『ウルトラマンジード』最終回 〜クライシスインパクト・幼年期放射・カレラン分子・分解酵素・時空修復方法はこう描けば!?
『劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!』 ~新アイテムと新怪獣にも過去作との因縁付与で説得力!
『ウルトラファイトオーブ』完結評 〜『オーブ』と『ジード』の間隙ほかを繋ぐ年代記的物語!
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『ジード』初登場の特撮演出&港湾の海特撮!
夜のビル街に新たなるウルトラマンであるウルトラマンジードがすっくと出現。
ノソリノソリと歩き出す姿は、その巨大な青白い釣り目とも相まって、ねらっているのであろうが、ロートルマニア的には初代『ウルトラマン』(66年)#18「遊星から来た兄弟」に登場したサラブ星人が化けた偽ウルトラマンをも彷彿(ほうふつ)とさせる。
そこに流れ出すBGMは、映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE(ザ・ムービー) 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)以来、使用され続けている悪の黒いウルトラマン、ウルトラマンベリアル専用テーマのアレンジ楽曲! ナンという不穏なフインキ!
加えて、人間の視点で上方を見上げたアングルで、左右のあまたのビル群に挟まれた大通りの上方の細長い夜空を、ウルトラマンジードの巨体が悠然と走り幅跳びしていくサマがカッコいい!
そして、怪獣レッドキングと怪獣ゴモラが合体した新怪獣スカルゴモラとウルトラマンジードとの激闘が、坂本浩一カントクらしからぬスピーディーなバトル演出ではなく、重厚なスローモーション映像で描かれる!
あげくの果てに、ゴージャスにも怪獣との激闘は、コンクリの港湾に面した浅い海にまでなだれこみ、水しぶきをあげつつバトルが繰り広げられる。
コレはまぁ、『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)#1〜2前後編の水没した東京の再現なのだろう。
しかし、恐らく作り手は意識していないだろうが、特撮美術セットの配置的にも、筆者としては『ウルトラマンエース』(72年)#18「鳩を返せ!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060907/p1)ラストにおける、高野宏一特撮カントクによる実に凝ったアイデア満載のアクション・カット割り・ワイヤーによる吊りが多用されるエースvsブラックピジョン戦が繰り広げられた港湾&海特撮との酷似も想起する。
あるいは、電気屋の店頭だかのデモ映像で見た、3D-CGキャラクター化されたウルトラ兄弟と怪獣たちが戦う家庭用TVゲーム機ソフト『ウルトラマン Fighting Evolution 3(ファイティング・エボリューション・スリー)』(04年)であったか、道路部分が浅く水没した広大なビル街でウルトラセブン&ウルトラマンレオ vs マグマ星人&ブラックギラス&レッドギラスが戦うシーンなども想起する。
そのゲーム映像に着想されたとおぼしき(?)、同じく道路部分が浅く水没したビル街で戦う『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070624/p1)序盤における、戦隊巨大ロボvs巨大化敵怪人との特撮巨大バトルなども想起させるのだ。
――余談だけど『エース』の特撮は、テロップに表示される面子を見てもわかりとおりで、東宝に下請け・丸投げにされている。そのアウェイの場に登板した円谷プロ生粋(きっすい)育ちの高野宏一(たかの・こういち)特撮カントクは、#18「鳩を返せ!」にかぎらず#24「見よ! 真夜中の大変身」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1)などでも、ドデカくて高い天井を持った東宝の巨大ステージで、あの時代には珍しくワイヤーでウルトラマン(エース)と怪獣(ブラックピジョンやマザロン人)を吊り上げてもいるのだ! どころか、ヒーローと怪獣を空中で激突させたり、落下させたりしている!
アクションの一挙手一投足がイチイチに凝っていたり、カット割りが異様に細かかったりもするのだ。アイデア満載で現場スタッフには無茶ブリ全開の演出(笑)を披露しているので、同好のマニア諸氏はぜひともその観点からも再注目をされたし! 往時は縄張り意識が強かったであろう、撮影現場の東宝特撮陣にナメられないようにと、おそらくキバって張り合っていたのではなかろうか?(汗)――
幻の企画書『ウルトラマンデーモン』との酷似!
事前にマスコミ発表されて読者諸兄もご存じだった通り、今度のウルトラマンは悪のウルトラマンであるウルトラマンベリアルの息子と来たもんだ! ナンという驚き! ナンという変化球!
