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ウルトラマンゼロ THE MOVIE 〜大傑作!(なのに不入りで暗澹たる想い・汗)

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 『ウルトラマン列伝』(11年)放映枠で、映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』が2011年11月23日(水・祝)から5週連続で、「絆の章」「炎の章」「鏡の章」「鋼の章」「光の章」に5分割されて放映中記念! ……とカコつけて(汗)。昨年の映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』評をUP!


ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』 〜大傑作!(なのに不入りで暗澹たる想い・汗)

(文・久保達也)
(2010年12月23日脱稿)


初鑑賞時の感想! 『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』 〜大傑作!


 黒い悪のウルトラマンことウルトラマンベリアルが率いるベリアル軍の量産型巨大ロボット・レギオノイド軍団に襲撃される惑星エスメラルダ。ロケ地となった九州は熊本の草原の遠方に、ハイクオリティな質感・実在感で描かれる近未来的な宮殿が燃え盛る絶望的な光景が、不謹慎でも滅びの美学的な荘厳さを感じさせる。


 エスメラルダの第二王女・エメラナ姫がレギオノイドの腕の回転ドリルで襲われようとするや、彼女の頭に飾られた王女用の冠(かんむり)・ティアラの鏡面の輝きの中から、颯爽(さっそう)と飛び出す緑色と銀色の体表で被われた「鏡の勇者」の巨大ヒーロー・ミラーナイト!


 登場SE(サウンドエフェクト)に手裏剣(しゅりけん)状の光線・ミラーナイフの効果音、そしてテーマ曲に至るまで、ミラーナイトのモデルとなった往年の円谷プロの特撮巨大ヒーロー『ミラーマン』(71年)のそれと同じだ!(世代人的には感涙!)


 一方、ウルトラマンたちの故郷・光の国も、やはりベリアル軍が放ったウルトラマンゼロの姿にそっくりでもカラーリングは異なり赤銅(しゃくどう)色をした量産型ロボット・ダークロプス軍団の攻撃を受けていた!


 1970年代の学年誌で連載されていた漫画家・内山まもる先生の筆によるウルトラシリーズのコミカライズや、オリジナル漫画『ザ・ウルトラマン』(75年・78年に児童誌「コロコロコミック」に再録・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160914/p1)にも登場した、往時も100万人はいるとウラ設定されていたウルトラ一族の宇宙警備隊の一般兵士たちが、前作『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)に引き続いて、その世界観を同じくする直続の続編であることの証明も兼ねてか、今回も赤や青や銀色の雑魚(ざこ)ウルトラマンたちとしてキチンと大挙出演! 大バトルを展開する!


 ダークロプス軍団に次第に追い詰められていく雑魚ウルトラマンたち。


 そんな彼らを尻目に、敵の姿もロクに見ずに真横からの光線を片手だけで余裕でハジいてみせてウルトラマンゼロが登場! 敵軍団を圧倒する!!


 主人公ヒーローが強くて別格の存在であることを示す、アリガチでベタではあっても王道ではあるカッコいい演出だ!


 しかし、3体のダークロプスを相手にピンチに陥るゼロ!


 そこにやってきたのはわれらがウルトラセブン


ゼロ「おやじ!」


 セブンとゼロの親子タッグ(感涙!)がダークロプス軍団を蹴散らしていく!


 華麗に宙を舞うゼブンの頭頂部の宇宙ブーメラン・アイスラッガーとゼロの頭頂部の二刀流のゼロスラッガー


 3つのスラッガーが華麗に宙を舞う!!



 雑魚トラマンのピンチ! ⇒ ウルトラマンゼロの加勢で逆転! ⇒ ウルトラマンゼロのピンチ! ⇒ ウルトラセブンの加勢で逆転! といったシーソーバトル。


 現役ヒーローがまだまだ優勢なのに先輩ヒーローが加勢をしてくれても、それはパワーバランス的には卑怯な弱い者イジメにしかならない(笑)。やはり、正義の現役ヒーローが卑劣な悪党により窮地に陥(おちい)ったその瞬間にこそ、先輩ヒーローが加勢をしてもいい大義名分が生まれるのだ!
 そして、それで状況も逆転・好転するからこそ、アリガチでもそこに単なるパワーゲームで物理的に強い方が勝っただけなのだったとしても、正義や道理や倫理を兼ね備えていたからこそ勝ったようにも錯覚(爆)させるカタルシスが発生するのだ!


 アクション演出の奥義というものは、優勢⇒劣勢⇒優勢⇒劣勢の一連の運動を少なすぎず多すぎずで適度に繰り返して、敵キャラも味方キャラも相応に強そうに見せていった果てに、最後に正義や道理や倫理がある方が勝利したことにするシーソーバトルに尽きるのである(笑)。


 別の宇宙での異変をキャッチしたウルトラの父とウルトラの兄弟たちは、自ら調査を志願したゼロに、数十人のウルトラ戦士たちのエネルギーを結集することで、宇宙の果ての壁を突破して別の宇宙へと乗り出せるだけの超エネルギーを与える!


