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ウルトラマンエース48話「ベロクロンの復讐」

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)


「ウルトラマンエース」総論
ウルトラマンエース最終回「明日のエースは君だ!」
「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・市川森一 監督・菊池昭康 特殊技術・田渕吉男)


(文・久保達也)
 タックスペースで宇宙空間をパトロールする北斗は、眼前に流星群が迫っているのを目撃する。


北斗「こちらタックスペース! こちらタックスペース! 前方より流星群が接近中! 本部応答願います!」


 北斗が流星群と思ったものは、実はシャボン玉の群れだった。だがそのシャボン玉こそが、北斗の悪夢の始まりだったのだ……


北斗「あっ、シャボン玉のお化け? ベロクロン!?」


 そのシャボン玉のお化けの中で、エースとミサイル超獣ベロクロンが死闘を繰り広げていた。エースが初めて倒した超獣であるベロクロンがなぜ今ごろ……
 そこにドスのきいた低音の女性の叫び声が響く……


女「うらめしやウルトラマンエースよ! たとえこの身が地獄に堕ちようとも、ヤプールの恨みを晴らすまでは幾 度とも甦らずにおくものか! 復讐しろベロクロン!
 エースを地獄へ引きずりこめ! ヤプールの仲間たちが待っている地獄へ!」


 ベロクロンにはがい締めにされたあと、口からのミサイル攻撃を受け、苦しむエース。「ハ〜、ハッハッハ!」と高笑いする、般若(はんにゃ)のように口が裂けた、厚化粧の不気味な女性のイメージ……


山中「タックスペースより本部へ。タックスペースより本部へ。宇宙パトロール完了。これより帰還する」


 山中の通信の声で目を覚ます北斗。タックスペースで宇宙パトロールに出ていた北斗は、山中が操縦をしている間にいつしか眠りにつき、悪夢にうなされていたのだ。
 額の汗を拭い、操縦を交替しようとする北斗。


山中「いいからいいから。おまえ、うなされてたぞ」


北斗「ベロクロンの夢を見てました」


山中「ミサイル超獣ベロクロンか……ああ、あいつは強敵だったからなあ」


(北斗の心の声)
 「それだけじゃない。俺は一度、あのベロクロンに殺されたんだ。そして再びウルトラマンエースの命を受けて甦った。俺にとっては生涯忘れることのできない超獣、ベロクロン……」


北斗「ベロクロンが復讐に来たんです」


山中「復讐に? ハハハハ、見ろよ、日本はまもなく夜明けだ。明け方の夢は正夢になると云うからな。本当に生き返って出てくるかもしれんぞ!」


北斗「脅かさないで下さいよ〜」
 かつて険悪だった関係が嘘のように笑い合う二人。


 突然歯の痛みを訴える北斗。


山中「どうした。虫歯か?」


北斗「はあ。奥歯が」
(北斗の心の声)
 「こいつのおかげで変な夢を見たんだ」


山中「もう少しの辛抱だ」


 青い地球に迫るタックスペース。



美川「ほ〜んと。大きな虫歯」


 美川隊員が面白がって北斗の口を覗きこむ(このときの表情がまたたまらなくカワイイ・ハートマーク)。
 とりあえず薬で痛みを止めていると云う北斗に、吉村は「ちゃんと治療した方がいいぞ。すぐまた痛くなるんだから」と警告するが、そこに竜隊長が現れる。


竜「北斗隊員、B地区パトロールの時間じゃないのか」


 「これだからね。ゆっくり治療もできないよ」とボヤきながらパトロールに出る北斗を見て笑いをあげる一同。


北斗「畜生、またズキズキしてきやがったな」


 NGになった挿入歌『TACのワンダバ一週間』のユーモラスなインストゥルメンタルをバックに、さも歯が痛そうにタックパンサーを運転する北斗の芸が細かいが、竜隊長のイキなはからいで歯医者に寄るのを許可され、たまたま目に入ったQ歯科医院を訪れる。


