假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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ウルトラマン80 42話「さすが! 観音さまは強かった!」 ~神仏の助力も快感! 児童編終了

(「さすが!観音様は強かった!」という表記は間違い。「様」ではなく「さま」が正解です・笑)
ファミリー劇場ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)
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『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧


第42話『さすが! 観音さまは強かった!』 ~神仏の助力も快感! 児童編終了

ムチ腕怪獣ズラスイマー登場

(作・石堂淑朗 監督・東條昭平 特撮監督・佐川和夫 放映日・81年1月28日)
(視聴率:関東8.6% 中部12.0% 関西12.5%)
(文・久保達也)
(2010年11月執筆)


 江戸時代に地震で埋もれた千両箱を入手しようとする二人連れが、特定した場所にそびえる観音像もろともダイナマイトで爆破したところ、封印されていたムチ腕怪獣ズラスイマーが出現、苦戦したエイティは観音さまの力を借りてズラスイマーを再び封印する。


 たったこれだけの話である。正直、ドラマらしいドラマもテーマらしいテーマもほとんどない。第1期ウルトラシリーズ至上主義者の特撮マニアであれば目もくれない話であろう(笑)。しかしながら、あまたの変身ヒーロー作品の大半の話は「たったそれだけの話」をいかに魅力的な特撮演出&アクション演出で視聴者を引きつけるかを命題にしているのだ。なにも「ウルトラマン」をただのアクションだけではなく、人間ドラマや社会派テーマもあるのだ! とばかりに特別視する必要はないのである。


 ナレーションで説明される「人相の悪い二人連れ」(笑)である武田と大林がねらうのは、江戸時代の大泥棒・浜野真砂衛門(はまの・まさごえもん)が逃走中に栃木県の大谷町(おおやまち)で穴に投げこんだとされる千両箱である。真砂衛門もセリフのみでの説明だけではなく、往時の劇中内史実が映像化までされている!
 彼は真砂衛門という名が示している通り、モデルになったと思われる戦国時代末期の豊臣秀吉の時代の大泥棒・石川五右衛門(いしかわ・ごえもん)そのままの風体(ふうてい)で描かれている(国民的テレビアニメ『ルパン三世』(71年~)のレギュラー・石川五右衛門の方の風体じゃないよ・笑)。その着物はラメが入った銀地に黒のストライプという、泥棒にしては実に派手な衣装(背中にも赤い文字で何やら書かれている)。ナイトシーンに映(は)えるためなのだろうけど。


 「御用だ! 御用だ!」なんて捕物(とりもの)のあと、真砂衛門は大谷町で採掘される大谷石を膝の上に積み重ねられるという過酷な取り調べを受けるのだが、そのとき巨大な地震が発生! 幕末の1855年(安政2年)10月2日、関東地方を襲った「安政の大地震」のために、真砂衛門が穴に投げこんだ千両箱は地底深く埋もれてしまったのだという。
 こうした実際の史実を大胆に組みこんだ虚実ない混ぜの世界観こそ、かつて講談社少年マガジン』巻頭のカラーグラビアにおいて、故・大伴昌司(おおとも・しょうじ)が展開した「疑似科学」的な手法とイコールではないにせよ、「疑似科学」を「伝奇」寄りにしたかたちで通底するものでもあり、少年たちのジャンク知識収集癖をときめかす手法だろう。


 その「安政の大地震」の特撮場面はオープンセットに組まれた、見上げるような巨大な岩山が切り崩されて、植えられた樹木も抜けて、バサバサと落ちていく! 大谷石(おおやいしき)のミニチュアが積まれた地面が陥没する一連のシーンなど、迫力満点の本物にしか見えないような巨大感あふれる見事な特撮映像に仕上がっている!
 セリフやナレーションのみで終わらせずに、導入部できちんと手間暇もかかりそうなオープン撮影による本格的な特撮映像で、その場面をも映像的な「見せ場」として「ツカミ」にもしていることは敬服に値する。「特撮」ジャンル作品の本質とはこういった感慨をもよおすモノなのだ!


 本話の主題となる巨大観音が大谷町に実際にそびえる実在の平和観音像であることも、「安政の大地震」同様に今回のストーリーが「SF」や「超科学」寄りではなく、我々の所帯じみた「現実」世界の方に寄った作風であることを念押ししてくれている。
 この手の「伝奇」的なストーリーだと、東京近郊やタイアップの遠方ロケ以外の場合は、「架空の田舎」の土地が設定されることが多い。逆に云うと、「架空の田舎」を舞台としておいた方が、ストーリーが突飛に飛躍してもこの手の「怪獣番組」としては良い意味でムリが感じられる度合いが減ってくる。むしろ下手に実在の現実的な場所を舞台にしてしまうと、仮にストーリーがまったくの同一であっても民話的・伝奇的なテイストは醸(かも)しづらくなったりすることもあるものなのだ。今回はそんな観点からも本話を検証していこう。



 映像面では今回の主眼となる実物の平和観音像を終止ロング(引き)で撮らえて、その手前で武田や大林、ゲスト主役の岩水信夫(いわみず・のぶお)少年を演技させることで、この観音像の巨大感が的確に表現されている。


 今回のゲスト主役の名前は毎日、観音像に「願掛け」をするような信心深い少年だから、「信仰」の「信」の1字を取ってきての「信夫」なのだろう。ちなみに、前回の第41話『君はゼロ戦怪鳥を見たくないかい?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110205/p1)のゲスト主役が「ゼロ戦おたく少年」、つまり「戦闘機」ネタだったから「武夫」なのだろう(笑)。安直ではあるのだが、名は体(てい)を現わすのでもある(笑)。


信夫「観音さま、ぼくは倉田まり子ちゃんと結婚したいのです」


 ランドセル(なにやらステッカーらしきものが貼られている・笑)を背負う小学生ながら、信夫はアイドル歌手の倉田まり子の大ファンであり、彼女との結婚を果たせるよう、観音さまに毎日ひたすら願い続けていたのである(笑)。
 私事で恐縮だが、筆者も小学4年生のころ、当時『木綿のハンカチーフ』や『九月の雨』をヒットさせていた歌手の太田裕美(おおた・ひろみ)と結婚したいと思っていたが(汗)、そういう高望みばかりしているから、いまだに独身だったりするのだ(爆)。ちなみに若い人は知らないだろうが、倉田まり子は当時の相応に人気もあった実在のアイドルである。「安政の大地震」に大谷町の「平和観音」に「倉田まり子」と、ここまで現実世界の事物が登場するエピソードも珍しい。


 倉田まり子が微笑むポスターの前には、ミニチュアの白い観音像が飾られているほどに信心深くもあった信夫であったが、就寝している彼の耳にお経(きょう)を唱えるような声が聞こえてくる…… 同じく石堂大先生の作品である『ウルトラマンタロウ』(73年)第14話『タロウの首がすっ飛んだ!』を思わせる演出だが――89年の幼女連続殺人事件であるM君事件の影響でタイトルが問題視されたのか、90年のTBS土曜早朝6時の再放送ではこの回が飛ばされたことがある――、岩水家の飼い猫なのか階段の途中でたたずむ猫が経の合間に鳴き声をあげるのも実にいい雰囲気を醸し出している。


 信夫は観音さまの夢を見ていた(そういえば、前話に登場した武夫も「ブルンブルン」というゼロ戦のプロペラ音を寝言にしていた・笑)。そのイメージは赤い背景の前で、ミニチュアで再現された観音像が信夫になにやら訴えかけているというものであった。おもわず観音像のもとへと走る信夫。
 この場面、ミニチュアの平和観音の足元に信夫を合成している。ロケで済ませられそうなものなのだが、ナイトシーンのために子役を深夜に労働させられない労働基準法かライティング(照明)などの問題からのやむなくの処理であったのだろうか? しかし、観音像のミニチュアの出来のよさもあり、これも夢の中としての映像の差別化としては味わい深い演出である。


