『非公認戦隊アキバレンジャー』『乾杯戦士アフターV』『女子ーズ』『エアーズロック』 ~戦隊パロディでも公私葛藤描写が光る!
映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』 ~「ユルさ」&「王道」の接合にこそ、戦隊・日本特撮・娯楽活劇の存続がある!?
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2023年の夏季には特撮変身ヒーロー作品(における悪の組織)のパロディアニメ『怪人開発部の黒井津さん』(22年)が再放送中記念! とカコつけて……。『厨病激発(ちゅうぼう・けきはつ)ボーイ』(19年)・『ド級編隊エグゼロス』(20年)・『アクションヒロイン チアフルーツ』(17年)・『恋は世界征服のあとで』(22年)評をアップ!
『厨病激発(ちゅうぼう・けきはつ)ボーイ』
(2019年秋アニメ)
(文・T.SATO)
(2019年12月15日脱稿)
「厨病(ちゅうびょう)」の「厨」とは、「中二病」の「罵倒」的な意味での云い換えのネットスラング(俗語)で、ネット上の超巨大掲示板・2ちゃんねるの草創期に誕生した用語だったと思う。次第に「罵倒」の意味ではなく明るい「自虐」や「自嘲」や「謙遜」の意味での使用がメジャーとなって、そのニュアンスも変えていった。この云い換えの歴史も20年近いものとなるのだ。
男女共学高校の「ヒーロー部」(笑)の残念なイケメン男子たちの珍妙な活動に翻弄されて、勝手に「スーパー戦隊」のピンク扱いにされることになった、サメてはいてもフェミニンでゆるふわな茶髪で小柄な少女が主人公を務めている逆ハーレムアニメでもあった。
といっても、イケメン男子たちはスカした男子クンたちではなく、特撮ヒーローものが大好きらしい精神年齢が幼稚園児な少年ばかりが登場している。なので、野郎が観てもイヤ~ンな感じはしないと思う。
また、本作のような作品がスキな女子たちも、きっと思春期のモテ/非モテのカーストの前では勝ち目がナイことを直感的に悟ったり、3次元世界でのちょいワル男子が怖くて甘ったるい男子の方がスキなので、虚構世界で擬似的恋愛の代償行為を得ようとするオボコい女子たちなのだろうとも憶測するのだ――バカにしているワケではないですよ――。
筆者が散見してきた範疇でも、こーいう女子向け逆ハーレム作品の視点人物である少女主人公といったものは、女子向けの男性アイドル歌手アニメ『うたの☆プリンスさまっ♪』(11・13・15・16年)をはじめとして、不自然なまでに無色・無個性・フラット・無主張・プレーンな傾向があった。しかしそれゆえに、女性オタクが鑑賞するにあたって、主人公少女の存在が媚びた感じでハナにつく……といったあたりを脱臭することができている。
主人公の存在が彼女ら女性視聴者にとっては邪魔にならずに、適度な塩梅での自分個人を投影させたかたちでの感情移入をさせるといったあたりが、劇中世界へのあくまでも媒介役としてはウマく機能させることができている……といったところなのだろう。
しかし、そーいった確信犯的な作劇的意図(?)とは別に、こーいう地味子ちゃんな主人公もけっこう魅惑的である。我々のような野郎オタクたちがナゼにこういった番組にイナゴのように群がってきて毒牙にかけないのかが不思議なくらいだ(笑)。
同列には論じられないけど、
●直前の夏季の深夜アニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210411/p1)に登場した、小説家志望の低血圧なボソボソと低音でしゃべる黒髪の地味子ちゃん
●戦車アニメ『ガールズ&パンツァー』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190622/p1)の冷泉マコ(れいぜい・まこ)
●同季の秋アニメ『星合の空(ほしあいのそら)』(19年)の地味子ちゃん
