『映像研には手を出すな!』TVアニメ版 ~イマイチ! 生産型オタサークルを描くも不発に思える私的理由
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『トクサツガガガ』(TVドラマ版)総括 ~隠れ特オタ女子の生態! 40年後の「怪獣倶楽部~空想特撮青春記~」か!?
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2020年9月25日(金)からマンガ原作の実写映画『映像研には手を出すな!』(20年)が公開記念! とカコつけて…….。その前日談である2020年4月から放映された実写深夜ドラマ『映像研には手を出すな!』(20年)ほか、2010年代のマンガ・アニメ・ラノベ作品の実写映画版『僕は友達が少ない』(14年)・『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』(14年)・『ハルチカ』(17年)・『一週間フレンズ。』(17年)・『ReLIFE リライフ』(17年)・『サクラダリセット 前篇/後篇』(17年)評をアップ!
実写版『映像研には手を出すな!』・『僕は友達が少ない』・『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』・『ハルチカ』・『一週間フレンズ。』・『ReLIFE リライフ』・『サクラダリセット』 ~漫画アニメの不評な実写化作品を擁護する!(震え声)
(文・T.SATO)
『映像研には手を出すな!』(実写ドラマ版)
(2020年8月11日脱稿)
高校の部活動である映像研究会。実質的にはアニメを製作するサークルを舞台に3人の少女が活躍する作品。
2020年冬季にNHKで深夜アニメ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200325/p1)としても放映。ググってみると、いわゆる「動物化」しているベタ層ではなく、マジメでプチインテリオタクの気がある人種たちの間ではカナリ高い評価を得ているようだ。
まず深夜アニメ版の寸評。
ウ~ム。もちろん嗜好品なので、他人の好みや評価を否定する気は毛頭ナイことは念押ししておくけど、狙いの志はともかく出来上がった作品は上滑りしているような気が個人的にはするなぁ(汗)。
あの往年の『ジャリん子チエ』(81年)みたいな小柄な少女主人公。まず彼女が最低限の美少女キャラではないことが引っかかる(笑)。まぁ美男美女を主役に据えないのは、ある意味では志が高いけど。
彼女が往年の名作アニメ『未来少年コナン』(78年)もどきに小学6年時分にカルチャーショックを受けてアニメの道を志す動機をシッカリと描くあたりはもちろんイイ。しかし、若者カーストでは遊び人タイプのコミュ力強者が最上位で、絵や文を書いているような内向的なコミュ力弱者、異性を楽しませる会話ができない我々のような輩は最底辺確定で、それゆえのルサンチマンからアレだけ(ひとり)ボッチやスクールカーストがテーマの作品が隆盛を極めているのに、そのへんの劣等感や隠れキリシタン意識も描かないとウソじゃないかと思うのだけど、この作品はそのへんはスルーなのであった……。
本作が2020年の冬アニメとしてNHKの深夜ワクで放映された直後、春のTBSの深夜ドラマとして本作の実写版も放映された。試しに観てみる……。
お、面白いやないけー!
主人公少女が現実世界に妄想のSF設定を重ねて映像化していくサマも、ラフな素描のエンピツ手描き(?)風の線画CG合成で見事に映像化ができている。
メインの3人の少女キャラたちはアイドルグループ・乃木坂46(のきざか・フォーティシックス)のメンバーが演じるあたりで醜女であるワケもないけど、実写作品である以上は醜女であると画面上では浮かび上がってきにくくて主役として認知されがたいとも思うので、コレはコレでイイと思う。
その代わりにちょっとした配慮・微改変・チューニングも主要キャラに施す。
まず、主人公少女は齧歯類系の愛くるしい小顔ベビーフェイスの黒髪ショートの痩身で、幼稚園児的にも見えることから(失礼・笑)、原作マンガの絵柄通りのチビチビの小柄少女との共通性は確保。
しかして終始オドオド・キョロキョロ・ビクビクのビビリ的な演技を与えることで、たとえ絵はウマく描けて見た目は美少女寄りでも彼女がまごうことなきコミュ力弱者のオタであると実感させ、ギャルが優勢な女子カースト内では劣位になるだろうと、ドラマやテーマ以前の見てくれや挙動の演技・演出でも腑に落とすことで、筆者が深夜アニメ版に抱いた違和感も解消されるのだ。
加えて、大昔にもあるにはあったけど、一部のオタク男女が自分のキャラ付けのためにか(笑)アニメキャラのように語尾や口調を特徴付けて作り込んで喋るサマ。彼女の演技的な作った喋りも、残りふたりの女子たちいわく、そのようにキャラを演じて臆病な素を隠すことでむしろ他人とのコミュニケーションが取りやすくなっている……という趣旨の分析ツッコミを入れることでも腑に落とす。
てなワケで、筆者個人は実写ドラマ版の方を評価するけど、ググってみるとマンガ・アニメの実写化作品の多くがそうであるように、本作実写版も黙殺か酷評の憂き目に遭っているのであった……(笑)。
テレビドラマ『映像研には手を出すな! 』 DVD BOX(完全生産限定盤)
『僕は友達が少ない』(実写映画版)
(2014年2月1日(土)公開)
(2014年7月4日脱稿)
ウソつけ! 友達いるじゃねーか!?(笑)
