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ウルトラマンエース13話「死刑! ウルトラ5兄弟」 ~超獣バラバ・マイナス宇宙・ゴルゴダ星・ウルトラレーザー!

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映開始記念・連動連載!)
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ウルトラマンエース』13話「死刑! ウルトラ5兄弟」 ~超獣バラバ・マイナス宇宙・ゴルゴダ星・ウルトラレーザー!

(脚本・田口成光 監督・吉野安雄 特殊技術・佐川和夫)
(文・久保達也)
(2005年執筆)


 ウルトラ5兄弟が顔見せではなしに勢ぞろいして、遂にドラマにも絡んだ大イベント編。ゴルゴダ星で十字架にかけられたウルトラ4兄弟の映像は、それまでのウルトラシリーズのイベント編のインパクトを凌駕し、当時の子供や後続の世代の子供たちにも鮮烈な印象を残した。


異次元人ヤプール放射能の雨に守られた超獣バラバは負けるはずがない。フハハハハハハハ」


 右手が鉄球、左手がカマとなっており、頭部も野牛・バッファローのような長大なツノが横方向に湾曲しながら反って伸びていることで悪魔的な印象も醸(かも)し出しており、頭頂部には十字型の小型刀剣(!)も装備した、まさに全身が武器となっている殺し屋超獣バラバ!


 本作の防衛組織・TAC(タック)の戦闘機・タックアローが果敢に立ち向かうも、ミサイル攻撃はいっさい通じない。そこで披露するのが機首から発射されるウルトラレーザー!


 脚本家が同じことから、第10話『決戦! エース対郷秀樹』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060709/p1)で変身怪人アンチラ星人が化けたニセ郷秀樹が所持していた、宇宙人由来のオーバーテクノロジーの銃器・ウルトラレーザーを解析して転用、タックアローに搭載したものであろう!?


 超獣バラバが都心で暴れる特撮シーンは豪雨。TAC隊員たちが超獣バラバを攻撃するシーンは晴天(汗)。


 DVD『ウルトラマンA(エース)』Vol.5(asin:B00024JJHE・04年8月27日発売)解説書でのインタビューによれば、この事情を当時は特撮班の助監督であった川北紘一氏は以下のように証言している。



「吉野さんが監督した『銀河に散った5つの星』(原文ママ)で、バラバっていう超獣が出て来てたんだけど、特撮班のほうは、雨を降らせる、風が吹く、砂嵐になる、そんなシチュエーションを考えた中で、「雷鳴で雨を降らしたら、バラバっていう超獣が生きる」とどんどん雨を降らしてね。ゴルゴダの星の磔にされたウルトラ兄弟たちのシチュエーションと相まって、異様な感じに仕上がって良かったんだけれど、本編の方はデイシーンで撮っているわけなんで、雨が降る条件ではない。曇りでもないわけで、どピーカンの中で撮っていたんだよね(笑)。そしたら誰のアイデアかは解らないけど、ラッシュで「この超獣バラバは放射能の雨に守られている」というナレーションが付いていた。このナレーション一発で、バラバがいるエリアだけで雨が降っているっていうのが成立した。上手いこと言うなってそれはとても関心した。それを許した吉野さんって監督もやっぱり凄いなぁと。それがすごく印象ある。」



 要はバラバが「放射能の雨」に守られているという設定はシナリオには書かれておらず、佐川和男特撮監督の暴走だったようである(爆)。バラバの周囲だけが豪雨であるというのも超獣の超能力らしくてカッコいいし、そういう設定なのだと好意的に納得してあげても良いのだけれど……。でもやっぱりちょっとムリはある(笑)。


 しかし、続く前後編の後編である第14話『銀河に散った5つの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)では、「放射能の雨」を浴びてしまった主人公・北斗星児隊員と南夕子隊員がTAC基地内での治療施設で疑似SF的な「人工太陽光線」を浴びせられたことで治癒されたことになっている。そうなるとこの「人工太陽光線」という治療方法も撮影後のナレーションでの後付けだったことになるのだろう(汗)。「放射能雨」と「人工太陽」(雨を太陽で乾かす)。これも結果的にウルトラシリーズらしい疑似SFチックな風情(ふぜい)を醸せているので結果オーライではある。


