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仮面ライダー』総論2 〜元〈旧1号至上主義者〉の告白

(文・旗手 稔)
(2000年10月執筆)


 1980年に創刊された特撮雑誌『宇宙船』(朝日ソノラマ刊)第1号に、特撮作品の人気投票ベスト10が発表されている。


 我が『仮面ライダー』(71)は、


・1位『ウルトラセブン』(67)
・2位『ウルトラマン』(66)
・3位『ウルトラQ』(66)
・4位『ミラーマン』(71)


 と円谷作品が圧倒的な強さを示す中で、「テレビ部門」第5位に食い込む健闘。この時期には東映怪人番組の本格的な再評価がまだ始まっていなかったことを思えば、『ライダー』の5位という順位は上出来だろう。


 だがこんにちの視点からは、むしろ「映画部門」の結果が興味深い。第1位の『ゴジラ』(54)に続いてランクされたのは、何と大映の『大怪獣ガメラ』(65)。第3位には『モスラ』(61)と『海底軍艦』(63)の東宝特撮がともに176票で並んでいるが、『ガメラ』の得票数518票とはかなりの開きがある。


 『大怪獣ガメラ』の2位は当時としても意外に感じたことを覚えている。「ガメラシリーズの最高傑作は67年の『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』」というのが、その頃の特撮論壇におけるごく一般的な論調だった。しかも「映画部門」ベスト10にランク・インした作品の中には、『スター・ウォーズ』(77・日本公開78)や『スーパーマン』(79)といった「誰もが一度は見たことのある」超メジャー・洋画タイトルも含まれていたのである。


 よくよく考えてみれば、その頃には露出の機会がめっきり減っていた『モスラ』と『海底軍艦』があれだけの支持を得られたというのも奇妙な話ではある。「一度も見たことがない」くせに、その作品に投票した不埒な読者も中にはいたということか。


 それとも『モスラ』と『海底軍艦』を体験していない読者にとって、この人気投票は「どの作品が内容的に一番優れているか」を決めるものではなかったのかもしれない。『大怪獣ガメラ』はモノクロ作品のためのちのシリーズ作品ほどテレビで頻繁にリピートされることはなかった。時代はホームビデオの黎明期、ビデオソフト化も当然始まっていない。シリーズの原典が「見られないこと」のもどかしさ、それが『大怪獣ガメラ』をあの高みへと押し上げたのか。


 「見てみたいこと」、当時の特撮ファンダムではそうした感情が作品の評価とダイレクトに直結されていたように思う。さもなくば、当時「幻の傑作」と化していた――つまりほとんどの人間がそれを「見ていない」――第1作『ゴジラ』が1位(670票)になれるわけがないだろう。
――ジャンル黎明期の書籍『大特撮――日本特撮映画史』(79・有文社刊。85・朝日ソノラマ再刊・ISBN:4257031883)の中にも「ゴジラのデビュー作である昭和二九年度の東宝作品『ゴジラ』に関して知る者は、意外と少ないのではないだろうか?」といった記述がある――



 特撮ヒーロー番組としてはきわめて希(まれ)な2年というロングラン放送を実現した『仮面ライダー』。


 しかし放送開始当初、視聴率は低迷を続け、そのため一時はウルトラマンのように巨大化させる案まで出されたのはわれわれ特撮マニアにとっては有名な話だ。変身ブームの洗礼を受けた世代人に仮面ライダー=2号ライダーという認識を持つ者が筆者を含め少なからずいるのは、つまり「旧1号編」が当時それだけ「見られていなかった」ということだろう。


 「現在では滅多に見ることが出来ない傑作」の「活字化」が活発に行われた70年代末期の第3次怪獣ブーム以降の80年前後の特撮論壇。「旧1号編」の〈神格化〉にはそうした時代の空気も多分に反映されていたように思われる。