――かつて『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)に変身する前の人間体・矢的猛(やまと・たけし)隊員を演じていた長谷川初範(はせがわ・はつのり)が、2010年の今年は『80』30周年記念関連のイベントで露出をしてくれたせいだろう、長谷川本人が声を演じてくれているウルトラマンエイティが、同作のキーワードでもあった人間の負の感情にも通じている「マイナスエネルギー」の発現だとして、この異変のことを語ってみせる! これまた感涙!――


 かつてウルトラセブンはルトラマンジャック(『帰ってきたウルトラマン』(71年))に万能変型武器・ウルトラブレスレットを与えていた。前作の映画『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』では雑魚トラマンたちの一部も左手首にこの量産型ウルトラブレスレットを装着してヤリ型のウルトラランスに変形させて凶悪宇宙人ザラブ星人4代目(?)と戦っていた。
 本作でもウルトラセブンウルトラマンゼロに、ウルトラブレスレットの腕時計の盤にあたる菱形(ひしがた)の部分を3枚(!)にしたように見える「ウルトラゼロブレスレット」なるアイテムを授ける!


 この際のゼロのセリフがまたいい。


ゼロ「おやじも心配症だな」(笑)


 別宇宙へと飛行するゼロのバックに、ボイジャーが歌唱するヒーロー名を連呼する王道の主題歌『すすめ! ウルトラマンゼロ』も流れる!


 かつてであれば、「子供向けの恥ずかしい主題歌である」として中二病的なマニア連中から「幼稚だ」とバカにされたかもしれない。しかし、一周回って再帰的に再発見された、ただしつくりすぎてしまってウラ声になってしまった1960年代までの児童コーラスの域にまでは先祖帰りはしないで寸止めに留めて(笑)、ヒーローソングの勇ましさ・カッコよさだけを抽出することだけに成功した主題歌になっている! このあたりに、「正」と「反」と「合」でいうところの「合」のステージに達した「現在」という時代が象徴されているようでもある。


 そしてゼロはこの宇宙の外側へと飛び出して、球形型をした膨大な別の宇宙が浮遊しているマルチバース(多元宇宙)へと侵入!


 この球形型のひとつひとつが一個の「宇宙」なのである! シャボン玉のようなラメ・光沢の入った宇宙泡が浮かんでいる超空間の映像がまた美麗そのものなので、眼が惹きつけられて画面に釘づけにもなってしまう。


 小脇に抱えたダークロプスの残骸が発するナゾの波動に導かれて、別宇宙内の惑星アヌーにたどり着いたゼロ。


 彼はレギオノイド軍団と勇敢に戦うも、瀕死(ひんし)の重傷を負った青年・ランの心意気を見込んで、彼と一心同体になる。


 ここでゼロのカラータイマーが点滅を始める! そして、


「別宇宙ではゼロは長時間活動できない」


 うんぬんといったナレーションが入るのだ。しかし、それは単なる設定の説明だけには留まらない、その声音(こわね)がまた劇中の事象に説得力も与えているのだ。これはご承知のとおり、初代『ウルトラマン』(66年)における「地球上ではウルトラマンは長時間活動できない」という印象深いナレーションをアレンジしたオマージュでもあるのだ。やはり本作では往年の初代『ウルトラマン』のナレーターも務めた、今では大御所の俳優・タレントでもある石坂浩二(いしざか・こうじ)の声音ならではのものだろう。


 そして、ゼロに乗り移られたラン青年は明らかにそれまでとはキャラが変わっている。ランを演じた小柳友(こやなぎ・ゆう)の演じ分けも見事である。


 従来のウルトラシリーズでは人間と合体するとウルトラマン自身の人格は潜在してしまい、あくまでも人間側の意識と人格で行動していた。しかし、本作では人間側の意識が潜在してしまい――瀕死の重傷を負ってしまったために昏睡状態なのであろう――ウルトラマンゼロの意識の方で乗り移られた人間の方が言動しているあたりに独自性があるのだ――。そう考えると、個人的にはもうちょっとガラが悪くなってもよかったようにも思うけど(笑)――。


 レギオノイドの追撃を逃れてランと弟のナオは鍾乳洞に避難する。しかし、そこでナオは安堵の喜びも束の間、ランがランであってランでないことを知り、悲嘆と困惑にくれることになる。


 基本的に最終回の近辺までは主人公の正体を隠し続けることが多いウルトラシリーズでは、このシチュエーションは『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)の青い2号ウルトラマンことウルトラマンヒカリhttp://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060910/p1)以外では見られなかったシチュエーションでもある。


 兄貴のラン青年がナゼだか無事だと判明して喜んだり、ランが宇宙人に乗り移られていることがわかって困惑したり、ラン本人も当人の意識が浮上してこないのでその生死がホントウのところは不明瞭なので悲嘆にかられたりもする、いきなりこんなにも難しくて複雑・多重的な心情の場面を器用に演じてしまったナオ役の子役・濱田龍臣(はまだ・たつおみ)は、カワイイ顔して大物になりそうな予感もする。


 そして、ナオが亡き父から聞いていた惑星アヌーの伝説である、宇宙を護(まも)るという「バラージの盾(たて)」!


