翼運動家・マルクス主義者たちがブルジョワ的虚栄に溺れる人々を批判するために蔑称として作った用語で、今のネット用語で云うなら「ファッション&スイーツ、カッコ笑い」といった意味合いの用語であり、彼女らモガを自由の発露ではなく堕落の象徴と見なす往時のマルクス主義者たちの見解に個人的・感情的には大いに賛同するけれども、それもさて置こう(笑)。
 そう、あの時代の一角には、すでにモダンガールなる存在もいたのだ。そして、彼女は自力でヤサ男を見つけてきて結婚もした肉食女子でもあったのだ。戦前にだってそのような女性はいたのである――ついでに云うなら、嫁ぎ先の旦那が頼りなくて肌に合わないからと出戻ってきた坂本龍馬の姉・乙女姉さんみたいな例が江戸時代にすらあって……(以下略)――。


 しかし、あのオットリとした母と父がモガの彼女にこのような教育を施したとは思えない。というか、気質的にも似ていない(笑)。やはり両親の性格や教育とも無関係に発露する個人の性格というモノもあるのだろう。そして、皮肉にもそんな彼女が必ずしもモダンに公平にふるまうワケでもなく、好悪をムキダシにしてすずさんの不器用さや要領の悪さに対してキツく当たりもするのだ(汗)。


『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』で増量された男女間での不貞も香る機微!


 キツく当たるといえば、本作で追加(復活)された木造の小学校や机や椅子、シャープペンはなくナイフで鉛筆を削って学習する、スキマや木目の穴もチョクチョクある教室内での光景である。クラスでもアンタッチャブルと目されているヤンチャなガキがすずさんに対して攻撃的に当たってくる光景も、子供や人間一般の性格類型のバラつき偏差として実に示唆的ではある。
 コレと係り結びとなるかたちで、戦地に出征後に一時帰国したかつてのヤンチャくんがさすがに紳士にはなったモノのやや軽薄な感じで彼女の嫁ぎ先を訪ねてくる。迷惑がりながらも往時の同級生男子に距離感のないタメ口で接するすずさんに、マジメで温厚な旦那さんははじめてプチ嫉妬も覚えて、危険なことに離れの土蔵に泊めたヤンチャくんの許に「積もるむかし話もあるだろう」とすずさんを差し向ける複雑で矛盾した行動もこの増量によってより盛り上がったともいえるのだ――もちろん不貞行為は発生しそうで発生しない――。


 これと対になるかたちで追加(復活)増量されたのが、まだ空襲もない時期にすずさんが広島に趣いた際に道に迷ってさまよいこんだ遊郭で出会った女性で、この界隈の女性にかつて旦那さんがホレていた事実も発覚して、すずさんがそれを知って静かに嫉妬するシーンも実に味わい深いものがあった。
 初アニメ映画化の際には、この2編がカットされたことが原作ファンのお眼鏡には叶わなかったようである。それもわかるのだけど、2時間前後の映画でまとまりを良くするためには、この2編を本スジからの少々の脱線としてカットしたことも一概に間違っていたとは思われないのでビミョーなところではある。
 しかし、戦時下においても、人々はこのような男女間でのプチ嫉妬に突き動かされていたことを描くこと自体にも意義はあるのだろう。


――余談だけど、同様に戦時下でもヒトは動物的に静かなプチ色恋に邁進してしまうこともある情景を描いた実写映画に、今をときめく長谷川博己(はせがわ・ひろき)と二階堂ふみが主演で戦後70年記念で製作された、季刊『映画芸術』誌・編集長でも知られる脚本家・荒井晴彦が監督も務めた『この国の空』(15年)も本作と似たようなステロタイプでは捉えきれない当時の複雑な男女の心情へと踏み込んでいた――


