(東京MXテレビ・毎週日曜18:30の円谷劇場にて『ウルトラマンネオス』放映「全話評」連動連載!)
『ウルトラマンネオス』最終回(#12)「光の戦士よ永遠に」
『ウルトラマンネオス』#1「ネオス誕生」
『ウルトラマンネオス』#2「謎のダークマター」 〜ザム星人・初登場!
『ウルトラマンネオス』#6「ザム星人の復讐」 〜ザム星人・再登場!
『ウルトラマンネオス』1995年版 〜Wヒーローならテーマへの多角的アプローチが可! 防衛隊も巨大ロボを持て!
『ウルトラマンネオス』全話評 〜全記事見出し一覧
#11「宇宙からの暗殺獣」
怪獣(暗殺怪獣)グラール登場
(表記のほか脳魂宇宙人ザム星人・究極進化帝王メンシュハイト人間体登場)
(脚本・武上純希 監督&特撮監督・高野敏幸)
(視聴率:関東・未放映 中部・未放映 関西2.2%)
(文・内山和正)
(02年11月執筆)
1995年のパイロット版(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971115/p1)や本作2話「謎のダークマター」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120304/p1)や6話「ザム星人の復讐」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120401/p1)に登場した脳魂宇宙人ザム星人。
その盟主を名乗るメンシュハイト。
彼が放った、全身が金色に輝き鋭角状の突起やウロコに覆われた赤い四つ目の暗殺怪獣グラールにより、なぜか日本の山岳地帯に潜んでいたザム星人の円盤が攻撃される。
このグラールには劇中でも言及されている通り、宇宙を漂う暗黒物質ダークマターの影響で突然変異・怪獣化した生物の優秀な部分を合成して造られているとの、終盤の強敵としてふさわしい魅惑的な設定が与えられている。
ひとりのザム星人が巨大化して立ち向かうも、猛烈なグラールにはなす術(すべ)もなく、グラールの頭部の3本角(ヅノ)からの黄色い強烈な電撃によって爆発四散した!
本作主題歌オープニング映像にも登場して、2話ではザム星人の生き残りを搭載していると語られた独特の形状をした円盤が、グラールの次の標的だ。
防衛組織HEART(ハート)の戦闘機が応戦に駆けつけるも、彼らの制止もやむなく、グラールは口から吐く火球でザム星人の円盤を破壊した!
ザム星人は全滅した。
ただ一人生き残ったザム星人の少年と、彼が託されたザム星の種族10億人がいつの日かよみがえるためのシード(種(たね)=DNA情報)を残して……。
HEARTは山中に生命反応を検知。
我らが主人公カグラ隊員とナナ隊員は捜索を行い、人間の姿をして倒れていた気絶した少年を保護して、HEART基地内の病院に収納して精密検査を受けさせた。
彼の血液は地球人のものではなく、ザム星人の生き残りである可能性も疑われた……
2話ではザム星人のリーダーが
「我々はウルトラマンのように地球人に変身できない(大意)」
と語っていたはずなので、この人間の姿をしたザム星人の少年の存在は設定的には不整合であるのだが、彼だけが例外で変身能力を持つというような説明が、尺の都合でカットでもされたのであろうか?
(まあ設定がその場その場で適当になってしまうのは、ジャンル作品ではいつものことといえばそうなのだが……)
しかし突然、基地のシステムがダウン、停電となり、通信回線に何者かがハッキングをしてきた。
ザム星の盟主を名乗るメンシュハイトだ。
停電時のハッキング演出は、青黒い照明で、回転するマジックミラーを透過したような蠢(うごめ)く光を壁にうっすら映しているだけで、CGなしの撮影現場のみで完結する原始的な演出だが、BGMともあいまって不穏な雰囲気をよく出している。
メンシュハイトは、少年はザム星の危険分子であり、これはザム星内部の問題でもあり、しかも少年は地球に害をなす可能性もあるから、少年を引き渡すように要求。
彼の要求にも一理あるようなもっともらしいセリフを与えているが、演出的には火炎をバックに、高飛車な態度で最後に哄笑までさせて、描写的には明らかに悪役である。
何よりメンシュハイトはメイクが凄まじいとはいえ、人間の役者が顔出しで憎々しげな演技を行っている。
リアリズムの観点からは賛否あるだろうが、価値転倒・価値相対主義的な知的快感を主眼とするSFものではなく、勧善懲悪ものとして最後には悪者をやっつけるカタルシスを主眼とするのがヒーローものの本義であるならば、この演出も間違っているとは思わない。
ただしザム星人の一体がダークマターの影響で突然変異したのがメンシュハイトであるという彼の発言が本当ならば、いかに突然変異とはいえメンシュハイトの姿があまりにもザム星人とは異なりすぎていて面影もないし、なぜに彼が自らの母集団であるザム星人を野蛮であるからといって滅ぼそうとするのかが腑に落ちない。
もう少し整合性に対して配慮があるデザインや説明ができなかったものだろうか?
地球人を信用していないザム星人の少年は脱走を試みて、基地内の機械室に潜伏する。
しかしHEART基地近辺に暗殺怪獣グラールが出現!
周辺の研究施設棟を破壊しだして、基地に接近を開始した!
