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ウルトラマンネオス10話「決断せよ! SX救出作戦」

(東京MXテレビ・毎週日曜18:30の円谷劇場にて『ウルトラマンネオス』放映「全話評」連動連載!)
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#10「決断せよ! SX救出作戦」

怪獣(隕石怪獣)ギガドレッド登場

(脚本・武上純希&星貴則 監督&特撮監督・宮本拓)
(視聴率:関東・未放映 中部・未放映 関西2.0%)


(文・内山和正)
(02年11月執筆)


 月をかすめて飛来したナゾの物体。
 日本の気象衛星・日輪を目前にしたその物体は、尖頭部がつぼみが開くように開扉するやその中から雷鳴が轟(とどろ)かせた!


 今月に入ってから続くという人工衛星消失事件で、衛星ネットワークやカーナビ、天気予報や世界各国の軍事バランスに影響が出るなか、日本アルプス山中に隕石が落下する。


 地表にクレーター(隕石孔)もなく滑走したような跡が残っていたことから、通常の隕石ではないと推測して、現地に到着した防衛組織HEART(ハート)の隊員たちに、対象に接近しての調査をなかなか許可しない慎重なミナト隊長。


 現地近辺に着陸しているHEARTの大型輸送機ハートワーマー内に待機しているミナト隊長の許に、内閣情報局からフジワラ秘書官とその上司・カタギリ次官(四方堂亘 しほうどう・わたる)が訪れる。


 赤と青の警光灯を天井に着けた黒いセダン車が車道を走行する実景シーンの直後に、これまたそっくりのミニチュアのセダン車がミニチュアのHEART輸送機の近くに駐車している特撮シーンが良い味を出している。


 輸送機内に入ってきたカタギリ次官は、ナゾの物体の宇宙への早々の撤去を命じる。


 早急の対応はムリであり、基礎調査の必要を訴えるミナト隊長だが、


 「その必要はない。HEARTは我々の指示に従えばいいんだ!」


 とカタギリ次官は強硬な姿勢を示す。そのあまりに理不尽な姿にイレギュラー女性キャラのフジワラ秘書官も不審の念を覚える。


 ミナト隊長は部下を危険にさらさせまいと、自らが特殊車両ハートビーターSXを1話「ネオス誕生!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120226/p2)以来、久しぶりに飛行形態に変えて、ナゾの物体に接近する。
 すると、ナゾの物体の中核に露出した球体部分が前方に突き出て開扉して、SXを一瞬のうちに呑みこんだ!



 ナゾの飛行物体は、隕石中の生物の基となるアミノ酸暗黒物質ダークマターの影響により怪獣化したものであり、たくさんの人工衛星をのみこんだ代物だったのだ!


 ミナト隊長が呑み込まれたと知っても、彼の救出よりナゾの物体を早急に宇宙に撤去することを優先しようとするカタギリ次官。
 面従腹背で、ハートビーターSXごとのみこまれたミナト隊長をあくまで救出しようとする隊員たち。


 しかし怪獣に呑みこまれているミサイルを搭載した軍事衛星のために、怪獣は時限爆弾化していた……



 というこれまた類型的な題材だが、内閣からの命令に不審なものを感じ、部下たちを危険にさらさせないため、自ら調査にのりだし危機をむかえる隊長という設定は、HEART隊員たちの仲睦まじさが印象的なこの作品らしいもの。


 隊長のSX側の通信機が故障して一方通行になってしまい、しかしてHEART輸送機内でのカタギリ次官と隊員たちとの議論を、そして隊員たちの隊長を想う気持ちを(隊長に対する欠点への指摘も含めて)筒抜けで苦笑して聞いているというヒューマンな描写。
 カタギリ次官の命令で隊長代理となったウエマツ隊員が、エピソード冒頭ではミナト隊長のあまりの慎重さに疑念を呈して緊急の決断が必要な場合もあると述懐していたのに、いざ自分が責任者として部下に命令を下す段となると逡巡してしまい、ミナト隊長の今までの態度にはじめて理解を示すという描写もよい。


 四方に設置したパラバラアンテナ型のメカからビームを照射する重力遮断装置で、ナゾの物体を宇宙に撤去する作戦も並行して進む。
 夕景の中、戦闘機ハートウィナーでパラバラアンテナを、大型トレーラーで電力コンテナも輸送して、夜景の中で照明に照らされた巨大な大型クレーンや組み立て中の重力遮断装置が浮かび上がるシーンも、精巧なミニチュア特撮が恰好いい。


 ただしHEART隊員たちの心のドラマとしてはともかく、救出モノとしてはその過程にあまりメリハリやアイディアがあるわけではないのが物足りない(ドラマとして2〜4話のころの欠落感はないけれど)。



 高圧的な態度をとっていたカタギリ次官が、軍事衛星の機密がバレたあと三枚目として描写されるのも疑問。
 民間人にバレて責任問題になるのならともかく、この限定された人々のみが知る状況でここまで弱気になることもないのではないか?


 しかもカタギリがナゾの物体を撤去を急ぐのも、衛星軌道を外れたミサイルは一定時間内に安全のために自動で爆発して、地表では半径300キロ相当が壊滅するためであり、彼の態度にも一理の正当性がないわけではないのだ。
 日本が憲法9条により軍事衛星を秘密裡に保持していること自体がいけなかったという狙いなのかもしれないが(?)、そうであっても天秤にかければナゾの物体の撤去の方を優先すべきことに正当性はあるだろう。
 カタギリ次官を悪者にしたいならば、彼がこの機密を利用して別の不正(冒頭で世界のパワーバランスがどうこうと言っていたのだから、武器や軍事技術の他国への横長しなど)を働いていたという展開にでもすべきではなかったか?


