假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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ウルトラマンメビウス41話「思い出の先生」  〜80!

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ウルトラマンメビウス』41話「思い出の先生」 ~80!

(脚本・川上英幸 監督・佐野智樹 特技監督鈴木健二
(2007年2月28日開催「第6回日本オタク大賞06/07」で、ウルトラマン80(メビウス#41)が審査員6人(オタキング岡田斗司夫唐沢俊一など)の全員一致で大賞! ~まぁ、ネタ的な賞ではあってもメデタイ!)

「想い出のウルトラマン

(文・久保達也)


教師「こうしてると地球を支えている気分になるんだ。地球をしょって立つ! 先生も登校拒否したことあってな」
生徒「先生も?」
教師「そのとき迎えに来てくれた先生が、こうして教えてくれたんだ!」


 母親から託された不登校の生徒を連れて学校へと向かう途中、「いまさら学校行ったところでしょうがないよ」とつぶやいた生徒の前で、教師は突然逆立ちを披露する……


 『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)第2話『先生の秘密』(脚本・阿井文瓶 監督・湯浅憲明 特撮監督・高野宏一・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100507/p1)に、まったく同じシチュエーションの場面が存在する。
 第1話『ウルトラマン先生』(脚本・阿井文瓶 監督・湯浅憲明 特撮監督・高野宏一・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1)で、東京都世田谷区の桜ケ岡中学校に赴任して1年E組の担任となっていた理科の教師・矢的猛(やまと・たけし)は、第2話にして早くも登校拒否に陥ってしまったゲスト主役・塚本幸夫(つかもと・ゆきお)生徒を学校に連れてこようと、彼の信条のように「一所懸命」に努力した。


――塚本を演じた子役・藤原哲也は、『アクマイザー3(スリー)』(75年)・『超神ビビューン』(76年)・『宇宙鉄人キョーダイン』(76年)・『快傑ズバット』(77年)など、70年代半ばに東映の変身ヒーロー作品によくゲスト出演していたという情報を得ている。筆者の知るところでは、『(新)仮面ライダー』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1)第7話『カマキリジン 恐怖の儀式』において、サタンカマキリを大量に孵化させるための生け贄として、ネオショッカーにねらわれる13才の少年役で出演していた――


 だが、小学校時代に仲が良かった友人たちとともに私立中学を受験したものの自分だけが不合格になってしまい、英語も苦手だという塚本の心の闇は矢的の想像を超えたものだった。せっかく学校へと連れ出したものの足取りの重たい塚本の前で、矢的は塚本を奮い立たせるために公園で突然、逆立ちを披露した!


矢的「股の間からオレを見てみろ! 地球を持ち上げているように見えるだろう! 地球をしょって立つ! あぁ、重いなぁ、重い重い……」


 『ウルトラマン80』は観たことがないウルトラシリーズのファンであっても、ウルトラマンエイティこと矢的猛が中学校の教師を兼任していたという設定くらいは知っているだろうから、この教師が矢的と何からしらの関係があるのだと思うだろう。『80』にくわしいマニアであれば、第2話に登場した矢的の教え子・塚本が成長した姿なのか!? とつい想像もふくらむだろう。


 校門までたどりついたふたりを、クラスの代表として学級委員らしき男女の生徒が出迎えた。「みんな待ってるよ」との声に、不登校生徒は意外にもアッサリとにっこり笑顔を見せて校舎へと向かう。
 こんなにも簡単に解決してしまうあたりは、『80』第2話での顛末とは異なるところなのだが、この任務を成し遂げた教師もまた満足気に笑顔を浮かべて、登校してきた生徒たちと「おはよう」のあいさつを交わしながら校舎へと向かっていく……


 30分の尺をかけて不登校――1980年当時は「登校拒否」と呼称――の生徒の問題を解決していた『80』第2話と比すれば、一瞬でこの問題が解決してしまうこの点描は浅いものではある。しかし、このエピソードは不登校よりももっと他に議題とすべき事項があるので、今回の生徒については、『80』第2話における不登校の生徒と比すれば幸運にもはるかに軽症だったのだ……と解釈すべきものであり、ならばこのような取って付けたような描写は不要という意見もあってもよいのだが、原典の『80』らしさを醸し出すための助走台としては、やはり必要な描写ではあったのだ。


 そして、その中学校は、まさに矢的先生がかつて赴任していた「桜ケ岡中学校」であったのだ……。*1



 ちょうどそのころ、宇宙空間から地球へと超高速で突入してくるクリスタル状の物体と、それを猛スピードで追跡している光の戦士の姿があった!


 大気圏に突入するや、光の戦士は両腕を合わせて、物体に向けて幾重もの光輪を放った!


 奇しくもそれは、矢的猛の正体でもあるウルトラマンエイティの必殺技・スパイラルビームであった!


 スパイラルビームは多用された技ではなかったが、第6話『星から来た少年』(脚本・広瀬襄 監督・湯浅憲明 特撮監督・高野宏一・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100606/p1)でもUFO怪獣アブドラールスの円盤を破壊する際に使用されていたので、ほぼ同一のシチュエーションという気の利いた描写である。


 物体はスパイラルビームを浴びて爆発四散したかと思いきや、『メビウス』第31話『仲間達の想い』でメビウス抹殺の使命を帯びて登場した円盤生物ロベルガーと同型の姿に変形して、地上にズドーンと舞い降りた!


 ロベルガー二世が到達した南洋上に実在するウェーク島に、光の戦士も颯爽と着地する!


 エイティの変身アイテム・ブライトスティックが変身時に輝く際の効果音に続いて、ファンファーレのごとく鳴り響く『ウルトラマン80』の主題歌アレンジ曲をバックに、ウルトラマンエイティが華々しくその勇姿を現したのだ!!


 そして、ファイティングポーズを決める際の、70~80年代に大流行した香港カンフー映画を彷彿とさせる、拳を振るうときの風を斬るような「フォッ!」という効果音までをも律義に再現!――ちなみに、エイティが拳を振るうときの風を斬るような効果音は、実は東宝製作の特撮巨大ヒーロー『メガロマン』(79年)が拳を振るうときの効果音の流用でもある――


 2006年12月27日にコロムビアミュージックエンタテインメントから発売されたCD『ウルトラマンメビウス ORIGINAL SOUNDTRACK VOL.2』(ASIN:B000JVS44E)のトラック36に収録された『ウルトラの勇者たち』(http://www.hmv.co.jp/product/detail/1217756)と題された楽曲は、『ウルトラマンタロウ』(73年)・『ウルトラマンレオ』(74年)・『ウルトラマン80』(80年)の各主題歌のイントロのアレンジをメドレーとして演奏した曲であった。


●第29話『別れの日』~第30話『約束の炎』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061203/p1)と映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年9月16日公開・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)におけるウルトラマンタロウの登場シーン!
●第34話『故郷(ふるさと)のない男』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061224/p1)におけるウルトラマンレオの登場シーン!
●本話におけるウルトラマンエイティの登場シーン!


 これらで流されてきた、視聴者を感涙させたそれぞれの主題歌アレンジのテーマ曲は、実はこの楽曲を分割して使用されたものであった。だが、すでに今後の再登場が告知されているウルトラマンジャックウルトラマンエースの登場シーンを想定したようなアレンジ曲は今回のCDには収録されていない。ひょっとして今度こそオリジナルの主題歌を使用してくれるのだろうか!?


――2007年現在では既成の歌曲を流用する場合、テレビ放映だけならば無料だそうだが、ソフト化の際には音楽著作権を一括して管理している日本音楽著作権協会JASRACジャスラック)にかなり高額の金銭を支払しなければならないそうだ。『メビウス』で既成の歌曲が流用されない一因なのだろう。近年の漫画などでも既成の歌曲の歌詞の引用や替え歌が掲載できなくなったのはこれが理由で、『マンガと著作権』(01年・米沢嘉博コミケットASIN:4883790894)によると漫画家の原稿料よりも高い場合があるそうだ(爆)。過去映像の再利用も基本的には静止画のみで動画が使用されないのは、同じような著作権団体なり当時の脚本家・監督・出演者へのロイヤリティ問題が現在では存在するためだからだと思われる――



 ここまで原典を忠実に再現してくれているのにワガママを云うのは心苦しいのだが、製作予算を度外視したことを云わせてもらえば、ロベルガーの代わりにアブドラールスが再登場してほしかった(笑)。アブドラールスは口元のリレー電飾が宇宙怪獣としての不気味さ&カッコよさを醸し出していて実に魅力的であり、個人的にも好きな怪獣だからだ。


 「円盤」と「スパイラルビーム」という『80』第6話の引用をしてくれるのであれば、レギュラーの生徒ではなかったのだが、「自分は宇宙人だ!」と主張していた同話ゲスト主役の大島明男生徒の成長した姿なども、1カットだけでもよいので点描してほしかった気がする。なにせ、『メビウス』第16話『宇宙の剣豪』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060928/p1)と第18話『ウルトラマンの重圧』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061022/p1)に登場した「オオシマ彗星」とは、同作番組公式ホームページ上のコーナー「WEB(ウェブ)メビナビ」によれば、『80』第6話のゲスト主役であった天体望遠鏡で星を見るのが唯一の楽しみの大島明男少年が発見した彗星であるというウラ設定もあったからだ!


 余談だが、この『80』第6話で、アブドラールスが目から発した火炎光線が、脚にカスってズボンから瞬間、火が上がってしまった(!)明男少年を治療する医師を演じたのは、オールド特撮マニアには馴染みが深い東映ヒーローものではあまたの悪役の声を演じてきた渡部猛(わたべ・たけし)であった。


●『キカイダー01(ゼロワン)』(73年)第37話『剣豪 霧の中から来たワルダー』以降にレギュラーとなる、ゼロワン抹殺のために大犯罪組織・シャドウに雇われた剣豪ロボット・ワルダー!
●同作第23話~第27話にかけては、敵組織シャドウの幹部怪人・シャドウナイト!
●『イナズマンF(フラッシュ)』(74年)第8話『ウデスパー兄弟! クロスハリケーン!!』から登場した幹部怪人・ウデスパーα(アルファ)!


 渋いボイスのライバル的な悪役が印象に残る氏だが、ウルトラシリーズではなんと云っても、『ウルトラマンタロウ』第39話『ウルトラ父子(おやこ)餅つき大作戦!』に登場したうす怪獣モチロンだろう。「新潟の米はウメ~ぞ~~」とヌカしたり、ウルトラマンエースに男女合体変身していた再登場した月星人(げつせいじん)・南夕子のことを「アネさん」呼ばわりするコミカルな演技は必聴である(笑)。


 なお、『80』第6話ラストで明男の治療に輸血を申し出る1年E組の生徒たちのうち、落語・ファッション・博士はO型であることが判明する。林校長はB型。なにかと矢的をネチネチといたぶるオールド・ミスの野崎教頭はAB型であった。ちなみに野崎教頭に血液型を問い詰められた矢的は一瞬口ごもったあと、「僕はA型なんです!」と口走っている――正体はウルトラマンなのに、人間に変身すると人体構造も血液型も人間のようになるのだろうか?(笑)――



 ウルトラマンエイティは飛び蹴り! 側転! 回し蹴り! など、ロベルガー二世に対して軽快なアクションを次々に繰り出す!


 スピーディーなファイティングスタイルは見事に原典のエイティを踏襲!


 ちなみに、『80』第1話~第8話でエイティのスーツアクターを務めていてのは、昭和の『仮面ライダー』シリーズ(71~75・79~81年)でもスーツアクションを担当していたことでも有名な「大野剣友会」に所属していた赤坂順一。『(新)仮面ライダー』や、『仮面ライダースーパー1(ワン)』(80年)でも活躍していた氏は、『80』においてもライダーキックばりの見事なキック攻撃を数々披露! 第2話で早くも羽根怪獣ギコギラーの頭上目掛けて3連発ものキックを浴びせるという離れ技を成し遂げている!


 ウルトラマンタロウのスワローキックやウルトラマンレオのレオキックに比べると知名度は低いものの、赤坂が演じたものではないが、第18話『魔の怪獣島へ飛べ!(後編)』(脚本・阿井文瓶 監督・湯浅憲明 特撮監督・佐川和夫・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100829/p1)で吸血怪獣ギマイラを葬り去ったムーンサルトキックという必殺技を持つほどに、実はエイティは蹴り技を得意とするウルトラマンなのである。
 それに加えて、側転やバック転の披露は72年のウルトラマンエースからはじまってはいたが、演技クサいとかワザとらしいとか舞踏的という批判もあるのだろうが、エイティのキビキビとした身のこなしのアクションは、まさに80年代以降の特撮変身ヒーローアクションの元祖ともいえる軽快なものだった!


