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仮面ライダー THE FIRST 〜原作・TV版初作の再生か? 「仮面ライダー」の本質とは!?

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仮面ライダー THE FIRST』 〜原作・TV版初作の再生か? 「仮面ライダー」の本質とは!?

(2005年11月5日封切)
(脚本・井上敏樹 監督・長石多可男 アクション監督・横山誠 VFXスーパーバイザー・小林真吾)

仮面ライダー THE FIRST』 〜合評1

(文・T.SATO)
(2005年11月脱稿)


 まぁまぁイイ感じの仕上がりではなかろうか!? コレが「TV版」や「漫画版」のテイストの再生だとはゆめ思わないけど、80年代~現在にかけて世間に流布している哀愁に満ちた元祖『仮面ライダー』像の21世紀初頭的なリファイン版プラス、アルファではありえているとは思うのだ。


 理系学生のキマジメ誠実ストイック主人公こと1号ライダー本郷猛(ほんごう・たけし)を演ずる黄川田将也(きかわだ・まさや)クン。……イイ男だよなぁ。マジメだけれどハナにかけたところが意識的にも無意識的にもなく透明感もある彼が演じるからこそ、彼が研究している(いかがわしいオカルト・疑似科学ではあっても清潔感・清澄感は象徴してくれる)「水の結晶」がどーたらこーたらといった描写も含めてイヤミがないのである。この間(2005年秋)、土曜日朝にNHK朝の連続TV小説をチャンネル・ザッピング視聴で観ていたら、ヒロインのお相手役としても出演しているじゃん! と思ったら、実写版『美少女戦士セーラームーン』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)で、セーラージュピターこと木野まことチャンとイイ関係になるカラオケ店バイトの元基(もとき)兄さん役の彼だったのだって!? あのときの三枚目が入っている役柄とは違う演技ゆえにか筆者の眼がフシ穴だったか、全然気が付きませんでしたが(汗)。


 2号ライダー一文字隼人(いちもんじ・はやと)は『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)の好敵手・ウルトラマンアグルの変身前の役者さんでもあった高野八誠(たかの・はっせい)クン。完璧に「イヤなイヤなイヤな奴」でナンパ師・プレイボーイの敏樹キャラと化している(笑)。かつての大根芝居(失礼)も上手くなったものである(本作のセリフ自体が演者にとってはしゃべりやすいナチュラルなものなのかもしれないが?)。


 ヒロイン・緑川あすかは、『3年B組金八先生(PART4)』(95年)における主役級の登場人物で、気高くて決して頭は下げそうにはない王女さま的な存在であった美少女中学生役でデビューした小嶺麗奈(こみね・れな)。同時期に放映されていたロボットアニメ『新機動戦記ガンダムW(ウイング)』(95年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990805/p1)の王女リリーナ嬢を実写化するならばこの娘で! と局所的な界隈では云われていたものだけど、『金八』直後に放映された少女漫画原作のTVドラマ『イグアナの娘』(96年)で髪をアップにした性格が悪くてキツいイジメっ子的な悪女役をやってからは、本来は美女の器量のワリにはそのイメージがついてしまって損をしているようには思う。ひそかに応援しているのだが(汗)、『金八』時代のようにポニーテールで前髪を降ろしてくれよ!(笑)


 30分枠や1時間枠ドラマで、1年・半年・3カ月をかけて放映される長編ドラマならば、ゆるやかな人間関係の変化や交差のドラマも可能だろう。しかし、わずか2時間なり90分尺の映画ではそのようなストーリー展開にはムリが生じて、その関係性の変化がキャラクターの言動のブレや矛盾にすら感じられてしまうこともあるものだ。だから、「キャラクターシフト」や「感情の交差」「出会い」「お互いに魅かれる動機」や「翻心・変心の必然性」も作るために、作品の冒頭から身近でウチワな狭い人間関係を樹立しておいて、その中での因縁の変化やアイテムなどをキーとしていく手法も、短編作品の作劇術としては万能ではないにせよ有効なひとつの方法ではあるとも思える。


 本作でならば1号ライダーとヒロインは、理系研究者の卵と雑誌の科学部の記者としての関係性から接点を持たせている。そして、そういったメインストリームの人間関係の傍流から登場してきて、悪の組織の敵怪人を目撃してしまったヒロインを殺害する役目を負わされた2号ライダーは、ヒロインとの感情的紐帯は本来は何もナイはずなのだけど、ヒロイン自身のすでに亡き婚約者にクリソツだったというご都合主義(笑)をひとつ設けることで、ヒロインが2号ライダーの青年にも執着していく発端をコレで確保する。
 この3人の三角関係の変転にもなぞらえられていく、ヒロインの1号ライダーの青年に対する冒頭とは真逆な「疑惑」「不信」の深まり、そしてそれに反比例しての2号ライダーの青年への「傾斜」と、そのまたさらなる「傾斜」の度合いの反転。
 1号と2号の恋の鞘当て合戦! というよりも、マジメで朴訥でストイックな1号は押されまくっており、自分の心のうちのほのかな恋情ですら判っていないという「天然ぶり」でもキャラを立てていく(笑)。2号の「TV版」とも「漫画版」ともまるで異なるプレイボーイぶり(爆)もアレくらいにトガっていないと90分ドラマではキャラが立たなかっただろうし、対比や対立のドラマもやりにくいだろうから、ごくごく個人的にはアレでもOKだとは認定する(……異論は受け付けます・汗)。


