(2018年9月16日(日)UP)
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『キングコング:髑髏島の巨神(どくろとうのきょしん)』
(17年3月25日(土)・日本封切)
南海の孤島に怪獣多数登場のサバイバル劇の意外な佳作! ゴジラ・ラドン・モスラ・ギドラの壁画も!
(文・T.SATO)
(17年6月17日脱稿)
怪獣映画の元祖ともいえる『キング・コング』(1933年)のやはり何度目かのリメイク作品。オッサンである筆者の世代だと、70年代前半の第2次怪獣ブームと70年代末期の第3次怪獣ブームの間隙(かんげき)を縫った時期に、学年誌なども含めて宣伝された1976年のリメイク版『キングコング』が印象深い。怪獣空白の飢餓期に突如久しぶりに登場した巨大怪獣。観たくて観たくてたまらなかった同世代人も多かったものだ。
さてさて、『髑髏島の巨神(どくろとうのきょしん)』という副題で、少しアナクロ(時代錯誤)で江戸川乱歩チックなキッチュ(通俗)で怪奇趣味で禍々しいフンイキも漂わせた本作。世評はドーだか知らないが、意表外にも面白かった。
しかも、この作品が摩天楼のある大国へと出張らない、南海の孤島に留まったままの、キングコングvsムートー(仮〜カナリ違う・笑)の怪獣対決映画だったとは思いもよらなんだ。
2020年にハリウッド映画版『ゴジラvsキングコング』が控えているのはもちろん知っているけど、本作が2014年のハリウッド映画版『ゴジラ』とストレートにつながっているとか、最後の最後に出てくる怪獣ラドンや怪獣モスラや怪獣キングギドラの壁画とか、そーいうオタクくすぐりの部分だけではなくって、それらヌキでも充分に観られる作品になっていたのが、実に実に意外。
もちろんフワッとした感情論でホメたいのではなく、分析チックなことを云いだせば、観客をアキさせないがための技巧の数々。
怪獣vs怪獣の構図。南海の孤島の探検チームの2チームへの分裂と並行と合流の構図。それぞれの逃避行中におけるvs小怪獣という構図。
合流後のコングについての対処方針の相違から来る対立劇の構図。その対立の原因や動機・行動原理となる、各キャラの依って立つ人生体験や戦争体験。
物語の前半の方はまぁノンビリとしたもので、ごくごくフツーの出来だけど、後半の方は各キャラや各要素も粒立ってきて、それが錯綜することによって、単なる間のヌケた段取り展開・消化試合ではない、観客を退屈させない緊迫感・密度感も出せていて良かったと思う。
舞台は泥沼のベトナム戦争からアメリカが名誉の撤退(笑)を決定して、コレで南ベトナムに対する北ベトナムの勝利がほぼ確定した1973年。スタッフインタビューなどを読むと、この時期がギリギリまだ南海の孤島に怪物が潜んでいるかもしれないというロマンを感じられた時期だから、73年に設定したというカントクのインタビューをドコかで読んだけど(出典失念・汗)。いやいやいや。おそらくはその南海ロマンは1960年代までのモノで、70年代にはそーいう幻想はもうなかったと思うゾ(汗)。
とはいえ、60年代ならぬ厭戦気分も高まった70年代前半を舞台にしたからこそ、ベトナム戦争映画『地獄の黙示録』(79年)ばりのヘリコプター群vsキングコングとのバトルや、戦争のトラウマを抱えたムクつけき男クサい軍人たちの奇矯さや、生存〜脱出よりもキングコング打倒の方をこそ優先する軍人隊長さん約1名のイカレた言動も、あの時代ならばアリそうなものにもギリギリ思えてくるワケで、この時代設定がトータルでは悪かったワケでもないのだが。
すでに人工衛星による地球全域の監視がなされて久しい70年代前半に、地図にも載っていない常に周辺が超巨大な積乱雲に包まれている孤島(笑)なんてあるワケがないのだが、そこを指摘するのはもちろんヤボだろう。
その積乱雲を突破した先は、最初は熱帯のジャングルだけど、内地を縦走していく経路は意外にも(インチキにも?)、高地の盆地なのか熱帯的な暑さは感じられない意外と冷涼な曇天の天候の大地となっていく。しかし、もろもろの小怪獣がホラー映画的に次々と出現する雰囲気作りには、気怠げで脱力してしまうような熱帯よりも、涼しげで怪しげな霧も漂う土地の方が合っている――キャストやスタッフも終始熱帯地方での撮影だと大変だということもあるのだろうが!?――。
キングコングにもゴジラ同様、うるさいマニアさまが付いていて、コングは単なる怪獣ではイケナイ! 絶対の神でなければイケナイ! 人間ごときに理解できる安直な存在になってはイケナイ! いやいやいや、やっぱり主役怪獣なんぞはしょせんは子供たちのヒーローでしょ! なぞという神学論争が彼の地でもあるのやもしれない。
それを受けてか、本作のキングコングは、最初は人智を超えた凶暴な暴れる「悪」として登場し、しかして巨大な爬虫類だか昆虫だかの超古代怪獣の猛威から現地先住民を守る「守護神」のような相貌も現わし、同族の白骨死体も出すことで両親や同類もいたことを明かして「生物性」「ファミリー性」も醸し、どうも両親の復讐を行動原理としているらしいことで「擬人性」も出していく。巨大怪獣とはいっても霊長類のおサルさんだから知性もあるだろうし、一部の登場人物とはなんだか心が一瞬だけ通じ合ったかのような描写も見せる。悪の初代ゴジラ〜正義の昭和ゴジラ〜はたまた悪の平成ゴジラの属性を1作品の中ですべて体現してみせたような多面的な描写だ。
途中でキングコングが大ダコと長尺で戦って、タコの脚をコングが喰らうあたりも大迫力なのだが、作劇的にはあまり意味はナイ。とはいえマニアが見れば、コレは日本版『キングコング対ゴジラ』(62年)へのオマージュなのだとすぐにわかるだろうし、だから筆者も許す!(笑)
日本リスペクトといえば、原住民と共存していた太平洋戦争時の米兵の生き残りの回想シーンにだけ登場する旧日本兵の記憶も見逃せない。往年のアメリカ戦争映画だったら理解不能で狂信的な黄色いサルとして描かれたであろう旧日本兵も、イーストウッド監督の洋画『硫黄島からの手紙』(06年)同様、誇りや人格も持ち、欧米圏とは違えど彼らなりに身を律する美意識も持っていた存在だとして、文化多元主義的に公平に描かれる。
もちろん最後は、キングコングvs新怪獣の一挙手一投足の殺陣の組立て方こそが肝心ですけどネ。TVアニメ版『進撃の巨人』もかくやの、武器も持って戦うキングコングと新怪獣の周囲をカメラが近接して360度グルグルと回り続けるあたりの特撮も、実写映画版『進撃の巨人』(15年)でもぜひとも実現してほしかった映像だなぁ(笑)。
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