 かなり古ぼけたビルの旧式のエレベーターに乗り(「ガラガラガラ、ガシャーン!」という編み目状のドアの開閉音が効果的)、歯科医院に向かう北斗。たどり着いた階は廃墟と見まがうほどさびれており、その先にQ歯科医院はあった。


 ドアをノックする北斗。


女「どうぞ」


 そこは医療機器らしきものは何ひとつなく、中央に椅子のみが置かれている白い部屋だった。


女「歯が痛むんですか」


 奥から30才前後とおぼしき痩身の妖艶な、美しい女性が現れた。とりあえず白衣はまとっているものの、ベージュのミニスカートからはほっそりとした美脚が伸びており、なかなかセクシーである。これがQ歯科医院の院長なのか?
 美しい外見とは裏腹に、その声は低音で妙にドスがきいている(笑)。


女「そこにお掛けになって」


 北斗を椅子に座らせた女性が、背後でいきなりナイフを振り上げ、まさに切りつけようとするかのように思わせるショッキングな演出(効果音のようなショックブリッジとともに天井の小さな照明が点灯する演出も煽りたてる!)が絶妙である。だがそんな簡単な殺し方ではやはりヤプールは満足しないのだ……


女「痛み止めの薬を詰めて、その上をカプセルで被っておきました。2、3分もすれば痛みは止まるはずです。どうぞ。もう結構ですよ」


 北斗が去ったあと、女性は壁に飾られた能面に向かってこうつぶやく。


女「いいえ、どういたしまして」


北斗「ほんとだ。もう痛くねえや」


 歯の痛みがすっかり治った北斗は再びパンサーに乗り込むが、今度は激しい耳鳴りと目まいが北斗を襲った!


北斗「どうしたんだ。目の前がおかしい!」


 思わずパンサーを停車させ、降りる北斗。そこで彼の前方に姿を見せたのは……


北斗「ベロクロン……」


 TAC本部に北斗からの通信が入る。


北斗「B地区にベロクロン出現! 直ちに出動願います!」


 だがレーダーに反応はなく、異常としては数分前に震度2の地震が発生したのみだった。不審に思う竜隊長。


竜「北斗、超獣はちゃんと確認したのか? 見間違いじゃないのか?」


北斗「確認もなにも、今僕の目の前で暴れてるんです!」


 しかしB地区を映し出すモニターにもやはりベロクロンの姿はなかったのだ。山中と今野が口々に声をあげる。


山中「どこにベロクロンがいるんだ。どこにもいないじゃないか!」


今野「第一、ベロクロンは死んだハズだ。そうだろう!」
 そのとき美川隊員が驚くべき通信を受ける。


美川「北斗隊員がタックガンを乱射していると警視庁から通報が!」


 「キャーッ!」「きちがいだ〜っ!」


 悲鳴をあげて逃げていく群集。だが彼らが恐れたのはベロクロンではなく、何もありはしない空に向かってタックガンで発砲を続ける北斗の狂気に対してであった……
 その北斗もまた、眼前で暴れ続けるベロクロン、止むことのない耳鳴り、謎の女性の高笑いに悲鳴をあげ(これらのカットバックが実に効果的!)、狂ったようにタックガンを撃ち続けた!


 「北斗隊員、おとなしく銃を捨てなさい!」


 北斗はこともあろうに警官隊に包囲されていたのだ。
 それがさも意外であるかのように警官隊に向かって叫ぶ北斗。


北斗「どうしてオレと一緒にあのミサイル超獣をやっつけようとしないんだっ! そうか、さては貴様らも宇宙人……」


 警官隊にタックガンを向けようとする北斗の腕を発砲音がかすめた! 竜隊長の威嚇射撃だった。
 それでもなお警官隊に向かって叫ぶ北斗。


北斗「君たちは誰の味方なんだ! あれが見えないのか! あのミサイル超獣が君たちには見えないのか!」


 まだ目を覚まさない北斗を竜隊長と山中が叱責する!


