假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありませんので、悪しからず!(笑)

ウルトラマン80 41話「君はゼロ戦怪鳥を見たくないかい?」

ファミリー劇場ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)


『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧

第41話『君はゼロ戦怪鳥を見たくないかい?』 〜石堂脚本が頻繁に描く戦後の核家族、情けない父・ちゃっかり息子!

ゼロ戦怪鳥バレバドン登場

(作・石堂淑朗 監督・東條昭平 特撮監督・佐川和夫 放映日・81年1月21日)
(視聴率:関東7.7% 中部9.0% 関西12.9%)


(文・久保達也)
(2010年11月執筆)


 小学6年生の斉藤武夫は5年生になった春、太平洋戦争で活躍した伝説の戦闘機・ゼロ戦の実物展示を見て以来、すっかりその虜(とりこ)になってしまった。
 自室にいくつも模型をぶら下げ、自分が描いたゼロ戦の絵を壁一面に貼るばかりか、コクピットまでをも自作し、大空を飛翔する夢を追い続ける日々が続いた。


 そのうちに高価なラジコン模型が欲しくなった武夫は、父・秀夫の車を洗車しては駄賃をもらい、近所のスーパーでアルバイトを始める。
 それまで好きだった切手収集もやめ、友人からのゲーセンへの誘いも断り、3時のおやつを食べなくても済むように給食を人の倍食べてあきれられ、遠足の小遣いも1円も使わず、ひたすらケチに徹して金を貯めた。


 そして岡山県の祖母にもらったお年玉を足すことで遂に目標の12万円を貯めた武夫は、念願だったラジコンのゼロ戦を手に入れた。
 寝言すらもゼロ戦のプロペラ音と化した息子に、母・美絵子は……


美絵子「いくらなんでも、度が過ぎてるわ」



 今回はいわゆる「ゼロ戦おたく」の少年・武夫がゲスト主役である。
 まだ「おたく」なる言葉が一般化していない当時(83年にマイナー漫画誌で誕生した言葉。89年のいわゆるM君事件で世間に普及した)、いくら空前のアニメブームが起きようがそれを嗜好(しこう)する人々、ましてや特撮マニアなんぞ、周囲からはまだ今よりも奇異の目で見られていたような頃の話である。


美絵子「子供はゼロ戦、父親はゴルフ。あたしもなにかに凝(こ)ろうかしら」


 20万円もするゴルフクラブを磨いている秀夫につぶやく美絵子。
 現在ではいくら家庭に入ろうが趣味を楽しんでいる主婦も数多いが、当時はまだ少数派であり、自分の楽しみを犠牲にしてまで生活を優先させる主婦が多かったのである。


秀夫「ゼロ戦が武夫の命なら、これは私の命だ」


美絵子「玩物喪志(がんぶつそうし)」


秀夫「玩物喪志?」


美絵子「中国のことわざ。ものにこだわり過ぎると人間がダメになるってこと」


秀夫「このクラブのためなら、ダメになってもおおいに結構」


美絵子「ウチの男はふたりとも救いがないわ」


 我々マニアにとっては美絵子の言葉は実に耳が痛いが(笑)、彼女が趣味を楽しむ精神的余裕がなかったと思われる点もさることながら、一連の場面には「子供の領域」「大人の領域」、そして「男の領域」「女の領域」といった価値観の違いが如実に表現されている。
 そうした垣根が既に取り払われてしまった現在の視点で見ると、30年という歳月があまりにも長いものであることを、実感せざるを得ないものがある。


