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ウルトラマンエース51話「命を吸う音」 〜石堂最終脚本

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)


「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・石堂淑朗 監督・筧正典 特殊技術・高野宏一)


(文・久保達也)
 少年野球のチームに所属する、ピッチャーで四番打者の春男は試合中にランニングホームランを放つが、ホームベースに向かう直前、鬼の形相で自分をにらむ母親の姿に足がすくみ、タッチアウトをくらってしまう。


 残念がるナインの前で、試合中であるにもかかわらず、母親に連れていかれようとする春男。
 チームの仲間には


 「将来は野球選手になりたい」


 と語っていた春男だったが、母親は


 「この子はバイオリニストになるんです! 野球ばかりやって、指がダメになったらどうするんですか!」


 と強引に春男を連れ去ってしまう。
 亡き父親が有名なバイオリニストであった(遺影の写真が春男に向かってウインクをかます演出が絶品!)ことから、母親は春男にはバイオリニストの素質があると固く信じ、春男を無理矢理にバイオリン教室に通わせていたのである。


 教室で講師にも


 「春男ちゃんは素質があるんだから、お稽古をもっとやったらうまくひけるようになれるよ」


 と云われる春男だが、バイオリンそのものに嫌悪感を示す春男は教室を途中で抜け出し、自宅に戻るとこっそりバイオリンを置き、グローブとバットを持ち出して試合に戻ろうとする。
 だが講師からの電話を受けた母親に見つかってしまい、


 「もう一度行きなさい!」


 と叱られてしまう。


 バイオリンを持って家を出たものの教室に行きたくはなく、途方に暮れてとぼとぼと歩く春男。


 「バイオリンをなくしたと云えば、ひかなくてすむようになるかな」


 とわざとバイオリンを道ばたに置き忘れても、親切な(大きなお世話な・笑)通行人に拾われて手渡され、


 「壊してしまえばひかなくてすむんだ!」


 と道に叩き落とすなど、実に子供らしい短絡的(笑)な考えで春男が事態を解決しようとする(「学校が火事になったら勉強しなくてすむ」と放火した少年もいたしね)に至るまでの悩みの過程が実に丁寧に描写されており、春男のいわゆる「心の闇」をまざまざと見せつけ、事件の前兆として大いに機能しているのだ。


 春男がバイオリンを叩き落とした途端、空から何かがバイオリンに乗り移った。するとバイオリンは春男の手元に浮かび上がり、春男が弦をひくと実に美しい音色を響かせた。
 同じバイオリン教室に通う女子児童ふたりが春男に


 「なにもこんなところで練習しなくても」


 と声をかけると、春男は


 「ぼく、このバイオリンで天才になった」


 と云った途端、意識を失ってしまう。


 女の子のひとりがバイオリンを手にとるとやはり見事な演奏になるが、もうひとりの女の子(なかなかの美少女!)は


 「わたしたち、こんなにうまくひけるはずがないわ!」


 と軽率な春男とは異なり(笑)不審に思う。そしてバイオリンをひいた女の子も春男同様意識を失ってしまった。


 怪しい音波をキャッチしてパトロールをしていた北斗と美川は春男たちを発見して介抱するが、バイオリンは空高く舞い上がり、彼方へ飛んでいってしまった。
 春男たちをメディカルセンターに連れていくよう美川に指示する北斗だが、女の子に呼ばれて駆けつけた春男の母は春男よりも「とっても高かった」バイオリンのことを心配し、超獣が乗り移っている可能性からバイオリンを追跡して攻撃しようと北斗が主張すると、


 「バイオリンに傷をつけられたら困りますからね!」


 と追跡に同行してしまうのである(笑)。


 美しい音色を奏でながら空を飛行していたバイオリンは池のほとりに降り立つころにはコントラバス状に大きくなっていた。
 北斗が攻撃しようとすると、なんと春男の母がホルスターからTACガンを奪い取ってしまった! 北斗に銃口を向け、


 「あのバイオリンがあったら、春男はうまくひけるようになるんだわ!」


 と絶対にバイオリンを攻撃させまいとする春男の母。そうこうするうちにバイオリンは巨大化して音色を聴いた人々の魂を吸い取り、やがてバイオリン超獣ギーゴンとなって暴れ始めた!
 魂を吸い取られ、ギーゴンに踏み潰されそうになってもうっとりとしている母親を突き飛ばし、北斗はエースに変身する!