主人公の高校生男子クンに友達がいない理由は、小心や腕力がナイゆえのコミュニケーション弱者だからではなく、ハーフゆえの金髪や怖い目付きに周囲が引いてるためだとゆー。
だったらまだイイじゃん。プチ優越感(?)を味わえて救いもあるじゃん。イザとなれば他人との意志疎通や、命令や交渉して他人を動かすことすらできるじゃん。
意図せずとも友達作りが名目の部活「隣人部」(笑)に加入したのならば、部員たちは一応のお友達。メンバーも増えていくし、しかも異性だらけだから、ある意味リア充(リアル充実=現実世界で充実)じゃん。
本当に「友達が少ない」人間の苦悩とゆーのはだなぁ。こんなモンじゃねェー!!(爆)
……と、こうやって自身の感慨を言語化して客観視してみると、リアリズムが優先されるワケでもないフィクション作品にルサンチマン(怨恨)をココぞとばかりにブツけていて、このテの題材だと暑苦しくなる筆者の方こそがイタかったんだナ、と痛感したりして(汗)。
以上はTVアニメ(11年)の序盤に対する筆者の感想。さて、今回の実写映画版。公開前からボロカスに罵倒されていたけど、個人的には擁護したい(……震え声)。
監督や出演者(除く1名)はTVアニメ版(1期11年・2期13年)を観ていなかったそうだけど――まぁオタではない一般ピープルならばそうだよナ(汗)――、
・無人の教室で「エア友達」のトモちゃん(笑)と語らっている図がキョーレツな、黒髪ロングの腕組みしている命令口調のメインヒロイン
・校庭から部室の窓に顔と巨乳を押しつけて入部を希望する、一見ビッチでリア充の女王さま系サブヒロイン
・メガネっ娘で白衣理系の腐女子であるサードヒロイン
彼女らメインヒロイン・サブヒロイン・サードヒロインは、TVアニメ版とほぼ同じカメラ構図(!)&演技にて登場。
・メイド服の男の娘(?)
・主役の妹の中二病金髪ゴスロリ・ツインテール娘
・10歳の修道女(笑)
それらの脇のフォース・フィフス以降のヒロインズは、賛否あるようで、この実写映画版には不要! との意見までをも散見したけれども……。
彼女らが登場しなかったならばもっと「別モノ」作品臭が強まったであろうし、仮に高校生主人公クンの妹役にガチでホンモノの金髪外人ロリ美少女を連れてきてしまったならば、このロリ妹キャラのメンタルは帰国子女ではなく日本人の気弱な少女そのものというのか日本アニメの記号的な美少女キャラそのものなのだから(笑)、このテの国内マンガ・アニメチックな設定でもある実写化作品だとかえって劇中で異物臭が強くなってしまって浮いてしまったことだろう。
そもそも一点属性主義で勝負する脇役美少女キャラたちだから、フツーの日本人の子役であったり美少女が演じる美少年でありさえすれば個人的にはOKだ。
だけれども、各キャラを物語の方ではなく点描の方で微調整。
・主人公青年クンは少々気弱で不良に眼を付けられても応戦する腕力がなくて逃走(汗)。
・ビッチに見える巨乳サブヒロインもクラスで男子たちからは崇拝されるも、机の中に下着を詰め込むとゆー女子たちからのイヤがらせには沈黙(…)。
・男の娘(おとこのこ)も校内で終始メイド服を着ていれば、校舎ウラで不良たちに恫喝もされるよナ――それに気付くも助ける胆力がナイ主人公青年像もマル(汗)――。
……あぁ、原典作品にも各キャラのこんな「弱み描写」があれば、「友達が少ない」という彼らの大前提でもある「孤立」描写にもナットクがいって、序盤から一挙に共感・感情移入ができたかも。
サブヒロインの父が洋風ではなく和風豪邸に住まう俳優・石原良純(笑)で女中に手を出してしまう改変もしょせんは脇役だし、そーゆータイプには見えないサブヒロインが仮想現実・TVゲームといったオタッキーな趣味に執着してしまう動機(=現実逃避)にもなりうるし。
ちなみに主人公高校生クンは、劇中でもオトメンこと乙女のような男子であり長年の引きこもり(爆)として設定されていた『仮面ライダーキバ』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090215/p1)こと紅渡(くれない・わたる)を演じた瀬戸康史(せと・こうじ)であり、柔和そうでもありながら気難しそうでもあり、周囲が勝手に誤解して避けていく「人となり」をそのままでも体現できている(笑)。
原典作品は「(ひとり)ボッチもの」というよりも、異性との交流が苦手やテレくさくて、異性の想いを受け止めるだけの人間としての器量の大きさにも欠けているので、告白を聞こえなかったフリをしてゴマかしてしまう、あるいはそれに応えての再度のダメ押し告白をすることができない、いわゆる「ヘタレ難聴(笑)」男女たちによる「ラブコメ」ものに収斂していって意外にもキュンキュンさせてくれる作品にはなっている。
だけれども、映画というのは2時間で1クールアニメの最終回に相当するヤマ場を作って完結すべきものである。ヒイてジラしたスレ違いラブコメは尺的にもムリだからかオミットし、後半は映画オリジナルの展開へ……。
真『僕は友達が少ない』キャラ(笑)でブレイク中のモデル・栗原類(くりはら・るい)が怪演する映画オリジナルの生徒会長が彼らの部活動の廃部を企む中、TVアニメ版の初期編にも登場したゲーム機をブローアップ。仮想世界の中で友達に不自由しないリア充生活を彼らは満喫する。
その過程で挿入される、部活のみんなで、
・カラオケ
・夏祭りの夜店
・花火遊び
などの原典作品にもあった寸描の数々。たとえ部活動でも人並みの青春を演技でもナンチャッテでも予行演習できれば、その積み重ねで少しはお互いの距離も近づこうというもの。そのへんの一連は愛おしい。
