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ウルトラマンエース45話「大ピンチ! エースを救え!」 〜隠れた名作バトル編!

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)


「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・石堂淑朗 監督・筧正典 特殊技術・佐川和夫)
(文・久保達也)
 防衛組織・TAC(タック)の観測衛星ジュピター2号が突如消息を絶った。
 地球への落下が心配される中、手製の天体望遠鏡で毎晩星を観測し、「星バカ」と級友からからかわれている少年・ユタカが、ガスタンク群の中にジュピター2号が落下するのを目撃する。
 ジュピター2号はガスタンクと同じような形状に変化を遂げ、夜の闇の中で赤く妖しげに明滅した。守衛の父親とともに警察に通報するユタカだが、周囲のガスタンクとまったく区別がつかないために信用してもらえない。
 TACによってジュピター2号は宇宙空間でガス超獣ガスゲゴンに取り憑かれたことが判明。TACはガスゲゴンがエネルギー源とするガスをタンクから抜き取り、超獣の脅威から街を守ろうとするが……


 人工衛星を隠れ蓑として宇宙から襲来する怪獣としては既に『帰ってきたウルトラマン』(71年)第29話『次郎くん怪獣にのる』に登場したやどかり怪獣ヤドカリンがMAT(マット)の無人観測ステーション№5(ナンバーファイブ)に住みついて地球に来た前例があったが、その後実際に制御不能となった人工衛星が地球に落下する事件が何件も起きており、現実感をともなった恐怖が先見の明をもってして描かれていると云え、これまた行き過ぎた科学の発展に対して警鐘を鳴らしているとも見てとれよう。


 TACが行方不明のジュピター2号をいつどこに落ちるかわからないと焦燥感をつのらせながら捜索したり、ガスタンク群の中で超獣の卵を攻撃するのが危険と判断、タンクからガスを静かに抜いていき、それを不安そうに見守る守衛の親子……
 と、いつ超獣が出現し、タンク群が炎に包まれるかもしれないとの迫り来る恐怖がAパートでは静かに、そしてサスペンスたっぷりに描かれているのが絶品である。


 その中でTACの隊員たちが適材適所に実にうまく配置されている。
 「地球に落下する前に燃え尽きてしまったのかもしれない」と判断する美川に対し、「いや、燃え尽きてしまうにはエネルギーが大きすぎる」と主張する山中。超獣の卵に接近しようとする北斗を制止し、ガイガーカウンターを向けて静かに近づいていく吉村、ガス抜きの作業をかって出る今野と、各キャラの個性・持味がいかんなく発揮されているのが実によい。


 そしてBパートに突入するや、その不気味な静寂は突如として打ち破られる。タンクから抜かれたはずのガスを超獣の卵が吸収し、ガスゲゴンとして巨大化したのだ!
 ガスゲゴンは右の頬(ほほ)に濃縮ガスを、左の頬に液体ガスを貯蔵し(あくまで設定であり、劇中では説明されていないので念のため)、口の中でそれらを混ぜ合わせ、猛烈な火炎を吐きながら暴れ回るが、ガスで充満したガスゲゴンをうかつに攻撃できるはずもない。TACをあざ笑うかのように果てしなく繰り広げられる破壊絵巻が迫力満点である。


 ガスタンク群は徹底的に破壊され、守衛の親子も我が家を焼かれてまった。工場主も、大切な望遠鏡を失ったユタカも、


 「何をやってるんだ! TACが来たせいだ!」


 とTACを非難する。
 第43話『怪談 雪男の叫び!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070224/p1)同様、石堂先生が好んで描く、愛すべきと同時に理不尽でもある大衆の身勝手さだ(笑)。


 だがTACだってこの事態をだまって手をこまねいて見ているわけではない。珍しく本部にひとり残された山中が戦闘機タックスペースで駆けつけ、ガス爆発の危険ゆえに火力を使えない敵に対して冷凍弾を頭上からガスゲゴンに浴びせる。しかしあまりに熱を帯びたガスゲゴンはしばらくすると解凍し、タックスペースは撃墜されてしまう。
 一方、一旦退却した竜隊長と山中以外の隊員たちはガス中和剤を詰め込んで戦闘機タックファルコンで出撃! エースも登場するが、ガス噴射と火炎のダブル攻撃にムチ状にしなる両腕に苦しめられ、さしものエースも大ピンチ!


