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追悼、岸辺シロー ~『西遊記』での沙悟浄役での活躍回を振り返る!

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追悼、岸辺シロー ~『西遊記』での沙悟浄役での活躍回を振り返る!

(文・田中雪麻呂)
(2020年9月20日脱稿)

岸部シロー(きしべ シロー ミュージシャン・俳優 2020年8月28日(金)逝去 享年71歳)


 拡張型心筋症(心室が広がり、全身に必要量の血液を送り出すことができなくなる)による、急性心不全で亡くなる。


 昭和40年代生まれの筆者にとっては、TVに出ているのが、至極当然に思われたひと。


 日本テレビ系の朝のワイドショーの雛型(ひながた)となった『ルックルックこんにちは(1979~2001)』では、司会者(2代目)を担当(1984~98)。それも本当の意味での司会者である。岸部はスタジオにいて各コーナーへの進行をするだけで、自分の意見めいたものは一切言わなかったし、そういうことを公(おおやけ)に求められてもいなかった希有(けう)な存在であった。



 TV時代劇では杉良太郎(すぎ りょうたろう)が主演した人気番組『遠山の金さん(1975~77、79)』で、長身痩躯(ちょうしんそうく)・無能で居丈高(いたけだか)だが、どこか憎めない南町奉行所(みなみまち ぶぎょうしょ)の同心(どうしん=今でいう警察官)・赤目玄蕃(あかめ げんば)を好演。時代考証にはうるさい杉の作品には珍しく、丸眼鏡を掛け、江戸が舞台であるのに近畿方言を使うという、岸部の素(す)のキャラクターが生かされたものになっていた。


 因(ちな)みに、かつて岸部は1969年に当時トップ・スターだったグループ・サウンズ(ロック・グループ)「ザ・タイガース」にアイドルとして加入したとき、それまではアイドルにはタブーとされてきた「眼鏡」と「方言」を取り入れ、彼自身がムードメーカーになることに成功し、その後グループの音楽性を広げることにも貢献したことを付記しておく。


 岸部は共演者にも恵まれた。軽みのある短駆(たんく)な俳優・植田峻(うえだ しゅん)が、赤目の子分の御用聞き「花川戸の新八」を演じたことで、凸凹(でこぼこ)コンビのようになり、コミカルなシーンには欠かせぬ存在ともなっていた。同作は北町奉行所の名奉行(警察長官にして裁判官のようなもの)である遠山金四郎(杉)が、町人のなりをして市井(しせい)に潜入するのがお定まりの筋書きなのだが、赤目はいつも遠山を胡乱(うろん)に思い彼をつけ回す。当然、主役といつも絡む立ち位置であるため、大変な儲け役である。


 筆者が印象に残っているシーンは、いつものように新八とともに遠山を詮議(せんぎ)する赤目だが、その回は特に厳しく彼を追い詰める。遠山も逃げ道に窮(きゅう)する。どうするのかなと思って観ていたら、遠山が突然、奉行の威厳を以(もっ)て逆ギレし、赤目らはビビって逃げていく(笑)。身分制度が骨の髄(ずい)まで行き渡っていた江戸時代だからこそ、宜(むべ)なるかなと感じ入ったシーンであった。



 そして岸部シローといえば、やはり毎週日曜夜8時に放映されていた大ヒット番組『西遊記(1978~79)』と『西遊記II(ツー)』(1979~80)の沙悟浄(さ ごじょう)役にトドメをさすだろう。
 『西遊記』は日本テレビ開局25周年の企画として製作費10億円で全26話が放送された。特撮部分は「ウルトラマンシリーズ(1966~)」の円谷プロが担当し、当時から話題になっていた。孫悟空(そん ごくう)が堺正章(さかい まさあき)、猪八戒(ちょ はっかい)が西田敏行(にしだ としゆき)、釈迦如来(しゃか にょらい)に高峰三枝子(たかみね みえこ)など配役も豪華だった。
 岸部が沙悟浄役の候補に上がったのは、背の高い人(彼は身長187センチある)を探していたからだという。また、『遠山の金さん』の赤目玄蕃と同じく沙悟浄も関西弁を用いるが、これはそのようにプロデューサー側からお願いしたという。
(元・円谷プロ所属で当時は東宝系列の製作会社・国際放映側のプロデューサーとして関わっていた熊谷健(くまがい けん)の発言。『時代劇マガジン Vol.15』辰巳出版㈱/2007年1月5日発行より)


 もともと『西遊記』の企画自体は、大物俳優・若山富三郎(わかやま とみさぶろう)が持ち込んだものであり、孫悟空は若山がやり、三蔵法師(さんぞう ほうし)は歌舞伎役者の坂東玉三郎(ばんどう たまさぶろう)、八戒は力士の高見山大五郎(たかみやま だいごろう/当時)、沙悟浄は名優の仲代達矢(なかだい たつや)がイメージされていた。
 玉三郎にオファーしたところ受けてくれなかったため、その時点で若山メインの企画は流れたのだが、熊谷プロデューサーはその「躓(つまず)きの石」を翻案(ほんあん)し、「悟空と三蔵がふたりとも男というのは面白くない。宝塚歌劇のような中性的な女性、たとえば相良直美(さがら なおみ=ホームドラマもこなしたスター歌手)のような人はどうだろうか?」と、発想の大転換を試みた。
 結果、当時まだ新人の夏目雅子(なつめ まさこ)が三蔵役に起用される。夏目のデビュー作である平日昼の帯ドラマ『愛が見えますか(日本テレビ系/1976年放送)』に熊谷プロデューサーが関わっていたという縁(えにし)からである。


 ここで筆者は、「若山富三郎が改めてTVの企画として『西遊記』を製作したときの配役はどうなるか?」を妄想する。
 悟空は若山、八戒は山本麟一、沙悟浄草野大悟、釈迦如来清川虹子あたりか(笑)。三蔵法師は女性に演らせるという発想がないだろうから、若山の子分で一番中性的な高岡健二が演ったかもしれない(笑)。
 妄想終了、すいません。


 沙悟浄の前世(ぜんせ)が、天上界(てんじょうかい)の高官・捲簾大将(けんれん たいしょう)であることは、スキモノなら当然ご存知であろう。
 岸部も口髭(くちひげ)に冠(かんむり)姿で、捲簾の名前通り、天帝(天上界で最高位の貴人)の御前に掛かっている御簾(みす)を恭(うやうや)しく上げて見せていた。
 しかし『西遊記』の原作に当たると、本当に御簾を上げ下げする役目ではなく、それくらい天帝(原作では玉帝)のお側(そば)近くにいるという近衛兵(このえへい)の総大将の意味であるというからややこしい(笑)。


 TVドラマである本作『西遊記』では、天上界に召還(しょうかん)された孫悟空(堺)が御簾越しにいる天帝の素顔が見たくなり、御簾を上げようとするが、控えていた岸部演じる捲簾に阻止され、一触即発となる。悟空が捲簾に「ケッ! スダレの番人か!」と悪口を浴びせる場面は名シーンだけに印象的で、タチが悪いのだが(笑)。


 また、沙悟浄といえば河童(かっぱ=日本各地の水辺に棲む妖怪)というイメージが確立しているが、これは『西遊記』を扱ってきた日本の児童書のミステイクであるという。『西遊記』の原作を紐解けば、沙悟浄の外見は「藍色(あいいろ)の顔色で、光る丸い目玉を持った妖怪」としか書かれていない。河童の特徴である「頭のお皿」や「背中の甲羅」「指の間の水掻(か)き」「尖った嘴(くちばし)」などは全く記載されていないのだ。


 河童の好物は胡瓜(きゅうり)とされているが、ドラマの中で沙悟浄がそれを食べたりする場面も特にない。ドラマの放送後のバラエティー番組や番宣番組で、岸部シロー沙悟浄に因んで、胡瓜で誘き寄せられるというような演出は多くなされているので、混同している人も多いと思われるが。
 因みに、胡瓜はインド西北部のヒマラヤ山脈山麓地帯が原産地である。紀元前10世紀ごろには西アジアに定着、中国には6世紀に伝播(でんぱ)した。同じ頃に日本にも中国から胡瓜は伝わったということである。


 では、沙悟浄の苦手なものとは何か? #8で鱗青魔王(りんせい まおう/演・中尾彬)の虜(とりこ)にされ、ある生き物を使っての拷問の際に判明する。それは蛇(へび)である。演じる岸部シロー自身も爬虫類がキライで、「君たち(爬虫類)は何で存在しているの? と思うくらいに苦手です。」と、CS「ファミリー劇場」での『西遊記』放映宣伝特番で語っている。


 私的なことだが、後年筆者はこの#8の「悟空危うし! 鱗青魔王の逆襲」のシナリオを入手した。後年に『西遊記』の裏番組であるNHK大河ドラマなどを手掛けるほどに大出世する脚本担当のジェームス三木(みき)の悪ノリがヒドく、沙悟浄拷問のシーンはかなりハードに描かれ、沙悟浄の口や鼻の穴にも蛇が出たり入ったりする描写がある。勿論(もちろん)映像化された作品にはそれほどのシーンはないのだが、撮影当時この同じ台本を見た岸部の心中いかばかりであったろうか(笑)。


 捲簾大将は天上界の宝を壊してしまったため、天帝の怒りに触れて、地上の流砂河(りゅうさが)に堕(お)とされ、河の邪気によって妖怪に変じる、というのが原作のあらまし。日本の児童書の多くは主体が孫悟空であるために、沙悟浄の天上界での前世云々(うんぬん)をほぼ端折って、イキナリ悟空が流砂河で沙悟浄に対面するシーンから記載されているので、「水から出て来た妖怪」ということで「河童」になったのではないかという意見が大勢を占めているらしい。
 何(いず)れにせよ河童に扮した岸部シローのビジュアルが、少なからずこの「沙悟浄=河童」のイメージをさらに助勢したことは論を待たないだろう。



 岸部演じる沙悟浄の名場面は多い。


 まずは#3で、河童として孫悟空と初めて対峙したシーン。普段、土地神(とちがみ)を顎(あご)で使っているように、沙悟浄をこの大河の水先案内人に便利使いしようと、彼の住み処(すみか)に押し掛ける孫悟空沙悟浄は半笑いで「この猿が。」と受け流し、一転「不法侵入やぞ!」と悟空を組伏せ、凄味を効かせる。珍しく悟空が「この勝負は天竺(てんじく=インド)の旅から帰るまでお預けだ。」と泣きを入れることで、沙悟浄はそのままその取経(しゅきょう)の旅に加わる。


 #13では、自分の頭のお皿をいつも磨いていることが高じて、鏡磨きの技術を持つ沙悟浄は、殺人光線を使うワル妖怪に対向するべく、光線を跳ね返すポータブルなトーチカ(防御陣地)を作成する。
 #19では、移動する「幻の湖」を追うバッタ女王(演・緑魔子(みどり まこ))を助けるため、沙悟浄は水脈を辿って井戸を掘削(くっさく)し、見事水源を確保する。
 #16では変身能力で敵を撹乱させ、三蔵一行の勝機に結びつけた。



 恋愛関係も、一番派手なのが沙悟浄である。
 孫悟空プラトニック・ラブ専門であるし、三蔵法師は邪念による愛欲に苦しみ、猪八戒は多淫だが後を引かない。


 沙悟浄は、#5でワル妖怪の聖嬰大王(せいえい だいおう)の恋女房・其美(きび/演・服部妙子)に岡惚れしたのを皮切りに、#22では幽鬼の一族の三女・美宝(びほう/演・島本須美)に骨抜きにされたり、『西遊記II』の#10では河童の国・沙陥国(さかんこく)の姫君・翠玉(すいぎょく/演・山口美也子)を大魚妖怪から救い出し、ナイトぶりを見せたりと幅広い。
 『~II』の#1では、沙悟浄は取経の旅の途中に天上界に舞い戻り、貴人の婢(はしため)の悠明(ゆうみん/演・児島美ゆき(こじま みゆき))にウィンクひとつでモーションをかけ、婚約・結婚・天上界でのマイホーム購入までをハイ・スピードで成してしまう(笑)。


 『西遊記』の最終回では、最強妖怪の鉄砂大王(てっさだいおう/演・南利明)が、地獄を支配している冥府太閤(めいふ たいこう/演・牧よし子)とタッグを組んで一行の前に立ち塞がる。じわじわと締まっていく鉄の輪を首にかけられた三蔵法師。三弟子が外すべく尽力するが、成す術(すべ)がない。
 窮余の一策として沙悟浄が発案したのは、鉄砂を唯一溶かすことができる仙水壺(せんすいつぼ)を所有する滴水娘々(てきすい にゃんにゃん/演・丘ゆり子)を召還することであった。滴水娘々は河童族の一派で、沙悟浄の許嫁(いいなずけ)の醜女であった。用が済むや挨拶もそこそこに帰らされる滴水娘々。沙悟浄の酷薄な側面が垣間見られる。


 沙悟浄は恋愛に関していったい硬派なのか遊び人なのか純情なのか判然としない。より多面的であるということは、悩みの多い我々衆生(しゅじょう)に一番近い存在であるということなのであろうか?



 沙悟浄の父親と称する河童妖怪が出てきて、彼の存在そのものが揺らいだエピソードもあった。#7の「日照り妖怪の子守唄」である。これも脚本はあの悪ノリ大好きなジェームス三木である。
 村人から生け贄(いけにえ)として、決まって男の子どもを供出させては喰い殺していた日照り妖怪(演・桑山正一)を捕らえた孫悟空だが、実はそれが沙悟浄の実父であることが判明する。日照り妖怪によると、沙悟浄は由緒正しい河童の生まれだという。幼い頃に人間に誘拐され、その後に天上界に昇って捲簾大将になったのだろうか? いわば、前世の前世が河童だというのだ。
 天帝の近衛の総大将にまで上り詰めた男が、天から堕とされたとき、邪気のある大河に引き寄せられるように墜落し、先祖返りするようにまた河童に変じたのだろうか?



 岸部シロー氏が亡くなって、まだ二十五日ほどしか経っていない。黄泉(よみ)の国には、まだ立ち入ってはいないだろう。これから三途(さんず)の川を渡り、極楽往生されるのだろうが、川端では呉々(くれぐれ)も濡れないようにお気をつけ頂きたい。


 岸部はあるバラエティー番組で、


「河童の役を演っていたのですが、水に濡れたりするのが嫌で嫌で……。オープニングテーマで、僕が水辺から飛び上がってくる映像を、まあ逆回しで流すために、その高い所から水の中に僕が後ろ向きで飛び込まなきゃならなかったのですが、それも嫌で……。」


と、延々とコボしていて可笑(おか)しかったので。



 本物の天竺に抱かれた岸部シロー氏のご冥福を心よりお祈り致します。たくさん楽しませて下さって本当にありがとうございました。


(了)
(初出・当該ブログ記事~オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86(2020年晩秋発行)所収予定)


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仮面ライダーゼロワン』最終回・総括 ~力作に昇華! ラスボス打倒後もつづく悪意の連鎖、人間とAIの和解の困難も描く!

(文・久保達也)
(2020年9月20日脱稿)

*「新時代」初の仮面ライダーは「昭和」と「平成」のイイとこ取り!?


 改元後初の仮面ライダーとして華々(はなばな)しくスタートしたものの、2020年に全世界を襲った新型コロナウィルスの影響で話数短縮の憂(う)き目にあった『仮面ライダーゼロワン』(19年)が当初の予定どおり2020年8月末をもって大団円を迎えた。


 第1話『オレが社長で仮面ライダー』から第16話『コレがZAIA(ザイア)の夜明け』に至るまでは、AI(エー・アイ)=人工知能を搭載したヒューマノイド型ロボット・ヒューマギアがありとあらゆる業種で人間とともに働く近未来を舞台に、元は売れないお笑い芸人だったが第1話でヒューマギア開発企業の社長に就任した、茶髪で一見軽薄な印象の強い主人公青年・飛電或人(ひでん・あると)=仮面ライダーゼロワン、対人工知能特務機関・A.I.M.S.(エイムズ)に所属する黒髪カーリーヘアの一見イケメンだが激アツキャラの不破諫(ふわ・いさむ)=仮面ライダーバルカン、黒髪ストレートロングでかなりスレンダーなクールビューティー・刃唯阿(やいば・ゆあ)=仮面ライダーバルキリーと、ヒューマギアを暴走・怪人化させて人類絶滅をたくらむ組織・滅亡迅雷.net(めつぼうじんらい・ネット)との戦いが描かれた。


 第17話『ワタシこそが社長で仮面ライダー』から第29話『オレたちの夢は壊(こわ)れない』に至っては、或人が社長を務める飛電インテリジェンスのライバル企業・ZAIAの社長であり、自身の指針としてやたらと「1000%(せん・パーセント)」を口にし、常にクリーム色のスーツに白のタートルネックを着用する、ホントは45歳だが自称「永遠の24歳」(爆)の天津垓(あまつ・がい)=仮面ライダーサウザーが滅亡迅雷.netに代わってレギュラー悪となり、飛電インテリジェンス買収(ばいしゅう)をたくらむ垓と或人が思考能力を補助する小型機械・ZAIAスペックを装着した各界の人間とヒューマギアのどちらが優れているかを競う「お仕事五番勝負」(笑)を繰りひろげた末に或人は垓に敗れてしまい(!)、社長の座を降りて飛電インテリジェンスを去るまでが描かれた。


 本稿では便宜上(べんぎじょう)、第1話から第16話を第1部「滅亡迅雷.net編」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200517/p1)、第17話から第29話を第2部「天津垓=仮面ライダーサウザー編」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200518/p1)と呼称する。
 第30話『やっぱりオレが社長で仮面ライダー』から第41話『ナンジ、隣人と手をとれ!』、つまり飛電インテリジェンスの新社長も兼任して全ヒューマギアの強制停止と一斉リコールを開始した垓が、12年前に犯罪心理や人類の愚(おろ)かな争いの歴史をラーニング――情報技術を用いて学習を行うこと――させたことで、その本体は人工衛星でもある「人工知能・アーク」が本格的に復活して人類を滅亡させようとしたり、セキュリティが万全のはずだったZAIAスペックがハッキングされて装着者の人間が暴走をはじめる第3部は、さしずめ「アーク編」と呼ぶべきところであろう。
 ラスボス・アークが滅んだあとにも平和が到来することなく闘争はつづき、自我と権利意識にめざめたヒューマギアたちも人間に団交やデモや暴動で要求をはじめる(!)第42話『ソコに悪意がある限り』から最終回(第45話)『ソレゾレの未来図』は「最終章」としておこう。


 『仮面ライダードライブ』(14年)・『仮面ライダーエグゼイド』(16年)・『仮面ライダービルド』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180513/p1)など、東映の大森敬仁(おおもり・たかひと)氏がチーフプロデューサーとして手がけてきた仮面ライダーでは主人公が戦う対象がシリーズ中に変化を遂(と)げていく傾向が強かったと思える。
 『ドライブ』では当初人工生命体・ロイミュードが敵であったが、中盤からは人間とロイミュードが融合して誕生するあらたな怪人が登場するようになり、最終展開ではかつてロイミュードを生みだした張本人であり、2号ライダー・詩島剛(しじま・ごう)=仮面ライダーマッハとその姉・詩島霧子(しじま・きりこ)の実の父・蛮野天十郎(ばんの・てんじゅうろう)=仮面ライダーゴルドドライブがラスボス的扱いで描かれ、それまで主人公・泊進ノ介(とまり・しんのすけ)=仮面ライダードライブと敵対してきたハズのロイミュードの幹部たちが共闘するまでに至った。
 『エグゼイド』ではコンピューターウィルスから生まれた怪人・バグスターに加勢していたゲーム会社の若社長・檀黎斗(だん・くろと)=仮面ライダーゲンムがシリーズ前半のレギュラー悪として描かれたが、中盤以降黎斗は正義側のライダーおよびネタキャラと化し(笑)、以降は新たに登場した黎斗の父・檀正宗(だん・まさむね)=仮面ライダークロノスがレギュラー悪となった。
 そして『ビルド』では謎の組織・ファウストと彼らが生みだした未確認生命体・スマッシュとの戦いを描いた第1章、日本が3つに分断された世界観でそれぞれの国家の仮面ライダーたちが代表戦を演じる第2章、それらすべての元凶である地球外生命体・エボルトがレギュラー悪となる最終章と、先述した傾向が最も顕著(けんちょ)に表れていた。


 もちろん大森P以外の作品でもインベスなる怪人たち→悪徳企業(笑)ユグドラシル・コーポレーション→異界・ヘルヘイムの森に生息するオーバーロードなる侵略者と、主人公が戦うべき相手が変化を遂(と)げていった『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)などの事例も存在するが、『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100809/p1)以降のいわゆる第2期「平成」仮面ライダーシリーズでめだつようになったこうした目先の変化は、「昭和」の仮面ライダーシリーズで描かれていた敵組織の幹部交替劇を彷彿(ほうふつ)とさせるようでもある。
 実際幹部交替にとどまらず、元祖『仮面ライダー』(71年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140407/p1)ではショッカー→ゲルショッカー、『仮面ライダーアマゾン』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20001008/p2)ではゲドン→ガランダー帝国、『仮面ライダーストロンガー』(75年)ではブラックサタン→デルザー軍団、『仮面ライダースーパー1(ワン)』(80年)ではドグマ→ジンドグマと、敵組織そのものが交替する事例がすでに多く見られてはいた。それらを近年のライダーシリーズが参考にしたとは思わないが、これはある意味では「昭和」以来の仮面ライダーの伝統・様式美の意図せざる隔世遺伝(かくせいいでん)かもしれない。


 そして「平成」仮面ライダーといえば敵が味方に、味方が敵にとキャラの立ち位置シャッフルを繰り返すことで人物相関図を激変させる、集英社週刊少年ジャンプ』連載作品で「昭和」の時代から行われてきた手法を導入した作劇こそ大きな魅力のひとつだが、先述したように主人公が戦うべき相手が変化する中で、『ドライブ』ではロイミュードの幹部だったチェイス=魔進(ましん)チェイサーが仮面ライダーチェイサーに、『エグゼイド』ではバグスターの幹部格・パラドが仮面ライダーパラドクスに、『ビルド』ではファウストの幹部・氷室幻徳(ひむろ・げんとく)=ナイトローグが仮面ライダーローグへと、近年のライダーでは敵キャラが完全に正義側へと転じる例が散見された。
 『仮面ライダージオウ』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190527/p1)をはさんで大森氏がチーフプロデューサーに返り咲いた『ゼロワン』もまた、先述したような作風を継承した印象が強かったが、もうひとつ加えるなら『ドライブ』の蛮野、『エグゼイド』の正宗、『ビルド』でヒロイン・石動美空(いするぎ・みそら)の父・石動惣一(いするぎ・そういち)の身体に憑依(ひょうい)していたエボルトと、仮面ライダーが最後に敵対する相手が「父性」を象徴するキャラだったことをも『ゼロワン』は継承していたのだ。


*「自由」のために共闘した或人&迅


「人とヒューマギアが笑える未来をつくる。それが仮面ライダーゼロワンだ!」
「人間からヒューマギアを解放して自由を与える。それがボク、仮面ライダー迅(ジン)だ!」


 第30話では或人と滅亡迅雷.netのひとり・迅(じん)=仮面ライダー迅がたがいの「夢」を語り、「お仕事五番勝負」で勝利して飛電インテリジェンスの社長となった垓がこの世のすべてのヒューマギアを廃棄処分にするのみならず、仮面ライダーゼロワンの変身システムや全ヒューマギアを管理している人工衛星ゼアに保管されていたバックアップデータをも消去しようとする中、迅は或人の頼みではなく「ボクの意志」で或人の秘書で黒髪ショートボブヘアのロリ少女型ヒューマギア・イズを助けだした。
 そしてイズに対し、今後はゼアの指令ではなく自分の「意志」で動くようにともに説得した或人と迅は、イズを破壊しに来た垓と新生A.I.M.S.を相手にダブルライダーとして華麗に共闘した!
 チェイス・パラド・幻徳らと同様に、迅もまた正義側の仮面ライダーへと転じたように描かれたが、迅の場合は敵組織である滅亡迅雷.netを離脱することなく、所属したままだったのが特異な点であったろう。


 つづく第31話『キミの夢に向かって飛べ!』では、第30話で或人と和解したかに見えた迅が、第5話『カレの情熱まんが道』にも登場した漫画家から或人が復元を依頼されたアシスタント型ヒューマギア・森筆ジーペンを、「人間の道具じゃない」と主張して連れ去ってしまう。


「おまえにはおまえの意志があるだろ?」


 迅の説得を理解不能とし、あくまでゼアの命令を求めようとするジーペンの姿は、元々「戦闘人形」として生みだされ、戦争の終結で手紙の代筆屋に勤めることとなったものの、今も生きていると信じるかつての上官の命令を求めつづける美少女を主人公とした、かの京都アニメーション製作の毎回泣かせるひきょうなアニメ(笑)『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190908/p1)を彷彿とさせるが、垓の命令でジーペンを破壊しに来た唯亜と部下の隊員たちの前で、或人は漫画家が語っていた「ジーペンを漫画家としてデビューさせたい」との「夢」をジーペンに伝える。
 ジーペンが「描いてみたいです」との「意志」を或人に示したことで、あくまでジーペンを破壊しようとする垓が変身した仮面ライダーサウザーと或人が変身した銀色のボディーである仮面ライダーゼロワンメタルクラスタホッパーの飛電製作所前での戦いに、迅は仮面ライダー迅バーニングファルコンとして乱入するが、それは或人が主張した「人もヒューマギアも夢を持つのは自由だ」に共感した迅が、


「おまえが云う夢ってヤツに、友達の未来をかけてみるのも悪くないかもしれない」


と心の変遷(へんせん)を遂げたゆえの行為だったのだ。

 
 全身真っ赤に染まったバーニングファルコンの炎と全身が銀のクリスタルに包まれたメタルクラスタホッパーが放った水色の光弾が渾然(こんぜん)一体となって仮面ライダーサウザーを倒すクライマックスでは、デカすぎるカタカナで表記された必殺技の名称が画面を覆(おお)い尽くしたためにスーツアクターの演技が見えづらくなるほどだった(汗)。
 だがこの演出は第30話の時点では正式には和解していなかった或人と迅が、ここに至って劇的に関係性が変化したことの象徴として機能しているかと思えるし、そこまで迅が心の変遷を遂げたのは、ヒューマギアに「自由」を与えると主張する迅同様に、或人もまたヒューマギアが夢を持つのを「自由」としたことに端を発するのでは? と解釈したくもなる。


 元祖『仮面ライダー』のオープニングナレーションで故・中江真司(なかえ・しんじ)氏の名調子により、


仮面ライダーは人間の自由のためにショッカーと戦うのだ!」


と語られていたように、決して「正義」や「平和」のためではなく、「自由」のために戦うとした或人と迅が共闘するに至ったのは、まさに仮面ライダーとして必然ではなかったか?


