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仮面ライダー THE FIRST 〜原作・TV版初作の再生か? 「仮面ライダー」の本質とは!?

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仮面ライダー THE FIRST』 〜原作・TV版初作の再生か? 「仮面ライダー」の本質とは!?

(2005年11月5日封切)
(脚本・井上敏樹 監督・長石多可男 アクション監督・横山誠 VFXスーパーバイザー・小林真吾)

仮面ライダー THE FIRST』 〜合評1

(文・T.SATO)


 TVゲーム『スーパーロボット大戦』で昭和の合体ロボットアニメは知っていても、本編は見たことがないというマニア小僧が、今や多いようだ。


 特撮はアニメに比して作品数が少なく、シリーズものが多かったことから、時折の再放送特番やレンタルでの視聴が容易で、長らくあまりそういう現象はなかった。
 が、それでもさすがに21世紀の今日、ネットなどを見ると、平成『ライダー』は視聴しているが、昭和『ライダー』は存在や設定を知ってはいても、キチンと視聴をしたことがないというマニアの記述も見受けられる。


 年齢的にそれも仕方がないことだろう。筆者なども、生まれる前の作品で、しかもモノクロゆえに70年代以降に再放送がなかった60年代の特撮・アニメ作品は、マニアゆえに最低限のカタログ的な知識はあっても、視聴をしていない作品が多々ある。それと相似形と考えれば、彼らを責めることはできない。


 よって、『仮面ライダー』のマニア史を言及しながら、本作『仮面ライダー THE FIRST(ザ・ファースト)』(05年)にふれていく。マニア史あっての『FIRST』という色合いも濃いからだ。


 当然、なんのかんの云おうと『仮面ライダー』は基本的に子供向けの勧善懲悪作品である。
 後年、マニアによって「大自然の使者」だとも理論武装されたが、やはり前時代までの古典的な等身大覆面ヒーローとは一線を画した、バイクのメットや黒皮スーツを模したスタイルで自在にバイクを駆(か)る、当時としては圧倒的にスタイリッシュな「近代科学のヒーロー」であったがゆえに(ウルトラマンに比べればホコリっぽいにしても)、大人気を博したのだともいえる。


 作品内容も極論すれば、


怪人「見たな〜、殺す〜。キュイーー(奇声)!」
被害者「ワ〜〜~!(ブクブクブク〜泡になって消える・笑)」
ライダー「出たな、ショッカー。トォ!」


 というようなシンプルプルプルな内容であって、コレがまた子供向けによかったのだともいえよう。
 よく云われる“改造人間の悲哀”も、全編あるいは『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)第1作目の#1~13こと「旧1号ライダー編」に、あまねくチリばめられていたとは決していえない。実際には、#1にだけチラリと垣間見えるといっても華厳の滝ではない(笑)。


 しかし、現在における初期『仮面ライダー』のイメージは、もちろん頼れるカッコいいヒーローであるにしても、もう少しダーティーなイメージも混ざっている。すなわち、前段の“改造人間の悲哀”だ。この概念は、主に1980年代前中盤に醸成された。


 ティーンまたは二十歳前後に達していて、善くも悪くもイイ歳をして、子供番組を卒業しなかった初期『仮面ライダー』世代が、作品および作品を嗜好する自分たちを正当化するために用いた理論武装。それは、『仮面ライダー』に「人間ドラマ性」や「社会派テーマ性」をムリやりにでも発見して、それを拡大拡張してみせることであったのだ(……『ゴジラ』や『ウルトラマン』シリーズなどでも、前代にくりかえされてきたアノおなじみの光景です)。


 80年代前半には、今は亡きアニメ誌「アニメック」で、オタク第1世代の功労者・特撮評論家の池田憲章が「日本特撮映画史 SFヒーロー列伝」を連載していて、当時の批評マニアのケがある人種に大きな影響を与えていた。先達の努力には敬意を払っても払い切れないものがあるが、個人というより当時の時代的限界か、初作『仮面ライダー』(71年)を語るにおいても、素朴な「アクションのカタルシス」といった、今様に思想用語で云うなら「身体性の快楽・愉悦(ゆえつ)」といったことよりも、そこにマレにある「改造人間の悲哀」や、「幹部交代劇」においてわずかに存在するドラマ、ライダー生死不明のイベント編におけるおやっさんこと立花藤兵衛(たちばな・とうべえ)の心配・想いの吐露といった、いわゆる「人間ドラマ」的な要素で作品を賞揚したものだ。
 かくて、当時の特撮誌や模型誌では、今回の『THE FIRST』のような、ハードでシリアスでリアルなオトナの視聴にも耐えうるアップトゥデートされた、敵味方ともに悲哀のドラマに満ち満ちた、「オレ旧1号」な設定・物語・イラスト・造形物の投稿&記事が跳梁(ちょうりょう)することとなる(そんな時代が、若い読者が生まれたころにはあったのです)。


