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【推しの子】・シャインポスト・幻日のヨハネ・アイドルマスターシンデレラガールズU149 ~異形の大傑作・王道・小児・異世界スピンオフ! アイドルアニメの進撃とまらず!

『アイドリープライド』『ゲキドル』『22/7』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』『おちこぼれフルーツタルト』 2020~21年5大アイドルアニメ評!
『22/7』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』『音楽少女』『Re:ステージ!ドリームデイズ♪』 ~アイドルアニメの変化球・テーマ的多様化!
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 ついに、怪獣映画『ゴジラ -1.0(マイナス・ワン)』(23年)などを手掛けた、かの山崎貴カントクも所属するCG製作会社「白組」を製作スタジオとして、2Dセル画ライクなCGアニメと化したアイドルアニメ『アイドルマスター』シリーズ(11年~)の第3チームを描いていた2023年秋アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』(23年)が完結記念!
 同じく3DCGアニメ映画『GODZILLA 怪獣惑星』シリーズ(17~18年)などを手掛けたCG製作会社「ポリゴン・ピクチュアズ」を製作会社として、第4チームを描いた2024年春アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』が劇場でも先行公開中記念!
 2023年大晦日のNHK『紅白歌合戦』では、アイドルアニメ『【推(お)しの子】』(23年)の主題歌「アイドル」を、YOASOBI(夜遊び)当人が歌唱記念!


 とカコつけて……。アイドルアニメ『【推しの子】』(23年)・『シャインポスト』(22年)・『アイドルマスター シンデレラガールズ U149(ユーいちよんきゅう)』(23年)・『幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-(げんじつのヨハネ サンシャイン・イン・ザ・ミラー)』(23年)評をアップ!


『【推しの子】』・『シャインポスト』・『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』・『幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-』 ~異形の大傑作・王道・小児・異世界スピンオフ! アイドルアニメの進撃とまらず!

(文・T.SATO)

『【推しの子】』

(2023年春アニメ)
(2023年8月6日脱稿)


 黒髪ロングでその両眼の瞳を大きな六芒星で表現されることで、身近な妹系のアイドルなぞではなく、圧倒的なスター性を感じさせるメインヒロインのビジュアル!


 この「推(お)し」という死語のような和語をアイドルを応援する意味で多用しだした最初は、00年代末期だったと記憶する――80年代だとの説は信じない(笑)――。


 海外でも日本の深夜アニメがほぼリアルタイムで配信される現状が後押ししたことによって、今をトキめくYOASOBI(夜遊び)による本作主題歌「アイドル」の世界的な大ヒットでも注目を集めている本作。大勢がホメている作品なぞはホメたくない! と思ってしまうヒネくれ者の筆者でも、本作はスナオに脱帽級に面白かった!


 本作を純然たる「アイドル(歌手)アニメ」と括ってイイのかはビミョーだ。しかし、ここ10数年ほど隆盛を極めてきた「アイドルアニメ」や、その文法に乗った上での換骨奪胎作でもある。
 そして、そういった流通もさせやすい意匠・パッケージの上で、人間の繊細な機微を静かに描いていく。あるいは、メリハリを持ったストーリーを動的にも紡いでいく。それらの3要素の鼎立(ていりつ)といった意味でも、実にクレバーかつキャッチーな手法を採用している。


 とはいえ、特定のアイドルに限定して描いているワケではない。一応のナマ身というのか、未熟で虚栄的で人格的な偏りもある、どころか壊れてすらいる、時たまには常識人も混在しているアイドルや、その候補にまつわる諸相!


 彼女らはルックスには恵まれているので、TVドラマや映画にも出演を果たしていく。そこで広がる舞台と人間模様。同年代の若手女優や意識高い系の子役。アイドルの周辺にあるマネジメント・興行・映像業界・スポンサー。そして、そんな虚業の職業に集ってしまうような人種たち。


 我々オタのように一日中、書斎に引きこもって書きモノだけしていても苦にはならない人種たち(汗)とは真逆な連中! どころか、机に座ってのデスクワーク・サラリーマン事務職などはできないであろう一点集中と放心、注意欠陥多動性な性格類型たちによる堅実さとは程遠い生きザマ。
 虚構の構築にこそ耽溺してしまう性向。芸事などの修練への執着。その一方で、人生や仕事をナメくさった身過ぎ世過ぎの単なる足掛けだけの御仁なども登場してくる……。


 奇人・変人・珍人・怪人が大集合の世界ではある。しかしそこにも、近代的な合理性とは程遠くても(笑)、人の世の不条理も含めた何たるかが垣間見えてこなくもないのだ。



 前世の記憶を保ったまま、再び現代日本に赤ちゃんとして転生した男性主人公といった基本設定は、大ウソの虚構そのものだ。しかし、そこで描かれている事象は、ヒトの世の真実を穿(うが)ってもいる。
 赤ちゃんや幼児の身の彼はその冷徹な目線で、父親が誰なのかも分からない産みの親のアイドル美少女を観察。マネージャーの子供だと偽って、ドラマや映画の仕事にも同伴していく。


 欧米では監督よりもプロデューサーの権限が強くてフィルムの編集権まで持っているけど、たとえ演技がウマくて輝いていても、バランスの問題で主演女優を喰って見えてしまえば、各位の合議の上でこのアイドル美少女の出番は編集で大幅にカットされてしまうという現実。
 幼少のみぎりで演技に没頭、ウマく演じられなかったり、共演相手の演技の方がウマいと思えば、悔し泣きしてしまう子役女優の逸話にも心打たれた。


 ついには高校生へと成長した男性主人公は、落ち目となっていたこの子役女優と再会。演技ができない若手男性アイドルが主演する低予算の配信ドラマのヒロインに、彼女を起用して少しでも演技面では底上げしようとする製作意図を知る。
 そこで、男性主人公は撮影現場で作為を加える。論理的には同一のシナリオであっても、たとえ虚構であっても、真に迫らせることで、視聴者の心を動かし世評をアップさせて、女性の原作マンガ家にまで一縷の涙を流させるのだ……。



 欧米でもネット上の誹謗中傷で数十名もが自死してもなお放映が継続している、若い男女に同居生活を送らせてカップル成立の成否を見させるリアリティーショー番組。
 演技と本気と人気取り。剛腕な芸能事務所社長に罵倒される善人マネージャーを助ける意図で、男子に迫る快活女子を演じてみせるマジメな少女女優も登場する。
 それが演技だとは知らない視聴者によるネット上での中傷。よせばイイのに彼女もエゴサーチ……。明らかに例の事件に着想を得たという意味では不謹慎だとの批判もあってイイ。しかし、毒もあるフィクションとしては大傑作が爆誕
 もちろん、イイ意味でさらなるフィクションへと転じることによって、バッドエンドは回避されてはいる。けれど、世の問題を描いて何かを感じさせつつ、最後には解決されてほしい……といった願望を疑似実現させるのもフィクションの役目なのだ。



 むかしのマルクス主義者は「すべての物語は資本主義的ブルジョワ的退廃」だとして否定した。20世紀の哲学者のサルトルも「飢えた子供の前では文学は無力だ」として「文学の放棄」を訴えた。


 しかし、人間一般は「虚構」を楽しむ。アイドル・スポーツ選手・文化人・ヒーロー・異性を「推し」てしまう非合理な心性も残る。中毒しない範疇で、それらと付き合うべきなのだ。
アイドル (完全生産限定盤) (特典なし)

TVアニメ「【推しの子】」オリジナルサウンドトラック
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.86(23年8月12日発行))


『シャインポスト』

(2022年夏アニメ)
(2022年12月25日脱稿)


 実に狭いスペースのライブ会場で活動する地下アイドル3人組モノなのか!? と思えたものの、一応は芸能事務所に所属している3人ユニットの美少女キャラたちがじょじょにサクセスしていくといったストーリー。


 といっても、武道館を数万人単位で埋めるのではなく、来年2023年夏に閉館が決まった中野サンプラザの数千人程度のコンサートホールを満席にすることを目的とする程度で、フィクションなりの現実味も出せている良作である。


 本作もまずメインの3人のアイドル美少女が魅力的だ。実在のアイドルグループ・AKB48(エーケービー・フォーティエイト)的に女子高生の制服をモチーフに、袖なしベスト&ミニスカの部分を赤や青のチェック柄とした共通ファッションも、イマ風アイドルユニットとしての記号であっても可愛らしい。デザイン自体は繊細な描線でも低頭身のお人形さん的ではなく、デッサン骨格しっかり系ともなっている。


 メインでセンターの女子は、3人以上の美少女ものではテンプレである華もある元気女子。しかし、そこで変化球。その明るさや機転は半分は生来のモノでも、半分はイイ意味での演技や他人への気遣いでもあり、フツーの常識人の内面を持った人物であることも明かされていく。


 そして、そんな彼女の人格も見抜いて敬服しつつも、彼女に対する負け意識も持っていることが明かされていくサブヒロインがマジメそうな黒髪女子。
 やや涼し気な可愛いらしい小鳥のさえずり声かつ優等生タイプだけど、文字通りの優等生の出自。お勉強とは異なり、努力がそのまま成果に直結しないことが人気商売の世界であることを実地で知って落胆するも、ムダに反発することなくカラッと諦観しているサマもまたリアルなのだ。


 自分に対する自信満々な女王さま的な決めゼリフがお約束でも、少々ガクガクブルブルしているサマも透けて見える金髪少女は、我々オタク視聴者への強さ&弱さの同時ウリによるアピールなのかと思いきや……。
 ガチで気弱であり、人前どころか観客としてライブ会場に足を運ぼうとも思っていなかったほどの弱者であった過去でも、肉付けをしていく。


 そして、そんな内気な金髪少女の長所を活かして、彼女をブレイクさせようと特定歌曲のセンターに抜擢する若手男性プロデューサー! さらに、彼女の周囲や同じ芸能事務所のまた別のアイドルチームたちが金髪少女をサポート! ステージを成功させていくサマには、シニカルに観てしまえば「そんなにウマくいくワケがない」ファンタジーではあるけど、「弱者や凡人にこそ成功・勝利してほしい!」といったファンタジーとしては、涙なしでは観られない!


 むろん、小さな成功を重ねていくこともまた広義でのご都合主義である。しかし、随所にクレバーな言い訳も交えられている。マイナーアイドルマニアは「ラーメンは屋台にかぎる」的な「先モノ買い」としての自意識・プライドを持った「通」なのでもあって(笑)、「アイドル(人物)評論家」的な多弁症の人種たちでもある。そこに仕掛けて、かつ彼らもそれをわかってソコに積極的に乗っていくことによって、その成功の伝播にリアリティーも出していくのだ。


 2010年代以降、定期的に製作されるようになった、我々オタク向けの深夜ワクの美少女アニメの変種としてのアイドル(歌手)アニメ。といっても、フェミニズム陣営がするような「男子または弱者男子にとっての都合がよい女子像」といった批判もまた半分は正しいとは思うものの、実際には女性オタクや一般の女性層まで喰らいついたり、広義での部活モノや競技モノといった物語的な普遍性もあったことから、ヤンキーDQN(ドキュン)的なライト層にまで受容されるような大ヒット作まで登場してきた。その意味では、一般的なオタ向け作品よりも実は拡がりがあった「開けたジャンル」でもあったのだ。


 そして、アイドルアニメはウマく作れば、その歌曲のCDや声優自身が歌唱する3次元での大規模ライブに物販でも稼ぐことができる。とはいえ、歌曲の製作やその作画やCGに高予算がかかるハイリスク商売ではある。
 しかし、コンスタントに製作されている事実を鑑みれば、すべてといわずとも程々の収益は達成されている作品が多い! といったことでもあるのか!?