コレはもうゼロからドラマを逐一描かなくても、この基本設定自体が劇的なドラマ性をハラんでいる! 何も描かなくても、その設定一発で視聴者の側に、悪人の父の血を引いた我が身の呪わしさとそこから離脱しようとする葛藤、それでも見ず知らずの父に対する微かな改心への期待や叶わないときの落胆などのもろもろが勝手に想像されてしまうワケだ。
とはいえ、70年代の子供番組ならばともかく、そのへんを掘り下げすぎて苦悩させすぎても、現今の子供番組としてはクラくなりすぎてしまうことを危惧してか、実際に出来上がった作品に登場するベリアルの息子・ジードこと浅倉リクくん自身は、過剰に悩むことはなく明るくおバカな感じなのだけど。もちろんシリーズ後半では、父親・ベリアルとの対峙や自身の出自との葛藤がメインとなるのだろう。
コレもまた単純比較はできないものの、70年代前半の国民的な「変身ブーム」(第2次怪獣ブーム)の時代の4年連続放映を超えて、2010年代の『ウルトラマン』のTVシリーズが連続5年目に突入できたからこその変化球なのであろう。個人的には「5年目だから」という前提は付けるけど、この変化球の試み自体は肯定したいし、個人的な好悪を云わせてもらえば、大好物なネタである(笑)。
と同時に、もう20年も前の体色が変わることでタイプチェンジする初のウルトラマンこと『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)の放映時に、怪獣画伯こと開田裕治センセイが主宰する同人誌『特撮が来た』で明かされた、ベテラン特撮ライター・小林晋一郎センセイが70年代に次のウルトラシリーズの新作アイデアとして、当時まだ円谷プロに在籍していた特撮ライターの故・竹内博センセイに手渡したという企画書『ウルトラマンデーモン』の記憶もよみがえリ、その企画内容との類似も想起する。
該当の同人誌を発掘する時間がなくて、記憶で書くので間違っていたらご容赦願いたいのだが、その内容は『レオ』#38〜39のババルウ星人前後編で言及された、ウルトラセブンが幼いころに目撃したという、ウルトラの父がウルトラの星の自立軌道を司るウルトラキーを銃器として用い、引き金をひいて発した光線で爆砕した悪魔の星・デモス1等星にカラめたものであった。
そして、東京都心のシックな喫茶店で、その正体はウルトラマンキング――本体そのものではなく分身?――とおぼしき老人のマスターに育てられたという、ウルトラ一族と悪の宇宙人との混血児が、ウルトラマンへと変身し、青い体色のときは悪魔のような戦いぶりを披露するけど、赤い体色のときにはスマートに活躍する! といった内容であったと思う。
第1期ウルトラ至上主義者でありウルトラ兄弟の設定に否定的であるとおぼしき小林センセイが、こんな変化球の企画を上梓していたことには意外の念を強くしたことを思い出す。ちなみに、この企画書に登場する怪獣の名前は、後年の『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)#1(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1)に登場する怪獣の名前と同じくクレッセントであった。
本作の序盤放映時点での特撮雑誌『宇宙船』最新号における、本作のシリーズ構成・乙一(おついち=安達寛高)こと、もはや昭和ウルトラ直撃世代ですらなく、平成ウルトラ3部作の時点でもハイティーンであった、小林晋一郎センセイの20歳以上も下の間隙の世代である1978年生まれの氏のインタビューを読むかぎり、彼は特撮ヒーローマニアではなく(爆)、自身の幼い息子さんが一昨年の『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)にドハマりしたことから、お勉強しだしたニワカのようである。
乙一を招聘した鶴田プロデューサーもまだまだお若そうだから、このふた昔も前の往年の同人誌の記述に影響を受けて、本作を着想したようなことはまったくなさそうだ。とはいえ、才能のあるニワカは才能のない馬齢を重ねたベテランに勝ることを痛感してしまう。今ではなまじのマニアよりも、氏はウルトラシリーズの世界観にくわしいんじゃねーのか!?
