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仮面ライダーゴースト第1クール評

『仮面ライダー』シリーズ評 〜全記事見出し一覧

仮面ライダーゴースト 〜第1クール評

(文・久保達也)
(2016年01月執筆)

*決着! ゴースト&スペクター VS ジャベル!


 第11話『荘厳! 神秘の目!』のクライマックス。


・一度死んだものの、仮面ライダーゴーストとしてよみがえった主人公=天空寺(てんくうじ)タケルと、
・10年前の不慮(ふりょ)の事故で、今は眼魂(アイコン)の姿となってしまった妹・カノンをよみがえらせるために、仮面ライダースペクターとしてタケルと対立してきた深海(しんかい)マコト


らと、15個の眼魂の争奪戦を演じてきた敵のにいちゃん・アランの配下、ジャベルが変身した眼魔(ガンマ・怪人)
――映画『仮面ライダー×仮面ライダー ゴースト&ドライブ 超MOVIE大戦(ムービー・たいせん)ジェネシス』(15年・東映)の冒頭に登場した、宝石店を襲撃するコソ泥(どろ)のコミカルな眼魔と同一のスーツを使用している。
 これは「汚点はすべて消し去る」が口癖の、冷徹なジャベルのキャラとはあまりに対照的であり、いくら予算をおさえるためとはいえ(笑)、正直違和感をおぼえてならないものがある――
と、ゴースト&スペクターのダブルライダーが激突!


 大天空寺の住職・御成(おなり)らが次々に投げ渡す眼魂により、タイプチェンジを繰り返しながらジャベルと戦うゴースト!
 ゴースト&スペクター、「ダブルライダーキック!」を繰り出すが、ジャベルが呼び出した、鋼鉄の鎧に包まれた竜のような巨大怪獣がこれを防ぐ!


 いつもながらの採石場(笑)で火薬が爆破される中、バイクを駆るダブルライダーと、CGで宙を舞う巨大な竜の群れとの決闘が描かれる!
 ゴーストのバイクと合体した、イグアナのモンスターの伸びた舌が竜をからめとって振り回すさまを、俯瞰(ふかん)した実景に合成したカットは圧巻!


 さらにスペクターのバイクが、飛翔する竜の背をバイクで駆け抜ける描写はあまりにも華(はな)がある!
 偉人たちの力を集結させた合体キックで、遂に巨大竜にとどめを刺すゴースト!


 やはり『仮面ライダー』最大の魅力は、こうした「正義の暴力」に尽きるかと思えるのである。
 それまで描かれてきたタケルやマコト、そしてアランや、タケルの父・龍とともに、10年前に人間が眼魔世界に行けるかどうかの実験を重ねていた西園寺(さいおんじ)らの思惑が交錯する「人間ドラマ」は、「正義の暴力」を盛り上げるための「背景」として描かれたものである。


*「自身の命」「友人の妹の命」の二択で、後者を選ぶ「自己犠牲」の是々非々!?


 マコト=スペクターの正体は、幼かったころのタケルや、ヒロインの月村アカリがよく遊んでいたものの、10年前から行方不明となっていた「マコトにいちゃん」であったことが判明する。
 先述した龍や西園寺の実験に巻きこまれ、眼魂と化してしまったカノンを元に戻すために、マコトもまた、15個の眼魂を探し求めていることを知ったタケルは、


タケル「オレはカノンちゃんを助けたい!」


と、自分の命を取り戻すよりも、カノンの命を救うことを優先するのである!
 公私葛藤(かっとう)が描かれることが多かった近年の変身ヒーロー作品を思えば、ここまで徹底した自己犠牲の精神に富む主人公の姿は、きわめて珍しいのではあるまいか!


御成「自己犠牲は尊(とうと)い行いかもしれませんが、正しいとは思えません!」


 これは第10話『集結! 15の眼魂!』における御成のセリフだが、「みんなを守りたい」タケルとは対照的に、「カノンだけを守りたい」マコトとのバトルにおいて、タケルはそれを実感させられることとなる!


タケル「選べるわけないだろ。オレの命と、カノンちゃんの命と、どっちが大事だなんて……」


 タケルが持つ眼魂を奪おうとするマコトがスペクターに変身して繰り出したキックを、アカリが、そして、カノンの幻影が阻止する!


