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仮面ライダーX総論 〜公私葛藤描写の先進性!

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『仮面ライダー』シリーズ評 〜全記事見出し一覧



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 映画『平成ライダー昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat. スーパー戦隊』 ソフト化記念!
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 ……なぞとカコつけて(汗)、『仮面ライダー』第1作〜『仮面ライダーJ』までの昭和ライダーシリーズ各作評を、順次UP中!


仮面ライダーX』総論 〜セタップ! 仮面ライダー

(文・久保達也)
(2014年3月執筆)


 早いもので、『仮面ライダーX(エックス)』(74年)の放映から2014年で「40周年」を迎えた。
 映画『平成ライダー昭和ライダー 仮面ライダー大戦(たいせん) feat.(フィーチャリング) スーパー戦隊』(2014年3月29日公開)において、仮面ライダーX=神敬介(じん・けいすけ)がメインキャラとして大きく扱われているのは、やはり2014年が『X』にとって、アニバーサリーイヤーであることも大きいかと思われる。


 『仮面ライダーV3(ブイ・スリー)』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140901/p1)が『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)からの地続きの物語として描かれ、その世界観をほぼ踏襲(とうしゅう)していたのに対し、『X』はそれを一新し、各種設定にさまざまな意欲的な試みが取り入れられていた。
 それらは40年を経た現在の観点からしても斬新(ざんしん)に見えるものが多く、中には平成ライダーの設定を先取りしていたのでは? と思えるものもあるくらいだ。
 そこで今回は、『X』放映40周年を記念し、いささか駆け足ではあるが、それらについて振り返ってみたい。


*「セタップ!」(変身)とライドル(武器)導入の先進性!


・本郷猛(ほんごう・たけし)=仮面ライダー1号
・一文字隼人(いちもんじ・はやと)=仮面ライダー2号
・風見志郎(かざみ・しろう)=仮面ライダーV3


 それまでのライダーたちは、皆一定の変身ポーズをとることで変身ベルトの風車が回転し、ライダーへの変身を遂げるというパターンが踏襲されていた。


 日本壊滅を狙う謎の秘密機関GOD(ゴッド)は、人間工学の権威であった神啓太郎(じん・けいたろう)教授の研究レベルの高さに着目、協力を要請するが、それを拒否したため、息子の敬介共々、GODに殺害されてしまう。
 瀕死(ひんし)の神教授が、自らの命を犠牲にして行った改造手術により、敬介は深海開発用改造人間=カイゾーグとして蘇り、仮面ライダーXとなって、GODの野望を阻止せんと、敢然(かんぜん)と立ち向かうのである!


 その変身についてだが、敬介の変身時の掛け声「セタップ!」は、「セットアップ」の略である。
 敬介は変身ベルト以外にも、レッドアイザーとパーフェクターと称する、小型アイテムを併用(へいよう)してXに変身する。
 敬介が「セタップ!」と叫ぶと、その時点で顔以外の全身は既にXの姿となるのだが、右手に持ったレッドアイザーから左右のマスクが順に装着され、左手に持つパーフェクターを口の部分にはめることで変身を遂げるのである!
――「ヤーッ!」と叫んだ時点で顔以外がライダーマンの姿となり、マスクをかぶることで変身していた結城丈二(ゆうき・じょうじ)=ライダーマンの変身は、これのテストパターンであったようにも思える――


 近年の平成ライダーを振り返れば、


・『仮面ライダーオーズ』(10年)のメダル
・『仮面ライダーフォーゼ』(11年)のスイッチ
・『仮面ライダーウィザード』(12年)の指輪
・『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)の錠前


と、変身時に変身ベルト以外のアイテムを併用するのが当然になっている。
 だが、昭和ライダーでそうしたものが登場したのが実質『X』のみとなったことを思えば、平成ライダー変身パターンの先駆けとなったのが、まさにこの『X』の「セタップ!」だった、とさえ思えるのである!


 空中からどデカいフルーツが降りてきて、キャラの顔にカポッ、とはまり――文章だけだと、完全にギャグだなこりゃ・笑――、さらに全身にアーマーが装着されるという、『鎧武』に登場する各ライダーの変身は、まさにこの「セタップ!」の踏襲そのものではあるまいか?


