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魔進戦隊キラメイジャーTHE MOVIE・騎士竜戦隊リュウソウジャー特別編 ~TV本編ともリンクさせた劇場版の作り方とは!?

『魔進戦隊キラメイジャー』最終回・総括・後半評 ~「仲間」を賞揚しつつも「孤高」「変わらないこと」をも肯定!
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 映画『機界戦隊ゼンカイジャーVSキラメイジャーVSセンパイジャー』(22年)が公開記念! とカコつけて……。映画『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』(21年)ワクで上映された『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』&『騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ』評をアップ!


『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』&『騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ』 ~TV本編ともリンクさせた劇場版の作り方とは!?


映画『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』

東映系・2021年2月20日(土)公開)
(文・久保達也)
(2021年3月5日脱稿)

*新型コロナ禍に翻弄された『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』


 スーパー戦隊シリーズの放映終了間近の最新作と直近の前作の世界観とをクロスオーバーさせた夢の競演作品は、1996年の東映Vシネマ・ブランドのビデオ販売作品『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー オーレVS(たい)カクレンジャー』(96年)ではじまった。
 2009年の『劇場版 炎神(エンジン)戦隊ゴーオンジャーVSゲキレンジャー』(09年)以降は、東映映画の「新春興行」としても昇格する。
 さらに、2010年の『侍戦隊シンケンジャーVSゴーオンジャー 銀幕BANG(バン)!!』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110124/p1)からは、放映開始目前である次回作の新スーパー戦隊をもお披露目させる役割も兼ね備えてきた。
 そんな冬期恒例のスーパー戦隊シリーズの映画『スーパー戦隊 MOVIE(ムービー)レンジャー 2021』が公開された。


 周知のとおり、2021年1月7日(木)に新型コロナウィルス感染拡大防止の政策として首都圏をはじめ関西や中部などの地域に2度目の「緊急事態宣言」が発令された。当初は2月上旬までの予定であったハズが3月7日(日)までに延長されたために――首都圏以外は2月末に解除されたが――、「またしても公開延期か!?」という不安がマニア諸氏の脳裏をよぎったことだろう。


 前年度の2020年2月8日(土)封切だった新春興行『スーパー戦隊MOVIEパーティー』(20年・東映)では、


・最新作とその前作であるスーパー戦隊の競演を描いた「スーパー戦隊VS(ブイエス)」作品のかたちを踏襲して、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191102/p1)と『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190402/p1)をコラボレーションさせた映画『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVS(ブイエス)ルパンレンジャーVS(ブイエス)パトレンジャー』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220507/p1
・放映を直後に控えた新番組『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年)の実質的な「第1話」として製作された映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200322/p1


 以上の2本立てであり、次回作の新スーパー戦隊をそれ単独の1本の映画としてお披露目させる手法が採られるまでになっていた。


 しかし、本年2021年度の『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』では、新型コロナ禍による製作遅延の影響か、残念ながらこの時期の恒例であった「スーパー戦隊VS映画」の公開はなかった。
 その擬似的な代替処置なのだろうが、新旧2大スーパー戦隊それぞれの単独映画と次回作の新スーパー単独映画として、


・当初は半年前の2020年7月23日(木・祝)の公開だったハズが7ヶ月も延期されてしまった映画『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE(ザ・ムービー) ビー・バップ・ドリーム』(21年・東映
・『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の続編ではなく、第32話『憎悪(ぞうお)の雨が止(や)む時』~第33話『新たなる刺客(しかく)』の間に起きた出来事を描いた短編映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ』(21年・東映
・2021年3月7日(日)に放映が開始されるスーパー戦隊第45作『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)の初披露となる映画『機界戦隊ゼンカイジャー THE MOVIE 赤い戦い! オール戦隊大集会!!』(21年・東映


の豪華3本立てとなっていたのだ。3本立てといった多数の作品を上映する形式に、年長オタク世代は東映の往年の子供向け興行で完全新作とテレビシリーズのアニメや特撮のブローアップ版を上映していた『東映まんがまつり』(63~89年)を彷彿(ほうふつ)とした人もいたことだろう。
――『東映まんがまつり』自体も2019年春には復活して、2020年春にも公開! のハズだったのだが、これまた新型コロナ禍の影響によって同年夏休み時期に延期されている――


 2020年度には新型コロナウイルスによる病死や重たい後遺症を背負ってしまったり、ワクチンによる重度の副反応や失業してしまった人々のことをも配慮すれば、やはり不要不急のプチ・ブルジョワ的なゼイタク品にすぎなかったのだともいえるエンタメ業界は(汗)、どうしてもこの影響を抜きにしては語れないものがある。
 今回の『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』にもそういったことが色濃く表れていた。そのことも念頭に置きながら、各作品について語らせていただこう。


映画『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』


 本来は2020年夏興行の作品であり、本作と同時上映の予定であった作品が、同年12月18日(金)まで公開が延期されることになった映画『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME(リアルタイム)』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211114/p1)である。
 同作は撮影自体が新型コロナ禍の影響で延期となったこともあり、『仮面ライダーゼロワン』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200517/p1)のテレビシリーズ終盤のストーリー展開の中で起きた出来事ではなく、その最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200921/p1)から3ヶ月後に起きた事件を描いた続編・後日談へと内容が修正されることになった。
――そのことが功を奏して、おそらく当初に想定されていた内容よりも観客たちにより深い感動を与えることになったと思えば、「善悪はあざなえる縄のごとし」なのであって、この新型コロナ禍も全面的には悪いものでもなかったともいえるのだ――


 本作『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』が公開延期の果てについに公開されたことに対して、『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』のパンフレット(東映事業推進部・2021年2月20日発行)に掲載された山口恭平(やまぐち・きょうへい)監督やキャストたちへのインタビューによれば、以下のような経緯となっていたようだ。


・本来は2020年春に予定されていた撮影自体は延期になった
・4~5月当時に出されていた第1回「緊急事態宣言」が解除されて間もない6月~7月にかけて撮影されていた
・そのために、8月最終週に放映されたテレビシリーズ最終回の撮影後に改めて映画の撮影が再開されることになった『劇場版ゼロワン』とは異なり、公開延期による内容自体の変更は生じていない


 以上の発言を100パーセント、真に受けてしまうのはマニアの態度としてはいかがかとは思うものの、概略としてはこのとおりであったのだろう。


 つまり、本作は時系列的にはやはり「夏映画」なのである。よって、この時期のテレビシリーズとも連動していたために、エピソード25『可愛いあの巫女(かわいいあのみこ)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220501/p1)にて鮮烈なデビューを飾った、敵組織・ヨドン軍の首領・ヨドン皇帝直属の女秘書官・ヨドンナは残念ながら登場していないのだ。


 ただ、すでに夏前に撮影が終了していた映画が、実に半年以上も公開を延期せざるをえなくなった理由の一端を、この劇場版限定で登場したゲスト敵キャラの設定に対して、マニア諸氏も直感的に求めてしまったのではなかろうか?


壇蜜が演じる劇場版ゲスト悪役・ミンジョはテレビ本編の悪役・ヌマ―ジョの妹だった!(ことが公開延期の一端か!?)


 2009年に遅咲きのグラビアアイドルタレントとしてデビューし、特撮マニアから見れば70~80年代自主映画上がりの鬼才・河崎実(かわさき・みのる)監督のバカ映画『地球防衛未亡人』(14年・トラヴィス)主演や、雨宮慶太監督&井上敏樹脚本コンビによる深夜特撮『衝撃ゴウライガン!!』(13年)出演をはじめ、多方面で活躍中のタレント・壇蜜(だん・みつ)が演じるヨドン軍の「悪夢のマエストロ」(笑)を自称する魔女・ミンジョ。


 このゲストキャラクターは、『キラメイジャー』エピソード21『釣れ、ときどき達人』~エピソード22『覚悟はいいか そこの魔女』に登場した「淀(よど)みの海」に棲(す)む魔女・ヌマージョの妹として設定されていたのだ!
――ちなみに、パンフ掲載のインタビューによれば、1980年生まれの壇蜜は世代的に、『電撃戦隊チェンジマン』(85年)や『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(87年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001015/p2)どころか『世界忍者戦ジライヤ』(88年・東映 テレビ朝日)まで観ていたそうだ(笑)――


 姉であるヌマージョが目から上の部分に紫色の仮面をつけて、顔の下半分はナマ身の白い肌の鼻と口が露出したような造形の小顔のマスクだったことを踏襲して、ミンジョの方も怪人態になると赤い仮面に黒い衣装になっている。杖(つえ)でもある死神が持つ大鎌(おおかま)のような武器を手にするも、シースルーの黒いレースの布地のようなマントに黒網タイツ、青い和装の靴を着用することで「妹らしさ」も演出している。
 この怪人態は壇蜜が演じる人間態がマスクを付けただけの趣(おもむき)になっているが、網タイツ姿の軽装で戦う女敵キャラなどは、それこそ先述した『ジライヤ』に登場した女忍者たちを彷彿とさせる。マニア的にはスーツアクトレスのどなたが演じていたのかも気になるところだ(笑)。


 ヌマージョが登場したエピソード21~22は、2020年8月30日(日)と9月6日(日)に放映された。
 周知のとおり、『キラメイジャー』は新型コロナの影響による撮影の中断で、序盤の第1クール終盤の時点で放映を5週にわたって休止していた。
 これが理由でヌマージョがまだ登場していないのに、その妹だと名乗ってみせるミンジョの方が先に登場してしまうのは矛盾となってしまうことから、公開も延期になったのだ……と推測したのだが、エピソード21~22は本来ならば7月26日(日)と8月2日(日)の放送だったのだ(汗)。
 つまり、「夏映画」が予定どおりに公開されてもミンジョの登場は7月23日(木・祝)だったりするので、筆者の直感的な推測とは異なり、コロナ禍による放映中断があろうがなかろうが、実はミンジョの方がヌマージョよりも先に登場していたのであった(爆)。


 これまでのスーパー戦隊シリーズの劇場版では、レギュラー悪の組織とは縁(えん)もゆかりもさしてないポっと出のゲスト悪役なども登場したものだ。それはそれでテレビシリーズ本編のストーリー展開には影響を与えないで済むという利点はある。だとしても、テレビシリーズの悪役キャラとも何らかの因縁があるゲスト敵キャラが登場した方がドラマチックではあるので、ミンジョの出自設定それ自体は好ましいものではあるのだ。


 ただまぁ、劇場版というものはテレビシリーズを観ている子供たちの全員が観に行くような性質の作品ではない。その割合は良くも悪くもかなり低いものにはなるだろう。
 しかしその逆に、劇場版を観に来た子供たちのほぼ100パーセントは、原典であるテレビシリーズを鑑賞しているであろうことは間違いがないことなのだ(笑)。
 その意味では、劇場版に先行して登場していたゲスト敵キャラが、あとからテレビシリーズにおいて回想シーンなどのかたちで言及されたとしても、未見の幼児たちにとっては未知の事象でもあるから、「そうなっていたのだ」ということの認知はできても、少々の違和感や疎外感は残ってしまったことだろう。
 しかし、テレビシリーズの方で先行登場していた敵キャラの妹が、のちに公開された劇場版の方に登場する分には、こういったリスクはほぼなくなるのだ。
 テレビシリーズでも以前に見掛けたことがあったあのキャラの血縁者だ! 2代目! 3代目! ジュニアだ! 再生! 改造だ!……といったかたちで(笑)、劇場に観に来ていた子供たちにもおおいにナットクがいくことでもあるだろうからだ。


 その伝で、テレビシリーズの方で姉のヌマージョが先行登場した上で、改めて劇場版の方にもその妹のミンジョが登場したという、その一点においてだけは、当初の半年後になってしまった公開タイミングもあながち悪かったワケではなかったのでもなかろうか?
 その意味では結果論ではあっても、本作もまた公開延期が功を奏して、新型コロナという天災を、転んでもタダでは起きないとばかりに天祐(てんゆう=天の助け)へと変えてみせたのではなかろうか?


 ヌマージョが初登場するエピソード21~22の放映は実際には8月最終週~9月第1週となった。その撮影も放映1~2ヵ月前の7~8月だとすれば、この劇場版の撮影時期である6~7月にはヌマージョ登場場面もまだ撮影ができていなかった可能性はある。
 つまり、テレビシリーズに放映中断が生じていても、この劇場版が予定どおりに「夏映画」として公開できた場合には、テレビシリーズにおけるヌマージョ登場の回想場面は挿入ができずに、説明セリフのみでの言及で終わってしまった可能性も高いのだ。
 先のインタビューでは、公開延期による内容の修正はなかったとのことであった。しかし、この劇場版では回想シーンとして挿入されたテレビシリーズでのヌマージョ登場場面については、一度は「夏映画」として完成したバージョンには実は間に合っておらず(笑)、あとから編集で改めて追加された可能性も高いのではなかろうか?


 けれど、仮にコロナ禍がなかった場合でも、たとえ劇場版の方でテレビシリーズのヌマージョ登場よりも数日だけ先行してミンジョを登場させること自体は、製作ウラ事情などがわかってはいない子供たちにとってはやや不親切なことではある。しかし、この日数程度の微差であればたしかに些事(さじ)ではあるのだ(笑)。
 テレビと夏映画で同時期にヌマージョ&ミンジョの姉妹を登場させることで、視聴者&観客にも鮮烈に印象づけるという戦略自体も間違ってはいないのだし、有効にも機能しただろうとは思うのだ。
 そうした試みが頓挫したこと自体が『キラメイジャー』という作品にとっては致命的な弱点になっている……などといった極端なことまでは思わないものの、やや不運なことではあっただろう。


*夢の中の世界! 「夏映画」にふさわしい「夏祭り」! キラメイブルー時雨も大活躍!(笑)


 本作では、先述した映画『キラメイジャー エピソードZERO』において描かれた、ヨドン軍による宝石の国・クリスタリアの侵攻の渦中に、本劇場版におけるキーアイテムである宝石・ドリームストーンを実はミンジョが持ち出していたという「もうひとつの真実」が語られている。
 加えて、テレビシリーズでもレギュラーの敵幹部を務めている鬼将軍・ガルザを陥(おとし)入れたことで、ガルザに代わってミンジョ自身がヨドン軍での君臨(くんりん)をたくらんでいるなどといった強敵悪党ぶりも見せつけてくれていた。
 もちろん後付けではあろうが、『エピソードZERO』も含めたテレビシリーズ前半で描かれてきた世界での出来事にも接点を持たせたキャラクターとしつつ、敵幹部クラスにも匹敵する潜在的な実力を兼ね備えた存在だとして描かれていたことについては、おおいに評価したいところだ。


 この劇場版ではミンジョが宝石・ドリームストーンに呪(のろ)いをかけたことで、ストーンが「夢の宝石」ならぬ「悪夢の宝石」と化して、熱田充瑠(あつた・じゅうる)=キラメイレッドと射水為朝(いみず・ためとも)=キラメイイエローのコンビが、加えてクリスタリア宝路(くりすたりあ・たかみち)=キラメイシルバーが、それぞれ睡眠中に夢の世界・ユメーリアに閉じこめられてしまうという事件が描かれている。
 そして、速見瀬奈(はやみ・せな)=キラメイグリーン、押切時雨(おしきり・しぐる)=キラメイブルー、大治小夜(おおはる・さよ)=キラメイピンクらが、充瑠らを取り戻そうと夢の世界に潜入して奮闘する展開になっている。


 ストーリーのほぼ全編に渡ってキラメイジャー各自を分断させるという手法は、もちろん最後に6人が「強者集結」して「逆転勝利」をおさめるスーパー戦隊ならではの「カタルシス」をもたらすための実に「王道」的な作劇だともいえるだろう。
 そしてこの手法は、個々のキャラの活躍を存分に描くことで各キャラの人物像をさらに掘り下げるためでもあり、それがクライマックスのバトルシーンでも、バトルとドラマを遊離させずに、バトル自体にも高いドラマ性をもたらすこととなっていたのだ。



 夢の世界への行き来が可能だという追加設定(笑)がなされたクリスタリアの王女さまで、キラメイジャーの後見人のひとりでもあるレギュラーキャラ・マブシーナ姫の協力で、キラメイジャーでもある瀬奈・時雨・小夜の3人は制限時間付きでのユメーリアへの潜入に成功する。
 しかし、ユーメリアの世界の中にあった白昼下(はくちゅうか)であることを映像処理的に強調した「夏祭り」の縁日(えんにち)の屋台が並んでいる神社の境内(けいだい)の場で、3人はミンジョから徹底攻撃を受けてしまう!


・瀬奈と小夜は浴衣(ゆかた)姿
・時雨は夏祭りの青いハッピ姿


 夢の世界の中での3人の出で立ちは、完全に「夏映画」を想定して製作されていたことの名残りなのだろう。山口監督によれば、撮影現場ではコロナによる公開延期の可能性を想定して「夏」を意識した場面はやめておこうという声は上がらなかったようだ。


 そういえば、キラメイジャーの後見人で地球防衛組織・CARAT(カラット)の代表・博多南無鈴(はかたみなみ・むりょう)も、「夏映画」でもないのに年中、アロハシャツ姿であった(笑)。


 それは冗談だが、「夏祭り」といっても夢の中の世界での「幻想性」「非日常性」を前面に押し出すということが、このシーンのコンセプトである。だから、公開時期がズレて「夏映画」ではなくなったとしても問題はなかろうという判断だったようで、それもまたもっともなことではあったのだ。
 だが、それと同時に「夏祭り」という素材自体をどうしてもハズせなかった、きわめて重要な描写があったことも大きかったのではあるまいか?


 それは大きめの「カキ氷器」の存在である(笑)。ミンジョの魔法によって、時雨が頭部の左右から「カキ氷器」でサンドイッチされて(!)、その頭上の頭髪に大量の「カキ氷」が降ってくる描写があるからだ(爆)。


――この一連の前後における、ミンジョの魔法でミクロ化されて金魚鉢(きんぎょばち)の中に閉じこめられてしまった小夜の主観で、鉢の外からのぞきこんでくるミンジョを、中央が膨らんで周囲が遠景に退いて映って見える魚眼レンズでとらえたカットや、小夜を金魚すくいのアミですくってビニール袋につめこんで「ホ~~ラよ!」っと放り投げるミンジョを演じる壇蜜の愉快犯に徹した演技も実によかった――


 その際に、回想としてエピソード3『マンリキ野郎! 御意見無用』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200712/p1)の映像が流用されていた!
 このエピソードは同話のゲスト敵怪人・マンリキ邪面によって大きな万力(まんりき)を頭部の左右からハメられてしまった時代劇俳優でもあるイケメンの時雨が、本当は痛くて痛くてタマらないのにもかかわらず、人前ではカッコ悪い部分を見せたくないがために必死でヤセ我慢をして、なぜだか不条理にもそのままの格好で時代劇映画の撮影が続行されていく(爆)といった珍エピソードでもあったのだ。


――ちなみに同話のサブタイトルも、東映の往年の人気映画シリーズ『トラック野郎 御意見無用』(75年・東映)のパロディである(笑)――


 『エピソードZERO』やエピソード1~2では、クールなイケメン役者として描かれたばかりの時雨が、エピソード3で早くもネタキャラと化したことには、近年のスーパー戦隊シリーズではいつものことだとはいえ(爆)、当然に賛否両論はあるだろう。
 21世紀以降のスーパー戦隊シリーズでも、時雨のようなクールなキャラがコミカルな面を見せるのは第3クール以降などの場合が多かったものだ。しかし、個人的には時雨が開幕早々にネタキャラ化したことには賛同する立場だ。


 前作『騎士竜戦隊リュウソウジャー』のバンバ=リュウソウブラックなどは終盤までコワモテのままで、それもまたひとつの個性ではありキャラの立て方でもある。
 しかし、やはり今時の「子供番組」として主人公たちの親しみやすさを強調することを、ストーリーや作劇的技巧などではなく登場人物の演技などでも表現するのであれば、『キラメイジャー』の明朗快活な作品カラーからしても、カッコいい系はもうひとり為朝がいるので、時雨のネタキャラ化もアリだったとは思うのだ。


 頭に「カキ氷器」をハメられてしまった時雨は「悪夢の再来!」だのとあわてふためく(笑)。
 我々視聴者・観客たちにとっても、時雨といえば即座に頭を巨大な万力に挟まれた姿(爆)が思い浮かぶほどに、あのエピソード3はカッコいいのにコミカルな時雨のキャラを確立した、90年代以降のスーパー戦隊シリーズらしさに満ちあふれた良編ではあった。
――70~80年代まではゲスト敵怪人はコミカルなことをやらかしても、戦隊メンバーたちはここまでオーバーアクションのコミカルな演技は披露しなかったものなので(笑)――


スーパー戦隊恒例の途中参加の「6番目の戦士」が「夏映画」で活躍することの困難!(笑)


「キラメイシルバーの登場は例年の追加戦士よりも早かったので、そこはラッキーでした。去年の『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の映画も観たのですが、タイミング的な問題で、リュウソウゴールドのカナロは冒頭に出てきてナンパするだけだった(笑)。宝路は、他のメンバーと別行動が多かったとはいえ、最後は6人で変身して、みんなで一緒に戦っているので、そこは良かったなって」

(クリスタリア宝路役 庄司浩平(しょうじ・こうへい)インタビュー 『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』パンフ掲載)



 早いといえば、『キラメイジャー』では「6番目の戦士」ことクリスタリア宝路=キラメイシルバーは、第1クール終盤のエピソード12『ワンダードリルの快男児』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220501/p1)で初登場していた。
 テレビシリーズの放映中断がなければ、同話は本来は2020年5月24日(日)、つまり同年7月23日に公開されたハズの「夏映画」の2ヶ月前の放映を予定していたのだ。
 氏の話にもあるように、『リュウソウジャー』の夏映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ! 恐竜パニック!!』(2019年7月26日(金)公開・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190818/p1)においては、「6番目の戦士」ことカナロはリュウソウゴールドにはいっさい変身せずに、ホントにナンパするだけであった(爆)。
 カナロが『リュウソウジャー』に初登場したのは第14話『黄金の騎士』だったが、同話が放映されたのは2019年6月23日(日)であり、「夏映画」公開の1ヶ月前のことだったのだ。


 「夏映画」は映画作品であるだけにテレビシリーズよりも時間をかけて撮影する。前準備として通常は複数体が新規に登場する着ぐるみゲストキャラのデザインや造形などでも各々で1ヶ月は要することだろう。イベント性の高い映画だけに見応えと相応の尺数を要した特撮シーンのカット数や合成シーンにかける後処理なども必然的に多くなることから、テレビシリーズ中盤から参加する「6番目の戦士」登場編の撮影どころかその脚本執筆よりも数ヵ月は先行して製作に着手していることが常でもあるのだ。
 そして、スレたマニアからすれば、「6番目の戦士」の「変身前の中の人」と「変身後のヒーロー」の前後がともにあとで撮影した「別撮り」であって編集で追加挿入していることまでわかってしまったりもするものなのだ(笑)。


 夏映画『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー en film(アン・フィルム)』(18年)なども、途中参加の「6番目の戦士」である高尾ノエルが登場早々に退場してしまったりなど(汗)、スタッフたちのギリギリのところでの苦渋の撮影や編集が偲ばれてしまう。
 「6番目の戦士」であったリュウソウゴールドなどもおそらく着ぐるみスーツの造形自体も間に合わないと見込まれたために、特に玩具会社・バンダイあたりにはお詫びを入れに詣(もう)でに行ったり(爆)、特定個人が独断で決定できるような事項でもない重大事なので、スタッフやプロデューサー連中も会議を重ねた上に、涙を飲んでやむをえず……といったところでの処置だったのではなかったか? といった憶測なども想起されてくるのだ。


 とはいえ、このへんの反省もあってスケジュール調整もうまく行ったのか、この劇場版では「6番目の戦士」ことキラメイシルバーも活躍ができている!――実際にはテレビシリーズの5週分が放映休止となったために、初登場のエピソード12が放映されたのは2020年6月28日であり、カレンダー・ベースでいえば、実は前年度のリュウソウゴールドよりも遅くなってしまったのだけど(笑)――


 そのおかげで、今年度の「夏映画」では宝路=キラメイシルバーもふつうに活躍しており、冒頭からキラメイシルバーVSミンジョの対決も描けている。
 宝路の義理の妹であるマブシーナ姫の回想として、平和だったころのクリスタリア国で、父のオラディン王、母のマバユイネ妃(ひ)、母国を裏切る前の叔父(おじ)のガルザとともに宝路が楽しく過ごしている描写なども挿入することで、地球とクリスタリアをまたがっている宝路の特殊な出自を改めて「絵」として観客に示すこともできていたのであった。


*「レム睡眠」モチーフの怪人! 輪投げモチーフの巨大怪獣! 夜霧の巨大特撮バトル!


 この「夏映画」のゲストキャラとしては、ミンジョが従えているゲスト敵怪人こと闇獣・レムードンなる等身大の怪人が登場している――夢を見ている際の睡眠状態を意味する「レム睡眠」の「レム」から採ったネーミングなのだろう(笑)――。
 相手を眠らせるという能力から、ヒツジがモチーフとなっているのは当たり前にすぎるものの、腕やヒザ、胸や腹など身体の各所にヒツジの頭部、それもヒツジというよりかは猛牛を思わせる獰猛(どうもう)な紫色の顔が造形されているカオス的なデザインである。劇場版ならではのボリュームがある造形によって、最強怪人としての趣が濃厚に感じられるのは好感が持てるところだ。


 加えて、このレムードンのみならず、先述した縁日の場面にはゲスト巨大怪獣であるワナゲヒルドンを登場させている――輪投げ用の棒を頭部のモチーフとした邪面獣であった(笑)――。
 この巨大怪獣の登場によって、瀬奈の相棒・魔進マッハ、時雨の相棒・魔進ジェッタ、小夜の相棒・魔進ヘリコといった、同作おなじみのクルマやメカ型でも意志を持ったレギュラーの巨大メカ生命体たちが颯爽(さっそう)と駆けつけてくるカタルシスにあふれた場面も構築できている。
 実景との合成による特撮巨大バトルが用意されているのも、物語の中盤で子供たちを飽きさせないための配分としては実に妥当なところだろう。


 ラストでは、巨大化した敵怪人ことレムードンにミンジョ自身が巨大な「邪面」と化して合体したミンジョレムードンVS戦隊巨大ロボ複数体とのバトルも描かれる。
 海面を手前に夜の湾岸を再現した特撮ミニチュアセットに夜霧(!)まで発生させており、それを照明で照らすことでリアルさと幻想性を両立させた特撮場面となっていて、いつものテレビシリーズともまた異なる劇場版ならではの「スペシャル感」をも醸(かも)し出していた。
 新造ミニチュアなのだろう背の高い鉄骨コンビナート群の工業地帯で展開される特撮巨大バトルも実にすばらしかった!


*魔進ザビューンもテレビ本編でのヌマージョとの因縁を忘れずに言及してみせることの意義!


 そこにサメと特急列車の特性を兼ね備えた、魔進ザビューンも駆けつけてくる!


 この魔進ザビューンもまた、テレビシリーズを鑑賞してきた方々であればご存じのとおり、ミンジョの姉・ヌマージョが登場したエピソード21~22でデビューを飾った意志を持ったメカ生命体であるのだ。


 そして、ミンジョがあのヌマージョの妹だと知っていたザビューンは、


「オレにとって因縁の相手だ!」


などと叫んでみせている!


 ヌマージョ&ミンジョの姉妹とともに魔進ザビューンもまた、本来ならば前年2020年の夏にテレビシリーズと劇場版で同時期に活躍を描くことで、視聴者と観客にちょっとしたサプライズを与えるねらいもあったようだ。


 『キラメイジャー』テレビシリーズでは、レギュラーの正義側と悪側のキャラクターに人物相関図的な関係性を多数持たせることで、その対角線同士の関係性を順繰りで描いていくことだけでも、人間ドラマを発生させることができている。
 しかし、「夏映画」限定のゲスト敵キャラの点描程度の出自設定だとはいえ、テレビシリーズの一時放映中止や劇場版の公開延期のために、劇場版とテレビとで敵キャラの設定が同時連動! といったことが果たされなかったことは、スタッフたちにとってはやや不本意なことだったかもしれない。


 けれど、逆に云うならば、先にテレビシリーズでヌマージョがまだ登場する前なのに、魔進サビューンに「ヌマージョの妹だ!」などと云われても「?」となってしまったことだろう。
 よって、子供たちにも先にテレビシリーズでヌマージョに対する認知をさせた上で、公開が伸び伸びになっていたこの劇場版を観に来た観客の100パーセント近くが知っているであろうヌマージョの妹を登場させた方が「!」といったサプライズがあったことだろう。
 つまり、このミンジョが登場する劇場版がこの時期に公開されたこと自体もまた、映画の神さまの配剤ではなかったか? とコジツケすることもできるのだ――あくまでもコジツケ・文学的レトリックであって、ガチでそこにオカルト的な神意などを観ているワケではありませんヨ(笑)――。


発端は敵幹部ガルザ! 今後のガルザの「光落ち」の伏線でありつつも、その困難をも同時に描く!


 本稿の発表は公開からまだ間もない時期を予定しているために、あまりにネタバレな詳細に対する記述は控えておこう。
 などと云いつつ、最大のネタバレをさせてもらうが(笑)、圧巻なのは本作で描かれた事件自体がテレビシリーズではレギュラー敵幹部として登場しているガルザが睡眠中に見ていた「夢」が発端(ほったん)であったと明かされたことだ。


 マブシーナ姫によれば、人々を夢の世界へと誘(いざな)うという宝石・ドリームストーンを使うことで、かつてのオラディン王は時々、マバユイネ妃・マブシーナ姫・義兄の宝路・叔父のガルザたちに心地よい夢を見させてくれてもいたというのだ――麻薬による幻覚や現実逃避のようにも見えてしまう映像なので、やや引っかかるところもあるのだが(笑)――。
 つまり、ガルザは過去にこの夢の世界・ユメーリアに来たことが幾度もあったということにもなるのだ!


 クライマックス直前の場面では、いまだに夢の中の世界からの脱出ができていない充瑠と為朝が、いつもの「鬼将軍」としての鎧(よろい)を脱ぎ捨てて、その素顔をさらしていた本来のガルザに遭遇する。そしてその場所は、かつて兄のオラディン王が見せてくれた夢の中の舞台であった、美しい花々が咲き乱れる平穏な庭園だったのだ!


 夢には人々の願望が反映されているとはよく云われるところではある。もしもガルザが完全に「鬼将軍」に染まりきっていたのならば、オラディン王が見せてくれた「良き想い出」としての場所なぞは、夢にも出てこなかったことであろう。
 つまり、ガルザは心の奥底では平和だったころのクリスタリア国にまだ未練が残っているということを、未就学児童に対してもビジュアルだけで理解させることができる描写となっているのだ。


 その一方で、自分を出し抜こうとしたミンジョに対してブチ切れたガルザは、その首をつかんで高々と持ち上げて、「キラメイジャーを倒したら許してやる!」などと無慈悲で激昂気質である悪党ぶり全開の捨てゼリフを残して、この映画からは退場していくのであった……


 同一キャラに対して、その善悪の両面を描いてみせるあたりがまたタマらないのだ。
 ガルザの声を担当している中村悠一(なかむら・ゆういち)による、悪党ではあってもイケメンなボイスによる演技もまた、このガルザの善悪両面性を感じさせることに貢献していた。



 ともすれば、劇場版限定のゲスト敵キャラを強調するがあまりに、テレビシリーズのレギュラー悪がまともに登場しない場合も、かつてのスーパー戦隊シリーズの劇場版では見られたものだ。
 それはそれで、悪の組織が劇場版での出来事を引きずらなくてもよいので整合性を考慮する必要性が減るという製作側での利点や便宜(べんぎ)もあったのだろう(笑)。
 しかし、連続テレビドラマとしてはそれはやや不自然なことではあったし、何よりも物語的にはイマイチ面白くない趣向なのだ。
 だから、テレビシリーズと劇場版が相乗効果で盛り上がりを得られるように計算されて作劇されており、シリーズ終盤でのガルザの改心の可能性をも伏線として描写できていたという意味では、「夏映画」としては公開ができなかったとしても「秋映画」としては公開してほしかった気はするのだ。
――ただし、繰り返しになるけど、そのことが『キラメイジャー』という作品の致命的な弱点などにはなっていないことはくれぐれも念のために指摘しておきたい。小さな瑕瑾(かきん。宝玉に付いていた小さなキズ)という程度ではあったのだ――


 この劇場版ではメインゲスト悪役とスーパー戦隊の活躍を描いたのみならず、ある意味ではこの劇場版の本スジからは脱線もしているガルザの「光落ち」の可能性までもが描けていた。こういったシーンは脚本や準備稿にはあっても尺の都合で撮影されなかったり、撮影されても最終的にはカットされてしまいそうなシーンではあるのだ。
 しかし、これらのシーンはきっちりと残されていた。これは近年のスーパー戦隊の「夏映画」が約30分だったことに対して、今回は約40分と尺が長くなったことも大きかったのだとも思われる。
 これもまた、比較的に長尺の映画『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』とは同時上映にはならなかったことによる、公開延期が招いた功の部分であったのかもしれない。



 最後になるが、実に中性的で神秘的なドリームストーンの声を演じたのはナンと! かの庵野秀明(あんの・ひであき)監督の代表作にして、完結編映画『シン・エヴァンゲリオン』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)の公開も押し迫っているSFロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ(95年~)の主人公少年・碇シンジ(いかり・しんじ)の声などで知られる、今ではベテランの緒方恵美(おがた・めぐみ)であった!
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映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ』


 「騎士」と「恐竜」をモチーフとした『騎士竜戦隊リュウソウジャー』。「恐竜」をモチーフとしたスーパー戦隊であることから、歴代の恐竜モチーフ戦隊たちとも同様に、関係各位は「王道」「明朗」「戦闘活劇」をねらっていたことは明白ではあった。
 しかし、特撮ヒーロー作品初参加のメインライターによるシナリオは、実際には近年の特撮ヒーロー作品としてはやや人間ドラマ志向のマジメな作風となっており、これが災いしてか「王道」「明朗」「戦闘活劇」といった方向にはハジけきれずに、近年のスーパー戦隊作品としてはやや「変化球」でシメっぽい印象が残ってしまったことが残念ではあった。
――もちろん、我々年長世代の原体験作品でもある70年代の日本のヒーロー特撮の方が、同作よりもよほどダークであったりシメっぽかったりもするのだが、今時の子供向け特撮としては、もっと明るく躁的な作風の方が、子供たちにも年長マニアたちにも好まれるであろうし――。


 中でも最も惜しいと思ったのは、リュウソウジャーたちの姿にもよく似ている紫色の最強の鎧(よろい)であったガイソーグ(鎧装具)の扱いだ。
 このカッコいいダーク戦隊ヒーローといったルックスのガイソーグは、シリーズを通じて複数人の変身者を経由していくといった変化球の「悪の鎧」扱いであった。
 しかし、最終的には「光落ち」してリュウソウジャーの「7番目の戦士」の変身スーツとして颯爽とカッコよく大活躍して、作品自体の活劇色やヒーロー性をも高めてくれるハズだと、子供たちも年長マニア諸氏も皆がそのように思っていたことであろう(笑)。


 リュウソウジャーたちと同じく恐竜時代のリュウソウ族出身の好青年に見えたものの、実はガイソーグに心を支配された敵役としての正体を明かしたナダ青年。
 リュウソウジャーの助けによって鎧の呪縛(じゅばく)から解放されて、第32話ではようやく仲間となることができていた。
 関西弁の戦士にして、この手の新人養成番組としては珍しく、演じている役者さんにも一番ナチュラルな演技力があって、主役としてキャスティングされても不思議ではなかったような存在感もあった彼であれば、第33話以降にレギュラーである「7番目の戦士」こと紫色の戦士・ガイソーグなりリュウソウパープルなどと名乗って大活躍して、作品自体の血液温度も大いに高めてくれるのかと思いきや……
 いきなりの「退場」(爆)となってしまったことには、意外性はあってもカタルシスには欠如した詐欺的な意外性でもあったのだ(笑)。


*『騎士竜戦隊リュウソウジャー』第32.5話でもある哀感あふれる短編作品の是非!


 今回の「特別編」はその第32話と第33話の間に起きていた出来事を描いた「第32.5話」でもある。
 『リュウソウジャー』の東映側のチーフプロデューサーだった丸山真哉(まるやま・しんや)が自ら脚本を執筆し(!)、同作のメイン監督ではなかったものの、実は『リュウソウジャー』の監督陣では最も多く登板していた坂本浩一監督がアクション監督も兼任した、わずか15分の短編である。


 おそらく本来であれば、この『スーパー戦隊MOVIE』は「冬映画」恒例の『スーパー戦隊VS映画』であるところの映画『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220507/p1)をメインディッシュに据えたいところだっただろう。
 しかし、このコロナ禍でそれが叶わなかったための代替処置として、


・本作『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の短編映画
・前述してきた公開延期に見舞われてきた『魔進戦隊キラメイジャー』の単独映画の初披露
・後述するスーパー戦隊次回作『機界戦隊ゼンカイジャー』の短編映画


 以上の3本立てで、看板的には前年度と同様の3大スーパー戦隊を登場させることで、例年の「冬映画」にも劣らない「お祭り感」や「メジャー感」を醸そうといったところが趣旨だったのであろう。
 その意味ではこの短編映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編』もまた、『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』の代替の一環として急遽、製作が決定したのであって、ロケ地も1カ所のみに限定されているので(!)、いかにも1~2日だけで撮影も完了(爆)させたような突貫工事で仕上げたのであろうことも偲ばれてしまうのだ(笑)。


 テレビ特撮『ウルトラマンタイガ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210606/p1)においても、昭和のウルトラマンタロウの因縁(いんねん)の敵として設定されながらも、その出自や行動の動機については結局は語られなかった同作のレギュラー悪であるウルトラマントレギアを、動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)にて配信された短編作品『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀(いんぼう)』(20年)では、後付けであってもようやく掘り下げていた。


 こういった発信媒体をまたいだキャラクターの個性や去就(きょしゅう)の補完はややマニアックにすぎる部分もあるかもしれないが、おそらく年長マニアのみならず子供たちでも喜びそうな趣向ではあるだろう。
 よって、テレビシリーズでは語られなかった秘史を描くような手法には筆者個人もおおいに賛同はするのだ。


 加えて、ナダ青年の早すぎる死亡にはスタッフ側にも未練はあっただろうから、東映側のプロデューサー直々の脚本と、先の『ウルトラギャラクシーファイト』も手掛けた坂本監督の意向もあってか、本作でもナダが「退場」する要因となった「隠された真実」が明かされている。


 リュウソウジャーの一員には選ばれずに長年の間、鬱積(うっせき)してきたナダの憎しみの感情は、関係各位の尽力で第32話でついに解消されることとなった。
 しかし、そのことでナダがガイソーグを装着変身する際に使用していた恐竜の横顔をモチーフする小型変身アイテム・ガイソウルは、彼の憎しみを燃料としていたためにエネルギーも空っぽになっており、そのために超人ヒーローとしてのパワーをすでに発揮できない状態になっていたとしたのだ。
 劇中ではここまで明瞭にはセリフ化されてはいないものの、それがつづく第33話にてコウ=リュウソウレッドをナダが救出した際に致命傷を負ってしまった遠因となったのだとも明かされるのだ。


 そういった意味では、ヒーローたちにも何らかのダークサイドや哀しい過去・負い目などを与えて「哀愁」を漂わせるような手法は、実は往年の1970年代のヒーロー像にも近しいものがあったのだ。


 ゲスト悪役としては、『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)第8話『神秘の力』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210828/p1)でも変身怪人ピット星人姉妹の姉の人間態を務めた宮原華音(みやはら・かのん)が演じる、人間型のマイナソー――『リュウソウジャー』における人間のマイナス感情が具現化したゲスト敵怪人――が登場している。
 彼女と変身前のリュウソウジャーとの壮絶なバトルも描かれているが、これもまた着ぐるみ敵怪人を新造する予算がなかったゆえの苦肉の策ではあったのだろう(笑)。
 敵組織・戦闘民族ドルイドンの幹部・ワイズルーとクレオンは登場している。しかし、そもそもリュウソウジャーに変身するのがコウ=リュウソウレッドだけでほかのメンバーが変身しないあたりは、「子供向け」映画としてはいかがなものだろうか?(汗)


 まぁ、『キラメイジャー THE MOVIE』や『キラメイジャーVSリュウソウジャー』の興行形態の変更で、突貫工事で用意せねばならなくなった企画なのだろうから、時間のない中で再度集結してくれて、低予算の中でも1本の作品として成立させていたキャストやスタッフ陣にはやはり感謝すべきではあるのだろう。


 明朗な作風で仕上げた『キラメイジャー THE MOVIE』と『ゼンカイジャー THE MOVIE』の箸休めとしての短編となった本作なので、メインディッシュの作品ではない以上は、ちょっとハズしてやや哀しげな作風とすることもアリだったとは思うのだ。
 あくまでも今時の子供向け番組のつくり方としては傍流ではあるのだろうが、シメった哀しげな余韻を残している本作もまた、子供たちへの情操教育としての効能もおおいにあるだろうから、完全に否定されるべきものではないことも確かなのだ。


*ナダ青年が7人目の戦士として、6人のキラメイジャーとも共闘する作品が観たかった!(笑)


 そこまで強調した上であえて云わせてもらうのだが、彼の未来にはたとえ「死」が待っていることが確定しているのだとしても、ナダ青年が再登場するのであれば、皆が観たかったのは、ゲスト敵怪人の横暴に遭遇して、彼が7人目のキラメイジャーへと変身し、6人の仲間たちとともに名乗りを上げたり、切った張ったの大活躍をする戦闘シーンだったのではなかろうか!?


 もちろん、ゲスト敵怪人を新造するのにも、スーツアクターを集めるのにも予算がかかったり、予算の確保ができてもスケジュールの調整で断念せざるとえないことがあるということも、スレたマニア的にはよくわかる(笑)。
 慈善事業ではない期限も決まったビジネスでもある以上は、「完成させられませんでした!」などではなく(汗)、つくり手には断腸の思いでも「断念」することを決断して、その枠の範疇の中で最善を尽くすことが必要である場合もあるのだ。そして、それは我々の人生や実社会での仕事においても同じことなのである(汗)。


 ラストは「みんなで卓球やろう!」というシーンで終わっている。つづく第33話の冒頭でリュウソウジャーの面々が卓球に興じる描写があったので、それにつなげているのは好ましい趣向ではある。熱心なファンの方々にとっては実に嬉しい趣向だろうし、このような処置程度であれば同作を未見の観客にも疎外感や内輪ウケ臭を抱かせるようなものでもないのだし、むしろ積極的にやっておくべきことでもあるだろう。
――ただし、この第33話の冒頭シーン自体は、劇的「イベント」ではなく単なる「日常」描写なので、多くのマニア諸氏もすでに忘れていたことであろうが(笑)――
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2021.3.5.


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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映画『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』 ~2大戦隊共闘を劇的に盛り上げるための助走台ドラマとは!?

東映系・2021年4月29日公開 同年8月4日に東映ビデオから映像ソフト発売)
(文・久保達也)
(2021年5月21日脱稿)

*新型コロナ感染拡大下における製作・公開実現に、まずは感謝!


 オリジナルビデオ作品として製作しつつも、期間限定で一部の劇場で上映も行うブランドとして立ち上げられた『東映 V CINEXT(ブイ・シネクスト)』の最新作として、映画『魔進(マシン)戦隊キラメイジャーVS(たい)リュウソウジャー』(21年・東映ビデオ)がこのほど公開された。


 本作のパンフレット(東映ビデオ・2021年4月29日発行)に掲載されたスタッフ&キャストインタビューでは、このコロナ渦での製作中止を危惧していたと皆が一様に語っており、その状況下で製作・上映にこぎつけた関係者の方々にまず謝意を表したい。
 ただ、公開直前に東京都・大阪府兵庫県京都府、つまり最も集客が見こまれる東京&関西の地域に実に3度目となる緊急事態宣言が発令され、映画館にも休業要請がなされたことから、個人的にはまた公開延期になると思っていただけに、無事に鑑賞できたことには先述した該当地域在住の方々に対して罪悪感が募ったりもするのだが……


 さて、スーパー戦隊のいわゆる「VS映画」としては、本作は2020年2月8日(土)公開の『スーパー戦隊MOVIE(ムービー)パーティー』の中の1本として上映された映画『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVS(ブイエス)ルパンレンジャーVS(ブイエス)パトレンジャー』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200321/p1)につづく作品である。
 周知のとおり、『魔進戦隊キラメイジャー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200712/p1)のテレビシリーズは2021年2月28日で放映を終了したが、その2ヶ月後に公開された本作は実はテレビシリーズの続編ではない。
 敵組織だったヨドン軍の幹部=ガルザ・クランチュラ・ヨドンナが登場し、ガルザとヨドンナがラスボスのヨドン皇帝の復活を示唆(しさ)する描写により、時系列としてはテレビシリーズの最終決戦直前の出来事だと示されているのだ。


 元々、新旧2大スーパー戦隊の「VS映画」は年明け早々の新春映画としての興行だったのであり、テレビシリーズの現行作品が放映終了を間近に控えた時期にあたるために、今回も内容的にはそれを踏襲(とうしゅう)したといえるだろう。
 これは前年2020年の「夏映画」として公開されるハズだった映画『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE(ザ・ムービー) ビー・バップ・ドリーム』(21年・東映)が新型コロナウィルスの影響で2021年2月20日公開の『スーパー戦隊MOVIEレンジャー』の一編として上映されるまで公開が延期されていなければ、今回の『キラメイジャーVSリュウソウジャー』が本来ならばその『スーパー戦隊MOVIEレンジャー』の中での公開を意図して企画されたことをもうかがわせるものだ。


 やはり、メインターゲットの子供たちの観点からすれば、『キラメイジャー』が放映終了して次作『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)に興味関心が移っているであろう時期なので、公開のタイミングとしては微妙に間が悪いかとも思えるし、個人的にも期間限定で上映館もかぎられた『V CINEXT』ではなく、全国ロードショーでの興行にしてほしかったという想いはある。
 ただ、高年齢層向けのファンムービーとしての性質が強い『V CINEXT』だからこそ、テレビシリーズの劇場版としては時期的に少々ムリのある今回のような企画が実現できたことも事実として受けとめるべきだし、『キラメイジャー』の大ファンとしては素直に喜びたい。


*異例! 劇中内での映画のかたちで描かれた、新旧2大戦隊の「VS」!(笑)


 さて、今回はテレビシリーズの『キラメイジャー』中盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220501/p1)以降の幹部レギュラー悪として登場した、ヨドン軍のよどんだマドンナ(笑)であるヨドンナがメインの悪役として全編に渡って活躍が多く描かれる。
 先述した映画『キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』は、時系列的にはヨドンナ登場以前の出来事だったために、劇場版でのヨドンナの活躍自体が本作は初となるのだ。


 ヨドンナを演じる現役コスプレイヤー桃月なしこチャンの名で検索しては彼女のグラビアでの仕事ぶりを見て喜んでいる筆者としては、ヨドンナの劇場版への登場が今回が最初で最後とならないことを祈らずにはいられず、今後も遠慮なく何度も復活してほしいものだ(笑)。
 まぁ、『V CINEXT』とはそのような放映終了後も根強く作品を支持する熱心なファンに向けたものなので、時系列を云々(うんぬん)するよりも自身が好きなキャラの活躍の方を優先して楽しむのもアリだろう。



 物語自体は、ヨドンナがプロデューサーを務めておりヨドン軍の怪人・ムービー邪面と『リュウソウジャー』の敵組織・戦闘民族ドルイドンの怪人・カントクマイナソーが撮影している映画の世界にキラメイジャーとリュウソウジャーが取りこまれてしまい、「VS」の果てに共闘へと至るようになっていくという展開だ。
 筆者にかぎらず、「映画メイキング・ネタ」なので、本作も坂本浩一監督の担当作品かもしれないと推測してしまった特撮マニア諸氏は相当数にのぼることだろう(笑)。


・『キラメイジャー』序盤ではクールなキャラだったハズの押切時雨(おしきり・しぐる)=キラメイブルーを「ネタキャラ」にしてしまった諸悪の根元(爆)である『キラメイジャー』エピソード3『マンリキ野郎! 御意見無用』
・『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)のブレイブ40『グッとくーる! オッサンはつらいよ』


などなど、近年のスーパー戦隊シリーズの劇中で「映画のメイキング」を題材としたエピソードは、やはり坂本監督の担当作だとの印象が強いからだ。


 ちなみに、時雨が「ネタキャラ」化したことについて、監督は本作のパンフで「責任を感じている」と語っているが(笑)、時雨を演じた水石亜飛夢(みずいし・あとむ)もこのエピソード3の時点で「おもしろくしよう」とするクセがついたのだとか(爆)。


 ヨドンナは「ヨドン映画」を全世界に公開することで、地球をヨドン軍の故郷・ヨドンヘイムと同じ環境にしようとたくらんでいる(笑)。その映画のタイトルが『ヨドン原人』である。
 その元ネタは、怪獣映画『キングコング』リメイク版(76年)の世界的な大ヒットにあやかろうと香港(ホンコン)の映画会社ショウ・ブラザーズが1977年に製作して日本では1978年3月11日に松竹系で公開された、身長25メートルに巨大化した北京原人(ペキンげんじん)が香港の摩天楼で大暴れする特撮映画『北京原人の逆襲』(77年・香港)や、90年代に東映岡田裕介(おかだ・ゆうすけ)社長の鶴の一声でつくられるも大ゴケしてしまった怪作映画『北京原人 Who are you?』(97年・東映)なのだろう。
 前者は世代人にはいわゆる「特撮冬の時代」の70年代後半に公開された特撮怪獣映画として、当時の特撮マニアや子供たちの注目も集めた映画ではあったし、小学生であった坂本監督も同作を夢中になって観たことかと思われる。
 ちなみに、日本での『北京原人の逆襲』の同時上映は、あの有名劇画原作者・梶原一騎(かじわら・いっき)の弟でもあり、同じく漫画原作や極真カラテの師範代も務めていた真樹日佐夫(まき・ひさお)が自身で主演(!)も果たした映画『カラテ大戦争』(78年・松竹)であった(爆)。


 その「ヨドン映画」の中で、


・「アクション映画」では、速見瀬奈(はやみ・せな)=キラメイグリーンが「ミニスカポリス」、トワ=リュウソウグリーンが「大泥棒」――全身が白のスーツでとても「泥棒」には見えないが(笑)――
・「時代劇映画」では、押切時雨=キラメイブルーが「美剣士」、バンバ=リュウソウブラックが「浪人(ろうにん)」
・レディース映画では、大治小夜(おおはる・さよ)=キラメイピンクとアスナリュウソウピンクがともに女暴走族の「総長」
・「ギャンブル映画」では、射水為朝(いみず・ためとも)=キラメイイエローが「ギャンブラー」、メルト=リュウソウブルーが「ディーラー」を


それぞれが演じる劇中劇の中で、役柄としての「VS」が描かれるかたちだ――ちなみに、ギャンブル映画のタイトルは、故・松田優作の主演映画『最も危険な遊戯(ゆうぎ)』(78年・東映)が元ネタである『最もヨドンだ遊戯』であった(爆)――。


 まぁ「VS」とはいっても、それこそアニメ映画『マジンガーZ(ゼット)対デビルマン』(73年・東映)のむかしから、正義のヒーロー同士が全面的に争うハズもなかったのだが(笑)。


 こうした構図は新旧東映ヒーロー共演映画では毎度のことではある。特に現行テレビ作品の撮影と並行している役者たちをその撮影現場から引きはがして別の映画に全員集合させることはスケジュールの調整的にも困難なことだが、ひとりずつであれば別撮りで済むことから相対的にはラクだし、「やはりVSなのでなんらかのかたちで争うくだりを入れたい」という東映の塚田英明プロデューサーの意見を反映させることで生み出されたようだ。
 そのために、本作では変身前の人間態を演じる役者たちがド派手なアクションを繰り広げる場面がかなりの部分を占めることとなり、その中でキラメイジャー&リュウソウジャー個々のメンバー間の互いに対する想いの変遷・関係性の変化が、共闘に至る過程としても点描されていく。


 塚田がチーフプロデューサーを務めて、坂本監督も多くのエピソードの演出を手がけた『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・ http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)や『仮面ライダーフォーゼ』(11年)、オリジナルビデオ作品『宇宙刑事 NEXT GENERATION(ネクスト・ジェネレーション)』(14年・東映ビデオ)に『スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー』(17年・東映ビデオ)などもそうだったが、本編の人間ドラマと特撮のバトルアクションを決して分け隔(へだ)てることなく、双方を絶妙に融合させながら盛り上げていくという両氏の方法論はやはり正しいと実感させられたものだ。


 実に意外だったのだが、テレビシリーズの『キラメイジャー』では変身前のキャラにアクション演出がほとんどなく、戦うのは常に変身後であったとパンフ掲載のキャストインタビューで皆が語っていたことである。そういえば、そうだったかもしれない。『リュウソウジャー』のキャスト陣が久々に披露した見事なアクションに、『キラメイジャー』の若手役者たちは圧倒されたとか。


 坂本監督によれば、キラメイレッドこと熱田充瑠(あつた・じゅうる)を演じた小宮璃央(こみや・りお)と為朝を演じた木原瑠生(きはら・るい)から「アクションやりたいです!」と直談判されたほどだそうだ。
 そのような彼らの要望を最大限にかなえるとともに、「『キラメイジャー』キャスト陣、初の本格的アクション!」をウリにするためにも、本作はアクションが増量されたようにも思える。


 ちなみに、劇中内での「アクション映画」の場面でも、台本にはフランスの軍事訓練を出自とする、障害物があるコースを自身の身体能力だけで素早く通り抜けるスポーツ「パルクール」のように……という指定があった。そして、キラメイグリーンこと瀬奈が人間を飛び箱代わりにして跳躍(ちょうやく)するアクションなどは、スタントではなく瀬奈を演じた新條由芽(しんじょう・ゆめ)自身によるものだったとか!