仮想現実に「ベタ」に没入するサブヒロインと、虚構だとわかってはいてもニヤけてしまう「メタ」なメインヒロインとの対比。後者が前者を小バカにしている構図もイイ。
が、ネタバレするけど、メタにメタを重ねて後者に対しても相対化を施していく。自己防衛の理論武装の果てに自分の真の願望が判らなくなっているヤツ、「ベタ」や「中二病」を超越した気になっているけど、ホントは気になって気になって仕方がないヤツこそが、コジらせていて始末が悪いとも取れる展開となっていき、仮想世界も多段構造になってくる。
そのへんは情よりも知に訴える感じで、普遍性や万人受けに欠けている表現で少々弱い気もするけど、個人的にはキライじゃない。まぁあくまでも本作のメインヒロインがメンドくさいヤツだったってだけで、筆者個人には心当たりはナイけどな――癪にさわるけど(笑)――。
原典(というかラノベ原作は未読だからTVアニメ版)はストーリー展開&手つきがドコかで微量に乱雑で投げやりな雰囲気が漂っていて、それでも潤いが感じられるのは挿し絵――絵師・ブリキの手になるキャラデザ――の力と、それが作品世界の本編の「空気」にも還流しているからだと私見するのだけど、幼きころの主人公高校生クンとの日々を忘れずに、でもそれを素直に出せずに彼が気付くまで実は待っていた……という高飛車でも奥ゆかしい(?)メインヒロインがドラマとしては萌えポイントではあった。
加えてこの実写映画版では、再会した彼のヘタレぶりに幻滅しながらもやはり執着しているとも取れるような描写を強化。でも「色恋」を前面に出さずにそこを終点にもせずにその一歩手前で、彼らの原点でもあった「友だち作り」全般に立ち返っていく清涼なオチであり、個人的には悪くはないと思う。
――後日付記:本作の脚本&監督を務めた及川拓郎(おいかわ・たくろう)は、名作深夜ドラマ『深夜食堂』(09年)の脚本&監督などでも目にしてきた御仁。東映の刑事ドラマ『刑事7人』(15年~)や『刑事ゼロ』(19年)でもメイン監督を務めている。ジャンルファン的には岩手県のローカルヒーロー『鉄神ガンライザーNEO(ネオ)』シリーズ(14年~)の全話脚本&監督でもある!――
『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』(実写映画版)
(2014年5月17日(土)公開)
(2014年7月5日脱稿)
まずはTVアニメ版(14年)の感想から。
また「妹モノ」かヨ! 志が低いよナ! と思いつつも、「妹モノ」の作品群は「ネタ」化が著しくて、作品の「タイトル」自体も実に秀逸で(笑)、本作のそれもビミョーに隠微かつ「ネタ」っぽくてウケるから、妙に観たくなってしまうのだ――誓って筆者個人の特殊な性癖のせいではナイ!?――。
でも、ドー云い繕おうとも、妹モノは弱者男子にとっての都合のいいファンタジーではある。
ファースト『ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)のヒロインたちを例えに云わせてもらえば、外の世界でオトナの女性っぽいセイラさんみたいな異性を引っかけてくるのではなく、フラウボゥみたいな幼なじみと引っつく方へと退行して――すでにファーストガンダムがオタの共通言語ではナイという話は置いといてください(汗)――、さらにはオタにとっては縁遠い「異性との出逢い」描写をハブくことができてもしまう、最初から異性と出逢っており同一空間で共同生活もしている「妹モノ」の勃興ヘ……。
本作もそんなオタ向け作品の歴史的な退行文脈の一環であり、罵倒してやろう(笑)と手ぐすね引いて待っていたのだけれども!?
ピンクのネグリジェの肩ヒモがズレ落ちてノーブラの胸の谷間も見せつける、ゆるふわ栗色ヘアにピンクの巨大リボン、背には小さな天使の羽を生やした美少女。彼女がイタズラっぽく微笑みながら、オボこい黒髪女子高生の両手を奪ってベッドに押し倒し、股の間に割って入ってイヤがる相手のホッペにチュッ♪
黒髪女子高生の肉体に憑依するや、胸とアソコをまさぐって自慰にふけって悶えまくる! 分離しても同じ場所を攻め続け、首スジやホッペをナメるや唾液が糸を引き、耳を甘く噛み、女子高生は絶頂へ……。
この作品は、「妹モノ」じゃなくて「百合モノ」だったのか!?――ってソコじゃなくて――
基本設定がヒドすぎる(笑)。ネグリジェ少女が成仏するためには、生前にスキだった男子高生とイチャコラせねばならない。そのために男子高生の義妹に憑依して、ハート型の小さな計測器がついた黒色の脱げないTバック型の「TST」なる「貞操帯」(笑)を装着。しかも用を足す3分間だけ外れるけど以降1時間は外せない。トイレで尿意をガマンする羞恥プレイ、ついには保健室の花瓶に四つん這いでお小水を。それを義兄に見られてしまう義妹女子高生!
後学のために(?)、実写映画版(14年)も観に行ってみた。前述の描写をあまさず映像化している!
後学のために、原作漫画版(10年)も読んでみた(汗)。ン? 聖水プレイは現実の出来事ではあっても、寸止めで、その描写自体はなかったぞ。
後学のために、BD版とTV放映版の比較検証サイトも見てみた。BD版では内股を伝う雫(しずく)が黄色く着色されている……。
……TVアニメ&映画版スタッフは頭がオカシい!(笑)
本作を否定することは「表現の自由」への侵害になるのだろうか? 「表現の高度さ」というモノは「エロ」ではなくて「テーマ」とか「映像センス」のことだったのではなかろうか?