 とはいえ、80年代末期には別の考え方も勃興してくる。この思潮は必ずしもメインストリームになったとはいえないが、傍流として着実に命脈は保ち、微量ではあるが勢力を増しつづけてはいる。それは、「ハード&シリアス」「テーマ&ドラマ至上主義」を懐疑して、もっと表層的かつ根源的でもある「見てくれ」なり「存在」自体の、「ヒーローの強さ・カッコよさ」に注目する考え方だ。
 この思想に着目した人種たちも一枚岩ではなく、マニアの中でもスレすぎて2回転3回転したがゆえに再帰的に落着した者、ホントに素朴で幼稚な者(汗)の2種に分かたれるのだが、まぁそれはドーでもイイ(笑)。要は子供時代の自分は、「テーマ」や「ドラマ」や「リアリティ」などではなく、「強さ」や「カッコよさ」や「バトルのカタルシス」にこそ魅かれたと見る立場のことである。
 ――チョット補足しておくと、前者は作品の「テーマ」や「ドラマ」が判らないといった種族ではない。判っているしその感度もあるのだが、あえて大衆・子供向け作品として、あるいは改めて「思春期」ならぬ「幼児期」の感慨を再理論化して批評をくだそうという立場である。ただ往々にして、ハード&シリアス主義者をそのテの内は見透かしているョ(自身の過去の姿でもあるから)的に嗤(わら)う、偽悪的な態度が鼻につく問題もあるのだが(笑)――


 ゆえに1992年に、原作者・石ノ森章太郎も深く関わったシリアス&リアル志向のVシネマ『真・仮面ライダー〜序章(プロローグ)〜』という、『ザ・フライ』(86年)的なハエ男で、クリーチャー的ゲロゲロモンスターな仮面ライダーが陰欝な物語で登場したときに、逆に「こんなの仮面ライダーじゃない!」という反応も、当時の特撮マニア誌『宇宙船』の読者投稿欄などでも多々現われたのだった。もちろん先に挙げてきたような「ハード&シリアス至上」を相対化する思潮(思想風潮)・理論先行による裁断でそのように断罪されただけではなく、『真・仮面ライダー』のヒーロー性が欠如したゲロゲロな「見てくれ」のあまりな異質さや、実地に作品を鑑賞してみてのその物語のヒーロー性やカタルシスの欠如に、はじめてリアル志向の限界に気づいた者もいた。


 そのことに、東映バンダイの全員といわずとも多くのスタッフも気付いたのだろう。『真』以降、さまざまな新ライダーたちが登場し、様々な意匠も施されてきたが、現代の子供向けヒーローの「カッコよさ」なり「玩具的流行」の仁義を守った上での、バランスが取れた上での寸止めに留めた「リアル系」なり「マニア向け」なり「主婦向け対策」であったことは、前述までの文章でご理解いただけることと思う――そこが円谷の『ウルトラ』シリーズとはちがうところなのだ。まぁ特撮マスコミのライター陣の方でもいまだに「リアル」志向寄りの御仁たちは多そうかな?(汗) (後日付記:ここで云う『ウルトラ』シリーズとは主に当時は記憶に新しかった『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)を指しています)――。


 さて、本作『THE FIRST』は……。そう、本格・リアル志向だとはいっても、決して『真』のように服を脱ぎハダカになって苦しみながら異形の者に変身する、一応のSF科学的・合理的存在ではないのだ。仮面ライダーのマスクをかぶり口顎カバーのクラッシャーを付けることで変身が完成するという一見リアル志向ではあるものの、顔から下の仮面ライダーのスーツはいつ着こんだのだ!? というような映像描写になっている。
 いやコレはバカにしてツッコミしようというのではない。スーツを着こむシーンを入れて、まだるっこしくなったり、どこにスーツを隠し持っていた!? というスキをより浮上させ、ヒーロー性を欠如させる描写になるくらいならばコレでよい。というか、個人的にはコレでこそカッコいい!