 それにしても、ヨドンナプロデューサーの意向が強すぎてムービー邪面が思うように映画が撮れずに悩むさまは、坂本監督のかつての実体験が入っているとしか思えないが、業界「あるある」ネタでもあるのだろう(爆)。
 映画とは実は脚本家がつくるものではなく、監督がつくるものでもない。それ以上にエラい役職であるプロデューサーが強い権限を持っていることの傍証にもなっている。


*同色キャラ同士ではなく、年少キャラ同士・ネタキャラ同士・作戦参謀同士での「VS」で、各キャラの個性を出す!


 ムービー邪面はテレビシリーズの『キラメイジャー』に登場した敵怪人こと邪面師たちのように、カメラをモチーフにした頭部の口の周囲にフィルムが巻きついた造形以外は簡素なスーツにマントの「出(い)で立ち」だが、カントクマイナソーはかなり重厚な着ぐるみとして造形されている。
 腹部にある大きなクチバシや脚部、背中の羽根はおそらくは「撮り」と掛け合わせて「鳥」をモチーフにしたのかと思われる(笑)。その頭部には映画監督用のディレクターズチェアに座った人間の髑髏(しゃれこうべ)がまんま造形されており(!)、右手にカチンコ、左手にメガホンを所持しているとはいえ、一見かなりグロテスクな印象だ。


 もっとも、『リュウソウジャー』の一応の幹部級のレギュラー悪として登場したキノコ頭のコミカルキャラ・クレオンの体液がムービー邪面の口に入ったことで、


・アクションカントクマイナソー
・時代劇カントクマイナソー
・レディースカントクマイナソー
・ギャンブルカントクマイナソー


の4体が一度に誕生し、それぞれの頭に、


・警察帽
・ちょんまげ
・ピンクのロングヘア


などが造形されることで、かなりマヌケな印象をも醸(かも)し出しているので、子供向け特撮ヒーロー番組としてはバランスが絶妙にとれている(笑)。


 必要最小限のマイナーチェンジで一体の着ぐるみを複数体として見せつける技法が駆使されたカントクマイナソーたちの声を演じたのは、先述した『獣電戦隊キョウリュウジャー』では敵組織・デーボス軍の幹部である哀(かな)しみの戦騎・アイガロンを演じた大ベテラン声優の水島裕(みずしま・ゆう)である。その器用な演じ分けこそが、カントクマイナソーを複数体がいる存在として見せる演出に大きく貢献(こうけん)していたといえよう。


 さて、カントクマイナソーが撮る映画の中で体の自由が効かなくなり、敵同士として設定された対戦相手と不本意ながらも「VS」を演じるハメになったキラメイジャーとリュウソウジャーの組み合わせは、各人のシンボルカラーよりも個々のキャラクター性を重視して選ばれたのかと思える。


・かなりお茶目な「妹系」の瀬奈VS「弟系」のトワという、「年少キャラ」同士――実際にトワはバンバの実の弟だ――
・ともに最年長の時雨VSバンバという、「ネタキャラ」同士(笑)
・知的戦略が得意な為朝VSメルトという、「作戦参謀(さくせん・さんぼう)」同士


といった具合であり、色の組み合わせで見ると、順にグリーンVSグリーン、ブルーVSブラック、イエローVSブルーとなっていたのだ。
 ちなみに、ブルーVSブラックの対決は、キラメイブルーとリュウソウブラックのどちらもジャパンアクションエンタープライズの竹内康博が演じていたという共通点があったりもする。


 だが、


ミニスカポリス姿の瀬奈が終始ワーキャーと騒ぎながら、障害物をアクロバティックにかわして、狭い路地で泥棒のトワをひたすら追いかけている「アクション映画」
・やや着崩した黒の和服姿が実によく似合うバンバと元々がアクション俳優である時雨が、江戸の町で剣劇を繰り広げている「時代劇映画」
・ムーディーなジャズが流れるカジノバーで、スーツ姿の為朝とバーテンダー姿のメルトがポーカー対決をしながらも、卓をはさんで映画の世界から脱出する策をひそかに練(ね)っている「ギャンブル映画」


 それらを対比しながら観ることで、マニア観客であれば実に絶妙な舞台と対戦の組み合わせにはウナらされたのではあるまいか?
 もちろん似た者同士を対比させることで微妙な差異を浮き彫りにする意図も当然あっただろう。しかし、個人的には彼らのそれぞれの舞台でのハマリ具合の方が印象強く残り、そのキャラクターを最も効果的に活(い)かすための采配ぶりは実に秀逸(しゅういつ)だったと感じられた。


 唯一(ゆいいつ)、同じピンク同士だとはいえ、かなりのおっとり系の小夜と、どちらかといえば瀬奈に近い元気キャラであって怪力の持ち主(笑)でもあるアスナは、完全に相反する組み合わせでもある。女暴走族の特攻服姿も鉄パイプで殴りかかるさまも「総長!」と呼ばれた際の表情演技も実にリアルだったアスナ(爆)と対比することで、小夜はそのいずれもがムリやりヤラされているような違和感やムリ感(笑)が残ってしまうキャラとして印象づけるための確信犯的な対戦だったのだろう。
 「お姉さんキャラ」の小夜を演じた工藤美桜(くどう・みお)は、各種インタビュー映像などを見るかぎりではどちらかといえば素(す)は「妹系」の印象が強い。加えて、筆者も長年、特撮作品を観つづけているマニアなので、『仮面ライダーゴースト』(15年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160222/p1)の2号ライダー・深海マコト(ふかみ・まこと)=仮面ライダースペクターのことを「マコト兄ちゃん」と呼んでいたローティーンの「妹キャラ」こと深海カノンを演じていたころの印象がいまだに残っているためかもしれない。


 ちなみに、この『仮面ライダーゴースト』と『仮面ライダーセイバー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220116/p1)をコラボレーションさせた作品『仮面ライダーセイバー×ゴースト』(21年)が坂本監督作品として2021年5月23日(日)から東映特撮ファンクラブで配信予定であり、同作では工藤は今度は成人したカノンを演じているので要注目だ!


 そして、『キラメイジャー』の「6番目の戦士」であるクリスタリア宝路(くりすたりあ・たかみち)=キラメイシルバーと『リュウソウジャー』の「6番目の戦士」であるカナロ=リュウソウゴールドのふたりは、映画の世界に引きずりこまれるのを免れて、彼らはクライマックス近くまでコンビを組んで活躍する。
 ふたりはともに「6番目の戦士」であることはもちろんのこと、宝路には宝石の国・クリスタリアの王女・マブシーナ姫、カナロには海のリュウソウ族・オトという妹がいるという共通点もあるのだ。


 それにしても、妹がいる「6番目の戦士」が2年つづくことは異例であり、「妹キャラ」や「妹もの」の傑作(?)を多数生みだしてきた深夜枠のアニメの影響だろうか?(爆)
 いっそのこと、今後の「6番目の戦士」も皆が妹がいる設定にして、それこそ作品の枠を越えた妹アイドルユニットを組ませるくらいのことはした方がよいのかもしれない(笑)。


 ただ、


・宝路が暗い場所ではガーガーといびきをかいて寝てしまうために、映画の世界に引きずられるのを免れるとか、
・テレビシリーズの『リュウソウジャー』でずっと「婚活」をしていたカナロがヨドンナを見た途端に、♪パララ~というフラメンコのようなお約束の曲が流れて(爆)、結婚を前提とした交際を迫るとか、


近年では「6番目の戦士」すらもがカッコいい強者としてだけではなく、「ネタキャラ」として描かれることが当たりまえとなっている……
 いや、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)の伊狩鎧(いかり・がい)=ゴーカイシルバーあたりから、ここ10年来ずっとそうであったことを思えば、むしろそうしたキャラクター造形こそが、今の時代のファミリー層向け、いや大きな友だち向けとしても、エンタメ活劇としては正しいのだと認識すべきなのだろう。


*2大戦隊共闘や先輩戦隊復活に、助走台としてのドラマ性を与えたからこそ、バトルも盛り上がる!


 さて、充瑠とコウはムービー邪面が監督する「青春純愛映画」に出演させられる。ちなみに本作のタテ軸として、充瑠は冒頭で描かれた「悩み」のことをクライマックスの直前に至るまでずっと引きずっており、コウのアドバイスがそれを解決に導くことで、キラメイジャーとリュウソウジャーに逆転の契機がおとずれるかたちとなっていた。


 ところで、コウが着用させられる学生服が、普段コウがリュウソウ族の衣装として着用する赤というよりかは渋みのあるエンジ色の上着と色調を同じにしているのは、センスのよさを感じるところだ。


 本作冒頭でも、為朝が充瑠に対して絵画コンテストへの応募を勧めてみせた動機を、為朝はメンバーたちに「あいつの才能を世間で認めさせたい」からだと語っている。テレビシリーズの序盤ではかなりギクシャクしていたふたりの関係性が劇的に好転した証(あかし)としてのこの描写には、感慨を深くした観客も多かったことだろう。


 だが、このことが想定外にも充瑠に過度なプレッシャーを与えてしまって、充瑠は思うような絵が描けなくなってしまうのだ!
 世界旅行からイカダ(笑)をこいで東京湾に帰ってきたリュウソウレッドことコウと埠頭(ふとう)で初対面を果たした充瑠は、コウの見事な似顔絵を描き上げたものの――本編美術スタッフによるものだろうが、まさに「キラキラ」とした出来だ――、


「楽しい絵なら描けるんだけどね」


などとコウに嘆いている描写が、本作の劇的なクライマックスの伏線としても機能していたのだ。


 充瑠とコウはムービー邪面の映画製作を中止させるためには、邪面が持っている映画撮影の開始や終了を合図するカチンコを奪う必要があると気づいた。そして、映画のヒロインに起用された女子高生姿のマブシーナ姫が見せたパンチラ(笑)に感動したムービー邪面がカチンコを落としたことから、それを奪うためにムービー邪面を感動させようとする。
――余談だが、以前はフェティッシュなアングルで女優を撮りまくっていた坂本監督がその手法を近年「封印」していることが筆者はやや不満であり、マブシーナ姫のパンチラもどきの演出には溜飲(りゅういん)が下がったものだった(爆)――


 だが、すっかりスランプに陥(おちい)ってしまった充瑠はいつもの「ひらめキ~~ング!」が発揮できずに、ムービー邪面を感動させるための名案が全然浮かばない。


 そんな充瑠を先輩レッドのコウが叱咤激励(しったげきれい)する!


「考えるな! 楽しめ!」


 このセリフの原典はもちろん、往年の名作カンフー映画燃えよドラゴン』(73年・香港)における「考えるな! 感じるんだ!」である(笑)。


 それはともかく、「考えるな! 楽しめ!」という言葉が、テレビシリーズの『リュウソウジャー』に登場したキャラの心の変遷(へんせん)と成長から導かれたものだとコウが語ることで、キラメイジャーとリュウソウジャーの華麗なる逆転劇にいっそうの高いドラマ性が与えられたのだ!
 コウは該当キャラクターの具体名は伏せて「いつも動画を撮影していた友だち」だとしか語らないが、『リュウソウジャー』でそれに該当するキャラといえば、リュウソウジャーがその居候(いそうろう)生活でお世話になった古生物学者・龍井尚久(たつい・なおひさ)のひとり娘・龍井ういのことだ。


 ういは自ら開設した動画サイト「ういちゃんねる」で撮影した動画を配信するも、ネット上での評判は散々なものだった。しかし、それを気にするよりも自身が楽しいと思える動画を撮ることこそが大事だと悟(さと)ったういは、最終展開では映画撮影スタッフとしてハリウッドに招かれるまでに至ったものとして描写されていたのだ!
――なお、テレビシリーズの該当場面が回想としていっさい流れなかったのは残念だが、ういを演じた金城茉奈(きんじょう・まな)は2020年12月1日に24歳の若さで亡くなられたばかりである。ご冥福をお祈りいたします――


 ラストシーンでは、コウは充瑠にういを「今度、紹介する」と云って「仲良くなれると思うよ」とも語っていた。それは充瑠もういも「生みの苦しみ」をかかえているような「クリエイター的気質」を持つという共通点のみではなかった。
 『リュウソウジャー』の序盤では、ういがコウ・メルト・アスナを自宅に連れてきた際に、龍井は「娘が初めて友達を連れてきた!」と大喜びしたものだったのだ。
 『キラメイジャー』の実質的な第1話として製作された映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200322/p1)にて描かれたように、充瑠もまた絵の才能を理解されない同級生から「落書き野郎!」とさげすまれ、女子生徒たちからもバカにされる(ひとり)ボッチ高校生だったのだ。
 ういと同様の気質を充瑠に見い出したからこそ、コウは充瑠がういと「仲良くなれると思うよ」と確信したのであって、ういの成功談からコウが会得(えとく)した「考えるな! 楽しめ!」というセリフを、ういに「似た者」でもある充瑠にコウが投げかけるのは実に説得力にあふれているのだ。


 まぁ、「似た者同士」という観点からすれば、充瑠もコウもレッドとしては熱血度がかなり低いという点では共通しているともいえるだろう。
 今回の「VS」対決があくまで劇中劇の中での「お芝居」にとどまって、キラメイジャーVSリュウソウジャーの全面対決という作劇にはならなかったのは、両戦隊のリーダーのキャラ・気質からすれば相応の理もあったかとも思えるのだ。


 そして、大逆転劇の作劇として実に秀逸なのは、『リュウソウジャー』の最終回(第48話)『地球の意思』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200323/p1)にてリュウソウジャーが相棒であるメカ獣こと騎士竜たちを封印した件もキチンと踏襲しており、クライマックスに至るまでリュウソウジャーを変身不能とすることで、その変身と騎士竜ティラミーゴ・トリケーン・ミルニードル・タイガランス・アンキローゼの復活、さらにそれらが「竜装合体!」した巨大ロボ・キシリュウオーファイブナイツの誕生を、ご都合主義に終わらせずに高いドラマ性を持って描き切ったことだろう。
 その前段として、リュウソウジャーが変身前の人間態で戦闘員・ベチャットの大軍勢と戦うもやや苦戦モードで描くことで、「変身の必然性」を与える「やられの美学」に徹した演出も、クライマックスバトルの感動を深くするには絶大なる効果を上げている。
――なお、「やられの美学」とは、『仮面ライダーV3(ブイ・スリー)』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140901/p1)にて主人公の風見志郎(かざみ・しろう)=仮面ライダーV3を演じた宮内洋(みやうち・ひろし)が、仮面ライダーへの変身に必然性が感じられるようにスタッフ諸氏に提言した手法のことだ。もちろん、変身前のナマ身の自分を少しでも長くテレビに映したいという意図もあったようだが(笑)――


 充瑠が即興で歌ったミュージカル調の歌曲は、充瑠とコウの「青春学園映画」の世界のみならず、ほかの映画の世界でも並行して皆がコレに合わせて踊りだす演出は、まさにアイドルアニメ『ラブライブ!』シリーズ(13年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1)などを彷彿とさせる(笑)。
 この歌曲に感動(笑)したムービー邪面が落としたカチンコを、コウが「カット!」よろしく鳴らしたことで、キラメイジャーとリュウソウジャーは映画の世界からの脱出に成功する!


 だが、現実世界=造成地(爆)に戻るや、ムービー邪面はマブシーナ姫を人質に!
 とらわれたマブシーナ姫が流した涙が水色の結晶と化した宝石を為朝は拾い集めて、「ギャンブル映画」の中でともに映画の世界からの脱出策を練っていたメルトにそれを手渡した。
 宝石に騎士竜たちが復活するように願いを掛けろと語った為朝にリュウソウジャーたちは不可能だと返す。しかし、ここで充瑠が「考えるな!」とリュウソウジャーたちを逆に諭(さと)してみせることが、コウによる「考えるな! 楽しめ!」との絶妙な係り結びともなっていた。


 キラメイジャーから贈られた宝石を手に、コウ・メルト・アスナ・トワ・バンバが順番にそれぞれの相棒の騎士竜復活を願う場面では背景が黒一色となり、テレビシリーズの『リュウソウジャー』で定番だった静かなメロディで、実に勇壮で荘厳(そうごん)に響いていた劇中音楽が流れる演出が、観客の感情移入と場面を一気に高めるのに絶大なる効果を上げていた。


 復活した騎士竜たちが合体して巨大ロボ・キシリュウオーファイブナイツの勇姿をリュウソウジャーの前に現す! そこにキラメイジャーの相棒であるメカ生命体こと魔進(マシン)たちもにぎやかに駆けつけてくる。
 そして、一同がせいぞろいしたところで、2大戦隊がいっせいに変身をとげる様式美におおいなるカタルシスが感じられたのは、「考えるな! 楽しめ!」として互いを高めあってきたリュウソウジャーとキラメイジャーの関係性が、ここまで実にきめ細かく描かれてきたからに相違ないのだ。


 さらに、キラメイレッドがスケッチブックにリュウソウレッドが「キラメイ装」した姿を想像して描いたところで、リュウソウジャーが変身に使うアイテム・リュウソウルがキラメイソウルへと変化して、それをリュウソウケン(剣)へとセットしたリュウソウジャーたちが充瑠の定番セリフ「ひらめキ~~ング!」を叫ぶや、5人全員が充瑠のイメージどおりのキラメイ装リュウソウジャーと化していた!


 ラメの入ったシルバーの5枚の羽根にはそれぞれレッド・イエロー・グリーン・ブルー・ピンクの宝石があしらわれており、胸部のプロテクターにはやはり5色の宝石とキラメイシルバーと同じようなオレンジのラインが、さらに両肩にはマブシーナ姫やオラディン王をはじめとするクリスタリア人の姿を彷彿させる水色と金の装甲と、リュウソウジャーの「キラメイ装」のデザインはキラメイジャーの意匠を絶妙にブレンドさせている!


 また、本作では短い出番に終わった『キラメイジャー』のレギュラーキャラであり、地球防衛組織・CARAT(カラット)の代表・博多南無鈴(はかたみなみ・むりょう)によって騎士竜が封印された場所に連れていってもらったオトが、リュウソウジャーの専用剣・リュウソウケンを持ち帰ったことでリュウソウジャーと騎士竜は復活を果たすことができたのだ!


 そうした周辺キャラにもクライマックスバトルで多大なる勝機を与えるほどの大活躍をさせている展開も心地よい。そして、オトは戦闘員のベチャットにとらわれたマブシーナ姫の救出までしてしまうのだ!――オトを演じた田牧そら(たまき・そら)チャンによれば、これは台本にはなくて現場で監督によって加えられたものだったのだそうだ――
 もちろん、テレビシリーズで描かれてきたように、オトが要所要所でメルトへの愛を語ることも忘れられてはいない(笑)。
 ついでに、マブシーナ姫も例によってベチャットに頭突きをカマしており、「妹キャラ」推しのファンにはタマらないであろう、こうした演出も実にポイントが高いのだ。


*人員や時間の不足を感じさせないビジュアル・特撮・アクション!


 それにしても、今回は火薬の量がハンパない。特にキラメイイエローとリュウソウブルーが駆け抜ける周囲で連続爆破が繰り出されるカットは、スローモーションの効果でより印象に残ったとはいえ、おもわずスーツアクターの安否が心配になるほどのレベルだった(汗)。


 本映画のパンフレットによれば、本作公開時点でのスーパー戦隊シリーズ最新作『機界戦隊ゼンカイジャー』がほぼ「仮面劇」でスーツアクターアクトレスが大量に動員されているために、本作ではジャパンアクションエンタープライズ所属のメンバーの参加は実は少数にとどまっており、


・映画『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』(09年・東映http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091213/p1
・映画『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦(たいせん)』(12年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201115/p1
・映画『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z(ゼット)』(13年・東映
・『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190406/p1


といった、あまりに多数の仮面キャラが登場していた作品には人手不足で応援として招かれていた「B.O.S.(ビー・オー・エス)アクションユニティ」所属のメンバーがほとんどを占めている。
 代表の岩上弘数(いわがみ・ひろかず)は昭和の時代から仮面ライダースーパー戦隊で活躍してきたスーツアクター・新堀和男(にいぼり・かずお)が創業したレッドアクションクラブの出身である。2004年に退団後にB.O.S.アクションユニティを設立。かつて坂本監督が深く関わっていたアメリカ版のスーパー戦隊パワーレンジャー』シリーズ(93年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1)をはじめ、平成の仮面ライダースーパー戦隊にも多数参加してきた経歴を持った人物だそうだ。


 「ヨドン映画」が上映された映画館の外側にある階段を移動しながらベチャットと戦うキラメイレッド&キラメイグリーンは、坂本監督によればテレビシリーズと同じくそれぞれ伊藤茂騎(いとう・しげき)と五味涼子(ごみ・りょうこ)がなんとか演じることができたそうだ。
 しかし、逆に云うならば、それ以外のシーンや映画館のバルコニーから宙返りして着地するキラメイイエローなどもB.O.S.のメンバーなのだろうか?
 テレビシリーズでもアクロバティックなアクションが多かったキラメイイエローの忠実な再現具合は筆者には到底見分けがつかないほどなのだが、マニアであれば本来のアクター&アクトレスとの微妙な所作の違いを探してみるのも面白いかもしれない。
 ちなみに、クランチュラはテレビシリーズと同じく神尾直子が演じているが、口元が露出したキャラだからかやはり代役は難しいのだとも思われる(笑)。


 そして、アクター&アクトレスの演技もさることながら、


・『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)中後盤の大ピンチ回がおそらく初出で、『仮面ライダーエグゼイド』(16年)や『仮面ライダービルド』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181030/p1)のころから散見されるようになった、小型無人飛行機・ドローンを使用しての等身大バトルの俯瞰(ふかん)撮影
・『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190402/p1)でよく見られた、YouTuber(ユーチューバー)御用達(ごようたし)の長い棒の先に付けた自撮り用小型カメラが縦横無尽(じゅうおうむじん)に壮絶な敵味方のバトルの中に入りこみ、アップとロング(引き)なども交互に繰り返しながら全方位からとらえる演出
・坂本監督独自の手法ではないものの、氏が多用するカメラを斜めに傾けたり不安定に揺らす撮影


などなど、本作では近年はエスカレートしていく一方のアクション演出の技法をすべてごった煮として、クライマックスバトルを料理したかのような印象だ。
 まぁ、監督陣も負けず嫌いの人が多いのだろうから(汗)、その監督同士のバトルの成果として迫力あふれる演出が新たに生みだされるのならば、今後もおおいに張り合っていただきたいものだ。
 そういえば、2010年代以降のニュージェネレーションウルトラマンシリーズの巨大特撮でも、近年は坂本監督と田口清隆(たぐち・きよたか)監督が互いの技法をパクりあってるように思えてならない(笑)。


 本作の巨大ロボ戦も坂本監督によれば、スケジュールの都合でなんと等身大のクライマックスバトルが撮影されたロケ地で等身大戦と並行して撮ったのだとか(汗)。
 近年のニュージェネレーションウルトラマンでもよく見られる、ウルトラマンと怪獣とのバトルを真下から超アオリでとらえる演出も、今回の巨大戦演出では採用されている!
 しかも、2大戦隊ロボと対決する巨大怪獣・ムービーマイナソーはカントクマイナソーと名前が違うだけで、着ぐるみの造形は完全に同じだったりする(笑)。


 にもかかわらず、今回の巨大戦が近年の「VS」映画と比べても充実感・カタルシスが得られたのは、見るからに動きにくそうなゴテゴテとした装飾の多い造形のキラメイジンやキシリュウオーファイブナイツがアクロバティックな動きを披露したり、各種必殺ワザの美しいCGもさることながら、先述してきたように合体ロボの登場や復活へと至る助走台も高いドラマ性を持って描いてきたことが大きかったためだろう。


 また、真下からの超アオリ演出にしてもそうだが、ムービー邪面のマイナス感情と4体のカントクマイナソーが合体する描写を入れることで、同一の着ぐるみなのにムービーマイナソーを別モノに見せてしまう映像のマジックなど、時間や予算の制約を逆手にとったアイデア満載の演出も炸裂していたのだった。


*『キラメイジャー』真正後日談をめぐる逆境をも、逆手にとった新展開であるべきだ!


 さて、この『キラメイジャーVSリュウソウジャー』の公開をはさんだかたちで2021年4月11日の静岡県静岡市を皮切りに、4月17日&18日の愛知県名古屋市、4月25日の北海道札幌市、5月16日の宮城県仙台市、5月22日の広島県広島市、5月23日の福岡県福岡市、5月29日&30日の大阪府大阪市の全国7都市で『魔進戦隊キラメイジャー ファイナルライブツアー2021』の公演が組まれていた。
 内容は第1部『ファイナルライブ~さらば愛(いと)しのやつら~』と第2部『キラトーーク!&キラメイ音楽祭』の2部構成である。
 第1部は最終回におけるヨドン軍崩壊~ラストでの3ヶ月後のキラメイジャー久々の再会に至る、空白の「3ヶ月」の間に起きた出来事、つまり『キラメイジャー』最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220503/p1)では描かれなかった部分を、同作のメインライターを務めた荒川稔久(あらかわ・なるひさ)自身が書き下ろした脚本による正史ともいえるアトラクションショーなのである! 第2部はメインキャスト6人のトークと主題歌を歌唱した大西洋平&出口たかしによるライブステージだった。


 だが、周知のとおり2021年4月中旬以降、全国各地で新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の発令が相次ぎ、『ファイナルライブツアー2021』の開催都市も静岡市以外はすべて緊急事態宣言が出されたために、ゴールデンウィークをはさんだ後半の公演に影響を及ぼしてしまった。
 仙台市は公演直前に宣言が解除されたが、広島市と福岡市は公演前の5月中旬に追加で宣言が出されたものの、「収容人員の50%(パーセント)の動員上限」で座席販売を行い、万全の感染対策で予定どおりの開催が決定した。


 問題は「千秋楽(せんしゅうらく=最終公演)」の開催が予定されていた大阪市だ。大阪ではコロナの感染拡大が最も深刻な状況になっていただけに、29日の通常公演は中止。魔進たちの声を演じたメイン声優たちや博多南を演じた古坂大魔王(こさか・だいまおう)、ヨドンナ役の桃月なしこ、クランチュラの声を演じた高戸靖広(たかど・やすひろ)らも登壇する30日の「スペシャル公演」は無観客で開催し、有料ナマ配信を実施することとなった――東映ビデオから2021年9月8日発売予定であるブルーレイ・ディスク用の収録も行われるとのことだ――。


 前年度の『騎士竜戦隊リュウソウジャー ファイナルライブツアー2020』は、日本ではじめてコロナの感染が深刻化した2020年春の開催予定であったために全公演が中止(!)となったことを思えば、『キラメイジャー ファイナルライブツアー』はまだ救われた方なのかもしれない。
 ただし、特撮やアニメにかぎらず、ありとあらゆるイベントが無観客開催でのネットでの有料ナマ配信が当然となってきている現状については、他人の助けを待つだけだったり、座して死を待つだけのような乞食的で卑屈な負け犬根性・奴隷根性なぞではなく、転んでもタダでは起きない、たくましくも自らの足で立ち上がっていく、新たなるビジネスモデルも急速に構築されてきているようで、実に頼もしいかぎりではある。


 しかし、テレビシリーズも含めれば、『魔進戦隊キラメイジャー』は「最も新型コロナウィルスの影響を受けたスーパー戦隊」として後世に名を残すこととなってしまった。
 おそらくは、今後のスーパー戦隊もなんらかのかたちで悪影響がおよぶことはもう避けられないことと思えるのだが、せめて『キラメイジャー』ほどの被害がないことを願うばかりである。

2021.5.21.


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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(文・久保達也)
(2021年3月25日脱稿)

*「本当の大ピンチ」が何度も訪れやがった!(笑)


 全世界を席巻した新型コロナウィルスの影響で製作の中断や新作の放映休止を余儀なくされた『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年)が、当初の予定どおりに2021年2月28日に全45話の放映を終了した。
 『仮面ライダーゼロワン』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200921/p1)に『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)、そして『キラメイジャー』と2020年度は個人的には特撮テレビシリーズが近年稀(まれ)に見る大豊作だったと思えるだけに、それらがコロナの悪影響で散々な目にあわされた件は残念でならない。


 5週にもおよんだ休止期間後にエピソード11『時がクルリと』で新作の放映を再開後、その翌週のエピソード12『ワンダードリルの快男児』では「6番目の新戦士」・クリスタリア宝路(くりすたりあ・たかみち)=キラメイシルバーが初登場した。
 そして、エピソード25『可愛いあの巫女(かわいいあのみこ)』では敵組織ヨドン軍の淀んだマドンナで一人称を「ボク」と呼ぶ、ヨドン皇帝の秘書官・ヨドンナが新キャラとして加わった。


 さらに、エピソード29『まぼろしのアタマルド』ではテレビシリーズの前日譚(ぜんじつたん)として製作された映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200322/p1)にて、ヨドン軍の侵攻で滅ぼされた宝石のように美しい国・クリスタリアの国王で、母国を裏切った実の弟・ガルザに殺害されたと思われていたオラディン王が「空色の不死鳥」=魔進オラディンとして新生し、黄金の鳥型の輸送機・魔進ハコブーとの合体で新巨大ロボ・グレイトフルフェニックスと化す!
――『エピソードZERO』はテレビシリース第1話が先にありきで、後付けでの話ではあっても、実質的には「第1話」といってよい――


 80年代までの1話完結形式のスーパー戦隊シリーズとはまるで異なり、21世紀以降のスーパー戦隊シリーズは小出しに新キャラ・新メカ・イベント編を投入していき、目先の変化で飽きさせない手法は、『キラメイジャー』でもしっかりと継承されていた。


 大理石でできたような頭をしたクリスタリア人と人間が共存する理想郷であり、別の時空にある聖地・アタマルド。その地にあった奇跡の宝石・ミラクルストーンに意識を転生することでオラディン王は復活! 以降はキラメイジャーとの共闘も可能となったのだ。
 エピソード30『誇り高き超戦士』では、主人公の男子高校生・熱田充瑠(あつた・じゅうる)=キラメイレッドの相棒であるレッドキラメイストーン=魔進ファイヤが、


「下々(しもじも)のオレたちが、気軽に王さま呼べるワケないだろ!」


と主張したことから、充瑠は「本当の大ピンチ」になったときくらいにしか王さまを呼ばないなどと返していた。
 だが、実際にはエピソード30以降、充瑠はほぼ毎回、オラディン王を呼んでいた(笑)。


 ただ、こういった事態に説得力・必然性を与えるために、『キラメイジャー』の後半では終盤に至るまで、キラメイジャーをほぼ毎回「本当の大ピンチ」に陥(おちい)らせる作劇がなされていたのだ。


*ニュージェネレーション・ウルトラマンシリーズの田口清隆監督までもが参戦!


 中でも白眉(はくび)だったのは、エピソード32『小夜(さよ)に首ったけ』~エピソード33『巨獣パニック大激突!』の前後編だろう。


ガルザ「このオレの最大の作戦が幕をあけるのだ!」


 この前後編では、女幹部・ヨドンナの人質にとられた大治小夜(おおはる・さよ)=キラメイピンクの救出、人体に有害なヨドミウムを拡散する巨大な種子の発芽を阻止! さらに、都心のビル街で暴れ回る3大邪面獣(!)との決闘! という2大任務が並行して課せられたキラメイジャーの「本当の大ピンチ」が存分に描かれた豪華編だった。


 特撮マニアならば注目せずにはいられなかったことは、この前後編のメガホンをとったのが、自主映画監督上がりで『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)で登板したかと思えば、いきなり翌年度の『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)のメイン監督に大抜擢されて、次作『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)でもメイン監督を連投、先述した同年度の『ウルトラマンZ』のメイン監督も務めている田口清隆(たぐち・きよたか)監督だったのだ!
――『ウルトラマンZ』最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)の撮影終了後の登板だったと思われる――


 ウルトラシリーズではメイン監督に昇格できたからか、多少の予算が増量されたのだろうが、近年の田口監督の特撮演出では、昭和の第2期ウルトラシリーズ並みに大量のエキストラを動員して避難民を演じさせ、そのすぐ背後に巨大怪獣をデジタル合成したり、防衛組織の隊員vs宇宙人などの等身大キャラが戦う背景にウルトラマンvs巨大怪獣をデジタル合成してひとつの絵にしてしまう、といった特撮演出が頭に思い浮かべた人は多かったことだろう。


 2013年以降のニュージェネレーションウルトラマンシリーズでは低予算ゆえに監督が本編と特撮を兼任するのが通例となっている。スーパー戦隊シリーズでは伝統的にメカ・巨大ロボ・新メカ・追加ロボの初登場回などは佛田洋(ぶつだ・ひろし)特撮監督が率いる特撮研究所が明らかに担当しているが、それ以外の回は本編班が担当しているようだ。
 本話では特撮を田口監督が担当したのか否かは、筆者の乏しい調査能力では正確なウラは取れなかったのだが、ウルトラシリーズでの氏の担当回のように実景とのデジタル合成を熟知した感じの見事なカットが連発されていたし、それらは佛田監督のカラーといった感じではなかったので、本話の巨大特撮も田口監督が担当したものだと推測される。


 エピソード32ラストでの、


・都心のビル街の実景を俯瞰(ふかん)した絵の中に暴れる3大巨大邪面獣を合成!
・ガルザが操縦する蒸気機関車型メカ=スモッグジョーキーが変型した恐竜メカも含めた4大怪獣vsキラメイジン!
・ギガントドリラー・キングエクスプレスザビューン・グレイトフルフェニックスの4大巨大ロボの大決戦を、カメラが移動しながら真下からとらえる!


などといった特撮カットも、明らかにウルトラシリーズにおける田口監督の作風にかぎりなく近いものだ。


 圧巻だったのは、


・都心の広場で展開されたキラメイレッド&キラメイイエローvs戦闘員・ベチャットの大軍勢による等身大バトル!
・その背景に映される実景の高層ビルとの間に埋めこむようなかたちで3大巨大ロボvs3大巨大邪面獣の巨大バトル!


 そして、それらを描くのみならず、


・ヨロイ武者型の邪面獣センゴクバスラの手から落ちた巨大な刀が、実景の広場に突き刺さる!
・戦車型の邪面獣タンクリガニーの発砲で、地上のベチャットが炎を上げて吹っ飛ぶ!


 など、実に臨場感・リアル感にあふれる演出がなされていた場面だ!


 太陽の縁(ふち)から立ち昇る赤い炎=プロミネンスを背景に、「グレイトフルプロミネンス!」と新巨大ロボ・グレイトフルフェニックスが3大邪面獣を一気にブッた斬る描写も最高にカッコよかった。
 そのグレイトフルフェニックスの着ぐるみをワイヤーで宙に浮かせたままで、オープンセットを大量の火薬で爆破させる演出に至っては、もはや正気の沙汰ではない(笑)。


 華麗なる大逆転劇が「ご都合主義」だと思われないように、オラディン王が宝石の中に意識を飛ばすことが可能だとの充分な伏線=云い訳(笑)を張ったうえで、通常は等身大のキラメイレッドが使っている弓矢状の武器・キラフルゴーアローにオラディン王が憑依(ひょうい)して巨大化を果たして(!)、それを巨大ロボたちが組みあって発射してみせる! など、パターン破りのサプライズも見せてくれた!


 やはり「特撮ジャンル」や「ヒーローもの」の最大の魅力とはこういったことに尽きるのだ。
 「テーマ」や「ドラマ」などが不要ということではないのだが、こうした特撮戦闘アクションものは、クライマックスのビジュアルや戦闘の見せ場を最大限に盛り上げるための、いわば「ドラマ」や「テーマ」は助走台・手段なのであって、目的ではないのである。この前後編は多くの特撮マニア諸氏にとっても、『キラメイジャー』の「神回(かみ・かい)」となりえたであろう。


*コロナに消された『キラメイジャー』の「クリスマス」!(汗)


 例年のスーパー戦隊シリーズでは第3クール早々に新合体ロボを登場させるために描かれる前後編にこのエピソード32~33は該当している。
 ただしそれとは別に、通常ならば12月のクリスマス商戦たけなわの時期にも巨大メカ戦を中心にした前後編が製作されることが、21世紀以降のスーパー戦隊では恒例(こうれい)だったものだ。


 なかでも、


・『侍戦隊シンケンジャー』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090712/p1)第四十二幕『二百年野望(にひゃくねんのやぼう)』~第四十三幕『最後一太刀(さいごのひとたち)』
・『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)Mission(ミッション)43『決意のクリスマス』~44『聖夜・使命果たすとき』では、敵の巨大ロボ・メガゾードが一気に10機(!)も襲撃!
・『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)ブレイブ41『ヤナサンタ! デーボスせかいけっせん』~42『ワンダホー! せいぎのクリスマス』では、敵の首領・デーボスの巨大なクローン怪獣が世界各地にいっせいに現れる!


といった、東映スタッフ間でも「巨大戦の達人」と評されてきた竹本昇(たけもと・のぼる)監督の作品群が、戦隊マニア諸氏にも強く印象に残っていることだろう。


 だが、『キラメイジャー』のエピソード32~33は、コロナによる5週の放映休止さえなければ本来なら2020年10月11日&18日あたりに放映されるハズだったのだろうが、実際には11月22日~29日となり、先述したクリスマス商戦期の玩具販促用前後編としての役割も兼任することとなったようだ。


 クリスマス直前に放映されたエピソード36『RAP【ラップ】』では、例年のようにクリスマスムードに染まる街並みの描写や、メンバーのサンタやトナカイなどのコスプレ(笑)は描かれなかったが、これもコロナ再拡大による撮影休止や世間での大事件・大事故などによる緊急中継などで放映延期が発生した場合も考慮して、露骨な季節ネタを避けるためにクリスタリアのクリスマスにあたる「クリスタス」という題材に代替にしたのだとも思われる。
――ジャンル作品では似たような例として、往年の『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)においても、ウルトラ兄弟の父でもあるウルトラの父の客演回を過去シリーズでの客演回を踏襲してクリスマス・ネタのストーリーにすることが検討されたものの、全国同時ネットでの放映ではなかったために、子供たちが虚構作品だと気づいて幻滅してしまうことを配慮して、クリスマス・ネタが避けられたということもあった――



 新年一発目のエピソード38『叔父(おじ)の月を見ている』が平和なお正月の真っ最中! といったネタではなくて、「お年賀のタオルの余り」のみ(笑)だったこともまたしかりだ。


 先述した昭和の第2期ウルトラマンシリーズのように、四季折々の日本の風物を点描するスーパー戦隊ならではのエピソードすらも、コロナの影響であまり見られなくなったのはたしかに残念だった。
 だが、近年のスーパー戦隊シリーズで描かれてきた、超豪華な一大特撮スペクタクル巨編こと「クリスマス前後編」(笑)が、『キラメイジャー』では割愛(かつあい)されたことこそが、「特撮」マニアとしては最も残念なことだった。


*敵幹部ガルザばかりではない! もうひとつの「因縁」バトル!


 先述したエピソード33では、自身が倒したオラディン王が新たな姿で復活したことに対する憎しみを幾日にもわたってたぎらせつづけて、邪悪なる魂=ジャメンタルをパワーアップしたなどと叫びながら、ガルザはスカイキラメイストーン状態のオラディン王とひたすら光線をブツけ合う!
 こういったキャラクター間の因縁や私怨を活かしたストーリーに象徴されるように、『キラメイジャー』では実の兄・オラディン王や甥(おい)にあたる宝路、そしてオラディン王と考えや言動、たとえばシリーズ序盤で、


「人を助けるのに理由がいるの?」


と云った充瑠に、ガルザがおもわずかつてのオラディン王が口にした


「民(たみ)を助けるのに理由がいるかね?」


といった発言を重ねてしまったほどに酷似する充瑠に対しても憎悪を燃やすガルザの、そして地球・クリスタリア・ヨドン軍の3陣営にまたがった因縁(いんねん)を強調することで、キラメイジャーを毎回のように「本当の大ピンチ」へと至らせる効果を上げていた。


 それらについては後述したく思うが、これらの「因縁」を活かしたバトルは、こうした作品の大構造だけでなく、各話単位のミクロなストーリーでも披露されている。


・先述したエピソード25にて、当初は巫女の姿をしていたヨドンナに射水為朝(いみず・ためとも)=キラメイイエローがひとめぼれをするも、為朝はヨドンナに散々な目にあわされる!
・つづくエピソード26『アローな武器にしてくれ』では、為朝=キラメイイエローがヨドンナに逆転勝利する!
・さらに、エピソード34『青と黄の熱情』では、ヨドンナが為朝に逆襲を仕掛けてくる!


 こういった展開などはその典型例だろう。


 ここでヨドンナが、エピソード21『釣れ、ときどき達人』~22『覚悟はいいか そこの魔女』に登場した「淀(よど)みの海の魔女」でオラディン王の妻・マバユイネ王妃(おうひ)にかつて呪いをかけて砂に変えてしまった(!)ヌマージョの「邪面」を、改めて武器としても使った作劇も、過去の「因縁」までをも盛り込んだバトルとして実に効果的であった。


 エピソード26では、為朝が素晴らしい「仲間」がいたから勝てた! ということにしていた。
 しかしそれならば、逆に云うと「仲間」がいなければ君=為朝は勝てないのだ! として、作戦を打ってくるのだ!


 ある道義的なテーマをアンチテーゼによって揺さぶって相対化もしてみせようという論理的な作劇術! しかして、それをあくまでもアクション・攻防劇の中に織り込むことによって、決してシメっぽくも重たくもしないのだ!


 「仲間」である為朝のことをカバうのだろうと行動を予測されてしまった押切時雨(おしきり・しぐる)=キラメイブルーに、ヨドンナはヌマージョの邪面から毒液を浴びせかけた!


 しかもそればかりではない! 先述したエピソード21の回想でも語られたように、オラディン王のヌマージュ討伐の際に毒を浴びせられた経緯がある、サメと特急列車の特性を兼ね備えた魔進ザビューンに、ガルザは操縦する魔進ジョーキーを強引に連結させて乗っ取ったあげくに合体ロボ・ジャアク(邪悪)キングエクスプレスを誕生させて、


「憎きオラディンに、トドメと行こう!」


と、新巨大ロボ・グレイトフルフェニックスにトドメを刺そうとするのだ!


 ラスト近くでは、ヨドンナが一瞬、ヨドン皇帝のシルエット姿となったり、充瑠が、


「頭の中に、声が聞こえた……」


として皇帝のイラストを描く場面もあるだけに、エピソード32~33につづいて、早くも「最終決戦」の様相を呈(てい)していた感のあったこのエピソード34『青と黄の熱情』。それも正義側・悪側の双方にまたがったさまざまな「因縁」を複雑に交錯させたからこその賜物(たまもの)なのだろう。


 そして、キラメイジャーを早くも再度の「本当の大ピンチ」(笑)にさせたのは、華麗なる逆転勝利へと至った為朝と時雨のキャラをさらに掘り下げ、そのカッコよさを印象強く描くためでもあったのだ!



 たとえば、エピソード30冒頭での速見瀬奈(はやみ・せな)=キラメイグリーンの「どこかに7番目の新戦士いないかな?」という疑問に対して、「そんな都合よく行くか?」と云い放った時雨の表情は、クールというよりかはあきらめの境地に達したかのようなポ~ッ(汗)とした表情であった。
 これは視聴者がもはや序盤で描かれたようなクールな時雨ではなく、「ネタキャラ要員」としての時雨を望んでいると見越した確信犯的な演技&演出だったのではなかろうか?(笑)


 ただ、ヌマージョの毒によって終始、顔面が蒼白(そうはく)になりながらも、決して戦列を離脱しようとはしなかったエピソード34『青と黄の熱情』における時雨の勇姿。
 それは時雨をシリーズ早々に「ネタキャラ」にしてしまったエピソード3『マンリキ野郎! 御意見無用』でも、ギャグ的な演出ではありながらも仲間に決して弱みを見せようとはしなかった時雨をきちんと踏襲した描写でもあったとして、感慨をもよおした視聴者も多かったのではなかろうか?


 為朝にしても副リーダー・作戦参謀(さくせん・さんぼう)としてイエローに変身してのバトルの最中にも矢継ぎ早に的確な指示をメンバーに与えつづけて、その華麗な連携攻撃から逆転勝利へとつなげるさまが再三、描かれてきた。
 金髪で「オイッ!」とツッコむ姿が目立っている、一見ヤンキーっぽいキャラの為朝が、実は知的戦略を得意とし、何よりもメンバー間のチームプレーを重要視しているのは視聴者側も充分に把握していることだろう。


「青いヤツ(時雨)はきっとカバうと思ったからね。仲間を殺(や)れば君(為朝)は勝てない。自分が殺られるより……、この方が苦痛だろ?」


 ヨドンナは勝ち誇ったように舌を出して、為朝にそう語ってみせたが、ヨドンナでなくとも視聴者がスカしたカッコつけたがりのイケメンキャラでもある時雨と為朝の行動や心理を事前に察知してしまえるほどに、『キラメイジャー』はキャラが立ちまくっていた。


時雨「おまえはオレを気にしすぎだ!」
為朝「おまえはオレを気にしすぎだ!」


 このセリフを時雨と為朝が同時(!)に放つ描写が、逆説的に両者がビミョーに張り合いつつも、実はふたりの心がイヤ~ンなかたちでも通じ合っていることを示唆していて絶妙ですらあるのだ(笑)。


 「仲間」に対する想いが強すぎることが逆にキラメイジャーに「本当の大ピンチ」をもたらすと確信したヨドンナによる「頭脳戦」。それは先述した「3大邪面獣、総進撃!」に比べればたしかに地味ではあるものの、戦略としては極めて有効な手法ではあるのだ。


 だが、「目には目を、頭には頭を」とばかりに為朝が緻密な作戦によって「頭脳戦」でヨドンナに逆転勝利をおさめるさまは、故・上原正三(うえはら・しょうぞう)先生がメインライターを務めて、氏が手掛けてきた昭和のウルトラシリーズなどとは異なり、敵味方のクールで乾いた「頭脳戦」「スパイ戦」「ダマし合い」による攻防を存分に描いていた初期スーパー戦隊シリーズ秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)~『太陽戦隊サンバルカン』(81年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120206/p1)あたりをも彷彿(ほうふつ)とさせるものがあった!


