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ウルトラマンタロウ6話「宝石は怪獣の餌だ!」佳作!

「ウルトラマンタロウ 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・田口成光 監督・筧正典 特殊技術・川北紘一
(CSファミリー劇場ウルトラマンタロウ』放映・連動(?)連載!)
(文・久保達也)


 「エヘン」
 と咳ばらいをし、
 「おめでとう、さおりさん!」
 と赤いリボンに結ばれた紙包みをさおりに手渡す東光太郎(ひがし・こうたろう)。
 さおりの誕生祝いのつもりだったらしいが、誕生日は実は翌日であることをさおりに指摘されるや、


光太郎「うん、だからさ、今日は誕生日の前の晩、つまりバースデー・イブってわけさ」


 などと、なんとも洒落(しゃれ)たことを云う光太郎。
 ピンクのシャツに赤いベストという、いつもながらの垢抜けたファッションといい、センスは抜群であり、モテる男は違うなあ、などといやでも実感せざるを得ない(笑)。
 「あたしの誕生日、よく覚えていてくれたわね」
 と云うさおりに
 「うん、まあね」
 なんて憎いぞ光太郎! 皆さんも女性をおとすならこれを目指しましょうね(笑)。


 光太郎のプレゼントは中央に赤い宝石が光り、幾つもの青い宝石が縁(ふち)を飾り、さらに下部には銀色の小さな石が多数ぶら下がった三角形のペンダントであった。


 光太郎がZAT(ザット)入隊の前に世界中を航海する中、立ち寄ったエジプトで
 「東洋の方に持っていってしまってほしい」
 とお婆さんに手渡されたものらしいが、それをネタに、白い陶器のティーポットとカップでお茶を飲む光太郎の描写など、白鳥家のなんともセレブな生活ぶりを強く印象づけるというものだ。


 ペンダントをお守りだと思うさおりと健一だが、一緒に包まれていた菱形の小さなふたつの宝石が欲しいと、健一はさおりにせがむ。
 「ふたつもいらないでしょう」
 と云うさおりに健一はひとつは親友にあげるのだと主張。
 なんとかアクセサリーをふたつもせしめた健一だが、 
 「今日はもう遅いから、早く歯を磨いて寝なさい!」
 とさおりに叱られてしまう。これに素直に返事をせず、


健一「ちぇっ、交換条件か。勝てねえな、お姉ちゃんには」


 とむくれるところが、当時の「現代っ子」(死語・笑)をなかなかリアルに描写していると思えるのだが。



 一見ホームドラマ的な、なんともなごやかな導入部であるが、これに続いてあまりに不気味な怪奇描写が展開される意外性、しかもその発端が、光太郎がさおりに贈った誕生日プレゼントのペンダントであることで、物語は怒涛の展開を見せ、本編と特撮が終始絶妙にからみ合い、華麗なクライマックスへと結実するのである!


 健一はアクセサリーのひとつを「交通安全のお守り」として、ペットの柴犬・ポチの首輪につけてあげた。
 そのポチが吠え続けることを不審に思ったさおりが部屋の窓を開けるや、体長70センチ(※)もの茶褐色の大きなナメクジ状の生物が蠢(うごめ)いているのを発見!


 ほうきの柄で外に追い払うが、さおりの悲鳴を聞きつけた光太郎が律義に歯ブラシを手に歯を磨きながらパジャマ姿で現れるのがポイントだ。
 光太郎のキャラからして、おそらく自発的に寝る前の歯みがきなんかはしない。健一同様に光太郎もさおりにしつけられていた様子が垣間見えるが(笑)、早く母を失った白鳥家にとって、さおりが完全に母的存在となっていることが強調されるというものだ。


 「ここまで生活感のあるシーンって、今までのウルトラにはなかったんですよ。これは『ウルトラマンタロウ』に、明るく楽しいっていうだけじゃなく、人間の部分はきちんと描こうという狙いがあったからですね」

(DVD『ウルトラマンタロウ』Vol.2解説書・各話解説における脚本の田口成光のコメント・デジタルウルトラプロジェクト・05年5月27日発売・ASIN:B00092QQK2


光太郎「満月か、だけどいやな色をしてるな」


 光太郎が見上げた夜空に浮かぶ満月が、若干赤みがかった色で描かれているのが、不吉の前兆として最大の効果を発揮する!


 さおりに追い払われたはずの大きななめくじは、まだ白鳥家の庭で蠢いていた!
 ポチにゆっくりと近づいていったなめくじは、口から青い霧をポチに吐きかける! 霧に包まれたポチは消滅してしまった。第3話で再生怪獣ライブキングの体内から光太郎とともに無事救出されたポチであったが、ここであえない最期を遂げてしまった……


 ポチを溶解させたなめくじは、ポチが居たあたりにゆっくりと忍びよる。幾分荒い造形ではあるが、全身ヌメヌメとした皮膚感覚が表現されたギニョールが、おそらくはラジコン操作で地面を這うさまは充分にすぎるほど不気味である!
 健一が首輪につけてあげたアクセサリーは溶解せずに残っていた。
 それをなめくじが食べる描写をあえてはっきりとは見せず、頭を動かしてなにやらもぞもぞしている様子をロングで撮らえている描写が、なめくじが一体何の目的で白鳥家に突然出現したのかを明確にしないことで、のちの謎解きの場面に視聴者を惹きつけることとなるのだ。


 なめくじは雨どいをつたって白鳥家に近づくや、ポチを溶解させた霧を今度は家の白い壁に吐きかけた! 浸食され、ボロボロになっていく壁に穴が開き、そこからゆっくりと侵入していく大なめくじ!
 壁を破ったなめくじの眼前には行く手を遮る巨大なゴミ箱(笑)があった。それを頭で押しながらゆっくりと侵攻するなめくじ。やがてなめくじは少し後退し、今度はそのゴミ箱に霧を噴射する! ボロボロに崩れ去るゴミ箱!
 なめくじが侵入したのは健一の部屋だった! さおりからせしめたペンダントを首からかけたまま眠る健一に、不気味な大なめくじが忍び寄る!