 実は本当はヌルくて様式美でもあった初作『仮面ライダー』TV版。そして、リアル&シリアス志向の『真・仮面ライダー』。
 「リアル志向」をタテマエ・営業的ウリ文句として謳(うた)う本作『仮面ライダー THE FIRST』は、実はTV版『ライダー』初作と『真』との中間地点の「リアル度」に位置する作りとなっている。
 ではなぜ「リアル志向」であると謳うのか? それはカンタン。その方が未だリアル&シリアス志向が過半を占めるマニアなり大衆にキャッチーで流通するからである(笑)。なぜ「原作に忠実」なり、その「初の映像化」と謳うのかも、また同じ。コアなマニアならそのへんも瞬時に見抜いて、「あくまでも客引き・宣伝だから、ご愛嬌……」になるのかと思いきや……。


 「原作漫画」というか、元祖『仮面ライダー』TV版は「原作漫画」ありきの映像化作品ではなく、今でいうメディアミックスの魁(さきがけ)でもあったから、仮にここでは元祖『仮面ライダー』の「漫画版」と呼称しよう。
 この「漫画版」自体の出来も悪いとは云わないけれども、石ノ森御大(おんたい)の名作漫画『サイボーグ009(ゼロゼロナイン)』(64年)に匹敵する名作であるワケもなく、特撮ヒーロー『人造人間キカイダー』(72年)の「漫画版」同様、基本的には少年ならぬ児童・幼児向けの漫画に過ぎないし、それらの内容が児童なりかつての我々がそうであったように思春期のマニア小僧にとってはTVとの大きな相違にやや陰鬱なテーマゆえに再発見的な衝撃はあったとしても(それもマニア予備軍のケのあるコにとってだけだったのかもしれないが……)、それを21世紀の現在時点で過剰に賞揚して、あの「漫画版」こそが理想であり、TVや映画版の『仮面ライダー』が目指すべき目標であると捉えるのはちがうだろうとも思うのだ(もちろん過剰にケナすのもちがうけど)。


 脱線したが、「リアル・原点志向」の作品をマジで心の底から信じている輩が「リアル・原点志向」の作品を作るよりも、「非リアル・コミカル・シニカル」のよさも判っているのに、あえて一見、本格志向のようにも見えて実はそうでもなく、元祖『仮面ライダー』第1作のシリーズ後半で当時の子供たちが最も本作に魅力を抱いていた1号ライダー&2号ライダーのいわゆるダブル・ライダー共演を中心に据えて、なおかつ元祖作品にはなかったヒロインと1号と2号との三角関係を導入したような、ちっとも「旧1号」編や「漫画版」的な原点回帰ではなかった本作(笑)を作ってみせるサバけたスタッフ陣には、ごくごく個人的には共感を抱いてはいる。
 だから「リアル・原点志向」のマニアにはツッコミのスキがある作品にはなっている。だが、「変身ヒーローもの」の醍醐味とは、「飛躍・超越」といった「ケレン味(み)」にもあると、意識せずとも無意識にでも価値尺度にしているマニアであれば、本作の在り方は許容範囲だろうし、むしろ好意を抱く要素ですらあるだろう。


 「飛躍・超越」とは何か?


 絶体絶命のピンチ。吊り橋からついに墜落する風見志郎(かざみ・しろう)! ……ドボーーン!!(水しぶき!)
 と、次の瞬間には変身ポーズを決めたときの効果音と高笑いとともに、崖上に仮面ライダーV3(ブイスリー)の姿が!(いつ変身したんだ!?)


 あるいは、敵怪人の毒鱗粉に操られ、海に落とされるスカイライダーこと筑波洋(つくば・ひろし)!
 ナレーション「そのとき、○○怪人の毒が、潮(しお)で、洗い流された!」
 直後、催眠から目覚めた筑波洋が海中で変身ポーズを取って、「ヘン、シン!!」。
 で、海面からフィルム逆回転(笑)でジャンプしてきて形勢逆転!(……そんなストーリー展開でイイのか!?)


 氷点下のバナナの杭(クイ)が胸に刺さり、突っ伏す仮面ライダーブラックRXこと南光太郎(みなみ・こうたろう)。
 しかし実は見えなかっただけで、強固なメカ装甲を持ったRXロボライダーに「瞬間変身」して難を逃れていたのだ!!


 ……というようなことどもに象徴される(笑)、(好意的理屈付けも可能だけど)基本的にはご都合主義な、しかしヒーローの圧倒性・万能性・超越性を補強し、憧憬やカタルシスをもたらすような要素のことである。コレこそがヒーローものの中核であるべきで、テーマ・ドラマ・人間的弱さ・善悪への懐疑などはもちろんあってもイイのだが、それらは作劇の「従」であり「主」であるべきではないのだ(対外的・営業的なセールスマン・トークとしてはともかく・笑)。それらのドラマ性やテーマ性は作品の「彩(いろど)り」なり「一時的な脇道」であるべきで、究極的には物語のクライマックスでのヒーローの大活躍のカタルシス(広義での「悲劇」などがもたらす「重たいカタルシス」なども含む)にすべては集約すべきなのだ。
 この観点から、『仮面ライダー』や『○○』という作品はただの娯楽活劇作品ではナイ、なぞという持ち上げ方などは笑止千万。さような俗っぽい論法が、我が国で一般大衆に受容される規模でのスカッとしたヒーロー娯楽活劇作品が作れない、ヘンに未熟なテーマ主義作品ばかりが跋扈(ばっこ)してしまう真因ともなっている。