タケル「そうか。オレの命って、オレだけのもんじゃないのか」


 これは『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090413/p1)第40話『恐怖の円盤生物シリーズ! MAC(マック)全滅! 円盤は生物だった!』――奇しくもこれの放映日は、タケルが完全に命を失う日とされていた「1月10日」(75年)であった――において、円盤生物シルバーブルーメに襲撃された、防衛組織MACの宇宙ステーションからの脱出を拒否する主人公・おおとりゲン=ウルトラマンレオに対し、ひとりで脱出するよう諭(さと)したモロボシ・ダン隊長=ウルトラセブンが放った、


ダン「おまえの命は、おまえひとりのものではないということを忘れるな!!」


という、あまりにかっちょいいセリフを彷彿(ほうふつ)とさせるものである!
 「人間ドラマ」ではなく、『ゴースト』ではこのように「命の尊さ」が、スペクターや眼魔とのバトルの中で点描されてきたからこそ、それが視聴者により明確に伝えられてきたかと思えるのだ。


 第11話で集結した眼魂に願いをたずねられたタケルは、自分ではなく、カノンを生き返らせてくれるよう願う
――眼魂が象(かたど)った天空に浮かぶ紋章から、白いドレス姿のカノンを抱いたタケルが地上に舞い降りてくるさまを、俯瞰した実景と合成したカットは、メルヘンチック・ロマンチックでなかなかよい!――。


*渋い2号ライダー・仮面ライダースペクター、あっさりイイ人と化す!(笑)


 カノンを生き返らせることがすべてだったマコトは急速に「いいにいちゃん」と化し(笑)、第12話『壮絶! 男の覚悟!』で命の期限が切れ、姿が消滅したタケルに代わり、


マコト「オレがみんなを守る! タケルの想いを未来へとつなぐ!」


と叫ぶまでになり、再びジャベルと対決する!


 マコトに「甘い!」と言われ続けたほどに、ヘタレであったタケルが、マコトにしろ、超常現象を信じなかったアカリにしろ、不器用で控えめでも誠実な主人公の人間性で次第に周囲の人間たちを変えていく展開は、15年秋に大ヒットしたアニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』(15年・KOKOSAKE PROJECT)をはじめ、近年深夜枠で隆盛をきわめる「(ひとり)ボッチアニメ」の影響であろうか?(笑)


 それにしても、マコトのスペクターへの変身ポーズが、「昭和」の元祖『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140801/p1)の「仮面ライダー2号」=一文字隼人(いちもんじ・はやと)の変身ポーズをアレンジしたオーバーアクションであるのは、古い世代的には単純に嬉しいものがある(笑)。


 マコトの危機に、あの世(?)で父・龍の力を得たタケルが生き返り、赤い最強モードの仮面ライダーゴースト・闘魂ブースト魂と化すのは、確かにご都合主義ではある(笑)。


 ただ、自身の命をかえりみずに、カノン、そして人々の命を守ってきたタケルの「自己犠牲」「滅私奉公(めっしぼうこう)」の精神は、御成が語ったようにいかなる場面でも常に完全無謬(むびゅう)の正しいものとは言えないのかもしれないが、基本的にはほとんどの場面で「尊い」行為であることに疑いの余地はなく、やはり報(むく)われるべきではないのかと思えるのだ。
 他人のことなどお構いなしで、自分さえよければいいとする風潮が、ますます強まりを見せるようなご時世を思えば、これくらい「自己犠牲」「滅私奉公」が強調されるのもやむなしと思えるほどである。


 だからせっかくよみがえったと思われたタケルが、仙人によって再び99日という命の期限を定められてしまうという、まさに「ふりだしに戻る」的オチには、正直拍子(ひょうし)抜けさせられたものだが(笑)。


・最大のウリであるかと思われた眼魂の争奪戦が、1クール目であっさりと15個全部揃ってしまったり、
・第2期「平成」ライダーでは2クール目初頭、年明けの放映分からであるのが慣例となっていた、2号ライダーの登場が、早くも第4話『驚愕(きょうがく)! 天空の城!』からであったり


など、かなりの展開の早さには、個人的にはもう少しひっぱれよ、という想いと、「子供番組」的にはこれくらいの方がいいのかな、という想いが複雑に交錯したものだが(笑)、まさかこんな形でリセットされてしまうとは。


 まぁ、


タケル「もう一度あつめよう!」


とは言っても、これまでの流れをそのまま繰り返すワケではなく(笑)、まったく別の偉人たちの眼魂を15個集めていくことになるのであろう。
 小学2年生のときに、ウチにあった『世界人名事典』なる、まさに怪獣図鑑のごとく、世界の偉人たちを紹介したブ厚い百科事典を完全読破したものの、いまは単なる凡人でしかない筆者(大爆)的には、やはり興味をそそられずにはいられないものがある。


*春休み映画『仮面ライダー1号』への所感!