怪獣出現の衝撃震動で落下した金属パイプから身を呈して少年をかばったカグラ隊員に心を打たれたか、少年は事情を……メンシュハイトのことも話し出す。
この緊急事態に内閣情報局は非情にもザム星人の少年をメンシュハイトに引き渡すことを決定する。
武装した内閣情報局・特別保安本部のキサラギら特殊部隊によりHEART本部は制圧され、HEARTのミナト隊長はこの要求を飲むように命じられる。
少年を守ろうとする主人公カグラ隊員とナナ隊員。
事実上、司令室内で拘束されているミナト隊長も、
「われわれHEARTは、危機に陥(おちい)った人間を、信条・国籍・人種に関わらず救出をするのが究極の使命である。
なんぴととはいえ、他人の未来を奪うことは許されない。
たとえ異星人であろうとも! HEARTはその未来を守らなければならない。
……これはHEARTの隊長としての命令だ!!」
というポリシーに準じて、内閣にあらがう決断をし、独白のフリをして隊員たちに秘密理に通信で命令する……
HEART隊員たちは、グラールやメンシュハイトのみならず、保安本部とも戦う二面作戦を強(し)いられる。
もちろん基本は子供向け作品だから、双方に死者が出る(HEART隊員たちに殺人を犯させる)ようなシビアな描写はないのだが……
この作品、最初にして最後の前後編。
根本的な欠陥というわけではないし、これまたジャンル作品にはよくあることとはいえ、あの段階であっさり片方の宇宙人の言い分を飲んでしまう保安本部にしろ、内閣に逆らう決断をするミナト隊長にしろ、リアル寄りでポリティカル(政治的)な交渉ごとを題材にしている以上、細部においては少々脚本が雑なようにも思う。
前回の10話「決断せよ! SX救出作戦」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120504/p1)同様、組織において上部に逆らうことの重大さとか、地球人にとっての損得からすれば保安本部の言い分の方に理があることなどが、あまりにも軽んじられていると思う
(筆者も感情的には少年を守る方を支持したいが、ドラマ内のリアリティとしては)。
ウエマツ隊員「我々がザム星の問題に介入すべきかどうか……」
ヒノ隊員「見た目にだまされるな! あの少年はナナ隊員を傷つけた!」
ヒノ隊員「あのザム星人を引き渡しさえすりゃあ、すべてはまるく収まるのに。なぜ戦うんです? 俺たち」
ウエマツ隊員「わかってるだろ。俺たちは隊長から叩き込まれているからだ。命の重さってやつをな」
と、わずかな懐疑を示すことと、前回の10話における半径300キロ圏内の人々を救うかミナト隊長を救うかで、ギリギリまでミナト隊長の命をも救おうと粘った展開とも接点を与えたようにも見せることで、作品に厚みと品位を持たせて、多少は救われているけれど。
年若い主人公カグラ隊員とナナ隊員は出来上がった作品の通りに、感情に走って少年を救って逃げてもよいと思うが、年長のミナト隊長たちは露骨に内閣に反旗を翻(ひるがえ)すのではなく、表面は内閣に従いつつも密かに2人を援護するという展開でもよかったのではないか?
ウエマツ隊員とヒノ隊員を地上から援護すると言って、少年とナナ隊員から去っていくカグラ隊員の後ろ姿に、少年は
「ネオス。ウルトラマンネオスでも勝てないかも……」
とつぶやく。
よもや……との表情をかすかに浮かべるナナ隊員が次回への伏線ともなる。
ウルトラマンネオスが登場するも、最終回前編にふさわしい超強敵グラールに大苦戦。
超常的な怪獣でもあり、仰向けに倒れたネオスの胸中央のカラータイマーからエネルギーをも口内に吸収しはじめた。
タイマーは青の点灯から赤の点滅へと変わり、ネオスのエネルギー残量が少ないことを示す!
立ち上がれないネオスの右脚を怪獣グラールは左手で持って引きずり歩き、振り回して投げ飛ばし、口から強烈な火球を見舞った!
火球が爆発してネオスが吹っ飛ぶ瞬間は、「ウルトラ」シリーズには珍しい屋外撮影でのガソリンによる赤い巨大な爆炎が猛烈な迫力!
倒れ伏すネオス。
ついに力尽きたかと思われ、怪獣グラールもネオスを無視して横を通り過ぎる。
が、太陽を逆光にしてネオスは渾身の空中キック!
二段蹴りや背負い投げ、必殺のネオマグニウム光線を浴びせる!
それでも倒れない怪獣に初代ウルトラマンのアタック光線に似たポーズでネオスは右腕を突き出し光線を放った!
グラール、ついに後ろ向きに倒れて大爆発!
しかしネオスもカラータイマーの灯りが消えてエネルギーも切れたことを示す。
仰向けに大地に倒れるネオス!
そこに大空から閃光とともに2つの光が飛来!
それは2人のウルトラマン。
宇宙警備隊のゾフィー隊長とウルトラセブン21(ツーワン)だった!
といったところで、次回につづくとなる……
これらネオスのエネルギー切れ以降の一連のシーンは言うまでもなく、初代『ウルトラマン』(1966)最終回(39話)「さらばウルトラマン」における絶命したウルトラマンの映像への完全なオマージュというか、カメラアングルといいウルトラマンの仰向けに倒れたポーズといい完全なナゾリとなっている。
細部に難点もあるが、ストーリーにしろ役者陣の熱演にしろ演出にしろ、全体的にはなかなかに緊迫感があり、最終回前編にふさわしい仕上がりになったと私見する。
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