 人間関係が実に狭い、キャラの行動原理が「私的」に過ぎるという指摘・批判も実に正しい。しかし、実のところ特撮マニアや大衆のみなさんが持ち上げているハリウッドの洋ものヒーロー大作映画も、このような人間関係や作劇によって物語が駆動されていたりもするのだ。『スーパーマン』は会社勤めをしている新聞社の同僚でもあり片思いのお相手でもあるお姉ちゃんを守っており、『スパイダーマン』であれば幼なじみの同級生彼女をストーカー、もとい守るためといった要素も濃厚ではあるのだ。それらの行動動機が「私的」に過ぎると気にならないのは、それを「さりげに」見せている作劇のテクニックもあるのだろう。しかしドチラかと云えば、観客やマニア連中が無意識・権威主義的に舶来のハリウッド映画に対して「おフランスざます」的に屈伏・盲従しているからだとも見るのだが……(汗)。


 そして、叙情的な要素としては「水の結晶」。翻心や純粋さの象徴としても、物語のターニングポイントを後押ししている。そんなことで洗脳されていた人間が自我を取り戻したりすることがあるのか!? というツッコミはまぁ正しい。けれども、しょせんは作りものでもある「物語」というものは、やはり「リアリズム」より「象徴」「寓意」の方が優先する世界でもある。あるいは逆に、「リアル」から出発するのではなく何らかの「感情的感慨」を創出するために、逆算して「人間関係」や「ドラマ」に「アイテム」を配置・構築していくものでもあるのだから、コレはコレでイイのではないかと私見もするのだ。なので、筆者は本作を作劇的にも高い評価を下すのだ(近年、世間の一部で流行っている「水の結晶」うんぬん、人間が「水」にやさしく語りかけるとうんぬん、といったことは「エセ科学」だということも重々承知はしていますけど・笑)。


 とにかく作品や作品批評といったモノは、多彩な「要素」や多様な「評価軸」がある。よって、本作がいつもの実にクセが強い敏樹キャラが登場するからうんぬん……といった言及が特撮マニア間では跋扈(ばっこ)しそうではあるものの、それだけで判った気になって整理してみせたり切り捨てたりしてみせるのも、それは「点」としての指摘としては間違ってはいないものの、それだけでも作品自体の「線」や「面」や「立体」すべてを把握したことにはならないのだ。X軸のみならず同時にY軸やZ軸にも目配せして、多角的・立体的に作品にアクセスしようとすべきだろう。


 で、お待ち兼ねの超人ヒーロー&異形の敵怪人といった改造人間たちによるアクション! いやぁ、コレがまたなかなかにスゴい! カッコいい!
 実はアクションに関しては、昭和ライダーの古式ゆかしい大野剣友会の殺陣(たて)の再生では全然なかった。JAC(ジャパン・アクション・クラブ。現・JAE:ジャパンアクションエンタープライズ)的な舞踏的様式美でもなかった。しかし、間断なくスピーディーに低姿勢になってもアクロバティックに連発されつづける突きと蹴り!


 まぁ、特撮マニア的には『仮面ライダーBLACK RX』(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1)#1~2のころには完成の域に達していて、今回のアクションがライダーシリーズ初ということではなかったことは強調しておきたいけど、バイク同士の集団戦での走行中のバイクから繰り出される突きやパンチに蹴り! あげくバイク上からジャンプしてキックをかまして、また走行中のバイクに戻ってみせるといった超人性・達人性のカッコよさ! 血が騒ぎます。熱くなります。気持ちよくなります! やっぱり人間は暴力が大スキなんだネ!(ってもちろん最低限、正当性のある暴力の場合だけではありますが・汗)。


 かの雨宮慶太(あめみや・けいた)カントク作品である『未来忍者 慶雲機忍外伝』(88年)で主演デビューを果たした横山誠アクション監督は、今秋(05年秋)スタートの『牙狼(ガロ)』(・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060317/p1)でも大活躍をしている。この作品も各話単位においてはお話らしいお話はナイに等しいけど(?)、同作も横山アクション演出のカッコよさで、どれだけ作品の熱血温度が上がっていることか。極端な話、ドラマやテーマがなくともアクション映像だけで観客を作品に注視させることができるというその典型! 実証例!