 ロベルガー二世は両手から紫色の光弾をまるで手裏剣のように矢継ぎ早に繰り出した! 赤い単眼からも紫色のビームを放った!


 さしものエイティもピンチに陥る!


 そこに、我らがウルトラマンメビウスも登場!


 ウルトラ兄弟の共闘が描かれなかった『80』においては、第49話『80最大のピンチ! 変身! 女ウルトラマン』(脚本・山浦弘靖 監督・宮坂清彦 特撮監督・高野宏一・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210307/p1)でウルトラの星の王女さま・ユリアンとエイティが合体怪獣プラズマ&マイナズマとの死闘を演じたのが、複数のウルトラマンが共闘した唯一の場面だった。そして、エイティが他のウルトラ戦士と共闘を演じるのは、実にそれ以来となる26年ぶりのことなのである!



エイティ「君への授業はこれまでだ。新しい教官のもとでも一所懸命、頑張ってくれ」


 DVD『ウルトラマンメビウス Volume.7』(バンダイビジュアル・06年1月26日発売・ASIN:B000KJT9EE)の解説書に掲載されていた物語『ザ・ウルトラマンメビウス episode6』(絵・内山まもる 文・赤星政尚!)では、地球での経験を活かして若き宇宙警備隊員の指導にあたっていたエイティはメビウスにこう告げて、新しい教官・ウルトラマンタロウメビウスを託していた。タロウの指導を受ける前は、メビウスはエイティの生徒だったのである! メビウスが得意とする回し蹴りや空中高く舞い上がって炸裂させる飛び蹴り・側転・バック転は、タロウ教官よりもむしろエイティ教官から教えられたものなのかもしれない。


 ロベルガー二世に対してエイティ教官とかつての教え子・メビウスがともに得意の蹴り技を連続で浴びせかける!


 かなわぬと見たロベルガー二世は宙に舞い上がって、エイティとメビウスに向かって両手から矢継ぎ早に手裏剣光弾を浴びせてくる!


 しかし、エイティは先述した『80』第18話でもタコ怪獣ダロンを串刺しにしたことで印象深い、サクシウムエネルギーを超細長い光の槍状に変形させたウルトラレイランスをなんとここで披露するサプライズ!! 宙に浮かんでいるロベルガー二世に投げつけた!


 腹をブチ抜かれたロベルガー二世に対して、エイティは左腕を伸ばして宙高くに掲げて右腕も水平に伸ばした前振りのタメのアクションから両腕をL字型に組んで、必殺のサクシウム光線を!


 そしてメビウスも、両腕を十字に組んで必殺光線・メビュームシュートを放った!


 師弟が同時に繰り出したウルトラ・ダブルビームに、ロベルガー二世の鋼鉄の身体も木っ端微塵に砕け散んだ!!



 小学館の幼児誌『てれびくん』80年5月号(80年4月1日ごろ発売)で、ウルトラ兄弟がサクシウム光線について評価する記事が掲載されていた。筆者のおぼろげな記憶を以下に紹介させていただく。


初代マン「サクシウム光線の強さの秘密は発射するポーズにあるんじゃないのかな。スペシウム光線よりも強力だと思う」
セブン「新しい技・ウルトラブーメランも早く見たいな」――引用者註:エイティ頭頂部の赤い部分がウルトラセブンアイスラッガーのような宇宙ブーメランになると各媒体で紹介されたものの、結局劇中には登場しなかった・汗――
新マン「私は光線技があまり得意ではないので、君のサクシウム光線がうらやましいよ」
エース「サクシウム光線で倒せない敵が現れるかもしれないぞ! 特訓してパワーアップしてはどうかな?」
タロウ「サクシウム光線は発射するまでに少し時間がかかるようだ。そこをねらわれないように気をつけてくれ!」
レオ「エイティは光線技のほかに空手技も得意なんだね。いつか力くらべをしてみたいな」


 ウルトラ兄弟随一の多彩な光線技を持つエース、ウルトラ兄弟最強の肉体を持つとされているタロウのコメントは、各キャラの個性も見事に反映しながら、実に説得力あふれたものになっている。後年の『メビウス』第34話で、レオはエイティとではなくエイティの教え子であるメビウスと力比べをすることになるのだが。


 本エピソードにおける怪獣を倒してみせることで視聴者にカタルシスを与える「特撮バトル」は実質的にはこの序盤のみとなる。それはもちろんこのエピソードのクライマックスが「バトル」ではなく「ドラマ」とするための処置なのだ。
 しかし、それは諸刃の剣(もろはのつるぎ)であって、メインターゲットの幼児たちにとっては退屈で物足りないものになる可能性は高いのだ。それを考慮すれば、このエピソードの序盤で早くもメビウス&エイティによる夢の共闘を描いてしまったのは、「バトル」成分の不足によって幼児たちに不全感を抱かせないための処置としての確信犯的なものだろう。



 同じころ、桜ケ岡中学校の校門の前に自転車を停めて、感慨深く校庭の生徒たちを眺めるスーツ姿の男がいた。後方から近づいてきたワゴン車から彼に声をかけてくる男。


スーパー「おい、落語(らくご)!」


 スーパー、落語…… もちろん前話ラストの予告編で、あるいは冒頭にウルトラマンエイティが客演していることから、彼らが『80』にゆかりのある登場人物たちであることは、幼児はともかく児童であっても推測がつくことだろう。そう、彼らはかつて桜ケ岡中学校で、矢的猛が担任していた1年E組の生徒たちなのである。


 スーパーとはもちろん彼のアダ名であり、本名はススムである。
 原典で彼を演じた清水浩智氏は、『80』放映の同年秋から放映が開始された『3年B組金八先生(Ⅱ)』(80年)では、イタズラ好きそうなスーパーとは正反対のマジメな学級委員・羽沢康男役でレギュラー出演している。『金八』マニア間では隠れた名作扱いをされている第11話『クソまみれの英雄達』では主役も務めていた。
 現在でも役者業を続けているようだが――1984年に創立された劇団第三帝国→現・S.W.A.Tの初期からのメンバーだとか――、残念ながら今回のスーパーを演じたのは彼ではなかった。私見だが、劇団ホームページで見る今の清水氏はカッコよくなりすぎていて、本話で演じた役者さんの方がスーパーっぽい(笑)。


 父親が八百屋が少々大きくなった程度のスーパーを経営していることからそうアダ名されたスーパーことススムは、普段は明るい人気者だ。しかし、『80』第4話『大空より愛をこめて』(脚本・阿井文瓶 監督・深沢清澄 特撮監督・高野宏一・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100523/p1)では主役編が与えられていた。


 今は亡き母親に代わって家を支えてきた姉・広子が嫁に行くことが決まる――この姉を演じた島本須美(しまもと・すみ)は、『80』の前作であるテレビアニメ『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)の防衛組織・科学警備隊の星川ムツミ隊員やアニメ映画『風の谷のナウシカ』(84年)の声優としても超有名――。



 さらには、父親の再婚話までもが持ち上がってしまう!


――余談だが、この気のよい父親に再婚話を勧めている常連客のオバちゃんを演じているのはベテラン女優・五月晴子(さつき・はるこ)である。彼女は、


●『帰ってきたウルトラマン』(71年)第48話『地球頂きます!』では、怠け者のゲスト少年・勝に「勉強しなさい!」と迫ってくる「教育ママゴン」役
●『ウルトラマンタロウ』(73年)第41話『母の願い 真冬の桜吹雪!』では、自宅の屏に落書きしたゲスト少年・正博を怒鳴りつけてくる、アニマル柄のコートを着て小型犬・ポメラニアンも散歩に連れているセレブおばさん
●『ウルトラマンレオ』(74年)第26話『ウルトラマンキング対魔法使い』でもゲスト少年・哲夫の母親役


 などなど、彼女がウルトラシリーズに出演する際は、すべて「クチうるさいオバはん」役だった(笑)。


 ピープロ特撮『スペクトルマン』(71年)第32話『よみがえる三つ首竜!!』でも、三つ首竜が口から吐き出した岩石の直撃を受けて命を落とす、かわいそうな母親役を演じている。


 五月晴子演じるオバちゃんがスーパーの父親に勧めてくる女性のお見合い写真をよく見てみると、国際放映製作の子供向けテレビドラマ『ケンちゃん』シリーズ(68~82年・TBS)後期の作品でもよくおばあちゃん役を演じていた風見章子(かざみ・あきこ)が写っている。トリビア知識だが、彼女は『タロウ』第5話『親星子星一番星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071230/p1)のオープニングにもクレジットされていたものの、実作品には登場しなかった。尺の都合で出演場面がカットされてしまったのだろう・汗――


 家庭に他人さまが入ってくる可能性から荒んだ心境となったのか学校をサボってしまって、『80』放映前年の1979年に発売されたばかりで、当時は大ヒットしていた携帯カセットプレーヤー・ソニーウォークマンをヘッドフォンで楽しみながらローラースケートに興じてしまうような別の一面をのぞかせた!


――このときスーパーが聴いていたのは、1980年初頭に歌手・沢田研二が大ヒットさせていた名曲『TOKIO(トキオ)』という具合に、『ウルトラマン80』というタイトルを象徴するかのような1980年当時の世相が同作にはかなり反映されている。第1話で早くも桜ケ岡中学校の校長(演・坊屋三郎)が当時大流行していた「占星学」に登場する「天中殺」という用語を口にしている(笑)。劇中世界でも『ウルトラマンレオ』放映終了以来の5年間も怪獣が出現していなかったという設定から、異変の前兆にも実にノンキな様子の防衛組織・UGMの若手隊員たちまでもが、作戦室内でその前年に大流行していたテレビゲームであるインベーダーゲームに興じている場面までもが描かれているのだ!
 ちなみにインベーダーゲームとは、1978年にゲームセンター・玩具屋・駄菓子屋・喫茶店などを中心に設置された、画面上方から左右に移動しながら徐々に降下してくる多数のドットの粗いインベーダーを次々に撃ち落としていくだけの、現在の視点で見ると実に素朴な草創期のテレビゲームである。しかし、子供たちがその中毒性で小遣いを使い果たしてしまうなどとPTAからは問題視されていた。筆者も中学生時代に全校集会で生徒指導の教師が「インベーダーは英語で侵略者という意味です。先生たちはインベーダーゲームに君たちの頭の中が侵略されてしまうんじゃないかと心配しているのです!」などと演説していたことを思い出す(笑)――



 矢的が学校をサボっている理由を問いただすと、スーパーは、


「教科書を捨てよ、町へ出よう! 寺山修司


 とオチャラけたかと思えば急転して、


「世の中なんて、ブッ壊れてしまえばいいんだ!!」


 などと叫ぶなど、思春期独特の不安定な少年の心を多面的に見せた描写が秀逸であった。


――ここで言及された寺山修司(1935(昭和10)年12月10日~83年5月4日)とは、作家・劇作家・詩人・映画監督・競馬評論家などマルチな才能を発揮した有名人であり、彼の有名著作『書を捨てよ、町へ出よう』のタイトルの引用である。ちなみにこのタイトルでの氏の作品は、以下の4種類が存在するが、内容はすべて別物だそうである。


●評論集『書を捨てよ、町へ出よう』(67年・芳賀書店ASIN:4041315220)――芳賀書店からは、同67年3月25日に『(カラー写真版)決定版 怪獣大行進』と題した、東宝映画怪獣とウルトラ怪獣の当時としては珍しかったカラー写真を多数収録、『ウルトラQ』と初代『ウルトラマン』(共に66年)の放映リストをはじめて掲載した怪獣図鑑を発行している――
●『ハイティーン詩集・書を捨てよ、町へ出よう』(68年・演劇実験室「天井桟敷(てんじょうさじき)」第7回公演)
●映画『書を捨てよ、町へ出よう』(71年・日本アート・シアター・ギルド(ATG)・製作&脚本&監督 寺山修司ASIN:B00005OO62
●評論集『続・書を捨てよ、町へ出よう』(71年・芳賀書店ASIN:4309408036


 『ウルトラマンダイナ』(97年)第38話『怪獣戯曲(ぎきょく)』(脚本・村井さだゆき 監督・実相寺昭雄 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971209/p1)でも、清水紘治(しみず・こうじ)が演じる鳴海浩也(なるみ・ひろや)が、劇団員に「書を捨てて町に出るんだ!」などと叫んでいるセリフがあるが、これももちろん寺山修司からの引用である――



 スーパーの初老の父親が、五月晴子演じるオバちゃんや結婚間近のスーパーの姉を安心させるために再婚のお見合いを承諾する姿に、居合わせた矢的先生は年頃であるスーパーの気持ちを考えてしまって困惑する……
 しかし、実は彼女たちを安心させるための父親による「優しいウソ」「演技」であったことを明かして、矢的が感動するヒューマンなやりとりが、長じてから観返すと実にエモーショナルなエピソードでもあるのだ!――逆に云うならば、幼児や児童たちには理解ができない高度な人情描写なのだが・汗――



 そのスーパーがいま現在、新社長として経営しているらしいスーパー(笑)も登場!


