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ウルトラマンエース14話「銀河に散った5つの星」 ~異次元超人エースキラー・裏宇宙・超光速ミサイル№7!

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映開始記念・連動連載!)
『ウルトラマンエース』#13「死刑! ウルトラ5兄弟」 ~超獣バラバ・マイナス宇宙・ゴルゴダ星!
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ウルトラマンエース14話「銀河に散った5つの星」 ~異次元超人エースキラー・裏宇宙・超光速ミサイル№7!

(脚本・市川森一 監督・吉野安雄 特殊技術・佐川和夫)


(文・久保達也)
(2005年執筆)


 さて、後編である本話の脚本は市川森一(いちかわ・しんいち)。前編である第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)は田口成光(たぐち・しげみつ)の脚本だったが、ゴルゴダ星や超獣バラバのネーミングをはじめ(バラバの名はゴルゴダの丘でイエス=キリストの代わりに釈放された囚人が元である)、十字架にかけられるウルトラ兄弟という発案などのキリスト教にまつわる引用から成る各種設定は市川のものだそうだ。05年6月24日に刊行された講談社『KODANSHA Official File Magazine ULTRAMAN VOL.6 帰ってきたウルトラマンウルトラマンA』(ISBN:4063671747)にはそう記載されている。


 ヒーローの共演・大ピンチを描いた一大イベント編の後編なのだから、本来ならば胸がスカッとするような展開が用意されているはずである。
 だが、長じて特撮マニアになって、特撮評論家・切通理作(きりどおし・りさく)の著作『怪獣使いと少年』(93年・JICC出版局 現・宝島社〜00年・宝島文庫に所収・ISBN:4796618384)などの各種マニア向け書籍での研究成果も読んでから視聴すると、この回はどことなく悲壮感がつきまとうのかもしれない。
 男女合体変身や異次元人ヤプールなどの新基軸がスタッフたちにあまり理解を得られず、その責任をとるようなかたちでこの回をもって市川はメインライターでありながら一旦『A』を離れたという指摘もある(脚本執筆は放映の3ヵ月くらい前だろうから、『ウルトラマンA(エース)』(72年)の放映が始まったか否かくらいのことであり、撮影現場や視聴者の感想が上がってきた時期だとは思えないが)。
 当時ちょうど30才になったこともあり、これでウルトラシリーズは卒業という想いも氏にはあったようだが、それが反映され、北斗やエースがまさに市川そのものを演じるかたちになっているとの分析もある……



 ウルトラ兄弟を人質に地球人に降伏をせまる異次元人ヤプールに対し、防衛組織・TAC(タック)はゴルゴダ星の爆破を決定。高倉司令官が南太平洋上のTAC国際本部より、超光速ミサイルNo.7の設計図を持って、専用の高倉司令官機(タックファルコン)にて着任する。
 前回の『死刑! ウルトラ5兄弟』でウルトラマンエースが光の速さを超えることで「マイナス宇宙」に突入できたように、TACも光の速さを超えることができる「超光速ミサイルNo.7(ナンバーセブン)」を投入するのだ。


 超光速ミサイルNo.7は、超獣ブロッケン編である第6話『変身超獣の謎を追え!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060611/p1)で兵器開発研究員・梶が「その速さは光速に迫り4次元世界も覗ける可能性がある」と言及したTACの新型ロケットの延長線にある機体として見たいのがマニア心理というもの。


 そしてその操縦者には我らが主人公・北斗星児(ほくと・せいじ)隊員が任命される。しかし、ゴルゴダ星の直前でアクシデントでミサイル切り離し装置が故障するという意地悪なストーリー展開! 地球へと帰還する操縦席の部分とミサイルの部分が分離不可能となる。「そのままゴルゴダ星に突っ込め!」と命令するTACの最高司令・高倉司令官とただちに地球に帰還することを命じる竜隊長が激しく争う様子を無線で聞いていた北斗が放つセリフはこうだ。