 まぁ、本作『ライダーTHE FIRST』自体は、そーいう「アクション」主体の作品ではなく、やはり「人間ドラマ」主導の作品ではあった。よって、「特撮映像」&「アクション映像」のカタルシスに貢献する「従」としての「ドラマ」や「テーマ」といった作品が、「特撮」ジャンル作品の中核・アイデンティティーであるべきだ! といった自説に、牽強付会して語るには適切な作品ではなかった(笑)。しかし、それはそれとして、そーいうものとして、愛すべき作品には仕上がっていたとは思うのだ。



 TVゲーム『スーパーロボット大戦』で昭和の合体ロボットアニメは知っていても、その本編は観たことがないというマニア小僧が今や多いようだ。特撮はアニメに比して作品数が少なくシリーズものが多かったことから、時折の再放送特番やレンタルでの視聴が容易で長らくあまりそういう現象はなかった。が、それでもさすがに21世紀の今日、ネットなどを見ると、平成『ライダー』は視聴しているが、昭和『ライダー』は存在や設定を知ってはいてもキチンと視聴をしたことがないというマニアの記述も見受けられる。


 年齢的にそれも仕方がないことだろう。筆者なども生まれる前の作品で、しかもモノクロゆえに70年代以降に再放送がなかった60年代の特撮・アニメ作品は、マニアゆえに最低限のカタログ的な知識はあっても視聴をしていない作品が多々ある。それと相似形だと考えれば彼らを責めることはできない。


 よって、『仮面ライダー』のマニア史を言及しながら、本作『仮面ライダー THE FIRST(ザ・ファースト)』(05年)にふれていく。マニア史あっての『FIRST』という色合いも濃いからだ。


 当然、なんのかんの云おうと『仮面ライダー』は基本的に子供向けの勧善懲悪作品である。後年、マニアによって「大自然の使者」だとも理論武装された。しかし、やはり1960年代までの古典的な人間サイズの覆面ヒーローとは一線を画していた、バイクのメットや黒皮スーツを模したスタイルで自在にバイクを駆(か)ることができる、当時としては圧倒的にスタイリッシュでスピーディーな「近代科学のヒーロー」であったがゆえに(もちろん先行したウルトラマンなどに比べればホコリっぽかったとしても)、大人気を博したのだともいえるだろう。


 作品内容も極論すれば、


怪人「見たな〜、殺す〜。キュイーー(奇声)!」
被害者「ワ〜〜~!(ブクブクブク〜泡になって消える・笑)」
ライダー「出たな、ショッカー。トォ!」


 というようなシンプルプルプルな内容であって、コレがまた子供向けによかったのだともいえよう。
 よく云われる“改造人間の悲哀”も、全編あるいは『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)第1作目の#1~13こと「旧1号ライダー編」にあまねくチリばめられていたとは決していえない。実際には序盤13話中の数か所にだけチラリと垣間見える程度だといっても過言ではない。


 しかし、現在における初期『仮面ライダー』のイメージは、もちろん頼れるカッコいいヒーローであるにしても、もう少しダーティーなイメージも混ざっている。すなわち、前段の“改造人間の悲哀”である。この概念は主に1980年代前中盤に醸成された。


 ティーンまたは二十歳前後に達していて、善くも悪くもイイ歳をして子供番組を卒業しなかった初期『仮面ライダー』世代が、作品および作品を嗜好する自分たちを正当化するために用いた理論武装。それは、『仮面ライダー』に「人間ドラマ性」や「社会派テーマ性」をムリやりにでも発見して、それを拡大拡張してみせることであったのだ(……『ゴジラ』や『ウルトラマン』シリーズなどでも、前代にくりかえされてきたアノおなじみの光景です)。


 80年代前半には今は亡きアニメ誌「アニメック」で、オタク第1世代の功労者・特撮評論家の池田憲章が「日本特撮映画史 SFヒーロー列伝」を連載しており、当時の批評マニアのケがある人種たちに大きな影響を与えていた。先達の努力には敬意を払っても払い切れないものがあるのだが、個人というより当時の時代的な限界か、初作『仮面ライダー』を語るにおいても、素朴な「アクションのカタルシス」といった、今様に思想用語で云うならば「身体性の快楽・愉悦(ゆえつ)」といったことの主張ではなかった。そこにマレにある「改造人間の悲哀」や「幹部交代劇」においてわずかに存在していた人間ドラマ、ライダー生死不明のイベント編などにおけるおやっさんこと立花藤兵衛(たちばな・とうべえ)の心配・想いの吐露といった、いわゆる「人間ドラマ」的な要素で作品を賞揚しようとしたものだ。
 かくて、80年代中盤当時の特撮誌や模型誌では、今回の『THE FIRST』のようなハードでシリアスでリアルなオトナの視聴にも耐えうるアップトゥデートされた、敵味方ともに悲哀のドラマに満ち満ちた「オレ旧1号」な設定・物語・イラスト・造形物の投稿&記事が跳梁(ちょうりょう)することとなる(そんな時代が、歳若い読者さまが生まれたころにはあったのです)。