女性としての性的な魅力には欠けるやもしれない。しかし、低身長の黒髪もっさりヘアで、異性に媚びてはいなくて、声も可愛く作っていなくて、ローテンションかつ少々ブッキラボウには見えても、やっぱり弱そうで誠実そうな娘たちの系譜といったものは、ベストではなくてもベターとしてはイイとも思うのだけれどもなぁ(笑)。
もちろん、そんなキャラへのフェティッシュな想いだけでも視聴継続を決意する決定打にはならない。よって、悪印象はないけれども、オサラバしてしまうのであった(汗)。
ググってみると、本作はヒットした「ボーカロイド楽曲」――人工の声による楽曲ソフトを使ったアマチュア楽曲――が原作(14年)なのだそうで、それを基に小説化やマンガ化(共に16年)が進行していった企画だそうである。げに昨今のオタクジャンルの状況や出自は多様なのであった。
『厨病激発ボーイ』
(金曜 22時30分 TOKYO-MX他)
(文・久保達也)
(2019年10月20日脱稿)
第1話は転校してきた女子高生が「ヒーロー部」に所属する「中二病」の男子たちの奇行に振り回される内容である。今後、面白くなっていくのかどうかは現時点ではなんともビミョ~な印象である。その中二病男子たちの生態描写におもわず注目したから、かろうじて観つづけることができたといったところだ。
黒板の前で自己紹介する茶髪ショートボブにヘアバンドをした転校生少女に対して、やたらと騒々しくて落ち着きのない主人公男子は「おまえはピンクだ!」と叫ぶ。当然ながら、転校生のみならずクラスの大半がその意味を理解できずにポカ~ンとしてしまう(笑)。
フィクション作品のお約束で(笑)、例によって隣の席となった転校生の少女に、主人公男子が「オレはレッドだ!」と自己紹介したことで、視聴者は先述した「おまえはピンクだ!」の意味をやっと理解することになる。
つまり、このレッドは「スーパー戦隊」をはじめとする特撮変身ヒーローが大好きな少年であり、すでに「ヒーロー部」にはイエロー・ブラック・パープルまでそろっていたことから、彼は転校生少女をピンクとしてスカウトしたのだ(笑)。
ちなみに、レッドは小学生が体育の時間に頭に着用する、紅白がウラ表リバーシブル仕様の帽子のツバを頭頂部に立ててかぶっている。これは昭和の時代に小学生だった男子ならば特撮変身巨大ヒーロー・ウルトラマンたちやウルトラセブンなどのマネとして同じかぶり方をしたことがあった者は圧倒的な大多数だろう。
ウルトラセブンの必殺技・アイスラッガーをマネして、その帽子を飛ばしていたヤツも定番であった。ウルトラマンはロクに観てはいなくても、いまどきの小学生でもそういったマネは定番であるとも聞く。
そして、そんな描写こそが、レッド少年が重度のヒーロー好きであるどころか、いかにイタいヤツであるかを一目瞭然としてくれる小道具ともなるのだ。
そして、転校生少女は右目に眼帯をしている。古くはSF巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)のヒロイン・綾波レイ(あやなみ・れい)の傷ついた姿、京都アニメ製作の大ヒットラブコメ『中二病でも恋がしたい!』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190904/p1)のヒロイン・小鳥遊六花(たかなし・りっか)などで、後者のような演技やポーズやセルフプロデュース、どころか本人の思い込みでその眼帯で自身の超能力が発露することを抑え込んでいる! といった展開になるのかと思いきや……
レッド少年の方が、彼女の眼帯にはその右目に秘められた特殊能力が覚醒するまで、これを防御している機能があるのだと思いこむ!(笑)
しかし…… 実は「ものもらい」を隠しているだけであった(爆)。
ちなみに、レッドが使っている筆箱には、ボタンを押すと鉛筆やペンなどの収納部分が上部にせり上がってくる機能があった。
