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『藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ』 ~NHKでTVドラマ化! 良作! 1期・2期・3期の全話を寸評!
(文・中村達彦)
(2025年10月12日脱稿)
3年も続く隠れた特撮シリーズ
NHK BSプレミアムで先に放送されたあと、地上波の夜ドラで『藤子・F・不二雄SF短編ドラマ』が2023年から2024年、2025年と放送された。
『ドラえもん』(1969)・『オバケのQ太郎』(1964)・『パーマン』(1966)・『キテレツ大百科』(1974)・『エスパー魔美』(1976)など、マンガやアニメで大ヒットが続いた藤子・F・不二雄の隠れた作品群が実写化。2023年の第1シリーズから、楽しませてもらった。
その前の2022年にも、SF作家・星新一(ほし・しんいち)のショートショート(超短編小説)が、『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』名義でNHKでTVドラマ化。2023年の日本SF大会・星雲賞メディア部門でノミネートされていた。
両作とも、SFストーリーが15分の時間で料理。1話ごとに違う物語が語られていた。
星新一原作は詩的で、藤子・F・不二雄原作はマンガ的。それぞれわかりやすく、超技術やUFO・超能力はじめ、とんでもない現象に遭遇するなど、平凡な日常が非日常に変わっていくさまがていねいに描かれていた。
1話完結(度々前後編があるが)で、関連性や共通した人物・設定はない。有名な俳優が多く出演。その演技でも、あらかじめストーリーがわかっていても楽しめる。ラストシーンで、原作ラストのコマが入る。
『藤子・F・不二雄SF短編ドラマ』の方は、オープニングとエンディングが3年間、一貫して同じで、エンディングのアニメーションとフューちゃんの唄う「SF」は可愛く微笑ましかった。
第1作(第1期)の話は、以下の通りだ。
「おれ、夕子」
同級生少女が亡くなり、少女の住まいを訪ねた少年に変化が……。田牧そら、鈴木福らが出演。山本耕史の父親が泣ける。
「メフィスト惨歌」
魂のノルマを達成しようと悪魔は、ある青年に目をつけた。彼は平凡な男だが……。又吉直樹、遠藤憲一、鈴木杏らが出演。
「定年退食」
未来、日本は老人への保証を打ち切ることに。加藤茶、井上順が好演(高木ブーも出演)、穏やかに終わるが、日本や世界の未来もドラマ通りになるのでは?
「テレパ椎(しい)」
イラストレーターの青年が拾った、人の心が読める不思議な木の実。いつも好意を持って接する人の本心を知ることに。水上恒司、富田望生らが出演。
「昨日のおれは今日の敵」
締め切りに追われるマンガ家。次々に別の自分が現れ騒動に。塚地武雅が主演。『ドラえもん』でも同じ話があった。
「親子とりかえばや」
喧嘩していた父親と大学生の息子。目覚めると意識が入れ替わり、それぞれ入れ替わった状態で過ごす。父親役は吹越満、息子役は青木柚。
「流血鬼」前後編
奇病が広がって世界中の人々が吸血鬼と化す。家族も親しい人も亡くした少年は、人間が勢力を盛り返すと信じ、抵抗を続ける。前編は、人々が変貌する経緯が描かれ、後編では顛末が。金子大地、堀田真由、加藤清史郎らが出演。
ロメロ監督の名作ゾンビ映画『死霊のえじき』(1985)を連想するが、意外な結末を辿る。
「どことなくなんとなく」
妻子がいて、平凡な生活を過ごす男。何か違うと。その気持ちが頂点に達したとき、違和感について明かされる。主演は岡山天音。
「イヤなイヤなイヤな奴」前後編
長期間でストレスが伴う宇宙貨物船での航海。船員たちと騒動を起こし、嫌われている者がリンチに遭うが、機関室にたてこもる。船員たちはなす術がない。嫌われ者が増田貴久、船長が竹中直人、船員が萩原聖人、野間口徹らが出演。宇宙船内の生活がそれらしく描かれている。嫌われ者の意外な正体とは。
2024年の第2作は、以下8本のエピソードだ。
「鉄人をひろったよ」
風間杜夫が鉄人28号そっくりの巨大ロボットに翻弄される老人を演じる。巨大ロボットに乗って飛行するシーンの特撮は迫力ある。