TV特撮の脚本に初挑戦したとは思えないような完成度でもある。バックボーンの基本設定自体にはSF的に凝りつつも、それをマニアックに前面に押し出したり、ふた昔前のリアル&シリアス至上主義にもおちいってはいないのだ。主人公少年にしろ、彼の幼なじみのニコニコ保険セールスもとい星人を追う女性捜査官(笑)にしろ、シャッター商店街(汗)の駄菓子屋のオヤジといい、現今の子供番組にふさわしいコント番組的なコミカルさをもまぶしている。そのあたり、周囲のスタッフのアドバイスもあるのだろうけど、子供向けエンタメとして非常にバランスが取れているどころか、その文芸的な仕上がりにはブレたり頼りない感じもなくて盤石(ばんじゃく)な感すらあるのであった。
平行宇宙のひとつが消滅&修復という大風呂敷!
とはいえ、白眉はやはり#1の冒頭だろう。アバンタイトルの1分30秒ほどの間に、夜空にあまたの星が浮かぶ遠宇宙のドコかの惑星や、紅蓮の炎に焼け出された夜のビル街で、ウルトラマンゼロはじめ歴代ウルトラマンや一般のウルトラ兵士たち数十名が、悪の黒いウルトラマンことウルトラマンベリアルと大バトル! あげくの果てに地球が(宇宙まるごとが?)大爆発!!
……だけれども、ウルトラマンキングが即座に地球を修復!(汗) そこに掛かり出す明朗な楽曲は、新番組『ウルトラマンジード』(17年)の主題歌(笑)で、各話の冒頭にも流されるオープニング映像ともなっていく……。
地球滅亡という一大事なのに悲壮感はなくなって、エンタメ作品としてのスケール壮大感だけは残るといった、生命や大自然の大切さを粗末にしつつも、安直に復活させるデタラメ&超ご都合主義で、偽善と欺瞞に満ち満ちた(笑)、もとい人生の厳しさ・辛さ・不条理を提示することに対して過度にイヤがる(汗)昨今の子供番組(&その受け手)の作り方としては、実に綱渡りかつクレバーな、大破局に片足だけ踏み込んでみせるも即座に戻して、過剰に重たいイヤ〜ンな感じはさせずにオイシいトコ取りだけする取捨選択の作劇で……。
オッサンオタクたちの全員とはいわずその大勢は、昭和の『仮面ライダー』シリーズのいくつかの作品における終盤の展開のように、昭和の第2期&第3期ウルトラシリーズ各作の終盤においても、1話完結ルーティンないつもの対怪獣バトルではなく、歴代ウルトラ兄弟たちが徐々に客演・参戦して、最終的に世界各国の首都で同時並行で怪獣と戦うようなスケール雄大な作品を観てみたい! と妄想したことがあるものであろう。
さらには、第2次怪獣ブーム時代の学年誌『小学二年生』に連載された内山まもる先生のコミカライズ『ウルトラマンタロウ』(73年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210124/p1・ISBN:4835447638・ISBN:4091083757)で、ウルトラ6兄弟やウルトラ一族の一般兵士たちが南極大陸で超巨大怪獣と激戦を繰り広げてみせるような作品を、あるいは第3次怪獣ブーム終焉期の『ウルトラマン80』放映終了直後から児童誌「てれびくん」にて長期連載された名作漫画『ウルトラ超伝説』(81〜86年・ISBN:4886531067・ISBN:4886533647)#1にて、東京の広大なビル街に歴代ウルトラ兄弟が集結して異次元超人エースキラーと対峙してみせたようなパノラミックな映像を、TV本編でもいつの日にか観てみたい! と妄想してきたことではあるだろう。
前者については、苦節ウン十年、近年の映画『劇場版ウルトラマンX きたぞ!われらのウルトラマン』(16年)にてようやく果たされることになった。しかし、後者については、その夢が果たされることはなかなかに困難であろうとも思われていたのだ。
……それが! それが! それが! アッという間に、本作#1の冒頭にて、まがりなりにもアッサリと実現してしまうとは! あー、生きてて良かった(笑)。
ウルトラセブン「(はやるウルトラマンゼロを制して)行くな! この宇宙はもう保たない!」
「この宇宙」? 映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE』以来、ウルトラシリーズにはマルチバース(多元宇宙・並行世界)の概念が導入されて、次元を違えたパラレル・ワールドの「地球」や「宇宙」がいくつも登場可能となっていた。つまりは「この宇宙の地球」も、「我らが『昭和ウルトラシリーズの世界』とは『異なる宇宙の地球』」であって、悪のウルトラマンことベリアルの悪事を防ぐべく、昭和ウルトラ世界のウルトラマンたちが次元の壁を超えて出張してきた! ということになるのだ。
まぁ、たしかに昭和の歴代ウルトラ兄弟たちが守ってきた我らの地球が爆発四散してしまっては、長年の苦労が水の泡だヨ! というビミョーにイヤ〜ンな気持ちになったことであろう。だから、「この宇宙の地球」さまにはお気の毒だけれども、「昭和ウルトラの地球」の代わりに犠牲になってもらいましょうヨ(汗)。そして、「昭和ウルトラの宇宙」とは「別の宇宙」だったといった設定を導入することで、単なるひとつの「宇宙」での物語の規模をはるかに超えてみせたSF的なスケール雄大感をも醸すことができるのだから、一石二鳥でもあるのだ!