 しかも、冒頭の時雨と為朝がビリヤードに興じる描写や、「おまえもやってみるか?」と誘われた、その手の遊びには慣れていない充瑠の


「イケてるふたりといっしょにしないでよ!」(笑)


などといった、単なる各キャラの性格の描き分けかと思われていたシーンも、伏線として充分に機能していたのだ。


 充瑠が初挑戦したビリヤードでまぐれで繰り出した「ミラクル神ショット!」を応用した戦法。
 それによって、まだ体調が充分に回復していないキラメイブルー=時雨が横になったままで(笑)、キラメイイエロー=為朝が発射した弾丸をキラメイシールドでハジき返してみせる不意打ちが、ヨドンナに命中する!
 これにより、ヌマージョの毒を解毒するには、毒を浴びた人間がヌマージョの邪面を破壊しなればならないというお題目もギリギリでクリアしたのだった(笑)。


 そのヨドンナの周囲でド派手に炎が吹き上がるなど、決して「頭脳戦」だけにとどまることなく、見た目も実にあざやかでヒロイックな描写となっていた。
 まぁ、ヨドンナを演じる桃月なしこチャンの周囲で平気でナパームを発火させてしまうスタッフたちは、鬼としか云いようがないのだが(爆)。


「まかせろ。オレとタメ(為朝)はイケてるふたりだぜ!」


 先の充瑠のセリフとの係り結びとになるかたちで、そう叫んでみせた時雨はヨドンナに勝利するや、


「これがイケてるオレたち!」


などとキラメイブルーの姿でキラメイイエロー=為朝とお互いの拳(こぶし)をぶつけあう!――かの坂本浩一監督などもよく用いている描写だ――


 スーツアクターのアクロバティックなアクションや合体ロボがCGで繰り出す必殺ワザはもちろんだが、すでに確立したキャラを最大限に活かして描かれる、こうしたカッコよさにも注目すべきだろう。


*カナエマストーンや「魔性の石」をめぐる因縁からもドラマを構築!


 さて、宝路がエピソード12で登場して以降、


・エピソード17『洋館の奇石』で「破壊」を司(つかさど)るデストリア
・エピソード21で「時間逆行」の力を持つリバーシ
・エピソード25で「パワーアップ能力」を持つエネルギア


など、第2クールでは全4種を集めるとなんでも願いがかなうとされている勾玉(まがたま)状の秘宝・カナエマストーン(叶えまストーン・笑)を、キラメイシルバー=宝路が中心となってキラメイジャーが集めていた。
 そして、エピソード38ではその残るひとつであり、人々の深層意識に「幻覚を見せる」魔性の石・イリュージョアがようやく登場した。


 エピソード35『マブシーナ放浪(ほうろう)記』では、クリスタリアの酒・メロロフモフモと同じ成分からできている日本茶を飲んで完全に酔っぱらった(爆)マブシーナ姫が宝路に、


「4つ目のカナエマストーンは、どぉ~したんですかぁぁぁ~~~!」


などとカラんでいた。


 普段の「姫」としての凛(りん)とした口調や立ち居振る舞いは完全にどこかに行ってしまい、ヘベレケになって敵味方を問わずに相手に頭突きをかましているほどのマブシーナ姫の狂乱ぶりは、声を務める人気アイドル声優水瀬いのり(みなせ・いのり)と、スーツを担当する野川瑞穂(のがわ・みずほ)の名演技の賜物だ。


 ただ、第3クールに入って以降、残るひとつとなったカナエマストーンをいつまで経っても宝路が捜そうとしないことには、マブシーナ姫ではなくともツッコミを入れた視聴者は多かったことだろう(笑)。


 だが、イリュージョアを「魔性の石」とするのみで具体的にはどんな力を秘めているのかを明かさない。しかし、イリュージョアが発掘された荒れ地に突き出ているミカヅキ型の岩を、裏切る前の叔父・ガルザだと思いこんだ宝路が、クリスタリアの王室でガルザと茶会を開く幻想を見てしまう描写によって、視聴者にその「魔性の石」における「魔性」とは何か? を示してみせる演出は実に秀逸(しゅういつ)だった。


 また、宝路とガルザがグラジュエルなるクリスタリアに伝わる剣術の再試合の約束を交わす回想の背景では、滝が流れる断崖が映されている。これは埼玉県川口市にある川口市立グリーンセンターの広場前にある大噴水であり、そのロケ地の選定も世界観の構築におおいに貢献していた。


 まだクリスタリアを裏切る前のガルザからのグラジュエル(剣術試合)の申し入れを、かつて宝路は「自分を認めてもらうチャンス」として受け入れた。だが、実はその試合の最中にガルザが宝路を殺そうとしていた事実が明かされる!
 このことで、ガルザは実際にクリスタリアを侵攻する前、つまり映画『エピソードZERO』で描かれた発端となる事件よりも以前から、クリスタリアを裏切ろうと画策していた「前日譚」がこのエピソード38では描かれたのだ!


 これは、さらに最終展開にて明かされるガルザの出自の伏線ともなりえている。やはり『キラメイジャー』の主軸となるタテ糸はしっかりとしていたのであり、もちろんすべてが最初から計算され尽くして作劇されていたということではなく、後付け設定も多々あったのだろうけど、本作のシリーズ構成には破綻(はたん)は見られなかったと解釈すべきだろう。


 ガルザがグラジュエル(剣術試合)で宝路を殺そうとしていた事実に当の宝路はまったく気づかずに、これをいち早く察知したオラディン王が割って入ることでそれは「無効試合」とされていたのだ。
 ガルザの陰謀からオラディン王は宝路を救ってくれていたのにもかかわらず、その真相をずっと知らずにいた宝路の中では、むしろそれがオラディン王=父に対する小さな「不満」として長年にわたってくすぶりつづけていたという親子のスレ違いは、宝路が幻想を見るに至った動機としては実に絶妙である。


「おまえが命拾いした、あのグラジュエルのことか?」


 このガルザのセリフで宝路が「あのとき」のオラディン王が真相を見抜いていたこととガルザの偽計にようやく気づかされる作劇的技巧は、長年の「因縁バトル」の決着としてもあまりにドラマチックにできている!


 宝路がガルザとのグラジュエル(剣術試合)の「再戦」を果たすために、自身のキラエイシルバーのドリル状の武器・シャイニーブレイカーでは「剣での勝負」にならないからと、時雨=キラメイブルーの専用剣・キラメイソードと交換する描写も、サブテーマとして仲間であるキラメイジャーたちと持つに至った友情や信頼も感じられて実にカッコいい!
 「あのとき」のグラジュエルでは、ガルザは背中合わせの状態から「1・2・3」と歩を進めていき、そこではじめて剣を交えるというルールを破って、「2」でいきなり宝路を斬りつけようとしてオラディン王に阻止されていた――序盤から終盤に至るまで、カッコいい敵キャラとしての印象が強かったガルザだが、やはり倒してもよい悪党にするためにか卑劣な一面も持っていたとするのだ!――。


「同じ手は通用しない!!」


 今回もガルザが「2」の歩の段階で斬りつけようとしてきたのを察知した宝路は、古代中国の故事「宋襄の仁(そうじょうのじん)」のようにルールを愚直なまでに形式主義的・官僚主義的に守ったがために敗北してしまった! ……などといった愚かしい事態などには陥らずに(笑)、ズル賢い相手がそう来るのであればコチラも! ……とばかりに融通無碍(ゆうづうむげ)に機転を利かして「3」の歩の踏む前に方針転換! その反則攻撃をも華麗にかわして、ガルザが武器としている先端が「三日月型」のカギ爪状になっている剣・クラッシュエンドを逆に奪取してみせて、グラジュエルにも勝利する!


 イリュージョアが発掘された岩が「三日月型」だったのは、このシーンの伏線的な象徴としての意味合いからだったのだ。ちなみに、ガルザが頭部に付けた邪面もまぎれもない「三日月型」だった。
 宝路の「因縁バトル」、そしてその「成長」を描いた作品として本作は出色の出来だった。


*元気ヒロインの意外な多面性! 転じて、ラスボスの「多面性」!(汗)


 エピソード39『皇帝はスナイパー』では、ヨドン皇帝の恐るべき実態が明らかにされた。
 秘書官なのに皇帝には会ったことがないというヨドンナのことをガルザが不審がったり、ガルザとは対照的にヨドン軍の幹部でもコミカル寄りのキャラで作戦参謀のクランチュラが、ヨドンナに嫌がらせのように「皇帝」と呼びつづけるという描写があったが、それは半分正解だといってよかったのだ。


 王冠のような兜(かぶと)をかぶって、ヘドロのような淀んだ色の表情を観音開きで覆うように、顔の左右にそれぞれ別々の邪面を付けているヨドン皇帝。
 そののデザイン・造形は実にインパクトが高いものだ。そしてもちろん、その左右の邪面こそが皇帝の真実を象徴していたのだ。


 皇帝の顔の左側には舌を出して嘲笑(ちょうしょう)する青い邪面があった。これは、


「ココ、笑うところで合ってるかな?」


が口グセだったヨドンナの人格を示すものだ。


 そして、右側の複数のトゲがある赤鬼の邪面は皇帝のもうひとつの人格であり、このエピソード39にて闇のハンター・シャドンとして実体化を果たしたのだ。


 スーパー戦隊シリーズに登場する大首領といえば、「生まれながらにしての大悪党」というキャラが多く、敵の中堅幹部たちと比べるとその出自や背景はそれほど描かれてこなかったが、ヨドン皇帝がこのような存在として描かれたことには注目せずにはいられなかった。


 この手の子供向け特撮変身ヒーロー番組だけでなく、一般の大人向けの映画やテレビドラマや小説などでも、フィクションである以上はそこに登場する人物たちは、程度問題の差はあれども、ある程度までは「性格」が誇張・単純化されたものではある。それは性格設定がブレて首尾一貫しなくなってしまってもイケナイためだ。
 しかし、あまりにも固定的なテンプレ・一面的にすぎる描写であっては、それはそれで記号的でウソくさい感じが強くなってしまう。


 そこで、シリーズが中盤や後盤に至れば、ある登場人物の意外な側面を描写して、その人物像を膨らませたり、あるいはどんな人間にも多面性がある以上は、そこでリアリティーを醸し出すことで視聴者の共感や感情移入を喚起する手法もよくあるものではあるのだ。


 たしかに80年代までの特撮変身ヒーロー番組では、このような描写は少なかったかもしれない。しかし、近年ではスーパー戦隊シリーズにかぎらず仮面ライダーシリーズなども含めて、そこに登場するキャラたちがある程度の固定化された性格はありつつも、決して一面的にではなく意外な一面なども微量に織り混ぜることによって多面的に描写されるのが常識となっている。


 それらとはちょっと違ったものかもしれないが、エピソード37『せな1/5(5分の1)』なども、そのへんをねらった作品であった。
――同話のサブタイトルは、中年マニアはすぐにピンと来るだろうが、『週刊少年サンデー』連載で高橋留美子(たかはし・るみこ)原作の人気漫画『らんま1/2(2分の1)』(89年にテレビアニメ化・キティ・フィルム フジテレビ)が元ネタであり、それに近年の『週刊少年マガジン』連載の人気漫画『五等分の花嫁』(17年。19・21年にテレビアニメ化・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220329/p1)なども掛けているのだろう。ちなみに『らんま』は、金曜夕方に時間帯が変更後の『高速戦隊ターボレンジャー』(89年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191014/p1)~『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120220/p1)期におけるスーパー戦隊シリーズの強力なウラ番組でもあったのだ!(汗)――


 このエピソードでは、ヨドンナがいつもは邪面師やベチャットをシバいているムチによって、瀬奈を5人に分裂させてしまう!――メインターゲットである子供たちが混乱しないようにするためか、各人が右胸に1~5の番号をわかりやすく付けていた(笑)――


・瀬奈1号→アスリート
・瀬奈2号→ひたすらかわいい
・瀬奈3号→出来るOL(オーエル=オフィス・レディ)
・瀬奈4号→カンゲキ屋
・瀬奈5号→うしろむき(汗)


 1号から4号は、本作『キラメジャー』序盤から描かれてきた瀬奈の


・明るい
・前向き
・常に全力疾走


といったプラスイメージの人格だったのに対して、瀬奈5号だけは、これまでの『キラメイジャー』ではまったく見せたことのなかった、


・うしろむき


といった、瀬奈の知られざるもうひとつの属性を体現したキャラクターだったのだ。


 そんな自分には存在理由がない! などと、瀬奈5号は基地を飛び出していってしまう。


 そして、瀬奈5号の人格を失った瀬奈=キラメイグリーンは、巨大メカ戦に巻きこまれた親子が乗る車を放置して操縦するキングエクスプレスザビューンでひたすらに暴走!(爆) 間一髪のところで巨大ロボ・キラメイジンが親子の救出へと至ってしまう始末となっていた(汗)。


 本話のようなエモーショナルな回でも、たとえば、


・実景のビルの屋上で戦況を見つめるヨドンナを画面手前に配して、左奥でガルザが操縦するスモッグジョーキーが破壊したビルの破片がヨドンナをカスめるように画面右へと吹っ飛ぶ!
・これと入れ違いに、魔進ザビューンが画面右から左奥へと突撃していく立体感あふれる演出!
・親子の自動車を救うキラメイジンを運転席の主観でとらえた臨場感のある演出!


など、特撮ジャンル本来の「非日常的」な魅力がしっかりと描かれていたことにも言及しておこう。


 キラメイジャーになっていなければ、神奈川県の湘南(しょうなん)海岸が見えるレストランで働いていたかも? などと意外とシンミリとした抒情的なことを云ってみせている冒頭の瀬奈の発言が伏線となっていたように、湘南の海の荒波を見つめながら、元気娘の象徴でもあった後ろに結んでいたポニーテールをハズして黒髪を下ろしてみせる女の子らしい瀬奈を背後からスローモーションでとらえた演出は実に格調高さにあふれていた。


 そして、瀬奈が今まで前向きに突っ走ることができたのは、逆説的にあなた(5号)が常に瀬奈の心の片スミで最悪の事態を想定してブレーキをかけていたから安心して背中を任せることができていたからだ……といった趣旨の発言をして迎えに来た小夜からも、瀬奈5号は逃げ回ってしまって波打ち際で全身ズブ濡れとなった末に、すでに1号から4号の4人が合体を果たしていた瀬奈にしっかりと受けとめられる……


瀬名1~4号「おかえり」
瀬名5号「ただいま」


 90年代以降のスーパー戦隊シリーズ、そして平成仮面ライダーシリーズの大ベテランである田崎竜太監督による往年の青春学園ドラマ、あるいは近年の深夜アニメで流行している女性同士の恋愛を描いている「百合(ゆり)」モノ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191208/p1)をも彷彿とさせるような、実に抒情的な演出には感服させられた。


 それにしても、あるキャラクターの意外な一面を描くにしても、このエピソードは「子供番組」として視覚的に最もわかりやすい「5人もの瀬奈」といった、とても通俗的でコミカルなかたちで描いていたのだが(笑)、そもそもの本作主人公であるキラメイレッドこと充瑠自身が「瀬奈5号」のような人物だったし(笑)、ふつうの元気で健全な子供たちにはともかく「瀬奈5号」のような性格類型の子供にとっては、「希望の光」となりえたようなエピソードであったかもしれない。


 本編のドラマ性の高さとはやや異なる類いの魅力のものだが、


・ヨドンナと格闘を演じながら屋上からジャンプしたキラメイイエロー&キラメイピンクが実景のビルを背景に合成され、
・その手前に、瀬奈の「本当の大ピンチ」に颯爽(さっそう)と駆けつけた魔進オラディンと魔進ハコブーもCGで表現されて合成されるカット


なども、見逃せにできないアクション&特撮カットであった。


 このエピソードのラストで、ヨドンナがヨドン皇帝へと巨大化変身も果たしてみせることで、本話は単なる単発のゲストストーリーではなくメインストリームにもカラんだストーリーにも仕上がっている。
 これまで通信機と変身アイテムを兼ねていた左腕のヨドンチェンジャーで皇帝の指令を受けていたヨドンナだが、実はヨドン皇帝の別人格、ヨドン皇帝の分身であるらしい下位人格であることがエピソード39に先だって示唆(しさ)されたのだ。


 皇帝によって崩壊させられた都心のビル街を背景に、その光景をビルの屋上から呆然(ぼうぜん)と見つめるキラメイジャー。そこに青い不死鳥姿の魔進オラディンが舞い降りてくるラストカットは、視聴者に迫りくる最終決戦への予感を高めさせるには絶妙な演出であっただろう。


*キラメイジャーの危機を、マブシーナ姫の決意ドラマへとスライド!


 もっとも、シリーズ後半の半年間にわたってレギュラーキャラとして登場しつづけたヨドンナに対して、同じくヨドン皇帝のもうひとりの別人格であった敵幹部シャドンがエピソード39のたった1回こっきりの登場で終わったのは実に惜しい。ガルザやクランチュラとの幹部同士の群像劇なども観たかったところだ。まぁこのへんは例年よりも4話ほどトータル話数が少なくなってしまったことの影響だったのかもしれない。


「キラメイジャーのタマ(命)はワシが取ったる!」


 「始末屋」「闇のスナイパー」との異名を誇っている敵幹部シャドンが標的を狙撃するライフルには、瞳が縦長になっているワニの目のようなスコープが付いている(笑)。シャドンがかぶっているフードや両肩のトゲ状のパーツなどもワニの鱗(うろこ)をモチーフにしており、その統一感のあるデザインがまずはカッコいい!


 「命」を「タマ」、「おのれ」を「おどれ」と称したり、語尾に「じゃ」を付けて話すなど、標準語で上品に話しているヨドン皇帝がシャドンの赤い邪面を付けた途端に、「広島弁」になってしまう理由は不明だが(笑)、戦後の混乱期に広島県で起きた暴力団の抗争事件を題材にした東映の往年の大ヒットヤクザ映画『仁義なき戦い』(73年・東映)シリーズのイメージが「闇のスナイパー」として投影されているのだろう。
 なにせ、最終決戦4部作が開幕するエピソード42のサブタイトルまで、その『仁義なき戦い』まんまなのだから(爆)。


 ワニと広島ヤクザの合成怪人(笑)のワリには、幹部怪人シャドンはキラメイジャーを集結させるために当初はマブシーナ姫をねらったり、影の中に潜んで移動することで標的の隙(すき)をついて狙撃するなど、


「往生(おうじょう)せいや!」


が口グセながら(笑)、その戦法がまさに「頭脳戦」「スパイ戦」であることも彼の個性を出せていて、魅力的に映ったものだ。


 そして、そのシャドン独特の戦法を逆手にとってキラメイジャー側もあざやかな逆転勝利をおさめる! このへんは80年代中盤以降のスーパー戦隊シリーズではなく70~80年代初頭の古き良き時代のスーパー戦隊シリーズの香りもする、先述したエピソード34で描かれたヨドンナに対する逆転勝利の再現といってもよいだろう――初期戦隊シリーズは意匠はコミカルなのに、作劇的には実はドライだったりもするけれど(汗)――。


 ヨドンナ、そしてシャドンと、ヨドン皇帝の別人格に連続勝利したキラメイジャーならばヨドン皇帝に勝つのも必然なのだ! などと、最終決戦直前にスタッフが視聴者に対して高らかに宣言しているようにも思えてしまい、エピソード37のラストで魔進オラディンが皇帝に向けて放った、


「地球にはキラメイジャーがいる!!」


というセリフには、改めておおいなる説得力を感じずにはいられなかったものだ。


 このエピソードでも冒頭で「キシンジーセ」――「成人式」のことで、同語句の逆さ読み(笑)――のお祝いにと、宝路に宝石店に連れられたマブシーナ姫が放った「光」で店中の宝石が輝いてしまう描写を、さりげない伏線として機能させていたのは実に秀逸だった。
 宝路・小夜・時雨・瀬奈が次々に狙撃される!――といっても「死亡」するワケでは決してなく、子供向け番組にふさわしい、皇帝に捧げられる「泥団子(どろ・だんご)」と化すだけなのだが(笑)――


 そして、ついに充瑠に銃口を向けたシャドンが引き金を引こうとしたその瞬間……


「マブシーナ、光を放て!!」


 為朝のこの合図でマブシーナ姫が放ってみせた「光」で魔進たちの全身が輝いて、シャドンは目がくらんだばかりか潜伏のために用いる「影」がいっさいなくなり、「光」ばかりが満ちあふれた異空間へと封じこめられる!


 そして、すでにシャドンに狙撃されたと見せかけた為朝=キラメイイエローが放った「シューティングスタービリオン!」の不意打ちを食らって、シャドンは爆発四散した!
 その瞬間、ヨドン皇帝の顔の右側にあった赤い邪面が砕け散る描写が、シャドンが皇帝の別人格・分身であった事実を的確に示していたのだ。


 本格的な最終決戦を前にしたカタルシスにあふれた名編だった。しかし、このエピソードはキラメイジャーvsシャドンの緊迫感にあふれる攻防戦に点描されたマブシーナ姫の心理描写にも注目すべきだろう。


 自身が不用意に外出したことがキラメイジャーを「本当の大ピンチ」に至らせたなどと、マブシーナ姫は再三にわたって自責の念を口にしていた。ここに至るまでのマブシーナ姫は戦闘系のキャラクターではないので当然ではあるのだが、『キラメイジャー』の「真のヒロイン」として、ひたすらに「守られる存在」としてのみ存在していた。


 だが今回、自身の「光」がキラメイジャーを救ったばかりか、別人格とはいえヨドン皇帝に打ち勝つ(!)に至ったことで、マブシーナ姫がこれまでのような「守られる存在」からの脱皮・卒業を決意するまでに至った心の変遷(へんせん)が実にキメ細やかに描写されていたのだ。


 エピソードFINAL(ファイナル・最終回 第45話)のサブタイトル『君たちがいて輝いた』は、まさにマブシーナ姫のキラメイジャーへの想いを最大限に象徴したものだった。最終回でマブシーナ姫がカナエマストーンで再興したクリスタリアの女王となる決意をするに至った「動機」が描かれたエピソードとしても、このエピソード39は今後も語り草になると思えるのだ。


*主人公の身に起きた、「もうひとつ」の関係性の変化!


 いよいよ最終決戦が開幕したエピソード42の導入部では、充瑠が高校の教室でうたた寝した際に見た夢が描かれた。クリスタリアの王室で絵を描くのに夢中な少年が、


「ひらめキ~~ング!」


と充瑠の決めゼリフを叫んだことから、充瑠はその少年を「小さいときの王さま」=オラディン王だと思いこむ――結果的にはミスリード演出だったのだが――。
 「ひらめきは世界を救うんだ!」と、その少年はクリスタリアを守るための「必殺ワザ」の絵を一心不乱に描きつづけている……


 このエピソード42を皮切りに、エピソード43『汚れた英雄』、エピソード44『友よ、静かに眠れ』にかけて、先述してきた映画『キラメイジャー エピソードZERO』以前に起きていた「本当のはじまり」が「前日譚」として小出しに明らかにされていく。
 そして、これまでは互いに「因縁」の敵でしかなかった充瑠とガルザの関係性が、この最終章で想定外の方向へと変化をとげていくのだ。
 そんな波乱に満ちた展開の予兆として、エピソード42の静的でナゾめいた導入部は実に絶妙な描写となっていたが、そればかりではなかった。


 映画『キラメイジャー エピソードZERO』では、戦闘員・ベチャットの大軍勢を率いたガルザとクランチュラを中心とするヨドン軍がクリスタリアを一気に制圧するさまを、充瑠が教室で見た夢として描く導入部からはじまっていた。
 充瑠とガルザの関係性の変化を描くにあたって、このエピソード42の導入部は『エピソードZERO』との係り結びとしての役割も担(にな)っていた。そして、それは充瑠の身に起きたもうひとつの関係性の変化をも必然的に視聴者に示すこととなったのだ。


 『エピソードZERO』では充瑠を「あつた(熱田)ぁぁぁ~~~~~!!」などと恫喝(どうかつ)するなど完全にバカにしていたものの、シリーズ中盤のエピソード20『あぶないペア』ではセッチャクザイ邪面によってキラメイレッドとくっつけられて、その正体を知って以降は充瑠に対する意識を改めた同級生の女子高生・柿原瑞希(かきはら・みずき)の存在である。


 エピソード1『魔進誕生!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200712/p1)にも登場したヤンキーっぽい男子生徒が、その当時と同じく実は天下のキラメイレッドさまである充瑠を「落書き野郎!」などと露骨にさげすんでみせることも(汗)、対比として瑞希側の劇的に良好化した変化を強調するのに絶大な効果を発揮している。
 ヤンキー男子と仲が良い女子生徒が「なんかあった?」などとふたりして、充瑠と瑞希をいやらしいニヤケた表情で見つめている描写も、学生の教室空間においてはさもありなん的でフィクション作品としては実によかった(笑)。


 なお余談だが、ヤンキー男子の名前は脚本では獅子鷹宮健太(ししたかみや・けんた)だそうであり、スーパー戦隊シリーズの歴代レッドのモチーフにされることが多かった「獅子」=ライオンと「鷹」=ファルコンを掛け合わせた名前となっている(爆)。


 これまでに瑞希が登場したのは、『エピソードZERO』とエピソード20のみであり――エピソード1には先述したヤンキー男女は登場したが、瑞希は登場していない――、個人的にはそれこそ90年代以降の学園ものの深夜アニメのように、視聴者サービスのノルマ的に「夏休み回」(笑)なども設けて、充瑠と瑞希の関係性の進展を描いてほしかったようにも思えてきてしまう。
 だが、その代わりにこの最終展開では、瑞希を地球の「本当の大ピンチ」へと巻きこむことで、充瑠とガルザとの関係性のみならず、瑞希との間にも劇的な進展をもたらしていくことで、マクロとミクロの出来事を織り成すかたちでラストバトルを構築していくのだ。


 同級生たちにふたりの仲をからかわれた責任をとってくれ! と、瑞希は遊園地の優待券を充瑠にチラつかせて、暗に「デートしろ!」と強要する(笑)。


 これは、『獣電戦隊キョウリュウジャー』の最終展開でも、アミィ結月(あみぃ・ゆうづき)=キョウリュウピンクが桐生ダイゴ(きりゅう・ダイゴ)=キョウリュウレッドに対して、敵組織・デーボス軍が滅びだらば世界で一番おいしいストロベリーパフェを食べに行こうと約束したり、古いところでは『仮面ライダーストロンガー』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201231/p1)第30話『さようならタックル! 最後の活躍!!』でも岬ユリ子(みさき・ゆりこ)=電波人間タックルが城茂(じょう・しげる)=仮面ライダーストロンガーに、敵組織・デルザー軍団が壊滅したらふたりでどこか遠いところに行ってみたい……などと願っていたことを彷彿とさせる、静けさの中でも来たるべき嵐のフラグ(予兆)を立ててみせることで、その後に来る怒涛の展開との落差を際立たせるための、古典的にして常套的(じょうとうてき)でもやはり美しい作劇ではある。


 『キョウリュウジャー』も『ストロンガー』も同様だったが、最終展開での激しい攻防戦の直前や最中でも、そんな淡い恋愛模様が点描されることで、クライマックスでのバトルのドラマ性がより高くなるのである。


*「因縁」の敵が強化変身したさまを、「ワクワクする!」と表現した主人公の深層心理!


 敵幹部ガルザが同じく敵幹部シャドンを失ったヨドン皇帝の体内にある「意識の部屋」に入りこむ。
 真っ赤な部屋の中央にヨドン軍の紋章(もんしょう)が背もたれに描かれた椅子(いす)が置かれた世界といったかたちで表象されているが、もちろん物理的な空間ではなく精神世界である。そこにガルザが厚かましくも着座してみせる!
 この描写によって、彼がヨドン皇帝のことを精神面でも文字通りに「主役の座」を奪ってみせたことを表現してみせた秀逸な表現でもあった!
 ちなみに、「主役の座」につけなかったヨドンナは完全に消滅してしまったワケではなく残留思念としては残存しており、ヒザをかかえてうずくまっていることで、その旨が端的に表現されている。
 そして、ガルザは皇帝の意識と肉体を乗っ取って巨大化し、人間世界の街に突如として出現する!


 事ここに至って、敵軍をガルザが乗っ取ってみせたのだ! スーパー戦隊シリーズでも80年代のシリーズでは終盤によく描かれていた敵組織の内紛劇でもある!


 そして、ビジュアル的にもそのへんを象徴させて子供たちにも理解をさせやすくさせたり、見た目の変化もつけることでキャッチーにして、少しでも視聴者の興味関心を喚起するためでもあるのだろう。
 エピソード41『ありのままでいたい』では皇帝から用済みとされてしまった敵幹部クランチュラの協力を得たガルザが、それまでの三日月型の邪面から一変して、背中に満月を思わせる円形のパーツを背負った、鋭い牙のオオカミが宙に向かって大きく口を開いたように二股(ふたまた)状に裂けた銀色の頭部中央にはオオカミの顔があり、右腕にはチェーンソーを備え、全身を金色の鎧(よろい)で武装したロードガルザへと華麗なる変身をとげたのだ!


 ところが、その姿に充瑠=キラメイレッドが不謹慎にも、ある意味では視聴者目線で「ワクワクする!」などと大喜びしてみせるのだ(爆)。


 いや、ロードガルザの実にカッコいいデザインや造形に対して視聴者が「ワクワクする!」と喜ぶのは当然だ。筆者とて例外ではない(笑)。
 だが、劇中では右腕のチェーンソーを振りおろすだけで街の大半を炎上させたり――ビル屋上のキラメイジャーの主観として実景の都市部を俯瞰した合成カットが絶大な効果を発揮した!――、重力を操って宙に浮かべたキラメイジンの合体を解除させたロードガルザに対して、本来ならば正義側の主人公ヒーローが「ワクワクする!」などと喜んでいる場合ではないのである(汗)。


 ましてや、その前段としてガルザが拡散させた黒い霧が人々を戦闘員のベチャットと化してしまい、その中には充瑠と遊園地に行く約束をしていた瑞希も含まれていたのだ!
 高校の階段の踊り場で充瑠と手が離れてしまった瑞希は、「絶対に助けてね」と云い残して、黒い霧の中に姿を消してしまった……
 だから、魔進ファイヤでなくとも「ナニ、不謹慎(ふきんしん)なこと云ってんだ!」と充瑠をドヤしつけるところだろうし、為朝でなくとも充瑠に「オイッ!」とツッコんだ視聴者も多かったことだろう。


 だがしかし、


・先述したエピソード42の導入部にて、自身が考案した必殺ワザ「トルネードスクリュークラッシュ!」を夢中になって描いていたクリスタリアの少年
・エピソード31『おもちゃ』にて、バンダイ発売の玩具サイズに縮小されてしまった魔進たちを手に、「科学特捜スーパー警備隊!」(爆)だの「マグマドリラー!」だのと叫びながら、ひたすら変型・合体遊びを楽しんでいたゲスト主役の少年・龍生(たつお)――これらの一連にて龍生を見つめる充瑠にはほとんどセリフがなく、その表情演技のみで充瑠の心理を描写した演出は絶品だった――
・超異色作であるエピソード40『痛む人』(!)のゲスト主役で、プロの漫画家をめざしている青年・八太三郎(はった・さぶろう)が描いたマンガや、三郎の部屋にあふれるコミック・フィギュア・ゲーム・映像ソフトなどなど――八太三郎は東映特撮作品の原作者名として、東映が使用しているペンネーム・八手三郎(はって・さぶろう)からの運用(笑)――


 充瑠はこれらを「輝いてる!」として、自身もまた目をキラキラとさせて、満面の笑(え)みで見つめていたのだ。それらに共通するクリエイティブな何か、少なくともクリエイティブたらんとする自身との「同質性」を彼らに感じたからこそ、充瑠は「因縁」の敵であるハズのガルザの新たに強化された姿に対しても、つい「ワクワクする!」などという不謹慎な感想をもらしてしまったのだ。


 エピソード1でも、


・為朝=e(イー)スポーツのプレイヤー
・瀬奈=女子陸上の選手
・時雨=イケメン俳優
・小夜=美人外科医


 彼らと初対面した際に、充瑠はこの4人を「輝いてる!」と評していたが、同時に「マブしすぎて……」と彼らに対する近寄りがたい印象をも口にしていた。


 エピソード36でも、敵幹部クランチュラがラップのメロディに乗せて充瑠を、


「唯一の友達はスケッチブック!」


などとさげすんでいた(汗)。


 そんな充瑠にとっては「お絵描き」に夢中になっていたクリスタリアの少年、「おもちゃ」で遊んでいた龍生、「マンガ」や「ゲーム」が得意な三郎など、世間ではダサいとかイケてないとされてしまう、自身と感性を近しくする存在こそが、真の意味で「輝いてる!」として映ったのであった!


 エピソード40でも、充瑠が邪面獣ジイシキ(自意識・爆)シェルガと化した三郎を倒すのに反対する描写が伏線となっていたようにも思えるが、充瑠がロードガルザを「ワクワクする!」と感じたのはある意味で必然だったことがこの先に明らかにされるのだ。


*「倒すべき敵」に「もうひとりのオレ」だという「同質性」を設定する!


 エピソード42のクライマックスでは,、都心のビル街でロードガルザvs巨大ロボ・グレイトフルフェニックスとの決戦が展開される!


 キラメイジャーの面々が基地で談笑している冒頭の場面で、魔進オラディンがモニターを通して「イザとなったらとっておきのワザを使う」などと語っているのが、絶妙なミスリード演出としても機能した。


 冒頭の夢の中で必殺ワザの絵を描いていた少年を充瑠がかつてのオラディン王だと思う描写から、グレイトフルフェニックスの「とっておきのワザ」とは「あの絵」に描かれていたものだろうと予想した視聴者も少なくなかっただろう。
 だが、暗闇に包まれる闇の帝国・ヨドンヘイムを背景に、右腕のチェーンソーを構えて全身を高速回転させて、金色の渦(うず)を巻き起こして竜巻攻撃を繰り出す「トルネードスクリュークラッシュ!」を使ったのは、なんとロードガルザの方だった!!
 さすがにキラメイレッド=充瑠もこれには愕然(がくぜん)とする! しかし、逆に云えば、充瑠がロードガルザの姿を「ワクワクする!」とした感性が、極めて正しかったことが証明された瞬間であったというべきかもしれない。


キラメイレッド「ひらめきは世界を救う!!」
ロードガルザ「ん!? ……そんなものは戯れ言(ざれごと)だ!」


 幼かったころに「必殺ワザ」の絵を描きながら叫んでいだ自身の言葉を、まさかの当の敵から聞かされることになったものの、ガルザは一蹴(いっしゅう)した。しかし、レッド=充瑠にそれを聞かされるやホンの一瞬だが動揺を見せてしまう描写が、つづくエピソード43でガルザが敵側から味方側へと立ち位置シャッフルを見せる前兆としても機能したように映る。
 なんといっても充瑠の口グセである「ひらめキ~~ング!」の出自がオラディン王ではなく、ガルザであった事実が明かされたのだ!!


 この事実が証明された時点で、充瑠にとってのガルザは深い「因縁」はあっても、すでに「倒すべき敵」ではなく、「もうひとりのオレ」(!)と化したといっても過言ではないだろう。


 湾岸の遊歩道から見上げるキラメイジャーの対岸に林立する高層ビルの実景に、巨大なロードガルザのみが合成された臨場感あふれるラストシーンにて、スカイキラメイストーン状態のオラディン王がついにロードガルザによって空の裂け目から別の時空へと連れ去られてしまう!
 王さますらも「本当の大ピンチ」に陥ったのにもかかわらず、エピソード43の冒頭で基地から出動するキラメイジャーを尻目に、充瑠はいまだにロードガルザの姿を回想して「でも、あの姿……」などとニヤついていたのだ(爆)。


 だが、充瑠は自身と感性を同じくするガルザとなら和解が可能との結論に達したのだ。「ワクワクする!」とはそれに対する期待の意味もこめられていたのだと解釈すべきところだろう。


 キラメイレッド=充瑠vsロードガルザのガチンコバトルの最中に、その充瑠が寄せていた期待は見事に的中するに至って、最終決戦のドラマ性がより高められることとなった!
 「トルネードスクリュークラッシュ!」も実にカッコよかったが、ロードガルザはデザインのモチーフそのままに、満月を背景に自身のジャメンタルをオオカミの形にした攻撃ワザ「ビーストウルフオメガディア!」をキラメイレッドにぶつける!


 だが、レッドはこれを


「スゴいの、またキタァァァ~~~ッ!!!」


などと大喜びして(笑)、ガルザの必殺ワザはむしろ充瑠の「ひらめキ~~ング!」なる創造力を触発して、そのキラメンタルが真っ赤に燃えた不死鳥の姿となった新たな必殺ワザ「ゴッドバードアルファズム!」を生みだしたのだ!
――ロートル世代や日本の新旧アニメの巨大ロボットたちが共闘するテレビゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズ(91年~)をたしなむようなロボットアニメファンも兼ねている老若の特撮オタク諸氏であれば、往年のロボットアニメ『勇者ライディーン』(75年・東北新社 NET→現テレビ朝日)の主人公ロボット・ライディーンが鳥型に変型して繰り出す必殺ワザ「ゴッドバード!」を引用したものだと即座に気づいたことだろう!(笑)――


 ロードガルザとキラメイレッドの横顔を2分割でとらえた画面の中央で、ビーストウルフとゴッドバードが激突する描写も、ガルザと充瑠の「同質性」を端的に演出で表している! そんな激闘の最中にも、レッド=充瑠の本音が漏れる。


「おまえは敵だけど、神絵師(かみ・えし)だ!!」
「本当はいっしょに絵が描きたい!!」


 同じくエピソード43にて、湾岸の遊歩道で重力を操ってキラメイシルバーに勝利し、


「わたしたちを滅ぼした果てに何をするつもりですか!?」


などとマブシーナ姫に問われた等身大のロードガルザは、


「オレの思うように世界を変える!」


と返していたが、マブシーナ姫はそれができるのは充瑠さんだけだ! と主張して、その理由を「ひらめきで何かを変えてくれる」からだと語っていた。


 だが、先のガルザとレッドのガチンコバトルでレッドが必殺ワザ「ゴッドバードアルファズム!」を放てたのはガルザの「ビーストウルフオメガディア!」があったからこそだと描くことで、マブシーナ姫からは否定されたものの、ガルザも充瑠と同じ「ひらめきで何かを変えてくれる」力の持ち主であることが視聴者にも示されたのだ。


 そして、半魚獣とでも形容すべき闇獣バスラに食われそうになっていたのをレッドが助けようとした際に、オラディン王は実の弟・ガルザを元々「英雄になる素質」があった「選ばりし者」だったと語った。
 派手なアクション場面や特撮場面に絶えずガルザと充瑠との「同質性」を示すような証言を点描していく脚本&演出は、アクション抜きの人間ドラマによる会話劇だとタイクツしてしまうであろうところを、最後まで子供たちや視聴者の関心を持続させるためにも絶大な効果を発揮しているのだ――まぁ、小学校に上がったころ以上の年齢の子供であればともかく、幼児であればこのへんの敵味方キャラの意外な「同質性」といったドラマは理解ができていないだろうとも思うので、こういう処置も絶対的に必要なのだ(笑)――。


 その剣を組み合わせたままで、いつしかロードガルザとキラメイレッドがクリスタリアの王室へと戦いの場を移していく!
 そして、エピソード42の冒頭で描かれた「夢のつづき」をともに見ることで、ついに真実が明かされる演出は実にドラマチックに仕上がっていたのだ!


 「必殺ワザ」を夢中で描いていた幼いころのガルザのもとに、やはり幼かったころのオラディン王が現れて、ガルザの「トルネードスクリュークラッシュ!」に感激したオラディン王は自身も「必殺ワザ」の絵を描きはじめる。
 ここでも先述したように、当時のガルザが「ひらめきで何かを変えてくれる」力をたしかに持っていたことが示されており、オラディン王がガルザを指して語った「英雄になる素質」「選ばりし者」が俄然、説得力を帯びて伝わってくるのだ。


 ガルザもまた新たな必殺ワザ「ビーストウルフオメガディア!」を描いて、オラディン王は自身が描いて後年に充瑠も思いついた「ゴッドバードアルファズム!」と引き比べて「引き分けだ」とし、そのまま争うこともなく兄弟は並んでお絵描きを描きつづけていく……


 イジワルに絶対平和主義などをモノサシとして見てしまえば、平和で牧歌的なお花畑などの光景は描かずに(汗)、なんだかんだと他人を倒してみせるための好戦的な必殺ワザなどを好んで描いて、そこで万能感・全能感にひたってしまうことこそが危険である! 右翼的である! なぞといった批判も成り立つだろう。
 しかしまぁ、人間一般も理性的・合理的な近代人である以前に、狩猟をして捕食もする生物・動物でもある以上は、良くも悪くも本能的にこーいう乱暴な必殺ワザや戦闘もののテレビゲームなどといったものに快感をおぼえてしまったり、そこで疑似的に達成感や充実感を得たりなどして、現実世界では弱者であり不全感にさいなまれている自身の心を癒したり元気づけたりしがちなことも事実であるどころか、ある意味では必然の宿痾(しゅくあ)ですらあるのだ。
 その意味でも幼き日のオラディン王とガルザの兄弟が、必殺ワザを考案し合って全能感にひたっていたことは、特撮変身ヒーローものの本質の何たるかをも体現しており、実に示唆的でもあるのだ。


 幼いころのガルザとオラディン王と同じく、「ビーストウルフオメガディア!」と「ゴッドバードアルファズム!」を炸裂させたロードガルザとキラメイレッド=充瑠であるならば、当時の兄弟と同等の良好な関係性を構築できるハズだと、視聴者が先述した充瑠の「ワクワクする!」という発言にようやく共感させるに至る作劇的技巧には、充瑠ではないがおもわず「神絵師だ!」と叫びたくなるような感慨もおぼえる(笑)。


 すべての願いがかなうとされている4つのカナエマストーンを使って人生をやり直そう! などとキラメイレッドに説得されるガルザの全身に、星のキラメキのような効果までもが描かれることで、彼に彼本来のキラメキが復活しつつあることも示唆されて、その心の変遷を映像演出的にも如実に象徴してみせる!


 まぁ、兄=オラディン王を大好きだった幼いころのガルザを、ラスボスであるヨドン皇帝が洗脳して自身の尖兵(せんぺい)として育てあげたという真相は常套的な作劇だともいえるし、ヤボなツッコミを入れるならば幼いころはほかのクリスタリア人と同じく青地に金模様の頭で青い目であったガルザが、洗脳後に紫色の頭と赤い目に変わったことを王室の誰ひとりとして不審に思わなかったのか?(爆) などというイジワルな見方も可能ではあり、そのような隙もあるのだが、そんな視聴者側の邪念もすぐさまに消し飛ばされる。


 しぶとく生きていたヨドン皇帝から、兄をはじめとするクリスタリア人に対する憎しみの感情を植えつけられた件を聞かされたガルザが、


「生きていた意味は何ひとつなかった……」


と後悔して、その「生きていた意味」を最も象徴している三日月型の兜を乱暴に脱ぎ捨てる描写!


 そして、


「オレが生きた意味は今、ここで生み出す!」


とガルザがヨドン皇帝に特攻する描写には、視聴者の感情移入が一気に高まるように、ここまでのストーリー展開から実に用意周到に逆算して構築された作劇なのだと改めて思い知らされるのだ。


 反撃も空しく、皇帝の攻撃で崩れ去っていくガルザを焼き尽くす炎だけが見えるヨドンヘイムの暗闇の中で、ガックリとヒザを落としたキラメイレッドの姿がその胸中の空しさを表現している。


 そして、その充瑠もまた、キラメイジャーと魔進オラディンの眼前で奈落の底へと転落していってしまったのだ!


 リアルに考えればヘンなところかもしれないが(汗)、瑞希から手渡されていた「遊園地の優待券」がその場に残るラストカットは、ヨドンヘイムへの突入直前に、


「オレ、柿原さんと約束したから、絶対帰ってくる!」


とメンバーに無事に帰還することを力強く宣言した充瑠からすれば、決してハズせない演出だったのだ。


*「万策尽きる」までにイジワルに追い詰めてこそ、勝利のカタルシスも高まる!(笑)


 エピソード44では主人公である充瑠が不在のままで、キラメイジャーと魔進たちのヨドン皇帝への総攻撃が描かれる。
 それは決してシーソーゲーム的な気持ちのよいバトルではなく、ヨドン皇帝の圧倒的な優位が目立ったのはもちろん、皇帝の絶大な力・強さを印象づけるばかりではなく、キラメイジャーと魔進たちにとって充瑠がいかに大きな存在となりえていたかを示すための作劇になっていた。


 先述したエピソード34でヨドンナが為朝に放った


「仲間を殺れば、君は勝てない」


というセリフが、ここで改めてキラメイジャーに重苦しくのしかかることとなったのだ。


 特に相棒の魔進ファイヤが充瑠の消息不明を信じようとはせずに、今は充瑠のことよりも皇帝を倒すべきだとした時雨や小夜に対して猛反発したり、


「ファイヤはまだ、気持ちの整理が……」


として、相棒を失ったファイヤの心情に共感したほかの魔進たちも出動をためらう描写などは、ふだんのボケとツッコミを中心とした軽妙なやりとりは影をひそめて、たとえその姿は宝石ではあっても立派な「人間ドラマ」「群像劇」としても成立していたのであった――5人の戦士の内、4人までもが機械生命体のメンバーで構成されているスーパー戦隊を主人公とした『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)の序盤でもこのようなドラマはしっかりと継承されている――。


 キラメイジャーの完全敗北を最も印象づけたのは、為朝が立案した緻密な作戦計画によって繰り出された連携攻撃がヨドン皇帝には通用せずに、「失敗」に終わってしまったことだろう。


 皇帝が奪おうとすること必至のカナエマストーンを隠さずに、むしろ積極的に武器として使う!


・時間を逆行させるリバーシアで皇帝を10日前のヨドンナの姿へと戻す!
・エネルギアでパワーを強大させた新ロボ・グレイトフルフェニックスの光線で石像に封印する!
・それを抜群の破壊力を誇るデストリアで粉砕(ふんさい)する!


 これまでにも何度もこうした有能な作戦・連携プレーでキラメイジャーが勝利をおさめるさまが描かれてきただけに、それをも打ち破ってしまう皇帝のラスボスにふさわしいデタラメなまでの強さがより強調されるとともに、充瑠が欠けた穴がいかに大きいかが示されるのだ。


 そして、「貴様が消えれば封印は解けるハズ」だと、実は自身の「弱さ」の部分が独立・体現された存在であったヨドンナを始末してしまうことで(!)、自身の封印を解くに至ったヨドン皇帝は、「仲間を捨てたからこそ」逆転したのであり、対比的に「仲間を殺れば勝てない」キラメイジャーの無力感が倍増されるのだ。


「ココは泣くトコで、合ってるかな?」
「ココこそ笑うところだ。我の役に立って死ぬのだからな」


 「仲間」なんぞ不要だと豪語してきたヨドンナが「仲間」によって最期を迎えることで、「仲間」がいたからこそ勝利をおさめてきたキラメイジャーに精神的なダメージを与えるのは必至であり、皇帝の方がキラメイジャー側の「頭脳戦」にも逆転勝利したことで、力関係のみならず「頭脳戦」でも皇帝が圧倒的に優位なことが表現されている。


 ここまでキラメイジャーの「本当の大ピンチ」を絶望的なまでの苦境として描くことで、「仲間」たちが次々に駆けつけてくる描写に、視聴者がつい声援を送りたくなるような気持ちへと至らせる作劇は、やはり実によくできているのだ。


 魔進ザビューンは皇帝の弱点が邪面の下の本当の顔だと看破し、グレイトフルフェニックスが集中攻撃を加える!
 グレイトフルフェニックスが戦闘不能に陥るや、宝路が操縦する巨大ロボ・ギガントドリラーが駆けつけて、皇帝の顔に巨大なドリルを突き立てる!


「今はみんなといっしょに戦ってください。充瑠さんがとげられない想いを、あなたが遂げるのです!」


 マブシーナ姫の説得に「ここからはメッチャメラメラだ!!」と魔進ファイヤが奮起したことでパイナップルタワーの基地から魔進たちがいっせいに発進! 巨大ロボ・キラメイジンに合体して駆けつける!


 ひたすらに絶望的な状況ばかりでは、年長視聴者や我々大きなお友達にとっては大丈夫でも、幼児にはキツいであろうから、たとえほんのわずかの瞬間でも視聴者を安心させて歓喜させる、こうした描写を適宜(てきぎ)に挿入していくストーリー展開こそが、「子供番組」には必要な塩加減・バランス感覚でもあるだろう。


 しかして、これだけの総力戦でも皇帝を倒せない! まさに「万策(ばんさく)尽きた!」としか云いようがない「本当の大ピンチ」は、ホントウの最後のクライマックスでの大逆転劇をおおいに盛りあげるための事前準備としての「落差」をつくっておくためのものであることは相違ないのだ!(笑)


*帰ってきた男! その名は熱田充瑠ことキラメイレッド!


 ヨドン皇帝が超巨大な火球を宙に浮かべて、「ヨドンデストロイヤー!」と発射しようとしたその瞬間、何かが突撃してそれを粉砕した!


 一瞬の静寂のあとにその正体を見せる演出が心憎いが、「ヨドンデストロイヤー!」を阻止したのはガルザが相棒にしていた魔進ジョーキーであり、そこからビルの屋上に飛び降りた充瑠が元気な姿を見せるのだ!


 為朝は「フザケやがって!」と充瑠を羽交い締め(はがいじめ)にして、瀬奈は「心配してたんだから!」と充瑠の肩をバシバシと叩いて、時雨は「必ず生きていると思ってた」とウェ~ンと泣きだしてしまう(笑)。


 充瑠の無事に対する反応をそのキャラならではの行為として描き分けた脚本も、視聴者の感情移入を喚起したことだろう。時雨の泣き演技は当然ながら、この感動的なシーンが過剰にシメっぽくはならないように「ネタキャラ要員」として要請されたものだろう(笑)。


 ファイヤはもちろんのこと、魔進たちが相棒たちの手元におさまるサイズのキラメイストーンの状態でワチャワチャと集結するさまが、「仲間」がいたからこそ勝ってきたキラメイジャーの結束力を改めて象徴する!