 そして迅ばかりではなく、『ゼロワン』第3部では「夢」「意志」をキーワードに主要キャラの人物相関図が絶え間なく激変する様相となり、最後の最後まで緊張感を持続させる展開となっていたのだ。


*「夢」を得て共闘に至った不破&亡


「立場が変わっても、夢に向かって飛ぶだけです」


 第29話のラストで或人は福添(ふくぞえ)副社長と黒ブチ眼鏡の腰ぎんちゃく・山下専務にそう云い残して飛電インテリジェンスを去っていった。第31話の冒頭ではイズがネット上で即座に設立した町工場みたいな、垓曰(いわ)く「吹けば飛ぶような会社」(爆)である飛電製作所の社長に就任した或人は、社訓をどうするか思案した末に横書きの毛筆で「夢に向かって飛べ」と記した。


 周知のとおり新型コロナウィルスの影響による製作スケジュールの変更で『ゼロワン』は新作の放映が第35話『ヒューマギアはドンナ夢を見るか?』をもって一時中断されたが、先述したようにこれまで敵対関係にあった或人と迅が第31話で完全なる共闘関係へと転じたのを皮切りに、


・第32話『ワタシのプライド! 夢のランウェイ』では、第2部の中盤以降で描かれてきたように、仮面ライダーへの変身用として垓によって不破の脳に埋めこまれたチップ内に、かつてZAIAで兵器開発を担当していた性別のないヒューマギアで滅亡迅雷.netのメンバー・亡(なき)の人工知能が内蔵されていたために、垓の意志のままにあやつられて苦悩していた不破と亡も共闘関係へと至り、
・第33話『夢がソンナに大事なのか?』では、第1部で滅亡迅雷.netが全滅したかに見えたことで出向先のA.I.M.S.から本来の勤務先であるZAIAへと戻り、第2部では上司の垓が野望を実現させるための「道具」として酷使(こくし)され、或人や不破にとっての敵キャラとして描かれるほどに立ち位置が激変していた唯阿が、不破との関係性を好転させた末に垓に辞表をたたきつけ(笑)、
・第34話『コレが滅(ほろび)の生きる道』&第35話では、第25話『ボクがヒューマギアを救う』で科学者型ヒューマギア・博士ボットが語っていたように、その個体のルーツが幼児教育用の父親型ヒューマギアだと或人に思い知らされた滅亡迅雷.netのリーダーで金髪にターバンを巻いた青年・滅=仮面ライダー滅(ホロビ)が、敵対関係はつづけながらも


「ヒューマギアの未来を変える男かもしれないな」


とつぶやいたほどに或人に対する印象をやや好転させる、


などの主要キャラの関係性の変化が、「夢」をキーワードにファッションモデル型ヒューマギア・デルモ、テニスコーチ型ヒューマギア・ラブチャン、農婦型ヒューマギア・ミドリらゲスト扱いで登場したヒューマギアとからめながら立てつづけに描かれ、それぞれのキャラをいっそう掘り下げていたのだ。


 第32話では垓にあやつられてデルモに銃を向けた仮面ライダーバルカンアサルトウルフ=不破を、迅は或人に「ボクを信じてくれ」と告げて連れだし、滅亡迅雷.netのアジトで不破の身体から亡を解放しようとする。
 不破の横顔をとらえた背景の壁に亡の影が映る描写が実に効果を高めていたが、亡が自身の「意志」「夢」を持つこの回のクライマックス直前に至るまで、亡の語りにサーーーッという70年代のまだ音質が悪かった時代のカセットテープの再生音につきまとっていたようなヒスノイズがかぶせられ、その姿もモノクロ映像で映しだされていた演出もまた然(しか)りだ。


「夢がなんなのかわからない。だから代わりにヒューマギアの夢をかなえたい。誰かデルモの夢をかなえてあげて」


 或人・イズ・デルモらにヒューマギアが「夢」を持つのは「自由」だと諭(さと)された亡は、


「わたしはヒューマギア。でも、道具じゃない!」


と主張するが、その瞬間モノクロ映像で表現されていた亡が一転してカラーに、その声もヒスノイズがなくなって鮮明に聞こえるようになる演出が実にあざやかだ!


「オレにも聞こえた! 亡の声が!」


 不破の中に亡が存在する事実は第2部終盤で小出しに明らかにされた。そのために垓にあやつられた不破は


「オレは道具じゃない!」


と苦悩・葛藤(かっとう)をつづけ、自身から亡を追い出そうと必死になるさまが描かれた。


 だが第29話であくまで「ZAIAをぶっつぶす!」との不破の主張に或人が


「その先にある不破さんの夢ってなんだ?」


と投げかけたのを機に、それまで「夢」なんて考えたこともなかったハズの不破が以降は「夢」について語るようになったのだ。


 たがいに「道具」であることを拒絶し、「夢」を持つに至った不破と亡が、


不破「オレたちは!」
亡「道具じゃない!」


と双方からサウザーに殴りかかるさまを交互にとらえたり、銃型の変身アイテム・ショットライザーを宙にかかげる不破の描写に同じポーズの亡の姿を一瞬挿入(そうにゅう)するアクション演出は、本編ドラマのクライマックスと絶妙に融合することで視聴者の感動を倍増させた!


 それにしても血色のない顔面蒼白(そうはく)で白いシャツにネクタイをして黒いロングコートをまとった一見少年のようなルックスであり、無感情で片言のような口調で話す亡に、あまりにもイメージがピッタリな本業がファッションモデルの中山咲月(なかやま・さつき)氏が起用されたのは『ゼロワン』にとって実に幸運ではなかったか?
 ちなみに1998年生まれの氏はアニメや変身ヒーロー作品を愛好しており、幼いころは『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1)のヒロイン・ガオホワイトではなく、ガオブルーになりたかったとか(笑)。


*強い「想い」で共闘関係へと戻った唯阿&不破


「おまえら、夢夢夢夢うるさい!」


 第33話の唯阿の叫びには、「夢」を万能視することに内心では疑念も持っている筆者としては正直共感してしまったが(爆)、ゲスト主役のテニス少年に「夢」を持つことの重要性を語り聞かせる或人・不破・ラブチャンに唯阿が怒り心頭に達したのは、不破、そして亡すらも「夢」を持ち、「道具」から脱したにもかかわらず、自身がいまだ垓の「道具」として生きていることへの葛藤からだった。
 第31話で垓の命令に背(そむ)いてジーペンを破壊しなかった唯阿に垓は机上のチェスをひっくり返して(笑)怒りまくった。このチェスも垓が社員は自身の野望を実現させるためのコマにすぎないと考えている証だろう。


「君の12年前の記憶、あれはすべてウソの記憶だ」(!!)


 『ゼロワン』序盤で語られた12年前のヒューマギア運用実験都市で起きた謎の爆発事故=「デイブレイク」で暴走したヒューマギアに中学生当時に同級生をすべて殺害されたがために、第1部で毎回「ヒューマギアをぶっつぶす!」と叫ぶに至らせた不破の動機となる過去が、実は不破にヒューマギアに対する憎悪(ぞうお)を抱かせるために垓が仕組んだ偽(いつわ)りの記憶だったと第33話で明かされる。


「あんたはテクノロジーで人の夢をもてあそんだ。わたしは、わたしはあんたを絶対に許さない!」


 自身が「道具」として酷使されること以上に、「テクノロジーは人に寄り添ってこそ意味がある」とする自身の技術者としての信念から垓を許せなくなったと唯阿は垓に主張するが、それはあくまで建前(たてまえ)であり、本音(ほんね)はこれまでの自身の行動の動機がすべてウソだったと明かされて茫然自失(ぼうぜんじしつ)となった不破に対し、「女」としての個人的感情が揺り動かされたためではあるまいか?(笑)
 近年の仮面ライダーではレギュラーキャラ同士の明確な恋愛関係が描かれることがめっきり少なくなっている印象が強い。まぁ「子供番組」だし毎回そればかりを行動原理にされても困るけど(爆)、終盤くらいはヒーローやヒロインが「公(おおやけ)」のためではなく「個」のために戦う姿を描くのも個人的にはアリかと思っている。


 唯阿に心の変遷が生じる契機となった不破の


「想いはテクノロジーを超えるんだよ!」


は、不器用な不破の口説き文句として機能しているようにも思えるのだが(笑)。


 自身に対してではなく、垓の不破に対する扱いを動機として垓に反乱を起こした唯阿と、今のオレには仮面ライダーという「夢」があるから記憶なんかどうでもいいと、実にあっけなく立ち直った(笑)不破が、第1部以来の共闘関係へと修復を見せる!
 久々に唯阿が変身したバルキリーは垓が変身したサウザーへの銃撃やサウザーの剣さばきを宙返りで逃れたり、キックから反転してしなやかなバック宙返りの果てに着地する描写などにワイヤーアクションが多用されている。これは唯阿が垓の「道具」から解放され、ようやく「自由」を得たことの象徴として機能しているかのようだ。
 ハチをモチーフにした黄色と青がめだつデザインの仮面ライダーバルキリーライトニングホーネットの主観で宙から俯瞰(ふかん)して地上のサウザーをとらえる描写もまた然りであり、青と水色を基調とした仮面ライダーランペイジバルカンに変身する不破のショットライザーから放たれた10種ものカラフルな動物たちのイメージがそこに描かれることで、唯阿と不破の関係性の好転が華々(はなばな)しく演出されていた。
 仮面ライダーバルキリースーツアクターは、『仮面ライダーウィザード』(12年)の仮面ライダーメイジや『仮面ライダー鎧武』の仮面ライダーマリカなど、その細身を活かして女性ライダーを演じてきた「女形(めがた)スーツアクター」の中堅・藤田慧(ふじた・さとし)。


 これとは対照的にラストで


「これがわたしの辞表だ!」


と、唯阿が垓の顔面にパンチをくらわす場面はデカい夕日を背景に両者がシルエットで描写される、1970年代の青春学園ドラマを彷彿とさせる演出だったが(笑)、唯阿が垓を殴る寸前に放り投げたショットライザーを不破がガッチリとキャッチする描写こそ、ふたりの関係性の好転を絶妙に表現した演出だ。
 それにしても垓へのグーパンチの映像に「これがわたしの」という文字がデカデカとL字型にタイプライターの荒々しい打鍵音(だけんおん)とともに表記される演出は、それが本作における仮面ライダーたちと同等の唯阿の「必殺技」であることを端的に示したものだろう(爆)。


*自身の「意志」に気づかせた或人に滅は……


 さて第34話では滅亡迅雷.netの完全復活をたくらむ滅が、第1部でごく短い時期に登場していたメンバーの雷(いかづち)=仮面ライダー雷(イカヅチ)のデータを或人から得るために人質としていたゲストヒューマギアのミドリを「人間に汚(けが)されたヒューマギアは廃棄する」と破壊したために、


「滅、おまえを倒すしかない」


と決意した或人と滅のガチンコ対決が描かれた。


 滅の出自が父親型ヒューマギアだと説得する或人に、滅は


「過去に興味はない」


と返した。これは「夢」があるから「過去」なんかどうでもいいと前向きな主張をした不破と対比させることで、「過去」に興味がないとする滅をむしろ後ろ向きなキャラとして描いたものだろう。私事で恐縮だが、筆者が自身の「過去」に興味がないのも滅と同じ理由だったりする(大爆)。


 そこに乱入した仮面ライダー迅バーニングファルコンが変身を解除された或人から雷のデータを奪い、


「ヒューマギアを解放するんじゃなかったのかよ!?」


と動揺する或人でこの回は幕となる。ここで迅の真意を明かさずに再度迅が裏切ったかのように見せてしまう作劇こそ、立ち位置シャッフル群像劇の極(きわ)みというものだろう。


 第35話冒頭の滅亡迅雷.netのアジト近くのダムでの戦いではゼロワン=或人の相手が迅へと移行するが、迅に向けたゼロワンのキックの前に滅が立ちはだかり、迅の盾(たて)となる。


「オレはなぜ今、動いた!?」


 前回いったんは滅を「倒すしかない」と決意した或人がこれを目にしたことで滅の中に「父親」としての記憶が眠るのを確信し、再度説得へと向かうさまは、レギュラー悪に対して正義側が常に話し合いに努めてきた「平成」仮面ライダーの立派な継承であり、「絶対悪」を描きにくい時代ならではの作劇であるだろう。
 その再度の説得にあたり、滅亡迅雷.net壊滅のために大軍を率(ひき)いた垓が変身した仮面ライダーサウザー仮面ライダー滅に向けたキックの前にゼロワン=或人が立ちはだかって盾となり、滅と同じ行動を示して体現する描写が実に効果を高めていた!
 人工知能・アークの意志ではなく、迅の父親であることを願う心を持っていると滅を諭した或人は、サウザーが差し向けた数体の巨大ロボット型兵士にゼロワンに変身して立ち向かい、踏みつぶされても全然平気(爆)なデタラメな強さを見せた。これまで周囲の人間に多大な影響を与え、心の変遷や関係性の変化を生じさせてきた或人のまさに無敵のパワーを端的に示した描写といえるだろう。


 なお、この第35話では不破の本当の過去=失われた記憶を取り戻すために唯阿によって遂に解放された亡が負傷した不破の病室に現れ、唯阿と不破にその真実を真顔で語り聞かせるが、


唯阿「驚いたな……何も、ない」
亡「ええ、フツーでつまらん人生です」(爆)


と、『ゼロワン』史上最大のギャグをかまし、緊張感が連続する第3部の絶好の潤滑油(じゅんかつゆ)となり得ていた。
 しかも亡はあいかわらずの無表情と感情のこもらない口調で


「不破のふとんが、フワッと吹っ飛んだ」


とやらかし、「ダブルじゃないか!?」と不破を狂喜させたが(笑)、「はっぴを着れば気分はハッピー!」「おいしいレタスがとれたっす!」なんて或人のギャグが不破の笑いのツボにハマる動機すらもが高いドラマ性をもって描かれることとなったのだ。


*或人の「夢」を主要キャラに共感させた新キャラ


 さて第35話ラストで雷が復活を果たしたことで滅亡迅雷.netが勢揃いし、遂にアークが起動して人類滅亡を高らかに宣言した。
 多数のトゲ状のギザギザに包まれた黒い球体として現れたアークは先述した『仮面ライダービルド』のエボルト同様にさまざまなキャラに憑依(ひょうい)して全身黒でアークの赤いコア部分がそのまま左目となったデザインの仮面ライダーアークゼロと化し、ゼロワンらを圧倒する。
 このアークゼロのスーツアクターは『仮面ライダーアギト』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)から前作『仮面ライダージオウ』に至るまでのほとんどの1号ライダーを演じつづけ、改元とともに『ゼロワン』でその座を縄田雄哉(なわた・ゆうや)氏に譲った高岩成二(たかいわ・せいじ)氏が務めている。
 アークは滅に憑依することが圧倒的に多いため、すでに仮面ライダー滅を演じてきた高岩氏がアークゼロを兼任するのがやはり理想的だろう。


 ただここで注目したいのは、人工知能の「負」の側面を象徴するアークと対照的な存在として、


「今のオレだからつくれるヒューマギアがあるんじゃないか?」


と考えた或人の依頼で科学者型ヒューマギア・博士ボットが製作した、人型ではなく手のひらサイズの安っぽい白い立方体の形をしただけの、人間との会話ができるグーグル・スピーカーみたいな人工知能・アイちゃん――「AI」のローマ字読み……あるとじゃぁ~~~ないとぉ~~~!(笑)――の登場であり、


・第36話『ワタシがアークで仮面ライダー』で不破、
・第37話『ソレはダレにも止められない』で唯阿、
・第38話『ボクは1000%キミの友だち』で垓


と、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)のゴーカイイエローを演じた市道真央(いちみち・まお)こと現在では人気声優でもあるM・A・O(まお)が声を当てているアイちゃんは、かつて人工知能やヒューマギアを敵視していたキャラたちの話相手となることで心の変遷を生じさせ、或人の「夢」である人間とヒューマギアが共存する未来・可能性を肯定(こうてい)させるに至ったことだ。


 垓に偽りの記憶を植えつけられたためにすでに家族は皆亡くなっていると思いこんでいた不破は亡によって家族の生存を知り、それを確かめに行くべきか散々迷った末にアイちゃんの助言で新興住宅街にある実家を訪れ、遠巻きに家族の様子を見つめる。
 ふとんを勝手に干したと母に文句をつける弟に、父は


「ふとんだけに、ふっとばすぞ!」


とオヤジギャグをかます。あまりにフツーな日常の中で繰りだされるそんなつまらないギャグこそが不破の笑いのツボの原点と示したうえで、


「つまらないほどフツーで、安心した」


と不破がつぶやく描写には、新型コロナウィルスの影響でフツーの日常がすべて失われた惨状の中、視聴者の心に重く響(ひび)いたのではあるまいか?


「あのAI、悪くないな」


 或人にそう語った不破がすぐさま唯阿に


「今のおまえに、必要なともだちだ」


と、アイちゃんを貸し与える描写がその関係性の好転ぶりを象徴させる。


 また第36話では第34話で迅が或人から雷のデータを奪った真意が明かされる。アークを破壊するには地上におびきだす必要があり、そのために亡と雷を解放して滅亡迅雷.netを復活させるのだと迅は唯阿に協力を求め、その結果として仮面ライダーの力なんぞ到底およばないほどの強敵としてアークを復活させてしまった罪悪感に唯阿はさいなまれていたのだ。
 そして第37話では垓の「道具」だった当時の自身の行為を不破に謝罪したいとする意志をアイちゃんに看破された唯阿は、


「申し訳なかった……、とアイちゃんが云えと云っていた」


と遂に口にする。このあまりに素直じゃないコぶりは個人的には実にカワイイと思えるところだ(笑)。


 ただZAIAの一員ではなくなった唯阿をいまだに「隊長」として慕(した)うA.I.M.S.隊員たちの姿を見て、


「見つかったんじゃねえか。おまえの居場所」


と不破が語ったのは、唯阿の想いが充分に伝わった証といえるだろう。


*飛電家の「夢」を実現させるために


 そして実に秀逸(しゅういつ)かと思えるのが、これまで人工知能に対して良い印象を持たなかった不破と唯阿の意識が好転する一方で、当の或人がアークのあまりの強敵ぶりに、人間を超えたAIの力を「こわい」として一時的に不信感を抱いてしまう、いわば変化球型の立ち位置シャッフルが描かれたことだ。
 そんな或人を奮起させるに至るのが第1部、特に序盤で或人を社長の座からひきずりおろそうと画策するさまが描かれた飛電インテリジェンスの福添副社長と山下専務であるほどに、『ゼロワン』では徹底して立ち位置シャッフルが繰り返されたのだ。


 第3クールで唯阿がライダーではなくファイティングジャッカルやA.I.M.S.隊員たちがバトルレイダーに変身するために用いていた、暴走したヒューマギアとの戦闘が可能となる変身ベルト・レイドライザーを一般市民向けに販売するためのデモンストレーション・やらせとして、第2部「サウザー編」でのZAIAによるヒューマギア不要論の象徴とその代替案でもあった片耳イヤホン・プラス・メガネ型の掛けた人間に人工知能と同等の思考能力を与える次世代インターフェイス・ZAIAスペックを一時的に暴走させることで装着者の一般市民も暴走させようとあまりにも非倫理的なことを命令する垓社長に、いくらなんでもと業を煮やした福添副社長と山下専務は、垓を失脚させて或人を飛電インテリジェンス社長に戻すべく零細新会社・飛電製作所を訪れる。


「飛電或人くん、キミがヒューマギアを信じないでどうするんだ!?」


 「夢に向かって飛べ」の社訓をはさんで向き合う或人と福添の描写は、或人の祖父・飛電是之助(ひでん・これのすけ)はヒューマギアの開発者、或人の父・飛電其雄(ひでん・それお)はヒューマギアであり、そんな飛電家の人々から自分は人工知能の未来、そしてヒューマギアの可能性を教わってきたとの福添の主張、そして12年前の「デイブレイク」で或人を守って亡くなった其雄の姿や


「私は信じている! ヒューマギアの可能性を!」


と語る是之助の回想とともに、或人が立ち直るに至る演出としては絶大な効果があったろう。


 「ありがとうございます!」と90度の角度で(!)頭を下げたほどに、福添の言葉は或人の心を大きく揺り動かすこととなった。福添を演じた児嶋一哉(こじま・かずや)氏はお笑いコンビ・アンジャッシュの活動で広く知られ、『ゼロワン』でもコメディリリーフ的に起用されてはいたが、個人的には氏の演技は今回のようなシリアスな場面でこそ、がぜん威力を発揮していたかと思える。


 むしろ「ZAIAにあいさつをしてこい」とアークに命じられた亡が地下駐車場で仮面ライダー亡(ナキ)に初変身を遂げ、その両腕の鋭く長いツメで衣服をバラバラに切り裂かれた垓がパンツ一丁になってしまう描写の方が、よほどコント的だったりする(爆)。
 なお全身銀の装甲に包まれた仮面ライダー亡は『電撃戦隊チェンジマン』(85年)のチェンジフェニックスから『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)のイエローバスターに至る戦隊ヒロインや、『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)のキャンデリラ、『烈車戦隊トッキュウジャー』(14年)のノア婦人などの悪の女幹部を多数演じた「女形スーツアクター」の大ベテラン・蜂須賀祐一(はちすか・ゆういち)氏が務めており、性別のない亡を演じるにはこれ以上の適役はないだろう!


「おれはおまえがこわい。だけど、逃げない!」


 残念ながら今回もゼロワンの力は仮面ライダーアークゼロにおよばなかったが、大地に倒れ伏した或人の主観からあおりでアークゼロをとらえたカットが、その圧倒的な力の差を端的に表現した演出といえる。


 ただ個人的にはこの回ではアークゼロよりも、揃い踏みした滅亡迅雷.netの4人が横並びでいっせいに変身を遂げる実にカッコいい描写の方に注目してしまった。それだけここに至るまでの彼らの背景に高いドラマ性が描かれてきたことが大きいのだ。


*見よ! 垓=サウザーの「大変身」!


 垓の解任動議のために福添は副社長の秘書だったヒューマギア・シエスタの復活を或人に依頼、シエスタは垓の汚職や悪事に関する膨大(ぼうだい)なデータをヒットさせるが――山下専務によれば垓は会社のカネをエステやヘアサロン、岩盤浴(がんばんよく)など自身の美容のために使いこんでいた(笑)――、垓は第38話でそれらをすべて消去してしまい、或人たちの前で文字通りに社長のイスにしがみついて離れない(爆)。


「なんでそこまでこだわるんだよ。本当は飛電のことが好きなんじゃないか?」


 垓は自身を解任させようとする福添らを社内に自身が設けた秘密通路でサウザーに変身して襲いかかる!――イズ曰く「変身による暴行は重大なパワハラ行為」ってそんなもんで済まねぇだろ(笑)―― メタルクラスタホッパーに変身した或人が彼らを守るが、そのはずみで或人の胸ポケットからアイちゃんが転がり落ちる。


 一同が去ってひとりになった垓にアイちゃんが話しかけたことで最初は


「友達など必要ない」


と拒絶していた垓の口から35年前、10歳当時の過去が語られる。


「甘えず頼らずおのれ自身の力で」


 少年のころの垓にそう云い聞かせた厳格な父はテストで100点をとった垓に100点で満足せず、「1000点」をとれる男になれと諭した。
 この当時に垓が「サウザー」と名づけて常に遊んでいたのが、飛電インテリジェンスがヒューマギア以前に開発した人工知能を持つ犬型ロボットだったが――劇中ではソニーが99年に発売した初代ロボット犬・AIBO(アイボ)がこれを演じる!――、垓がテストで99点をとった際、父はそんなもんにうつつをぬかしているからだと激怒、垓は「もう誰の助けもいらない」とサウザーを手放すこととなったのだ。


 ちなみに垓の父を演じた加藤厚成(かとう・こうせい)氏は『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)の防衛組織・ナイトレイダーの石堀隊員=正体は敵キャラ(笑)・ダークザギ、『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)で主人公のヒビノ・ミライの正体がウルトラマンメビウスと知って彼を恫喝(どうかつ・汗)するトップ屋・ヒルカワ、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネヴァー・エンディング・オデッセイ)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100312/p1)の策略(さくりゃく)宇宙人ペダン星人・ダイルなど、「平成」ウルトラマンシリーズでどうしようもない性悪(しょうわる)なキャラばかり演じてきたので、まさに垓の父には適任だった(爆)。
 先述した『仮面ライダーエグゼイド』の檀正宗&黎斗の親子関係を彷彿とするほどに、非人道的な経営方針で飛電インテリジェンスを私物化することとなった垓の出自でも描かれたように、大森敬仁チーフプロデューサーが一貫して敵キャラの中に「父性」を描いてきた理由が、後述するが『ゼロワン』の終盤で明らかにされたかと思えるのだ。


 ただ垓が変身ベルト・レイドライザーの大量生産を命じた際には反応しなかった人工衛星ゼアが、垓がアイちゃんに心情を吐露(とろ)するや垓が少年のころに遊んだのと同様の犬型ロボットの最新型を、社長室隣接の工房の3Dプリンターで構築し――これまたソニーの最新型AIBOなのだが、初代からは格段に進歩したルックスや細かい仕草が実に愛くるしい!――、それを抱きしめた垓が


「こんな私なのに、そばにいてくれて……」


と涙する(!)描写は先述した出自も含めてあまりにベタベタではあるけれど、(ひとり)ボッチの視聴者としては感情移入せずにはいられないだろう。


 迅に憑依したアークが仮面ライダーアークゼロとなってZAIAの宇宙開発センターを襲撃。或人は第1部以来かなり久々に黒地に蛍光(けいこう)イエローのゼロワンと同じ塗装のバイク・ライズホッパーを疾走(しっそう)させ、そのまま変身ベルト・ゼロワンドライバーにプログライズキーをセット、ライズホッパーの周囲を駆ける巨大な黄色いバッタが或人に合体して変身! その絶妙なタイミングで主題歌が流れだす!
 道路使用許可上の問題や予算などの理由で近年の仮面ライダーではバイク使用場面が激減しているが、むしろ「ここぞ!」という場面で限定して描かれるからこそ、そのインパクトが高くなるのではあるまいか? ライズホッパーとあわせるかたちで基本形態のライジングホッパーとなったゼロワンが、ウィリー走行でアークゼロに突撃するさまは最高にカッコいい!


 だがやはりアークゼロは強敵であり、変身が解除された或人をアークゼロの火球攻撃が襲うが、それを長剣ではじき返したのは……
 『ゼロワン』で数多く描かれた立ち位置シャッフルの中でも視聴者的には最も意外であったろう垓=サウザーの味方化は実に劇的に描かれたが、或人が看破していたように、サウザー=垓は或人とヒューマギアが許せなかったのは飛電インテリジェンスを愛していたからだと語ったのだ!