かの「アニメ新世紀宣言」から30余年。ボクらが夢見たアニメの未来はコレだったのであろうか?(笑) そんな一歩も二歩も引いた視点もロートルとしては手放したくはないのだった。
一方で、マンガ・アニメなんて低俗でイイじゃん? 浮き世離れして頭デッカチな高尚・ハイブロウな作品に走ってしまうよりも、地に足の着いた身の丈の手触り・肌触りを感じられるミクロな作品をこそ重視べきじゃネ? とも思ってしまうところがあることも事実なのだ。
この両極端を架橋して、その両極端を同時に肯定してみせる「統一理論」がナイものかと思ってウン十年。いまだにそのようなご大層な理論を構築できる手立てなどはツカんでおらず、筆者個人も取っ散らかったままでジャンル作品を語りつづけておりますけど……。
はてさて、この実写映画版。個人的には擁護してみせたい(……震え声)。
3次元の媒体で2時間に再構築するならば、こーいうアレンジで妥当なのではなかろうか? そして、なんとTVアニメ版の全1クールの主要イベントをほぼ網羅もしていたのだ!
ただ、異性が苦手で話しかけるのにも勇気を振り絞っている弱さを、「ツンツン」した態度&首アゴ前の大きな赤マフラーで鎧(よろ)っているような黒髪制服少女であった高校1年生の義妹の描写は少々軟化されており、共通の音楽趣味を持った同性の友達がクラスにできる姿なども点描されている。
そんな彼女に憑依する、甘え上手な「デレデレ」担当のネグリジェ少女も、原作マンガやTVアニメ版よりも少し余裕がアリげな黒髪ストレート女子に変更されている。
これらのキャラの微改変でアラスジは同じでも作品のテイストが少々変わってくるのも事実である。そこに抵抗を覚える原作至上主義者もいるのだろうけど、いかにもオタ向けな記号的キャラクターをジャンルファン以外に流通させるためにも、この微調整は適切なのではあるまいか!?
原作マンガ版やTVアニメ版だと三角関係の一角になる隣家の高校3年生のお姉ちゃんは、温泉でナマ巨乳を披露するあたりは同じでも(笑)、この実写映画版では教育実習生に変更されて色恋にはノータッチであった。
最大の改変は主人公少年である高校2年生の兄貴だったとも私見する。原作マンガでは、(ひとり)ボッチものでもあった少女漫画『君に届け』(05年・09年に深夜アニメ化)のサラサラ黒髪さわやかイケメン君みたいな見てくれで、義妹が義兄を好ましく思う展開もギリギリありかも!? と、ドラマ以前のルックス面でも補強してくるけど、同時に色事には鈍感過ぎでも「見た目がイイ男にすぎるだろ!」的なプチ反発も少々覚えてしまうのだ。
こういったキャラクター設定に、アニメとして「色」や「声」や「動き」がついたり、実写ドラマだったならばもっとハナについてしまうかも!? ということを配慮してか、TVアニメ版ではちょいとモサッとした感じ、実写映画版でも短髪でポーカーフェースの剣道少年にして、透かし過ぎていないところでの異性に対するストイックな雰囲気も醸し出してくるのだ。
2次元キャラだと喜怒哀楽を多少大仰に表現しないと観客にはやや通じにくくなるけど、3次元媒体でエロ事やいわゆるラッキースケベに遭遇した際の「動揺」を顔に出しすぎてしまったりすることは、たとえイケメン男子が演じていたとしても少々イヤラしくなってしまうことも傾向としてはあるので、コレらは適切なアレンジだったかとも私見をするのだ――2次元と3次元の媒体の優劣の話をしているワケではナイので、くれぐれも念のため――。
本作はジャンル作品の実写化を蓄積し、10年単位で他業種とも協業して、旬の若手役者も起用してヒットさせれば高収益ともなる映画ビジネスへの角川書店(KADOKAWA)による実験的な布石なのかも? とも憶測している。オタ側もこういったことに慣れて、媒体ごとのアレンジの妙を楽しむ流儀が普及して、ジャンル作品の実写化に対して無闇に反発したことを反省する日が来ることを切に祈りたい。
『ハルチカ』(実写映画版)
(2017年3月4日(土)公開)
(2017年4月12日脱稿)
正副主人公のハルタ(少年)とチカ(少女)の名前から取られたタイトル。
原作は小説だそうだが、「吹奏楽部」プラス「推理モノ」がお題。殺人事件は起こらないけど、学園の些細な事件に先輩や卒業生が残したナゾ掛けをちょっとイイお話風に推理・解決していく、先にも京都アニメーションが深夜アニメ化した『氷菓』(12年)などの前例もある、いわゆる「学園ミステリ」作品でもある。
昨2016年冬季に『ハルチカ~ハルタとチカは青春する~』のタイトルで深夜アニメ化もされており、筆者もそれで本作を知ったクチ。大人気アニメ『ラブライブ!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)や『電波女と青春男』(11年)などの西田亜沙子が担当した、お眼めパッチリ瞳キラキラが鋭角的なマツ毛ギトギトの域にも達しているキャラデザは、個人的には好物だけど、淡泊な絵柄が主流の昨今では若いオタの多数派の好みではなかったのやも(汗)。
TVアニメ版を鑑賞したかぎりでは充分に鑑賞に堪えうる作品だったと思うけど――原作を結構アレンジしていたそうだけど――、売上的には1巻あたりが数百枚の大爆死。