「やめて下さい! どうせはじめから生きて帰るつもりはなかったんです!」


 そしてゴルゴダ星にたどり着いたエースが兄弟に向けて放つセリフはこうである。


「兄さんたち、私もここで兄さんたちと共に死のう!」



 本来ならば


「待っていてくれ兄さん! 必ずエースキラーを倒して兄さんたちを救ってみせる!」


 なんてイキのいいセリフを聞きたいところである。だが、当時の市川が置かれた状況ではそれが許されなかったとする見方もある。ウルトラシリーズを書き進めていく中で、市川は正義と悪という二元論で物を見る見方に疑問を呈するようになっており、だからこそ自らを断罪するつもりで自分が描いてきたウルトラマンやセブンを十字架にはりつけ、最後に彼らと心中するような想いを北斗やエースに託したのだと。


 第48話『ベロクロンの復讐』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070402/p1)や最終回である第52話『明日(あす)のエースは君だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)で『A』を再び執筆してはいるものの、当時の市川としてはこの第14話を事実上の最終回として執筆したとする見立てである。


 こう見るとウルトラ4兄弟の必殺技のエネルギーと武器(M87光線・スペシウム光線エメリウム光線・ウルトラブレスレット)を移植された異次元超人エースキラーに散々痛めつけられるエースも、ウルトラ4兄弟の全エネルギーを与えられたことによってエースが放った新必殺技・スペースQによってエースキラーに勝利をおさめる場面も、まるでウルトラ兄弟たちの自殺行為を思わせる。ウルトラ4兄弟のエネルギーを与えられたエースキラーはまさにウルトラ兄弟の象徴であり、それがウルトラ5兄弟の必殺技の集大成とも呼ぶべきスペースQによって倒されるのだから。


 エースキラーは実験台として先ず見た目も能力もエースそっくりに造られたエースロボットを相手にウルトラ4兄弟の必殺技を披露する! 岸田森(きしだ・しん)のナレーションにもあるようにまさに凄惨な場面であり、自分たちの必殺技によってエースが苦しむ様子は兄弟たちにしてみればとても見てはいられない光景である。こうした苦しみをウルトラ兄弟たちは正義の名のもとにさまざまな怪獣や宇宙人に与えてきた。最後にエースキラーがウルトラ4兄弟の残存エネルギーも合わせたエースの最強必殺技・スペースQで木っ端微塵に吹き飛ぶさまは、まさにウルトラ兄弟の「死刑」でもあったのだ。ウルトラシリーズを去る決意をした市川はこともあろうにシリーズの世界観を否定するかのような作品を置き土産に残していったという分析の類いである。



 先人たちの研究にはもちろん敬意を表しているが、以上は後年になってからの切通理作をはじめとする脚本家・市川森一研究を通じた色眼鏡での鑑賞や、「勧善懲悪の否定」や「善悪の相対化」を過剰にありがたがる文脈で見れば……という話でもある。子供のころに本エピソードをこのように悲愴な話だと思って観た人はほとんどいなかったはずである。むしろ逆にシリーズ屈指の一大娯楽活劇巨編の傑作として捉えていたはずなのだ(笑)。


 同人誌『橋本洋二大全集』(98年・森川由浩)において同人ライター・本間豊隆氏のインタビューが引き出してみせたように、第2期ウルトラシリーズをはじめTBSの70年代児童向けテレビドラマを中心に担当してきた橋本洋二プロデューサーが市川の発言を評していわく、「当時からそこまで考えていたかは怪しい。後付けのリクツではないのか?(大意)」という見立てもあって、そのような後年の市川の発言に対する相対化も必要だとは思うのだ。


 ウルトラ4兄弟の光線エネルギーやウルトラブレスレットを吸収・強奪した超難敵にして、人型体型でスマートなカッコいい強敵・エースキラー。その姿は単なる各話単位の雑魚(ザコ)的なゲスト怪獣といったイメージではない。それらよりも格上のヒーローとも拮抗しそうなダークヒーローといった趣(おもむき)もある、ウルトラシリーズ初のヒーローと同格の敵キャラクターでもあるのだ。
――翌年の円谷特撮『ジャンボーグA(エース)』(73年)にも、人型体型のスマートな強敵・ジャンキラーやジャンキラーJr.(ジュニア)といったダークヒーロー的な強敵キャラクターが登場しており、ネーミングからも明らかにエースキラーから着想されたものだろうが、子供心にもカッコよくて別格で強敵そうであり印象深かった!――


 その設定はウルトラ兄弟のネガ(陰画)や死刑や自殺などといった、ムダに深読み的な意図から来たものではなく、むしろ逆に市川個人のもっとチャイルディッシュで純粋にして単純な発想が発露したものだとも思うのだ。