 導入部でラジコン飛行機の大会のために練習をする武夫とパトロール中に出会ったイトウと矢的が、作戦室で武夫のことを話題にする場面がこれに続くが、


イトウチーフ「一点豪華主義は男の生き方そのものですよ。僕なんかこの3年間背広1着で通してますからね」


イケダ「チーフ、僕もそう。ネクタイだって1本しかないんですよ」


 と自慢気に(笑)話していたのに対し、


エミ「女性はそうはいかないわ。毎日同じものを着てると、すぐなにか云われるんだもんねえ」


ユリ子「そうなのよねえ。その点まだまだ女は損よ」


 と、ここでも男女の違いを強調することで先の場面に説得力を加えるあたり、さすがは石堂大先生である。


 「今はビルが建っちゃってるけど、昔、近所の病院の近くに空き地があって、そこでよくラジコンを飛ばしてたんですよ。あれは飛ばしてると結構すぐダメになってきてね(笑)。やっぱり、そういう実体験が発想の根本にあるんですね」
 (脚本/石堂淑朗インタビュー・タツミムック『検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版 06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124))


 石堂大先生の作品には自然児が遊び回るような、子供目線の話が多いのだが、今回石堂大先生は「価値観の相違」を強調することにより、ウルトラシリーズが「子供の世界」「男の子の世界」であることをあらためて主張したのではなかろうか。
 大人向けのドラマ性やテーマを重んじる第1期至上主義者の論調に一石を投じたのではないか。そんな気さえしてくるのである。
 (まあクタビれた大人になってからの方がよくわかる描写も多いので、石堂脚本回はマニア向けでこそないものの良くも悪くも大人向けな面もあるのだが)


 ラジコン大会当日、武夫のゼロ戦(操縦される様子は特撮で描かれており、武夫のコントロールによって反転や急上昇するのもさることながら、青空に浮かぶ雲をスモークで再現するなど、空気感の表現が見事である!)は突如コントロールを失い、空の彼方に消え去ってしまう。
 すっかり落胆した武夫は不眠症(!)に陥ってしまい、


秀夫「命あるものは必ず死に、形あるものは必ず召す、とことわざにもある」


 父の秀夫になだめられるが(「玩物喪志」もそうだが、このあたりはさすがに石堂大先生、東大文学部出身である!)、


武夫「父さんのゴルフ棒、あれがもし折れたらどうする?」


 と食ってかかる始末。


美絵子「もしゼロ戦がもう出てこないようでしたら、あなたのゴルフ棒も売って下さい!」


秀夫「おい、そんな……」


美絵子「だって、この子は命の次に大事なものをなくしたんですもの。あなたもつきあいなさい!」


 妻にも追いうちをかけられ、ゴルフおたくの秀夫は大ピンチ!(笑)


秀夫「なあ武夫、おまえいつゼロ戦探しに行く? 父さんそっちの方つきあうよ。おまえのゼロ戦が見つかれば、父さんのクラブも助かるんだ」


 これでは愛する息子のためというよりも、完全に自分の楽しみのためである!(笑)
 石堂大先生が描く登場人物のセリフにはいちいちおおげさなものが多いのだが(笑)、ひとつのものにあまりにも執着し過ぎることがいかに滑稽であるかが、本編ではひたすら強調され続けるのである。


 絶好のゴルフ日和(びより)となった休日、秀夫は武夫のゼロ戦探しにやむなく同伴することになるが、武夫が首からブラ下げたメッセージに仰天する!


秀夫「『この前の日曜日、このゼロ戦のリモコン機を見た方、どうぞ僕に教えて下さい』 ……オーバーだよ少し」


武夫「恥ずかしいんだろ」


秀夫「そんな……」


武夫「いいです。ひとりで行きます!」


 ゼロ戦の写真を貼ったプラカードを掲げ、勇ましく家を出る武夫。


絵美子「あなた! 行ってらっしゃい!」


 妻にけしかけられ、やむなく武夫のあとを行く秀夫だが、街に出た武夫は人々から好奇の視線を浴び、嘲笑の渦にさらされることになる……


 この場面、同じ東條昭平監督作品である『帰ってきたウルトラマン』(71年)第33話『怪獣使いと少年』における、ゲスト主役の佐久間良(さくま・りょう)少年が商店街を歩く際、人々から好奇の視線を浴び、「宇宙人だ!」と恐れられる場面を彷彿とさせるものがあるが、80年代当時、おたくはまさに人々から「宇宙人」扱いされていたのである……
 たまらずサングラスとマスクで顔を隠す秀夫(笑)。おたくがまだ社会的地位を得られていなかった時代を象徴する描写である……


