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西遊記♯10「滅法国」


「西遊記」全話評! 〜全記事見出し一覧


(映画『西遊記』公開記念!〜短期集中連載!)
(文・田中雪麻呂)

♯10『滅法国(めっぽうこく)/〔妖怪の国 凛凛の意外な正体!!〕』

(脚本)坂元裕二(演出)高木健太郎


 「(目を瞑って動かない凛凛を抱き上げて)……運命って何だ。そんなもんで腹が一杯になんのか?
 オレはそんなもん信じねえ。何があるか分かんねえから面白れえんじゃねえか。何が起こるか分かんねえから生きてんじゃねえかッ。
 オレたちの道はオレたちがつくるんだ。オレたちの歩いた一歩が道になるんだ。一歩一歩が運命なんだ。
 運命の星は空じゃねえッ!(自分の胸を強く叩いて) ココにあんだよォー!
 (悪の首謀者の犬魔将軍[いぬましょうぐん]に向き直り)おめえのようなヤツは、たとえ神様仏様が許したって、このオレ様が許さねえ。
 天国だろうと、地獄だろうと、どこでもいい……。
 ただ……凛凛を……凛凛をかえせェー!」


 悟空がひとり一行から離れている間に、悟浄八戒は天竺から来たと言う玉英(ぎょくえい/眞野裕子)ら二人の美女に誑(たぶら)かされて傷を負わされ、三蔵も攫(さら)われてしまう。
 近くの王宮に助けを求める三弟子だが、そこは羅刹女(らせつじょ/大地真央)が統治する、滅法国の大宮殿であった。


 滅法国とは、妖怪の妖怪による妖怪王国である。
 宮殿は羅刹女の一人娘である王女の婚礼準備に大わらわ。三弟子は婚礼祝いの貢ぎ物として囚(とら)われている三蔵を発見し、宮殿内の妖怪たちと一触即発の状態になるが突然現れた王女に悟空らは息を呑む。何と妖怪国の姫君は彼らキャラバンと旅をしてきた凛凛その人であった。


 凛凛は自室に悟空を呼び付け、全ての経緯を語り始める。凛凛の母・羅刹女は実は人間の女だった。滅法国の妖怪の王子と恋に落ち、ミックスの凛凛が生まれたのだ。
 父親である滅法国国王亡き後、窮屈な城暮らしに耐えられなくなった凛凛は、冒険の旅に出、キャラバンに出会う。当初は三蔵の命を狙っていた凛凛だが、次第にキャラバンのメンツに心惹かれ、何かと肩入れするようになる。
 先だって混世魔王の軍隊に退却の指令を出したのも凛凛だった。そのせいで母・羅刹女の不興をかった彼女は、以前からの母の願い即ち、早く強大な妖怪と結婚してこの国の統治を継承することを承諾する。しかし、予(かね)てからの自分の許婚(いいなずけ)である犬魔将軍(デビット伊東)を避けるため、悟空に方便で結婚して欲しいのだという。


 悟空はにべも無くそれを拒絶するが、凛凛は媚薬(惚れ薬)を巧みに用いて彼を意のままに操る。
 「あたしがお母さまのあとを継ぐのは“運命の星”なのよ。運命には逆らえないの。生まれ持った星は自分じゃ変えられないのよ。」と、いつになく殊勝な面持ちで呟く凛凛。


 そんな中、食べると赤ん坊が体内に宿る果物“孕孕(はらはら)”をそうとは知らず食べた八戒は、無事に豚の男の仔を産み落とす。
 凛凛と悟空の縁談を快く思わぬ犬魔と羅刹女は、三蔵に催眠術を掛け、悟空と殺し合いをさせる謀を遂行させるが、娘の幸せそうな笑顔に感化された羅刹女は犬魔に計略の中止を命令する。


 しかし犬魔将軍は最初から羅刹女親子もキャラバンも全てを葬り去り、自分が滅法国の国王になる心積もりであった。犬魔は羅刹女を強(したた)かに殴打し、王位継承の印である盃(さかずき)を奪い去る。
 逃げ出した仔豚を追ってきた八戒悟浄は偶然、倒れていた羅刹女を発見し、犬魔の企みを知る。


 婚礼の儀式の直前、凛凛は媚薬の術を解き、悟空を正常に戻す。一時は憤慨する悟空だが、自然な気持ちで式に参加して欲しいという凛凛の健気な言葉に彼も納得し、座り直す。
 儀式が始まり、果たして術中の三蔵は短刀を振るうも、駆けつけた悟浄によって事無きを得る。


 しかし犬魔の投げた短刀が悟空を庇(かば)った凛凛に深い傷を負わせる。瞼を閉じ、動かなくなる美しい花嫁姿の凛凛。
 悟空の怒りの鉄棒が犬魔に振り下ろされる。犬魔の手から離れ、粉微塵になる王位継承の盃!
 数日後、全快した凛凛と羅刹女らに見送られ、晴れやかな顔で出立する三蔵主従の姿があった。