 充瑠が無事に生還できたのは、皇帝の攻撃で爆死寸前となったガルザが魔進ジョーキーに意識を飛ばして、谷底に転落する途中で救ってくれたからだと回想で語られることで、ガルザの存在にも救いを与えてみせている。


 自分の分まで生きて絵を描くことでキラめきつづけろと充瑠に云い残したガルザは、


「生まれ変わったら仲のいい兄弟になりたい」(涙)


というオラディン王への伝言を充瑠に託して、ジョーキーの操縦室の中でキラメキの中で消滅していく……


「オレが生きることで、ガルザが生きた意味になるんだ!」


 皇帝に洗脳されたがために、本当は仲がよかったハズの兄・オラディン王と兄によく似た充瑠に憎悪の炎を燃やすに至ったガルザだった。
 しかし、真実がすべて明かされた今、自身の想いをつなぐ相手としてガルザが充瑠を選んだのは、充瑠がオラディン王との「同質性」を持つだけではなく、ガルザ自身との「同質性」をも感じたことで、ガルザも充瑠のことを真に認めて望みを託したのだということを、この充瑠のセリフが逆照射のかたちで表現しているのだ!


 そして、このエピソード44で秀逸な点がもうひとつある。


「皇帝に逆(さか)らって生き延びた者はいない」


 このセリフをクランチュラに実に3回も反復させていることだ。


・1回目は、ヨドンヘイムにあてもなく広がる荒野をさまよっていた際に。
・2回目は、消滅したガルザに代わって充瑠を乗せた魔進ジョーキーを操縦していた際に――視聴者には具体的に何に乗っているかを明かさずにキラメイジャー劣勢の最中にこれを描写することで、この時点ではクランチュラがキラメイジャーをあざ笑って再度、皇帝に加勢するのか? と思えるようなミスリード演出として機能している――。
・3回目は、自身を捨てた皇帝への切り札として盗み出していたカナエマストーン・イリュージョアを、「おまえらなら新しい歴史をつくれるかも」とキラメイジャーに託した際にだ。


 先のセリフはもちろん皇帝の絶大なる力を端的に表現しているのだが、まったく異なる状況下でも反復されることで同一のセリフが別の意味合いとして聞こえてくる効果を上げており、クランチュラの心の変遷やキラメイジャーとの関係性の変化が絶妙なまでに表現できていたのだ。
 ガルザの場合は魔進ジョーキーだが、クランチュラからはイリュージョアが託されて、キラメイジャーが皇帝への決定打とすることで、クランチュラの敵から味方への立ち位置シャッフルにも唐突ではなくキチンと段階を踏ませているという作劇も周到にできていたということになるのだ。


*最後まで各キャラの「らしさ」も貫徹してみせたキラメイジャー!


 皇帝が邪面をハズすのは敗北した相手の屍(しかばね)を食らうときのみだという「流儀」をクランチュラから聞かされたキラメイジャーが、イリュージョアを駆使してキラメイジンとギガントドリラーが戦闘不能となった幻影を皇帝に見せて、一瞬の隙をついてヘビをモチーフとした本当の顔をねらい撃ちにするに至るさまは、再三述べてきたがキラメイジャーならではの頭のよい連携攻撃の賜物でもあり、『キラメイジャー』の真骨頂と呼ぶべきものなのだ!
 ついに、唯一の弱点を突かれた皇帝は等身大の姿となり、舞台は巨大戦としての市街戦から等身大アクションによる郊外へと移行する!


 皇帝との最終決戦が撮られたロケ地を、筆者は静岡県御前崎(おまえざき)市にある中部電力御前崎風力発電所付近だと推測している。
 高さ120メートルにもおよぶ発電用の大型風車が、同じ中部電力浜岡原子力発電所をはさむ約10キロメートルの間に全11基も並ぶ場所である――個人的にも何度か通りかかったことがあり、ほぼココだと特定しているのだが――。


 そして、その巨大風車を最大限に活かした絶妙な演出があったのだ。


 もう観念するように説得するマブシーナ姫を画面右に、断固として敗北を認めないヨドン皇帝を画面左に配置してロング(引き)でとらえたカットの両者の背景には、それぞれ先述した巨大風車が1基ずつ映っている。
 しかし、マブシーナ姫の背景にある風車は風の勢いでグルグル回転しているのだが、皇帝の背景に位置する風車はピッタリと止まったままなのだ!


 キラメイジャーの最後の名乗り場面の背景にもこの巨大風車の群れはとらえられており、撮影時の気象条件で回転する風車と回転しない風車が混在していたことが確認できるのだ――それとも別撮りによるデジタル合成?――。
 先述したカットはまさに最終決戦の風向きが変わり、もはやキラメイジャーの方が圧倒的な優位に立ったことを端的に象徴する演出であり、すべてが計算できることではないだろうが、予期せぬ天候・風向きなども味方につけて、このような劇的なカットも撮れたのだろう!


 それにしても原発も近距離にある場所で、よくもまぁ大量の火薬使用の許可が出たものだと(汗)。


 スーパー戦隊シリーズの最終回での変身といえば、ヒーロー&ヒロインの変身後のスーツを着用した変身前の役者が名乗りを上げるとともに、ヒーローのマスクが装着される演出が定番となっている。
 今回は戦況を見守るマブシーナ姫と相棒の魔進たちが、回想として流れる名場面を背景として各人への想いを語る演出がなされたことで、視聴者の感情移入もいっそう高められたことだろう。


・破壊力を誇るカナエマストーン・デストリアを手に皇帝に突撃するキラメイグリーン=瀬奈
・皇帝にそれをはじかれるも「想定内だ」(!)として、すかさずデストリアをキラメイショットで射撃するキラメイイエロー=為朝
・さらにキラフルゴーアローでそれを撃つ「スパークリングフェニックス!」で、ついに皇帝を倒すに至るキラメイレッド=充瑠!


 その最後の活躍に至るまで、各メンバーが「らしさ」を存分に発揮して、いつもながらの戦法で最大の敵に打ち勝ってみせるさまは、先述したマブシーナ姫と魔進たちがキラメイジャーに寄せる絶大な信頼感に説得力を与えて、彼らの勝利は「仲間」がいたからこそとの証明にもなりえていたのだ。


 大苦戦の末の勝利に抱き合って喜びあうキラメイジャー! その上を舞って彼らと喜びをわかち合う魔進たちの描写もまたしかりである。


*「邪面」を付けねば、生きられない現代人!


 さて、ここまで述べてきたものの、『キラメイジャー』はスーパー戦隊シリーズの当然の宿命でもある「仲間」を称揚するだけの作品ではなかったとも思える。
 ヨドン皇帝もガルザもヨドンナもシャドンも、クランチュラを除く敵キャラが「仲間」を否定して、「孤高(ここう)」の存在であることを望んでいたが、それを単純に「悪」として断罪したワケではなかったのだ。


 むしろ彼らの背景に、個人的には現代社会の病巣(びょうそう)が透(す)けて見えてきたのだ。


 エピソードFINALにて、皇帝の「意識の部屋」で断末魔のヨドンナが「あなたにとってボクは……?」と問いかけるや、皇帝はもうひとつの人格だったシャドンも含めて「弱さの象徴」だと答えていた。
 皇帝自身がヨドンナに語った回想によれば、皇帝の出自は「淀みの海」に生まれたヘビの化身で、本来はたいした力もなかった怪人にすぎず、自身がつくった邪面をかぶることで「無敵になった気がした」ほどの超「ヘタレ」だったのだ(汗)。
――ヨドン皇帝の元来がヘビであったという設定は、『仮面ライダー』第1作(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)の最終回にて敵のショッカー大首領の覆面の下に無数のヘビがまとわりついた頭部があったことから着想された設定であろうか?――


 「往生せいや!」と、相手をひたすら恫喝して虚勢を張ることで優位に立とうとしたシャドン。
 「ココ、笑うトコで合ってるかな?」などと、舌を出して相手を見下し、ひたすら嘲笑していたヨドンナ。


 別人格として脳内で生まれた彼らを、皇帝自身が「弱さの象徴」だと断じたのは、ある意味では正鵠(せいこく)を射ていたのだ。


 我々の周囲にもシャドンやヨドンナみたいな輩(やから)があふれていることだろう。その中にも「邪面」を付けなければこの世知辛い(せちがらい)現代社会を生きられない、実は本来のヨドン皇帝みたいな、軽蔑すべきか同情の余地はあるのか悩んでしまうような「ヘタレ」もいれば、歴代スーパー戦隊シリーズの敵首領たちのように天然で粗暴にできているような御仁たちもいるのやもしれない。


 そして、ガチンコ対面ではなく文章や絵などといった二次表現で自身をアピールしようとする者たちは、残念ながら本作の主人公である充瑠のように理想化・美化された存在ではさらさらなく、むしろヨドン皇帝にとっての邪面、つまり現実社会では弱いヘタレのダメ人間であるクセに、その反転としてイキがったり強がったり社会正義ぶったりするような仮初(かりそめ)の人格を発揮していることが往々にしてあるものなのだ(汗)。
 そういう意味では、筆者のような物書きオタクたちこそが、キラキラとしたキラメイジャーたちよりも、よっぽどシャドンやヨドンナやヨドン皇帝の方に近い存在なのだろう(爆)。我々こそが悪に近いのだ。よって常に一生、自戒しつづけなければいけないのだ。


 ただ、そういうことを云ってしまったならば、この文章もここで終わってしまう(笑)。
 『キラメイジャー』における充瑠のような、おもいっきりの「変化球」で、本来の戦隊レッドらしからぬ、邪気はないけど文化系の奇人変人といった人物像。
 彼のような人物を主人公に設定して、敵のキャラクターたちとも対比になるかたちでドラマを構築し、なおかつ主人公を立てるかたちで、そこに何らかの理想像や可能性を追及して、さらに「宝石」や「車」モチーフとも接点を持たせていくといった営為の集大成が成功して、『魔進戦隊キラメイジャー』といった作品として昇華していったのだし、しかもその試みは成功したともいえるのだ。


*「仲間」の賞揚だけでなく「孤高の人」の存在価値をも認めてみせた『キラメイジャー』!


 先にヨドン皇帝・ガルザ・ヨドンナ・シャドンらを「孤高の人」と記したが、キラメイジャーとなる以前に「スケッチブックだけが友達」(爆)だった充瑠だって、立派な「孤高の人」だろう。
 そんな充瑠を敵幹部クランチュラはエピソード36でも「リーダーの器(うつわ)が全然ない」とまさに実に正しく評してみせていた(汗)。リアルに考えれば、充瑠のような浮世離れした芸術家タイプは他人さまに号令を掛けるどころか、隣の人に話しかけることすら困難な性癖かもしれないので、我々オタクと同様に実社会ではウマくやっていくことはムズカしいだろう(笑)。しかし同時に、充瑠は「人の悪口を云うのが苦手」だとも語っていることで、彼の善良な素質をも描いていたのだ。


 同じ「孤高の人」でも、オラディン王や充瑠に宝路らを散々に罵倒(ばとう)していたガルザや、為朝を徹底的に見下していたヨドンナらとは異なり、充瑠は人の欠点をあげつらうことはせずに、この世知辛い現代社会で埋もれている人物の「キラキラ」をも見いだす姿が対比的に描かれてきたのだ。


 たとえば、キラメイジャーを後方支援する地球防衛組織・CARAT(カラット)の設立者で、キラメイシルバー=宝路の実は弟(笑)であった博多南無鈴(はかたみなみ・むりょう)が


「遅咲きクリエイティブ! キラメイゴールド!」


として「7番目の戦士」=キラメイゴールドになるのでは!? との再三のミスリード演出がなされたエピソード30の場合だ。
 30数年前、体内に侵入したモンストーンを取り除く手術のためにオラディン王によってクリスタリアに連れていかれた宝路は、意識が遠のく中でオラディン王が博多南に、


「君こそが真の戦士だ!」


と語りかけたのを記憶していたことから、ヨドン軍の攻勢が激化する中で博多南が「7番目の戦士」となる決意を固めたのだと思いこむ。だが、充瑠はそれを、


「(博多南さんは)そういうタイプじゃないよ」


などと遠慮なしに否定をしたのだ。実の兄だが博多南とは正反対に見た目や挙動がかなり派手でファンキーなノリの宝路ではなく、充瑠がそれを看破したのは、博多南に自身との「同質性」を感じ取ったためだと思うのだ。


 回想場面で描かれていた高校生当時の博多南は、現在と同様にメガネをかけていることから、おとなしそうな印象であり、兄が世話になるからとオラディン王に日本酒、マバユイネにチョコレート、王室の一族に石のように硬いせんべい(笑)をおみやげとして手渡すとともに、宝路が退屈しないようにと好きなマンガを全巻(爆)、オラディン王に託していた。
 これをオラディン王は「カンペキな気遣い」と評して、「後方を任せられる存在があればこそ戦士は安心して前に出られるのだ」という「後方要員」としての意味合いで、博多南に「君こそが真の戦士だ!」と呼びかけたのが真実だったのだ(笑)。ただし、もちろんそれこそが「真の戦士」ではなくても「真の人格者」ではあるのだ。


 映画『エピソードZERO』以前の前日譚として、博多南がキラメイジャーの後方支援をするようになった経緯を描いて、そのキャラを掘り下げたこと自体も好印象だ。
 ただ、人目につくような派手さや人前に出ることをキラう人間にも理解を示して、適材適所で活躍できる場所が必ずある! と主人公の充瑠や王さま=オラディンが語ったことで、そんな子供たちに一条の光を照らしたかもしれない作劇こそが「子供番組」としてもすばらしいのだ。
――いやまぁ、思春期に達した将来においては裏切られることが必定なので、これはこれで残酷な仕打ちなのかもしれないけど(笑)――。


 先述したエピソード37の「後ろ向き」な「瀬名5号」に対する小夜の説得はこれを反復して描いたものであり、日々生きづらさにさいなまれている「瀬名5号」のような「孤高の人」にも存在価値はあるとした『キラメイジャー』は、つまり単にスーパー戦隊シリーズの普遍のテーマでもある「仲間」を称揚するばかりの作品ではなかったのであった。


*「変わらない」ことをも肯定してみせた『キラメイジャー』のテーマ的多面性!


 その「孤高の人」をゲスト主役としたのがエピソード40だ。
 漫画家としての活躍を夢見るひきこもりの青年・三郎が、ハリガネ邪面が化けた美少年・カロリーくん――ネット上のハンドルネーム――に絵がうまい、おもしろいなどとおだてられて、そのカロリーくんに勧められるままに人気雑誌の新人募集コンテストに応募するも落選し、ネット上で作品を散々に酷評されてしまう。


「なんで、いつもこうなんだ!?」


 歩道橋の上で絶望していた三郎に、カロリーくんが、


「もっと純粋なままに生きられる世界に」


と誘いかけるや三郎の全身はハリガネに包まれて、夕陽を背景に巨大な邪面獣ジイシキ(自意識・笑)シェルガと化した!


 特撮マニア諸氏であれば、天体望遠鏡で夜空の星を観ることだけが生きがいであり、仕事は失敗つづきで近所の住人からも疎(うと)まれている冴えない青年・フクシン三郎を、美少年に化けたサイケ宇宙人ペロリンガ星人が星の世界へと誘(いざな)った『ウルトラセブン』(67年)第45話『円盤が来た』を彷彿としたことだろう。
 個人的には「京都アニメーション大賞」に応募するも入選せず、自身の作品をパクったなどという逆恨みで2019年7月18日に京都アニメーション第1スタジオに放火し、多くの社員を死傷させた青葉真司(あおば・しんじ)容疑者のこともおもわず頭に浮かんだが(汗)……


「純粋であればあるほど無防備だ。無防備なほど闇に堕(お)ちやすい」


 これは人間を邪面獣化する今回のクランチュラの作戦に対してガルザが口にしたものだ。闇に堕ちやすい人間が常に「純粋」な人間であるのかは議論の余地はあるだろうし、粗暴だったり自分に甘いタイプであったりすることも多いのだろうが、ガルザの見解にも一理はあるのだ。まさにこれはヨドン皇帝に洗脳されてしまった幼いころのガルザ自身のことであり(!)、最終展開で明かされた彼の出自の伏線でもあったのだ。
――むろん、「純粋」であることをエクスキューズとして、自身の悪事を自己正当化してしまう危険性もあるワケなので、「純粋」さも必ずしも万能でもホメ言葉でもないということにはなる。悪に傷つけられないように、あるいは悪の誘惑に負けないようにするためにこそ、「純粋」さよりも「知恵」や「老獪」さもまた必要だいうことにもなるのだ!――



 エピソード44の冒頭では、ヨドンヘイムで消息を立った充瑠のことを、魔進オラディンは、


「彼はひたすら純粋だった。純粋だったからこそガルザの意識とつながることができた」(大意)


などと語っており、ともに「純粋」であった充瑠とガルザの「同質性」をより強調していた。


「人の純粋な心を利用して、許さない!!」


 「純粋」なキラメイレッド=充瑠がキラフルゴーアローでハリガネ邪面にトドメを刺す描写は、我々のような人種にとっては『キラメイジャー』の全バトル中、最もカタルシスが感じられたかもしれない。


 ロン毛でデブでメガネの三郎に自身との「同質性」を感じたからこそ、キラメイレッド=充瑠は通常回では見られないような怒りを爆発させたのだろう。
――演じたお笑いコンビ・かが屋の賀屋壮也(かが・そうや)のルックスや体形がリアルにすぎるが、実際の氏もイラストやマンガが趣味だそうだ(汗)――


 そして、このエピソードが秀逸だったのは、同じ「純粋」でありながらも邪面獣に変貌するに至ったほどの三郎の内面に渦巻いていた「異質」な部分すらをも、充瑠が否定するどころか肯定してみせたことだった!


 エピソード36のクライマックスで、充瑠はかつてスケッチブックしか友達がいなかった自分が変われたのは魔進ファイヤが


「おまえは変われる!」


と云ってくれたからだとファイヤに対する謝意を口にして、それに対してファイヤは、


「それはおまえの意志だ」


と返している。


「変われ! 変われる! 変わりたい!!」


とエピソード1で叫んでいた充瑠の姿が視聴者の目に浮かんだだろう。「純粋」だったがゆえにクラスでボッチとなり、「柿原さん」の標的にもされていた充瑠は、自らの意志で「変わる」ことを望んだのだ。


 これに対して、


「カロリーくんとの時間だけが生きていて楽しかった」(!)


と語ったほどに日々生きづらさをかかえていた三郎は、コミックやフィギュア、映像ソフトにゲームのコントローラーなど、「全部、ボクの大事なモノ」が浮かぶ異空間の中で、


「ずっとこのまま…… ずっといっしょに……!!」


と、自身から離れていってしまうカロリーくんの幻影を追い求めたほどに「変わらない」ことを望んだのである。


 この三郎の姿は、充瑠が魔進ファイヤとの出会いがなければそうなったかもしれない「もうひとつの可能性」だと解釈できるものだ。
 ファイヤとの出会いがなかったら、充瑠はそのままスケッチブックだけが友達のボッチ生徒として高校生活を過ごすこととなり、「柿原さん」=瑞希にもバカにされつづけて、まちがっても「遊園地デート」の約束をする関係に至るなんぞありえなかったことだろう。


 だが、高校卒業後に充瑠がその才能を開花させて、新進気鋭のイラストレーターなどになって名声をとどろかせたならば、あの「柿原さん」もようやく充瑠に注目するに至ったという、また別の可能性もあっただろう。


 ふたつに分かれた道の片方を選んで若干(じゃっかん)遠回りになったとしても、その先で道は再びつながっている、などということはよく云われる例え話ではある。「変わる」と「変わらない」のどちらを選んでも、実は人生にさほどの違いはないかもしれない(!)との主張がラストシーンで描かれている。
――この結論には異論もあると思われる。古代ギリシャのむかしから「幸福の女神には前髪しかない」(彼女には後ろ髪がないので、女神が目の前を通りすぎたら幸福やチャンスは二度とツカむことはできない)などとも云われてきたし、個人の努力を放棄させて人々を自堕落にさせてしまう危険性もあると思う。しかし、やみくもに努力を重ねてもかえって失敗する可能性もあるだろうし、心の休息をとって雌伏の時間をすごすことが必要な場合もあるというかぎりにおいては肯定もできるのだ――



 三郎がひとりで暮らしていた、けっこう豪華な邸宅が更地(さらち)と化したことに驚く充瑠に、今回の事件を契機に三郎は「変わろうとしているのかも?」という見方を為朝が示す。しかし、これに対して充瑠は、


「変わらなくたっていいじゃん!」


と主張する。


 通りがかった書店の店頭に貼られた告知ポスターで、充瑠たちは人気漫画雑誌で三郎の手による新連載マンガがはじまったことを知った。


為朝「たしかに変わらなくてもいいのかもな。自分の中の純粋さを大事にすれば」
瀬奈「いつか誰かのキラメキになる」


 先述したエピソード30の「7番目の新戦士」のイメージシーンで博多南が名乗った「遅咲きクリエイティブ!」ではないが、たとえ今は生きづらさをかかえていても、「邪面」をかぶるくらいならば「変わる」必要はなく、「変わらない」ままでいても、そのキラメキがいつかは認められるときが来る……


 甘いかもしれない。十全なオチではないかもしれない。そのキラメキは永遠に認められないかもしれない。人生はそんなにうまくいかないことも、往々にして真実ではあるからだ。
 しかし、このオチにはそんなにイヤな感じやムリな感じもしてこない。むしろこまっている人間に対しても背中を少しだけ押してくれるような優しい希望も感じられるのだ。
 そのかぎりで、万全なものではなくても、こういうテーマとオチのエピソードがあってもよいのではないか? そんな気持ちにさせられてしまうエピソードでもあった……



 エピソードFINALのラストでは、ヨドン軍壊滅の3ヶ月後に、パイナップルタワーのCARAT基地にキラメイジャーや魔進たち、クリスタリアの王族らがバーチャル会議状態で集結して、久々の再会を喜びあった。
 為朝・瀬奈・時雨・小夜は充瑠が違う世界とつながったからこそすべてがはじまり、皆が出会えたのだと充瑠を賞賛した。


 最終決戦の様相を呈していた第3クール後半から第4クールにかけて、エピソード36で充瑠、エピソード37で瀬奈5号、エピソード40ではゲスト主役の三郎と、生きづらさをかかえる「痛む人」を描いたエピソードを、間を空けずに連打した『キラメイジャー』。


 スケッチブックしか友達がいない、コミュニケーション能力には欠けるハズの充瑠がさまざまな世界とつながり、多大な影響力を示すに至った『キラメイジャー』。


 「強くなれ!」でも「勇気を持て!」でも「あきらめるな!」でもなく、「変われ! 変われる! 変わりたい!!」ばかりでもなく、「変わらなくたっていいじゃん!」をも視聴者に訴えていた『キラメイジャー』。


 たしかに表層的には明朗快活な作風で、久々の「王道」的な印象が強かったが、その根底では実は良い意味での「変化球」が常に投げられていたのではあるまいか? 『キラメイジャー』をテーマ的にも総括するならば、そんなところであるだろう。

2021.3.25.


(了)


『魔進戦隊キラメイジャー』終盤寸評

(文・戸島竹三)


 敵幹部・クランチュラがキラメイジャー側に付いたキッカケ。敵首領・ヨドン皇帝に始末されそうになったところを、キラメイジャーに助けられて改心する「あるある」ネタではなかった。


 自由に「お絵描き」を楽しむキラメイレッドこと充瑠少年の「スケッチブック」に反応し、侵略用に邪面怪人たちを「創造」してきた自身の行為とも同じだと気づいて、


「そうか、お前も『作り手』だったのか……。私と同じように、色々なものをイメージしていたんだな」


と共感して、街中で再会したあとも、ふたりして屋外ステージ用に多彩な色彩の巨大な絵画を共作で作り上げていくシーンは多幸感にあふれていて実に感動的!


 敵キャラのひとりと味方キャラのひとりを「クリエイター気質」の感性という共通点で結びつけたアイデアは新鮮で、またもや唸らされた。


 敵幹部・ガルザがヨドン皇帝に洗脳された回想シーン。彼の心の奥底にあった兄・オラディン王への嫉妬心が利用されたという描写ではなかった。
 それこそ裏切り系悪役「あるある」ネタだから避けたのかもしれないが、ここは少し残念。ベタでもクリエイター気質に必然的にハラまれてしまっている、クリエイターのダークサイド、優秀なクリエイターへの嫉妬ネタも、クリエイター万々歳ではなく、ポジティブな子供向け作品自体を少々相対化してみせるアンチテーゼとしてはほしかったところだ。


 そして、ヨドンナ(本当に素晴らしいヴィラン・ネーム!)。理屈は二の次で生き残ってほしかった……。
 とか思っていたら、映画『魔進戦隊キラメイジャーVS(たい)リュウソウジャー』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220507/p1)に出るじゃん!(時系列が最終回前なのか?) とりあえず嬉しい。


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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スーパー戦隊シリーズ 魔進戦隊キラメイジャー Blu-ray COLLECTION 4 <完>

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#スーパー戦隊 #魔進戦隊 #キラメイ #キラメイジャー #魔進戦隊キラメイジャー



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『魔進戦隊キラメイジャー』中盤評1 ~みんなが「キラキラ」できる世界を目指して

(文・J.SATAKE)


 『魔進戦隊キラメイジャー』(20)中盤は6番目の戦士の登場をメインエポックとして、さらなる物語の発展・キャラクター描写の深化・バトルアクションの激化・本作独自の世界観の浸透がしっかりと感じられる。


 新加入の6番目の戦士はキラメイシルバー!


 「貫きシャイニング!」のキャッチフレーズ通りシルバーのスーツにオレンジの差し色、額に装備されたゴーグルが特徴だ。
 彼専用の得物は「削岩機」をモチーフにしたシャイニングブレイカー! 壁や大地を鋭く貫いて突き進むパワーファイトを得意とするが、このスタイルが変身前のキャラクターにも反映されている。


 キラメイシルバーに変身する青年・クリスタリア宝路(くりすたりあ・たかみち)は、「ワンダーなお宝」である輝石を探し求める冒険家として設定されている。
 手掛かりとなる手帳の謎に悩む宝路と、それに新たな視点でヒントを与えるキラメイピンク=大治小夜(おおはる・さよ)。宝石状の生命体・キラメイストーンを通して巡り会った彼らはキラメイジャーとして早々に意気投合する。


 対ヨドンヘイム防衛組織・CARAT(カラット)本部を訪れた宝路を、「兄(にぃ)に」と懐かしそうに迎えるお笑い芸人・古坂大魔王(こさか・だいまおう)が演じるCARATの博多南無鈴(はかたみなみ・むりょう)代表! どう見ても20歳代の宝路を「兄」と呼ぶ彼にギョッとする戦隊メンバー。そこにはある事件が関与していた……。


 30数年前、輝石(きせき)を求めて世界を巡っていた宇宙の彼方にある宝石の国・クリスタリアのオラディン王。地球を訪れた彼は宝路と出会う。そして、ともに輝石を探索していたが、キラメイストーンの力とは相反する、パワーを暴走させる邪石・モンストーンが宝路の身体を犯してしまった!
 オラディン王によってキラメイストーンを体内に取り込むことで一命をとりとめる宝路だが、その容姿は成長が止まって若いままとなってしまったのだ。
 そして、若き日の兄をオラディン王に預けた無鈴の方も、「来たるべく日」のために努力と学びを深め、対ヨドンヘイム防衛組織・CARATを設立するまでになったのだ。
 つまり、異文明とのコンタクトで人生を変えた男が無鈴以外にもいて、なおかつ王さまの養子にもなっており、そしてクリスタリア滅亡を回避できなかったというかたちで、ポッと出の新キャラではなく、出自設定の時点で因縁と動機を担保させているのだ!


 オラディン王の養子となってマブシーナ姫にも優しく頼もしい義兄として慕われた宝路。しかし、王が記した「輝石の記録」に魅入られて探索にのめりこんだ彼は、ヨドン軍の侵攻を前にクリスタリアとオラディン王の危機を救うことができなかった……。
 強く信頼していたが故に、いっしょにいてほしい時に姿を現さなかった宝路をどうしても許せないというかたちで、亡国の姫にして魔進戦隊のオブサーバー・マブシーナ姫にも、新キャラ・宝路ともすでに旧知どころか義兄妹ということにして因縁を持たせている。


 一方、宝路はオラディン王と交わした約束のために行動していた。実はオラディン王にはかつての戦いでヨドン軍・淀みの海の魔女ヌマージョによる呪いがかけられていたのだ。
 そして、当人ではなく彼が愛する者に降りかかってしまうというこの呪いによって、オラディン王の妻であるマバユイネ王妃は命を落としてしていた!
 ヌマージョは王と宝路が打ち破ったものの、その呪いがマブシーナ姫にも及ぶと危惧した宝路は、奇跡の力を秘めた4つのカナエマストーンを手にするために奔走していたのだ。
 お互いを思う気持ちが強いために、真相を明かせずにスレ違ってしまっていた切ない悲劇……。


 さらに、宝路は叔父でもある後年の敵幹部・ガルザにそそのかされ、ひとりで行動するほうが実力を出せると信じ込んでいた。熾烈な戦いと妹を救うための困難な輝石探し。
 秘密を抱える彼にキラメイジャーの変身者の資質として必要な精神力・キラメンタルと対をなすガルザの邪悪なジャメンタルが打ち込まれて、身体内の邪石・モンストーンが活性化!
 「闇落ち」した宝路は「邪悪シルバー」となってしまう!!――ここでも光に背を向けたガルザが暗躍していたことで敵役としての因縁を強調している!――


 この危機を救ったのはキラメイレッド=熱田充瑠(あつた・じゅうる)たちのチームワーク。カナエマストーンの奇跡の力にのみ頼ることなく、なんとタイムトラベルで過去に飛ぶという大イベント編が配置される! そして、マブシーナ姫の呪いを解く手掛かりを得る!


 そして、マブシーナ姫は宝路の心に訴える。私にだけでなく皆のヒーローになってほしい! 国民が輝けることを一番に考えてきたオラディン王。それを間近に見ていた姫だからこそ、兄にも同じ理想を追いかけてほしい……。
 お約束だが、愛する妹と信頼できる仲間たちの支えを受けて、ジャメンタルの呪縛を打ち破る宝路!


 充瑠たち5人と宝路、そしてマブシーナ姫。互いの関係が深まる過程が、バトルアクションとキャラの心情交歓を同時進行で見せてゆく見事な構成。チームで協力することで大きな困難に立ち向かう力を得るスーパー戦隊シリーズの魅力、そしてメインとサブキャラの交流をしっかりと描くことで醸成する雰囲気が「魔進戦隊」のカラーを明確にする。


 ヒーロー側の強化とセットで、メカ=魔進(マシン)も新登場! なんと既存の魔進戦隊5人とは異なり、身体内の輝石を用いて自らが巨大なキラメイストーンに変化してしまうキラメイシルバーというかたちで、巨大化戦での在り方を差別化!
 無鈴が独自に開発した魔進・ドリジャンと合体することで完成するのが、3つのドリルと作業アームを装備した巨大ロボ・ギガントドリラーだ!


 人間サイズのシルバーと同じくドリルでの強大な突破力を地底を舞台とした戦いで披露し、その魅力をアピールしてくれた。
 敵幹部・ガルザの操る蒸気機関車モチーフの魔進ジョーキーと合体することで実力を発揮していた魔進エクスプレス。
 ジョーキーの参戦減少に伴い、それに代わる魔進が登場! 同じく列車モチーフである新幹線とサメを組み合わせた魔進ザビューン(笑)だ。ボディカラーを白で統一。ジョーキーの黒との対比が明確に。
 そして、合体ロボ・キングエクスプレスザビューンはサメの探知器官を応用して敵の弱点を特定し、超特急で攻撃を仕掛ける!


 6番目の戦士が登場したことで、敵側にもボリュームを増すためにヨドン軍にも新幹部が設定される……。
 お宝探しに目をキラキラさせる宝路&充瑠をクールに観察していた美女の巫女さんに一目惚れしてしまうキラメイイエロー=射水為朝(いみず・ためとも)。
 その正体こそヨドン皇帝直属秘書官・ヨドンナ! 人間の感情を理解せず、笑顔の代わりに舌をダランとさらけだすのがキメ顔のサディスティックウーマンだ!
 ムチを振るって雑兵ベチャットや邪面師をその命と引き替えに強化する力を持っている、部下を使い捨てにする冷酷な幹部なのだ!
 新敵幹部の非人間性を強調するために、人間がチームで協力する姿を弱者が群れているだけだと見下してくるヨドンナに、激しく憤(いきどお)る為朝! ここでも善悪の対立の構図をしっかりと見せて、両者のライバル関係も強調していく。


 雑兵もパワーアップする事態を受けて、カナエマストーンの力を借りようとするメンバーたち。しかし限界を破って無理をすれば命の危険が……。
 充瑠は「不死鳥伝説」の伝わる神社を訪れる。子供時代からそこで絵を描いて見せていた宮司・ヌシカンさんと再会し、彼もオラディン王と旧知の仲であったことを知る!
 王が弓の手ほどきを受けていたという話から、ただ強く弓を引いては壊れるだけ。集中して一瞬に最高の力を発現させることが重要だと教えられた充瑠。そこで「ひらめき~~ぐ!」したのが、「制限時間」つきで能力を引き出す不死鳥の弓=キラフルゴーアローだ!


 キラメイレッドが空に放った矢で魔進戦隊5人が変身するとキラメイジャーは胸のキラメイストーンの位置が変わったプロテクターを装備する。
 そして、一点集中の一撃! 多勢に向けての一斉射! 目にも止まらぬ素早い斬撃! など、ひとつのキラフルゴーアローをバトンパスするようにつないでゆき、それぞれのバトルスタイルで敵を討ち倒してゆく爽快なバトルアクションを展開する!


 ここで登場した不死鳥がキラメイジャーのさらなる危機を救うシンボルとなる。
 本作における巨大怪獣こと邪面獣によって力を封じられた魔進ファイアたち。力を取り戻すにはキラメイストーンの聖地・アタマルドに行くしかない。それにはオラディン王を幼少から見守ってきたという設定の魔進ハコブーの協力が不可欠なのだが、王を守れなかった彼は地球で隠遁者となっていた……。
 要はクリスマス商戦合わせの新メカ登場の一環なのだが、その名の通り、ただの運搬メカにも個性的な性格と出自を与えることで、視聴者の印象に残るドラマ性を与えているのだ。偶然にも我らが地球で隠遁していたのは、この手の番組特有のご都合主義なのだが(笑)。


 心を閉ざしていたハコブーを魔法戦隊の面々はエンターテイメントの力で目覚めさせようとする! キラメイブルー=押切時雨(おしきり・しぐる)は充瑠との漫才、弾き語りなどを披露するも撃沈……。しかし、自分の力不足に涙する彼の姿に感動して、ハコブーは立ち上がる!!
――感動の思いをとうとうと語るハコブーを尻目に、実はすべてが演技プランであったことを充瑠に明かす時雨! そんな展開でよいのか!? しかし、確かに演技力はスゴかったことになるが、人生の先輩の話はきちんと聞きなさい(笑)――


 魔進ハコブーはこれまでで最大の翼竜型魔進だ。その黄金色の機体を180度回転させて、魔進ファイアたち5体のキラメイストーンを搭載するカーゴモードも実装。そのお歳のせいか人生の先輩は昔話が大好きで、とにかく話が長いのが困りものだと描写されている(笑)。


 聖地・アタマルドは人間とクリスタリア人が共存する世界を創造したオラディン王の理想郷。王があっての世界だとハコブーは忠告するが、これまで幾度もオラディン王と夢の中で邂逅した充瑠はその導きを信じて出立する。
 ヨドン軍に拘束されたオラディン王はジャメンタルによって邪石に封じ込められたが、その精神の一部を聖地・アタマルドの輝石に飛ばしていたのだ! 邪石は今まさに崩れ去る時。王を救い出す最後のチャンスなのだ。
 聖地・アタマルドで王を探している為朝たちの前にいくつもの扉が現れる。一度しか使えない鍵で扉をくぐる小夜たちだったが、たどりついたのは襲い掛かる自身たちの影だった!


 そして、充瑠は鍵穴のない扉に、自らの手で鍵穴を描き込むことで(笑)、自身の思いの強さを証明し、オラディン王と相まみえた!
 手を取り合ってジャメンタルの呪縛から逃れ、光溢れる世界へと飛び出すふたり。夢の中で逢瀬を重ねた彼らの解放!
 これをBL(ボーイズ・ラヴ)的だと見る向きもあるようだが、ソウルメイト(魂の仲間)という言葉もあるように、個人間の恋情ではなく種族を越えて深く結びついた仲間の素晴らしい姿を表現した演出だと筆者は見ている。


 オラディン王は解放された精神をスカイキラメイストーンに込めることで、自身が魔進オラディンとなった!
 全身がクリスタルブルーの不死鳥は神々しさをそなえ、魔進ハコブーと合体することで巨大ロボ・グレイトフルフェニックスが完成!
 全身のレッド・ゴールド・クリアブルーのきらびやかなカラーリングが映える。大型の斧=ゴールデンアックスが得物で、このふたつを組み合わせたハルバードに太陽のエネルギーを集約して斬撃に込めるグレイトフルプロビデンスは威風堂々の必殺技だ。


 スーパー戦隊シリーズの原点の魅力を見せてくれる本作。これまでの作品で取り上げていたモチーフをピックアップして魔進戦隊なりに解題するエピソードも魅力を放っている。
 映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』(20)で描かれた高校生としての充瑠。その中でかわいい見た目とは程遠い、おどろおどろしい自画像を描かれた女子高生クラスメイト・柿原瑞希(かきはら・みずき)さん。
 彼女が再登場して、本作における敵怪人こと邪面師によって充瑠とくっついて離れられない事態を一緒に乗り越えることで互いをさらに知り、友情が生まれるのがエピソード20『あぶないペア』だ――刑事ものなどでもよくある、手錠でつながった犯人と刑事が諸事情で同道するパターンの援用でもある――。


 シリーズ第29作『魔法戦隊マジレンジャー』(05・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110228/p1)マジレッド=小津 魁(おづ・かい)は高校生で、サッカー部マネージャー=山崎由佳に思いを寄せていた。魁は正体を伏せてヒーローと学生をこなしながら、マジレッドに憧れる彼女との恋愛を自身がマジレッドと知らせずに成就させられるかが注目ポイントとなっていた。
 キャラが違えば状況も変わる。教師や大人の前では「よい子」を演じる瑞希は、誰の前でも変わることなく絵画の中の想像の世界で自由に羽ばたく充瑠に苛立ちキツくあたる。
 しかし、そんな彼女の心苦しさを自らも恥じていることを充瑠は感じとっていた。よい子を演じるズルさも毎日をがんばる強さの現れ=「ズルパワフル」(笑)を発揮できるスゴいことだと瑞希を認める充瑠!
 さらにキラメイレッドであることを彼女に明かし(!)、邪面師を倒すために協力しあうことに。おとりとなって攻撃をかわし続け、反撃の時間をつくるのだ。


 キラメイジャー独特の名乗りアクションのようにキラメイレッドとJK(女子高生)瑞希のペアダンスが華麗にしなやかに展開し、邪面師の攻撃を避け続ける!
 戦いのなかでもキラキラしたトキメキが生まれた瞬間であった。
 戦いに勝利し、平和なクラスの日常。変わらずスケッチブックに向かう充瑠と、彼に優しい視線を送る瑞希。良い意味で人の評価を気にすることなく、自分らしさを解放した彼女。今後もキラメイジャーのよき理解者としてクライマックスにも参加してほしいし、充瑠との関係もさらなる発展を期待したい。


 歴代のスーパー戦隊とのクロスオーバーも定着して久しいイベントとなった。
 キラメイグリーン=速見瀬奈(はやみ・せな)が所属する陸上チームをサポートする企業は「スクラッチ」であり、これはシリーズ第31作『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080817/p1)で獣拳戦隊を支援する防衛組織でもあった。そして、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』のキャラクターとの競演がついに実現!
 スクラッチが開発したサポートギアにヨドンナが罠を仕掛け、走り続けなければ爆発する危機に陥った瀬奈。スクラッチの真咲美希(演・伊藤かずえ)とその娘=なつめ(演・桑江咲菜)が獣拳戦隊の力の源である精神=ジャン語を通して瀬奈と交歓し、勝利を手にするまでを描くのがエピソード27『大ピンチランナー』だ。


 サブキャラクターがその戦隊の精神を伝えるかたちのため、新旧2大戦隊が共演する毎年恒例の映画『スーパー戦隊VSシリーズ』のようにガッチリ競演を期待するファンとしては残念であったかもしれない。しかし過去の映像を用いて獣拳戦隊のメインキャラ構成や魅力の一端を紹介するシーンが盛り込まれ、美咲となつめが彼らをしっかりと支えていたことをアピール。
 少女だったなつめがスクラッチのスタッフとなり、美咲女史は激獣レオパルド拳の使い手としてヨドンナに戦いを挑むなど、現在の頼もしい姿をしっかりと見せることで、彼女たちも戦う仲間であることを認めさせた。


 さらに、ゲキレッド=ジャンが使っていた「ニキニキ」「ゾワゾワ」「モラモラ」といったジャン語の理解に苦しむ瀬奈が、罠を打ち破るキーワードとして使われることで本質を学び取る。獣拳戦隊に初めて触れた子供たちにも良く伝わる展開になっていたと思う。


 これまで魔進戦隊を支えてきた博多南無鈴代表にスポットを当てたエピソード30『誇り高き超戦士』も登場。
 オラディン王は復活したが、聖地・アタマルドに留まっているために、簡単に呼び出すわけにはいかない。激しくなる戦いに向けて7番目の戦士を待望する雰囲気が……。
 宝路には何か予感があるようだ。そして無鈴が立ち上がる! キラフルゴーアローを強化すると研究室にこもる無鈴の決意に7番目の戦士・キラメイゴールド誕生を確信する宝路!


 かつてモンストーンに犯されて宝石の星・クリスタリアへと運ばれるとき、宝路は「君こそ戦士だ!」と無鈴を讃えるオラディン王の言葉を聞いていたのだ。その力を信じて堪え忍ぶ宝路……。
 だが、充瑠は無鈴の別の力に注目していた。それは「人への気遣(きづか)い」だ。異文化の星へ渡る宝路のために、王家への手みやげと宝路の愛読書を王に献上する無鈴。
 そんな心配りができる人物が後ろから支えてくれるから、矢面(やおもて)に立って戦うことができる。これも戦い方のひとつだと王は認めているからこそ「君こそ戦士だ!」という言葉をかけたのだと。そして充瑠もそれを確信するから無鈴を待つ!


 果たして、到着したキラフルゴーアローには通信機能が追加され、聖地・アタマルドへのホットラインが開通していた! キラフルゴーアローの力と、魔進オラディン&ハコブー=グレイトフルフェニックスによって敵を撃退するキラメイジャー。
 キラメイゴールドのスーツも登場して本当に無鈴が7番目の戦士?! と思わせる前半の展開と、ややコミカルに寄せつつも戦士をサポートする仲間の大切さをアピールするハートフルな落とし方はお見事であった。


 作品を放送するうえでキャラクター玩具の商品展開は欠かせない。近年はスタッフが製作した撮影用のプロップと併用してバンダイが販売する玩具も撮影に使われているようだ。その玩具がふんだんに登場したのがエピソード31『おもちゃ』だ。
 邪面獣の能力で縮小化してしまった充瑠=1号ロボ・キラメイジンと宝路=ギガントドリラー!
 ただの猫が猛獣になってしまった事態にあわてふためく魔進たち!(笑) さらに通りかかった少年・龍生(たつお)に持ち去られてしまう! 日用品で作られた山あり谷ありのフィールドで思う存分ヒーローになりきり、ごっこ遊び=「ブンドド」する龍生。これはいまキラメイジャーのおもちゃを持っている子供たちの家で毎日展開しているリアルな光景でもあるのだ(笑)。
 とんだ災難だと早々に逃げだそうとする宝路と魔進たちだが、充瑠は龍生が心の底からキラキラしていないことが気掛かりで……。
 母親が大好きだからこそ、ちょっと甘えたくても本当の気持ちを隠してしまう子供。仕事の忙しさと子供なりの「やさしさ」に心の機微を見逃してしまう親。まさにかつてマブシーナ姫と宝路がたどった心のスレ違いと同じ悲劇だ。


 充瑠は素直な気持ちを母に伝えることが大事だと龍生を諭(さと)す。相手を思いやる心は大切だが、無理を続けると元気を失い病んでしまう。子供が甘えたいのは当然だし、子供の気持ちを受け止めて応えてあげるのが親のつとめだ。
 ヨドン軍との戦いは魔進戦隊の任務だが、目の前の子供の幸せを守るのも大切なことだ。リアルな戦争を考えたら、終始戦闘や警戒に従事している軍人にはこの両者は両立できないことなのだが、そこは子供向けのヒーローものである。この両者は両立できるし、子供の願いも犠牲にしないようにと務めてみせるのが、子供番組の作りとしてはベターだろう。


 このように中盤はメインとサブキャラの関係も深く描写することで物語に厚みを持たせ、視聴者の感情移入度を上げてさらに引き込む。作劇の基本ではあるが、そこがしっかりしている作品はやはり面白く観られるのだ。


 近年は素顔のヒーローたちがキャラクターソングを歌ったアルバムも発表しているが、本作ではシリーズ後半ではエンディング歌曲として毎週放送される趣向も試みられた。このへんは我々年長マニアの方が喜んで、やや背伸び盛りをしたいようなマニア予備軍タイプの子供たちには気恥ずかしさを覚える趣向かもしれないが、一般的な子供たちにはキャラクターを浸透させることに貢献していると思う。
 そして、コロナウイルス感染拡大防止のため、ロケ場所も限られているであろう現在、東映の大泉撮影所内でも見立てで代替できる箇所はそこで撮影を済ますなど、苦心して選定していることもうかがえるなか、スタッフの挑戦は続いている。
 円谷プロの『ウルトラマンZ』(20・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)では定番となっている、ミニチュアセットによる市街地が崩壊していく細やかなシーン。『キラメイジャー』では東映も巨大怪獣に相当する邪面獣が巻き起こす突風で屋根が吹き飛ぶ家屋のカットを投入し、その臨場感を演出!
 等身大アクションではキラメイジャーと雑兵ベチャットたちが屋外から建物内へ追いつ追われつ展開するアクションを、ひとつのカメラが捉え続ける長回しのワンカット映像に挑戦! こちらも緊張感溢れるバトルシーンでワクワクとさせてくれた!


 昭和からスタートしたスーパー戦隊。長い歴史のなかで培った特徴を捉え直して、令和の時代にマッチした語り口で仲間たちと協力する「チームワーク」の素晴らしさをアピールする本作。いかなる展開で終盤を迎え、どのような成果を獲得するのか。これからも注目し続けたい作品だ。


(了)


『魔進戦隊キラメイジャー』中盤評2

(文・宮城のトーマス)


 『魔進戦隊キラメイジャー』(20)は、シリーズ序盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200712/p1)を見ていると(映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20)も含む)、設定の説明とキャラクターの描き方がよくできているというのが感想(特にレッドの充瑠とイエローの為朝)。
 と書きながらも、ブルー(時雨)・ピンク(小夜)・グリーン(瀬奈)の3人も、「職業」設定を組み込ませることでキャラクターが明確になって、キャラクターの立ちが巧(うま)く描けている。


 この作品の特徴としては、伏線(と布石)の描き方と回収の巧さということが挙げられる。
 この作品らしい例を挙げれば、2号ロボのキングエキスプレス。まず、機体の下部分を構成させる幹部のガルザの操縦するスモッグジョーキー(魔進ジョーキー)を最初に登場。視聴者にはキラメイジャー達のロボのライバルロボと思わせながら、番組が展開しながらも、ちゃんとキングエキスプレスの「布石」や「伏線」は張っている。
 キングエキスプレスとキングエキスプレスの機体の上部分を構成する魔進エキスプレス登場の前後編。レッド(充瑠)の特訓回と思わせながら、ちゃんと幻で魔進エキスプレスを登場させる。
 そして、スモッグジョーキー&邪面獣のバトルで1号ロボ・キラメイジンがピンチに(ここらへんで敵幹部・ガルザの狡猾さも描写できていて見事!)。
 充瑠の夢の中でのオラディン王とのやり取りで、オラディン王の充瑠に対する「お前ならやれる」的な台詞が、今後の展開(キングエキスプレス&魔進エキスプレスも含めて)を予想させる。


 少なからずも、この前後編で主人公・充瑠が本作の「重要人物」になったわけだ(敵幹部・ガルザとのライバル的な関係も含めて)。ガルザも充瑠がオラディン王と同じクリエイティブな能力を持ってるだけにその存在を軽視はできなくなる(ガルザは本作品のシリアス部分を受け持つキャラクターだが、その次エピソードの「百人一首」編とのギャップが・笑)。


※充瑠は、彼自身の持つ特殊能力で、すでに宝石の国クリスタニアでのクーデター・滅亡劇を知っていることは、映画『エピソードZERO』を観賞している人は分かるはず。この場面も本作では重要な部分でもある。


 地球防衛組織・CARAT(民間企業がベースになっているために防衛「軍」ではない)の関連施設での、マブシーナ姫(本作の影の主人公といえる)を交えた充瑠(キラメイレッド)対ガルザの一戦。
 そして、マブシーナが地球に来た際に乗ってきたホワイトキラメイストーン(ここらへんも『エピソードZERO』で描かれている)が魔進エクスプレスに進化する。


 『エピソードZERO』と序盤のエピソード群が伏線を巧く貼っているため、この作品は「こんな小ネタも伏線だったのか?」といった感じで巧く伏線として作っていて、しかもその多くがきちんと回収されている。


 特に瀬奈の陸上のスポンサーが『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07)に登場したスポーツ用品会社・スクラッチ社だという設定は、劇中にゲキレンジャー関係者のスクラッチ社の重鎮である真咲美希・なつめ親子がまさかのかたちで再登場して『キラメイジャー』とクロスオーバー!
 「設定」を巧く「伏線」に転じた『キラメイジャー』スタッフの機転の巧さと、マニアの観たいものを見せてくれるサービス精神と、かつての出演者たちへの出演交渉といった努力の発露だ。


 本作はメカ生命体でもある魔進(マシン)たちも含めると、多数の爆竜を含む『爆竜戦隊アバレンジャー』(03・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110613/p1)や多数の炎神(エンジン)を含んだ『炎神戦隊ゴーオンジャー』(08・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1)のような、かなりの「大所帯なヒーローグループで構成されている。ヒーロー+意思を持つメカ+支援者! よって、キラメイジャーや魔進を交えたドラマ展開も面白いものがある(第5話の為朝と魔進ショベローのエピソードが良い例だ)。


 劇中で魔進が合体した巨大ロボについては、あくまでもロボ「単体」の魅力やカッコよさを追求したかたちになっていて(この部分は玩具会社・BANDAIの社員の方もそういう意図だったと言及している)、純粋に単体のロボの合体・変形・モチーフの良さを活かした作りになっている。
 特に、1号ロボのキラメイジンの「合体ロボ」としての魅力を突き詰めたカッコよさは、よく考えこまれているなぁと痛感する。キラメイジンの各ロボについては、また別の機会に書いてみたいとすら思う。


 本作の中盤から最終章についてもいずれつづってみたい。『魔進戦隊キラメイジャー』は何だかんだ言いながら面白い作品だと思う。


(了)


『魔進戦隊キラメイジャー』中盤評3

(文・戸島竹三)


 まず、ヴィラン(欧米での悪役に対する歴史もある総称)である途中参加の新女幹部「ヨドンナ」のネーミングセンス(「淀む」と「女」を掛けたもの)に座布団10枚をあげたい!
(ちなみに、ヨドンナ役の彼女と『ウルトラマンZ』(20)オオタ・ユカ役の黒木ひかり、さらには『仮面ライダーセイバー』(20・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220116/p1)の新登場キャラ役の女性も同じ所属事務所らしい・笑)


 キャラクターソングの中では作詞・阿木曜子&作曲・宇崎竜童コンビによるキラメイシルバー・宝路(たかみち)の楽曲が、昭和テイスト満載でイカす!(『仮面ライダーブラック』(87年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001015/p2)主題歌を歌唱した倉田てつをを思わせる歌唱力も含めて・笑)
 2020年11月21日現在での最新のエピソードである第31話『おもちゃ』は、『キラメイジャー』の玩具自体がそのままのサイズで、実物がミクロ化したという設定で本編に登場して大活躍! 正しい玩具販売促進が行われていて楽しかった。
 ただゲストの少年は、キラメイジャーの存在を知らなかったようだが(巨大ロボに架空のネーミングをしていた)、そこは無理がある。毎回あれほど堂々と市街戦をしているのだから、ある程度の知識はある描写にしてもよかったのでは?