 80年代前半のことだった。筆者の地元・広島でその『仮面ライダー』旧1号編の再放送が始まることになった。この道に目覚めてから初の「旧1号」体験である。


 大多数に大きな影響を与えていたとはいえない論客だが、非常に独創的な見解を披露しており、今でいう評論オタク的な感度を持った人種の中でも特に先鋭的なマニア層に対しては大きな影響を与えていた、アニメ・特撮ライターの故・富沢雅彦という方がいた。「旧1号編」には年齢的にも十代中盤で遭遇したという氏による、当時における「旧1号編」の〈神格化〉の風潮とは真っ向から反していた先駆的な「旧1号編」批判、


――「初期の頃はこりゃどうしようもないな、と思っていた」(『宇宙船』Vol.6・1981年春号)――


も、実はすでにあるにはあった。


 だが、この見解が当時の特撮マニア界において大きな位置を占めることはなく、筆者も「活字」でしか知らない「幻の傑作」をようやく拝める喜びに胸を踊らせながら、当日のオンエアに望んだのであった。


 当時の主流を占めていた〈子ども向きの内容に路線変更したからゴジラやウルトラはダメになった〉史観にすっかり染まっていたこともある。
 藤岡弘の負傷退場という予期せぬアクシデントによって生まれた「2号編」以後の展開を「何かの間違い」だと本気で思っていた十代前中盤の筆者の過剰な期待を受け止めるだけのものが第1話「怪奇蜘蛛男(くもおとこ)」の中には確かにあった。
 太田耕治の陰影に富んだ照明、主人公を徹底して追い詰める冷徹な作劇。人体溶解の場面で内部の骨格が露出する猟奇趣味もアダルトなムードを良く醸し出していた。


 あとで知ったことだが、当時の現場は東映労働組合との兼ね合いで相当な難儀にあっていたという。利便性が良いとはいえない神奈川県川崎市の生田(いくた)スタジオで撮影が行われたのも、東京都練馬区の大泉(おおいずみ)撮影所ではストライキを目論む組合員に見つかり制作に支障を来す恐れがあったから、とのこと。あの妙に切羽詰まった感じは、もしかしたら作り手の心象風景そのものだったのかもしれない。
 超クローズアップに大ロング、隠し撮り風のカメラ・ワークにコマ落としのアクションと、演出家・竹本弘一(たけもと・こういち)の先鋭的な画作りも印象的。


 なお、これまたあとで知ったことだが、竹本がディレクションした第1話「怪奇蜘蛛男」と第3話「怪人さそり男」――彼が手がけたエピソードはこの2本のみ――では、変身後のライダーの声を声優の池水通洋(いけみず・みちひろ)が演じていたようだ。竹本の構想ではライダーは「変身すると声が変わるヒーロー」だったのだろうか。「とおっ」とか「たー」としか言わない#1のライダーは、改造手術の後遺症で言語中枢に異常をきたしているようにも見え、結構好み(ハートマーク)。


 改造人間の異能が視覚的・聴覚的に表現された竹本ライダーのビザールなテイスト。『仮面ライダー』の記念すべき第1話「怪奇蜘蛛男」は、ある意味ではショッカーの改造人間が社会復帰を果たす第84話「危うしライダー! イソギンジャガーの地獄罠」――説明するまでもないだろうが、原作者の石森章太郎自らが脚本〈※島田真之と共同〉と監督を手がけたエピソード――にも比肩する異色作と言えよう。


 冬の季節感漂う肌寒い画面は、改造人間・本郷猛の心情を結果的にではあれ見事に代弁しているし、黒と青を基調にした「旧1号」の色使いも実にシブかった。
 いっそう怪奇色が強められた第2話「恐怖蝙蝠男(こうもりおとこ)」は何が映っているのか良く分からない闇夜のバトルに、初期『ウルトラ』シリーズで異色作を担当した映像派監督である実相寺昭雄演出にも通じるアバンギャルドの精神が感じられたし――実際にはライトの光量が足りなかっただけ(苦笑)――、気分はもう「旧1号サイコー!」。


 だが、話数が順調に消化されるに連れ、ひとつの押さえ切れない感情がいつしか胸の奥に沸き上がってきた。


 「……こりゃどうしようもない」。


 人の形に置かれた「ただのヒモ」がヒュルヒュルとフレームの外に引き込まれていった瞬間、我が目を疑った。アダルト志向の「旧1号編」がこんな子どもだましの特撮をやるわけがない、これは「何かの間違い」ではないのか。でもやっていたのだ、本当に。――※未見の方のために説明しておくと、これは第5話にて「人体の消滅」(!)を表現したもの――