竜「北斗! ミサイル超獣などどこにもいないんだ!」


山中「しっかりしろ、北斗!」


 第23話『逆転! ゾフィ只今参上』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061012/p1)において、不気味な歌で子供たちを異次元へと誘いこんだ老人のことを誰にも信じてもらえず、半狂乱になった北斗を彷彿とさせる演出であるが、実体のない存在であるヤプールだからこそ、幻影で人心を惑わす戦術が最もふさわしく感じられる。



山中「人騒がせもたいがいにしろ! 幸いにしてケガ人がなかったからよかったものの、もし人身事故でも起こしたら、いくらTACの隊員でもブタ箱行きだぞ!」


 本部に戻った北斗は山中から大目玉をくらった。冒頭のいい雰囲気とは一変し、またいつもの山中に戻ってしまった(笑)。「刑務所行き」ではなく、「ブタ箱行き」というセリフがいかにも山中らしい(爆)。


竜「北斗、当分の間戦列から離れ、虫歯を治療するんだ」


 北斗がTACガンを置いて出ていったあと、竜隊長は美川隊員に北斗の精神鑑定の結果を尋ねるが、まったくの正常であった。それに対する一同の反応は……


山中「宇宙パトロールのときもベロクロンの夢を見たと云っていました。明け方の夢は正夢になるなんて、脅かしたのがいけなかったかなあ」


美川「やはり一種のノイローゼじゃないでしょうか?」


今野「ノイローゼにかかるようなタマじゃないよ、野郎の神経は。歯痛で頭にきちまったかな?」


竜「歯痛?」


 北斗を厳しく叱責したものの、先輩として一応の責任を感じてしまう山中、真剣に北斗を心配する美川、実に呑気な今野(でも確かに今野の云うとおりだ・笑)と、こうした場面の会話においても各自がいかにもなセリフを吐き、TACの隊員たちは実にキャラクターが立っている。


 廊下を歩きながら考えこむ北斗。


北斗「あのベロクロンは俺の幻覚だったのか? どうしてあんな幻覚を見てしまったんだろう? 俺の神経が行かれちまったんだろうか? いや、何かの作用で神経が狂わされたんだ。何の作用で……あの歯医者?」


 B地区にQなる歯科医院が存在するのかどうか、竜隊長に調査を命じられた今野から、そんな歯医者はどこにもないとの驚くべき報告が入った。そしてすかさず警報が鳴り響く!


スピーカー「緊急指令! B地区にベロクロンが現れました! TACは直ちに出動して下さい!」


吉村「そんな馬鹿な! ベロクロンが出現するなんて何かの間違いだ!」


美川「北斗隊員が見た幻覚と同じでは?」


山中「馬鹿な、幻覚ではない。現実に出現したんだ!」


吉村「北斗が幻覚で見たものが現実に?」


山中「そうだ。北斗が云った通り、ベロクロンが復讐に来たんだ!」


竜「ベロクロンが……」


 この一連では隊員たちはセリフのみの登場であり、画面に映し出されるのはランプが明滅する各種の計器類のみという演出が、実に絶妙な緊迫感を醸し出している。


北斗「確かめるんだ。あの歯医者をもう一度」


 その眼前に現れるベロクロン!
 タックパンサーを急停車させ、思わずTACガンを取り出そうとする北斗。


北斗「待て、これは幻覚だ。また幻覚を見ているんだ。もうだまされないぞ」


 丸腰でベロクロンに向かっていく北斗。


 その頃TAC本部ではベロクロン打倒のための作戦会議が開かれていた。モニターを前に戦術を語る竜隊長。


竜「このフィルムは、先にベロクロンが福山市に現れて、地球防衛軍を全滅させたときのものだ。見ても分かるように、ベロクロンはこの背中のエラ、爪、および口の中にまで強力なベロクロンミサイルを隠して武器としている。ベロクロンの弱点はただひとつ、奴の高圧電気胃袋にミサイルをブチこんで、自爆させることだ!」


山中「奴の胃袋にどうやってミサイルを?」


竜「これを見ろ」


 ベロクロンにパンチレーザーを見舞うエース。
 口を開きかけるベロクロン……


 挿入歌『TACの歌』のインストゥルメンタルをバックに、二機の戦闘機タックスペースがベロクロン打倒のために出撃する!