 それを求めて一緒に旅をするのが、ベリアル軍の侵攻から逃れてアヌーに潜んでいたエメラナ姫! 演じるのは土屋太凰(つちや・たお)。その実態・本性は知らないけれども(笑)、ホントウに清楚で上品だけど芯はシッカリしていそうなお嬢さまタイプのルックスで、お姫さまを演じるにはうってつけである。「王家」が存在したり「宝探し」をするようなファンタジー風の作品世界を構築するのに、映像面でも最大限に貢献している。


 その意味では、彼女が乗る知能を持つ宇宙船でもあり従者でもあるジャンバードが、やたらと船内のラン青年(=ゼロ)やナオに向かって船内音声だけで「無礼者(ぶれいもの)!」と発するのも、この作品が西欧中世冒険ファンタジー的な世界観を持っていることへのダメ押しにもなっている。


 もちろん「バラージ」なる名称は、初代『ウルトラマン』第7話「バラージの青い石」で、中近東の神殿にあった初代ウルトラマンそっくりの5000年前の「ノアの石像」があった中近東の架空の地名・バラージからの引用である。そして、『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060308/p1)の本来の姿にして最強形態でもあるウルトラマンノアそっくりの巨像も登場する!


 本編の人間キャラたちも役者さんの見てくれや人となりを含めてなかなかに魅力的である。



 本作でゼロと夢のヒーローチーム・ウルティメイトフォースゼロを結成することになるリメイク、もとい新ヒーローたちもゼロと同様、なかなかのクセもの揃いだ。


 まずは炎の戦士・グレンファイヤー!


 炎の宇宙海賊たちが乗る海賊船・アバンギャルド号――そのまんまな名前(笑)――とともに、船首で軽快に歌いながら現れ、その赤い髪を両手でかきあげて――その瞬間に頭からボワッと炎が出る(笑)――、戦ってみてその「強さ」を認めた相手としか話をしないとして、


「来(き)な!」


 とゼロを手招きをして徴発する! はじめのあいさつでゼロをのしたあとにはボクサーのような軽快なフットワークを見せたり、ジャンバードを「焼き鳥」とヌカしたり――別宇宙にもあるんかいっ!(笑)――、かと思えば、喧嘩の最中に出現したベリアル軍の大艦隊との戦いの最中にカラータイマーが鳴り出したゼロを、


「おい、ピコピコ鳴ってるぞ!」


などと気遣(きづか)ってみたり。彼のモデルとなった特撮巨大ヒーロー『ファイヤーマン』(73年)の主人公ヒーローとは似ても似つかないが(笑)、こいつはまさにゼロと名コンビとなりそうな予感である! 掛け合い漫才のようなやりとりが実に楽しい!


 肉体的アクションももちろん魅力だが、こうしたコミカルな演技をスーツアクターがノリノリで披露してくれるだなんて、まさに「ウルトラマン」作品の新境地の開拓だろう!



 そして、「バラージの盾」を求めてランたちがたどり着いたのは「鏡の星」! 「星」というよりも、宇宙に浮かぶ巨大な「鏡」の中に存在する「静謐(せいひつ)な異世界」という感じだ。その「白夜」ならぬ「極夜」(北極や南極における冬は常時、夜になってしまう状態)のような薄暗い天空に浮かぶオーロラと二次元人の紋様が実に美しい!


 その世界の仄暗(ほのぐら)い湖の底で、悪のベリアル軍団との初戦でウルトラマンベリアルことマントを羽織ったカイザーベリアルに魂を侵されてしまったミラーナイトは自らを封印していた。


 ゼロが歩み寄ろうとするや、


「見ないでくれ! こんな醜い姿……」


 なんと体育座りの状態で両手で頭を抱えこむ!(笑)


 『ミラーマン』に変身する主人公・鏡京太郎(かがみ・きょうたろう)もなにかと思い悩む場面が多かったものだが、これもまたスーツアクターによるあまりに戯画化(ぎがか)された描写や演技ではあるけれど、ここまでやるからこそ、人間の顔出し表情演技ではないのに、その心情も伝わってきてキャラも立ってくるというものだ!


 そして、「鏡の星」の天空から響いてくる重厚な「二次元の民(たみ)」の声は、なんと鏡京太郎を演じた石田信之(いしだ・のぶゆき)! これまた感涙! あとから思うに、ここまでやってくれるのであれば、最後には天に浮かぶ紋様状の姿が変形して、往年のミラーマンの顔面が姿を現して、この声の主はかつてのミラーマン本人であった……! ということにしてしまっても、よかったのではあるまいか!?


 ゼロはミラーナイトを正気に立ち帰らせようと、ランの姿からウルトラマンゼロに変身してミラーナイトと対決することになる!


 その対決シーンがまた、まさに静謐な見えない湖(!)での戦いを象徴するかのように、足元に美しくてキメの細かい水しぶきのCGが合成されており、これまた特撮映像的な見せ場にもなっている!


 ゼロがミラーナイトをバックハグ(!)して彼の心を浄化する…… BL(ボーイズ・ラブ)の傾向がある女性ファンを大いに悶絶させそうなシチュエーションでもあり、そっち方面への目配せもバッチシだ!?(笑)



 そして、元祖・ミラーマンがその第1話で対決した最初の侵略怪獣・鋼鉄竜アイアンが、人格を持った大幹部級のベリアル配下の強豪巨大宇宙人・鋼鉄将軍アイアロンにアレンジされて登場して、ミラーナイトと対決!