本作#3「サラリーマンゼロ」の冒頭では再度、ウルトラマン一族よりもさらに上位存在である「神」に近き「ウルトラマンノア」の力に由来している、次元の壁を超える力を持った左腕のブレスレットから出現するヨロイである「ウルティメイト・イージス」の超能力で次元の壁を突破して、「この宇宙」に久しぶりに飛来してきたというウルトラマンゼロが登場する!
そこでゼロが目撃するのは、NHK深夜の人気コント番組『サラリーマンNEO(ネオ)』(06年)ならぬ(笑)、怪獣出現の余波で落下するビルの瓦礫から少年を守ろうとするも、バナナの皮でスベって(汗)トラックにハネられて、病院の待合室の長イスに寝かされて死線(?)をさまよっているグレーの背広姿で黒縁メガネの冴えないサラリーマンであった!
ロートルならばご存じのとおりで、コレは往年の「帰ってきたウルトラマン』(71年)#1(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230402/p1)へのオマージュでもあった。ダメ押しで、ごていねいにも同エピソードにおける、黒バックで仰向けで画面水平に寝込む人間の足許に、垂直にスックと立った等身大のウルトラマンが前のめりに倒れ込むように合体・憑依する合成映像までをも再現!
そして、ウルトラマンが憑依することで、瀕死の人間の肉体をも回復させることができるという超常的な力をも説明する。そして、そこにさらに重ねるかたちで、やはり神にも近しいウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングの偉業も語られる。
ナンと! キングは単に「この宇宙」の「地球」だけを修復したのではなかったのだ! スケールこそ格段に異なるも、ゼロが合体して「死に瀕した人間」を回復させたのと「相似形」の行為として、キングは「この宇宙」の「地球」だけではなくて、超広大な「死に瀕したこの大宇宙」そのもの全体に対して合体・憑依・希釈・拡散してみせたことで(!)、ベリアルが起爆した「超時空消滅爆弾」によって、今まさに爆砕・消滅しようとしていた「この宇宙」全体を「修復」していたことが明かされるのだ!
ナ、ナンだってェェェェェ!!! キングはドコまでチート能力の持ち主なんだヨ! 一時はウルトラマンノアの方が格上かと思ったけど、キングの爺さんの方がコレでまた格上になったヨ!
いやまぁ、たしかに#1冒頭の映像だけだと、爆発した「地球」を修復はしていたけど、その直前に爆発の光芒に巻き込まれて消滅していく太陽系の星々! といった映像があったので、そっちの修復はドーなったんだよ!? ……まぁ、特撮ジャンルにアリがちな昔ながらのテキトー映像かヨ!?(笑) といったツッコミの余地のある「隙」はあったとも思っていたのだけれども……。
キチンと説明してくれるどころか、コチラの予想をはるかに上回る設定であったのだ(爆)。つまりは、キングは「この宇宙」そのものと合体して拡散・希釈化するかたちで、あの事件から6年後の今も「この宇宙」そのものを今まさに「修復」中であるらしい!?
とはいえ、「この宇宙」や「地球」の「修復」とはドーいうことなのであろうか? 地球の全人類も宇宙の藻屑として一度は四散して滅びたハズなのだけど、「時間」自体も「超時空消滅爆弾」起動前もしくはベリアルによる地球襲撃途中に「巻き戻り」したのか、「時間の流れが局所的に1回転する」ような感じで、地球や宇宙を「修復」してしまったのであろうか?