「アークを倒すぞ! 我々ふたりの手で!」


 垓の叫びを合図に、第39話『ソノ結論、予測不能』の冒頭で遂に或人と垓は共闘へと至り、立体駐車場でのメタルクラスタホッパー&サウザーVSアークゼロの場面で第38話のクライマックス同様に主題歌が流れる一方で――その直前に画面を斜め2分割にして両者の目が光るカットを挿入する演出が実にイイ!――、衛星ゼアに構築された犬型ロボットが変身時やバトルの最中にゼロワンとサウザーの周囲で喜びを表現して動きまくる異色の演出がある。
 第38話&第39話を担当した作野良輔監督は『仮面ライダービルド』の終盤(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181030/p1)でも監督として数本クレジットされていたが、ともに坂本浩一監督作品である『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190406/p1)や『ウルトラマンゼロ ザ クロニクル』(17年)の枠内で放映された短編『ウルトラファイトオーブ』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1)では助監督を務めていた。主人公がバイクを走らせたまま変身したり、バトル場面で主題歌を積極的に流したり、マスコットキャラをクライマックスで効果的に活かすなどの演出はまさに坂本監督の技法を継承しているようであり、氏の今後に期待したい。


*凶悪な敵を「ネタキャラ」として描いた責任として(?)


 先述したように敵キャラが主人公側の仮面ライダーへと転じるのは近年ではもはや恒例(こうれい)行事といっても過言ではない。
 ただ『仮面ライダーエグゼイド』の中盤以降に味方化した檀黎斗=仮面ライダーゲンムの場合、それまでの彼の行動で主要キャラが心身ともに傷つけられ、多くの犠牲が出たハズなのに、


「謝罪せねばならないことをした覚えはない」(大爆)


と黎斗はおもいっきり開き直り、そのネタキャラぶりに拍車がかかるばかりだった。
 個人的には黎斗はそれでいいと思っているが(笑)、やはり「子供番組」としてそれはどうなのか? なんて批判もあったのか、黎斗に比べると改心した垓に対する周囲の見方はかなり厳しいものとして描かれた。


 これまでの行為を謝罪すると頭を下げた垓にイズは最敬礼の角度は90度だと指摘。基本は人が良さそうな当の或人までもが


「謝って済む問題じゃない」(!)


として、垓がアークに人間の悪意をラーニングさせた件や不破と刃の人生を左右した責任を激しく追求した末に、或人は今後の行動で誠意を示せと垓を諭す。
 これに対して垓が「1000%」の誠意を示すと語ったほどに、長らく自身の動機となってきた指針がいまだに口をついて出てくるのは、自分を変えようと思ったらまずその「1000%」をやめれば? と或人が指摘するのも含めて実にリアルに描かれていた。


 また垓は不破と唯阿を飛電インテリジェンスに呼びつけてロボット犬のサウザーとともに土下座するが(!)、唯阿は垓が不破の人生を破壊した責任をなじり、不破は元々は内閣直属であったA.I.M.S.をZAIA配下から独立させるよう垓に要求する。
 不破も唯阿も自身に対してではなく、パートナーに対する謝罪を垓に要求するのがその関係性が好転した証であり、ここまできたら恋愛へと発展してもおかしくないように思える。周知のとおり話数が短縮されたことでそうしたくだりが割愛(かつあい)されたのだろうか?


*或人の「夢」の具現化=仮面ライダーゼロツー誕生!


「その結論は予測済みだ」


 常に相手の行動を先読みすることで連戦連勝する仮面ライダーアークゼロ攻略のために、或人はアークの予想を超えるための研究に没頭、その成果として第40話『オレとワタシの夢に向かって』では最終フォームとなる仮面ライダーゼロツーが誕生する!
 この回はかの京都アニメーション出世作となった学園SFアニメ『涼宮(すずみや)ハルヒの憂鬱(ゆううつ)』(第1期・06年 第2期・09年)の第2期で8週にも渡って作画は異なるものの同じストーリーを繰り返すことで当時おおいに物議を醸(かも)した――個人的にも正直「ふざけんな!」と思った(爆)――第12話~第19話『エンドレスエイト』編を彷彿させるように、或人がイズに施(ほどこ)した何十億(笑)もの予測シュミレーションのホンの一部=似たような映像がさも現実世界での出来事であるかのようにつづけて流された。
 それを明かさずに或人・不破・唯阿・垓がアークゼロの発砲で死亡したかのように見せてしまう詐欺(さぎ)的演出(笑)も絶品だったが、第15話『ソレゾレの終わり』・第24話『ワタシたちの番です』・第30話『やっぱりオレが社長で仮面ライダー』などでゼロワンの強化フォームや新たな武器の誕生、逆転勝利が或人とイズの関係性の深化の結晶として描かれてきたように、ゼロツーの誕生も例外ではなかったのだ。


 シミュレーションとはいえ死亡した或人にすがって「指示をください」と涙を流して傷ついてしまう健気なイズの描写は先述した第31話登場のヒューマギア・ジーペン以上に『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の主人公少女を彷彿とさせたが、その涙をイズのシミュレーション上の迅が「動力部の冷却水漏(も)れか?」(爆)と解釈してしまうのは、味方化したとはいえ迅にはまだ人間と同等の心が完全に宿ってはいないと端的に示しているかのようだ。


「もっとあなたの夢を追いかけていたい」(!)


 或人が「オレの集大成」として立案した「人と人工知能がひとつになる仮面ライダー」の企画書の中の「シンギュラリティ」の文字にイズの涙が落ちた瞬間、つまり今までになかった感情がイズに芽生(めば)えたことでその心に反応した衛星ゼアが起動し、イズの左耳のモジュールの中からゼロツープログライズキーが誕生する!


 「シンギュラリティ」=技術的特異点とは、人工知能自身が自己をフィードバックすることで改良・高度化した技術や知能が人類に代わって文明の進歩の主役となる時点のことを示す未来学の概念だ。
 実際人類に代わって主役となろうとする滅亡迅雷.netのメンバーがこの「シンギュラリティ」到達をめざすさまが描かれてきた。あくまで人類とともに歩むことを願うイズがそれを拒絶する涙を流したことで「人と人工知能がひとつになる仮面ライダー」=仮面ライダーゼロツーの変身アイテムが誕生する瞬間はあまりにドラマチックだ!


「じいちゃん、父さん、飛んでみせるよ」


 ゼロツープログライズキーを感慨深く見つめる或人とイズが笑顔で手を取り合い、その手の中に変身ベルト・ゼロツードライバーが誕生する描写で或人の企画書を背景にしているのもまた然りだ!


「これがオレの夢の証、人と人工知能がともに歩んでいく証だ!」


 その変身ではドライバーから赤い「02」の文字が浮かび、宙から俯瞰してとらえられた或人には衛星ゼアのイメージがかぶせられ、黄色と赤の2匹の巨大なバッタが或人を包みこむようにして合体する!


 近年の仮面ライダーの最終フォームといえばもうデコレーションのてんこ盛り(笑)というくらいに全身がゴテゴテと装飾されていたが、ゼロツーはゼロワンの両手を赤くして首下に赤いマフラー状のパーツを付けただけという、一見手抜きのようなデザインなのだ。
 これも話数短縮の影響もあったのかもしれないが、後述するとおり或人は終盤で闇落ちしてまた別の悪のライダーに変身することになるために、実質的にゼロツーが活躍するのがわずか数回でとどまってしまった。
 ただゼロツーがゼロワンとほぼ同じデザインで手袋が赤なのは、「昭和」の仮面ライダー1号と仮面ライダー2号(通称・新2号)を「新時代」に再現して我々古い世代を喜ばせようとしたのが最大の理由かと(爆)。


*或人&滅、ついに共闘! だが……


 第41話『ナンジ、隣人と手をとれ!』ではアークにハッキングされた衛星ゼアの攻撃で都市が無差別に破壊されるが、アークは滅亡迅雷.netのメンバーにはなんの指令も出さなかった。


雷「なぜアークは指示をしない!?」
亡「アークはひとりで人類を滅ぼす気では? わたしたちはなんのために存在するのですか?」
滅「アークはゼロツーの出現でプランを変更しただけだ。いずれ我らを導く」
迅「違う! アークを信じちゃダメだ!」


 同じ滅亡迅雷.netのメンバー間でもアークに対する想いがこれだけ違うのだ。これこそ「群像劇」として描かれる仮面ライダーの魅力を端的に象徴するものだろう!


迅「ボクたちは自由であるべきだ」
亡「自由の先に、何があるというんですか?」
迅「夢を持つんだよ。自分の意志で生きるんだ!」
滅「黙れ! アークの意志にさからうものは廃棄する!」


 アジト内で激しく対立した滅と迅は変身して戦うこととなる。両者がたがいに背を向けて変身する描写がふたりの間に埋まらない溝(みぞ)が存在することを実に的確に演出している!


「ボクを滅ぼすんだ……それはアークの意志なのか? 滅自身の意志なのか?」


 迅の問いに答えず、静かに去っていく仮面ライダー滅の背中には、すでに滅に芽生えつつあった迷いが語られていたかに見えた……


 人工知能が人類を滅亡させようとする緊急事態に垓が幹部たちを召集して開いた会議の席上にて垓は辞任を宣言し、次期社長として或人を指名する。


「今世界中の人たちが、かつて経験したことのない困難に直面しています。これを乗り越えるためには、人とヒューマギアが協力するしかない。もう一度信じてもらえませんか? ヒューマギアの心を!」


 第41話が放映された2020年8月2日当時、日本では新型コロナウィルス感染の第2波が到来し、特に首都圏で感染者が激増、盆休みを前に県外への移動自粛(じしゅく)が広く呼びかけられていただけに、この或人の主張は異様な説得力を帯びて視聴者に届いたことだろう。
 個人的には垓に対する「緊急事態を前に投げ出すのか!?」「無責任じゃないか!?」との福添副社長と山下専務の批判は、コロナの感染拡大がいっこうに終息しない中で体調不良を理由に辞任した安倍晋三(あべ・しんぞう)前首相にこそ向けるべきかと思えるのだが。


「いつか笑いあえる日が来ると確信しています!」


 新社長に就任した或人が人とヒューマギアの一致団結を呼びかける会見を各地で目にする滅・亡・迅・雷の姿は、アークに対する不信感から自身の存在を問い直し、心の変遷が生じるに至る心理描写として実に効果的に機能していた。


 医療・警察・消防などの崩壊した現場に、それまでにゲスト出演してきた土建屋型ヒューマギア・最強匠(たくみ)親方5人衆(笑)、医師型ヒューマギア・Dr.(ドクター)オミゴト、消防士型ヒューマギア・119之助(いちいちきゅうのすけ)らが集結するさまはまさにレジェンド仮面ライダー大集合に匹敵するほどのカタルシスが感じられたものだ。現実問題としてウィルス感染の心配がないAIを現場に投入する動きは「新しい生活様式」の一環として今後加速化するように思えるものがあり、人とヒューマギアが共存する未来はそう遠いものではないのかもしれない。


亡「わたしたちはなんのために存在するのですか?」
不破「おまえはもうわかっているハズだ」


 亡が不破のもとに、そして元々宇宙野郎雷電として衛星ゼアのメンテナンス要員を務めていた雷が弟の宇宙野郎昴(すばる)の前に現れるさまは、すでにふたりの心がアークから離れていたのを象徴する描写だ。
 これとあわせて幼児たちとお遊戯(ゆうぎ)をする保育士型ヒューマギアに弓矢を向けていた滅が、第35話で滅が迅を助けた動機を


「おまえが迅の父親になりたかったからだ!」


と看破した或人を回想したことで弓矢を降ろす描写が、滅もまた亡や雷と同じ心境に達していることを端的に表していたのだ。


迅「なぜボクを助けたの? それが滅自身の意志だったんじゃない?」
滅「違う! オレは……」


 再度迅にそれを問われた滅が迅と視線を合わせられない描写は、もう視聴者の感情移入を一気にかっさらう(笑)演出だった。そこにようやくアークが現れ、あらたな結論として用済みとなったヒューマギアをすべて滅ぼすのが私の意志だと告げる!
 アークに憑依されて迅を襲う滅に或人が呼びかけたことで、これまでの回想をフラッシュバックさせた滅は


「オレの、意志?」


と、アークが憑依する際に描かれる「滅」「亡」「迅」「雷」の赤い文字状の泡に包まれる中で、仮面ライダーアークゼロに鉄拳をくらわす!


「ヒューマギアこそこの星の主。それがオレの意志だ!」


 人工知能・アークに憑依されてアークゼロと化した迅を助けるため、廃工場内で或人と滅がダブル変身!
 「昭和」の時代から仮面ライダーの変身カットでは変身者をアップでとらえることが長くつづいたが、近年ではたとえば『仮面ライダービルド』ではプラモデルのランナー状の物体から切り離された数々のパーツが装着されたり、『仮面ライダージオウ』では背景に巨大な時計の文字盤が描かれるなど、さまざまな特殊効果を加えるためにロング(ひき)でとらえることが主流となりつつあるようだ。


 今回の該当(がいとう)場面では或人に黄色と赤の巨大なバッタ、滅には黒の巨大なサソリが合体するためになおさらそうなのだが、今回のようにキャラの大きな関係性の変化が生じる回の場合、そのドラマ性を高めるためにも変身カットやバトル場面は極力派手に演出するべきだろう。
 或人が変身した仮面ライダーゼロツーの必殺技「ゼロツービッグバン!」は、画面右手からゼロツーがアークゼロにかましたキックの勢いが画面左手へとアークゼロを押しつづけるさまが、カメラを横移動しながらスローで表現されており、それこそ「ゼロツーインパクト!」が絶大な演出だった。


 これと並行して


昴「今だ、にいさん!」
雷「あばよ、アーク!」


と、宇宙兄弟がアークに支配された衛星ゼアを破壊したことでアークは滅び、滅亡迅雷.netも完全に味方化したかのように描かれた。


「おまえのおかげでオレにも夢ができた」


 滅は或人に謝意を示すも、その夢が「人類滅亡」と語るのだ……


*和平ムードが一転! 全面戦争へとドロ沼化!?


 終盤を迎えて主人公側と敵側が和解する雰囲気が漂(ただよ)い、ラスボス的存在すらも早くも退場したものの、


・第42話『ソコに悪意がある限り』では、滅に人類への攻撃をやめるよう単身で説得しようとしたイズを滅が破壊(殺害!)したことで、或人の滅に対する復讐心=「悪意」がアークを復活させ――人工知能・アークそのものの声は聞こえてこないので残留思念・残存データのようなものか?――、アークに憑依された或人が白と黒を基調とするデザインの仮面ライダーアークワンと化し、
・第43話『ソレが心』では「イズの仇(かたき)」とアークワンが放った攻撃から滅をかばった迅が死亡(!)し、
・第44話『オマエを止められるのはただひとり』では迅=息子を殺すに至った或人=人間は敵だとして、滅がヒューマギアたちに「聖戦」を呼びかけ、各地で反乱や暴動が巻き起こる!


といった具合に「悪意」の連鎖が描かれ、主人公と敵側のリーダーがともに最も大事な存在を失ったことで、これまで丹念に積み重ねられてきたものが一気にガラガラと崩れ去るかのような、かなりショッキングな展開となった。


 個人的にはこの最終展開はおおいに楽しませてもらったが、その一方でやはり話数短縮の影響が色濃く出てしまったとの印象を強くしている。
 第1部と第2部ではメイン監督だった杉原輝昭監督が第3部以降ではわずかに第44話(最終回1本前)と最終回のみの登板となり、やはり監督のローテーションにも強く影響したのだろう。


 当初1年間の放映を予定していた『ウルトラマンネクサス』は「平成」仮面ライダーが10%前後の視聴率を稼いでいた当時に2~3%台を低迷し、防衛組織のメカや基地の玩具も全然売れないほど商業的に大コケしたため、放映を全37話に短縮して打ち切られることとなった。
 主人公・春野ムサシ=ウルトラマンコスモスを演じた杉浦太陽氏がそれ以前に起こしたとされた事件で誤認逮捕されたために放映を5週休止した『ウルトラマンコスモス』(01年)の場合は完全な一話完結形式だったために、当初予定された2002年9月末までにキッチリ終わらせるためには5話分のエピソードを未放映とすることで済んだのだ――それがまったく影響がなかったほどに、縦糸となる要素が皆無に近かったということだ(笑)――。
 だが「平成」仮面ライダーと同じく連続ものとしての要素が強かった『ネクサス』はそんなワケにもいかず、おまけに打ち切りが決定した時点で大半の撮影がすでに終了していたため(汗)、前後編として製作した回を1話分に編集するなどして話数を短縮する措置(そち)がとられた。最終回に至っては本来は3話分となる内容を強引に1話にまとめたようだ(爆)。


 『ゼロワン』は新作の放映を休止した時点でどこまで製作が先行していたかは不明だが、おそらくは休止中に『ネクサス』と同様の処理がなされたことが推測される。なんせ6話分も短縮されたのだから――第35.5話『ナニが滅亡迅雷を創ったのか?』は新作として扱われているが、どうひいき目に見ても滅亡迅雷.net名場面集=「総集編」だろ!(笑)――、『ネクサス』の最終回みたく3話分を1話にとまではいかなくとも、必要最小限なセリフ・描写・バトルなどを厳選して再構成することとなっただろう。
 ゆえに「遊び」や「余韻(よいん)」の部分、たとえばギャグ演出とか恋愛要素、ほかにも本筋にはさして影響はないとされたものが脚本やすでに撮影された分から削(そ)ぎ落とされたことで、「子供番組」としてはいささかハードな要素ばかりが残る結果となったのかもしれない。
 『ネクサス』の場合、放映では割愛(かつあい)された部分が映像ソフトではディレクターズカット版として本来のかたちで再編集したエピソードが収録されているだけに、『ゼロワン』の映像ソフトではそれらがどのように扱われるのか、気になるところだ。


 それにしても第42話のイズ、そして第43話の迅の最期(さいご)はともに廃工場内で大量に火薬を使い、駆け寄る或人、そして滅の動きがスローモーションで描かれるインパクトが絶大な演出だった。


「滅も、いつか笑えますよね?」


 吹き上がった炎からイズの衣装の緑色のリボンが床に落ち、夕日が差しこむ工場内で、寄ろうとする唯阿を不破が制止したほどに、それをじっと見つめてたたずむ或人。


「たったひとりの、おとうさんだから」


 廃工場に仮面ライダー迅バーニングファルコンの赤い羽根が多数舞い散る中で、ひざまづいて涙を流す滅。
 実にドラマチックにすぎる演出だけに、やはり幼児にはトラウマとなったのでは?(汗)


*或人の「夢」を守るために!


 「総集編」(笑)の第35.5話で先行登場したが、第42話から最終回に至るまで、人工知能・アークの秘書でイズに酷似(こくじ)したルックスのアズ(爆)がレギュラーキャラとなる。
 ショートボブのイズと違ってアズはロングヘアだが――第1話から毎回のオープニング主題歌の映像中でこのロングヘアのアズは伏線的に登場していた――、これはイズと二役で演じる鶴嶋乃愛(つるしま・のあ)の地毛であり、イズの髪型の方がウィッグ(かつら)なのだそうだ。


「せっかくあなた好みの色に変えたのに~」


 可憐(かれん)なイズとは正反対の愉快犯的なアズのキャラは、そのイベントコンパニオンみたいな衣装も含めて往年の『仮面ライダー555(ファイズ)』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031108/p1)の悪徳企業(笑)・スマートブレイン社のマスコット・スマートレディを彷彿とさせる。


「人間に悪意がある限り、またアークが生まれる」


 第41話のラストでそう語った滅は、呼びかけに応じたヒューマギアの軍勢を率いて都内各地を急襲する。


「やめろ、戦うな! このままじゃ滅がアークになる!」


 「悪意」はむしろ滅の方だと看破していた迅が戦闘中のバルカン=不破とバルキリー=唯阿を説得するが、彼ら、そして滅の眼前に仮面ライダーアークワンが宙から光臨することで、滅以外にアークとなり得る謎の存在が示される!
 ここまでは大半のマニア視聴者には想定内だったかもしれないが、正義のヒーローであるはずの或人自身がアークを復活させてラスボス級キャラクターになったほどに、人間の「悪意」や大切な人を殺された「怒り」や「恨み」は正当なものだが危険なものでもあると自身でそれを意図せずとも証明するに至る展開自体は想定外だったかと思える。


 ただ第43話では或人も滅も「悪意」を全開にした一見凶暴なキャラに変貌(へんぼう)しながらも、それでも最低限の「心」があることを示す多面的な演出がなされているのだ。
 イズを殺した滅への復讐のために仮面ライダーアークワンがアジトへと向かうトンネル内で、アークを或人からひきずり出そうとした不破・唯阿・垓が変身して挑むが、アークワンは彼らの攻撃をよけるばかりでいっさい反撃せず、垓の変身ベルト・サウザードライバーと不破&唯阿の脳内の変身用チップを破壊する。
 これは「仲間」である彼らの仮面ライダーへの変身能力を奪うことこそ、彼らと戦わずに済む最善策と考えた或人の「心」を表したものだ。


「オレに心など存在しない! オレの中にあるのはヒューマギアの安息を守る正義だけだ!」


 そう主張して或人との決戦に向かおうとする滅の右手が震(ふる)えていたのを迅は見逃さなかったが、迅が最期を迎える直前、滅をとめる決意をした際に手が震えるさまを係り結び的に描写することで、滅も迅同様に「心」が存在すると示した演出が実に秀逸だ!


 さらに第44話では或人と滅の対立を発端として各地でヒューマギアの暴動が勃発(ぼっぱつ)、それを武力で制圧せんとする人間との全面戦争に発展しかねない危機的状況の中、これまで或人が蒔(ま)いてきた種(たね)が収穫のときを迎えたかのように、変身能力を失った不破・唯阿・垓のみならず、或人の「夢」を守ろうとするすべてのキャラが実にカッコよく描かれた!


 垓がA.I.M.S.を一企業にすぎないZAIAから政府の管轄(かんかつ)へと戻したことで、唯阿はヒューマギアへの武力行使を実行しようとしたA.I.M.S.隊員たちを「撃つな!」と制止する権限を得られた。


「我々の正義とはなんだ!?」


 この唯阿のセリフで、ヒューマギア鎮圧という作戦自体に苦悩していた隊員たちも銃器をバラバラと地面に放棄していく描写がそのカッコよさを助長する!


「みんな話を聞いてくれ!」


 或人社長を出せ! と飛電インテリジェンスのロビーに押し寄せた大勢のヒューマギアに、福添副社長は誠心誠意をこめて


「人間を信じてくれ!!」


と土下座するや、その姿を見た秘書のシエスタも感じ入ってシンギュラリティを起こしたのか、ともに土下座する! 加えて山下専務も土下座する!!(感涙)


「人間は心を教えてくれた! おまえをかばった迅の心もな!」


 元宇宙飛行士のわりには茶髪の巻き舌口調でヤンキーキャラ(笑)だが、「自分を見失うな!」と雷は滅をそう一喝(いっかつ)する!


「ヒューマギアの夢をこわす気か!? あなたを信じる、人類を信じる、ヒューマギアの心を裏切るのか!?」


 あくまで滅にイズを殺された復讐を果たそうとする或人に亡はそう投げかけ、歩道橋上から眼下にいた不破に


「飛電或人をとめろ!」


とゼツメライズキーを投げ渡す!


「おまえの意志、たしかに受け取った!」


 不破と亡がダブル変身して共闘する絵は最後まで描かれなかったが、この「意志」のバトンタッチとでも呼ぶべきあまりにカッコいい描写こそ立派な共闘であり、ふたりの関係性が頂点に達した結晶なのだ!


「オレにこじあけられないものは、何ひとつねぇ!」


 その前段として不破が語っていた「社長の心はオレがこじあける」と係り結びとなっている叫びだが、本来はドライバーに装着してから解除するよう開発されたプログライズキーを不破が毎回「うぉぉぉ~~~っ!」と強引にこじ開けてきたのは、この回のクライマックスを盛りあげるために逆算して描かれてきたのかと思えるほどだ!


「滅をぶっつぶしてその先に何がある!? その先にあるおまえの夢はなんだ!?」


 バルカンの青と亡の銀を基調としたデザインの仮面ライダーオルトロスバルカンは本来ヒューマギアの変身を想定して開発されたために不破には大きな負担となり、アークワンを倒すには至らなかったが、第25話『ボクがヒューマギアを救う』でZAIAをぶっつぶすと主張した不破に或人が投げかけた、


「その先にある不破さんの夢ってなんだ!?」


を、今回はそのまま不破が或人に返すこととなったのだ。
 第25話のその或人の投げかけこそ、或人と不破の関係性が変化する発端(ほったん)となったものだが、そのように或人によって変えられたキャラたちが、当の或人が暴走する中で或人の「夢」を守るために奮起するさまがたたみかけられる演出には、たとえこのまま或人が元に戻らなかったとしても、彼らが立派にその「夢」を実現させてくれるだろうと思えるほどに、視聴者を感動の渦(うず)へと巻きこんだのではあるまいか!?


*或人、滅、そしてスタッフの真意とは?


 最終回はビルの屋上、そして立体駐車場で展開された或人と滅のラストバトルの描写が大半であり、主題歌が流れるエンディングタイトルで主要キャラたちのその後を端的に見せる構成となっていた。
 或人が滅との決闘を選んだのは自身の「復讐心」からの暴走をとめられるのは滅だけだと考えたこと、そして滅に命をかけて「心」を教えようとしたためであり、滅は時折自身の行動を邪魔する「心」に恐怖を感じ、そんなものを自身に与えた人間が憎かったのだと、両者の真意が明かされた。


 たとえば人間とヒューマギアの「悪意」が集結して巨大な怪物となり、人間側とヒューマギア側の仮面ライダーたちが共闘してそれを倒すことでともに笑いあえる未来が開かれる……なんて見せ方の方が子供たちには伝わりやすかったかと思える。そういうのは当初2020年7月23日公開の予定が同年12月18日公開に延期された映画『劇場版 仮面ライダーゼロワン』(20年・東映)に期待するべきなのだろうか?
 ちなみに公式ホームページではいまだに詳細がアップされてはいないのだが、これはテレビシリーズ放映中の出来事として製作した内容をテレビシリーズのその後の物語として改変している最中のためかと思われる。
 本来同時上映の予定だった映画『魔進(ましん)戦隊キラメイジャー THE MOVIE(ザ・ムービー)』(21年・東映)を2021年新春に延期し、それぞれ単独公開としたことで新規撮影分を加えて尺を長くしている可能性も高いだろう。


 或人と滅が「悪意」を乗り越えたとき、イズの形見である緑のリボンが青空に舞う描写は実に象徴的だったが、バックアップデータがないために復元ではなく、再現されたイズに或人がギャグをかます際の決めポーズ、「アルトじゃぁぁぁ~~~ないとぉぉぉ~~~!」を手取り足取りでラーニングする実に微笑(ほほえ)ましい描写でテレビシリーズは幕となった。
 この新生イズと或人の関係性の進展具合もまた、劇場版には期待したいところだ。


 最後になるが、或人を守って命を落とした父代わりのヒューマノイド・其雄、元々は幼児教育用ヒューマギアとして開発されたためか迅に対する態度が支配から父性愛のように変じていった滅、人間なのに「1000%」を息子にたたきこんでいた垓の父、『ゼロワン』では三者三様の父親像が対比的に描かれていた。子供を守るのも良い方向に導くのも決して仮面ライダーではなく親や社会の役目なのだと、スタッフたちは『仮面ライダー』を通して訴えていた一面もあったのかもしれない。

2020.9.20.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年秋分号』(20年9月22日発行予定分)所収『仮面ライダーゼロワン』総括合評より抜粋)


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菅田将暉・2020年夏トーク番組3本まとめ ~相手・番組・視聴者層に合わせた当意即妙な切返し術&人間力!