知的で温厚な美少年クンとは良いコンビの、劣等感や逡巡とは無縁そうな屈託のない明るく元気で華のある黒髪ロングのメインヒロインは、我々オタク男子と釣り合うかはともかく(笑)、傍から見ている分には魅力的だし、#1におけるクルッと前転して楽器をキャッチする身軽なサマはマンガ・アニメ的ではあるけれど、彼女の快活な人となりをも1カットだけで表出できており、演出的にもとても印象深かったのだけれども。
筆者が専らとする映画館でのアニメ映画鑑賞では、本作実写版の予告編が流れたことは一切なかった。ゆえに本作の存在も知らなかったのだけど、芝生に寝転がっているとおぼしき黒髪ロングの制服美少女の斜めヨコ顔アップのキービジュアルを、封切直前週のシネコン・ホームページで閲覧して当作を認知。コレはチェックをせねばと――そんな義理もナイけれど(笑)――と映画館へ足を運んでみた次第。
ウ~ム、「学園ミステリ」としての要素はほとんど消失しており「吹奏楽部」の練習がメインで、深夜アニメ『響け! ユーフォニアム』(15年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160504/p1)みたいになっている……(爆)。
近年の野郎オタはマンガやアニメの実写化に冷淡どころか排外主義的ジャンル・ナショナリスト(汗)の気もあるから、この大幅アレンジは危険なのでは?――爆死の空気アニメだから心配ナイってか?(笑)――
前年度に内紛があったらしく――ここでも既視感――、すでに解散している吹奏楽部。高校では吹部をやりたかった物怖じしない明朗ヒロイン・チカは、イジワルそうな校長と直談判して4月末期限で部員集めに奔走する。紆余曲折の末、主に彼女の厚かましい人格力(汗)で最低限の新旧メンバーが集って吹部が復活!
しかして部員の中では彼女が最も初心者で下手クソで苦労をすることに。ようやく上達の目が見えるも、迎えたコンクールのシーンは省かれて、校舎・校庭の内外をまたにかけた授業中のゲリラライブが、ミュージカル的に描かれることで、全校生徒や校長までもが踊りだし(!)、しかしてコンクールの結果も推して知る展開となっていく……。
主役は「千年に1人の美少女」の煽りで売り出され(笑)、オタク的にはゲーム『ガールフレンド(仮)(カッコ・かり)』ともコラボした橋本環奈(はしもと・かんな)嬢。お相手はジャニーズ・SexyZoneの佐藤勝利クン。
宣伝キービジュアルだけだと恋愛映画のようにも見えるけど、その実態は恋人未満の関係であることから、コレはオタではない一般の若年男女に本作をオシャレ系デートムービーとして誤認させて集客するためのフェイクでもあるのだろう。まぁ結果的にはそんなに観客が入ったワケでもなかろうけど、こーでもしなけりゃもっとお客は入らなかったワケで、集客するための作り方として間違っているとも思えない。
とはいえ、原作小説やTVアニメ版の至上主義者の方々にあってはご不興だったら申し訳ナイけど、媒体ごとのアレンジを楽しみたい筆者には、ミステリ部分をオミットして音楽の力で終盤のクライマックスを作る、このアレンジもアリには思える――まぁ実写作品の方がリアリティ&コミカルの喫水線は高くなるので、このミュージカルな終盤を受け付けない御仁も結構いそうではあるけれど――。
加えて、オシャレ系映画かと思わせて、一方では吹部部員に個性的なフツメン(普通の顔面)・ブサメン(不細工な顔面・失礼)を揃えたあたりも個人的には好印象!
橋本環奈は引きの絵になるや、部員中では最もチビだとわかる。そこはTVアニメ版でのやや長身で伸びやかなイメージとは異なるけど、小柄ゆえ彼女がマンガ・アニメ的に男子生徒をブッたり蹴ったりしても、暴力的な印象は醸さない――ウ~ム、このテの描写の印象は個人差が大きいか?(汗)――
製作は井上伸一郎率いる角川書店が主体で(多分)、ジャンル系原作を実写映画で流通させるココ数年の展開も、継続は力なりでそのうちにドカンと当たる日も来るんじゃないですか? 日陰者のオタとしては「ラーメンは屋台にかぎる」でそれはうれしいことではナイのやもしれないけれども、会社経営&拡大のビジネスとしては正しいとすら思うのだ。
『一週間フレンズ。』(実写映画版)
(2017年2月18日(土)公開)
(2017年4月12日脱稿)
3年前の2014年に深夜アニメ化されたマンガ作品の実写映画版。TVアニメは東宝アニメーション製作だったので、本作もてっきり東宝映画かと思いきや……。意外にも松竹製作なのでありました。
原作はオタク系の漫画誌「ガンガン」系列の連載だけど、女性作家によるいわゆる少女マンガ絵の作品である。しかも今風のデッサン骨格シッカリ系ではなく、ゆるふわ・撫で肩のポワポワしたキャラデザで、繊細かつ淡泊な印象。
TVアニメ版は、深夜アニメ『君に届け』(09年)や『琴浦さん』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150403/p1)冒頭でも観たような、教室で誰ともしゃべらずうつむいて、冷たい表情の拒絶オーラで周囲に壁を作っている美少女の図で開幕。
そんな彼女が、暑苦しい体育会系ではなくキモオタでもない(汗)中肉中背の人畜無害・さわやか安全癒し系のニコニコ笑顔の少年のひたすらなプッシュで、次第に心を開いていく……。
心因性の1週間前までしか記憶が保てない記憶障害をカラめたところだけは変化球だけれども――厳密には『博士の愛した数式』という世界の黒澤明カントクの黒澤組の残党が映画化(06年)したベストセラー小説(03年)の前例もあるけれど。メインヒロインは数学が得意という設定はココからの引用か?――。