 ミラーナイトが張り巡らしたあまりに美しい光芒の鏡の壁の中で、かつてのミラーマンも放った光線技・ミラーナイフやシルバークロスが炸裂するさまはまさに圧巻!


 製作予算のことを度外視して欲を云うならば、キティファイヤー・ダークロン・マルチ・ゴールドサタンといったミラーマン怪獣たちもリニューアルして大挙出演させてほしかったところではある。特にキティファイヤーはグレンファイヤーで炎対決をしてほしかった! そういえば、『ミラーマン』にはノアという名の怪獣もいたけど、本作ではさすがに出せないだろう(笑)。



 さらには、宿敵・カイザーベリアルの片腕として、やはり大幹部級の巨大宇宙人・ダークゴーネなる存在も登場!


 ちなみに、名称末尾の「ゴーネ」は、『ジャンボーグA』のレギュラー敵・グロース星人のアンチゴーネ・マッドゴーネ・サタンゴーネ・デモンゴーネといった、シリーズを通して交代していくレギュラーの歴代中堅4大幹部のネーミング・ルールを踏襲したものである。これがまた世代人的には嬉しくなるし、世代人でなくても怪獣博士タイプの特撮マニア諸氏であれば嬉しい趣向だろう! 彼もまたパラレルワールドにおけるグロース星人に違いない!?


 そして、ヤクザ系のアイアロンと違って、こいつは丁寧語でしゃべっている(笑)。


 少年マンガなどではよくありそうな、「ヤクザ系」と「お上品系」といった対極的ともいえる複数の敵幹部といったキャラシフト。それはウルトラシリーズでも『ウルトラマンメビウス』終盤で暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人に仕えていた四天王が、


●策謀宇宙人デスレムはヤクザ系
●悪質宇宙人メフィラス星人3代目は紳士的


といった描き分けでも前例はすでに見られる。たとえ未知の「宇宙人」としての「ハイブロウなSF的神秘性」は減退してしまっても、「通俗娯楽活劇的」にはそのキャラを立てることができていて、その上での「仮面劇」での「会話劇」や「内紛劇」をつくっていく作劇がようやく定番になりつつある。


 本作もまた、たとえ中堅の敵幹部に過ぎなくて、ラスボス・カイザーベリアルとの最後の戦いに至る前までには敗退・退場してしまうことがミエミエだとしても、その憎々しげな濃ゆい性格や高い戦闘能力を持った敵役としてのキャラクター造形の面では、アイアロンもダークゴーネも大成功したとはいえるだろう。



 さらに、飛行機型宇宙船・ジャンバードは「鋼鉄の武人」である巨大人型ロボット・ジャンボットに変形!


 ここからの描写は『ジャンボーグA(エース)』(73年)のファンにとっては感涙モノだろう! ランの弟をナオと命名したのにはオマージュ以上の意味があったのだ!


 ナオは往年の立花ナオキと同じ、「ジャン・ファイト!」の掛け声で、ジャンバードをジャンボットに変形させて、操縦席では操縦者の手足の動きが追随するボディー・トレース・システムで、ジャンボットを操縦するのだ!


 ここまでやってくれるのであれば、先の「二次元の民」への要望と同様に、作品冒頭の舞台でもあるエメラナ姫の故郷を「惑星エスメラルダ」でなくジャンボーグAの母星「エメラルド星」にしてほしかった! そして、立花ナオキにジャンボーグAを貸与したスマートな特撮巨大ヒーロー型の宇宙人・エメラルド星人たちも登場させてほしかった!


 ……エッ? ヒューマノイドタイプの宇宙人であるエメラナ姫と、着ぐるみヒーロー型のエメラルド星人では整合性が取れないって? それはそうなのだけど……


 それならば、その惑星の住民たちの大半は「人間型」であったウルトラの星・U40(ユー・フォーティ)のウルトラ人、もといエメラルド星人の中でも特に超能力に秀でたものが巨大ヒーロー型のエメラルド星人に巨大化変身できるのだ! という後付け設定をつくれば問題はないだろう!(笑)――



 本稿が読まれるのは、公開からまだ1週間後のことなので――後日注:初出は2010年末の冬コミ発行同人誌――、未見の方も多いだろうから、最終決戦についてはやはり詳細にふれないでおこう。


 しかし、「力づくのパワー合戦」や「圧倒的な物量作戦」で万事が解決! あるいは、その逆に「神秘的」やもしれないけれども、「ご都合主義」的でも「奇跡」が起こって……といったアリガチな展開ではなく――それもそれでよいのだが――、「頭脳戦」「フェイント攻撃な陽動戦」「作戦勝ち」といった趣(おもむ)きも感じられる。ゼロばかりではなく、新ヒーロー3人のことも最後にキチンと立ててみせている点には好感を抱くのだ。


 けれど、本映画ではカイザーベリアルもウルトラ兄弟も出番はかなり少なめ。特に後者は少し残念ではある。しかし、新ヒーロー3人のお披露目も兼ねた本作における作劇のバランス・盛り上がり的にはカイザーベリアルの扱いはそれでよかったとも思う。


 その代わりに、光の国の上空でウルトラ兄弟が必殺光線一斉攻撃をダークロプス軍団に繰り出す場面は、これまでのウルトラヒーロー大集合映画の中でも最も鮮(あざ)やか! めちゃめちゃ色がキレイでこれはもう感動!