 1980年当時はスーパーといっても八百屋っぽかったのだが、2007年現在ではキレイに改築されて、店の面構えの上方には「harada store」なる店名も見えている――そのためだけに飾りをつけるだけの予算があったとも思えないので、おそらくロケに使用されたお店の実名なのだろう(笑)――。



 一方の落語は、


「毎度バカバカしいお話で……」


 などといちいち落語調にキャラをつくって話してくる少年であり、本名は鍛代順一という。第2話の冒頭で、矢的が生徒たちのテスト用紙を採点していて、「落語のヤツ、またこんなとこ間違えて……」などとボヤく場面がある。このテスト用紙に書かれていた氏名から落語の本名が特定できるのだ。演じいてる子役の本名そのままだったのだが……(笑)


 第8話『よみがえった伝説』(脚本・平野靖司 監督・湯浅憲明 特撮監督・高野宏一・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100620/p1)では、鍾乳洞を見物しに行くバスの車内で女子生徒のファッションとケンカして転倒!


 頭から血(!)を流してしまった落語を、矢的が心配して介抱しようとするが、


「ヘヘヘ。冗談ですよ、ジョーダン」


 なんと血の正体はケチャップであったのだ(笑)。


 そして復活怪獣タブラ出現によって地割れが起こって、落語はマドンナ教師・相原京子先生ともども地底へと転落してしまう! それでも鍾乳洞の奥から発してくるナゾの光を見つけて好奇心から奥へと潜入していき、タブラの舌にカラめ取られてしまうなど、冗談とイタズラが大好きな少年であった。


 第10話『宇宙からの訪問者』(脚本・土筆勉 監督・湯浅憲明 特撮監督・川北紘一http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100704/p1)では、翌日のテスト用紙を盗み出そうとスーパーとともに矢的の下宿にこっそりと忍び込む(爆)。しかし、矢的の部屋に居合わせたエイティの幼馴染みでもある女性・アルマから、教科書を5回なぞると100点がとれるという「魔法のえんぴつ」を手渡される。
 スーパーの方はそれをまったく信じなかったのだが、落語の方は意外にも真剣な表情で教科書をなぞるのだ――5回もなぞれば暗記してしまうというオチ(笑)――。冗談とイタズラで人を驚かせるのが大好きだった落語だが、落語以上に冗談とイタズラが大好きなアルマを登場させることによって、落語の別の意外な一面をも引き出すことに成功した作劇でもあった。


 ちなみに、アルマは銀河共和国の惑星調査員でもあり、各惑星の生物の存在価値を調査して不必要だと判断した生命体を消滅させる権限を持っている(爆)。こう書くと、70年代人類ダメSF(小説)や90年代後半の平成ウルトラ3部作が好んで描いた「人類批判」ネタに見えるかもしれない。
 しかし、このエピソードではアルマを矢的の妻であると生徒たちが誤解してしまって、その潔白を証明するために矢的が京子先生を強引に自室に連れてきたところ、なんと食卓にはローストビーフをはじめとする豪華な料理が用意してあり、「あなたのアルマ♥」(笑)などとメッセージまでもが添えられていたことから、京子先生が「これをアタシに見せつけたかったのね!!」などと激怒するという、生徒たちも交えた三角関係のドタバタ・ラブコメディが中心に描かれているので、陰欝な印象は皆無に等しい(笑)。


 同話に登場した変形怪獣ズルズラーも、アルマが生物調査のためにペットとして連れているサザエに似た宇宙生物・ジャッキーが、「魔法のえんぴつ」を奪い合ってケンカするスーパーと落語や、交通事故が起きて争っている男性たちから、闘争本能のマイナスエネルギーを吸収して狂暴化を遂げて、そのジャッキーを動物園の象さんがエサとともに飲みこんでしまって、象さんまるごと巨大怪獣化してしまうという設定であった。同話以前はやや抽象的な存在であったマイナスエネルギーが視覚的にもわかりやすく表現されているのだ。


――ちなみにアルマを演じたのは、当時の美人女優である遠藤真理子。京子先生役の浅野真弓とともに、NHKの『少年ドラマシリーズ』(72~83年)などにもよく出演していた御仁でもある。近年では『検証・ウルトラシリーズ』と題した第2期&第3期ウルトラシリーズ研究本や雑誌『ウルトラマンAGE(エイジ)』(01~04年)などで我々特撮マニアたちにも知られている辰巳出版から、「タツミムック58」と称して『遠藤真理子写真集 妖咲狂花(ようしょうきょうか)』(82年12月15日発行・定価1500円・ASIN:B089CLR3X3)なるアダルティーな写真集も発行されていたのを古本屋で発見! カバー折り返しにあるプロフィールを参考までに紹介しておこう。


 1960年1月2日、東京生まれ。B・81、W・58、H・83。特技・ピアノ、バレエ(クラシック&ジャズ)、日舞、水泳、三味線、英文タイプ。72年から劇団若草、78年から青年座で活躍。主な作品『末っ子物語』(75年・NHK)、『つくし誰の子』(71年・日本テレビ)、『さやえんどう』(75年・NET→現テレビ朝日)、『菜の花の女』(77年・関西テレビ)、『江戸を斬る』Ⅱ~Ⅴ(75~80年・TBS)、『大岡越前』第5部(78年・TBS)、『草燃える』(79年・NHK大河ドラマ)、『月桂冠』(CM)


 2007年2月4日にネット上にアップされた「あの人は今こうしている・遠藤真理子」(日刊ゲンダイ・ネット配信)によれば、2001年1月1日に13才年上の不動産会社の経営者と結婚。その後のテレビ活動は減ったが、05年9月9日から11日にかけて東京は下北沢の劇場で彼女がプロデュースした舞台作品は連日満員御礼だったらしい。
 筆者としてはアルマのような、テレビ時代劇『大岡越前』で高橋元太郎が演じた岡っ引き・すっとびの辰三の許婚(いいなづけ)・お花のようなチャキチャキ娘役こそが彼女には最も似合っていたように思う。太平洋戦争末期の沖縄戦を舞台にした当時の若手女優たちが大挙出演する82年版の映画『ひめゆりの塔』(東映)でのシリアスな役柄での出演も忘れてはいけない――



 スーパーと落語が久しぶりに母校である桜ケ岡中学校を感慨深く訪れたのにはワケがあった……


落語「この学校、なくなるんだってなぁ」
スーパー「あぁ、隣町の学校と統廃合されるそうだ」
落語「寂しいよなあ……」


 少子化によって学校の統廃合が進む現代日本の世相も反映させつつ、学校自体が廃校になってしまうという寂しい事象でも、本エピソードの物語自体の「寂寥感」や「切なさ」も醸してきて、雰囲気も盛り上げていくのだ……


 中学校の運動部の面々が部活をしている放課後の校庭におもわず入ってきてしまったふたりは、ひとりの教師に呼び止められる。


教師「あの~、部外者の方は立入禁止なんですが……」


 そう、90年代には教育評論家連中や『3年B組金八先生』第4~第5シリーズなどで、地域に開かれたオープンな学校を! 地域の人々もブラッと入ってこれて、教師ではないオトナの目線も入ってくることの重要性! などといったことが賞揚されたものだ。しかし、2001年に起きた池田小学校での無差別殺人事件でこの風潮は一変! 校門は登下校時以外は基本的には閉ざされることとなってしまった(汗)。


 とはいえ、スーパー・落語とこの教師に接点を持たせないと、今回のドラマもはじまらない(爆)。彼らの再会を描くのであれば、校庭に少々立ち入らせてしまうのが最も手っ取り早いのだ(笑)。しかし、それだけでも視聴者から「アリエナ~イ」というツッコミが入ってしまうだろう。よって、即座に「あの~、部外者の方は立入禁止なんですが……」などという、視聴者からのツッコミを先回りしたセリフも入れることで、そのオカシさをできるだけ緩和はする。さりげにウマいエクスキューズ作劇ではあるのだ。


スーパー「部外者なんて云われても、オレたちは卒業生なんだよ」


 その教師を指さして、落語は驚きの声をあげる!


落語「ア~~っっっ!」
教師「な、なんですか?」
落語「おまえ、塚本じゃねぇか!?」
教師「ハイ、そうですが…… ア、アァ~~っ! おまえ、落語! スーパー!」


 母校で感激の再会を果たした3人は、喜びを噛みしめながら、塚本が担任しているクラスの教室へと紹介される。登校拒否をしていた塚本は、自分を立ち直らせてくれた矢的に感謝の意を示すためにか、中学校の教師となっていたのである!


塚本「先月、赴任してきたばっかりなんだよ。そしたらさっそく登校拒否に出くわして」
落語「バチが当たったんだよ。矢的先生を困らせた」
スーパー「懐かしいなぁ……」
落語「博士(はかせ)・ファッション・真一(しんいち)はどうしてるかな……」


 「一所懸命」とチョークで大書された黒板の前で、にっこりと微笑んでいる矢的先生。そして、京子先生に1年E組の生徒たちが集まった「記念写真」の映像がここで挿入されてくる――ここで泣くのはまだ早すぎるのだが、感涙せずにはいられない――。


スーパー「早いもんだよなぁ、時が過ぎるのは」
落語「すっかりオジサンだよなぁ、オレたち……」


 私事で恐縮だが、『80』放映当時は中学2年生だった筆者は彼らとほぼ同世代であり、年齢を重ねたことにより、ちょっとしたことでもセンチメンタルな気持ちに浸ってしまう彼らの心情につい共感してしまう……


塚本「矢的先生、どうしてるかな……」
スーパー「ある日突然、オレたちの前からいなくなっちまったなぁ……」
落語「なのに、どの先生よりも想い出に残ってるよ……」
スーパー「ウン……」


 第12話『美しい転校生』(脚本・広瀬襄 監督・深沢清澄 特撮監督・高野宏一・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100718/p1)を最後に、『80』から桜ケ岡中学校の設定は姿を消してしまった。矢的先生は1年E組の担任と並行して、放課後と日曜日はUGMの隊員として活躍していたのだが、続々と出現する怪獣、凶悪な侵略者のために、彼らに黙って教師であることを捨てねばならなかったようだ……


塚本「矢的先生は、ウルトラマンエイティだったんだ!」


 おもわず笑い声をあげるスーパーと落語。


落語「おまえさぁ、まだそんなこと云ってんのかよ」


 『80』第2話で、羽根怪獣ギコギラーと戦うエイティの姿に、塚本は自分に対して「一所懸命」に戦ってくれた矢的の姿をオーバーラップさせて「先生!」と叫んでいた。
 ある意味では感動的ではあるのだが、しかしてウルトラマンやヒーローであることの正体を隠さなければならない変身ヒーローものとしては、それを番組開始早々に明かしてしまうような描写はやや安っぽくなってしまう弱点はあったのだ。
 しかし、その描写を今さらなかったことにもできない。そうであれば、ある意味では弱点でもあったその描写に後付けでも好意的な辻褄合わせや補完をしてみせるしかない。そこで採られたのが、塚本個人はあれから矢的先生の正体がウルトラマンエイティであると今日まで固く信じ続けていた……という描写であるのだ。


 とはいえ、『80』第2話のことを擁護しておけば、同話ラストで塚本は1年E組の生徒たちに「矢的の正体はウルトラマンエイティである!」と主張はするものの、一斉に笑われてしまうことで明るいオチをつけている。


 あのとき、スーパーはこう罵倒していた。


「先生がウルトラマンなら、大根(だいこん)だってウルトラマンになれらぁ!」(笑)


塚本「笑われたっていい! オレは確信している!」
スーパー「よし! この学校、壊されちまう前に、みんなでクラス会やろうぜ!」
落語「オッ、イイねぇクラス会!」
スーパー「できるだけ人数、集めてな」
落語「あぁ!」
スーパー「この教室、貸してくれるだろ?」
塚本「あぁ、掛け合ってみるよ」
落語「よし、決まりだ!」
塚本「矢的先生、来てくれるといいな……」