 ギーゴンは美しい音色とは一変し、不快音と頭の四本の触角から緑色の金縛り光線を出してエースを苦しめるが、第8話『太陽の命 エースの命』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060624/p1)同様、頭頂部のエネルギーホール(穴)に太陽の光を集中させることで形勢逆転!
 『ウルトラセブン』(67年)第40話『セブン暗殺計画(後編)』でも、分身宇宙人ガッツ星人の十字架の呪縛から逃れたウルトラセブンが、胸のプロテクターに太陽光を集中させてエネルギーの回復をはかる場面があったが、M78星雲人が太陽エネルギーが活力源であることを再認識させてくれる嬉しい描写である。
 ギーゴンとエースの決戦場となる池をたたえた公園のミニチュアセットが茶屋や舟着き場、遊具に至る細部まで精密に再現されていることもバトルに彩りを添えてくれている。


 エースがギーゴンの身体前面に張られた弦を引きちぎると春男の母が胸を押さえて苦しみ出した!
 エースがメタリウム光線でギーゴンにとどめを刺したあと、吸い取られていた人々の魂が美しい音色を奏でながら七色の音符記号となって持ち主へと帰っていく光学合成はファンタジー色あふれる名場面である。この回ばかりはいつものように超獣を派手に爆発四散させるわけにはいかないだろう。


 事件解決後、「春男くんの、バイオリンなんかイヤだという強い気持ちが超獣を呼び寄せたんですね」と語る北斗に、「そしてお母さんの、なんとしてでもバイオリニストに育てたいという強い執念が超獣にエネルギーを与えたんだ」と語る竜隊長。
 元気に野球を楽しむ春男の姿を見て、母親は「こんなに活き活きとした春男は初めて見ました」(!)とつぶやく。そんな母親に語る竜隊長。


 「子供は元気に伸び伸びと育てるのが一番です。そうすれば学問だって、芸術だって、自然に自分から熱心に取り組むようになりますよ」


 大きくうなずく母親。


 「私もようやく夢から覚めたような気がします……」



 以来三十数年、未だ夢から覚めない母親(や父親)がこの国には大勢いるようだ。親のエゴで入学前から塾や稽古ごとにいくつも通わされ、魂を失ってしまう子供の数は『A』放映当時よりもずっと多くなっていることだろう。
 ギーゴン事件はまったく教訓として活かされず、この傾向は年々エスカレートする一方である。事実こうした親子間のすれ違いから「超獣以上の脅威」が生み出され、いくつもの悲劇が起きているではないか。


 もちろん教育やしつけには半分以上強制の側面もある以上、放任・自由にさせていればよいというものではなく、それによるモラル低下や、先進各国では日本の中高生が自宅で一番勉強していないという真逆の問題も起きていて、事は複雑であるのも事実。
 父の特訓によりスポーツ選手として開花すれば美談になるし……。中庸や一般化はむずかしいね。


 ギーゴンの弦が引きちぎられると春男の母が苦しみだしたり、人間の欲望・妄想・執念が超獣に力を与える設定は第4話『3億年超獣出現!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060528/p1)を連想するが、当初メインライターであった市川森一(いちかわ・しんいち)に代わり、後期に事実上のメインライターとなった石堂淑朗(いしどう・としろう)は、第33話『あの気球船を撃て!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061218/p1)・第38話『復活! ウルトラの父』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070121/p1)・第41話『怪談! 獅子太鼓』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070209/p1)・第43話『怪談 雪男の叫び!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070224/p1)・第47話『山椒魚(さんしょううお)の呪い!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070234/p1)などでそうした作品世界を見事に継承し、最終回の一歩手前で頂点に達したと云っても過言ではない。


 また第33話『あの気球船を撃て!』と同じく教育ママの登場、魂を吸い取られる子供たち、無機物をモチーフにした超獣、ファンタジックに帰還する子供たちと、テーマ・作風・キャラに実に共通項が多いのだが、石堂氏にとって『A』最後の作品を執筆するにあたり、最も訴えたかった主張を再度繰り返したのではないかと思えるのだが。


 本来ならば深刻なテーマを扱っているはずなのだが、若干のユーモアを交えて(遺影の父親が春男にウインクしたりとか・笑)サラリとした印象になっており、全編に渡って流れるバイオリンの美しい音色(筆者はクラシックに疎いので、この曲が既製の曲なのか、音楽担当の冬木透の書き下ろしなのかは定かではない)も手伝い、極めて格調の高い作品に仕上がっている。