 今から思えば相対的にプレーンな『アイドルマスター』(11年)や『ラブライブ!』(13年)、ドラマ性を重視した『WakeUp,GIRLS』(14年)や『アイドリープライド』(21年)、各話が良質な単発ドラマであった『22/7(7分の22)』(20年)、キモオタも含むファンにも焦点を当てた『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(20年)。


 アニメであってもナマっぽい内面を持たせた作品もあれば、良い意味で「可愛さ」や「コミカル」といった「記号」に徹していた『おちこぼれフルーツタルト』(20年)や『音楽少女』(18年)に『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』(19年)等々もあった。


 振り返ってみれば、最終的にはアイドル公演の盛り上がりに収斂していくも、その前段の助走台は人間ドラマ寄りであったり、ドラマ薄めの女子たちのキャッキャウフフを愛でることにあったり、コミカルなギャグ見せ主体であったりして、アイドルアニメもまたその内部は一括りにはできない実に多彩なモノでもあったのだ。


 本作の脚本は深夜アニメ化もされたライトノベル俺を好きなのはお前だけかよ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220724/p1)の原作者・駱駝(らくだ)。敏腕編集者&ゲーム作家の注文での本作ラノベや脚本参加のようだ。しかし、実に器用に仕上げてもいる。
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(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.84(22年12月30日発行))


アイドルマスター シンデレラガールズ U149(ユーいちよんきゅう)』

(2023年春アニメ)
(2023年4月26日脱稿)


 すっかり定着して爛熟の極みにある2010年代以降のアイドルアニメ(育成・音楽ゲーム)の元祖としての存在である『アイドルマスター』シリーズ(11年~)の最新TVアニメ。
 「U149」は「アンダー15歳」の意味かと思いきや、ググってみると「ユーいちよんきゅう」と読ませて、「身長149センチ以下」を意味していた(爆)。


 イジワルに見ればヤバいよなぁと思いきや、実作品には淫靡でフェティッシュな目線はない。幼女の方にも彼女たちから迫ってくるような性的な主体といった気配はない。


 とはいえ、そうなるとナイものねだりで、それが全然ないこともまたドーなんだ? と天邪鬼にも思ってしまったり(笑)。
 けれども、それらを導入してしまうと往年の深夜アニメ『こどものじかん』(07年)のように、小学生女子だからオブラートに包まれて鼻につきにくいけど、「社会」や「公共」よりも「恋愛」や「異性」に依存! といった感じで、コイツらは高校生になったら援助交際とかしそうだよな……(偏見ですか?)、と思わせてしまってもマズいけど(汗)。


 まぁ、ここまでアイドルアニメがコンスタントに途切れなく製作されている時代で、『アイドルマスター』自体も派生作があまた存在する以上は、王道よりかは差別化、かつキバってもいないといった作りなのだ。


 10年前の『アイドルマスター』初作(11年)や『ラブライブ!』初作(13年)などの明るく元気な女子をセンターに据える! といった王道手法も衰退。
 元気女子が主役でなくても相応に人気を集められている光景を見ていると、センター少女に影があった『Wake Up,Girls』(14年)も今ならば流通する気がして、同作のファンとしては残念にも思うのだ。作品それ単独の質ではなくて、慣れから来る受け手の側の価値基準の変化とのマッチングなどもあるからネ。



 本作の主人公である高学年女子小学生も、元気女子ではなく不愛想ではないけど特にニコニコと愛想もふりまかず、ルックスと歌唱力に少々恵まれていたから芸能事務所に所属して、マジメだからお仕事をする以上はキチンとレッスンにも励む……といった印象。エラぶったり自己陶酔したり女王さま的なところも皆無のややサメた常識人でもある。


 筆者もナチュラルにその人物造形を受容しているけど、10年前であれば「個人の好みはともかく、『商品』としては地味なのでは?」などとケチをつけたところであろう。
 しかし、同季に妊娠・出産するアイドルが登場する深夜アニメも登場してしまった今(爆)、もう「アイドルアニメ」も「異世界ファンタジーアニメ」などとも同様に、「アイドル」を看板・経路にして多種多様な「現実社会」を描いていく……といったことになっていくのやもしれない!?


 もちろん、そんな彼女もさらに年下の幼女タレントたちには慕われている姿も描いており、彼女が単なる冷徹なアイドル・ロボットではなく人望もあることを描きつつ、他のキャラクターとのドラマ的な接点も確保。本作や初作とも異なる別メンバーを主役に据えた「U149」抜きでの『アイドルマスター シンデレラガールズ』正編(15年)や無印初作における、アイドル集団をマネッジメントする若手男性プロデューサーキャラクターは、ゲームではプレイヤー本人となることからか、個性・人物像・血液温度は抑えた感じの人物造形ではあったけど、本作では暑苦しい新人若者社員クンが配置されることで、そこで作劇的なバランスを採っているとも推測ができる。


 美少女キャラが多数いるという意味では、広義でのハーレムアニメだともいえる。しかし、オッサンオタク的には80年代中盤に隆盛を極めたアイドルグループ・おニャン子クラブで、10数名なり数十名の女性アイドルをそろえることで、男性の女性に対する多種多様なニーズ、同一個人の中にもある複数のニーズにも応えて、顧客に飽きられてしまうことを遅延させていた効果を、オタクジャンル側でも採用したものでもある。
 端的には、マンガ原作の深夜アニメ『魔法先生ネギま!』(05年)で30数名の女子同級生を登場させて、個々に同一歌曲も歌わせて商売したあたりが画期であろう――AKB48商法の原点で、同じくキングレコード――。



 ただし、『アイドルマスター』諸作は他のアイドルアニメとは異なり、本家のゲームの援護射撃が主目的であるのか、アニメ版のドラマ性は強くはないようには思われる。受け手の側もそこは百も承知だそうだが、筆者などはそこに物足りなさを感じてはいる。


 でもまぁ、それは殺人強盗ほどの罪でもないし(笑)、天下国家には無関係な単なる嗜好品である以上は、


アイドルマスターvsラブライブ
●AKBvsモー娘(むす)
おニャン子vs桜っ子クラブ
ピンクレディーvsキャンディーズ(笑)


 連綿とつづいてきたファンの間での闘争に、過半の人間は黙って墓場まで持っていけずに、形だけでも敬意を表せず、相手を劣位認定して争いたがるものであるから(汗)、「原理的にも人類には戦争の根絶など不可能なのだ」と絶望するのか、「そんなことが争いのタネになるなんて日本は平和だな」と達観するのかは、悩ましいところだ。
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(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.85(23年5月3日発行))


『幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-(げんじつのヨハネ サンシャイン・イン・ザ・ミラー)』

(2023年夏アニメ)
(2023年8月6日脱稿)


 人気アイドルアニメのブランド『ラブライブ!』(13年)シリーズの第2グループを描いた『ラブライブ! サンシャイン!!』(16年・17年)のレギュラー美少女キャラクターたち9人を、スター・システムとして活用して、そのルックスや性格設定だけをそのままに利用して、異世界を舞台としたファンタジー作品である。


 加えて、この9人の中でも主人公は交代。


 原典の中では占い好きで小悪魔ゴスロリファッションに身を包むも、恥ずかしがりやで気が弱くて板に付かずにキマっていないことで、視聴者から脱力系の笑いを取ることが常套となっていた人気キャラ・ヨハネこと善子(よしこ・笑)が主人公として昇格している。そういった試み自体には賛成なのだ。


 しかし、できあがった作品については……。


 ウ~ム。ナンとも弛緩(しかん)した、まったりとしたノリであり、ツカミには弱い作品が俎上に上がってきた印象ではある。


 原典の舞台である静岡県は「沼津」ならぬ「ヌマヅ」。「都会」ならぬ「トカイ」(笑)。舞台や設定は違っても、性格設定は同じなので、おなじみのいかにもなリアクションを見せてくれて、それに応じたドラマも紡がれていくような作品が観たかったのに……。


 もちろん、観光地アニメ・ご当地アニメといった面が本作にはあるので、その意味では「ヌマヅ」が舞台であることも間違ってはいないのだ。であれば、もっと露骨に「ヌマヅ」の土地のアレコレを読み替えて、ここはアソコだ! そこはココだ! といった要素を全面的に押し出してほしい気もする。


 まぁ、そこまでキバらずに、とにかく「まったりグダグダとした南海の楽園ノリで作ろう! 楽しもう! ファンを引き込もう!」といったコンセプトであるのかもしれない。その意味では筆者のツッコミもヤボである可能性はあるのだ。
幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR- 7 【特装限定版】 [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.86(23年8月12日発行))


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『キボウノチカラ ~オトナプリキュア’23~』評 ~社会人となって世にモマれる往年の少女たち。再会・歓談・変身・バトルでのカタルシスも忘れずに再現!

(文・T.SATO)
(2023年12月23日脱稿)


 2023年にはまる20作を数えることになった、少女戦士たちが往年の大人気TVアニメ『ドラゴンボール』(86年)並みに空中を超高速でグルグル前転しながらパンチやライダーキック(笑)をお見舞いして、質量バランスやスピードとの物理法則を無視して敵の巨大怪獣をグイグイと高速で押し込んでいったりしながら戦ってみせる快感をも描けている、女児向け戦闘ヒロインアニメ『プリキュア』シリーズ。
 その第3チームにして、通年で数えれば4年目&5年目の作品に相当する『Yes! プリキュア5(ファイブ)』(07年)とその続編『Yes! プリキュア5 GoGo!』(08年)。


 放映終了15年の歳月を経て、その5人ならぬ6人(笑)の少女戦士たちが成人して社会人となって、世にモマれている姿などを描いた作品が、NHK教育テレビの土曜夕方の子供番組ワクにて登場! 我々オッサンオタクにとってはつい最近の作品に思えてしまうが、それは老害だからであって、世代人にとっては充分に琴線を刺激してくる懐古対象ではあるハズだ。
 しかし、15年が経ったワケであるから、彼女らはちょうど30才のハズだけど、描かれ方としては20代の中盤といったイメージではある。婚期うんぬんといった話を出さなくてよい年齢設定としては、適度なチューニング・微調整だともいえるであろう。


 NHKにて放映されること自体も、アイドルアニメ『ラブライブ!』(13年)の第4チームを描いた『ラブライブ! スーパースター!!』(21年)や、民放で放映されていた人気アニメ『進撃の巨人』(13年)の第3期(18年)以降がNHKにて放映されていたことを思えば、もはや驚きではない平常運転でもあるのだ――まぁ、NHKの上層部が自局のTVアニメのラインナップを把握しているとも思えないし、下任せではあろうけど(笑)――。