 『西遊記』の紅一点、凛凛が主役の一遍である。
 演じた新進女優の水川あさみ('837/24生まれ。大阪府出身。AB型。身長163センチ・B82・W58・H84)はTV誌の取材でこう語っている。


 「今まではどこか陰のある役が多かったので、凛凛のような騒がしい役は新鮮でしたね。私も普段そうなので地に近い感じです。でも最初プロデューサーさんに提示されたこの役のビジュアルイメージはルパンの峰不二子(笑)。セクシー路線でいくと言われてドキドキしてたんです。どこまで露出させられるのかなぁって。でも最終的には活発で明るい“セクシーじゃない不二子”になりました(笑)。チャイナ服が私のユニフォームなので(笑)毎回気が引き締まりますね。でも生地が薄いのでロケが大変! カイロの他に、ババシャツを3枚も重ねたり……オンエアをよく見るとモコモコしてるんですよね。あれ凛凛太った? みたいな(笑)。{週刊ザテレビジョン'062/10号より}」。


 凛凛は意外にも着道楽(きどうらく)であり、一話につき三パターンくらいの衣装替えがある。演じる水川個人のフェイバリット・コスチュームは♯4で、凛凛がキャラバンに悟浄と金魚の悲恋の顛末を語るシーンで用いられた黒のドレス。細身で可愛いところが魅力だという。


 水川氏の述懐にもあるが、凛凛はポンポンとものを言い、ボーイッシュなキャラであったので、彼女はキャラバンのアイドルというよりも、潤滑油や狂言廻し(作品の進行役)的な属性が強い。
 シリーズ全11話中、実に7話で妖怪の生い立ちや現在の状況等を的確に解説している。
 その他の4話を鑑(かんが)みても、♯1はまだ凛凛はキャラバンの仲間でなく、♯7の彼女は意識不明の状態で、♯11では旅自体に不参加であることなどから、凛凛はほぼ全話で狂言廻しを務めていたといっていいだろう。
 当シリーズでの凛凛の存在価値は絶大である。彼女のお陰で、状況説明がスムーズに手早く行われる。


 しかし、この形態は作劇はラクになるかもしれないが、失うものの方が多い。
 ついつい凛凛の説明台詞に頼ってしまうことで、お話自体のキャパが矮小化するからである。
 ♯5が良い例だ。赤ん坊のミルクを求める悟空に、母乳と酷似した味わいをもつ迦乳果(天上界の果実)の存在を凛凛が知らせ、悟空はそのまま天上界に昇って果実を採る、というくだりがあるが、この間、全てレギュラーキャストのみで問題が処理されていてその徹底した姿勢に慄然とさせられる。


 本話のクライマックスである婚礼の儀式に参加する人員にしても、キャラバンを除いては羅刹女、犬魔将軍、重臣の鶴林(かくりん)、侍女2名の合計5人だけのメンツである。だから、犬魔の短刀があからさまに凛凛を傷付けているのに、誰も犬魔に不審を持たないというような不自然な流れになってしまった。
 折角ドラマとして製作しているのに、舞台劇のように(人間関係)がせせこましくなるのは勿体無いの一言に尽きる。


 因(ちなみ)に、滅法国の国名は原作にもある。
 こちらは妖怪王国ではなく、人間の統治国であるが、国王はある坊主に罵られたことを恨み、仏教を廃止し、一万人近い僧侶を殺害してきたという曰く付きの国である。悟空は国王から王妃、文武百官に至るまで全ての役人の髪の毛を剃り落として彼らに反省を促す。


 余談だが漫画文化創成期に活躍した、宮尾しげを氏が著した絵解き物語『孫悟空』では、この滅法国が金角銀角や霊感大王の話と同じキャパのページ数でガッツリ描かれていて面白い。頭のつるつるなヒトたちが沢山出てくる絵ヅラが良かったのだろうか(笑)。


 尚、原作ではこの話で初めて(一行が僧侶であると分からぬために)方便で、ナマカならぬ“仲間”として滅法国内に潜入しており、興味深い。


【その他のゲスト】
谷津勲(重臣・鶴林/かくりん) 大楽源太 西村理沙


(了)
(特撮同人誌『仮面特攻隊2008年号』(07年12月30日発行予定)『西遊記』2006年版・全話評より抜粋)


(編:本話のゲストの谷津勲(やつ・いさお)氏は特撮マニアには、『仮面ライダー』(71年)のあまたのショッカー怪人の声や、帰ってきたウルトラマン(71年)の声、『ウルトラマンエース』(72年)のヒッポリト星人の声でも知られる俳優)



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