 千両箱のありかを調査し続ける武田と大林。カラスの鳴き声が響き渡る荒涼とした石切場で、たき火をしてインスタントラーメンを食べていた。前話では当時の大流行替え歌「♪カ〜ラ〜ス〜~、なぜ鳴くの〜~、カラスの勝手でしょ〜~~」が歌われていたが(笑)、こんな殺風景な場所で、実在するかどうかもわからない千両箱を捜し続ける武田と大林の侘しさと滑稽さを強調するのに、カラスの鳴き声の使用はお約束でも実に効果的である。


大林「あ〜あ、体じゅうインスタントラーメンでいっぱいだ……」
武田「うるせえっ! そのうちビフテキでいっぱいにしてやる!」


 その会話に続いて、岩水家の食卓に大谷町名物の「山菜丼(さんさいどんぶり)」と「かんぴょう汁」があがるという演出が、武田と大林の粗末な食事風景とはあまりにも対照的であることを、視聴者に対比することもねらっていて、おもわず吹いてしまう(笑)。


 ちなみに、武田と大林が信夫少年と出会う場面ではふたりはみかんを食べており(ホントにまともな食事をしていない・笑)、武田がみかんの皮を地面に捨てたことで、


「おじさん、公衆道徳、守らなきゃダメじゃないか!」


 と信夫に注意されてしまう。そうそう、その通りだ!(笑)


 ちなみに、今回はやたらと食事をする場面が多い。前回の第41話でも本作の防衛組織・UGMの作戦室で、一同がお菓子を食べながらゲストである武夫少年のことを話題にしていた。
 今や絶滅寸前でも1970年代には隆盛を極めていた大家族を描いたホームドラマで、視聴者が最も好んで見るのは食事の場面であるという分析があった。食事それ自体がどうということはない。しかし、食事や軽食をしながらの会話とは、家族やメンバー間での緊張緩和や友好、彼らもまた浮世離れした大所高所からの頭デッカチでキレイごとの歯の浮くような理念で生きているのではなく、生きて生活して食べているナマ身の人間であることを示すものでもある。


 近年では、『仮面ライダーアギト』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)で主人公青年の寄宿先である美杉(みすぎ)家の描写が、90年代中盤の『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)以降、「精神世界」的な心情・心象描写などで「抽象的」「思弁的」になりがちだったジャンル作品の中では、そのアンチテーゼとして「日常」や「食」などの地に足が着いた「生活」の重要性をも強調するものであって、フィクションなりにナマっぽい「人間」を描くためにも、リビングルームでの食事風景が多用されていたことが、特撮マニアにはともかく各界の深読み指向のドラマオタク・評論オタクたちからは好意的に評価もされていた。


 1970年代のインテリたちは、このようなホームドラマを「飯食いドラマ」という語句で揶揄(やゆ)していたものだ。しかし、日本の大家族が少数派となったことで「飯食い」シーンが減少して久しくなってくると、そこに無意識に込められていたシーンの意味合いに後年になって気づくこともあるものだ。


 今回のように「SF性」や「活劇性」よりも「伝奇性」を重視したエピソードの場合には、市井(しせい)の庶民ゲストや所帯じみた「飯食い」シーンなど、地に足を着けている描写が存在した方が効果的な場合もあるのだ――逆に云うなら、「SF性」や「活劇性」の方を重視したいエピソードの場合には、本話のような庶民ゲストなどは割愛した方がよいのだが・笑――。


 大谷町の地磁気の乱れを感知したUGMは、イトウチーフ(副隊長)と主人公・矢的猛(やまと・たけし)隊員を現地に派遣。ふたりは岩水家に泊まりこんで調査をすることになった。


矢的「大谷石っていうのは大むかしの火山の爆発で、その灰が何千万年もしているうちに固まってできたものでしょ? そういう灰がどうして地磁気の変化と関係あるのかわかんないんですよ。地磁気は少なくとも金属と関係なくっちゃね」


 今回は「伝奇的」な神懸(かみがか)った話である一方、その正反対の要素でもある「疑似科学性」をも並列させようとしていて好感を持つ。しかし、そんな話を聞かされていたイトウチーフは、同じく石堂脚本回である第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110101/p1)でも「逆転現象」(蜃気楼の一種)を知らなかったほどの体育会系としてのキャラ付けなので、寝床で大きなイビキを立てて寝てしまう(笑)。やはり石堂脚本回ではイトウチーフが緩衝材として「ボケ」役に割り振ることが徹底されている。


 そんなイトウチーフにあきれた矢的は自分も眠りにつくが、そこで不思議な夢を見る。なんと平和観音が目から涙を流して、矢的になにかを訴えかけているのだ!
 欧米でも聖母マリア像がその目から涙を流して、キリスト教の宗派・カトリックの総本山であるバチカンが「警告としての奇跡だ!」と認定する例が多々ある(汗)。そこからインスパイアされたストーリー展開でもあろのだろう。


 そして、このミニチュアの観音の目の部分から水滴がしたたり落ちてくる仕掛けもスゴいが、観音の顔の左半分に緑色の照明が照らされているのも神々(こうごう)しさと不気味さの両方を兼ね備えており、深みを増している。


 夢から醒(さ)めた矢的は信夫もまた同じ夢を見ていたことを知る。つまり、これは単なる幻覚といった夢ではなく、本話においては観音像が意識を持っている、もしくは天上界に観音さまが実在しており(!)、神通力でこのふたりに本当に通信してきたことになるのだ!


 このふたりは平和観音の様子を見に行った。夜空にそびえるミニチュア観音の足元に矢的と信夫が合成された特撮カットが目を引く。正体は宇宙人・ウルトラマンエイティでもある矢的隊員はその超能力・ウルトラアイで平和観音を透視するや、武田と大林がダイナマイトを仕掛ける様子が観音像の足元に合成される特撮描写も映像的な見どころである。


――この透視場面では、『ウルトラセブン』(67年)のセブンこと主人公モロボシ・ダンがする透視場面のように、両目に小さな星がキラキラと光る描写を踏襲している。ちなみに、製作第2話『緑の恐怖』の透視場面では、ダンの白目の部分が発光して瞳が猫の目のように常時青く光るという演出であった。しかし、円谷プロの創設者・円谷英二つぶらや・えいじ)御大が「それではやや気持ち悪い。子供向け番組なのだから少しでも爽やかにするように……(大意)」といったアドバイスで、以降は透視場面の特撮表現が変更されたとの逸話が、70年代末期の草創期の特撮マニア向け書籍で公表されており、そういった再発見的な記述を改めて意識した特撮表現なのだとも思われるのだが――


 遂にダイナマイトが爆発!! 轟音(ごうおん)とともに平和観音像は大地に倒れ伏してしまった!!


 そしてその跡地の底から、観音像の神通力パワーで封印されていたとおぼしきムチ腕怪獣ズラスイマーが軽快にジャンプ(!)して地上に出現する!