 東京都内に微弱な「マイナスエネルギー」(!)の発生を、本作『メビウス』における防衛組織・GUYS(ガイズ)が感知した。その正体はウルトラマンメビウスでもあるミライ隊員は発生地点である桜ケ岡中学に急行する。


 塚本教師もミライ隊員の存在に気づいた。


 「マイナスエネルギー」! ウルトラシリーズのマニアであればご存じの通り、それは『ウルトラマン80』序盤に登場した「人間の負の精神」によって発生するエネルギーであり、時に怪獣を実体化させたり狂暴化させたりもするものなのだ。


 この設定は『80』中盤以降はあやふやになってしまったものの、それに対しても肯定的な補完がなされるのだ。それはGUYSの怪獣博士でもあるテッペイ隊員の発言によってである。


「邪悪な怪獣を呼び寄せる、人間の心の暗い波動…… だがマイナスエネルギー学説は研究途上であり、あまり詳しいことはわかっていない(大意)」


 という、原典でのあいまいさをも包含しているセリフとしてのかたちで……



塚本「あなたは、GUYSの」
ミライ「ハイ、何か変わったことはありませんか?」
落語「いや、別に……」
ミライ「そうですか。失礼します」


 立ち去ろうとするミライを、塚本が呼び止める。


塚本「あの、かつてUGMの隊員として働いていた、矢的猛さんをご存じじゃないでしょうか?」
落語「オイ、おまえ、UGMって……」
塚本「先生は教師やりながら、UGMの隊員としても働いていたんだよ!」
スーパー「そんな…… ホントか!?」
塚本「あぁ、前の学校で元UGM隊員の子供がいたんだ。そうですよね? 今、矢的先生がどこにいらっしゃるか、教えていただけないでしょうか?」
ミライ「いや、それは……」


 そう、生徒たちには矢的先生がUGM隊員も兼ねていることは秘密であったのだ。


 そして、このUGM隊員でもあったという、彼ら教え子たちにとっての新事実がまた、本当に矢的がウルトラマンエイティであったのかもしれない…… そう思わせてくる助走台・ジャンプの前段にもなっていく作劇でもあるのだ……


 しかし、塚本のセリフに出てきた元UGM隊員とは誰なのだろうか? ハラダかタジマかフジモリかイケダか? 広報班のセラか気象班のユリ子隊員かもしれないが(笑)。



 矢的の正体を知っているがゆえに、その教え子たちに真実を告げることができずに苦悩するミライは、星空の下、エイティに向かって超能力で語りかけた。


ミライ「ウルトラマンとしてだけでなく、教師としても慕われていたんですね。25年も経った今でも、まだ…… 桜ケ岡中学校で最後のクラス会をしようとしています。出席してあげてください! 矢的猛先生として!」
エイティ「それは…… できない……」


 意外な返事に驚いたミライは、矢的猛先生の爽やかさを象徴するような青空を思わせるスカイブルーのイメージ空間に包まれた。


ミライ「どうしてです!?」
エイティ「もともと私は、地球にはマイナスエネルギーの調査のために訪れた。そして人間とふれあううちに、人間の持つ、限りのない可能性を感じた。それはメビウス、君も同じだろ?」
ミライ「ハイ」
エイティ「しかし人間は、その可能性を間違った方向に向けかねないこともわかった――その手から発せられる地球のイメージ画像――。そのことによって生まれるのが……」
ミライ「マイナスエネルギー」
エイティ「そうだ。そして私は考えたのだ。教育という見地からマイナスエネルギーの発生を抑えられるのではないかと。私は勉強を重ね、思春期といわれる不安定な時期の中学生の教師になった。しかし、マイナスエネルギーの発生を喰い止めることはできなかった……」



矢的「見てください、この子供たちを。このまま育てば怪獣になってしまうような子供もいるんです! 僕は怪獣の根本を叩き潰したいんです! 僕は怪獣と戦うのと同じような気持ちで先生になったんです!」


 『80』第1話で、劇中で発生した地震が怪獣の仕業(しわざ)であると直感した矢的が、同じく私服姿で極秘に調査に来ていたUGMのオオヤマキャップ(隊長)に熱く語った主張がいま再び甦る!



「5年ぶりに怪獣は大攻勢をかけてきた。地球上に満ちわたる醜い心や悪い心、汚れた気持ち、憎しみ、疑いを吸収して強大な力を蓄えていた」

(『80』第2話『先生の秘密』・冒頭ナレーション)



●『80』第3話『泣くな初恋怪獣』に登場した硫酸怪獣ホー
●『80』第1話『ウルトラマン先生』に登場した月の輪怪獣クレッセント
●『80』第2話『先生の秘密』に登場した羽根怪獣ギコギラー
●『80』第10話『宇宙からの訪問者』に登場した変形怪獣ズルズラー


 GUYSの電子記録である「ドキュメントUGM」に「マイナスエネルギー怪獣」として記録された『80』第1話~第12話である「学校編」に登場した怪獣たちが、鳴き声入りで次々に映し出される! 予算面での諸事情だろう静止画なのは残念だが、それでも具体的な映像を映してくれることで重みと説得力も増してくるのだ。


 『80』「学校編」でマイナスエネルギーが怪獣に力を与えているという明確な描写がなされたのは、実はホーとズルズラーくらいである。あとは強いて云うならばアブドラールスもそうコジツケができるかもしれない。マイナスエネルギーと直結していない怪獣の方が実は多いのだが(汗)、それはそれで悪いことでもないと思う。それはやはり各話のストーリー展開がワンパターンになってしまうからだし、従来型の怪獣がまったく登場しないというのも不自然だからだ。
 『ウルトラマンA』でも、異次元人ヤプールが製造した生物兵器・超獣たちが襲撃してくるといった作品の基本フォーマットが存在していた。しかし、メインライターの市川森一(いちかわ・しんいち)が考案した「人間の欲望や妄想・執念が超獣を生み出す」という設定も事実上はそれほど活かされてはいなかった。
 しかし、人間の負の感情とは無関係な物理的なパワーゲームやスパイアクション、土俗的な怨念や妖怪とも結びついて、ストーリーにさまざまなバリエーションが生まれたことで、結果論だが異次元人ヤプールの万能性や強大さや得体の知れなさを肉付けしていくことにもつながったからだ。
 『A』も『80』も毎回毎回、ゲスト主役たちの心の隙間から登場する怪獣を出していたら、パターン化どころか実に陰欝なシリーズになってしまったことだろう(笑)。



エイティ「私は次々と出現する怪獣たちに立ち向かうため、教師であることを捨てねばならなかったのだ。遠く離れたとはいえ、私の心には常に彼らがいる。メビウス、君の口からみんなに伝えてほしい。矢的猛が、謝っていたと……」


 製作上の種々の事情で桜ケ岡中学校の設定が消滅した件に対して、ここまで愛情のあるフォローを入れてくれるとは…… スーパーや落語、塚本の心に今でも矢的先生が大きな存在となっているばかりではなく、エイティの心にもいまだに1年E組の生徒たちが存在していたのである(涙)。



 登校してくる生徒たちを校門前で出迎えている塚本教師に、落語が運転する自転車が猛スピードで突っ込んでくる!


塚本「危ないなぁ。なんだよ~、登校中なんだぞ」
落語「これ、これ。見てくれよ!」


 「ウルトラマン80現れる!」という見出しが踊る、先日のウェーク島の一件を報じる記事を掲載した新聞だ!


塚本「これは、ウルトラマンエイティ!」


 自身が経営しているスーパーの前で、同じ記事を読んでいるスーパー。


スーパー「ウルトラマンエイティ…… 塚本の言葉が正しければ」


落語「矢的先生は、地球に来ているのかもしれない!?」
塚本「あぁ!」


スーパー「先生~! 明日、クラス会なんだ! 桜ケ岡中学で、最後のクラス会なんだ~~!!」


 空に向かって矢的先生に叫んでいるスーパー。女性客が「ヘンな人」とばかりにスーパーをチラ見する(笑)。


塚本「絶対、絶対、来てくださ~~い!!」
落語「オレたちや、スーパー、博士、ファッションに真一も、とにかくみんな来るから~~~!!」
塚本「みんな会いたがっています! 必ず来てください!!」


 イジワルに観てしまえば、ここではストーリー展開上での飛躍が見られる。塚本のみならずスーパーや落語も、急にここで矢的先生の正体がウルトラマンエイティだという仮定に乗っかっているのだ。しかし、矢的猛先生・イコール・ウルトラマンエイティに集約しておかないと、本話のクライマックスも散漫になってしまう。矢的猛先生・イコール・ウルトラマンエイティだと判明しているからこそ、より矢的先生に対する感謝も増すのだし、盛り上がるというものなのだ。
 そういった都合論(汗)も込みでの、感動的なクライマックスを構築するために逆算してみせれば、ここでウルトラマンエイティの正体は半ばは矢的先生だ! ということにしておくことが、作劇的な大正解でもあったのだ(笑)。


 そして、「矢的先生はウルトラマンエイティだったんだ!」などという突拍子のない塚本の主張を思わず信じられる、いや、信じられるような気がする。そんな気持ちに転じた落語とスーパーの心情にも大いに共感させられてしまうのだ。それもまた「お約束」ではあっても、来たるべき「感動の再会」を予感させてきて、早くも涙を誘ってくる反則技の作劇でもある……(笑)


 筆者のような長年のウルトラシリーズファンだと、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)第23話『逆転! ゾフィ只今参上』(脚本&監督・真船禎 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061012/p1)における、この世のものとも思えない4次元的な超現象に遭遇した主人公・北斗星児(ほくと・せいじ)隊員の必死な証言に、防衛組織・TAC(タック)の隊員たちや隊長までもが疑惑の目を向けている中で、科学的・理性的なキャラクターであるハズの兵器開発研究員・梶隊員だけが、「僕には信じられます。いえ、信じられるような気がします」という意表外なセリフを発した名シーンも少々連想してしまう。いやまぁ、文脈的にもその意味するところは、今回とはやや異なることは重々承知はしているけど(笑)。



 空に向かって絶叫しているふたりを、やはり「ヘンなオジサン」とばかりにチラ見しながら、校舎に向かっていく女子生徒たち。


 これもまた重要な点描なのである。こういった、一歩引いて少々サメている第三者的・客観的な視線で劇中の主要人物たちを見つめているその他大勢のエキストラを描写するような演出は、1980年当時の映像作品にはなかったものである。むかしの学園ドラマなどでは、そのような熱血絶叫行為が疑うべくもない正真正銘の美談として描かれていたものだった。
 当時の日本人は、現実世界でこのような奇矯な言動を目撃すると、後年のように「嘲笑」という意味ではなしに「寛容」&「冷笑」相半ばの態度で受け流して、「半笑い」としても対処して受け容れるのではなく、単純にガチで困惑して「見てはイケナイ」ものを見てしまったかのように受け止めきれず、その気マズい想いを明快に言語化もできないので、困惑した表情を浮かべるだけだったものだ(笑)。


 フィクション作品の中での主要登場人物たちの言動をサメた目線で見ているエキストラなどの描写も入れてみせることで、作品の視線や解釈も多面的・多層的にしていくような作劇手法が急速に普及していくのは、『80』が放映終了して80年代というものが本格化していく以降のことだった……



 だが、ウルトラマンメビウスことミライ隊員は、矢的先生との再会を強く求めて叫んでいるふたりを見つめて、苦悩の色を濃くしてしまう……


ミライ「ゴメンなさい。ボクには伝えられません……」


 矢的先生と生徒たちとの板挟みになってしまったミライ隊員はひたすらに苦悩する。そんなミライにGUYSのサコミズ隊長が暖かく声をかけてくる。


サコミズ「出会い、別れ、喜び、悲しみ…… 人間って面倒クサい生きものなんだ。でもね、時が来ればそれが想い出というものに変わる」
ミライ「想い出?」
サコミズ「そう、その想い出が何もないことが、いちばん人間にとって、悲しいことかな?」


 そして、運命の同窓会の当日。校舎内の下駄箱の前で、四半世紀ぶりに再会したふたりがいた……


ファッション「あなた、もしかして?」
博士「ファッション!?」
ファッション「博士~! 懐っつかしい~い! 元気だったぁ~?」


 ファッションとは、元ミス1年E組だった女子生徒である。本名は設定されていなかった。しかし、先述の第8話では、ジャンル作品の歌舞伎的様式美のお約束で「砂糖」と間違えて「塩」を使って焼いたクッキーを、E組の生徒たちに振る舞ってしまう(笑)。そして、文句をつけてきた落語を突き飛ばしたことで(!)、