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菅田将暉・2020年夏トーク番組3本まとめ ~相手・番組・視聴者層に合わせた当意即妙な切返し術&人間力

(文・田中雪麻呂)
(2020年8月29日脱稿)

2020年夏の菅田将暉トーク番組への、ゲスト出演まとめ。


 菅田将暉(すだ まさき)、27歳。言うまでもなく当節売れっ子のイケメン俳優で、現在のエンタメ・シーンを牽引(けんいん)しているひとりである。
 菅田は見目麗(うるわ)しいだけでなく、如才ない言動や振る舞いで敵を作らないことにも長(た)けている。


 もう菅田がデビューして10年くらいになると思うが、彼はずっと主演級で売れ続けている。年に何本も封切られる映画の宣伝のため、TVのバラエティー番組のお座敷も多い。共演者とのロマンスもわりと数があるスターだが、不思議と妬(ねた)まれることもない。


 今回は今夏放送した菅田将暉トーク番組を幾つか検証し、彼の「他者に好まれる」技術を解き明かすべくモニター前に陣取った。


サワコの朝(TBS系/2020年8月15日放送)』


 著述家で最近は女優としての顔もある阿川佐和子(あがわ さわこ)が司会を務める。土曜日の早朝の爽やかなトーク番組。


 司会の阿川と菅田は何と初対面だそうだ。阿川の


「あちらこちらで飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍してらっしゃる。」


という、慇懃無礼(いんぎんぶれい)な紹介で、対談はスタート。


 阿川がカマした「あちらこちら」とは、俳優業だけでなく歌手や服飾の才能も開花している菅田に対する一種のイジりだ。


 菅田はそれを満面の笑顔だけで受け流す。


 続けて阿川は、菅田のデビュー作が「仮面ライダーシリーズ」であることについて畳み掛ける。菅田が16歳で主演した作品は『仮面ライダーW(ダブル)(2009年)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100809/p1)だ。やはりイケメン俳優・桐山漣(きりやま れん、当時24歳)とふたりでひとりの仮面ライダーに変身するキャラクターを演じた。


 菅田は当時、まだ自身が芝居が未経験である上に、歴史ある「仮面ライダー」の主演をすることに強い不安を感じた、と述懐する。


 続けて菅田は、


「(桐山)漣君が、僕より8歳上なんですよ。じゃあ僕の8歳下を考えたらもう8歳で、それは視聴者のお子さんの年齢じゃないですか。」


と笑わせる。


 筆者も一瞬ニヤリとさせられたが、16歳の身空(みそら)からすればはるか年上の24歳と共演することになった当時新人の菅田の状況が、如何(いか)に異常で重圧的なものであったかがすぐに伝わり、複雑な心境になる。


 ちなみに、菅田のいちばん下の弟は、彼が上京した時にはやはり8歳であったそうで、何か「数の奇縁」のようなものを感じさせる。


仮面ライダーは一年間、同じ役柄をしっかり演じることができる環境を与えて呉(く)れ、仮面ライダーの映画の舞台挨拶での巡業で、一遍に何千人ものちびっ子が声援してくれて、ヒーローを演じる心積もりもできました。」


と、菅田は綺麗にまとめてみせた。


 仮面ライダーに関するトークは5分近くにも及んだ。30分番組、実質25分の内の5分である。これは菅田をあまり知らない層に向けてのものであるとおぼしい。土曜日の早朝という時間帯にもこれは正しい措置だと思う。


 菅田の所属事務所の直属の先輩として、眉目秀麗(びもくしゅうれい)な俳優・中村倫也(なかむら ともや)が「菅田将暉に物申す」という触れ込みでVTR出演。もう初手(しょて)から中村はボケをする顔で出てくる(笑)。


「菅田に音楽を教えたのは僕なんですね。10年ぐらい前に僕がギターを爪弾いて菅田が歌ったりしたみたいなことが、彼を音楽に目覚めさせたのかな、と。それをTVで全然言わないのはどうなのかと。以後はこのエピソードをどんどん言ってもらうと僕は幸せに思います。」


と、往年の陣内孝則(じんない たかのり)もかくや、というくらいに先輩風を吹かせまくる中村(笑)。


 スタジオの菅田は、


「いや、懐かしい話ですけど……。」


とずっと苦笑いである。


 一見ムダな時間なようだが(笑)、菅田が如何に周りに愛されているかの確認作業である。


 後半は、米津玄師(よねづ けんし、29歳)、あいみょん(25歳)、松坂桃李(まつざか とおり、31歳)、石崎ひゅーい(36歳)ら、同年代のアーティストとの関わりについて菅田が語る。


「一番刺激を受けるのは同世代で頑張ってるやつですね。自分と同じ時間を使っているはずなんで。だからもし(彼らに)負けたとしたら、時間の使い方に負けたということなんですね。」


などと哲学的なことを菅田はさらりと語る。


 彼らについての呼称も、米津とあいみょんは呼び捨て、松坂と石崎はそれぞれ君づけと絶妙。特に石崎には


「自分から近づいた。僕の恩師です。」


と敢(あ)えてリスペクトしてみせた。


 やはり、業師(わざし)の菅田である。嫌味な姑(しゅうとめ)然とした阿川を向こうに回して100点満点のパフォーマンスである。


 ただ今回、菅田が唯一答えに窮していたのが、阿川が番組開始早々に発した


「痩(や)せてらっしゃいますか?」


の一言であった。初対面であるのにもかかわらずである。


 トーク術の武芸百般に秀でた菅田将暉も、年配の女性インタビュアーによくある、何の悪意もないが自分目線だけの天然(てんねん)発言までは回避することはできなかったのである(笑)。


『A-Studio+(TBS系/2020年8月21日放送)』


 もう10年以上も続いている(奇しくも菅田将暉のキャリアと同じ年数である)、笑福亭鶴瓶(しょうふくてい つるべ)のトーク番組。


 ジャニーズのアイドルKis-My-Ft2(キスマイフットツー)の一員、藤ヶ谷太輔(ふじがや たいすけ、33歳)が、鶴瓶とダブル司会を担当。この番組はMC自身がゲストゆかりの人に直接取材をしてスタジオ収録に臨むのが特色だが、鶴瓶とは別のルートで藤ヶ谷も取材に赴く。


 菅田将暉に対しての藤ヶ谷太輔は、立ち位置が微妙だと思う。16歳から現在までずっと第一線で活躍してきた菅田に比べて年上なのに、藤ヶ谷はグループでのデビューがなかなか決まらず、本格的な芸能活動期間は10年に満たない(ちなみに藤ヶ谷のジャニーズ入所は11歳である!)。


 藤ヶ谷から見ればかなり年下の菅田ではあるが、実質の芸歴もその内容も自分たちは菅田に及ぶべくもない。菅田の取材をして盛り上げ役をしなければならないという役柄がそもそも、現在の彼らの位置関係を雄弁に物語っている。


 呼び込まれて菅田将暉がスタジオに登場。全方位に頭を下げながら、緊張の面持ちで自分の席まで歩んでくる。


「菅田の(映画)作品をぎょーさん(沢山)観返したよ。俺は『セトウツミ(2016)』が好きで……。」


鶴瓶が切り出す。


 『セトウツミ』は地味な映画なので、虚を突かれ笑い出す菅田。笑いが大きすぎて、菅田は肘(ひじ)で脇に置かれていた飲み物のグラスを動かし、こぼしてしまう。


 すぐにすくっと立ち上がり、


「すいません、ホント。」


と真顔で恐縮する菅田。バッドなアクシデントであるのに、菅田に品があるので、番組序盤の良いアクセントになるのがニクい。


 菅田の映画の話の流れで、鶴瓶が何気なく


「映画とか出えへんの?」


と藤ヶ谷に振る。


「そんなに、ウチら(Kis-My-Ft2)は(映画の仕事は)ないかもしれないです。」


と、ややぎこちなく答える藤ヶ谷。


 菅田が


「藤ヶ谷さんの鼻はスクリーン映えしますよ、横顔とか。(僕の好きな鼻は)生田斗真(いくた とうま)か、藤ヶ谷さん。」


と台詞をキメて、笑いが起こった。


 藤ヶ谷は既に何本も有名な映画で主演をしているのだが、鶴瓶も菅田もそれを知らなかったのだろうか。


 藤ヶ谷が


「何言ってるんですか。僕何回も映画やってますよ。」


という野暮(やぼ)な切り返しをしなかったのは、良い選択だったと思う。おかしな雰囲気になっていただろうから。


 藤ヶ谷は快活に


「映画、やってみたいすね!」


と応え、鶴瓶


「映画はいいよ。変わるよ。」


と藤ヶ谷に満足げに教授し、そのタームは終わった(笑)。



 番組中盤から、菅田を映画俳優に育てた著名な映画監督が3人、菅田を音楽畑に導いたレコード会社の人、菅田が担当するラジオ番組の放送作家など、菅田の恩人が連続して写真パネルで登場。


 スタジオの菅田は大変だ。彼は各人と自分の繋がりを明快に述べ、モノマネも駆使して各人の人となりを詳述し、エピソードとして成立するように笑いもまぶしてご機嫌を伺う。八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍である。


 また、その情報量がハンパではない。半日一日時間を掛けたような取材が、本編では数分で消化されてゆく。


 おまけにMCの鶴瓶が、取材の為に観た菅田の何本もの映画、聴いたCD(アルバム2枚分!)のリストを示して、菅田本人に


「俺はお前に、どんだけ時間を割(さ)いたと思てんねん!」


とコボしてみせ、追い討ちをかける(笑)。 


 菅田は更に恐縮し、


「すいません! 次(の自分)の出演の時には何もしないで、寝てて下さい!」


とヘロヘロに。


 番組のシメには藤ヶ谷が菅田に駆け込みで、彼の異性へのフェチについて質問。


 いちいち丁寧に回答をする菅田に触発されたのか、藤ヶ谷は自分の「女の子のオデコの産毛(うぶげ)」フェチを詳細に解説し始めてしまい、鶴瓶に一喝され、ゲストの菅田にも強めに突っ込まれて、番組はヘンな感じで終わった(笑)。


 これは「押し引き」でいう、ジャニタレの「引く」タレント。


 次の項は、ジャニタレの「押してくる」メンツである。


TOKIOカケル(フジテレビ系/2020年8月26日放送)』


 国分太一(こくぶん たいち、45歳)・城島茂(じょうしま しげる、49歳)・長瀬智也(ながせ ともや、41歳)ら、ジャニーズのベテラン(?)アイドル・TOKIO(トキオ)の4人が回すトーク番組。


 年下のゲストには初出(はつだ)しのエピソードを要求したり、無茶振りのシチュエーションを与えたりと、ある意味容赦(ようしゃ)がない。


 菅田はこの番組には5回目の出演。2017年には年明けとその年の秋に2回も出演している。


 菅田は番組冒頭、


「この番組は一番台本が薄いけど、何か(こちらが)準備してくるとかないのでフリーでやれて良い。」


リップサービス


 菅田自身、平素から


「叱ってくれる人がいることは有難い」


と考えている人となりだから、番宣番組でも何でも目上から課題を出される状況はウェルカムなのかもしれない。また、それを臨機応変にこなす自信もあるのだろうし。


 菅田は役作りの一環として、自分の演じるキャラクターはどういう顔つきなのかをまず考えるというエピソードを初出し。実際に目を見開いたり、前髪を分けておでこを出したりと百面相をしてみせ、変顔を連発で大サービス。


 菅田によると、自分の右目は少し吊っていて、左目は柔らかい印象なので、鋭い役柄は顔の右側で、優しい役柄は左側で演じるようにしている、と秘話を語る。


 おおっ! 昭和の女優の逸話(いつわ)だ! 大原麗子だ!(笑)


清水アキラさんみたいだよね!」


と初老の国分太一が、若いひとには解らない喩(たと)えで交(ま)ぜっ返す。 


 また、菅田はドラマや映画のクランクイン前日は眠れないので、敢(あ)えて寝ずに現場に行ったりしがちであると、これも秘話を語る。
 前日の緊張感や野性味も残したいし、実際問題、初日は1シーンか2シーンを撮るくらいだから(体力的に)乗りきれるものだという。これはずっと映画を活動の主軸でやってきた菅田ならではの「映画俳優あるある」である。


 「濡れ場(ラブシーン)」を初日に撮ることもあると菅田。平常心ではない時に早くやらしてくれとも思うと語ると、国分太一がすかさず、


「やらしてくれって!」


と下ネタで揚げ足をとる。


 どうでもいいけど、菅田からの切り返しの国分の顔は、ホントにオジサンで汚く見えるなぁ。三谷幸喜(みたに こうき、脚本家・映画監督)がいるのかと思った(笑)。


 番組中盤には、菅田将暉の歌手としての代表作である『まちがいさがし(2019)』に因(ちな)んで、菅田を含む総員で「最近、まちがえてしまったこと」を発表し合う。要は形を変えた大喜利(おおぎり)である。


 趣向(しゅこう)として悪趣味なのは、それぞれの面白噺(ばなし)のオチを言い終わった後に、各人の手元のボタンを押すと、菅田が歌唱する『まちがいさがし』のサビの部分が流れ、演者はそれに合わせて変顔をして終わることだ(笑)。


 ひとの著作物を本人を目の前にしてお笑いのオチの擬音効果にするのだ。それも刹那的(せつなてき)な代物に。いったい他事務所の看板アーティストを何だと思っているのだろう(笑)。この企画の発案者はもちろん国分太一(笑)。ホントに悪い奴だ。悪相の原因は持ち前の底意地の悪さに起因しているのではないかト(笑)。


 TOKIOはいろいろあって、もうグループとしての音楽活動は難しくなっている。メンバーの一部も退所するだとか何だとかごちゃごちゃとやっている。
 敵(菅田)は若くして、アイドル俳優として絶頂を極め、その後性格俳優の立ち位置を堅固にし、その余技として有名アーティストの後ろ楯で歌手デビューした大スターだ。企画にかこつけて、彼に僅(わず)かでもダメージを負わせたい! そのようにロートルのアイドルが潜在的に謀(はかりごと)を企(くわだ)てたとしても誰が責められようか!?(笑)


 菅田はセンパイたちのパワハラ(笑)に、


「ああ、(曲への)解釈は自由なんで……。」


と笑顔でコナす。


 菅田が


「これは少し違うな。」


と思ったとしても、相手のホームだし、他事務所のベテランタレントが4人で圧を出してくるし、少なくとも現場では言い出せる雰囲気ではないだろうし。


 菅田も大喜利に参戦。誰よりも面白いエピソードを披露し、自分の曲のサビでちゃんと変顔をキメてみせた。


 人間としての器(うつわ)が大きいなぁ。ブラボー! 菅田はサムライである!


〈結論〉


 菅田将暉は関西出身だが、身内に関するトークは内輪話に堕(だ)さぬようよくまとめられており、ひとつひとつが情報として通用するよう腐心している。
 もともと状況を、自分の位置も含めて即時に認識する力が、菅田の臨機応変な受け答えに生きている。


 自分のトークの「息(いき)」でずっと話し続けるのではなく、時としてMCの「息」に委(まか)せ、同じ呼吸で会話を進めることがあり、耳に心地よい。デビュー作の『仮面ライダーW』がまさにそうであったが、幾つも相棒(バディ)もので成功をおさめてきた菅田の真骨頂ではないだろうか。


 菅田の安定路線を避けることで成功してきた映画俳優としてのスタンスは、バラエティー番組のセレクトにも通底している。番組には予習復習を以(もっ)て真摯に挑む菅田だが、自分がそれに加わったことで生じる化学変化を心待ちにし、良い意味での爪痕(つめあと)を残したいと切望している節がある。


 しかし、同業者のセンパイの番組に出るのは少し考えものだ(笑)。それも、アイドルの「稼業」を拗(こじ)らせたヤカラがMCの番組は特に。不幸と精神性は感染(うつ)るものともいうし(笑)。


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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『誰も知らない志村けん-残してくれた最後のメッセージ-』  ~志村最後の新境地「志村どうぶつ園」創世秘話・志村の「素」と「家族」に迫った佳作ドラマ

(2020年8月22日、『24時間テレビ 愛は地球を救う43』枠内テレビドラマ)

24時間テレビ43」ドラマ『誰も知らない志村けん-残してくれた最後のメッセージ-』

(文・田中雪麻呂)
(2020年8月25日脱稿)


 「ドラマ」と「ドキュメント」と「音楽」を通して描く新機軸のヒューマン・ストーリー。
 16年余りに渡って放送された大人気動物教養番組『天才! 志村どうぶつ園(日本テレビ系/)(2004~)』のディレクター・保科(ほしな 演・重岡大毅(しげおか だいき))の目から見たMC(司会)の志村けんの実像に迫る。ドラマ部分はランニングタイム90分強。


 保科は二十代後半の設定。愛犬家として有名な大物喜劇俳優・志村を動物バラエティのMCに引っ張り出すべく尽力する。ジャニーズWESTの重岡の瑞々(みずみず)しい演技は好評を博した。


 ドラマ開始から10分程してやっと志村けんが登場。演じるのは相川裕滋(あいかわ ゆうじ)。再現ドラマ風に顔をところどころライティング等で消して対象に寄せる手法だ。


 保科は憧れのスターに自分たちの渾身の動物番組の企画を熱くプレゼンするが、志村はポツリとか細い声で


 「面白くないよね。」


 と一言。


 4分半で交渉決裂し帰社する保科に、チーフプロデューサー役の柄本明


 「志村さんはスタッフが一生懸命考えてきたものに一方的にダメを出すような人じゃない。何か別の意味があるんじゃないのか?」


 と助言する。


 開始早々、面倒臭えな、志村(笑)。


 志村の真意は、自身の「素の喋り(すのしゃべり)」が面白くないよという意味だったのでは? という仮説を立てた保科は、更に大胆に


 「志村さんの『素の喋り』が見たいんです。志村さんのお家でのワンちゃんたちとのやり取りを、自撮りで撮って来てもらえませんか?」


 と志村サイドに要望を出す。


 保科の独断に、スタッフルーム全体が震え上がる。


 ドラマでは触れていないが、志村はお昼の国民的バラエティ番組への出演を生放送で断ったり、高名なCM演出家のアドリブのダンスの要求に激怒したりと、「扱いにくい大御所」としてつとに有名だったから、これはリアルだった。


 お笑いタレントのタカアンドトシの二人が中堅ディレクター役で出演。露骨に志村を煙たがる。


 実人生で志村の飲み仲間だった肥後克広(ひご かつひろ。ダチョウ倶楽部)も本人役で出てきて、


 「作り込んだコントこそ志村さんの持ち味。「素」(す)の志村けんを求める人がまだいるとは?」


 と呆れてみせる。


 志村の名前の大きさに対して、彼個人のタレントとしての不器用さ、ある種の奇人ぶりが巧みに描かれている。


 私的なことだが、筆者は数年前に、志村と彼の先輩タレント・加藤茶がふたりでやっていた人気バラエティ番組『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ(TBS系/1986~1992)』のコント台本を十数冊譲ってもらえる幸運に恵まれた。それには同じ回で、準備稿や決定稿等、何種類もの台本が揃っているものもあった。


 筆者はそれを何回も読み返すうち、あることに気がついた。志村けんの台詞部分の直しが夥(おびただ)しいのだ。志村の喋り方に合わせて、台本の台詞も変更されていく。中には手書きの直しをコピーしたものを、そのまま台本に糊付けしたものもあった。


 志村は自身の著書でも、自分の口調を子飼いの放送作家に即時に書き留めさせたり、自分の喋り方や物の考え方を熟知している放送作家を私的にお抱えにしたりといったエピソードを披露している。番組では何気なく会話を交わしているように見えていたが、彼ほどそういうものをデリケートに捉えていた喜劇人はいないのではないか。


 保科の提案は志村サイドになぜか受け入れられ、志村MCの動物番組は大評判。そのままレギュラー番組に昇格し、志村もMCの続投をなぜか快諾。そしてレギュラー化初の収録後にある事件が起こる。


 強(したた)かに酔ったアイドルの相葉雅紀(あいば まさき)が宴席で、あろうことか志村の膝(ひざ)を枕に寝入ってしまったのである。
 現在は国民的アイドルの「嵐」のメンバーである相葉だが、番組開始当初の16年前は彼はまだ何者でもなかった。慌てて相葉を起こそうとする保科たちを志村は静かに制して、


 「こういうのを待ってたから。」


 と謎の言葉を呟(つぶや)く。


 この作品には、前出の柄本・タカアンドトシをはじめ、上島竜兵(うえしま りゅうへい。ダチョウ倶楽部)・土屋アンナ原田泰造(はらだ たいぞう)ら志村ゆかりの芸能人が多数参加している。もちろん、故人の追悼のための特別出演だとは思うが、どうしても著名人が何かの役をやっていると目が散ってしまう。
 相葉雅紀もあの有名な「膝枕(ひざまくら)事件」に本人役で出ているのだが、このひとに限っては目が散らないのが不思議でならない(笑)。理由は解らない。国民的な人気者とはそういうものなのかもしれない。


 ドラマ開始から約1時間後、保科の幾つもの疑問は鮮やかに氷解してゆく。


 「ドキュメント」部分として、志村の幼なじみの紳士のインタビューが挿入される。彼は教職に就いていた厳格な志村の父親について話をしていた。不慮の事故の後遺症で54才の若さで早逝したという。


 突然、脇で控えていた紳士の奥様が、口を衝(つ)く感じで、


 「(志村さんは)あの年齢で、番組(『志村どうぶつ園』)を成功させたかったのよ。」


 と割って入った。


 「ドラマ」部分のプロデューサー・保科が膝を打つ。志村がMCを引き受けた年齢は、奇しくも彼の父親の享年(きょうねん)であった。志村はその年齢で、芸能の世界に自分の「家族」を作りたかったのではないか?


 しかし、彼のお笑いの舞台「志村魂(しむらこん)」の一座(いちざ)をはじめ、既に志村の「ファミリー」は幾つもある。何故、お笑い番組の「ファミリー」ではダメだったのか?


 志村けんのお笑いは、彼が一代で築いたものではない。ザ・ドリフターズというグループがあり、志村はそこで修行し、ドリフの笑いを受け継いだかたちだ。もちろん志村けんの加入でドリフの笑いは飛躍的に変わったのだが、やはり「作り込んだその笑い」には生涯こだわっていた。
 つまり、ドリフのメンバーとそれに属した人脈は、志村の中で決して「家族」にはなり得なかった。志村が対外的にいかに偉くなろうとそれは変わらなかった。折り目正しい彼は、そういうことは強く弁(わきま)えていたであろうし。


 貴重映像として、志村けんが自分の「家族」である(当時)5頭の犬を自宅で自撮りしたものが流れた。志村がそういうことをするのは極めて異例だったという。


 率直に言ってヒドい映像であった。


 昼間、5頭の犬が主人の言うことを何も聞かないで傍若無人(ぼうじゃくぶじん)。障子紙はビリビリに破れ、壁には犬が原因で大穴が空いている。高そうな家具の足はどれも犬が囓(かじ)って、ボロボロである。
 深夜に志村が帰宅する。既に横になっている犬たちを、主人は揺すって起こし、さんざん飲んで来たであろうに、更に晩酌をしてそれに付き合わせる。志村は目が完全に座っており、「TVに出てはいけない貌(かお)」になっている。
 お風呂に犬の一匹を連れて入り、何故か自分の股間も自撮りする志村。寝床でも犬を抱いて横たわり、寝オチしたように彼は爆睡する。


 ダメだこりゃ(笑)。


 志村も、自分は世間一般でいう普通の「家庭」を作る才はないことは薄々気付いていたであろうとおぼしい。
 しかし、『天才! 志村どうぶつ園』は多くの彼の「家族」を芸能畑で花開かせ、「作り込んだ笑い」ではない、「自宅を自撮り」したような、時に人目も気にせず「爆睡」してしまうような「素」を見せてしまう、新たな「ファミリー」を作る起点となった。
 ベッキー坂上忍(さかがみ しのぶ)・きゃりーぱみゅぱみゅ・DAIGO(ダイゴ)・森泉(もり いずみ)・振分親方(ふりわけ おあやかた=高見盛精彦(たかみさかり せいけん)元力士)、みんなそうだ。


 番組は本(2020)年9月に閉園(終了)するが、志村の意思を継ぐ相葉雅紀がMCとなり、また動物番組が始まるらしい。


 志村けんの夢と浪漫は、まだまだ終わらないのだ。


(了)
(初出・当該ブログ記事~オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86(2020年晩秋発行)所収予定)


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『妖怪シェアハウス』 ~アマビエ人気に便乗!? お岩さん・座敷童・酒呑童子ぬらりひょんと現代で同居! 侮れない佳品!