「やがて怪獣デザインの募集が行われました。募集告知は番組の予告編後に、青地に白文字で宛先を表示とアナウンスという地味なものでした。「これだ」と思ったと共に、怪獣好きの自分に対する、あるひと区切りだなと思い、ハガキに30〜40の怪獣の絵を描きなぐっては次々送りました。デザインに関して苦労というのはなくて、ペンを走らせれば自然に怪獣の絵になっていくのです。子供の頃から刷りこまれたものなのでしょう。募集告知期間は1〜2ヶ月くらいだったと思います。
 当選の知らせはある夕方、再放送の『ミラーマン』(71年・円谷プロ フジテレビ)を観ているときでした。プロデューサー・満田かずほさんから直々(じきじき)にお電話を頂き、「今日の『80』の放送で発表がある」とのお言葉を頂戴しました。ウルトラマンのデータベースなどを見れば、必ずその名前を見ることができる、あの満田監督から! 本当に驚きました。なんか嬉し恥ずかしかったことを憶えています。
 実際に着ぐるみとなり、登場したズラスイマーは正直滑稽(こっけい)な印象を覚えました。視聴者でもある僕に気を使ってもらったのか、凄く間抜けなフレンドリーな怪獣で、最後も殺されずに地底に帰っていきました。初代ゴジラの恐怖感が好きだった僕としては、正直少し物足りなかったですが……でも自分が考えたものが実際にウルトラマンと戦った、というのは凄く嬉しかったです。製作に関わって頂いたスタッフの方々のことを考えると、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
 ズラスイマーという名前ですが、これは意味は後づけで、〈ズラ〉は「〜ズラ」という聞いたことのあるどこかの方言、それと〈水魔〉を合わせたものです。実際には地底怪獣として登場しましたが……。今パソコンで検索してみると「変な名前の怪獣」ランキングに入ってたりして、複雑な気分です。
 賞品は宇宙船(スペースマミー)の超合金と子供用ウルトラマン自転車(引用者注・自転車やバイク製造で有名なミヤタ製の子供向け自転車)。さすがに自転車には困りました。当時既に中学ですからね。記念に宇宙船もらえたらラッキーぐらいに思っていたもので……自転車はずっと物置に保管してました」

タツミムック『検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版 06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124)「怪獣デザイン募集を振り返って」新保知健)


(引用者註・引用文中のブランド名「超合金」は、正確には玩具会社・ポピー(現・バンダイ)の人型ロボット玩具専用のブランドであり、同じく合金製のマシンやメカ玩具専用ブランドであった「ポピニカ」が正解。ただし、当時の合金製玩具に同封されていた超横長で帯状のカラー印刷であるミニカタログでは裏表でこの両者が紹介されており、玩具屋でも隣接して陳列されていた。証言者もそれを充分にわかっていて世間一般に通りがよい方の「超合金」名義であえて語っているのだろう。だからそれをヒステリックに「間違っている!」とガナるような、人間・人物としての器量が小さくなる方向性でのツマラないツッコミを入れてはイケませんよ・笑)



 ズラスイマーは80年9月に番組内で募集した「あなたの考えた怪獣の絵」の最優秀作品を元にデザインされたものである。ちなみに筆者の弟も当時応募していた(笑)。


――編集者付記:9月ではなく8月中下旬からの募集であったと編集者個人は記憶している。私事で恐縮だが、当時まだ小学生であった編集者もまた夏休み中にデザインして応募した。超獣ブロッケン(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060611/p1)や超獣ジャンボキング(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)のような人間ふたりが着ぐるみで中に入るスタイルで、歴代怪獣たちが合体した存在であり、別名も「合体怪獣」ではなく『ウルトラマンエース』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)の怪獣たちの総称である「超獣」にあやかって「合体超獣」と名付けていた(笑)。この当時、すでに草創期マニア向け書籍で「超獣」には「派手なだけだ」との否定的な評価をくだす風潮が特撮マニア間でははじまってはいたけれど、当時の大方の児童たちには「超獣」は特別な存在として映っていたことの傍証としてほしい――


 原案の新保氏によれば〈水魔〉のイメージだったそうだが、実際には、


●顔がキツネ――『ウルトラマンタロウ』第15話『青い狐火(きつねび)の少女』に登場した狐火怪獣ミエゴンくらいのもので、昔話や童話では悪役として登場することが多いものの、意外に怪獣・怪人のモチーフにされることが少ない動物である――
●背中がハリネズミ
●左腕のムチがムカデ
●頭部の触角がヘビ


 といった、むしろ地上の動物の合成怪獣といった趣(おもむき)の派手なデザインに仕上がっている。背中全体やムチに生えるトゲのケバケバしさや、全身濃い青に赤い腹、ムチのトゲのオレンジといった派手なカラーリング部分は、『ウルトラマンA(エース)』(72年)に登場した超獣たちを彷彿(ほうふつ)とさせるし、全身のシルエットや配色は『ウルトラマンタロウ』第1話『ウルトラの母は太陽のように』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)に登場した宇宙大怪獣アストロモンスのような趣も感じられなくもない。



 ちなみに、ズラスイマー出現からエイティとの戦いを見守っていた地元の古老は、


「エイティもダメじゃろう。魔物を退治できるのは、神か仏のお力だけじゃ!」


 と語っており、「水魔」ではないものの「魔物」としての威容は充分に達成されている。新保氏のイメージを見事に具現化した魅力的な造形であるかと思える。


 なお、鳴き声は初代『ウルトラマン』(66年)第11話『宇宙から来た暴れん坊』に登場した脳波怪獣ギャンゴや、同作の第22話『地上破壊工作』に登場した地底怪獣テレスドンなどに使用された定番のものを流用している。


 地上に出現したズラスイマーは石切場に積まれた大谷石に蹴りを入れるが、あまりの堅さに悲鳴をあげ、さらにはずみで宙に飛んだ石が頭にブチ当たって七転八倒。遂に石堂先生は怪獣までをもボケさせた(笑)。ただ、ムキになってズラスイマーが両腕で大谷石をひっかき回した際に、白い粉塵(ふんじん)が巻き上がる描写はリアリティがある。


 怪獣出現をキャッチしたUGMは現地に出動! なんと今回はオオヤマキャップ(隊長)自らがUGM戦闘機・スカイハイヤーに搭乗! フジモリ・イケダ両隊員は戦闘機シルバーガルで急行する!


 そういえば、第39話『ボクは怪獣だ~い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110122/p1)・第40話『山からすもう小僧がやって来た』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110129/p1)・第41話『君はゼロ戦怪鳥を見たくないかい?』では、UGMの戦闘メカが活躍する場面すら描かれてはいなかった。そのような描写を3話も続けていたらやっぱりダメでしょう(笑)。


フジモリ「キャップ、久しぶりの出動、操縦の方は大丈夫ですか?」


オオヤマ「バカにするな」


 だが、フジモリが心配した通り、オオヤマがふと気づいたときには眼前に岩山が!


 やはり本話にかぎらず石堂脚本回では、オオヤマキャップまで今回もボケ役を兼任させている(笑)。しかし、それでもオオヤマもまた完璧ではない人格としての人間味といった感じにはなっているし、それでいてカッコよくもあるのだ!


 スカイハイヤーの操縦席からの山が迫ってくる主観カット! そして、山の手前で急上昇を遂げるスカイハイヤーの操演! この時期になると特撮班や操演班のテクニックも円熟の域に達している。


オオヤマ「フジモリ、火炎発射!」
フジモリ「了解!」


 ズラスイマーに火炎を浴びせるシルバーガル! と云いたいところなのだが、実はこの場面でシルバーガルの機体下部から放射されているのは、火炎というよりバチバチとした花火みたいなものなのである。特撮撮影現場で火炎放射器の準備が間に合わなかったのだろうか?


