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ウルトラマンエース31話「セブンからエースの手に」 〜岡村精・監督作品!

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)


ファミリー劇場『ウルトラ情報局』 〜岡村精・監督出演!
「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・山田正弘 監督・岡村精 特殊技術・川北紘一
(文・久保達也)
(#31〜35評は、昨05年11月執筆)
 幼少のころにバクが悪い夢を食べてくれる動物であることを知り、実際にバクに願いをかけたら悪夢を見なくなったことから、以来バクの研究マニアとなった貘山(ばくやま)という帽子をかぶって腹も少し出た中年の眼鏡男。
 彼は動物園のバクと会話ができるようになったが、そのバクから


 「ぼくがぼくでなくなっちゃう」


 と助けを求められる。


 同じころ、地球に舞い降りてきた謎の黒い彗星は、防衛組織・TAC(タック)の兵器開発研究員・梶により異次元エネルギーの塊であることが判明。
 それに乗り移られたバクはバク超獣バクタリとなって暴れ回るが、貘山の呼びかけに元のバクに戻った。
 その事実が知られて、TAC基地では隊員たち・最高司令官・警視庁総監などの重鎮が参加する会議が開かれる。北斗はバクの正気を取り戻させた獏山に管理・飼育を任せることを提案するが、TACの最高司令官はバクの銃殺命令を下す。
 銃弾を浴びたバクは再びバクタリとなり、貘山の叫びも空しく、狂ったように暴れ続ける……



 実はTACの食堂への輸送車に隠れて基地に侵入したという少女が突然作戦室に出現し、彼女によってTACにバクの危機が伝えられるなど(彼女に向ける竜隊長のなんとも優しいまなざしが実に印象的だ)、貘山と仲良しのこの少女の視点で全編が不条理感と愛らしさに同時に貫かれている。


 正直若いころは「あまりに子供向け」な物語と感じ、『A』中最もつまらない作品の中のひとつとしてとらえていた。


 だが脚本の山田正弘*1は元々ウルトラシリーズ第1作『ウルトラQ』(66年)においても第6話『育てよ! カメ』の浦島太郎、第15話『カネゴンの繭』の加根田金男、第18話『虹の卵』の女ガキ大将のピー子など子供を主役とし、子供の目線で描かれた作品を多数執筆している。
 『ウルトラマン』(66年)でも脚本を担当した第3話『科特隊出撃せよ』・透明怪獣ネロンガ編や第6話『沿岸警備命令』・海獣ゲスラ編はホシノ少年が主役級の扱いだし、第9話『電光石火作戦』・ウラン怪獣ガボラ編はボーイスカウトの二人の少年がゲスト主役である。
 それら第1期ウルトラの作品群が「子供だまし」などの扱いを受けるどころかむしろ「傑作」として評価されることが多いのに対し、第2期ウルトラのこうした趣向の作品のみをあげつらって「子供に迎合するな!」などと批判するのはまったく矛盾した話である。


 よく観ると本作は『Q』の山田作品の最高傑作と評される第12話『鳥を見た』のリメイク的趣である。
 文鳥に「クロウ」と名付けて話しかける三郎に、バクに「バクちゃん」と名付けて会話する貘山がそれぞれゲスト主役であり、彼らが可愛がっていた動物が危険物扱いされて武装部隊に連れていかれるくだりや、ラストで怪獣が殺されないのもほぼ同一である。
 もう少し正当な評価をされても良いように思われる。


 バクの銃殺部隊が行進するシーンに第1話『輝け! ウルトラ五兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060514/p1)で地球防衛軍がミサイル超獣ベロクロンを攻撃するシーンにも使用された軍靴の響きのような『ウルトラセブン』からの流用曲が流れ、地面よりも低くて深いコンクリ壁の狭い露地を歩いていくバクを閉じ込めた棺(かんおけ)を運ぶ男たちがナゼか全身黒タイツ姿であったり、それを曲がり角に隠れながら赤い風船を手にした少女*2があとを追い、TVで生中継されつつ記者が庶民のオバサンやオジサンにマイクを向けるや「超獣なんてイヤよねぇ」「玉子のうちに殺しちまえばイイんだ」とある意味当たり前の反応ともいえるが少女の眼の前で無慈悲な声を引き出して、漠山と少女が「止めて!」と駆けつけようとする中、銃声がとどろくや赤い風船が破裂するといった、真船禎(まふね・ていorただし)監督と並ぶ映像派の鬼才・岡村精(おかむら・せいorまこと)監督による映像美となんともシュールな演出がたまらない。


 また動物園に来ている近所の子供たちや、狭い路地の下町で今では見なくなった買い物カゴを下げている口さがない近所の主婦たちが、貘山を徹底的に「きちがい」(放送禁止用語であるが、DVDでは一切カットされていない)扱いしている描写は、同じようなマニアである筆者にとってはかつては身につまされる思いであったが、逆に「世間」(=地域・地縁共同体)が崩壊し「他人にかかわらない」という無関心の風潮が強まった昨今ではこうした偏見は影を潜め、時代の流れを強く感じる。
 もっとも逆に今度はそれが原因で危険信号が見逃されたことにより、大事件が発生することも多かったりするのだが……



<こだわりコーナー>
*動物のバクは四足の哺乳類であるが、本作の超獣バクタリはまったくの直立した姿。頭頂部に多数の小さな砲口のようなものを付けて、上半身はボリュームがあるも、下半身はスッキリした独創的なフォルムだ。
*バクタリを見た動物園の飼育係が「見ろ! 肩にオレがはった絆創膏(ばんそうこう)が付いてる!」と叫ぶが、絆創膏も巨大化するのか?(笑)


