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ウルトラマンエース14話「銀河に散った5つの星」


「ウルトラマンエース」総論
「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


ファミリー劇場ウルトラマンA』放映開始記念・連動連載!)
(脚本・市川森一 監督・吉野安雄 特殊技術・佐川和夫)
(文・久保達也)
 さて後編の脚本は市川森一(いちかわ・しんいち)。
 前編は田口成光(たぐち・しげみつ)の脚本だったわけだが、ゴルゴダ星や超獣バラバのネーミング(イエス=キリストの代わりに釈放された囚人バラバが元だ)をはじめ、十字架にかけられるウルトラ兄弟という発案などのキリスト教にまつわる引用から成る各設定は明らかに市川のものである
 (05年6月24日に刊行された講談社『KODANSHA Official File Magazine ULTRAMAN VOL.6 帰ってきたウルトラマンウルトラマンA』(ISBN:4063671747)にも記載されている通りである)。


 ヒーローの共演・大ピンチを描いた一大イベント編の後編なのだから本来ならば胸がスカッとするような展開が用意されているはずである。
 だが大人になって切通理作(きりどおし・りさく)の著作『怪獣使いと少年』(93年・JICC出版局 現・宝島社〜00年・宝島文庫に所収・ISBN:4796618384)など各種マニア向け書籍での研究成果も読んでから視聴すると、この回はどことなく悲壮感がつきまとうかもしれない。
 男女合体変身や異次元人ヤプールなどの新基軸がスタッフたちにあまり理解を得られず、その責任をとるような形でこの回をもって市川はメインライターでありながら一旦『A』を離れたという分析もある。
 当時ちょうど30才になったこともあり、これでウルトラシリーズは卒業という想いも氏にはあったようだが、それが反映され、北斗やエースがまさに市川そのものを演じる形になっているとも取れるのだ。


 ウルトラ兄弟を人質に地球人に降伏をせまるヤプールに対し、TACはゴルゴダ星の爆破を決定。超光速ミサイルNo.7(ナンバーセブン)の操縦者には北斗が任命されるが、アクシデントでミサイル切り離し装置が故障。そのままゴルゴダ星に突っ込めと命令する高倉司令官と直ちに地球に帰還することを命じる竜隊長が激しく争う様子を無線で聞いていた北斗が放つセリフはこうだ。


 「やめて下さい! どうせはじめから生きて帰るつもりはなかったんです!」


 そしてゴルゴダ星にたどり着いたエースが兄弟に向けて放つセリフはこうである。


 「兄さんたち、私もここで兄さんたちと共に死のう!」



 本来ならば


 「待っていてくれ兄さん! 必ずエースキラーを倒して兄さんたちを救ってみせる!」


 なんてイキのいいセリフを聞きたいところである。だが当時の市川が置かれた状況ではそれが許されなかったのかもしれない。
 ウルトラシリーズを書き進めていく中で、市川は正義と悪という二元論でものを見る見方に疑問を呈するようになったようであり、だからこそ自らを断罪するつもりで自分が描いてきたウルトラマンやセブンを十字架にはりつけ、最後に彼らと心中するような想いを北斗やエースに託したのだ、とも後年の発言から逆算する形で深読みもできなくはない。


 (ただし、同人誌『橋本洋二大全集』(98年・森川由浩)において同人ライター本間豊隆氏のインタビューが引き出してみせたように、第2期ウルトラシリーズをはじめTBSの70年代児童向けドラマを担当した橋本洋二プロデューサーが市川の発言を評していわく、当時そこまで考えていたかは怪しい、後付けのリクツではないのか(大意)、との見方ももちろん大いに成り立ちはする)



 とにかく、第48話『ベロクロンの復讐』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070402/p1)や最終回である第52話『明日(あす)のエースは君だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)を再び書いてはいるものの、当時の市川としてはこの第14話を事実上の最終回として書いたようでもある。


 こう見るとウルトラ4兄弟の必殺技のエネルギーと武器(M87光線・スペシウム光線エメリウム光線・ウルトラブレスレット)を移植された異次元超人エースキラーに散々痛めつけられるエースも、ウルトラ4兄弟の全エネルギーを与えられたことによってエースが放った新必殺技スペースQによってエースキラーに勝利をおさめる場面も、まるでウルトラ兄弟たちの自殺行為を思わせるものがある。
 ウルトラ4兄弟のエネルギーを与えられたエースキラーはまさにウルトラ4兄弟の象徴であり、それがウルトラ4兄弟の必殺技の集大成とも呼ぶべきスペースQによって倒されるのだから……