「おまえ、女の子なんだから、もっとおしとやかになれよ!」


 などと矢的先生に注意されたほどの男勝りの女生徒でもあったのだ(笑)。


 しかし、「女の子なんだから」……などというセリフは、フェミニズムジェンダー平等が声高に叫ばれるようになった昨今では苦情電話が殺到必至のセリフだな(爆)。


 一方、原典である『80』第6話のラストでも、柔道で女子生徒に背負い投げ(!)をされて一本取られてしまった大島明男少年のような、70年代までには考えられなかった情けない男子の姿も描かれている。


 それを見ていたレギュラーキャラである桜ケ岡中学事務員・ノンちゃんいわく、


「戦後35年の民主教育は、女の子が男の子を一本背負いで投げ飛ばす成果をあげたのです!」(笑)


 これが諸悪の根源となって、安倍内閣の教育改革が始まった(笑)。


――ちなみに、このノンちゃんや『80』シリーズ後半ではやはりレギュラーキャラであったUGM気象班・ユリ子隊員を演じていた白坂紀子(しらさか・のりこ)は、当時はTBS関東ローカルの平日夕方5時から放映されていた30分尺の子供向けバラエティ番組『夕やけロンちゃん』のアシスタント司会でもあり、のちに俳優・志垣太郎(しがき・たろう)夫人となった――



 ファッションは、先にも言及した第4話のラストシーンであるスーパーの姉の結婚式では、姉を心配させまいとスーパーに頼まれて恋人役を演じたものの、その役目を終えた途端に、スーパーからバイト代を明るくムシり取るチャッカリ娘でもあった(笑)。


 ファッションが主犯ではないが、教師編の最終回となった第12話『美しい転校生』では、同じE組の女子生徒・マリが博士宛てに以下のようなラブレターを下駄箱に仕込んだこともある。


「明日の午後1時、青葉公園に来て下さい。学校では云えないことをお話します。あなたを好きなMより」


――マリはこのエピソードではやや性悪な女子として描かれたが、彼女を演じた秋元美智恵はファッション役の久野みどりよりもルックス的には上なので(汗)、ミス1年E組はマリの方がふさわしいのかもしれないが、レギュラーキャラに要求される演技力の高さでこのような役回りとなるのであって、その采配自体は間違いではないだろう。……ただまぁ80年代以降は、良くも悪くも演技力よりルックス優先の時代になってしまうのだが・汗――


 ファッションはマリや他の女子生徒ふたりは、この偽のラブレターを読んだ博士がダマされて青葉公園にやって来るのか否かで、アイスクリームを賭けて待ち伏せしてみせる!(爆) そして、お勉強だけはできる博士キャラでも、見るからに純情・ウブそうでチビでもある博士は、青葉公園にやって来てしまうのだ!


 しかし、そこにオランダから転校してきたアメリカ人と日本人のハーフの美少女・青山ミリーが現れて――その正体は侵略宇宙人ビブロス星人――、


「このへんでアイスクリームのおいしいお店、知らない?」


 などと博士に声をかけて、ふたりはそのまま本当のデートへと発展してしまうのである!


 これを見ていたマリやファッションたちは、


「アッタマ、来ちゃう!!」(爆)


 などと翌日の放課後、ミリーの前にお揃いの赤ジャンパーを着用して現れて、


「ちょっと、アンタ来て!!」


 と人気のない場所へとミリーを連れ出して、


「アンタ、あたしたちのゲーム、邪魔する気?」
「こういうの着てると、誰かカラかいたくなんのよねぇ~」


 などとミリーをいたぶってしまうのだ!!


 過剰に重たい描写でもないのだが、女子生徒のこんなダークな一面が描かれたのは、当時としては実に珍しかった。さりげに「女子のリアル」を描いた画期的な描写でもあったのだ。


 それまでの学園ドラマでは、見るからにヤサグれて不敵な見た目の女子生徒が登場でもしないかぎりは、ヤンチャな男子生徒の乱暴やイジメに対して「ちょっと、アンタたち、やめなさいよ!!」などと諫める善良な役回りとしての女子生徒の登場が多かったものなのだ。そして、当時の現実の学校の教室空間でもこのような光景がよく見られたものなのである。


 しかし、70年代後半あたりから「マジメはダサくて、ちょいワルの方がカッコいい」(爆)という実に嘆かわしい風潮が勃興し出してくるのだ――「ダサい」は82年ごろ。「ちょいワル」も21世紀以降に誕生に誕生した用語だけど・汗――――。80年代中後盤に至ってくると、女子たちの方が情けない男子をカバってみせると自身のお株も下がって同類視されてしまうことの自己防衛もあってだろうか、むしろ女子たちの方から情けない男子に対して値踏みをしてきて「ダサ~」「キモ~」「ゲロゲロ~」などといった残酷な言葉を陰に陽に浴びせかけるようにもなっていく…… 余談になるが、髪の毛を少々染めたギャル的な女子生徒像が勃興してくるのは、もう少しあとの90年代前半のことである。


 こうして書いてくると、トンデモない女子生徒だったように捉えられてしまうかもしれないが、第12話での描写はあくまでも「ちょいワル」程度の許せる描写ではあったのだ(笑)。


 とはいえ第3話でも、ゲスト主役である生徒・真一少年からガールフレンドのミドリを奪ってしまった柴田少年を評して、


「アタシだって、あんなカッコいい人が現れたら、クラッと来ちゃうもの……」


 などと、非モテ男子たちにとっては実に残酷な、身もフタもない女子の本心も覗かせている。ファッションの発言に「そうよねぇ~」などと同調している女子生徒たちの発言も妙に生々しくてリアルに過ぎて、我々ダサダサなオタクたちにとっては脅威ですらある(笑)。



 しかし、『80』第9話『エアポート危機一髪!』(脚本・阿井文瓶 監督・湯浅憲明 特撮監督・川北紘一http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100627/p1)では、けっこう女子らしい一面も見せている。
 矢的先生がひそかに想いを寄せている京子先生が、野崎教頭の勧めでソルボンヌ大学助教授とお見合いをすることになってしまうのだ。恋敵が登場した矢的先生を応援しようと、ファッションはスーパー・落語・博士らと、京子先生とのデートのお膳立てをする!
 当日の朝、彼らの前にビシッと紺のスーツで決めてきた矢的が現れるが、なんとそこに今では大女優の石田えり演じるUGMの城野エミ(じょうの・えみ)隊員が私服姿で現れて、UGMの通信機を忘れてきた矢的に「事件発生」を無言のジェスチャーで伝えて、自動車に同乗させて矢的を連れ去ってしまうのだ!――この際の城野隊員の私服姿は、青いアロハ風のシャツにデニムの短パン姿! 肉感的なボディが強調されており、まさにエロかっこいい(笑)――


 すっかり誤解して、「プレイボーイ!」「裏切り者!」などと罵倒するスーパーと落語(笑)。そしてファッションは……


「京子先生の方がよっぽど美人じゃないの!?」
「私もう恋なんてできない! 男のいい加減さを見せつけられたもの……」


 などとショックを受けてしまうのだ(笑)。


 翌日、デートをすっぽかしたことを京子先生に詫びた矢的はファッションたちに、


「京子先生は全然、気にしてなかったぞ」


 などと云うが(笑)、ファッションは、


「女の気持ちが全然わかってない!」


 と非難する――いやホント、たとえお約束の描写でも、女の気持ちがわかっていない!(笑)――。だが、その一方で落ち込んでしまった矢的を、


「でも、なんかかわいそうみたい」
「母性本能をかきたてられちゃうのよね~」


 などと同情する姿勢も見せており、決して男勝りだけではない多面的な描かれ方もしているのだ。


 このエピソードも『80』序盤4話までとは異なる、あくまでも軽妙なラブコメ風味でつくられている。だから、ソルボンヌ大学助教授を演じたのは、後年の『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)では防衛組織・TLT(ティルト)の管理官・松永や、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』では神戸市長役を務めた堀内正美も、


「ボンジュール、京子サ~ン! トレビア~ン!」


 などと、成田空港に出迎えに来た京子先生に対して大袈裟に感激するのはよいものの、オイル怪獣ガビシェールが出現するや京子先生を置いてスタコラサッサと逃げてしまう(笑)。


――世代人であれば、80年代の若者間でも大人気で視聴率も30%前後を達成していたテレビ時代劇『必殺仕事人Ⅳ(フォー)』(83年)第14話『主水(もんど)節分の豆を食べる』で、仕事人(殺し屋)仲間・小平次(『新・仮面ライダー』で主人公・筑波洋(つくば・ひろし)を演じて、『必殺仕事人Ⅴ(ファイブ)』(85年)ではレギュラー仕事人・花屋の政を演じることになる村上弘明!)を平然と裏切って殺してしまうゲスト仕事人・弥助を演じていた堀内正美の姿が印象深いだろう。本来の堀内正美は「ニヒル」な役柄が実に似合っている役者なのだが、『80』ではそんな堀内がコミカルな演技を見せてくれる実に貴重な例なのだ――



 同じく『80』第9話で、「約束は破るためにあると云っていたのはソクラテスだっけ? プラトンだっけ?」などと語っていたように、物事を論理的・哲学的に考える理屈屋として描かれてもいた博士の本名は、そのものズバリの上野博士(うえの・ひろし)である(笑)。メガネを掛けた坊ちゃん刈りの小柄な少年であり、先述の第12話でも青葉公園に現れた際には、メガネを掛け直したりズボンの履き具合を調整してみせたりといった、お勉強はできても世事や男女の機微には疎そうな純情な一面が、演技・演出面でも強調されていた。


 しかし、教師編の最後のエピソードでもあり、この博士の主役編ともなった第12話では、マリやファッションたちにいたぶられていたミリーを助けに行った際に、博士は彼女たちに向かってこう云い放ってみせている!


「メダカは金魚にはなれやしない! とかくメダカは群れたがる! 悲しい習性さ! (ミリーに)行こう、金魚さん!」


 スーパー・落語・ファッション・博士と、一応の基本的な性格付けの設定はなされてはいたものの、決してそれをステレオタイプとしては描かずに、各人が別の一面をも持ち併せていることまでキチンと描写されていたことは、いま観返してみるとけっこうポイントが高いのだ。



 もちろん、このような多面的な人物描写は、『80』がはじめてであったのだと云いたいのではない。批判ではないことは重々強調しておくが、初代『ウルトラマン』の防衛組織・科学特捜隊の隊員たちは子供向け番組にふさわしく、後年でいう漫画アニメ的な外見&記号的な性格設定がなされていた。


 しかし、『帰ってきたウルトラマン』(71年)での防衛組織・MAT(マット)の隊員たちはふつうの大人向けドラマのような人物描写になっていた。中でも岸田隊員は主人公・郷秀樹(ごう・ひでき)新人隊員に対して厳しく当たってくる憎まれ役として当初は描かれてはきた。しかし、第28話『ウルトラ特攻大作戦』あたりでは郷とすっかり打ち解けてバカ笑いし合っているまでの仲となっている。第44話『星空に愛をこめて』(脚本・田口成光)では宇宙牛人ケンタウルス星人が変身した女性・茜(あかね)と恋に落ちるような一面も見せていた。


 『ウルトラマンA』(72年)で主人公・北斗星司隊員を「ふぉくとぉ~~~っ!!」(笑)などと怒鳴り散らしていた防衛組織・TAC(タック)の山中隊員もまた、第14話『銀河に散った5つの星』(脚本・市川森一 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)では、ウルトラ4兄弟が磔(はりつけ)にされたゴルゴダ星破壊の超光速ミサイルNo.7のパイロットという危険な任務を命じられた北斗を気遣って交代を進言するヒューマンな描写も与えられていた。


 『ウルトラマンタロウ』(73年)の防衛組織・ZAT(ザット)の北島隊員も、序盤である第2話『その時ウルトラの母は』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071209/p1)では、怪獣捜索中に多摩川でノンキに釣りを楽しんでしまうようなおふざけキャラという側面が強かった。しかし、第45話『赤い靴はいてた……』(脚本・阿井文瓶)では、幼馴染みの女性・真理と久々の再会を果たしたものの、彼女が凶悪宇宙人ドルズ星人によってうろこ怪獣メモールに改造されていることを知って一転、悲劇の主人公としての役回りを務めている。