「マイシェルター」
核戦争の危機を感じたとき、勧められてシェルターを購入しようか迷う主人公。核戦争に直面したときを想像する。浜野謙太、安達祐実らが出演。
「アン子 大いに怒る」
原作は少女マンガで描いた読み切り作品。藤子不二雄の長期連載漫画『エスパー魔美(まみ)』(1976~1983)の原型でもある。超能力を持つしっかり者少女の奮闘。新井美羽が主演。皆川猿時、矢柴俊博、青木崇高らが脇を固める。
「3万3千平米」
マンション暮らしのサラリーマンは謎の男に土地を売ってほしいと言われるが、心当たりがない。山寺宏一、劇団ひとりらが出演。
「あいつのタイムマシン」
幼なじみの2人、かたや結婚したマンガ家、かたや無職の貧乏暮らし。ある時、対面して、後者は信じて念じていれば、タイムマシンが未来にできると語る。やがて。
「じじぬき」
自分をないがしろにする息子一家に怒り、亡くなっていった老人。死後の世界へ行くも、悲しむ家族や友人に……。泉谷しげると原田美枝子が夫婦を演じる。
「いけにえ」
巨大なUFOが訪れた世界。UFOは目的が明かされず、長く留まり続けている。ある浪人生は、UFOが自分を指名したと知る。政府に捕らわれた彼は、抵抗の末、恋人と過ごし、やがて運命を受け入れるが。
「旅人還る」
超未来を舞台に、離れ離れになったカップルの顛末。森山未來が宇宙の果てを目指す主人公を演じる。林原めぐみが宇宙船の人工知能の声を。他に成海璃子、嶋田久作らが出演。結末は狐につままれるようで。
藤子・F・不二雄のSF短編は、昔から度々映像化されてきた。2014年に「未来ドロボウ」(1977)が『世にも奇妙な物語』で神木隆之介主演でテレビドラマ化。
「アン子 大いに怒る」(1974)も、1986年にフジテレビの90分枠「月曜ドラマランド」で改題前の本来の『赤毛のアン子』名義で荻野目洋子主演で取り上げられている(今回の再ドラマ化でも主人公の母親役で出演!)。その時のストーリーはかなり改変されていた。
また、1990~1993年にも『藤子・F・不二雄のSF(すこし・ふしぎ)短編シアター』名義でオリジナルビデオアニメとしてアニメ化もされており、複数の話がYOUTUBEでも視聴可能だ。
私は中学時代から、原作を読み、大体のストーリーは知っていた。原作マンガはSFを含んだ爽快な結末が多い(時にはアンハッピーエンドもあるが)。品がある「世にも奇妙な物語」といったところか。
こういうことが未来に起きるんじゃないか? もしかしたら本当にこうなんじゃないか? と一抹の恐怖を匂わせた話も。アイデアが古い感は特にない。SF入門書としても適している。
多くの作品は、すでにストーリーはわかっていたが、映像化したらどうなるかが楽しみだった(第1シーズンに放送された「流血鬼」は、藤子が1996年に逝去する前の90年代中盤に、平成ウルトラマンシリーズを担当する以前で、熊の縫いぐるみや美少女をメインにファンタジックな作風を旨としていた小中和哉監督に対して、藤子との対談で映画化の話が上がっていた。しかし、企画倒れに終わって残念に思ったものだ)。
「えっ、この人が」と起用に驚かされた俳優の演技と、VFXやアニメーションを取り入れて仕上がっていた。低予算の安っぽいTVドラマには見えない。
今年2025年に放送された第3シーズンは11本のうち、4本が先に放送され、2025年8月下旬に7本は夜ドラで放送されていた。
「換身」
あるアベックが拉致され、体を入れ替えられてしまう。だが、逆襲に転じる。尾上松也、のん、六平直政、佐野史郎らが出演。
「タイムマシンを作ろう」
ある中学生に未来から訪れた人物。将来、自分はタイムマシンを作ると言う。言われるがままにタイムマシンを完成させるが、続いて現れた人物は……。市村優汰主演。未来からの来報者は父親の市村正親が演じる。
「俺と俺と俺」
登山から帰宅すると、顔も姿もうりふたつの男が家にいた。お互いに自分こそ本物だと言い張る。そして3人目が。主演は矢本悠馬。
「ミラクルマン」
思った通りに上司が死んだり、憧れの女性と結婚する男。それは奇跡を起こしているのか? 単なる偶然なのか?