 翌朝、ペンダントがないことにさおりを疑う健一。勝手に盗るわけがないと主張するさおりとのケンカのあまりの勢いに、光太郎が起きてくる。花柄のタオルを首に巻いた光太郎はねぼけまなこだったが、さすがはZAT隊員、すぐに異変に気がついた。
 部屋の床に敷かれた赤いじゅうたんに延々と白い傷! その周囲には焼け焦げたような跡があった! ボロボロに崩れたゴミ箱、壁に開いた大きな穴! 本編美術スタッフの腕が光る被害状況である。
 さらには庭に居るはずのポチは行方不明! 残った首輪の一部は溶け、ついていたペンダントも消えていた!


さおり「やだわ、あたしの誕生日の朝だっていうのに」


 バースデーイブのなごやかなムードから一転して災難がふりかかる白鳥家! 謎を解明するため、光太郎はペンダントについていたエジプト語の説明書を、ZATのコンピューターにかけて解読することにした!


 ZAT本部で光太郎が持ちこんだ説明書のエジプト語を解析する森山隊員。
 彼女を挟んで別の女性隊員が2名着席し、レーダーの監視をしているような様子だが、ZAT本部内ではレギュラー隊員以外にも別の複数の女性隊員の姿が頻繁に見られる。これだけの描写でも組織の規模の大きさが強調されるというもので、実に的確な配慮である。


森山「この文字は古代エジプト語でした。この石は幸運を運ぶ石として古代珍重されていたが、ジレンマが現れてからは悪魔の石となった。ジレンマは満月の夜に現れ、石を食べて大きくなる。また光を……このところは溶けてしまってわかりません。……巨大化し、街を焼く。という伝説があったと書かれています」


 あの大なめくじがジレンマだったとしたら、ゴミ箱を溶かしたのは単に侵攻の邪魔になっただけではなく、自身の秘密を漏らさないために、健一が捨てた説明書をゴミ箱ごと消滅させようとしたのか? この森山のセリフにはそう解釈できるほどの工夫が施されているのである。


北島「そうか、するとジレンマが夕べの事件を起こしたんだな」
西田「そういえば、夕べは満月でした」
南原「おい、まじめにやれよ。伝説を本気で信じる奴があるか。今は20世紀。ZATは科学的なんだぜ」


 普段はもっともおちゃらけているかに見える南原から実に意外なセリフが飛び出したものだが、これが彼の本質でもあるのだ。「能ある鷹は爪を隠す」である。


光太郎「しかし、事件は本当にあったんだ」
荒垣「いや、伝説といえども馬鹿にはできん。調べてみるまではなんとも云えんぞ」
朝日奈「荒垣くんの云う通りだ。何事も科学的に調査するのがZATの方法だ。え〜、ところで、夕べカレー食ったものいるか?」


 「科学的」と云ったそばからまたしても第2話『その時ウルトラの母は』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071209/p1)での「あ〜そこでだ、夕べ、カレー食べた者いるか?」につづく名セリフが(笑)。だが今回これが飛び出したことには、製作上の大きな事情が隠されているのである!


西田「はいっ!」
朝日奈「おっ、いいぞ。おまえは本部で留守番。あとの者は白鳥さん家(ち)を徹底的に調べてこい」


 このあと、西田はBパートでコンドル1号に搭乗する姿が拝見されるのみである。
 西田を演じた三ツ木清隆(みつぎ・きよたか)は当時、特撮時代劇『白獅子仮面(しろじしかめん)』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060306/p1)で主役を演じており、京都の撮影所と東京を往復する日々が続いていたのである。そんなハードスケジュールの彼に対する配慮から、出番を少なくするために「本部で留守番」をさせたというわけなのである(笑)。


 「『タロウ』出演の話が決まったあと、『白獅子仮面』という主役の仕事が入ったんですね。それが東京だったらまだしも、京都の撮影で、ずっと掛け持ちでやってたんです。京都で仕事を終えて、銀河っていう夜行で10時すぎに出ると、朝の6時頃に東京に着くんですね。そうするとマネージャーが駅に迎えに来てて、東京映画まで連れていかれて、そのまま西田隊員やってたんです。それ以外にも『だいこんの花』(70〜74年・NET→現・テレビ朝日)っていうドラマで、いしだあゆみさんの弟役をやっていて、スケジュールが合わせられなくなったんですね」

(DVD『ウルトラマンタロウ』Vol.9解説書・『キャスト回顧録三ツ木清隆インタビューより・デジタルウルトラプロジェクト・05年6月24日発売・ASIN:B0009J8HJS


 もっとも「カレー食ったものいるか?」はそれだけにとどまらず、朝日奈の命令に「ふぁ〜い」と気のない返事をした南原に朝日奈が同じ質問をするや、「ハヤシライス」との答えに「どうりでおまえピリッとしたものが足らんぞ!」なんていう、それこそ絶妙なスパイスの効いたセリフに昇華しているのである!