 とはいえ、アマチュア同人誌の二次創作などでは20世紀のむかしから相応によくあったようなネタではある。日本のアニメの表現の幅が広がって爛熟しきった現在、小さな驚きはあっても意外の念に打たれるといった域にまでは行かない。凡人オタクでも思いつく、ワリとフツーな発想・着想の作品といった作品である……といった感は、多くのオタクたちが抱いているとは思うのだ。
 むろん、これは企画そのものへの批判ではない。企画それ自体をもってしてホメてしまうような批評モドキではなく、真にその企画意図が実作品において結実したか否かの成否の方を、看板倒れか否かの方を、全員とはいわずとも大勢のマニアが必然的に気にする風潮になったことをも意味するからだ。


 とはいったものの、そんなに重たい作品でもない。近年は深夜ドラマや実写映画でリメイクもされた弱小会社の青年営業マンの苦悩を描いた往年の青年誌マンガ『宮本から君へ』(90年)や、大学生たちのその後の社会人2年目の姿を描いてみせた山田太一脚本の名作人気TVドラマ『ふぞろいの林檎たちⅡ』(85年)などのような


「現実世界は実にキビしい! 一応の希望の職業には就けたようには見えても、相手の意向・経済状況・価値観の相違などもあるので、個人の理想や努力が叶うとはかぎらない! 単純に叶えばイイといったものでもない!」


といった価値相対化や、実に不本意ではあっても自分も絶対正義ではない以上は、相手や状況との妥協・折れてみせることの必要性! などといった描写もあって、そこにてプチ重たい共感を呼びはする。


 しかし、ドラマが重たくなりすぎそうになると、かつての仲間たちとも偶然の再会(笑)などを果たすことで、彼女らの少女時代とも変わらぬ素の人格や振る舞い方での酒盛りなどもはじまることによって、作品の明るさも担保されてはいる。


 加えて、本作の製作決定の第一報時には「敵のゲスト怪獣・怪人とのプリキュア戦士に変身しての戦闘などは本作では存在しないのか?」などとも想起されたものだ。
 しかし、結局はナゾの敵怪人たちやワケありな悲壮感を背負った女敵首領などが登場してきて、#1のラストでは戦闘ヌキでの「次回につづく」とはなったものの、#2では主人公女子の熱い想いに劇中では彼女らの成長過程でいつの間にか消失していたらしい変身アイテムも復活を果たして華麗に再変身!


 『プリキュア』諸作のシリーズ序盤などとも同様に、#1から一度に全員が変身できてしまう東映スーパー戦隊のパターンではなくて、各話ごとにまたひとり、あるいはふたりが変身能力を復活させる! しかも、集団合体ワザや主役プリキュア戦士ではなく、各個人の必殺ワザだけでも敵怪人を倒してみせることによって、原典とも同様に各個人ごとの強さ・カッコよさ・有能さをも見せつけている! それらのシーンにおいては、気分はすっかり往年の『プリキュア5』ともなっていた。


 しかも、変身の直前には原典時代の14才の少女の姿になぜだか戻ってしまって、それ以降の変身・名乗り・必殺ワザのシーンなどは、往年のバンク映像やBGMの流用なのである(笑)。もちろん、1クールしかないTVアニメ作品なので、作画枚数や撮影などの手間が最もかかってしまうコレらのシーンの新規作画を省略したいという台所事情もあったのであろう。


 それと同時に、10代の少女の姿に一時的に戻ることによって、マニア視聴者や年長視聴者であれば、


「超人めいたフィクショナルな存在へと変身できるためには、原始キリスト教めいた『純真な幼な子のようでなければ天国へは行けない』」


といった含蓄もある深読みをそこに勝手に想起もしてくれるであろう……といった期待もあったのであろう。その意味ではこの目論見も成功している。



 しかし、このテの往年の子供向けアニメを得意げに論じてしまうことには憚(はばか)りも覚えてしまうのだ。すでに同作の原典放映時でもイイ歳であったオッサンの筆者なぞが、往年のメインターゲットであった当時の女性ファンをそっちのけで作品の内実について暑苦しく語ろうとする行為自体が、


「オジサンたちがわかった風なクチをきいて、ワタシたちのテリトリーに勝手に入ってこないで! 美しくなくてキモいから! 穢れるから! しかも『コレじゃない』感の批評だし! もっとキラキラだったし! ファッションやスイーツの魅力についても語っていないし!」


といった感覚を惹起しているであろうといったことは、容易に想像がついてしまうからだ(汗)。


 キモオタの典型である筆者なぞも、近年のオタクの全員とはいわずともワリと大勢がそうしているように、「日アサキッズ」ワクの東映ヒーロー特撮や『プリキュア』シリーズは「大スキで……」といったことではなくて、「お勉強」や歳若い野郎アニオタとの話のネタやキッカケの「共通言語」にもなるであろう……と思って観賞するようにもしてきた。……不純に思われてしまったならば、返す言葉がないのだけど。そして、あまりにも自分に合わないと思えた『プリキュア』作品については、途中で視聴を打ち切ったものも多々ありはするものの。


 そもそもオタク趣味とは、「現実社会の軽佻浮薄さとはオルタナティブ(代替的)なモノを求めて、宣伝や流行に乗せられるのではなく、自分のセンスだけでオタクの世界を選び取った! といったものであったハズだ。
 しかし、これだけジャンル作品の数が膨大となって多様化までしてしまうと、筆者も含めてネット上での事前宣伝において大作・話題作然としている作品に、どうしても「長いモノには巻かれろ」的に吸い寄せられていったり、「バスに乗り遅れるな!」「勝ち馬に乗れ!」的なかたちで作品チェックをしているようにもなっていったり、「ムラ世間」的に同好の士と話を合わせるための作品鑑賞になっている面も否めないのである。
 それは半ばは必然的な現象なのだとしても、そのことも自覚しておき、状況の流れに対しては少しでも棹を刺していたいものである。……むろん、世間の人気作品や高評価作品にムダに反発をしてみせれば、それだけで真理にたどりつけるといったモノでもないので、そういった反対方向におちいってしまうことにもまた注意が必要なのだけど。


 原典の『プリキュア』の最初の3年間の3作品は基本、メンタイトルに『ふたりはプリキュア』と銘打っていたので、メインキャラの女子中学生の少女も2人だけだとしてきた。通算2年目の作品には3人目の少女戦士がいたりもしたけど、プリキュアとは別カテゴリーの少女戦士だとすることで(笑)、看板には偽りはないことにしていた。つまり、その時点では世間の記憶がまだ新しかった5人戦隊ものでもある往年の女児向けアニメ『美少女戦士セーラームーン』(92~97年)との差別化を執拗に図っていたのだ。


 しかし、第2チームである『ふたりはプリキュア Splash Star』(06年)が子供向けの範疇での実にていねいでマイルドでも良心的かつ高品質な児童ドラマ作りと内容面で、筆者も含めて年長マニアたちには高い評価を誇ったものの、肝心の女児たちは実に移り気で、ドラマの外形面はともかく深いところは良くも悪くもロクに理解はしていなかったのであろう(笑)。
 オッサン世代の例でたとえれば、『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)の直後の『ジャッカー電撃隊』(77年)や、『がんばれ!! ロボコン』(75年)の直後の『ロボット110番』(77年)、『超電磁ロボ コン・バトラーV』(76年)の直後の『超電磁マシーン ボルテスV(ファイブ)』(77年)のように、露骨な「二番煎じ」に見えていたようでもあったのだ(……世代人でなければわかりにくい例えだとも思うので、ゴメンなさい・汗)。
 加えて、同時期にまた別の大人気女児向けカードゲーム『オシャレ魔女ラブandベリー』が勃興したがために、作品それ自体の罪ではないのだけど、玩具売上や映画版の興行収入もガクンと低下して歴代シリーズのワーストまで記録している。


 それら直前作『Splash Star』での事態も受けてか、本作の原典『プリキュア5』では、露骨に5人体制の『セーラームーン』化を果たしてもいる。映像面での華も増やして、5人(6人)もの少女たちが集うことによって必然的に日常場面でのにぎやかな姦(かしま)しさ・明るさも増量させているのだ。
 しかし、メインの5人(6人)を描いているだけでも尺が持つために、半面ではそれまでのシリーズでは描かれてきたメインキャラの両親や弟などもカラめたミニマムな小市民的ホームドラマ要素はほぼ消失している。


 メインキャラが2人だけであれば、「熱血元気」と「大人しめ」といったキャラクターシフトが有効ではある。しかし5人ともなれば、「熱血元気」と「大人しめ」の要素は脇キャラの方へとふって、往年の『セラムン』TVアニメ版以来は定番・王道とも化している、センター主役女子には「元気」であっても暑苦しいまでの域には行かずに爽やかさを、しかして仲間たちほどの特技はなくても「癒やし」「人望」「人徳」といった性格設定が「差別化」として与えられることによって、特技や能力とは異なるものとしての「人間性」の理想とは何であったのか? といったテーマをも含意ができてくるのだ。


 とはいえ、そういった小ムズカしい話ではなく、5人(6人)の実に何気ない自然で無意味なやりとり・日常トークだけでも実に楽しく観ていられたものだ。
 年長オタクからすれば、従来のシリーズが両親キャラなどの視線も介在することによって上から目線で見守る「娘」のような対象となっていたのに比すれば――もちろん、メインターゲットの女児層がそういった目線で観ていることはアリエないにしても――、原典『プリキュア5』ではアイドルグループをペンライトを振って応援したくなるような「萌え」的な目線で見てしまうようなニュアンスなども強まっていたとは思うのだ。……優劣の話ではないのは、くれぐれも念のため。


 良くも悪くも東映動画東映アニメーション)作品は、20世紀のむかしから健全経営に徹しており動画枚数にもキビしい制限があったのは有名な話であった――各話で3000枚弱であったとか。それにしては往年のアクションアニメ『ドラゴンボール』などは実によく動いているようにも見えたものだけど、「演出」の勝利といったところであろう――。
 同じく東映製作でかつてのベリー・スペシャル・ワン・パターンな作劇が21世紀以降の今では実に複雑化したストーリーともなってしまった「スーパー戦隊シリーズ」作品などとも比してしまうと、『プリキュア』作品は相対的には実にシンプルな各話ストーリーでもある。
 複数人の変身・名乗り・必殺ワザのバンク映像なども各話で延々と流していることによって、批判としての意味ではなく云うのだけれども、原典『プリキュア5』にかぎらず『プリキュア』諸作の正味のドラマ部分の尺数は実に短い(笑)。しかし、ツボや普遍や王道は押さえてはいるので、シンプルでもフツーにナチュラルに面白いし、子供向けとしては適度な塩加減だとも思うのだ。


 その意味では、『プリキュア5』シリーズの後日談でもある本作も、基本的には原典の「明るさ」や「アクション」も見事に継承されている。本作の原典作品を知らない現代の女児層が本作の滋味あるドラマをさほどに理解はできてはいなかったとしても(……まったく理解ができていない、なぞとも云わないですヨ)、


「適度にドラマが進行したところで敵怪人が出現! 変身して必殺ワザで撃退!」


といった子供向け活劇番組としての結構やカタルシスをも満たしているので、土曜夕方の子供番組ワクでの放映にも支障がない、実にクレバーなバランスに満たされた作品だとも思えるのだ。……その意味では、仕方がないにしても、本作のドラマ部分「だけ」を語ってしまうマニアのレビューについても少々の違和感はあるのだ。


 ただし、原典『プリキュア5』のシリーズ敵にも、往年の『タイムボカン』シリーズ『ヤットデタマン』(81年)の3悪トリオのように悪の組織を「会社」組織として、幼児層には理解がしきれるとは思えないものの「サラリーマンの悲哀」をもコミカル・ドタバタ劇的に与えていたことを思えば、本作はその要素を正義のヒロイン側に与えた復元でもあったのだ。
 ……ウソです。心にもないコジツケを、自動的に言葉遊びでフザケて執筆してみせただけであって、企画意図がそうであったハズがないことも強調しておこう(笑)。



 もちろん、マニア層には高評価でも女児間においては不人気に終わった前作『Splash Star』のふたりについても、本作ついでにスタッフが陽の目を見させようとしてなのか、イレギュラー的に登場させていることもまた特筆事項ではある。映画『プリキュア オールスターズ』シリーズ(09年~)における遭遇・共演描写も継承して、『プリキュア5』のメンバーとも旧知の仲として登場させている趣向は、かつての女児層にも我々大きなお友達にもオイシい趣向だともいえるであろうし、個人的にも実にうれしかったところなのだ。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.93(23年12月30日発行))


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SPY×FAMILY・組長娘と世話係・アリスと蔵六・うさぎドロップ・うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない ~子育て&疑似家族アニメの諸相! 疑似でも家族の復権にオタの居場所はあるのか!?