 そういえば初期平成ライダーのヒットにより、00年代初頭から半ばにかけ、バンダイから『装着変身』シリーズと称して、昭和から平成に至るライダーたちの可動フィギュアが発売されていたものである。
 そうした玩具性・メカニック性、さらにはマーケティング性をも、Xライダーの「セタップ!」は時代を先取りしていたかのようにも思えるのである!


 そして仮面ライダーの代名詞であった「ライダーキック!」以外にも、『X』ではライドルと称する武器が新たに加わった。
 通常は変身ベルトの脇に装備されており、これを引き抜き、4つのボタンを押すことにより、ライドルスティック(棒術)、ライドルホイップ(短剣)、ライドロープ(敵を捕獲するロープ、あるいは電磁ムチとして使用)、ロングポール(そのまんま・笑)に変化するという、万能武器である!


 登場するやライドルを引き抜き、ライドルホイップで「X」の文字を宙で切り刻み、その残像が合成される中、


「Xライダー!」


と見得(みえ)を切るXの名乗りは、バツグンにかっこいい!


 ライドルの各種変形の中でも、主に多用されたのがライドルスティックとライドルホイップであったが、『X』の企画書には


「彼の戦闘法の主なパターンは、剣法的な戦いとなります」


との記述がある。


 実際には最初の『仮面ライダー』の時点において、第8話『怪異! 蜂女』で旧1号ライダーが戦闘員から奪った短剣を使い、秘密組織ショッカーの女怪人・蜂女(はちおんな)と見事な剣術を演じるなど、既にこうしたアクション演出は何度も行われてはいたが、『X』ではこれをメインで描こうとしたのである。
 もっとも昭和ライダーの殺陣(たて)を担当していたのが、時代劇でのアクションを多く手がけていた大野剣友会(おおの・けんゆうかい)であったことを思えば、これは至極(しごく)自然な流れでもあったのだろう。


 また70年代前半に加熱した「変身ブーム」において、圧倒的な強さを誇っていた『ライダー』ではあったが、インパクトの強い新必殺技を導入することにより、乱立する変身ヒーロー作品と少しでも差をつけよう、とする狙いは当然あったことと思われる。


 さらにライドルはそのまま武器として使用するばかりでなく、やはりライダーの代名詞である「Xキック!」に華(はな)を添えるためにも使われていたのである!
 ライドルスティックを空中高く放り投げ、それを鉄棒代わりにして回転することで加速をつけ、空中で全身を「X」字に広げる――ここでもXライダーの全身に「X」の文字が合成される!――ことでエネルギーを集中、そこから「Xキック!」を蹴りこむという、実に派手で豪快な、極めてインパクトの強い必殺技を描くことにも、このライドルは貢献していたのである!


 昭和ライダーでは剣術をメインにしたアクションは、『X』以外では『仮面ライダーBLACK RX』(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090726/p1)において、RXがやはり変身ベルト・サンライザーから引き抜いて使用した光の剣・リボルケイン、RXが二段変身したバイオライダーの剣・バイオブレードが描かれたにとどまっている。
――なんと『RX』ではリボルケインが「決め技」として使われ、「RXキック!」はリボルケインで怪人にとどめを刺す前に使用するという「逆転現象」が起きていた!
 これはやはり、『宇宙刑事』シリーズ(82〜84年・東映 テレビ朝日)にはじまるメタルヒーローシリーズの影響が濃厚だったことがうかがえるが、こうした作品の本質とは関係のない描写が、『RX』に対する当時のマニアの評価を低くする一因ともなっていたのである。
 バイオライダーやロボライダーにタイプチェンジするという、まさに平成ライダーの先駆けとなった設定すらもまた然(しか)り。
 そうなんですよ。やはり80年代のマニアって、そうだったんですよ、川崎さん!・爆(80年代に流行った当時の某・芸能レポーターの言い回しです・汗)――


 だが平成ライダー諸作品においては、主人公ライダーが剣術アクションを披露するのが当然となり、ある意味「ライダーキック!」以上にインパクトが強く見えるほど、バトルに華を添える存在と成り得ているが、これも元祖はやはり、『X』のライドルなのである。


*GODの神話怪人、アポロガイスト=ダークヒーロー登場の先進性!