 今回の前後編を担当した、川北特撮監督もふれている先の吉野安雄監督は、往年の人気子供向けスパイアクションテレビドラマ『忍者部隊 月光』(64年)や、映画『男はつらいよ』(69年)シリーズで有名な渥美清主演の名作テレビドラマ『泣いてたまるか!』(66年)や、石坂浩二宝田明などが主演した人気探偵テレビドラマ『平四郎危機一髪』(67年)にも参加していた古株の監督。次作『ウルトラマンタロウ』(73年)第4話『大海亀怪獣東京を襲う!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071223/p1)~第5話『親星子星一番星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071230/p1)の前後編の監督も担当している。なんと! 我々オッサン世代が観ていた巨大ロボットアニメ『惑星ロボ ダンガードA(エース)』(77年)の映画『東映まんがまつり』での上映版『惑星ロボ ダンガードA対昆虫ロボット軍団』(77年)の脚本も務めている。



 偽のウルトラサインによってこの宇宙の裏側である「マイナス宇宙」にあるという「ゴルゴダ星」にウルトラ5兄弟を集め、その間に「放射能の雨」に守られた殺し屋超獣バラバを地球で暴れさせる異次元人ヤプールの壮大な侵略計画に敢然と戦いを挑むウルトラマンエースとTACの活躍には多くの人々が魅せられるところだろう。


 その「ゴルゴダ星」は「マイナス宇宙」にあり、肉眼では見えないが、特殊な電波でその姿を捉えることができるという。命名はTACによるものであり、その由来はイエス=キリストの最期(さいご)の地・ゴルゴダの丘に拠ったものであることは、劇中でも梶研究員によって説明されている。
 「マイナス宇宙」は劇中での説明通り、空間的に「裏側の宇宙」(!)ということであり、「反物質宇宙」ということではないだろう(もしもそうならば、「物質」と電荷が逆である「反物質」が接触すると相殺し合って対消滅(実質的には大爆発)が起きてしまうので、やはり「(正)物質」の身体を持つにすぎないウルトラ兄弟でも潜入ができないということになる)。


 「マイナス宇宙」に移行するため、エースは宇宙空間を「光速を超えるスピード」(!)で飛行した! 『A』の2年後に放映される日本におけるSFテレビアニメの金字塔『宇宙戦艦ヤマト』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)における超光速航行=「ワープ航法」以前にこのようなSFマインドあふれる描写があったとは!? その際、エースは荘厳な光の奔流を割っていくかのように前進していく。
 「マイナス宇宙」といい「超光速」といい、あるいは「絶対零度」といい、「SF性」よりも「人間ドラマ性」が重視されてきた第2期ウルトラシリーズではあるのだが、SF性や擬似科学性がなくなってしまったワケでは決してない。時に第1期ウルトラシリーズをはるかに上回るような先端的なSFマインドを感じさせる要素やビジュアルも、本話のようにあったのだ!


 本話の脚本を務めた田口成光(たぐち・しげみつ)は、数年後の『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)では300万光年かなたの「ウルトラの星」がその軌道をハズれて「地球」に激突しそうになるという前後編エピソードの後編である第39話『レオ兄弟 ウルトラ兄弟 勝利の時』も担当している。『宇宙戦艦ヤマト』の総集編映画(77年)の大ヒットによるSFアニメブームの到来で「光年」や「超光速ワープ航法」という概念は当時の小学生たちのほとんど全員も理解するSF概念となった。
 しかし、これとほとんど同時に勃興する70年代末期の第3次怪獣ブームの時代以降に同作の再放送を鑑賞した子供たちは、300万光年のかなたにある「ウルトラの星」が1週間で「地球」に到達することに違和感を抱いたものである(笑)。ウルトラマンエースに光の速さを超えさせた田口も当然のことながら、内心ではそのように思っていたのだろうと今となっては思うのだ。
 シリーズ第3作にあたるテレビ長編『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』(79年)では、惑星イスカンダルが公転軌道をハズれて宇宙空間を超高速で漂流した末に、「自然ワープ」を繰り返してしまうという描写があった。それ以来、筆者も「ウルトラの星」が300万光年の距離を移動して「地球」に衝突しそうになったのは、この「自然ワープ」を繰り返してしまったのだ……と好意的に脳内補完をすることにしている。というか、後付けの公式設定にしてほしい!(笑)



 ウルトラ5兄弟の十字架が設置された「ゴルゴダ星」の「ゴルゴタの丘」の特撮美術セットのデカさ・広大さ・天井の高さ・センスの見事さにもまた注目!
 十字架の尖頭には各ウルトラマンの名前の「ウルトラサイン」も刻まれていた(各自の名前の「ウルトラサイン」もこれがフィルム初出である)。ちなみに、前話末尾の本話予告編では「ウルトラサイン」を「ウルトラシグナル」と呼称していた。


