(ファミリー劇場『ウルトラマンA』放映・連動連載!)
ファミリー劇場『ウルトラ情報局』 〜岡村精・監督出演!
『ウルトラマンエース』#29「ウルトラ6番目の弟」 〜ダン少年編の意外に高いドラマ性! 名脚本家・長坂秀佳登板!
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『ウルトラマンエース』31話「セブンからエースの手に」 〜黒い彗星=無=異次元エネルギーの影が動物に憑依! 子役編でも観返すと重たくシュール!
(脚本・山田正弘 監督・岡村精 特殊技術・川北紘一)
(文・久保達也)
(#31〜35評は、昨2005年11月執筆)
幼少のころにバクが悪い夢を食べてくれる動物であることを知り、実際にバクに願いをかけたら悪夢を見なくなったことから、バクの研究マニアとなった貘山(ばくやま)という帽子をかぶって腹も少し出た中年の眼鏡男。彼は動物園のバクと会話ができるようになった。そのバクから、
「ボクがボクでなくなっちゃう」
と助けを求められる。
同じころ、地球に舞い降りてきた謎の「黒い彗星」は、防衛組織・TAC(タック)の兵器開発研究員・梶により、「異次元エネルギーの塊」であることが判明。
「メルヘンかつ不条理な話」という印象が強くて、「科学的な印象」をもたらす記憶は、本話に関してはまったくなかった。しかし、「黒い彗星」は視認できても、計器類では質量もエネルギーもまったく検証されない「無」そのものであり、異次元のエネルギーの「影」のようなものであるらしい! といったSF科学的な説明が、今聞くととても印象的であった!
脚本家には特に深い意図はなかっただろうが、「異次元のエネルギー(の影)」などと聞いてしまうと、第23話や第24話で我らがウルトラマンエースに敗北して異次元や地球各地に爆散していったシリーズ前半の宿敵・異次元人ヤプールが、その肉体をまだ完全には復活できないので、「魂」「怨念」「残留思念」として、この「3次元」世界へと関与してきたのではなかろうか? それとも、このウルトラシリーズ世界における「善悪はヌキ」での大宇宙の単なる自然現象・物理現象に過ぎなかったのであろうか? などといったことも想起をしてしまうのだ。もちろん、そのどちらであっても、魅惑的なSF設定ではあるのだが……。
その「異次元エネルギー」に乗り移られたバクは、バク超獣バクタリとなって暴れ回る!
動物のバクは四足の哺乳類であったが、本話の超獣バクタリはまったくの直立した姿であった。頭頂部には多数の小さな砲口のようなものを付けている。上半身はボリュームがあるも、下半身はスッキリしている独創的なフォルムだ。バクタリを見た動物園の飼育係が、「見ろ! 肩にオレがはった絆創膏(ばんそうこう)が付いてる!」と叫んでいるが、絆創膏も巨大化するのか?(笑)
しかし、貘山の呼びかけで、超獣バクタリは元のバクへと戻ってしまった。
その事実が知られて、TAC基地では隊員たち・最高司令官・警視庁総監などの重鎮が参加する会議が開かれる。
北斗はバクの正気を取り戻させた獏山に管理・飼育を任せることを提案するが、TACの最高司令官はバクの銃殺命令を下す。銃弾を浴びたバクは再び超獣バクタリとなって、貘山の叫びも空しく、狂ったように暴れ続ける……
TACの食堂への輸送車に隠れて基地に侵入したという少女が突然、TACの作戦室に出現し、彼女によってTACにバクの危機が伝えられる。彼女に向ける竜隊長のなんとも優しいまなざしが実に印象的だ。この貘山と仲良しのこの少女の視点で、全編が「不条理感」と「愛らしさ」に同時に貫かれているのが本話だ。
正直、若いころは「あまりに子供向け」な物語と感じて、『A』中最もつまらない作品の中のひとつとしてとらえていた。
だが、脚本の山田正弘は、もともとウルトラシリーズ第1作『ウルトラQ』(66年)においても、第6話『育てよ! カメ』の浦島太郎、第15話『カネゴンの繭』の加根田金男、第18話『虹の卵』の女ガキ大将のピー子など、子供を主役として、子供の目線で描かれた作品を多数執筆してきた。
初代『ウルトラマン』(66年)でも、脚本を担当した第3話『科特隊出撃せよ』の透明怪獣ネロンガ編や、第6話『沿岸警備命令』の海獣ゲスラ編は、レギュラーのホシノ少年が主役級の扱いであった。第9話『電光石火作戦』のウラン怪獣ガボラ編はボーイスカウトのふたりの少年がゲスト主役であった。
それら第1期ウルトラの作品群が「子供だまし」などの扱いを受けるどころか、むしろ「傑作」として評価されることが多いのに対して、第2期ウルトラのこうした趣向の作品のみをあげつらって、「子供に迎合するな!」などと批判するのは、まったく矛盾した話ではある。