(了)


『魔進戦隊キラメイジャー』中盤評4

(文・久保達也)

*作品の「タテ糸」となっている「6番目の新戦士」!


 久々に「王道」のスーパー戦隊としてスタートしたものの、新型コロナウィルスの影響で5週も新作の放映を休止する憂(う)き目にあった『魔進(ましん)戦隊キラメイジャー』(20年)は、2020年6月21日放映のエピソード11『時がクルリと』から無事に放映再開となった。


「あの人の予感がする」


 すべてが宝石のように美しく輝いていた国・クリスタリアの王女なのに、青くてごっつい大理石がそのまま顔となった石頭の大仏さまのような造形になってしまったマブシーナ姫のことを、筆者も多くの特撮マニア諸氏と同様に当初は全然かわいくないと思ってしまった(笑)。せめて、お目めを少女漫画や美少女アニメ的にもっと誇張してタテ長に大きくしてくれればよかったのに……
 だが、声を演じる人気アイドル声優水瀬いのり(みなせ・いのり)のかわいい声質もあってか最近はすっかり慣れた感がある。


 エピソード11のラストでマブシーナ姫が先述のようにつぶやくや、宝石の輝きのようなキラキラとした背景に謎の人物のシルエットが示される。


 そして、つづくエピソード12『ワンダードリルの快男児』からは、スーパー戦隊シリーズ恒例(こうれい)の「6番目の新戦士」が登場した!


 黒髪ロン毛で頭にゴーグルをはめたかなり高身長のガッシリ体型に銀のダウンジャケットを着用する、見た目は20歳前後に見える青年であり、「昭和」のスーパー戦隊に主演した男優たちのごとく、近年では珍しくかなり濃い目の顔をしたクリスタリア宝路(くりすたりあ・たかみち)=キラメイシルバーこそ『キラメイジャー』の「6番目の新戦士」だ。


 この宝路が登場して以降、『キラメイジャー』は多数のキャラの思惑(おもわく)が複雑に交錯する「大河(たいが)ドラマ」的な一大群像劇として、以前にも増して連続ものとしての様相を呈(てい)することとなっている。


 映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200322/p1)で前日譚(ぜんじつたん)として描かれたように、先述したクリスタリアは美しい星を次々と侵略する闇の帝国・ヨドンヘイムによってすでに滅ぼされてしまった。
 クリスタリアの王女・マブシーナと意志を持つ宝石たち・キラメイストーンは次にヨドン軍が侵攻すると思われた地球に来訪し、5人の若者たちを次々にスカウトすることでキラメイジャーが誕生したのだ。


 ヨドン軍のクリスタリア制圧を成功させたのはクリスタリアの王・オラディンの弟であり、マブシーナ姫にとっては叔父(おじ)にあたるガルザの裏切りだった。
 のちにヨドン軍の幹部にまで登り詰めた、故郷の星と父の仇(かたき)でもあるガルザを、マブシーナ姫は激しく憎悪(ぞうお)する。
 ガルザもまた兄のオラディン王と考えや言動が重なるのみならず、王と同様に魔進を生みだす能力までを持つようになった地球の男子高校生・熱田充瑠(あつた・じゅうる)=キラメイレッドの打倒に執念(しゅうねん)を燃やす因縁(いんねん)対決が、『キラメイジャー』では序盤から描かれることになった。


 クリスタリア宝路という名字がクリスタリアになっている名前が象徴するように、『キラメイジャー』の「6番目の新戦士」はクリスタリアと地球をまたいだ深い因縁で対立するヨドン軍とキラメイジャーの双方に、彼らの物語がはじまる以前から深いつながりがあったことが、回を重ねるごとに小出しで明かされてきたのだ。


*「6番目の戦士」は「男のコが大好き」なドリルの戦士にしてネタキャラ!


 近年の「6番目の新戦士」がほぼそうであったように、宝路もまた当初からカッコよさは当然として、若干(じゃっかん)コミカルな印象を感じさせる演出が施(ほどこ)されている。
 「細足乙女(ほそあし・おとめ)の山怒らせ」という、山の女神さまが登山してきた細足乙女に嫉妬して災(わざわ)いを起こすという宝石の国・クリスタリアでのことわざ(笑)どおり、遭難者の救護に来て自身が遭難してしまった美人すぎる女医・大治小夜(おおはる・さよ)=キラメイピンク。
 彼女を見かけるも、宝路は「ワンダーキュート!」と喜んで応急処置をするのみで、「時間がない!」と小夜を放置したままその場を離れようとしたほどだった(笑)。


 通りすがりの風来坊的な初登場の場面で、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)のごとく「お宝」探しの旅をしていると自身を語った宝路は、「お宝」の位置を示す地図が描かれた手帳を手に、変身アイテムと兼用する腕時計型で青い球形の高性能レーダーを備えたシャイニーキラメイチェンジャーで「お宝」を探し当てる。
 そして、小型の削岩(さくがん)ドリル・シャイニーブレイカーを大地に突き立て、工事現場の作業員のごとく掘り進めて大穴をあけるのだ。
 そのシャイニーブレイカーは宝路の呼びかけでリュックから飛び出て林の中を高速で駆け抜けて、それにつかまった宝路が空を飛行する(!)なんていうカッコいい描写まであるのだ!


 そして、男子が大好きなドリル型の武器はこれだけではない。エピソード13『地底大戦争』で初登場するキラメイシルバーの専用メカは、宝石のようなクリスタル状の3つのドリル(!)で地底を100メートル1分で掘り進むというオレンジ色のドリル戦車・魔進ドリジャンである!


 そのドリジャンは4話あとのエピソード17『洋館の奇石』で、巨大ロボ・ギガントドリラーに変型! 必殺ワザは3つのドリルでヨドン軍が放つ巨大怪獣・邪面獣に突進する「ギガントクラッシュ!」だ!


 しかも、キラメイシルバーは「ワンダーチェンジ!」として自分自身がシャイニングキラメイストーンなる巨大な宝石に変身し(!)、ドリジャンと合体することで巨大ロボ・ギガントドリラー誕生となるのだ。
 ドリジャンがほかの魔進たちとは違って意志を持たず、自ら話すことがないのは――音声ガイダンスは流れる――設定の不統一ともいえるが、キラメイシルバーの「宝石変身!」を印象強く描くための差別化としてだろう。


 なお、キラメイシルバーのスーツアクターを務める高田将司(たかだ・まさし)は並行してギガントドリラーも演じている。このキャスティングはシルバー自身が変型してメカと合体するという設定を効果的に描くためにはまさに打ってつけなのだ。ちなみに氏は、


・『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)のブルーバスター
・『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)のキョウリュウブルー
・『烈車(れっしゃ)戦隊トッキュウジャー』(14年)のトッキュウ2号(ブルー)
・『手裏剣(しゅりけん)戦隊ニンニンジャー』(15年)のスターニンジャー(6番目の新戦士)
・『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)のジュウオウザワールド(6番目の新戦士)
・『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180310/p1)のシシレッド
・『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190402/p1)のパトレン1号(レッド)
・『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191102/p1)のリュウソウブルー


と、ブルー→6番目の新戦士→レッド→ブルーといった主役と副主役の遍歴をたどってきた、1989(平成元)年生まれの若手ながらもすでに大ベテランなのだ!


「貫(つらぬ)きシャイニング! キラメイシルバー!!」


 ほかのキラメイジャーたちと同じ「キラメイチェンジ!」の掛け声とともに、シャイニーキラメイチェンジャーの球型レーダー下部にあるディスク部分を回転させるや


「Oh(オー)! シャイニング!」


という音声ガイダンスが流れて、太陽光の輝きのもとで全身のシルバーからキラめきを放つキラメイシルバーがアオリでとらえられる初変身の演出は、視聴者が待ちに待った「6番目の新戦士」のカッコよさを存分に描き尽くしていた。
 驚き・驚嘆(きょうたん)・不可思議などの意味を示す「ワンダー」が口グセであるキラメイシルバーは、ヨドン軍の怪人・インセキ(隕石)邪面と戦闘員・ベチャットの集団を、自称「ワンダー極まりない力」(笑)で蹴散らしていく! ただし、


・シルバーをつぶそうとベチャットが走らせた複数のダンプトラックの間に両足を広げて停車させ、腕組みしたシルバーが「どんなもんだい!」と豪語する、スーパー戦隊の元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)の初代キレンジャーの口グセ「どんなもんじゃい!」を彷彿(ほうふつ)とさせるアクション演出とか、
・シルバーがインセキ邪面に対し、「インセキだけに、引責(いんせき)辞任しやがれ!」と口走ったり、
・シルバーがシャイニーブレイカーから光線ワザを放つ際の音声ガイダンスが「ビーム一丁! 喜んで!」と、某(ぼう)有名居酒屋チェーンの接客マニュアルのモロパクリだとか(爆)、
・爆死したインセキ邪面からわきあがる炎を背景に勝利のポーズをキメるカタルシスあふれる定番描写で、シルバーがキラメイジャーよりもほとんど視聴者に向けて「まぶしいだろ」と口にしたりとか、
・シルバーがピンクを抱いて山間部を飛行する華(はな)のある描写で「ワンダ~~~だっこ!」と叫ぶとか(爆)、


もう完全にユカイなネタキャラ扱いだった(笑)。


 90年代以降のスーパー戦隊シリーズではともかく、ウルトラマンシリーズや仮面ライダーシリーズで90年代から2000年代前半当時にこのようなコミカルな描写を入れたならば、特撮論壇で「ふざけるな!」と徹底的にたたかれたかと思えるほどに(汗)、キラメイシルバー初の大活躍はカッコよさと面白さを絶妙に兼ね備えて描かれたのだ。


 ただ、近年は深夜枠のアニメですらも、たとえば『キラメイジャー』と同じく高校生男子が主人公の戦隊ヒーロー作品『ド級編隊エグゼロス』(20年)や、特殊能力を持つ若者たちを主人公の女子高生が容赦(ようしゃ)なく殺害していく『無能なナナ』(20年)なども、ジャンル的なカテゴリーでは純粋なギャグものだとは云いがたいのに、初見では学園を舞台にしたドタバタ・ラブコメディかとカン違いしてしまうほどに、ほぼ全編がコミカル演出にあふれていたりする。


 ひたすら陰鬱(いんうつ)な作風だったりバイオレンス描写ばかりが目立つようなジャンル作品はもはや皆無に近いと云ってよく、むしろそうした印象を軽減するための効果的な手段としてコミカル演出を積極的に導入する作品こそが、すでにリアル至上主義を脱している今の若いオタクたちにも支持されているのだともいえよう。
 まぁ、遭難したのを助けてくれた約束として、事件解決後に宝路と小夜がキスをやらかす描写は双方のファンにとっては見たくなかったかとは思えるのだが(笑)。


 初登場作品のサブタイトルどおりに「ワンダードリルの快男児」としての姿を存分に示した一方で、山で遭難した小夜を結局、助けた宝路はシャイニーブレイカーが入ったリュックを置いて、小夜を背負って険(けわ)しい山道を進んだが、その際に小夜は宝路のことをこう呼んだ。


「ユカイ ツーカイ 怪力くん」(爆)


 「昭和」の世代ならばすぐにピンと来ただろう。これは藤子不二雄A(ふじこ・ふじお・エー)先生原作のギャグ漫画のアニメ化『怪物くん』のリメイク版(80年・シンエイ動画 テレビ朝日)の主題歌『ユカイツーカイ怪物くん』が元ネタなのである――のちにジャニーズ事務所のアイドルグループ・嵐(あらし)大野智(おおの・さとし)が主人公の怪物くんを演じた実写ドラマ版の『怪物くん』(10年・日本テレビ)でも挿入歌として氏の歌唱でカバーされていた。ちなみに『怪物くん』の一番最初のテレビアニメはモノクロ作品(!)であり50年以上も前の1968年に放映されたものである――。


 単にカッコいいばかりではなく、この「ユカイツーカイ」=愉快・痛快なるフレーズがピッタリと来るような要素を持ち合わせているキャラこそが、今の時代に最も受け入れられるヒーロー像ではないのだろうか?
 そして、小夜が「ユカイツーカイ怪力くん」なる「昭和」を思わせるフレーズを使ったのは、その後に真相が語られる宝路の出自をにおわせるものでもあったのだ。


*再会できた兄妹に、対立構図を導入することで予定調和とはせずに興味を喚起!


 従来の「6番目の新戦士」は登場当初は主人公戦隊とは敵対する関係として描かれることが多く、両者が心の変遷を重ねた末にその関係性が変化をとげて、「6番目の新戦士」が正式な仲間入りを果たして「みんな仲良し」(笑)となるのが通例であった。
 『キラメイジャー』でもたとえばエピソード14『孤高のエース』では、「e(イー)スポーツ」界のNo.1プレイヤー・射水為朝(いずみ・ためとも)=キラメイイエローが宝路を指して、


「ホントに協調性のないヤツ」


とボヤく描写がある――序盤から充瑠と対比させてコミュニケーション能力バツグンのキャラとして描かれてきた為朝が、いかにも口にしそうなセリフだ(爆)――


 先述したエピソード17では、為朝が宝路に、


「アンタの胸のカギもすっかり開いたみたいだな」


と語りかけるに至る係り結び的な展開があり、その象徴としてドリルロボット・ギガントドリラーの誕生が描かれていた。


「心を開ける仲間を得たオレは変われる! 変わる! 変わりたい!」


 この「変われる! 変わる! 変わりたい!」は、エピソード1『魔進誕生!』でレッドキラメイストーン=魔進ファイヤにスカウトされた充瑠の心の叫びを反復させたものであり、「ヒーロー誕生!」の演出としては絶妙にすぎるだろう。
 ギガントドリラーの初バトルを「お手並み拝見」と、先輩合体ロボのキラメイジンが高見の見物をするのはいいとして、あぐらをかいていたのはメチャかわいかったが(爆)。


 ただ、宝路は初登場の当初からキラメイジャーを「後輩諸君!」と呼んで、インセキ邪面との共闘で「ワンダーサンキュー!」と謝意を示したり、キラメイジャーの本拠である地球防衛組織・CARAT(カラット)に現れた宝路を、キラメイストーンたちが皆「宝路さま!」と呼んで敬語で語りかけたりもするのだ。
――ところで、CARATという名称も、もちろん『キラメイジャー』を陽性で「カラッと」した作風にしたいといったねらいの現われだろう――


 つまり、宝路は当初からキラメイジャーの先輩戦士・年長格として明確に設定されて描かれているために、激しく対立したレッドとシルバーがガチンコ対決! なんていう表立った敵対関係は描かれないワケである。
 むしろ、「宝路との対立」が描かれたのはキラメイジャー側ではなく、ある意味では『キラメイジャー』の真のメインヒロインといっても過言ではないマブシーナ姫だったのだ。


「何もかもお兄さまのせいです!」


 「おおっ、ひさしぶり~!」と両腕を広げて抱き寄せようとした宝路にマブシーナ姫は平手打ちを喰らわし、ヨドン軍侵攻の際に宝路が不在だったからこそ故郷のクリスタリアと王のオラディンが失われたのだと、その責任を激しく責め立てた!


再会できた兄弟にも、肉体年齢逆転(笑)や対立まで行かなくてもスレ違い構図は導入!


 エピソード12のラストで宝路がマブシーナの兄との衝撃の事実が明かされたのにつづいて、エピソード13では誰がどう見ても地球人にしか見えない宝路がナゼ? と疑問を呈したキラメイジャーに、ふだんは


「テンションMAX(マックス)! めっちゃメラメラだぁ~!」


が口グセである熱血キャラ・レッドキラメイストーンが真相を語り聞かせる。
――本作の序盤評でも記したが、この「めっちゃメラメラ」は往年の海外アニメ『スーパースリー』(67年)や『宇宙忍者ゴームズ』(69年・原題はマーベル社のアメコミヒーロー『ファンタスティック・フォー』!)などで吹き替えを担当したコメディアンの故・関敬六(せき・けいろく)が劇中で散々口走り、のちにお笑いグループのダチョウ倶楽部(くらぶ)も引用してネタにしていた「ムッシュムラムラ」が語源である(笑)――


「地球人だよ。養子に迎えたんだ」


 今から30数年前、強い力を持つ石の存在を感じて地球を訪れたオラディン王は宝路の父と出会い、ともにその石を捜索した。
 当時は高校生だった宝路もそれに同行するが、その最中(さなか)に生物に憑依(ひょうい)して怪物化する石・モンストーンが宝路の体内に入ってしまい、オラディン王は治療のために宝路をクリスタリアに連れていき、その体内にキラメイストーンを埋めこんだ。
 一命をとりとめた宝路はそのままオラディン王の養子となったというのだ。


 魔進ファイヤのふだんとはまったく異なる沈痛な語り口が実に説得力にあふれており、ファイヤの声を演じる鈴村健一の硬軟を自在に演じわけた名演技の賜物(たまもの)といえるだろう。
 また、前回のエピソード12でモンストーン自体はインセキ邪面をパワーアップさせるオレンジ色のヒトデ型の石怪人として伏線的に登場していたし(!)、先述したように宝路が自ら宝石に変身可能なのは体内にキラメイストーンがあるためだとの理由もここで語られており、それらの見せ場は宝路の複雑な出自を活(い)かすかたちで高いドラマ性を持って描かれていた。


 そして、やはりエピソード12で見られた、CARAT(カラット)の設立者としてキラメイジャーを支援する、日頃はラッパーみたいなファンキー口調の中年オヤジ・博多南無鈴(はかたみなみ・むりょう)が神妙な顔つきで画面奥に進む後ろ姿を画面左側に、堂々とした表情の宝路が手前に進むさまを画面右側に配置した分割画面の演出もまた、そのものズバリの兄弟同士の「スレ違い」の関係性を端的に示す伏線となりえていたのだ!


 エピソード13のラストで博多南は宝路のことを「にいに」と呼び(笑)、「せめて兄貴と呼べ!」と返される。
 博多南によれば、彼が15歳のときに2歳上の宝路はクリスタリアに養子に行ったのであり、宝路は若く見えるが実はバリバリの「昭和」世代で「49歳」なのだとか(汗)。


 なにせ、エピソード16『マシュマロワイアル』では宝路が高校生時代から引きずっていた恋の古傷を30数年後に決着させる話だったのだから(爆)――『烈車戦隊トッキュウジャー』にもケーキ職人役でゲスト出演し、今回の宝路の初恋相手を演じた中原果南(なかはら・かなん)も2020年で「49歳」だそうだ――。
 これにはおもわず、『仮面ライダーゼロワン』(19年・)で終盤近くまで敵キャラ&ネタキャラとして描かれていた、ホントは45歳なのに「永遠の24歳」(笑)を自称していた天津垓(あまつ・がい)社長=仮面ライダーサウザーを彷彿としてしまった(笑)。


 ただ、オラディン王によってキラメイストーンを体内に埋められたために宝路が年をとりにくいという理由は、少なくともサウザーこと垓社長のアンチエイジング美容よりかは一応の説得力、そして神秘性をも感じられるというものだろう(笑)。


 まぁ、メインライターで『鳥人戦隊ジェットマン』(91年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110905/p1)以来、30年にも渡って(!)スーパー戦隊の脚本を手がけてきた荒川稔久(あらかわ・なるひさ)は作品内に「昭和ネタ」を散りばめるのが大好きなので、それをやらかしても違和感のないキャラとして宝路の出自を考案したという面もあったのかもしれない。
 宝路がさっそくエピソード13のラストで「カゼひくなよ」「お風呂入れよ」「また来週!」とやらかすのは、昭和の子供たちに大人気だったお笑いグループのザ・ドリフターズがホストを務めていた大人気バラエティ番組『8時だョ! 全員集合』(69~85年・TBS)のエンディングでメンバーの加藤茶(かとう・ちゃ)が視聴者に対して呼びかけていたものだった。
 ただ、荒川がやはりメインライターを務めた『特捜戦隊デカレンジャー』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041112/p1)で礼紋茉莉花(れいもん・まりか)=デカイエローが昭和の流行語や人気番組のネタを口にしていた当時は、メインターゲットの子供たちの親は皆「昭和」世代だっただろうから親世代にもウケただろうが、『キラメイジャー』を視聴する子供たちの親の世代の中には平成生まれが占める割合も結構高いのではなかろうか?(汗)


「何? ジュークボックスって?」


 エピソード24『バンドしちゃうぞ!』で邪面獣ジュークボックスヒルドンが出現した際、レッド=充瑠は仲間にそうたずねていたが、まぁテレビの前の子供たちはわからないときはおじいちゃんかおばあちゃんに聞いてくださいね(爆)。


*「ひとりで戦うか?」「仲間と戦うか?」で、キラメイシルバー登場序盤のドラマをつくる!


 映画『エピソードZERO』では、地球に来訪したマブシーナ姫が頼ることとなった博多南は、オラディン王の古くからの知り合い程度としか語られてはいなかった。
 だが、宝路がマブシーナ姫の兄のみならず博多南の兄でもある(!)と明かされたことで、当初からクリスタリア国の王族同士の因縁対決を強調して描いてきた『キラメイジャー』の人物相関図はさらなる拡大と混迷を極めることになり、視聴者を1週たりとも見逃すまいとの気にさせるには充分にすぎる効果を上げているのだ。


「地底へGO(ゴー) GO GO!」


 メインライターの荒川氏は昭和ネタとともにウルトラマンシリーズに対するオマージュも好んで作品内で描いている。エピソード13で魔進ファイヤが前述のように叫んだのは、キラメイシルバーのドリル戦車・魔進ドリジャンのような防衛組織・ウルトラ警備隊のドリルメカ・マグマライザーが大活躍した『ウルトラセブン』(67年)第17話『地底GO! GO! GO!』が元ネタだ。


「ひさしぶりだな、宝路」
「叔父上、ずいぶんイメチェンしたな」


 このエピソード13にて、敵幹部である叔父=ガルザと甥(おい)=宝路は地底世界で因縁の対面を果たす。


 三日月とそれに吠(ほ)えるオオカミをモチーフとして融合させたかのように耳元まで口が裂けた暗黒のマスクをガルザが脱いで、オラディン王やマブシーナ姫の顔面頭部と同系統の意匠を施された紫の宝石のような素顔を宝路に見せる演出がニクい。ガルザはこの鎧(よろい)はおまえの最期(さいご)を見届けるための礼服だと豪語する。


 心理的に宝路にゆさぶりをかける描写としては絶妙であり、地底世界内でキラメイジャーに倒されたハエジゴク型の邪面獣が爆炎を上げるのを背景に、剣の代わりにシャイニーブレイカーを手にしたキラメイシルバーがガルザに飛びかかるさまをシルエットとしてロング(引き)でとらえたカットは、その因縁対決を実にカッコよく描いた名演出に仕上がっている!


 「ヨドンヘイムはいいぞ」という宝路への誘い文句を残して、ガルザは地底世界から姿を消した。


「仲間になんかなりません。あの人(宝路)はお宝探しにしか興味ありませんから!」


 かつてはモノスゴくかわいがってくれた「お兄さま」で「みんなの笑顔があれば何もいらない」と云っていたほどだったのに、「お宝」が「お兄さま」をダメにしてしまった……
 マブシーナ姫がそう充瑠に嘆(なげ)いてみせたように、宝路は当初からキラメイジャーと共闘する姿勢は一応は示しており、キラメイジャーや市民が危機に陥(おちい)ると颯爽(さっそう)と駆けつけてくれるものの、あくまでその目的は「お宝探し」であって、


「だから、すぐ帰る。さらばだ!」(爆)


などと、用が済んだらサッサと「お宝探し」に戻ってしまっていた(笑)。


 先述した『海賊戦隊ゴーカイジャー』の主人公戦隊・ゴーカイジャーの行動の動機は、歴代スーパー戦隊の「おおいなる力」をすべて手に入れるという「お宝探し」だった。
 『キラメイジャー』では第2クール以降、「お宝探し」をキーワードに兄・宝路と叔父・ガルザ、そして妹・マブシーナとの因縁を主軸にした展開がなされ、それらにまつわる数々の真相を小出しに明かすことで宝路のみならず各キャラの掘り下げや心の変遷による関係性の変化、さらにそれらのドラマのシンボリックな具現化としての新たなキラメイストーンや新メカ・新ロボの登場にパワーアップなどを描く、まさに「王道」的なストーリー展開がなされてきた。


 たとえばエピソード14『孤高(ここう)のエース』では、宝路が単独行動を好むこととなった理由が、宝石の星・クリスタリアでの叔父・ガルザとのちょっとした逸話であったことを回想として描いて、往時の真のねらいにようやく気づいた宝路がガルザに反旗(はんき)を翻(ひるがえ)してキラメイジャーの仲間入りを果たすまでの過程が描かれることとなっていた。


「できないヤツにつきあう必要はない。おまえはすべてひとりでできる。その方がおまえは輝く」


 重たい石像を苦労して運んでいたマブシーナ姫を手伝う宝路にかつてガルザがそう語りかけたことが、宝路が常に単独行動をとる契機となっていたのだ。
 だが、ガルザの先のホメ言葉は、クリスタリアの侵略を容易にするために宝路を単身にさせて、クリスタリアから遠ざけることが目的だったことが発覚する!


「オレはひとりで何やってるんだ。今も、クリスタリアがやられたときも……」


 「オレひとりなら、勝てたっていうのにな」といった自身の姿勢こそがクリスタリアを陥落(かんらく)させてしまったのだと、宝路を自責の念に至らせたガルザはまさに「知恵ある悪魔」といったところであり、闇将軍として軍事力だけではなく心理戦にも長(た)けた一面が絶妙に描かれた。


 だが、そんな宝路のもとに、


魔進ショベロー「宝路さま、為朝から云われて来ましたぞ!」
魔進マッハ「宝路さま、(速見)瀬奈――はやみ・せな=キラメイグリーン――お嬢さまに云われて参りました!」


などと、黄色いショベルカー型の魔進ショベローや緑のスポーツカー型の魔進マッハ、そしてこのエピソードの冒頭で宝路が発掘したものの「そんなヒヨっこ」とバカにしていたネイビー色のキラメイストーンが変型したゴミ収集車型の魔進ダストンらのメカが大挙して駆けつけてきた!


 そして、スーパー戦隊マニアであれば誰もが思ったであろう、『秘密戦隊ゴレンジャー』第46話『黒い超特急! 機関車仮面大暴走』に登場した仮面怪人・機関車仮面の再来としかいいようがない邪面師・SL(エスエル)邪面(笑)が破壊した銭湯の瓦礫(がれき)に埋もれてしまった、宝路の変身アイテム・シャイニーキラメイチェンジャーを掘り当ててくれたのだ!!
――SL邪面の「ワシの時代は終わった!」ならぬ「ワシの時代は終わっていたのか!?」なる断末魔のセリフどころか、キラメイジャーがボールのパスを繰り出すあたりもゴレンジャーの必殺ワザ「ゴレンジャーストーム!」の再現であった(笑)――


 宝路を危機に陥れた「孤高」と対比させるかたちで、多くの「仲間」たちがワイワイガヤガヤと実ににぎやかに駆けつけてきてくれるという作劇。
 駆けつけてきたのはメカ(魔進)たちなのだが、「為朝から云われて」「瀬奈お嬢さまに云われて」などと、その背後にいる「仲間」の存在もしっかりと語られていることも実に秀逸(しゅういつ)なところだ。


 ちなみに、クライマックスの巨大戦でもこれと同様に、キラメイシルバー=宝路が「オレは5人の仲間を得た!」と力強く主張するや、「仲間は5人だけか!?」「オレたちを忘れちゃ困るぜ!」などと魔進たちがいっせいに駆けつけてくるテーマの反復・強調描写があった。


「ひとりでいいと思ってきたが、そうでもなかったぜ!」


 ……まぁ、現実世界ではひとりでできることもたくさんあるだろうし、イチイチ慣れ合ってみんなでやらずにひとりでやった方がよいこともたくさんあるだろう(爆)。そうも思うし、時にひとりで進むことこそ賞揚すべきだろうとも思うのだが、そこは集団ヒーローを題材としているスーパー戦隊シリーズなので、そうもいかないのだ。また、そうするべきでもないのだろう(笑)。


 かつてのあやまちを悔(く)やんで終始、思い悩んでいるという役者さんの陰鬱な芝居だけで描いていくようなストーリーもよいのだが、日曜朝に放映されている子供向け作品としては、こうしてワリとアッサリと心変わりをしてしまうようなストーリー展開の方がよいだろう。
 そして、その心変わりもそもそもの原点とその変節が最低限、きちんと描かれているので、少なくともこのエピソード単独では納得して観ていくことができるのだ――逆に云うと、話数が進んでしまうと、そういう変節があったこと自体を忘れてしまいそうだが(笑)――。


 キラメイシルバーは、


「例のアレをいっしょにやらせてくれ」


と今回、キラメイジャーに加わっての初の戦隊ヒーロー恒例の「名乗り」を披露した!
 シルバーが戦隊メンバーといっしょに「名乗り」を上げる行為までも、かつては仲間は不要だとの信念を持っていて、しかしその信念を変節させた結果だとして描くことで、単なる「名乗り」に一応のドラマ性を与えてカタルシスを増量させることができているのだ!


*「わたくしのヒーロー」から「みなさまのヒーローへ」!


 また、エピソード17のラストで宝路は、勾玉(まがたま)状の石で4種類が存在してすべてを集めるとなんでも願いがかなうと云われている8個のドラゴンボール(笑)ならぬ究極の秘宝・カナエマストーンについて、キラメイジャーにこう語っている。


「オレが願うのはただひとつ。妹を助けたいだけだ」


 エピソード21『釣れ、ときどき達人』の冒頭では、マブシーナ姫の青い右目に突然、ヨドン軍の紫色の紋章が輝いて苦しみだし、一同を唖然とさせる。そして、魔進ファイヤからその真相が明かされたのだ。
 かつてクリスタリアに呪いをかけようとしたために、オラディン王の王妃(おうひ)のマバユイネ・宝路・魔進ファイヤ・魔進アクアの4人で結成された選抜部隊に討伐されたヨドン軍の魔女・ヌマージョ。
 彼女は死する寸前にオラディン王ではなく、オラディン王が最も愛する女性に呪いをかけたのだ。そのためにマバユイネ妃は呪いが発症して7日目には砂となって崩れ去ってしまったのだが、その呪いが実はマブシーナ姫にもかけられていたのだ!


 エピソード17で宝路が伏線的に語った「妹を助けたい」とは、マブシーナ姫を魔女ヌマージョの呪いから救うことであった。そして、そのためのなんでも願いをかなえてくれるカナエマストーンの捜索への執着こそが、宝路がマブシーナ姫に嫌われる発端(ほったん)となった「お宝探し」の真実だったのだ!


 こうした真相が明かされるまで、たとえばエピソード15『きけ、宝路の声』などで、


「距離を埋めたいなら、相手の心に寄り添えばいい」


とのイケメンアクション俳優・押切時雨(おしきり・しぐる)=キラメイブルーのアドバイスを受けた宝路が、


「むかしはこうやって、よく内緒話をしたな」


などとテレパシーでマブシーナ姫に呼びかけたことが事件の解決につながっていくのみならず、シリーズ序盤から使われていたマブシーナ姫の笑いの感情を表現する音を引きだしたことで、時雨が兄妹の深い絆(きずな)を再確認できたと実感するに至るなど、まだ感情のスレ違いを残しながらも徐々に関係性が変化していくさまをていねいに描いてきたのだ。
 こうした伏線があったからこそ、その衝撃の強さをより高める効果を上げていたのだ。


 オモテ向きは宝路に冷たい態度をとりながらも、宝路にかわいがられていた幼いころの髪型のように、マブシーナ姫が金髪の三つ編みにして鼻歌まじりに街を散策する描写なども、マブシーナ姫の宝路に対するホントウの想いを端的に象徴できていた。


 だが、エピソード18『闇落ち』ではガルザが宝路の体内に残るモンストーンを邪悪化させるジャメンタルを撃ちこんだことで、宝路はヨドンチェンジャー(!)で変身する悪の戦士・邪悪シルバーと化してしまう!


「本当の兄妹でなくても、むかしのお兄さまじゃなくても、お兄さまは私に笑顔をくれた輝く道しるべなんです!」


 宝路に最大の危機が訪れたことで、マブシーナ姫はようやく兄への本心を打ち明ける! 先述した幼いころの金髪の三つ編みの再現は、やはりこの真情の吐露(とろ)の伏線としての機能を充分に果たしていたのだ。


「オレはどうなってもいい。マブシーナが助かるなら」


 邪悪シルバーとなっても時折、正気に戻る宝路は先述したカナエマストーンで最初に発掘されたオレンジ色の石であり、破壊を司(つかさど)る秘宝とされているデストリアを使ってマブシーナ姫を呪いから解放してくれるように充瑠に頼みこむ。
 だが、闇落ちした宝路を救うことを強く願ったレッド=充瑠が、デストリアで宝路の体内のモンストーンを破壊したために、デストリアは願いをかなえる効力を失ってしまうのだ!


「結局、どちらか(宝路かマブシーナ姫)が悲しむなら、オレはどっちも選べない!!」


 いかにも充瑠らしいこの博愛的な言動により、宝路にとっての最大の「お宝」が自分だと気づかされたマブシーナ姫が、


「むかしのお兄さまと同じ!!」


と感激して、宝路と抱き合う感動的な場面を観せられた視聴者は、ついに呪いが発動してしまったマブシーナ姫におおいなる悲劇性を感じずにはいられなくなるのだ!


 このエピソード21~エピソード22『覚悟はいいかそこの魔女』は、マブシーナ姫にかけられたヌマージョの呪いを解くために、ツリザオ邪面が悪用していたカナエマストーンの一種でありカラフルなボーダー模様の石・リバーシアの時間逆行の力で、充瑠・為朝・瀬奈が過去の世界へと飛ばされて、ヌマージョの毒液を手に入れようとする一大冒険譚でもあった。
 やはり、『ゴレンジャー』のゲスト怪人たちのように、頭部がモーターボートそのままの形状(笑)をした邪面獣モーターボートバスラは、CGで都心のビル街を高速で走り抜けて、実景の歩道橋を破壊したり、合体ロボ・キラメイジンとの格闘をミニチュアセットのガード下からのアングルでとらえるなど特撮演出は実に冴(さ)え渡っていた。


 だが、この迫力あふれる都市破壊描写もまた、宝路とマブシーナ姫との関係性のさらなる劇的な変化を導きだすためには不可欠なものだったのだ!


「街が大変なことになっているのですよ」


 マブシーナ姫の病状を案じて戦いには出ず、ずっとそばで見守っていた宝路を、マブシーナ姫は「やさしいお兄さま」と称した一方でこうも呼びかけた。


「わたくしのヒーローではなく、みなさまのヒーローでいてください!」


 宝石の国・クリスタリアの過去の時間世界での、


・キラメイレッドVSヌマージョ


 現在の地球における、


・水しぶきをあげて再度地上に侵攻したモーターボートバスラを、空中から特急列車型の魔進エクスプレスで攻撃するキラメイピンクらの戦い


 それらと並行して、


・マブシーナ姫の願いをかなえるために、因縁の敵・ガルザとのガチンコ対決
・ギガントドリラーに搭乗して邪面獣と巨大戦を展開するキラメイシルバー=宝路


などの姿が描かれる!


「街の人を見捨てたら、マブシーナは笑顔にならない」


 巨大戦はもちろんのこと、レッドVSヌマージョやシルバーVSガルザといった等身大バトルをもローアングルからアオリでとらえ、360度の全方位から見せてしまうアクション演出!


 そして俯瞰(ふかん)撮影された実景の都心のビル街にCGで描きこまれた魔進エクスプレスと、それに向けてモーターボートバスラから発射された大量のミサイルが華麗に宙を舞う特撮演出!


 もちろんそれらに視聴者が目を奪われるのは当然だし、それこそが特撮ヒーロー作品最大の魅力であることに疑いの余地はない。


 ただ、すでに「みなさまのヒーロー」となりえているキラメイジャーのカッコいい大活躍と並行して描かれたキラメイシルバーの戦いには、品性下劣な女であれば自分だけを守ってくれるようなチョイ悪な男が好きなのだろうけど(爆)、マブシーナ姫は男にチヤホヤされたいだけの私的快楽至上主義の人物ではないのだと描いているのだ。
 そして、それはキラメイシルバー自身もまた「私」よりも「公」といったモラルがある人物であることをも意味させているのだ!


 充瑠が過去の世界で入手したヌマージョの毒を分析して解毒剤をつくったことで、呪いを浄化する力を持つアクアキラメイストーンが復活!
 そのアクアキラメイストーンがサメと特急列車が融合したメカ・魔進ザビューンとして変身も果たす!
 さらに加えて、魔進エクスプレスと合体して新合体ロボ・キングエクスプレスザビューンが誕生した!


 東映特撮ヒーローマニアであれば若い方々でも、このネーミングとサメをモチーフにしたデザインには、日本妖怪と戦う特撮ヒーローだった往年の『超神(ちょうじん)ビビューン』(76年・東映 NET→現テレビ朝日)の主人公ヒーロートリオのひとり・超神バシャーンを連想することだろう(笑)。


 だが、魔進ザビューンの力でマブシーナ姫にかかっていた呪いも解け、宝路とマブシーナ姫の誤解も解けて和解をとげたことの象徴としての新合体ロボの登場となることは、キラメイシルバー=宝路が「わたくしのヒーロー」から「みなさまのヒーロー」へと転生を果たした瞬間であり、さまざまな確執の末にようやくここに至った宝路とマブシーナの象徴としても実に感慨深い演出となりえていたのだ。


 つづくエピソード23『マブシーナの母』では、そのザビューンから石に魂を移す能力によってマバユイネ妃が今も生きていると語られる――このへんも甘いストーリー展開なのだが、子供番組なのだからやはり母親も実は生きていたというハッピーな展開にした方がよいだろう(笑)――。しかも、それはマブシーナ姫が母の形見として所有する冠に付いていた青い石だったと明かされる!
 おもいっきりの「灯台もと暗し」であり、探していたものが実は身近にあったという点では作家・メーテルリンクの『青い鳥』(1907年)でもある。物事の本質を見とおして無機物も含む万物の魂とも会話ができる装置であったチルチル&ミチル兄妹の帽子の額に付いていたダイヤモンドのことも掛けているのだろう。


 ちなみに、魔進たちを「アータたち」と呼ぶ意外に軽いマバユイネ妃の声は、往年の『宇宙戦艦ヤマト』(74年)のタイトルをパロった宇宙SFアニメ『機動戦艦ナデシコ』(96年)の主人公ヒロインであるミスマル・ユリカ艦長がロートル世代には印象深いであろう、今ではベテラン声優の域に達している桑島法子(くわしま・ほうこ)が担当!


 復活したかと思いきや、マバユイネ妃はまたすぐに長い眠りについてしまったが、にぎやかな「アータたち」の大騒ぎに「静かになさい!」と目を覚ますこともあるだろう(笑)。


――桑島法子といえば、オタク第1世代のオタク評論家・大塚英志(おおつか・えいじ)と事実婚状態にあるフェミニンでポエミーな作風を有する漫画家・白倉由美が、自立した女性志向であった桑島法子のことが苦手であったのか(?)、20世紀のむかしにラジオ番組で「桑島法子、大キライ」と発言したそうで……(以下略・汗)――


*おもいっきりオタ受けしそうな、新女幹部・ヨドンナ参戦!


 さて、エピソード25『可愛いあの巫女(かわいいあのみこ)』の冒頭では、「マブシーナ姫がヌマージョの呪いから解き放たれた今、自身にとっての願いはクリスタリアの再興になったのであり、そのときはおまえが女王だ」(大意)と宝路が語ってみせる。
 それに対して喜びの表情を浮かべるマブシーナ姫の描写によって、兄妹が完全に和解したことが改めて念押し的に示されるのだ。


 まぁ、大仏さまみたいな造形のマブシーナは表情演技ができないのだが(笑)、そこは声を演じるいのりチャンと着ぐるみを演じる野川瑞穂(のがわ・みずほ)の名演から感じとれるというかたちであって、この手の作品では裏方がキャラクターに生命力を与えていることが、マニア的には実によくわかる趣向にもなっている。
――野川もかつては、『海賊戦隊ゴーカイジャー』のゴーカイピンク、『獣電戦隊キョウリュウジャー』のキョウリュウピンク、『烈車戦隊トッキュウジャー』のトッキュウ5号(ピンク)などを務めて、近年は『宇宙戦隊キュウレンジャー』の女幹部怪人マーダッコ、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』のマスコットメカ=ジム・カーターなどを担当していた――。


 そしてこの回から、これまで先述してきた鬼将軍・ガルザとコミカルな作戦参謀・クランチュラの二大幹部体制だったヨドン軍に新幹部が加わった!


「ひと目会ったその日から、恋の花咲くこともある」


 昭和世代のロートル特撮オタクであればご存じであろう、視聴者参加型の恋愛バラエティ番組『パンチDE(で)デート』(73~84年・関西テレビ)のキャッチフレーズである。
 このテレビ番組をおそらく観ていた(笑)のであろう宝路が語ったように、残るカナエマストーンの捜索のために「不死鳥伝説」が残る由緒ある神社をたずねた宝路・充瑠・為朝は、弓を射(い)ている茶髪のショートヘアでネコ目の美しい巫女を見かけて、宝路も「ワンダーキュート!」と大喜びしたのだが、それ以上に為朝がその巫女にすっかり夢中になってしまうのである。


 一人称を「ボク」とする、オタク用語で云うところの「ボクっ娘(こ)」であるその巫女に、充瑠が「ボクっコ巫女さん」と名づけてしまうそのセンスは、やはり文化系の充瑠もオタク系文化に染まったオタク少年だったということなのだろうか?(爆)


「人間は、願いがかなったら笑うんだ?」


 3つ目のカナエマストーンで星のキラメキのような模様が散りばめられた、力を強化する青い石・エネルギアを発掘できて、おおげさに「バンザーイ!」を繰り返して喜んでいる宝路たちにそう冷淡に放った描写で、この巫女さんには笑いの感情が理解できないことが示された。


 美しい緑に鳥のさえずりや川のせせらぎが聞こえてくる、神聖なパワースポットとしては絶好のロケ地の風景が相乗効果を発揮することで、「ボクっコ巫女さん」は実に神秘性にあふれるキャラとして演出されてきたのだが……


 ユダヤ教に伝わるゴーレム伝説のごとく、為朝の眼前で泥をこねて宝路のシャイニーキラメイチェンジャーとほぼ同じ形状の腕時計型変身アイテムをつくりだした巫女はそれを使って敵幹部クランチュラに通信を送って、為朝を唖然とさせた!


「ヨドンチェンジ」(!)


 そして、巫女は茶髪からグレー髪――もちろん実際にはウィッグ(かつら)――に変化した頭に、ツノの付いた冠をかぶり、肩にカラスの装飾のある青い鎧に全身を包んで、背中にはやはりカラスのような銀の翼を生やし、左の頬にヨドン軍の紋章が浮かんだヨドン皇帝直属の秘書官・ヨドンナへと変身したのだ!


 ヨドンナの名は「淀んだ」と「マドンナ」をもじったものだろう。作戦の失敗がつづいているクランチュラに「そのうち皇帝の逆鱗(げきりん)に触れるぞ」とガルザが忠告する短い描写が伏線となっていたように、ヨドンナは、


「ボクの命令はヨドン皇帝の命令だ、ボケ~~~!!」


とクランチュラを激しく叱責(しっせき)する!


 クランチュラがガルザにヨドンナのことを「我々にとっても危険な存在」だと語ることで、今後はヨドン軍での内部紛争が勃発して、敵が味方に、味方が敵にという立ち位置シャッフルでシリーズ後半がさらに盛り上がるのでは? というストーリー展開に対する期待感も生まれてくるのだ。


 思えば、2010年代のスーパー戦隊ではギャラの節約のためか、敵組織の女幹部はそれ以前とちがって着ぐるみ怪人ばかりとなった。『特命戦隊ゴーバスターズ』の中盤から登場したグラビアアイドル出身の水崎綾女(みさき・あやめ)が演じた二丁拳銃を使うエスケイプが唯一(ゆいいつ)の例外だっただけに、2020年代早々に女優が演じる女幹部が復活したのは、熱心な戦隊マニアにはかなりの衝撃を与えたのではなかろうか?


 ちなみに、ヨドンナを演じる桃月なしこ(ももつき・なしこ)は本職の美容クリニックの准(じゅん)看護師と並行して、芸能事務所にも所属して人前にも立っているコスプレイヤーでもあることから多少は芝居心もあったようで、勝ち誇ったセリフを放った際にいやらしく舌を出してなめまわす演技も実に板についている!


 まぁ、そんな目鼻顔立ちもキリッとした美人かわいい系のヨドンナに、多くの特撮マニア諸氏同様に久々に熱を上げてしまった筆者もまた相当に淀んでいるのだろうが(爆)。


 ヨドンヘイムと地球を結ぶワープトンネルを開通させて、地球に邪面獣の大軍勢を送りこむのが目的だと語ったヨドンナは、戦闘員のベチャットをSMの女王さまのようにムチでしばくことでパワーアップさせて(笑)、キラメイジャーを絶体絶命の危機に追いつめる!


新武器登場編では、「公」と「私」の両立と、精神主義ではなく合理的な努力を賞揚!


 そして、エピソード26『アローな武器にしてくれ』では、そのヨドンナと充瑠を絶妙に対比させることでさらなる新展開が生まれたのだ。


 強い力を得ることを願うキラメイジャーは前話で入手したばかりの強い力を与えてくれる石・エネルギアを使おうとするが……


「ベチャットみたいになりたいの!?」


 ヨドンナのムチで強化されたベチャットはキラメイジャーを窮地に追いつめはしたものの、そこまででパワーアップの副作用でその生命を失って皆が消滅してしまっていたのだ。


 ヨドンナは「使い捨てだもん、当然だろ」と冷淡に云いきった。しかし、充瑠はキラメイジャーもそうなることを恐れたのだ。
 それでも「地球を蹂躙(じゅうりん)されるよりは……」と、あくまでもエネルギアの使用を断固主張するキラメイジャーの自己犠牲・滅私奉公(めっしほうこう)の精神にはたしかに胸を打たれるものがあったのだが……


「オレは地球の平和もみんなの未来も、どっちも守りたいんだ!」


 子供のころからツラいことがあるといつも通って絵を描いていたという、先述した「不死鳥伝説」が残る神社におもわず来てしまった充瑠は、旧知の間柄の神主(かんぬし)さんに実は自身がキラメイジャーだと明かすや(!)、神主は充瑠に「あのキラキラの宇宙人の話」を語り聞かせてくれたのだ。


 かつてこの神社に強い力を感じたオラディン王は、ここに伝わる「不死鳥伝説」にいたく感動し、神主が得意だったという弓の勝負をする中で、


「限界は超えないためにある」


という教訓を得て、喜んで帰っていったのだと云うのだ。


 その教訓を活かすかたちで、充瑠がエネルギアから「ひらめき~~んぐ!」で生みだした弓矢・キラフルゴーアローが宙に浮かんで、キラメイジャーにそれぞれのシンボルカラーの光を照射するや、パワーアップを最も象徴する鎧がキラメイジャー各々に装着される!


 この手のヒーローものや少年漫画は、精神主義で頑張れば限界を超えられる! とするストーリー展開が一般的なのであり、それもまたカタルシスがあるのも事実ではある。
 しかし、本作ではそこはヒネって、限界を超えてしまったらば壊れてしまうから、そうではない寸止めにしたかたちでパワーを発揮するといった変化球の作劇がなされている。


 そんな限界を超えないために課せられた100秒の制限時間内にて、キラメイジャーはキラフルゴーアローを次々にパスして光線技を放った末に、レッドにエネルギーを集中させて放つ必殺技「スパークリングフェニックス!」で邪面師にトドメを刺す!!


 キラフルゴーアローの実に神秘性にあふれる出自や、画面の右下にカウントダウンの数字を表示することで視聴者にタイムリミットを意識させる演出も常套的(じょうとうてき)だが面白い。
 もちろん、好例の秋~クリスマス商戦にかけての販促(販売促進)展開ではある。ただ、単なるノルマの消化にとどめずに、そこに少しでも劇中内での必然性を与えるため、このキラフルゴーアローはキラメイジャー・オラディン・ヨドンナらと充瑠の関係性を描いた「人間ドラマ」の結晶としても描いているのだ。
 それによって、この必殺ワザのシーンもより盛り上がって観えてくることで、ますます販促にも貢献ができているのだ。販促とドラマ性は両立が可能なのである!