 ウルトラ5兄弟に1体のみでもパワーバランス的に拮抗させる強敵という存在を構築するには……といったことから着想した、


・新マン(=帰ってきたウルトラマンウルトラマンジャック)の必殺武器・ウルトラブレスレット
ウルトラセブンの必殺技・エメリウム光線のエネルギー
初代ウルトラマンの必殺技・スペシウム光線のエネルギー
ウルトラ兄弟の長男であるゾフィーの必殺技・M87光線のエネルギー


を、彼らの胸中央のカラータイマーなどから光線のかたちで強奪して、しかもそれらの超パワー、左手首にはめたウルトラブレスレットやウルトラ兄弟の必殺光線を自由自在に発射もできる! という、人間ドラマや社会派テーマとは無関係な、なんとも少年漫画的な純粋パワーゲームの発想から構築されたエースキラーという悪の超人の設定!


 そしてエースキラーがエースロボットに対してトドメを刺した、初代ウルトラマンでいうところの八つ裂き光輪(ウルトラスラッシュ)のポーズで右腕を大きく振りかぶって右手から放つ直線の光線というよりもピンク色の猛烈な電撃が、ウルトラ兄弟の長兄・ゾフィーの幻の必殺技・M87光線である!
 映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹・asin:B000H4W1CE)を除けば05年現在、TVシリーズで唯一映像化されたM87光線でもある(今後、映像化されることがあるならば、この回の光学合成に準拠してもらいたい・笑)。



 ウルトラ4兄弟の力を備えた強敵に苦戦するエースの描写も、悲愴だの凄惨だのといった深読み的な感慨ではなく、純粋にハラハラドキドキの感慨を子供たちに与えるためのものである。
 その難敵を打ち破るのにその敵の力をも上回る力……十字架上の4兄弟のカラータイマーから放射された最後のエネルギーの残り火が、エース頭頂のトサカ部分の丸い空洞であるエネルギーホールに結集、ウルトラ5兄弟のエネルギーが合成された最強必殺技・スペースQで打ち負かすというシークエンスは多分にご都合主義ではある(まだ4兄弟にはエネルギーが残っていたのか!? 出し惜しみしていたのかよ!?・笑)。
 しかし、これならば4兄弟の力を併せ持つ強敵・エースキラーをも上回って打ち負かせそうな計量的な合理性がある合体攻撃ではあるし、カタルシス全開の大逆転劇として捉えることもやはりできるのだ。


 ドラマやテーマではなく、強敵・難敵を設定してそれをどのような方策で攻略するのか!? という良い意味での子供っぽい発想から来たストーリー展開。これには純粋に燃えるものがある。大人になってから再視聴すると、本話の対エースキラー戦のシークエンスは、実際には意外にアッサリとしてサラリと流されている短尺のシークエンスにも感じられるのだが、ここは多くのウルトラシリーズのファン同様、子供のころにこのシーンに感じた絶大なるインパクトとその刷り込みこそを心情的な真実としておきたい。


 エースがスペースQを繰り出す場面ではウルトラセブンの戦闘テーマが流れている(よく聴いてもらえればわかるのだが、実際には『セブン』では未使用のバージョンである)。が、ウルトラ4兄弟全員のエネルギーを集めた必殺技なのだから、セブンのイメージに限定されないそれらしい楽曲でやってほしかったところだ。



 もちろん怪獣バトルだけでなく、人間ドラマ面でも本エピソードは充実している。ゴルゴダ星爆破を高倉司令官に命令され、任務に赴くことになった北斗を隊員たちが気遣う描写はなんとも美しい。


 これまで幾度となく北斗と対立してきたイヤなイヤなイヤな奴・山中隊員が高倉司令官の前で意外にも「私に行かせて下さい!」と主張、北斗隊員とふたりきりになったときは彼に気遣いの言葉さえかけ、「ミサイル発射間際に搭乗を交代しよう、責任は俺が持つ!」とも進言。北斗の決意が固いと知るや、ミサイル発射当日の7月7日が北斗と夕子の誕生日であることから竜隊長がバースデイケーキを注文していたことを打ち明けて、山中隊員の決して一面的ではないヒューマンな面も見せている。


 その竜隊長は北斗を思うあまりに、ミサイルの第一ロケット(操縦ブロック)の分離装置が故障しても特攻を命じる高倉司令官を殴りつける!