 全編がグリーンバックでのスタジオ撮影であった前作『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』とは対照的に、本作では惑星アヌーや惑星エスメラルダの舞台として阿蘇山や秋吉鍾乳洞での遠方ロケが行われている。やはり大自然の表現・空気感・遠近スケール感といったものは、いかに高精細でもグリーンバック撮影でのCG背景とは比較にならないので、時間と予算に余裕があるのならばどんどんやるべきだろう。


ゼロ「おれは新しい宇宙警備隊をつくる! おまえら、仲間になれ!!」


グレンファイヤー「勝手に決めんなぁ〜!」(笑)


 あ〜、マジでこんなテレビシリーズが観てみたい!


 「ウルトラマンシリーズ45周年記念映画」は新・宇宙警備隊=ウルティメイトフォースゼロの物語になるのか!? そう考えると今から待ち遠しくてならないが、それを華々しく盛り上げようとするならばゼロだけではなく、ウルティメイトフォースゼロが主役のテレビシリーズをぜひ!


 30分が無理なら『アンドロメロス』(83年)くらいの尺で低予算でも平日に連日やるとか! こんな理想的なチーム、年に一度だけじゃもったいない!!



 「マーベルなどのアメコミのヒーローは、クロスオーバー戦略といって、それぞれの世界観がリンクしていますが、ウルトラの世界にも銀河連邦があって、『ジャンボーグA』や『ファイヤーマン』の世界がつながっている。それを踏まえ、今後の戦略的なことを考える上で、土台となる部分を一度きちんとしておきたいと」

(岡部淳也(おかべ・じゅんや)元円谷プロ副社長・『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE Visual File』角川書店・10年1月21日発行・ISBN:4048544535



 岡部サン、あなたは素敵な置き土産(みやげ)を残してくれましたね。そう、今回でいよいよ土台が固まったのだから、昭和のウルトラシリーズとは別の宇宙・並行宇宙での出来事である『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100430/p1)も『ウルトラマンG(グレート)』(90年)も『ウルトラマンパワード』(93年)も順繰りでゼロとともに活躍させて、彼らの声や変身前を演じた伊武雅刀(いぶ・まさとう)も京本政樹(きょうもと・まさき)もケイン・コスギも出してマスコミレベルで話題をつくろうよ! 出演してくれなくても、声だけだったらなんとかなるだろ!(笑)


以上、2010.12.23.執筆


2回目の鑑賞時の感想! 『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』 〜あまりの不入りに暗澹たる想い(汗)


 2010年12月23日(木・祝)、待ちに待った公開の日がやってきた。静岡ミラノ1で初回9時45分の回を鑑賞するため、現地に9時ごろ到着したが、入口前で待っていたのはオタがわずかに3人のみ。前作『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』の場合、この時間にはすでに親子を中心とした人々の行列ができていたものであった。これはヤベェ……


 上映直前、気になって場内を見回してみる。どう見積っても収容人員の半分程度の入りである。前作は満員御礼とまではいかなくとも、8割以上の席が埋まっていたものだった。


 客が減ることは予測できていたとはいえ、まさかここまでとは……



 翌24日のクリスマス・イブ、多くのカップルであふれかえるネット喫茶で――90年前後のバブル期に若いころを過ごしたアラフォー世代の人々には信じられないだろうが、今の若者は本当に金がないのである! ちなみにこのネット喫茶では性行為は特に禁止されてはいない(汗)――本作の評判を調べてみた(以下は各コメントの要約である)。



*同時期公開の『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(10年)の数倍面白い。艦隊戦や海賊船シーンなど、『ヤマト』の10倍以上迫力あるシーンになっている。
*今年の『仮面ライダー』正月映画にはガッカリしましたが、『ウルトラマン』映画は文句なし!
*役者(演技・声ともに)全てすばらしい。心優しさ、心強さ、心美しさを大切にしたストーリー。制作者の方々のウルトラマンを愛する気持ちが伝わる演出。
*ウルトラの世界観をしっかり保持しつつ、破綻(はたん)なく構成された展開にグイグイ引きつけられる。ウルトラの根底にあるテーマ「信じる力・勇気」というメッセージが嫌味(いやみ)なく発信されている。
*笑い・涙・ロマンスはほとんどなし、ただひたすらに熱血のSFアクション。いい意味での荒唐無稽(こうとうむけい)でスケールの大きな日本製SF(+ファンタジー)。「痛快娯楽活劇」であり、子供の鑑賞に耐え得る。
*ストーリー自体はヒーローものの王道。「これがウルトラマンだ!」と云わんばかりのかっこよさ。グイグイ展開していくストーリーに引きこまれる。大人の目線に気を使わない、大人が子供に見せたい、気持ちいいほどにまっすぐなヒーロー。
スーツアクターの演技が本当にすばらしい!
*VFXが美しい。宇宙のスケールをうまく演出している。本格的なアクション冒険映画にウルトラならではのSF要素。
*私的にはハリウッド並みの映像。大人が観てその映像的進化を目に焼きつけて頂きたい。
*脚本にもう少し深みがあればさらに観応えがあったのだろうが、子供を飽きさせないためにはこれくらいストレートの方が正解。



 ヤフーの映画レビューでは概(おおむ)ね賛辞が並んでいた。中には、



*シナリオ・演出共に完全な幼児向け。ここまで破天荒(はてんこう)な内容だとさすがについていけない。ファミリーだとか仲間だとか、いつからこんなチャチな設定になったんだ? いくら子供向けでももう少し真面目(まじめ)につくってほしい。



 などという酷評もあったが、わずかにこれひとつのみであった。



 というか、公開翌日の18時の時点で、ヤフーの映画レビューには本作を評するコメントがたったの24個しか寄せられてはいなかったのである!――前作ではどれを紹介しようか苦労したものであったが―― おいおい、公開初日に全国で観たのはいったいどれだけの人数なんだ!?