 そこへタックスペースを撃墜され、TACガンを二丁拳銃にした山中が駆けつけ、ガスゲゴンの気をそらした(エースとガスゲゴンの手前を合成された山中が横切り、TACガンからガスゲゴンに向かって光線まで合成されているのが芸コマ!)。それを見た竜隊長もファルコンでガスゲゴンの注意を引きつける。


 そしてユタカの言葉


 「地上で攻撃できないんなら、超獣を空高く運んで爆発させればいいじゃないか」


 を実践せんとエースはガスゲゴンを抱えて宇宙へと飛ぶ!
 それを追って宇宙に飛び出すタックファルコン! エースはガスゲゴンを離し、それに向かってファルコンはレーザーを放った! 宇宙空間で爆発四散するガスゲゴン!
 またしてもエースとTACの華麗なる連係プレーの炸裂だ! そして今回はTACが超獣にとどめを刺したパターン破りだ!


 まさに『大ピンチ! エースを救え!』のサブタイトルに恥じない、スリル満点の第4クールにおける屈指の娯楽作品である。
 前兆→事件発生→怪獣出現→防衛チームの攻撃→ウルトラマン登場→大バトル! の図式にのっとった正統派であるわけだが、あの『ウルトラマン』(66年)も確かそうだったはず。「原点回帰」を掲げるのであればこれを目指すべきでしょう。



<こだわりコーナー>
人工衛星がガスタンクそっくりに化けたという設定はやはりムリがある。超獣の超能力でガスタンクに乗り移ったくらいにしとけばよかったのに(笑)。


*守衛を務める父とふたり暮らしのユタカの茶目っ気ぶりと狭い住処ながらも楽しい生活臭が、戦闘色豊かな本話の中での彩りになっている。第12話『サボテン地獄の赤い花』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060801/p1)(脚本・上原正三)のサボテン売りの東京下町の父子ふたり暮らしと双璧の『A』ベスト親子だ。
*ユタカを演じたのは『トリプルファイター』(72年)で大野あつし役でレギュラー出演していた石井秀人だが、同作品で万能ロボット・ブルコンの声を演じていた石山克己も、今回工場主の役として素顔で出演している。


*第39話『セブンの命! エースの命!』で火炎超獣ファイヤーモンスを倒したTACの新兵器・シルバーシャークが、なんと本話でも投入されたが使用されずに終わった。第39話同様、ジープに2連装の砲口を持つビーム兵器・シルバーシャークが搭載されいてる。
 石堂はよく他人の脚本や設定を読まないと豪語して、それを真(ま)に受けているマニアも多いが、本心というより偽悪・韜晦(とうかい)としての物言いの側面も強いだろう〜その3。その2は、第38話『復活! ウルトラの父』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070121/p1)評。その4は、第47話『山椒魚(さんしょううお)の呪い!』評にて(笑)。


*同じく第38話『復活! ウルトラの父』では冒頭、孤児院の明るく元気で乱暴な男の子たちが雪だるまを棒で叩きまくっていたり、木の上からホースで水を浴びせるイタズラをしていたが、本話でもユタカの友人たちが「星バカ!」「星バカ〜!」と散々にからかって去っていく。ひとりだけ彼らが去ったあとになって(汗)「イヤな奴らだよな」とかばってはくれるが……(遅いよ・笑)。
 他愛ないものだが、子供たちの残酷な真実を一方では表していて、このへんウルトラシリーズの石堂脚本回ではよく見られる子供描写だ。


*後年の『ウルトラマンティガ』(96年)第4話『サ・ヨ・ナ・ラ地球』(脚本・宮沢秀則 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)に、人工衛星ジュピター2号ならぬ有人宇宙探査船ジュピター3号が登場するが、本話へのオマージュ……ということは絶対にないのだろうな、多分。


*本話に限りラストに、ブルーバックに白い細いゴジック体の文字で「このドラマはフィクションであり 登場する人物・団体等の 名称はすべて架空のものです」とのテロップの画面が出る。間違って尺でも切り過ぎてしまい、その帳尻合わせで追加したものであろうか?


*視聴率19.2%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)



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