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天保異聞 妖奇士


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(文・T.SATO)
(06年12月執筆)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.41(06年12月30日発行))
 前番組のアニメ『BLOOD+(ブラッドプラス)』(05年)につづいて視聴率が悪いのがナントモはやだが。
 コレなら同ワクの土6アニメ『機動戦士ガンダムSEED』(02年)の第3シリーズでも放映した方がよかったんじゃねェの。柳の下にはドジョウが4、5匹はいるんだってば(笑)。
 とコレは商業的な感慨。個人的には、程々に楽しく観ている。


 と云いたいところだが、1クールにも満たない現段階(06年12月)でも路線変更(?)、レギュラー年少キャラの軟派化、SD化や誇張デフォルメ表情、良くも悪くも女子供向けのウェルメイド化の試行錯誤が発生しつつあり……(いや、ターゲットを考えればまったく正しいのだけれども)。


 黒船来航(くろふねらいこう)(1853年)まであと10年に迫った江戸時代は天保14年(1843年)という近世・近代ビミョーな時期。
 カタギじゃないハズレ者集団――無宿者・神主・役者くずれ少女・山(サン)の民・そして中米アステカの末裔少女!――に、近代開闢の旗手たる蘭学者も混ざってるのに、なぜか蘭学取り締まりの幕府お役所の傘下に入ってる妖怪退治チームの物語。



 幕末がすぐそこに迫っているとはいっても、天保時代はそれなりにメジャーで15年もつづいた長い時代。明治期の夏目漱石の小説でも、前代の風潮や風俗を指して「天保調」と称することが多々。
 天保期の有名人は、遠山の金さんこと江戸北町奉行遠山金四郎景元(とおやまきんしろう・かげもと)、義賊(要はどろぼう・笑)・鼠小僧次郎吉(ねずみこぞう・じろきち)、侠客(ヤクザ)・国定忠治(くにさだ・ちゅうじ)あたりが超メジャー。


 天保時代を舞台にした名作TV時代劇も多数あり、上記の3人に加えて、時代劇スターの御大(おんたい)・萬屋錦之介よろずや・きんのすけ)が蘭学医の剣豪・刀舟(とうしゅう)先生を演じる『破れ傘刀舟 悪人狩り』(74年)をはじめ、勝新太郎(かつ・しんたろう)主演の『座頭市』シリーズ(映画62〜73年・TV74・76・78・79年)に、中村敦夫主演の『木枯し紋次郎』シリーズ(72年)。
 必殺シリーズ第8弾『必殺からくり人』(76年)と、実在の蘭学者高野長英(たかの・ちょうえい)が蛮社の獄蘭学弾圧)を逃れて殺し屋チームと同道する第11弾『新・必殺からくり人 東海道五十三次殺し旅』(77年)。明瞭な時代設定はなかったが、第10弾『新・必殺仕置人』(77年)も某エピソードでのテロップから天保期と推測されるのではなかったか?


 妖怪(耀−甲斐)こと江戸北町奉行・鳥居甲斐守耀蔵(とりい・かいのかみ・ようぞう)も実在の人物で、TV時代劇マニアならばご存じ、よく悪役やラスボスとして登場する御仁。
 篠田三郎主演のNHK時代劇『天下堂々』(73年)や勝新太郎主演の『痛快! 河内山宗俊(こうちやまそうしゅん)』(75年)に『必殺からくり人』の3作品では、痩身の名優・岸田森(きしだ・しん)が番組のワクを超えて鳥居耀蔵を演じた(笑)。
 西郷輝彦版の北町奉行・遠山の金さん第1シリーズ『江戸を斬るⅡ』(75年)でも、番組を通してのレギュラー敵は、こちらはデップリ太った金田龍之介演じる南町奉行鳥居耀蔵であったりもした。つまりはそれほどの大物キャラだということだ*1


 てなワケで、蛮社の獄あたりが、番組のクライマックスになるのかと思いきや、天保14年はもうそのあとの時代なんですね。ラストはどうやって盛り上げるのか?