 ビルを破壊し続けるベロクロン! それに単身で向かう北斗星児!


北斗「幻覚だ。俺を陥れる幻覚なんだ!」


 向き合う北斗とベロクロンのカットバック!


北斗「さあ撃て! 俺はここにいるぞ!」


 近年の『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)第10話『GUYS(ガイズ)の誇り』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060706/p1)で初期10話の宿敵・高次元捕食体ボガールとの決戦を前にメビウスことミライが
 「ボガール! 僕はここだ! いつでも来い!」
 と叫んでいたのを彷彿とさせるが、北斗にとってはベロクロン、ミライにとってはボガールが宿命のライバルであることを象徴する、ヒロイックなセリフが実に燃える!


 ベロクロンが北斗に向けて口ミサイルを発射した!
 ミサイルがビルをかすめ、その衝撃で吹っ飛ぶ北斗!


 そこに姿を見せる2機のタックスペース! 宙を華麗に旋回し、ベロクロンにミサイルを撃ち尽くさせて弾切れにさせ、切り札である口ミサイルを発射しようとするベロクロンの口めがけてミサイルをぶちこみ、弱点である高圧電気胃袋を破壊する作戦だ!
 怪獣の個々の特性を正確に分析して作戦を立案する点は、次作『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)に登場する防衛組織・ZAT(ザット)に先駆けたものであり、『ウルトラマンメビウス』のGUYSにも立派に受け継がれた軍事的リアリティあふれるものである。


 ベロクロンを急襲し、口ミサイルをも封じることに成功する山中と吉村が乗るタックスペースだが、ベロクロンは口ミサイルを地面に落として炎上させ、すかさず鼻先の二本の角からピンクのレーザーでスペースを撃墜させる! 竜隊長と今野が乗るタックスペースもまた、想定外の鼻先のレーザー攻撃で撃墜されてしまった!


 気がついた北斗は傍らに小さな銀色のカプセルが落ちているのを発見する。北斗の予想通り、Q歯科医院で口の中に仕掛けられたそのカプセルが、ベロクロンの幻影を北斗に見せて狂乱させていたのである!
 ベロクロンは北斗のすぐそばまで迫っていた! ベロクロンから逃れようと懸命に駆ける北斗! 北斗を抹殺しようと追うベロクロン!
 この場面では懸命に走る北斗の姿を正面からと後方からスローモーションでとらえてカットバックさせ、ベロクロンの姿は登場せず、代わりに


 「ドスン!  ドスン!」


 という、圧倒的な威圧感と巨大感にあふれた足音のみで、迫るベロクロンを表現しているのだ!(他のセリフや効果音、BGMはまったく使用されず、ただ足音のみなのだ!)
 この演出は日本の特撮怪獣映画の始祖である『ゴジラ』(54年・東宝)の前半において、迫り来るゴジラの恐怖を足音のみで表現していたのを彷彿とさせ、緊迫感を煽りたてるのに絶妙な効果をあげている!


 ベロクロンの高熱火炎が北斗を襲う! 前作『帰ってきたウルトラマン』(71年)の郷秀樹のようにピンチに陥り変身ポーズも取らずにパターン破りで(尺の都合でのカットだとしても効果的!)変身を遂げる北斗星児! われらのウルトラマンエース登場!
 高熱火炎を連続側転でかわしたエースはベロクロンの頭にチョップ攻撃! 胸からの連続ミサイル攻撃に対してはパンチの嵐!
 ボクシングのファイティングスタイルの構えをとったエースはベロクロンを地面に払い落とし、馬乗りになって鼻先の二本の角をつかみ、ベロクロンの顔を左右に激しく揺さぶりをかける! 圧倒的にエース優勢!