これはオジサンである筆者が小学生だった1970年代後半に突如として登場して大ヒットした、可変部分も付いて遊べる玩具性(後年でいうプレイ・バリュー)も濃厚にあった筆箱商品でもあるのだ。
上部にせり上がるどころか、筆箱の裏面にもフタがついていて、そちらにも鉛筆などが収納可能な二面筆箱。側面自体にもフタが付いている三面筆箱。上部側面にもフタが付いている四面筆箱。消しゴム収納部分も開閉フタがついている五面筆箱・六面筆箱などなど、ドンドンとエスカレートしていったものだ。
しかし、子供は実に移り気。小学校中学年以上の児童間でもこういった変型筆箱は急に幼稚だとされる風潮がはじまって、シンプルな布製かつチャックの筆箱や金属製のカンペン筆箱の方がオシャレだとされるようにもなっていく(爆)。
そんなロートル世代から見ると、このような筆箱が現在でもいまだに存在していたことにも驚いた!(笑) しかし、彼のような少年がこういう筆箱を好みそうだという意味では、彼のさらなる念押しのキャラ付けとしても、この小道具でさらに増強させてもいるのだ。
そんなカラ騒ぎぶりでクラスでは浮いた印象のレッド少年とは異なり、金髪イケメンのイエロー相当の男子クンには男子の友人も大勢いるリア充であった――リアル=3次元世界で充実している人間のこと……って説明不要ですよネ――。
しかし、彼もマトモな少年ではなかった。アイドルアニメ『ラブライブ!』(13年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160709/p1)をおもいっきりモチーフにした『アイライブ』(笑)なるスマホゲームに登場する特定の女子キャラに夢中になっているオタク男子なのだ(爆)。「リアル女子には興味ない」とまで公言! 転校生女子には「残念なイケメン」と云われてしまうのであった(笑)。
第1話の後半では、教室の窓からサッカーボールが飛びこんできたり、運動場でバスケットボールのゴールが倒れてくる! 転校生少女がさまざまな危険な目に遭(あ)うミステリー的な展開となっていくのだ。
レッド少年は主人公少女の右目の特殊能力が覚醒する前に、彼女を始末しようとしてくる「悪の組織」の仕業(しわざ)だと推理する!(笑)
しかし、銀ブチ眼鏡の秀才タイプのブラック相当の少年クンが「犯人はおまえだ!」と指さしたのは…… なんと同じ「ヒーロー部」に所属するパープル相当の少年クンであった!
かなりヤンキーっぽい雰囲気で、レッドやイエローの日頃の振る舞いを「バカバカしい」と軽蔑(けいべつ)しているパープルであった。そんな彼が自身の性向とは真逆ともいえる「ヒーロー部」になぜ所属しているのか? なぜ転校生女子を狙うのか? 第1話を観るかぎりではイマイチその立ち位置が不明である。
しかしまぁ、「平成仮面ライダー」作品のようにナゾ解きをタテ軸にして展開する、本格的な群像劇ドラマとなっていくようにはとうてい思えない(笑)。あくまでもギャグでコミカルに押し通していくノリが容易に想定されてくるのだ。
本作のコミカライズ(16年)が集英社の少女漫画雑誌『りぼんスペシャル』に連載されていたことから推測するに――2019年10月に完結したばかりだ――、イケメン王子さまたちのカラ騒ぎを描いた路線のなかでの変化球的な作品でもあるのだろう。
だから、特撮オタクの女子がその趣味の是非や意義、社会の中で正体を隠すことや仲間を探すことの葛藤を描いたような、小学館『ビッグコミックスピリッツ』連載の人気漫画『トクサツガガガ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190530/p1)のような深みと滋味もあるような内容を期待しても、たぶんムダであろう(笑)。
『ド級編隊エグゼロス』
(2020年夏アニメ)
(文・T.SATO)
(2020年8月7日脱稿)
ご町内の平和を守るために、主人公の男子高校生が戦隊ヒーロー・エグゼレッドに変身! 「キセイ蟲(ちゅう)」なる昆虫型怪人と戦う!