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 疑似家族・子育てモノでもある大人気深夜アニメ『SPY×FAMILY(スパイ・ファミリー)』2期・分割後半第2クール(23年)が放映中記念! とカコつけて……。同じく疑似家族・子育てモノである『SPY×FAMILY』1期・前半クール(22年)・『組長娘と世話係』(22年)・『アリスと蔵六(ぞうろく)』(17年)・『うさぎドロップ』(11年)・『うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。』(19年)評をアップ!


『SPY×FAMILY』1期・前半クール・『組長娘と世話係』・『アリスと蔵六』・『うさぎドロップ』・『うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。』 ~子育て&疑似家族アニメの諸相! 疑似でも家族の復権にオタの居場所はあるのか!?

(文・T.SATO)

『SPY×FAMILY(スパイ・ファミリー)』1期・前半クール

(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)


 「スパイ」モノと「家族」モノを混ぜた作品。といっても、「家族」の方は「疑似家族」ではある。


 むろん、ドラマとして構築していく以上は、「役割」を演じているだけの「擬似家族」ではあっても、そこに情実が通ってホントの「家族」になっていく……といった要素もある。しかし、ベタベタのお涙ちょうだい的な浪花節(なにわぶし)の域にまで行かない寸止めにとどめることによって、カラッと乾いた笑いにも着地させている。


 さらに加えて、なぜか「超能力」要素もブレンド!(笑)


 ところで、「混ぜるな危険」という「洗剤の注意書き」が転じて、作劇術のパターン分類にも援用させている物言いのネット・スラング(造語)がある。この発言も半分は正しい。「水」と「油」の要素を入れたことで空中分解している失敗作も確実にあるからだ。


 しかし、「水」と「油」が「石けん」などで化学反応を起こして、真の意味でのリアルであるかはともかくとしても、物語としては面白くて一粒で二度オイシい作品に仕上がることもあるモノなのだ。その相違はドコで生じるのか?


 やはり、足して2で割って液体化した「コーヒー牛乳」として弛緩(しかん)してしまうのではなく、「カレー」と「ライス」が個性や固体性を保って緊張感を持ったままで棲み分けしていることも重要なのではなかろうか?――むろん、「接線」の部分では両者の要素が適度に溶け合って混ざっている余地はあるにしてもだ――


 本作も導入部では異世界近代での東西冷戦下で、東欧風の都市に潜入した理知的な金髪スパイの主人公が、カーアクションやらスパイアクションを繰り広げてみせることで「ツカミ」としつつ、マクロでは作品世界の説明をしており、ミクロでは主人公の人物像をも同時に提示してみせてもいる。


 こーいう人物像をも確立してみせる「助走台」こそが重要なのだ。そのうえでの積み重ねとして、東側の政治家に接触するために名門校に通うその子息との誼(よしみ)を作ることが必要であり、そのためにも「偽装家族」を作ってさらには養子(!)をその子息に接触させるのだ! といった、上司からの理知的とは云いがたい、実に迂遠で廻りクドくて実現性にも乏しい無理難題(笑)のオカシみと、困惑しつつもそれに律儀に忠実に応えていこいうとする主人公のオカシみが醸し出されていくのだ。



 とはいえ、そういった心的な困惑&苦労話だけではなく、各話にもキチンとアクションなりスリルなどの動的なヤマ場なども設けてはいる。#1では孤児院で自身の養子とするためのピンク髪の幼女ことアーニャ嬢をゲットしてみせる。


 しかし、年齢相応な彼女の非合理で衝動的な奇行! そして、なぜだか超能力!――何でやねん! 念動力ではなく読心能力だけど―― 幼女は主人公の正体も知ってしまうのであった!


 けれど、しょせんは幼児。物事をわかっていないので(笑)、人気TVドラマのスパイと同様の「ヒーロー」として認知する(爆)。その正体のヒミツは健気にも彼にも世間にも公言しないのだ。


 そして、主人公の留守中に彼の商売道具でもある、隠しておいたヒミツの「通信機」で遊んだことで(爆)、居場所を察知した東側のスパイたちが襲撃してくる!


 彼らに誘拐されてしまった彼女の救出をめぐって、#1のクライマックスも構築。決してドライなだけではない主人公の幼女への情実をも描いていくのだ


 もちろん、ホントウのシビアなスパイとしては、自身にとっての単なるコマ・道具でしかなかったハズである幼女の救出などはリアルではないのやもしれない。しかし、ウラ社会のヒーローを描いてみせても、そこは大衆向けエンタメ。少々ならばともかく、世間一般の道徳感情からあまりに逸脱してしまっても感情移入を惹起できないから、フィクションとしてはそれではダメなのだ。



 「偽装家族」の母親役となる黒髪ロングのヒロインもご都合主義にも#2にて早々に登場する。温厚でも地味でヤボったくて天然ボケな事務員なのだけど、彼女もワケあって「偽装家族」を必要としており、マジメな交際(笑)の果てに主人公と偽装結婚


 しかして、彼女の正体は両親を早々になくした苦労人であり、弟を養うためにも「殺し屋」(爆)として身を立ててきたというモノ。


 そして、主人公とヒロインは互いにその「スパイ」や「殺し屋」としての正体は知らないのだ。しかし、ふたりの養子となった幼女は超能力でふたりの正体を知っており、ワクワク・テカテカ・ニヤニヤとしているのだ(笑)。


 いや、もうこの設定だけで、どんな深刻な事件が起きてもギャグに転化ができるだろう。



 ところが、物語は幼女の受験対策、名門校での面接試験、合格後の幼女の学校生活――子供社会カースト!――といった方向へとシフトしていく。


 「お受験モノ」になったと思ったら「学園モノ」になったよ! そして、ご近所に怪しまれないためにも家族そろっての偽装レジャー! そんなレジャーが分割第1クールの最終回ともなっていた(笑)。



 ナンなのだ、この作品は? しかし、実に面白い。非オタにも自信を持って薦めることができる作品にもなっている。


 原作はWEB(ウェブ)サイト「少年ジャンプ+(プラス)」配信のマンガ作品。「少年ジャンプ」っぽい作品ではないけど、そこは印字物がないので経費も圧倒的にかからず、実験的かつマニアックな作品でも許容されるWEBマンガの題材的自由さゆえの成功であろう。
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SPY x FAMILY: Season 1 Part 1 [Blu-ray + DVD] 北米版
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


『組長娘と世話係』

(2022年夏アニメ)
(2022年8月7日脱稿)


 暴力団の組長の娘。だけど、実にいたいけな幼女でもある。そして、彼女の世話係を命じられた、キレたらヤバいという暴力団の若頭(わかがしら)。そんなふたりのお話ともなっている。


 アニメの神さまのイタズラか、題材的には前季の大人気深夜アニメ『SPY×FAMILY』の設定に通じているところもある。が、しかし、同作ほどにはカッ飛んではいないし、激しかったり爽快感もあるようなアクションなどもない。


 いやまぁ、日常からずいぶんと掛け離れたスパイの世界とは異なり、日本の日常社会にもまだ近しいヤクザの世界であるとシャレにはならなくなるだろうし、視聴者側でも殺傷行為をファンタジーや様式美としてスルーできなくなるであろうから、本作においてはアクションを排した作り方こそ正解だとも思うけど(笑)。


 特に拙(つたな)いところもない。幼女に対するこの世話役青年のイザというときの意外な常識人ぶりから来るギャップで、味わいを出そうとしていることもわかる。


 しかし、ズバ抜けて面白いというほどでもないような気がするなぁ……。
【Amazon.co.jp限定】TVアニメ「組長娘と世話係」Blu-ray 第1巻 (購入特典:原作スリーブイラスト使用オリジナル缶バッジ[57mm])

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。

(2019年夏アニメ)
(2019年8月3日脱稿)


 異世界で勇者が冒険したり魔王を倒すのではない。森でひろった魔族の幼女を、勇者の青年が宿屋の知己(ちき)たちと子育てしていく深夜アニメである。


 異世界ファンタジーのジャンルも爛熟の果てに、「勇者」ならぬ「魔王」どころか、「食堂」や「居酒屋」に「鍛冶屋」や「宿屋」に「本屋」や「薬剤師」などといった地味な職業に輪廻転生したり、元から異世界でその生業(なりわい)を職業としていた人物を主人公に据えたジャンル内ジャンルも勃興。


 「ニート異世界でチートで最強」ではなく、「冒険」や「怪物退治」すらもがないミクロな西欧中世的な「日常」を描いていくあたりを、ひたすらに感心したりはしないし、個々の作家は単にネタに走って作品タイトルで笑いを取りに行っているだけだとは思うけど(笑)、結果論でもこの異世界ファンタジーというジャンルは何でも包含する超巨大なメタジャンルと化しつつあるのではないか?


 魔族の幼女を育てるといっても人外の化け物ではない。気立てのいいロリ系のミニツインテール髪の「萌え幼女」といった感じである。しかも、イジケていたりハス(斜)に構えていたり、ヤンチャな子供にアリがちな衝動的に悪さをしてみせたり、ヨソのウチに来たのに物怖じもせずに堂々とふるまえてしまう生来からの厚かましいガキでもない(笑)。


 子供ながらに空気も読んで、周囲のオトナたちに愛想をふるい、自分の立場もわきまえて、宿屋の食堂の配膳や片付けを見よう見マネで手伝おうとする健気で利発な子供であったりもする。その姿を見て勇者や宿屋の主人や食堂の客たちは目を細めて癒やされている。


 筆者もたしかにそんな彼女の姿に癒やされているけど、同時に自分が子供のころは非力で内気で引っ込み思案で、愛想笑いくらいはしていたけどその程度ではあり、ウスウスそうした方がイイという空気を感じつつも率先して家事手伝いをするようなガキでもなくて、


「オトナしくてイイ子だネ……」


 といった大人たちからの呼びかけに幼児ながらに、


「人間的にはツマらない子だネ……」


といったメタ・メッセージを読み取って(爆)、プチ・アイデンティティ・クライシスな不安に襲われていたことなども思い出す。いやまぁ実際、人間力には欠ける文弱の輩なので、返す言葉もナイけれど(笑)。


 こんなに生来からの属性に恵まれて周囲からもチヤホヤされている子を見ていると、シミったれてルサンチマン(怨恨)にまみれている筆者なぞは、2次元キャラだとはいえ、


「ちったぁ、苦労しろい!」
「少しはガキの時分から、劣等感にまみれてみろい!」


というドス黒い気持ちも湧いてこないワケでもないけれど(笑)。話数を重ねれば、子供たちにもある「ズルさ」や「悪さ」なども少しは描いていくのですかネ?