 斉藤親子はゼロ戦を追い、美しい自然に富む(関東近郊だろうけどロケ地は?)大鳥渓谷(おおとり・けいこく)にまで来てしまった。バス代のあまりの高さに傷心する秀夫だが(笑)、遂にゼロ戦を見たという老人に出くわすことになる!
 先を行こうとする二人だが、大鳥渓谷には50年から60年に一度、宇宙から渡り鳥が飛来し、大好物である人間の子供を食べてしまうから引き返すように、老人から説得される。


武夫「いや、僕は行く! あのゼロ戦と共に僕の命はあるんだから。ゼロ戦といっしょなら、死んだっていい!」


秀夫「ゼロ戦が出なければ、ゴルフのクラブもなくなる。クラブか命か、そのへんが問題だな……」


 どう考えたって命の方が大事だろ(笑)。ここまで徹底的に斉藤親子が人々から好奇の視線を浴びてもしかたのない存在であることをあおりまくったあと、老人の言葉がさらに追いうちをかける!


老人「変な親子だの〜……」(笑)


 探し続けてすっかりくたびれてしまった武夫は、手にした操縦機のレバーを操作し、ゼロ戦に号令をかけてみる。
 そこに、老人が語っていた宇宙の渡り鳥・ゼロ戦怪鳥バレバドンが現れた!
 バレバドンは武夫の号令通り、月面宙返り・きりもみ三回転半・急上昇などの妙技を次々に披露する!


 矢的がダブルエックスレントゲン光線でバレバドンを透視したところ、なんとバレバドンは武夫のゼロ戦を飲みこんでおり、操縦機の信号を受けて武夫の命じるままに動くようになってしまったのだ!


イトウ「そんなばかな」


 大半の大人たちはそう思うことだろう。バレバドン登場以降、この回は完全にジュブナイルファンタジーとなる。要するに完全に子供のファンタジー心にしか理解できない世界なのである。


 ここに至るまでの本編が子供と大人、男と女、一般人とおたくといった「価値観の相違」を再三に渡って描いてきたのは、まさにそれを徹底するための、用意周到に計算し尽くされたお膳立てだったのである!
 さすがは石堂大先生である!


イトウ「出た! すぐUGMに報告しろ!」


イトウ「ありゃどっかのサーカスから逃げ出したんだな」


 そんなわけあるかい!(笑) イトウチーフをボケ役に徹するのも石堂大先生の常套手段である(笑)。


 バレバドンはvalley(渓谷)とbird(鳥)からネーミングされたようだが、着ぐるみではなく、大・小の飛び人形で製作されており、制約から解き放たれたデザインとなっている。
 赤く爛々(らんらん)とした目が光る頭部――各種書籍掲載の写真ではわかりにくいが、全身褐色で塗装されているものの、頭部だけは緑色で塗装されている――だけはウルトラ怪獣らしいのだが、実際の鳥のように手を廃したばかりではなく、足には背中の翼と同様にギザのあるかなり大きめの翼が備わっており(こんなの着ぐるみなら歩行の邪魔だ・笑)、ムチのようにしなる細くて長い尾を生(は)やしたスタイルは、ウルトラ怪獣というより海外ファンタジー作品に登場するキャラクターであるかのような異彩を放っている!


 武夫の指示で着地するバレバドンは山から俯瞰(ふかん・高所から見下ろし)するイメージで全身が映されているのだが、その手前には武夫と秀夫が小さく合成されており、なんともたまらん臨場感である!
 すっかり有頂天になってしまった武夫は、


武夫「すごい! こんなことができるのは、世界中でぼくひとりだ!」(笑)


 と、秀夫が制止するのも聞かずにバレバドンの背にまたがってしまう。
 この場面も手前に実物大のバレバドンの背にまたがる武夫を配し、そこから俯瞰する感じで画面奥に秀夫が小さく撮らえられており、バレバドンの巨大感を表現するのに絶大な効果をあげている!