*王妃のみならず結局、オラディン王も生きていた!(笑)


 さて、エピソード25&26でキラメイジャーの大ピンチと華麗なる大逆転劇が描かれたのにつづいて、エピソード28『時雨泣き』&エピソード29『まぼろしのアタマルド』では、魔進たちがその輝きを失ってしまう危機が描かれた。


 不死鳥の絵を描いているオラディン王に出くわした充瑠に、「次はここではない場所で会いたいな」とオラディン王が語りかけてくるという充瑠が見た夢。


 夢の中ではしょっちゅうオラディン王に会っている充瑠を「ズルい」とし、「夢でいいからお父さまに会いたい」と願うマブシーナ姫。
 ヨドンヘイムにて「見せたいものがある」と、敵幹部ガルザに砂の固まりとなったオラディン王の体(!)を示して、「ここにあるかぎり、復活はありえない」と語るヨドンナ。
 こんな描写を畳みかけられたら、実はオラディン王は生きていた! という伏線なのだろうと、よほどの素人ならばともかく、年長マニアであれば、あるいは小学校中学年以上にでもなれば大方はそう思ってしまっただろうが、案の定そうであった(笑)。


 都心のビル街が突然に崩壊し、マブシーナ姫があのとき(=クリスタリア陥落)と同じだと語ることで、危機感をあおる絶妙な導入部で開幕したエピソード28で、出撃した魔進たちは透明な何かの攻撃によって重傷を負って、その輝きが淀んでしまうのだ。


 その治療のためには時空を超えた先にある聖地・アタマルドにワープ飛行で行かねばならず、それが可能なのはゴールドキラメイストーンが変型するジェット輸送機型の魔進ハコブーしかいない。
 ハコブーは王子のころは泣き虫だったというオラディン王の教育係を務めていた。しかし、地球でバカンスを楽しんでいた間にクリスタリアが陥落したことに絶望して、その自責の念から感情を失ってしまったのだという。


 その感情を取り戻すために、充瑠とともに魔進ザビューンでハコブーが住む島に出向いて、漫才やら大道芸やらでなんとか笑わせようとする時雨は、クールなキャラどころかもはや完全にネタキャラと化している(笑)。


 もっとも、当初は充瑠と時雨の依頼を威圧感のある声で断っていたハコブーもまた、感情を取り戻した際には、


「ビエえええ~~~ん」


と子供のように泣きだすようなネタキャラとして描かれていたのだが(笑)。


 そして、エピソード29でクリスタリア人と人間が共存する(!)聖地・アタマルドにたどり着いたキラメイジャーはオラディン王の魂を捜索し、草原にズラリと並んだ多数の白い扉に各自が選んで入ったものの、オラディン王の魂どころかそれぞれのキラメイジャーの姿をした闇の戦士たちに襲われる!


 夢の中で出会ったオラディン王から1本のカギを受け取っていた充瑠は、どの扉にもカギ穴がないことを不審に思うも、


「キラメキこそがわたしに通じる!」


とのオラディン王の言葉を思い出して、


「カギ穴がなければ描けばいいんだ!」


と、選んだ扉にカギ穴を描きこむ(笑)。


 その瞬間、ヨドンヘイムにあったオラディン王の砂の像がガラガラと音を立てて崩れ去っていく。それと同時に聖地・アタマルドではすべての病を治すことが可能なミラクルストーンに魂を移したオラディン王が青空色のスカイキラメイストーンへと転生、さらに不死鳥型の魔進オラディンへと変型した!


「クリスタリアの王・オラディン、ここに復活!」


 なんと、王さままでが魔進になってしまったのだ!(笑)


 エピソード19『相棒』では、


・為朝の「器用さ」
・時雨の「あこがれの対象」
・小夜の「癒(いや)し」
・瀬奈の「勢い」


といった特性に対して、「全部、オレにはムリ!」と文科系の充瑠が嘆いている描写があった(笑)。


 だが、エピソード13では博多南代表が宝路に充瑠のことを、不器用で恥ずかしがり屋で人づきあいが苦手だが、ハートが燃えると誰よりも強くなる(!)と紹介していた。
 また、エピソード14では超マイペース人間の宝路を仲間入りさせることに成功した充瑠を、マブシーナ姫に対して「充瑠くんはスゴいよ!」とホメたたえていたのだ。


「ともに叫ぼう! ひらめキ~~~ング!!」


 スカイキラメイストーンの中に入った充瑠とオラディン王がクリスタリアの全景を背景に合体するイメージにつづいて、魔進オラディンと魔進ハコブーが合体した巨大ロボ・グレイトフルフェニックスが誕生する!!


 想像力をかたちにする充瑠の唯一の「キラメキ」こそが、ここに至るまでに数々の奇跡を劇的に生みだしてきた『キラメイジャー』の展開には、子供ながらに自分は凡人で体力や覇気(はき)にも劣っていることを自覚して「キラメキ」などないと思っているような子供たちにも希望を与えることができているのではなかろうか!?


――まぁ思春期に入ると、きっとまた世知辛い現実にブツかって挫折するだろうけど(爆)、そのときはそのときである。それまでは夢や希望を与えて背中も押してあげて、来たるべき危機のときに備えて(?)、子供のときでも少しでも経験値なりコミュ力なり知識なりをできるだけ蓄積しておいた方がよいと思うぞ~(笑)――


*性悪なゲスト女子高生が再登場! 彼女にも子供番組的に救いを与えてみせる作劇的決着とは!?


「あつた(熱田)ぁぁぁぁぁ~~~~~!!」(爆)


 映画『エピソードZERO』では充瑠を乱暴に恫喝(どうかつ・汗)していた黒髪ロングヘアの表向きは優等生だが、実は腹黒(はらぐろ)な同級生の女子高生・柿原瑞希(かきはら・みずき)が、エピソード20『あぶないペア』にて久々に再登場した。
 よりによってセッチャクザイ邪面に充瑠と手をくっつけられてしまった瑞希が、キラメイジャーが邪面師を倒したことでその効力がとうに失われていたにもかかわらず、充瑠がキラメイレッドに変身して以降もその手を決して離さない!
 坂本浩一監督のアクション演出によく見られるような男女のペアダンスアクション(笑)でレッドと共闘した瑞希は、そのまま巨大ロボ・キラメイジンの操縦席にまでレッドとともに乗りこんでしまうのだ!


宝路「ワンダーアベックの誕生だな」
時雨「アオハル(青春)だな」(笑)


 ここまで瑞希に心の変遷をとげさせるに至った充瑠の「武器」として、映画『エピソードZERO』にて充瑠が瑞希を描いた天才画家・ピカソの『泣く女』を『怒る女』(爆)にしたかのようなあまりにシュールな絵画を係り結び的に使った演出が実に光っていた。
 充瑠は「ズル賢くてパワフル」(汗)な瑞希をそのままに描いた(爆)と主張して一度は瑞希を怒らせるものの(笑)、一方で充瑠はそれを「オレが持っていない武器だから、カッコいい!」と賞賛してみせたのであった!――ちょっと頓智遊び・言葉遊び的な屁理屈でのストーリー展開ではあるけど、子供向けヒーロー番組としてはOKだろう!(笑)――


*スクラッチ社つながりで期待に応えて、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』のキャラも再登場!


 エピソード27『大ピンチランナー』では、『獣拳(じゅうけん)戦隊ゲキレンジャー』(07年)の主人公戦隊ではなく、ゲキレンジャーをサポートしていたスクラッチ社の特別開発室室長・真咲美希(まさき・みき)とその娘・真咲なつめが登場してしまうというおもいっきりのサプライズがあった。
――このサブタイトルはアイドルグループ・モーニング娘。の主演映画『ピンチランナー』(00年・東映)が元ネタだろう。実は『キラメイジャー』のサブタイトルはすべて、かつて東映が製作した劇場映画をもじって付けられているそうだ――


 しかも、美希は人質キャラとしてではなく、かつて『ゲキレンジャー』でも披露していた「激獣・レオパルド拳!」を再現しての、ガルザを相手にしたアクションまでも披露して、幹部級の敵とも一度は善戦してみせるのだ!
――美希を演じた伊藤かずえは、ロートル特撮世代であれば、『高校聖夫婦』(83年・大映テレビ TBS)、『不良少女とよばれて』(84年・大映テレビ TBS)、『スクール☆ウォーズ』(84年・大映テレビ TBS)といった一連の大映ドラマ作品での印象がやはり強く、実は宝路の「49歳」よりも年上なのである(汗)――


 リアルタイム世代やスーパー戦隊マニアたちを狂喜させること必至のイベント編や、『キラメイジャー』と『ゲキレンジャー』の世界をつなげることで視聴者にスーパー戦隊全体への興味を誘発する手法はおおいに賞賛すべきところだろう。
 そして、本話を観ながら、筆者はキラメイジャーも未来に放映されるスーパー戦隊にこんなかたちでゲスト出演を果たさせて、今の子供たちが将来に大喜びしてくれることをおもわず夢想してしまった。
 そんな未来が訪れるように、『キラメイジャー』が今後も製作されつづけるスーパー戦隊の「輝くみちしるべ」となることを願いたいものだ。

2020.11.21.


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊』(01年) ~赤星政尚・竹本昇、出世作! 「戦隊」批評の特殊性!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011102/p1



サンスター文具かるた 魔進戦隊キラメイジャー 1105710A

『キラメイ』中盤回顧 シルバー&ヨドンナ登場、オラディン王復活! 安定のクオリティー
#スーパー戦隊 #魔進戦隊 #キラメイ #キラメイジャー #魔進戦隊キラメイジャー



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劇場短編マクロスF・劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!! ~元祖アイドルアニメの後日談・長命SFシリーズとしては通過点!

『マクロスΔ』&『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』 ~昨今のアイドルアニメを真正面から内破すべきだった!?
『アイドリープライド』『ゲキドル』『22/7』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』『おちこぼれフルーツタルト』 2020~21年5大アイドルアニメ評!
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『劇場短編マクロスF ~時の迷宮~』『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』 ~元祖アイドルアニメの後日談・長命SFシリーズとしては通過点!

(文・T.SATO)
(2021年12月10日脱稿)

『劇場短編マクロスF(フロンティア) ~時の迷宮~』


 リアルロボットアニメ映画『劇場版マクロスΔ(デルタ) 絶対LIVE(ライブ)!!!!!!』(21年)の同時上映作品にして前座を務める短編映画。そして、もう早くも10年以上も前の作品となってしまったリアルロボットアニメ『マクロスF(フロンティア)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080930/p1)の後日談作品でもある。


 歌・三角関係・人型可変戦闘機をお題としていた『マクロス』シリーズでもある同作は、『マクロス7(セブン)』(94年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080930/p1)などとも同様に、シリーズ初作『超時空要塞マクロス』(82年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990901/p1)最終回でも言及されていた、星間戦争による人類絶滅を防ぐ播種としての宇宙移民計画に即して、外宇宙を航行する巨大移民船団を舞台としており、巨大昆虫型の宇宙怪獣群(!)とも戦っている作品でもあった。
 同作は2008年度のTVアニメでは、『コードギアス 反逆のルルーシュR2』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20081005/p1)とともに男女を問わずオタク間での高人気を獲得できたトップ2のヒット作でもある。09年&11年にも前後編形式にて、TVアニメシリーズの内容を踏襲しつつも大胆にアレンジしてオチも変えていた完全新作映画『劇場版マクロスF』が公開されてヒットを飛ばしている。


 TVシリーズでは宇宙怪獣との戦争と並行して、女形の歌舞伎役者でもあった民間軍事会社の美青年パイロットと、他の船団から来た「銀河の歌姫」こと姉御肌の美少女、それにオボコいながらも歌だけはスキでアイドルとしてもブレイクしていく妹系の美少女との三角関係や芸事での悩みも描かれて、最終回では美青年主人公がふたりの美少女いずれかを選ばずに「ふたりともオレの翼だ!」などと「両手に花かよ!?」といったオチで締めくくられていた(笑)。


 しかし、本『劇場短編』では姉御肌の歌姫は昏睡状態のように眠りつづけている。主人公の美青年もいない。彼らのことを想って、かつての友人たちとともに僻地の超古代文明の神殿前に着いた妹系歌姫は静かに歌唱をはじめる。すると、彼女はそこで夢とも現ともつかない幻覚やありし日の思い出にも遭遇していく、そんな彼女を美麗な3D-CGアニメでプロモーションビデオ風にも見せていくといった短編作品になっている。


 そう、本作は『劇場版マクロスF』ラストで、妹系歌姫のことを泣く泣く振って姉御系歌姫への愛を告白したものの、当の姉御系歌姫は最後の戦闘での歌唱で精魂を使い果たして、主人公青年も世界を救ったことと引き換えに超巨大な女王昆虫の空間転移とともに遠宇宙へと連れ去られてしまったあとの物語。つまりは『劇場版マクロスF』側の後日談でもあったのだ……。


 まぁ、メインディッシュでもある『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』の方が、その原典たるTVアニメ『マクロスΔ』(16年)からでも5年も経っているので集客的にはやや弱くて、10年以上も前の作品だとはいえNHK-BSプレミアムで放映された『発表! 全マクロス大投票』(19年)などでも1位を獲得していた『マクロスF』を短編とはいえども投入することで、少しでもの集客につなげようといった試み自体は商業的・興行的にも正しいモノではあるだろう――往時の『劇場版マクロスF』の観客は半数が女性オタではあったけど、さすがに10数年の歳月を経た今となっては、筆者が観た劇場では当時からの女性ファンとおぼしき御仁は見掛けなかった――。


 いずれにせよ、過去作のちょっとした後日談が観られて、状況&心情のリフレイン的な再確認、および『劇場版マクロスF』ラストの悲劇的な幕切れが解決したワケではないにせよ、姉御歌姫の復活と美青年主人公の所在&帰還の可能性が少々でも示唆されたことで、せめてもの救いを与えているあたりは後日談作品のお約束だともいえるけど、哀しみの中にも救いを感じさせる小粒良品には仕上がっていたとは思うのだ。
『劇場短編マクロスF ~時の迷宮~』主題歌「時の迷宮」(通常盤)

Tカード(マクロスF フロンティア) / 『劇場短編マクロスF ~時の迷宮~』公開記念!(MACROSS F)
(了)


『劇場版マクロスΔ(デルタ) 絶対LIVE(ライブ)!!!!!!』


 TVアニメ『マクロスΔ(デルタ)』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190504/p1)の完全新作映画である。歌・三角関係・人型可変戦闘機を3題目としてきた『マクロス』シリーズは、初作『超時空要塞マクロス』(82年)ではうら若き女性アイドルがひとり、飛んで『マクロスF(フロンティア)』(08年)ではふたりの女性歌姫を描いてきたが、本映画の原典『マクロスΔ』では5人編成の女性アイドルグループ・ワルキューレを歌姫に据えている――本映画タイトルの「!」が5個ではなく6個であったことの意味は、アイドル側ではなく可変戦闘機部隊デルタ小隊のメンバーが本映画中で5人から6人になったからのようだ――。


 魔法少女のように変身して自ら空を飛んで戦場に出向いて歌唱して、細菌由来(!)の奇病で暴徒と化した人々の心を正気に戻してみせている彼女らの姿を観ていると、もう可変戦闘機は要らないんじゃネ? などという気持ちにもなったモノだけど(笑)。
 男女を問わず若年オタクをゲットできていた前作『マクロスF』の時代とは異なり、男性オタク向けには『アイドルマスター』(11年)や『ラブライブ!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)、女性オタク向けには『うたの☆プリンスさまっ♪』(11年)などといったアイドルアニメ多数が大ヒットしてシリーズも重ねていたネタかぶりの時代にあっては、作品自体の罪ではないけれども『F』ほどの人気をゲットできなかったこと自体は少々残念ではあった――もちろん人気と作品の質は必ずしも比例関係ではないことは、くれぐれも念のため――。


 初作とは異なり歴代『マクロス』シリーズでは、一応の知性を持つ巨大怪獣(汗)のような異次元エネルギー生命体やら知性を持たない巨大宇宙昆虫などとも戦ってきた。しかし、本作では我々地球人の祖先でもある太古の星間文明人・プロトカルチャーとも同根である辺境惑星の先住民・ウインダミア王国といったヒト種族が敵となっている。


 過去には不平等条約を結ばせた地球統合政府に反発して独立戦争を仕掛けてきて鎮圧されており、彼らの反感にも一理や二理は持たせてはいるものの、そんな彼らが実は奇病テロを意図的に拡大もさせていたことが判明することで、地球と王国をドッチもドッチだと相対化はしつつも、やむなく両者が戦争状況へと至ってしまうというストーリー。
 および、母星たる王国から出てきて地球側の奇病鎮圧アイドルの一員としても出世した方言まる出しなオボコい少女の苦悩と、そんな彼女と親交を深めていく小柄な少年パイロット主人公、そして彼に懸想してしまう不器用な先輩女性パイロットとの淡い三角関係も描かれていた。


 本作『Δ』はすでに2018年にも、TVアニメの前半第1クールのヤマ場と後半第2クールのヤマ場を大胆にシャッフルして1本の映画として再構築した『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』が公開されているが、本映画はそれらTVの後日談だとも劇場版の後日談だとも取れる作品でもある。
 そして、その内容は地球との和平がなった王国の地での野外交歓パーティーの場にナゾのマクロス級巨大戦艦と可変戦闘機群が襲来! ワルキューレ・メンバーのクローンでもあるヤミキューレによる歌唱攻撃(笑)もはじまった! といったモノである。


 この「ヤミ(闇)キューレ」という確信犯でのB級感まる出しなネーミング。マジメにSF舞台設定を作りこんでいるようでも、端々に自身でソレを崩す爆笑必至な古典漫画的・ネタ的なネーミングや設定を入れてくるところが『マクロス』シリーズの個性であり良さだとも思うのだ――『マクロス7(セブン)』(94年)後半におけるマッド科学者・千葉が開発した、余人にはその原理が解明不能な「歌エネルギー(笑)増幅装置」やそのエネルギーの単位が「千葉ソング(笑)」、宇宙の悪魔・プロトデビルン(爆)といったあたりなど――。しかし、このあたりへの反発もけっこう聞くのでヒトを選ぶ作品なのであろう。


 てなワケで、敵のヤミキューレも新歌曲を披露してくれることで、3次元の現実世界でもワルキューレの歌曲が増えるという一石二鳥! 物語の全編にわたって敵味方である両者(同一者)の歌曲も鳴り響くことになるのだ!


 ただし、『Δ』の要素だけでも2021年現在では集客面でやや弱いだろうから、初作後半からのレギュラーキャラで『7』ではマクロス7艦長も務めた天才イケメンパイロット・マックス73才(爆)が四半世紀以上の歳月を経てマクロス級戦艦にて救援に登場!――しかも、まだ若い(笑)―― 同じく初作では敵軍の参謀で『7』ではマクロス7副官も務めたエキセドル参謀も、マックスに付き従うかたちで再登場!


 さらには空間に一時的に開いたワームホールの先には巨大戦艦・メガロード1(ワン)までもが出現! しかも、その艦橋にはもうまる40年も前の作品(!)が初出でもある初作のアイドル歌手・ミンメイ嬢らしきシルエットも!――70代ではないようだ(笑)。時間の流れが異なる断層空間に落ちていた……といったところか?――


 まぁ、メガロード1ネタはややマニアックではあるけれど。コレは初作の主人公青年やヒロインたるアイドル歌手も乗艦したという巨大移民戦艦の名前なのだ――しかも、『7』の時期に発表されたシリーズ年表だと、同艦は出航後に銀河系の中心部で消息不明(沈没?)になったのだともいう(ヒドいウラ設定であった・汗)――。


 そして、『Δ』では陰に陽に語られてきた、ワルキューレを結成した「レディ・M(エム)」なる人物の正体も、ミンメイだの初作のもうひとりのヒロイン・美沙だのとマニア間での下馬評が渦巻いたモノだったけど、その正体は「レディ・メガロード1」であったことも判明する!
――ソレは正式名称の判明ではあっても、正体の判明ではないだろうというツッコミもしたいけど(笑)。まぁ政治家的センスなどは皆無であったミンメイ嬢が組織のトップになれるとはとても思えないので(汗)、リアルに考えればメガロード1上層部の合議体を指す言葉なのであろう!?――


 でもまぁ、そのへんはあくまでもシリーズに精通したコアなマニア転がしの点描に過ぎない。本映画の作劇クオリティーそれ自体に直結する要素でもない。一見さんお断りなオタッキーに過ぎる要素を前面に押し出すことについては、イイ意味でストイックに控えてきた本シリーズでもある。しかし、そろそろファンサービスとして、あるいは後続シリーズのウラ設定的な伏線たりうる要素のタネまきとしても、適度にならばそーいうネタを披露することもアリだろう!



 そしてネタバレするけど、ラストで精魂が尽き果ててしまったメインヒロインは絶命してしまうのだ……。ヒエーーーッッッッ!(汗)
 いや、たしかに王国の民たちは30代で寿命が尽きる短命種であるのだと原典の時点で延々と言及されてきたことから、いずれは彼女と少年パイロット主人公には早めの別離が来てしまうのだろうことは幼児の視聴者でもなければ誰もが想定できたことではあったけど。ソレは作品のウラ側に漂わせる悲劇スパイスに過ぎなくて、明朗なヒロインを描いてきた本作でその悲しい結末までをも描くことはヤボだし避けるのだろうとも思っていたのだが……。


 たしかに熱唱したことによるお肌の一部の結晶化現象で老化フラグを本映画では立ててもいた。しかし、ソレはそれだけ頑張ったのだという意味での疲労描写だろうとも思わせていたので、今ココでガチに彼女の死が描かれてしまうのだったとは……(涙)。
 アレだけ死亡フラグを立てていた姉御系ヒロインが、その最終回では奇跡が起きて、死に至る脳内感染細菌が透過光処理でキラキラと食道~胃へと胃カメラ主観映像(爆笑!)にて落下していき、元気に完全復活を遂げてしまったTV版『F』という前例もあったというのに(笑)。


 まぁ、『マクロス』各作は「マクロス」世界における後代の作家たちが歴史に材を取って解釈やフィクションも交えて映像化した商業作品でもあったのだ! という矛盾・不整合すら開き直って正当化ができてしまうウラ設定(爆)が90年代から存在しているので、本作『Δ』のメインヒロインも今後の作品ではシレッと復活していることに期待しよう。


 相応には人気を集めた『マクロスΔ』ではあるものの特大ヒットした作品でもない以上は、そして若年オタク層にはともかく年配オタク層から相応の興収や円盤売上が常に確保もできている『機動戦士ガンダム』シリーズ新作や『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ新作のような大予算をかけまくった美麗な作画&背景美術作品とも比すれば、映像面ではやや見劣りはするだろう。しかし、もちろん現今のTV放映の深夜アニメの平均値と比すれば充分にハイソな映像は達成できていた。
マクロスΔワルキューレ歌姫伝説ぴあ (ぴあMOOK)

Tカード(マクロスΔ デルタ)『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』公開記念!(MACROSS DELTA)
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.88(22年1月16日発行))


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 アイドルアニメ『ラブライブ! 虹ヶ咲(にじがさき)学園 スクールアイドル同好会』2期(22年)が放映開始記念! 『IDOLY PRIDE(アイドリープライド)』もBS日テレにて再放送開始記念! とカコつけて……。アイドルアニメ『IDOLY PRIDE』(21年)・『ゲキドル』(21年)・『22/7(ナナブンノニジュウニ)』(20年)・『推(お)しが武道館いってくれたら死ぬ』(20年)・『おちこぼれフルーツタルト』(20年)評をアップ!


『IDOLY PRIDE』『ゲキドル』・『22/7』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』・『おちこぼれフルーツタルト』 2020~21年5大アイドルアニメ評!



『22/7(ナナブンノニジュウニ)』

(2020年冬アニメ)
(文・T.SATO)
(2020年8月11日脱稿)


 召集令状(笑)が届いて遊園地の地下にあるヒミツ基地に集合するや、無骨な背広姿のオッサンを司祭(?)にナゾの壁から指令がくだり、集っていた8人の少女たちがアイドルユニットに任命されてしまう。


 ドラマチックだともバカバカしいともいえる設定なのだけど、劇中キャラにもその趣旨のツッコミを入れさせることで違和感を緩和。
 「コレはチャンスよ」と上昇志向に燃える娘もいれば、目立つことや浮ついたことが大キライで極度に内気で気弱でもある黒髪ショートの主人公少女は一度は去っていく。


 そう、アニメの神様のイタズラか、同期の2020年冬季に放映された深夜アニメ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』同様に、この娘は極度のコミュ力弱者で(ひとり)ボッチ気味のキャラとして描かれる。アイドルアニメも爛熟の極みである(汗)。


 しかして、70~80年代までの1億総中流社会はとうに過ぎ去って、貧困母子家庭でコンビニのバイトをすることで家族を助けている彼女の日常が切ない。
 自意識過剰の視線恐怖症なのだろう。黒髪を目元まで降ろして他人と視線を交わさずバックヤードでも誰とも喋らない。そのへんの機微に無頓着な同僚が「前髪上げた方が可愛いのに」とカラんでくるのも彼女には拷問である。


 性格類型の違いによる価値観の違いココに極まれり。彼女の挙動をシャイさの現れとは取らずに気味が悪いと受け取った顧客のクレームにカコ付けて彼女はクビにされてしまう!――気味が悪いと受け取るヒトの方が多数派なんだろうナ。性格弱者の心がわからない外道どもめ!(爆)――


 絶望に打ちひしがれて涙をこぼす彼女……。


 なにか生活の足しになるものを。背に腹は変えられぬ! とばかりに先のヒミツ基地に飛び込み、この世の理不尽を訴えて「バカバカしいけど何にでもなってやる!」と自暴自棄にアイドルを志願する!


 というワケでここまでの段取りを踏めれば、人前に出るのが苦手な少女がアイドルをやる説得力も出るというモノだ。


 とはいうものの、本作には強烈なタテ糸がナイ。その後は8人のアイドルたち個々を各話の主人公扱いとして、技巧的なストーリーで魅せるというより、お仕事の過程で魅せる人間性を情緒豊かな演出で魅せたり、各個人の回想や過去話などで人物像を掘り下げていく……。なのだけど、コレがまたハズレがない良作ばかり。


 本作はかの秋元康がプロデュースしたアイドルユニットを基に彼が作った簡単なプロットを膨らませた作品だそうだ。おそらく肉付けした側のスタッフたちの力量やセンスの方がデカいとは思うけど、コレまた傑作の誕生である。
僕は存在していなかった

アニメ 22/7 Vol.1(完全生産限定版) [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月15日発行))


『推しが武道館いってくれたら死ぬ』

(2020年冬アニメ)
(文・T.SATO)
(2020年8月11日脱稿)


 『アイドルマスター』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)・『ライライブ!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1)に始まるアイドルアニメの系譜に一応は入ると思う。多分(笑)。


 しかして、主人公はアイドルではない。ローカルアイドルグループの一員を推すようになったヤンキーチックな金髪女子である。彼女はOL稼業もやめて地元のパン工場で仕事をしながら、節約して服装もジャージ一本槍となり、全稼ぎを「推し(おし)」に貢ぎ続けていくのであった!



 推されているアイドル美少女がまたヤンキー女子とは対極的。極度に内気なコミュ力弱者で人前トークもロクにできない最下位人気というキャラ付け。そして始まる両者のディスコミュニケーションやスレ違い。


 ……ムチャクチャ面白い! 彼女とつるんでいるデブ眼鏡男子や痩せヤサ男子のサポーターも出てきて、そこでアイドルサポーターのオタクにアリがちなルックスや性格類型のリアリティーの担保も取ってはいるけど、良くも悪くも彼らが主人公であったならば絵的には華がナイし、性格劇的にも明朗には弾けなかったことであろう(汗)。


 しかし本作では、カラッとしたオトコらしい胆力もあるヤンキー女子が夕陽に向かって


「大スキだぁーーー!!」


などと叫んでいてもナゼだか許せてしまう――少々イタいけど(笑)――。


 夏の暑い日に行列したから汗かいてクサくなったという展開でもシャレとして寸止めとなるのである――コレが野郎キャラであった日にゃ(笑)――。


 異性と交友するのではなく、ひたすらにアイドルを追いかけて推していく彼らオタの日々。たしかに愚昧かもしれない。社会問題に関心を持て! ボランティア活動でもして貢献しろ! たしかにその批判は正論である。彼らは人間の在り方としては二流三流かもしれない。


 でも、殺人・強盗ほどの罪や悪でもナイだろう。別に安倍ちゃんやトランプが悪いワケではなく、3次元・この世というモノがもともと四苦八苦に満ち満ちた生きづらい世界、あるいは究極的には無意味で虚無の世界かもしれないのだ(爆)。だったら、死ぬまでのヒマつぶし・現実逃避として、何かに邁進したり熱中したりして心の空白を擬似的に埋めていくのも悪くはない!? むしろそれしかナイのだともいえるのだ!?(笑)


 それだけでは「搾取(さくしゅ)」されているだけダと云うなかれ。本作のアイドルたちも潤沢なブルジョワでは決してナイ。この世界の片隅で束の間の「居場所」や「充足感」を得るための活動。そしてそのための歌やダンスのレッスン。ローカルアイドルたちも(そして我々も)アイドルオタとメタレベルでは同じ存在にすぎないのだ。



 物語は次第にローカルアイドルたちにも焦点を当てていく。「虚栄心」・「成り行き」・「強烈な上昇志向」・「芸事の一種」。彼女らの動機も千差万別。メンバーたちの面倒見もよいセンター女子だけは完璧超人かと思いきや、彼女もまた別のアイドルグループではセンターの器でなかったことに対する劣等感があることも明かされて……。


 主演のヤンキー女子を演じるのは、昨19年の『ダンベル何キロ持てる?』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210418/p1)がデビュー作で色黒のギャル少女で主演も果たしたハーフのファイルーズあい。テンション高くてブチ切れた演技も実にウマい(地に近い? この作品がナチュラルだから演じやすい?)。


 原作はベタなオタク系というよりかはややハイブロウなマニア系とおぼしき『月刊COMICリュウ』連載のマンガだそうである。アイドルを推すオタをヤンキー女子に置換することで明朗さや喜劇性をゲットしつつも、オタとアイドルたちの心的リアルにも迫っている。日本のマンガの裾野は実に広いネ。
ラバープレイマットコレクション「推しが武道館いってくれたら死ぬ」 えりぴよver.

「推しが武道館いってくれたら死ぬ」DVD1
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月15日発行))


『IDOLY PRIDE(アイドリープライド)』

(2021年冬アニメ)
(文・T.SATO)
(2021年4月27日脱稿)


 タイトルからして「また出た!」のアイドルアニメ。
 だが、高度で抑揚もある作劇と繊細デリケートな心理描写で実に面白い。のみならず変化球の設定も投入されており、かといってミーハー的にブヒブヒと萌えることもできる、一粒で二度オイシい作品に仕上がっている。


 元祖『アイドルマスター』にはじまる女性アイドルグループをマネジメントする若手男性プロデューサー1名という体裁。


 しかし#1は、かの神田沙也加(かんだ・さやか)が声をアテている弱小芸能プロの看板女性アイドルと彼女のプロデューサーを務めることになるマジメな男子クンが、同じ高校の同級生同士であった事実&日常を淡々とつづっていく。
 男子クンの地味でクールだけれども誠実な人柄。そんな彼にほのかな好意を抱いて、少女は彼を将来のプロデューサーに任命する。のちにアイドルとなった彼女をプロデュースする立場になった男子クン。


 だが、#1のラストで当の彼女は事故死を遂げてしまう! ヒエーーーッッッ!――ネタバレなのだが、#2以降も作劇的なテンションは落ちないので大丈夫!――


 そして、物語は#2からリスタート。数年後、先の少女の妹ではあるも性格はマジメで張り詰めてドコか陰もある印象な黒髪ロングの美少女がこの芸能事務所に自らを売り込んでくる。
 そこに別用で金髪ロリ系の美少女も紛れ込む。そこでついでに披露した金髪ロリ少女の歌声。それは先に夭折した黒髪ロングの姉とそっくりの朗々たる本格的な歌声なのだった!
 驚嘆する黒髪ロングに若手プロデューサー。止まっていた時間がいま動き出す。このふたりを中核に据えれば物事がウマくいくかもしれないと視聴者にも予感させてくれる見事な導入部でもある。


 とはいえ、美少女アイドルアニメは美麗な作画・楽曲・ライブシーンがキモである。本作は一応ガチで当てに来ており、大金をかけて先に大所帯のアイドルグループを作って、しかもそれを「太陽」と「月」のモチーフで途中で2つに割ったり、なおかつライバルとなるアイドルグループも2つも作っている。
 ヘタをすると設定の消化試合に陥る作品なのだが、今は亡きアイドル少女への想い&因縁を有する男性プロデューサー・黒髪ロング・金髪ロリを中核・背骨として、そこに新メンバーが徐々に加入していくかたちを採ることで、最初からキャラが大量に出てきて誰が誰だか判らないという作品には陥ってはいない。
 途中加入組のキャラ設定も最初から作り込まれており、中堅アイドル声優雨宮天(あまみや・そら)や、戸松遥(&スフィア)を配したライバルグループのリーダーたちにも亡きアイドル少女との因縁回想劇も織り込んで、単なる悪役やイヤミな役柄を超えていくどころか泣かせにかかってもくるのだ。


 原案の三方のひとりはアイドルアニメ『ラブライブ!』の花田十輝(はなだ・じゅっき)。メイン脚本に90年代美少女ゲーム作家上がりで今やあまたの深夜アニメを手掛ける高橋龍也(たかはし・たつや)。キャラデザ原案も『えむえむっ!』(10年)・『天体(そら)のメソッド』(14年)・『レガリア』(16年)・『音楽少女』(18年)・『ガーリッシュ ナンバー』(16年)など丸くて柔らかくて可愛らしい描線が印象的なQP:flapper(キューピーフラッパー)。


 終盤に至るや、ライバルグループも含めて新曲が各話で数曲も流されて、作画&モーションキャプチャーによるセル画ライクなCGによるカメラも周囲から360度グルグル回っていくライブシーンも連発。作画崩壊などもなく美麗さも保てているのを観てしまうと、予算が潤沢なのもよくわかる――回収できるのだろうか?(汗)――


 本作最大の目印は、男性プロデューサーにだけ視認ができて会話もできるユカイな幽霊(!)として残留している先の今は亡きアイドル少女の存在である。
 随分と奇抜でヘタをするとアイドルたちの日常やライブシーンと乖離してしまう要素ではある。しかし、彼女自身にも掴みかねている何らかの未練をナゾに、実は彼女の事故死と同時に心臓移植を受けていた金髪ロリ少女との接点なども作ることで関係性を増やしていくあたりはウマい。


 とはいえ、彼女の遺志の尊重だけでは、現世に生きる少女たちの主体性はドコにある? というツッコミの余地があるものにはなってしまう。終盤はそこにも焦点を当てていき、亡きアイドルの存在に過剰に呪縛されずに自分たちのアイデンティティーを構築することが目的されていく。


 しかして、善悪はあざなえる縄のごとし。そのことに喜びつつも、それは同時に亡きアイドル少女の衰弱・消滅・別離も予感させていき……。アイドルグループ勝ち抜き戦の末に感動&涙のクライマックスも訪れる。


 東日本大震災後の地を舞台にしていたアイドルアニメ『WakeUp,Girls!』(14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)などよりもある意味ではクラくて陰がある作品だともいえるのだが、その後に隆盛を極めて美少女ゾンビたちが佐賀県ローカルアイドルまで務めるアイドルアニメ(笑)なども通過した今となっては、それが弱点には見えずにコレもアリであり、むしろ個性やウリにも見えてくるのだ。ストーリーやドラマ面でも骨太の良作だったと私見する。
IDOLY PRIDE (初回生産限定盤) (DVD付) (特典なし)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.79(21年5月30日発行))


『ゲキドル』

(2021年冬アニメ)
(文・T.SATO)
(2021年4月27日脱稿)


 2021年冬季には本作&『IDOLY PRIDE』とアイドルアニメが2作も登場! しかも両作ともに変化球だが中身は濃ゆい良作でもある。


 本作の主眼は「演劇」。演劇活動メインで歌唱もする美少女アイドルたちが、オタの聖地のひとつである池袋の東口や西口を舞台に活躍する深夜アニメである――昨秋の深夜アニメ『池袋ウエストゲートパーク』のような不良性感度は、当然のことながら皆無だけど――。


 両眼がやや離れた垂れ目ロリ系で頭身も低めでも端正なキャラデザの娘たちが可愛い。記号寄りでも最低限のデッサン骨格表現はあって、胸板がウスいツルペタ貧乳体型は平均的な日本人(黄色人種)女性のそれに近いのだという理論武装の肯定はできるやも(笑)。


 銀髪ショートの無口な少女型演劇ロボットも登場。さらには世界各地の都市で同時多発で発生した超常災害後の世界でもあるらしい!? 『IDOLY~』における幽霊登場どころではない! コレでは近未来SFになってしまって、その料理法には危惧を抱いたが……。


 ギャル系女子がスクールカーストでは最上位で、アイドル系女子が劣位に置かれるのは90年代以降のことだけど、本作も清純派の整った黒髪ショートの自信なさげでオドオドした小柄童顔少女が主人公。ややお文化的なモノには興味があったかお芝居や歌や踊りには関心を示してもいる。
 そんな彼女が池袋の小劇場で演劇の練習光景を観劇して、即席で1シーンのセリフを暗記して堂々とお芝居を披露するや、その場の空気が一変するのは、フィクションのお約束だけれども名シーンには仕上がっている!
 もちろんご都合展開なのだけど、物語としてはその方が劇的でツカミも強いし、彼女が主人公で初心者でも才能があり、この娘であればイケる! 今後の困難も切り抜けられそうだ! と思わせることこそが肝要なのである。


 彼女の入団後は、同様に一見ロリでも演技指導では実に厳しい副主役少女を活躍させて、この少女も魅力的に描いていく。ところが、彼女は着(衣)エロのジュニアアイドル出身(爆)で、悪気はなく撮影に罪悪感すら抱いていたかつての真面目なファンが観劇に訪れたことから、フラッシュバックのかたちで彼女の人物像も肉付け。


 プチ男装の麗人ツインテメガネっ娘に黒髪ロングのメイドちゃんなどの脇役団員たちに、主人公少女の級友であるドリルツインテールの娘などは、記号的なルックスの助けで性格を表現しているけど相応に魅力的である。


 そして、アイドルアニメ『WakeUp,Girls!』での弱小ローカルアイドルvs大手AKBもどきパターンで、本作でも小劇場vs大劇場の構図を導入! 大劇場の花形娘は主役たちが所属する小劇場出身でもあり、副主役少女vs花形娘との因縁、花澤香菜演じる松葉杖をついた小劇場の座長vs大劇場の男性プロデューサーとの浅からぬ付き合いと確執劇も明かされて……。


 演劇アニメといえば、SKD松竹歌劇団ならぬ帝国華撃団に身をやつした美少女たちが、架空の大正時代を舞台にスチームパンクSFな蒸気機関で動く中型ロボに搭乗して悪と戦う90年代のゲーム&TVアニメ『サクラ大戦』をロートル世代は思い出す。
 大局としてはリアリズムの方向で進化してきた日本アニメだけど、その真逆で異物ともいえる「歌」や「演劇」もヤリ方次第で、非常に訴求力が強いことは、この『サクラ大戦』や『マクロス』シリーズに昨今のアイドルアニメ人気、ペンライトを振って応援したくなるキャラクター性、脳内でリフレインする中毒性がある劇中内歌曲の効用などで証明されている。


 索漠とした味気ない日常の街中の風景からイザ一転、中古ビル内の小舞台上や小ギレイで近代的な建築物内の大舞台上で、観客たちに向かってその全身を使って大声で張り上げてみせる、ナチュラルではなくワザとらしさと紙一重の大演技や大歌唱! それによってたしかに非日常的で劇的な異空間が出現するのも事実なのだ。


 筆者も『美少女戦士セーラームーン』ミュージカルや2.5次元舞台を幾つか観劇した程度の浅学にすぎないけど、2~3時間程度の舞台劇にドラマ性やテーマ性をも織り込みつつ、心情・内面はエモーショナルな歌曲に託して、舞踏的なアクションでヤマ場を作る舞台を実地に観るとハマってしまう理由もよくわかる。2.5次元舞台が隆盛を極めているのもムベなるかな


 中盤からは主役少女が大災害で両親&双子の妹を亡くしていたトラウマも発覚。その傷を埋めるためか彼女は銀髪演劇ロボに妹の名を付ける。そして自我が目覚めたようになる演劇ロボの挙動。
 このあたりまでの展開はイイと思う。しかし、終盤は演劇にカラめようとしつつもSFスペクタクルに寄りすぎてしまってウ~ム。もっとミニマムに演劇公演の成功などで終わっても良かったのでは? 終盤以外は評価するし、好悪の次元ではスキな作品なのだけど。
ゲキドル [2Blu-ray + CD]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.79(21年5月30日発行))


『おちこぼれフルーツタルト』

(2020年秋アニメ)
(文・T.SATO)
(2021年1月22日脱稿)


 また出た、美少女アイドルアニメ! 今度は売れないB級アイドルだけど、最後には華々しいステージへのブレイクが待っているという感じでもない(笑)。C級芸能プロダクションの木造下宿で5人の美少女たちが暇を持てあまし、グダグダしているといった印象。


・ピンク髪の主人公
・元有名子役で背が伸びないまま没落したロリチビ劣等感少女
・女子高生なのに元ミュージシャンの金髪小柄少女
・アイドルなのにモデル並に長身巨乳のおっとり女子
・ピンク髪の主人公に懸想する途中加入の黒髪ロリツインテ


 イイ意味で記号的なコテコテの性格付けをされたキャラたちによる、イイ意味でお約束の様式美的なやりとりを楽しむといった作品だ。


 原作は萌え4コマ漫画誌まんがタイムきらら』系。同誌の信者の皆さまには非常に申し訳がないけど、その平和な世界観の作品群が下世話な筆者にとってはタイクツで、眠気をもよおすことも多々あるのだけど(汗)、この作品は随所にキレ味のよいギャグも入るので、個人的には楽しく観られる。


 もちろん、アイドルといってもガツガツと練習したりしない。そも練習する場所がない。下宿での共同生活での節約した炊事・家事・洗濯が主題だったりもする(笑)。


 彼女たちは美少女アイドルアニメの常識に反して男女共学の学校に通う。しかし、級友たちは誰も騒がない。野郎にナンパもされない。彼女らも好ましい男子にイロ目も使わない。どころか全員、友達が少なくて(ひとり)ボッチだともいう……。
 それだけで我々オタク男子は感情移入する(笑)。リアルに考えたらば、可愛い女の子たちに野郎が声をかけないということはナイとは思うものの、美少女アニメとしては実に正しい(爆)。


 てなワケで、栄光の勝利は来ないし志も低いけれども、ギャグあり劇中歌もありで、まぁまぁ楽しめる。
TVアニメ「おちこぼれフルーツタルト」オリジナルサウンドトラックCD

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.78(21年2月5日発行))


『おちこぼれフルーツタルト』

(月曜22時30分 TOKYO‐MX他)
(文・久保達也)


 芸能プロダクション・ラットプロダクションの寮・ネズミ荘に住む売れない元子役・売れないミュージシャン・売れないモデル、そして岡山県の田舎からアイドルになることを夢見て上京してきたばかりの主人公少女が、会社の業績不振による寮の取り壊しを阻止するためにアイドルユニットを結成し、女性マネージャーが急遽立ち上げた起死回生企画の5分バラエティ番組『おちこぼれフルーツタルト』に1年間出演することで莫大な借金の返済をめざす。


 原作が芳文社(ほうぶんしゃ)の4コママンガ専門誌『まんがタイムきららキャラット』で連載開始となったのが2015年であることから、この設定は学園の廃校を阻止するために主人公が結成したアイドルグループの奮闘と成長を描いた『ラブライブ!』(第1期・13年 第2期・14年)のモロパクリであり、そのパロディとして描かれた感が強い。ただし、


・ピンクのロングヘアの主人公・桜衣乃(さくら・いの)
・パープルのロングヘアを頭頂部でツインのお団子状にまとめた身長140センチの高校2年生(汗)の元子役で女優をめざす関野ロコ
・金髪ポニーテールにヘアピンを多数付けたミュージシャン・貫井はゆ(ぬくい・はゆ)
・ベージュのショートボブヘアで超巨乳な身長170センチのモデルだが、グラビアの仕事が苦手な前原仁菜(まえはら・にな)


の4名で結成されたアイドルユニット・フルーツタルトのキャラクターデザインは、同時期にスタートした本家のシリーズ『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220403/p1)よりも個人的にはカワイイと思えるほどに正統派のアイドルとしての印象が強く感じられる。


 また、岡山の実家周辺と同じく野菜の自販機があったために、衣乃が「ここってホントに東京ですか?」(汗)とマネージャーにたずねたほどに、東京っぽくない実在する東京都小金井市を舞台としていることから、ギャグ作品のワリには背景描写が実にリアルな点にも目を惹(ひ)きつけられる――衣乃が乗る新幹線が橋を渡って画面手前に疾走する短いカットの臨場感にも驚いた――。


 みんなが売れないために、


・もう何ヶ月も朝昼晩とカレーを食べているとか(笑)
・「パンツ3枚で野口(英世)――のぐち・ひでよ=千円札の肖像画(しょうぞうが)――さん」もするとの理由ではゆがずっと穴の開いたパンツを履きつづけているとか(爆)
・衣乃が高校入学時の自己紹介で「がんばって借金返します!」とやらかしたりとか(大汗)
・同級生たちを見て「みんなおしゃれできれいで芸能人みたい」と感激するなど(大爆)


ガケっぷちアイドルたちの本来なら笑えないハズの日常が爆笑演出で描かれていく。


 だが、JR東小金井駅前で自分たちのライブの宣伝ではなくスーパーの特売チラシを配るハメとなって、アイドル活動自体にやる気がなかったロコ・はゆ・仁菜が、「先輩たちと違って自分には何もないから」と主張する衣乃が通行人にひたすら笑顔をふりまいてチラシをすべて配り終えたことで「アイドルの魅力がわかった気がする」と心の変遷(へんせん)をとげたり、先述したように高校デビューで失敗した衣乃に同じクラスとなったはゆが「高校で初めての友達、はゆじゃダメかな?」と声をかける描写などには、それこそ『ラブライブ!』並みの高いドラマ性が感じられたものだ。


 また、女子ばかりの共同生活が描かれていることから、ロコがいつも仁菜の巨乳を枕にして寝ている(爆)といった、ほかのアイドルアニメでは意外に描かれることが少ない百合(ゆり)的な要素もあったりする。


 ロコは低身長に対するコンプレックスのみならず、幼少のころからCMキャラクターとして


「♪ ブロッコ ブロッコ ブロッコリ~」


なんていうイメージソングを7年間も歌わされてきたことがトラウマとなっているが、そのCMを見てロコにあこがれたことが芸能界に進む契機となった衣乃が、たとえまともな仕事に恵まれなくとも「ロコ先輩のお世話ができるだけで幸せ」と語るほどのいいコぶりを見せているのも好印象だ。


 萌え4コマ漫画が原作だとはいえ、決してあなどれない作品かと思える。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86-PART1(21年3月7日発行))



 『IDOLY PRIDE』にて影の主人公ともいえ早逝アイドル・長瀬麻奈(ながせ・まな)を演じられた、神田沙也加さんのご冥福をお祈りいたします。


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 『ラブライブ!』シリーズの「第3チーム」ならぬ「第2.5チーム」(汗)であったハズのシリーズ第3弾『ラブライブ! 虹ヶ咲(にじがさき)学園 スクールアイドル同好会』1期(20年)の2022年冬季再放送が終了記念!
 同作放映時には、すでにシリーズ第4弾『ラブライブ! スーパースター!!』(21年)1期のTVアニメ化も発表されていたので、噛ませ・つなぎ作品で終わる宿命だったのかと思いきや……。2022年4月からのまさかの『虹ヶ咲』2期が放映開始記念! とカコつけて……。『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(1期)評をアップ!


ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(1期) ~チームでなく個人。百合性など先行作との差別化にも成功!

(2020年秋・土曜22時30分・TOKYO‐MX他)

ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(1期) ~合評1

(文・T.SATO)
(2021年1月22日脱稿)


 3代目のラブライブ・チームが遂にアニメ化! 4代目チームのアニメ化もすでに決まっているということは、初代・2代目チームとは異なり、2期の放映はなくて1期のみで完結なのであろうか?