 フジワラが上司であるカタギリをなぐりつけるのも、善悪より上下関係が優先されるだろう軍事・政治の世界においては嘘っぽく、視聴者のうっぷんをはらすためだけの脚本という気がする。



 まあ学園ものの教頭先生なり、歴代ウルトラシリーズにイレギュラーで登場した防衛軍のイヤミで強圧的な上司キャラ、


・『帰ってきたウルトラマン』(1971)5〜6話に登場した東宝の藤田進が演じた岸田長官
・『ウルトラマンA(エース)』(1972)14話「銀河に散った5つの星」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)に登場した山形勲演じる高倉司令官
・『ウルトラマンタロウ』(1973)5話「親星子星一番星」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071230/p1)に登場したスミス長官


 ……など、ウルトラシリーズや特撮ものにかぎらず、作劇の都合で展開やキャラたちのメリハリや差別化を付けるために憎まれ役を作るのはよくあるパターンなので、取り立てて問題視するほどの欠点ではないのかもしれない。
 が、それ以外の要素がリアルであるだけに惜しい気もする。


 しかし、『ウルトラマンレオ』(1974・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)に幾度か登場し、その最後の登場回である39話「レオ兄弟ウルトラ兄弟 勝利の時」では、地球に接近したウルトラの星(と地球人には噂されている程度で確証はない)をミサイルで爆破するという非情な命令を下す神田隆演じる高倉司令長官が、


 「私もあの星が、ウルトラの星ではないことを祈っているのだ……」


 という苦渋のセリフを吐かせることで、強硬な上官キャラがその強面(こわもて)に反して意外な一面を見せて、人物像を記号的にではなく多面的にする作劇の前例が、過去のシリーズになかったわけではないことは強調しておきたい。
 (ただし、これも幼少時の視聴では気付かず、人生経験を多少なりとも積んだ思春期以降の再視聴で気付くような描写でもあるのだが……)



 今回の隕石怪獣は人間体型ではなく脚などもないことから、自ら歩行移動することはなく、人工衛星の貧弱なマニュピレーターを動かす程度で、もっぱら軍事衛星のミサイルやビーム兵器を放つ存在となる。
 よって、ウルトラマンネオスが敵の光線やミサイルを避けたり手刀でハジいたりといった、受け身のままでのスーツアクターの演技力と、特撮監督による演出力とが試されるアクションシーンとなるのだが、両者ともに高い水準を達成していると思う。


 難敵に対して、ついにウルトラセブン21(ツーワン)も登場して加勢! タッグ攻撃を開始した!
 しかし両腕をL字型に組んで放つ21の必殺光線レジアショットに対して、隕石怪獣が放つ光線もまた互角に対峙して、押し合いへし合いの末に宙で爆発を起こす!


 地上では隕石怪獣を殲滅できないタイムサスペンス、隕石怪獣を宇宙に放逐してしまっては内部に閉じ込められたミナト隊長を救出できないという二律背反で、ウエマツ隊員は重力遮断装置の起動をギリギリまで粘って悩みに悩み抜く。
 もちろん大局を考えれば、大の虫を生かすために小の虫を殺さざるをえず、半径300キロの土地や人やその財産とミナト隊長とを天秤にかければ、前者を選択することを「決断」するのが当然だ。
 しかし、それをアッサリと描くか、苦渋の果てに選択するかで、その過程が人道的であったかの後味は変わってくるだろう。
 ウエマツ隊員は遂に「決断」を下す。


 もちろん基本は子供向けエンターテイメント作品であるから、ミナト隊長を殺してしまうわけにもいかず、重力遮断装置とネオスと21によって浮上させられた隕石怪獣が高空で爆発を見せたあとで、ミナト隊長は瀕死であってもSXごとネオスに助けられたことにして(救出の瞬間は映像としては描写されない)無事に生還を果たして、めでたしめでたしとなる。



 なお、ウルトラセブン21が主人公カグラ隊員にアドバイスするのは今回が最後。
 考えてみると、ジョーニアス(『ザ・ウルトラマン』(1979・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100430/p1)の主役ウルトラマン)やグレート(『ウルトラマンG(グレート)』(1990))のように、ヒーローと主人公の人格が共存して描かれている設定であったならば、アドバイサー役はウルトラマンネオス自身の役目だっただろう。
 それだけにこの『ウルトラマンネオス』という作品は(あらかじめネオスにM78星雲人であるという大前提の設定があるから仕方がないものの)、『ウルトラマンガイア』(1998・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)のような人間ウルトラマン(変身能力を持っただけの地球人)とM78星雲人である21との共闘の物語であったならもっとすんなり行ったかもしれない。



 本話の演出は、自主映画畑の出身である宮本拓(みやもと・たく)が担当。
 本話の作風がそうであったから……ということもあるだろうが、アマチュアくさいところは一切なく、重厚な演出&特撮演出を見せてくれた。
 宮本拓監督は、『ネオス』と同じくVAP(バップ)製作の特撮ビデオ作品『ヴィジュアルバンディッツ』シリーズ(2000)でも脚本・監督・特撮監督を担当。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2003年号』(02年12月29日発行)『ウルトラマンネオス』後半評より抜粋)


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