 第2期ウルトラでは、記号的な単純さのワクには収まらないナマっぽくて多面的な人物像がたいがいは描かれてはいたものだ。


 とはいえ、この尺度を持ち出してくると、『メビウス』のGUYS隊員たちの描写はスタッフたちの確信犯ではあるのだが、いかにも漫画アニメ的ではあるのだ。ネット上の巨大掲示板の一部で、彼らの描写に対する非難が絶えないのも、熱血バカ・キザ野郎・クールビューティー・怪獣博士・メガネっ娘といった隊員たちのキャラ描写が、昭和ウルトラ・平成ウルトラを含めてもかなり漫画アニメ的なキャラクター表現になっているからでもあり、そういった批判にはもちろん一理も二理もあるのだ。


 しかし、70年代前半に放映された第2期ウルトラにおける、防衛組織の隊員たちのナマな人間っぽい猥雑で多面的な描写を賞揚しておきながらナニだけど、筆者個人は現今の子供向け番組としてはGUYS隊員たちの漫画アニメ的なキャラクター表現については苦にはならない。どころか、むしろ適度にリアリティーの階梯(かいてい)も下がることでムチャなストーリー展開や熱血精神主義が最後に勝利を収める(笑)ような良い意味でのデタラメでご都合主義的なストーリーを許容させることまでをも、あまたのアニメ・特撮作品にもくわしいマニア上がりで雑文ライター上がりでもある『メビウス』メインライター・赤星政尚(あかほし・まさなお)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)が、そこまで込みで考えて造形しているキャラクター設定だとも思うからだ。
 なによりも、メインターゲットでもある子供たちにはわかりやすい人物描写ではあるのだし、むしろ漫画アニメ的に登場人物のキャラクターを立てていくことこそが、今後の「日本特撮」がまさに勧善懲悪の「通俗娯楽活劇」としての復活を果たしていくためには、むしろコレこそが正解ですらあるのだ! というくらいに考えてもいる(笑)。



 ファッション・博士・スーパーが校舎内の階段を昇っていくと、かつての教室の前でキョロキョロとしているスーツ姿の男がいた。ファッションと博士は無言で会釈をするが……


スーパー「おい。おまえ、真一じゃないか? (ファッションと博士に)ホラ。あの、失恋して怪獣、呼び出した」
博士「覚えてる、覚えてる。懐かしいからって、今日は怪獣、呼び出さないでくれよ」
ファッション「それがね、最近、若い奥さんもらったらしいのよ。だから大丈夫。ねぇ~」
真一「もう、勘弁してくれよ~」


 『80』第3話『泣くな初恋怪獣』(脚本・阿井文瓶 監督・深沢清澄 特撮監督・高野宏一・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100516/p1)で、真一のガールフレンドだったミドリは、サッカー少年でカッコいい柴田になびいてしまった(爆)。
 それに傷ついて憤懣と悲しみがないまぜになった真一の感情がマイナスエネルギーとなって実体化! 硫酸怪獣ホーとなって夜の街で泣き叫んだのだ! 矢的先生に説得されてもミドリを許すことができない真一の憎しみは、ホーをますます凶暴化させて、やがて真一の心からも離れてミドリの家に進撃を開始してしまうのだ!


 この真一少年を演じていた斎藤康彦は、『80』と同じく80年4月にスタートした岸田智史(現・岸田敏志。きしだ・さとし)主演の『1年B組新八先生』(80年・TBS)にもレギュラー出演していた――編註:先の『夕やけロンちゃん』では、「『新八』桜中学チームVS『80』桜ケ岡中学チーム」のクイズ合戦が放映されたこともあった。たしかこのクイズ合戦にはスーパーと落語は出演していたと記憶する。真一もいた。しかし、どちらのチームに所属していたかは失念。ただし彼が両方に出演していたことを、子役たちは言及していた(笑)――。
 その後は、ジャニーズ事務所所属で当時は人気絶頂だった「たのきんトリオ」――田原俊彦野村義男近藤真彦」――が『3年B組金八先生』第1作(79年)に続いて生徒役で出演していた、今では奇矯な演技で有名なあの本田博太郎(ほんだ・ひろたろう)がふつうに熱血教師(!)として主演していた、やはり80年4月にスタートした大人気学園ドラマ『ただいま放課後』(80年・フジテレビ・東宝)にも出演。「たのきんトリオ」に代わって主役級で出演して――第29話からの第3シリーズ・ラグビー部編――、主題歌『もどかしさもSOMETIME(サムタイム)』も歌唱しているのだ!


――この『ただいま放課後』には、のちにスーパー戦隊シリーズ超電子バイオマン』(84年)にレッドワンこと郷史朗(ごう・しろう)で主演した阪本良介も出演している。ちなみに、真一の恋仇・柴田を演じた岩永一陽も、山田太一脚本のNHK大河ドラマ獅子の時代』(80年)に白虎隊(びゃっこたい)の少年役で、『新八先生』にも生徒役で出演している。なお、『3年B組金八先生』以外の『1年B組新八先生』・『2年B組仙八先生』(81年)・『3年B組貫八先生』(82年)といった作品群はDVD化が困難になっているらしい。これは生徒役にジャニーズ事務所所属のタレントが多数出演していたことが関係しており、現在は引退しているタレントの出演作品は事務所が許可をなかなか出さないためらしい。『金八』でも第3シリーズ(88年)にはSMAP(スマップ)を脱退した森且行(もり・かつゆき)が出演していたためにリリースが困難のようだ(後日付記:2007年にようやく初リリース)――



「真一君や矢的先生って、どう見たってモテるタイプじゃないわよねぇ」


 などと、ファッションたち女子には、はるか後年の1990年前後に誕生した用語で云うならば「イケてない」(汗)と思われていた真一も、めでたく結婚ができたようである。あのまま「負け組」のままであったならば、多分今回は出席していなかったのではなかろうか?(笑)


 私事で恐縮だが、筆者も今を去ること98年に中学の同窓会に間違って出席してしまった。すると、当時は筆者以上にいじめられていた男子が各地で個展を開催するようなフリーのカメラマンに出世しており、散々「ブス」だと疎んじられていた女子はピアノの講師となり医師の妻となって見違えるような美女に華麗に変身を遂げていた。それにひきかえ筆者は…… やっぱ「負け組」は出席しない方がいいぞ。立場なかったわ、ホンマに(爆)。



 スーパー・ファッション・博士・真一は、会場になっている学校の屋上に上がってくる。


博士「だけど、なんで屋上なんだ?」
スーパー「矢的先生にメッセージを送るためさ」
ファッション「エッ? 矢的先生、いらっしゃるの?」
スーパー「まだわからないけどな……」


 「1980年度1年E組クラス会」の看板を掲げた会場で談笑するかつての生徒たち…… 真一が恋したミドリや、天体オタクの大島明男、第7話『東京サイレント作戦』(脚本・田口成光 監督・深沢清澄 特撮監督・高野宏一・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100613/p1)に登場した岡島アキラとそのバンド仲間たちがいるのかいないのかはわからないのだが……
 先に「負け組」は同窓会には出席困難と書いたが(汗)、「勝ち組」もまたしかりであって、天文学者となった明男は当日は学会と重なったのであり――先日の冥王星を惑星から格下げにする会議にも出席していたのに違いない!?(笑)――、アキラとその仲間たちはプロのミュージシャンとなってレコーディングかコンサートで忙しかったのかもしれない。
 ミドリはリア充(リアルで充実して)そうだから、この会場にはきっと来ているだろう!?――まぁまぁの美女が数名いたから、そのうちの誰かだということにしておこう―― ただ、若い奥さんをもらったばかりだから今ではミドリのことなど眼中になく、真一もあえて声は掛けなかったのではなかかろうか?(笑)



 同窓会の会場である屋上で矢的先生を待ちわびる生徒たちを校門前から見上げて、ミライは遂に決意を固める。


ミライ「やはり伝えなくてはならない。エイティ兄さんの言葉を!」


 エイティ兄さん! 歴代ウルトラマンたちの義兄弟としての栄光の称号でもある「ウルトラ兄弟」! そう、『ウルトラマン80』ではエイティはウルトラ兄弟の一員ではなかった。これには70年代末期に発行された本邦初の青年マニア向けのムック『ファンタスティックコレクショNo.10 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマンPART2』(朝日ソノラマ・78年12月1日発行)で、陰に陽に第2期ウルトラシリーズウルトラ兄弟の設定に対して否定的に言及されたことが大きい。
 しかし、当時の子供たちはエイティがウルトラ兄弟の一員であると言及されないことに非常なる違和感もあったのだ。エイティが「兄さん」と呼ばれるようになるまでに、『80』終了から実に26年もの歳月が流れてしまった。なんと長かったことよ…… そして、エイティを「兄さん」と呼んでくれる新米ウルトラマンの登場にも…… 筆者もつい最近まで、子供のころに憧れていた「ウルトラ兄弟」という設定はもう永遠に封印されてしまうのであろうか? と徒労感と無力感で悲嘆していたので、その感慨もひとしおなのである!(感涙……)


 だが、そんな「ウルトラ兄弟」の設定うんぬんなどという感慨に浸っている場合ではなかった!


 そのとき、桜ケ岡中学校の全体が青色のマイナスエネルギーに覆われたのだ!


 原典『80』での怪獣出現時に多用された「ピュルルルルル~~~ン」という効果音も流れる!


 かつての真一がつくり出してしまった硫酸怪獣ホーが再出現を果たしただ!


スーパー「真一! おまえまた!!」
真一「知らん! 俺は怪獣なんか呼んでいない!!」


 『80』を観たことがあるウルトラシリーズのファンならば、いやつい最近、本エピソード合わせで『80』第3話をビデオで観返してみた若い特撮マニアたちであっても、生命の危険に際している場面であるのにも関わらず、不謹慎にもつい笑ってしまうこのセリフ(笑)。


 そこに、我らがウルトラマンメビウスも登場する!!


 怪獣ホーに後ろからつかみかかるが、ホーは破壊活動をするわけでもなく、何かを捜しているようにキョロキョロと周囲を見回している……


 捜しものが見あたらないことに怒ったのか、ホーは紫色のビームを口から吐いてドタドタ走りで突進してメビウスを襲ってくる!


 このドタドタ走りも、『80』第3話で凶暴化してしまったホーが、ミドリの家に向かう際の走りを再現しているのだ。


 メビウスはこれを投げ飛ばして、飛び蹴りを喰らわそうとするが、逆にカワされてしまった!


 ホーはメビウスの上にのしかかって、「硫酸の涙」を降らせてくる!


 この「硫酸の涙」もまた、『80』第3話でのバトルを再現しているのだ。当時は「硫酸の涙」は光学合成で表現されていたが、今回はさらに加えてメビウスの身体に落ちた「硫酸の涙」が火花を散らして周囲の土が焦げつくといった特撮演出が追加されている。


 今回の特技監督鈴木健二は、『80』でも監督助手を務めていたそうで、カメラアングルを低くした住宅街越しのカットは、明らかに『80』当時の撮影の仕方を意識して、その再現を意図して撮ったものだろう。


 ホーが「硫酸の涙」を流しながらメビウスをド突きまわしている合間に、


●廊下
●時間割り表
水飲み場


 といった、桜ケ岡中学校の風景がカットバックされる。


 コノミ隊員が推測したように、特定の人間ではなく桜ケ岡中学校の「校舎」自体が取り壊されることを悲しんで、自らがマイナスエネルギーを発生させてホーを誕生させたのだろうか!?
 特定の人間のゲストキャラをマイナスエネルギーを発生させる悪役に仕立てると、どうしてもそのゲストが割を喰ってしまうものだし、感じもよくない。しかし、学校の「校舎」といった一応の無機物にも、歳月を経てアニミズム的な意志や魂が付喪神(つくもがみ)的に宿るようになっていた! といった描写ならば、そういった微量に残ってしまう不快感は払底(ふってい)できるし、超自然的な現象を描けるという点では魅惑的ですらある。


 しかも、ここでは「怒り」や「憎しみ」や「嫉妬」といった積極的なマイナスエネルギーではなく、プラスのエネルギーとは云いがたいものの、別離の「悲しみ」や「詫び寂び(わびさび)」といった広義でのマイナスエネルギーを素材に挙げることもできている。「悲しみ」や「詫び寂び(わびさび)」はポジティブな人生を前向きに進めていくような心情ではないものの、たしかに否定されるべきものでもない。弱者や劣った者への惻隠(そくいん)の情にも通じていくものだし、そして人間の心理を複雑多彩・高度化して人格を向上させていくものでさえあるだろう。



 そのとき、空からやってきた光の戦士!


