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ウルトラマンネオス9話「僕らの恐竜コースター」

(東京MXテレビ・毎週日曜18:30の円谷劇場にて『ウルトラマンネオス』放映「全話評」連動連載!)
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#9「僕らの恐竜コースター」

怪獣(合体恐竜)キングダイナス登場

(脚本・星野卓也 監督&特撮監督・神澤信一)
(視聴率:関東・未放映 中部・未放映 関西1.9%)


(文・内山和正)
(02年11月執筆)


 九州ロケ編3本目。
 ジェットコースターの先頭に乗って満喫している小学生の女の子1人と男の子2人組で物語は幕を開ける。


 遊園地――7話「生態系の王」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120408/p1)評でもふれたウルトラマンネオスが初お披露目された三井グリーンランド――の恐竜を模した線路が並ぶジェットコースターこと通称「恐竜コースター」。
 その廃止の噂にショックを受けた3人(ショックを受けていたのは1人だけか?・笑)は、事態を阻(はば)むべく、小学生らしい浅知恵(あさぢえ)を子供部屋で働かせた。


 映画『学校の怪談』(1995)よろしく、巡回の教師の眼を盗みつつ、人体標本に驚きながらも、夕陽を浴びた放課後の小学校の理科室に秘かに忍び込む。
 このシーンはフンイキもよく出ている。


 小学校の理科室からステゴザウルス・ティラノザウルス・トリケラトプスの化石を盗みだし(そんな貴重なものが日本の小学校にあるのか!?・笑)、遊園地周辺の工事現場に埋めて、「恐竜の化石発見!」のニュースを作って、ひいては彼らいわく「資本主義の原理」「風が吹けば桶屋が儲かる」の相乗効果で、遊園地の「恐竜コースター」の廃止も免(まぬが)れるだろうというのだ。


 不正な手段に出る小学生三人組。
 平時ならこっぴどく怒られて終わったであろうその策略だが、太陽系が突入した宇宙をただようナゾの暗黒物質ダークマターの影響下にあっては……。


 ナゾの雷鳴が埋めた化石を直撃する。


 化石が発見されないことを訝(いぶか)しみ、恐竜の足型をした足跡を掘ろうとする三人組。


 しかし、すでに足跡はいくつも存在していた。
 化石は3恐竜混合の子供のラクガキのような、四足歩行で尻尾も太くて長い紫色の不格好な巨大怪獣と化していたのだ!



 小原直樹監督の九州ロケ編・7〜8話とのスケジュール調整でか、ロケ部分では防衛組織HEART(ハート)隊員たちの登場はほとんどなく、また本作では唯一の子供主体のエピソードとなっている。


 ストーリー自体は平凡であるが、子供たちがいわゆる“良い子”的なセリフではなく、適度な乱暴さやイイカゲンさ、シラケてたり熱くなったり他愛ないことで笑ったりも含めて、一応のリアルさ・自然さを感じさせたのがはじめはうれしかった。
 その後、やりすぎて逆の方向でワザとらしくなってしまったかもしれないが。



 子供たちのリーダー格の少女・アヤカ役の崔岡瑞季(つるおか・みずき)ちゃんは優しい子や辛い境遇の役が多いベテラン子役。
 過去には父のドメスティックバイオレンス家庭内暴力)になやむ役でレギュラー出演した昼帯ドラマ『いばらの償い(つぐない)』(2000・毎日放送・TBS系)などがある。
 最近の出演作品はテレビドラマ『しあわせのシッポ』(2002・TBS)で水野美紀さんの、2時間ドラマ・土曜ワイド劇場『眼科医 小室瞳の推理カルテ2』(2002)で辺見えみりさんの子供時代を演じている。
 少し重い目・あどけなさ・はかなげさにより悪いことなどしないようなイメージが作られていただけに、普段彼女の作品を見ている人ほど、見た目は小柄で少女的でも現代っ子で男の子たちをアゴで使って自分は力仕事をせずにデジカメで写真ばかり撮っているコマっしゃくれた今回の彼女の役柄は、ギャップも大きく現代的な少女像のリアルさも強く感じるのではないか?



