『マクロスΔ』&『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』 ~昨今のアイドルアニメを真正面から内破すべきだった!?
『アイドリープライド』『ゲキドル』『22/7』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』『おちこぼれフルーツタルト』 2020~21年5大アイドルアニメ評!
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『劇場短編マクロスF ~時の迷宮~』『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』 ~元祖アイドルアニメの後日談・長命SFシリーズとしては通過点!
(文・T.SATO)
(2021年12月10日脱稿)
『劇場短編マクロスF(フロンティア) ~時の迷宮~』
リアルロボットアニメ映画『劇場版マクロスΔ(デルタ) 絶対LIVE(ライブ)!!!!!!』(21年)の同時上映作品にして前座を務める短編映画。そして、もう早くも10年以上も前の作品となってしまったリアルロボットアニメ『マクロスF(フロンティア)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080930/p1)の後日談作品でもある。
歌・三角関係・人型可変戦闘機をお題としていた『マクロス』シリーズでもある同作は、『マクロス7(セブン)』(94年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080930/p1)などとも同様に、シリーズ初作『超時空要塞マクロス』(82年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990901/p1)最終回でも言及されていた、星間戦争による人類絶滅を防ぐ播種としての宇宙移民計画に即して、外宇宙を航行する巨大移民船団を舞台としており、巨大昆虫型の宇宙怪獣群(!)とも戦っている作品でもあった。
同作は2008年度のTVアニメでは、『コードギアス 反逆のルルーシュR2』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20081005/p1)とともに男女を問わずオタク間での高人気を獲得できたトップ2のヒット作でもある。09年&11年にも前後編形式にて、TVアニメシリーズの内容を踏襲しつつも大胆にアレンジしてオチも変えていた完全新作映画『劇場版マクロスF』が公開されてヒットを飛ばしている。
TVシリーズでは宇宙怪獣との戦争と並行して、女形の歌舞伎役者でもあった民間軍事会社の美青年パイロットと、他の船団から来た「銀河の歌姫」こと姉御肌の美少女、それにオボコいながらも歌だけはスキでアイドルとしてもブレイクしていく妹系の美少女との三角関係や芸事での悩みも描かれて、最終回では美青年主人公がふたりの美少女いずれかを選ばずに「ふたりともオレの翼だ!」などと「両手に花かよ!?」といったオチで締めくくられていた(笑)。
しかし、本『劇場短編』では姉御肌の歌姫は昏睡状態のように眠りつづけている。主人公の美青年もいない。彼らのことを想って、かつての友人たちとともに僻地の超古代文明の神殿前に着いた妹系歌姫は静かに歌唱をはじめる。すると、彼女はそこで夢とも現ともつかない幻覚やありし日の思い出にも遭遇していく、そんな彼女を美麗な3D-CGアニメでプロモーションビデオ風にも見せていくといった短編作品になっている。
そう、本作は『劇場版マクロスF』ラストで、妹系歌姫のことを泣く泣く振って姉御系歌姫への愛を告白したものの、当の姉御系歌姫は最後の戦闘での歌唱で精魂を使い果たして、主人公青年も世界を救ったことと引き換えに超巨大な女王昆虫の空間転移とともに遠宇宙へと連れ去られてしまったあとの物語。つまりは『劇場版マクロスF』側の後日談でもあったのだ……。
まぁ、メインディッシュでもある『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』の方が、その原典たるTVアニメ『マクロスΔ』(16年)からでも5年も経っているので集客的にはやや弱くて、10年以上も前の作品だとはいえNHK-BSプレミアムで放映された『発表! 全マクロス大投票』(19年)などでも1位を獲得していた『マクロスF』を短編とはいえども投入することで、少しでもの集客につなげようといった試み自体は商業的・興行的にも正しいモノではあるだろう――往時の『劇場版マクロスF』の観客は半数が女性オタではあったけど、さすがに10数年の歳月を経た今となっては、筆者が観た劇場では当時からの女性ファンとおぼしき御仁は見掛けなかった――。