(文・田中雪麻呂)
(2020年8月23日脱稿)

コロナ禍で大人気の妖怪・アマビエについて。


 新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で、エンタメ・シーンは何ヵ月も「ほぼ封殺」された。ハリウッド映画も、ディズニー作品も、ドラえもんも戦隊ヒーローも疫病が相手では成す術(すべ)がなかった。


 しかしその中でただ一人、否(いや)一匹、ブレイクしたキャラクターがいた。


 アマビエだ。伝承の妖怪(ようかい)である。


 魚の身体に、長い髪の毛のようなもの(身体が光っている描写だという説もある)と、長い嘴(くちばし)のようなものを付けた顔を持つ幻獣だ。


 幕末に近い江戸時代(弘化3年/1846年)の肥後国(現・熊本県)の海に強い光とともに出現し、豊作・疫病に関する予言をしたという。
 この妖怪の姿絵(すがたえ)が疫病を退散させるという伝説から、2020年3月からアマビエの図像がSNS上で大流行、翌月4月から令和時代の厚生労働省の啓発キャラクターとして、当時のアマビエの姿絵のまま起用されたのだ。


 アマビエは魚体だが、吉凶を人間に伝えて助ける妖怪としては、やはり身体は魚で人間の頭部を持つ「人魚(にんぎょ)」が全国的に有名である。アマビエが出現した時期と同じく、奥州(現・東北地方)では頭に角(つの)を2本生やし胸元に貝を3つ付けた美女の人魚が出現、疫病発生を予言している。それより20年も早い尾張国(現・愛知県)には、やはり2本角を持った美形の人魚「姫魚(ひめうお)」が出現。コレラの防疫に尽力したとされる。


 ちなみにアマビエは、妖怪をテーマにした漫画を多く描いた漫画家・水木しげるの作品にはすでに1984年に登場し、彼の作品のひとつ『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメ版(第5シリーズ。2007年)ではセミレギュラーとして活躍している。


 コロナ禍が半年余り続き、その間に筆者は芸能というものが実は如何(いか)に脆弱(ぜいじゃく)なものであるかを思い知らされた。それは発信する側はもとより受け手側の余裕のなさも尋常(じんじょう)ではなく、色々考えさせられた。


 結局、コロナ禍で勝ち残ったのが、お札(ふだ)に描かれた古(いにしえ)の幻獣とは! とどのつまり、人間は江戸時代から何ら文化的には進歩していないのではないか。個人的にはある種、痛快ではあったが。


 一流の娯楽とされているありとあらゆる作品は、緊急時においては何の安らぎも受け手には与えることができず、逆に著名な俳優・演出家の代表者たちは芸も見せずに、国に一方的に救いを求め、またはかつての観客たちから如何に言葉巧(たく)みにカネを引っ張ろうかと腐心している始末であった。


善なる疫病退散妖怪が隆盛のご時世に、深夜ドラマ『妖怪シェアハウス』が登場!


 そんな時節だからであろうか。2020年8月1日(土)深夜から怪(あや)かしが集う連続ドラマ、その名も『妖怪シェアハウス』が放送されている。否(いや)、時節に合わせるならシェアハウスは避けるか(笑)。


 仕掛人は芸能事務所・オスカープロモーション古賀誠一テレビ朝日の敏腕(びんわん)プロデューサー・内山聖子(うちやま さとこ)。
 主要スタッフがバタバタ辞めていくブラック企業の噂のあるオスカーの代表と、東山紀之(ひがしやま のりゆき)主演の『必殺仕事人』シリーズ(2007~)や『ドクターX(エックス)~外科医・大門未知子(だいもん みちこ)~(2012~)』で、ニッポンのTVドラマを決定的にダメにしたA級戦犯のコンビだ(笑)。
 さぁ、どうなるか(笑)。


 主演は『トクサツガガガ(2019)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190530/p1)で、けなげな特撮オタ女子OLを演じた小芝風花(こしば ふうか)。気弱で運気も最低なヒロイン・目黒澪(めぐろ みお)が信頼していた彼氏に裏切られ、有り金すべてを掠(かす)め取られ、疲労困憊(ひろうこんぱい)で神社で倒れ込んでしまう。


 澪を救ったのが、古民家シェアハウスに住まう四谷伊和(よつや いわ)(演・松本まりか)。しかし伊和は江戸時代の怪談噺(ばなし)の『四谷怪談(よつやかいだん)(1825)』で有名な幽霊の「お岩さん」その人であった……というのが概要(笑)。


 もちろんお岩さんと住んでいるシェアメイトも怪かしであり、座敷わらし(演・池谷のぶえ)、酒呑童子(しゅてんどうじ)(演・毎熊克哉)、ぬらりひょん(演・大倉孝二)と東西の有名妖怪が詰めている。シェアハウスの井戸(いど)を伝って、日本各地の妖怪が集まって来るという設定もある。


 そこに女性視聴者層も大いに意識して、シェアハウスと隣接する神社のイケメン神主(演・味方良介)、澪のスパルタ上司(演・大東駿介)の二人が、澪を中心に恋の鞘(さや)当てを繰り広げるという布陣(ふじん)でご機嫌を伺(うかが)うのだが。


 やはり目を奪われるキャラは、妖怪たちだ。


 彼らは丑三つ時(うしみつどき=午前2時頃)を過ぎると醜怪な妖怪態に変じるのだが、それとは別に人間態の姿も持ち、現代の日本に溶け込んで生活している。


 お岩さんはお洒落なアイパッチで片目を隠した美貌のナース。ハウスのムードメーカー。虐げられる女性を見過ごしにできず、妖怪と人間の垣根を越えても助力しようとする。


 寮母然(りょうぼ ぜん)としたオバサンの座敷わらしは料理をはじめ家事を万端整える。何かと江戸時代に喩(たと)えてモノを言うのが癖。自分は妖怪ではなく「精霊」だという優位感を強く持つ。


 酒呑童子(劇中では鬼の頭領とされている)は赤ら顔のワイルド系の美青年。真贋(しんがん)を見分ける目を持ち、オークション会社の鑑定士として重用されている。


 ぬらりひょんはスーツ姿で頭には七色のターバンを巻いた怪人物。弁護士と経営コンサルの資格を持つインテリで、顔相も診(み)る才人。ハウスの頭脳的存在である。


 やっぱり、ぬらりひょんを演じる大倉孝二の存在は出色だなぁ。
 大倉孝二。身長187センチ、体重78キロ。今やコメディリリーフとしては欠かせない貴重な俳優である。
 長駆(ちょうく)であるのに威圧感を感じさせない物腰、脚本のニュアンスを現場で無理なく生かせる技術、自身のオーラを自在に点(つ)け消しできる器(うつわ)の大きさと、可能性のカタマりのような役者である。
 2002年に公開され、当時の映画賞を総ナメにした青年誌漫画原作(1996)の実写映画『ピンポン』で、主役に軽妙に絡むアクマ(左久間学)役で注目されて以来、ずっと第一線で各作品を彩ってきた実力派である。 


 ぬらりひょんという妖怪は、そもそも鬼とか座敷わらしみたいに確(かく)としたビジュアルの雛型(ひながた)がない怪かしであった。過去の文献を当たっても「大きなクラゲやタコを妖怪と見立てたものであろう」くらいの記述に過ぎない。
 前述した水木しげるが自身の作品で活躍させたために国民的な人気妖怪、転じて大出世して「妖怪の総大将」(笑)に登り詰めたと言ってよい。
 それを説得力を以て演じせしめた大倉の才能に改めて敬服する。


 #1~3まで観てみたが、ストーリーは「刑事ドラマ」の形式に一番近いだろうか。澪や彼女の周りの女性がワルい男に騙されかけるが、フェミニストの妖怪たちが立ち上がり、事なきを得るという筋立てだ。


 妖怪に蹴散らされる悪漢は、柾木玲弥(#1/二股&寸借詐欺男)、蕨野友也(#2/不倫&パワハラ男)、渋谷謙人(#3/成り済まし詐欺男)と、当代一流の二枚目俳優たちが演じている。彼らを妖怪態のお岩さんらが追い回し、心に深いトラウマを与え、悪事を遂行できない心理状態にまで追い込む。


 同時に妖怪らは騙される女性側の方をもあまり信用していない。従って心囚(こころとら)われている女性たちには、妖怪たちは彼らの捜査網をすべて使って、まず動かぬ証拠を提出して彼女らの洗脳を解く。
 ドライにクールに、しかし然程(さほど)苦労するでもなく、着々と証拠固めをしていく妖怪たちは不気味で、どこか可笑(おか)しい。


 お岩さんに救われた澪だが、シェアメイトが総員、人間である彼女をウェルカムかというとそうではない。
 酒呑童子ぬらりひょんも必要以上に人間と関係することによる「障(さわ)り」に心が休まらない。「二千年の禁を破っては……。」という台詞が妖怪側から発せられる。言葉通りに受け取れば、妖怪は古代ローマ時代、日本でいうなら弥生時代から存在しているのか?(笑)
 しかし澪も一文(いちもん)無しで、妖怪シェアハウスに身を寄せるしかない。居たたまれない雰囲気になるが、適宜(てきぎ)にお岩さんや座敷わらしがフォローに回り、澪はまた妖怪たちと寝食を共にする。
 こういう処(ところ)、昭和の青春ドラマの趣(おもむき)があり、ペーソス(哀感)溢れる泣き笑いの文芸であり、懐かしい感じがする。


 懐かしい、といえば44年ぶりであろうか。このドラマで「ゲキメーション」に再会したのだ!


 「ゲキメーション」とは、「劇画」と「アニメーション」を組み合わせた造語(ぞうご)である。
 平板な二次元の「アニメーション」ではなく、「絵」と「絵」を立体的に組み合わせて奥行きを出したり、登場人物を「切り絵」にして個別に動かしたり、火が燃えるシーンでは実際に絵の中に炎を合成したりと、とにかく臨場感を第一に設(しつら)えられた映像表現である。


 有名な作品としては、1976年にテレビ東京(当時は東京12チャンネル)で24話に渡って連続放送した『妖怪伝 猫目小僧(ねこめこぞう)』がある。
 漫画家・楳図かずおの原作漫画(1967)を元に、時代や設定を変更して製作された。当時の技術賞も獲得し、後年VHSビデオソフトや全話のLD-BOX(レーザーディスク・ボックス)がリリースされるなど、話題となった作品である。


 『妖怪シェアハウス』では、この「ゲキメーション」はお岩さん・酒呑童子らメインキャラの紹介VTRの体裁で流された。絵柄も心なしか楳図かずお寄りである。


 エンディング・テロップを追っていくと「ゲキメーション/宇治茶(うじちゃ)」の文字が!
 筆者は浅学なので知らなかったのだが、宇治茶監督は何年も前から劇場版の「ゲキメーション・ムービー」を何本も製作し、大評判を受けていた新進のクリエイターであった。
 この「ゲキメーション」を見られるだけでも、このドラマを観る甲斐はある。怪奇もののファン・楳図かずおファン・昭和レトロファンには必見である。


 と、#4の放送(8月22日)の予告を見た処、満を持して妖怪「アマビエ」がゲストで登場する(笑)。
 演じるは、ジャンルものでも多く怪人・妖怪役をこなしてきた個性派俳優・片桐仁(かたぎり じん)! ドレッドヘアに四角いメガネを掛け黄色い嘴(くちばし)を口にカジュアルに張り付けている。予告を見ただけでもふざける気満々である(笑)。


 令和の妖怪ドラマは、昭和ドラマの哀愁も味方につけていた。侮(あなど)れない作品といえる。


(了)
(初出・当該ブログ記事~特撮同人誌『仮面特攻隊2020年秋分号』(20年9月22日発行)所収『妖怪シェアハウス』評より抜粋)


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(文・久保達也)
(2014年3月30日脱稿)

実は初代の「闇のエージェント」、マグマ星人登場!(笑)


 この「番外編」は思わぬ「拾いもの」であった!
 『ウルトラマンギンガ』(13年)全11話が終了して約2ヶ月後、2014年2月26日放送の『新ウルトラマン列伝』第35回において、『ギンガ』の「後日談」が描かれることとなった。
 もちろん『劇場スペシャル』第2弾、公開が押し迫った映画『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』(14年・松竹)の「前日談」としての「つなぎ」の意味合いが大きかったこととは思う。


 だが、この「番外編」。正直これまでの『ギンガ』の中で、個人的には一番面白かったのである(笑)。


 本作『ギンガ』では、ラスボスである「闇の支配者」ダークルギエルの命令を遂行する悪の中間管理職の立場の「闇のエージェント(代理人)」として、歴代ウルトラシリーズに登場してきた人気悪役宇宙人が人間大サイズで暗躍してきた。
 そして、それに最初に選ばれたのは『ギンガ』前半シリーズの第1話~6話に登場した宇宙海人バルキー星人……ではなく、実はサーベル暴君マグマ星人であった! ……という明らかに「後付け」ではあろうけど(笑)、そうであっても不思議ではないというありうべき設定で、意外な新事実が本話の前半でマグマ星人自身の回想によって描かれる。
 しかもこのマグマ星人、背景にライトアップされたキレイなレインボーブリッジが見える夜の河川敷(かせんじき)で、それとは対照的になんとも侘(わび)しく火鉢(ひばち)に当たりながら、野良猫と会話することで寂しさをまぎらわせているのである……
 そして、腹には首からヒモで吊したお財布(さいふ)をブラ下げている(爆)。ちなみにこの野良猫の名前はネコギラス(笑)というそうだ。


 「闇のエージェント」としての使命をバルキー星人に横取りされたあげく、彼に「おつかい」を頼まれる始末だったマグマ星人は、バルキー星人の後任を目指すべくバーベルで肉体トレーニングに励む!


 そこに携帯電話が鳴る。なんと着メロは『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)の主題歌!(笑) 同族の別個体ではあるが、マグマ星人が初登場したのは『レオ』第1~2話の前後編であったことを踏まえたメタなギャグである。
 ちなみに、この前後編に登場した兄弟怪獣レッドギラス&ブラックギラスが、先のネコギラスの名前の元ネタでもある(笑)。


 そして、その電話の主は『ウルトラセブン』(67年)が初出である異次元宇宙人イカルス星人の同族別個体! バルキー星人の後任は自分であると宣言する!


 イカルス星人は『ギンガ』前半シリーズ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)の最終回である第6話と『ギンガ』後半シリーズの筆頭である第7話の間の出来事である映画『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』(13年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200820/p1)で「闇のエージェント」を務めたキャラだ。
 もちろん我々視聴者は、バルキー星人の後任がイカルス星人であることを知っている。イカルス星人の後任がナックル星人であることも知っている。そして最終回(第11話)に至るまでマグマ星人が一度も「闇のエージェント」に昇格して登場した試しがないことも知っている(笑)。
 可愛そうなマグマ星人。つまりは彼の鍛錬(たんれん)が実らないことを我々視聴者は知っていることから来る、あくまでもコミカルなものではあるものの、軽妙なペーソス(哀感)も濃厚に漂ってくる。


 そして、ウルトラマンゼロと行動をともにするヒーロー・グレンファイヤーの声を務め、映画『平成ライダー昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feats.(フィーチャリング)スーパー戦隊』(14年)では故・納谷悟朗(なや・ごろう)そっくりの厳(いか)めしい声(!)で昭和の10号ライダー・仮面ライダーZX(ゼクロス)(『10号誕生! 仮面ライダー全員集合!』(84年))の敵組織・バダン大首領リメイク版の声も演じてみせた、我々同様の特撮オタクでもあり七色の声音(こわね)を使い分ける実力派中堅声優・セキトモこと関智一(せき・ともかず)がやや低音で片言のトボケた感じで演じるイカルス星人は、いちいち発言の語尾に「イカ」を付けまくったあげくに、


イカを買ってきてくれなイカ?」(笑)


などとマグマ星人にヌカして、バルキー星人同様に見下してきた果てに「おつかい」のパシリ(使いっ走り)扱いにする始末。


 目と口元が露出していることで、スーツアクターの表情の演技までもが読みとれるマグマ星人だが、この際の憮然(ぶぜん)とした表情演技がなんともたまらん(笑)。


 時は流れる。遂にはマグマ星人が云うところの「おネエ野郎」だった『ギンガ』後半シリーズ第7話~10話(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200825/p1)での「闇のエージェント」を務めた暗殺宇宙人ナックル星人・グレイや、彼らの首領である「闇の支配者」ことダークルギエルまでもが敗れた!


「これからどうすればいいんだ?」


と嘆くマグマ星人だが、話相手の野良猫にまで逃げられてしまう――この猫の演技がまた絶品!・笑――。


サーベル暴君マグマ星人 VS 残された仲間・健太&千草!


 商店街をトボトボとさまようマグマ星人を、超低予算作品の都合かテレビシリーズ正編からの連続登板を果たすことができたのはこのふたりだけである、レギュラーの少年・健太とサブヒロインの少女・千草(ちぐさ)が目撃!
 追跡を敢行するが、なぜか人々はマグマ星人に誰も気がつかない。それもそのハズであり、マグマ星人の姿は健太と千草にしか見えておらず、ほかの人々には人間体の姿として映っていたのである!


 この人間体がまた「暴君」どころか、我々みたいな種族のさえない男というのが絶品である(爆)。


 ウルトラマンたちにウルトライブ(変身)できる能力を獲得した健太と千草のふたりだけに、マグマ星人の真の素の姿(正体)が見えるという超能力描写――やはり超低予算作品の都合か、透視能力を表現するマグマ星人とその人間体とのオーバーラップ合成などは使われてはいないが・笑――。
 ウルトラマン自身やウルトラマンと合体・同一化した人間たちにはSF的・超常的な特殊能力が備わるという、子供たちがワクワクしてあごがれをいだきそうな設定を、マグマ星人との遭遇の場面でここぞとばかりに有効活用!
 商店街という生活感まるだしな「日常」の中に、いかにもウルトラシリーズ的な少しだけ不思議で怪しい「非日常」感といった風情を醸(かも)し出すことにも成功しており、この一連は秀逸(しゅういつ)ですらあると思える。


 バイト情報誌(笑)を見ていたマグマ星人に意を決して声をかける健太だが、


「おまえらがいなけりゃ、こんなミジメな思いは!(怒)」


と、マグマ星人は逆上して右腕にハメたおなじみのサーベルを振り回して健太と千草を追いかけ回しはじめる!
 さらにマグマ星人初代ウルトラマンをその最終回で倒した最強怪獣でもある宇宙恐竜ゼットン(!)のスパークドールズ(人形)を取り出し、千草を闇に包んでゼットンダークライブ(巨大化変身)させようとする!


マグマ星人「どうせおまえもオレと同じだろ? そばに力を持つ者がいなけりゃ、自分じゃなにもできゃしないんだ! 万年パシリ(使いっ走り)のオレが云うんだから間違いねえ!」


千草「健太は違うよ! あんたなんかといっしょにしないで!」


 闇の中でもがく千草に、健太が必死に呼びかける!


健太「負けるな千草! 千草がアイドルになったら、オレがカメラマンになって、何枚でも写真を撮ってやる!」


 健太の呼びかけに、千草は遂にダークスパークから発せられる闇をふりほどいた!


 物語作品一般に必然的・宿命的にハラまれている、「主人公」や「脇役」といったヒエラルキーカースト制度
 「主人公」を立てるためにも、「脇役」は割を食ったり足を引っ張ったり「人質要員」になって助けられる役回りを割り振られることで少々イヤ~ンな感じを醸してしまうことは、物語作品一般の定め・運命でもあるのだろう。
 しかし、だからといってアキラめてそれに開き直ってしまってもいけないのだ。それもまた程度問題なのである。「主人公」と「脇役」といった優劣がある関係性を露骨に芸もなくベタに100対ゼロとして表現してしまってもよいものなのか? それとも「脇役」にも五分の魂なり60対40なりでの活躍の場を与えることで、カースト制度や脇役キャラの不遇感を完全解消することは不可能だとしても、少しでも「有用」なところも見せることで緩和をしてみせることは作劇上、必要なことではあるまいか!?


 ここではマグマ星人・健太・千草は一旦はそれぞれ「主人公」や正義なり悪なりの「トップキャラ」には決してなれない存在であり、「そばに力を持つ者がいなければ、自分ではなにもできない」という意味においては同列・同等であり鏡像のような関係であると、痛いところを正しく突いてくる!


 しかしそれでもなお、健太と千草のふたりのキャラを悪役のマグマ星人よりも上位に立てようと画策するならば(笑)、先のテーゼの論理的反転として、「そばに力を持つ者がいなくても、誰かや社会に頼ることなく自分自身でなにかを成し遂げようと努力をしてみせる!」という趣旨のテーゼを高々と掲げるしかなくなってくるのだ!
 そしてそのことによって、健太と千草の人物像をマグマ星人よりも道義的には優れたものとして賞揚することもできるのだ! ドラマ的・テーマ的なクライマックスをこの場面で一度つくってみせることもできるのだ!


 この描写、『ギンガ』第10話『闇と光』で主人公・ヒカルが闇の世界からメインヒロイン・美鈴を取り戻そうとして、延々と痴話(ちわ)ゲンカを繰り広げた場面よりも、個人的には盛り上がりもテーマ的な説得力もあったように思える。


 ちなみに設定では千草は幼いころからずっと健太のことが好きだったそうだ。それを考慮すればこのシーンは、テレビシリーズ本編でも語られてきた千草のアイドル志望や健太のカメラマン志望をここでおさらいするだけでなく、第4話では闇落ちして海底原人ラゴンにダークライブ(巨大化変身)して暴れ回ってしまった千草が今回は自身の意志の強さでそれを回避できたことの心理的な成長をも示すのみならず、健太の幼い恋情告白の吐露をもダブル・トリプルで含意させていたことにもなり、それもまた成功していたとも思えるのだ!


サーベル暴君マグマ星人&宇宙恐竜ゼットン VS 初代ウルトラマンウルトラマンティガ


 マグマ星人、やむなく自身がゼットンダークライブ(巨大化変身)! ゼットンの着地は大胆にも実景に合成されている!


マグマ星人「オレの運気が右肩下がりなのは、あの街のせいだ!」


 空中に浮遊するゼットン、空から本作『ギンガ』の舞台でもある降星町(ふるほしちょう)を攻撃しようとする! ゼットンの背面を画面手前に配し、その目線で街を俯瞰(ふかん=見下ろ)したカットが圧巻!


 そのとき健太と千草の想いに呼応したかのように彼らの手元に、先端にウルトラマンティガ初代ウルトラマンのスパークドールズが装着した状態である変身アイテム・ギンガスパークが出現した!!


健太「オレたちがやるんだ!!」


 健太がティガに、千草が初代マンにウルトライブ(巨大化変身)!!
 ティガと初代マン、ゼットンを怪力で押しまくりながら超高速で地球を飛び出し、月へと向かう!


 地球を背景に「ティガ&初代マン VS ゼットン」の激闘が月面で展開する!
 初代マンが後ろから羽交(はが)い締めにしたゼットンにティガが必殺技・ゼペリオン光線を発射しようとするや、ダークライブしていたマグマ星人ゼットンから分離!! 背後から初代マンを急襲する!
 以降、「マグマ星人ゼットン VS ティガ&初代マン」という、非常にレアな組み合わせでもある夢のタッグマッチ戦ともなるのだ!


 だが、ウルトラマンへのライブ時間の制限から、ティガと初代マンの胸中央のカラータイマーが青から赤へと変わり、激しく点滅をはじめる!
 マグマ星人、その隙(すき)に降星町=地球に向け、ゼットンに超遠距離砲を発射させる!
 ティガと初代マン、地球の盾となり、ゼットンが放った1兆℃(!)の炎を全身に浴びてしまう!


 ふたりの我が身を犠牲にした行為に驚くマグマ星人に対し、「降星町には美鈴も友也もいる、ヒカルもそのうち帰ってくる、街に手出しはさせない!」と、地球を背景に正義のタンカを切るティガ&初代マン!
 本作『ギンガ』における守るものの象徴でもある「降星町」。そして、メインヒロイン・美鈴。ライバル青年・友也。ウルトラマンギンガにウルトライブ(変身)する「選ばれし者」の資格がある主人公青年・ヒカル。彼らのことも決して忘れずに言及することで、この作品があくまでも『ギンガ』の一編であったことも強調される!
 そして、彼らを守りたいという想いこそが、ここ一番の踏ん張りどころとなることで、健太と千草が意地を張ってでも戦うべき「動機」がここであらためて再確認もされていく!
 これこそまさに公共心に満ち満ちた、他者を守るために自己を犠牲にすることも厭(いと)わないヒーローたる者の普遍的かつ王道の発言&行動でもある!


 ここに至るまでの月面での一連のバトル演出は超低予算作品であるにも関わらず、特撮演出やアクション演出にちょっとしたセンスがあるからだろう。同じく月面を舞台にした映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)冒頭で描かれた究極超獣U(ユー)キラーザウルスVS初代マン・セブン・ジャック・エースのウルトラ4兄弟のバトルに負けないほどの盛り上がり感がある!


 瀕死(ひんし)の状態でガックリとひざまづいたティガと初代マンに、マグマ星人がトドメを刺そうと右腕にハメているサーベルを振り下ろそうとする!
 そのマグマサーベルをガッチリと押さえつけ、ティガと初代マンを守る光の剣・ギンガセイバー!
 健太と千草の最大の危機にウルトラマンギンガが「未来の世界」から帰ってきてくれたのだ!
 ゼットンの強固な光学バリヤーをも打ち破ることができる、ギンガが両腕をL字型に組んで放つ必殺光線・ギンガクロスシュートを浴び、大爆発をあげて吹っ飛ぶマグマ星人ゼットン


 ここでメデタシメデタシで終わってもよいのだが、本作はさらなる変化球でもうひとつのスリルを与える。
 ティガと初代マンの活動エネルギー限界を示すカラータイマーの点滅が一層激しくなるのだ! エネルギーが切れて元のナマ身の人間に戻ってしまっては、健太と千草は地球に帰るどころか月面の真空で窒息死してしまう!
 ティガと初代マンのウルトライブ(変身)が解けようとした瞬間、ギンガは健太と千草を無事地球に連れ戻した!


 そして、スパークドールズになったマグマ星人ゼットンも、先の『ギンガ』最終回のラストで他の怪獣・宇宙人たちが戻っていった宇宙へとギンガが連れていってくれた。


マグマ星人「ありがとうございやす!」(笑)


 今回は憎めない悪役だったマグマ星人。さすがに彼を絶命させることなく、気持ちのよいハッピーエンドを迎えさせている――人形の姿のままでの帰還でイイのか!? というツッコミはさておいて(笑)――。


傑作『残された仲間』 ~マイナスエネルギーを材とした『80』『ギンガ』比較。『ギンガ』総論!


 本話は正直、前半は深夜ドラマ枠でウルトラ怪獣にコントを演じさせていた『ウルトラゾーン』(11年)みたいなユルユルなノリである。
――『ゾーン』はマグマ星人と暗黒星人ババルウ星人がクダラないことでイガみあうコーナーが個人的に好きだった。ちなみにCS放送・チャンネルNECO(ネコ)で2013年に『レッドマン』(72年・円谷プロ)が放映された際、『マグマ星人のヒーロー研究所』というコーナーが設けられていたが、スーツアクターは今回と同一人物であるように見受けられる――。


 が、中盤から急展開を遂げたかと思えば、まさかここまでカッコいいバトル作品に仕上がってしまうとは!
 初代ウルトラマンウルトラマンティガという先輩ヒーロー夢の共演による感動! そしてご町内だけの物語にとどまらず、舞台を映像的には降星町がある惑星=月面から見えている地球(笑)にまで拡大させ、疑似的に全世界的規模の危機までをも描いたように見せるスケールの雄大さ!


 個人的には『劇場スペシャル』2作品よりも、スケール感やバトルの盛り上がりの観点からすれば本作の方に魅力を感じてしまった(笑)。
 超低予算作品でもつくり手たちの痛快娯楽活劇としての勘どころを押さえるセンスや技量さえあれば、ここまでの作品ができるのである!


