『劇場短編マクロスF~時の迷宮~』『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』 ~元祖アイドルアニメの後日談・長命SFシリーズとしては通過点!
『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』 ~シリーズ概観 & アニメ趣味が急速にダサいとされる80年代中盤の端境期
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2019年5月4日(土)に、NHK・BSプレミアムにて『発表! 全マクロス大投票』放映記念! とカコつけて……。『マクロスΔ』評(16年)&『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』(18年)評をアップ!
『マクロスΔ』 & 『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』 ~昨今のアイドルアニメを真正面から内破すべきだった!?
『マクロスΔ(デルタ)』
(文・T.SATO)
(2016年12月16日脱稿)
うら若き女性アイドルとその歌謡曲が、文化を知らない戦闘巨人族の宇宙大艦隊を圧倒する! そんな80年代前半に一世を風靡したリアルロボアニメ『マクロス』シリーズの35年目(!)の最新作。
後続の『マクロス』は、初作は必ずしも「文化」「歌」の力で平和をもたらしたのではなく、歌で脅して怯んだ隙に敵を撃滅してただけじゃネ? という身も蓋もないネジくれた自己言及・自己相対視型のアンチテーゼも織り込んで、シリーズを継続させてきた。
・歌の洗脳性を問題視した『マクロスプラス』。
・戦場なのに銃撃せずにガチで歌だけで戦争を終結せんとするも、果たせないで戦場をムダに攪乱するだけで終わるロック青年を描く『マクロス7(セブン)』(共に94年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990906/p1)。
・ヒト型の知性を持たない昆虫型巨大生物群を相手にする『マクロスF(フロンティア)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091122/p1)。
もちろんアンチテーゼを徹底させたらバッドエンドにするしかないので、展開的には精神的な頑張りが通じたようにされるけど、マッドな科学者が開発した――今で云うネタアニメ的な――「歌エネルギー」増幅装置(笑)や、昆虫さん由来の宇宙細菌に感染した者ゆえの生体超時空波などの一応の物理的・SF的な小道具によって、宇宙の悪魔・プロトデビルン(笑)や宇宙昆虫さんに歌のパワーを届かせて、後続作は戦争を終結させてきた。
筆者のようなイジワルなマニアは、それもまたやっぱり純粋な歌の力じゃなくって、特定の相手にだけ通じる特殊な対処法をココで用いたから、戦闘に勝利したり戦争を終結できたのであって、戦う相手が違っていたら、つまりは『7』のメンツが『F』の敵を、『F』のメンツが『7』の敵を相手にしてたら、敵わずに全滅してたんじゃネ? なぞと思っていたりもする。
前作の敵役が世界征服に利用した悪の技術が次代のインフラになってたりするのも見ると、往時の悪役の蛮行に感謝すべきじゃネ? なぞとも思ったり――現実世界の技術革新もそんなモノかもしれないが(汗)――。
本作中盤ではそんなシリーズ全体にも言及して、「歌」そのモノが人類の祖先種の超古代の星間文明人・プロトカルチャー族の「兵器」だった可能性にも言及……するのだが、ストーリーに密接に絡んでメインテーマへと昇華することはなかった(笑)。
まぁ元・歌手だったオールドミスの挫折や都会人としての孤独なども描くのならシニカルなテーマも似合うけど、アイドル&スター性だけを体現する若年ヒロインには不釣り合いな題材ではある。だから、「歌」が「兵器」であるハズがない! と特に根拠もなく善なるものとして肯定されて進む展開は、浅くはあるけどウェルメイドに落とすならコレしかないよネ。しかし、「兵器」であるかもしれない可能性への、今一歩の懊悩と曲折があった上でのこの選択であってほしかったようには思うのだ。
なーんて。そんなテーマ主導で『マクロス』を語るのも間違ってるよネ? 結局、我々キモオタは、女性声優たちの可愛らしい声によるキャッキャウフフや、女性アイドルのポワポワした甘ったるい歌声を見聞きすることで、ニヤついて脳内をお花畑にトロけさせ神経を麻痺させて、束の間の癒しや喜びを得ている面も否めない。
その伝で、前作『F』のW歌姫から本作では5人メンバーのアイドルユニットに増員したのは良でも、カリスマ歌姫と新人歌姫以外はバックダンサー扱いで、さしてそのキャラや内面も描かれないのはいかがか?
ムダに奇形的に進化したアニメ界の主流と距離を置くのではなく、真っ正面から挑んで内破する形で、ハーレムラブコメや百合や女同士の三角関係の新境地も描くことを目指すくらいでもよかったのでは?