といっただけの内容に思えたが、やわらか可憐なボイスの加隈亜衣(かくま・あい)ちゃんが演じる金髪ショートでクラスでも快活なメインヒロインも魅惑的に描かれている。
彼女は「性」には潔癖で忌避(きひ)さえしている。しかし、幼少時の回想シーンでは幼児時代の主人公クンに公園の遊具の中の密閉空間で積極的に迫っていた。
そう、幼少期などは「性」的なものに関心はあっても、その後は罪悪感とともに性欲を抑制してきた娘なのだ。
そして、劇中では「Hエネルギー」(笑)が常人の数十倍だったので、劇中内ヒーローたる資格があったとされるのだ!――ナンでやねん! 性欲が資格かい!?――
それによって、ナシ崩し的に地球防衛隊・サイタマ支部の宿舎――それも木造の宿舎(笑)――に応召されて、エグゼイエローとして任命されるのだ!
その他にも、エグゼピンク・エグゼホワイト・エグゼブルーに変身する女子中高生たちが登場している――女子ばかりといったあたりで、幼い男児たちが視聴すれば忌避してしまうだろうけど、その逆に思春期以降の少年クン向けとはなることで、いわゆるハーレムものの文法にも合致する作品であったこともこれで明々白々となるのだ(笑)――。
そして、極め付け。『ド級編隊』の「編隊」とは、「戦隊」と「変態」を掛けている語句であることが判明していく。要はダジャレとしてのメインタイトルなのだ(汗)。
一般の少年マンガ雑誌で連載されている作品とは異なり、純オタク向けの媒体が出自である作品の場合には、主人公少年クンは能動的ではなく、受動的で繊細ナイーブで内向的かつ巻き込まれ型が多いものだ。
しかし、本作の主人公クンはやや能動的である。性欲・煩悩も全開である(笑)。原作は月刊「ジャンプスクエア」の連載マンガであり、「週刊少年ジャンプ」と比すればややマニアックな媒体ではあるものの、角川書店や一迅社などの媒体に比べればそこまでオタッキーな媒体ではないのだ。両極の中間のやや一般層寄りに位置する媒体といったところだろう。それらの媒体の客層の性格類型の違いによっても、主人公少年の性格設定にも相違が出てしまうのだ……といったところだろう。
特撮ヒーローをパロった深夜のヒロインアニメ『俺、ツインテールになります!』(14年)や『アクションヒロイン チアフルーツ』(17年)なども同様だったけど、最初から「B級路線」をねらった「イロモノ作品」に対して、「もう少しだけ叙述の仕方を工夫すれば、たとえイロモノ・B級作品ではあっても、もうちょっとドラマ的な密度感も出せるんじゃネ?」なぞといったツッコミはヤボなのだろうナ、やっぱり。
個人的には本作の鑑賞を継続していくのがキッツい作りではある――本作をスキな方々にはゴメンなさい――。
でもまぁ、メインヒロインはルックス・作画・ボイス・性格ともに魅力的に描かれている。それだけです。……それだけしかないともいう(笑)。
『ド級編隊エグゼロス』
(土曜24時 TOKYO-MX他 放映終了)
(文・久保達也)
(2020年11月11日脱稿)
「誰かが云った。『HERO(ヒーロー)』は『H(エッチ)』と『ERO(エロ)』でできていると……」
人類から「Hエネルギー」を吸い取って、その活力を奪うことで地球侵略をたくらむ「キセイ蟲(ちゅう)」と戦う高校生男女で結成された、地球防衛隊・サイタマ支部・HERO課に所属する「エグゼロス」が本作の主人公チームとなる戦士集団だ。
きただりょうま氏の原作は集英社『ジャンプスクエア』に連載中である。こう書くと一応、ヒーローもののかたちを借りただけの「ドタバタHコメディ」だと思われるかもしれない。
実際、全編に渡ってエロ描写はかなり多い。たとえばエグゼロスのメンバーは文字盤に大きく「H」(笑)と書かれた腕時計型のアイテムである「XERO(ゼロ)ギア」でその肉体を強化する。しかし、スーパー戦隊ヒーローもどきの戦闘用の「XEROスーツ」が開発されるまでは、増幅されたエネルギーに耐えられずに衣服がビリビリに裂けてしまうことから、「キセイ蟲」とは全裸で戦っていたほどだ(笑)。