 とはいえ、80年代末期には別の考え方も勃興してくる。この思潮は必ずしもメインストリームになったとはいえないのだが、傍流としては着実に命脈は保っていて、微量ではあるが勢力を増しつづけてはいる。それは「ハード&シリアス」「テーマ&ドラマ至上主義」を懐疑して、もっと表層的かつ根源的でもある「見てくれ」なり「存在」自体の「ヒーローの強さ・カッコよさ」に注目する考え方だ。
 この思想に着目した人種たちも一枚岩ではなく、マニアの中でもスレすぎて2回転3回転したがゆえに再帰的に落着した者、ホントに素朴で幼稚な者(汗)の2種に分かたれるのだが、それはまぁドーでもイイだろう。要は子供時代の自分は「テーマ」や「ドラマ」や「リアリティ」などではなく、「強さ」や「カッコよさ」や「バトルのカタルシス」にこそ魅かれたと見る立場のことである。
――チョット補足をしておくと、前者は作品の「テーマ」や「ドラマ」が判らないといった種族でもない。判ってはいるしその感度もあるのだが、あえて大衆・子供向け作品として、あるいは改めて「思春期」ならぬ「幼児期」の感慨を再理論化して批評をくだそうという立場のことである。ただ往々にして、ハード&シリアス主義者をそのテの内は見透かしているョ(自身の過去の姿でもあるのだから)的に嗤(わら)ってみせるような、偽悪的な態度が鼻につく問題もあるのだが(笑)――


 ゆえに1992年に、原作者・石ノ森章太郎も深く関わったシリアス&リアル志向のVシネマ『真・仮面ライダー〜序章(プロローグ)〜』という、ハリウッド洋画『ザ・フライ』(86年)的なハエ男で、クリーチャー的ゲロゲロモンスターな仮面ライダーが陰欝な物語で登場したときには、逆に「こんなの仮面ライダーじゃないやい!」などというリアクションも、当時の特撮マニア誌『宇宙船』の読者投稿欄などでも多々現われたのだった。もちろん先に挙げてきたような「ハード&シリアス至上」を相対化する思潮(思想風潮)・理論先行による裁断でそのように断罪されただけではなく、『真・仮面ライダー』自身のヒーロー性が欠如したゲロゲロな「見てくれ」のあまりな異質さや、実地に作品を鑑賞してみてのその物語のヒーロー性やカタルシスの欠如に、はじめてリアル志向の限界に気づいた者もいた。


 そのことに製作会社・東映&玩具会社・バンダイの全員とはいわずとも多くのスタッフも気付いたのだろう。『真』以降、さまざまな新ライダーたちが登場して、様々な意匠も施されてきたのだが、現代の子供向けヒーローの「カッコよさ」なり「玩具的流行」の仁義を守った上での、バランスが取れた上での寸止めに留めた「リアル系」なり「マニア向け」なり「主婦向け対策」であったことは、前述までの文章でご理解いただけることと思うのだ――そこが円谷の『ウルトラ』シリーズとは違うところなのだ。でもまぁ、特撮マスコミのライター陣の方はいまだに「リアル」志向寄りの呪縛にとらわれた御仁たちが多そうではあるけれど。 (後日付記:ここで云う『ウルトラ』シリーズとは、当時はまだ記憶に新しかった『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)のことを指しています・汗)――。


 さて、本作『THE FIRST』は……。そう、本格・リアル志向だとはいっても、決して『真』のように服を脱いでハダカになって苦しみながら異形(いぎょう)の者へと変身する、一応のSF科学的・合理的存在ではないのだ。仮面ライダーのマスクをかぶり口顎カバーのクラッシャーを付けることで変身が完成するという一見リアル志向ではあるものの、顔から下の仮面ライダーのスーツはいつ着こんだのだ!? というような映像描写にもなっている。
 いやコレはバカにしてツッコミしようというのではない。スーツを着こむシーンを入れて、まだるっこしくなったり、どこにスーツを隠し持っていた!? というような隙を浮上させて、ヒーロー性を欠如させる描写になるくらいであるならば、テンポのよい省略技法でゴーインに押し切ってみせる「演出」である方がイイ。というか、個人的にはコレでこそカッコいい!