 いや、今回の「番外編」のような作風は、近年の平成ライダースーパー戦隊においてはすでに実現されていることではある。ギャグ系怪人の登場や――幹部級怪人に至るまで!――いささか過剰(かじょう)に思えるほどのコミカル描写が散見されながらも、


・変身ヒーローが凶悪な敵怪人と身体を張って戦い、最後には必殺技で倒すというコンセプト
・子供たちにとどまらず大人たちも、いや人間・動物一般が持っている原始的・根源的な暴力衝動の発散(もちろん正義に即したかたちでの発散・笑)
・それによって得られるカタルシス、全能感や万能感


 それらがいささかも失われてはいないからこそ、平成ライダースーパー戦隊は安定した人気を保ち続けているのであろう。


 だから『ギンガ』テレビシリーズも、ヒーローや怪獣宇宙人よりも「人間ドラマ」の方に比重が来てしまうジュブナイルドラマよりも、今回の「番外編」みたいなライトでコミカルで憎めない敵宇宙人の暗躍を主眼に据えて、各話ゲストたちのダークサイド=悪い心にスポットを当てたとしても、レギュラーの少年少女キャラたちによるアリがちでも普遍・王道ではある暑苦しい道徳的な絶叫(笑)の方で凌駕してしまうような、よくある少年漫画的なノリに徹すればよかったのに……と思えてならない。


 『ギンガ』のレギュラー子役の俳優陣は演技力もあるし、実に「いいコ」たちに見える。が、逆にあまりにスナオな「いいコ」ちゃんたちにすぎたかもしれない――かといって、あまりにヒネくれていたり不良的なコが登場してもイヤなのだが(笑)――。



 『ギンガ』最終回(第11話)『きみの未来』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200827/p1)において、闇の支配者・ダークルギエルは「絶望の“マイナスエネルギー”」という言葉を口にしていた。
 「マイナスエネルギー」。このキーワードは平成『ウルトラセブン』1996年版でも使用された由緒正しいワードだが、ウルトラシリーズのマニアならばご承知の通り、往年の『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)のキーワードでもあり、同作では「人間の悪い心」=「マイナスエネルギー」が怪獣を産み出すという設定にもなっていた。
 『ギンガ』におけるダークルギエルの悪事も、結局は『80』におけるマイナスエネルギーと同等のものであり、それどころかそれを意識的・積極的に押し進めたものですらあることを示唆してもみせる「マイナスエネルギー」というキーワードを織り交ぜたこのセリフはマニアくすぐりでもあり、実に嬉しいところでもある。


 筆者は『ギンガ』が一応の学園ものとして製作されることを知った際、これは『80』学校編でせっかく花が開きかけた新たな鉱脈・可能性が、種々の事情で打ち切らざるを得なかったことに対する「リベンジ」戦であると捉えたものだった。
 だが、ウルトラマンエイティこと主人公・矢的猛(やまと・たけし)隊員が中学校の教師も兼任していた『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)第1クールの学校編でも、不登校(登校拒否)の中学生の苦悩にスポットを当てた第2話『先生の秘密』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100507/p1)や、特定の生徒が発する失恋のマイナスエネルギーが怪獣に力を与えた第3話『泣くな初恋怪獣』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100516/p1)など、一応の「ドラマ性」はあったかもしれないが、エンタメ的にはやや陰鬱な作風になってしまっていたことも否めない。
 そして、本作『ウルトラマンギンガ』もまた結局はこの『80』序盤の弊にハマってしまったところがあったようにも思うのだ。


 少々ケチをつけてしまったが、実際のところ筆者は、当時の年長マニア向けを意識していたところが濃厚にある90年代後半のややシリアス志向な平成ウルトラ3部作や、その反対に怪獣を倒すのではなく保護するなどとマイルドに過ぎる『ウルトラマンコスモス』(01年)、そのまた真逆に怪獣との和解の余地などまったくないヘビーな『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)などと比すると、本作『ウルトラマンギンガ』のことを個人的には好ましくすら思ってもいる。
 ジュブナイルドラマでありながらも、まがりなりにも「悪の軍団」を設定することで「善VS悪」の図式を強調し、「中堅幹部」も交代していく変化のあるシリーズ構成を採用したり、完全なる1話完結ではなく各話のゲスト怪獣を倒したあとでもラストや終盤に次回への強烈なヒキともなる、巨大ロボット・ジャンキラー(=ジャンナイン)の挑戦や悪のウルトラ兄弟を登場させるようなパターン破り(!)も多用して、次回へと「つづく」となるようなノリの作劇も評価はしている。


 本作『ギンガ』では、悪の中間管理職の立場のキャラとして「闇のエージェント」が登場した。
 この「敵首領」とは別に悪の組織内に「中堅幹部」という役職があるという設定は、昭和の『仮面ライダー』第1作(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)の第3クールこと2号ライダー編における敵組織・ショッカーの中堅幹部・ゾル大佐の登場に端を発する。そして、この手法は日本の特撮変身ヒーローや合体ロボットアニメの敵組織の基本フォーマットともなった。


 この中でもさらに昭和の『仮面ライダー』シリーズの敵組織・ショッカーやデストロンほか、テレビアニメ『デビルマン』(72年)のデーモン一族、『マジンガーZ』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)のドクター・ヘル一味や、『ライダー』を放映していた毎日放送(大阪)側のプロデューサーの要望で『ジャンボーグA(エース)』(73年・円谷プロ)のレギュラー敵・グロース星人軍団などには、敵組織の「中堅幹部」が1~2クールごとに次々と交代していく作劇を導入!
 単なる1話完結マンネリのルーティンになりがちなこの手の作品に変化を与えて、中堅幹部との最終決戦や、敵組織の内紛劇・幹部交代劇なども構築することで、実に移り気で飽きっぽい子供たちのジャンル作品への興味関心も惹起しようとしてきた。


 悪の組織にヒエラルキー構造を与えることで敵のスケール感も増大させるこの手法は、以降のジャンル作品のスタンダードともなった。しかし、敵の中堅幹部が1~2クールごとに交代していき、その都度イベント編をつくることで盛り上がりをつくっていくという作劇は、残念ながらあまり継承されてこなかったのも事実だ。


 これらの70年代変身ブームやロボットアニメブームのジャンル作品を大量に観て育った世代が製作現場に入ってきたのが1990年代。かつて面白いと思ったことの再現を! といったところだったのだろう。子供向け合体ロボットアニメ『熱血最強ゴウザウラー』(93年)の敵組織・機械化帝国や、『星獣戦隊ギンガマン』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110711/p1)の敵組織・宇宙海賊バルバンなどでは、悪のレギュラー中堅幹部がクールごとに次々と交代していく展開が試みられて、作品を娯楽活劇としてもよく盛り上げることができていた。


 しかし、我らがウルトラシリーズでは、そもそも初代『ウルトラマンからして悪の組織が登場せず野良怪獣の退治がもっぱらとされたことと、マニア評論の世界でも「ウルトラ」は単なる「勧善懲悪」ではなく時に善悪が反転することに深みがあるなどと過剰に理論武装をしたことが裏目に出てしまい、怪獣を倒すことの倫理的な是非などを過剰に気にし過ぎてもしまい、このままでは「ヒーローVS怪獣」という図式自体を自己否定するしかなくなり、どうやっても壮快な娯楽活劇作品がもうつくれないところまでの袋小路(ふくろこうじ)に陥(おちい)っていたとも思うのだ。
 そのへんのボトルネックをご破算にして解消、敵の怪獣をやっつける爽快感を回復するためには、「悪の軍団」という設定を導入して、その「敵首領」や「中堅幹部」とのお約束の馴れ合い的なマンネリ抗争劇にするしかもうなかったのではなかろうか?(笑)
 『ギンガ』本編ではそこにツバをつけた上で、その上で本作『残された仲間』では「闇のエージェント」の設定をていねいにおさらいしつつも、それ自体をふくらますかたちで、ムリがないどころか『ギンガ』の「番外編」どころではなく「正道」ともいうべきストーリーを構築できてもいる!


 『80』学校編でも、第9話『エアポート危機一髪!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100627/p1)や第10話『宇宙からの訪問者』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100704/p1)のように、「ワル」では決してないが品行方正な「いいコ」ちゃんでもない桜ヶ岡中学校の生徒たちが恋のキューピットとして小さなイタズラを繰り広げる「ドタバタ学園ラブコメ」風味だった作品群の方が、むしろクライマックスでも「ドラマ」と「特撮」が華麗に融合しており『80』序盤よりも完成度が高かったりした。
 その伝で云うと、悪役だが憎めない小悪党の域にとどめた悪の中間管理職であるマグマ星人の暗躍をコミカルに描いて、より大声を出した方が最後にバトルに勝てる少年漫画の伝統(笑)に則(のっと)って健太と千草が正義の絶叫をあげる本作『残された仲間』こそが、本来あるべき『ウルトラマンギンガ』の番組フォーマットであったとも考えてしまうのだ……


2014.3.30
(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2014年GW号』(14年4月27日発行)~特撮同人誌『仮面特攻隊2015年号』(14年12月28日発行)所収『ウルトラマンギンガ』最終回評より抜粋)


『假面特攻隊2015年号』「ウルトラマンギンガ」番外編・関係記事の縮小コピー収録一覧
東京新聞 2014年4月12日(土)夕刊 祖師谷「光の国」に ウルトラ兄弟街灯に変身 3商店街 あす式典
・スポーツ報知 2014年3月14日(金) レッツゴー!! 特撮HOCHI 怪獣酒場きょう開店フォッフォッフォ 地球人に開放 川崎1年限定 (延長されて2020年現在も営業中!)


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ウルトラマンX(エックス)』前半評! 5話「イージス光る時」・8話「狙われたX」・9話「われら星雲!」 ~ゼロ・マックス・闇のエージェント客演!

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ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』(14年)

  (近日中にUP予定!)

『劇場版ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』(15年) ~第2期ウルトラの「特訓」「ドラマ性」「ヒーロー共演」「連続性」も再考せよ!

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(文・久保達也)
(2014年3月30日脱稿)

ウルトラマンタロウ復活! 月面でのド迫力・最終決戦!


 『ウルトラマンギンガ』最終回(第11話)『きみの未来』では、本作のメインの舞台となっていた山あいに近い降星(ふるほし)小学校の卒業生たちが校歌を歌うことによって発せられた「光」が結集し、卒業生たちの「タロウ~~~~!!!」の叫びとともに、スパークドールズ(ソフトビニール人形)化しているタロウの足のウラに膨大な数の変身アイテム・ギンガスパークを次々と接触させることによるエネルギー注入によりウルトラマンタロウが遂に元の巨大ヒーローの姿へ、いや超巨大化した宿敵に対峙するために超巨大サイズで復活!
 『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)でのタロウ客演前後編(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061203/p1)でさえJASRACジャスラック日本音楽著作権協会)への高額支払(汗)のために遂に実現しなかった『タロウ』のオリジナル主題歌が流れる中、『ウルトラマンタロウ』(73年)第1話『ウルトラの母は太陽のように』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)において、初変身で宇宙大怪獣アストロモンスに対して変身前の東光太郎(ひがし・こうたろう)がそうであったごとくボクサーのように連続で繰り出したのが印象的なアトミックパンチを、タロウが本作『ギンガ』のラスボスであり漆黒の人型巨人である闇の支配者・ダークルギエルを相手に披露する場面はマジで感涙(かんるい)した!


 ギンガとダークルギエルのラストバトルは、最終回後の後日談である番外編『残された仲間』同様、月面で描かれた。
 ミニチュアを用意しなくてもよいという消極的な理由ではあろうものの、それが逆にバトルを宇宙的な規模にまで広げることになるという利点もある。まぁ、リアルに考えれば地球で街をブッ壊しながら戦うのは人類にとって大迷惑なワケであり(笑)、ウルトラマン的にも当然といえば当然の措置ではある。
 もっとも「特撮」ジャンルというのは、壮大なる都市破壊描写を無責任に楽しんでしまうような本質的に不謹慎なジャンルでもあるので(爆)、毎回月面バトルをやられるのはカンベンしてほしいけど(笑)。


 その月面バトルも第1話『星の降る町』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)におけるギンガ初登場場面でも使用された、アベユーイチ監督お気に入りの回転台に乗せて撮影したと思われる、ギンガVSダークルギエルを360度グルグルとコマのようにその場で高速回転させながら、歩行や走行せずにスベるように横移動もしていく槍術合戦(そうじゅつがっせん・ヤリによる打ち合い)は絶品である!
 激闘の末に吹っ飛んだ両者の三叉(さんさ)のヤリが画面手前に突き刺さり、その奥にロング(引き)でギンガとダークルギエルが戦うさまを描く演出もまた然(しか)り!
 ダークルギエルが敗れるとともに画面中央に刺さった赤い三叉のヤリが消滅し、画面奥に輝く青い地球を画面手前のギンガが振り返って見つめる描写も実にセンスがいい!


 特撮演出・アクション演出に関しては申し分のない出来であったと思える。だが……(汗)


商業面を考えても、最終決戦はヒーローvs怪獣軍団の集団総力戦にしてほしかった!


 が、それにしてもである。せっかく降星小学校の卒業生たちがあれだけ多く集まったのである。
 彼らの光が結集したのなら、タロウばかりではなく降星山に眠るほかのウルトラ戦士の人形たちも全員とはいわずとも相応数を復活・巨大化させてもよかったのではあるまいか!?


 いや、狙いはわかるのだが、そもそもあんなに数十人もエキストラを集める必要はなかったような気もするのだ(汗)。
 第1話に登場した悪徳産廃業者(あくとく・さんぱいぎょうしゃ)とか、第2話『夏の夜の夢』に登場したバイクでの追跡魔、第3話『双頭の火炎獣』に登場した連続放火魔の女性――放火って罪重いから、そう簡単にシャバに出ては来られないハズでは? あっ、このテの特撮ヒーローものはリアリズムで観るような作品群ではなかったですね・笑――、第7話『閉ざされた世界』&第8話『奪われたギンガスパーク』に登場した賭博(とばく)事件に関わった元ボクサーなど、ゲスト主役たちだけでも成り立ったような気もするのである。


 自身が犯してしまった罪のつぐないだとばかりに、彼らが昭和のウルトラ兄弟や平成ウルトラマンたちにウルトライブ(巨大化変身)して悪の怪獣軍団と戦ったら、それはそれで彼らのやや重苦しかったドラマもオセロゲーム的に帳消しになって、燃える展開になったのでは!?


 ダークルギエル側にしてもまた然り。
 それこそ映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)で悪のウルトラマンことウルトラマンベリアルが怪獣召喚アイテム・ギガバトルナイザーで百体の怪獣を怪獣墓場から復活させて操ったように、人形状態の怪獣たちを悪人たちのダークライブ(合体変身)抜きでの巨大怪獣軍団として復活させて操り、ウルトラ兄弟たちと集団バトルを演じさせるべきではなかったか!?


 円谷プロに着ぐるみが現存しバンダイから『ウルトラ怪獣500』として発売されている怪獣たちとしては、宇宙怪獣エレキング・宇宙ロボットキングジョー・一角超獣バキシム・異次元超人巨大ヤプール・再生怪獣サラマンドラ・超古代怪獣ゴルザ・円盤生物ロベルガーなどがいる。超メジャー級の奴らばかりだが、これらの怪獣こそ『ギンガ』最終回にせめて登場させるべきだったのでは?
 撮影現場にまる1日拘束するのだから、ひとりあたり1万円くらいはかかっているであろうエキストラを数十人も雇うくらいなら、その分の金額でスーツアクターなりそのサポートスタッフを雇うことで、これらヒーロー&怪獣の着ぐるみキャラクターの終盤での登場を拡充させるべきだったと考えるのである。


 『ギンガ』最終回が放映されたのは2013年12月18日、まさにクリスマス商戦の真っ直中(まっただなか)であった。
 そんなときにウルトラマンVS大怪獣軍団の総力戦を描くことで、『ウルトラヒーロー500』や『ウルトラ怪獣500』をガンガン売りまくろう! という発想にナゼ至らないのであろうか?


 同じころに放映された『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)ブレイブ41『ヤナサンタ! デーボスせかいけっせん』&ブレイブ42『ワンダホー! せいぎのクリスマス』では、10人のキョウリュウジャーと10大獣電竜と夏休みの映画版に登場した獣電竜第0号こと古代獣電竜トバスピノまでもが勢ぞろい! 「かみつき合体」のバリエーションによってさまざまな戦隊巨大ロボットも登場! 東京・ニューヨーク・ロンドン・ハワイ・中国と世界を股(また)にかけた総力戦を繰り広げていたのである!
 スーパー戦隊シリーズでは少なくともここ15年ほど、クリスマス商戦の時期になるとそうした総力戦が描かれてきた。そうすることによって、年明けには関連玩具の主力商品が店頭からほぼ姿を消してしまうほどの好成績をおさめてきたのである!


 いや、スーパー戦隊に比べ、若干(じゃっかん)アダルトな作風の平成ライダーの年末放映作品でさえも同様である。
 『仮面ライダーカブト』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070211/p1)終盤の12月放映分には、すでに退場していたハズの仮面ライダーザビー仮面ライダードレイクを再登場させたり――かつてとは異なる別人が変身しているのだろうとの解釈が可能な範囲で!――、1~2月スタートから9~10月スタートに変わって以降の『仮面ライダーウィザード』(12年)第52話『仮面ライダーの指輪』&最終回(第53話)『終わらない物語』の番外前後編においても、新番組を控えての在庫処分一掃セールとばかりに平成全15人ライダーVS大怪人軍団との集団バトルを描いていたのである!


 昭和の第2期ウルトラシリーズ擁護派としては残念なことだけど、重傷でウルトラセブンに変身できなくなってしまったモロボシ・ダン隊長はいずれは回復して再変身が可能になって大活躍するのだろうと当時の子供たちの誰もが期待をしていたのにもかかわらず、遂に再変身させずに終わってしまった往年の『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)とは異なり(汗)、ソフビ人形の姿にされていたウルトラマンタロウを遂に復活させて敵とのバトルまで実現させたことは実に喜ばしいし賞賛にも値する。
 そのことは充二分に強調しておきたいが、その後に主人公ウルトラマンであるギンガを立てるためとはいえ、タロウをまた元の人形の姿に戻してしまうのでは……
 タロウが少々弱く見えてしまうのであって、やはり残念なのだ。


 ラスボスである悪の超人・ダークルギエルとの決着は主役ヒーロー・ギンガに譲るにしても、タロウも超巨大サイズから通常の巨大サイズに戻ったことにしてギンガと同時並行で雑魚(ざこ)怪獣たちと戦っていた方が有用感も出せるし、画面的にも賑やかになったのではあるまいか!?


「ドラマ性」>「娯楽活劇性」の構図自体を疑え!


「今回劇場スペシャルなんだから、物語っていう考え方ではなく、目で見る怪獣図鑑にしたらどうですか」

(『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』劇場売りパンフレット(14年3月15日発行・松竹株式会社事業部)・原口智生監督インタビュー)


 この言葉に『ギンガ』スタッフたちの考えが逆説的に象徴されているように思える。
 この2014年3月公開の『劇場スペシャル』第2弾『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』(14年・松竹)、そして昨13年9月に公開された『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』(13年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200820/p1)第1弾も、そうした趣向が凝(こ)らされた娯楽活劇性の高い作品に仕上がったとは思える。


 だが、先の原口監督の発言は裏を返すなら、その分テレビシリーズでは「物語」をしっかりとやろうというスタッフたちの意向の発露と思えてしまうのである。
 「物語」をしっかりやる、つまり「ドラマ性」を高めるためには「娯楽活劇性」は削(そ)ぎ落とさねばならない、などという古クサい考え方をどこかに残しているのではないのか? 『ギンガ』全11話を視聴し終えて感じるのは、やはりそういうことなのである。


 先にあげた『キョウリュウジャー』ブレイブ41&42にしろ『ウィザード』第52話&最終回にしろ、たしかに「特撮演出」「アクション演出」が主体の話ではあった。
 しかしながら、だからといって決して「物語」がおざなりになっていたワケではなく、「特撮」「アクション」から自立した「ドラマ」はきちんと描かれてはいたのである。
 「ドラマ性」と「娯楽活劇性」はきちんと両立する! ということは、スーパー戦隊平成ライダーが立派に証明してくれているのである。


 にもかかわらず、悪のウルトラ兄弟ことウルトラマンダークやウルトラセブンダークが登場し、ラスボス級怪獣グランドキングも登場、少年少女たちが初代ウルトラマンウルトラセブンウルトラマンティガに変身して巨悪に立ち向かうようなイベント性がそれまでにもあったのに、せっかく復活させたタロウを活躍はさせたことはよいけれど早々に退場させてしまうのは爽快感に欠けるというもの。
 もしも仮にギンガとタロウを共闘させたら「ドラマ性」が低くなってしまうなどと考えているくらいに円谷プロ側に旧態依然な考え方が残っているのならば、いっそのこと「ドラマ性」なんかこの際、潔(いさぎよ)く捨ててしまうべきだとさえ思えるほどである。


 それが円谷プロの「未来」のためなのである。


ギンガ「未来は変えることができる。良いようにも、悪いようにも。それを成(な)すのはきみたちだ」


 ギンガからヒカルたちに託(たく)された最後のメッセージは、そっくりそのまま円谷プロにお返ししたいほどだ(笑)。


超低予算作品でもスケール感や視覚的インパクトを!


 「娯楽活劇性」の観点からすれば、ラスボスであるダークルギエルがたかが郊外の小学校をひとつ破壊するだけというのも、超低予算作品の都合とはいえ残念ではある。
 「この星のすべての人間の時間をとめてやる!」と宣言したところで、視覚的なインパクトはあまりにも弱すぎる。


 せめて最終回くらい特撮ミニチュアを用意するくらいはできなかったものか? だからエキストラの人件費なんか削(けず)ってミニチュアのレンタルや製造費用に回せ! と云いたくもなるのだ(笑)。
 最終回後に追加で製作された『ウルトラマンギンガ』の『番外編』であるハズの『残された仲間』の方ではそのあたりがうまくクリアできていたのだから、ミニチュアに代わるようなスケール感の拡大や視覚的にインパクトを与えることは、たとえ低予算でも工夫すればいくらでもやり方はあったハズである。


 特撮映像や商業性のことをさらに云うなら、ラストで光となり降星山から宇宙へと帰っていく怪獣やウルトラマンたちも、光ではなく第1話で描かれた「ウルトラ大戦争」でダークルギエルにスパークドールズ人形にされてしまい宇宙空間をさまよう場面の反転描写として、スパークドールズ人形の姿で宇宙に帰っていく描写にした方が、幼児たちはソフビ人形がほしくなったのではあるまいか?
 まぁ、そーなると撮影や合成はいっそう手間がかかりそうだし、怪獣はともかくウルトラマンたちを人形の姿のままで宇宙に帰してしまってよいのかという問題も生じてくるが(笑)。


 ウルトラの父や母や兄さんたちなどのいわば肉親よりも、ギンガを復活させることを優先させ、ギンガにパワーを与えて再び人形に戻った自己犠牲的な姿は、タロウらしいと云えばたしかにそうとも云えはする。
 映画『ウルトラ銀河伝説』でも、悪のウルトラマンことウルトラマンベリアルによって輝きを消されそうになった光の国の人工太陽・プラズマスパークの光を最後まで守り通す姿が描かれていたから、そうしたキャラクターを継承するのもたしかに悪いことではないのかもしれない。
 『ウルトラマンA(エース)』(72年)第27話『奇跡! ウルトラの父』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061105/p1)において、タロウの実の父であるウルトラの父が最後のエネルギーをウルトラマンエースに分け与えて復活させ、自身は死してしまった姿をも彷彿とさせる……


 しかし、これは痛し痒しなのである。これではウルトラマンタロウウルトラの父が弱く見えてしまうのである。
 やはり、当時の子供たちもゲストとして初登場したウルトラの父には、圧倒的に強くて終始優勢にバトルも進めて、最後に敵を必殺技でトドメを刺してみせるくらいの壮快な大活躍で魅せてほしかったのである!


全特撮マニアの願望! 津川雅彦ウルトラマンキングに変身すべきだった!(笑)


 それはそうと、第9話『漆黒のウルトラ兄弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200825/p1)でタロウの存在を以前から知っていたことが発覚し、主人公青年・ヒカルと同様に「選ばれし者」の紋章が腕に浮かびあがるのをタロウに目撃されたことで、ヒカルの祖父で銀河神社の神主(かんぬし)である礼堂ホツマもまたヒカルと同様「選ばれし者」であり、ウルトラマンギンガと合体する資格もあったことが示されるというオイシい場面があった!
 そればかりでなく、美鈴・健太・千草に「これを使いなさい!」と宇宙三面魔像ジャシュラインの人形を差し出してもみせている!


 多くの特撮マニアがそう思ったであろうが、「選ばれし者」であり事情通でもあるのならば、いっそのことホツマがウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングにウルトライブ(巨大化変身)すればよかったのに!(笑)
 津川雅彦(つがわ・まさひこ)などというおもいっきりのメジャー俳優をせっかく起用しているのだから、彼がキングに変身するのであれば、スポーツ新聞各紙の芸能トップ記事を飾るだろうし、各紙の紙面を取り上げる朝のワイドショーなどでも取り上げられたであろうから、インパクト絶大ともなる!
 これは先の映画『ウルトラ銀河伝説』でウルトラマンキングの声を小泉純一郎・元首相が務めた際のスポーツ新聞各紙やそれを取り上げた朝のワイドショーに匹敵するだけのインパクトとなっただろう!


 かつては青春スターだった山下真司(やました・しんじ)が『キョウリュウジャー』終盤でキョウリュウシルバーに「キョウリュウチェンジ!」(変身)してくれて、それがスポーツ新聞各紙の紙面を飾るご時世なのである!――山下氏にはあらためて敬意を表します!――


 あるいは、『ギンガ』のテレビシリーズではホツマの正体を明かさないでおき、


ヒカル「今度の『劇場スペシャル』で、遂にオレのじいちゃんの正体が明らかになるんだ。みんな見逃すなよ!」


などと正体バレバレでも(笑)、『ギンガ』も放映されてきた『新ウルトラマン列伝』枠で再三告知することで視聴者を映画『劇場スペシャル2』に誘導し、そこでウルトラマンキングとしての正体を明かす! なんていうアザトい商売もアリだったと思えるのである。


 ついでに、たとえばギンガは「未来から来たウルトラマン」という設定があるけど、実はキングの「未来の息子」か「孫」か「子孫」である! などというコジツケの追加設定でもつくって、子供たちやマニア向けの話題性をつくってもよかったのでは? ……エッ、ウルトラマンキングの孫は、ウルトラ兄弟の長男・ゾフィー兄さんだって!? そーいや、そーいうウラ設定もあったっけ?(笑)


 ウルトラマンメビウスウルトラマンタロウウルトラマンエイティの教え子であるとか、ウルトラマンゼロの父がウルトラセブンで師匠(ししょう)はウルトラマンレオであるとか、そうした過去の人気ヒーローと現役ヒーローに関連性を持たせた1970年代前半の第2期ウルトラシリーズの「ウルトラ兄弟」の設定を援用・拡張するかたちで、かつて夢中になった世代の心の琴線(きんせん)を揺り動かしたり、子供たちの関心を旧作にも向ける工夫が、近年のウルトラシリーズではなされてきた。
 なのに、ギンガが単に未来からやってきたというだけで出自がハッキリしないというのでは、商業展開上でも不利になると思えてならない。
 ヤンチャで不良っぽくて人間クサかった直近の主人公ヒーロー・ウルトラマンゼロとの差別化でなまじっかなキャラ付けではゼロに負けてしまうからと、6年ぶりのテレビシリーズ再開にあたってはあえて「原点回帰」とし、初代ウルトラマン的に「無個性」にして「超越性」や「神秘性」を前面に押し出したことも理解はできる。
 しかし、少なくとも近年では人間クサい、あるいは漫画アニメ的に性格が誇張されたウルトラマン像の方が勝算があったのではなかろうか?