それでも、本作にはさほどのエロさは感じられない。「淫靡」ではなく、視聴者を笑わせようとする「さわやかエロ」である。それどころか、きわめてまじめなヒーローものとの印象も強い。これは主人公像によるところが大きいのだろう。
先述したような設定や世界観ならば、本来なら主人公は「H」&「エロ」全開で、いかにも「少年ジャンプ」系の「オレさまが世界でいちばん強い!」的なオラオラキャラになるところだ。
だが、本作の赤っぽい茶髪ギザギザヘアの高校生主人公・炎城烈人(えんじょう・れっと)=エグゼレッドは、その髪型から連想されるイメージに反して、教室での同級生たちのエロ話に加わることもできない。
小学校からの幼なじみで黄色ショートヘアにアホ毛がそびえる美少女高校生・星乃雲母(ほしの・きらら)にひそかに想いを寄せつづける奥手な少年である。エロさのかけらもないのだ。
そして、烈人がエグゼロスに入隊した動機がマジメで彼の人間性を色濃く象徴している。キセイ蟲は5年前から地球で暗躍していた。しかし当時、小学校高学年だった烈人と雲母が公園でふたりでいたところを、蚊型のキセイ蟲怪人が襲ってきて、雲母の「Hエネルギー」を吸い取ろうとした。けれど、
「これだけエネルギーを吸い取っても平然としてるなんて、なんてどエロい人間なんだ!!」
とキセイ蟲怪人はなげいた末に、「Hエネルギー」を吸いきれずに爆死してしまったのだった(大笑)。
このキセイ蟲怪人の発言に大きなショックを受けてしまった雲母(笑)。彼女は以来、「アイアン・メイデン=鋼鉄の処女」と呼ばれるほどに男子をキラって、男子がさわったものには手をふれられないほどの潔癖性(けっぺきしょう)となってしまった。幼なじみの烈人とも疎遠(そえん)となってしまったほどだ。
「誰かが云った。『スキ』の対義語は『キライ』ではなく、無関心だと……」――そのとおり!(汗)――
雲母=初恋の相手をそこまで変えてしまったキセイ蟲に対して、当時はいっしょにいながら何も反撃できなかった烈人は、贖罪の念とともに復讐も果たすため……といった、相応に理はあるものの、いわば「私(わたくし)」としての動機でエグゼロスに入隊したのだった。
だが、あれから5年を経てキセイ蟲の本格的な侵略がはじまった! 人々から次々と「Hエネルギー」が奪われていく光景を見るなかで、「もう誰にもこんな想いはさせない!」と、その戦いは「個人の復讐」から「市民を守る」ために「公(おおやけ)」の動機へと昇華をとげていたのだ!
――いや、吸収しきれないほどの「Hエネルギーを持っていて、そのことを敵の怪人に指摘されて傷つくような一般人もいなさそうだけど(笑)――
烈人の声を演じる松岡禎丞(まつおか・よしつぐ)氏は、
●『冴(さ)えない彼女(ヒロイン)の育て方』(第1期・15年 第2期・17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190901/p1)では、オタク高校生ながら名前をもじって「倫理くん」と呼ばれたほどに曲がったことがキライな安芸倫也(あき・ともや)
●『エロマンガ先生』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20221211/p1)でも高校生主人公で、ライトノベル作家でもあり(爆)、義理の妹でイラストレーターの和泉紗霧(いずみ・さぎり)に恋愛感情を抱く和泉正宗(いずみ・まさむね)
なども演じている。しかし、烈人のキャラは云ってしまえば、その性格や精神性はオタクな倫也と正宗とも同じ系列ではなかろうか? 彼らふたりはオタク系ラブコメ主人公としてはやや能動的だったかもしれないが、「ジャンプ」などのオラオラ系ほどでは決してない。
もちろん、松岡氏の演技によるところも大きいが、倫也や正宗を彷彿(ほうふつ)とさせる烈人の好感度の高さもまた、その作風からエロい印象をウスめて、勧善懲悪ヒーロー性を高めるための効果を存分に発揮しているかと思われるのだ。
第1話の前半で、烈人をはじめとする同級生男子にさんざんに悪態をついた雲母は、夕焼けに染まる帰り道で5年ぶりにふたたびキセイ蟲に襲われたことで、烈人はとっさに雲母の手を握って駆けだしていく!