 バレバドンの背にまたがり、武夫は遊覧飛行の旅に出る!
 空撮の実景を折り混ぜ、飛行するバレバドンと眼下にそびえるミニチュアの街並みを空から俯瞰するようなアングルがなんとも素敵だ。
 ここで流れるのがなんと『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100430p1)の科学警備隊の戦闘機を描写するテーマとして作られ、『80』でも第14話『テレポーテーション! パリから来た男』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100801p1)以降多用され、後年の『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506p1)第17話『誓いのフォーメーション』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061001p1)では新たにコーラスをダビングして使用された、マニアの間では「急降下のテーマ」(正式MナンバーはM27)として知られる戦闘機の高速飛行を彩(いろど)る名曲であり、高揚感あふれる場面にピッタリとマッチしているのだ!


 バレバドンは赤い目玉をギョロつかせ、眼下の街並みに卵を生み落としてしまう。
 俯瞰したミニチュアの道路や建物の上に巨大な卵が割れ、中から黄色い身がグチャリと飛び出す様子がなんとも生々しい。これならまだ破壊された方がマシだよなあ(笑)。


 イトウと矢的の姿を見つけた武夫はあいさつをしようと地上に急降下をかける!
 武夫の目線で俯瞰したイトウ・矢的・秀夫に高速で迫るカットに続き、バレバドンが画面手前に迫ったあと急上昇する特撮カットに、実景の山と3人を合成した場面を配しているのが大迫力である!


 そこに飛んでくる1機のセスナ。武夫はこれにもあいさつをしようと急接近。
 バレバドンに比較すると相当小さなモデルだが、操演でよくこんな小さなものを飛ばせたものだと感心するばかりである!
 たまらず降下していくセスナ。


イトウ「いたずらにしては度が過ぎてる!」
矢的「まったくだ!」


秀夫「すいません。ゼロ戦さえなければいい子なんです」(笑)


 初期の『80』的にやろうとしたら、せっかく自分の思いのままに操れる怪獣を手にしたのだから、今まで自分を馬鹿にしてきた人間たちに復讐するという展開になっていたであろう。
 だが武夫はそうはならず、大空を飛翔する夢をひたすら追い求めるのである。
 これこそ故・円谷英二特撮監督が追い続けた「日本ヒコーキ野郎」の夢の世界の具現化ではなかろうか!
 今回のような展開は第1期至上主義者には耐えられんかもしれんが、円谷が本当に描きたかった「夢の世界」は怪獣ではなく、本来はこうした世界だったはずである!


武夫「♪カ〜ラ〜ス〜、なぜ鳴くの〜、カラスの勝手でしょ〜」


 当時のお笑い&歌謡番組『8時だョ! 全員集合』(69〜85年・TBS)の1コーナー「少年少女合唱隊」で、ザ・ドリフターズ志村けんが童謡『七つの子』(作詞・野口雨情)の替え歌として歌い、全国の子供たちの間で大流行させたものだが(当時の新聞報道によれば、作詞の野口の遺族から番組宛てに抗議文が寄せられたらしい)、なんとそこに本当にカラスが飛んできた(笑)。
 バレバドンの前方を飛行するカラスはミニチュアだが、セスナ以上に小さい造形なのに、なんと翼をはばたかせて飛んでおり、びっくり仰天!


 腹を空かせたバレバドンはカラスを食おうと口を大きく開けるが、そのはずみで飲みこんでいだリモコンのゼロ戦を地上に落下させてしまう!
 スト〜ンと真っすぐに落ちるのではなく、ゼロ戦のミニチュアがグルグルと回転しながら落下していくのも芸コマだが、感心している場合ではない。
 コントロールがきかなくなったバレバドンは、背中にまたがる武夫を鋭い目でにらみつける!(ギョロッと動く赤い目玉のアップがいい!)


 バレバドンは反転や急上昇を繰り返し、絶体絶命の危機に陥る武夫。
 高速で飛行するミニチュアのカットの合間に、実物大の背中にまたがる武夫をカメラを反転させて撮らえたカットを挿入しているのが臨場感満点!