 このシーンの前後は、TAC隊員たち役者陣の細かい芝居も必見!


 故障を知らせる北斗の通信に、最悪の事態が起きたとばかり、何ともいえない心配そうな、顔をしかめる表情演技をする吉村と梶。


 作戦室の通信席で北斗と交信する美川を挟んで、対峙する竜隊長と高倉司令官。
 故障を知らせる北斗の通信 〜 特攻を命じる強硬な司令官の発言 〜 帰還を命じる隊長の発言 〜 司令官と隊長の対立に、両者の真ん中手前に着席している美川隊員は困惑〜悲痛〜かすかな笑み〜と複雑に表情を変えていく。


 今野は恐る恐る高倉に近づき、背後で指をボキボキと鳴らしたりする(笑)。


 夕子は尋常ではない様子で高倉に「帰って下さい! 帰って下さい!」と叫ぶ!


 隊員同士の対立や「脱出!」ばかりが語られがちなTACではあるが(笑)、第4話『3億年超獣出現!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060528/p1)の「美川隊員は責任を感じているんですよ」という山中のセリフや、第11話『超獣は10人の女?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060731/p1)の夕子を思うあまりに北斗に食ってかかる今野など、実は他の隊員をかばったりフォローしたりする描写がよく見ると結構あるのだ。今回はその集大成という趣であり、チームの結束を固めて『A』を去っていった点に関しては市川はメインライターとしての責務を果たしていたといえるだろう。



 エースキラーを辛うじて倒したエースは地球へと帰還するや、超獣バラバとのリベンジ戦に挑む!
 右手自体が鉄球ハンマー、左手がカマ、頭頂部に短剣を頂く超獣バラバ。エースはその短剣を真剣白刃取りにして投げ返して刺す。次に刺さった短剣をチョップで宙高く飛ばして、右手で受けとめ左手に逆手で持ち替える際のエースのポーズも超絶カッコいい! この技名は放映当時の学年誌『小学一年生』72年9月号ふろく『怪獣ひみつ百科』によれば「バラバ返し」。
 バラバの左右の腕はのちに次作『ウルトラマンタロウ』第40話『ウルトラ兄弟を超えていけ!』に登場する合体怪獣タイラントの両腕に転生を遂げている(ただし腕の左右は反転)。


 バラバに兄を殺された少年にもきちんと回収を与えている。今回の事件が解決後に「これ、北斗さんに」と恨みも晴れたかTAC本部の作戦室に持ってきた七夕(たなばた)飾りには、当時ブルマアクから発売されていたソフビ人形が何体かぶら下がっているが、セブンの人形が3つもある。やはり七夕だけに7月7日ということで ♪セブン、セブン〜ってことか?(笑)



 本話のウルトラマンエースへの変身シーンも超絶名シーン。地球のTAC本部の作戦室で通信する南夕子と、遠く離れた「マイナス宇宙」へ向かうミサイルの中の北斗星児。モニター越しのウルトラタッチで光年の壁を越えた奇跡の変身を遂げるのだ。しかも北斗搭乗のミサイル側では地球側からの画像受信ができないが(音声受信は可能)、夕子には北斗の映像が観えている非対称性がロマンチックでふるっている。この神秘のヒーローがまだまだ隠し持っている物理的な限界を超えた神にも近き圧倒的な超越性のカタルシスやそれへの憧憬!


 「私が見える?」「いや、こちらからは見えない」「私は見てるわ」「夕子!」「星司さん!」(ふたりが指にはめたウルトラリングが効果音とともにきらめく)「星司さん、手を出して。早く出して星司さん!」 無言でタッチするや北斗側にエースが出現!