導入部では5年前の小学生時代の回想として語られたが、その手の握り方は当時はおマセさんであった雲母が「オトナの恋人同士の手の握り方」の練習として烈人に示したものであった。これを契機に5年前から止まっていた雲母の時間がふたたび動きだすかのような展開は実にドラマチックなのだ!
回想の冒頭シーンにあった、公園内にふたりのランドセルが仲良く並んで置かれている描写は、5年前の烈人と雲母の関係性を端的に象徴したものでもあった。
そして、
「この日、オレは生まれて初めてヒーローになりたいと思った……」
という烈人の語りも、雲母が5年前にキセイ蟲に襲われる直前のものであった――遊具にキセイ蟲の黒い影が迫る暗示的な演出も実に効果を発揮している!――。烈人にとっては、雲母が小学生当時からしてすでに「守りたい存在」と化していたことの証(あかし)なのだ。
「今だけ許してあげるから、もうちょっと握ってて……」
終始、烈人に対して拒絶気味の態度であった雲母が「オトナの恋人同士の手の握り方」を覚えていた烈人を5年ぶりに「れっくん」と呼ぶほどに心を開くさまもまた劇的なのだ。
そのためか、烈人の「XEROギア」にある「H」の文字が回転してまばゆい光を放った!!
そして、全身がオーラに包まれたふたりの前に、大量の「Hエネルギー」で巨大化したカマキリ型のキセイ蟲が現れた!
「いっしょにおもいっきりブチかますぞ!!」
協力してキセイ蟲を撃破した烈人と雲母!
しかし、ふたりは公園で全裸姿で取り残されることとなってしまった(笑)。やはりオチはギャグとして落としているのだが、その関係性の変化の末に変身ヒーロー&ヒロイン誕生へと至る過程は実にドラマ性が高かった。そして、青春学園群像劇としても、出色の出来かと思えたほどだ。
原作漫画家は本当はまじめなヒーロー&恋愛を描きたいのに、編集部の意向でエロ強調路線にされてしまったのでは? そんな気もしてくるほどだ。
『アクションヒロイン チアフルーツ』
(2017年夏アニメ)
(文・T.SATO)
(2017年12月13日脱稿)
「ローカルご当地アイドル」が地方で町興し(まちおこし)する深夜アニメというと、『サクラクエスト』(17年)や『普通の女子高生が【ろこどる】やってみた。』(14年)の2作を想起する。
しかし、本作の「ローカルアイドル」は、いわゆる「ご当地ヒーロー」ならぬ「ご当地ヒロイン」! 全国各地で「ローカルヒロイン」が隆盛を極めているというウソっぱちの世界観で、地方の女子高生がオリジナルの「スーパー戦隊」――むろん顔出し(笑)――を結成して、悪の怪人と戦うのではなく、ヒーローショーを披露するといった内容であった(笑)。
ホンモノの「スーパー戦隊」出身であり、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111107/p1)のゴーカイイエローをナマ身で演じてきたM・A・O(まお)ちゃんが、またまたあまたの2017年の深夜アニメ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190924/p1)とも同様に主演声優を務めている!