いずれにせよ、過去作のちょっとした後日談が観られて、状況&心情のリフレイン的な再確認、および『劇場版マクロスF』ラストの悲劇的な幕切れが解決したワケではないにせよ、姉御歌姫の復活と美青年主人公の所在&帰還の可能性が少々でも示唆されたことで、せめてもの救いを与えているあたりは後日談作品のお約束だともいえるけど、哀しみの中にも救いを感じさせる小粒良品には仕上がっていたとは思うのだ。
『劇場版マクロスΔ(デルタ) 絶対LIVE(ライブ)!!!!!!』
TVアニメ『マクロスΔ(デルタ)』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190504/p1)の完全新作映画である。歌・三角関係・人型可変戦闘機を3題目としてきた『マクロス』シリーズは、初作『超時空要塞マクロス』(82年)ではうら若き女性アイドルがひとり、飛んで『マクロスF(フロンティア)』(08年)ではふたりの女性歌姫を描いてきたが、本映画の原典『マクロスΔ』では5人編成の女性アイドルグループ・ワルキューレを歌姫に据えている――本映画タイトルの「!」が5個ではなく6個であったことの意味は、アイドル側ではなく可変戦闘機部隊デルタ小隊のメンバーが本映画中で5人から6人になったからのようだ――。
魔法少女のように変身して自ら空を飛んで戦場に出向いて歌唱して、細菌由来(!)の奇病で暴徒と化した人々の心を正気に戻してみせている彼女らの姿を観ていると、もう可変戦闘機は要らないんじゃネ? などという気持ちにもなったモノだけど(笑)。
男女を問わず若年オタクをゲットできていた前作『マクロスF』の時代とは異なり、男性オタク向けには『アイドルマスター』(11年)や『ラブライブ!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)、女性オタク向けには『うたの☆プリンスさまっ♪』(11年)などといったアイドルアニメ多数が大ヒットしてシリーズも重ねていたネタかぶりの時代にあっては、作品自体の罪ではないけれども『F』ほどの人気をゲットできなかったこと自体は少々残念ではあった――もちろん人気と作品の質は必ずしも比例関係ではないことは、くれぐれも念のため――。
初作とは異なり歴代『マクロス』シリーズでは、一応の知性を持つ巨大怪獣(汗)のような異次元エネルギー生命体やら知性を持たない巨大宇宙昆虫などとも戦ってきた。しかし、本作では我々地球人の祖先でもある太古の星間文明人・プロトカルチャーとも同根である辺境惑星の先住民・ウインダミア王国といったヒト種族が敵となっている。
過去には不平等条約を結ばせた地球統合政府に反発して独立戦争を仕掛けてきて鎮圧されており、彼らの反感にも一理や二理は持たせてはいるものの、そんな彼らが実は奇病テロを意図的に拡大もさせていたことが判明することで、地球と王国をドッチもドッチだと相対化はしつつも、やむなく両者が戦争状況へと至ってしまうというストーリー。
および、母星たる王国から出てきて地球側の奇病鎮圧アイドルの一員としても出世した方言まる出しなオボコい少女の苦悩と、そんな彼女と親交を深めていく小柄な少年パイロット主人公、そして彼に懸想してしまう不器用な先輩女性パイロットとの淡い三角関係も描かれていた。
本作『Δ』はすでに2018年にも、TVアニメの前半第1クールのヤマ場と後半第2クールのヤマ場を大胆にシャッフルして1本の映画として再構築した『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』が公開されているが、本映画はそれらTVの後日談だとも劇場版の後日談だとも取れる作品でもある。
そして、その内容は地球との和平がなった王国の地での野外交歓パーティーの場にナゾのマクロス級巨大戦艦と可変戦闘機群が襲来! ワルキューレ・メンバーのクローンでもあるヤミキューレによる歌唱攻撃(笑)もはじまった! といったモノである。
この「ヤミ(闇)キューレ」という確信犯でのB級感まる出しなネーミング。マジメにSF舞台設定を作りこんでいるようでも、端々に自身でソレを崩す爆笑必至な古典漫画的・ネタ的なネーミングや設定を入れてくるところが『マクロス』シリーズの個性であり良さだとも思うのだ――『マクロス7(セブン)』(94年)後半におけるマッド科学者・千葉が開発した、余人にはその原理が解明不能な「歌エネルギー(笑)増幅装置」やそのエネルギーの単位が「千葉ソング(笑)」、宇宙の悪魔・プロトデビルン(爆)といったあたりなど――。しかし、このあたりへの反発もけっこう聞くのでヒトを選ぶ作品なのであろう。
てなワケで、敵のヤミキューレも新歌曲を披露してくれることで、3次元の現実世界でもワルキューレの歌曲が増えるという一石二鳥! 物語の全編にわたって敵味方である両者(同一者)の歌曲も鳴り響くことになるのだ!