 そしてエースは力士のように大きくしこを踏んだ! ベロクロンもまたしこを踏み、ビルの屋上にあった丸い広告塔をもぎとると、エースに向かって投げつけた!
 エースはそれを取ると、胸のカラータイマーの上にかざして回転させ、ベロクロンに投げつける! さらにそれをエースに投げつけるベロクロン! キャッチボールの末に広告塔はベロクロンの口の中で大爆発を起こす!


 それまで比較的シリアスな展開がなされてきたにもかかわらず、特撮場面で唐突にこうしたコミカルな描写が出てくることに対しては拒絶反応を示すマニアが圧倒的に多いだろう。確かにその感慨も半分以上正当なものだろう。
 しかし何度も見返していると、エースがしこを踏む場面では画面が9分割になり、それと同時に主題歌のイントロが流れることで、場面が盛り上がってエースのパワフルさ・カッコよさが立派に表現されているし、本話での本編部分の凝っている前衛的な演出と特撮部分の9分割される前衛的な演出自体はシュールさという点では一応マッチしているし(笑)、単なる広告塔がベロクロンに致命傷を与える件も、両者のキャッチボールによってすさまじい速度と衝撃力が加わったのだという、一応の疑似科学的裏づけも感じられるわけであり、これはこれで結構面白いのではないかと思うのだ。


 田渕吉男は第10話『決戦! エース対郷秀樹』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060709/p1)においてはエースに犀(サイ)超獣ザイゴン相手に闘牛士を演じさせ、第15話『夏の怪奇シリーズ 黒い蟹(かに)の呪い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060828/p1)でも今回同様にエースと大蟹怪獣キングクラブにしこを踏ませていたが、前者では超獣の特性を活かした攻撃法を描き、後者ではエースと超獣のパワフルな戦いを表現する手段として演出したわけであり、決して単なるお遊びに走っていたわけではないのである
 (いやまあ遊んでるといえば遊んでるのだけど(笑)。ただこれらを批判するのであれば、『ウルトラマン』(66年)第10話『謎の恐竜基地』においてエリ巻き恐竜ジラース相手に闘牛士を演じたウルトラマンや、『ウルトラセブン』(67年)第41話『水中からの挑戦』でウルトラセブンに対し、両手を合わせて謝るカッパ怪獣テペトをも批判せねばならないはずだ)。


 そうした面ばかりでなく、今回もベロクロンによって破壊されるビルを、部屋の内部から捉えたカットが数ヶ所も確認され、エース対ベロクロンの決戦場となったビル街の空き地に土管やドラム缶みたいな細かなものも配置されたりと、田淵の特撮演出において注目すべき点はほかにいくらでもあるのである。


 くたばったかに見えたベロクロンの口から無数の泡が吹き出し、エースを襲う!
 冒頭で北斗が表現した「しゃぼん玉のお化け」はまさにこれの伏線だったのであり、山中が云ったように正夢となったのだ! こうしたあたりにも実に細やかな配慮がうかがえるというものである!


ナレーション「ベロクロンの口が吐き出した無数の泡。それはベロクロンの体内にある毒袋から送り出されるベロクロン液だ! それはあらゆる物体を水のように気化してしまう! エース、危ない!」


 怪獣図鑑で設定されているだけで本編には登場しない、怪獣の特殊能力は実に多いものだが、こうした魅力ある設定を惜しげもなく披露してしまうサービス精神に感心。本話の魅力は、多くのマニアが云うようにサスペンスフルなドラマだけにあるのでは決してなく、このようなチャイルディッシュな要素の魅力にもあるのだ!
 そして怪獣図鑑的な趣とともに、岸田森(きしだ・しん)によるこのナレーションはエースのピンチを最大限に盛り上げることに貢献しており、近年ナレーションを軽視している特撮ヒーロー作品に喝を入れてくれるかのようだ!
 (まあ予算面での苦渋の選択で、ナレーションに廻す予算があるなら特撮予算などに廻しているのだろうことは判っておりますよ・笑)