「こんなに混んでいたウルトラ映画は初めてだった」
「朝一番でほぼ満員」
「朝だというのに超満員」
「1時間前から並んで観た」



などと、ヤフーの映画レビューにコメントを寄せた人々が観た劇場では客入りが上々だったようであるが、そこは筆者が住む宇宙と同じ宇宙にあるのか? それこそ本作の舞台となったアナザースペース=別の宇宙での話ではないのか?(笑……っている場合ではない!)


 特撮2ちゃんねるの本作スレによれば、大阪府八尾(やお)市のシネコン・MOVIX八尾ではほぼ満席だったようだ。そこは20万人都市のシネコンであり、円谷ジャングルなるウルトラグッズのショップが併設されており、ウルトラヒーローのアトラクションショーもよく行われている場所だから当然でもある。北海道札幌市の札幌シネマフロンティアでは3分の2程度、神奈川県川崎市の川崎チネチッタでは5〜6割程度の入りだったという。


 「満員」だった劇場は、おそらくはウルトラマンゼロの声を演じた宮野真守(みやの・まもる)、ミラーナイトの声を演じた緑川光(みどりかわ・ひかる)、ジャンボットの声を演じた神谷浩史(かみや・ひろし)、グレンファイヤーの声を演じた関智一(せき・ともかず)らの舞台挨拶が行なわれた東京都内や名古屋・大阪といった大都市圏の劇場にすぎず、地方の劇場は初日でも静岡に限らず、どこも閑散としていたのではないのか?……


 そこすらも、人気声優の舞台挨拶が終わった途端、明らかにそれを目当てに来ていたと思われる腐女子の一団が、肝心の映画を観ずにゾロゾロと帰る光景が目立ったそうで…… そんな奴らは本当のファンじゃねえっ! などと彼女らを責めたところで解決する程度の問題ではないのである――正解は各劇場の舞台挨拶をハシゴしているのであった(笑)――。



*所詮(しょせん)『ヤマト』や『ライダー』にはかなわないが、こうなりゃクチコミで広めて多くの人に観てもらおう!
*オレたちが何回も観に行けばいいんじゃないか!



 ウルトラに対する愛にあふれる多くの書きこみに、おもわず感涙したクリスマス・イブの夜であった。



 ちなみに、アンチスレもいくつか立てられてはいたが、ロクにコメントも寄せられていない状態であった。少なくとも観てもらわないことには、アンチ派になることもできないのである……



 翌25日、やはり初回を観に行った。おそらく余裕で席は確保できるだろうと、上映25分前にミラノ1に入場。ロビーはあまりに閑散としていた。喫煙をして上映を待つ間、次々に客が入ってくるのを期待したが、待てど暮らせど客は来ない…… 上映直前、やはり気になって場内を見回したが、客は30人にも満たなかった。これが公開からわずか3日目、土曜日のことである。あまりの惨状に愕然(がくぜん)とした……


 『ウルトラマンコスモス』(01年)の終了から1年近くを経た映画『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE』(03年・松竹)の公開2日目の日曜日初回も、客の入りは悪かったが50人は観に来ていた(笑)。悪名高い『ウルトラNプロジェクト』のトリを務めた映画『ULTRAMAN』(04年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060305/p1)も、今回と同じ条件である12月25日土曜日(曜日の並びが2010年と同じだった)の初回を観に行ったが、今回よりも客は多かったものだった。


 ここまでウルトラの「商品的価値」は低下してしまったのだろうか? もはや「夢の世界」に浸っている場合ではない。「現実の世界」の厳しさを、イヤというほど見せつけられてしまったのである。初日には思う存分楽しめた『ゼロ THE MOVIE』を観ながら、筆者は考えごとをしてしまった。まったく鑑賞に集中できなかった……


 ヤフーの映画レビューにしろ、2ちゃんねるにしろ、観た人々の多くは作品に対して好意的な意見を寄せている。出来がよいには違いないと判断してさしつかえないのだろう。だが、そこに至るまでが難しい状況になってしまっているのである。観た人々にとっては「傑作」ではあっても、大抵の人々にとっては「観る価値のない映画」、あるいは「公開されていることすら気づかれていない映画」になってしまっているのである。



 本作パンフレットに寄せられた脚本・監督のアベユーイチのコメントによれば、今回は公開1ヶ月半前である10年11月7日(日)の時点で、CGや合成のOKがまだ半分、編集はまだ完成尺が出ず、効果音の仕込みも悲鳴をあげており、11月23日(火・祝)に迫ったダビングがどうなってしまうのか、予断を許さない状況であったという。音楽を担当した川井憲次のコメントでは、通常ならば氏は完成した映像に合わせて作曲・アレンジ・録音・ミックスまで行うスタイルであるのだが、今回は作曲だけが発注され、それも10年9月のことであったという。要するにその時点で素材となる映像が何ひとつ完成していなかったということになるのである。