イジワルに見れば、やっぱ文化系の弱者女子ってこーいうヤサ男がスキなのネ? とサメてこなくもないのであるけれど……(笑)。
本作はメインヒロインが自力救済したのではなく、面倒見のイイ男子クンが手を差し伸べてくれたから救われたのであって、弱者女子にとっての都合のいいファンタジーである! という批判も可能ではある。
が、ウジウジした我々オタク男子が愛好する美少女アニメこそが、数十年の周回遅れでの70年代乙女チック漫画の正当後継者、性別反転の換骨奪胎版だとも云えなくはナイので(ホントか?)、筆者個人は本作を批判する資格がナイのだけれども(汗)。
しかもヒロインが心を開いたあとは、気立てがとっても良くって文化系女子っぽくて、男のコに尽くします! といったタイプでもあるので、少女マンガ文法の作品ではあっても、我々野郎オタの女性の好みとも実は野合ができている。
ゆえに、実写映画版で付与された「記憶喪失前にはバスケットボールをやっていた」という点描のみ、運動神経には劣るオタク男子たちにはプチ苦手意識を抱くであろうし、メインヒロインの「弱者性」や「悲劇性」を削ぐようにも思うのだけれども。この追加設定は必要だったのであろうか?(笑)
この実写映画版はソフトフォーカスを多用したり映像を白く飛ばしたりして、少女マンガ的な雰囲気を醸すことには成功している。メインヒロインは作品冒頭では周囲に対する拒絶感も醸さないとイケナイので、クールでシュッとした顔立ちの女のコを配置。調べてみると、数年前に主演した民放TVドラマで最低視聴率を記録して叩かれたコだけれども、悪くはナイと思う。
対するお相手役は近年売れっ子の山崎賢人(やまざき・けんと)氏。コチラも調べると、同じく少女マンガ原作の実写映画『orange(オレンジ)』(15年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160903/p1)・『オオカミ少女と黒王子(くろおうじ)』(16年)でもヒロインのお相手役を務めている。ともに深夜アニメ版を観ていた身としては(汗)、原作はもっと長身で陰のあるイケメンでは? 本作のそれはもっと甘ったるいお坊ちゃんでは? といずれもイメージと違う気もする(汗)。しかし、観客のほとんどは原作未読だろうし、今どき仕掛ける側もプロだから、諸々計算した果ての集客ができるキャストなのであろう(多分)。
TVアニメ版ではメインヒロイン&主人公少年、主人公少年の親友である無愛想同級生&黒髪オカッパ小柄少女の2カップル(?)が主軸だけれども、この実写映画版では小柄少女はトロトロボケボケしておらず、主人公少年に片思いをしており終盤でフラれる役回りに変更されている。実写だとトロボケ描写は鼻につき、男に媚びてキャラを作っているようにも見えかねないとも思うので、この改変はアリだとは思う。
それよりも終盤の大胆なアレンジの方こそが問題か? 2学期に転入してきたイケすかないイケメン男子が、ヒロインの元カレらしいのはTVアニメ版と同じ。しかし、紆余曲折の末に元カレとの記憶が甦った反動で、今度はヒロインは主人公少年との記憶を消失! 主人公はヒロインと元カレのイチャイチャを遠くから見守るばかりで1年半! ついに卒業式の日を迎えてしまうのだ(汗)。
2時間の尺で起承転結を作るのに、この改変も個人的にはアリだと思うけど、原作信者の反応が怖いなぁ。
もちろんエンタメである以上は、主人公青年クンに救いがないまま終わるワケがないので、最後の最後に伏線を活かしてメインヒロインは主人公青年クンとの記憶を取り戻す。そんな姿を見て元カレも悟って、ヒロインに主人公少年の元へ行けよと云ってくれるあたり、ご都合主義に過ぎてビミョーだけど、前の席の女のコはこの一連で泣いていたので、ターゲット的にはコレでイイのであろう(多分)。
最後の元カレ(=今カレ)の物分かりが良すぎる態度に弱点はあると思うものの、ココをリアルに深堀りしだすと、物語が2時間でキレイに終わらなくなるのだし(笑)。
傑作だと強弁する気はナイけれども、観られる作品にはなっていたと私見する。
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――後日付記:NHK大河ドラマ『麒麟がくる』(20年)で戦国大名第2号(?)斎藤道三(さいとう・どうさん)の娘で、織田信長に嫁ぐ濃姫(のうひめ)こと帰蝶(きちょう)などを演じてブレイク中の今をときめく川口春奈が本作実写映画版のメインヒロインを演じていた!――
『ReLIFE リライフ』(実写映画版)
(2017年4月15日(土)公開)
(2017年7月29日脱稿)
スマホ漫画が原作で、昨2016年夏にもカタカナ抜きの『ReLIFE(リライフ)』のタイトルで深夜アニメ化された作品(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160903/p1)が、早くも実写映画化。
本作は27歳のニート青年が薬剤の臨床試験終了後の就職斡旋と引き替えに、某研究機関が開発した錠剤で見た目を10歳若返らせて高校3年生に編入し、世代間ギャップを感じつつも、級友たちの青春模様に巻き込まれていくといった作品である。