ただし、『Δ』の要素だけでも2021年現在では集客面でやや弱いだろうから、初作後半からのレギュラーキャラで『7』ではマクロス7艦長も務めた天才イケメンパイロット・マックス73才(爆)が四半世紀以上の歳月を経てマクロス級戦艦にて救援に登場!――しかも、まだ若い(笑)―― 同じく初作では敵軍の参謀で『7』ではマクロス7副官も務めたエキセドル参謀も、マックスに付き従うかたちで再登場!
さらには空間に一時的に開いたワームホールの先には巨大戦艦・メガロード1(ワン)までもが出現! しかも、その艦橋にはもうまる40年も前の作品(!)が初出でもある初作のアイドル歌手・ミンメイ嬢らしきシルエットも!――70代ではないようだ(笑)。時間の流れが異なる断層空間に落ちていた……といったところか?――
まぁ、メガロード1ネタはややマニアックではあるけれど。コレは初作の主人公青年やヒロインたるアイドル歌手も乗艦したという巨大移民戦艦の名前なのだ――しかも、『7』の時期に発表されたシリーズ年表だと、同艦は出航後に銀河系の中心部で消息不明(沈没?)になったのだともいう(ヒドいウラ設定であった・汗)――。
そして、『Δ』では陰に陽に語られてきた、ワルキューレを結成した「レディ・M(エム)」なる人物の正体も、ミンメイだの初作のもうひとりのヒロイン・美沙だのとマニア間での下馬評が渦巻いたモノだったけど、その正体は「レディ・メガロード1」であったことも判明する!
――ソレは正式名称の判明ではあっても、正体の判明ではないだろうというツッコミもしたいけど(笑)。まぁ政治家的センスなどは皆無であったミンメイ嬢が組織のトップになれるとはとても思えないので(汗)、リアルに考えればメガロード1上層部の合議体を指す言葉なのであろう!?――
でもまぁ、そのへんはあくまでもシリーズに精通したコアなマニア転がしの点描に過ぎない。本映画の作劇クオリティーそれ自体に直結する要素でもない。一見さんお断りなオタッキーに過ぎる要素を前面に押し出すことについては、イイ意味でストイックに控えてきた本シリーズでもある。しかし、そろそろファンサービスとして、あるいは後続シリーズのウラ設定的な伏線たりうる要素のタネまきとしても、適度にならばそーいうネタを披露することもアリだろう!
そしてネタバレするけど、ラストで精魂が尽き果ててしまったメインヒロインは絶命してしまうのだ……。ヒエーーーッッッッ!(汗)
いや、たしかに王国の民たちは30代で寿命が尽きる短命種であるのだと原典の時点で延々と言及されてきたことから、いずれは彼女と少年パイロット主人公には早めの別離が来てしまうのだろうことは幼児の視聴者でもなければ誰もが想定できたことではあったけど。ソレは作品のウラ側に漂わせる悲劇スパイスに過ぎなくて、明朗なヒロインを描いてきた本作でその悲しい結末までをも描くことはヤボだし避けるのだろうとも思っていたのだが……。
たしかに熱唱したことによるお肌の一部の結晶化現象で老化フラグを本映画では立ててもいた。しかし、ソレはそれだけ頑張ったのだという意味での疲労描写だろうとも思わせていたので、今ココでガチに彼女の死が描かれてしまうのだったとは……(涙)。
アレだけ死亡フラグを立てていた姉御系ヒロインが、その最終回では奇跡が起きて、死に至る脳内感染細菌が透過光処理でキラキラと食道~胃へと胃カメラ主観映像(爆笑!)にて落下していき、元気に完全復活を遂げてしまったTV版『F』という前例もあったというのに(笑)。
まぁ、『マクロス』各作は「マクロス」世界における後代の作家たちが歴史に材を取って解釈やフィクションも交えて映像化した商業作品でもあったのだ! という矛盾・不整合すら開き直って正当化ができてしまうウラ設定(爆)が90年代から存在しているので、本作『Δ』のメインヒロインも今後の作品ではシレッと復活していることに期待しよう。
相応には人気を集めた『マクロスΔ』ではあるものの特大ヒットした作品でもない以上は、そして若年オタク層にはともかく年配オタク層から相応の興収や円盤売上が常に確保もできている『機動戦士ガンダム』シリーズ新作や『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ新作のような大予算をかけまくった美麗な作画&背景美術作品とも比すれば、映像面ではやや見劣りはするだろう。しかし、もちろん現今のTV放映の深夜アニメの平均値と比すれば充分にハイソな映像は達成できていた。
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『劇場短編マクロスF』『劇場版マクロスΔ』評 元祖アイドルアニメで長命SFシリーズとしても通過点!
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