 昭和から平成に至るまで、ライダー怪人といえば動植物がモチーフというイメージは世間に根強いだろうし、実際大半の怪人がそうである。
 しかしながら、『X』では敵組織の名称がGOD――Government Of Dark(闇の政府)の略称――=神であることからか、ギリシャ神話に登場する神々や怪物の姿を、怪人のモチーフにしているのである。
 現在の観点では優れたデザインに見えるのだが当時、筆者に限らないと思うが小学校低学年でリアルタイムに見た際は、馴染みの薄いモチーフでいささか抽象的に見えてしまい、Xライダーの派手さに比べるといまいちインパクトが薄いように感じてしまったのも事実である。


 だが90年代以降、ゲームの世界では神話をモチーフにした世界観やキャラクターがさまざまな形で登場し、現在ではすっかり世間に浸透しているのである。
 それからすれば、このGODの神話怪人こそは、まさに「早すぎた傑作」であり、現在であれば、世間に十分に受け入れられると思われるのである――だから『仮面ライダー大戦』でGOD怪人も復活させてほしかった!――。


 また、


・『仮面ライダークウガ』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090907/p1)に登場した敵集団・グロンギが、超古代の戦闘民族として設定されたことから、動植物をモチーフにしながらも、どこか神話風に見える衣装を身につけた姿で怪人がデザインされていたり、


・『仮面ライダーウィザード』で人々の精神世界=アンダーワールドの中に登場したファントム――ここでは怪人というよりは「怪物」の姿で描かれた――が、海外ファンタジー作品に登場しそうなクリーチャー、それこそ神話に登場しそうな怪物の姿であった、


などを思えば、GODの当初の怪人が神話をモチーフとした選択自体は、決して誤りではなかったと考えられるのである。



 さて、第8話『怪!? 小地球・中地球・大地球』から第21話『アポロガイスト最後の総攻撃!!』に至るまで、GOD秘密警察第一室長・アポロガイストが登場する!
 言うならば悪の組織の大幹部であるわけだが、『ライダー』のショッカーやゲルショッカー、『V3』のデストロンなど、幹部たちは時折前線で怪人や戦闘員の陣頭指揮をとることはあっても、基本的にライダーとの戦闘には加わらず、怪人に変身して戦うのは自らの進退を賭け、ライダーとの最後の決戦に挑むときのみにとどまっていた。


 だがアポロガイストは、赤い鉄仮面のマスク、右手にアポロショットなる銃を、左手にガイストカッターなる盾(たて)を装備しているという、最初から戦闘モードとしてデザインされていること自体、それまでの大幹部とは一線を明確にしていたのである。


 さらにアポロガイストは人間体としても登場するが、常に白のスーツをビシッと着こなす、ダンディーなキザ野郎として描かれているのだ。しかも、そのスーツ姿のままでバイクを乗りこなしたりもする(笑)。
 そのスタイルはレイモンド・チャンドラーの小説を愛読し、常に立ち居振る舞いにハードボイルドを気どっている、『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)の主人公・左翔太郎(ひだり・しょうたろう)の姿に近いものがあるのだ。しかしアポロガイストは、往年の名優であるハンフリー・ボガードみたいな帽子はかぶったりはしない(笑)。


 で、翔太郎はキザでも実はめちゃめちゃ「いい人」だったりするのだが、アポロガイストの方は、たとえば


・第11話『不死身の水蛇怪人ヒュドラー』の冒頭において、GOD怪人ヒュドラーが一般市民を殺害している現場にバイクで乗りつけ、「つまらん遊びはやめろ!」とだけ吐き捨てて去っていったりとか、


・話数は失念したが、昭和ライダーの世話役として第1期ライダーシリーズを通して登場していた立花藤兵衛(たちばな・とうべえ)が経営する喫茶店フラリと現れ、アポロガイストを敬介の友人だと思いこんだ立花のおやっさんが、