 ……ではあるのだが。でもやっぱり本作は、敏腕・白倉伸一郎P(プロデューサー)と異形(いぎょう)の脚本家・井上敏樹の作品だから、そーいう王道娯楽派の文脈に回収しきれるワケではないのだナ(汗)。


 で、本作を子供が観て面白いか? という問題もある。が、少子化時代とはいえ数百万の子供を対象とする現役ヒーローと、その1/100の数万単位のマニア相手の『FIRST』の規模・パースペクティブをキチンと捉えて、適正規模で劇場公開するあたり(作品を大切にしたからではなくビジネスライクな計算。元はVシネマ企画、DVD数千枚の売上でも元は取れるらしい)、本作に関しては子供の反応は除外視してもイイだろう。
 そこもまた、サブのラインではなく会社のメイン作品映画として、マジで『ULTRAMAN』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060305/p1)のようなリアル志向の作品を興行にブツけてコケている円谷プロとはちがうのだ。でも逆に、『ULTRAMAN』(地元のシネコンでは夜間上映しかなかった・笑)規模の客入りは見込めただろうから、全国のシネコンでレイト上映くらいはしてもよかっただろうに……。



 以上のような歴史的経緯を追い、周辺要素をホメた上で、実作品にふれてみたかった次第。


 で、イイ感じじゃないですか? コレが「TV版」や「漫画版」のテイストの再生だとはゆめ思わないけど、80年代~現在にかけて世間に流布している哀愁に満ちた元祖『仮面ライダー』像のリファイン版ではありえてる。


 理系学生のキマジメ誠実ストイック主人公・1号ライダー本郷猛(ほんごう・たけし)を演ずる黄川田将也(きかわだ・まさや)クン。イイ男だなあ。マジメだけれどハナにかけたところが意識的にも無意識的にもなく、透明感がチョットある彼が演じるから、「水の結晶」の研究がどーたらこーたら含めてイヤミがない。こないだ(05年秋)、土曜日朝にNHK朝の連続TV小説をチャンネル・ザッピングで観掛けたらヒロインのお相手役としても出演してるじゃん! と思ったら、実写版『美少女戦士セーラームーン』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)で、セーラージュピターこと木野まことチャンとイイ関係になるカラオケ店バイトの元基(もとき)兄さん役の彼だって!? あのときの三枚目入ってる役柄とちがうゆえにか筆者の眼がフシ穴ゆえにか(汗)、全然気付かなかったョ。


 2号ライダー一文字隼人(いちもんじ・はやと)は『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)の好敵手ウルトラマンアグルの高野八誠(たかの・はっせい)クン。完璧にイヤなイヤなイヤな奴でプレイボーイの敏樹キャラと化している(笑)。かつての大根芝居も、上手くなったネ〜(本作のセリフがしゃべりやすいものなのか?)。


 ヒロイン・緑川あすかは、『3年B組金八先生4』(95年)の主役級、気高い決して頭下げない王女さま的キャラの美少女中学生役でデビューした小嶺麗奈(こみね・れな)。『新機動戦記ガンダムW(ウイング)』(95年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990805/p1)の王女リリーナ嬢を実写化するならこの娘で! と思ったものだけど、『金八』直後に少女漫画原作のTVドラマ『イグアナの娘』(96年)で髪をアップにした悪女役をやってから、本来は美女の器量のワリには損をしているように思う。ひそかに応援しているのだが、『金八』時代のようにポニーテールで前髪を降ろしてくれよ! って、よけいなお世話だナ……(笑)。


 30分・1時間枠ドラマで、1年・半年・3カ月をかける長編ドラマならば、ゆるやかな変化や人間関係の交差のドラマも可能なのだが、わずか2時間なり90分の映画ではそのようなストーリー展開はムリがある。だから「キャラクターシフト」や「感情の交差」や「出会い」や「お互いに魅かれる動機」や「翻心の必然性」も作るために、最初から身近で内輪で狭い人間関係を樹立しておき、その中での因縁やアイテム等々に特化させていくのも、短編作品の作劇術としてはよく判る。