「みどりの守り神」前後編
前後編である。最も楽しみにしていたエピソードだ。他の話より詳しく解説したい。
旅客機の墜落事故に遭った少女みどりは、父母を失い、雪山で眼を覚ましたとき、かなり時間が経過していたが、どうなっているのかがわからない。
同じ生存者の坂口青年と山を下るが、行けども行けども、人はおろか、鳥や獣、魚や虫の姿もない。草木が生い茂るばかり。
慣れぬ行程にみどりは傷つき、遅れるばかり。一見、親切な坂口もイライラを募らせる。
無人の集落で過ごしたあと、急造した筏(いかだ)で川を下るが、生きるものの姿はなく、濃い緑の森林が続くばかりだ。筏は廃船と衝突。2人は投げ出されてしまう。
しかし、蔦(つた)に絡まり岸に打ち上げられていた。その前から、お腹が空いたときに木の実があったり、怪我をした足が一晩経つと治っていたりと、幸運が続いていた。
陸路を進むふたりの前に、やがてジャングルに呑み込まれたビル群が……。墜落事故から100年が経過した東京であった。
残されていた新聞から、細菌兵器が漏洩し、人類を含む生物が死滅してしまったことが明らかに。坂口はショックで発狂して出奔。行方不明となる。
1人残されたみどりは、自分の住まいへと向かう。緑に覆われていたが、墜落事故の前と同じ状態で残っていた実家。何も希望がなく、みどりは自殺する。だが、そのあとに……。
救いのある結末。SF設定が組み込まれ、タイトルにも秘密が隠されており、うまい。
期待に違わぬ映像化。緑に包まれた東京は、CGで描かれた。昔はここまで映像化できなかっただろう。往年のNHKの平日夕方枠の『少年ドラマシリーズ』(1972~1983)の匂いを感じたという声も。
みどりは藤﨑ゆみあ(新人のモデル出身)、坂口はNHK大河ドラマ『べらぼう』(2025)で好演した宮沢氷魚。最後に出演する人物を仲村トオルが演じる。原作で描かれた姿とは異なるキャラクターだ。
脚本・演出・VFXを手がけたキムラケイサクは、東映特撮のCGデザインを長く務め、本作シーズン2でも「鉄人をひろったよ」を担当していた。
本話は往年の大作SF邦画『復活の日』(1980)とあちこちで重なっている。この「みどりの守り神」の原作マンガが描かれたのは1976年。映画『復活の日』は1980年で、小松左京の原作SF小説が書かれたのは1964年。藤子・F・不二雄は原作をおそらく読んでいたのだろう。「みどりの守り神」もアニメ化されている。YOUTUBEでも視聴できるかも。
「宇宙(そら)からのオトシダマ」
藤子・F・不二雄作品ならではの、宇宙人と少年との心温まる交流。買いたいものが買えず、幼馴染が家庭教師に首ったけ。不満だらけの少年。そこへ落下してきたピンクのまるい物体から不思議な体験を。中堅声優・釘宮理恵が宇宙人の声を。黒川想矢、豊嶋花、田中要次らが出演。
「オヤジ・ロック」
石をペット替わり(『ドラえもん』でも存在した)に売る営業マンが、タイムマシンを知って大儲けの手段を考える。3度目のタイムマシンねた。えなりかずきが主演。
「マイロボット」
少年が購入した組み立てロボット。父や弟も手を加えてしまう。完成したロボットは少年に特別な感情を抱き、ガールフレンドを敵視するように、大西利空が主演。2025年上半期のNHKの朝ドラ『あんぱん』で好演した原菜乃華、中島歩も出演。
「分岐点」
嫉妬深い妻に悩む男は「あの時、違う彼女を選んでいたら」と後悔するばかり。そんな時……。ハッピーエンドとは言いがたい。
「ユメカゲロウ」
伝説の虫をめぐるひと夏の体験。夏の終わりにふさわしい、幻想的な物語。向井理、山時聡真、幸澤沙良、伊武雅刀らが出演。
「異人アンドロ氏」
不思議な能力を持った隣人に巻き込まれた男の話。ディーン・フジオカと中村倫也のコンビは、『ウルトラマンオメガ』(2025)の主人公ソラトと副主人公コウセイのコンビに似ているような。中尾明慶や名作アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006)の主演声優でも有名な舞台・ミュージカル女優の平野綾も出演。連作のエピソードであったが、本作発表の翌年の1996年、藤子・F・不二雄は逝去。絶筆となった。
『藤子・F・不二雄SF短編ドラマ』は基本的には原作に忠実に映像化されていたが、いくつか改変されている。
「みどりの守り神」では、みどりが自殺する前に、川で裸になり沐浴していたが、NHKドラマでは、さすがにそれは……。
「じじぬき」は、死後の世界で老人が妻を殴るシーンが原作に存在したが、カットされていた。DV(家庭内暴力)であり、今の世では刺激が強すぎると自粛されたのであろう。
劇中では、2020年代の現代が舞台なので、スマホが使われているシーンが何度もあった。
藤子・F・不二雄のSF短編マンガのストックはまだまだたくさんある。来年もシーズン4をやってくれないだろうか?
「幸運児」「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」「ポストの中の明日」「倍速」などなど、まだまだ面白い話が残っている。「宇宙船製造法」「絶滅の島」などは予算がかかってしまうだろうが。「ひとりぼっちの宇宙戦争」「ニューイヤー星調査行」は映像化されないのだろうか? しかし、「ミノタウロスの皿」「間引き」「コロリころげた木の根っ子」はヌードやDVのシーンがあるので「これはちょっと」とは思う。
この『藤子・F・不二雄SF短編ドラマ』も星雲賞メディア部門でノミネートされてほしい。過去にも『ウルトラマンティガ』(1996)や『仮面ライダークウガ』(2000)に『特捜戦隊デカレンジャー』(2004)などが、今年2025年は映画『侍(さむらい)タイムスリッパー』(2024年)が星雲賞メディア部門を受賞している。
星新一、藤子・F・不二雄の他にも、マンガ家・西岸良平は『三丁目の夕日』(1974~)が有名だが、SF短編のマンガを多く描いてきた。一部は90年代にTVドラマ『世にも奇妙な物語』枠で映像化されている。しかし、まだまだ実写ドラマ化したら面白い作品がある。こちらもNHKでテレビドラマ化してほしい。