 エースキラーは実験台として先ずエースそっくり(能力も)に造られたエースロボットを相手にウルトラ兄弟たちの必殺技を披露するが、岸田森(きしだ・しん)のナレーションにもあるようにまさに凄惨な場面であり、自分たちの必殺技によってエースが苦しむ様子は兄弟たちにしてみればとても見てはいられない光景である。
 こうした苦しみをウルトラ兄弟たちは正義の名のもとにさまざまな怪獣や宇宙人に与えてきたのだ。エースキラーが木っ端微塵に吹き飛ぶさまはまさにウルトラ兄弟の「死刑」でもあったのだ。ウルトラシリーズを去る決意をした市川はこともあろうにシリーズの世界観を否定するかのような作品を置き土産に残していったのだとも取れるのだ。



 以上は後年の、脚本家・市川森一研究の成果の色眼鏡で見れば、という話である。


 子供のころに本エピソードをこのように悲愴な話だと思って観た人はほとんどいなかったはずである。むしろ逆にシリーズ屈指の娯楽活劇編の名作として捉えていたはずだ(笑)。


 ウルトラ4兄弟の光線エネルギーやウルトラブレスレットを吸収・強奪した超難敵にして、人間体型でスマートなカッコいい強敵エースキラー
 その設定はウルトラ兄弟の陰画や死刑や自殺などの意図から来たものではなく、むしろ逆にもっと子供っぽくって純粋にして単純な発想、5兄弟に1体のみでパワーバランス的に拮抗させる前提から着想したに過ぎない強敵の設定だったともいえるだろう。


 4兄弟の力を備えた敵に苦戦するエースも、悲愴だの凄惨だのの深読み的な感慨ではなく、純粋にハラハラドキドキの感慨を子供たちに与えるためのものでもある。
 その敵を打ち破るのにその敵の力をも上回る力……十字架上の4兄弟の胸のカラータイマーから放射された最後のエネルギーの残り火が、エース頭頂のエネルギーホールに結集、5兄弟の力が合体した最強必殺技スペースQで打ち負かすというシーケンスは、ご都合主義ではあるもののカタルシス全開の展開として捉えることもやはりできるのだ。


 ドラマやテーマではなく、強敵難敵を設定しそれをどうやってやっつけるかという良い意味で子供っぽい発想の展開。これには純粋に燃えるものがある。
 大人になってから再視聴すると、本話の対エースキラー戦のシーケンスは、実際には意外にアッサリとしてサラリと流されている程度の短尺のシーケンスにも感じられるのだが、ここは多くのウルトラシリーズファン同様、子供のころにこのシーンに感じた絶大なインパクトとその刷り込みこそを心情的真実としておきたい。



 もちろん怪獣バトルだけではなく、人間ドラマ面も本エピソードは充実している。
 ゴルゴダ星爆破を高倉司令官に命令され、任務に赴くことになった北斗を隊員たちが気遣う描写はなんとも美しい。


 これまで幾度となく北斗と対立してきた山中が高倉司令官の前で私に行かせて下さいと主張、北斗とふたりきりになったときは彼に気遣いの言葉をかけ、ミサイル発射間際に搭乗を交代しよう責任は俺が持つとも進言、北斗の決意が固いと知るや、ミサイル発射当日の7月7日が北斗と夕子の誕生日であることから竜隊長がバースデイケーキを注文していたことを打ち明ける。
 その竜隊長は北斗を思うあまりにミサイルの第一ロケット(操縦ブロック)の分離が故障しても特攻を命じる高倉司令官を殴りつける!


 このシーンの前後は、TAC隊員たち役者陣の細かい芝居も必見!
 故障を知らせる北斗の通信に、最悪の事態が起きたとばかり、何ともいえない心配そうな、顔をしかめる表情演技をする吉村と梶。
 作戦室の通信席で北斗と交信する美川を挟んで、対峙する竜隊長と高倉司令官。故障を知らせる北斗の通信〜特攻を命じる強硬な司令官の発言〜帰還を命じる隊長の発言〜司令官と隊長の対立に、美川隊員は困惑〜悲痛〜かすかな笑み〜複雑と表情を変えていく。
 今野は恐る恐る高倉に近づき、背後で指をボキボキと鳴らしたりする(笑)。
 夕子は尋常ではない様子で高倉に「帰って下さい! 帰って下さい!」と叫ぶ!