 本作でならば1号ライダーとヒロインは、理系研究者の卵と雑誌の科学部の記者の関係での接点。その傍流から登場してきて、怪人を目撃してしまったヒロインを殺害する役目の2号ライダーは、ヒロインとの感情的紐帯は本来は何もナイはずなのだけど、ヒロインの死んだ婚約者にクリソツだったというご都合主義(笑)をひとつ設けることで、発端を確保。
 三角関係の変転にもなぞらえられる、ヒロインの1号に対する「疑惑」の深まりとそれに比例しての2号への「傾斜」と、そのまた「傾斜」の度合いの反転。1号と2号の恋の鞘当て合戦。というか、マジメな1号は押されまくっていて、自分の心のうちのことも判っていないというべきか(笑)。2号の「TV版」とも「漫画版」とも異なるプレイボーイぶりもアレくらいトガっていないと90分ドラマでキャラが立たないし、対比や対立のドラマもやりにくいだろうから、個人的にはアレでOK。


 人間関係が狭い、キャラの行動原理が私的に過ぎるとの指摘も正しいのだけど、実のところ特撮マニアや大衆のみなさんが持ち上げるハリウッドの洋ものヒーロー大作映画もこんなものである。『スーパーマン』は会社勤めをしている新聞社の同僚で片思いのお相手でもあるお姉ちゃんを守ったり、『スパイダーマン』であれば幼なじみの同級生彼女をストーカー、もとい(笑)守るための要素も多いけれども、それが私的に過ぎると気にならないのは作劇のテクニックもあるかもしれないけど、ドッチかっつーと観客やマニア連中が無意識に権威主義的に舶来のハリウッド映画に「おフランスざます」的に屈伏・盲従しているからだと見るのだが……(汗)。


 そして叙情的な要素としては「水の結晶」。翻心や純粋さの象徴として、物語のターニングポイントを後押し。そんなんで自我を取り戻したりするのか!? というツッコミはまぁ正しいけど、しょせんは作りものでもある「物語」というものは、やはり「リアリズム」より「象徴」「寓意」の方が優先する世界でもある。あるいは逆に、「リアル」から出発するのではなく何らかの「感情的感慨」を創出するために、逆算して「人間関係」や「ドラマ」に「アイテム」を配置・構築していくものなのだから、コレはコレでイイのではないかと私見する。なので筆者は本作を作劇的にも高い評価を下すのだ(世間一般で云われている「水の結晶」うんぬんはエセ科学だというのは存じていますけど・笑)。


 とにかく作品や作品批評というモノは、多彩な要素や多様な評価軸があるので、本作がいつもの敏樹キャラだからうんぬんだけで判った気になるのも、それ単体としては間違ってはいないかもしれないけれども、それだけですべてを把握した気になるのではなく、X軸のみならず同時にY軸・Z軸にも目配せして、多角的・立体的に作品にアクセスしようとしないのは、5年10年選手の批評オタクとしては情けないと思うゾ。


 で、お待ち兼ねのアクション! コレも専門家に語ってほしいところだが……。いやぁスゴいんですよ! カッコいいんですよ!(我ながらボキャ貧な物言い・汗) でもコレに関しては全然、昭和ライダーの古式ゆかしい大野剣友会の殺陣(たて)の再生ではないのですが、JAC(ジャパン・アクション・クラブ。現・JAE:ジャパンアクションエンタープライズ)的な舞踏的様式美でもなくって……。間断なくスピーディーに低姿勢になってもアクロバティックに連発されつづける突きと蹴り!


 まぁマニア的には『仮面ライダーBLACK RX』(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1)#1、2のころに完成の域に達していて、コレがライダーシリーズ初ということではないのは強調しておきたいけど、バイク同士の集団戦で、走行中のバイクからの突きやパンチに蹴りをかますとか、あげくジャンプしてキックをかまし、また走行中のバイクに戻るとかの超人性・達人性のカッコよさ! 血が騒ぎます。熱くなります。気持ちよくなります! やっぱり人間は暴力が大スキなんだネ!(ってもちろん最低限、正当性のある暴力の場合だけですからネ!・汗)。


 雨宮慶太(あめみや・けいた)カントクの『未来忍者 慶雲機忍外伝』(88年)で主演デビューした横山誠アクション監督は、今秋(05年秋)スタートの『牙狼(ガロ)』(・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060317/p1)でも大活躍! 話はナイに等しいけど、同作はアクションのカッコよさでどれだけ作品の熱血温度があがっていることか。極端な話、ドラマやテーマがなくともアクション映像だけで観客を作品に注視させることができるというその典型! 実証例!