 元祖では3~4話に1回、2代目の『ラブライブ! サンシャイン!!』では2話に1回であった、高品質な作画&モーションキャプチャーによるダンス&歌唱による新曲PV披露が、ほぼ全話でひとりひとりをフィーチャーして披露!
 そのPVが映像面でもドラマ面でも心情面でもクライマックスとして機能するように、逆算して各話が構築もされていて、そしてそれはまぁまぁ成功もしている。


 筆者も『ラブライブ!』の作劇を高く評価する者だけど、公式雑誌をチェックするようなマニアでもないので(笑)、予備知識なしで鑑賞した。
 やはり作り手も2代目を構築するのが一番ムズカしくて、受け手も一番キビしく見てしまうものだが、3代目になると比較対象も分散されるので、作り手も受け手もイイ意味で肩の力が抜けるのだろう。
 そーいう意味では初代の神懸かった感じや、2代目の頑張っている感じはナイのだけど、この3代目もコレはコレでまぁイイかという感じで筆者は受容をしている。ウルさ型のラブライバーの意見は知らないけど(笑)。


 本稿を執筆するにあたってググってみると、本作は集団ではなく個人活動をしている面々であるそうナ。


 エッ? そうなの? オープニングやエンディング主題歌では従来のシリーズと同様に、集団でダンスして歌唱しているので、そんな感じがしてこないなぁ。
 エッ? あの黒髪ロリ・ツインテ(ール)の子は実質、アニメオリジナルのキャラなの? 一応主役だったの? そう云えば歌ってなかったネ(笑)。


 ……なぞと書ていくと、自分が意外とヌルい見方をしていることに気付かされたりもして(汗)。


 ジャンルファン的な注目は、女児向けTVアニメ『プリキュア』シリーズや男児向けTV特撮・スーパー戦隊シリーズを執筆してきた田中仁(たなか・じん)の加入である。バンダイ人脈であろうか? まぁ集団チームものという共通点はあるけれど。
 むろん、複数の会社による大予算の合同プロジェクトで、クチを出してくるおエライさんは多かろうし、すでにキャラ設定があるところから始まっているから、あとから来たTV脚本家が自由に裁量できる余地もそんなにナイだろう。


 そして、本作の特徴はエキセントリックな登場人物がいないことだ(笑)。全員がナチュラルなのである。ゆえに序盤は一見では区別がつかないけど、各話ごとに主役編を与えられると即座に盤石化はする。
 作劇面ではほぼ初対面のメンバーによる集合劇としていた従来作とは差別化して、すでに前年まではスクールアイドル部が高校に存在しており、それが一度は不和で解散したものの、実は生徒会長でもある主要メンバーの改心により、かつての部員が集まってくるかたちで、上級生たちとの出逢いのドラマはオミットすることで、過去作とは似通った展開となることも回避ができているあたり、作劇マニアならば要注目である。


 もちろん、この『ラブライブ!』各作はアニメ化の数年前からメディアミックス展開が始まっているのは承知だろうけど、本作でも青田刈りだったのか、今が旬の声優・楠木ともり(くすのき・ともり)が一見クールでも実は熱苦しい生徒会長アイドル・優木せつ菜(ゆうき・せつな)嬢を、鬼頭明里(きとう・あかり)がやや眠たそうな母性もあるお姉さんアイドル・近江彼方(このえ・かなた)嬢を演じている。


 従来ならば、集団の中で目立たせるためにか明るく元気で行動力・突破力もあるキャラクターが配されがちなセンター主人公の位置に、正統派ではあってもアクには実に乏しい、プレーンで柔らかい感じの美少女キャラクターである上原歩夢(うえはら・あゆむ)ちゃんが配されている。彼女のビジュアルや涼し気かつ可憐なボイスは実に魅力的なのに、やや目立っていないのはモッタイないとは思うけど、良作には認定したいのだ。



 シリーズ終盤では先行作との差別化か、TVアニメ・オリジナルの黒髪ツインテ少女を主人公として目立たせるためにか、自身の在り方・身の振り方に悩ませた末に、スクールアイドル同好会のメンバー各位のヤル気に感化されたかたちで開眼! 学校での合宿にて日が暮れた音楽室でひとり秘かにピアノで楽曲の練習をしている光景も描かれる。
 その場を偶然に目撃してしまった、今では杓子定規ではなく融通も利かせられるように軟化した生徒会長アイドル嬢とのしばしの心温まる交流……。生徒会長アイドル嬢の方でも黒髪ツインテ少女の言動に励まされ触発されていたことを明かしてみせる。そして、両者のモチベーションは相乗効果で上昇していく。


 そして、彼女たちふたりの会話の果てに、東京ビッグサイト西ホール内部の大吹き抜け、もとい大校舎内の吹き抜けに面した上層階の廊下で、生徒会長アイドル嬢が蹴つまづいて、とっさに振り向いた黒髪ツインテ少女が――自身の方がやや小柄なのに――その胸で受け止めてみせるという!


 加えて、「偶然の目撃描写」を積み重ねるかたちで、その場を吹き抜けの下の暗がりのロビーから目撃してしまった、しかしてふたりにはその存在を気づかれることはなかった、黒髪ツインテ少女の本来の相方ともいえる上原歩夢ちゃん! 観てはイケナかった、両者の女性同士の身体接触(!)をも伴なう百合(ゆり)的な関係性のようなものを観てしまった上原歩夢ちゃんの衝撃!
 ここで初代や2代目の元気でガサツ(爆)な主人公少女であれば、大声で思ったことを即座にクチに出してブシツケな質問までしそうなものを(笑)、やや控えめな歩夢ちゃんは固まってしまうのだ!


 その後は、黒髪ツインテ少女が同好会の活動を通じた交友関係の拡大を再確認的に感謝して、各学校の垣根、アイドルとファンの垣根を越えたかたちでのライブ、ひとつの会場=学校の講堂だけではなく街の全体を巻き込んで、街の各所での多数のスクールアイドルたちのお祭り的なライブを開催するアイデアまでをも披露。それを先行作でのスクールアイドル・バトルロイヤルこと「ラブライブ!」ならぬ、本作のゲーム側での総称の一部である「スクールアイドル・フェスティバル」だと呼称することで、この総称にも一応の後付け(笑)での意味を持たせてみせている。


 ……などというような、黒髪ツインテ少女の成長物語と並行して、そんな姿に元々の相方でもある歩夢ちゃんの誰にも気づかれないけどやや沈痛な面持ち。黒髪ツインテ少女に置いていかれてしまうような気持ち。
 自身と最も親しかったハズである黒髪ツインテ少女の知らなかった側面かもしれない生徒会長アイドル嬢との交流に対しての、実に気立てがよくて性格もよい彼女にも存在していた「プチ独占欲」から来る「プチ嫉妬心」! しかして、それを対外的には発露することなく内に溜めこんでいく姿を、セリフではなく無言の複雑で沈んだ表情演技だけで見せていく!
 弱い女の子の小さな小さなひとりの相方少女だけに対する「独占欲」! あるいは、やや気が弱い少女の「依存心」!


 黒髪ツインテ少女や同好会メンバーたちの高揚・成長物語と並行して、実質的にはセンター少女である歩夢ちゃんの懊悩も描くことで、ダブルミーニングにもしてみせるという、このややイジワルな展開!
 もちろんシニカルに見てしまえば、実に小さな話ではある。実に小さな心情の揺らめきを描いただけの話である。天下国家の大事にはまったくの無関係である小事にすぎない。大のオトコたるもの、このような些事には関わるべきではないのやもしれない(汗)。


 でもまぁ、「文学」(純文学)の類いとは、しょせんはこーいうミクロな心情の揺らぎや、それから醸される情緒を描くようなモノなのかもしれないのだ。そして、それはそれでそーいうモノであってもイイのではなかろうか? そこに「あるある感」を覚えて、そして「人間」と「人間の心情」と「人間の世」の何たるかに抵触することで、我々はそれに妙に感じ入ったりもするワケなのである。


 などと云ったソバからハシゴ外しをしてみせると、「プチ独占欲」から来るささやかな「プチ嫉妬心」に対して、広義での「萌え」感情を惹起されるという心理もまた、それが野郎キャラであれば女々しいとして却下されるであろうし、女性キャラ、もっと云うならば美少女キャラだからこそ許される……。といった、男尊女卑だか女尊男卑だかのジェンダーキャップやルッキズムなどが介在しており、それもまた男女差別である! PC(ポリティカル・コレクトネス)=政治的には正しくない! として糾弾されてしまう日が来てしまうのやもしれないけど、その日が来るまではこのような描写も楽しんでいきたい(笑)。


 溜め込んだ末に、黒髪ツインテ少女の自室で彼女をベット上についつい押し倒してしまって、可憐な声で彼女を独占したい気持ちを言葉でも告白してしまう歩夢ちゃん! しかして、スマホの電話が鳴ることで我に返った彼女は謝罪をして帰宅。翌朝には何事もなかったかのように、いつものいっしょの登校待ちをするものの、黒髪ツインテ少女に寄り添って恋人のように腕を組んできて随行もしていく……。


 コレらの描写を「大勝利!」だと捉える声もあるけれど(笑)、一方ではアンチの批判であろうかネタ的なツッコミであろうか揶揄的にも言及されてはいたのであった……。
 筆者個人もこれらの描写を「良かった」とは思ってはいる。しかし、「大勝利!」だとまで絶叫しているファンの方々にはやや引いてしまうし、その内実をデリケートに腑分けをせずに、何でもかんでも「百合」の一言だけでくくってブヒブヒと萌えブタ化しているような風潮にはややプチ抵抗感・プチ反発もあるけれど(笑)。


 とはいえ、作品自体は「キミとボク」だけしかいないような閉じた「セカイ系」の物語になってしまったワケでもなく、「スクールアイドルフェスティバル」を開催するために協力する学園の生徒たちや、歩夢ちゃんのややダウナーな様子に気付いた同級生たちの応援や彼女のための屋外ステージ作りなども描くことで、ふたりだけの世界には陥(おちい)らずに開かれた関係性をも描いていくかたちで、ドラマ的なクライマックスを作っていたことにも言及しておきたい。
【店舗限定特典 ジャケットイラスト使用A3クリアポスター(2枚組)付】 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会ファンディスク ~ときめき活動日誌~ [ Blu-ray ]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.78(21年2月5日発行))


ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(1期) ~合評2

(文・久保達也)
(20年11月11日脱稿)


 高校内で結成された女性アイドルグループ=スクールアイドルの奮闘と成長を描く『ラブライブ!』(第1期・13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1 第2期・14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160401/p1)、そして『ラブライブ! サンシャイン!!』(第1期・16年 第2期・17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200628/p1)に次ぐ本作は3匹目のどじょうとなる。


 いやそれどころではない。『THE IDOLM@STER(アイドルマスター)』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)を皮切りに、2010年代はまるで雨後のタケノコのように数多くのアイドルアニメが放映されてきた。


 それらにうつつをぬかしてきた筆者は近年では新作の放映がはじまる度に、果たして類似の作品群とどのように差別化ができているのか? この点を常に念頭に置いて、若干(じゃっかん)の冷静な視点で視聴してきた。
 『ラブライブ!』初作のアイドルグループ・μ′s(ミューズ)の一員である赤髪のツンデレ少女・西木野真妃(にしきの・まき)にワーワーキャーキャーと騒いでいだ筆者はもはやここにはいない(爆)。


 もちろん、主人公がたまたま見かけたスクールアイドルのライブに感激して同じ道を志(こころざ)す動機とか、主要キャラが校内や街角で歌いだすや突然花ビラや紙吹雪が舞って同級生や通行人がバックダンサーと化すようなミュージカル的な演出は本作でも踏襲(とうしゅう)されている。たとえば、


・準主人公で茶髪ショートボブの左側を花型のヘアピンでお団子にまとめた美少女・上原歩夢(うえはら・あゆむ)が学生寮の入口の階段で歌い出すや、メルヘンチックな背景である非現実的なPV(プロモーションビデオ)風のダンス&歌によるライブのパート映像となる
・そして現実世界に戻ったのに、ライブパートで花ビラのように舞っていた多数のピンクのハートが、本作ではアイドル活動はしない主人公(!)でもあるやや小柄で細身な黒髪ツインテールの高咲侑(たかさき・ゆう)の足下に舞い散る
・黒髪ロングヘアの優木せつ菜(ゆうき・せつな)のライブの熱(あつ)さを強調するために、ステージが燃えたぎるマグマと化して周囲に炎が吹き出す


 だが、こういった心象風景などをシンボリック化した非現実的でミュージカル映画的な描写があってこその『ラブライブ!』だろう。もはや『ラブライブ!』ならではの様式美としての伝統と成りえているのだ。


 要はその「様式美」をしっかりと継承したうえで『ラブライブ! 虹ヶ咲学園』としての「独自性」をどう打ち出すのか? ということになる。そして、序盤の時点でそれはハッキリと見えるかたちで描かれていた。


 ひとつは初作の「国立音ノ木坂学院」や『サンシャイン!!』の「浦の星女学院」とは異なり、本作の舞台となる東京都江東区の「虹ヶ咲学園」――その校舎は誰がどう見ても同人誌即売会コミックマーケットなども開催されている、お台場にある東京国際展示場だ(爆)――は廃校の危機に直面してはいない。


 まぁ、さすがに3作連続でこのネタは使えないだろうが(笑)、先述したμ′sや『サンシャイン!!』のアイドルグループ・Aqours(アクア)が学園の廃校阻止を動機にアイドル活動をはじめ、スクールアイドルの全国大会「ラブライブ!」での優勝をめざしていたのと比べて、本作のスクールアイドル同好会はそこまで重い背景や動機を背負ってはいないのだ。


 そして、もうひとつは虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のメンバーは基本的にはソロ活動が中心であり、グループとしての名称すらない(!)ことだ。


 学園の廃校危機といった外的要因ではなく、虹ヶ咲学園に最近まで存在したスクールアイドル同好会は、お披露目(ひろめ)発表会の目標を決めたころからメンバー間に不和が生じた内的要因で廃部となったことが元メンバーのベージュショートヘアで低身長娘の中須かすみ(なかす・かすみ)から語られて、先述した侑と歩夢を含む3人を中心に代わりの同好会を新たに立ち上げることとなる。


 「ラブライブ!」出場を目指していたリーダーのせつ菜が、


「そんなパフォーマンスではファンに“大好き”な気持ちは届かない!」


などとメンバーに厳しいレッスンを課したことに、「熱いとかじゃなくて、かわいい感じでやりたい!」とかすみが反発する回想が何度か挿入(そうにゅう)されて、侑と歩夢に同好会の廃部を告げた生徒会長でメガネをかけた三つ編みの中川菜々(なかがわ・なな)こそが廃部に至らせたせつ菜自身だったと明かされるのだ。


「わたしの“大好き”はファンどころかメンバーにさえ届いていなかった」


 自分の“大好き”を優先するあまりに、ほかのメンバーの“大好き”を否定して傷つけた自責の念から同好会を廃部にしたと打ち明けた菜々に、侑はスクールアイドル同好会に入部するように強く説得し、侑はせつ菜の歌が再び聴けるなら「ラブライブ!」なんか出なくてもいい! とまで云い放つ!


侑「自分なりの一番をそれぞれかなえるやりかた」
かすみ「いろんな『かわいい』も『カッコいい』もいっしょにいられる。そんな場所が本当につくれるなら」


 こんな活動方針から本作におけるスクールアイドル同好会は「ソロ活動」を中心としていることが正当化されのだ。


 つまり、「廃校阻止」とか「『ラブライブ!(大会)』優勝」といった「組織」としての明確な目標は本作では設定されない。「個人」としてのそれぞれの「かわいい」や「カッコいい」が追及されるのだ。


 そしてさらに、せつ菜の屋上ライブに感激して新たに加入した金髪ポニーテールの高身長娘でスポーツ万能な美少女・宮下愛(みやした・あい)の主張にメンバーたちが共感したことで、「楽しいをわかちあえるスクールアイドル」も新たに方針として加わった。


 μ′sが「アイドル研究部」、Aqoursが「スクールアイドル部」に所属する「部活」だったのに対し、本作はあくまで「同好会」とされているのはまさに象徴的だ。


 まぁ、初作の第1期終盤では、主人公美少女・高坂穂乃果(こうさか・ほのか)の急病でμ′sが「ラブライブ!」出場を断念するに至ってしまい、責任を感じた穂乃果が「スクールアイドルをやめる!」などと口にするに至った展開に対しては、インターネット上でのファンの反応は「『ラブライブ!』に「鬱(うつ)展開」はいらん!」などという声がけっこう上がったものだ――ノイジーマイノリティーの声に過ぎなくて、ファンの中でもサイレントマジョリティーの声ではなかったかもしれないが――。


 アイドルアニメ好きのオタクたちは筆者と同様に「組織」には懐疑(かいぎ)的で、コミュ力弱者でもあり団体行動が苦手な者も多いだろうから(笑)、本作『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のようなソロ活動重視でのユルい連帯路線という方向性は、我々にとってもけっこう共感ができるものに成りえているのかもしれない。
TVアニメ『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』オープニング主題歌「虹色Passions! 」

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86(20年12月27日発行))


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五等分の花嫁(1&2期) ~ベタでも高みに到達。告白された男子側でなく女子側の恋情で胸キュンさせる

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 「週刊少年マガジン」連載に人気ラブコメ漫画の深夜アニメ化『五等分の花嫁』の第2期『五等分の花嫁∬』――「∬」は数学の「二重積分記号」で「インテグラル」と読む記号だそうだけど、あえて読ませない趣向だそうだ(汗)――が2022年冬季の再放送が終了記念!
 そして、2022年5月の劇場公開・完結編『映画 五等分の花嫁』が公開間近記念! とカコつけて……。深夜アニメ『五等分の花嫁』1期(19年)&2期(21年)評をアップ!


『五等分の花嫁』(1期&2期) ~ベタでも高みに到達。告白された男子側でなく女子側の恋情で胸キュンさせる

(文・T.SATO)

『五等分の花嫁』(1期)

(2019年4月27日脱稿)


 野郎高校生ひとりに美少女が5人のハーレム・ラブコメアニメ。美少女の方を五つ子とすることで既存の類似のハーレム・ラブコメ作品とは一応の差別化。
 ただし六つ子を描いた往年の『おそ松くん』(62年)のように見た目での区別が付かないということはなく(笑)、『おそ松さん』(15年)のように(?)髪型・髪色・眉毛のかたち・瞳の目力の強弱・口調などで性格の描き分けはバッチリできている。


・中堅声優である花澤香菜が演じる長女は、余裕のあるお姉さんといった感じだけど汚部屋に住む(汗)。
竹達彩奈が演じる次女は、強気だけど華はあるアイドルといった風情。
・失礼ながら存じ上げていなかった伊藤美来が演じる三女は、クールで奥手なヘッドフォン少女。
佐倉綾音が演じる四女は、ウサギの耳型の巨大リボンで女子力も高そうな元気女子。
・そして、オープニングテロップはテキトーに流し観しただけだったので、なんとはなしに本編では三女を演じているのかと思った水瀬いのりが、多分メインヒロインであろうサバサバした五女であることに気付いてビックリ。こんな声も出せるとは……。


 てなワケで、五つ子には新人ではなく、全員がほぼ主役級の人気声優を配している。


 やはり今どきの週刊少年マンガ誌連載作品の深夜アニメ化は――本作の原作は「週刊少年マガジン」連載作品(17年)――、円盤が売れなくても書籍が売れるための宣伝になればと大手出版社がおカネも出してくれることで、通常の深夜アニメよりも予算が潤沢、声優陣・作画&背景もゴージャスにできるということか?
 ふだんはイマイチな作画作品を繰り出す新進のアニメ製作会社ライデンフィルムが、同じく講談社の青年マンガ誌・月刊「good! アフタヌーン」連載で昨2018年夏に放映された高校女子スポ根バドミントンアニメ『はねバド!』のときだけは高作画作品であったことも思い出す。


 対するに、主人公である野郎高校生クンは週刊少年マンガ誌にアリがちなチョイ悪でブッキラ棒な少年クンではない――のちに明かされる彼の過去はともかく――。狭いアパートに住まう苦労人の貧乏優等生であり、高級マンションの上層階に住まう五つ子には家庭教師として接している。


 優等生! 家庭教師!
 弱者男子たるオタク向け漫画ではなく、普通の元気で健全で野蛮(汗)な多数派が愛好する少年マンガでは、優等生や家庭教師は自分たちの自由――その実態は身勝手・放縦でしかない(汗)――を抑圧・制限してくる体制側の唾棄すべき存在であり、革命が起きたら真っ先にギロチン首にすべきヘイト(憎悪)の対象であろうに……
――実態は真逆であり、教室内の元気なヤツこそがプチ権力者であり、優等生はスクールカースト低位なのだけど(汗)――。


 SNSでの身内馴れ合いコミュニケーションやらスマホゲームの隆盛で読者が激減している週刊少年マンガ誌は、それでも残った読者にオタク男子の比率が相対的に高まったことで、こーいうストイックな人物でも主役になりうるようになったといったところか?


 30年弱前(汗)の時点でもう、別冊宝島『ザ・中学教師』シリーズで、本来は学級委員になるようなタイプのコが


「今ではそれだと生徒間で『カッコ悪い』扱いされてしまうので、『チョイ悪』に走ってそれを演じる新傾向がある」


とされていた記憶があるけど、この主人公クンがそんな大勢に流される虚栄心野郎ではなく、周囲はどうあれ我が道というかヒトとして正しい道を行く「禁欲」を重んじるタイプでホントによかった(笑)。


 とはいえ、美少女側のキャラデザは、クラスではカースト上位に君臨してオタを見下す健康優良なギャルや元気女子への反発か、オトナしげな貧乳志向となった昨今のオタ向けラブコメとは異なり、珍しく5人全員が恵体(めぐたい)な巨乳キャラであり、筆者は大好物なのだけど(爆)、現今のオタの嗜好的にはいかがか?


 勉強はできる主人公少年と、勉強ができない五つ子女子。および、勉強したくないけど少年の妹ちゃんの健気さにヒロインが同情することで、両者は家庭教師&生徒という関係性を継続。同一空間で同席することにも必然性が生じて、ラブコメとしての物語的土台も整備される。


 てなワケで、美少女五つ子たちが共同で住まう高級マンションの広大なお部屋に主人公少年クンは公然と闖入。
 一緒に料理・食事をしたり、姉妹のどちらの料理がウマいかの意地の張り合いに付き合わされたり、お風呂上がりに遭遇、近眼女子なので少年と知らずに後ろからバスタオル越しに巨乳を押し付けられるラッキースケベを体験したり、夏祭りをシャッフル1対1のデート形式にて散策。打ち上げ花火を鑑賞する際のドギマギなやりとりなども展開。


 そのような展開もまたベタそのものなのだけど、決して段取りチックではなく、土台の盤石さか語り口のセンスか、まぁまぁ真に迫って胸キュンさせてくれたりするあたり、傑作だとは豪語しないけど佳作だとは私見する。
五等分の花嫁 ラバーマット 長辺約60cm×短辺約35cm 厚さ2mm

五等分の花嫁 第1巻 [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.74(19年5月4日発行))


『五等分の花嫁∬』(2期)

(2021年4月27日脱稿)


 「週刊少年マガジン」連載のラブコメ漫画の深夜アニメ化の第2期。オタ向け漫画やラノベのハーレム・ラブコメの文法を、ラブコメ漫画の本来の始祖である少年漫画誌の方にマーケティング的に逆輸入したパターンが2010年代には散見されるようになったけど、本作もまた企画的にはそんな一本なのだろう。


 お金持ちでも勉強はできない同じ高校の五つ子美少女宅に、諸事情で家庭教師として通うことになった学年成績トップではあるも貧困家庭で育った男子高校生の主人公クン。そんな彼には健気な妹もいたりして、キャラシフト的にはコテコテのハーレムラブコメではある。
 ただし、純オタ向け媒体ではなく一般青少年向け媒体での連載漫画であることからか、主人公クンはそこまで繊細ナイーブではなくやや覇気もあってブッキラボウであるところで、オタ層にも一般青少年層にも目配せした基本設定は絶妙。筆者は本作が大傑作だとは思わないけど、コテコテでも観られる作品には仕上がっていたとは私見する。


 そんな作品だったけど、原作マンガが完結していることからか、この第2期では早くも物語の風呂敷を畳んでいくようなストーリーが延々と描かれてもいく。
 第1期では彼の家庭教師ぶりに反発するも、個々人とは各イベントごとに親密さが増して、徐々に内心では彼に好意を募らせていく五つ子たち……といった微笑ましい展開ではあった。


 しかし、一夫多妻制でもなければリアルに考えれば、五つ子の誰かと主人公男子クンは結ばれるオチが、1期の#1冒頭から示唆されてはきたのだ。


・女王さまタイプの強気な次女は積極的に打って出る
歴女(れきじょ・歴史好き女子)でもある弱気な三女は懊悩する
・しかし、次女との角逐の末に三女も打って出る
・四女とも悶着がある
・妹たちの恋を応援するつもりでいた長女だが、やはり次女との角逐の末に内心の想いは捨てがたく、妹たちに変装して主人公クンとの束の間の逢瀬を楽しむネジクレた奇行を開始する


 それらは作劇的にはもちろん失恋フラグではある。しかし、同時に変化球のソレでもあるのだ。


 そう。告白されて主人公男子クンの胸がキュンとなる感情ではなく、五つ子たちの切ない胸キュン感情の方にスポットが当てられて、そこに視聴者も感情移入をさせられるようなドラマが展開されていくのである。


 まぁそのことが特別にスゴい! 優れている! 本作の独自性だ! などとガナる気もないのだけれども。


 しかし、ベタベタなハーレムラブコメの革袋からスタートしつつも、その範疇では美少女キャラたちの複雑デリケートな心情を、ラブコメだから決して過剰なドロドロの域には達しないけど、ある種の高みに達したかたちで描けたようには思えたのであった……。
ヴァイスシュヴァルツ ブースターパック 五等分の花嫁∬ BOX

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.79(22年5月30日発行))


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ウルトラマントリガー』最終回「笑顔を信じるものたちへ」 ~新世代ウルトラ各作終章の出来も含めて賛否総括! 光と闇を包摂する真理!?

(文・T.SATO)
(2022年2月19日脱稿)


 2013年度から始まったニュージェネレーション・ウルトラマンシリーズ第9作こと『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA(ニュー・ジェネレーション・ティガ)』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211021/p1)。通例では7月に始まってクリスマス商戦の年末12月に完結するニュージェネ・シリーズだったのだが、同作はイレギュラーな番外の総集編を3本挟んで、歳を越えた翌年1月下旬に完結した。


 各話のゲスト怪獣よりも強い敵幹部級の存在として、シリーズを通じて登場してきた、悪のウルトラマン3人衆こと「闇の3巨人」。彼らはシリーズ終盤ではひとりまたひとりと敗退していき、悪の3人衆の筆頭である女ウルトラマンことカルミラは、闇の力を借りて超巨大怪獣と化す! その名も邪神メガロゾーア! ……というようなストーリー展開になるだろうことは、子供たちはともかく我々大きなお友だちにはミエミエであっただろう。


 ただし、ミエミエだから悪いということでもない。原典の女ウルトラマンことカミーラ同様、カルミラが3000万年越しでティガもといトリガーを妄執込みで愛していたと描かれてきた以上は、彼女とのドラマ的・バトル的な決着が本作のラストに配置されていなければ、それはそれで腰の座りの悪いオカシな作品となったことであろう。


原典『ティガ』最終回&後日談映画のシャッフル作劇!


 ところで、この邪神メガロゾーアとは、本作の原典でも『ウルトラマンティガ』(96年)最終章3部作(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1)に登場したラスボス超巨大怪獣こと邪神ガタノゾーアや、『ティガ』の後日談映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』(00年・ttp://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961209/p1)に登場した悪の女ウルトラマンことカミーラがラストで変身した超巨大怪獣こと邪神デモンゾーアのリメイクでもある。
 本作『トリガー』最終回は、一応の『ティガ』の次世代作品を謳(うた)っているので、この『ティガ』最終章3部作と『FINAL ODYSSEY』をシャッフルした作りともなっていた。もちろんこの2作品のいずれかそのまんまの内容では、子供たちはともかく大きなお友だちからはブーイングが飛ぶだろう。その逆に、あまりにも別モノであっても、それでは『ティガ』の次世代作品を謳っている意味がないとイチャモンを付けられることだろう。


 メインターゲットは今現在の子供たちである以上は、大きなお友だちの反応なぞは無視してもイイだろう。しかし、それもまた現実的には、そして人間の人情としても困難なことではある。


 そこで本作『トリガー』では、原典とは異なりラスボス怪獣はまずは新宿都心に出現させたものの、原典とも同様に最終的には海上で決戦させることになる。
 原典ではシリーズ後半の1エピソードにのみ登場した悪のウルトラマンティガことイーヴィルティガの変身前の「中の人」である青年科学者が、変身能力を失って改心したことで最終章3部作では再登場して、その人間としての頭脳だけを活かして活躍するかたちを採っていた。


 本作『トリガー』では、その立ち位置はカナリ異なるモノのお宝ハンター宇宙人・イグニス青年が「闇の残留エネルギー」をゲットして、ウルトラマントリガーの3000万年前の姿であった闇の巨人・トリガーダークへと変身! 敵対関係から和解に転じて、トリガー&トリガーダークの2大ヒーローが共闘して邪神メガロゾーアに立ち向かって、一度はコレを撃破してみせることで原典との差別化を果たしている。


『ティガ』最終回&後日談映画とも異なる新機軸部分!


 しかし、クトゥルフ神話の怪物『這いよれ! ニャル子さん』(09年。12年に深夜アニメ化・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150601/p1)ことニャルラトホテップ、もとい細身の邪神・メガロゾーアは異形で幅広で「名状しがたい」((C)クトゥルフ神話・笑)醜悪な第2形態へと変化! トリガー&トリガーダークを打ちのめす!


 一度は撤退するトリガーたち。だが、トリガーことケンゴ隊員や怪獣攻撃隊の隊員たちの発案で、「光」単体の力だけでは「闇」に対して拮抗する程度に過ぎなくても、「光」&「闇」のダブルパワーであれば「闇」をも陵駕することが可能なのだ! という、ある意味では計量的・合理的な、別の意味では言葉のお遊び・頓知的な発想の作戦を発案!――「擬似SF性」というヤツです(笑)――
 イグニス青年がトリガーダークの「闇のエネルギー」をケンゴ隊員ことトリガーへと返すことで、「光」と「闇」の両方の力を併せ持たもったトリガー最強形態・トリガートゥルースも誕生する!


 そして、しばし優勢に活躍するも、それでも敗北(汗)して海底へと沈んでいく……。
 といったところで、原典『ティガ』の最終回とも同様に、コレら一連のTV中継を観ていた各地の子供たちが声援を送る! すると、トリガートゥルースもその光のエネルギーで充填!
 さらに、怪獣攻撃隊の空中母艦・ナースデッセイ号を中継器として、本作のキーとしても描かれてきた「エタニティ・コア」なる超エネルギーの力もチャージすることで大逆転! といったところで、いったんのオチとなっている……。


 邪神ガタノゾーアやデモンゾーアもどきの出現! TV中継を通じた子供たちの応援によるウルトラマンの復活&大逆転劇! といったところで『ティガ』らしさを醸し出しつつも、「光」のエネルギーの強大化だけで邪神を打倒できていたティガとは異なり、「光」と「闇」の両方の力と「エタニティ・コア」の力を秘めている最強形態と化すことで、『トリガー』最終回は原典『ティガ』最終回との差別化を果たすこともできていた……といった交通整理はできるだろう。


伝説化された原典『ティガ』最終回も当時は賛否両論!


 とは云うものの、もう四半世紀が経ったので往時の議論百出が均(なら)されてしまって、「総合的・最大公約数的には『ティガ』最終回は傑作だった」という見解に平均化・一般化がなされることで神格視されてはいるけれども、ココの扱いが実はムズカしい。


 往時にもうすでに大きなお友だちであった特撮マニア諸氏は覚えていることだろう。この『ティガ』最終回についても、当時は賛否両論であったことに。そして、そのようであった最終回を踏襲してしまうことに、否定とは行かなくても少々複雑な感慨を覚えるロートルな諸氏も一定数はいることだろう。


 具体的に著名人で云えば、オタク第1世代の怪獣絵師こと開田裕治(かいだ・ゆうじ)画伯などは、当時の月刊アニメ雑誌ニュータイプ』のモノクロ情報ページを数ページに渡って占拠していた、オタク業界人多数の数行程度の近況報告の中で、「『ティガ』も最終回は子供がたくさん出てきて、あんなんだったしなぁ(大意)」といった主旨の否定的なコメントを残していたのだ(汗)。
 この意見が大変不愉快であったらしい、『ティガ』最終回を執筆した脚本家・小中千昭(こなか・ちあき)などは、出典の書籍は失念してしまったものの、開田との対談でノッケからソレに対する先制パンチ(反論・当てこすり)をカマしていたものである。



 当時の特撮雑誌の読者投稿や特撮評論同人界でのマニア論客たちによる賛否の論陣は整理してみせれば、以下の通りであった。


●いわく、人間の知恵&科学を用いた現実的&物理的な努力で、邪神に敗北して石化したティガを復活させてみせてこそ、非民主的で選民思想的にもなりかねない「光」なぞではなく、非力な凡人ではあっても努力を実らせることができる「人」としての民主的&自力的な解決法を賞揚できるのだ。大人たちの努力が水疱に帰したところで子供たちがオカルト・精神主義的に奇跡を起こすのであれば、それは「人」としての努力の賞揚にはならないし、旧態依然の他力&神頼みのそれに過ぎないのだ。


●いわく、「大人の観賞にも堪えうる」というような旧態依然のテーゼで、メインターゲットである子供たちをないがしろにしてはイケナイ。大人たちでも達成できなかったティガ復活が、子供たちの純真な想い&合体でこそ達成ができたのであれば、それもまた子供たちにとっては痛快でもあっただろう。


 ちなみに、筆者個人は双方の意見いずれにも組してはいない。双方の意見それぞれに一定の理はあるとも思うが、ドチラかが圧倒的に正しくて、片方が圧倒的に間違っているとは思われない。
 もちろん不肖の筆者も最終審判者などにはなりようがない。しかし、子供たちの想いが金色のエネルギー奔流と化して、それらが結集してティガとも合体! ティガのインナースペースの中で大勢の子供たちが同時に一斉にパンチを繰り出したり、所定のポーズを取って必殺光線を放つ姿に対して、個人的には好意的であり微笑ましく捉えてもいたのだ。


原典『ティガ』最終回における子役大挙登場が議論の的!


 けれど、同時にこうも思ってはいた。コレらの描写は幼児~小学校低学年であれば抵抗はないであろう。
 しかし、小学校中学年~中学生の時分に視聴すれば、自身よりも年下の子供たちがややタドタドしい演技でパンチを放ったり所定ポーズを取っている姿に、やはりしょせんは子役たちによる絵空事の演技に過ぎないと看て取って、気恥ずかしさ&少々の幻滅を覚えてしまったのではなかろうかと。
 されど、さらに長じて高校生以上にもなってくれば、今度は子役たちの未熟な演技も割り切って観られて、その下手ウマさもまた微笑ましくて健気なモノにも思えてきて許せてくるのではなかろうかと(笑)。


 子供にかぎらず人々や庶民の祈りが「光」のエネルギーとなってヒーローが大逆転! といった作劇は、往年の合体ロボットアニメ『六神合体ゴッドマーズ』(81年)最終回や合体ロボットアニメ『元気爆発ガンバルガー』(92年)最終回の1話前などでも先行例はあった。広義では「光」のエネルギーではなくても戦いを見守っている人々の「声援」がそれに当たるものではあった。
 よって、『ティガ』最終回は画期的なのだ! なぞという意見には少々抵抗を覚えてはいた。むろん、主人公以外の人々の尽力や祈りも決してムダではなかったという「テーマ」を体現してみせる作劇意図の具現化としての映像表現としては有効なものであったとは思うし、『ティガ』以降のジャンル作品でもこのテの作劇は一般化もしていく……。


 しかし、げに作品批評とはムズカしい。一律に子供といっても、子供たちの成長段階に応じて、その受け取るであろう感慨には相応の違いが生じてしまうモノなのだ。
 そして、筆者個人も小学校中学年~中学生の年齢の時分に『ティガ』最終回に接したならば、子供たちの光がティガに結集していくあたりはともかく、そのあとにおける子役たちがパンチやキックやポーズをタドタドしく取っている姿で興醒めしてしまったのではなかろうかとも思うのだ(汗)。
――コレが逆にTVアニメ作品で全編が最初から作画&プロ声優で統一表現されていれば、子役と大人の役者さんとの演技の技量差・リアリティーラインの相違なども発生することはないので、そこで幻滅することなどもなくスンナリと受け容れることができていたかもしれない可能性なども含めて想起する――


 てなワケで、子供の味方をしてみせたつもりであっても、それは3~4歳児だけの味方に過ぎなくて、小学3~4年生にとっての味方ではなく敵になってしまっている可能性があるのだ(爆)。安倍ちゃんやトランプのせいにもできない、自らも免れえない人間一般が持っている「原罪性」(汗)。子供番組のレビューというモノも実にムズカしい。コレは永遠のアポリア(難問)でもあり、最終アンサーにはついに至ることもないのだろう。


 『ティガ』のリメイクにして続編という命題に沿いつつも、『ティガ』とは異なる差別化された新作でもあらねばならない……。個人的にはその命題に本作『トリガー』は一応は応えてみせていたとは思うのだ。


『トリガー』最終回に弱点アリとすればソレは何なのか!?


 しかし、そのことともまったく無関係に、「大きな危機に見舞われるも、最後には大逆転で観客にカタルシスを与えること」が主目的でもある「勧善懲悪エンタメ活劇」として、『トリガー』最終章が『ティガ』最終章と比して劣って見えてしまう箇所は、まずはその前段たる「クライシス描写のスケール感の小ささ」であろう。
 まがりなりにも世界規模・地球規模での危機が起きている! といった描写を入れることで、通常回とはケタ違いの危機を描いていた『ティガ』と比すれば、『トリガー』は日本の一部で局所的な危機が発生していた……といった程度の描写に収まってしまっている。


 世界各都市での戦闘特撮をたとえ点描でも挿入するのにも工数や予算もかかるのはわかる。しかし、本作の怪獣攻撃隊・GUTS-SELECT(ガッツ・セレクト)には海外支部の存在は描かれなかったものの、その上位組織はTPUこと地球平和同盟なのだから、昭和ウルトラシリーズ以来の伝統で世界各地に支部は存在するのだろう(笑)。であれば、


●『劇場版ウルトラマンX(エックス) きたぞ!われらのウルトラマン』(16年)終盤のように、あるいは『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)最終章(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)ではセリフや静止画写真のみだったものの(笑)、世界各地で同時に昭和や平成期の怪獣たちが出現しているのだとか


●邪神メガロゾーアの周辺だけしか「闇」には包まれてはいなかったようにも見えるので(汗)、『ティガ』最終章や『ウルトラマンタロウ』ムルロア前後編に『ウルトラマンジード』の最強形態登場編のように、邪神が全身から噴き出した「暗雲」で日本のみならず世界・地球の全体が「闇」に覆われてしまった……


などといった、眼で見てもスケールが大きい危機が到来しているのだと子供でもわからせる点描、ワンカットの特撮映像――加えて、闇夜の世界各都市でも各支部の戦闘機・GUTSファルコンが「闇怪獣(やみ・かいじゅう)」とも交戦中など!――も描いてほしかったモノなのだ。


 逆に云うならば、筆者がイマ半だと思ったのはその点だけだったともいえるのだ。


 そーいう意味では、『ティガ』最終章に似ているのか否や? 子供の声援をドー見るのか? 子供の「光」と「スマイル」が同質か否かなぞは二次的なことである。そこが『トリガー』という「勧善懲悪エンタメ活劇」の成否に直結していたとも思われない――そもそも「光」も「スマイル」も「ポジティブ属性」であって「正義」という言葉の云い換えにすぎない――。


 もちろん『ティガ』肯定派&否定派である年長マニア双方がソコを気にしてしまうのは心情的にはまぁわかる。
 しかし、それら「勧善懲悪エンタメ活劇」としての本質・成否・巧拙とは無関係でしかない些事がごときに、作品や事物の本質・構造・真善美などを虚心坦懐に究明・接近していくためのロジック(ロゴス)ではなく、枝葉末節についての言葉遊び・イチャモン的な珍妙なロジック(屁理屈)を、物事を改善したいという想いよりも論敵をツブしたいといった劣情の方が勝った礼節を欠いた物言いで延々と紡いでみせている行為などは、中世キリスト教的な神学論争・空理空論にしか見えないのだ(笑)。


 仮に『トリガー』最終章に問題点があったとしても、その根本原因は些末なディテールなどにはないだろう。


「巨悪が攻めてきた!」→「巨悪に立ち向かう孤高のヒロイズム!」→「押されている!」→「反撃!」→「勝利!」


といった一連である「エンタメ活劇」の普遍の大構造に即していて、各パーツがピタッとハマったかたちでウマく描けていたのか?
 「強敵感」や「絶望感」に、そこから来る「対比」「落差」の効果としての「逆転の快感」などを十全に描けていたのか?


 それらの成否についてをこそ、「作劇術」や「批評」はキモにすべきなのであって、その他についての議論なぞは事物の本質とは無関係な些末なことだとしか思えない。


 『トリガー』最終章の弱点とは、一にも二にも「通常回」とは異なるモノとしての「最終章」にふさわしいスケール感の少々の欠如。あるいは、ラスボス怪獣がもたらす被害の小ささだろう。
 スケールも大きい巨悪や絶望感あふれる危機の「絵図」を描いてこそ、そことの対比・落差の大きさから出る「逆転劇」の壮快さ、ラスボス怪獣をも上回るヒーローの強さ、もしくはサポーターとの共闘がもたらした勝利から来るカタルシスも強くなるからだ。
 そして、それこそが「勧善懲悪エンタメ活劇」の普遍的な骨格なのである――こう書くと、実に陳腐・凡庸なジャンルなのだけど(汗)――。


 子供たちの応援だの光&闇だのスマイルだのといった議論なぞは無意味だとまでは云わないものの、「テーマ」モドキを感じさせるための意匠・トッピング・スパイスに過ぎないのであって、「エンタメ活劇」の成否の理由を論じるにあたっては枝葉にすぎないのだ。


――しかし斯界(しかい)を見るに、作品の欠点を指摘するのにあたって、壮快な「勧善懲悪エンタメ活劇」を構築するための作劇術の巧拙や活劇としての深層構造などには眼を向けずに、擬似テーマ主義的に表層的な上っ面の劇中要素をダシに道徳的に論難して、作品論をただの通俗道徳論へと堕さしめてしまうような「重力の井戸」は、やはり今でもあまりにも強いことは痛感してしまう――


近作ウルトラシリーズにもあった最終章における弱点!


 ただまぁ、最終回にふさわしい大バトル&大逆転劇の巧拙における問題点は近作にも共通することであって、実は本作『トリガー』だけにかぎった話ではなかったのであった。


 個人的にはニュージェネ・ウルトラシリーズ各作の「最終回」は、『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)~『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)や『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)については、各作ごとの「通常編」よりもスケールアップされた大バトル劇で申し分がなかった。しかし、


●『ウルトラマンジード』(17年)最終章(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1)では、ジードvsジードの父でもある黒くて悪いウルトラマンことウルトラマンベリアルと、ヒロインである刀剣女子vsベリアルと通じていたダンディーなSF作家先生との戦いが分離気味であり、後者がバトルよりも人間ドラマ寄りになることで活劇度がウスれてしまっている


●『ウルトラマンタイガ』(19年)については、作品自体にタテ糸や宿敵キャラである青黒色の悪いウルトラマンことウルトラマントレギアとの因縁要素がウスかったために、その最終章(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1)も取って付けたような少々の異物感がある


●『ウルトラマンZ』(20年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)なども、主人公青年&ヒロイン隊員の恋情確認の絶叫ドラマがキモなのであって、バトルとの一体化は辛うじて保たれてはいたモノの、純然たる攻守逆転劇にはなっていない。加えて、ベリアルの残骸細胞であったデビルスプリンターが意味を持ってこなかったり、宿敵たる寄生生命体・セレブロが倒すべき巨悪へと昇格していかなかったあたりにも不満


 ……などなど、各作自体の致命的な欠陥だとは云わないまでも、それぞれの作品に小さな不満を感じてはいたのだ。そして先にもふれた通りで、本作『トリガー』の最終展開や同作シリーズ後半にも上記の作品群に対するソレと同じ程度のレベルで、個人的にはいくつか小さな不満はあったということだ。


 よって、やはり1年間・全50話も放映されるTVシリーズとは異なり半年・全25話しかないTVシリーズなのだから、少々残念でも1話完結の単発ゲスト回などは極力排して、もっとメインストリームや基本設定それ自体にガッツリとカラんだエピソードだけを配置していくべきではなかっただろうか?――そのかぎりで単発話やゲスト話がほとんどなくって、基本設定や主要登場人物の人間関係を煮詰めることだけでストーリーを進行させていく近年の「仮面ライダー」シリーズはエラいと思うのだ――


ウルトラマンジード』シリーズ後半~最終章の弱点!


 『ウルトラマンジード』のシリーズ終盤回である、往年の『ウルトラセブン』(67年)#26に登場した巨大怪獣ことギエロン星獣が登場する#20「午前10時の怪鳥」なども、単発話としてはまぁ面白くはあったのだ。同作の実質のシリーズ構成を務めていた女性脚本家・三浦有為子が第1期ウルトラシリーズ的な乾いたSF的不条理感をも再現したかったのであろう気持ちはよくわかるし、それも成功していたとも思うのだ。
 しかし、そんなエピソードなぞよりも(汗)、『ジード』という作品においては、全宇宙に偏在している「幼年期放射」なる微弱電波とは何ぞや!?――その正体は宇宙サイズかつ宇宙の幼年期にまで拡散・稀釈化して、大宇宙自体を修復中であるウルトラマンキング!―― 「カレラン分子」とは何ぞや!?――それは生物の体内で幼年期放射を結晶化させて、リトルスターやウルトラカプセルとしての実体化を促進!―― 「分解酵素」とは何ぞや?――そのカレラン分子を無効にする物質!――
 一度は宇宙全体を破壊した「クライシス・インパクト」は6年前の出来事だったというのに、爆心地付近の病院で誕生した19才のヒロインの生誕にキングが干渉していたのはナゼなのか!?――光よりも速い速度で宇宙全体に拡大したことで、超光速タキオン粒子の原理でキングの身体は時間も逆行して、宇宙の幼年期の太古の時代にまで偏在していた!――
 ……といったところを、要人警護やアイテム争奪戦にカラめて、劇中設定も小ムズカしくないかたちの「絵」として説明すべきであっただろう。


ウルトラマンタイガ』シリーズ後半~最終章の弱点!


 『ウルトラマンタイガ』なども同様であった。外国人移民や難民問題を地球人の姿に変身しているゲスト宇宙人たちに仮託して描く方針を、子供向けヒーロー番組でやることを手放しで絶賛する気にはなれないモノの、その志の高さは認めよう。
 しかし、各話のドラマ性&テーマ性は高くはなってもやや陰気な作風になりがちであった以上は、主人公青年に憑依(ひょうい)していてコップのフチ(笑)などで余人には見えない小人姿でコミカルな挙動を見せていたユカイな新人ウルトラマン3人に、ゲストキャラの境遇に対する同情や論評などを加えさせるかたちでカラませて、作風を明るくしてバランスも取るべきではなかったか? 3人ウルトラマン各々の過去とゲストキャラとの境遇をオーバーラップさせるかたちで、彼らの肉付けももっと増量できたであろうし、子供たちにとってもその方がドラマ&テーマも伝わりやすかったことだろう。
 レギュラーかと思えばほとんど出なかった人間サイズの悪い着ぐるみ宇宙人集団・ヴィランギルドも、シリーズ途中で第3勢力からラスボス・トレギアの軍門に降るなどして目先の変化、敵のスケール感&攻防劇をも強調しておけば、かえって「移民・難民」問題もその説教臭がウスれてビビッドにイヤミなくそのテーマ性が浮かび上がってきたようにも思うのだ。


 タイガを昭和のウルトラマンタロウの息子だと設定、同作のラスボスであるウルトラマントレギアもタロウの旧友だとしたからには、タロウとトレギアが決別した理由を徐々に小出しに明かしていくようなタテ糸もあってしかるべきであった。
 トレギアも当初はタイガをヒヨっ子扱いにして愉快犯的に弄(もてあそ)んで、自身と戦うに足る強さを兼ね備えるまで余興的に待ったところで鼻っ柱を叩き折ることで嗜虐心を満たそうとはしたものの、予想を超えて強くなったことで焦ってホンキでツブしにかかってくる。終盤ではタロウが復活参戦するも苦戦。成長したタイガが最終的にトレギアを打倒してみせることで「父超えの物語」ともする。
 などといった、アリガチで常套的で先行きの予想が付いたとしても(笑)、カタルシスはあるビルドゥングスロマン(成長物語)としての構築をナゼに怠ってしまうのか? それらの要素が入っても、現今の「ライダー」「戦隊」と比すれば、まだまだ劇中要素は決して多くはないだろうに。


 関係各位の証言を読むに、かの実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)カントクの会社・コダイ上がりの監督で、現在では円谷プロ側の雇われチーフ・プロデューサーを務めている北浦嗣巳(きたうら・つぐみ)の意向で、『タイガ』では昭和ウルトラシリーズ的な1話完結性を重視してしまったことのコレは弊害でもあっただろう。
 ここで玩具会社・バンダイなり円谷プロの若手スタッフの心ある誰かがダメ出しをして「オレがやる!」と手を挙げて主導権を握るべきでもあったのだ。最後は個別具体の特定個人の人格力・交渉力・声の大きさ、権力や権利の善用なのである。正しき者こそ強くあれ!


――『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)~『ウルトラマンX』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)はバンダイから出向の岡崎聖・制作統括。『ウルトラマンオーブ』(16年)~『ウルトラマンR/B』(18年)は現場上がりの鶴田幸伸プロデューサーが主導していたことは各位の証言で明らかだ――


ウルトラマンZ』シリーズ後半~最終章の弱点!


 『ウルトラマンZ』においてもシリーズ中盤以降は、罪のないイイもん怪獣を倒してしまった主人公青年が悩みつづけたり、怪獣攻撃隊の巨大ロボット4号が異形のラスボス合体怪獣へと変化することで、行き過ぎた武力行使や科学に軍事力への警鐘ともしていた。テーマ的には一応は誠実だともいえるし、若手役者さんにとっても演技の振り幅を体験するという意味では有意義なことだったとは思うのだ――個人的には問題視すべきなのは「用途」なのであって、「技術」や巨大ロボットそれ自体が悪だとも見えかねない描写にはやや不満もあるのだが――。


 しかし、シリーズ前半同様にもっとおバカな熱血路線で、地球外生物セレブロに寄生されている怪獣攻撃隊の研究所に所属するカブラギ青年なども、若いオタク連中いわく近作の「円谷のヤベェ奴ら」同様に、キモいけど半分は笑ってしまう演技による「ネタキャラ」的な宿敵として(笑)、彼との攻防劇を主眼に描くべきではなかったか?
 『ウルトラマンX』のシリーズ後半ではダークサンダーエナジーにてゲスト怪獣が凶暴化するパターンが採用されていたが、『Z』後半でもカブラギ青年がデビルスプリンターを使ってゲスト怪獣を凶暴化させるべきではなかったか? 少なくともラスボス怪獣の組成にはデビルスプリンターをカラめるべきではなかったか?