一般に少年マンガの主役を務めるのは熱血明朗タイプと相場が決まっているけど、我々オタはそーいう性格とは真逆であり遠さを感じるからであろう、オタ系マンガやライトノベルや深夜アニメにおいては、ニートや引きこもり、もしくはそれらに準ずる性格類型の人種が主役を務める作品が近年では多い。それが不健全だと糾弾したいのではなく、むしろ彼らに近しい性格である筆者は、現今のぶっちゃけた風潮をむしろ好ましく感じているけれど(笑)。
本作では27歳のニート青年に加えて、メインヒロインに黒髪ロングでコミュ力弱者の女子高生も配置。彼女は学力は高いけど気弱で(ひとり)ボッチで孤立していて、勝ち気なサブヒロインとの不和&和解も軸となる。
深夜アニメ版の中後盤では、ニートであったコンビニ・バイト店員時代も現在の高校生生活でも、顧客や級友たちに対して気配りができて実に面倒見のイイ主人公青年が、なぜにニートに成り下がったのかが明かされる。
大学院卒なのに不況でブラック企業に勤めざるをえず、デキる女性営業マンの先輩は品性下劣な野郎の同僚たちの度重なる小細工や上司のパワハラで心を病んでついに会社で自殺(!)。ブチ切れた主人公は辞表を叩きつけるものの、新卒数ヶ月で退職した彼の再就職はままならず、自信喪失に陥っていく……。
このへんのシビアな一連も、1クールアニメのシリーズ後半の点描でならばともかく2時間しかない映画に盛り込むとなると、重たすぎるからオミットするだろうし、それでイイのだろうとも思っていたのだが……。
深夜アニメ版では姉御ボイスの沢城みゆき嬢が演じていたこの先輩社員を、大ヒット怪獣映画『シン・ゴジラ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160824/p1)の理系官僚・尾頭ヒロミ(おがしら・ひろみ)役での記憶も新しい市川実日子(いちかわ・みかこ)が演じていて驚き。さすがにその当の現場は目撃しなかった設定に改変されて、ゆえに主人公がネクタイを締められないというトラウマ(心的外傷)も省かれていたけれども。
筆者も人生途上で、誰かスケープゴートを作ってその人物の悪口で結束を図って自身の優位も保とうとする上司や同級生、下請け会社の納期の遅れを電話越しに罵倒し続けるパワハラ管理職、気弱そうだったりメガネのガリ勉クンを見ると無意識に嗜虐心を刺激されるのか執拗に責め続けるヤンキーDQN(ドキュン)社員、煙(ケム)に巻くアドバイスで新人を惑わせて周囲に自分を高く見せようとする虚栄的な社員、合理的な教育ではなく「盗め!」などの「雑巾がけしろ」レベルの前近代的な指示だけして仕事をした気になっている同僚などを見掛けてきた。
放心時にはコレらをふと思い出してしまい、怒気を瞬間沸騰させている(笑)。なので、このテの描写には怒りと同時に心も痛む。
底の浅い善人はそれらを「制度悪」や「政治悪」のせいにする。しかし、筆者は違うと思う。コレは「人格悪」や「性格悪」である。全人類の7~8割は後天的によらず先天的にすでに下劣であり、「法律」や「世間体」がなければ他人などお構いなく「私的快楽」に走る、「仲間以外は皆風景」で、真の意味での「公共心」などはナイ輩なのである(笑)。
大変残念ながら、善良なヤツほど概して弱くてヤリ玉にされている。女児向けアニメ『美少女戦士セーラームーン』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)や『プリキュア』シリーズ(04年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191107/p1)ではナイのだから、「至誠」は相手に通じるなんぞの「キレイごと」などは信じないで、下劣な輩の良心になぞは期待せずに、不器用な善人たちは最初からキズ付けられないようにバリアを張っておいてノラリクラリと立ち回るべきだとつくづく思う。
全人類が一挙に同時に「徳義」に目覚めることなどナイ以上は、40人学級に1人の割合で深夜アニメ『琴浦さん』(13年)における真鍋(まなべ)クンのような良心のみならず胆力&話術も兼ね備えた子を育成して、啓蒙専制君主(笑)として教室や職場を公平に統治してもらいたいけど、40人に1人ですら素質のある人間の確保は困難かナ?(汗)
ところで、深夜アニメ版も良作だったと私見するけど――萌え作品とか腐女子向け作品ではナイので売上的にはイマイチでも――、70年代の懐かしビッグタイトルでもないのに、最近では良作の近作が続々とフットワークも軽く、旬の若手俳優を使ってデートムービー的に実写映画化されており、オッサンオタク的には隔世の感がある。
この風潮をミーハーだと嗤(わら)う意見もあるようだけど、それは実に近視眼的で浅薄な見方だ。70~90年代の若者向け邦画の絶望的低調に、往時の心あるスレた映画マニアたちが、当時の陰気でビンボーくさい邦画を一部の映画マニアのみならず一般層やデート客をゲットできるようにブランド価値を上げるためにはドーすればイイのかについて議論を繰り広げてきた歴史を知らない愚論でもある。
やはり映画やジャンル作品も、文芸批評史などと同様に、評論や論争の歴史をウィキペディア化して、誰でも参照可能な蓄積とし、過去に繰り返されたり乗り越えられて解決してきたハズの案件を、無知ゆえにループする愚行を回避して、その先の次なる高次なステージの議題へとすぐに近道・ショートカットで進めるようなインフラ基盤を整備できないものなのか?