 まぁ『ライダーTHE FIRST』自体は、そーいう種類の作品ではなく、やはりドラマ主導の作品なので、特撮映像&アクション映像のカタルシスに貢献する「従」としてのドラマやテーマといった自説に、牽強付会して語るには適切な作品ではなかったが(笑)。それはそれとして、そーいうものとして、愛すべき作品ではあったと思うのだ。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年準備号3』(05年11月20日発行)〜『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)所収『仮面ライダーTHE FIRST』合評2より抜粋)


仮面ライダー THE FIRST』 〜合評2

(文・久保達也)


 劇場売りパンフ*1にもあるように『仮面ライダー』(71年)放映35周年を前に製作された本作は、当初は35周年を盛り上げるべく、昭和時代の仮面ライダーが総登場するお祭り的なオールスター映画の企画が発端だったらしい。
 ところが「原点回帰」の号令のもとに今回のような昭和の仮面ライダー1号と仮面ライダー2号を中心とした故・石ノ森章太郎の原作漫画や、TVシリーズ第一作の特に初期のイメージに近い作品へと方向転換したということだ。


 講談社『月刊マガジンZ』に好評連載中の村枝賢一仮面ライダーSPIRITS(スピリッツ)』(01年1月号〜・ISBN:4063490548)の映像化をアニメでもいいから熱望する筆者としては、この事実を知ったときは「あ〜あ」とためいきをつくばかりであった。たしか映画『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE』(03年・松竹)も当初の企画はウルトラマンが総登場するお祭り的なオールスター映画の企画じゃなかったっけ? それが「大怪獣映画」どころか「大人類批判映画」(爆)へと方向転換したがために(もちろんそればかりが理由ではないものの・汗)「それ見たことか!」とばかりにおもいっきり大コケしてしまったのである。


 まぁそんなわけで個人的には本作に対してはな〜んも期待はしていなかった。ウルトラシリーズファンに1960年代後半の第1期ウルトラシリーズ至上主義者が数多く存在するのと同様、ライダーシリーズファンにも『仮面ライダー』第1作目の第1話~第13話に相当する「旧1号ライダー編」至上主義者が厳然と存在する。そんなコアなファンを喜ばせるだけの作品だろうと思いこんでいた。
 全国的にも上映館はきわめて少なく案の定、筆者の地元である三重県では上映がない。果たして近隣の大都市である名古屋までわざわざ本作を鑑賞するために足を運んだかどうか? 幸か不幸かこの夏、転居した静岡では駅前の静岡ミラノで上映があることを知り、前売券を買いに行ったら窓口の女性のあまりの態度の悪さ*2に気分が悪くなり、「やっぱ観るのやめよかな」と思ったものだ(笑)。
 05年11月7日。当日は仕事が休みであったが昼・夕・夜と一日3回上映のあるうちのあえて夜の回に行ってみた。どうせ暗い作風だろうからおてんと様が出ている時間に観るのはふさわしくないだろうと考えたからだ*3。観客は筆者を含めたった8人。「それ見たことか!」


 だが、上映が始まって間もなく、「まさか?」と耳を疑うようなお馴染みのメロディーが流れてきた。


 ♪せまる〜、ショッカー〜、じごくのぐ~んだ〜~ん……


 子門真人が歌った主題歌『レッツゴー!! ライダーキック』である。まったく予想だにしなかった音楽演出である。やはり映像作品における音楽の効果は絶大なものがある。これには思わずだらしなく椅子にもたれかけていた姿勢を正したものだ。


 幕開けに旧作の主題歌がかかるくらいだから、冒頭からしばらくはこれでもかと云うほどに旧作のエッセンスのオンパレードである。
 秘密組織ショッカーによって改造されたことにより思わぬ力を得たことに苦悩する1号ライダー・本郷猛(ほんごう・たけし)、婚約者である克彦を殺害され、たまたま現場にいた本郷を犯人と疑う緑川あすか(旧TVシリーズでは父親である緑川博士を殺したのが本郷だと疑う緑川ルリ子が登場)など、単なるリメイク的色合いが濃厚だったりする。


 だが、克彦とそっくりの顔をした2号ライダー・一文字隼人(いちもんじ・はやと)が登場するあたりから、物語は本郷と一文字の間で揺れ動くあすかといった昼メロかトレンディドラマの様相を見せ始める。筆者はそういう作品にまったく関心がないのだが、スパイダー(クモ型怪人)に襲われたあすかを1号ライダーが救い、ライダー専用バイク・サイクロンの後ろに乗せて夜の街を走行する場面はなかなかロマンチックに感じられたものだ。旧1号編でも本郷がルリ子を乗せてバイクを走らせたことはあったが、「仮面の男」が女性をサイクロンに乗せて走ったことはなかったのだ。
 この時点ではあすかは1号が本郷であることを知らないのだが、あすかの「なぜ私を助けたの?」との問いに、1号が「俺はただ、美しいものを守りたいだけだ」とだけ答えてサイクロンで走り去っていく場面は男の子だけではなく、女性にも十分に「カッコイイ!」と思わせるのではなかろうか。