立花「どうです。腕によりをかけたコーヒーの味は?」


と声をかけると、アポロガイストは「フン」と鼻で笑い、


アポロガイスト「ま、こんなものですかな」


などと、あからさまにバカにした様子であったりと、もうメチャメチャ気分が悪い奴だったりするのである(笑)。


 終始こんな調子だから、GODの怪人たちとも折り合いが悪かった。
 こうしたキャラは昭和ライダーの中では極めて異色であり、ほかには『仮面ライダーストロンガー』(75年)の敵組織・ブラックサタンの大幹部であるタイタンが、やはりキザったらしい紳士として、黒いスーツ姿の人間体が登場していた例があるくらいだ。


 だが、そうしたエキセントリックなキャラクターとか、敵組織の中で幹部たちが対立を繰り返すとか、人間体の幹部が初期段階から怪人に変身してライダーとしょっちゅうバトルを演じるとかは、平成ライダーにおいてはもはや定番で描かれていることなのである。
 そうした原点をも、このアポロガイストには見いだすことができるのではなかろうか。


 アポロガイストは第14話『アポロガイストくるい虫地獄』で一度倒され、第15話『ゴッド秘密基地! Xライダー潜入す!!』〜第16話『逆襲アポロガイスト! Xライダー危うし!!』の前後編で再改造されて復活し、第21話『アポロガイスト最後の総攻撃!!』で再度倒されるまで登場し続ける、特撮ファンの記憶に残る名ライバルキャラクターとなり、後年の『仮面ライダーディケイド』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090829/p1)終盤でも大ショッカーの大幹部としてリメイクされたほどだ。


*水城涼子=「恋人」登場、公私葛藤の先進性!

 『ライダー』における本郷と緑川(みどりかわ)ルリ子、『V3』における風見と珠純子(たま・じゅんこ)など、なんとなく恋愛関係を思わせるような主人公とヒロインの描写も、これまでまったくなかったわけではない。
 だが、いかんせん「子供番組」である以上、そうした面が直接的に描かれることはないままに終わっていた。
 しかしながら、『X』第8話まで登場していた水城涼子(みずき・りょうこ)は、明確に敬介の恋人であり、許嫁(いいなずけ)である、とまで設定されていたのである。


 神教授の助手であった涼子は突然教授や敬介を裏切り、GODの工作員として暗躍することになるが、涼子は実は国際秘密警察の潜入調査員であり、その行動はGODの秘密を探るためだったことが明かされる。
 カイゾーグとなって肉体が強化された敬介ではあったが、涼子の裏切りに耐えられるほど精神面も強かったわけではない。
 GODによる事件が起きているにもかかわらずに涼子のあとを追い続け、涼子の双子の妹・霧子(きりこ)に、それをとがめられる姿までもが描かれていたのだ。



 主人公のこうした姿は、近年では『仮面ライダーウィザード』最終展開において、ウィザード=操真晴人(そうま・はると)が恋人――と解釈してもさしつかえないだろう――・コヨミの命を救うことを、絶望してファントムを生みだそうとしている人間(=ゲート)を守ることよりも優先してしまいそうになる形で描かれていたものである。
 こうした「公(おおやけ)」よりも「個」を優先させてしまうヒーロー像は、平成ライダーをはじめ、近年の作品に多い傾向であると思われがちであるが、実は早くも『X』ではそれが描かれていたのである!


 しかも、企画書では劇中のように、涼子の正体が国際秘密警察などではなく、


「GOD工作員は、頑(がん)として断り続ける教授に業(ごう)を煮やして、遂に涼子にその矛(ほこ)先をけたのだ。巧みな脅迫に切羽(せっぱ)詰まった涼子は、遂にその手を汚してしまったのだ」


と、本当に神教授と敬介を裏切ったことになっており、


「恋人を裏切った苦悩の涼子を追い求める敬介の、人間でない人間の苦悩」


などと、当初の『X』では改造人間としての苦悩ばかりではない、二重の苦悩を背負ってしまった敬介が、つい恋人(=「個」としての欲望)の方を追い求めてしまうという、当時としては実に濃厚な「人間ドラマ」が描かれようとしていたのである。


 だが……


*見よ! Xライダーの「大変身」=大きな路線変更!!(笑)

 昭和ライダーに限らず、故・平山亨(ひらやま・とおる)がプロデューサーを務めた60〜70年代の東映ヒーロー作品では、故・伊上勝(いがみ・まさる)に第1話の脚本を任(まか)せるのが常であった。