 再び流れる『ウルトラマン80』のテーマアレンジをバックに、地上に降り立ったその戦士の名は……


博士「あ、あれは!」


ファッション「ウルトラマン!」


真一「エイティ!」


スーパー「俺たちの!」


落語「ウルトラマンだ!!」


塚本「矢的先生! 矢的先生~~~!!!(喜悦)」



 「空を見ろ!」「鳥だ!」「ロケットよ!」「あっ、スーパーマン!」。などと、往年のTVドラマ版『スーパーマン』(53年・日本放映56年・KRテレビ→現・TBS)のオープニングを彷彿とはさせないかもしれないが(笑)、かつてのヒーロー登場に沸いてみせる生徒たちの歓喜の歓声!
 それだけにとどまらず、「俺たちの! ウルトラマンだ!!」というフレーズが、特定の世代人共通の言語として響き渡ってくるこの演出はなんともたまらない!


 ましてや「矢的先生! 矢的先生~~~!!!」などと叫んでいる塚本教師に至っては…… 前話のラストに付与されていた本話の予告編で、すでにこのシーンをネタバレ的に観ていて落涙していたのにも関わらず…… またまた感涙!!


 エイティの登場に耳を垂れてみせるホー。


 『80』第3話では耳がレーダーのように敏感だという設定とともに、耳が動くというギミックが仕組まれていたが――ギミック先行の後付け設定か?(笑)――、今回はイヌがそうであるように耳を垂れてみせる演出で、このホーがエイティに再会できたことでおとなしくなって恭順しているサマを端的に表現しているのだろう。


エイティ「マイナスエネルギーによって出現した怪獣ならば、私が倒す!」


 「お懐かしや……」とばかりに両手を掲げてエイティに親愛の情を見せているかのような戦意も感じられないホー。


 エイティは精神を集中、全身のエネルギーを腹部のウルトラバックルに集めて一気に放出する光線技・バックルビームを放った!


 黄金色に輝きながら、嬉しそうに昇天していくホー……



 戦いを終えたエイティ=矢的先生に向かって、かつての教え子たちが、校舎の屋上から次々に熱い近況報告を送った!


塚本「先生! 先生にあこがれて、僕は教師になりました~!!」
ファッション「私は結婚して、3人の子供のお母さんです~!!」
落語「僕は、地元の信用金庫に就職しました~!!」
博士「大学で、研究する日々を送ってま~す!!」
スーパー「おやじのスーパー継いで、頑張ってるぜ~!!」


 『80』第5話『まぼろしの街』(脚本・山浦弘靖 監督・湯浅憲明 特撮監督・高野宏一・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100530/p1)で、四次元怪人バム星人によって4次元空間に迷い込んでしまった矢的は変身能力を失って、四次元ロボ獣メカギラスを前に手も足も出なくなってしまった。しかし、そのときに行方不明となった矢的を心配した1年E組の生徒たちが、空に向かって矢的の名前を力いっぱいに叫んでいた……
 あのシーン自体は当時としてもクサいといえばクサかったのだが(汗)、まさにそのときのことをも彷彿とさせて、しかもそれをもオセロゲーム的に美化して、その印象をキレイに上書きまでしてくるかのような名場面に仕上がってもいるのだ!


 かつての生徒たちが居並んでいる屋上からの主観カットで、校庭にすっくと立っているエイティがまた、それだけなのに実に泣かせてもくれるのだ……


 彼らは「矢的先生 思い出をありがとう」なる横断幕も広げてみせた……


塚本「みんな、先生には感謝しています! 本当に、ありがとうございました!!」


 卒業式の定番曲「仰げば尊し」をエイティに対して皆が合唱をはじめる。もうとても冷静ではいられない……(滂沱の涙)


 感無量の想いで生徒たちを見下ろして聴き入っていたエイティは、合唱が終わると静かに空へと飛び去っていった……


 やっと「本当の卒業式」を迎えた1年E組の生徒たちを屋上に見上げているミライ隊員の背後から、歩いてくる人物がいた……


矢的「教え子たちに逆に教えられてしまったな」
ミライ「兄さん」
矢的「感謝してるのは私の方だ。彼らとともに過ごせた時間は、私にとってもかけがえのない想い出だからな」
ミライ「さぁ、みんなが待っています」
矢的「メビウス、私は自分の言葉で謝ってみるよ。大切な私の生徒たちだから」


 懐かしの学び舎に向かっていく矢的先生。それに気づいた屋上の生徒たちが、


「矢的先生~~!!」


 と大歓声をあげる。それに大きく手を振って応えてみせる矢的先生……


ミライ「きっとあの怪獣は、桜ケ岡中学が呼び出したんです」
ジョージ「コノミが云ってたようにか?」
ミライ「ハイ。でもちょっと違うのは、桜ケ岡中学が壊されてしまうから、悲しいからじゃなくて、エイティ兄さんと生徒さんたちを会わせたくて、怪獣を出現させたんです」
マリナ「想い出の人、っとゆーか……」
ジョージ「想い出の、ウルトラマンか……」
ミライ「想い出って、本当に大切なものなんですね」


 屋上で矢的先生と抱擁を交わして涙を流す生徒たち。いつしか空は夕暮れとなり、彼らを赤く染めあげていった……




 原典である『80』のプロデューサーを務めていた円谷プロの満田かずほ氏は、1980年当時に発行された同人誌で「学校編」の設定が消滅した件に関しては、「描かれなくなっただけで、矢的は今も教員を続けている」という主旨の個人的な見解をコメントしていたらしい。
 だが、それは『80』のファンに対する直感的・反射神経的なリップサービスであったようにも思える。果たして本心の部分ではどうであったのだろうか?……



「学校の生活というのは現実だから、どうしてもSFの味つけとしては遠くなっちゃうんですよ。(中略)それで、UGMを中心にしていけば、もうちょっとSF的な展開もできるのではないかということで、シフトしていったんですよ」

タツミムック『検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版・06年2月5日発行 05年12月22日実売・ISBN:4777802124)プロデューサー・監督 満田かずほインタビュー)



「僕はね、『金八』大嫌いだったの。生徒とタメ口をきいて、友達のように心の問題に相談にのるとか、「冗談じゃない!」って。(中略)だから主人公が先生と怪獣退治を兼業してもいいけど、ものわかりのいい兄貴的なキャラクターとして描くことは、個人的には非常に抵抗がありましたね。そこはきっと意見としても言ったんだとは思うんですけどね。結果としてそのあたりは通らなかった」


「うーん、あまり肯定的ではなかったですね。職業を何にしても特に構わなかったんだけど、先生ということであるなら、先ほどもお話したような、ソフトな先生なんてのはいかんと。それは強く思ってましたね」


(『君はウルトラマン80を愛しているか』脚本・阿井渉介(『80』放映当時は阿井文瓶・名義)インタビュー)



 以上のインタビューからは、円谷プロやメインライターの方では、「学校編」の設定をあまり好ましいものだとは捉えていなかったことがうかがえる。そして、「主人公を先生に、というのはTBS側の意向が働いていた」とも、阿井氏は語っている。


 実はそれは当時、中学2年生ですでに同作のメインターゲットではなかった筆者の、『80』に対する放映当時の率直な感想でもあったのだ。


 いま観返してみると実に微笑ましいと思えるギャグ演出も、当時は90年代以降の流行語で云うならば「サム~い」としか思えなかったし(汗)、『金八先生』ではすでに「十五歳の母」などというシビアなネタをやっていたのにも関わらず、失恋した少年の復讐心が怪獣を生み出すだなんてあまりにも幼稚だと思ってすらいたのだ(爆)。


 だから、第13話『必殺! フォーメーション・ヤマト』(脚本・阿井文瓶 監督・湯浅憲明 特撮監督・川北紘一http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100725/p1)以降、「学校編」の設定が消滅して、『ウルトラセブン』を彷彿とさせるかのような「SF」色の強い路線である通称「UGM編」に変更されたことが、当時の筆者はたまらなく嬉しかったものだった(汗)。


 だが、3クール目以降、今度は『ウルトラマンタロウ』的な子役ゲストが中心の路線に再度変更されるとゲンナリして、真ウラの時間帯で10月から放映がスタートしたリメイク版のテレビアニメ『鉄腕アトム』(80年)を弟が観たがったこともあって、リアルタイムの視聴はそこで打ち切りとなってしまったのだ……


 だが、そのわずか3年後、高校2年生のときに再放送を観た際にはその感想や評価が一変した! あれほどツマラないと思っていた「学校編」がたまらなく魅力的に思えたのだから不思議なものである。


 特に先にも挙げた第9話『エアポート危機一髪!』は、中国東北部や韓国のソウルで大暴れしたオイル怪獣ガビシェールが石油を求めて九州オイル基地・東海オイル基地を襲撃して関東に迫ってくる恐怖感!――脳がムキ出しになったような頭部に血管が浮き出たような体表といったけっこうグロい怪獣なのだが、それがまたカッコいい!――
 コンビナートの石油タンクや成田空港の駐車場に並んでいる何十台もの乗用車のミニチュアを惜し気もなく圧倒的な火炎で派手にブチ壊す川北紘一による特撮シーン!
 そして、京子先生のお見合いを阻止せんとする1年E組の生徒たちをコミカルに描きつつも、彼らに迫ってきた危機とウルトラマンエイティである正体がたとえバレてしまってウルトラの星に帰還せねばならなくなっても救いたいとする矢的の心情をカラめてクライマックスとしたドラマ構成!
 まさに「本編」と「特撮」が渾然一体となって絶頂の盛り上がりを見せていることに対し、おおいに驚嘆の念をおぼえたのだ。


 成田空港に迫ってくるガビシェールを前にして、矢的は最後の言葉を贈る……


●スーパーに対しては、「ちゃんと歯をミガけよ。おまえ虫歯だらけなんだからな」
●落語に対しては、「理科をもっとしっかりな」
●ファッションに対しては、「いつまでも優しさを忘れずにな」
●博士に対しては、「クラスのまとめ役を頼むぞ!」
●京子先生に対しては、「お元気で……」


 ガビシェールが吐き出した猛烈な火炎の中に身をうずめながら、「エイティ!!」と叫んで変身を遂げる矢的先生はスゴくカッコいいのだ!


 もしも「学校編」の設定が最後まで続いていたのならば、こうしたノリの最終回になったのではないか? と仮定したのは筆者だけではないだろう。


 スタッフやキャスト陣が手慣れてきたころに製作されたからだろう。第10話『宇宙からの訪問者』と第12話『美しい転校生』も、マイナスエネルギーという設定のためにやや陰気であった序盤4話分あたりと比較すると、ドタバタ喜劇やラブコメ風味が加味されてきて娯楽作品としての完成度は明らかに高い。
 しかも、それらはすべて恋愛の要素を扱ってはいても、第3話『泣くな初恋怪獣』のようなジメジメとした印象は感じない。ようやく「学校編」の方向性が固まってきたかのようなこれらのエピソードを観るにつけて、今となっては「学校編」の設定を排除してしまったことは、あまりに惜しかったようにも思えるのだ。



「僕なりに当時の生徒たちとなかよく撮影してたんでね。ピタッと、もう会うことない、っていうのがすごく寂しく思ってました。いくらドラマとはいえ、最後にその(別れの)シーンがなかったってことだけは、ずっと気持ちの中でモヤモヤしてた部分ですからね。だから、みんなに「すまなかった」って言わせてもらえたってことと、みんなのところに来て、同窓会のシーンを作ってもらえて、ちょっと救われた気がしますよね。だってエイティは学校の先生だったんですよ」

徳間書店ハイパーホビー』2007年3月号(ASIN:B000MR8NTQ長谷川初範インタビュー)



 放映当時に「学校編」を好きになれなかった理由は何であったろうか? その理由はふたつ考えらえる。
 ひとつは当時は、特撮・アニメなどのジャンル作品に市民権を与えるためには、「大人の鑑賞にも堪えうる、ハードでシリアスでリアルシミュレーションでSFな作品でなければならない!」といった風潮が、筆者も含めてマニア間では実に強かったこと。
 もうひとつは、筆者が当時はまさに中学生であったこと。だから、まさに牧歌的な中学校を舞台とした『80』における「一所懸命」がポリシーであった矢的先生や1年E組の生徒たちの姿を「リアル」ではない「絵空事」だと感じてしまったためなのだ――その意味でも、いじめや校内暴力を扱っていた『金八』の方が「リアル」で面白いと感じていたのだ――。