しかし、キングのこの超絶能力による「時空」それ自体の「修復」はムリやり強引なものでもあっただろう。よって、地球の人々の6年前当時の記憶もアイマイとなっており――あるいは、その当時の「時空」それ自体や「因果関係」それ自体も曖昧・デタラメとなっている!?――、紙媒体や電子媒体による記録それ自体も含めて曖昧・不整合なかたちで修復されてしまったのであろうか!?
そのへんの不毛な深読みは卒業したつもりのオッサンなのに、イイ歳こいて若造のSF青年のころのように、おそらく厳密なイミでの正解などはない事象に、SF的な深読みをついついしたくなってしまうのだ(笑)。
幼児向けルーティンと大人向けの狭間をねらえ!
もちろん、このへんの要素は幼児・未就学児童には理解ができない設定でもあるだろう。
ところで我々の世代も、ウルトラシリーズにおけるアンテテーゼ編・異色作・社会派テーマ作品・滋味ある複雑玄妙な人間ドラマなどは、中高生以上になってからの再放送の視聴でようやくに真の意味で理解できるようになったものであった。
しかし、小学校中学年以上ともなれば、往年の名作TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)の再放送などでは、そのSF的な内容を充分に理解もできていてワクワクもしていたものだ。むしろ、初期スーパー戦隊シリーズのような1話完結形式のルーティンバトルが延々と続くような作品にはタイクツしてしまって、小バカにしていたものであった(爆)。
ということは、幼児をタイクツさせないように留意しつつも、子供たちがこのテの番組から卒業することを遅延させるためには、1話完結の対怪獣バトルのみならず、物語や作品世界の背景の部分にてこのテのSF的なスケール雄大な大風呂敷を広げてみせて、それでストーリーを引っ張ったてみせたり、子供たちの興味関心も持続させるべきではなかろうか?
子供たちを子供番組から卒業させないためには、中高生以上にならないと理解ができないような、特撮マニア連中には神格視されている第1期ウルトラの佐々木守脚本&実相寺昭雄監督コンビのアンチテーゼ編や、第2期ウルトラのような社会派テーマ編・人間ドラマ編に、平成ウルトラ3部作における太田愛脚本的な異色作を盛り込んだり、往年のベテランスタッフを登板させて有り難がることではないようにも思うのだ。
そして、それは「幼児」と「中高生」の中間地点にいる「児童」層の知的好奇心・ジャンク知識収集癖を刺激するような、本作『ウルトラマンジード』のような基本設定を有した作品の登場こそがもっとも適切ではないのかとも思うのだ!
――平成ウルトラ3部作の時点で、それらの目論みが果たされていたと主張する御仁も多かろうけど、筆者個人はその大勢の見解には同意しない。『ウルトラマンティガ』における超古代文明や超古代怪獣にしろ、『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971211/p1)における宇宙から飛来する人類の進歩を妨害する銀玉スフィアにしろ、『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)における根源的破滅招来体にしろ、散発的な登場&描写に留まってシリーズのタテ糸として掘り下げられて成功していたとは思われない。それならば、80年代中盤の東映のスーパー戦隊『超電子バイオマン』(84年)や『電撃戦隊チェンジマン』(85年)の方がはるかに連続性や大河ドラマ性を考慮して構築されて当時も話題になっている(往時の東宝・円谷至上主義者はコレらの東映特撮がアウトオブ眼中であったワケだけど・汗)――
まぁ、今の子供向け特撮ヒーロー番組に、小学校中学年以上の視聴者たちという「畑」があるのか!? という、また別の問題もあるけれど(笑)、タネはこれからでも蒔かなきゃ稔らないのだ!
SF作家・伏井出とウルトラマンベリアルの関係
最終的には「この宇宙」の「修復」が、以前の姿と完全にイコールではないにせよ、ほぼ完了すればウルトラマンキングも「この宇宙」から分離・復活して、「昭和ウルトラの宇宙」へと帰還することになって、それが本作のラストにもなるのであろうか?