 だが、『X』の第1話『X.X.Xライダー誕生!!』の脚本を担当したのは、この2014年に劇場作品としてリメイクされる『人造人間キカイダー』(72年・東映 NET→現テレビ朝日)に途中参加、伊上降板後にメインライターとなって大いに作品を盛り上げた、のちにあまたの一般向けテレビドラマで名をなす脚本家・長坂秀佳(ながさか・しゅうけい)であった。
 このことからしても、『X』は従来のライダーとは、ガラリと趣(おもむき)を変えようとしていたことがうかがえる。


「いや、あまりにも変えすぎたから、やっぱり元に戻そうということになったんじゃないかと思うんだよね。オレとしては変えてるつもりじゃないんだけど、前の『仮面ライダー』を観てないからさ(笑)。――中略――
 やっぱり、(オレの)態度が悪かったんじゃない?(笑) それで降ろされたんじゃないかと、オレは勝手に思ってるんだけど」

(「消え去る設定と長坂秀佳」・「果てしなき闘いのドラマ」〜『仮面ライダー』脚本家列伝〜・『KODANSHA Official File Magazine(こうだんしゃ・オフィシャル・ファイル・マガジン) 仮面ライダー Vol.5』講談社 04年11月10日発行・ISBN:4063670945


 『キカイダー』で主人公のジローとヒロインのミツコによる恋愛ドラマを描いた長坂が第8話で降板したことで、涼子と霧子はGODに殺害され、敬介との人間ドラマには終止符が打たれることになる。


 これが決定したのは74年2月12日に行われた最初の制作会議の席上だったそうだが、『X』の放映が開始されたのは、その4日後である2月16日土曜日なのである。
 つまり、放映前に第1話が関係者の間で試写が行われた時点において、早くも大きな路線変更が決定していたのであり、現場の混乱ぶりがうかがえようというものだ。
 ライダーに新しいフォーマットを築くという試みは、そうたやすいものではなかったというところであろう。


「もう有名な話ですけど、彼女――涼子と霧子を二役で演じた美山尚子――とは『X』が終了して1年くらい経ったころに結婚しました。もちろん、共演していた当時は何もなかったんですよ(笑)。
 ただ彼女、シリーズの路線変更の都合で急遽(きゅうきょ)レギュラーからはずれることになって、そのことを先に聞いていた僕は、なんだかかわいそうになっちゃってね。
 それで、彼女を励まそうと、『X』の撮影が終わるころからつきあいはじめたんです。だから、もし彼女が降板していなかったら、今の自分の人生はなかったかもしれませんね」

――「主演俳優の素顔7」速水亮(はやみ・りょう)・出典同上――


 『X』では成就(じょうじゅ)することのなかった敬介と涼子の「人間ドラマ」は、『X』終了後に現実世界で描かれることとなったのである。めでたしめでたし。


*アイテム争奪戦! 『ライダー』以前、時代劇ヒーローへの回帰! 「伊上」節炸裂!

 結局は『X』にも伊上がメインライターとして返り咲くことになるのだが、長坂が降板した次の回である第9話は『Xライダー必殺大特訓』!
 もういきなり昭和ライダーの定番話である(笑)。


 だが、なんといっても、伊上が『X』で本領を発揮するのは、第22話『恐怖の大巨人! キングダーク出現!!』以降の展開ではないだろうか。
 アポロガイストがXに敗れると同時に、GODの新幹部・キングダークがその巨大な姿を現した!
 キングダークはGOD科学開発局長・南原(なんばら)博士に命じ、地球上のすべての物質を極分子にしてしまう悪魔の兵器・RS装置を開発させる。


 だが、それをGODに悪用されることを恐れた南原博士は、その設計図を9枚に分断し、1枚を手元に残し、残りを各地に住む友人たちに郵送で託すが、博士はGOD怪人サソリジェロニモに処刑されてしまう。
 RS装置を体内に組みこむことでキングダークが無限に活動できるようになることから、GOD悪人軍団は南原博士の友人たちを執拗(しつよう)につけ狙い、設計図を奪ってRS装置を完成させようと暗躍する。
 それを阻止せんと、RS装置の設計図を守り、悪人軍団と激闘を繰り広げるXライダー!