よく観ると、本作は『Q』の山田作品の最高傑作と評される第12話『鳥を見た』のリメイク的な趣であった。文鳥に「クロウ」と名付けて話しかける三郎に、バクに「バクちゃん」と名付けて会話する貘山がそれぞれゲスト主役であり、彼らが可愛がっていた動物が危険物扱いされて武装部隊に連れていかれるくだりや、ラストで怪獣が殺されないあたりも、ほぼ同一であるのだ。
脚本家で詩人でもあった山田正弘氏は、2005年8月10日に肺ガンのため、74歳で亡くなられた。ご冥福をお祈りいたします。
バクの銃殺部隊が行進するシーンに、第1話『輝け! ウルトラ五兄弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060514/p1)で、地球防衛軍がミサイル超獣ベロクロンを攻撃するシーンにも使用された、「軍靴の響き」のような『ウルトラセブン』からの流用曲が流れる。
地面よりも低くて深い位置にあるコンクリ壁の狭い露地を歩いていく、バクを閉じ込めた棺(かんおけ)を運ぶ男たちが、ナゼか全身黒タイツ姿であったりもする。
それを曲がり角に隠れながら、赤い風船を手にした少女があとを追っていく。
テレビで生中継されつつ、記者が庶民のオバサンやオジサンにマイクを向けるや、「超獣なんてイヤよねぇ」「玉子のうちに殺しちまえばイイんだ」とある意味、当たり前の反応ともいえるが、少女にとっては無慈悲な声を引き出していく。
漠山と少女が「止めて!」と駆けつけようとする中で、銃声がとどろくや、赤い風船も破裂する!
真船禎(まふね・ただし)監督と並ぶ、映像派の鬼才・岡村精(おかむら・せいorまこと)監督による映像美と、なんともシュールな演出がたまらない!
(後日付記:「赤い風船を手にした少女」は、『ウルトラマンメビウス』(06年)第1話『運命の出逢い』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060625/p1)冒頭の赤い風船を手にした少女の元ネタではないのか!? といった気もしてくる(笑)。友好珍獣ピグモンの赤い風船からの連想ビジュアルかと思っていたのだが、トップ級に濃いマニアであらせられる脚本家・赤星政尚先生のことだから……・笑)
今でいうツインテールの髪型で、左右から髪を垂らした不思議少女を演じたのは、その後も女優として活躍を続けた戸川京子である。残念ながら、02年7月18日に37歳の若さで他界している。ちなみに、彼女の姉は最近は見かけなくなったが、80年代に個性派歌手・女優として活躍した戸川純である。
北斗隊員に会いに来たと云われても、北斗にはまったく面識がなく、どこか冷たく困惑して警戒しているサマが、大人になって視聴するとそれなりにリアルである。岡村演出や山田脚本の狙いとしては、筆者が感じたような感慨とは方向が逆であって、少女の視点から見れば、今回は北斗でさえ、無理解な大人として立ち現れてくる、といったように描写したかったのであろうとも思うのだが。しかし、それとの対比として、竜隊長の実にやさしい眼差しが入ってもいる。
休暇を与えられて、少女を特殊車両・TACパンサーで自宅に送り帰そうとする北斗は、少女のツンデレ気まぐれな言動にふりまわされる。少女は「バクがいる動物園に行くのに、決まってるじゃない!」などと不条理なことをのたまうのだ。さすがの北斗も少年にはともかく、良い子じゃない少女には勝手が違ったか?(笑)。
また、動物園に来ている近所の子供たちや、狭い路地の下町で今では見なくなった「買い物カゴ」を下げている口さがない近所の主婦たちが、貘山を徹底的に「気違い」扱いしている描写は――70年代後半以降は放送禁止用語であるが、DVDでは一切カットされていない!――、貘山とは守備範囲(笑)は異なれども、同じようなマニアでもある筆者にとっては、かつては身につまされる思いであった。
しかし、逆に「世間」(=地域・地縁共同体)が崩壊して、「他人にかかわらない」という無関心の風潮が強まった昨今では、こうした偏見は影を潜めていき、時代の流れを強く感じてしまうのだ。もっとも、逆に今度はそれが原因で、危険信号が見逃されたことによって、大事件が発生することも多かったりする。過ぎたるは、及ばざるがごとしなのだ……
ジャンル作品に限らず、1時間もの実写のテレビドラマ作品も、2話分を一斑体制でまとめて撮影していくのがふつうである。TAC戦闘機のコクピット戦闘シーンもまとめ撮りであろうが、前話と同様にいつもと違って、コクピットの「外」ではなく「中」側の下方から撮影しているあたりが、いちいちアングルを凝ってみせることで、スレたウルトラシリーズマニアの間ではファンが多い、映像派の岡村精監督の特徴でもある。