 白鳥家で現場検証をするZAT隊員たち。白鳥家の前に停車した特殊車両ウルフ777(スリーセブン)の屋根に据えられた大きなアンテナが、画面中央を陣取って大きく回転している描写が、異常事態発生を感じさせ、いいセンスだ!
 荒垣に命じられた南原がボロボロになった雨どいを回収しようと手に取るや、途端にバラバラに崩れさるのも、口から吐く霧だけではなく、大なめくじ自体に猛烈な酸が含まれていることを強調しており、絶妙な描写である。


荒垣「おい東、あのペンダントは一体どこから手に入れたものか知っているか」
光太郎「ええ、俺がエジプトから持ち帰ったものです」
北島「おまえがかっ!? は〜、厄介なもの持ってきたもんだなあ」
光太郎「厄介ですって?」
北島「ああ、これはやっぱりジレンマのせいだぜ」
光太郎「よしてくださいよ。北島さんは本当にジレンマがいると思ってるんですか?」
北島「へ、冗談冗談。ジレンマジレンマってじんましんがおきそうだよ」


 この軽妙なセリフには思わず笑いがこみあげるが、これにせよ、先の「カレー食った者いるか?」にせよ、作品のムードを損なうほどの度がすぎたギャグ演出ではない。
 にもかかわらず、かつて第1期ウルトラ至上主義者が 「おふざけZAT」などと称したのは、どうやら第1話から第3話あたりのZATの描写で先入観を持ってしまったがための誤解と偏見であることを強調しておきたい。
 この程度のギャグなら『ウルトラマン』(66年)・科学特捜隊のイデ隊員――第5話『ミロガンダの秘密』なんかは全編に渡ってふざけまくっている! もっともそれが悪いというのではない。この回はホラー調の話であり、バランス感覚の意味でイデのギャグが必要不可欠だったのだ!――や、『ウルトラセブン』(67年)・ウルトラ警備隊のフルハシ隊員だってしょっちゅうやっていたのである。


荒垣「おい北島、さおりさんからペンダントを借りてくるんだ」
北島「はい」


 さおりに近づく北島。


北島「すいません、そのペンダントお借りしたいんですが」


 むくれるさおり。


北島「いや、あの、すいません、ちょっとお借り……」
さおり「いやです! これはお守りです。あたし、どんなことがあっても離したくありません。あたし、伝説なんて信じません。第一、エジプトにいるジレンマが、どうやって日本へやってくるんですか?」


 ペンダントを大事そうに手に取って見つめながら、強く主張するさおりがなんともいじらしいが、そんなさおりを説得できるのは、やはり光太郎よりほかにない!


光太郎「さおりさん、ちょっとだけよ(なぜか女言葉・笑)。う〜ん、ジレンマとは関係ないんだ。そのペンダントに何か秘密があるのかもしれない。もし夕べのようなことが起こったら、君の命が危ないじゃないか」
さおり「いやです。あたし、このペンダントがそんなんじゃないことを証明してみせます!」
光太郎「しかし」
荒垣「待て。我々は今日集めた資料だけで足りるだろう」
光太郎「でも」
荒垣「これ以上、さおりさんに迷惑をかけてはいけない」
光太郎「はい」
荒垣「ひきあげるぞ」


 なんとも思いやりのある、荒垣の暖かな配慮が光る!
 見るからにガラっ八的キャラで、怒鳴りまくってばかりいるような荒垣にも、こんなスマートな一面があるのだ!


荒垣「おい、東」
光太郎「はい」
荒垣「万が一ということもある。君はここに残ってさおりさんを見張ってくれ。我々の科学分析が終わるまでは万全を期すんだ」
光太郎「わかりました!」


 敬礼を交わす二人がなんともかっこいい! ここに至るまでの現場検証は実に綿密に行われており、歴代ウルトラシリーズの防衛組織と比較しても何の遜色もないものだ。これのどこが「おふざけZAT」なんだ!(笑&怒)


 荒垣、北島、南原がウルフ777で去ったあと、特殊車両ラビットパンダで待機する光太郎。
 やがて白鳥家の庭から響き渡るさおりの悲鳴!
 光太郎が現場に駆けつけるや、さおりの足元に忍び寄る大なめくじが! 光太郎がジャンプして踏みつけてもビクともしない! ZATガンの狙撃もはねつける大なめくじに、光太郎は赤いZATレーザーを浴びせかけた!


 途端に体長73メートル(※)にも巨大化する大なめくじ!
 長くピョコーンと延びた触角の先端に赤く光る部分が目かと思いきや、口の上にも赤い目が、さらにはあごの部分にも二対に光る赤い目が! こいつの目は合計6個!? これこそ企画書に掲げられた「怪獣の怪奇性の強調」なのであり、第1期至上主義者が「(怪奇性が)完全に投げ出された」などと批判していたのは誤りである。
 背中は蛙のイボイボのような突起に被われ、全身褐色だが、腹は怪しい青白い色だ! やはりこいつの正体は、エジプトに伝わる悪魔の怪獣・なめくじ怪獣ジレンマだったのだ!


 車を踏み潰して炎上させ、街に張り巡らされた電線をスパークさせて進撃するジレンマ!
 なめくじの怪獣なのに足音をドシンドシンと豪快に響かせて歩く様は一見滑稽に見えるものの、ジレンマの着ぐるみは他の四つ足歩行の怪獣と比較すると前肢がかなり短く造形されており、肘を曲げて歩行するような、人間が中に入っているのが丸出しのみっともなさを感じさせない工夫がなされているのだ!