 あすかはバット(コウモリ型怪人)にも襲われ、彼女を助けようと一文字が2号ライダーに変身したのを見て、スパイダーから自分を救ってくれたのが一文字であったのかと思ってしまうが、「オイオイ色が違うだろ!」というマニア的ツッコミはこの際ナシね。普通の女性にとっては1号も2号もスカイライダーも仮面ライダースーパー1(ワン)も全然区別つかないんだから(笑)。
 まぁそのあとあすかの取り合いで1号と2号が戦うなどという井上敏樹作品らしい場面もあったが(笑)、本郷抹殺に失敗し、あすかを愛してしまったことから裏切り者としてショッカーに狙われるようになった一文字を本郷が救い、ショッカーにさらわれたあすかを助けるためにふたりが共闘するあたりからは「ダブルライダー」映画としての魅力が充分に輝いてくる。
 戦闘員にズラリと包囲された中で二人のライダーが、変身するのではないのだがいわゆる「変身ポーズ」をバッチリと決めてから戦闘に入り、『仮面ライダー』第1作目のシリーズ後半で頻繁にあった1号ライダー&2号ライダー共闘編のように「ダブルライダーキック」まで披露してくれるのには心の中で拍手喝采である。


 また本作には怪人が4体登場するが、井上敏樹の作品らしい妙にエキセントリックなバット、獲物を求めて街を徘徊するにはふさわしいタクシー運転手に変身しているスパイダーと、人間体もきわめて魅力的に描かれており、何を主張するわけでもなく、単に殺人を繰り返すだけの平成ライダー作品に登場する怪人たちとは一線を画しているのが嬉しいところだ。
 特にコブラとスネーク(共に蛇型の怪人)は、前者が誰も見舞いに来てくれないことから自暴自棄気味の入院患者の少年、後者は自分も余命いくばくもないのに少年に献身的に尽くす重症患者の少女が延命をはかるためにショッカーに改造された悲劇的存在であり*4、単なるやられ役にとどまらず、怪人側にもちゃんとドラマが用意されたことは今回の大きな収穫であった。


 それにしても『仮面ライダー』第1作のシリーズ中盤にレギュラー出演していたショッカー大幹部を演じた故・天本英世(あまもと・えいせい)を死神博士としてデジタル出演させてくれたり(これをやってくれるのであれば、欲を云うなら初代大幹部・ゾル大佐や3代目大幹部・地獄大使も出演させてほしかった……)、改造人間が拒絶反応のために血液交換が必要であるなど(『仮面ライダー』第1作のシリーズ後半であるゲルショッカー編ではゲルショッカー戦闘員が一定時間内にゲルパー液を服用しないと自爆を遂げる描写があった・笑)、旧作を知るものなら思わずニヤリの「これだけはハズせない!」ポイントを全編に散りばめているのには、多少脱線気味ではあっても「ちゃんと『ライダー』している」と好感をもったものだ。正直近年のライダー作品は作品そのものの評価は別として、あまりに基本ラインから外れていることに違和感をおぼえていたもので。


 またあすかに「俺はただ、美しいものを守りたいだけだ」と語っていた本郷は、のちに学会の発表であすかに「先生の云う美しいものって何ですか?」と質問された際に「それは命です」と答えている。「美しいもの」がイコール「命」です……というのは一見、道徳的なようでもストレートに直結するものではないし、ひとりの女性を救っておいてその理由に「美しいものを守りたいだけだ」と発言するのも論理的には答えにはなっていない、はなはだ情緒的な回答なのだが(笑)、それらの象徴として本郷が研究していた「水の結晶」が劇中何度もイメージ映像として描かれるのも幻想的であり、先のラブロマンス的要素も含めて女性にも支持されること受け合いであると思えるのだが。


 いずれにしても、冒頭は「旧1号ライダー」編的な怪奇描写やマニアックな描写が中心と思えば、中盤ではトレンディドラマが描かれ、後半はカタルシスたっぷりの「2号ライダー」編や「新1号ライダー」編的なダブルライダー共闘の娯楽活劇作品であったりと、作風が劇中でそれこそ華麗に「変身!」を遂げており、観客を限定することなく幅広い層の支持を一応期待はできそうだ。
 デートムービーだけでなく、これなら自分に息子がいたら一緒に観に行きたい。少なくともそう思わせてくれる作品ではあった。