 これこそまさに、吉川英治(よしかわ・えいじ)の時代小説『鳴門秘帖(なるとひちょう』(1926年・大正15)に始まり、伊上が『隠密剣士(おんみつけんし)』(62年・宣広社 TBS)や『仮面の忍者 赤影』(67年・東映 関西テレビ)など時代劇ヒーロー作品で繰り返し描いてきた「秘宝争奪戦」であり、氏の真骨頂(しんこっちょう)なのである!


「親父のシナリオって、紙芝居的なんですよね。おいしいとこだけ羅列(られつ)するというか、シーンのつながりに理屈がないわけです。
 あの人は昔っから紙芝居が好きで、中学の時、自分で描いた紙芝居を、先生に頼まれて授業中に読んでたような人なんです。たぶん、その手法のまま(シナリオを)書いていたんじゃないかな」

――井上敏樹(いのうえ・としき)・「果てしなき闘いの日々」――


「『赤影』なんかは、もちろん横山光輝(よこやま・みつてる)さんの原作があるわけだけども、1クールごとに、やれ霞谷(かすみだに)七人衆だ、やれ根来(ねごろ)十三忍だって、ころころ敵が変わるでしょ。
 ああいうところは全部、伊上さんにお任せ。あの人はそういうの、うまいんだよね。誰かが“『隠密剣士』にもこんな話あったぞ”なんて言ってたけど、そんなのは構わないんだよ。面白けりゃいいんだから(笑)」

――平山亨・「果てしなき闘いの日々」――


 「紙芝居的」、そして、「面白けりゃいい」。
 これらは良くも悪くも、まさに昭和ライダーを象徴した表現ではなかろうか。



「まず、設定ありき。そこにある設定を最大限に活かすというのが、オレの姿勢なんだよ」

――長坂秀佳・「果てしなき闘いの日々」――


 そんな長坂が、「紙芝居的」で「面白けりゃいい」をモットーにしていた昭和ライダーと、相性が合わずに早々に降板してしまったのは、ある意味必然だったのかもしれない。
 70年代前半という時代において、昭和ライダーの基本フォーマットは、新しい要素が入りこむ余地がないほどに、まさに「伊上勝の世界」として既に完成してしまっていた、と言っても過言ではないのではなかろうか。



 「伊上勝の世界」を象徴する「秘宝争奪戦」が展開され始めるや、『X』は設定や世界観が、ますます「伊上勝の世界」一色に染まっていくことになる。


 まずGODの怪人デザインが、神話に登場するキャラをモチーフにした抽象的なものから、従来通りの動植物と、古今東西、実在・架空を問わない悪人をかけあわせた「悪人軍団」へと変更される。
 ジンギスカンコンドル、ガマゴエモン、カブト虫ルパン、ヒトデヒットラー、カメレオンファントマ、アリカポネ、ムカデヨウキヒ、タイガーネロ……
 正直「悪人」と呼んでいいのか首をかしげる人物も含まれているし(笑)、コウモリフランケンやヒルドラキュラなんて、「悪人」というより単なる妖怪じゃねぇか! と、既にリアルタイム視聴時につっこんでいたのだが(爆)、こうした発想などは、まさに「面白けりゃいい」の典型ではなかろうか。


*「セタップ」→「大変身」! 「真空地獄車」!

 そして、第28話『見よ! Xライダーの大変身!!』において、怪人クモナポレオンに敗れた敬介は、仮面ライダーV3=風見志郎によってマーキュリー回路を移植され、パワーアップを果たすことになる!
 これにより、「セタップ!」は従来の変身のように、シンプルなアクションポーズによる「大変身!」となったのである!


 今思えば、1号・2号・V3の変身は再三マネて遊んだ記憶があるのに、ライダーマンやXの変身をマネた記憶がほとんどない(笑)。
 現在であれば、それこそバンダイから音声ユニットを内蔵した、リアルなレッドアイザーとパーフェクターが付属した変身ベルトが発売されるのであろう。
 しかし、当時ポピー――83年にバンダイに吸収合併――から発売された変身ベルトにはそこまでの機能はなかった。
 それ以前に当時としては、ゆっくりとタメて最後にスパッと力強く締めて見得(みえ)を切るような変身ポーズよりも、カット割りした映像で変身過程を見せることを主眼とした「セタップ!」は、子供のごっこ遊びではマネをしても決まりにくくて盛り上がりにくかった、という理由が大きかったのであろう。



 さらにXライダーはパワーアップにより、超強力必殺技として、「真空地獄車!」が新たにそのラインナップに加わった!