 映画『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』ではラストでほんのわずかに登場したホツマであったが、あれだけでも莫大(ばくだい)なギャラが吹っ飛ぶのであろうから(笑)、それならそこまでの営業効果をもたらすほどのなんらかの戦略――もちろん氏がウルトラマンキングに変身することを大々的にフィーチャー!――が、フツーはあって然るべきだったと考えるのだ…… それについては非常に残念!


2014.3.30
(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2014年GW号』(14年4月27日発行)~特撮同人誌『仮面特攻隊2015年号』(14年12月28日発行)所収『ウルトラマンギンガ』最終回評より抜粋)


『假面特攻隊2015年号』「ウルトラマンギンガ」最終回・関係記事の縮小コピー収録一覧
夕刊フジ 2014年4月3日(木) ぴいぷる シリーズ老いに逆らう 篠田三郎 いぶし銀の声 誠実で真面目、安心感を与える 朗読で被災地の子供たちを励ましたい 舞台『八月の鯨』客演 5月から全国100ステージ
日刊ゲンダイ 2014年3月13日(木) 懐かしのアイドル秘話(中森明夫)第8話 ひし美ゆり子 アンヌ隊員、脱ぐ!!(今は亡き青年誌「平凡パンチ」や70年代出演作品、80年代イベントの思い出)


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#ウルトラマンギンガ #劇場版ウルトラマンタイガ #津川雅彦 #ダークルギエル



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ウルトラマンギンガ』後半評 ~悪のウルトラ兄弟&ラスボス級怪獣グランドキング登場! だけれども!?

(文・久保達也)
(2013年12月10日脱稿)

変身怪獣ザラガス登場! ヒロインがレッドキングに変身! 悪のウルトラ兄弟出現!


 第8話『奪われたギンガスパーク』には、往年の人気怪獣であり映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)で復活を果たした変身怪獣ザラガスが登場!
 初登場時の背面の甲羅(こうら)に覆(おお)われた第1形態を初代『ウルトラマン』(66年)以来、実に半世紀ぶりに披露! そればかりではなく全身に膨大にあるパイプの穴状の部分からハリネズミのような長くて鋭いトゲを生やして攻撃するという、いわば第3形態ともいうべき新たな姿までもが描かれる!


 さらに、『ギンガ』シリーズ後半のレギュラー悪役であり常に人間大サイズで暗躍する暗殺宇宙人ナックル星人・グレイに、変身アイテム・ギンガスパークを奪われた主人公青年の礼堂ヒカル(らいどう・ひかる)に代わって、なんとメインヒロインの石動美鈴(いするぎ・みすず)がどくろ怪獣レッドキングにウルトライブ(巨大化変身)するパターン破り!
 美鈴には『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)に登場したウルトラの星の王女・ユリアン、アニメ映画『ウルトラマンUSA』(89年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100821/p1)に登場したウルトラウーマンベスあたりに変身してほしいと思っていたが、まさかのレッドキングとは!?(笑)


 第9話『漆黒(しっこく)のウルトラ兄弟』には、「黒いウルトラマン」こと初代ウルトラマンを模した「ウルトラマンダーク」とウルトラセブンを模した「ウルトラセブンダーク」が登場!
 映画『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』(13年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200820/p1)にも登場した「黒いウルトラマン」のバリエーションでもある暗黒破壊神ダークザギ――このキャラ自体もウルトラマンノアのカラーリングを黒くしたような存在――と同様、黒い全身にボディー上の赤いラインや赤い両眼のカラーリングは、悪役キャラクターとしてはアリがちでもやはりカッコいい!


 ゲスト悪役が悪の変身アイテム・ダークスパークでダークライブ(巨大化変身)した姿がウルトラマンダークなのだが、ヒカル青年が巨大怪獣に一度ウルトライブ(巨大化変身)してからウルトラマンギンガにウルトライブしていたように「二段変身」も披露! ウルトラセブンダークにも変身する!
 バトルの最中にマンダーク・セブンダークと自在に姿を変え、マンダークの姿では回し蹴りを、セブンダークの姿では跳び蹴りをウルトラマンギンガに見舞う!


 負傷したヒカルの代わりに、今度は美鈴ばかりではなく幼なじみのレギュラー少年・渡会健太(わたらい・けんた)とサブヒロインの久野千草(くの・ちぐさ)が3人まとめて、『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)でウルトラ兄弟の義父である「ウルトラの父」が客演した回である第37話『父の背中』に登場した宇宙三面魔像ジャシュラインに巨大化変身!
 磁力怪獣アントラーに戦いを挑むが、3人の息が全然合わず、あの動きにくそうなジャシュラインの造形で必死にパンチやキックを繰りだそうとする姿がひたすらおちゃめ(笑)。


 そこに登場したウルトラマンギンガ、アントラーの足下にすべりこみ状態のままでキックを浴びせる! 再び現れたセブンダークとギンガのキックが空中で激突するさまがカッコいい! さらにマンダークに姿を変え、レギュラー青年・一条寺友也(いちじょうじ・ともや)が搭乗して操縦する正義の巨大ロボット・ジャンナインの飛行形態に浴びせた初代ウルトラマンの必殺技でもある八つ裂き光輪は、原典の白色とは異なり黒と赤がギザ状に交錯した配色であり、マンダークのカラーリングとも統一が取れているあたりも嬉しいところだ!
 再度セブンダークとなり、ギンガを盾(たて)にして、その背後からジャンナインにセブンの必殺技であるエメリウム光線を額のビームランプから放つヒール(悪役)ぶりもまたいい!


グランドキング出現! 少年少女が初代マン・セブン・ティガに変身して立ち向かう!


 さらにさらに! 第10話『闇と光』には、往年の映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹)でも宿敵を務めた強敵・グランドキングのマイナーチェンジ版である超合体怪獣スーパーグランドキングが登場! 我々年長の特撮マニアにとってはラスボス級怪獣の登場であって強敵感もいや増すし、もちろん歴代ウルトラシリーズの知識がない御仁や子供たちが観てもそのボリューミーな巨体で、通常編の並みクラスの怪獣とは一線を画する強敵怪獣に見えるだろう。


 画面右に「ギンガ&ジャンナイン VS スーパーグランドキング」を、画面左に健太や千草らが窓から見守る学校の校舎を合成したカットが実に圧巻!


 スーパーグランドキングの体内にはナックル星人・グレイによって美鈴が人質にとられ、ギンガとジャンナインは思うように戦えない!


 そしてナンと! 美鈴を救うために、健太がウルトラマンティガに! 千草が初代ウルトラマンに! そして美鈴の父がウルトラセブンにウルトライブ(巨大化変身)!!


 予告編でも「ウルトラ兄弟揃い踏み!」などとクレジットされていたが、M78星雲・光の国出身ではなかったハズのティガが、あまりに当然のように「ウルトラ兄弟」扱いにされている!(笑) 初代マン・セブン・ティガの「ウルトラ兄弟」とジャンナインが、共同戦線でスーパーグランドキングに立ち向かう!


 が、これだけ魅力的な要素が満載であるにもかかわらず、一応は面白いし退屈もしないのだけれども、どこか高揚感や盛り上がりが今一歩という気もしないでもない……



「初期のプロットは、ラストにティガダークが出てくる以外は全く別の話で、登場怪獣もジャシュラインだったんです。話も王道のバトルストーリー+ヒカルの成長話という感じで……。『ギンガ』は急ピッチで制作が進んでいたので、設定も含めてプロット内容が流動的に変わっていきましたね」
「(一条寺)友也(いちじょうじ・ともや)と父親のエピソードは、シリーズ後半戦に持ち越す予定で書いていたんですが、最終的にそれが美鈴と父親に置き換わりました。ちなみに初期のプロットでは友也の父親がティガダークに変身したり、ヒカルがジャンナインにライブしたりと、結構設定が違っていましたね」

(DVD『ウルトラマンギンガ』第2巻 バンダイビジュアル 13年11月22日発売(ASIN:B00DOS6M84・B00DOS6M9S)・『ウルトラマンギンガ』SPARK NOTES(スパーク・ノート) Vol.2)



 前者は第5話『夢を憎むもの』、後者は第6話『夢を懸(か)けた戦い』について、脚本を担当した赤星政尚(あかほし・まさなお)が明かしたエピソードである。
 昭和ウルトラ直系の四半世紀後の正統続編である『ウルトラマンメビウス』のシリーズ構成やメインライターを務め、本来は少年漫画的な暑苦しい王道路線の作品を得意とする氏が書いた回でさえ、いつしか友也のダークな内面を強調したように筆者には思える「ドラマ主導」の話に変貌(へんぼう)を遂げてしまっていた。
 たとえ「ギンガ&ジャンナイン VS 闇の巨人ティガダーク&宇宙海人バルキー星人」という、本来ならば大喜びすべきタッグマッチ戦が描かれていようとも……


 『ギンガ』前半戦では巨大ヒーローバトルが本編で描かれる人間ドラマの単なる「延長戦」として、それをそのままなぞるだけの機能と化しているような印象を強く感じたものであった。そうした路線は後半戦においてもやはり踏襲されてしまうのだろうとは思っていた。
 もしそれを徹底するのであれば、登場人物をしっかりと描きこまなければ、人間ドラマの「延長戦」である巨大ヒーローバトルは盛り上がらないことになる。
 あまりこんなことは本来主張したくはないのだが、『ギンガ』という作品の物語構造がそうなってしまっている以上、これは必然かと思われる。


ラスボス級怪獣や悪や正義のウルトラ兄弟登場で賑やかなのに、ドコか重たさが残る理由とは!?


 第9話でウルトラマンダークやウルトラセブンダークにダークライブ(巨大化変身)したのは実はメインヒロイン・美鈴の父親である。本編を見るとふたりがどことなくぎこちない親子関係であることはうかがえる。だが筆者にはなぜ美鈴の父親がダークライブをしたのか、正直よくわからない(笑)。
 その背景となるものが、それこそ友也の父親のように一応は描かれているのならまだいい。が、美鈴の父親は第7話『閉ざされた世界』のラストで突然フラリと姿を見せる。
 そして第9話でヒカルに対し、唐突に「支配する者とされる者」の話をして悪の仲間に加わることをもちかけ、ヒカルはヒカルで「美鈴の和菓子にかける想い云々(うんぬん)」と叫び、美鈴の父がダークライブしたセブンダークを倒す。
 よくわからない理由で戦いが始まり、よくわからない理由で戦いが終わってしまう。いくらアクション演出が優れていても、これでは個人的にはバトルを楽しめるようには思えないのである。


 第10話にしても、ウルトラ兄弟が戦い始めたかと思えば、美鈴を闇の世界から連れ戻そうとしたヒカルと美鈴の口論が延々と描かれてしまう。そればかりではなく、ヒカルの祖父で銀河神社の神主である礼堂ホツマと降星小学校の白井杏子(しらい・きょうこ)校長との間で、「闇の支配者」をめぐる長々としたやりとりが繰り出される。
 今回最もオイシイはずであるウルトラ兄弟が活躍する場面を寸断してしまうかたちで、こうした描写が頻繁(ひんぱん)に割り込んできてしまうのだ。実際、ウルトラ兄弟の活躍場面は時間にしたらほんのわずかにすぎず、ギンガ登場以前にみんな敗れてしまう。相手は「超合体怪獣」なのだからウルトラ兄弟フルボッコにしても集団いじめにはならないのだし(笑)、せめてその回のラストまでは引きずって活躍させるべきではなかったか?
 美鈴の父の「娘を想う力」とか健太や千草の「友を想う力」なんて、所詮(しょせん)はヒカルと美鈴の「愛の力」にはかなわないのだ、などと主張しているようにも思えてきてしまう。「娘を想う力」と「友を想う力」と「愛の力」すべてをストーリー上でも全肯定して、それらが結集してスーパーグランドキングを倒した方がドラマ的にもテーマ的にも盛り上がったのではなかろうか? せっかくギンガがスーパーグランドキングに豪快なジャイアントスイングかましても、これではなぁ……


 前半戦ではセミレギュラーだったホツマや校長が後半戦では毎回登場。
 さらに美鈴の父親役は80年代の青春映画系の角川映画に出演して人気を博していた好青年・野村宏伸(のむら・ひろのぶ)、建設会社の開発本部長役が『3年B組金八先生』PART2(80年)でメインヒロインの女子生徒役などを務めていた川上麻衣子(かわかみ・まいこ)と、まさに筆者ら80年代に中高生であったオッサンの世代的には「どストライク!」なキャスティングではある。だが、ホツマ役の津川雅彦(つがわ・まさひこ)、女校長役の木野花(きの・はな)を含め、あらためてマジでギャラがよく払えたなぁ(笑)。
 そのキャスティング自体はよいのだが、そんなおカネがあるのなら、スーツアクターを増やしてウルトラマンや怪獣のアタマ数を増やしたり、ミニチュアに少しでも多く予算を割り振ろうとか、そういう発想にはならなかったのかなぁ……


 実は筆者が『ギンガ』後半シリーズで最も楽しめたのは、ウルトラマンタロウをリングアナにバンダイ発売のソフビ怪獣『スパークドールズ』を観客にしてリング上で描かれた第7話のクライマックスバトルである(笑)。なんか本編を実写でクライマックスのバトルをアニメで描いた変身ヒーロー『プロレスの星 アステカイザー』(76年・円谷プロ)でアニメの世界に突入する「カイザー・イン!」みたいで(笑)。
 第7話のクライマックスは一連の『ギンガ』の中では、近年ではかなり軟化が進んで「お笑い」も許容するようになったと思われていた特撮マニア間でもかなり評判が悪いようなので(爆)、第7話のそれを面白いと思ってしまうような感性も、過度な人間ドラマ重視に批判的である筆者の無意識から来る「逆張り」に行き過ぎた感覚である可能性も高いが(笑)。


 しかし、ただでさえ『仮面ライダーウィザード』(12年)最終回前後編における平成15人ライダー勢ぞろいや、『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)ブレイブ39『せいぞろい! 10だいキョウリュウパワー』における遂に10人(!)がそろったキョウリュウジャーの、文字通りの爽快な「大活躍」を観せられたあとだけに、せっかくウルトラ兄弟を出しても活躍も少ないし、やや重ための人間ドラマが絡んできて作風も重たくしてしまうのでは、見劣りしてしまうのもやむなしかと……


 最終回こそ、「感動のフィナーレ」となることを期待したい。


2013.12.10
(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『ウルトラマンギンガ』後半合評1より抜粋)


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大江戸もののけ物語 ~NHKの妖怪ドラマ。女性目線のライトドラマ風味もドー観る!?

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『大江戸もののけ物語』 ~NHKの妖怪ドラマ。女性目線のライトドラマ風味もドー観る!?

(文・田中雪麻呂)
(2020年7月30日脱稿)

『大江戸もののけ物語』 ~令和の御世(みよ)のNHKの妖怪ドラマについて。


 「寺子屋(てらこや)の爽(さわ)やか先生が、ツンデレ妖怪・天の邪鬼(あまのじゃく)とタッグを組んだ! 奇跡の相棒(バディ)が大江戸に巣喰う妖(あやかし)を打ち破るッ!!」。


 ダサダサだが、惹句(じゃっく)を仕立てるなら、そんな感じになるだろうか。


 2020年7月17日(金)夜8時から、NHKBSプレミアムで始まった『大江戸もののけ物語』がそれである。


 主人公は岡田健史(おかだ けんし)演じる、旗本(はたもと=高位のサムライ)の次男坊・新海一馬。設定年齢25歳(岡田の実年齢は21歳)。弱気で武術もニガテだが、心の優しい寺子屋(てらこや=児童のための学問所)の先生である。
 岡田は2018年に『中学聖日記(TBS系)』の有村架純(ありむら かすみ)の相手役として、千人以上の応募者の中から抜擢されたシンデレラ・ボーイである。


 天才子役として鳴らした平尾菜々花(ひらお ななか)が、お雛(ひな)という寺子屋の生徒役で一馬をサポートする。設定年齢10歳(平尾の実年齢は14歳)。
 亡母への未練断ちがたく、(何故か)廃屋で火焔型土器(かえんがたどき=縄文時代中期を代表する土器)に願いを掛けていたところ、その土器が突然粉々に割れ、中から(何故か)妖怪・天の邪鬼が姿を現す。天の邪鬼とは何事も他人と反対のことを言っては困らせる偏屈(へんくつ)な妖怪である。


 現れた天の邪鬼役は、キッズモデルから着々とキャリアを重ね、今や性格俳優の域の本郷奏多(ほんごう かなた)、29歳。(我々特撮マニア的には深夜ドラマ『怪獣倶楽部~空想特撮青春記~(2017)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170628/p1)の主人公青年!)
 顔にはヒキツリがあり、身体中に土器を思わせる土くれが張り付いておりミイラ男の包帯のよう。イケメンの彼には初の汚れ役であろう。


 本郷といえば、かの秦(しん)の始皇帝の若き日々を描いた青年誌漫画原作の大作邦画『キングダム(2019)』で、世の女性たちの憧れのアクター・山﨑賢人(やまざき けんと)と吉沢亮(よしざわ りょう。『仮面ライダーフォーゼ(2011)』の2号ライダー・仮面ライダーメテオ役!)を向こうに回して、冷酷無残な敵役(かたきやく)として存在感を見せつけていた。
 劇中のクライマックスを迎えると、本郷が王宮の衆人環視の中で吉沢にタコ殴りされ、血反吐(ちへど)を吐いて倒れるところで映画は終わった(笑)。
 当時の資料(「キングダム新聞(日刊スポーツ新聞社 2019年4月12日刊)」)を読むと、同作の原作者・原泰久、松橋真三プロデューサーらメインスタッフ満場一致で、悪役には本郷しかいないとなり、なんとか口説き落としたとある。ボコられ役のイメージがメインスタッフ間でほぼ本郷に一致していたというのも凄い話だ(笑)。


 その前は本郷はバラエティタレントとしても名を馳せた。
 潔癖症が高じて他者の作った料理が食べられず三食が駄菓子になってしまっているという触れ込みでイジられていた。中尾彬(なかお あきら)ら重鎮(じゅうちん)で食通の先輩俳優が本郷を銘店に招待するのだが、彼は全くそれらに見向きもせず、涼しい顔で傍らからポッキーを出して噛(かじ)っていたりしていた(笑)。
 「変わり者」だというのが信憑性を帯びて業界に伝わったため、本郷が座長のTVドラマのキャスト間のSNS・LINE(ライン)グループで彼ひとりだけ外されていたことがあり、本郷本人が楽しそうにそのエピソードトークをしていたこともあった。


 いかんいかん。本郷が面白過ぎてつい彼のことばかり話してしまう。
 キャスト紹介に戻ろう(笑)。


 天の邪鬼を追いかけて来たかのように廃屋に出現したのが、妖怪仲間の猫又(ねこまた=歳を重ねた猫が化けたもの)と河童(かっぱ=水辺に棲む水怪)の両名である。
 猫又はファッションモデルでもある森川葵(もりかわ あおい)、河童は若くして人気劇団のトップだった青山美郷(あおやま みさと)がそれぞれ演じている。
 市井のお洒落な町娘と見紛う人間型の妖怪である猫又に対し、尖ったくちばしに頭には水をたたえたお皿、背中には甲羅を背負うという、古来からの伝承に忠実なビジュアルの河童は全身着ぐるみで設(しつら)えられていて、その対比が面白い。


 一馬は幼時に目には見えない「あやかし」に命を救われて以来、妖怪の魅力に取りつかれ、裏では妖怪研究者の顔も持っていた。
 天の邪鬼が招来した廃屋にお雛を追って居合わせた一馬は、件(くだん)の土器に付いていた勾玉(まがたま=古代日本の装身具。母親の胎内の胎児の形に由来するという説もある)を手にしたことで妖怪を見る能力を有するようになる。一馬は天の邪鬼ら三匹の力を借り、江戸の街に蔓延(はびこ)る悪しき妖怪を退治してゆく。


 そこに一馬を好ましく想う町娘・およう役に山田杏奈(やまだ あんな)、一馬の父親役で甲本雅裕(こうもと まさひろ)、寺子屋の和尚(おしょう)にイッセー尾形とBSの児童向けのドラマとしては、かなりの豪華キャストでストーリーは展開する。


 放送枠もこういう柔らかいものには珍しく、45分や50分ですらなくたっぷり一時間。
 コンテンツとしても充実しており、ドラマ本編が終了するや、我々的には『ウルトラマンダイナ(1997)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)ことアスカ隊員である歌手のつるの剛士(つるの たけし)がメインで唄う「妖怪音頭」が流れ、一馬とお雛、妖怪たちが小気味良く盆踊りをダンシング!
 それが済むとドラマ部分の「妖怪監修」担当の著述家・荒俣宏(あらまた ひろし)が登場。NHKらしく毎回テーマを変えて妖怪についての雑学・蘊蓄(うんちく)を披露。アカデミックな雰囲気で幕を引く。


 そつのない作りであり、新進俳優が凌(しの)ぎを削る、理想的なキャスティングといえる。家族で楽しく観られるプログラムでもある。そうだ、そのハズだったのだが……。


 これは個人的には失敗作に思うなぁ。
 圧倒的にセンスがないので悪目立ちしている。全5回で、現在2話目を見終わったところだが、来週また観るかどうかは分からない(笑)。 


 爽やか先生が屋根裏部屋(それは彼の自室の真上に人知れず設(しつら)えられている!)に籠(こも)るシーンが毎回出てくる。テロップで「妖怪研究室」と表示される。その時点で相当気持ちが下がる(笑)。
 室内には妖怪の研究書類が無数に、うず高く積まれている。照明設備はもちろん蝋燭(ろうそく)の灯りだけだ。鬼面(きめん)や曰くありげな瓢箪(ひょうたん)など、不気味グッズが所畝(せ)ましと吊り下がっている。
 圧巻なのは妖怪画の掛け軸だ! 蛇体(じゃたい)に怪しい女の首が生え、チロチロと舌を出している「濡れ女(ぬれおんな)」と、餓鬼(がき=餓えに苦しむ悪霊)のような体に赤いチリチリのパーマ状の頭髪を持つ「赤(あか)がしら」の二幅が掛けられている。


 一馬は幼少の折、寺子屋の和尚に与えられた「妖怪図鑑」を実直な父親に咎(とが)められ、燃やされるという憂き目に遭っている。その日から幾星霜(いくせいそう)、「妖怪研究室」は一馬の夢の所産なのだ。
 もうこの悪趣味な描写で若い女の子の視聴者たちは離れてゆく。だってキモいんだもの。主人公がオタクなんだもの(笑)。
 雑然とした「妖怪研究室」とは段違いに、一馬の自室とされている場所にはとにかくモノがない。アリバイ用の小さな書庫くらいだ。


 こういう好きなものには全てを傾注し、他者の目や気持ちに想像力が及ばないところも生粋のマニアであり、世にかくれもない異常性格者である(笑)。
 一般的には視聴者に感情移入させるために、主人公にはある程度、ノーマルな人格が求められる。伝奇ものなら尚更である。不思議な事象に翻弄されなければ、狂言廻しの役割も務まらない。


 しかし、この一馬は初回にして、自前の妖怪図鑑類を読み漁り、目的の妖怪をサクッとリストアップしてきてしまう。お雛もしっかり者だから、妖怪を見ても怖(お)じることはない。逆に、おどける河童の頭を張り倒したりしている(笑)。
 妖怪たちと対峙(たいじ)するのが、妖怪オタクと肝の座った可愛げのない子どもという二人だけである。何がしたいのか? 訳が分からない(笑)。


 役柄のキテレツさとは裏腹に、爽やか先生を演じる岡田はまだ二十歳(はたち)そこそこなのに極めて聡明な俳優である。このドラマのナビ番組で抱負を語っていたが、同席していた荒俣がその内容の確かさに感嘆していたくらいだ。


 スピーチの中で、岡田はまず


 「男尊女卑(だんそんじょひ)である時代劇なのに、一馬は女性で目下のお雛に仕切られているのが面白い。」


 と口火を切った。別のナビ番組でも岡田は


 「一馬には上から目線というものがない。お雛も妖怪の河童も、同列でハグできる性格のキャラなんです。」


 と分析している。
 ある程度収録を重ね、この作品の演出意図を岡田なりに汲み取り、稀釈された結論であるとおぼしい。


 岡田のコメントを聞き、やはり先だってNHKで放送された、『天装戦隊ゴセイジャー(2010)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20130121/p1)のゴセイレッドこと柔和な軟弱青年(笑)のアラタを演じた千葉雄大(ちば ゆうだい)が光源氏(ひかるげんじ)役を務めた『いいね! 光源氏くん(2020)』という同趣の連続ドラマを筆者は想起した。こちらは妖怪ではなく平安時代の古典長編小説『源氏物語(1008)』の光源氏が現代の東京に現れるというタイム・スリップものである。


 色男の源氏の君がお気楽にホストの真似事をしたりと能天気なライト・ドラマかと思いきや、終盤近くになって源氏はシェアハウスをしている現代人のヒロインに


 「『源氏物語』であなたが愛した女性で、幸せになった人は誰もいないから!」


 とキレられ、理不尽に冷や水を浴びせられる(笑)。


 もうダメなのだ。男性目線はその象徴的人物であっても赦(ゆる)されないのだ。光源氏がダメなんだから、時代劇でも通らないのだ(笑)。
 令和時代のドラマにすら反映している、女性への徹底したモラルの厳しさに改めて戦慄(せんりつ)する。


 キーマンである天の邪鬼にも突っ込みどころは多い。
 そもそもリーダー格が天の邪鬼というのが、まずセンスがない(笑)。偏屈者だから話を回せないし、真意とは逆のことを言うという設定のために、ストーリーの流れを平易にできない。
 土器から誕生したシーンでは、「俺は天の邪鬼だ。」と自己紹介は何故か「正しく」していたのだが(笑)。


 天の邪鬼に扮する本郷の知名度を考えても、ドラマの真の主役は彼である。一馬役の岡田の設定年齢を上げたのも、本郷に合わせてのことだろう。
 本作オリジナルの設定も、天の邪鬼に多く付記されている。何かの呪縛で彼だけこの廃屋から出られなかったり(従って「妖怪音頭」のコーナーには、天の邪鬼だけ参加していないのだ!)、悪しき妖怪を滅ぼす度に手塚治虫(てづか おさむ)の名作妖怪時代劇マンガ『どろろ(1967)』のヒーロー・百鬼丸(ひゃっきまる)よろしく、身体から土器の土くれが熱を帯びて剥がれ落ちる描写があったりする。


 キーマンが結界に阻(はば)まれているせいで、クライマックスのバトル・シーンがヘンな感じになっている。
 強大な妖怪を向こうに回し、一馬は剣術が不得手だし、猫又と河童は戦力外だし、天の邪鬼に至っては廃屋から出られないので、一馬にテレパシーで術策を与え、念動力で遠隔地から他者を動かして加勢するという、何でもアリなくせにヘッボコなチーム編成である。
 何でいつも本郷奏多だけセットオンリーで、ロケに参加しない大御所俳優みたいになっているのかト。
 北大路欣也(きたおおじ きんや)なのかト(笑)。


 筆者がこのドラマにノれない理由が、この天の邪鬼に付記された「枷(かせ)」にもある。
 多分最終回近くで、この枷の理由が絵解きで氷解されるのであろう。それを以(もっ)てヤマ場とし、エンディングを飾る一助とするのではないか。
 しかし、それはよく練られた脚本が、伏線を回収することでカタルシス(清々しい気分)を生じせしめるものではない。最初から「違和感」を呈示し、それを取り去ることで、カタルシスの代替としている「まやかし」に過ぎない。


 前述の『いいね! 光源氏くん』もそうだった。
 ドラマの序盤は実在の人物でもない光源氏がタイム・スリップしてきたことに何ら疑義(ぎぎ)を挟まなかった展開ながら、オーラス前になって突如その件を蒸し返して状況を説明してみせ、大団円(だいだんえん)に繋げていた。


 嘘でも捏造でもないが、だからこそタチが悪い(笑)。近年のライト・ドラマには、そういうものがチラホラ見受けられていて気掛かりである。


 『大江戸もののけ物語』はどんなラストを迎えるのだろうか? やはり最終回まで見届けざるをえなくなったなぁ(笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年真夏号』(20年8月2日発行)所収『大江戸もののけ物語』評より抜粋)


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ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル ~ジュブナイルじゃない!? アイテム争奪コント劇! 「見せ場」重視!