 隊員同士の対立や「脱出!」(笑)ばかりが語られがちなTACであるが、第4話『3億年超獣出現!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060528/p1)の「美川隊員は責任を感じているんですよ」という山中のセリフや、第11話『超獣は10人の女?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060731/p1)の夕子を思うあまりに北斗に食ってかかる今野など、実は他の隊員をかばったりフォローしたりする描写がよく見ると結構あるのだ。今回はその集大成という趣であり、チームの結束を固めて『A』を去っていった点に関しては市川はメインライターとしての責務を果たしていたといえるだろう。


 またマイナス宇宙へと向かうロケットに搭乗した北斗とそれを本部で見つめる夕子がモニター上で手をかざしてエースに変身したり、ラストで二人が星空を見上げながら七夕(たなばた)の伝説を語り、「わたしたちはなんなのかしら?」と夕子がつぶやいたりする点はまさに七夕の日に放映(72年7月7日に放映)するにふさわしいファンタジー的要素である。
 これも市川が円谷プロの『快獣ブースカ』(66年)以来得意とするものであったが、こうした点を見る限りでも合体変身という設定は個人的には正解であったと思っている。



<こだわりコーナー>
*今回に限り、北斗とヤプールは新ウルトラマンのことを「ウルトラマン2世」と呼称している。「新しいウルトラマン」やら「新マン」やらと好き勝手に呼ばれているのが市川としては我慢がならなかったのであろうか?(マニアではない当時の大の大人がそれはないか?)
 ただ「2世」というとまるで初代ウルトラマンの息子みたいで(笑)違和感が拭えないが、少なくとも現在の一応の公式名称である「ウルトラマンジャック」よりはよほどシャレていると個人的には思う。さすがにファンタジーがお得意の市川らしいネーミングではある
 (幼少時からジャックの名称に親しんでいる世代も20年以上の長きにわたって大勢存在することも確認しているので今さらこの呼称を否定したり、ネット界隈でよく見られるように一部の年長世代がジャックの呼称を用いる若い世代を弾圧するような振る舞いをする気はないことは強調しておきたい。それでは第1期ウルトラ至上主義者がした第2期・3期ウルトラ弾圧と同じことになってしまう)。


 それよりもむしろ北斗がウルトラ兄弟の故郷を「M87星雲」と呼んでいることの方が問題が大きい(笑)。ゾフィーの必殺技である「M87光線」がセリフで何度か出てくるのでシナリオでつい誤表記してしまったのか? シナリオ印刷の写植屋さんが活字を拾い間違えたのか? それとも北斗役の高峰圭二がアフレコの際に読み間違えたのか?
 ちなみにTVアニメシリーズ『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)の企画初期時点でのタイトルは、『ウルトラマンIII(3世)』であった。
*本話では「ウルトラ兄弟」を「ウルトラ『の』星」などの文学的表現に準じたのか、ナレーションも北斗隊員も「の」付きの「ウルトラの兄弟」とも呼んでいる。余談だが、「マイナス宇宙」を「裏宇宙」とも呼称している。


エースキラーがエースロボットに対してトドメを刺した、初代ウルトラマンでいうところの八つ裂き光輪(ウルトラスラッシュ)のポーズで右手から放つピンク色の猛烈電撃が、ウルトラ兄弟の長兄ゾフィーの幻の必殺技・M87光線だ。映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹・asin:B000H4W1CE)を除けば05年現在、TVシリーズで唯一映像化されたM87光線でもある(今後、映像化されることがあるなら、この回の光学合成に準拠してもらいたい)。
*エースがスペースQを繰り出す場面ではウルトラセブンの戦闘テーマ(よく聴いてもらえればわかるのだが実際には『セブン』では未使用のバージョンである)が流れている。が、ウルトラ4兄弟のエネルギーを集めた必殺技なのだからそれらしい新曲でやってほしかったところだ。
放射能の雨に打たれた北斗と南は、TAC基地内で人工太陽光線を照射されて回復する。こんな便利なものが開発されたら本当にいいのにね。