 『ウルトラマンA』第18話『鳩を返せ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060907/p1)で、異次元人ヤプールが大鳩超獣ブラックピジョンに対して、


「光線だ! 光線を吐くんだぁ〜!」


 と命じたにもかかわらず、なぜかブラックピジョンが口から火炎を吐いてしまったシーンを思わせるが(笑)、アフレコの際などに「火炎発射」を別の攻撃名に変えることで辻褄を合わせるような融通無碍(ゆうづうむげ)さに欠けるのが、この時代のジャンル作品の欠点ではあるのだろう。まぁ、同じく『ウルトラマンA』第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)では特撮現場で勝手に降らせた豪雨を、アフレコ時に局所的な「放射能の雨」にしたような例もあるのだが、それはあくまでも例外的な処置なのだ(汗)。


 ズラスイマーは火山の中でも生きていられるほど熱に強いという設定である。花火攻撃(笑)ではどうにもならず、今度はスカイハイヤーから大量の水が放射される!(機体下部からスプリンクラーが飛び出す!) この場面、ズラスイマーの身体からはもとより、なんと水が落ちた大地からも大量の水蒸気が立ち昇るという芸コマな特撮演出がなされており、ズラスイマーがいかに体内に熱を帯びているかが絶妙に表現されている!


 怒ったズラスイマーによってシルバーガルは撃墜!


 地上で見守っていた矢的は、ウルトラマンエイティに変身する!


 エイティは右足で、そして左足でズラスイマーの赤い腹に連続キック!


 さらにジャンプするや、両足でズラスイマーの首をはさみこんで大地にたたきつける!


 倒れたズラスイマーがお約束で、フィルムの逆回転で起き上がる!


 エイティはズラスイマーに足払いをかけて大地にたたき伏せ、前転してズラスイマーの背に乗っかり、右手、そして左手で連続チョップ!


 さらに、ズラスイマーの首をつかんで大地にたたきつけて、チョップの連打!


 カメラは終始低い位置から引きぎみに撮られ、手前に植えられた樹木、石切場の重機などのミニチュアが配置されているのも臨場感満点。そればかりか、なんと石切場の小屋の中からの主観で両者の激闘を撮らえているという、驚くべき特撮カットまである。


 ズラスイマーは左腕のムカデ状のムチでエイティの首を締めて振り回して、さらにはエイティを宙にブン投げる!


 さらにエイティをはがい締め! 活動限界が迫ってきたことを示すエイティの胸中央にあるカラータイマーが点滅をはじめる!


 見守っていたイトウチーフや信夫をはじめとする住民たちに、平和観音の力を借りるように示唆(しさ)されたエイティは、ズラスイマーのムチを振りほどいて側転して平和観音のもとに向かおうとするが、ズラスイマーはそうはさせじとエイティの胴体をムチでからめとった!


 この場面、


●エイティとズラスイマーの足元のアップ
●見守る住民たちの目線で撮らえたかのような、倒れた平和観音の顔を手前に配置した両者の激闘
●ズラスイマーの目線で撮らえたかのような、ムチで縛りあげられながらも必死に観音像に向かうエイティの背面
●左腕のムチを前に突き出したズラスイマーの上半身のアップ


 といったカットを数回ずつ交錯させるといった、実に凝(こ)った演出をしており、緊迫感もおおいに盛り上がる!


 全身から緑色の電撃をズラスイマーに向かって迸(ほとばし)らせ、遂にムチから解放されたエイティは倒れていた観音像を起き上がらせる!


 そして、観音像からまばゆいばかりの柔らかい優しい黄色い後光がズラスイマーに向けて放たれた!!


 これは、観音像それ自体というよりも、観音像を通じて天上世界の観音さまから善なるエネルギーが照射された! もしくは、観音像に蓄積されてきた庶民の善なる信仰エネルギーがここぞとばかりに放出された! あるいは、その両者の混交であった! と解釈できるものだろう。


 ズラスイマーの全身が青い渦に覆われる! その周囲ではズラスイマーが昇天していくのを表現するかのように青い星が舞っている! こうしたやや漫画チックな光学合成は昭和ウルトラでは珍しいものだろう。


 その姿が地面の底に封印されて消滅するや、天空から白・黄・ピンクといった美しい菊の花が舞い散ってきた! エイティは粋(いき)な計らいでそれを台座にして平和観音を鎮座させて、空の彼方に飛び去っていった……



 ズラスイマーも、千両箱をねらうゲスト小悪党である武田と大林が平和観音のことすら顧(かえり)みずにダイナマイトを爆発させなければ封印が解かれることもなかった怪獣である。「怪獣も結局は人間が呼び出したものである」という石堂先生のスタンスは、やや変化球ながらもここでも貫かれていたとコジツケることができるかもしれない。ただまぁ、武田と大林の小悪党のメンタリティや善悪双方で揺れる彼らの心などが本話のメインテーマではないけれど(笑)。


 本話はむしろ、人々の信仰を集める平和観音像が、怪獣を撃退・封印するほどの超越的な神通力パワーを発揮して、ウルトラマンの必殺光線よりも有効であったことを示してみせる、神仏によるヒロイズム的な快感をヤマ場・クライマックスとすることが、石堂先生の今回の作劇意図だろう。


 石堂先生が意識して参照したかは別として、このエピソードに第1期ウルトラシリーズのアンチテーゼ編を多く手掛けてきた実相寺昭雄監督による、第2期ウルトラシリーズ作品である『ウルトラマンタロウ』のNG脚本『怪獣無常! 昇る朝日に跪(ひざまず)く』を思い出したロートル特撮マニアは多かったことだろう。
 苦戦するウルトラマンタロウに大仏像がなぜだか立ち上がって加勢して、怪獣を海へと引きずって去っていくというストーリーである。特撮雑誌『宇宙船』のプロトタイプとなった『月刊マンガ少年別冊 すばらしき特撮映像の世界』(朝日ソノラマ・79年4月発行)でアメコミ調のスタイリッシュな画調で有名であった漫画家・板橋しゅうほう氏によるコミカライズが掲載されたことで、年長の特撮マニアや当時の子供たちには知られていた作品である。


 巨人の宇宙人であるウルトラ兄弟たちも強いけど、民話や神話に登場する神仏・妖怪・霊的な存在も、ウルトラの世界では実在している。そして、時に巨大怪獣化もして、神仏やお地蔵さま(!)まで神通力なども発揮してくれる!


 地球の「地底」にもキングボックルやギロン人やアングラモンなどのあまたの地底人種族がいる。「海底」には海底原人ラゴンや地球の先住民・ノンマルトも住んでいる。


 「インド出自の仏教の天上界」と「中国出自の道教の天上界」といった神仏習合な「ふたつの天上界」が併存しており、「地上世界」には四大大陸があって、「海底世界」にも竜宮城の世界がある…… そんな『西遊記』の本来の原典作品にも通じるところがある。


 単なるヒーローVS怪獣バトルだけではない、広大な仮想の「世界観」に対するワクワク感の惹起もまた、ウルトラシリーズ独特の魅力であるのだと強く主張をしておきたい。


 「宇宙人」「霊能力」「超能力」「4次元」といった超常的なものすべてを信じたい! といったメンタルを持っているのが大方の子供たちである(笑)。妖怪・妖精・精霊・霊魂・死後の世界・神仏たちをも、ウルトラマンや巨大怪獣ともイーブンな半ば実在する万物有魂のアニミズム的な世界観としているウルトラシリーズとは、ある意味では現代版の『西遊記』でもあるのだろう。


 神仏が仮に実在するのならば、それはショボい存在などではなく、どうせならば同じく善なる存在でもあるウルトラマンたちを、その超常的な神通力・奇跡の力で時には助けてあげてほしい! あるいは、天上世界にいるのならば、ウルトラマンよりも上位の存在ではなかろうか!? そんな人々の潜在意識下にあるような原初的な「かくあってほしい!」といった神頼み的な願望を見事に救い上げて、しかもそこにカタルシスを与えてみせているのが、本話や先にも挙げた『怪獣無常! 昇る朝日に跪く』や『タロウの首がすっ飛んだ!』といった作品群なのだ。