 ウルトラマンたちが低温に弱いという設定は、かつて『ウルトラセブン』第25話『零下140度の対決』で描かれた描写をきちんと踏襲したものでもある。
 異次元人ヤプールの策謀で冷気を浴びせられ光と熱を奪われたウルトラ4兄弟はその身を犠牲にして、「お前の使命は地球を守ることだ!」と四方から囲んで自身たちの残り少ないエネルギーを同心円状の光輪のかたちで中心にいるエースに分け与えた。名付けてウルトラチャージ(充電)!
 このあたりのエネルギーという抽象的なものを分け与えることができるというウルトラ一族の超常的な設定も子供心をワクワクさせて目で見てわかるものとなっているし、中心にエースを据えて四方から取り囲んだウルトラ4兄弟から多数の円形の光輪が狭まるように収束していく光学合成の特撮映像もカッコいい。



 『A』2度目の前後編だが、今回も第7話『怪獣対超獣対宇宙人』(脚本・市川森一)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060618/p1)~第8話『太陽の命 エースの命』(脚本・上原正三)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060624/p1)の前後編のように、前編を田口成光、後編を市川森一(いちかわ・しんいち)が執筆するという分業制がとられている。『ウルトラセブン』(67年)でも脚本の1人あたりのギャラを少し高くするために、30分ワク前半Aパートと後半Bパートを異なる脚本回で執筆して「共作」扱いとしていた証言があるものの(笑)、ウルトラシリーズにかぎらず珍しい試みであり、作家性の違いに注目して観るのも面白いだろう。


 1960年代後半の『ウルトラQ』・初代『ウルトラマン』(共に66年)・『ウルトラセブン』(67年)までの第1期ウルトラシリーズに登場する明るく元気で健全な子供像を真逆に反転させたかのような、70年代的なイジけていたりヒネこびていたり逆恨みまでしたりする不健全な子供像といった斬新な挑戦への扉を開いた田口成光氏――逆に云うならば、子供番組としてはいささかやりすぎで重たすぎでもあったのだが、その象徴的な1本が第2期ウルトラシリーズの第1作目『帰ってきたウルトラマン』(71年)の中の埋もれた異色作の名編である第15話『怪獣少年の復讐』であった。これなどは片脚がビッコである身体障害者の少年の話でもある!(汗)――。
 氏は本作『ウルトラマンA』(72年)からその本領を発揮しだして、第3話『燃えろ! 超獣地獄』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060528/p1)では「子供の心が純真だと思っているのは人間だけだ!」という子供番組らしからぬ(汗)大名言を残している。次作『ウルトラマンタロウ』(73年)ではメインライターとなり、その真骨頂を発揮していくが、今回は人間ドラマや社会派テーマよりもウルトラ兄弟共演を旨(むね)としたイベント編であるために、その本来の持味や作家性を発揮しているとはいえないのかもしれない。


 兄を超獣に殺され(!)、幼い弟が手持ちのパチンコ(Y字型の棒にゴム紐を張って玉を撃つスリンガーショット)で超獣に無謀にも復讐しようとする描写もベタである。しかし、我々は幼少時からオタクタイプ・負け犬タイプ(爆)でヒネくれた可愛くない子供だったから、そのようにリアリズム的にはムチャで無謀だと感じたのかもしれない。後年にプロレスラーや格闘家になったような活発な人間は我々とは真逆なことに、子供のころに『ウルトラマン』のような変身ヒーローものにおけるヒーローの敗北描写にショックを受けて奮起したという逸話(いつわ)なども多々あるからなのだ。フツーのヤンチャで元気な男の子というものは、敵わずとも敵に一矢(いっし)は報(むく)いんと勇ましいことを思うものなのかもしれない。……と歳を取ってくると、我々の方こそが子供たちの中では例外的な感想を抱いていた存在だったのかも!? などと、その感慨が相対化されてきたりもして(笑)。



 しかし、ハード・シリアス・リアル志向の特撮作品を求める方々や、そもそもウルトラ兄弟という設定自体に異を唱えている第1期ウルトラシリーズ至上主義者の人々にとっては、ウルトラマンたちの「擬人化」として我慢ができないとされてきた描写がまさに本話で登場する。
 地球の危機を察知しながらもゴルゴダ星でヤプールによって絶対零度(氷点下273度)の冷気を浴びせられ、地球に急行することができないエースに対し、初代ウルトラマンが「兄弟のエネルギーをおまえに与えよう」とエースに進言するも、「そんなことをしたら兄さんたちが死んでしまう!」と拒絶するや、初代マンがエースに平手打ちを食らわすシーンである。