*ジャンル作品に限らず、1時間もの実写のTVドラマ作品も、2話分を一斑体制でまとめて撮影していくのが普通だが、TAC戦闘機のコクピット戦闘シーンもまとめ撮りらしく、前回同様いつもと違いコクピットの外ではなく中側の下方から撮影しているあたりが、いちいちアングルを凝ってみせてファンの多い岡村精監督の特徴だ。
 扇風機で起こしたとおぼしき強風下の原っぱで、超獣の口から火炎が放射されて爆発が頻発する中、少女と獏山が超獣に向かっていくシーンも、特撮シーンとの連繋ができているらしく、瓦礫が飛んでくるシーンなどの繋がりがとても良い。


*クールな兵器開発研究員・梶の最後の出演回。
 梶研究員はけっこうキャラが立っていてオイシかったので非常に残念だ。
 おそらく常識的に考えて実質2クールの最後である第27話『奇跡! ウルトラの父』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061105/p1)が契約上の最後のレギュラー出演だったと思われるので、本話での出演は製作上の連絡ミスか?(出演してくれて嬉しいが)


 メルヘン不条理な話という印象が強くて、科学的な印象をもたらす記憶は、本話に関してはまったくなかったのだが、黒い彗星は視認できても、計器類では質量もエネルギーもまったく検証されない「無」であり、異次元のエネルギーの「影」のようなものらしいというSF科学的な説明も、今聞くととても印象的だ。


*今でいうツインテールの髪型で左右から髪を垂らした不思議少女を演じたのは、その後も女優として活躍を続けた戸川京子。残念ながら02年7月18日に37歳の若さで他界している。
 ちなみに彼女の姉は最近は見かけなくなったが80年代に個性派歌手・女優として活躍した戸川純である。


 北斗隊員に会いに来たと云われても、北斗にはまったく面識がなく、どこか冷たく困惑して警戒しているサマが、大人になって視聴するとそれなりにリアルである。
 岡村演出や山田脚本の狙いとしては方向が逆で、少女の視点から見れば今回は北斗でさえ、無理解な大人として立ち現れてくるというように描写したかったのであろうとも思うが。
 対比として、竜隊長のやさしい眼差しが入る。
 しかし、休暇を与えられて少女を特殊車両・TACパンサーで自宅に送り帰そうとする北斗は、少女のツンデレ気まぐれな言動にふりまわされる。少女はバクがいる動物園に行くのに決まってるじゃない! と不条理なことをのたまうのだ。さすがの北斗も少年にはともかく、良い子じゃない少女には勝手が違ったか?(笑)。


ウルトラセブンの登場はラストに宇宙空間で『セブン』主題歌に乗って、バクタリをエメリウム還元光線で元のバクに戻すシーンのみである。今回のような作風では弱いと判断されて急遽セブンの登場を追加してウリにしたのだろうか? 定かではない。
 ちなみにセブンの声は第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060604/p1)ではウルトラ兄弟の長男・ゾフィーを演じていた阪脩(さか・おさむ)である。


岡村精監督・円谷プロ担当作品リスト

ウルトラマンエース』(72年)

 第30話「きみにも見えるウルトラの星」(脚本・田口成光)
  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061125/p1
 第31話「セブンからエースの手に」(脚本・山田正弘)
  (当該記事)

『ジャンボーグA(エース)』(73年)

 第5話「叫べナオキ! いまだ」(脚本・安藤豊弘)
 第33話「サンタが悪魔の鈴鳴らす」(脚本・安藤豊弘)
 第34話「死神からの殺人予告電話!」(脚本・山浦弘靖
 第45話「ほえる昆虫怪獣・砂地獄」(脚本・安藤豊弘&奥津啓二朗)
 第46話「サタンゴーネ最後の大進撃!」(脚本・若槻文三
 *第33話では怪獣ソフビの顔の部分に子供の生首を合成してみたり、第34話では蝶の大群に桂木美加と、すげえコワイ演出です。

ウルトラマンタロウ』(73年)

 第8話「人食い沼の人魂」(脚本・田口成光)
 第9話「東京の崩れる日」(脚本・石堂淑朗深田太郎))

ウルトラマンレオ』(74年)

 第36話「飛べ! レオ兄弟 宇宙基地を救え!」(脚本・田口成光)
  『A』#24評にて少し言及。http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1
 第37話「怪奇! 悪魔のすむ鏡」(脚本・田口成光)
  『A』#22評にて少し言及。http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061010/p1

『怪奇! 巨大蜘蛛の館』(78年・土曜ワイド劇場)(脚本・田口成光)

 *『ジャンA』における怪奇編演出を高く評価した淡豊昭(だん・とよあき)プロデューサーが岡村監督を本作に推挙したのだと推測されます。


*視聴率20.0%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)


『假面特攻隊2007年号』「ウルトラマンA全話評」#31関係記事の縮小コピー収録一覧
朝日新聞 2005年8月16日(火) 訃報欄・「中学生日記」脚本 山田正弘さん死去 〜10日、肺がんで死去。74歳


[関連記事] 〜岡村精・監督出演!

*1:脚本家で詩人でもあった山田正弘氏は05年8月10日に肺ガンのため、74歳で亡くなられました。ご冥福をお祈り致します。

*2:後日付記:赤い風船を手にした少女。『ウルトラマンメビウス』(06年)第1話『運命の出逢い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)冒頭の赤い風船を手にした少女は本話が元ネタかそれとも偶然の一致か? 友好珍獣ピグモンの赤い風船からの連想ビジュアルかと思っていたのだが、トップ級に濃いマニアであらせられる脚本家・赤星政尚先生のことだから……