終戦の日玉音放送で慟哭した当時の人々の心情を推測する……


 そして、終戦の日玉音放送。人々の多くは慟哭するものの、一部のヒトたちはアッサリと割り切って日々の仕事へと戻っていく。そして、特に意識が高かったワケでも特別に狂信的な軍国主義者でもなかったすずさんなのに、アッサリと終戦を迎えたことを憤って怒りの声をあげながらも泣き崩れる……。
 我々オッサン世代が子供時代を過ごした1970~80年代はNHK朝やTBSお昼の連続テレビドラマといったら、明治・大正・昭和を生きた女の一代記モノが定番であり、そこで近現代史を覚えたものである――でもまぁファッション&スイーツな連中には学校でいかに歴史を教えようともムダである(笑)。日本よりもはるかに歴史教育が盛んな韓国でさえ、K-POP女性歌手が歴史に無知を露呈して彼の国の民に叩かれまくっていたりするのがイイ例だ(爆)――。


 そのようなあまたのドラマで戦争が終わって平和が訪れて喜ばしいハズなのに、庶民大衆が泣き崩れている光景を観て、我々戦後的な価値観に良くも悪くも染まってしまった後続世代は子供ながらに奇異の念を覚えたモノであるのだけど、各作が揃ってこのように人々が泣き崩れた光景を描いたように、コレは圧倒的大多数にとっての歴史的な事実なのである。もっと云うなら将来への不安から家畜を屠殺したなんていう話までもがある。
 手塚治虫(てづか・おさむ)大先生のエッセイ漫画などでは、終戦の到来を喜び勇むような描写があり、それを価値判断として否定するものでもナイけれど、あくまでアレは特殊少数のインテリの感慨にすぎないのだ。それに歴史的に見れば敗戦国は戦勝国兵士に略奪・蹂躙されるのがフツーであって、当時のドイツのようにソ連兵により女性の過半がレイプされたり堕胎・自殺に追い込まれる可能性をも考慮していないあたりでやや浅い見識であったという、たとえ漫画の神さまとはいえ天皇化せず全否定もせずに相対化しつつマッピングもするような評価はあってもイイ気はする。
 よって、昭和10年代のガチな軍国主義教育を受けたいわゆる少国民世代はともかく、日本人の過半は洗脳的にベタに神国・日本を信じていたワケではないにせよ、淡々と国事に協力しようと励んでいたのに、それが報われなかったことが悔しくて悲しい、ウスウス敗戦することがわかっていても、実際にそれを突きつけられて足許の大地・価値観が揺らいでいくような虚しい想い、そして微量には来たるべき占領軍の横暴を恐れるといった感情が合算された末の人々の慟哭であった……と筆者は理解をする者である。
 そして、あのボケーっとして他人に対して害意を抱いたことがナイような善良なすずさんでさえも、良くも悪くも彼女なりに「お国のために」とフワッと意識下では気張ってはおり、それが貫徹されずに崩されたがゆえの怒りや失望や動揺の表出であったと解釈しているのだけど、この見解に固執するものではないので、異論があればもちろん受け付けたいとは思う。


 しかし、後世の価値判断はそれとして、終戦の日の光景のすべてを単純に手塚治虫――皆さんがおキライそうな読売新聞社長の渡邉恒雄(わたなべ・つねお)でもイイです(笑)――が感じたような解放の喜びの日として、たとえ善意や困惑からではあっても、後世の価値観で歴史修正(笑)をしているような論述や解説を近年では散見するようにもなった気がするので、このあたりは市井の一介のオタクにすぎない筆者ではあるけれども、それは良くも悪くも誤りだと指摘をしておきたい。


終戦の日に掲揚された太極旗(韓国国旗)をめぐっての論争について……


 そして終戦の日に、小さく写った街中に掲げられた太極旗――現在の韓国国旗――を見て、すずさんも事の半面を悟りつつ、自身の正義が手許から大空へと去っていき、自身の身体も朝鮮を含む外国の穀物でできていることと、しかして道義的な正義というよりも物理的な強者に屈してしまうことの理不尽と不甲斐なさを慨嘆するかのようなセリフも発しつつ、地面の側から泣き崩れた見事な表情演技のすずさんの顔を見上げるようなアングルで映像化して、ここが一旦のクライマックスともなって観客の感情を大いに揺さぶってもいく……。