 矢的は遂にエイティに変身! 空中での大追跡となるが、バレバドンは遂に武夫を背中から振り落としてしまった!
 武夫を見事にキャッチし、大地に着地するエイティ!


 変なものを食ってしまって地球に居心地の悪さを感じたのか、宇宙の渡り鳥・バレバドンは静かに大空を飛び去っていった……



 ぶっちゃけ今回のエイティは武夫を救うためだけに登場している。最初から戦闘の意思は感じられない。バレバドンは第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』評(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110101/p1)の中で紹介した石堂大先生が云うところの「怪獣としてはダメな奴」「ケンカしない怪獣」だからである。


 『ウルトラセブン』(67年)第7話『宇宙囚人303』では、モロボシ・ダンはガソリンを主食にする火炎宇宙人キュラソ星人が炎上させたウルトラホーク1号のβ(ベータ)号から脱出するだけのためにウルトラセブンに変身しており、キュラソ星人とのバトルはまったく描かれてはいない。
 筆者は小学4年生の時にこの回を再放送で観た際、おおいに不満だったものである(三十数年経った今でも不満だ・笑)。
 巨大化したキュラソ星人に攻撃を加えようとするウルトラ警備隊のキリヤマ隊長をダンが制止する。


ダン「キュラソ星人の身体はガソリンタンクも同様です。今に自爆します」


 そりゃ確かにそうなのだが、キュラソ星人は『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)初期に登場した通り魔「星人」のごとく、ハンター2人にガソリンスタンドの店員2人、スタンド客の金髪女性、パトロール中の警官3人などを次々にブッ殺しており(東映ヒーロー作品でもなかなかここまではやらない)、そんな奴アイスラッガーでズタズタに切り裂くか、ワイドショットでバラバラに粉砕するべきではないかと、どうしても思ってしまうのである。


 この展開だと正直ダンがセブンに変身する必然性はまったくない。変身シーンがないわけにはいかないからやむなく入れただけのことである。
 第2期ウルトラシリーズのTBS側のプロデューサー・橋本洋二は『帰ってきた』を担当するにあたり、テーマがあってドラマ的にきちんとまとまってさえいれば、変身アイテムも防衛組織のメカも宇宙基地も出す必要はないと円谷側に主張したらしいのだが、確かに一理あるのだけれど、それを突きつめれば「ヒーローさえもいらない」ということになってしまうのではなかろうか?
 『セブン』第7話はまさにその典型例となってしまったのであるが、第2期ウルトラも下手をすればそうなる危険性があったのである。


 個人的に心酔する石堂大先生の作品であり、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)の第21話『天女の幻を見た!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061009/p1)、第28話『さようなら 夕子よ、月の妹よ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061111/p1)、第38話『復活! ウルトラの父』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070121/p1)、『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)第39話『ウルトラ父子(おやこ)餅つき大作戦!』、『ウルトラマンレオ』(74年)第32話『日本名作民話シリーズ! さようならかぐや姫 竹取り物語より』に並ぶ一級のファンタジー作品として高く評価したいのであるが、第39話『ボクは怪獣だーい』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110122/p1)の怪獣少年テツオン、第40話『山からすもう小僧がやって来た』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110129/p1)のすもう怪獣ジヒビキラン、そして今回のバレバドンと、「怪獣としてはダメな奴」「ケンカしない怪獣」を3週も連続させたことが、『80』がますます世間の子供たちから見放されることになってしまった要因ではなかろうか?