 実は本当はヌルくて様式美でもあった初作『仮面ライダー』TV版。そして、それとは相反するリアル&シリアス志向の『真・仮面ライダー』。「リアル志向」をタテマエ・営業的ウリ文句として謳(うた)っている本作『仮面ライダー THE FIRST』は、実はTV版『ライダー』初作と『真』との中間地点の「リアル度」に位置する作りとなっている。
 では、なぜ本作は「リアル志向」であると謳うのか? それはカンタン。その方が未だにリアル&シリアス志向が過半を占めている特撮マニアなり大衆にはキャッチーで流通するからだ(笑)。なぜに「原作に忠実」なり、その「初の映像化」と謳うのかもまた同じ。コアなマニアならばそのへんも瞬時に見抜いて、「あくまでも客引き・宣伝だから、ご愛嬌……」になるのかと思いきや……。


 「原作漫画」というか、元祖『仮面ライダー』TV版は「原作漫画」ありきの映像化作品ではなく、今でいうメディアミックスの魁(さきがけ)でもあったから、仮にここでは元祖『仮面ライダー』の「漫画版」と呼称しておこう。
 この「漫画版」自体の出来も悪いとは云わないけれども、石ノ森御大(おんたい)の名作漫画『サイボーグ009(ゼロゼロナイン)』(64年)に匹敵する名作であるワケもない。特撮ヒーロー『人造人間キカイダー』(72年)の「漫画版」同様に、基本的には少年ならぬ児童・幼児向けの漫画に過ぎない。それらの内容が、児童なりかつての我々がそうであったように思春期のマニア小僧にとっては、TVとの大きな相違とやや陰鬱なテーマゆえに「再発見」的な衝撃はあったのだとしても(それもマニア予備軍のケのあるコに限定だったのかもしれないが……)、それを21世紀の現在時点で過剰に賞揚して、あの「漫画版」こそが理想であって、今のTVや映画版の新作『仮面ライダー』シリーズが目指すべき目標であると捉えるのは違うだろうとも思うのだ(もちろんだからといって、「漫画版」を過剰にケナしてみせるのもまた違うのだけど)。


 脱線したが、「リアル・原点志向」の作品をマジで心の底から信じている輩が「リアル・原点志向」の作品を作ってみせるよりも、「非リアル・コミカル・シニカル」のよさも判っているのに、あえて一見、本格志向のようにも見えて実はそうでもなく、元祖『仮面ライダー』第1作のシリーズ後半にて当時の子供たちが最も本作の魅力だと思っていた1号ライダー&2号ライダーのいわゆるダブル・ライダー共演を中心に据えており、なおかつ元祖作品にはなかったヒロイン・1号・2号との三角関係(!)を導入したような、ちっとも「旧1号」編や「漫画版」的な原点回帰ではなかった本作(笑)を作ってみせているサバけたスタッフ陣には、ごくごく個人的には共感を抱いてはいる。
 だから「リアル・原点志向」の特撮マニアにはツッコミどころの隙がある作品にもなっているのだ。だが、「変身ヒーローもの」の醍醐味とは、「飛躍・超越」といった「ケレン味(み)」にもあるのだと、意識せずとも無意識にでも価値尺度にしている特撮マニアであれば、本作の在り方は許容範囲であろうし、むしろ好意を抱く要素ですらあるだろう。


 「飛躍・超越」とは何か?


 絶体絶命のピンチ。吊り橋からついに墜落してしまう風見志郎(かざみ・しろう)! ……ドボーーン!!(水しぶき!)


 と、次の瞬間には変身ポーズを決めたときの効果音と高笑いとともに、崖上に仮面ライダーV3(ブイスリー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140901/p1)の勇姿が!(いつ変身したんだ!?・笑)


 あるいは、敵怪人の毒鱗粉に操られ、海に落とされてしまうスカイライダー(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1)こと筑波洋(つくば・ひろし)!


ナレーション「そのとき、○○怪人の毒が、潮(しお)で、洗い流された!」


 直後、催眠から目覚めた筑波洋が海中で変身ポーズを取って、「ヘン、シン!!」。


 で、海面からフィルム逆回転(笑)でジャンプしてきて形勢逆転!(……そんなご都合主義なストーリー展開でイイのかヨ!?・笑)


 氷点下のバナナの杭(クイ)が胸に刺さる! 突っ伏す仮面ライダーブラックRX(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1)こと南光太郎(みなみ・こうたろう)。


 しかし実は見えなかっただけで、強固なメカ装甲を持ったRXロボライダーに「瞬間変身」して難を逃れていたのだ!!


 ……というようなことどもに象徴される(笑)、(後付けでの好意的理屈付けも可能なのだけど)基本的にはご都合主義な、しかしヒーローの「圧倒性」「万能性」「超越性」を補強して、視聴者に憧憬やカタルシスをもたらすような要素のことなのである。


 コレこそがヒーローものの中核であるべきで、テーマ・ドラマ・人間的弱さ・善悪への懐疑などはもちろんあってもイイのだけど、それらは作劇の「従」であり「主」であるべきではないのだ(……対外的・営業的なセールスマン・トークとしてはともかく・笑)。


 それらのドラマ性やテーマ性は作品の「彩(いろど)り」なり「一時的な脇道」であるべきで、究極的には物語のクライマックスでのヒーローの大活躍によるカタルシス(広義での「悲劇」などがもたらす「重たいカタルシス」なども含む)にすべては集約すべきなのである。