 ところで、ここで一瞬写る太極旗が何を意味するかがネット論壇で論争になっていたことをご存じの読者もいるだろう。コレは日本の韓国併合の責任を問うものである。いや、コレから始まる三国人(朝鮮・台湾などの併合民)の一部過激派分子の横暴を示唆するモノだとする見解もある。かと思いきや、あの程度の描写では韓国併合の責任を問うモノにはなっていなくて生ヌルい、ゆえにこの作品は右派勢力に加担してしまう隙がある、国民的なヒット作となったのだから「あの時代」の諸相や広島を全的に描かなくてはイケナいと糾弾する見解までもがある。
 それぞれに一理はあると思し、各々が意見を表明するのはイイことだとも思うけど、すべてといわず全的に物事を描こうとすることは一作品・一映画だけでは困難なことなのだし、ナイものねだりだとも思う。やはり物語とは世界の一角を切り取ってその視角から眺めた程度で収まる程度のモノなのだろう。……という批判までをも原作漫画家センセイは先に見越していて、それゆえに『この世界の片隅に』というタイトルで最初から全力でエクスキューズをしていた可能性もあるけれど(笑)。


 ……などとエラそうに語ってきたけど、実は筆者は初見時にこのシーンに太極旗があることに気付いていなかった(爆)――どうぞリテラシー・読解能力不足を罵倒してやってください(汗)――。
 そうやって改めて考えてみるに、このシーンのセリフだけが、このナチュラルな作品においてはやや人工的で頭デッカチな説明セリフであり、浮いていたような気も改めて意識化されてきてしまう。
 他国の穀物うんぬんもそこに搾取的な意味あいを込めたいのであろうけど、良くも悪くも日韓併合による統治で皮肉にも農業生産が近代化されて米の生産量も倍増して日本への輸出で豊かになったどころか、国産米が押されていた話を思えば一概にはそうも云えない気もしてくる。


 むろん日韓併合自体が朝鮮・韓国の人々のプライドを傷付ける話ではあり、そこに常に一定の配慮や申し訳なさを持ちつづけることは必要だけれども、奴隷のようにへりくだって靴の底までナメるまでの必要はナイとも思うし、日本が併合しなければすでに大韓帝国皇帝が宮廷ではなくロシア大使館で政務を執っていたように代わりにロシアが併合していたのも間違いがない以上は、自身の所業を全肯定も全否定もしないお茶を濁した態度で処世をしつづけていくのがオトナの知恵だとも思うけど(汗)。


反戦映画ではナイからイイ」とする世評が意味するものとは!?


 そして、主人公家族は広島市街に住んでいるワケではないので、原爆の決定的な瞬間は描かれずに山向こうの「きのこ雲」として描写される。しかして、直接的な被爆被爆者は描かれないけれども、短身のすずさんよりもお姉さんじみている長身の妹さんの間接被爆による体調不良による実家での病床姿や、広島の焼け跡を数ヶ月が過ぎても行方不明の家族や恋人を探し求めて、そこで似た背格好の男女を見つける度に願望ゆえの錯覚で、そこかしこで「○○さん」「××さん」と人々が走り寄って呼びかけている夕焼けの光景には涙を禁じ得なくなってくる。


 本作は「反戦映画ではナイからイイ」とする世評が多い。筆者も正直この意見に同意する者ではあるけれど(汗)、やや言葉足らずで偽悪的な物言いなので、より正確に云うならば、