「『柔道一直線』(69年・東映 TBS)にもそんな技あったぞ」
「そんなのはかまわないんだよ。面白けりゃいいんだから」(笑)


 伊上は参加してはいなかったが、大野剣友会がアクロバティックなアクションを披露し、平山がプロデューサーを務めていた『柔道一直線』において、主人公の一条直也(いちじょう・なおや)の必殺技であった「地獄車」が、なんとXライダーの新必殺技として採用されたのである!
 怪人を抱えこんで高速回転し、怪人の頭部を何度も地面に打ちつけ、戦意を喪失(そうしつ)させたところにXキックでとどめを刺す! という荒技であり――こうして書くと、結構グロい技だな・笑――、バリエーションとして「空中地獄車!」「地獄車キック!」なども編み出している。


*歴代ライダー続々客演! ライダー総登場の劇場映画も製作!

 敬介を助けに第28話で風見=V3役で宮内洋(みやうち・ひろし)が出演したのに続き、第33話『恐怖! キングダークの復しゅう!!』、第34話『恐怖の武器が三人ライダーを狙う!!』では、宮内のほか、一文字隼人=2号ライダーを演じた佐々木剛(ささき・たけし)も出演し、Xライダーと共闘を果たしている!


 意外なことであるが、実はこれはテコ入れのためではなく、既に企画書の中に、


「第5回以降、このシリーズのライダーたちが時に応じて応援登場します」


と、「特記事項」として記述されているのである!


 これはやはり、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)や『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)に歴代ウルトラマンが単独、もしくは勢ぞろいして頻繁(ひんぱん)に登場していたことが、児童間で大きな注目を集めていたのを強く意識したもの、と解釈してもさしつかえなかろう。


 その割には歴代ライダーが登場したのが、放映も終盤に入ってからというのは遅すぎる気がするが。
 ウルトラとは違い、ライダーではゲストとはいえ、変身前の役者も出演させ、変身場面を演じさせねばならない、というこだわりが強かったためではなかろうか? と推測する。
 特に本郷=1号ライダーを演じた藤岡弘(ふじおか・ひろし)は、『X』放映当時は既にかなりメジャーな俳優となっており、数多くの映画・テレビドラマに出演していたため、スケジュール調整は相当困難だったと思われる。
 結城=ライダーマンを演じていた故・山口暁(やまぐち・あきら)は、『X』放映当時は『電人ザボーガー』(74年・ピープロ フジテレビ)に、主人公の大門豊(だいもん・ゆたか)として主演していたほどであり、歴代ライダーの客演が少ない結果となったのは、主にそうした事情によるところが大きかったのではなかろうか。



 ただし、ちょうどキングダーク編が展開されはじめた頃である、74年7月25日に『東映まんがまつり』として公開された映画『五人ライダー対キングダーク』では、歴代ライダーの変身場面を、これまでの劇場版から流用することで見事に実現させている。
――風見の変身場面は映画『仮面ライダーV3対デストロン怪人』(73年・東映)からの流用であり、そのロケ地であった四国の寺が背景に映ってしまっているが・笑――


 また、1号・2号・V3の声は、藤岡・佐々木・宮内がかろうじてアフレコには参加できたことにより、たとえ変身場面が流用でも、なんとか納得がいく仕上がりとなっている。
――山口だけはアフレコすら無理だったようで、ライダーマンは『ライダー』ごく初期の旧1号ライダーの声や、多くの怪人の声を演じていた池水通洋(いけみず・みちひろ)が担当した――


 この映画もやはり脚本は伊上によるものだが、東京中の水を枯らしてしまおうとする「東京カラカラ作戦」(笑)実行のため、GOD怪人が暗躍するのを各地で子供たちが目撃、その危機に1号、2号、ライダーマン、V3が順に駆けつけ、Xと合流するという流れは、まさに「紙芝居」的であり、血湧(わ)き肉踊る展開である!