 昭和ウルトラ怪獣には純粋な「生物」「動物」とは云いがたい、


●伝説怪獣ウー
●伝説怪人ナマハゲ
●邪神カイマ(邪神超獣カイマンダ)
●閻魔怪獣エンマーゴ
●臼怪獣モチロン
●三つ首怪獣ファイヤードラコ
●相撲怪獣ジヒビキラン
●マラソン怪獣イダテンラン


 といった、スピリチュアルな「妖怪」や「精霊」や「低級神」が、巨大化・実体化・物質化したような怪獣たちも多数登場してきた。広い意味では、


●怪獣酋長ジェロニモン
●地球先住民ノンマルトの使者である真市(しんいち)少年の霊(!)
●水牛怪獣オクスター
●牛神男(うしがみおとこ)
●天女アプラサ
●獅子舞超獣シシゴラン
●白い花の精


 庶民の信仰エネルギーで付喪神(つくもがみ)と化したのか、神仏が天上世界からチャネル(霊界通信)してきたのか、その両方・双方向からのものなのか、劇中で斬首されたウルトラマンタロウのナマ首を、読経が鳴り響く中でその神通力で元に戻してしまったお地蔵様(!)や、今回の巨大観音像などもコレらのカテゴリーに当てはまることだろう。


 70年代末期~90年前後のオタク第1世代によるSF至上主義の特撮論壇では、「SF」ならぬ「民話」的なエピソードや怪獣たちは否定的に扱われてきたものだ。しかし、実は怪獣のみならず宇宙人から怨霊・地霊・妖怪までもが実在している存在として扱われている、


 大宇宙 → ワールドワイドな世界各地 → ローカルな田舎


 までもが、串刺しに貫かれて同一世界での出来事だとされており(笑)、万物有魂のアニミズム的にすべての事象が全肯定されているウルトラシリーズの世界観に、「現実世界もかくあってほしい!」的な願望やワクワク感をいだいていた御仁や子供たちも実は多かったのではなかろうか?――往時のマニアたちはまだまだボキャ貧であり、それらの感慨をうまく言語化・理論化はできなかったのであろうが――。


 しかし、1990年代中盤にテレビで平成ウルトラシリーズが始まってみれば、この超自然的な怪獣や歴史時代の人霊の系譜も引き継がれていたのだ!


●宿那鬼(すくなおに)
●妖怪オビコ
●地帝大怪獣ミズノエリュウ
●童心妖怪ヤマワラワ
●戀鬼(れんき)
●錦田小十郎景竜(にしきだ・こじゅうろう・かげかつ)


 といった怪獣や英霊がワラワラと登場してきたのだ! そして、それらのキャラクターたちに対して、特撮マニアたちが「怪獣モノとしては堕落である!」「邪道である!」などといったような糾弾を繰り広げるということもまるでない。むしろウルトラシリーズの幅の広さとして、どころか傑作エピソードとして肯定されていたりもするのだ(笑)。


――個人的には、それならば昭和ウルトラの伝奇的なエピソード群に対しても、それまでの低評価を改めて自らの過ちも贖罪して、批評的に冷静でロジカルに再評価の光を改めて当てるべきであったと思う。しかし、なかなかそこまで論理の射程を伸ばすことができるような御仁は極少だったようではある(汗)――


 本話のズラスイマー自身は、観音像とは異なり妖怪性よりも生物性が強いような怪獣だ。しかし、エイティとは派手に「ケンカ」をしてくれたことで、石堂先生が自身の手掛けた怪獣たちを称していわく「怪獣としてはダメな奴」――文句なしの倒してもよい絶対悪の怪獣ではなく、ワケありの可哀そうであったり道化的な怪獣――には終わっていなかったことも、それまでの直前4話分には欠如していた「活劇性」の強調としては幸いであった(笑)。


 今回と前回の第41話は、ウルトラシリーズにはかなり久々の登板であった東條昭平監督の凝りに凝った「本編演出」の妙にも注目するべきだろう。ちなみに東條監督のウルトラシリーズでの登板は、『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)第47話『恐怖の円盤生物シリーズ! 悪魔の星くずを集める少女』以来であった。それにしても、マイルドな『さすが! 観音さまは強かった!』とあまりにシビアな『悪魔の星くずを集める少女』ではまったく相反する両極端な演出となっている。初代『ウルトラマン』(66年)の時代から助監督として参加してきた氏は、これまであまり評価されてこなかったが、東條演出の引き出しの広さにも注目したいのだ。東條監督は以後、東映特撮に活躍の舞台を移して、『太陽戦隊サンバルカン』(81年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120206/p1)〜『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー』(95年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110926/p1)までのスーパー戦隊シリーズを支え続けて、ウルトラシリーズともまたまったく異なる演出を見せていくようになる。


 余談であるが、続く第43話『ウルトラの星から飛んで来た女戦士』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110219/p1)から登場、第49話『80最大のピンチ! 変身! 女ウルトラマン』で初変身を披露するウルトラの星の王女・ユリアンのデザインは、マニア向け書籍で紹介されてきたとおりで、奇しくも「観音さま」のイメージから採られている。



<こだわりコーナー>


*ラストシーンにのみ登場して、ファンである信夫と握手を交わして記念写真におさまる倉田まり子は、日曜午後に放映されていた『家族そろって歌合戦』(66〜80年・TBS)に出場したのを契機にスカウトされた。歌番組『レッツゴーヤング』(74〜86年・NHK)のサンデーズの一員として、78年4月からレギュラー出演。その後、79年1月に『グラジュエイション』(「卒業」の意味の英語ですネ)でレコードデビュー(作詞担当は『80』の主題歌と同じく当時のヒットメーカー・山上路夫)。芸名の倉田は、当時『レッツゴーヤング』の司会もしていた作曲家の都倉俊一(とくら・しゅんいち)から「倉」の一字をもらったものだそうだ(本名は坪田まり子(つぼた・まりこ))。
 79年8月に発売された3枚目のシングル『HOW! ワンダフル』がヒット。その年の多くの新人賞を受賞した。しかし、翌80年に田原俊彦近藤真彦松田聖子河合奈保子・柏原よしえといった、まさに80年代を代表するアイドル歌手たちが一斉にデビューしたことで、倉田にかぎらず79年デビューの新人歌手(80年代後半から90年代に若い女性層のカリスマ的存在となった竹内まりやもこの年のデビューである)の存在はたちまちかき消されてしまうこととなってしまった。世代人ならばこのへんの事情と時代の空気の急激な変化はご記憶のことだろう。78年のキャンディーズ解散、80年の山口百恵(やまぐち・ももえ)引退、81年のピンク・レディー解散と、70年代のビッグネームのアイドルたちが次々と退場。まさに80年前後は芸能シーンの急激な変わり目でもあった。よって失礼ながら、本作における倉田まり子の出演も実は当時においても、マイナーではないしにてもそこまでのビッグネームの存在ではなかったことから微妙なところもあったのだ(汗)。