 あと、奇士(あやし)チームが、退治した化け物の肉を手づかみでうまそうに喰らうのは、池波正太郎の『鬼平犯科帳』(67年、TV版は69・75・80・89年)や『仕掛人・藤枝梅安(ふじえだ・ばいあん)』(72年、TV版は72・82・90・06年)の食道楽描写へのオマージュか?(こちらはずいぶん下品だが・笑)



 個人的には#1のツカミはよかった。前番組の『BLOOD+』#1より良くできてると思う。ただ私的にはそーでも、江戸時代というのは、土6アニメ枠の主要対象たる若いアニメファン、特に女性アニメファンにとってはドーなのか? 風俗や身分に職業やそれに基づくお約束セリフがイッパイで、それに慣れてなければもっとも馴染みにくい時代なのではなかろうか?
 いっそ平安時代にまで遡ってウソ八百コケるファンタジーならばまだしも。
 でもアニメという図式化・記号化されやすいフィルターを通してなら、チョンマゲ結ってて武士言葉をしゃべる主要キャラもひとりだけだし、大丈夫かな?


 とはいえ、主人公が39歳プータローダンディって、まぁこの設定にイロイロ込めたいのはよく判るけど(笑)、ホントの意味での江戸時代39歳的リアリティはナイけどナ。
 もちろん筆者はリアル至上主義者ではないし、00年代モラトリアム延長の今日における作劇としての心的リアルさは認める。
 今日びの作劇で20代が主役じゃ、頼りになるリアルさやダンディさがあるとも思えんし、今の世じゃ30代になっても、定職にありつけてても、肉体の衰えが始まっていても(笑)、若いころほどじゃなくとも所在なさや居心地の悪さ、宙ぶらりんの感覚で、成熟とは程遠かったりもするからネ。
 オッサンの特撮オタ的に云わせてもらえば、初代『ウルトラマン』(66年)科特隊のムラマツキャップこと小林昭二が当時35歳、『ウルトラマンエース』(72年)TAC(タック)の竜隊長こと瑳川哲朗は当時34歳。そんで今の筆者の年齢は……(情けな〜涙)。


 そんなこんなで設定的には面白いのだが、そこで繰り広げられるドラマは、このアニメ本来の主要対象を考えれば問題アリ。
 #5〜7で明かされる、プータローダンディ主人公が前科者で、しかも軽犯罪ではなくかつて友を殺してて、加えてその忌まわしい記憶を封印、本人は実在のつもりで心の中で(?)友と会話をしつづけていた……ってナンだョこのイカレた設定は。お前は俺かよ? 脳内彼女の変種かよ?(笑)


 #8〜10の役者くずれ少女に取り憑くお面の妖怪話では、別人・変身願望や虚構の芝居世界を否定する少女のケッペキを、TPOに応じて付ける多数の仮面をオトナとして肯定せよと結論付けるあたり、面白いといえば面白いが(スレた30代オッサンとしては今さらだが)、過去に犯した取り返しのつかない失敗や罪がトゲとして心にひっかかるイタさを、前科者の痛みにブローアップしていたのと同様、胸を打つというにはドコか頭デッカチな作劇でもあり。
 しかしリクツ先行で蒸留されてもまだ残る、剰余物までをも切って捨ててしまうには惜しくもあって……。


 そう、この感覚こそまさに本作の脚本家・會川昇(あいかわ・しょう)に対して筆者がいだく感覚なのだ。會川の筆による『機動戦艦ナデシコ』(96年)なんかもまさにそう(……『ガンダム』の富野監督にも同様な感慨あり)。
 ンでまぁ、そのリクツ先行&剰余物が大スキではないけれど、でも別の次元で私的にはスキでもあって……(笑)。
 もちろん常に會川がリクツ先行気味の作家だということはでなく、『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年)の宿敵アンチヒーローアバレキラー編や『仮面ライダー剣ブレイド)』(04年)後半など、地に足も着けてる作品もあるのだが(古い話になるが、ロボアニメ『勇者警察ジェイデッカー』(94年)の忍者刑事(ロボ)シャドウ丸主役編の専任など、ヒネたキャラやゲスト参加の回には筆の冴えを見せる一方、逆にメインライターを務める『轟轟戦隊ボウケンジャー』(06年)脚本回などになると、なにか頭デッカチ・セリフ先行といった感もある)。


 まぁそうは云っても、いかにハイブロウぶろうと前番組同様、本作も怪獣・怪人ものの一変種に過ぎない。でも、そこは微妙なブレンドの匙加減で、同じ江戸時代を舞台にした妖怪退治でも美少女アニメの『落語天女おゆい』(06年)とは大違いになっている(笑)。