 よって、もっと幼少期に、あるいは成長して高校生以上や社会人(笑)になってから『80』に接していたのならば、また違う見方になっていた可能性は高かったと今となってはて思うのだ。そして、実際にも当時そうした世代だった特撮マニアたちにはリアルタイムからの『80』のファンも相応にはいるのである。
 実はたしかに、『80』以外でも「つまらない」と思っていたジャンル作品を、後年に再視聴してガラッと感想が変わってしまった経験は少なからずにある。特に小学校中高学年~中学生の時期に視聴していた作品にそれが多い。そしてもちろん、それはチャイルディッシュな要素を押し出した作品であることも多い。それはやはり、自身が人格形成・思想形成の途上にあった時期ゆえに、そうした子供向けの路線を過剰にキラったゆえの偏向もあったのだろう。


 とはいえ、満田かずぼや阿井文瓶の発言も当時の特撮マニアたちによる「学校編」批判に影響されて、記憶や評価や印象が微妙に上書きされてしまっている可能性もあるだろう――特に阿井氏は『80』のことはあまり記憶にないと語っているからなおさらである――。


 そして、百歩譲って彼らがホントウに「学校編」の設定を苦々しく思っていたのだとしても、それは作品の価値とは別問題ではあるのだ。


 怪盗アルセーヌ・ルパンの生みの親であるフランスの小説家モーリス・ルブランが、友人の編集者に依頼されてイヤイヤ執筆した『ルパン逮捕される』は大評判を博して、以降の氏は次々と『ルパン』シリーズを連作することになった。それまでの氏が執筆してきた純文学系の心理小説は商業的にはずっと失敗に終わっていたのである。
 探偵シャーロック・ホームズの生みの親であるイギリスの作家コナン・ドイルも、自身が犯罪小説で得た成功に対して「尊敬に値する文学的情熱から遠ざけるもの」だと困惑していたらしい。


 モーリス・ルブランコナン・ドイルも彼らの出世作である「犯罪小説」をむしろキラっていたのである。だがしかし、一般大衆にとってはやはり「文学」よりも「娯楽」なのである(爆)。読者や視聴者が作者の意向や本心に影響される必要はないのだ。作品の価値は作家が決めるものではなく、読者や視聴者が決めればよいのである。いくら作家本人が愛している作品ではあっても、自画自賛なだけの独り善がりな作品ではどうしようもないのだし(笑)。


 「ソフトな先生はいかん!」という阿井氏の発言も、たしかに先生は生徒に媚びればよいというものでもないので、傾聴には値する意見ではある。
 しかし、氏もまた、30分尺のテレビドラマ『若い! 先生』(74年・TBS)という学園ドラマを執筆しているのだ――同作は長坂秀佳がメインライターで、ウルトラシリーズを執筆してきた市川森一上原正三・田口成光も参加している!――。
 『80』と同じく熱血な新任高校理科教師が主人公であり、『ウルトラマンタロウ』で主人公・東光太郎(ひがし・こうたろう)を演じた篠田三郎が主演の作品であった――『ウルトラマンレオ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)の主役・おおとりゲンを演じた真夏竜も第23話『ふりむくな昨日を!』(脚本・阿井文瓶 監督・榎本冨士夫)に生徒役でゲスト出演している――。


 放映当時のかすかな記憶だけなので断定はできないのだが、篠田三郎が主演だったのでそんなに暑苦しくはなくて、爽やかで「ソフトな」先生だったような気がしたのだが(爆)。


――余談になるが、同人誌『橋本洋二 大全集』(98年・森川由浩)に掲載されたインタビューによれば、橋本洋二が阿井文瓶の最高傑作脚本として挙げていたのが、この『若い! 先生』第17話『ぼくたちの結婚!』(監督・榎本冨士夫)であった――


 たとえ当時のスタッフが内心では「学校編」の設定を快くは思っていなかったとしても、そしてその設定がシリーズ途中で消失してしまったとしても、あるいはその消失を喜んでいたような筆者であっても、そのような貫徹できずに不全感に満ち満ちた設定をひろってきて、それを煮詰めて肉付けしていけば、1年E組の生徒たちは矢的先生を26年間も慕い続けていたという、補完的でも感動的な名作ドラマも構築できるのである。
 あるいは、今でも「学校編」のことを評価していない古株の特撮マニアたちであっても、今回のエピソードにはきっと大きな感動を巻き起こしていたのではなかろうか? それほどのパワーと完成度をこのエピソードは達成したようにも思うのだ。


 ヒーローVS怪獣の対決とその勝利のカタルシスをクライマックスにすべき「特撮」作品、あるいは「特撮変身ヒーロー」を近年では賞揚している筆者だが、それとは真逆のストーリー展開であり、ウルトラマンメビウスウルトラマンエイティVSロベルガー二世のバトルをラストではなく冒頭でアッサリと処理してしまったり、『80』「学校編」の設定を知るよしもない幼児たちには理解ができないであろう心情描写を擁護することの矛盾を筆者自身も自覚はしている。


 だが、それを承知の上で、筆者は本エピソードを傑作であったと主張したい。矢的猛役の長谷川初範(はせがわ・はつのり)の出番はラストシーンのみにとどまってはいる。しかし、それはすっかりメジャーになってしまった氏の出演がたとえ果たせなかったとしても、あるいはワンカットしか出演ができなかったとしても、あるいは代役が後ろ姿で演じるかたちでも成立がするようなシナリオにしたからだろうと推測はできるのだ。変身後のエイティの姿のみでミライ隊員と会話をするのも、最悪の場合には声優にエイティのボイスを演じさせるための処置だったのかもしれない。
 しかし、その場合でもエイティ客演編としては相応の完成度は達成ができていたシナリオだったとは思えるのだ。ギリギリまでわからなかった出演者の都合も絶妙に考慮しながら、高いドラマ性をも達成したシナリオだったと認定したいのだ。


 ただし、E組の生徒たちは『80』当時とは全員が違う役者さんが演じている。しかし、いかにも成長したその後の彼らといった役者さんたちがキャスティングされているあたりで違和感もまるでないのだ。
 落語だけは原典よりも少々熱血気味なキャラクターになってしまったようにも思えたが、あのネアカ至上の狂躁的な80年代中盤においては三枚目的なオドケたキャラクターでは女性にはモテない時代が訪れるようになっていたから(汗)、きっと高校生や大学生時分にキャラ改変をしたのだろう(ホントかよ?・笑)。


 生徒役の役者さんたちの中には『80』を実際に視聴していた者もいれば、視聴していなかった者もいるだろう。だが、後者であっても人生経験をふつうに重ねていれば、たまたま恩師の正体がウルトラマンであったことを除けば、恩師と教え子たちの同窓会という今回の設定はふつうに理解ができる普遍的な人間の心情なのだし、その演技にも実に力が込もったことと思われる。そして、それはやはり特撮マニアならぬ一般の視聴者とて同じことなのだ。


 私事で恐縮だが、本エピソードのオンエア当日に――筆者が現在居住している静岡では、キー局より1週遅れの金曜15時30分に放映――、筆者は会社を早退して病院へ行って診察を終えて待合室に出てくると、なんとテレビで今回の『メビウス』が流されており、ちょうどスーパーたちが屋上にあがってきた場面であった。
 そこに居合わせたのは中高年の男性が中心であり、メビウスVSホーの場面では皆が新聞や雑誌を読んでいたのにも関わらず――唯一、第1期ウルトラ世代であると思われる40代後半と思われる女性だけが熱心に観ていた――、生徒たちがエイティに向かって叫んでいる場面で皆が画面に注目しはじめて、「仰げば尊し」の合唱画面になると何とも云いようがない顔をして喰い入るように画面を見つめていたのである! 細部にマニアックな点が少々存在したとしても、今回のエピソード自体は幼児にはともかく人生経験をふつうに重ねていれば、たしかに一般視聴者でも理解ができる普遍性に満ちたものであることが証明されたのだ!


 1年E組の生徒たちがなぜここまで矢的先生を慕い続けていたのか、ついそれを知りたくなって『80』のビデオをレンタルしてしまうような、作品の呼び水となりうるだけのパワーを今回のエピソードは充分に有していたとも思えるのだ。



 映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』や最新テレビシリーズ『ウルトラマンメビウス』でメビウスウルトラ兄弟が華麗に共演したことによって、定番商品として常に置いてあるという印象が強かったバンダイのウルトラヒーローシリーズのウルトラ兄弟たちのソフビ人形が売り切れになってしまう! という快挙もついに達成された。
 昨2006年の年末商戦ではウルトラヒーローのみならずウルトラ怪獣シリーズまでもが、全国各地の玩具屋でバカ売れしてスカスカの品薄状態になっていることは玩具マニアならばご存じのことだろう。ついにとうとうここまで来たか……(感涙にむせぶ)。


 今回のエピソードは子供向け番組や少年漫画では定番である「愛」や「勇気」や「希望」といったポジティブな理念を謳(うた)うものでは決してなかった。むしろ、「学校の廃校」や「別離」に伴う「寂寥感」、不全感の想いを重ねた末の再会での「嬉し泣き」といった、「悪」や「憎しみ」といった感情ともまた異なる第3のものとしての、ポジティブなものとは云いがたいが、とはいえ積極的な「悪」でもない、やや消極的・ダウナーな「詫び・寂び」といった複雑デリケートでもいわたりの気持ちを含むような優しい心情をテーマとしている。ゆえに幼児たちには理解ができないし、子供向けのヒーロー番組としては失格のエピソードだ! といった批判があってもよいだろう。


 とはいえ、そこに対する対策も施されてはいるのだ。ラストでの怪獣ホーとのバトルは、そのエモーショナルなドラマとの兼ね合いからも壮絶なものにするワケには絶対にいかない。しかし、だからこそ本話のエピソードにおける人間ドラマがはじまる前段の作品冒頭に、幼児が最も観たかったであろうメビウス&エイティのカッコいい2大ヒーロー共闘が配置されている!
 これさえあれば、年齢を重ねないとわからないような人情を描いた描写をメインに据えていたとしても、そこはスルーして幼児たちも満足してお腹いっぱいになっただろうから、そこまで先回りして網も張ってみせている、実に巧妙な年長者と幼児を同時に喜ばせる作劇を達成できてもいるのだ。


 幼児たちもエイティのソフビ人形がほしくなったことだろう。なにせリュウ隊員が、


「ミライ、おまえの兄さんの人形、持ってきてやったぞ!」


 などとモロに劇中で登場させているのだし(笑)。



 そのワリには、『80』第13話『必殺! フォーメーション・ヤマト』と第25話『美しきチャレンジャー』(脚本・阿井文瓶 監督・湯浅憲明 特撮監督・佐川和夫・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101016/p1)で披露されて、『メビウス』第17話『誓いのフォーメーション』と第18話『ウルトラマンの重圧』でも使用された、急突進した果てに急上昇してその瞬間に合体戦闘機を分離させる編隊攻撃であるフォーメーション・ヤマトについて、リュウとミライが一言もふれないっていうのは……
 まぁ、画面に映っていることだけがすべてではないだろうし、エモーショナルな人情を主眼としたこのエピソードでミリタリックなキーワードを叫ばせるのも、作風的には水と油となるので良しとしよう!



 唯一の不満…… 低予算番組ゆえのギャラの問題がクリアできれば、京子先生も呼んでほしかった(笑)。


2007.2.7.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年冬号』(07年2月11日発行)『ウルトラマンメビウス』07年1月放映分合評④より抜粋)


ウルトラマン80』での桜ケ岡中学・子役役者陣


塚本幸夫:藤原哲也(#2)
スーパー(ススム):清水浩智
落語(鍛代順一):鍛代順一
博士(上野博士):上野郁巳
ファッション:久野みどり
マリ:秋元美智恵
ミドリ:鈴木真代
真一:斎藤康彦(#3)
大島明男:小田敏治(#6)


ウルトラマンメビウス』#41での桜ケ岡中学OB・役者陣


塚本幸夫:吉見一豊
スーパー:浅木信幸
落語:金と銀
博士:中村良平
ファッション:奏谷ひろみ
真一:紀伊修平


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*1:この項のみT.INUTSUKA執筆。『メビウス』で撮影に使用された桜ヶ岡中学は埼玉県新座(にいざ)市新座2丁目の新座小学校なんです。
 先日、職場の食堂で昼食をとっていると、斜め向かいのオバちゃんが「うるとらまんえいてぃっていう映画を近所で撮ってた」と話してたのでまさかと思い、詳しく聞いてみたらそうだったのでした。しかも職場からはわずか1kmの距離。廃校だからきっと平日の撮影だったんでしょう。仕事なんかしてる場合じゃなかったなぁ。