 TAC隊員たちといっしょにいるときは「北斗隊員」、北斗とふたりでいるときは「星司さん」と呼びわける南夕子がとってもラブリー。実はこの呼び方は各話で一貫している。ラストシーンを観るかぎり、北斗は南の好意に鈍感なようだが(笑)。


 ラストでふたりが星空を見上げながら七夕の伝説を語り、「わたしたちはなんなのかしら?」と夕子がつぶやいたりする点は、まさに七夕の日に放映(72年7月7日に放映)するにふさわしい、男女合体変身を素材に据えた本作ならではの恋愛ドラマ的な要素でもある。


 こうした点を見るかぎりでも男女合体変身という設定は、空中で1回転してからの変身のビジュアル的インパクトはともかく、地上で駆け寄っての接触変身の方は子供たちにも「ごっこ遊び」でマネができるものだったのだし、変身に至るまでの「制限ルール」付きのサスペンスや恋情要素も発生させられるのだから、個人的には正解であったと考えている。



<こだわりコーナー>


*今回にかぎって、北斗とヤプールは新ウルトラマン帰ってきたウルトラマン)のことを「ウルトラマン2世」と呼称している。「新しいウルトラマン」やら「新マン」やらと好き勝手に呼ばれているのが市川としては我慢がならなかったのであろうか?(我々のような細かいことに過剰にこだわるお尻の穴の小さいマニアでもない、当時の大のオトナがさすがにそんな小者チックなことはないか?・笑)
 ちなみに、第3期ウルトラシリーズの筆頭を飾ったTVアニメシリーズ『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)の企画初期時点でのタイトルは、『ウルトラマンIII(3世)』であった。
 ただ「2世」というとまるで初代ウルトラマンの息子みたいで(笑)違和感がなくもないが、少なくとも現在の公式名称である「ウルトラマンジャック」よりかは他のウルトラマンとのネーミングルール的には不統一になるけどシャレていると個人的には思う。
(幼少時からジャックの名称に親しんでいる世代も20年以上の長きにわたって大勢存在することも確認しているので、今さらこの呼称を否定したり、ネット界隈でよく見られるように一部の年長世代がジャックの呼称を用いる若い世代を弾圧するような封建的な振る舞いをする気は毛頭ないことは強調しておきたいが。それでは第1期ウルトラ至上主義者たちがしてきた第2期・3期ウルトラシリーズへの弾圧と同じことになってしまう)


*それよりもむしろ北斗がウルトラ兄弟の故郷を「M78星雲」ではなく「M87星雲」と呼んでいることの方が問題が大きい(笑)。ゾフィーの必殺技である「M87光線」がセリフで何度か出てくるのでシナリオでつい誤表記してしまったのか? シナリオ印刷の写植屋さんが活字を拾い間違えたのか? それとも北斗役の高峰圭二がアフレコの際に読み間違えたのか?


*本話では「ウルトラ兄弟」を「ウルトラ『の』星」などの「文学的表現」に準じたのか、ナレーションも北斗隊員も「の」付きの「ウルトラの兄弟」とも呼んでいる。このような「ウルトラの戦士」や「ウルトラの力」や「ウルトラの光」といったやや文学的な風情のある言い回しは、後年のウルトラシリーズにもすべてではないが時折継承されていて、SF的な統一性には欠けてしまうかもしれないが、ウルトラ一族以外の他の宇宙人種族との文芸的な差別化や特権性にはなっていると思う。


*本話では「マイナス宇宙」を「裏宇宙」とも呼称している。つまり、電荷が逆である反物質宇宙ではなく、空間的にはこの3次元世界の大宇宙空間全体が布団を折りたたんだようにU字側に湾曲しており、その湾曲の裏側にある大宇宙の半分・片側の空間部分というような意味であると解釈したいところだ。当時のつくり手はそんなことは考えてはいなかっただろうが(笑)。


放射能の雨に打たれた北斗と南は、TAC基地内で人工太陽光線を照射されて回復する。こんな便利なものが開発されたら本当にいいのにね。


*高倉司令官を演じるのは故・山形勲(やまがた・いさお。1915〜96年)。テレビ時代劇の悪役としても有名だが、善玉役としての仕事もあり、代表作は池波正太郎の名作『剣客商売(けんかくしょうばい)』(73年・加藤剛主演版)の父親役であり剣豪でもある副主人公・秋山小兵衛(あきやま・こへえ)だろう。『水戸黄門(みとこうもん)』第1〜第3部(69〜71年)、第14部〜第18部(83〜88年)の五代将軍・徳川綱吉(とくがわ・つなよし)の側用人(そばようにん)・柳沢吉保(やなぎさわ・よしやす)役でも印象的。