2005.11.14


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年準備号3』(05年11月20日発行)〜『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)所収『仮面ライダーTHE FIRST』合評1より抜粋)


『假面特攻隊2006年号』「仮面ライダーTHE FIRST」関係記事の縮小コピー収録一覧
・下野(しもつけ)新聞 2005年11月4日(金) くらすαアルファー「元祖!イマコレ」ヒーロー原点回帰 活躍と苦悩の物語 映画「仮面ライダー」 〜世代人記者の映画紹介
・読売新聞 1972年1月29日(土) 家庭欄「家庭」仮面ライダー人気の秘密 苦労せずパッと変身 うける早いアクション 〜大人気・学会が児童へドコに惹かれたかをアンケート・調査した女子大生いわく「見る側の子供に主体性が感じられない」「よく見てるけどショッカーに関してまるで知らない。何を見てるの?」(大意)
・読売新聞 1972年10月9日(月) 仮面ライダー過熱の童心 カード集め、中身ポイ 団地のゴミ箱、菓子の山 道徳心どうなる都教育庁が調査へ 〜スナック1袋20円につき1枚のカード・ラッキーカードで72枚収容のアルバム、児童評論家・阿部進は「押えても効果ない」6年前はオバQ・おそ松くん、その前は鉄腕アトムでこの種の遊びは周期的に現れる、今の子は本当の遊びを知らない、メンコのように生かして使う教育が必要。
 (自称・怪獣カバゴンこと阿部進は永井豪のマンガ『ハレンチ学園』(68〜72)を擁護したことでも有名な異色の教育評論家)


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仮面ライダー』初作・総論3 〜旧1号編を今あえて擁護する

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仮面ライダー』初作・総論4 〜ライダー・ミラーマンシルバー仮面が日曜夜7時に激突! in名古屋

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*1:劇場売りパンフはなんと価格は千円もするが、出演者やスタッフのインタビューは『仮面ライダー THE FIRST  VISUAL PREVIEW BOOK』(角川書店・定価税込580円)や、『ハイパーホビー』(徳間書店)05年11月号別冊付録の『仮面ライダー THE FIRST  BEGINNING BOOK』とほぼかぶっているのでそれらを所有している人はわざわざ購入する必要はない。なんて営業妨害で訴えられるか?(笑)

*2:映画館の窓口の女性がとにかくまぁ「私はオタクなんかと一切関わりたくないのよ!」と訴えているような態度であった。映画『ゴジラVSキングギドラ』(91年・東宝)を上映最終日の夜に新宿コマ劇場横の映画館(新宿コマ東宝)で観た際にも窓口の女性の態度がそんなふうであった。こういうのっていつまで経っても忘れられないんだよなぁ……(汗)
 ただ05年11月に東京都町田市で16才の男子高校生が同じ高校に通う女子生徒を殺害した事件の報道なんかを見ていると、もう完全に「活発で社交的=善」「内向的でおとなしい=悪」の図式であり、こうした善悪二元論で人を判断する風潮は近年ますます強まりつつある。
 こうなると加害者である少年のように「何も悪いことをしていないのにバカにされた」と訴えたくもなるよなぁ。少年の行動をいちいち「不可解」としているのも、あの年頃の男の子が好きな女の子の周囲をウロウロすることの一体どこがそんなに「不可解」なんだよ(自転車で10分ほど少女の周囲を回りつづけるのはともかく・笑)。
 まぁ自分の母親をそれこそショッカーみたいに薬物の実験台にした化学大好き女子高生ともなるとさすがについていけそうもないが……

*3:筆者は平成ライダー作品を日曜の朝にリアルタイムで観たことがない。ああした作風の作品は個人的には深夜に楽しむのこそふさわしく、休日の朝は戦隊シリーズのような明るく楽しい作品こそふさわしいと考えるからである。

*4:コブラとスネーク怪人の少年と少女がデートを楽しむ場所は05年2月に名古屋に完成したパチンコ・ファッション・グルメ(昭和ラーメン博物館もある)・観覧車などが楽しめるアミューズメント施設である。
 だがそこは02年9月に閉館した名古屋東映を取り壊してできた跡地なのである。いったいなんでまた東映ビデオの作品がそんな場所をロケ地に選んだのであろうか?(同所は東映が経営しているのか?)
 ちなみに名古屋東映の最終上映作品となったのは『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021104/p1)と『忍風戦隊ハリケンジャー シュシュッとTHE MOVIE』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021112/p1)の二本立て(02年・東映)であった。