假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありませんので、悪しからず!(笑)

ウルトラマンエース最終回「明日のエースは君だ!」

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)


ウルトラマンエース#51「命を吸う音」 〜石堂淑朗最終脚本回 東京MX・6/13(日)放映分!
ウルトラマンメビウス#44「エースの願い」 〜南夕子客演!
ウルトラマンエース#28「さようなら夕子よ、月の妹よ」 南夕子降板の真相異論!
「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧

翌日日付で、『ウルトラマンエース』全話評完結! 長編論文『エース』総論をUP予定!

「ウルトラマンエース」総論 〜『A』再評価・全話評 完結!

引き続き、『ウルトラマンタロウ』全話評も連載予定!!

「ウルトラマンタロウ 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・市川森一 監督・筧正典 特殊技術・高野宏一)
(文・久保達也)
 空を飛行する二機の宇宙船。一方がもう一機にレーザーを浴びせて追撃、それにレーザーで応酬していた宇宙船はやがて郊外の地上に墜落、炎上する。


ナレーション「正体不明の円盤同志の戦いに、TAC(タック)はただちに調査にむかった」


 撃墜された宇宙船の周囲を捜索する防衛組織・TAC。


山中「隊長、誰もいません。死体もありません」
竜「うーむ、無人の円盤だったのかな」


 北斗のガイガーカウンターのような探知機に反応が。


北斗「隊長、反応があります!」


 反応があった地点へと、山道を進んでいくTAC。


 頭でっかちで三本指の、全身が紫色の生物を三人の子供たちが取り囲んでいた。大きくてまん丸な目、開いた口からは三本しかない歯がのぞいている、どことなくあどけない表情の生物に、三人の子供が攻撃を加える。子供たちは皆、ウルトラ兄弟のお面をかぶっていた……


ウルトラマンウルトラマン、ウルトラキック!」


 そう叫ぶと、マンは生物に飛び蹴りをくらわせた!


ゾフィーゾフィー、M87光線! ビビビビビ……」


 理科の実験で使用するテスターのような2本の棒を生物に突きつけ、電流攻撃を加えるゾフィー


ウルトラセブン「セブン、アイスラッガー!」


 市販の玩具のような、割と精巧な造りもののアイスラッガー(美術スタッフのセンスが光る!)を、セブンが生物の顔面に向かって投げつける! 痛がる様子の生物……


山中「こらっ! やめろっ!」


 生物反応を追ってきたTACがその現場に出くわした。
ゾフィー「あっ、TACだ!」
ウルトラマン「そいつ、宇宙人だよ」
ウルトラセブン「円盤から逃げてきたから、追っかけてきたんだ、おれたち」
美川「まだ子供だわ、この宇宙人」
今野「泣いてるじゃないか」
竜「とりあえず、基地まで連れて帰ろう」
今野「さあ、おいで」


 今野が生物に暖かく手を差しのべると、まるで親に甘えるかのような仕草を見せる宇宙人の子供。
 TACが宇宙人を保護するのがよほど意外だったのか、ウルトラマンが北斗にたずねる。


ウルトラマン「ねえ、そいつ死刑にするの?」
北斗「どうして?」
ウルトラマン「だって宇宙人なんだろ?」
北斗「宇宙人ならみんな死刑にしていいと思っているのか? そのお面はなんだ!」
ゾフィー「おれゾフィー!」
ウルトラマンウルトラマン!」
ウルトラセブンウルトラセブン!」
ウルトラ3兄弟「ウルトラ兄弟で〜す!」
北斗「ウルトラ兄弟は、弱いものいじめはしない! 何もしない宇宙人の子を、わけもなくいじめたりはしない!」


 ウルトラ兄弟のお面を取る三人の子供たち。さっきまでの威勢はどこへやら、北斗に一喝され、皆一様にしょんぼりとした表情である。


北斗「ウルトラ兄弟は、ゾフィーも、マンもセブンも、弱いものの味方なんだ!」


 ウルトラマンのお面をした少年の行為の功罪両面というシチュエーションで、『ウルトラマンA(エース)』ファンひいては『ウルトラ』シリーズファンは思い出さないだろうか?
 そう、『ウルトラマンA』第3クールのダン少年編中の一編、第33話『あの気球船を撃て!』(脚本・石堂淑朗http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061218/p1)に登場したウルトラマンエースのお面を付けた子役・だいすけちゃんの反復テーマ描写でもあるのだ。


 子供たちのいじめから保護した宇宙人の子供を、山中が運転する特殊車両・TACパンサーで連れ帰る竜隊長と北斗。それを今野・吉村・美川が乗るジープが追尾する。
 空想科学・空想的兵器を描く一方で、第17話『怪談 ほたるケ原の鬼女(きじょ)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060904/p1)でTAC・V7(ブイセブン)ミサイルをTAC霞峠工場から大型コンテナトラックで輸送しその前後をTACパンサーやジープで警備して、第39話『セブンの命! エースの命!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070129/p1)で火炎超獣ファイヤーモンスを粉砕した二連装式ビーム兵器・シルバーシャークジープに搭載されて、第25話『ピラミットは超獣の巣』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061021/p1)ではV9ミサイルに言及し、第44話『節分怪談! 光る豆』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070304/p1)には新ビーム兵器・ゴールデンホークが登場するような、地に足のついたミリタリー(軍事)的リアリズムは最後まで踏襲された!