 定番のエースのピンチを描写するBGMが流れ、またもや画面が9分割、苦しむエースと勝ち誇るベロクロンをランダムに映し出す演出が絶品で、盛り上がることこのうえない!
 エースは最後の力を振り絞り、ベロクロンの鼻先の二本の角を怪力で抜き取るや、それを両手に突進し、胸に向かって突き刺した!
 たまらずひっくり返り、びくともしないベロクロン。エースはベロクロンを高く抱え上げ、宇宙の怪獣墓場に封印するためか、空高く飛び去っていった。



 ベロクロンの攻撃を受けた衝撃で歯から外れたカプセルを、北斗はQ歯科医院に返しに行く。再び古ぼけたエレベーターに乗り、北斗は階上へと向かう。


 TACガンを忍ばせ、ドアをノックする北斗。


女「どうぞ」


室内に入った北斗を、不敵な表情でにらみつける女。


女「また痛みまして?」


北斗「肝心なところで外れちまったんですよ。おかげで命拾いしましたけどね」


 カプセルを投げ返す北斗。あまり動じない表情の女。


女「それで」


北斗「今日は貴女の正体をハッキリ見届けたいと思ってね」


女「私の正体?」


 顔をあげた女はいつの間にか能面を被っていた!
 北斗はすかさずタックガンを発砲! 能面が割れ、その中から現れた表情は先ほどまでの美しい顔とは一変し、おどろおどろしいメイクに彩られ、真っ赤な口が耳もとまで裂けた、般若のような女だった!
 室内がヤプールを象徴する紫色の照明に照らされるのも絶大な効果をあげる!


女「フフハハハ、ハハハハハ」


北斗「ベロクロンそっくりの超獣を操って俺の命を狙うからには、ヤプールの生き残りに違いない!」


女「これで勝負がついたと思ったら大間違いだよ! 北斗星児!」


北斗「いい加減に復讐などやめたらどうだ。勝ち負けはとっくについてる!」


 黄色のバラを手に、断末魔の叫びをあげる白装束の女。
 第17話『夏の怪奇シリーズ 怪談 ほたるケ原の鬼女(きじょ)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060904/p1)に登場する鬼女、第24話『見よ! 真夜中の大変身』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1)に登場する妖女ら同様、ヤプールの遣いとして登場する女性が皆白装束姿で統一されているのはもし偶然でないならば心憎い配慮である。


女「そうだ! おまえは勝った! 勝った者は生き残り、負けたものは地獄へ堕ちる! しかし、これだけは覚えておくがいい! 勝った者は常に負けた者たちの恨みと 怨念を背負って生き続けているのだ! それが戦って生き残っていく者のさだめだ!」


 宙をバック転する女に発砲する北斗! たまらずエコーの響く悲鳴をあげて床に転がり落ちる女。
 通信機で本部に報告する北斗。


北斗「北斗から本部へ」


美川「こちら本部、どうぞ」


北斗「例の、Qという歯医者のことだけどねえ」


美川「どうだった? やっぱりそんな歯医者なかったでしょ?」


北斗「それがね……」


 シャボン玉とともに消える女。そして紫色の照明が照らされた白い部屋も廃墟に変わっていく。まるでこれまでのことが全て悪い夢であったかのように……
 以下の会話にエコーがかかり、二人を映さずに廃墟だけを映し出す演出もまた、夢オチのような趣を感じさせる。ヤプールは現実と夢の世界を自在に行き来し、人々の心を混乱させる異次元の悪魔なのだ!