*高倉司令官は南太平洋上のTAC国際本部より、超光速ミサイルNo.7の設計図を持って、専用の高倉司令官機(タックファルコン)にて着任。
 演じるは故・山形勲(やまがた・いさお。1915〜96年)。TV時代劇の悪役としても有名だが、善玉役としての仕事もあり、代表作は池波正太郎の名作『剣客商売(けんかくしょうばい)』(73年・加藤剛主演版)の父役レギュラー・秋山小兵衛(あきやま・こへえ)だろう。『水戸黄門(みとこうもん)』第1〜第3部(69〜71年)、第14部〜第18部(83〜88年)の五代将軍・綱吉(つなよし)の側用人(そばようにん)・柳沢吉保(やなぎさわ・よしやす)役でも印象的。
*高倉司令官は完全に一面的な悪役として描写されている。TAC隊員たちの美しい結束を描くためには、そして尺の都合や本話では描くべき要素が多いこともあり、下手に多面性を描くと煩雑になるので、これはこれでよいだろう。
 ただし、やはり高倉司令官を演じた山形勲と同様、TV時代劇の悪役役者として有名な故・神田隆(1918〜86年)が演じた名前も同じ、『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)の厳格な高倉司令長官は、第13話『大爆発! 捨て身の宇宙人ふたり』で初登場したあと、第36話『飛べ! レオ兄弟 宇宙基地を救え!』で再登場した際には家族思いの面を、第39話『レオ兄弟ウルトラ兄弟 勝利の時』で再々登場して地球に接近する惑星を爆破する命令を下した際には、「あの星がウルトラの星でないことを私も祈っているのだ」とのセリフを与えることで、その善性を滲み出させる多面的な描写が施されていた(3本とも脚本は田口成光氏)。


*超光速ミサイルNo.7は、超獣ブロッケン編である第6話『変身超獣の謎を追え!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060611/p1)で兵器開発研究員・梶が「その速さは光速に迫り四次元世界も覗ける可能性がある」と言及したTACの新型ロケットの延長線にある機体として見たいのがマニア心。


*右手自体が鉄球ハンマー、左手が斧、頭頂部に短剣を戴く超獣バラバ。エースはその短剣を真剣白刃取りして投げ返して刺す。次に刺さった短剣をチョップで宙高く飛ばして、右手で受け止め左手に逆手で持ち替える際のエースのポーズが超絶カッコいい!
 技名は放映当時の学年誌『小学一年生』72年9月号ふろく『怪獣ひみつ百科』によれば「バラバ返し」。左右の腕はのちに次作『ウルトラマンタロウ』第40話『ウルトラ兄弟を超えていけ!』に登場する合体怪獣タイラントの両腕に転生を遂げた(ただし左右は反転)。


*バラバに兄を殺された少年が事件解決後に「これ北斗さんに」とTAC本部の作戦室に持ってくる七夕飾りには当時ブルマアクから発売されていたソフビ人形が何体かぶら下がっているが、セブンの人形が3つもある。やはり七夕だけに7月7日ということで ♪セブン、セブン〜ってことか……


*先にふれたが、本話のウルトラマンエースへの変身シーンは超絶名シーン。地球のTAC本部の作戦室で通信する南夕子と、遠く離れたマイナス宇宙へ向かうミサイルの中の北斗星児。モニター越しのウルトラタッチで光年の壁を越えた奇跡の変身を遂げるのだ。しかも北斗搭乗のミサイル側では地球側からの画像受信ができないが(音声受信は可能)、夕子には北斗の映像が観えている非対称性がロマンチックでふるっている。
 「私が見える?」「いや、こちらからは見えない」「私は見てるわ」「夕子!」「星司さん!」(ふたりが指にはめたウルトラリングがきらめく)「星司さん、手を出して。早く出して星司さん!」 無言でタッチするや北斗側にエースが出現!


*TAC隊員たちといっしょにいるときは「北斗隊員」、北斗とふたりでいるときは「星司さん」と呼びわける南夕子がとってもラブリー。実はこの呼び方は各話で一貫している。ラストシーンを見る限り、北斗は南の好意に鈍感なようだが(笑)。


*視聴率17.1%



 かくしてメインライターであったハズの市川森一は『A』を去った。以後作風は微妙に変化を遂げ、異色作・怪作も生まれていくが、続きは次号(冬コミ『2006年号』)に譲らせて頂きたい
 (#1〜13評は初出・夏コミ『2006年準備号』(05年8月発行))。


 では次回も 「さあ、みんなで見よう!」 (予告編の岸田森の声で・笑)


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)



<#1〜13評・参考文献>
*My First BIG『ウルトラマンA 完全復刻版』 著・内山まもる
 小学館 04年8月6日発行
タツミムック『僕らのウルトラマンA』(ISBN:4886415180
 辰巳出版 00年7月10日発行
*『ウルトラマン画報〜光の戦士三十五年の歩み〜上巻』(ISBN:4812408881
 竹書房 02年10月4日発行
*他


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