 この観点から、『仮面ライダー』や『○○』といった作品はただの娯楽活劇作品ではナイ、なぞという持ち上げ方などは笑止千万。さような俗っぽい論法が、我が国で一般大衆に受容される規模でのスカッとしたヒーロー娯楽活劇作品が作れない、ヘンに未熟なテーマ主義作品ばかりが跋扈(ばっこ)してしまったことの根本原因にもなっているのだ。



 ……ではあるのだけど。でもやっぱり本作は、敏腕・白倉伸一郎P(プロデューサー)と異形(いぎょう)の脚本家・井上敏樹の作品だから、そーいう王道娯楽活劇派の文脈に回収しきれるワケでもないのであった(笑)。



 そして、本作を子供が観て面白いのか? といった問題もある。しかし、いかに少子化時代だとはいえ数百万人単位の子供を対象とする現役特撮変身ヒーローと、その1/100であろう数万単位のマニア相手の『FIRST』の規模・パースペクティブをキチンと捉えて、適正規模で劇場公開するあたり(作品を大切にしたからではなく、ビジネスライクな計算。元はVシネマ企画であって、DVD数千枚の売上でも元は取れるらしい?)、本作のような作品に関してはもちろん子供の反応は除外視してもイイのだ。
 そこもまた、余裕から来るサブや余技としてのラインではなく、製作会社のメイン興行作品映画として、マジで『ULTRAMAN』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060305/p1)のようなリアル志向の作品をブツけてコケている円谷プロとは違うのだ。でも逆に云うと、『ULTRAMAN』規模の客入りは本作でも見込めたハズだろうから、全国のシネコンでレイト上映くらいはしてもよかっただろうに……(『ULTRAMAN』も、地元のシネコンでは夜間上映しかなかったけど・笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年準備号3』(05年11月20日発行)〜『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)所収『仮面ライダーTHE FIRST』合評2より抜粋)


仮面ライダー THE FIRST』 〜合評2

(文・久保達也)


 劇場売りパンフレットはなんと価格が1000円もして、そこで特撮マニア相手に小銭を稼ごうとしているようだ。しかし、出演者やスタッフのインタビューは担当ライターが同じであったのか、『仮面ライダー THE FIRST VISUAL PREVIEW BOOK』(角川書店・05年12月1日発行・定価税込580円・ASIN:B00B4BFTWS)や、『ハイパーホビー』2005年11月号(徳間書店・05年9月30日発行)別冊付録の『仮面ライダー THE FIRST BEGINNING BOOK』とほぼかぶっていたので、それらを所有している人はわざわざ購入する必要はない(笑)。
 その劇場売りパンフにもあるように、『仮面ライダー』(71年)放映35周年を前に製作された本作は、当初は35周年を盛り上げるべく、昭和時代の仮面ライダーが総登場するお祭り的なオールスター映画の企画が発端だったらしい。ところが「原点回帰」の号令のもとに、今回のような昭和の仮面ライダー1号と仮面ライダー2号を中心とした故・石ノ森章太郎の原作漫画や、TVシリーズ第1作の特に初期編のイメージに近い作品へと方向転換したということだ。


 講談社『月刊マガジンZ』に好評連載中の村枝賢一による漫画『仮面ライダーSPIRITS(スピリッツ)』(01年1月号〜・ISBN:4063490548)の映像化をアニメでもいいから熱望する筆者としては、この事実を知ったときは「あ〜ぁ」と溜め息をつくばかりであった。たしか映画『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE』(03年・松竹)も当初の企画はウルトラマンが総登場するお祭り的なオールスター映画の企画であったと明かされていた。それが「ヒーロー大集合映画」ではなく「人類批判映画」(爆)へと方向転換したがために(もちろんそればかりが理由ではないものの・汗)、「それ見たことか!」とばかりにおもいっきり大コケしてしまったのであった。


 まぁそんなわけで、個人的にはお祭り路線とは真逆となった原点回帰志向の本作に対しては、個人的にはなにも期待はしていなかった。ウルトラシリーズファンに1960年代後半の第1期ウルトラシリーズ至上主義者が数多く存在するのと同様に、ライダーシリーズファンにも『仮面ライダー』第1作目の第1話~第13話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140501/p1)に相当する「旧1号ライダー編」至上主義者が厳然として存在する。そんなコアなファンを喜ばせるだけの作品だろうと思いこんでいた。
 全国的にも上映館はきわめて少なく案の定、筆者の地元である三重県では上映がない。果たして近隣の大都市である名古屋までわざわざ本作を鑑賞するために足を運んだかどうか? 幸か不幸かこの夏、転居した静岡では駅前の静岡ミラノで上映があることを知り、前売券を買いに行った。しかし、窓口の女性のあまりの態度の悪さに気分が悪くなり、「やっぱ観るのをやめようかな」と思ったものだった――映画館の窓口の女性がとにかくまぁ「私はオタクなんかと一切関わりたくないのよ!」と訴えているような態度であった(笑)。映画『ゴジラVSキングギドラ』(91年・東宝)を上映最終日の夜に新宿コマ劇場横の映画館(新宿コマ東宝)で観た際にも窓口の女性の態度がそんなふうであった。こういうのっていつまで経っても忘れられないんだよなぁ(汗)――。