 だがなんと云っても本編の最大の功労者は「母親の狂気」を見事に演じきった、春男の母親役の蔵悦子であろう。



<こだわりコーナー>
*バイオリン教室の講師役で本作の音楽を担当した冬木透大先生がゲスト出演!
 『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』に続き、音楽で『A』の作品世界構築に大きく貢献した氏は一旦今回でウルトラを離れることになるが、それを機にこれまでの功績に敬意を表して特別出演となったのではなかろうか。
 だから「春男ちゃん、帰ってはいけません。お母さんに言いつけますよ」なるセリフがおもいっきり棒読みなのはどうか許してあげて(笑)。
 ちなみに冬木先生は昭和10年生まれの戦中世代なのにあのいかにも音楽家風なお坊ちゃま風の長髪。おそらく本作のテーマとは逆で、音楽家一家の出身ではないかと思われる。


 だから子供それぞれの性格(やんちゃな子か内向的な子か)に応じて手をかけてあげたりあえて放任したり、欠けてるところや自信なさげな子であれば付加して背中を押してあげて、イタズラや乱暴なヤリすぎる子であれば抑制なり制限してあげればよいということで。一律に対処すれば平等・公平でよいというものでもないだろう。


*楽器がモチーフの巨大怪獣としては『戦隊』シリーズを除けば、他に円谷プロの特撮巨大変身ヒーロー『ファイヤーマン』(73年)第24話『夜に泣くハーモニカ』に登場した、ハーモニカがモチーフのハモニガンがあるくらいか。筆者的には『ファイヤーマン』登場怪獣の中では最も強く印象に残っている。つーか、本放映を唯一視聴することができたのがこの回だけだったのだ(笑)。
 これはどういうことかと云うと、『ファイヤーマン』は日曜18時30分の放映で『サザエさん』(69年〜放映中!)の裏番組だったので親に観せてもらえず、第13話以降放映が火曜19時に移動してもアニメ『けろっこデメタン』(73年)の裏になってしまって今度は弟に観せてもらえなかったのだ(笑)。
 若い人々には理解できないであろうが、当時テレビは一家にせいぜい一台しかなく、家庭用ビデオデッキも実質普及してはいなかったので(普及したのは80年代中盤)、日本全国の家庭でこのような熾烈なチャンネル争いが日夜繰り返されていたのである!
 実際アニメ『さるとびエっちゃん』(71年)の再放送を観たがった中学生の兄が、アニメ『みつばちマーヤの冒険』(75年)の再放送を観たがった小学生の妹を殺害するなんて事件が70年代後半(年度不詳)に起きていたのです……


*視聴率14.8%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)



後日付記
 07年2月7日にキングレコードから発売されたCD『ウルトラマン・クラシック』(ASIN:B000L22TZQ)によって、第51話『命を吸う音』に流用された曲の詳細が明らかになりました。


*バイオリン超獣ギーゴンが乗り移ったバイオリンが奏でた曲 → バッハ・パルティータ第3番
ウルトラマンエースのメタリウム光線に敗れたギーゴンから、魂が持ち主の人々の元へと帰っていく場面に流れた曲 → モーツァルト・フルートとハープのための協奏曲


 ちなみにウルトラシリーズの楽曲をあまた担当してきた冬木透先生の解説によれば、音楽教室の場面に出演した子供たちは、桐朋学園子供のための音楽教室に当時通っていた生徒たちだそうです。


[関連記事] 〜『ウルトラマンエース』・石堂淑朗・脚本回!

ウルトラマンエース#16「怪談・牛神男(うしがみおとこ)」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060903/p1

ウルトラマンエース#21「天女の幻を見た!」 〜天女アプラサ

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061009/p1

ウルトラマンエース#28「さようなら夕子よ、月の妹よ」 〜南夕子降板の真相異論!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061111/p1

ウルトラマンエース#33「あの気球船を撃て!」 〜最終回の着想はここに!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061218/p1

ウルトラマンエース#43「怪談 雪男の叫び!」 〜身勝手な大衆に批判の視点!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070224/p1

ウルトラマンエース#45「大ピンチ! エースを救え!」 〜隠れた名作バトル編!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070310/p1

ウルトラマンエース#46「タイムマシンを乗り越えろ!」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070319/p1

ウルトラマンエース#51「命を吸う音」 〜石堂最終脚本!

  (当該記事)



「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