しかし、主人公なのにクールな性格の女子役なので、筆者には「赤」「青」「黄」などの色を苗字に持った、劇中では第1話よりも以前からヒーローショーのステージに立っていたというキャラたちの方が、アイドル性や華(はな)があって印象に残ってしまう。
この「スーパー戦隊」でもある女のコたちの集団のなかには、「特オタ(特撮オタク)」も「鉄オタ(鉄道オタク)」も同時に並存している天文学的な確率(笑)については、そこは漫画アニメなのだからツッコミを入れるのはヤボであろう。とにかく、この作品世界においてはそうなっているということでイイのだ。
本作の脚本は特撮・アニメ作品も幅広く手掛けている荒川稔久(あらかわ・なるひさ)。なので、特撮パロディも満載だ。同じく荒川が手掛けた特撮パロが満載のヒロイン戦隊もののラノベ原作の深夜アニメ『俺、ツインテールになります!』(14年)同様に、90歳を超えた大御所・渡辺宙明(わたなべ・ちゅうめい)センセイが別のチームの先輩「ご当地ヒロイン」のために楽曲を提供しており、そこにワザワザ1980年代風の特撮変身ヒーローもののオープニングを再現したイメージ映像などもカブせている――字幕テロップも21世紀の今日における微量にオシャレでセンスもある小さな書体とは異なり、当時の小さなTV画面ではともかく今見るとヤボなほどに巨大な書体が再現されてもいるのだ!――。
とはいえ、そういった描写があるからといって、特オタである筆者も本作を認める! なぞといった気にはならない(笑)。
さまざまな性格の女子高生たちが仲間を集めて、自分の得意分野でヒーローショーの興行に協力し、困難を乗り越えて勝利をつかんでいく……といった展開であったあたりで、全国各地でスクールアイドルが勃興中! という、やはりウソっぱちな世界観でも、実に楽しい物語を紡いで内容的にも人気面でも大成功していたアイドルアニメ『ラブライブ!』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150615/p1)なども想起させてはくる。
しかし、あちらが「バカ設定」であるにもかからず「ガチ熱血」「ガチギャグ」「ガチ萌え」で取り組んでいたのに比すると、ユル~く流して作っている印象なのである。
それ自体がまた「ねらい」なのだろうけど、個人的にはそこが物足りないのだ。
では、ドーすればイイのだろうか?
「日常場面」では女のコたちの「萌え」を前面に押し出す。しかし、劇中劇でもある「ヒーローアトラクショー」における「正義の戦隊ヒロインズvs悪の軍団」の方では、シナリオなりアクション演出の温度を、本編とは多少遊離してでも高めてみせたり、さらにはテーマもどきの道徳説教(笑)などを絶叫させれてみれば、もっとメリハリが付いたのではなかろうか!? などとも愚考をしてしまうのだ。
とはいえ、「作画」も「動き」も一級レベルではない並みの予算のアニメなので、そういった増強や演出もまた高望みであったり、「付け焼き刃」で「焼け石に水」といったオチになってしまったかもしれないけど(笑)。
『恋は世界征服のあとで』
(2022年春アニメ)
(文・T.SATO)
(2022年8月7日脱稿)
●5色の戦士である「スーパー戦隊」のリーダーでもあるレッド
●悪の軍団の女幹部
この両者の許されざる恋の物語を描いた作品である! ……といってもギャグ作品ではある。
プライベートでも逢瀬を重ねて、時に戦闘中でも仲間がいない場所では安息の会話を交わして、そこに敵味方が乱入してくるや否や、即座に組み合って戦闘しているフリをする。時にフリではあるけどガチで打撃し合っていたりするので、フリである意味がないのだけど(笑)。
広義では特撮変身ヒーローもののパロディー作品である。今年2022年冬季にも、悪の軍団側にスポットを当てて、憎めない存在どころかホワイト企業(笑)として描いてみせていた『怪人開発部の黒井津さん』や短編アニメ『お昼のショッカーさん』などが放映されている。
もう40年も前の1982年に製作された自主映画の金字塔『愛国戦隊大日本』などにおける、特撮変身ヒーロージャンルの「型」をナゾって笑いに変えるパターンではない。悪の軍団の内情だったり、敵味方間での男女の密通だったりなど、同じパロでもそこは隔世の感があるのだ。
筋トレ(筋肉トレーニング)が趣味である禁欲的なレッド。戦場ではSMの女王さまのような悪の女幹部。
ストーリーが進むにつれて判明していく。この両者は高校生だったのだ(爆)。20代の適度に枯れて達観した男女にもまだ残っていたウブな交流にも見えていたのにィ(汗)。