ロートルオタク的には、『ウルトラQ』(66年)第28話(最終回)「あけてくれ!」に登場したSF作家・友野(演・天本英世)をも少し想起させる、クールなSF作家・伏井出(ふくいで)の去就も気になる。彼は粗暴なウルトラマンベリアルとは性格が異なるものの、冗談で取られることを承知で編集者相手に「宇宙のとある場所に心のひとかけらを置いている」「目を瞑ればそこにいる神と対話できる」とも語っているノダ。自身の精神体=魂の一部を分離させてそれを宇宙へ飛ばして、そこでベリアルともコンタクトを取っているのか、それとも力だけを借りているのかは不明なれども……。
そして、黒スーツ姿の壮年男性でもある彼は、自らもベリアル&レッドキング&ゴモラと合体した新怪獣スカルゴモラ、ベリアル&エレキング&エースキラーと合体した新怪獣サンダーキラーに変身して、ウルトラマンジードとも直接対決!
ベリアルの単純な下僕ということではなく、あのベリアルとも喰えない交渉をしてくれるような老獪さ・大物ぶりを期待したい……。6年ぶりに地球に飛来したウルトラマンゼロを指して、「気の合わない相手と久しぶりに会うかもしれない」と発言しているのを見ると、昭和の第2期ウルトラ作品や21世紀のウルトラマンヒカリのように、地球人としての意識とウルトラ人としての意識が別人格ではなく半ば融合・混濁してしまっているようでもあり……。コレまたナンとも思わせぶりで、イイ意味での小学生の怪獣博士レベル(笑)の深読み=知的好奇心をも喚起させてくれる描写でもあるのだ。
――後日付記:本作放映開始当初は、SF作家・伏井出の正体はストルム星人なる宇宙人だとは明かされておらず、奇人変人でもあくまでも地球人の男性だと思っていたので、一地球人とベリアルの半融合だと解釈していたゆえの記述です(汗)――
つまりは、ウルトラマンキングが「修復」中の「この宇宙」のドコか深淵に、恐らくキングが封印したであろう諸悪の根源・ウルトラマンベリアルも、肉体込みだか魂のみだかは不明なれども、何らかのかたちで潜んでいそうである。だから、キングとベリアルの両者の復活もまた一筋縄ではいかなさそうで、こちらの小出しになるであろうタネ明かしも実に楽しみだ。
潘めぐみ&三森すずこ、アイドル声優登板!(笑)
ウルトラマンジードこと浅倉リク少年の相棒として、『ウルトラセブン』(67年)#6に登場したペガッサ星人の同族の未成年体・ペガも登場して、古びた小さな天文台の下にあったヒミツ基地を拠点としている。『ウルトラマンX』の防衛組織・Xio(ジオ)に所属していた『ウルトラマンメビウス』(06年)#7(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060705/p1)初出のファントン星人の同族とも同趣向でもある。彼のようなキャラクターが存在していれば、地球人よりも文明が進んだ宇宙人としてのアドバンテージで、いろいろと超科学的な説明をしてくれるだろうから、お話の展開もサクサクと早くできるだろうし便利でもある(笑)。
何より少々マイルドに可愛く小型にアレンジ造形されており、お話がロクに理解できない幼児たちにも、NHK教育テレビの幼児向け番組のように「着ぐるみキャラクター」が画面上をウロチョロしているだけで、眼&関心がそこに行くだろう。
いまだに「ウルトラ」は子供ダマシではイケナイ! 本格SFでなければイケナイ! と信じる御仁は激怒するやもしれないけど(笑)、筆者は近年では子供番組にはこーいうキャラは、もっと積極的に投入した方がイイとも考えているので大カンゲイ!――もちろん絶妙なサジ加減でチャチくもならないように!――
……なぞと思っていたら、乙一氏もインタビューで同趣旨のねらいを語っていた(汗)。恐るべし! 乙一氏。
そのペガの声を演じるのは、『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(15年)でも着ぐるみの美少年敵幹部怪人のハスキー声を演じて、顔出しで7人目の戦士ミドニンジャーにも変身した潘めぐみ! そして、ヒミツ基地の人工知能・レムの声を演じるのは、ブシロード製作の特撮プロレスヒーロー『ファイヤーレオン』(13年)でも主人公青年のお姉さん役でレギュラー出演していた、笑顔が顔面に貼りついた(笑)ような三森すずこ!