 子供自身は本質的には「善良」で、周囲の環境によって「悪」に染まるのだ! といった俗説もあるけれども、筆者なぞは個人的な幼少時~成人時の経験からも、そーは決して思わない。


 同じ両親から生まれても片方はマジメなのに片方はバクチで身を持ち崩したりといった例などは、親族や会社の同僚などでも散見してきたけど、片方は甘やかされていたり、その逆に邪険にされて育ってきたから、必然的にそうなった……といったことではなく、ミもフタもないし言葉は悪いけれども、そのコのもって生まれた「性格」や「品性」といった原因の方が大であろうと思うのだ。


 特撮変身ヒーローものののアトラクションショー後のジャンケン大会などでも、平気でズルして後出しジャンケンで勝ち進んでいくクソガキなどを散見していると、首を絞めたくなってくる――ウソです。そんな小事でイチイチ憤慨したりはしません。諦観にひたっているだけです(笑)――。


 親の教育やシツケなどには関係なく、もともと良心が少なく生まれついているガキといった存在はいるものなのだ。


――もちろん、良心がゼロだと云っているのではない。少ないと云っている。そして、彼らを死刑にしろ! などと云っているワケではないことはくれぐれも念のため。最初から、そういったことを念頭に置いて、あらかじめバリアを張ったうえで彼らともコミュニケーションを取って共生していけ! といった意味である。まぁ、全員とはいわずとも、そーいうガキは長じて、パワハラ上司やモラハラ同僚などになってしまう確率は高いとは思うものの――


 人間も「生物」である以上は、もともと「(肉食)動物」的な「攻撃性」も備えてはいる。しかし、ふつうは「命の大切さ」を親や学校からイチイチに教わらなくても「殺人」まではできやしない。


 しかし殺るヤツは、「遊ぶカネほしさ」や「嗜虐心の発露」や「ギャング仲間たちへの強さや悪さの自己アピールとして殺れてしまうのだ(汗)。


 後天的な「貧困」や「虐待」や暴力的な映画やゲームやアニメや小説『バトル・ロワイアル』(99年)(笑)などは、実は二次的な「トリガー=引きガネ」「きっかけ」(従因)に過ぎない。


 「爆薬」(主因)にこそ真の意味での原因がある。本人の「資質」や、先天的に「攻撃的」で他人に対する共感性には乏しい性格や、器質的なテストステロン(男性ホルモン)の多寡―――「性欲」ではなく「攻撃性」といった意味ですヨ~――、あるいはイジメや孤立に対しての弱者による周囲や社会への反撃! などといったことの方に真の原因があるのだ。


 根っ子の原因を根絶するなり、根絶ができなくても緩和する処置を採ることこそが、本質的な解決策なのである。


 永世中立国ではあっても国民皆兵制でもあるスイスでは各家庭に自動小銃があるのだけれども、アメリカのような銃の乱射事件などは起きてはいない。であれば、銃そのものではなく格差やイジメや孤立を生じさせる社会、もしくは個人の資質などに原因を求めるべきであるのだ。
 あるいは、銃の多寡にも問題があっても、それは犯罪結果の「量」としての問題なのであって、「質」の次元での問題ではない。いわんや、問題の根源ですらない。銃を規制することが無意味ではないにしても、今度は銃を使わずにナイフや自動車などで通り魔殺人を犯すだけであろう。


 つまりは、この問題の解決策は、暴発へと至らしめてしまう弱者へのイジメや格差・孤立、ないしは粗暴犯的な個人の資質に対して、何らかの手当てや処置や予防策をほどこすべきことの方にあるハズなのだ。



 男の子育てといえば、フジテレビの深夜アニメの「ノイタミナ」枠で放映された女性誌連載マンガ原作の深夜アニメ『うさぎドロップ』(11年)といった良作なども思い出す。


 あの作品は亡き爺さんの老いてから出来た「隠し子」を、親戚一同の反対を押し切って、適度にダンディーで職場での後輩の信望も篤(あつ)い30歳手前のアンちゃんが育てるといったモノであった。


 この隠し子であった少女は、一見淋しげでも育ててみれば良く出来た、気が付く理想的な子供像ともなっていた。もちろん、そこで「子育て作品」としての「幸福感」や「気持ちよさ」なども担保しているのだ。


 しかし、作者もここに少々の「偽善」は感じていたのであろう。現実世界における「子供の育てにくさ」は、アンちゃんが保育園で知り合ったシングルマザーのイタズラでゲーム三昧の悪ガキ男子の方に仮託されていた。こうすることで、子育ての「楽しさ」&「厳しさ」をうまく分割して描写できてもいたのだ。


 そして、この少女の方を捨てた生母は、実は女流マンガ家であったことも明かされていく――人並みの生活や人生を捨てて、浮世離れした趣味や芸事に生きる原作マンガ家自身や、我々のようなオタクの自己批判・自己相対視的な「鏡像」でもあったのであろう!――。


 このマンガ家稼業の彼女を、アンちゃんでもなくシングルマザーでもない「第3項」とすることで、子育てにおける「諸相」を「三角測量」的に浮かび上がらせていく作劇も実にウマかったものだ。


 さすがにそーいった要素までをも本作には求めていないものの、このままに「理想的な子育て光景」だけを描いていくのであろうか? それとも、「幼女が魔族だ」という出自設定が今後の悲劇的なり少々のドラマチックな伏線ともなっていくのであろうか?


 本作の主要人物たちはこの幼女が魔族であることを警戒してはいないけど……などと怪訝(けげん)に思っていたら、シリーズ中盤以降ではそこにツッコんでいくようである。
「うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。」Blu-ray 第1巻

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.75(19年8月10日発行))


アリスと蔵六(ぞうろく)』

(2017年春アニメ)
(2017年4月27日脱稿)


 研究所から脱走してきた超能力を持った金髪幼女。ここで彼女と偶然に出会ったのが平凡なオボコい少年であれば、陳腐凡庸な設定ではある。


 しかして、彼女と行動をともにすることになるのは、酸いも甘いも噛み分けた、ウラ稼業の世界ともつながりがありそうな――いや、そんなつながりはナイ? 単なる肉体的な強者?――、腰は曲がっておらず眼光もスルドくてキモ(肝)も据わっており、無駄グチは叩かないけど仕事はできそうで、クチ&アゴも白ヒゲで埋めている白髪のジジイであった!


 #1は60分スペシャルで、白昼の新宿歌舞伎町を舞台にカーチェイスも交えた、実に迫力ある異能バトルが描かれる。


 ジイさんは警察に拘束されるも、警察の上層部の意向で釈放される。なおかつ、破損したハズの自家用車や道路が元通りとなっており、目撃者たちの写真にも事件に関わる事象が写っていない一連の不条理な描写も、フィクション作品としてはイイ感じではある。


 絵柄は原作マンガの再現なのであろうが、2010年代の基準では「下手ウマ(へた上手)」な、線が少なく曲線にも特に美麗なセンスは感じられない、素朴かつシンプルで多少古クサいモノではある(汗)。それはそれで結果論だけど、本作独自のビジュアル的な個性としても機能するのだろう。


 監督は昨2016年に、青年マンガ原作の魔法少女モノ『ふらいんぐういっち』と美少女キャラたちが超常的なカードバトルに興じる『Lostrage incited WIXOSS(ロストレージ インサイテッド ウィクロス)』という、風情ある演出の良作を手懸けたベテランの桜美かつし(さくらび・かつし)。


――余談だけれども、後者は原典である『selector infected WIXOSS』1期&2期(共に14年)の2作品よりも、個人的には高く評価している――


 そのへんでは期待ができそうな気もするけど、特定スタッフの器量だけに作品の成否を求めすぎる風潮もドーなのか? とも疑問に思っているので、「勇み足」にならないように、少なくとも序盤については良かったヨ、といった程度にとどめておこう(笑)。
アリスと蔵六

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.69(17年5月4日発行))


うさぎドロップ

(2011年春アニメ)
(2011年12月25日脱稿)


 チョイむさのイイ男である独身三十歳男とその妹&両親に親戚の一同が、急死したひとり暮らしの爺サン宅に集合する。


 そこで見た儚(はかな)げな幼女は……。爺サンの隠し子であった!――しかも、母親が誰だかは不明!――


 やるなぁ、爺サン。


「年を取ってからの子育ては大変だし……」
「口数が少ないから、発達が遅いんじゃあ?」
「施設に預けるしかないだろ……」


といった、かわいそうだけれども、現実的に家族が途中から増えるのは……といったリアルな親族会議の果てに……。


 「現実はともかく理想(?)はかくあってほしい!」といったフィクションワールドへと物語は突入する!



 そこで、オトコ気を出した独身主人公が、周囲の反対を押し切って幼女を引き取ることにするのだ!


 そこから始まる珍騒動!


 働くシングルファザーとなった主人公の日常と、職場での変化!


 託児所・保育園・小学校の入学などで、同世代の子供を持った親たちとの否応のないコミュニケーション&その諸相!――ヤンチャなクソガキに、子供が風邪をひいても欠勤しづらいシングルマザーの苦労話など――


 それらを媒介にして、地元の「地縁コミュニティ」などにも「参入」……とまでは行かなくとも「接点」を、市井の人々の多様な日常・営み・陰影にも気付かせられていく……。


 それらの光景を、


●爺サンちの和風家屋……
●主人公が住まう昭和30年代風である平屋の借家の玄関・茶の間・台所……
●アルミサッシではない窓ワクや雨戸……
●縁側や、狭い庭の木々……


などを背景として、風情を出して和ませて、生活・世帯臭なども出しつつ、しかして近年一部の深夜アニメで流行しているパステル調の淡い作画&背景美術にて、決して重たくはならない節度にとどめて、楽園的につづっていくのだ……。


 永遠の思春期的な心性の男性オタクの奇形的な願望に特化しているコテコテの「様式」や、美少女ハーレムもので下着パンティでオッパイを偶然もんじゃった的な(笑)、我々のようなオタク・マニア人種や特定の年齢層にのみ流通をしている、古典芸能でもある歌舞伎や特撮変身ヒーローもの以上にお約束の様式美的な文法に捕われているベタベタな美少女アニメ群などとは異なり――もちろん、そーいったベタな作品もあってイイのだし、むしろそちらの方こそが普遍で王道でもあるのだけれども――、オタ層のみならず、オタクの近縁である周辺層・ライト層・サブカル層、あるいは偶然にでも作品との接触ができれば、一般層でもムリなく抵抗なく作品内容も理解ができて、鑑賞もスンナリとできるであろう、普遍的な絵柄&作劇を達成できてもいる作品として本作は成立していた。