 また大なめくじのような全身のヌメヌメ感が着ぐるみには表現されておらず、むしろ他の怪獣と比べても全身が乾燥肌(笑)のような造形であり、このあたりを『ウルトラQ』(66年)第3話『宇宙からの贈りもの』に登場した火星怪獣ナメゴン(やはりなめくじがモチーフ)と比較して「造形が甘い」などと批判する輩(やから)もいるかもしれないが、70センチの大なめくじならまだしも、全長73メートルの怪獣が全身ヌメヌメではやはり気色悪いのだから(『ウルトラマンネクサス』(04年)の序盤(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)に登場したスペースビースト・ペドレオンなんか本当に見るに耐えんかったぞ)、これは視聴者に対する配慮として当然であろう(リアルタイムで放映されていたのは金曜19時という食事時であった)。


 まるで光太郎とさおりを追うがごとく、街を進撃するジレンマ。
 四つ足怪獣であることからカメラ位置も低く設定され、二人に迫る危機を実感させるのに絶大な威力を発揮する!
 画面右半分に二人が身を隠すビルの実景、左半分に迫るジレンマという大胆な合成や、ジレンマの頭上にカメラを配置し、ジレンマの頭部と前方に配した二人の人形を同一の画面に納め、ジレンマの目線で二人を見下ろすかのような臨場感を得られるばかりでなく、光太郎の人形にはZATガンの狙撃をイメージさせる弾着まで備えられていたりなどという、あまりに芸コマな演出が渾然一体となり、まさに大迫力の「怪獣映画」を展開させる!


 光太郎とさおりは駆けこんだマンションの地下に逃れるが、ジレンマはマンションに白い猛烈な霧を吐きかけた! 鉄骨だけを残し、コンクリートがボロボロに崩れ去るマンション。
 さらにジレンマはその上にのしかかり、巨大な足でめちゃめちゃに踏みつけた! 光太郎とさおりに最大の危機が迫る!


光太郎「さおりさん、そのペンダントを捨てるんだ!」
さおり「光太郎さん、これはあなたがくれたのよ!」
光太郎「わかってる! だから頼んでるんだよ!」
さおり「いや! これはあたしの誕生日の贈りものよ!」
光太郎「そんなこと云ったって、あいつはこれを狙ってるんだよ!」
さおり「そんなこと、わかりっこないわ!」
光太郎「ごめん。実は、エジプトの伝説ではそうなっていたんだ」
さおり「光太郎さんは伝説を信じる?」
光太郎「そういうわけじゃない。しかしこのとおり、奴が追ってきてるじゃないか!」
さおり「間違いよ! あたしはどんなことがあっても離さない! これはあたしを守ってくれるお守りだわ!」
光太郎「さおりさん……」


 ひやぁ〜、凡百のトレンディドラマなんかよりよっぽどラブリーな名シーンではないか! なんちゅーても、この場面でさおりは首からかけたペンダントを終始手に取り、片時も離さないのである!(素晴らしい演出だ!)


 正直云おう。
 さおりを演じたあさかまゆみはこの場面に限らず、ハッキリ云ってセリフ回しがあまりにもたどたどしく、演技は素人同然である。ルックスもファッションセンスも「イケてねえ!」し、ほとんど「イモ姉ちゃん」(死語・笑)なのである。
 だがそれだからこそ、自分の「誕生日」を覚えていてくれた光太郎がくれた「誕生日の贈りもの」を、「お守り」であると固く信じ、たとえジレンマに襲われようが「伝説」を信じようとはしない、あまりに純粋で一途な白鳥さおりというキャラを演じるにはこれ以上の逸材はなかったのである!
 71年に「ミス・セブンティーン」に選ばれ、事務所に所属してわずか3ヶ月の17才の少女をヒロインに抜擢したのも、当時の感覚からしてもあえてダサダサのコーディネイトをされていたのも、すべては確信犯的行為だったのである!?



 「千歳船橋(ちとせふなばし・小田急線各駅停車の駅)のガードのところで、走って逃げるシーンが記憶に残ってるんですけど、怪獣がいないのに「ここを見ろ」とか云われてね。それもよくわかんないから「怪獣があそこにいるんだ! もっと上を見ろ!」とか、ずっと怒鳴られっぱなし」


 「それと声でもよく怒られましたね。上京したばかりでなまってましたし、私、声が低いんですよ。それで年齢と顔に対して凄くギャップがあるということで、また怒られるんです。イメージが合わないって。だからこの『タロウ』のときはすごく無理して高い声を出してるわけ。それでも「もっと高い声で!」って。現場でもアフレコでも」


 「でもまあ、とにかく現場に行ったら毎回怒られるという感じですよね。それも人間性を否定されるような勢いで、常にいじめられるところに置かれているみたいな感じでした。それに何より、まず自分自身が思うようにできないことがつらかったですね、本当に。だから当時は毎日泣いてましたね(笑)」


(DVD『ウルトラマンタロウ』Vol.9解説書『初代・白鳥さおり、苦悩の日々』より、朝加真由美(当時・あさかまゆみ)インタビュー)