 これだけで終わるのもなんなので、16年3月26日から公開される映画『仮面ライダー1号』の概要(がいよう)がようやく明らかになったこともあり、少々触れておくことにする。


 その内容は、45年前、悪の秘密結社・ショッカーに改造手術を受けて仮面ライダー1号と化し、現在も海外で悪と戦い続ける本郷猛(ほんごう・たけし)が、仮面ライダーゴースト=タケルや「その仲間たち」とともに、悪と戦う姿を描くというものである。
 だが、「その仲間たち」とは御成やアカリたちのことであり、「昭和」「平成」の歴代ライダーたちのことではないようである。
 主演はあくまで、本郷を演じる藤岡弘、(ふじおか・ひろし)の単独であり、映画『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦(たいせん)』(12年・東映)以来、春恒例となっていた仮面ライダースーパー戦隊のオールスター大集合! 的な作品ではないようなのである……


「テレビでは成し得なかった本郷猛の単独主演をまっとうしてほしかったという想いがあり、いままで一度もなかった『仮面ライダー1号』を映画で観たいと思ったんです」


 東映白倉伸一郎(しらくら・しんいちろう)プロデューサーは記者会見でそう語ったが、それはアンタが観たい映画だろ(笑)。
 「こんなの『仮面ライダー』じゃない!」などと、頭の固いマニアから散々たたかれようとも(笑)、『仮面ライダーアギト』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011103/p1)で「イケメンヒーローブーム」を巻き起こし、その後も変身ヒーロー作品の地位向上に大きく貢献してきたハズの氏が、そんな昭和ライダー至上主義、往年の旧1号ライダー至上主義者のようなことを語るとは……(笑)


 「昭和」の元祖『仮面ライダー』を幼稚園児や小学生でリアルタイムで夢中になった世代は、白倉氏同様、既に50代に達している。
 一方、『ゴースト』を現役で視聴しているのは就学前の幼児や小学校低学年、あとは大きなお友達(笑)である。
 仮面ライダー1号と、ゴースト&スペクターしか登場しないのでは、50代と10代未満と、大きなお友達しか観に来ないのではないのか?
 それで本当に大ヒットすると思っているのでしょうか(爆)。


 『ゴースト』を視聴する幼児の親の世代にとっては、「仮面ライダー」といえば、同じ「昭和」でも『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(87年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001015/p2)&『仮面ライダーBLACK RX(ブラック・アールエックス)』(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1)ではないのだろうか。
 そんな親たちを味方につけ、子供を連れてこさせるためには、両作で主人公の南光太郎(みなみ・こうたろう)=仮面ライダーBLACK&RXを演じた倉田てつをを出演させるべきではないのか。


 また、若い世代を誘致しようとするなら、


・『仮面ライダー電王』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)の主人公・野上良太郎(のがみ・りょうたろう)=仮面ライダー電王を演じた佐藤健(さとう・たける)、
・『仮面ライダーフォーゼ』(11年)の主人公・如月弦太朗(きさらぎ・げんたろう)=仮面ライダーフォーゼを演じた福士蒼太(ふくし・そうた)


など、「平成」ライダー主演を機に大ブレイクした若手俳優たちを、拝(おが)み倒して高額なギャラを払ってでも――そのためなら特撮やアクションが少々さびしくなってもかまわない! って、いつもの主張と完全に矛盾(むじゅん)しとるやないか!(大爆)――、出演させることが必須だと思えるのである。


 さらに言えば、ネット配信の『仮面ライダーゴースト 伝説! ライダーの魂!』(16年)でゴーストとスペクターが披露している、歴代レジェンド「平成」ライダーとの合体! くらいは、今回の『仮面ライダー1号』の中でもやるべきかと考える。
 まぁ、これも映画の前宣伝的意味合いが強いものであろうから、歴代ライダー大集合! がなくとも、これくらいはその代わりとして描かれるかと思えるのだが。


 「仮面ライダー生誕45周年」&「スーパー戦隊40作品達成」の「メモリアル」企画の第1弾がこれでは……
 このあたりは、最近ではむしろ「ウルトラマン」の方が、商業規模としてはともかく、テレビや劇場版で先輩ウルトラマンたちを次々と共演させていて、まだうまくやっていると思えてならないものがあるのだが。
 なんか第1作『ゴジラ』(54年・東宝)とはつながってはいても、それ以降のゴジラ映画は「なかったこと」にされ、かと言って新シリーズにゆるやかな連続性もないがために、児童のファンの関心を継続してゲットできなくて、興行的にも低迷した東宝の怪獣映画・ミレニアムゴジラシリーズ(99〜04年・東宝)のころを彷彿とさせるものがある。
 正直その当時の感覚に「逆行」「退行」しているような感のある、東映上層部の意識を改めないことには、せっかくの「メモリアル」企画も「不発」に終わってしまうのではなかろうか。


2016.1.29.
(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2016年冬号』(16年1月31日発行)所収『仮面ライダーゴースト』第1クール評より抜粋)


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