扇風機で起こしたとおぼしき、強風下の原っぱで、超獣の口から火炎が放射されて爆発が頻発する中、少女と獏山が超獣に向かっていくシーンも、特撮シーンとの連繋ができているらしく、瓦礫が飛んでくるシーンなどの繋がりがとても良い。
ウルトラセブンの登場は、ラストシーンに宇宙空間で『セブン』の主題歌に乗って、バクタリを「エメリウム還元光線」で元のバクに戻すシーンのみであった。今回のようなダークメルヘンな作風では「ツカミに弱い」と判断されて急遽、セブンの登場を追加してウリにしたのだろうか? ちなみにセブンの声は、第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060604/p1)ではウルトラ兄弟の長男・ゾフィーを演じていた、東映ヒーローものでは怪人の声をよく担当していた阪脩(さか・おさむ)であった。
<こだわりコーナー>
*TACのクールな兵器開発研究員・梶さんの最後の出演回でもある。梶研究員はけっこうキャラが立っていて、オイシかったので非常に残念だ。おそらく常識的に考えて、実質2クールの最後である第27話『奇跡! ウルトラの父』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061105/p1)が、契約上の最後のレギュラー出演だったと思われる。本話での出演は、製作上の連絡ミスであろうか? 契約よりも脚本の方が先行していたためであろうか?(それでも、出演してくれて、実に嬉しいのだが・笑)
*視聴率20.0%
『假面特攻隊2007年号』「ウルトラマンA全話評」#31関係記事の縮小コピー収録一覧
・朝日新聞 2005年8月16日(火) 訃報欄・「中学生日記」脚本 山田正弘さん死去 〜10日、肺がんで死去。74歳
岡村精監督・円谷プロ担当作品リスト
『ウルトラマンエース』(72年)
第30話「きみにも見えるウルトラの星」(脚本・田口成光)
https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061125/p1
第31話「セブンからエースの手に」(脚本・山田正弘)
(当該記事)
『ジャンボーグA(エース)』(73年)
第5話「叫べナオキ! いまだ」(脚本・安藤豊弘)
第33話「サンタが悪魔の鈴鳴らす」(脚本・安藤豊弘)
第34話「死神からの殺人予告電話!」(脚本・山浦弘靖)
第45話「ほえる昆虫怪獣・砂地獄」(脚本・安藤豊弘&奥津啓二朗)
第46話「サタンゴーネ最後の大進撃!」(脚本・若槻文三)
*第33話では怪獣ソフビの顔の部分に子供の生首を合成してみたり、第34話では蝶の大群に桂木美加と、すげえコワイ演出です。
『ウルトラマンタロウ』(73年)
第8話「人食い沼の人魂」(脚本・田口成光)
第9話「東京の崩れる日」(脚本・石堂淑朗(深田太郎))
『ウルトラマンレオ』(74年)
第36話「飛べ! レオ兄弟 宇宙基地を救え!」(脚本・田口成光)
『A』#24評にて少し言及。https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061015/p1
第37話「怪奇! 悪魔のすむ鏡」(脚本・田口成光)
『A』#22評にて少し言及。https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061010/p1
『怪奇! 巨大蜘蛛の館』(78年・土曜ワイド劇場)(脚本・田口成光)
*『ジャンA』における怪奇編演出を高く評価した淡豊昭(だん・とよあき)プロデューサーが岡村監督を本作に推挙したのだと推測されます。
[関連記事] 〜岡村精・監督出演!
ファミリー劇場『ウルトラ情報局』ウルトラマンタロウ編 〜1
https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071125/p1

『A』31話「セブンからエースの手に」53周年評 〜黒い彗星=無=異次元エネルギーの影が動物に憑依!子役編でも観返すと重たくシュール
#ウルトラマンA #ウルトラマンA53周年 #ウルトラマンエース #ウルトラマンエース53周年 #バクタリ #ウルトラセブン #山田正弘 #岡村精
「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧
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