・「あからさまに声高に反戦を唱えるようなテーマ至上主義の作品ではないからイイ」
・「たとえ正しいテーマでも、それが上ずって空回りしていたり、押しつけがましければダメである」
・「静かに染み入って、内発的に反戦なり戦争を避けるための外交的な方策を考えようとなるモノならばともかく、左右が異なっただけに過ぎない『エラいヒトの意見に従いましょう!』レベルな言説だと、メタレベルでは右派とまったく一緒でしょ?」


という思想的な境地に、多くの日本人がようやく到達したからこその「反戦映画ではナイ」言説の隆盛だとも思えるのだ。


――かつて、妹尾河童(せのお・かっぱ)の小説『少年H(エッチ)』(97年)を左派が持ち上げるも、同じく左派であり我々の世代には児童向けTVドラマ『あばれはっちゃく』(79~85年)シリーズなどの原作でも有名な児童文学作家の山中恒(やまなか・ひさし)センセイが「戦後に明らかになったような後付け知識にあふれた少年が昭和10年代にいるワケがない!」と党派性に捕らわれずに一人一党の精神でコレを批判していたことをも思い出す――


 しかして、コレらの「反戦ではナイ」うんぬんをも、ベタで古典的な保守反動の右傾化やその兆候だと受け取って批判を連ねる御仁もいてナンともはやだけど、まぁそーいう左右にレンジの広い意見もあってこその全的、状況や言論の豊穣さだともいえるので、過剰にそれにケチを付ける気もナイのだが。


原作漫画家先生の真意は奈辺にあるのか、短編漫画『なぞなぞさん』を参照してみた


 それでは原作漫画家の真意は奈辺にあるのか? というところまで一般層は考える必要も義理もナイのだけれども、マニア的には考えたくなるのもわかる。
 作品の外での原作者の発言で答え合わせをするのは反則であり、ある作品について原作者の意図を離れた読み方をするのも自由であると筆者は考える者だけど、それでも云うなら10年ほど前の2009年に描かれた短編漫画『なぞなぞさん』(エッセイ&短編漫画集『平凡倶楽部』(10年)に収録)は参考になる。
 この作品は広島の被爆者を描いた『夕凪の街 桜の国』(04年)で名を上げた原作漫画家が、出版社や新聞社の才媛たちからインタビューを受けるも、この世的・実務的・実業的・中短期的には目端が効く仕事デキる系の女性でも、物事の二面性や多面性などの複雑系に対する粘り強い思考力には欠けている才女たちが、自身の複雑で曖昧で多義的で慎重な言動を、すべて単純化したキレイごとで小学生の感想文レベルの「戦争はイケナイと思いました」「広島は悲惨でした」という型にハマった言説として記事化して、戦前が正しいワケはナイにしても一理や同情すべき余地はあった的な言説を差し挟むと立ちどころに無視されてメモ化や記事化されない……といったエピソードを、原作漫画家の人柄もあるのだろう、決して糾弾調ではなく気張らずに静かに揶揄していくものでもあった。


 まぁ筆者個人も、左派的であろうが大文字のスローガンをためらいもなくロジック抜きに念仏のごとく唱えている輩は、右派的なスローガンを戦時中に唱えていた人種とメタレベルではまったく同じ危険な性格類型であり、T・P・Oが合わされば自分とは異なる意見の人間たちを魔女狩りするような人種なのだろうと考える者である。
 右派的なスローガンはとっくに賞味期限が切れた終わった思想だと認知されてはいても、左派的なスローガンは冷戦終結から30年が過ぎたのにいまだに終わったことにはなっていないから、それが個人がひとりで立つことを賞揚するのではなく左派方面からの全体主義――専門用語でファシズムならぬスターリニズムという――への加担にすぎない言説であったとしても、それに対する警戒感が一部であまりにウスすぎるあたりは個人的には気にかかる。