 今回の前後編はリアルタイムで幼児期に視聴した際の記憶がけっこう残っている。特にこのシーンはかなり鮮明に覚えている。放映後、近所の友人たちと『ウルトラマンA』ごっこをやった際にこの回がネタになり、こんなときにかぎって筆者がエース役になってしまい、初代マン役の奴に本気で殴られた痛い経験があるからよけいにそうなのかもしれないが(笑)。しかし、小学館学年誌『小学二年生』に当時掲載された内山まもるのコミカライズ作品でもこのシーンはきちんと描かれており、けっこう重要なポイントだとは思うのだ。


 次作『タロウ』第33話『ウルトラの国 大爆発5秒前!』(脚本・佐々木守)においては、極悪宇宙人テンペラー星人に単身立ち向かって徹底的に痛めつけられるタロウを見ていられずに、何度も助けようとする新マン(=帰ってきたウルトラマンウルトラマンジャック)やエースを、初代マンとセブンは、


「まぁ待て、待つんだ」「タロウひとりでやらせるんだ!」


 などと制止し、少々クールな印象を新マンとエースのみならず視聴者にも与えている。これはもちろん、かつての映像本編でも新マン(郷秀樹)とエース(北斗星児)は未熟で発展途上の若者であって、初代マン(ハヤタ)とセブン(モロボシダン)は比較的完成された人格者であったことと、同じウルトラ兄弟の中でも長幼で性格の描き分けをするための処置でもあった(これはそのままウルトラシリーズにかぎらず、60年代と70年代のヒーロー像や、60年代と70年代の日本の若者たちの精神年齢やモラトリアル期間の変化も反映している)。
 と同時に、クールなようでも、いわゆる「盲目的な甘やかす愛」ではなく、長期的な成長も見据えた「知恵もある厳しい愛」があったからこそ、タロウに試練を与えているわけである。今回の描写はそういった厳しさもある兄弟愛をそのものスバリ「平手打ち」として直接的に描いたことが最適解であったかはともかくとしても、そういった趣旨で表現されたものでもあったのだ。


 小学館学年誌編集部が考案し、誌面で独自に展開していた「ウルトラ兄弟」なる設定も、本作『A』の第1話『輝け! ウルトラ五兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060514/p1)によって当時は完全に公式設定となっていたのだから、こうした人間クサい芝居が演じられるのも至極当然の成り行きではあった。しかし、幼児や小学校低学年であればともかく小学校中学年以上になればあまりに人間クサくてややカッコ悪くて恥ずかしくなってくる描写かもしれないので(中高生以上になってからの再視聴であれば、また割り切って観られたりもするのだけれども)、「平手打ち」ではなく「セリフ」による叱責のみで済ませておいた方がよかったとはいえるのかもしれない。


 とはいえ、その「平手打ち」でウルトラマンたちが神秘性を完全に喪失してしまったワケでもない。少なくともイエス=キリストが磔(はりつけ)にされた「ゴルゴダの丘」からネーミングされた「ゴルゴダ星」でウルトラ4兄弟が十字架に磔にされている場面は、無敵の一神教の「唯一絶対神」としてではなく黄昏(たそがれ)て堕(お)ちてしまった多神教の「神々」としての描写ではあった。しかし、そんな「擬人化」の印象なぞも吹き飛ばしてしまうような「神々しさ」にも満ちており、当時の子供たちにも絶大なるインパクトと荘厳さを醸して、特撮マニアではない世代人たちにも強い印象を残しているのだ……



 ちなみに、小学館学年誌では磔にされたウルトラ兄弟が十字架の上で感じた想いを掲載していた。採録しておくのでウルトラ兄弟のエースと地球に対する熱い想いを感じてほしい(笑)――デジタルウルトラプロジェクト発売の『ウルトラマンA』DVD(asin:B00024JIU2)初回特典として、本作放映当時の小学館学年誌の記事を復刻した小冊子が頒布されたものからの引用だが、出典が一切記載されていないため『小学○年生』の何月号掲載だったのかが定かではないのは、ご了承を願いたい――。



ゾフィー)長男の私がヤプール人の罠を見破れず、弟たちまでこんな目に遭わせてしまった。
      私はどうなってもよい。せめて弟たちよ、ここを飛び出し、宇宙の平和を守ってくれ。
(初代マン)しまった。なんということだ。4人とも十字架にかけられるなんて。
      ぼくは昔ゼットンにやられかけた。それがまたヤプール人のためにやられてしまった。ぼくがもっと強ければ抜け出せるんだが。
(セブン)エースひとりに戦わせてはいられない。えい、この十字架の鎖を破って早くエースのもとに行かなければ……。
     ああ、身体が冷たくなってくる。くそっ、負けるものか。
(新マン)エースの代わりにぼくが地球へ行って戦いたかったんだ。
     でも5人の中で生き残るとすればいちばん若いエースが生きるべきなんだ。頑張れよエース、私の分まで戦ってくれ。