 早くも枯れつつあるオッサンオタクの筆者としても、実にナチュラルで見やすくて心地よい世界ではある。京都アニメーション製作の大人気美少女アニメらき☆すた』(07年)や『けいおん!』(09年)などでは癒されない、自身と接点もあまり感じられない旧石器時代人のオタクとしては甘露の法雨(かんろのほうう)でもある作品なのだ(笑)。


――もちろん、『らき☆すた』よりもハイブロウな本作の方が好きである筆者こそが、凡百のオタクよりもセンスがあるなどと云いたのではない。筆者自身もイイ歳こいて美少女アニメを鑑賞しつづけているガチオタの典型でもあるので(汗)――


 ただ、イジワルに見てしまえば、一見は愛嬌も機転もなさそうなオトナしげな幼女が意外とシッカリ者であったり、ヤンチャなクソガキ男子の横暴に対しても物怖じもせずに良識的に意見もしてみせたり、実の両親がいないのにイジケてもいなければシミったれてもいなくて炊事家事なども率先して手伝うし、主人公のアンちゃんも職場で後輩たちにも人望があってキモ(肝)も最低限は据わっており、自炊もして生活力もあるあたりなどは、出来すぎなのかもしれない。


 もちろん、そーいう出来すぎなヤツも現実世界にいなくもないであろう。それ自体は結構なことなのだし、フィクションなのだから、この作品世界におけるこの登場人物はそういうヤツなのだ! といったことでナットクさせることができていれば、それでイイわけだ。


 しかし、「生活」を軽視して「趣味」に耽溺しているオタな筆者(汗)が、我が身の実態を省(かえり)みずに彼らのことをしたり顔でエラそうにホメてみせることの滑稽さを思ってしまうと、本作に対する単純な賛辞については躊躇(ちゅうちょ)をしてしまうのだ。


 人間としては半人前であり、恐怖・奇形人間でもあるオタク人種が、真っ当な生活や子育てをしている彼ら登場人物たちのことをホメてみせることは矛盾なのであって、そもそもそういったことを語ってみせる人間的な資格(笑)なぞがあるのだろうか? と……。


 崩壊しつつある「地縁共同体」の復興やその中での助け合いの大切さを謳(うた)うこと。それ自体は正論なのである。しかし、我々オタクたちは「血縁(親戚)」や「地縁(共同体)」などにさして帰属意識を抱いてはいないであろう。彼らと心の底から話が合ったり、仲良くやっていける自信などもない。


 通産省の官僚上がりの評論家・堺屋太一(さかいや・たいち)センセイが、90年代後半に対談集『世紀の大怪獣!! オカダ』(イーストプレス・98年7月3日発行)にてオタキング岡田斗司夫(おかだ・としお)と対談して、彼に影響を受けて唱えだしたとおぼしき「地縁」「血縁」につづく第3の形態としての「好縁」社会――ネット上などでの仮想的なモノも含めた「趣味的共同体」や「文化的共同体」や「文化的空間」――などの方に、強くはなくても漠然とでも帰属意識を抱いてしまったりもするくらいなのであった。


 つまり、崩壊しつつある「地縁共同体」≒「日本的ムラ世間」が復興してしまえば、それは平均的な大多数の庶民・大衆にとっては、困ったときの助け合いや子供たちの地域全体での子育ての助け合いには便利であるだろう。しかし、我々奇人変人でもあるオタク人種たちは再び白い目にさらされて、息苦しくなってしまうであろうといったジレンマ……。


 ただし、作り手たちもバカではない。そんなマンガ・アニメなどを好んで、虚構作品を創造してしまったり耽溺などもしてしまうような奇形的な進化を遂げた人種、あるいは作者自身(?)に対するセルフツッコミといった自己批評的なキャラをも投入してみせている。


 つまり、幼女の実母が子供を捨ててしまってでも(爆)、自身の「夢」であるマンガ家稼業の「キャリア」の方を優先してみせるような存在として設定していたことだ。


 彼女こそが実生活よりもオタク&サブカル趣味などに耽溺してしまうような、我々ダメ人間の「鏡像」ではなくてナンであろうか?――仮にカミさんなりの配偶者や愛する子供などがいたとして、我々オタクたちは趣味を減らすことはできても、それらの夢見がちな趣味なり行為なり内面の心理などを完全に捨て去ってしまうことができるのであろうか?(笑)――


 この実母の女流マンガ家センセイは、本作においてはあくまでも「点描」としての存在に過ぎなかったやもしれない。しかし、そんな我々のようなオタク人種をヘンに鼻もちならない文化エリート・オタクエリートとして自画自賛・賞揚するのではなく、かといって全面否定するのでもなく、その両者の折衷としての中間でもなく、イイ意味での否定寄り、もしくは「積極的な肯定」ではなく「消極的な肯定」として、適度な「卑下」や「自虐」や「自己相対視」が垣間見えてくるあたりもまた、個人的には実に好感を抱くのだ。


 躊躇なくオタク街道まっしぐらな御仁もいるのだろう。それはそれで潔(いさぎよ)いのやもしれない。しかし、個人的にはそれはそれで、人間としては器が実に狭い気もしてきてしまうのだ。


 世間一般の世界にもヨコ目で目配せをしつつ、「オレの人生、コレでイイのだろうか? でも、今さら変えられやしないし……(汗)」といったように揺れ続けている御仁の方が、筆者には好感が持てるし、ひとりの人間としてもその人物・人間性には信用が置けるのだ。


――コレもまぁ、広い意味での自己正当化ではある。しかし、自分を道化・ピエロ・三枚目に身をやつすこともできるような器量がない人間よりかは若干(じゃっかん)はマシであろうといった程度ではあって、そんなにご大層な認識でもないけれど(笑)――



 子供たちにも存在しているハズの小さな「悪」や「ズルさ」といったものは、メインの幼女を含めた少女たちの「綾とり」や「折リ紙」遊びなどで、その成果を我がモノとして横取りをして得意げに周囲やオトナたちに自慢してみせている従姉妹(いとこ)の娘の方で描かれてもいた――筆者の幼少期にもいたなぁ、こういうズルいクソガキが!(笑)――。


 しかして、メインキャラの幼女の方でもそのことを過剰に根に持って一生恨んでいるような、それはそれで器量の小さい陰湿なガキでもない(笑)。時たまに親戚たちが大集合してその従姉妹と再会するや、忘れてしまったワケではないだろうから多少の遺恨もあるのだろうけど、それをオクビにも出さずに糾弾・弾劾などもしないで(笑)、子供ながらにオトナの態度で仲良くやっている幼女と従姉妹のふたりの姿も「さもありなん」なのであった!


 ……歴史的な遺恨がある各民族や各国家同士の諍い、国家間関係・国際関係なども、かくあるべしなのだ!?(笑)


 むろん、こういった子供たちにもある「ズルさ」や「悪」を、点描にはとどめずにネチネチと恨みがましく描いてしまえば、作品は別方向へと向かってしまって、「子育て」モノとしての焦点もボケてしまったことであろう(汗)。



 もちろん、筆者個人が欠損家庭において、常にと云わずとも存在するであろう子供たちの苦悩などを軽視しているワケでは毛頭ない。そういったところに良くも悪くもスポットを当ててきたのが、賛否はあっても70年代前半の昭和の第2期ウルトラマンシリーズのレギュラーキャラである欠損家庭の少年少女たちやゲストの子役たちでもあったのだ。


 あるいは、イジケていたり内向的なオタクや性格弱者といった問題設定については、『とらドラ!』(08年)・『電波女と青春男』(11年)・『僕は友達が少ない』(11年)といった深夜アニメなどで陽の目を見るようになってきてもいる――『僕は友達が少ない』に関しては、メインタイトルから連想されるような内容には踏み込みきれてはおらず、少々残念な内容にも思えたけれども(笑)――。
うさぎドロップ コンプリート・コレクション 英国版 [DVD][PAL][Import]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.55(11年12月29日発行))


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2017年冬アニメ評! 『幼女戦記』 ~異世界近代での旧独vs連合国! 新自由主義者魔法少女vs信仰を強制する造物主!

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2015年秋アニメ評! 『ワンパンマン』 ~ヒーロー大集合世界における最強ヒーローの倦怠・無欲・メタ正義・人格力!

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2013年夏アニメ評! 『げんしけん二代目』 ~非モテの虚構への耽溺! 非コミュのオタはいかに生くべきか!?

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2013年春アニメ評! 『惡の華』前日談「惡の蕾」ドラマCD ~深夜アニメ版の声優が演じるも、原作者が手掛けた前日談の逸品!

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2008年秋アニメ評! 『鉄(くろがね)のラインバレル』 ~正義が大好きキャラ総登場ロボアニメ・最終回!

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2008年冬アニメ評! 『墓場鬼太郎

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080615/p1

2005年春アニメ評! 『英国戀(こい)物語エマ』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20051022/p1

2004年春アニメ評! 『鉄人28号』『花右京メイド隊』『美鳥の日々(みどりのひび)』『恋風(こいかぜ)』『天上天下

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040407/p1



『SPY×FAMILY』『組長娘と世話係』『うちの娘』『アリスと蔵六』『うさぎドロップ』 ~子育て&疑似家族アニメの諸相! 疑似でも家族の復権にオタの居場所はあるのか!?
#SPYFAMILY #組長娘と世話係 #うちの娘 #アリスと蔵六 #うさぎドロップ



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後宮の烏・虫かぶり姫・くまクマ熊ベアー ~ドンパチのない上品な女子向け異世界ファンタジーアニメの良作! それらにハマる女子のメンタルや性格類型とは!?

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』『彼女が公爵邸に行った理由』『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』 ~悪役令嬢なのに三枚目の善人! そこに女子オタが親近感!? 勃興とともに早くも変化球が隆盛!
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 後宮(こうきゅう=ハーレム)で夜伽(よとぎ=性的奉仕)ではなく下女として下働きする、異性には媚びていないローテンションな少女が主人公である中華ファンタジーの深夜アニメ『薬屋のひとりごと』(23年)が放映中記念! とカコつけて……。同様に、媚びてないローテンションの少女が主人公である深夜アニメ『後宮の烏(こうきゅうのからす)』・『虫かぶり姫』(共に22年)・『くまクマ熊ベアー』(1期)評をアップ!


後宮の烏』・『虫かぶり姫』・『くまクマ熊ベアー』(1期) ~ドンパチのない上品な女子向け異世界ファンタジーアニメの良作! それらにハマる女子のメンタルや性格類型とは!?