美川「どうしたの? あったの? なかったの?」


北斗「あったよ」


美川「あった?」


北斗「そして、消えてなくなりました」


 陰欝な表情でタックパンサーを運転する北斗にかぶる、メイン楽曲のサビ「♪ウルトラマ〜ンエ〜ス〜」を短調に変調したショックブリッジが重い印象を残すラストシーン……



 昭和ウルトラシリーズの「再生怪獣・星人特集」を扱った同人誌『SPECIAL DELIVALY Vol.4』(82年発行。現在でも同人活動を続けておられるのか不明なため、主宰者の名(本名)は割愛させて頂く)において、この『A』第48話は「繰り返して書くが、本当に最悪の作品である」とされていた。


 若いころからこの作品が好きであった筆者は違和感をおぼえてならなかったが、この本では怪獣の造形が初代のイメージとかけ離れていたり、再登場の必然性がないような怪獣が登場する話は全て駄作としているような傾向があり、そうした第一印象に惑わされて作品の内容についてきちんと把握できておらず、地に足のついていないような印象がうかがえたのである。


 なんであんなにベロクロンがスリムなんだ! なんで初代になかった尾があるんだ!
 そんな理由で「本当に最悪の作品である」とされたこの回が、決して「最悪の作品」ではないことを主張したかった(かつてはそんな語られ方をされていた時代もあったのである)。


 もちろん80年代中盤以降のマニア間での特撮同人活動や特撮書籍によって、『A』否定派であっても市川森一脚本回であるという理由だけで本話の評価は既に非常に高いものになっていることは承知している。
 しかしごく個人的な四半世紀前のルサンチマン(怨念)の発露で本当に恐縮なのだが(汗)、これが第48話について筆者が語り尽くさせて頂いた最大の理由である。


 まあヒーローの正義を相対化するいわゆる異色作・アンチテーゼ編であって、シリーズ後半にあるからこそ光る話でもあり、決して王道の話ではないのも事実だけれども。この話がシリーズの前半にあっても説得力に欠けるでしょ。そのへんを忘れてこれこそ本物! とただ闇雲に持ち上げるのも間違っているとは思うので、マニアのみなさんはよく注意をして下さい(笑)。


 なお『タロウ』第27話『出た! メフィラス星人だ』から第30話『逆襲! 怪獣軍団』に至る再生怪獣・宇宙人登場シリーズなども、先に挙げた同人誌のような見方で否定してその内実のドラマやテーマまでをもスルーしてしまう人々が相変わらず多いようだ。これに関しても『タロウ』評の際にキッチリ語らせてもらうつもりである。



<こだわりコーナー>
*今回登場するミサイル超獣ベロクロンII世は、第37話『友情の星よ永遠に』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070114/p1)に登場した鈍足超獣マッハレスを改造したものである。初代よりスリムで長い尾が付いているのはそのためなんだっちゅーの!(笑)
 ちなみにこの着ぐるみは『ウルトラマンタロウ』第30話『逆襲! 怪獣軍団』にも改造ベロクロンII世として流用されている。


 北斗「ベロクロンそっくりの超獣を操って俺の命を狙うからには〜」


 ……ベロクロンそっくり? そっくりな模造品であって別の種類の超獣だったのかな?(笑)


*女ヤプールを演じたのは高毬子(こう・まりこ)。『プレイガール』(69年・東京12チャンネル→現・テレビ東京)にも出演歴があるほどの、なかなか色っぽい雰囲気の女優なのだが、妙にドスのきいた声である点から今回は実にハマリ役。今なら女ヤプールを演じさせるとしたら、実写版『美少女戦士セーラームーン』(03年)で魔女クイン・ベリルを熱演していた杉本彩が適任かと(笑)。
 なお彼女は『マイティジャック』(68年・円谷プロ)第12話『大都会の恐怖』にも秘密組織・Qの女スパイ役で出演しているが、今回の「Q歯科医院」はそこからの引用かも?


*視聴率18.2%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)


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  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1



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