 そうすれば最終回では、ベリアルの息子でシリーズ前半では客演も果たしたウルトラマンジードが! 怪獣攻撃隊のヘビクラ隊長とも因縁があるのでウルトラマンオーブが! ウルトラマンゼットの両脇を固めて、変身シーンのためだけに(笑)、1シーンのみ「中の人」も登場・変身して参戦させることでイベント性をさらに高めることも可能になったハズである!?――もちろんラスボス怪獣に対するトドメはゼットが刺すにしてもだ!――


 ……我ながら延々と「ボクの考えた最強の○○」といった類いを披瀝しており、お恥ずかしいかぎりではある(汗)。要は自分が好む作品については採点が甘くなるのは良くも悪くも人間の常だとしても、本作『トリガー』のみならず近作に対しても甘い採点に開き直ってしまったり、欠点や弱点は無視して一言も言及しなかったり、そも気付きもしない! などといった「お友だち内閣」的な言動ではアンフェアなのである。


ウルトラマントリガー』シリーズ後半~最終章の弱点!


 ここまで記してきた通り、『トリガー』も近作と同様の問題点を抱えているのだ。シリーズ前半には登場していたデビルスプリンターならぬ「闇怪獣」といったカテゴリーの怪獣たちが、シリーズ後半には登場しないのはいかがなモノか? それこそ後半では闇の3巨人がその闇の力で、着ぐるみは既成の怪獣の流用でも別名だけは「闇怪獣」(笑)へと凶暴化させて繰り出すべきではなかったか!?


 超古代文明の実態や滅亡の要因が判然とはしなかったことも、原典『ティガ』とも共通する欠点であった――『ティガ』も放映前のマニア誌などでは「超古代文明は怪獣や宇宙人の襲撃に遭っていた」という基本設定の紹介はあったのだが、映像本編ではそのようには言及されなかったのだ(汗)――。
 『ティガ』や『トリガー』とは世界観を異にする初代『ウルトラマン』(66年)に登場した、原典に準じて3億5千万年ならぬ3億5千年(笑)のむかしから復活した超古代怪獣アバラ&バニラスを登場させたこと自体はイイ。
 しかし、トリガーや闇の3巨人とも同じ3000万年前が出自だったとマイナーチェンジし、彼らこそが『トリガー』世界の超古代文明を滅亡させた元凶だったとして、そこで超古代文明の実態も明かしていった方がよかったのではあるまいか!?――むろん3000万年前&3億余年前の文明双方を滅ぼしていたことにしてもイイ!――
 『ティガ』の代表的な悪役でもある人間型の悪の超人・キリエル人(びと)を『トリガー』にも登場させたこともよかったのだが、原典ではキリエル人も3000万年前の超古代文明よりも古い出自であったハズで、彼らにも往時の超古代文明の実態を語らせるべきではなかったか!?


 そこまでやってくれれば、「『トリガー』は『ティガ』をも余裕で超えることができていた!」と個人的には手放しで認定したくなったのに……。
――主人公青年が育てていた、ツボミのままのお花の名前は「ルルイエ」なので(クトゥルフ神話における超古代遺跡の名前で、転じて『ティガ』後日談映画での舞台とされた)、これを悪ではなく善の存在だとして終わらせてしまったあたりもイマ半だけど、まぁ許そう(笑)――


 なお、本作『トリガー』には前作のヒーロー・ウルトラマンゼット、ネット配信作品『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズ(19年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)で主役級で活躍しているウルトラマンリブット、本作の原典であるウルトラマンティガがゲスト出演するイベント編を3編も用意した。
 その試み自体はそれ以前のシリーズとは世界観を完全に刷新していた原典『ティガ』とも異なる手法なのだけど、筆者個人はヒーロー共演や異なる世界観の連結といった要素に、物語一般の無限の豊饒性や高揚感があると見ている者なので肯定的に捉えてはいる。


――その伝で、ウルトラシリーズ50周年記念作であった『ウルトラマンオーブ』なども、『オーブ』の前作『ウルトラマンX』における21世紀以降の先輩ウルトラマンたちが数話に一度はゲスト出演するというイベント要素を継承して、昭和や平成の先輩ウルトラマンたちが数話に一度はゲスト出演するような、アニバーサーリーにふさわしい作品を見せてほしかった。しかし、各種の人気投票企画でもご承知の通り、『オーブ』は先輩ウルトラマン登場がなくても若い特撮オタク間では高い人気を保っていることも認める――


1話完結を連続形式に変える者としてのライバルキャラ!


ウルトラマンゼロウルトラマンジードに対するウルトラマンベリアル
ウルトラマンオーブに対するジャグラスジャグラー
・古いところでは、キカイダーに対するハカイダー
ライオン丸に対するタイガージョー
・近年(?)では、ゴッドガンダムに対するデビルガンダム(笑)


 世界征服などという「大義」ではなくって、実はツンデレ――ツンツンと反発しているようでもデレデレと甘えた態度も取ること――な「恋情」や「私怨」が行動原理でもあることが恒例でもあるダークヒーローやライバルヒーローたちとも同様で、前々作『ウルトラマンタイガ』におけるウルトラマントレギアなどとは異なり、本作『トリガー』における悪のウルトラマンたちである闇の3巨人も「恋情」だったり第3勢力キャラ・イグニス青年とも「因縁」を持たせたり、今時の作品の通例でシリーズ途中ではお笑い担当として「ネタキャラ」化もしつつ、本作の背骨・一本線には成りえてはいたことで、作品を空中分解の危機からは救っていた。


 その意味では、往時の特撮マニア間では3度目・4度目の再登場や最終章ではラスボスとしての決戦も待望されていたのに、原典『ティガ』には実質2回しか登場しなかったキリエル人の扱いからは進歩して、同時期の90年代中盤の東映メタルヒーローで、


・主役ブルービートに対する宿敵ブラックビートが登場した『重甲ビーファイター』(95年)
・次世代ビーファイター3人に対して悪のビークラッシャー4鎧将(しがいしょう)が登場した『ビーファイターカブト』(96年)


 あるいは、マグマ星人がレギュラー敵として登場していた内山まもる先生による学年誌連載『ウルトラマンレオ』コミカライズ(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061028/p1)の域に、2010年代以降のウルトラシリーズもようやくに到達したのだ! その伝で『トリガー』にかぎらず、ニュージェネ・ウルトラシリーズの方が平成ウルトラ3部作なぞよりも上回っているのだ! なぞというマッピング・見取り図で捉えている御仁は全然いないようだけど(笑)、ロートルな筆者はそのように『トリガー』も含めたここ10年ほどのウルトラシリーズを上位の作品としては捉えているのだ。


悪の女超人カルミラに見る、ジャンル近作での悪の救済!


 たとえば「大坂の陣」における淀殿(よどどの。幼名・茶々)は、2時間尺の映画やTV時代劇であれば単なる悪女にした方がブレずにキャラも立つ。しかし、1年間・全50話の大河ドラマであれば単なる悪女キャラだけでも飽きてくるので、愚かしくても豊臣家&息子・秀頼を守るために尽くした健気さも徐々に小出しにしていった方が、逆にキャラも立ってくるというモノなのだ。


 そのような尺数にも影響される作劇理論で(笑)、ティガとダイゴ隊員は別人であるハズなのに恋慕していた原典におけるカミーラの取って付けたような改心的な最期(さいご)よりも、トリガーダークに芽生えた良心の輪廻転生がケンゴ隊員であったとした本作における、トリガーの腕の中に抱かれての少々の「救い」もあるカルミラの最期の方がスムーズで、ナットクもできるものではあった。
 活劇的にはともかくドラマ面では妥当なあるべき決着なのだし、人間はその最期に看取ってくれる知己さえいれば、それだけで救われるモノでもあるのだろう……。
――個人的には昭和の芸人たちや名俳優・藤田まことなどの発言のように、飲んだくれてドブ川に落ちて最期は誰をも恨まず自らの滑稽さを笑いながら、明るくひとりで死んでいくダンディズムのカッコよさを世間はもっと賞揚してくれよ! なぞと思っていたりもするけれど(笑)――


 あくまでも「エンタメ活劇」としての成否をこのテの変身ヒーロー作品の批評では論じるべきだとは思うのだ。しかし、それを原理主義の域で捉える必要はないだろう。
 「悪」にはなりきれなかったジャグラスジャグラー同様に、悪の女ウルトラマンことカルミラに対しても、女児向けアニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズ(92年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)や『プリキュア』シリーズ(04年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201227/p1)に、かの庵野秀明カントクの映画『キューティーハニー』実写版(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041103/p1)やアメコミ洋画の最新作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21年・日本公開22年)などとも同じく、チンピラ三下(さんした)はともかく幹部級の悪党には彼らのやむをえなかった事情なども描いて「心理的救済」や「成仏」をも与えてみせるといった作劇。
 「エンタメ活劇」だとはいっても、そーいった作劇も二次的には許容されてしかるべきではあろうし、盲目的で独善的ではあっても「恋情」を彼女の行動原理としてきた以上はこのように落とすべきでもあっただろう。
――たとえば良くも悪くも『ウルトラマンジード』の最終回などもこのパターンであって、本作『トリガー』最終回の作劇にも通じており、「闇」をも包摂するほどの器量の大きさを持った人格への成長・大慈悲の境地がテーマ的な着地点でもあったのだ――


活劇としてはともかく、あえて光と闇のテーマ性を解題!


 「光」と「闇」の力を併せ持ったという意味を持たせるために、そのデザインのカラーリングの一部に黒を加えただけのトリガートゥルースも、おそらくは円谷側での文芸設定的な意向などではないのだろう。往年の『ティガ』後日談映画などもそうだったのだろうが、バンダイ側が玩具の金型はそのままもしくは微改修で色彩だけを変えた商品点数を増やしたいというゴリ押しで、往年の「ティガダーク」ほかや近年の「黒い仮面ライダービルド」に「白骨の仮面ライダーセイバー」などとも同様に「販促ノルマ」として押しつけられたモノでもあったことは想像にかたくない(笑)。しかし、それすらも文芸的に劇中内にて必然性があるモノだとして昇華してみせるのが、作家たるべき者の務めなのである。


 本作では「闇」を拒絶して「光」だけを賞揚するといった展開は採らなかった。たしかに「正論」「理屈」だけでもヒトは救われないところがある。「人」個々人の内にもまたまぎれもなく怒りや恨みといった「闇」の劣情なども常に湧いてきてしまうモノでもある以上は、劣情にも寄り添って「共感」を示してこそ、当人も認められたと感じて癒やされたりして、そこを経過してこそはじめて改心できるのだという心理的カニズムもあるだろう。
――ただまぁ、筆者個人について自分語りをさせてもらえば、この生きにくい世の中を「理屈」で解釈して、手のひらの上に「縮図」として載せて、「価値判断」としては肯定はしなくても「事実認定」としてはナットクをすることで、擬似的に状況よりも上位に立って安心・救いを得ようとするタイプなので、他人なぞに寄り添ってもらって支えてもらいたいとは思わないけれど(笑)――


 「光」と「闇」の力を併せ持った最強形態・トリガートゥルース。そこにも文芸的な必然性を与えようとするならば、それはもうカルミラの「闇」をも包摂してみせる所業にしかなかったことであろう。ムリやりにテーマ面・文芸面を賞揚的に抽出してみせれば、そのあたりが一応の新機軸たりえていたとはいえるだろう。


――とはいえ、先ほどの発言とは矛盾するけど、「善」と「悪」とは対等な実在であるのか? 「善」(光)だけが真の実在で、「悪」(闇)とは実在ではなく善(光)の欠乏状態にすぎないと見るのか? 「光(源)」と「陽」(=光が当たっている側の物体の表面)と「陰」(=光が当たっていない側の物体の表面=SHADE)や「影」(=地面に映ったSHADOW)に「闇」といった5階層など、神学論争的には千年一日の議論ではあったりするという意味では決して新しくはなく、古来からの普遍的な問題設定なのかもしれないが――


『トリガー』における怪獣攻撃隊の面子をドー見るか!?


 加えて本作最終回では、怪獣攻撃隊の隊員たちが最終決戦にて単なるヒーローvsラスボスとの戦いの傍観者、バトルとドラマの分離も避けるべく、邪神の力の余波で生前の意識はナシで復活した闇の2巨人も怪獣攻撃隊の空中母艦内に人間サイズで出現して白兵戦! といったかたちで、隊員たちにも活躍の見せ場を与えていた。


 なお、ググってみると、彼ら隊員たちに漫画アニメ的・記号的なキャラ付けしかなされていないことには不満の声も上がっていたようだ。……そ、そーかなぁ。往年の『帰ってきたウルトラマン』(71年)や『ウルトラマンティガ』(96年)における怪獣攻撃隊のレギュラー隊員たちのようにリアルというよりナチュラルな人間描写もイイとは思うけど、子供向け番組一般の登場人物の造形法としては適度にマンガ的に誇張・極端化もされている方に筆者個人は軍配を上げるけれどもなぁ――100かゼロかという話ではなく、両方ともにあってイイという話ですヨ――。


 過去話やゲストキャラとのカラみなどでムリに肉付けなどしなくても、単体でキャラを立てることができていたという意味では、空中母艦・ナースデッセイ号を操艦する体育会系・テッシン隊員も、無人戦闘機を遠隔操縦するややエキセントリックな女性隊員・ヒマリも個人的にはスキだし評価もしている。


『トリガー』最終回における自己犠牲テーマもドー見る!?


 本作最終回では最終決戦後にもうひとつのクライマックスが設けられている。超エネルギーであるエタニティ・コアの暴走を鎮(しず)めるために、主人公青年がウルトラシリーズではともかく昭和の特撮やアニメではよくあった自己犠牲的な行為に及ぶのだ――このあたりは偶然なのだが、同時期に放映されていた『仮面ライダーセイバー』(21年)の最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220116/p1)とも通じるものがあった――。
 ただし、それを旧日本軍的な特攻だという批判を浴びせないようにするためにか(笑)、別れの悲壮感などは極力排されてはおり、むろん特攻死などにもなっていない。


 『セイバー』とは異なりエンディング主題歌が流れ終わったあとにも彼は生還しないで終わるのだけど(爆)、映像面ではエタニティ・コアの中で眠りながらも生存はしていることが明示されて明朗なエンドとなっている……。


――むろん、最終回の数話前から本作の中CMなどでも流されてきた最終回後の後日談映画『ウルトラマントリガー エピソードZ(ゼット)』(22年)の予告編映像にて彼は元気に活躍もしているので、近い未来に無事に生還することは確定済!(笑) 作品外での情報も駆使して、過剰に湿っぽい雰囲気を与えてしまう危険の回避もできていた――


総括:『トリガー』人気の高低を何でドー測定すべきか!?


 いろいろと書いてきたが、マニア間では大人気作となった直前作『ウルトラマンZ』と往年の人気作『ウルトラマンティガ』との板挟み、双方の批判の論拠は真逆で異なるものの、そこは自覚・整理されずにフワッとした野合となることで、『トリガー』はマニア間ではカナリな矢面に立つ作品となってしまったことは事実である――『ティガ』を未見の特撮マニアの方が今となっては多数派なのだが、むろん仮に実は少数派による批判であったのだとしても、それに対しても一定の尊重はされるべきではある――。


 ただし、それら自体がまた、あくまでも大きなお友だち・年長マニア間での評価にすぎない。子供間での人気の測り方もまた実にムズカしいものではあるけれど、玩具の売上高が一応の参考にはなるのだろう。
 今年2022年には判明する2021年度のウルトラシリーズの玩具売上高の発表を待って改めての参考ともしたい。筆者個人の作品評価と玩具売上(子供人気)が相反するものであった場合でも、それはそれで虚心坦懐に受け容れて、本作に対する見解も釈明・修正していきたいとは思うのだ。
――「謝ったら負け病」の人間なぞではないので(笑)。もちろん作品は不人気でも玩具単独の魅力だけで売上高が上がるといったこともゼロではないのだろうけど、そのようなこともまた滅多にはないであろう――


追伸


 本作『トリガー』の次作は、『ウルトラマンティガ』の次作である『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)がフィーチャーされることがすでに明かされている。『ティガ』主演のジャニーズ・長野博とは異なり、変身前の「中の人」であるつるの剛士(つるの・たけし)のギャラは相対的には安いであろうし、客寄せパンダ的にも喜んで大いに協力してくれそうではある。
 この流れで前作『ウルトラマンZ』までの作品が次々と順番に毎年リブートされるなどというようなことはないだろう。しかし、同じく「平成ウルトラ3部作」である『ティガ』と『ダイナ』はリブートされたのに、残りの『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)だけがリブートされないとなると、それはそれでかわいそうな気がしてくる。よって、『ガイア』まではリブートしてあげてもイイのでは?(笑)


追伸2


 「鵜の目 鷹の目(うのめ・たかのめ)」で作品の細部をチェックしていて、個人個人の見識としてはともかく、結果的に集合知といったモノが浮かび上がってくる巨大掲示板まとめサイトなどでの本編画像検証によれば、ウルトラマントリガーが第4形態・グリッタートリガーエタニティに強化変身した2021年10月9日(土)に放映された#12「三千万年の奇跡」の撮影日が、ヒロイン・ユナ隊員のデジタル腕時計の拡大映像(笑)にて判明している。少なくとも同話は2021年5月22日(土)に撮影されていたというのだ。
 よって、放映の約5ヶ月前には撮影がなされていたことになる。それにも関わらず、本作では3本の総集編が入った末に通常は年内で終わる放映が翌年1月に3話分もハミ出していた。


 昭和~90年代後半の平成ウルトラ3部作までの放映日ギリギリ納品の時代とは異なり、その反省に立って『ウルトラマンコスモス』(01年)以降は放映から半年ほどは先行して撮影を済ませていることは、往時からのマニア向け書籍などでのスタッフの証言でも明かされている。2010年代以降のニュージェネ・ウルトラシリーズも同様であるから、つまり『トリガー』も撮影自体は特に遅延していたとは云えないことになる。
 ニュージェネ以降は製作費を削減する大前提もあって、「本編」と「特撮」の2班体制はなくなりスタッフは「本編」「特撮」の兼任ともなっている――スタッフ・インタビューによると、コレによってやむをえずカナリの早撮りとなっているようだ――。よって、「本編」は撮影が順調ではあったものの「特撮」だけが遅延していたとも考えにくい。


 ということは、物理的な実体がある在り物・現物――役者・風景・ヒーロー・怪獣着ぐるみなど――の撮影さえできれば2話1組にて2週間ほどで撮了となるのであろう「撮影現場」側の都合ではなく、「ポスプロ」(ポスト・プロダクション=後処理=CGや合成)チーム側での不都合・遅延などがあったのであろうか?――CGや合成も予算はともかく一定以上のクオリティーを確保するためには日数を要するのだ(汗)――


 しかし、ご存じの通り『トリガー』においては、全話に登場するゲスト怪獣をすべてソフビ人形化するというバンダイ側の目論見もあった。そう考えると、多種にわたるソフビ人形の中国での製造や輸入に国内玩具店への配備などの問題で、ゲスト怪獣が登場する放映日に合わせたかたちで発売することが困難であったために総集編が3本も挿入されて、その分が翌年放映分に繰り越しになったといったことなのであろうか?――放映に連動したタイミングで都度都度に新発売にしていった方が、やはり売上もイイそうなので(笑)――


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2022年2月号』(22年2月20日発行)所収『ウルトラマントリガー』最終回合評2より抜粋)


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 映画『ウルトラマントリガー エピソードZ』(22年)が公開記念! とカコつけて……。『ウルトラマントリガー』中盤各話評をアップ!


ウルトラマントリガー』中盤各話評 ~Z・リブット・ティガ客演! 『ティガ』とは似て非なる並行世界を舞台とした変型後日談!

(文・中村達彦)
(2021年12月27日脱稿)

#8~13 ウルトラマンZとの共闘、続いて息つがせぬ急展開


第8話「繁殖する侵略」


 前話(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211021/p1)に続いて防衛チーム・GUTS-SELECT(ガッツ・セレクト)の空飛ぶ母艦・ナースデッセイ号に、平行世界から来たウルトラマンZことハルキ青年が滞在していて、トリガーことケンゴ隊員はアキト隊員の横で事情を聞いていた。その頃、地上では人々が謎のハッキングに襲われていた。スマホや車が次々に異常を来たす。被害は広がりナースデッセイにも及ぶ。ケンゴやアキト、ハルキや宇宙のお宝ハンター・イグニスも加わり、GUTS-SELECT一丸となって対処する。
 犯人は三面怪人ダダで、ナースデッセイを乗っ取り、ナースキャノンを発射する。更に自らの姿を見せて隊員たちを翻弄する。GUTS-SELECT隊員たちはハッキングに立ち向かう。更にダダは地上に倒れたままになっている、前作『ウルトラマンZ』(2020年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)の防衛チームの巨大ロボット・キングジョーストレイジカスタムを乗っ取り暴れさせる。ハルキはZに、ケンゴはトリガーに変身する。アキト隊員がZの変身アイテムを研究して作ったハイパーキーにより、Zはアルファエッジ・ベータスマッシュ・ガンマフューチャー・デルタライズクローにタイプチェンジして戦う。
 ダダの操るキングジョーストレイジカスタムはZやトリガーを苦しめるが、ハッキングを排したナースデッセイの援護も加わり、Zのゼスティウム光線とトリガーのゼベリオン光線で撃破される。
 戦いのあと、ZとハルキはZの喋る武器・べリアロクの力で元の世界へ帰ることに。アキトとケンゴに見送られ、キングジョーストレイジカスタムの残骸と共に帰るZ。しかしダダとの戦いで超古代の巫女ユザレの姿を見たことで、ユナ隊員は自らの秘密に混乱するのであった。


 前回同様、脚本は小柳啓伍、監督は田口清隆。ダダは初代『ウルトラマン』(1966年)以来ウルトラシリーズに何度も登場しているが、本作に登場したダダは、昭和ウルトラシリーズとは世界観を別にした『ウルトラマンパワード』(1993年)版ダダである。パワードに登場したダダはオリジナルとは異なりコンピューター生命体の設定で、独自の生態を持つ。初代『ウルトラマン』のリメイクである『ウルトラマンパワード』でコンピューター生命体で登場したダダはオリジナルとは別の不気味さがあり、『ウルトラマンパワード』は『ウルトラマン』と比べていろいろと失敗しているが、ダダ編については成功していたと思う。『ウルトラマンパワード』ダダ編ラストでもダダは生きていることを匂わせていたが、本話に繋がっているのだろうか?
 ナースデッセイにハッキングするのを、GUTS-SELECTの隊員たちが総出で阻止しようとするが、部外者であるハルキやイグニスも加わり、力を合わせるのは第6話を思い起こさせる。それぞれに頑張るテッシン隊員やタツミ隊長、メトロン星人マルゥル隊員やアキトやユナ。いつもボソッと突っ込み役をするヒマリ隊員がアクションゲームのノリで中枢ハッキングを阻止する。コンピューターへの侵入シーンでは往年の円谷プロ製作で電脳空間で戦う特撮ヒーロー『電光超人グリッドマン』(1993年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181125/p1)がコンピューターワールドへ突入する際と同じような映像を再現。
 ダダがキングジョーストレイジカスタムにハッキングし、トリガーやZの強敵となる。その強さは半端ない。『ウルトラマンZ』の時より強いような。更にダダはハッキングを重ねて、停車している車が宙を乱舞してウルトラマンを襲う。それはハッキングではなく超能力っていうんじゃあ(笑)。
 Zもハイパーキーの力で次々にタイプチェンジしていくが、アキト隊員はよくZのタイプチェンジの能力までキーにデザインできたなぁ。Zは元の世界へ帰れなくて今後はトリガーとしばらく共闘するのかと思ったら、べリアロクの力で戻れることが判明。なあんだ。あっさりしている。アキトとケンゴに頭を下げて帰っていくのは『Z』最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)を連想させる。最初から最後までアキトは嫌な顔をしているが、実際はそれほどケンゴのことを嫌っておらず、ハルキにも良い相棒だと見透かされている。前年度の『ウルトラマンZ』ではウルトラマンゼロウルトラマンジード・ウルトラマンエースの後輩だった半人前のZとハルキが、1年を経て今回は先輩に。実に感慨深い。


第9話「あの日の翼」


 久しぶりにナースデッセイを訪れた、シズマ財団や地球平和同盟・TPUを設立したシズマ会長。娘のユナ隊員の18歳の誕生日が目前に迫っていたが、シズマは今までの調査で解かったことを隊員たちに知らせる。そしてユナを伴って山中へ。山中の格納庫に整備されていたのは『ウルトラマンティガ』(1996年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)に登場した戦闘機・ガッツウイング。その機体を前に打ち明ける。自分は別の世界から来た人間で、元の世界にもティガというウルトラマンがいたことを。シズマの告白はケンゴらGUTS-SELECT面々も知ることに。そしてこの世界で出会ったユナの母親は、太古にいた巫女ユザレの末裔であるとも語られ、シズマは彼女の遺した指輪をユナに渡すのであった。
 そこへ太古にユザレが石化させて長い眠りについていた石化闇魔獣ガーゴルゴンが目覚めて襲いかかってくる。ケンゴやアキトが駆けつけシズマやユナを守り、ナースデッセイからファルコンが発進する。ガーゴルゴンにファルコンは撃ち落されるが地上に墜落寸前、トリガーに助けられる。シズマもガッツウイングを遠隔操作で操りガーゴルゴンを攻撃する。ユナは自らに呼びかけ、ユザレの力を目覚めさせ、ガーゴルゴンの攻撃を跳ね返す。トリガーはガッツウイングと力を合わせ、専用武器サークルアームズによるゼペリオンソードフィニッシュでガーゴルゴンを撃破する。戦いのあと、ナースデッセイ内の指令室でユナの誕生パーティーが行われた。


 脚本は林壮太郎、監督は辻本貴則。同時期にNHKで放映された特撮ヒーロー『超速パラヒーロー ガンディーン』(2021年)から続いての参加。ガーゴルゴンは『ウルトラマンX』(2015年)7話(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)が初登場だが、辻本氏は同話も手がけており、ガーゴルゴンの着ぐるみは5年以上も使い倒されて、今回の話で再登場した時はボロボロだったとか。
 久しぶりに出演のシズマ役・宅麻伸(たくま・しん)。ユナに自分の出自を明かす姿や自らガッツウイングを操縦してガーゴルゴンを迎撃する姿はシブい。前年度の『ウルトラマンZ』では初老のメカ整備員・パコさんを演じた橋爪淳(はしづめ・じゅん)が印象的であったが、同じように年輪を重ねた宅麻の重厚な演技も印象的。宅間自身も特撮作品ではかつて『ゴジラ』(1984年)と『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)に出演している。
 シズマが自らの正体を告白し、『ウルトラマンティガ』との関わりも平行世界の関係だったことが明かされた。元の世界でTPC局員だったというが、『ティガ』の防衛チーム・GUTSのイルマ隊長の腹心の部下でティガに変身するダイゴ隊員のことも知っていたとかだったら面白い。『ウルトラマンティガ』の一応の続編だと納得させられた。ガッツウイングで単身この世界へ来てからは、シズマ財団や地球平和同盟・TPUを築くには並々ならぬ努力が必要だったはずだ。彼を支えたユナの母・ユリカを演じる逢沢りなは、『炎神(エンジン)戦隊ゴーオンジャー』(2008年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1)でゴーオンイエロー・楼山早輝(ろうやま・さき)を演じていた(彼女の口癖も「スマイル、スマイル」だった・笑)。彼女は少ししか登場しなかったが、また出てほしい。
 ガッツウイング、山中からの発進シーンやガーゴルゴンへの攻撃シーン、怪獣の攻撃で機体が火を噴くも飛行しながら湖の水で消火して、ガーゴルゴンの眼を潰し、最後にトリガーと並んで飛行するなど、カッコいいカットが複数撮られている。ファルコンはいかにもCGぽいが、ガッツウイングは同じ無人機ながら、地上で遠隔操作する宅麻の演技も加わって、CGを感じさせない実在的な質感がある。
 『ティガ』絡みのシーンには『ウルトラマンティガ』のBGMが使われているし、シズマの回想ではティガの雄姿が登場し、かつて『ティガ』にハマったファンを感激させる回でもある。
 ラスト、ユナの誕生祝いにアキトがプレゼントしたものはスタンガン! ヒマリじゃなくともそのセンスのなさは笑ってしまう。


第10話「揺れるココロ」


 第5話でユナに頬を引っぱたかれた闇の巨人ダーゴンはユナのことが気がかりになる。そして根城の深海から人間サイズにミクロ化して地上へ。高校に通う彼女のあとをつけるが、ダーゴンのユナへの気持ちをイグニスは「恋」だと指摘して入れ知恵をする。一方、ナースデッセイ内に収蔵してある太古の石画の一部が剥がれ落ちて新たな絵が現われた。加えて地底に怪獣の気配が。その解析でエタニティコアなる超エネルギーの存在を知る。
 アキトに入った屋外のユナからのTV電話、その背後にはダーゴンの姿が。急ぎユナの許へ駆けつけるケンゴとアキト。ダーゴンはユナに壁ドン・ハグ・ナデナデと続け(笑)、自分の恋する気持ちを確かめようとする。嫌がって強気で対するユナは前話でアキトからプレゼントされたスタンガンで対する。到着した2人。ケンゴはダーゴンと戦い、ダーゴンは超古代にトリガーと共に活動していたことを語る。
 悩むダーゴンの地団駄から、変身怪獣ザラガスが出現して暴れ出す。ファルコンが攻撃、ケンゴもトリガーに変身するが、ザラガスは攻撃を受ければその分強くなり、甲羅を外し、全身に生えた突起から光線を放つ!
 ユナを守ってダーゴンに対するアキト。だが戦いの最中、ザラガスの下敷きになりそうになったアキトとユナをダーゴンが助けて、そのことから交流が生まれる。ファルコンから液体窒素を撃ち込まれたザラガスへ、赤いパワータイプに変身したトリガーの必殺技デラシウム光流が発射される。
 戦いが終わり、ダーゴンは人間が侮れない相手であること、ユナにアキトが恋していることを解するも、そのまま去っていく。その頃、石板の壁画には3巨人と共にウルトラマンの姿も現れる……。


 脚本は林壮太郎、監督は辻本貴則。共に前話と同じで、両者は2010年代以降のウルトラシリーズを支え続けてきた。初代『ウルトラマン』第36話に初登場のザラガスも登場する。
 ユナに引っぱたかれたダーゴンが思い悩み、遂にストーカーと化して尾行する「まさか?」の話。第5話を受けたものだが、こういう展開になろうとは。ウルトラシリーズ初のエピソードだ。イグニスは「この世の生きとし生ける者は恋を重ねて強くなる」と言い、真面目に受け止めるダーゴン。発端はイグニスだが、騒動の途中で「知らねえっと」と逃げ出している(笑)。ダーゴンは真剣だったのだが……。
 その間、2人とも他の人に見られていないのか、イグナスとダーゴンは友好的に話しているが、別種族同士である2人は本当は何語で会話しているのだろうか? その超能力で互いに日本語で会話できているのだろうか? ダーゴンはユナに接触して壁ドン・ハグ・ナデナデを行うが行動は空回りして、視聴者が指をさして笑ってしまうツッコミどころが幾つも。前話の誕生パーティーでアキトからプレゼントされたスタンガンをユナが使い、ちょうど到着したケンゴが突っ込んでいる。
 だがギャグ回と見せておいて、後半では真面目な話になっていく。「誰かを守りたいという気持ちが私たちを動かす」と答えるユナ。そして闇の巨人ダーゴンも「生きとし生けるものは恋を重ねて強くなる。その強さとはすなわち、誰かを守りたいという強い思い。弱い人間を侮るべきではない」と教訓的なことを悟って、彼の光落ちの可能性も示唆する。人間との間にコミュニケーションが形成されたのだ。反面、ダーゴンはアキトもユナのことが好きなことを指摘し、すぐ横で聞いていたユナが嬉しそうにしている。
 ユナは高校へ通いながらGUTS-SELECTの隊員をしていると判明。二足の草鞋だが両立できるのか? 高校に怪獣が出てくる話も観てみたい気も。
 その頭上でのトリガーとザラガスのバトルもよい。地上の人工物を珍しそうにいじったり、『ウルトラマンギンガ』(2013年)出演回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200825/p1)で初披露した第3形態から『シン・ゴジラ』(2016年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160824/p1)のように全身から生えたトゲで放電攻撃するなど、ザラガスは実に怪獣らしい挙動をしている。そして町のセットも細部まで作りこまれていた。戦いで破壊されるマンションの室内ミニチュアも、ついさっきまで人がいたような生活感がある。


第11話「光と闇の邂逅」


 冒頭から突如始まった闇の女巨人・カルミラとトリガーの戦い。カルミラは昔トリガーと親しかったと告げながら、彼女専用武器の鞭をふるったあと、呪術で拘束。ケンゴは抵抗するが、超古代の時代へ跳ばされてしまう。アキトやユナはダーゴンに、ファルコンはヒュドラムに阻まれて見守るしかない。3000万年前の過去に飛ばされたケンゴの前に、超古代文明を破壊している闇の3巨人ともう1人の闇黒勇士・トリガーダークの姿、彼らに抗する地球星警護団の生き残りである超古代の巫女・ユザレの姿もあった。
 ケンゴはユザレと共に逃げ、巨人たちが宇宙誕生のビッグバンを起こせるほどの超エネルギー・エタニティコアを狙っていることを知る。次第にケンゴの明るさに打ち解けるユザレ。そこへ追ってきたトリガーダークがユザレをさらっていく。
 その頃、ケンゴがいなくなった現在の世界では、アキトが途方に暮れていた。ケンゴが落とした変身アイテム・GUTSスパークレンスを拾うが、直後にトリガーがいた場所にエネルギー反応が。
 超古代の世界では、さらわれたユザレが闇の3巨人のところへ。遺跡の中にあったゲートを開いて中へと入る巨人たち。エタニティコアを手に入れることで、闇の一族だけの宇宙を作ることを目論んでいたのだ。駆けつけたケンゴに変身アイテム・スパークレンスを渡すユザレ。ユザレはケンゴをルルイエ(希望)と呼ぶ。ケンゴは先にエタニティコアへ触れようとするトリガーダークへ呼びかけながら、スパークレンスをかざす。トリガーダークのインナースペース(精神世界)の中で向かい合うケンゴと人間サイズのトリガーダーク。ケンゴの説得に耳を貸さず殴りつけてくるトリガーダーク。一方、現在の世界でもゲンゴが分離してしまったトリガーの身体が元のトリガーダークに変化して出現した。その姿にアキトはユナのいる前でケンゴの名を叫ぶ。


 脚本は本作メインライターのハヤシナオキ、監督は武居正能。ハヤシは初のウルトラシリーズ参加である。唐突に序盤から3巨人とトリガーの戦いが始まり、超古代の世界へ飛ばされるケンゴ、トリガーダークの出現と急展開だ。
 過去のウルトラシリーズでも、主人公が試練を与えられ、それを克服した時、ウルトラマンは新たな力を得てパワーアップするというイベントエピソードは、ウルトラマンに限らず古今東西のヒーローもののお決まりのパターン。今回と次回の話はそれなのだが、そのストーリーはマンネリ・ワンパターンだと思わせず、いつも引き込まれる。ラストは決まっているが見逃せないのだ。
 前回はギャグ色が強いエピソードだったが、今回はそれを感じさせない。序盤から前振りもギャグもなく、リアルにカルミラとの戦いから始まる。トリガーが元・闇の3巨人の仲間である悪のウルトラマンであったことは、原典のウルトラマンティガもTV放映後に公開された後日談の映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』(2000年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961209/p1)では同様の設定とされていたし、本作でもすでに示唆されていたことだ。今回もカルミラとは親しい男女間の機微も含んだ関係にあったと具体的に描かれている(カルミラは愛しいトリガーダークに最初にエタニティコアの力に触れさせようと譲っている)。トリガーが改心し、人間の味方になるというストーリー展開は容易に想像できるが、それは次話のレビューにて。
 「ルルイエ」は20世紀初頭の小説家・ラヴクラフトが考案して引用も自由としたクトゥルフ神話に登場する、太平洋にある海没都市の名。『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』の舞台となった海底遺跡の名前にも引用されているが、本作では「希望」という意味の言葉で、ケンゴが育てている花の名前にもなっている。ということは、ただの花ではなく希望の存在でもなく、危険な存在である可能性もあるのだろうか?
 今までの話数では比較的大人しくしていたカルミラが、本話では序盤からトリガーを圧倒したが、そのための伏線や準備を進めている場面をそれまでの話数にも入れてほしかった。ユザレ役はその子孫であるユナ役の豊田ルナによる一人二役なのだが、ユザレの白い髪はかつらであると一目瞭然。このユナもケンゴの正体がトリガーだと知ってしまった。他の3巨人とはデザインラインがかなり異なるトリガーダーク。鎧をまとったような姿は強そうで頑丈そうな悪のウルトラマンであることを強調しているが、3巨人と一緒にいるのはなにか不自然。一言も喋らないのも不自然だが、声優などに喋らせてしまうとケンゴの前世ではなく独立した別人格に見えてしまうことを避けるための便宜的な作劇なのだろう。


第12話「三千万年の奇跡」


 現代の世界で、ケンゴの正体がトリガーであることをユナに打ち明けるアキト。一方、ケンゴが分離したトリガーの身体が変化した現代のトリガーダークも暴れ出す。ファルコンやナースデッセイが向かうが、太刀打ちできない。
 超古代の世界では、ケンゴとトリガーダークはしばらく殴り合うが、涙ながらのケンゴの呼びかけにトリガーダークは応えて手を差し出した。そして2人は一体化、ウルトラマントリガーのマルチタイプ・スカイタイプ・パワータイプの3体に分離して3巨人と戦う。苦戦するも、ユザレからエタニティコアを受け取って、そのエネルギーで3巨人を石化して封印する。力を使い果たして消滅するユザレ。そのままトリガーは火星へ。ケンゴも時空を飛び越え、現代の世界へ戻る。
 ケンゴの姿に戻ったあと、アキトとユナに声をかけ、トリガーに再変身。元は現代のトリガーの抜け殻であるトリガーダークや3巨人と乱戦になる。トリガーダークに圧倒されるトリガー、そこへユザレからエタニティコアを受け取ったユナが、それをトリガーへ。「宇宙を照らす超古代の光!」の掛け声とともにケンゴは新たなトリガーの姿・グリッタートリガーエタニティに。そのパワーに退却する3巨人。トリガーダークとグリッタートリガーエタニティの一騎打ちになる。ケンゴは新たな力をうまく制御できないが、新たな剣型の武器・グリッターブレイドから放つ必殺光線・エタニティゼラデスでトリガーダークを撃破する!
 戦いが終わり、よろめきながら仲間の元へ戻るケンゴ。受け入れるアキトとユナ。だが空中に漂うトリガーダークの残留エネルギーをその戦いを目撃していたイグニスは体内に吸収していた……。


 前話に続いて脚本はハヤシナオキ、監督は武居正能。トリガーが人間の味方になった超古代での経緯と、次いで新たな力を手にする物語が明かされた。超古代の世界でケンゴがトリガーダークと殴り合い、やがて2人は理解し合い2人は1人のトリガーになる。いささか解かりにくいが、おそらく悪の所業を繰り返すトリガーダークの心のどこかで「これでいいのか?」と疑問が起こり、エアニティコアが存在する深淵に来た時には、その疑念も大きくなっていたのだろう。ケンゴは超古代のトリガーダークの心に芽生えた「良心」の部分だけが遥か未来に輪廻転生した存在だったのだ。しかし、向かい合う超古代のトリガーダークもいつしか3000万年未来のケンゴの姿に。2人は同一存在だということを象徴させるための映像演出だろうが、超古代の石板にも変身アイテムを掲げる青年の姿が描かれているので、超古代にトリガーダークが人間に逆変身した姿自体がケンゴと同じ姿だったということか?
 ケンゴを見守ってきたアキトが、暴れているトリガーダークを見上げながらケンゴへの本心を語るが、彼が口では「ウザい」と言っていても、ケンゴの「みんなの笑顔を守りたい」と言う姿に共感し、いつしか彼のバディ(相棒)となっていた。シリーズ後半もその人間関係が続くのだろう。ユナも本話でケンゴの正体がトリガーだと知ったことで各話の話運びも少々変わってくるだろう。そしてイグニスはトリガーダークの力に取り込まれた。今まで一応味方でギャグキャラであったが、これから違うポジションになるのであろうか?
 超古代の世界のトリガーダークと現代に現われたトリガーダークは、それぞれ異なるといってよいのか、それとも同一人物といってよいのか? いろいろ「?」があって深読みしがいがあるが、怪獣博士タイプの子供やマニア達の議論百出なども狙ったものだろう。
 強化形態のグリッタートリガーエタニティはトリガーともデザインは異なり、これまでのウルトラマン新バージョンのパターンとは違う。体色もオレンジ色のカラー部分が多く、3つのカラータイマーで胸部が構成されているがデザインはシンプルで、強化形態に付きものの強そうに見せる突起物などはなく、カラーリングもそれほど派手ではないデザインになっており、これはこれで親しめる。


第13話「狙われた隊長 ~マルゥル探偵の事件簿~」


 タツミ隊長が行方不明に、メトロン星人マルゥル隊員は調査を開始。テッシン隊員が怪しいとニラむが、実はタツミは会議で外に行っていたのであった。脚本は2010年代のニュージェネレーションウルトラマンシリーズの総集編を手がけてきた足木淳一郎、監督は内田直之。総集編+ギャグ回。
 大人気漫画『名探偵コナン』(1994年~)や『金田一少年の事件簿』(1992年~)、大人気TVドラマ『古畑任三郎(ふるはた・にんざぶろう)』(1994年)や『トリック』(2000年)、映画『男はつらいよ』(1969~95年)、古典『少年探偵団』(1936年)などのパロディが多数入っているが、高齢マニア向けのギャグにとどまらず、元ネタがわからなくても子供でも楽しめる賑やかなギャグに仕上がっている。メトロン星人繋がりで『ウルトラマンマックス』(2005年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060318/p1)や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』(2008年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100128/p1)にも出てきた缶飲料の眼兎龍茶(メトロン茶)やちゃぶ台も登場し、メトロンが初登場した『ウルトラセブン』(1967年)8話の舞台となった北川町という単語も出て来る。マルゥルの声を演じるM・A・Oが歌う挿入歌「メトロン・サンセット」も流れている。
 反面、まだケンゴがグリッタートリガーエタニティを使いこなせないことを明かしたり、イグニスがアキトの研究室から変身アイテム・GUTSスパークレンスの試作品を盗み出すなど、今後のシリーズ後半戦の伏線も入れてある。


#14~15 急展開続く息つがせぬストーリー


第14話「黄金の脅威」


 ケンゴは光の化身として戦うことを強く決意する。一方、深海でカルミラたち闇の3巨人は、トリガーを裏切らせたケンゴに怒りをぶつけるが、そこへ金色の超人アブソリュートディアボロとアブソリュート・タルタロスが出現。自分たちがトリガーからエタニティコアを手に入れることを黙認してほしいと言う。一巡して認めるカルミラ。ナースデッセイでは、アキトはナースデッセイ強化が必要だが膨大なエネルギーがいると言う。そこへ町にディアボロが送り込んだ機械怪獣ディアボリックが出現する。地上で戦うアキトとユナ。ケンゴもトリガーに変身する。
 猛攻、ディアボリックの火力にトリガーは苦戦するが、グリッタートリガーエタニティになり撃破する。だが未だにケンゴは新しい力をコントロールできていなかった。心配するユナ。イグニスはアキトに接触、ディアボリックを差し向けたアブソリューティアンについての情報を、失敬したスパークレンスの見返りに提供するのであった。
 ナースデッセイ内でディアボリックとの戦いで負った傷の手当てをするケンゴ。今度はディアボロが町に出現。すぐさまケンゴはユナの制止を振り切って変身。トリガーは赤色のパワータイプで立ち向かうが、圧倒的なディアボロのパワーに負け、エタニティのパワーを吸い取られるばかり。
 そこへ頭上からディアボロ目掛けて攻撃が。別の宇宙から来たウルトラマンリブットであった! クリスタルの盾と光の槍でディアボロを翻弄し退却させる。助けられたケンゴとユナの前にリブットの人間体の青年が現われた。同じ頃、アキトはタツミ隊長にナースデッセイの真の力について提案していた。


 脚本はシリーズ構成を務める足木淳一郎、監督は本作メイン監督の坂本浩一。坂本監督は第1~第3話も監督を務め、ここ10年ほど仮面ライダースーパー戦隊シリーズも手がけており、アクション演出に秀でており、ヒーロー共闘ではそれを意識したうまいカットを撮る。『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズ(2019年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)の監督でもある。足木も『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズの脚本を手がけている。
 本話からシリーズ後半に突入。例年通り、OPとEDは歌詞や映像が変更。EDはケンゴ・アキト・ユナが歌っているが、そのメロディーはうら悲しい。これからの展開を反映させているのか? ケンゴがトリガーを裏切らせたと怒るカルミラ。だが、いつケンゴのフルネームを知ったのであろうか?(笑)
 訪れるアブソリュートディアボロとアブソリュート・タルタロス。後者は『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(2020年)からの客演で、エタニティコアを手に入れるため、3巨人に自分たちの行動を黙認するように言うが、礼儀正しいと言うか、共闘ものの悪の組織同士のツボを衝いていると言うか。だが最初にディアボリックが町を襲った時、ディアボロも一緒に来てトリガーを倒してしまえば良かったのに……などと言ってはいけない。この手の作品のお約束である。ディアボリックは『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(2017年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)や『ウルトラマンタイガ』(2019年)第4話(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)にも登場した。
 ケンゴが帰還した時、トリガー同様に肩をケガしていると気が付くタツミ隊長だが、これが今後の伏線になるのかどうか。ケンゴが新しい力を使いこなせないことに焦り悩む姿がそこかしこで描かれている。
 今回は2度、ウルトラマンのバトルが撮られ、力の入った特撮カットが幾つも取られている。そのうち、ディアボリック襲来で本編撮影の地上からアキトとユナが攻撃し、その攻撃先が上方の実景・特撮合成カットのディアボリックに転じていくとか、ディアボリックが落としたビルが2人に落下する直前、頭上に特撮合成のトリガーが出現してビルを叩き落とすのが印象深い。


第15話「オペレーションドラゴン」


 アキトはイグニスからの情報でアブソリューティアンの情報を得た。彼らが持つ超エネルギーによってGUTS-SELECT空中母艦・ナースデッセイ号のパワーアップができるのだ。ナースデッセイ号がバトルモードに変形するには膨大なエネルギーを必要とするが、宇宙線研究所にアブソリューティアン・ディアボロを誘い出してそのエネルギーを吸取するというもの。タツミ隊長は提案に乗る。
 宇宙線研究所の屋上では、作戦準備が進められる。トリガーのエネルギーダミーを作り、騙されたディアボロからエネルギーを吸収するというものだ。作戦名はオペレーションドラゴン。準備を見守る謎の女性。アキトとマルゥルはナースデッセイを建造した話を思い出す。
 ケンゴとユナはタツミ隊長に連絡を入れて合流できないと告げ、青年リブットの特訓を受けることに。リブットによる体育館での特訓・武術・ダンスがケンゴとユナに課せられる。リブットいわく「1つのことに捕らわれるな」。いつしかイグニスもその訓練を見ている。
 オペレーションドラゴンの準備が終わった。謎の女性はカルミラであった。トリガーのダミーエネルギーに騙されたディアボロが出現したので、アキト・タツミ・テッシン・ヒマリ・マルゥルが配置につき、作戦は開始された。
 特訓の最後に一時的に青年リブットに昏睡状態にされていたケンゴをユナが起こす。「光であり、人である」。夢の中でのユナとの会話を通して、光の化身ではあるが、同時に自分はあくまでも人間だと自覚したケンゴ。
 ディアボロはエネルギー搾取を払いのけようとするが、ダーゴンやヒュドラムが羽交い絞めに。闇の巨人たちはオペレーションドラゴンを察し、一時的に人間に味方したのだ。
 ナースデッセイはディアボロのエネルギーでバトルモードへ、駆けつけたトリガー、ユナのハイパーキー、貸与されたスパークレンスで変身したリブットも戦いに加わり、それぞれの必殺技が炸裂、ディアボロを撃破する。トリガーの成長を見届けて元の世界へ帰っていくリブット。グリッタートリガーの力を制御できるようになったケンゴに迷いはなかった。だが撃破したディアボロは復活してM78星雲・光の国のウルトラ一族との戦いへ。ラストではイグニスも変身アイテムを使ってついにトリガーダークへ変身した!


 前話同様、脚本は足木淳一郎、監督は坂本浩一。第7話~8話に続くウルトラマン共闘に、ナースデッセイ号のパワーアップ、複数のイベントが同時進行で進むが、それぞれじっくり描かれていく。
 「光であり、人である」は『ティガ』第1話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)ほかで巫女ユザレが主人公ダイゴ隊員に述べた言葉である。当初は深い作劇的意味はなく、主人公がウルトラマンに選ばれた理由の伝奇ファンタジー的な意味しかなかったと思うが、「光」になれることの選民思想的な危険性を脱臭するためか、シリーズ後半では変身前の「人」であることや「人」として出来ることを重視させる方向性でドラマを作っていった。『トリガー』のケンゴも現世ではたしかに人間の未熟な若者でしかないので、卑小な自分に気づいてまずは地道にやれることをやるしかないと決意させる作劇も妥当なものだろう。
 作戦を見守るカルミラが化けた人間の女性はカルミラの声を当てている上坂すみれ本人。人気アイドル声優である彼女がこういう形で出演するのは予想していたが。でもダーゴンやヒュドラムはそのまま等身大サイズで活動しているが、彼らも人間の姿に化けられないのか? ディアボロの声は小川輝晃(おがわ・てるあき)。『忍者戦隊カクレンジャー』(1994年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120109/p1)のニンジャレッド、『星獣戦隊ギンガマン』(1998年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981229/p1)の6人目の戦隊戦士・黒騎士ヒュウガ役でレギュラー出演した方で、現在は声優として活動中。リブット人間体の青年も本業は声優の土屋神葉(つちや・しんば)で、人気若手女優・土屋太鳳(つちや・たお)の弟。ダンスをするシーンは姉が主演したTVドラマ『チア☆ダン』(2018年)を連想させる。目の辺りが姉弟で似ているような。ダンスの時に流れた土屋神葉が歌う挿入歌は軽快で、今回はエンディング主題歌でもダンスをする姿ともども流されている。
 リブットはケンゴを鍛えるが、ウルトラセブンウルトラマンゼロらの昭和的な厳しい特訓とは違う。リブットも『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』でウルトラマングレートウルトラマンパワードに特訓を受けてい