(文・T.SATO)

後宮の烏(こうきゅうのからす)』

(2022年秋アニメ)
(2022年12月25日脱稿)


 女性オタク向けの中華ファンタジー。といっても、「異能バトル」が主体の作品ではない。宮廷内で生じる超常現象に「推理モノ」的な手法で迫って、最後にはオカルト的な手法で解決(成仏)していくといった作品である。


 主人公は後宮(こうきゅう)、つまりハーレムの離れに住まっているクールな小柄少女。しかも、一応は皇帝の妃(きさき)でありながらも、夜伽(よとぎ=性的奉仕)をする必要がない、特殊な身分であるとされている。


 お相手となるのは、若きイケメンのクールな青年皇帝。皇族間での陰謀によって一度は廃嫡(はいちゃく)され、母親も殺されてしまったようだが、紆余曲折の末に元凶であった人物を拘束して、皇帝へと就任した人物でもある。


 妃の身分が与えられるも、夜伽をする必要がない、おそらくは異能の力を持った女性に対する「名誉称号」として高位の身分=「妃」の身分を与えられた彼女には、皇帝でもむやみに手が出せない。
 そして、物事の理非もわきまえて、相手や女性の立場や心理にも斟酌(しんしゃく)してみせることができる上品な青年皇帝もまた、無理強いをすることもなく彼女を尊重してみせる……。


 といったところで、各話のストーリーは「ナゾ解き」が主体ではある。しかし、レギュラーキャラクターたちのドラマとしては、この両者間での媚び媚びとはしていない、男女間での節度もある抑えたほのかな描写がまたキモ(肝)ともなっている。


 これがまた、脇目も気にしないどころか周囲に見せつけるかのように男に思いっきりに甘えたり媚びたりしてみせれば、世の控えめな女性たちは内心では不快感や憎悪を募らせて、自分とはタイプが異なる女性像だと敵性生物認定(笑)をすることであろう。


 しかし、そういった男女接近は寸止めにとどめて、鼻にはつかない塩梅ともすることで、そういった色恋とは縁遠いのであろう、女性オタク層を適度な塩加減で刺激もするのではなかろうか!?


――いやもちろん、我々男性オタクが愛好してする美少女アニメとも、メタレベルでは性別が反転しているだけなのであって、同等な受容のされ方なのである(汗)――


 このあたりは、本作にとっての、あるいはメインターゲットのある種の性格類型の女子たちにとっての魅力的な性格の登場人物を造形するための「肉付け」やマーケティング的な次元でのディテール分析ではある。


 各話のメインのストーリー自体は、オカルトや霊能力(霊視)も交えての広義での「推理モノ」といった作劇となっている。


 そして、その両者双方がまた実によくできてもいるし、「雰囲気」演出も絶妙なのである。


 シリーズ前半では1話完結的な良質の単発エピソードが配置されている。シリーズ後半では、この王朝よりも以前の滅ぼされた先代王朝。どころか、この中華風の異世界の発端や連綿とした歴史に、複雑な因縁などもカラんできて、舞台のスケールも拡大されていく……。そして明かされる巨大な真相! 良作である。
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my blue (期間生産限定盤)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.84(22年12月30日発行))


『虫かぶり姫』

(2022年秋アニメ)
(2022年12月25日脱稿)


 メインタイトルとはウラハラに、美麗な作画による西欧中世風の異世界を舞台とした、少女やある種の性格類型の女性向けの知的で上品なロマンス作品といったところだ。


 本を読むことが大スキなおっとりとした金髪の小柄な令嬢。ダサいとか容姿には劣っているということは、女子向けの物語的な主人公補正でそれは絶対にナイにせよ、世の一般的な女性とは異なり、内面の充実や平穏といったモノには関心があっても、「服飾」や「宝石」などといった浮わついた外飾・虚飾といったモノには関心はウスいようでもあり、「私が! 私が!」と他人や世間へとアピールすることもないようで、そもそも見た目やトロトロとした話し方からして、そういった行為がいかにも苦手そうな御仁が主人公。


 そんな彼女でも、あるいは本作の原作者センセイや、本作のような作品を好んで読んでしまうような女性読者たちにとっては、異性に媚び媚びとした同性はキライであったり、快活な元気女子には苦手意識を持っているものであろう。
 しかし、だとしても、そんな彼女たちでも「魅惑的な男性にはやはり云い寄られてみたい……」といった秘めたる願望は、本能的にも持っているモノではあるのだろう。


 そんな願望を当て込んでか、本作では「弱者男子にとっての性的ファンタジー」ともいえる「美少女アニメ」の「逆パターン」で、控えめで受動的な主人公令嬢なので自らでアプローチを掛けることは決してなかったのに、異性(男性)たちの方から逆にモーションを掛けてきてくれる作品なのではあった(笑)。


 といっても、安直なストーリー展開といった感じにはなっていない。実に謙虚であり人格的にも温厚で知識にも優れていて、それがまた時折りに「問題解決」や「他人とのちょっとしたウィット(機知)にあふれる会話のネタ」などにもつながっていくので、そういった積み重ねがあれが、彼女が実はモテていたとしても不思議ではない! といった感じの描写として昇華もできているのだ。


 どころか、ある意味ではトロくて善良に過ぎるので(汗)、気が強くて独占欲も強そうな女子や令嬢たちには嗜虐心をそそられて、しかも男性の注目も自然に浴びているので嫉妬心をいだかれてしまって、おとしいれられそうになっているあたりがまた、逆に「さもありなん」的にリアルであったりもする(爆)。


 とはいえ、そこは女子にとってのファンタジー。そういった窮地でこそ、好ましい異性からの救いの手が差し伸べられて悪役令嬢は退けられることで、単なる「カタルシス」(爽快感)が発生するだけではなく、それを異性との「ロマンス」とともに発生させてもいるのだ。


 コレまた傑作の誕生である。


 『虫かぶり姫』などというタイトルだけを見ると、なにかイロもの作品的ではある。大むかしに高校の古典で習った平安時代末期の『堤中納言物語(つつみちゅうなごん・ものがたり)』の一編「虫めづる姫君」のような、貴族の良家の娘なのに昆虫が大スキな変人姫君のような少女が主人公といった作品を想像してしまう。しかし、中世風の身分制社会が舞台といった点を除けば、まるで共通点はない。


 どころか、こんな控えな女子が主人公である作品が21世紀にもあったのか!? ある意味では、良くも悪くも古典的な作りでもあって、70年代的なイケてない控えめな少女像を主人公とした少女マンガを、そうだとはツッコミされにくいようにクレバーに再構築したような作品だといった整理もできるだろう。


 作者の意図はさておき。そもそも、70年代少女マンガ自体を世代的にも読んではいないだろうとは思うものの……(笑)。


 ググってみると、本作も小説投稿サイト出自の作品であった。
【Amazon.co.jp限定】虫かぶり姫 Blu-ray全巻購入セット(早期予約特典:アニメ描き下ろしB5エンベロープケース)(全巻購入特典:アニメ描き下ろしイラスト使用キャンバスアート付き)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.84(22年12月30日発行))


『くまクマ熊ベアー』(1期)

(2020年秋アニメ)
(2021年1月21日脱稿)


 西欧中世ファンタジー風の異世界の片田舎が魔物に蹂躙されている。そこを辛うじて逃れてきた年端もいかない少年クンが冒険者ギルドに助けを求めてくる。しかし強敵相手に立ち向かえる冒険者は出払っており、その域に達していない冒険者たちは済まなさそうな顔をするしかない。そこに「ワタシが行こうか?」と声をかけてきたのは、顔出しでもフード付きでムクムクとした黒いクマの着ぐるみを着ている、やや低音ボイスの女の子!


 超安直なタイトル。それゆえにインパクトはある(笑)。内容はオボコい女子オタ向け「俺TUEEE(ツエーー)系」作品と要約できるけど、バカにしているワケではない。その範疇で気持ちよくはできている。
 別のモノサシで測れば、股旅・ロードムービーもので、旅先で困っている庶民をクマ女子がその超チート能力を善用して助けたり、悪人を懲らしめるといったもの。タドタドしい展開はなくフツーに楽しめる。


 往年のオタク論『趣都の誕生―萌える趣都アキハバラ』(森川嘉一郎幻冬舎・03年2月1日発行・ISBN:4344002873。08年12月1日に増補版が幻冬舎文庫化・ISBN:434441232X)的に観ちゃうと、自身のボディーラインを見て見て的なギャルとは対極的な、自身の体形を隠したい系、モフモフとしたクマ的な可愛いものが好きだけど、ベタベタと愛想よく異性に媚びるのには抵抗があるオタ少女にとっての、感情移入しやすい女子主人公&居心地のよい世界観の結晶といったイジワルな分析もしたくなる。


――それが悪いワケでもない。むしろマーケティング的には盲点だった新たな鉱脈の発見やも?――


 オタク評論家・大塚英志の弟子筋だった女子オタによる往年の著作『少女民俗学パート2 クマの時代』(荷宮和子大塚英志・光文社(カッパ・サイエンス新書)・93年9月1日発行・ISBN:4334060773)との通底なども想起する。


 ただし、本作の異世界は当今流行りのゲームの中だったハズが、そのへんはあやふやとなり、むしろ引きこもりぎみで居場所がなかった彼女が、オボコい庶民少女との出逢いを契機に異世界に守るものや居場所を見つけたようにもなる展開は……。引いて考えるとオカシい。けど、絵柄的にも頭身が低くてファンシーでリアリティーの喫水線が下がった世界なので、筆者個人はあまり気にならない(笑)。
くまクマ熊ベアー 7 (PASH!文庫 Mく 1-7)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.78(21年2月5日発行))


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キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦・86-エイティシックス-・ニルアドミラリの天秤・天狼 Sirius the Jaeger ~異世界でも中世ではなく、近代や昭和初年代が舞台の深夜アニメ評!

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 深夜アニメ『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』1期が再放送中記念! 2期が来年2024年に放映記念! とカコつけて……。異世界でも中世ではなく近代を舞台とした深夜アニメ『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』1期(20年)・『86-エイティシックス-』1期(21年)・『ニル・アドミラリの天秤』(18年)・『天狼(シリウス) Sirius the Jaeger(シリウス・ザ・イェーガー)』(18年)評をアップ!


『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』1期・『86-エイティシックス-』1期・『ニル・アドミラリの天秤』・『天狼 Sirius the Jaeger』 ~異世界でも中世ではなく、近代や昭和初年代が舞台の深夜アニメ評!

(文・T.SATO)

『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』1期

(2020年秋アニメ)
(2021年1月21日脱稿)


 「帝国」と「皇庁(おうちょう)」――後者は字義的に苦しい造語で、実態は「王朝」――の2大国が対立している「西欧近代」風の異世界が舞台である。


 帝国最強なれども謙虚でクセのない美少年剣士クンと、皇庁最強の戦士に見える金髪ロングの第2王女さま。


 戦場でホコを交えるかたちで出逢ったふたり。しかし、互いに休暇時に平穏な中立都市で偶然にも再会したことで、道ならぬ恋とはいかずとも、互いに相手が鬼畜米英ではなく人格も良識もあるヒトであり、立場上はマズいと自覚しつつも偶然の再会を重ねることで、燃え上がることもないけど節度あるかたちでお互いに惹かれていく。


 ムチャクチャ面白い! 要は『ロミオとジュリエット』や昼メロや韓流ドラマのオタク版なのだ。しかし、それもミガきあげれば既視感はあっても血肉が宿るものなのだ。


 まぁ、洋画であれば互いにモーション・誘惑をかけるのであろう。しかし、オズオズと控えめで好意を表明できずにツンデレで終わるあたりは日本人的、あるいは対人関係にナイーブなオタ的描写だとも区分けはできるかも……。


 とはいえ、絵柄が繊細淡泊ゆえに、長身なキャラデザでも適度にイイ意味でリアリティーの階梯(かいてい)は下がっている。


 なので、「偶然の再会」が連発されても、それは「ご都合主義」臭にはならずに「ギャグ」としての側面が強調される効果をいや増していく。公園・レストラン・劇場……。何回、再会したのだ?(笑)