本作の製作発表記者会見では、このお二方がメインキャストともどもに登板している! ナンでやねん!? いやまぁ、よ〜くわかるのですけどネ。ルックスにも恵まれたアイドル声優も記者会見に登場させて華を出し、アニオタ(アニメオタク・声優オタク)方面にも少しでもノウイングを伸ばしておこう! といった計算なのだろう。なりふり構わず、いろいろとやることは個人的にはイイことだとは思うのだ。民主主義社会における選挙での当選とは一票一票の積み重ねが肝要なのである(笑)。
ブシロード系の声優事務所・響(ひびき)に所属している「みもりん」の起用から、筆者はてっきり本作はブシロードが本作のスポンサーになって、「月刊ブシロード」においても本作のマンガ連載が開始か!? などと思ってしまいました――ウソです。しかし、マジでそれくらいやってもよかったような(汗)――。
『假面特攻隊2018年準備号』「ウルトラマンジード」関係記事の縮小コピー収録一覧
・各話視聴率:関東・中部・関西。各クール平均・全話平均視聴率
・スポーツ報知 2017年4月27日(木) 16歳濱田龍臣最年少変身 ウルトラマン“最凶”ベリアルの息子
・夕刊フジ 2017年4月14日(金) さらばウルトラの母 追悼・ペギー葉山さん
・スポーツ報知 2017年7月9日(日) ウルトラマンVS渡辺邦斗(伏井出ケイ)「21世紀の裕次郎準グランプリ」 10年に石原プロから移籍 悪役初挑戦
・スポーツ報知 2017年7月4日(火) ウルトラマンスペシャルトークショー アリオ鳳1200人大集合(ギンガ根岸&ビクトリー宇治)
・日刊ゲンダイ 2017年7月22日(土) またパクリ!? 中国版ウルトラマンに円谷プロ抗議
・神奈川新聞 2017年7月1日(土) 時代の正体 沖縄考 ウルトラマンシリーズ脚本家 上原正三さん語る<中> 正義を疑い「自由」うたう
『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』 ~ヒーロー大集合映画だが、『タイガ』最終回でもあった!
『ウルトラマンZ(ゼット)』前半評 ~ギャグ漫画・ギャグアニメ的なキャラ立て・会話劇での「お遊び」の中に「タテ糸」を挿入!
https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210828/p1
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『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年) ~岡部副社長電撃辞任賛否!
『ウルトラゼロファイト』(12年) ~おかひでき・アベユーイチ監督がまたまた放った大傑作!
『劇場版ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』(15年) ~第2期ウルトラの「特訓」「ドラマ性」「ヒーロー共演」「連続性」も再考せよ!
『ウルトラマンX(エックス)』(15年)前半評! 5話「イージス光る時」・8話「狙われたX」・9話「われら星雲!」 ~ゼロ・マックス・闇のエージェント客演!
『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17年) ~イイ意味でのバカ映画の域に達した快作!
『ウルトラギャラクシーファイト』『ウルトラマンタイガ』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?
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『ウルトラマンメビウス』(06年)#1「運命の出逢い」 ~感激!感涙!大傑作!
『ウルトラマンマックス』(05年)#1「ウルトラマンマックス誕生!」 ~序盤評・原点回帰は起死回生となったか!?
『ウルトラマンネクサス』(04年)#1「Episode.01夜襲 -ナイトレイド-」 ~ハイソな作りだが、幼児にはドーなのか!?
『ウルトラマンネオス』(00年)#1「ネオス誕生」
『ウルトラマンダイナ』(97年)#1「新たなる光(前編)」~#11「幻の遊星」
『ウルトラマンティガ』(96年)#1「光を継ぐもの」~#15「幻の疾走」
『ザ☆ウルトラマン』(79年)#1「新しいヒーローの誕生!!」 ~今観ると傑作の1話だ!? 人物・設定紹介・怪獣バトルも絶妙!
『ウルトラマンエース』(72年)#1「輝け! ウルトラ五兄弟」 ~超獣・破壊・防衛組織結成・先輩&新ヒーロー登場を豪華に描く!
『帰ってきたウルトラマン』(71年)#1「怪獣総進撃」 ~第2期ウルトラシリーズ・人間ウルトラマンの開幕!
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『ウルトラマンジード』評 ~ジードが全ウルトラヒーロー大投票で15位記念!
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『ジード』1話評 ~クライシス・インパクト! 平行宇宙のひとつが壊滅&修復! その原理!?
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