 『タロウ』のレギュラー出演者はウルトラシリーズの中でも群を抜く豪華な顔触れである。
 名古屋章(なごや・あきら)、東野孝彦(のちに東野英心(とうの・えいしん)に改名・初代『水戸黄門』(69年〜・TBS)で有名な故・東野英治郎の長男)、『これが青春だ!』(66年・日本テレビ)などの東宝青春ドラマの生徒役が印象深い木村豊幸、特撮ヒーロー『光速エスパー』(67年)で主役デビューした三ツ木清隆、現在でもサスペンスドラマなどで活躍中の津村鷹志(当時・津村秀祐)……これだけの重鎮、演技派が勢揃いした防衛組織はほかにない!
 そして白鳥家でさえも白鳥船長に大御所・中村竹弥、健一役も『帰ってきたウルトラマン』(71年)第41話『バルタン星人Jr(ジュニア)の復讐』や、『ウルトラマンA(エース)』(72年)第6話『変身超獣の謎を追え!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060611/p1)にゲスト出演し、演技には既に定評のある名子役・斎藤信也であったのだ。
 「小田急線の成城駅(正しくは成城学園前駅・せいじょうがくえんまええき)がどこかもわからなかった」ほどのド素人の少女が、そんな中に放りこまれたら日々プレッシャーやストレスに悩まされるのも当然だったのだが……


 「本当に篠田さんが優しかったんです。最初にお会いした時から青年っぽいっていうか、優しくて、穏やかで、気がいいんですよ。一緒にお昼に連れていってくれたりとか、いろんな話をしてくれたりとか。「真由美ちゃんが歌をやるって聞いたんだけど、女優の方がいいと思うよ。このままドラマを続けないのは、とても残念だ」と云って下さったんですよね。私にしてみれば、篠田さんが現場にいたから続けられたと云ってもいいくらい、優しくしていただきましたし、慰めてももらったし、勇気づけてもくれましたね」

(出典・同上)


 全ウルトラシリーズの本編場面中、一、二を争うほどのラブラブシーンが生み出されたのもこりゃ必然! 当時の芸能マスコミは「ミス・セブンティーン、ウルトラマンタロウと熱愛!?」なんて報じなかったのであろうか。時間があればぜひ調査してみたいものだが(笑)。


 確かにこんなラブリーな場面が登場怪獣とはなんの関係もなしに、まったく浮いた形で描かれたら困ってしまうのであるが、ジレンマの大暴れと密接につながり、本編と特撮のクライマックスを華麗に融合させているのであり、かつて第1期至上主義者が『タロウ』を評した際に用いた「怪獣と人間のドラマが分離して進む奇妙な現象」とは一体なんのことなのか、ホンマにようわからん(笑)。


 愛の絶頂に達しようとした二人をジレンマが情容赦なく襲撃する!
 マンションを散々踏みつけてバラバラにしたジレンマが、長い舌で光太郎とさおりが潜む地下室の天井をブチ抜いた! 崩れたコンクリートでさおりは気絶、光太郎にはジレンマの長く延びる舌が襲いかかった!


 ミニチュアの地下室からの主観で着ぐるみの舌が突き抜けてくるのを撮らえ、液体怪獣コスモリキッドや大亀怪獣クイントータスに続き、早くも三度目の登場となる実物大の舌が光太郎をグルグル巻き、そしてミニチュアの光太郎を巻いた着ぐるみの舌が外へ抜けようとする様子をやはり地下室の主観で撮るという、臨場感あふれるカメラワークと編集が絶妙である!


 そこに駆けつける戦闘機スカイホエールとコンドル1号!
 二機のミサイル攻撃で光太郎はジレンマの舌から逃れ、外に脱出することに成功するが、それにしてもスカイホエールの主観からジレンマを見下ろすカットを見ると、ミニチュアセットが実に広大なステージに組まれていることがよくわかり(東宝第7ステ−ジ)、この当時は本当に贅沢やったんやなあ……


 そして今回の特撮シーン中最高の名カットが、ジレンマ目がけてスカイホエールがナパームを投下する場面だ!
 スカイホエールの機体底部のシャッターが下に開くや、着ぐるみのジレンマが画面中央に現れ、それに目がけて複数のナパーム弾が投下されていく一連を、機体底部からの主観で撮らえているのである!
 (シャッターが開く前にレバー操作、ナパーム投下前にボタンを押すカットをアップで挿入しているのも実に効果的!)


 それに続いてジレンマが炎に包まれるという、なんとも臨場感あふれる特撮演出は感動的ですらあり、本編の光太郎とさおりの名演技と競いあっているかのようである!
 スカイホエールからジレンマを臨む主観カットもそうであるが、今回特撮を担当した川北紘一(いやあ、恥ずかしながら、今回の再見まで、氏が第2期ウルトラを担当したのは『ウルトラマンA』だけだと思いこんでいました……)のお得意の手法でもあり、のちに氏が手掛けた平成ゴジラシリーズ・『ゴジラVSビオランテ』(89年・東宝)における、飛行要塞スーパーX2からゴジラを臨む主観カットなどにも受け継がれていたりする。


 だがジレンマはナパームで燃え盛る炎をも、口から吐き出す白い霧で消してしまった!


光太郎「だめだ! ジレンマにはナパームも効き目がない!」


 さおりの胸に輝くペンダントをアップで撮らえ、それに続いて、特撮のカメラはジレンマの顔に目がけて3回連続でズームイン! と、ジレンマがペンダントを狙っていることを明確に視聴者に意識させるこの演出! 本編班と特撮班が華麗に連係しているからこそ成せる技だ!


光太郎「さおりさん、今度こそこのペンダントを捨てるんだ!」
さおり「いや! 光太郎さん、このペンダントが、本当にあたしを守ってくれるお守りであることを、確かめてみるわ!」
光太郎「さおりさん!」


 光太郎が呼び止めるのも聞かず、無謀にもさおりはジレンマに向かって駆けていった!


光太郎「危ないじゃないか!」


 追いついた光太郎はさおりの二の腕を両手でとらえ、必死の思いで説得する!