 テレビドラマの出演は『80』でのゲストが初めてだが、その後は刑事ドラマ『Gメン’82』(82年・東映 TBS)第2話『アイドル歌手トリック殺人』などに出演。小学館週刊少年サンデー増刊号』で78〜80年に連載された、あだち充(みつる)原作の人気漫画『ナイン』のアニメ映画化『ナイン オリジナル版』(83年9月16日東宝系公開)では、ヒロインの野球部マネージャー・中尾百合(なかお・ゆり)の声を演じた(同作は同年5月4日にフジテレビで不定期に放映されていた日本生命提供の長時間アニメ特番枠「日生ファミリースペシャル」(79~86年)で放送された単発アニメ版に対して、声優・主題歌・BGMを一部変更したものだ)。同年12月18日にフジテレビで放映された『ナイン2 恋人宣言』でも引き続いて百合の声を担当。アニメ第1作のオープニング主題歌『LOVE・イノセント』・挿入歌『つのる思い』と『悲しみにサヨナラ』・エンディング主題歌『真夏のランナー』、劇場版オープニング主題歌『青いフォトグラフ』・挿入歌『愛を翼にして』と『涙色の季節』、『ナイン2』オープニング主題歌『恋人宣言』・挿入歌『青空気分』と『私のYoung Boy』なども、すべて倉田が歌唱していた。
 ちなみに、映画版の元となっているアニメ版第1作の百合の声はプッツン女優として知られる石原真理子。翌84年9月5日にフジテレビで放映された『ナイン 完結編』では、同年春の現・スタジオジブリ製作のアニメ映画『風の谷のナウシカ』(84年3月11日東宝系公開)の主題歌を歌唱して注目を集めて、2010年秋現在、NHK連続テレビ小説『てっぱん』にヒロイン・村上あかりの育ての母・真知子役で出演中である、この84年当時にブレイクを果たすことになった安田成美(やすだ・なるみ)が百合の声を担当していた。


 こうして各方面での活躍が期待されていたものの、85年に起きた株式不正売買事件の容疑者・投資ジャーナル社の中江滋樹(なかえ・しげき)社長の愛人であると2ショットの写真付きでマスコミに一方的に報じられたことにより、すっかりダーティなイメージが植えつけらてしまい(真相は不明)、芸能界引退を余儀なくされてしまった。だが、現在は本名の坪田まり子の名でキャリア・カウンセラーとして、大学生への就職指導や企業・自治体向けの研修ビジネスを手掛けており、各地での講演活動も行っているそうだ。2010年現在は東京学芸大学の特任准教授をも務めており、近年では「マスコミ」でも時折り話題にあがっている。


*信夫が心酔するアイドルは当初の予定では倉田まり子ではなく、テレビドラマ『3年B組金八先生』(79年)のツッパリ生徒・山田麗子役で世間の注目を集めて、80年9月に『セクシー・ナイト』でレコードデビューを果たした三原順子であったそうだ。
 これは彼女が主演していた80年11月スタートのTBSの30分尺テレビドラマ『GOGO! チアガール』(80年・東宝 TBS)が、『80』が放映されていた水曜日に『80』に続けて19時30分から放映されていたことから、相乗効果を期待したTBSからの要請であった可能性が大きいと個人的には推測している。だが、特撮雑誌『宇宙船』Vol.6(81年)での『ウルトラマン80』終了特集によれば、公演中の骨折事故で三原が出演不能となってしまったことから、やむなく倉田まり子が代役を務めることになったらしい。そういえば、第42話の予告編では倉田まり子のゲスト出演は一切報じられてはいない。サプライズ演出を目論んだものではなく、もし当初の予定通りに三原が出演していたなら、「『GOGO! チアガール』の三原順子ちゃんも出るよ〜!」などと派手に告知されたのだろうか?(笑)
 なお、三原のドラマデビューは、東映特撮版『スパイダーマン』(78年)第8話『世にも不思議な昔ばなし 呪いの猫塚』で、同作のゲスト敵怪人であるマシンベム・怪猫獣(声を担当したのは『タロウ』第46話『日本の童謡から 白い兎は悪い奴!』でわんぱく宇宙人ピッコロの声を演じた京田尚子)に襲われ、河原にただ倒れているだけの役(笑)でほんの数秒、出演したのみであった。
 翌年放映の女子バレーボールを主題とした東映のスポ根テレビドラマ『燃えろ! アタック』(79年・東映 テレビ朝日)では、白富士学園高校バレーボール部員である西井千恵子(愛称・チコ)役でレギュラー出演を果たしている(変身ヒーロー作品ばかりでなく、こうした作品もDVD化してくれるように東映ビデオにはマジで切望したい)。
 スーパー戦隊シリーズ『バトルフィーバーJ』(79年・東映 テレビ朝日http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120130/p1)第9話『氷の国の女』では主人公・伝正夫(でん・まさお)=バトルジャパンの高校時代の友人である片山の妹・光子、『金八先生』放映中にも『電子戦隊デンジマン』(80年・東映 テレビ朝日http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120205/p1)第4話『ベーダー魔城追撃』、『金八』終了直後でもうブレイクを果たしたあとの時期の放映である第21話『死神党を攻撃せよ』でも、青梅大五郎(おうめ・だいごろう)=デンジブルーが妹のように可愛がっている星野サチ子を演じている。
 そしてビッグネームのゲスト扱いで、『太陽戦隊サンバルカン』(81年・東映 テレビ朝日http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120206/p1)第36話『エスパー』~第37話『日見子よ』の前後編では、前作のデンジマンたちの母星であるデンジ星人の子孫であるシスター・北沢日見子(きたざわ・ひみこ)も演じた(サブタイトルがやたらと短いのは、新聞のラテ欄に主役たちを差し置いて「三原順子」の名前を掲載するための処置だったという・笑)。
 2010年の参議院議員選挙自由民主党から出馬して見事に当選し、宿敵・民主党から出馬した柔道の金メダリスト・谷亮子を揶揄(やゆ)して「二足のわらじを履けるほど国会議員の仕事を甘く考えてはいない」との公言通り、キッパリと芸能界を引退してしまった。


*武田を演じたのは、『帰ってきたウルトラマン』(71年)で帰ってきたウルトラマンこと新ウルトラマン(略称・新マン。84年以降の名称だとウルトラマンジャック)のスーツアクターを演じたことで、特撮マニアには広く知られるきくち英一(当初の芸名は菊池英一)である。日本大学芸術学部演劇学科在籍中に殺陣同志会に入会。卒業と同時に日大の先輩である渡辺高光(『スペクトルマン』(71年)の公害Gメン・加賀信吉役で知られる)が創設したジャパン・ファイティング・アクターズ(JFA)に参加し、テレビ・映画に多数出演することとなった。
 スーツアクターとしては、『マグマ大使』(66年・ピープロ フジテレビ)のレギュラー悪である宇宙の帝王ゴアを、大平透(おおひら・とおる。声と兼任していた)の代わりに1話分務めたことが初仕事であり、第9〜12話の怪獣フレニックス登場編に登場したルゴース2号や、戦闘員の人間モドキなども演じたほか、第37〜40話の怪獣サソギラス&グラニア登場編では、ゴアと手を組んだ地球人の悪人・シュナイダー役で顔出しで出演していた。
 『ウルトラセブン』(67年)第14~15話『ウルトラ警備隊西へ』前後編では上西弘次の代役としてウルトラセブンを演じているが、右手を拳(こぶし)に、左手を斜め平手にして構えたファイティングポーズはそのまま後年の新マンのそれである。『セブン』第27話『サイボーグ作戦』では甲冑(かっちゅう)星人ボーグ星人も演じていた。
 ほかに、『怪獣王子』(67年・ピープロ フジテレビ)序盤のレギュラー悪である鳥人司令、『魔神バンダー』(69年・ニッサンプロ フジテレビ・製作は66年)の主役・バンダー、『帰ってきたウルトラマン』の第1話『怪獣総進撃』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230402/p1)に登場したヘドロ怪獣ザザーン、『快傑ライオン丸』(72年・ピープロ フジテレビ)に登場した暗黒魔人ギララ・ノイザー・ガンドロロ(すべて声も兼任)、『流星人間ゾーン』(73年・東宝 日本テレビ)第21話『無敵! ゴジラ大暴れ』のガロガバラン星人などでもスーツアクターを務めていた。
 渡辺高光との意見の相違からJFAを辞めてフリーとなる。直後の『電人ザボーガー』(74年・ピープロ フジテレビ)では、元JFAのメンバーを集めて殺陣グループを組んで疑斗を担当しながら、中野刑事役でレギュラー出演。この作品以降、俳優としての活動ではきくち英一を名乗ることになった。「菊池」を「菊地」とよく間違われたことや、ひらがなが入っていると出演クレジットで目立つからというのが理由だそうである。