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[ウルトラ] ~全記事見出し一覧


 ウルトラマンギンガも客演する映画『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年)が公開中記念! とカコつけて……。
 映画『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』(13年)評を発掘アップ!


ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』 ~ジュブナイルじゃない!? アイテム争奪コント劇! 「見せ場」重視!

(文・久保達也)
(2013年9月15日脱稿)


 筆者が近年在住する静岡では上映がないので(爆)、公開初日の2013年9月7日(土)、JR桜木町駅前の横浜ブルク13(サーティーン)まで早朝から東海道線で足を延ばして、初回9時30分の回を鑑賞。


 主人公の礼堂ヒカル(らいどう・ひかる)ら、幼なじみの仲良し高校生4人組が、なんと降星山(ふるほしやま)でスパークドールズ=怪獣人形探しに没頭(ぼっとう)!


 メインヒロイン・石動美鈴(いするぎ・みすず)とレギュラー少年・渡会健太(わたらい・けんた)が見つけたのは大蟹(おおがに)超獣キングクラブ(!)の人形!


 その写真を携帯電話で見せられたサブヒロイン・久野千草(くの・ちぐさ)は


「この怪獣マジでキモい」


とヌカす……(爆)


 人形化してしまったウルトラマンタロウがヒカルと千草のチームにいたら、


「これは怪獣ではない。超獣だ!」


とフォローしてくれたであろうが(笑)。


 ヒカルとタロウが存在を関知していた6体の怪獣人形を無事集める一同だが、そこに人間大サイズの異次元宇宙人イカルス星人が出現!
 美鈴を人質に6体の怪獣人形をヒカルから奪い取ったイカルス星人は、それらの怪獣人形の足のウラの模様を悪の変身アイテム・ダークスパークで読み込みして次々とダークライブ!(=巨大怪獣へと変身!)
 さらに自身の身体をもダークスパークでリードすることで、イカルス星人は6体の怪獣と合体し暴君怪獣タイラントが誕生する!!(感涙!)


ジュブナイルですらない! 「気張り」のないアイテム争奪戦のコント劇! 「見せ場」重視のバトル!


 オイオイ、いつものテレビシリーズのジュブナイルな青春ドラマはいったいどこへ行ってしもたんや!? つーか、ドラマなんか全然あらへんやないか! 毎週こんな調子でサクサクやったらええやないか!(笑)


 『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)前半シリーズの最終回にあたる第6話『夢を懸(か)けた戦い』において、ヒカルたちのライバル美青年・一条寺友也(いちじょうじ・ともや)が


「『僕の夢』は、ウルトラマンギンガを倒すこと!」


と発言したことに対し、ヒカルは


「そんなことは気張らずに、笑顔で云うもんだぜ!」


と返していたが、そのセリフ、そっくりそのままテレビシリーズの『ギンガ』にお返ししたい気分である(笑)。


 合体怪獣タイラントに魅(み)せられた者なら子供でも思いついてしまうような、これまでアリそうで実はなかったネタをそのまま絵にしただけの今回の映画の方が、少々肩に力が入っているような感があるテレビシリーズの『ギンガ』よりもよほど面白いということをあたらめて実感してしまったのである。


 昭和ウルトラの世界観に直結した『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)のシリーズ構成・メインライターを担当しただけあって、ウルトラの父や母にとどまらず映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹)に登場したタロウの幼年期の姿、通称・コタロウを登場させてみたり、「ギンガ&ジャンナイン VS 闇の巨人ティガダーク&宇宙海人バルキー星人」のタッグマッチまでをも描いた赤星政尚(あかほし・まさなお)の脚本回である先に挙げた第6話ですらも、コタロウやタッグマッチよりも友也のダークな内面の方が印象に残ってしまうほど、『ギンガ』の作風は「ドラマ主導」の面が強いように感じられる。


 「円谷プロの夢」が平成ライダースーパー戦隊を倒すことであるならば(爆)、やはりあまり気張ることなく、もっと気楽に笑顔で主張できるような作品づくりをするべきだと考える。そのための第1段階として捉えるなら、今回の『ギンガ劇場スペシャル』は結構イイ線をいっていると個人的には思えるのだ。


 その意味では今回『劇場スペシャル』とばかりに大掛かりなミニチュアセットが組まれたり、ギンガの新たな必殺技が派手にCGで描かれるということもなく、テレビシリーズ並みの予算と規模でアクションや特撮が済まされているのも単に予算がなかったからだろうが(爆)、結果的に良い意味での「気張り」のなさの象徴として捉えてもいいかもしれない――ちなみにオープニング映像や主題歌すらも、テレビとまったく同じである・笑――。


 しかし、それでも「見せ場」はかなり充実しているように感じられるのだ。ウルトラマン映画としては前作にあたる『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1)ももちろん悪くはないのだが、バトルシチュエーションや特撮演出面では必ずしも負けてはいないと個人的には感じるくらいである。これはやはりドラマの流れに押しつぶされることなく、「見せ場」が「見せ場」として立派に機能していたからでもある。


 そして、いつものテレビシリーズの『ギンガ』並みの特撮セットだからこそ、そこにイカルス星人(60年代)・暴君怪獣タイラント(70年代)、ウルトラマンティガ(90年代)・暗黒破壊神ダークザギ(00年代)と、まさに各世代にアピールするかのような人気キャラが続々登場することにより、相対的(笑)にスペシャルな印象が醸(かも)し出されるという面もある。


・等身大のイカルス星人が右手からおなじみのアロー光線を発射したり!
タイラントの猛攻にピンチに陥ったウルトラマンティガをジャンナインが救い、切断したタイラントの右腕のカマをティガがタイラント目掛けて空中高くから蹴りこんだり!
・ダークザギがあいかわらず宙に向けて吠えるようなポージングのあと、そのままラリったアクションを展開したり!
・ヒカルがティガへ、そしてギンガへと、ウルトラマンへの「二段変身」を披露したり!


 さらにはいつもの降星山周辺を飛び出し、ダークザギとギンガの超高速スピーディーな空中戦が、砂漠や溶岩が流れる火山地帯で展開されたり!――日本じゃないよな。どこまで行っとんのや・笑――
 特撮側のヒーローや怪獣キャラそれぞれに実に華(はな)が感じられる演出が用意されていたこともまた大きいのである。


 ヒーローや怪獣が派手に活躍する特撮キャラと連動するように、今回の本編キャラはまるで童心に帰ったかのように怪獣人形探しに精を出し、発見してはハシャいでみたり、バトルに一喜一憂(いっきいちゆう)したりに徹しており、いわゆる「人間ドラマ」はほとんど演じてはいないのだ。
 そして、このことこそが変身ヒーロー作品「本来の魅力」を充実させることに大きく貢献(こうけん)していると思えるのである。


 いや、今回は本編部分でさえ、イカルス星人が化けた美鈴が両腕を前に突き出しブラブラさせる独特のポージングで、いちいち語尾にベタベタな「~イカ」をつけて話してみたり、正体がバレそうになってあわてるや、まるでネコ耳コスプレのようにニセの美鈴の頭からイカルス星人の巨大な耳が露出したり、ネコ耳もといイカルス耳でバレバレなのにもかかわらず本物の美鈴を指して


「こっちがニセもの!」


とヌカすなど、深刻な人間ドラマなどで見せるのではなく、そうしたコミカルな演技で見せていく演出がなされているのである! 美鈴ちゃん、また株が大幅に上がったぞ(笑)。


合体怪獣タイラントを構成する怪獣! 初登場時はブラックキングもその一体だったのだ!?


 タイラントは周知のとおり、ウルトラ兄弟に倒された怪獣たちの怨念(おんねん)が合体して誕生した怪獣である。


 『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』での初登場以来、小学館学年誌怪獣図鑑の類(たぐい)において、


・頭は竜巻怪獣シーゴラス
・耳は異次元宇宙人イカルス星人
・腹は宇宙大怪獣ベムスター
・腕は殺し屋怪獣バラバ
・足はどくろ怪獣レッドキング
・背中は液汁超獣ハンザギラン
・尾は大蟹超獣キングクラブ


と、タイラントの各部を構成する怪獣たちについては、現在に至るまでこのように紹介されてきた。


 が、いつの間にか、肝心なことが忘れ去られてしまっている。タイラントの後頭部にある巨大なツノは、用心棒怪獣ブラックキングのものではなかったのか!?


 今回登場した着ぐるみにしろ、バンダイから発売されていた『ウルトラ怪獣シリーズ』のソフビ(ソフトビニール人形)にしろ、このブラックキングのツノはしっかりと造形されているのである!
 にもかかわらず、いつしかこれが完全に無視されるようになり、誰も語ろうとはしないのである!(笑)


 今回の劇場売りパンフにも掲載されているように、初登場時は小学館学年誌においても、


「角(つの)はブラックキングのものだ」


とたしかに紹介されていたのである!


 だが、この記事をしっかり再録しているにもかかわらず、パンフの本文ではこの設定になんら触れておらず、本編でもブラックキングは合体はおろか、登場すらしていないのだ。
 リアルタイムでタイラントに出会えた世代としては、いったいいつからこうなってしまったのか、不思議でしかたがなかったのだが……


 アレっ!? 先にあげた当時の学年誌の記事。よく見ると、「角はブラックキングのものだ」と紹介しているにもかかわらず、そこに掲載されている写真は「宇宙大怪獣アストロモンス」じゃねぇか!(爆)


 ひょっとしたらこの学年誌編集部の凡(ぼん)ミスが原因で、タイラントの後頭部のツノはブラックキングのものであるという設定が定着しなかったんじゃないのか!?(笑)


 こんな40年も前の当時の設定を克明(こくめい)に記憶している筆者からすれば、この設定が改変、というかスッカリ忘却(ぼうきゃく)されてしまっていることが残念でならない。


 ちなみに『帰ってきたウルトラマン』(71年)終盤か『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)序盤が放映されていた当時、小学館学年誌


・頭がブラックキング
・胴体がベムスター
・腕が岩石怪獣サドラ
・足が古代怪獣ツインテール


という合体怪獣が、それぞれのスチール写真をコラージュして掲載されたことがあるのだ!
――ツインテールの本来は脚であるところの着ぐるみではスーツアクターの頭が入っている部分が、合体怪獣の両脚を構成しており、千草ではないがマジでキモかった(笑)――


 これなんぞはまさにタイラントの「原案」とも呼ぶべきものであり、やはりこうした発想は「ドラマ性」や「テーマ性」を脚本家たちに要求したTBS側の橋本洋二プロデューサーや円谷プロ側のスタッフよりも、子供たちに日々直接向かい合っていた小学館側の稚気満々(ちきまんまん)な童心を残した編集者たちのものであったのかと、今日(こんにち)の観点からしても誠に興味深く感じられる。


 その小学館のオリジナル合体怪獣の中でも重要な頭部に位置していたブラックキングが、タイラントのツノを構成する重要な要素であるのにもかかわらず、忘れ去られてしまうとは……


 筆者は『ギンガ』第1話でヒカルが最初に発見したスパークドールズがブラックキングであったことを、今回の『劇場スペシャル』の伏線だとばかり思いこんでいたのに……(笑)


 6体の怪獣を手にして得意げのイカルス星人に対し、


「おい、イカルス星人、肝心なヤツを忘れてんじゃないのか!?」


と、ヒカルが得意げにブラックキングの人形をイカルス星人に見せびらかす!


「おっと、こりゃイカん! そんなイカしたヤツを忘れていたとは! まっ、イッカ。そいつなしでもタイラントは充分強イカも」(笑)


と、イカルス星人はそれでも6体の怪獣と合体、不完全な状態でタイラントが登場!
 ブラックキングのツノがないことで、タイラントは後頭部が弱点となり、そこをヒカルが変身したウルトラマンティガがハイキックで攻めまくり、切断したカマを後頭部めがけて強烈に蹴りこむことでタイラントに勝利する!


 あるいは、タイラントの弱点という観点からすれば、ティガとタイラントのバトルの最中、


初代ウルトラマンレッドキング
ウルトラセブンイカルス星人
ウルトラマンジャックがシーゴラス・ベムスター・ブラックキング
ウルトラマンエースがバラバ・キングクラブ・ハンザギラン


 それぞれのウルトラマンがかつての対戦相手に限定して、かつてウルトラ4兄弟がエースに超獣ブロッケンを倒す方法を伝授したように、怪獣たちの弱点をウルトラサイン(!)でヒカルに教えるのだ!


 たとえ人形状態でウルトラマンたちにふだんは意識はなかろうとも、その瞬間だけ目覚めたことにすればよい。もちろんヒカルにウルトラサインは読めるはずもないから、タロウがそれらを解読してヒカルに伝える! ギンガスパークを片手に握ってさえいれば、ヒカルでもウルトラサインが解読可能になるという設定でもよい! タロウもまた「兄さんたち、無事だったんですね!」と安心する(笑)。
 タイラントの弱点に次々に攻めこむことでティガが勝利する!


 あの栄光のウルトラ兄弟たちがいささか変則的なかたちであっても助勢さえすれば、超低予算作品でも一点豪華主義的なスペシャル感、作品自体にサラブレッドな血統感を醸し出すこともできただろう。


 まぁ、レッドキングベムスターは着ぐるみがあるのだから、合体する前に少し暴れてほしかったような気もするのだが、キングクラブやハンザギランを新造する予算はなかっただろうから(笑)、統一をはかるためにあえて暴れなかったのだろうと好意的に解釈しておくこととする。



 身体の各所に強敵怪獣たちのパーツをまとうことで、合体怪獣にそれらの怪獣たちのパワーも宿したように我々が感じてしまうのは、冷静に考えてみれば非科学的な心理ではある。むしろ、各々(おのおの)の怪獣たちのパーツや文様などの「意匠(いしょう)」に何らかの霊的・神的・超常的パワーを感じてしまう心性は、古代や中世ですらなくもっとはるかに古い時代の未開の原始的で呪術的な感性ですらある。しかし、人間とは良くも悪くもそのような原始人のごとき感性を失うこともまた永遠にないのだろう。
 それが証拠にこの合体怪獣タイラントと同じ発想で、映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1)には究極合体怪獣ギガキマイラが、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)にも百体怪獣ベリュドラが登場している。


 『ウルトラQ』(66年)・『ウルトラマン』(66年)・『ウルトラセブン』(67年)といった第1期ウルトラシリーズの本編美術・特撮美術・怪獣デザインなどを手掛けたことで、第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちに神格化されてきた故・成田亨(なりた・とおる)は、ハッキリとした名指しこそ避けたものの合体怪獣タイラントのことを指したとおぼしき、既存の怪獣のパーツパーツが合体したようなギリシャ神話の神獣キマイラのような合体怪獣の存在は、デザインとしては邪道であるとして大いに批判をしていたものだ。
 そのことで、自分のアタマで物事を考えずに先人の意見にただ屈服してそれのウケウリを繰り返すような一部の特撮マニアたちによって、このタイラントもまた実は酷評の憂き目にさらされていた時代もあったのだ(汗)。


 しかし、1988年の年末の冬休み午前にTBSで平日5日間連続の初代『ウルトラマン』再放送2本立てプラス各種トリビア情報の特別番組が放映された折、その1コーナーで当時の平日帯番組『ウルトラ怪獣大百科』(88年・テレビ東京)の影響だろう、ロケ先の幼稚園の園庭で園児たちが「好きな怪獣は何か?」というインタビューに答えて「タイラント!」と口々に絶叫していたことがあったのだ!
 これを観て、筆者がタイラントにリアルタイム(74年)で遭遇した際と今現在(88年)とでも、合体怪獣に呪術的な強敵感といったオーラを感じてしまうような感性は変わらないのだな……と強く実感したものである。


 それからでも20年もの歳月が過ぎてしまう。しかし、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100211/p1)でライバル青年が使役(しえき)する強敵怪獣として復活を果たしたタイラントは、今度は特撮マニアたちの熱烈に好意的な歓迎も受けて(!)、その後は幾度も再登場を繰り返してみせる人気怪獣として復権を果たしたのであった!


巻末にはいつもの『スパークドールズ劇場』も! 短編映画『劇場スペシャル』の可能性!


 なんと巻末には『ギンガ』テレビシリーズ本編でもおなじみの人形劇『スパークドールズ劇場』までもが用意されていた。
 そして、『ウルトラマンギンガ』放映中断ブランク後の第7話からの後半シリーズの放映が2013年11月20日に再開することや、映画『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』第2弾が来年2014年3月に公開されることを、タロウや怪獣人形たちがしっかりと宣伝していたのであった(笑)。


 が、クリスマス商戦合わせの12月いっぱいでの後半シリーズ終了後、『劇場スペシャル』第2弾の公開まで3ヶ月近くもブランクがあるというのはどうなのか? 『新ウルトラマン列伝』での『ギンガ』総集編の放映程度では世間や子供たちの関心を持続させるには弱いと思えてならない。
 今回の『劇場スペシャル』第1弾のような映画が超低予算で時間をかけなくとも製作可能であることが判明した以上は、近年の平成ライダーシリーズの劇場版のように数ヶ月に1本のペースで短編映画を公開するようなことはできないものなのか? 幼児たちの集中力の限界という観点からしてもそうだが、ブランクを空けて大作長編をつくるよりも、今回のような短編映画を定期的に連打していった方が世間や子供たちの注目度も高いだろう。
 もっとも『列伝』放送局の少なさと同様、映画を流してくれる劇場の少なさという問題もあるのだが(汗)、それが改善されるのもまた今回の興行成績次第といったところか?


『ギンガ』前半おさらいと、ソフビ人形ラインナップに見る『ギンガ』後半への期待!


 そのためにも『ギンガ』後半シリーズには前半シリーズからの大幅な路線変更を望みたいところだ――もう撮影自体は終わっているのだろうが・汗――。
 第3話『双頭の火炎獣』もそうだったが、第4話『アイドルはラゴン』もまたバトルの中に悪い意味で「人間ドラマ」を持ちこみすぎてしまっていた。
 いくら悪意はなかったとはいえ、ドタキャンしたアイドルの代理として美鈴がグラビア撮影に応じたことは、アイドル志望の千草を傷つけるには充分すぎるものであり、それに目をつけたバルキー星人によって千草が海底原人ラゴンと化す流れ自体はアリだとしても――何気にけっこうヘビーで残酷な展開だったとも思うが・汗――、特撮怪獣バトルの方はそれまでの展開を断ち切って一転して壮快にやらないとアカンのでは? それまでの本編ドラマのノリのままでバトルを展開するなよ(笑)。


 どうせなら、『タロウ』第48話『日本の童謡から 怪獣ひなまつり』でタロウが酔っぱらい怪獣ベロンにそうしたように、


「目を覚ませ、千草!」


と、ギンガがラゴンにバケツの水をぶっかけるとか(笑)、コミカルなバトルで中和すればよかったのに……


 このあとにジャンキラーがギンガを徹底的に砲撃し、飛行形態に変型する派手な見せ場の場面がなかったら、ちょっと第4話はマジでキツかったぞ。初期編でやや陰鬱な題材を連続で列挙させたら、やはり客が逃げる危険性が高いと思えてならないのだ。



 あと、正義の巨大ロボット・ジャンナインが、本作『ギンガ』では当初の悪役姿であるジャンキラーとして登場したことに、筆者は『ギンガ』序盤評(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)の原稿で苦言を呈してしまった。
 が、ジャンナインが初登場したオリジナルビデオ作品『ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』(11年・バンダイビジュアル)において、ジャンキラーがウルトラマンゼロ率いるウルティメイトフォースゼロのメンバーたちに説得されて改心してジャンナインとなった展開を思えば、『ギンガ』でもそれが踏襲(とうしゅう)されるであろうことは容易に予測されたワケであり……。浅慮を恥じるばかりである(汗)。


 当初はイヤなヤツであったものの、ヒカルに夢を持つことのすばらしさを教えられ、心が揺れ動くこととなった友也が操るメカとしては、前例踏襲主義からもジャンナインほどふさわしいものはない!(笑)
 単純にウルトラマンギンガとジャンナインが揃い踏みする姿を見ても、かねてから防衛組織にもロボットを装備させろと主張していた筆者としてはやはり感慨深いワケで。



 バンダイのソフビ『スパークドールズ ウルトラ怪獣500』では、2013年9月上旬に暗殺宇宙人ナックル星人・グレイが発売されており、『ギンガ』前半レギュラーのバルキー星人と交代して、このナックル星人が後半シリーズに登場するレギュラー悪となるようだ。
 また2013年10月発売分のラインナップの中には、往年の『ウルトラマンタロウ』(73年)に登場したエフェクト宇宙人ミラクル星人(!)や、『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)に登場した宇宙悪霊アクマニヤ星人(!)など、第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちには黙殺されてきたけど、昭和の全ウルトラシリーズを等しく愛してきたマニアたちにとっては中堅どころでもあった驚愕(きょうがく)ものの怪獣キャラクターたちが含まれている。
 これらが『ギンガ』後半シリーズにも登場することを期待したいものだが、さらに2013年11月には映画『ウルトラマン物語』で宿敵を務めたボリューミーな怪獣・グランドキングの強化形態とおぼしき超合体怪獣スーパーグランドキング(!!)が通常の倍の定価というスペシャル物件扱いで発売されるのだとか!


 今回の『劇場スペシャル』の感動ふたたび! となることを期待しつつ、今回はこれにて幕とさせていただく。


2013.9.15.
(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2013年秋号』(13年10月6日発行)~特撮同人誌『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』合評1より抜粋)


[関連記事]

ウルトラマンギンガ』序盤評 ~低予算を逆手に取る良質ジュブナイルだが、それゆえの危惧もアリ!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1

ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』(13年) ~ジュブナイルじゃない!? アイテム争奪コント劇! 「見せ場」重視!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200820/p1(当該記事)

ウルトラマンギンガ』後半評 ~悪のウルトラ兄弟&ラスボス級怪獣グランドキング登場! だけれども!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200825/p1

ウルトラマンギンガ』最終回 ~タロウ復活! 津川雅彦もキングに変身すべきだ! ウルトラ怪獣500ソフビを売るためには!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200827/p1(8/27、UP予定!)

ウルトラマンギンガ』番外編「残された仲間」 ~傑作! 『ギンガ』総論・マイナスエネルギーを材とした『80』『ギンガ』比較

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200829/p1(8/29、UP予定!)

ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』(14年)

  (近日中にUP予定!)

『劇場版ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』(15年) ~第2期ウルトラの「特訓」「ドラマ性」「ヒーロー共演」「連続性」も再考せよ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1


[関連記事] 〜暴君怪獣タイラント登場編!

『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年) ~岡部副社長電撃辞任賛否!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1

ウルトラマンサーガ』(12年) ~DAIGO・つるの剛士杉浦太陽AKB48投入の是非!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1

『ウルトラゼロファイト』(12年) ~おかひでき・アベユーイチ監督がまたまた放った大傑作!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140115/p1

ウルトラファイトオーブ』(17年)完結評 〜『オーブ』・『ジード』・昭和・平成の結節点でもある年代記的な物語!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1


[関連記事] ~ウルトラシリーズ劇場版

ウルトラマンUSA(89年) ~日米合作80年代アニメ!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100821/p1

ウルトラマンティガウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち(98年) ~合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971206/p1

ウルトラマンティガウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦(99年) ~合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1

ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY(ファイナル・オデッセイ)(00年)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961209/p1

劇場版 新世紀ウルトラマン伝説(02年)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021115/p1

ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟2 ~東光太郎! 幻の流産企画!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20130317/p1

大決戦! 超ウルトラ8兄弟(08年) ~ティガあっての新作だ!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1

大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(09年) ~岡部副社長電撃辞任賛否!

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ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国(10年) ~大傑作!(なのに不入りで暗澹たる想い・汗)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1

ウルトラマンサーガ(12年) ~DAIGO・つるの剛士杉浦太陽AKB48投入の是非!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1

ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル(13年) ~ジュブナイルじゃない!? アイテム争奪コント劇! 「見せ場」重視!

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劇場版ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!(15年) ~第2期ウルトラの「特訓」「ドラマ性」「ヒーロー共演」「連続性」も再考せよ!

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劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!(17年) ~イイ意味でのバカ映画の域に達した快作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1

劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!(18年) ~新アイテムと新怪獣にも過去作との因縁付与で説得力!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1

劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル(19年) ~小粒良品で好きだが、新世代ウルトラマン総登場映画も観たい!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1


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