 本作のもう一方の目玉は、錬金術ならぬ漢神(あやがみ)とかいう漢字の成り立ちの呪術力。事物の字の成り立ちを組替えて実体化して武器や霊獣に変化させて戦う。
 本読みオタクの世界ではファンが多い(筆者もそのひとり)、『字統』『字訓』『字通』3部作で有名な、奇しくも今年06年10月に逝去された白川静先生の業績が元ネタだが、戦後昭和期の研究成果をなぜに天保期の人間が!? などとは云ってはイケナイ(笑)。
 怪力乱神を語らずの実利的世界と思われてきた古代中国世界が、実は呪術的世界であったことを解き明かす白川先生の『孔子伝』(72年・asin:4122041600)は、諸星大二郎のマンガ『孔子暗黒伝』(78年・asin:4086170914)や酒見賢一の小説『陋巷に在り』(92年・asin:4101281130)の元ネタにもなっている。


 で、作品の外側のウンチク語りだけで、作品や作品の内実・実相を語った気になれるプチインテリオタクみたいな論法は好みじゃないので(ケーベツするね!・笑)、また元ネタの投入だけで作品が作れるわけでもないので、最後に本作の欠点も指摘しておく。
 本作の問題点として指摘しておきたいのは、妖怪退治の妖士チーム連中6人のヨコ方向や斜め方向や対角線の、濃淡・強弱・相性好悪の弛緩や緊迫含めてのあやとり的人間関係の描写には弱いこと。その他の点はよいだけに、このことだけは残念だ。

(了)



(後日付記:……って、半年2クールの07年3月いっぱいで打ち切りかよ(汗)。なら云うけど、個人的にはけっこう面白かったので非常に残念。
 劇中に登場するある種の人々がその心を惹かれてしまう“異界”は、『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)以降おなじみの、オタク趣味やイマ・ココではない場所を求める心性のメタファー。それを肯定でも否定でもなく是々非々で描いていくワケだが、まあそのへんは是々非々の価値判断の結論になるのが当たり前なので、特にドーでもイイ(笑)。
 やっぱ、會川センセのイイ意味での真骨頂が出ていると思うのは、プータローダンディ無宿人主人公が出奔した武家の生家で、主人公と同じ名前をひきついだ養子と対峙する話。四半世紀ぶりにやはり気にかけてしまい実家を訪ねてしまう主人公。しかしてラスト、母への情と鬱陶しさも混ざったかのような、母に自分を断念させるための眼の前での異形怪物への変身……。
 こーいう言語化しにくい、いわく云いがたいニガくて切ない感情を喚起させてくれるあたりが、筆者が會川をキライになれないところでもある。このニガくて切ない感情は、『ジェイデッカー』での會川脚本の#37『鯨神狩り』ラストなども思い出す……(『鯨神狩り』も一般的には評価が高くないようだけど・汗)


 でもまあ、やっぱこーいうマイナーメジャー枠で、若いアニメファンのマス層をツカもうとするなら、善くも悪くも美少年ぞろぞろか、美少年主人公VS美少年ライバルを目玉に据えた作品にすべきだっただろ。筆者個人の好みや評価は別にして、それこそ土6アニメと同じく毎日放送竹田菁滋プロデューサーによる『コードギアス 反逆のルルーシュ』(06年)の方こそ、このワクでやった方がイイ意味で女子供にもヒットしたんじゃねーの!?
 ただし、マイナーメジャーに流通した場合、アニメの評論オタクやアニメライター連中あたりは、ヘソ曲がりのマイナー志向を無意識に刺激され、『ガンダムSEED』のように低評価の烙印を押された可能性もあるような気もするが(笑・逆に云うなら、あの深夜ワクだから評価が過剰に上がっているのではないか、ということ)。
 ただ、後番組が70年代SF少女マンガのアニメ化作品『地球(テラ)へ…』(77年)って、ドーいうセンスなんだよ。そんなニーズがあるのかよ? 誰が見るんだよ(笑)。世代人のオッサンとしてはダ・カーポによる80年の劇場アニメ版の主題歌歌っちゃうぞ!(♪ カァミング・ホーム、トゥ、テ〜ラア)
 『BLOOD+』や本作以上に苦戦すると思うけど(まあさらなる次番組へのツナギなんだろうけれど)。1年続けてほしかったが、まぁ前作同様、あの視聴率で打ち切りにならないのもナンではあるのだし……)


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轟轟戦隊ボウケンジャー THE MOVIE 最強のプレシャス』 〜賛否合評

 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060814/p1

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*1:鳥居耀蔵が善玉(?)を演じたTV時代劇もある。『必殺』シリーズをはじめ70年代前中盤に大流行したアウトロー時代劇のひとつ、同心(警官)が表で裁けぬ悪を裏で処刑する『影同心』(75年)では、鳥居が影同心たちを黙認、サポートしていた。