 俳優としての出演は、『戦え! マイティジャック』(68年・円谷プロ フジテレビ)第1話『かかった罠はぶっとばせ』の敵組織パック団員、第4話『とられたものはとりかえせ』のセルジア国秘密情報部員、『スペクトルマン』第38話『スフィンクス前進せよ!!』の釣人、第62話『最後の死闘だ猿人ゴリ!!』のボクサー・ピストン木戸口のトレーナー、『ウルトラマンA』(72年)第50話『東京大混乱! 狂った信号』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070415/p1)の宇宙怪人レボール星人の人間態(作業員姿・円盤からの声も兼任)、『ワイルド7(セブン)』(72年)第19話『スポーツクラブ殺人部隊』のボディガード、第22話『奇襲! トライアル作戦』のブラックスパイダー団員、『ウルトラマンタロウ』(73年)第36話『ひきょうもの! 花嫁は泣いた』のねこ舌星人グロストに操られる作業員。
 70年代後半では、スーパー戦隊シリーズジャッカー電撃隊』(77年・東映 テレビ朝日)第14話『オールスーパーカー!! 猛烈!! 大激走!!』のクライムボス、『スパイダーマン』第30話『ガンバレ美人のおまわりさん』の村本、『バトルフィーバーJ』第36話『爆破された結婚式』の鬼塚刑事。
 80年代では、『大戦隊ゴーグルファイブ』(82年・東映 テレビ朝日)第1クールのレギュラー敵幹部・イガアナ博士、『星雲仮面マシンマン』(84年・東映 日本テレビ)第4話『魔法の石焼きイモ』のオノ男の人間態(テキ屋風の男)、メタルヒーロー『巨獣特捜ジャスピオン』(85年・東映 テレビ朝日)第25話『救え東京消失! 悪だま善だまデスマッチ』~第26話『とどろく大地! ダイレオン怒りの大逆襲』のガザミ兄、『高速戦隊ターボレンジャー』(89年・東映 テレビ朝日)第35話『愛を呼ぶ魔神剣』の刑事。
 90年代でも、メタルヒーローレスキューポリスシリーズ『特警ウインスペクター』(90年・東映 テレビ朝日)第37話『アマゾネス来襲』の平田忠雄、同じくレスキューポリスシリーズ『特捜エクシードラフト』(92年・東映 テレビ朝日)第41話『対決! ふたりの拳』の死の商人、『電光超人グリッドマン』(93年・円谷プロ TBS)第34話『ボディガード弁慶参上!』の武蔵坊弁慶、『ウルトラマンダイナ』(97年)第43話『あしなが隊長』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971207/p1)の機体整備班長ムカイ。
 21世紀でも、『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060308/p1)第3クールの準レギュラー・針巣直市(はりす・なおいち)など、氏の経歴を綴るだけでも特撮ヒーロー40年史ができてしまうほどの相当な数にのぼっており、その功績ははかり知れないものがあるのだ。
 近年では『ウルトラマンメビウス』(06年)第45話『デスレムのたくらみ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070422/p1)に「きくち電器商会」(笑)の社長役で出演。この回には新マンこと郷秀樹役で団時朗(だん・じろう)も出演し、新マン=ウルトラマンジャックの登場時、きくち社長が「ウルトラマンが帰ってきた!」とつぶやく、お約束ギャグでの歓喜の声をあげていた(笑)。


*大林を演じた鶴田忍は、『スペクトルマン』第48話『ボビーよ怪獣になるな!!』~第49話『悲しき天才怪獣ノーマン』前後編で、宇宙猿人ゴリに利用された堂本博士の手術を受けて天才となったものの、怪獣化する末路をたどった悲劇の出前持ちの青年・三吉を演じたことでも知られている。日本大学鶴ヶ丘高校時代は、『ウルトラマンメビウス』第15話『不死鳥の砦(とりで)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060924/p1)で同作のレギュラー防衛組織・クルーGUYS(ガイズ)のアライソ整備長を演じたベテラン俳優・綿引勝彦(わたびき・かつひこ)と同級生であったそうだ。劇団俳優座の第16期生であり若手俳優として活躍するが、舞台公演を巡って劇団上層部と対立。71年に中村敦夫(なかむら・あつお)・原田芳雄(はらだ・よしお)・市原悦子(いちはら・えつこ)ら(スゴいメンバーだ……)とともに俳優座を退団。『スペクトルマン』でのゲスト出演はその直後のものである。
 ジャンルファンには、その中村敦夫もレギュラー出演していたテレビ時代劇『必殺』シリーズ第7弾『必殺仕業人(しわざにん)』(76年)でのコミックリリーフのレギュラーキャラであった、軽犯罪でたびたび小伝馬町の牢屋に出たり入ったりを繰り返している「出戻りの銀次」役が印象に残っていることだろう。映画やテレビドラマに幅広く出演するようになったのは実は80年代以降のことだそうだ。映画『釣りバカ日誌9』(97年・松竹)以降、シリーズを通して堀田常務を演じたことでも知られ、2010年もフジテレビ『素直になれなくて』『泣かないと決めた日』、テレビ朝日エンゼルバンク』『外科医 須磨久善』『土曜ワイド劇場 再捜査刑事・片岡悠介』、テレビ東京『経済ドキュメンタリードラマ ルビコンの決断』といったテレビドラマに出演するなど、現在でも第一線で活躍中である。


*大谷町の古老を演じた柳谷寛(やなぎや・かん 1911(明治44)年11月8日~2002年2月19日)は、『ウルトラQ』(66年)第19話『2020年の挑戦』の宇田川刑事、第28話『あけてくれ!』の沢村正吉、初代『ウルトラマン』第6話『沿岸警備命令』の斧山船員、『ウルトラセブン』第21話『海底基地を追え』の第三黒潮丸・川田船長、『帰ってきたウルトラマン』第42話『富士に立つ怪獣』の鳴沢村駐在、『ウルトラマンダイナ』第8話『遥かなるバオーン』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971201/p1)の乙吉など、ウルトラシリーズの常連俳優として特撮マニアにはお馴染(なじ)みの俳優である。
 特撮作品では、『緊急指令10-4・10-10(テンフォー・テンテン)』(72年・円谷プロ NET)第11話『妖怪・どろ人間』の遠藤巡査、『ファイヤーマン』(73年)第7話『恐怖の宇宙細菌』のボイラー係、『バトルホーク』(76年・東洋エージェンシー ナック 東京12チャンネル)第10話『紅鬼大人(こうきたいじん)、死す!!』の作造、『快傑ズバット』(77年・東映 東京12チャンネル)第2話『炎の中の渡り鳥』の彦佐などでのゲスト出演もある。また、往年の劇場版『月光仮面』(58〜59年・東映)ではシリーズ全5作で五郎八(ごろはち)を演じていた。
 東宝クレージーキャッツ主演映画の常連でもあり、『クレージー作戦 先手必勝』(63年)の上司、『日本一のゴリガン男』(66年)の黒川、『クレージーだよ奇想天外』(66年)の議長、『クレージー黄金作戦』(67年)の陳情団の団長、『クレージーの怪盗ジバコ』(67年)の博物館長、『だまされて貰(もら)います』(71年)の牛尾雄三、『日本一のショック男』(71年)の村人役などで出演していた。晩年も日曜夜のNHK大河ドラマの直後枠『ドラマ人間模様』(76~88年)で放映された名脚本家・向田邦子(むこうだ・くにこ)による名作テレビドラマ『あ・うん』(80年3月放送・全4話)のリメイクである『向田邦子新春ドラマ あ・うん』(00年・TBS)、『トリック』(00年・テレビ朝日)第8話『千里眼の男』、『土曜特集 ドラマ 介護ビジネス』(01年・NHK)に出演するなど、02年2月に90歳で亡くなるまで生涯現役の俳優であった。