 昨2019年、アフガンの地で銃撃死された中村哲(なかむら・てつ)医師も、日露戦争での日本の勝利が彼の地の人々に勇気を与えたとか、タリバン占領下のアフガンの方が抜群に治安がよく、ブルカを脱がせることが女性の近代化だという言説を軽々に採用してはイケナイなどと、左派にとっては都合が悪い言説もしてきた一人一党の御仁であったように、この作品の原作漫画家・こうの史代(こうの・ふみよ)女史もまた尋常ではない見識の持ち主のようであり、個人的には敬服もしている――キワどい微妙なホンネは隠したりボヤかしたり匂わせたりもしているようではあるけれど(汗)――。


原爆投下は当時でもハーグ陸戦条約違反だったとの法論理が、未来における国際法の成熟、未来の戦争における民間人殺傷への抑止になりうるのでは!?


 ただまぁ、「真珠湾奇襲攻撃」があろうが「広島が軍都」であろうが、軍人や軍事施設に限定ではなく民間人をも殺傷する「空襲」や「機銃掃射」や「原爆投下」の類いはあってはならなかったという言説は、もっと活発になってもイイのではなかろうか?
――近年では左派の側でも社会学者・古谷有希子のように屈託なく原爆投下を正当化する御仁までもが出てきたけれども(汗)――


 モーゼの十戒ならぬ近代の法律は人間が取り決めたルール・フィクションにすぎないし――そのワリには王権神授説ならぬ民権神授説的な言説も、「神」や「天」といった仮想的で古代・中世的な存在を織り込んでいる時点で近代的ではナイように見えるのが子供のころから気に喰わなかったけど(笑)――、だからイザとなれば「人権宣言」の類いなどもしょせんは紙切れ1枚ではある。


 だとしても、すでに20世紀初頭の1907年の第2回万国平和会議で採択されて1910年に発効した国際法規「ハーグ陸戦条約」にあの時代でも各国は批准していたのであるからして……。
 そもそも「法律」とは「性悪説」を前提とはしていても、それを作れば全員とはいわず大勢はそれを守るだろうと想定している時点で、半分は「性善説」でもある性善性悪あい半ば拮抗したモノなのだし、個人的な好悪になりがちな裁定よりかは法律に基づいた裁定の方がよりマシなモノには決まってはいるのだ。


 そうである以上は、国際法に血肉を通わせてそれを遵守する、イイ意味での風潮・空気・同調圧力(笑)を神さま抜きでも国際社会が100年200年500年というスパンで醸成していくためにも、戦争が起きないに越したことはナイにしても「戦時国際法の存在自体が戦争を認めることになる!」なぞと堅苦しい原則論は述べずに、それでも戦争が起こってしまった場合のことまでをも想定して三重四重五重でセーフティネットを、「最悪」を「次悪」に留めるためにも戦争にもルールを作って、その法的論理で民間人を殺傷する「空襲」や「原爆投下」を「仕方がなかった」「戦争とはそーいうモノである」では済まさずに、当時においてもすでに「戦争犯罪」「戦時国際法違反」であったのだ! と人々は批判をすることで、未来に起きうる惨劇をも先回りして極力減らすべきなのである!
 使えない空理空論のキレイごとでいきなり「世界平和を!」とガナるのではなくって、そーいう地道な具体論の積み重ねにより、外堀を埋めていくかたちで国家よりも上位の調停理念や国際秩序を徐々に構築して、世界を安定・平和へと近付けていくべきなのである! と個人的には考えるものの、それはまぁ本作のようなフィクション作品の役目ではなく、学問やジャーナリズムの役目となるのだろう。


(了)
(初出・当該ブログ記事~オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.84(2020年3月8日発行)……に収録予定が、コロナ・ウイルス騒動による同人誌即売会自体の開催中止により発行時期未定・汗)


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  https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990912/p1

マクロスプラス MOVIE EDITION』(95年)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990904/p1

超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(84年) ~シリーズ概観&アニメ趣味が急速にダサいとされる80年代中盤の端境期

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990901/p1