光太郎「さおりさん! ばかなまねはやめるんだよ! たとえこれがお守りでも、君が命を捨てるようなことをすれば、それはお守りにはならないんだよ!」
さおり「とめないで!」
光太郎「ばかっ!」


 さおりの頬に、光太郎の愛のビンタが飛んだ!


光太郎「君はどうして僕の云っていることがわからないんだ!」
さおり「ごめんなさい。これが伝説どおりのエジプトの石だったら、光太郎さんはZATからも、みんなからも、悪者扱いされてしまうわ」
光太郎「なんだって!? それじゃあ君は……」
さおり「あたしの方からジレンマに近づいたのなら、あたしが死んでも生きても、あなたには迷惑がかからないですむと思ったの」


 ここで視聴者はこれまでひたすら頑な(かたくな)だった、さおりの行為に隠された本心を知ることとなり、そのあまりの意外さにうちのめされることになるのである!


 どれだけ危険にさらされようが、さおりが決してペンダントを手放さなかったのは、決して「愛する」光太郎がくれた「誕生日のプレゼント」だから、「お守り」だと固く信じていたからではなかったのである!
 あまりにも純朴な少女としてさおりが描かれてきたために、我々はコロッとだまされてしまったのであり、これはまさに演出の勝利なのである!


 エジプトで出会った婆さんから、「東洋の方に持っていってしまって欲しい」と手渡された怪しげな石を、よりによって大切な存在であるさおりにプレゼントしたことが、さおりや健一に怖い思いをさせ、ポチを死に至らしめ、街に大被害を与えてしまったのであり、今回の事件の発端はどう考えても光太郎なのである。
 リアルに考えたら光太郎はその責任を問われ、ZATを懲戒解雇となったかもしれないのである。視聴者の中には、特にリアル志向の方々は本作に対し、そう批判したくもなるかと思う。
 だがそれに対する予防線となるセリフをさおりに与え、光太郎に対する「愛」ゆえの無謀な行動の理由として昇華させるなんて、あまりに見事というよりほかにないのだ!


光太郎「(さおりの両肩をとらえて)ありがとう、さおりさん! でも俺は、自分で蒔(ま)いた種は自分で刈るんだ! あの怪獣は俺の手で倒してやる! さあ、ペンダントを!」


 ひぇ〜、なんちゅうかっこええセリフやっ! これにより、本編と特撮のクライマックスが華麗に結実した!
 光太郎とさおりが身を潜めるビルの実景と迫り来るジレンマを合成したカットに続き、ジレンマがビルのミニチュアを破壊、崩れたビルの破片が二人に降りかかる本編場面と、なんとも流麗な編集テクがクライマックスを華麗に演出!
 瓦礫(がれき)の下敷きとなった光太郎の左腕のバッジが光り、光太郎は横になったまま、バッジを右腕で宙高く掲げた!


 瓦礫の中から巨大化を遂げ、その勇姿を見せるウルトラマンタロウ! その勢いで吹っ飛ぶジレンマ!
 タロウは気絶したさおりを、足元の公園のベンチに優しく置いた。
 タロウ目線で上空から撮られた公園の実景に合成された巨大な手が離れるや、ベンチで眠るさおりの姿。
 それを見下ろすタロウのカットがやけに長く、さおりに対する熱い想いが感じられて二重丸!


 そんなタロウに情容赦なく直立して襲いかかるジレンマに対し、タロウは宙に高々とジャンプ、スピンを数回繰り返し、ジレンマの頭めがけてスワローキック! あまりの勢いに吹っ飛ぶジレンマ!
 なおも直立して襲いかかるジレンマに、タロウはさらに蹴りを食らわし、四つ足歩行に戻ったジレンマにのしかかり、右の触角を左手でとらえ、右手で頭にチョップを食らわす!
 画面右手から襲いかかったタロウを直立して背中の上で転がし、画面左手に吹っ飛ばすジレンマ!



 この一連のバトルはタロウとジレンマの手前に、中央に歩道橋、その両脇に複数の民家のミニチュアを配置し、その奥で戦う両者をロングで撮らえているが、これは怪獣とウルトラマンが戦う都心に突然大きな空き地ができる、などとマニアがよくやる批判をかわすための大いなる工夫である。
 これまた川北監督の特徴でもあり、先述の『ゴジラVSビオランテ』をDVD引っ張りだして観てみたら、やはり新宿を進撃するゴジラは、街並みごしにややロングで撮られていたりするのである。


 それにしても、90年代の平成ゴジラシリーズに対し、かつてマニアは「光線の応酬ばかりで怪獣のとっくみあいがない!」とよく批判したものだが(ただし80年代には、昭和の後期ゴジラや第2期ウルトラを「怪獣プロレスだ!」と云ってとっくみあいを揶揄しまくっていたのにそのことへの反省や相対化もなしに何たる矛盾!・笑)、今回のバトルはまさに肉弾戦であり、白熱の「怪獣プロレス」が堪能できるぞ!


 タロウ、ジレンマにチョップ三連発! 抱え上げて投げ飛ばす! 画面右手から襲いかかったタロウが勢い余り、ジレンマの背中で反動して画面左手に着地!
 タロウ、ジレンマの背中にのしかかり、頭部にチョップの連打! ジレンマの触角を両方とらえ、左右に広げてジレンマを苦しめるタロウ! いやあ、こういうのこそ、平成ゴジラで観たかった?(笑)


 やや劣勢だったジレンマが口から白い霧を吐き出し、タロウを襲う! 直立してタロウを投げ飛ばし、さらに連続して霧を吐きかけるジレンマ! 口を押さえて倒れこみ、苦しむタロウ! ビルをもドロドロに溶かしてしまうジレンマの白い霧には、猛烈な酸が含まれているのだ!