 いばり屋少女・コースター中毒者・携帯ゲームマニアという3人の個性がそれほど生かされていない気もするのだが、それもまた類型的にすぎて各人の個性が有効活用されるお約束展開の不自然さを避け、ナチュラルなリアルさを狙ったものなのだろうか?


・少年の夢に出てくる(ワイヤー・格子チックな原始的なCGでつくられた)生き物となった恐竜コースター。
・『学校の怪談』チックな放課後の理科室。
・恐竜の巨大な足跡がうがたれた工事現場。
・実景の工事現場の遠景に合成された、長くて太い尻尾の怪獣の巨大な後ろ斜め姿。
・デジカメ写真のフラッシュに気付いて、怪獣がこちらをふりむくスリル。
・低能なのかあまりの巨体ゆえか、へたりこんだ少年2人の頭上を怪獣が腹部を見せつつ股倉を下にして通過。
・あわててトラックの陰に隠れた少女の横をも、巨大怪獣が通過していく恐怖感。
・しかし、子供たちを踏み潰すことなくヨチヨチした歩みと奇妙な鳴き声で通り過ぎてキョロキョロしている怪獣キングダイナスの滑稽さ。
・四足歩行怪獣とのバトルにふさわしくウルトラマンネオスが怪獣にまたがってロデオを演じたり、怪獣も期待を裏切らずに見事に暴れ馬を演じたり。
・あげくの果てに、初代『ウルトラマン』(1966)10話「謎の恐竜基地」でのウルトラマン対エリ巻恐竜ジラース、『ウルトラマンA(エース)』(1972)10話「決戦エース対郷秀樹」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060709/p1)でのエース対犀超獣ザイゴン戦よろしく、スペインの闘牛をも演じるネオスと怪獣キングダイナス。
・地味な話かと思いきや、子供たちが隠れた窪みの近くで、合成ではなく本物のナパームのガソリン火炎爆発(怪獣が吐く火炎の直撃による爆発表現)がいくつも起きたり。
・いつものただの何もない会議室のような映像ではなく、珍しく照明を落として、むかし懐かしい電子音も響かせつつ、真上から真下を見下ろしたアングルで昭和の防衛隊の作戦室のようなフンイキを出してみせた映像演出。
・ヒノ隊員の戦闘機ハートウィナーが不時着する際に、三井グリーンランドの位置を示す道路脇の濃緑色で巨大な宣伝用の交通標識にぶつかって吹っ飛ばしたり、ウエマツ隊員のハートウィナーも不時着で街道沿いのボーリング場の宣伝用の巨大なボーリングピンを吹っ飛ばすや今度はなぜかおなじみのボウリングピンが倒れる音が響いたり(笑)。


 腰が抜けたり足をくじいたりしながらも、仲間を決して見捨てない子供たちの友情もドラマもたしかに描かれてはいるが、それはテーマ至上主義的に踏んばらずに軽妙に楽しく見せていき、今回はあくまでも映像的な魅せ場がいっぱいだ。


 が、ベストは怪獣に吹っ飛ばされた先で、つい破壊してしまった建築途中の今では珍しい木造家屋の新鮮な木材の骨組みを、あわてて組み立て直そうとして結局はうまく行かない、コミカルにアレンジされたベートーベンの交響曲・運命が鳴り響く中でのウルトラマンネオスのコミカルな粗雑さが、主人公カグラ隊員そのものに見えるところだろう(笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2003年号』(02年12月29日発行)『ウルトラマンネオス』後半評より抜粋)



(編:今回の少女子役・崔岡瑞季ちゃんは、後年の『ウルトラマンメビウス』(06年)#12「初めてのお使い」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060915/p1)にも、魔神怪獣コダイゴンジアザーの素体となる恵比寿(エビス)様の木像を飾っていた古物商の孫娘・由香役にて、成長した姿を見せてくれている)


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