 子供向けのキャプションだから稚気満々(ちきまんまん)ではあるのだけど、キャラクターの描き分けが見事である。もちろん、こうしたセリフがなくとも、『ウルトラセブン』(67年)第39話『セブン暗殺計画(前編)』同様、ヒーローを磔にしたままのエンディングは最大の危機感を煽(あお)って、視聴者の関心を次週に繋ぎとめるには充分に過ぎ、その間は小学校のクラスの話題としては最高のネタになっていたに違いない。
 この手法は近年では連続ものとなった平成『ライダー』諸作品(https://katoku99.hatenablog.com/archive/category/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC)や『ウルトラマンネクサス』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)でも有効に用いられてきたが、05年現在放映中の『ウルトラマンマックス』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)でも前後編を放映する際にはぜひとも活かしてほしいものである。



 ラストシーンは、ヤプールが中空にウルトラ4兄弟の磔の映像を浮かばせて地球人を威圧しつつ、その手前で瓦礫の中で向かい合って倒れている、ウルトラマンエースに男女合体変身する主人公・北斗星児隊員と南夕子隊員の映像で終わっている。その画(え)は第1話の冒頭で一度は命を落として向い合わせに倒れた際の北斗と南の映像の構図と実は同じである。もちろん偶然であるワケがなく意図的なものだろう。



<こだわりコーナー>


*第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060604/p1)と第6話『変身超獣の謎を追え!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060611/p1)でのエースの声は似た声質の代役の声優が務めていたと思われるが、今回のエースの声は第1話と同じ納谷悟朗(なや・ごろう)。それはいいのだが、初代マンの声は当時『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)でショッカー怪人の声を多く担当し、本作でものちの第25話『ピラミットは超獣の巣だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061021/p1)で古代星人オリオン星人の声を演じた辻村真人(つじむら・まひと)かと思われる。なにかジジくさい声(笑)で正直ミスキャストではないのかと。せめて池水通洋(いけみず・みちひろ)を起用できなかったものなのか?(本話ではセブンの声を担当した模様) ちなみに、ウルトラ兄弟の長男・ゾフィーの声は市川治。こちらの方がはるかに若々しい声だ(笑)。


*本作が放映されたのは72年6月30日(金)。その翌日である7月1日(土)放映の『仮面ライダー』は第66話『ショッカー墓場よみがえる怪人たち』。さらに、翌7月2日(日)放映の『超人バロム・1(ワン)』(72年)では第14話『魔人アリゲルゲと13のドルゲ魔人』であった。つまり、当時の子供たちは3日連続でヒーローや再生怪人が大挙登場する作品を観られたのであった。これは4月期と7月期のクールの変わり目だったことからつくり手たちがイベント編を配したための偶然ではあった(前者は厳密には主演の藤岡弘が一時失踪したことにも起因していたのだけど・汗)。まぁ、筆者もその恩恵にあずかった世代であるわけだが、やはり現在の子供たちも喜んでくれる普遍的な作劇だとは思うのだ。
 70年代前半の東映作品や本作『ウルトラマンA』のシリーズ前半のように、現行テレビ特撮も1クールごとにこうした人間ドラマや社会派テーマ抜きでの再生怪人軍団登場編やヒーロー共演編などのイベント編を派手にやるべきだと主張したい! 2005年現在放映中の『ウルトラマンマックス』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)での実現を期待したい! 今度こそ『セブン』のNGシナリオである『宇宙人15+怪獣35』(脚本・川崎高(実相寺昭雄)と上原正三の共作)のようなイベント編を実現して、子供たちを熱狂させるべきだとマジで思うのだ。
(『宇宙人15+怪獣35』は、ペギラ・バルタン星人・レッドキングメフィラス星人エレキングイカルス星人など『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』の怪獣が大挙登場するエピソードだったのだ)


*視聴率18.0%。(以降、ウルトラ兄弟が客演する度に視聴率は上昇し、秋口の3ヶ月間に20%超えを連発しつづける萌芽とも本話はなった)


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年準備号』(05年8月発行)~『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)


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ウルトラマンA(エース) Vol.4 [DVD]

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