 つまりは本当に公開直前ギリギリになるまで作業が行われていたため、特報ではなく正式の予告編が劇場で流れたのが封切まで1ヶ月を切った10年11月27日(土)と大幅に遅れ、セールスにも支障が出たと解釈できるかと思う。新作テレビシリーズの製作がないにもかかわらず、どうしてそんな余裕のないスケジュールになってしまうのか、疑問を持たざるを得ないのである。手を抜けとまでは云わないが、よいものをつくろうとしてギリギリまで粘ったことで宣伝に力が入れられなかったというのなら、製作スタッフのせっかくの努力もそれこそ水の泡となってしまうのである。



 肝心の映像の方はそれでもやむなしとしても、やはり話題性の部分でなら、もっと早い時期からアピールすることはできたはずである。


 今回は先に挙げたウルティメイトフォースゼロの4人を実力のある人気声優たちが、ウルトラ兄弟たちをかつてのテレビシリーズの主演俳優、特にエイティの声を『ウルトラマン80』で主人公・矢的猛を演じた長谷川初範、『80』終盤で女ウルトラマンことユリアンの声をユリアン=星涼子(ほし・りょうこ)を演じた萩原佐代子(はぎわら・さよこ)が担当。「『80』放映30周年記念」の2010年の最後を飾る素晴らしいイベントともなったのである。しかし、声優・アニメファンや特撮マニアは大喜びではあったものの、長谷川初範が顔出しで出演をするならばともかく、声の出演だけでは一般層を引きつけたりスポーツ新聞やワイドショーで大々的に扱ってもらえる要素ではないのである。


 演技が安定した大ベテランである彼らの好演は概ね好評を博しているようだ。しかし、いくら演技が大根であるとはいえ、ウルトラマンキングの声を元・内閣総理大臣小泉純一郎や、ウルトラの母の声をモデル・女優で石田純一と浮名を流した長谷川理恵が演じた『ウルトラ銀河伝説』の方が、世間一般へのアピール度はやはりはるかに高かったのである。
 良くも悪くもマニアではない一般庶民や大衆なんていうものはそんな俗っぽい存在なのである。そういうところでそもそもの映画の存在自体を知ったり、子供を連れて映画を観に行ってみようかなと思うものなのだ。だから、今回もせめて数人くらい、話題性の高い人気タレントを声優に起用してもよかったのではないのか?


 宿敵・ウルトラマンベリアルことカイザーベリアルは、今回も前作同様に吉本興業雨上がり決死隊宮迫博之(みやさこ・ひろゆき)が演じている。氏は近年は本業のお笑いよりも俳優としての活動の方が目立っており、その力量・演技力からすれば、もはやお笑いタレントのサプライズ出演ではなく、先に挙げた実力派声優陣と同等の存在として考えるべきであろう。


 ゼロと一体化するランを演じた小柳友(こやなぎ・ゆう)、その弟・ナオを演じた濱田龍臣(はまだ・たつおみ)、エメラナ姫を演じた土屋太凰(つちや・たお)の演技も極めて評判が高い。イケメン俳優・福山雅治(ふくやま・まさはる)が主人公の坂本龍馬(さかもと・りょうま)を演じたことで大きな話題となったNHK大河ドラマ龍馬伝』(10年)に、濱田は少年時代の龍馬役で、土屋はその姉である坂本乙女役で出演し、すでに共演を果たしていた。さらに、濱田は日テレ土9ドラマ『怪物くん』(10年・日本テレビ)にも怪物くんとつるむ市川ヒロシ少年役でレギュラー出演、土屋は『ハナチュー』なるティーンズ雑誌の専属モデルも務めており、女子中高生にも人気があるらしい。


 つまりは、主役級の3人のこうした経歴を公式サイトや製作発表記者会見で派手にうたったなら、それらを支持する人々からも興味を持ってもらえる可能性もあったと思われるのだ。しかしながら、携帯版の円谷プロ公式サイトの本作品のページには登場人物紹介はあるものの、それを演じる役者の経歴どころか肝心の名前自体が記載されていないのだ! これはもう問題外というよりほかにないのである。


 さらに云うなら、いくつもの宇宙が並行して無数に存在しているマルチバースを設定の根幹にしているのだから、今回こそ『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)、『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971211/p1)、『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)、そして『ウルトラマンコスモス』などと無理なく世界観をつなげることができたかと思うのである。


 昭和ウルトラシリーズの世界観の直系の続編『ウルトラマンメビウス』(06年)以降、世界観がつながっていない先の作品群はすっかり日陰の存在となってしまった感があるが、90年代後半には熱狂的な支持を集めたのは揺らぐことのない事実である。
 おそらくは作風がまったく異なる近年のウルトラに対し、先の作品群の支持者たちはあまり関心を寄せてはいないかもしれないが、ティガやダイナ、ガイアにウルトラマンアグル、コスモスにウルトラマンジャスティスも顔見せ程度でも助っ人参戦するのならば、彼らも久々に観てみようかという気にもさせられたかと思うのである。