荒垣「ウルトラマンタロウに、スーパーアルカリ液をかけるんだ!」
南原「待ってました!」


 スカイホエール機体底部の小さな穴から猛烈な勢いで霧状に噴射される、青いスーパーアルカリ液! これによってタロウの身体は中和され、ジレンマの酸を受けつけない強靭な肉体となったのだ!
 酸性とアルカリ性を見分けるリトマス試験紙の実験は小学校の理科の教科で学習するものであり、こうした疑似科学的な要素は視聴者の小学生には身近に感じられ、説得力を増すことになったかと思う。


 各怪獣の特性を正確に分析した上で、対怪獣撃滅作戦を繰り出すことが多いZATらしい手法ではあるが、筆者なんかはなめくじであるジレンマに対し、大量の食塩を吹きかけるなんて攻撃方法の方がより『タロウ』らしかったのでは? などと今回の再見でふと思ったりしたものだ。
 だがこれも、『タロウ』を「ファンタジー作品」として捉えていたがための、一種の「偏見」ではないか、などと反省することしきりである。先の朝日奈や南原のセリフどおり、ZATはあくまで「科学的」なのであり、今回の路線を考えればあまりおふざけに脱線もできず、スーパーアルカリ液の方がやはりふさわしいのである。


 スーパーアルカリ液の噴射に感謝するタロウ、そしてスカイホエールに搭乗する荒垣、北島、南原が敬礼を交わす! ZATにも華を持たせ頼もしく描かれるのだ。
 そこに絶妙なタイミングで間奏部分から流れる主題歌が、華麗なる連係プレーと窮地からの逆転劇を演出するのに絶大な効果を発揮する!


 襲いかかったジレンマを足元から抱え上げて投げ飛ばすタロウ! 懲りずに白い霧を吐きかけるジレンマだが、スーパーアルカリ液を浴びたタロウにはまったく効果はない!
 ジレンマ四つ足になって突進するも、タロウは宙を華麗にスピンして逃れ、背後からジレンマにのしかかる!
 頭にチョップを食らわし、触角をひっこ抜き、豪快にジレンマを投げ飛ばすタロウ!
 ひっくり返ったジレンマは起き上がると舌を伸ばし、タロウの首をからめ取り、動きを封じて前後左右に振り回した! なんとしぶとい奴なのだ!


 タロウはジレンマの舌を右手でとらえ、両方の角から稲妻状の青い光線・ホーンレーザー(現在の円谷プロの公式設定では「ブルーレーザー」と呼称されているのだが、筆者はかつての呼称の方がそれらしいと思うから使わせてくれいっ!)を発射してジレンマの舌を焼き切った!


 やはり光線にこだわりのある川北監督(笑)。
 ジレンマをジャイアントスイングで投げ飛ばしたあとにタロウが発射したストリウム光線も、第4話『大海亀怪獣東京を襲う!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071223/p1)と5話『親星子星一番星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071230/p1)の前後編が白色の光線だったのとは好対照で、赤を基調とした鮮やかな色、ジレンマに命中する際には緑がかかるといった具合なのだ!
 そういえば川北監督は『A』においても、第4話『3億年超獣出現!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060528/p1)ではピンク一色だったウルトラマンエースのタイマーショットを、氏が演出した第25話『ピラミットは超獣の巣だ!』では虹を思わせる七色の光線にしてたっけ(笑)。


 かくてエジプトの悪魔・なめくじ怪獣ジレンマは木っ端微塵に吹っ飛んだ! 発砲スチロール製カポックを派手に爆破する演出こそ、ウルトラシリーズが誇る最高のカタルシスなのだ!


 松葉杖を両手に、健一に付き添われながら白鳥家の玄関を出てくる白いワンピース姿のさおり。丈が妙に短く、ここにもさおりの太ももに対するこだわりが(笑)。先述の朝加真由美のインタビューを思えば、これも一種の「いじめ」だったのかもしれない(爆)。
 そこに姿を見せる、ピンクのシャツにピンクのパンツ(光太郎はなぜか妙にピンク色のファッションが多い!)、青いカーディガンを羽織った光太郎。


光太郎「これ全快のお祝いだよ(例のペンダントを手渡す)」
さおり「怪獣も死んでしまったし、もう付けても平気ね」
光太郎「ああ」
健一「怪獣が出てきても平気さ! 光太郎さんがついてるじゃないか!」
光太郎「こいつっ!」


 健一のマセた冷やかしに、笑いに包まれる白鳥家。


光太郎「健一くんにもプレゼントがあるんだ!」
健一「なに?」


 光太郎が手を口に加え、口笛のような合図を送ると、1匹の可愛らしいポメラニアンスピッツ?)が一同のもとに元気に駆けてきた。


光太郎「ポチっていうんだ!」


 せめてもの償いをさおりと健一に果たした光太郎。ポチを抱え上げ、嬉しそうに庭を駆け回る健一を見つめ、笑い合う光太郎とさおり。全ては丸く収まり、物語は大団円を迎える……


 「子供向けの特撮番組には人間的なドラマや愛なんて関係ないっていうのは、僕は絶対違うと思います。『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)は、ゲンと百子(ももこ)の幼い恋愛みたいなものがよく出てますけど、最終的には人間ドラマですからね、基本は。それが僕の考えですね」

(DVD『ウルトラマンレオ』Vol.9解説書・真船禎(まふね・てい)監督インタビューより・デジタルウルトラプロジェクト・06年10月27日発売・ASIN:B000GTLFK4