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『サクラダリセット 前篇/後篇』(実写映画版)
(『前篇』2017年3月25日(土)公開)
(『後篇』2017年5月13日(土)公開)
(2017年7月29日脱稿)
この2017年4月から深夜アニメ化されることは知っていたけど、一応オタ系のジャンル作品なので、マイナー悪食(あくじき)の筆者としては実写映画版のこの前後編も鑑賞してみた。
舞台は山近き郊外で、多摩あたりの小ギレイな新興住宅地を関東人としては想起させる「サクラダ」という街――テロップによれば、ロケ地は三重県四日市市のようだけど――。そこは実は様々な超能力者が住まう街でもあった。
メインキャラは男子高校生ひとり&女子高生ふたり。3人ともに血液温度が低そうな(笑)、熱血バカ度は皆無のマジメかつ理知的でクールなキャラクター。もちろんクダケた若者言葉なぞは一切使わず、年齢不相応にも普段から上品な丁寧語を使い、話は長いけど物事を順序立てて理路整然と分析チックにしゃべっている。
この3人のうちでも最もオボコそうな、黒髪ショートで小柄な制服女子高生が「リセット」と呟くや、全世界(全宇宙?)が数日前に巻き戻る超能力を持っていて、その「力」を「小さな人助け」に使ううちに、この街の「大きな秘密」に迫っていくというストーリー。
こう書くと、年輩オタク的には同じ1日を何度も繰り返す、日本ジュブナイルSF小説の半世紀前の古典『時をかける少女』(65年)の何十本目だかの既視感あふれる亜流であると認知する。と当時に、悪い意味ではなくやはり似て非なるモノに成り果てていて、隔世の感もいだく。それはやはり、90年代のオウム真理教事件や新々宗教の隆盛以降というべき事態なのであろう。
本作にかぎった話ではナイけれども、近年のこのテの作品では超能力がなぜ存在してどんな「原理」に依拠しているのか? といった疑似科学・SF・オカルト的な設定はヤバいと目されてかなされない。超能力は何でもアリではなく、時間・回数・目的などの制限ルールがあって、その範疇での知謀を尽くしたゲーム的攻防に作品中の「論理」が駆使されて、「超能力の源泉」への「論理」的興味は煙に巻かれている。
超能力自体も古典的なそれではナイ。
・前述した「時間を巻き戻す能力」
・「巻き戻されて無かったことになった時間世界での記憶を保持する能力」
・「写真を破るとその写真の中の世界に入れて、被写体とも短時間会話ができる能力」
・「相手の記憶を1回だけ改竄できる能力」
・「自分の身体の『部位名』と相手や対象の『部位名』や『能力名』を連呼すると、自分の特定『部位』でふれた先の物質を消滅させたり、相手の能力をキャンセルできたり、果ては重力まで無効にして宙高くジャンプできる能力」(笑)
・「ある人物の超能力を別の人物にコピーできる能力」
さらにはそれらを複数組み合わせて、写真の中から死者を甦らせもする!
個々の能力の原理はバラバラだから、ここまで来ると一休さんのトンチのごとき言葉遊びでしかナイとも思うけど、作品が醸し出す硬質で知的なフインキが、この作品を安っぽく見せずに高尚に見せることには成功していることを、悔しいけれども認めざるをえない。
とはいえ、巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)に対して「ナゾ解き」や「性格弱者の実存の投影」に邁進していた20世紀のオタとは異なり、リメイクの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ(07年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)ではそのへんの内面的葛藤を「華麗にスルー」(汗)してしまう、いわゆる「動物化」して久しい21世紀のオタの多数派が、本作のごとき硬質な作品のナゾ解きに執着するとはとても思えない。
なので、「動物化」=「ベタな萌えオタ化」に抵抗があるのであろう、今では少数派の生真面目インテリの気があるオタク青年クンだけが、本作に執着しているとも憶測する。
まぁ実写映画化&2クールアニメ化される程度には原作小説もヒットしたのだろうけど、制服姿のさわやかな高校生男女たちが居並ぶキービジュアルで明朗な青春映画のように誤解させた「前篇」は、売上的には爆死して2週で打ち切り。「後篇」も館数を減らして当初から2週上映となったほどだから、アニメの円盤売上も苦戦必至であろう。
筆者も本作の衒学的(げんがくてき)な内容にプチ反発がナイでもないけれども、水に落ちた犬をさらに叩く趣味は毛頭ナイし、誰も擁護しそうにないRDG、レッド・データ・ガール(笑)な絶滅寸前危惧作品の本作を、天邪鬼の筆者は擁護したいと思うのだ(汗)。
この作品は、熱血ヤンチャになれない性格類型の内心のナイーブさや潔癖を、自己憐憫したり自己陶酔することなく、知的なポーカーフェースで武装して隠して処世することを勧める作品でもあるのだろう(!?)。
世間に媚びず、世俗の凡人たちにある「虚栄心」や「色恋」に「悪意」などの人情の機微には疎(うと)いロボットのような「リセット少女」のピュアさを愛でつつも、それではヒト・人間として不充分なことから、事のついでに人間的な感情も教えていこうとしつつも、それが同時にピュアさも毀損する二重性に自覚的である主人公少年クンともうひとりの少女の達観。この一点があるだけでも、筆者は本作のことをキライになれない――結局は筆者も感情・好悪で発言しちゃうけど(笑)――。
原作信者の見解は知らねども、TVアニメ版と比してもこの実写版は、2本の映画に再構成しつつもよくぞ膨大な要素&登場人物をほぼそのまま残したとも感心。「前篇」は人物紹介もあるだけに説明的だけど、おそらくTVアニメの第2クールに相当する「後篇」が特にお見事。ちなみに「前篇」は加賀まりこ、「後篇」は及川光博といったメジャー系の役者が重要な役どころを演じている。
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