*高倉司令官は完全に一面的な悪役として描写されている。TAC隊員たちの美しい結束を描くためには、そして尺の都合や本話では描くべき要素が多いこともあり、下手に多面性を描くと煩雑になるので、これはこれでよいのだろう。
 ただし、やはり高倉司令官を演じた山形勲と同様、テレビ時代劇の悪役役者として有名な故・神田隆(1918〜86年)が演じた、名前も同じである、『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)の厳格な高倉司令長官は、第13話『大爆発! 捨て身の宇宙人ふたり』で初登場したあと、第36話『飛べ! レオ兄弟 宇宙基地を救え!』で再登場した際には家族想いの面を、第39話『レオ兄弟ウルトラ兄弟 勝利の時』で再々登場して地球に接近する惑星を爆破する命令を下した際には、「あの星がウルトラの星でないことを私も祈っているのだ」とのセリフを与えることで、その善性を滲み出させる多面的な描写が施されていた(3本とも脚本は田口成光氏)。


*視聴率17.1%



 かくしてメインライターであったハズの市川森一は『A』を去った。以後作風は微妙に変化を遂げていき、異色作・怪作も生まれていくが、そこに少々の問題や欠点はあるものの、今までの特撮マニア間で云われていたほどの愚作では決してなく、今観返してみるとむしろドラマ的・テーマ的には挑戦作や良作も多い。そのあたりへの再評価的な言及は次号(冬コミ『2006年号』)に譲らせていただきたい。(#1〜13評は初出・夏コミ『2006年準備号』(05年8月発行))


 では次回も 「さぁ、みんなで見よう!」 (予告編の岸田森の声で・笑)


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年準備号』(05年8月発行)~『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)



<#1〜13評・参考文献>
*My First BIG『ウルトラマンA 完全復刻版』 著・内山まもる
 小学館 04年8月6日発行
タツミムック『僕らのウルトラマンA』(ISBN:4886415180
 辰巳出版 00年7月10日発行
*『ウルトラマン画報〜光の戦士三十五年の歩み〜上巻』(ISBN:4812408881
 竹書房 02年10月4日発行
*他


[関連記事] 『銀河に散った5つの星』の前編!

ウルトラマンエース#13「死刑! ウルトラ5兄弟」 ~超獣バラバ・マイナス宇宙・ゴルゴダ星!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1


[関連記事] ~エース全話評・主要記事!

ウルトラマンA 再評価・全話評!」 ~序文

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060513/p1

ウルトラマンエース#13「死刑! ウルトラ5兄弟」 ~超獣バラバ・マイナス宇宙・ゴルゴダ星!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1

ウルトラマンエース#14「銀河に散った5つの星」 ~異次元超人エースキラー・裏宇宙・超光速ミサイル№7!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1(当該記事)

ウルトラマンエース#17「怪談 ほたるケ原の鬼女(きじょ)」 ~真船演出! #23のプロト!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060904/p1

ウルトラマンエース#18「鳩を返せ!」 ~名作傑作!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060907/p1

ウルトラマンエース#19「河童屋敷の謎」 ~夕子活躍!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061007/p1

ウルトラマンエース#23「逆転! ゾフィ只今参上」 ~メビウスの名の由来はA#23にあり!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061012/p1

ウルトラマンエース#24「見よ! 真夜中の大変身」 ~赤い雨! ヤプール壊滅二部作後編!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1

ウルトラマンエース#28「さようなら夕子よ、月の妹よ」 ~南夕子降板の真相異論!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061111/p1

ウルトラマンエース#30「きみにも見えるウルトラの星」 ~主役窮地の作劇極北!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061125/p1

ウルトラマンエース#33「あの気球船を撃て!」 ~最終回の着想はここに!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061218/p1

ウルトラマンエース#34「海の虹に超獣が踊る」 ~長坂秀佳脚本第2弾!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061223/p1

ウルトラマンエース#35「ゾフィからの贈りもの」 ~子供に過ちを犯す主役!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061231/p1

ウルトラマンエース#43「怪談 雪男の叫び!」 ~身勝手な大衆に批判の視点!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070224/p1

〈DVD付きフォトブック〉「ウルトラマンA 1972」レビュー

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070210/p1

『エース』同人誌の歴史1 ~『A』再評価の端緒を築いた伝説の名同人誌『全員脱出!』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070331/p1

ウルトラマンエース最終回「明日のエースは君だ!」 ~不評のシリーズ後半も実は含めた集大成!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1