まぁ、そこは絵柄的にもリアリズムが優先されていないマンガなのでご愛嬌である。
この悪の幹部でもある女子高生は肉体的には頑強。しかし、素はかわいいモノが大好きな乙女であった。ギャップ萌えをねらってきている。加えて、なぜか自身の女子力には劣等感があるあたりもまたポイントを上げている(笑)。
ただ、シリーズの序盤は破裂的に面白かったものの、何らかの工夫やセンスが足りないのか、シリーズ後半では徐々にテンションは低落していくようにも思うのだ。
序盤はイマイチだナと私見したものの、徐々に面白くなっていく『怪人開発部の黒井津さん』とは、その一点では真逆であった――単なる筆者の個人的な主観であれば、ゴメンなさい――。
エッ? 本作も「マガジン」系マンガが原作? なんと角川書店や一迅社などのオタク向け媒体ではなく、「月刊少年マガジン」連載作品なのであった。いったい2010年代以降の「マガジン」は同季に何作品がアニメ化されているのやら(汗)。
ちなみに、本作の悪の軍団は首領(声・杉田智和)以外は女幹部ばかりである。花澤香菜・金元寿子・佐倉綾音・沢城みゆきで中堅どころが勢揃い!
そして、本家『魔進戦隊キラメイジャー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220503/p1)で女幹部・ヨドンナを演じたコスプレイヤー上がりの桃月なしこも女幹部役で声の出演! 終盤の究極怪人の声も、「永遠の17歳」の第2号(笑)こと田村ゆかりであった。
ムダに豪華でギャラは大変そうだが、新人声優には醸すことができない幹部級としての貫禄が、これによって出せていることも事実なのだ(笑)。
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『未来戦隊タイムレンジャー』(00年)賛否合評 ~小林靖子メイン脚本! 時間SF成功作!
『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年) ~後半合評・6人目ガオシルバー!
『忍風戦隊ハリケンジャー』(02年) ~前半賛否合評1・ゴウライジャー!
『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年) ~前半合評・アバレキラー登場!
『特捜戦隊デカレンジャー』(04年)#37「ハードボイルド・ライセンス」
『魔法戦隊マジレンジャー THE MOVIE インフェルシアの花嫁』(05年)
『轟轟戦隊ボウケンジャー』(06年) ~後半合評・6人目ボウケンシルバー&大剣人ズバーン!
『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年)最終回 ~後半肯定評
『炎神戦隊ゴーオンジャー』(08年) ~序盤&前半評
『侍戦隊シンケンジャー』(09年) ~序盤賛否合評
『天装戦隊ゴセイジャーVSシンケンジャー エピックON銀幕』(11年)
『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)1話「宇宙海賊現る」
『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年) ~総括・最後は全宇宙の不運な人々の盾になると誓ってみせた幸運戦隊!
『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(18年)前半合評 ~パトレン1号・圭一郎ブレイク!
『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年)中盤評 ~私的にはスッキリしない理由を腑分けして解析。後半戦に期待!
『魔進戦隊キラメイジャー』(20年)最終回・総括・後半評 ~「仲間」を賞揚しつつも「孤高」「変わらないこと」をも肯定!
『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)論 ~『ゼンカイジャー』を通じて「スーパー戦隊」45年史の変転も透かし見る!
https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230521/p1
『スーパー戦闘 純烈ジャー』評! ユルさ&王道の接合にこそ日本特撮の存続がある!?
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