 05年11月7日。当日は仕事が休みであったが、昼・夕・夜と一日3回上映のあるうちのあえて夜の回に行ってみた。どうせ暗い作風だろうからお天道様が出ている時間帯に鑑賞するのはふさわしくないだろうと考えたからである。観客は筆者を含めたった8人。「それ見たことか!」――ちなみに、筆者は平成ライダー作品も、日曜の朝にリアルタイムで観ていない。ああした作風の作品は個人的には深夜に楽しむのこそふさわしく、休日の朝はスーパー戦隊シリーズのような明るく楽しい作品こそふさわしいと考えるからである(笑)。


 だが、上映が始まって間もなく、「まさか?」と耳を疑うようなお馴染みのメロディーが流れてきた。


 ♪せまる〜、ショッカー〜、じごくのぐ~んだ〜~ん……


 子門真人が歌った主題歌『レッツゴー!! ライダーキック』である。まったく予想だにしなかった音楽演出である。やはり映像作品における音楽演出の効果は絶大なるものがある。これには思わずだらしなく椅子にもたれかけていた姿勢を正したものだ。


 幕開けに旧作の主題歌がかかるくらいだから、冒頭からしばらくはこれでもかと云うほどに旧作のエッセンスのオンパレードである。悪の秘密組織ショッカーによって改造されたことにより思わぬ力を得たことに苦悩する1号ライダー・本郷猛(ほんごう・たけし)、婚約者である克彦を殺害され、たまたま現場にいた本郷を犯人と疑う緑川あすかなど、単なるリメイク的な色合いが濃厚だったりするのだ(旧TVシリーズ序盤では父親である緑川博士を殺したのが本郷だと疑う緑川ルリ子といったドラマチックなシークエンスが登場するのだ)。


 だが、克彦とそっくりの顔をした2号ライダー・一文字隼人(いちもんじ・はやと)が登場するあたりから、物語は本郷と一文字の間で揺れ動くあすかといった昼メロかトレンディドラマの様相を見せ始める。筆者はそういう作品にはまったく関心がないのだが、スパイダー(クモ型怪人)に襲われたあすかを1号ライダーが救い、ライダー専用バイク・サイクロンの後ろに乗せて夜の街を走行する場面はなかなかロマンチックに感じられたものだ。旧1号編でも本郷がルリ子を乗せてバイクを走らせたことはあったが、「仮面の男」が女性をサイクロンに乗せて走ったことはなかったのだ。
 この時点ではあすかは1号が本郷であることを知らないのだが、あすかの「なぜ私を助けたの?」との問いに、1号が「俺はただ、美しいものを守りたいだけだ」とだけ答えてサイクロンで走り去っていく場面は男の子だけではなく、女性にも充分に「カッコいい!」と思わせるのではなかろうか?


 あすかはバット(コウモリ型怪人)にも襲われて、彼女を助けようと一文字が2号ライダーに変身したのを見て、スパイダーから自分を救ってくれたのが一文字であったのかと思ってしまう。……「オイオイ色が違うだろ!」というマニア的なツッコミはこの際ナシね。普通の女性にとっては1号も2号もスカイライダーも仮面ライダースーパー1(ワン)も全然区別がつかないのだから(笑)。


 まぁ、そのあとあすかの取り合いで1号と2号が戦うなどという井上敏樹作品らしい場面もあったが(笑)、本郷抹殺に失敗し、あすかを愛してしまったことから裏切り者としてショッカーに狙われるようになった一文字を本郷が救い、ショッカーにさらわれたあすかを助けるためにふたりが共闘するあたりからは「ダブルライダー」映画としての魅力が充分に輝いてくる。
 戦闘員にズラリと包囲された中でふたりのライダーが、変身するのではないのだがいわゆる「変身ポーズ」をバッチリと決めてから戦闘に入り、『仮面ライダー』第1作目のシリーズ後半で頻繁にあった1号ライダー&2号ライダー共闘編のように「ダブルライダーキック」まで披露してくれるのには心の中で拍手喝采である。


 また、本作には怪人が4体登場するが、井上敏樹の作品らしい妙にエキセントリックなバット、獲物を求めて街を徘徊するにはふさわしいタクシー運転手に変身しているスパイダーと、人間体もきわめて魅力的に描かれており、何を主張するわけでもなく、単に殺人を繰り返すだけの平成ライダー作品に登場する怪人たちとは一線を画しているのが嬉しいところだ。
 特にコブラとスネーク(共に蛇型の怪人)がよい。前者が誰も見舞いに来てくれないことから自暴自棄気味の入院患者の少年。後者は自分も余命いくばくもないのに少年に献身的に尽くしている重症患者の少女が、延命をはかるためにショッカーに改造されたという悲劇的な存在となっている。単なるやられ役にとどまらず、怪人側にもちゃんとドラマが用意されたことは今回の大きな収穫であった。