河森カントク&岡田麿里脚本で、関係各位をダマせたか予算潤沢だった怪作アニメ『AKB0048(エーケービー・ゼロゼロフォーティエイト)』(12年)では、芸能弾圧下の未来で空飛ぶサーフボードに乗ってゲリラライブを敢行するアイドルを美麗なCGで描いたが、なぜかその技術は本作では使われず(汗)。
高品質が求められ、男向け・女向けアイドルアニメが割拠する10年代で覇者になるには、本編・メカ戦・歌唱ライブシーンの3班体制、3話に1回は新曲PV(プロモーション・ビデオ)が必要だろうが、昨今の河森作品の売上低調を見れば、残念ながらそこまでの予算確保はできなかったようだ。正直、絵面的にも前作『F』に勝っていたとはいえない。
シリーズ一オボコい少年主人公や少女ヒロインなど素材としてはキライでない。しかし、ソツはないけど意外性と練られた抑揚のある物語といった感じでもない。円盤の売上的には本作は16年春の覇権アニメではある。けれど、河森作品はマジメな作風なのにメタと楽屋オチが突然混じって笑かせる、元祖ネタアニメ臭が魅力だと思ってきた筆者には、その方面のセンスも欠如気味な本作については少々残念ではある。
『劇場版マクロスΔ(デルタ) 激情のワルキューレ』
(2018年2月9日公開)
(文・T.SATO)
(2018年4月27日脱稿)
ロボットアニメ『マクロスΔ(デルタ)』(16年)の劇場版。『マクロスΔ』は一昨年春季の第1巻の円盤売上が1位。通巻でも『Re:ゼロからはじめる異世界生活』に僅差で2位という程度にはヒットした作品だが、早くも10年前になる『マクロスF(フロンティア)』(08年)の大ヒットと比すれば寂しい感じではある。
SF的エネルギー磁場で機体の強度を高めた戦闘機が人型に変形、ついには劇中キャラによるBGMならぬリアル歌唱(笑)の力で(後続シリーズだとコレに作品ごとにSF物理的な言い訳も付与)、局地的な戦局の左右どころではなく果ては戦争すら終結させる、イイ意味でインチキも大概にしろと云いたくなるマクロスシリーズ。
歌姫も単独歌手からダブル歌姫、本作ではアイドルユニット5人に増員。戦闘機には乗らないが、魔法少女風に変身(笑)するや各種バーチャル衣装をまとって空を飛んで歌唱して、空間に自身らの歌唱映像も巨大投影して、奇病を発症して錯乱した軍人や民間人を正気に戻していく。
正直、もう戦闘機は要らなくネ? とも思ったが、それとバランスを取るためか、ドラマの方は小生意気な小柄の美少年パイロットとその姉さんタイプの先輩パイロット、アイドルユニットの小柄新人歌姫との三角関係に焦点が行き、残りの歌姫たちはバックダンサーのような扱いで、そのキャラやドラマはさして描かれず……。
ちーがーうーだーろー!(笑) 今の時代に若年オタたちが観たいのは、野郎のいない(少ない)世界で女のコたちがキャッキャウフフする、BL(ボーイズ・ラブ)の反転としてのソフト百合みたいな世界だろ。
本作ではそんなツッコミに対する返歌か、男女の三角関係ではなくアイドルユニットたちに焦点を当てており――まぁ彼女たちの歌を3次元でも売るために、全編をPV風にするという都合もあったのだろうが――、彼女たちの友情・紐帯・回想での過去の苦労・個性・可愛らしさを主体に見せていく。先の三角関係もゼロにはしないけど、アイドルらの周辺にあった人間模様としての点描に留めることでむしろ鼻につかずに、甘え下手でクールな姉御パイロットの淡い悲恋としてイヤミなく浮かび上がったようにも思うのだ。
シリーズ初作では敵であった異星人種族のマクロス艦長が直々にシカメっ面でオーディション(笑)した軍隊所属の戦略的アイドル集団の日々の歌唱やダンス特訓。先代脱落メンバー、のちに加入してきた新メンバーたちの当時の想い、既存メンツの新人に対する往時の所感。他メンバーとは交わらず超然とした印象でも、実は原初の星間文明人・プロトカルチャー出自のクローンゆえ、家族や幼少時の記憶もないためにアイデンティティ・クライシスに陥っていた圧倒的歌唱力の紫髪ロングの長身歌姫。
筆者が現今の美少女アニメに毒されているのやもしれないけど(汗)、正直なところTV本編よりも今回の『劇場版』の方が面白かった。なぜにTVもベタでもこう作らなかったのかが惜しまれる。
作品としてはTV全2クールの1クール終盤&2クール終盤の2つのヤマ場をブレンドして1本の作品として再構築。よって、美少年パイロットの先輩である笑顔を見せない無口な青年パイロットも終盤まで生存。彼とアイドルのひとりとの禁欲的な悲恋も一方のタテ糸までは行かずとも、後出しジャンケン再構築の利点で、彼が旧部隊所属時には見せていた笑顔の写真を効果的に配することで、彼の人となり&落差を浮上させつつ、アイドルアニメ『ラブライブ! サンシャイン!!』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200628/p1)でも観たような(笑)TV1クール終盤での海浜の鎮魂の「精霊流し」の祭りでキレイにオチとしていた。
メインヒロインの故郷でもあり、冷涼として冠雪した高山のイメージでまとめられた敵母星の美形青年パイロットや熟年パイロットたちも登場するが、物語の遠景の人物に留める代わりに大胆に整理して役回りも変えてしまうことで、出番は少なくとも存在感は発揮させている。
本作も『宇宙戦艦ヤマト2199』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190707/p1)同様、敵国が相対的には悪でも、自陣営も相当に後ろ暗いと描いているのだが、コレも今時の作品ならばデフォルト的な構図だろう。
河森正治カントクが岡田麿里と組んだ『AKB0048』(12年)では多用されていたモーションキャプチャーによるCG歌唱ライブは、予算の都合かTV版『マクロスΔ』では使用されなかったが、本映画では『アイドルマスター』『ラブライブ』『Wake Up,Girls! 新章』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150615/p1)の後塵を拝したけど、美麗なそれを魅せてくれる。
メカ戦も『マクロスゼロ』(02年)以来のCG描写でそこにも見劣りするようなものはナイ――と同時にもう驚きもナイけれど――。作画&美術の質は並レベルだったTV本編とも同等で(爆)、意図的だろうが陰影のメリハリも少なく、作画マニア目線で見れば動画枚数も少なくて、TV同様にカクカクしているのが見て取れるあたりで、ゴージャスさには欠ける感が惜しいけど。
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katoku99.hatenablog.com(当該記事)
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http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20151006/p1
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