 第2話のラストで本郷の「濡れ衣」がアッサリ晴れて以降はドラマ的興味はガクッと半減してしまったし、ウリもののライダーとショッカー怪人のバトルだってこの時期のはドタドタしててまるでスマートじゃない。
 本郷猛が声変わりしたあたりから、もう本気でリタイヤしたくなった――藤岡弘の負傷退場により、声優の納谷六朗が本郷のアフレコを担当した――。サイクロン号のスタンドをきっちり立てて駐輪する人間味溢れるライダーの姿とか、都合の悪いところは「見えてない」フリをしようかとも思ったが、時すでに遅し。


 富沢サン、貴方が正しかったです(笑)。


 筆者が追い求めた「幻の傑作」としての「旧1号」世界は、パイロット篇ですでに完結していたのかもしれない。藤岡弘が全身全霊を捧げて歌う主題歌をバックに、枯れた風景の中をロンリーヒーローがバイクで疾駆する「旧1号編」のオープニングはやがて、あちこちに芽吹いた緑が初夏の熱気を伝える「2号編」のそれへとリレーされる。


 「旧1号編」に失望した筆者は前言撤回し


 「やっぱりライダーといえば『2号』でしょ(ハートマーク)」


 と都合良くそちらに乗り換えた。


 明らかにシロウトと分かる子どもたちのエキストラ出演については判断が難しいが、お決まりのスタイルが毎回続く安心感といい、賑やかになったレギュラー陣といい、「商品」としてはやはりこちらのほうが良く出来ていると言わねばならない。
 それでも作りの雑さは相変わらずで、「2号編」との再会には懐かしさよりも幻滅の気持ちのほうが大きかったかもしれない。


 かくて結論は


 「やっぱりライダーといえば『新1号』でしょ(ハートマーク)」。


 残念、広島エリアの再放送は「2号編」の途中で打ち切られたのだった。



 『銀幕の百怪――本朝怪奇映画大概』(00・青土社刊・ISBN:4791758099)の著者・泉速之も


 「業腹な験を避ける上でも、未見の作品を写真で愉しむのも時として賢明」


 と言っている。


 まだ「旧1号編」に接していないヒトは、作品のスチルだけを見てイメージを膨らませているほうが当人にとっても、また作品にとっても幸福かもしれない。
 そうすれば筆者のように第11話「吸血怪人ゲバコンドル」での対ゲバコンドル戦における、ライダーのあまりに無様でギャグ漫画的な負けっぷり(土砂の中に上半身を突っ込まされる)を見てショックを受けることもないだろう。


 「旧1号編」がスタッフ人脈的にもあの東映の大人気スポーツ根性TVドラマ『柔道一直線』(69)の狂気の流れを汲んでいることをゆめゆめ忘れてはならない。それとも、「旧1号編」のそうしたギャグスレスレのセンスを『ウルトラセブン』的な「SF性」で捉えようとしていたこと自体に無理があったのか。


 「旧1号編」は1960年代までのヒーローもののタブーを破り、人間の喜怒哀楽を正面から描いたところが画期的であったとも言われる。実際、第7話「死神カメレオン 決斗! 万博跡」のラストで、目の前にいた仔犬をあまりの可愛さからつい抱き上げて「お前も寂しいのか?」と語りかけてしまう本郷猛の姿は、今となってはヒーローものでも当たり前なヒューマン描写だが、それまでの俗世からは超然としていたヒーロー観とは相違していたために、当時のTV局・毎日放送側の局長が激怒して色々と物議を醸したとマニア向け書籍の証言でも語られているとおりだ。


 ヒーロー自らが(旧来のそれや自らの)ヒーローの枠組みを「解体」していった「旧1号編」。真に「見られる」べきは番組のそんなアナーキーな精神かもしれない。

2000/10/18


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2001年号』(00年12月30日発行)『仮面ライダー』シリーズ大特集より抜粋)


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