*信夫の父を演じた石山雄大(いしやま・ゆうだい)は、『80』第26話『タイムトンネルの影武者たち』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061023/p1)でも異次元人の首領メビーズを演じている。特撮ジャンル関連では、『ワイルド7』第13話『両国死す!!』のジム・キャット、『ダイヤモンド・アイ』(73年・東宝 NET)第20話『ヒトデツボ・地獄の大竜巻』のデムラ、『仮面ライダークウガ』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001104/p1)の松倉本部長、『特捜戦隊デカレンジャー』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041106/p1)第1話『ファイヤーボール・ニューカマー』の宮内刑事、『ケータイ捜査官7(セブン)』(08年)第33話『宇宙ウイルス』のTV局プロデューサー役などで出演している。スペクトルマンがゲスト出演した名作テレビドラマ『探偵物語』(79年・東映芸能ビデオ→現・東映ビデオ 日本テレビ)第9話『惑星から来た少年』でも、東栄芸能キャップ・遠山次郎を演じていた。
 『太陽にほえろ!』や『西部警察』シリーズ(79〜84年・石原プロ テレビ朝日)など、ロングランとなった刑事ドラマで何度となく悪役や他署の刑事役でゲスト出演しているため、名前は知らなくとも顔に見覚えのある人はきっと多いことだろう。近年ではリストラ請負人(うけおいにん)が主人公のドラマ『君たちに明日(あす)はない』(10年・NHK)で重役を演じている。


*本話で登場したズラスイマーは視聴者からデザインを公募した怪獣であった。ウルトラシリーズでは同様の例として『ウルトラセブン』第41話『水中からの挑戦』に登場したカッパ怪獣テペトが、当時中学3年生だった少年がデザインした回転サイボーグ・ディクロスレイザ(60年代にしては随分と珍しい小洒落たネーミングだなぁ・汗)、続けて第42話『ノンマルトの使者』に登場した蛸(たこ)怪獣ガイロスが、当時5歳の子が考案した「ガイロスせいじん」を原案にしたものであった。ちなみに、『セブン』の前番組である『キャプテンウルトラ』(67年・東映 TBS)第14話『金属人間メタリノームあらわる!!』は謎の惑星・ガイロスが舞台だった。この5歳の子はそこからネーミングを拝借したと邪推するのだが(笑)。
 『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)第46話『いざ鎌倉!』に登場した虹色怪獣タラバンもデザイン公募怪獣だ。本話のズラスイマー同様に、考案した少年を気遣(きづか)ったのか、最後には倒されずに母親のもとに帰される怪獣として描かれた良作である。まぁ、タラバンは見るからに可愛いカタツムリ型の怪獣で凶暴そうに見えないから妥当に思えるが、当の少年はズラスイマーをデザインした少年同様、ウルトラマンティガを敗北寸前まで徹底的に追い詰めるような凶悪怪獣を描いたつもりで大バトルを観たかったのに……と拍子抜けしていたかもしれない(笑)。
 他に『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)第28話『邪悪襲来』に登場した凶獣ルガノーガーは、『ウルトラマンマックス怪獣デザインコンテスト』というそのまんまの名前の公募の最優秀賞の怪獣で、鈴木敦くんという少年がデザインしている。実物は大きな改変もなく体色がシルバーからダークブルーになった程度で比較的、原画に忠実に作られていた。
 なお、『帰ってきたウルトラマン』第34話『許されざるいのち』(これも本話を担当した石堂先生の作品。高校3年生のときに観た再放送では人間ドラマ志向の同話が筆者にとっての『帰マン』最高傑作に感じられた。次作『ウルトラマンA』以降の作風とは異なる、イケてない青春を送っている孤独な学級肌の若者を描いた苦みとセンチメンタルが混ざった作品である)に登場した、動物と植物が混ざった合性怪獣レオゴンは、原案としてクレジットされている当時はまだ高校生であり後年は特撮ライターとしても活躍された小林晋一郎(こばやし・しんいちろう)が円谷プロに投稿したデザインが採用されたものである。氏が同時に投稿したガロア星人の方も、『ミラーマン』第3話『消えた超特急』などに登場した怪獣ダークロンの原案になっているそうだ。


 映像作品ではないが、『ウルトラマンメビウス』終了直後の07年度の小学館『てれびくん』に連載されたグラビア『ウルトラマンメビウス外伝 超銀河大戦 戦え! ウルトラ兄弟』に登場した岩力破壊参謀ジオルゴン(かの暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人の軍団幹部であったという設定!)、08年度連載グラビア『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス』に登場した最強怪獣ガロウラー(エンペラ星人のヨロイ・アーマードダークネスの神秘の力で生まれた怪獣という設定!)も、デザインを公募した怪獣である。同時に連載されていた内山まもる大先生の漫画『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210117/p1)の中でも登場して強敵として描かれた。
 また、講談社『テレビマガジン』07年度連載グラビア『ウルトラマンメビウス外伝 超銀河大戦 ウルトラ兄弟宇宙大決戦!』に登場した知略遊撃宇宙人エンディール星人(同じくエンペラ星人の軍団幹部!)、08年度連載グラビア『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ウルトラ7兄弟大活躍!』に登場する宇宙怪獣ザラボン(同じくアーマードダークネスの力で生まれた怪獣!)も、読者からデザインを公募した怪獣であった。


 筆者の知るかぎりでは、同様の公募デザインの怪獣・怪人の例として、『スペクトルマン』第23話『交通事故怪獣クルマニクラス!!』~第24話『危うし!! クルマニクラス』前後編に登場したクルマニクラス(原案の名前はダンプニクラス。本編ではダンプではなく、スポーツカーにひき逃げされた少年の憎しみが乗り移る怪獣となったことで名前が変更された)、『仮面ライダースーパー1(ワン)』(80年)第45話『君の考えた最優秀怪人ショオカキング』などがある(ショオカキングは消火器がモチーフである敵怪人。『スーパー1』後半に登場するジンドグマ怪人たちは日用品をモチーフにしているが、だからこそある意味でコワい・笑)。


*本話では城野エミ(じょうの・えみ)隊員の出番が極端に少ない。ズラスイマー出現を作戦室でキャッチしたオオヤマキャップが矢的に通信を入れる短いカットで姿が見えるのと、ラストシーンで矢的・イトウ・岩水親子・倉田まり子を「じゃあ、写真撮りま〜す」とカメラにおさめるカットのみなのである。彼女のフィルモグラフィー的には特にこの時期に他の作品に出演していたとも舞台畑の仕事をしていたとも思えないのでナゼなのだろうか? なにかモメていたのだろうか?(汗) 本話は栃木県大谷町でロケが行われているが、この場面のためだけに石田や倉田まり子を都内からの移動に数時間を要する大谷町まで同行させて拘束したとはとうてい考えがたく、ここだけはおそらく都内(多摩川近辺?)で撮影されたと思われる。


 その城野エミ隊員は次回・第43話で侵略星人ガルタン大王のために壮絶な殉職を遂げる! そして、その責任を感じたウルトラの星の王女・ユリアンは、UGMの見習い隊員・星涼子(ほし・りょうこ)として地球に残留して、矢的猛=ウルトラマンエイティとともに、次々に襲い来る怪獣・侵略宇宙人たちに立ち向かうのである! いよいよ次回からは『80』最終章「ユリアン」編が始まるのだ。


2010.11.23.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2011年号』(2010年12月30日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)


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