 「善悪の割り切りがはっきりある中での痛快な戦いこそ、最もウルトラマンらしい形である」と脚本家の平野靖士は主張している。
 その一方、「世の中に〈絶対悪〉というのが最初からあって、それをやっつければOKという話じゃない」と主張する石堂大先生。
 まさに「ウルトラマン」に対する「価値観の相違」である。
 どちらが正しいということは絶対に云えない。そのどちらをもバランスよく配することこそが大事なのではなかろうか?(どちらかというと平野の論を主に、石堂大先生のポリシーを従にすべきであろうが)


 正直筆者はこの第41話を面白いと感じたのは今回の再視聴が初めてである。それはおそらく武夫のような年齢の息子がいてもおかしくない年齢に達したことが大きいと思う(前回視聴したのは二十代半ばのころであった)。やはり武夫の父・秀夫におおいに感情移入してしまったのである。


 これだって立派な「ウルトラマン」なのである。そのことは声高に主張しておきたい。


 しかしながら、この路線を主流にしてしまったら、それこそ怪獣を退治せず保護・共存しようとする『ウルトラマンコスモス』(01年)
 ――主演した杉浦太陽は元・モーニング娘。辻希美(つじ・のぞみ)と結婚後、テレビでの露出度は近年の方がむしろ高くなっているが、肝心の作品自体は完全に世間から忘れられてしまっている――
 のようになってしまうのではなかろうか?


 それだって立派な「ウルトラマン」だという意見もあって当然だろう。
 だが筆者には『セブン』第7話を小学生の際に観て失望した感性が、世間一般の小学生男子にも通じるものであるかと思えるのだ。


 やはりウルトラマンには、戦ってほしいのである。



<こだわりコーナー>


*武夫の母・美絵子を演じたのは『ウルトラQ』(66年)のレギュラー・毎日新報社会部カメラマン・江戸川由利子役や、『ウルトラマン』(66年)の科学特捜隊・フジアキコ隊員役で、ウルトラファンにはおなじみの桜井浩子である。
 今回は夫の秀夫に対してあまりに冷淡な妻を見事に演じきっているが、確か朝日ソノラマ『宇宙船』Vol.6(81年4月30日発行)に掲載された『80』放映終了特集の円谷プロの満田かずほプロデューサーの話によれば、桜井は母親役を演じることに対し、ブーブー文句を云っていたそうである(笑)。


*その夫・秀夫を演じたのは、木下恵介野村芳太郎小林正樹らの監督作品に数多く出演、松竹を代表する映画スターだった石濱朗(いしはま・あきら)である。
 特撮作品ではほかにも東映スーパー戦隊シリーズ超新星フラッシュマン』(86年・テレビ朝日)の準レギュラー・時村博士役、東映メタルヒーロー『機動刑事ジバン』(89年・テレビ朝日)の準レギュラー・警視庁秘密調査室統括責任者・柳田誠一役、同じく『特救指令ソルブレイン』(91年・テレビ朝日)9話ゲストの神崎栄三役、オリジナルビデオ作品『真・仮面ライダー 序章(プロローグ)』(92年・バンダイビジュアル)で主人公の父・風祭大門役などを演じたほか、役柄は不詳だが、映画『仮面ライダーBLACK(ブラック) 恐怖! 悪魔峠の怪人館』(東映系88年7月9日公開)にも出演していた。


*斉藤親子が大鳥渓谷で出会う老人を演じていたのは『ゴジラ』(54年)の田辺博士、『空の大怪獣ラドン』(56年)の南教授、『地球防衛軍』(57年)の川波博士、『大怪獣バラン』(58年)の馬島博士、『宇宙大戦争』(59年)の有明警部、『電送人間』(60年)の三浦博士、『ガス人間第一号』(60年)の佐野博士、『怪獣大戦争』(65年)の医学代表など、東宝特撮映画の常連俳優だった村上冬樹(1911(明治44年).12.23−2007.4.5)である。
 『ウルトラQ』第17話『1/8計画』ではS13地区の区長役で桜井浩子と共演していたが、『サインはV』(69年・東宝 TBS)では八代先生役でオオヤマキャップ(隊長)を演じる中山仁(なかやま・じん)と共演していた。