――コブラとスネーク怪人の少年と少女がデートを楽しむ場所は、2005年2月に名古屋に完成したパチンコ・観覧車・ファッション・グルメ(昭和ラーメン博物館もある)などが楽しめるアミューズメント施設であった。だが、そこは2002年9月に閉館した名古屋東映を取り壊してできた跡地なのである。同所は東映が経営なり土地を貸して借地料を取っている場所なのであろうか? ちなみに、名古屋東映の最終上映作品となったのは『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021104/p1)と『忍風戦隊ハリケンジャー シュシュッとTHE MOVIE』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021112/p1)の二本立て(02年・東映)であった――


 それにしても、『仮面ライダー』第1作のシリーズ中盤にレギュラー出演していたショッカー大幹部を演じた故・天本英世(あまもと・えいせい)を死神博士としてデジタル出演させてくれたり(これをやってくれるのであれば、欲を云うならば初代大幹部・ゾル大佐や3代目大幹部・地獄大使も出演させてほしかった!)、改造人間がその拒絶反応のために血液交換が必要であるなど(『仮面ライダー』第1作のシリーズ後半であるゲルショッカー編ではゲルショッカー戦闘員が一定時間内にゲルパー液を服用しないと自爆を遂げてしまうという描写があったことのオマージュ!)、旧作を知るものならば思わずニヤリの「これだけはハズせない!」ポイントを全編に散りばめていることは、多少脱線気味ではあっても「キチンと『ライダー』しているじゃん」と好感を持ったものだ。正直、近年の平成ライダー作品は作品そのものの評価は別として、あまりにも昭和ライダーのノリからは遠ざかってしまったことに淋しい思いもしていたので(汗)。


 また、あすかに「俺はただ、美しいものを守りたいだけだ」と語っていた本郷は、のちに学会の発表であすかに「先生の云う美しいものって何ですか?」と質問された際に「それは命です」と答えている。「美しいもの」がイコール「命」です……というのは一見、道徳的なようでもストレートにそれに直結するものではなかったりもする。ひとりの女性を救っておいて、その理由に「美しいものを守りたいだけだ」と発言するのも、冷静に考えると論理的には「答え」になっていない、はなはだ情緒的な回答なのである(笑)。しかし、それらの言動の映像的な象徴として、本郷が研究していた「水の結晶」が劇中何度もイメージ映像として描かれていることも幻想的ではあり、先のラブロマンス的な要素も含めて女性観客にも支持されること受け合いの映像演出ではあったと思える。


 いずれにしても、冒頭は「旧1号ライダー」編的な怪奇描写やマニアックな描写が中心かと思えば、中盤ではトレンディドラマが描かれて、後半はカタルシスたっぷりの「2号ライダー」編や「新1号ライダー」編的なダブルライダー共闘の娯楽活劇作品であったりと、本作自体の作風が劇中でそれこそ華麗に幾度も「変身!」を遂げており、観客を限定することなく幅広い層の支持を一応は期待できそうなつくりになっていた。デートムービーとしてだけでなく、これならば自分に息子がいたら一緒に観に行きたい。少なくともそう思わせてくれる作品ではあった。

2005.11.14


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年準備号3』(05年11月20日発行)〜『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)所収『仮面ライダーTHE FIRST』合評1より抜粋)


『假面特攻隊2006年号』「仮面ライダーTHE FIRST」関係記事の縮小コピー収録一覧
・下野(しもつけ)新聞 2005年11月4日(金) くらすαアルファー「元祖!イマコレ」ヒーロー原点回帰 活躍と苦悩の物語 映画「仮面ライダー」 〜世代人記者の映画紹介
・読売新聞 1972年1月29日(土) 家庭欄「家庭」仮面ライダー人気の秘密 苦労せずパッと変身 うける早いアクション 〜大人気・学会が児童へドコに惹かれたかをアンケート・調査した女子大生いわく「見る側の子供に主体性が感じられない」「よく見てるけどショッカーに関してまるで知らない。何を見てるの?」(大意)
・読売新聞 1972年10月9日(月) 仮面ライダー過熱の童心 カード集め、中身ポイ 団地のゴミ箱、菓子の山 道徳心どうなる都教育庁が調査へ 〜スナック1袋20円につき1枚のカード・ラッキーカードで72枚収容のアルバム、児童評論家・阿部進は「押えても効果ない」6年前はオバQ・おそ松くん、その前は鉄腕アトムでこの種の遊びは周期的に現れる、今の子は本当の遊びを知らない、メンコのように生かして使う教育が必要。(自称・怪獣カバゴンこと阿部進は永井豪のマンガ『ハレンチ学園』(68〜72)を擁護したことでも有名な異色の教育評論家)


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