 もちろん、それだけではマニアどまりで終わってしまうので、『ティガ』で主人公・ダイゴ隊員を演じたジャニーズ・V6(ブイシックス)の長野博……はギャラ的にムリかもしれないけど、今やメジャーな役者・タレントとなっている、『ダイナ』で主人公アスカ・シンを演じたつるの剛士(たけし)、『コスモス』で主人公・春野ムサシを演じた杉浦太陽――2010年の流行語大賞となったNHK連続テレビ小説ゲゲゲの女房』(10年)にもねずみ男のモデルとして出演して顔が売れていたのだし――には当然出演してもらって、映画封切時には各地で客寄せや話題づくりで舞台挨拶に邁進してもらうという戦略もありえたかと思えるのだ。『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1)が「アマチュア同人映画」だとの批判の声もある中、『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)を上回る興行成績をおさめたのは、やはり長野やつるのの出演も大きかったのであろうから。



 ちなみに、今回の主題歌『運命のしずく 〜Destiny’s star〜』(avex trax・10年12月22日発売)を歌唱したGIRL NEXT DOOR(ガール・ネクスト・ドア)は若者に人気のあるユニットのようであるが、本曲のプロモーションビデオでは彼らがウルトラ6兄弟とウルティメイトフォースゼロ、そしてカイザーベリアルと共演を遂げている。


 イントロではいきなりウルトラ6兄弟とウルティメイトフォースゼロが揃い踏み!


 1コーラス目では、親指で鼻をこする仕草(笑)や回し蹴りをきめるゼロの描写や、襲い来るイメージのカイザーベリアルがカットバックされ、間奏では赤と黒を基調とした衣装で激しく踊りまくるバックダンサーにカイザーベリアルの映像をダブらせる――これはいいセンス!――。


 2コーラス目では、ボーカルの千紗(ちさ)がまるで彼女を守るようにウルティメイトフォースゼロに囲まれた中で歌い続ける!


 ラストは、マントを翻(ひるがえ)して左手の鋭い爪を振り下ろすカイザーベリアルに対し、ウルティメイトフォースゼロが一斉にファイティングポーズを決めるという、超カッコいい映像に仕上がっている!


 本曲が流れるバージョンの予告編もあったようだが、まさに「ウルトラマンゼロのテーマ」と呼ぶにふさわしい、歌詞もメロディもゼロのキャラや作品世界に絶妙にリンクした、主題歌としては出色の出来である。彼らにとっても節目となる10枚目のシングルであり、セールスにもかなり力が入れられたかと思う。だから、いっそのこと、彼女らの音盤を担当しているavex(エイベックス)にも製作委員会に入ってもらって、映画の宣伝も任せてしまえばよかったのである――おそらくavexに本作の主題歌やBGMを依頼したのも、後手後手にまわって製作が押し迫ってからの時期だったのではなかろうか?(汗)――。


 そして、せっかく男性2名と女性1名のユニットなのだから、彼らを惑星アヌーか惑星エスメラルダでレジスタンスしている等身大の変身ヒーローである円谷プロ製作の往年の戦隊ヒーロー『トリプルファイター』(72年)にして銀河連邦の一員、レッドファイター・グリーンファイター・オレンジファイターの2代目キャラクターとして、声の出演をさせて話題を作るくらいの機転を働かせてもよかったのではあるまいか?(笑) トリプルファイターに合体変身したあとの声の演技に不安があるのであれば、そこはプロの声優さんにやらせればいいのだから(笑)。演歌歌手・氷川きよしだって映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』にチョイ役で出演していたのだし――彼を目当てのオバチャンたちも少しは動員できたハズ!――、そのようなチョイ役投入によるパブリシティもアリだろう。


 あと、GIRL NEXT DOORのマスコットキャラ・ガルネコとウルトラセブンを合体させたガルネコセブンとゼロの指人形を付けた「数量限定生産盤」の主題歌CDも発売されている。このガルネコセブンもゼロとカイザーベリアルの指人形以外に前売特典として用意すればよかったのに。カイザーベリアルもそうだけど、グレンファイヤーのカッ飛んだキャラなんかも、ロック音楽が大好きそうな人間たちのファンキーなハートにビビッと来るものがあると思うんだけどなぁ。


 まだまだ、いくらでも客を呼びこむ方法はあったはずだ。遂にここまでの境地に達したか!? と感動すらおぼえた本作を、こんなにも大苦戦させるだなんて……


 来年2011年が「ウルトラマンシリーズ45周年」の年ではなかったら、この調子では到底新作の製作はおぼつかないであろう。本来は「大絶賛」の論評で終わりにしたかったのだが、今はとてもそんな心境にはなれないのだ。頼むからちゃんと商売してくれよ! という感じだ。


 だからリアル&ハード路線に戻せなんて、誤った古クサい主張がまた叫ばれそうだが、絶対オレが阻止してやる! 2011年、筆者もまさにカイザーベリアルのごとく、今後のウルトラシリーズがどうあるべきかについて、旧式ワープロでさらなる大逆襲をかける!(笑) そうせざるを得ないだろう。

2010.12.26.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2011年号』(10年12月30日発行)折込コピー速報より抜粋)


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