 舞台背景は深刻であるのに、少年剣士クンの女上官の方は頼りなくてオドオドとしたミーハーなチビ女子だったりして、そのへんはいかにもマンガ・アニメ的なキャラ造形なので、古いタイプのオタだとそこでヒキそうではある。よく訓練されてしまった筆者なぞは大丈夫なのだけど(爆)。


 第2王女というからには性格や立場も異なる第3王女や第1王女や女王さま、諜報機関やスパイまでシリーズ後半においては登場。人間関係やストーリー展開も錯綜させつつ、スケールも拡大! 個人的には傑作だと思う。
Our Last Crusade Or The Rise Of A New World: The Complete Season [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.78(21年2月5日発行))


『86-エイティシックス-』

(2021年春アニメ)
(2021年8月9日脱稿)


 異世界近代のミリタリックな量産型ロボットが多数登場するアニメ。しかし、それも表層的な意匠に過ぎなくて、ドラマ&テーマ的には「人種差別」がメインだったという恐るべき作品であった。


 この作品もナンちゃって感は皆無のマジメなノリである。しかし、主要人物は10代中後盤なのにもう女少佐だったり隊長だったりして、そこはお約束のウソではある――もちろん、思春期の淡い恋情や、軍事的な失敗もまぁまだ10代の少女だからと劇中内でも劇中外でも無意識に許容されて、加えて想定メインターゲット層の年齢に主要キャラの年齢を近くするための処置でもある。よって、それがダメだとは思わない――。


 キマジメそうな銀髪ロングの軍服士官少女がさっそうと軍施設の洋館内を歩いていく。しかし、そこには酒瓶を抱えてクダをまいている兵士たちもいることで軍規の緩みも描写している。 
 そして、そんな彼女がどんな軍務に着くのかと思いきや……。個室の管制室で多数のモニターを通じて、戦場の隊員たちにテキパキと指示を降していくのだ。


 「戦死者はゼロ名」とされているので、多足歩行の無人のAIロボット兵器が相手なのかと思いきや……。戦闘中の戦場にはたしかに兵士たちがいる!


 こういった「違和感」自体もヒキ(引き)にしているワケである。そして、話数が進むにつれて小出しに真相も明かされていく。


 彼女が住まうこの国では、特定民族――実質、有色人種!(汗)――を人間としてはカウントしていないから、「戦死者がゼロ名なのである」と……(爆)。


 生来から聡明かつ博愛的なのであろう。彼女はそんな現状に義憤を抱いてもおり、時に学校の授業でもその旨を公言している!――結果・戦果も出している貴族の令嬢なので、周囲は「一理はあっても、こまったもんだ」といった顔をするだけなのだけど――


 しかして、戦闘休止中に自身の麾下(きか)にある部隊の隊員たちとも、上下の別なく親しくしようとしても、彼ら部下の隊員たちの反応はドコか冷たい。


 人種平等を唱えた彼女も、学校の生徒たちに


「では、自身は彼らとともに戦場で戦ったのか?」


と問われれば沈黙するしかないのだ。といったあたりで、バトル・戦闘シーンで盛り上げてはいても、そこがドラマ的なクライマックス・山場ではない作品であることもわかる。



 いや、キワドい作品ではある。人種差別テーマを描いたことそれ自体ではない。人種差別テーマを掲げたことだけで自足してしまうことや、説明不足なだけで内実のないハードぶりっ子ストーリーに堕(だ)してしまいがちな題材である作品でもあるからだ。


 しかし、そこは作り手たちの「テクニック」や「センス」なのだろう。そこをギリギリで回避して、一見では本作の世界観の全貌はわからなくても「演出」の力だけで観ていられる。そして、小出しでこの作品の「世界情勢」や「人種差別」についてもわかってくるという作りにはなっているのだ。


 設定フェチ&軍事フェチさも濃厚ではある。しかし、そこは雰囲気だけに留めて、まずは「物語」「映画」たらんとする作りがこの作品の良さだとも私見する。


 本作は小説投稿サイト上がりが多数を占めるご時世に、ラノベライトノベル)賞に応募して「大賞」を獲得したデビュー作が、シリーズ化されて高い読者投票人気も獲得。数年を経た末に深夜アニメ化された作品であるそうだ。


 00年代中盤~10年代前半のラノベ原作アニメは、マンガ的「ナンちゃって感」や「ハーレム・ラブコメ要素」がマーケティング的にも必須に思えたものだ。
 それだけに、2010年代中盤以降はそういった作品は鳴りを潜めており、実に隔世の感もある。「ナンちゃって感」や「ハーレム・ラブコメ要素」を十全には備えていないのに、それでも小説投稿サイト出自のヒット作がワンサカと登場して、そのアニメ化版がヒットを飛ばしたことで、オタク向けジャンル作品の題材や人間描写もかえって多彩になったと私見するのだ。
86-エイティシックス ジグソーパズル500ピースジグソーパズルクリスマス誕生日プレゼント家の装飾

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.80(21年8月15日発行))


ニル・アドミラリの天秤

(2018年春アニメ)
(2018年4月27日脱稿)


 戦前戦中における陸軍中野学校出自のイケメンスパイたちが大活躍する傑作深夜アニメ『ジョーカー・ゲーム』(16年)のごとく――このハイブロウな良作をイケメン男性キャラ目当ての女性オタしか観ていないのが、当今オタ事情のいびつなところ(笑)――、大通りには大正モダンな建築物が立ち並ぶ。


 しかし、まだまだ低層建築ばかりで、木造の電柱・電線越しに見えている青空もだだっ広くて見晴らしもよい。大通りであっても、まだアスファルトで舗装はされていなかったりもする、実にレトロモダンな昭和初年代の風景を再現!


 ググってみると、本作の舞台は大正25年であった!(=昭和11年・笑)


 手に取った者に対して精神干渉して「自殺行動」を起こさせる、書き手の感情・情念がこもった書籍を追いかけて回収していく、「帝国図書情報資産管理局」のメンバーが活躍するというのが、本作の基本設定である。


 #1では主人公でもある洋館に住まう没落華族の令嬢少女――愛想もイイお姉さんタイプ――が「家」のためを思って良家へ嫁ぐことを決意する。しかし、声変わり前の澄んだボイスで、大いに取り乱した半ズボンの美少年の弟がカラんできて猛反対をされたことで――もうこの姉コンプレックスな弟の存在からして隠微(笑)――思わず、


「キライ!」


と叫んで突き飛ばしたことで、この弟が大きなショックを受けてしまったサマが描かれる。


 このことを気にした彼女も街に出て菓子などを購入し、帰宅して弟をお茶に誘おうと扉を開けるや……暗がりの自室で油をまいた弟がマッチに火をつけており……(ヒエ~~!!)。


 そこに「帝国図書情報資産管理局」のイケメン男子ふたりが駆けつけてきて、事件は一応解決される。


 その過程で主人公少女には、情念がこもっている「書籍」のオーラ(!)が「炎」のごとく見えることが判明! そのことで、晴れて彼女も同「管理局」メンバーの一員となったサマも描かれて、#1は幕となっている――先の良家との「婚約」については、破棄したとの説明が一言だけで済まされている(笑)――。


 そのスカウトの際に、イケメン局員が放った一言は……。


「オマエがほしい!」


 ……キャ~~~!!


――黄色い声。劇中内で、こういう奇声・嬌声が上がったワケではなく、筆者が勝手に女性視聴者の内心の声を代弁しております(笑)――


 まぁ「メタ」に「メタ」を重ねる「止揚」「アウフヘーベン」な世の中ですから、メインターゲットのオタク女子たちも悶絶しつつも半分笑いながら観ていることでしょう!?


――ちなみに、「アウフヘーベン」(正・反・合の「合」)の出典は、東京都知事小池百合子ではなく、19世紀のドイツの大哲学者・ヘーゲルですので、念のため(笑)――


 オタク女子向け作品も、「もうゲームなどで知ってるよネ?」的に人物紹介をすっ飛ばしてイケメン男子たちが大騒ぎをはじめて、#1からして誰が誰だか区別が付かない作品も多い。
 しかし、イケメン新撰組に女子ひとりがまぎれこむ『薄桜鬼(はくおうき)』(10年)や『AMNESIA(アムネシア)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200126/p1)等々、視聴者と劇中事物との仲介としてクセのないプレーンな女性主人公が存在しているゲーム会社・オトメイト原作の深夜アニメ群は、野郎オタでもワリあいと観やすい作品が多いとも私見する――こういった仲介役が存在していない、イケメン男子だらけの女子向け作品などもけっこう多いので(笑)――。


 まぁ、メインターゲットの女子オタたちからすれば、


「頼むから! キモいから! アタシたちのテリトリーにキモオタ男子は入ってこないで!」


と全力で拒否られてしまうだろうけれども――どうもスミマセン(汗)――。


 本作の主演声優は、『SHIROBAKO』(14年)主演や『12歳。~ちっちゃなムネのトキメキ~』(16年)副主演の木村珠莉(きむら・じゅり)。それを知ってしまうと、木村が猫をカブって演じているようにも見えてしまって……(笑)。
ニル・アドミラリの天秤 Blu-ray 肆巻 [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.71(18年5月4日発行))


『天狼(シリウス) Sirius the Jaeger(シリウス・ザ・イェーガー)』

(2018年夏アニメ)
(2018年8月2日脱稿)


 『ジョーカー・ゲーム』(16年)や『ニル・アドミラリの天秤』(18年)のように、昭和初年代の帝都・東京を舞台として、海外から来訪してきた特殊機関のイケメンやダンディーおじさんにクール美女からなるプロフェッショナル・チームが、暗躍する吸血鬼たちと人知れず暗闘する作品である。それでもって、そのプロチームの一員たる若造主人公は、『仮面ライダーキバ』(08年)の敵怪人種族・ファンガイアもとい吸血鬼に滅ぼされた人狼(じんろう=狼男)の生き残りという設定だ。


 今となっては、エキゾチック(異国情緒)でレトロモダンな風情も漂わせてくる昭和初年の「背景美術」「服飾」「小道具」。それによって、独特の抑えた空気感も醸している。そんな中で、時には事件の捜索、時に怪しげな吸血事件、時に壮絶なアクションを繰り広げている。


 けれども、今では倒錯したことに、こーいう8頭身の男性キャラたちがシックな映像世界でアクションしている作品は、女オタしか観ないとも思われて……(爆)。


 本作はP.A.WORKS製作で、同社で岡田麿里(おかだ・まり)脚本のガンアクションもの『CANAAN(カナン)』(09年)や、旅館で働く少女を描いた『花咲くいろは』(11年)などの良作を手掛けてきた安藤真裕(あんどう・まさひろ)が監督を務めている。


 ググってみると、アニメオリジナル作品であるようだ。実に良作なのだけど、野郎オタに受けそうな話題作にはなりそうにないから、オタ友との共通ネタにはならなさそうでもある(汗)。こういったアニメは、たしかに往々にしてフインキだけの演出アニメになりそうな題材ではあるのだ。


 しかし、テキトーなところで早々に視聴を打ち切ろうとは思ったものの、意外と(?)佳作続きなので、今のところは切らずに様子見である。
天狼 Sirius the Jaeger

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.72(18年8月11日発行))


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薔薇王・純潔のマリア・アルテ・平家物語 ~人間・戦争・宗教・芸術・運気の潮目に思いを馳せる!
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