 特撮マニア間でも、特撮ライター・池田憲章の今は亡きアニメ誌「アニメック」(ラポート社)における70年代末期〜80年代中盤に行っていた連載『日本特撮映画史 SFヒーロー列伝』などでの主張をはじめ(余談であるが、連載タイトルロゴでは「特撮〜」は小さく「SF〜」が巨大で比重が置かれていたあたりにも時代の風潮が偲ばれる)、「人間ドラマ至上主義」は長らく喧伝されてきたことではある。
 現在の筆者は必ずしもこの意見に賛同するものではなく、特撮ジャンルの特性は、ヒーローや怪獣やそのアクションに特撮映像のスペクタルな驚きや快感・カタルシスを主眼とすべきものであり、人間ドラマやSF性や社会派テーマは否定すべきものでもないが、先の主目的に奉仕して収斂すべき従属的要素であると考える。
 (関連記事:特撮意見④ 特撮ジャンルの独自性〜アイデンティティとは何か? SFや文学のサブジャンルではない特撮・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060411/p1
 もちろんサジ加減を間違えたり、TPOをわきまえずに特撮ヒーロー作品で恋愛を描くのは個人的にもどうかとは思っている。
 しかしながら今回のように、Bパートがほぼ全編に渡ってジレンマの大暴れとタロウとの白熱したバトルであるにもかかわらず、それに密接した形で光太郎とさおりの淡い恋愛模様を描くことで、特撮・本編を両方ともおおいに盛り上げることに成功した希有な例もあるのだ。
 今回のような形であれば、ヒーロー作品における恋愛描写もおおいにアリなのではないか。今はそう思っている。



(※)
 なめくじ怪獣ジレンマのデータについては『ウルトラマン画報−光の戦士三十五年の歩み』(竹書房・02年10月4日発行・ISBN:4812408881)を参照させて頂きました。



<こだわりコーナー>


*白鳥さおり役の朝加真由美(当時あさかまゆみ)は55年9月6日生まれ、北海道北斗市出身、函館白百合学園高等学校中退、血液型O型、夫は俳優の篠塚勝である。
 71年にミス・セブンティーンコンテスト北海道大会でスカウトされ、『タロウ』でドラマデビューを飾った。
 『タロウ』以外のレギュラーでは千葉真一主演の忍者ものTV時代劇『影の軍団Ⅱ』(81年)の軍団員・お朱鷺(おとき)役、TV時代劇『暴れん坊将軍Ⅱ』(83年)の御庭番(将軍配下のスパイのことです)・さぎり役などもあるが、実は90年代以降の方がトレンディ系、ホームドラマ、時代劇、2時間サスペンスなど、ジャンルを問わず精力的に出演を続けており、その活躍ぶりは目覚ましいものがある。
 07年の作品では『水戸黄門』のお兼役、『わるいやつら』(テレビ朝日)の沼田看護師長役、『牛に願いを Love&Farm』『東京タワー〜オカンとボクと、時々オトン〜』(共にフジテレビなので筆者は未見・笑)のほか、CMでもトヨタ自動車『パッソ』に出演している。
 なお『ダブルマザー』(95年・国際放映東海テレビ(フジテレビ系)製作の昼ドラマ)ではなんと東光太郎役の篠田三郎と夫婦役を演じ、『タロウ』を知る者をおおいに歓喜させることとなった! ちなみにこの作品には『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)で防衛組織・GUTS(ガッツ)のヤズミ隊員を演じることとなった古屋暢一(ふるや・よういち。当時ジャニーズJr.)もたしか夫婦の息子役(?)で出演していた。
 だが筆者的には彼女の出演作品で最も驚いたのは、日本テレビで06年9月18日に放映された『アンテナ22特別版 総理大臣小泉純一郎 歴史に残る2000日』である。よりによって田中真紀子の役だった(爆)。そして武部勤の役は『ウルトラマン』で主人公・ハヤタ隊員を演じた黒部進であった(笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2008年号』(07年12月29日発行)『ウルトラマンタロウ』再評価・全話評大特集より抜粋)


『假面特攻隊2008年号』「ウルトラマンタロウ」関係記事の縮小コピー収録一覧
静岡新聞 1973年4月6日(金) TV欄:後7・0新番組ウルトラマンタロウ ウルトラの母は太陽のように(はごろも缶詰、大同薬品提供) 〜#1を大々的に紹介・篠田三郎ペギー葉山のバッジ手渡し2ショット大写真
・「ケイブンシャの原色怪獣怪人大百科(第3巻)(昭和48年版)」(1973年)宇宙大怪獣アストロモンス
静岡新聞 1973年3月19日(月) 「新番組の紹介」頭に二本角、太陽バッジで変身、「ウルトラマンタロウ」、一層SF的に
・読売新聞 1973年4月27日(金) 「てれび街」人気上昇中のウルトラの母 〜想像図募集に10万通、4割が女児
静岡新聞 1973年3月26日(月) 最新武器持ち、奇想天外の特撮 〜怪獣にしがみついたり和製アラビアンナイト
毎日新聞 1973年4月5日(木) 木曜の夜は 金曜の夜は 〜TBS73年春の新番組広告・7〜10時台全てドラマ
静岡新聞 1973年4月6日(金) TV欄「超能力を持つ」 〜タロウ#1紹介記事

DVD ウルトラマンタロウ VOL.2

DVD ウルトラマンタロウ VOL.2

(#6〜10)

[『ウルトラマンタロウ』#6「宝石は怪獣の餌だ!」言及記事]