 そして、この映画で実現した「5人ライダー」に触発されてか、『仮面ライダーストロンガー』の初期案は5人の新ライダーが登場するものとなったが、毎日放送が難色を示したことからいったんお蔵入りとなり、のちに『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年・東映 NET)として立派に昇華(しょうか)したのである!
 もしこの映画がなかったら、「スーパー戦隊」シリーズ自体が存在しなかったのでは? と考えると、まさにこの『五人ライダー対キングダーク』は、「記念碑(ひ)」的作品として位置づけられるべきなのである!


 ただ、「伊上勝の世界」であるこの映画に、ヒロイン役で出演しているのが、『キカイダー』でミツコを演じていた水の江(みずのえ)じゅんであるというのは、なんとも不思議な因縁(いんねん)である(笑)。


*『仮面ライダーX』が特撮ジャンルに残した成果!

 『X』が企画当時、方向性を従来と様変わりさせたのは、やはり『マジンガーZ(ゼット)』(72年・東映動画→現東映アニメーション フジテレビ)の大ヒットによってスーパーロボットアニメブームが巻き起こり、変身ブームが下火に向かっていた、という当時の背景が大きく影響したようである。
 当初は立花藤兵衛すらも登場しないどころか、これまでの『ライダー』の世界観とのつながりを完全に断つ、というプランさえあったらしい。


 だが先にあげたように、一見過去の『ライダー』とはつながらない形でスタートしたかに見える『X』ではあったものの、最終的には歴代ライダーが時折出演するという、これまでの世界観を残す形にしたのは、やはり「大英断」であったように思えるのだ。


 これにより、テレビシリーズでは終盤に至るまで歴代ライダーの客演はなかったものの、講談社『テレビマガジン』や徳間書店『テレビランド』などでは、『X』単独の扱いではなく、従来のシリーズの世界観をひとつにした形の特集が組まれることになる。
 「5人ライダー」として強くアピールされるグラビアが掲載されたことが、変身ブームをかろうじて延命させることに貢献したのである。


 もし『X』が過去の『ライダー』とのつながりを完全に断ち切っていたならば、V3がXをパワーアップさせることもなく、「東映まんがまつり」では『X』単独の映画が公開されていたことになる。
 いや、「5人ライダー」という、強力なウリがなければ、ただでさえ変身ブームが下火になっていた中、新作映画が製作されるどころか、テレビのブローアップ版の上映で済まされていたかもしれない。
 それでは『ゴレンジャー』どころか、次回作『仮面ライダーアマゾン』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090809/p1)、ひいては平成ライダーだって存在しなかったのかもしれないのである。


 変身ブームが衰退し、競合作品が減少の一途をたどる中、一時の勢いはおとろえたとはいえ、『X』が奮闘してくれたからこそ、『アマゾン』『ストロンガー』も生み出されたのである。
 それこそが、今日(こんにち)に至るまで、仮面ライダーを「現在進行形」の変身ヒーローとして存在させてくれている、とさえ思えるのだ。



 『X』に限らず、70〜80年代の変身ヒーロー作品では、なんらかの形で路線変更を余儀(よぎ)なくされたものが実に多く、かつてはそのことをマニアからうるさく批判されることが多かったものである。
 だが個人的には、前期・中期・後期で、あまりにも作品の印象がコロコロ変わってしまう『X』こそ、クールごとに敵組織の幹部が代わったり、ヒーローのパワーアップが描かれた「伊上勝の世界」を最大に象徴する作品であると思えて、まさに「紙芝居」的な魅力を感じるのである。


 紙芝居は、1枚紙をめくればガラっと絵が変わってしまう。だからこそ、続きが見たくてたまらなくなるのであり、いつまでも飽きることがないのである。
 それがまさに、伊上勝の「巧(たくみ)」の技であったように思えるのである。
 そうした観点から『X』を再度観直せば、これまで気がつかなかった魅力も感じられるのではなかろうか。


2014.3.31.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2014年春号』(14年4月13日発行)〜『仮面特攻隊2015年号』(14年12月28日発行)所収「『仮面ライダーX』回顧」より抜粋)


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