 なお68年には作家の故・三島由紀夫――『ゴジラ』第1作(54年)が公開当時のマスコミに酷評される中、氏は「文明批判の力を持った映画だ」と高く評価していた――らと劇団・浪曼(ろまん)劇場を結成しているが、ここには一時中山仁も所属していた。
 三島が書いた戯曲の舞台『わが友ヒットラー』(68年)で村上はヒットラー役で主演している。
 特撮ヒーロー作品では『シルバー仮面』(71年・宣広社 TBS)第1話『ふるさとは地球』の都築(つづき)博士、『ワイルド7(セブン)』(72年・国際放映 日本テレビ)第4話『狙われたミサイル』の蛭沼博士、『スパイダーマン』(78年・東映 東京12チャンネル)第1話『復讐の時は来たれり 討て! 鉄十字団』の山城博士など、やはり博士の役を多く演じていた。


*『8時だョ! 全員集合』は69年から16年間継続して放送された長寿番組であると世間では思われがちであるが、実際には71年4月〜9月の半年間放送が中断しており(ザ・ドリフターズが所属していた渡辺プロが『全員集合』を終了させて日本テレビで新番組をやらせたいと主張し、TBSとトラブルになった)、その期間はクレージーキャッツが出演する『8時だョ! 出発進行』が放送された。
 往年のマニア向け書籍「ファンタスティックコレクションNo.10 ウルトラマンPARTII 空想特撮映像の素晴らしき世界」(78年・朝日ソノラマhttp://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031217/p1)などにも掲載された71年春のTBS新番組宣伝用ポスター「春もやっぱり! 6チャンネルですね」――新ウルトラマンと『肝っ玉かあさん』(68〜72年の全3シリーズ)主演の故・京塚昌子がツーショットで飾られた!――にその番組タイトルが確認される。


 『全員集合』といえば「子供に見せたくない番組」であるとして、毎年のようにPTAからワースト番組の筆頭にあげられていたものであるが、やはり子供が観たがるのはそうした「毒」のある番組ではないかと思えるのだ。
 『80』は子供番組としては「健全」に過ぎたからこそ、視聴率が低迷したのではなかろうか?
 その意味では、平成ライダーシリーズは子供番組としてカンペキに合格点が与えられるのではないかとも思える。筆者も親だったとしたら、自分の子供にはあまり見せたくはないなあ(笑)。


(了)
(初出・『仮面特攻隊2011年号』(2010年12月30日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)



編:「玩物喪志」。直接読めば、玩具につつまれて志(こころざし)を喪(うしな)ってしまうこと。
 玩具や書籍やビデオなどのオタク向けグッズの洪水に自室を占領されて、自分で意識的・主体的に収集していたハズなのにいつの間にやら惰性に流れ、玩具が“主体”で人間の方が受動的な“客体”になって使われてしまうような、往々にしてオタにはアリガチな自堕落な事態を指す、我々のような人種には耳がイタイ言葉です(汗)。
 このような事態を指し示す用語を造語していた古代中国人もやはり叡智に満ちています。


 「玩物喪志」といえば、「玩物」にくるまれなければ生きていけない(?)我々オタやマニアのような、一般ピープルとは異なるメンタリティの人間が、自己の偏りを客観的に分析しつつも、それでも何らかの倫理と節度(傲慢でもなく卑屈にもブレない平常心)と主体……それを「玩物喪志(オタク)の志(こころざし)」という皮肉な言葉で表現し、そのネジくれた志を常に微調整を怠らずに維持しつづけて堕落せずに生きていくための方策のヒントを、元祖・オタク族ともいえる昭和初年代生まれで昭和30年代〜60年代までご活躍された文筆家・澁澤龍彦(しぶさわ・たつひこ)の分析と功罪と先見性をつづった『澁澤龍彦の時代―幼年皇帝と昭和の精神史』(93年・青弓社ISBN:4787290835)にてもう20年も近く前につづっていた浅羽通明(あさば・みちあき)氏による著作・評伝が思い出されます。そのテのことに関心がある方にはぜひともご一読を!
 そして、澁澤龍彦ご本人による「玩物喪志」のことわざをパロった書籍といえば、その名もズバリ、『玩物草紙』(79年・朝日新聞社ASIN:4122013127ISBN:9784122013124ISBN:4022640197)。いや読んだことはないけれど(オイ・汗)。



『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