北斗「見たところ、サイモン星人の子供のようですね」
竜「サイモン星人といえば、かつてヤプールに侵略され、宇宙を追放された遊牧星人だ」
北斗「すると、宇宙の迷い子か……」


 マニアが絶賛する市川森一(いちかわ・しんいち)脚本回ではあるが、ナゼそんなことを知ってるんだというツッコミができる粗はやはりある。
 でも、今までに番組で描かれてこなかった事象(宇宙規模でのヤプールの侵略の事実をTACが把握)もあったのだと好意的な深読みをしましょうよ。多分、天下の市川先生でもそこまで深く考えずに適当な唐突新設定で執筆されたのだとは思いますが……(笑)


 と、そのとき、サイモンの頭上にある一本角(ツノ)の赤いランプが危険信号のように点滅をはじめた!


山中「どうしたんだろ?」
竜「なにかにおびえているようだな」


 ただならぬ様子にパンサーとジープを停車させるTACだが、その予感は見事に的中、青い空を白い幾多の亡霊が浮遊するのを一同は目撃する!


吉村「おっ、隊長、あれを!」
竜「これはただごとではないぞ!」


ヤプール「地球の空をさまよう超獣の亡霊たちよ! エースの手で空に散った幾多の超獣の怨霊よ! ここに集まれ!」


 さきほどまでウルトラ兄弟を気取っていた子供たちも、このただごとではない事態を目撃した!


子供A「ユニタングだ!」
子供B「あっ、マザリュースだ!」
たけし「カウラだ!」


 第11話『超獣は10人の女?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060731/p1)に登場したくの一超獣ユニタング、第24話『見よ! 真夜中の大変身』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1)に登場した地獄超獣マザリュースとマグマ超人マザロン人、第16話『怪談・牛神男(うしがみおとこ)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060903/p1)に登場した牛神超獣カウラの亡霊が空中を舞い、やがてそれは異次元超人・巨大ヤプールの亡霊と合体する!
 我々のようにこだわるマニア(笑)では決してない当時の作り手たちがマニアックに意識してセレクトしたということは多分ないのだろうが、偶然とはいえ女ヤプール10人が合体したユニタング、ヤプールの怨念色が強いマザリュースと同じ話に登場したヤプール老人が変身するマザロン人、雲水(うんすい・修行僧)の姿を借りたヤプールが媒介したカウラ……と異次元人ヤプールに因縁の深い超獣の集合体とも見て取れる。


ヤプール「今一度生き返るのだ! 今出(い)でよ! ジャンボキング!」


 空中を浮遊していた超獣たちの亡霊が合体を遂げ、地上で最強超獣ジャンボキングとして巨大な姿を現した!
 カウラが牛としての本来の姿に戻ったかのような四つ足のスタイルに(ベースが四つ足の変身超獣ブロッケンであるのか?)、ユニタングの鋏(はさみ)状の腕、マザリュースやマザロン人の突起状の装飾が全身に施された最強兵器である!


 進撃を開始したジャンボキングは口から火炎ミサイルを連射し、TACの周囲が炎に包まれる!
 隊員たちはタックガンで総攻撃を加えるが、圧倒的な火炎の量にまるで歯がたたず、タックパンサーも爆発炎上してしまう! がけっぷちに追いつめられる隊員たち!


山中「隊長、とても応戦できません!」
美川「このままでは全滅してしまいます!」
竜「よし、全員基地へ待避!」


 一方、ひとりサイモンを守ってジャンボキングから逃れた北斗は、さきほどの子供たちに出くわした。


北斗「君たち、早く逃げないと危ないぞ!」
たけし「おれたちの基地へ案内するよ」
北斗「君たちの基地へ?」


 北斗が案内された場所の明かりが灯ると、そこには防衛組織の作戦室の雰囲気が再現され、どこから持ってきたのか各種機器類が並び、ブリキ玩具のロボットや『帰ってきたウルトラマン』(71年)に登場する防衛組織・MAT(マット)の隊員人形などが飾られていた。


子供A「ここがおれたちの作戦室なんだ」
北斗「ほぉ〜、無線機まであるのか」
子供B「ケガ治してやるよ」


 救急箱を用意する子供B。


北斗「なんでも揃ってるんだなあ」
子供B「おれんち医者だからね。どれ、足出してごらん」
 子供Bが北斗の足を治療している間、あとの二人の子供がサイモン星人の子供に和解を求める。


たけし「さっきは悪かったな。謝るよ」


 たけしはさきほどまでいじめていたサイモン星人の子供に握手を求めた。地球人と宇宙人の子供の固い握手……


北斗「そうでなくっちゃ。彼、サイモンっていうんだ」
子供A「サイモン、よろしく!」
たけし「仲良くしような!」


 たけしはサイモンも左腕を負傷していることに気がついた。


たけし「おい、サイモンもケガしてるぞ!」
子供B「なおしてやるよ、おいで」


 だがサイモンは治療を嫌がる素振りを見せる。


たけし「痛くないから!」


 そのとき、基地の無線機のスピーカーから、ヤプールの脅迫の声が響いた!


ヤプール「サイモンを引き渡せ! 私はサイモンを追ってきたのだ! 地球人に用はない! もし地球人がサイモンをかばうならば、地球人も私の敵だ!
 サイモンを出せ! サイモンを私に渡せ! さもないとこの街を破壊して皆殺しにしてやるぞ!」


子供A「街をこわされたら困るな」
子供B「街には友達もいるし」
子供A「パパやママだっているしなあ」
子供B「どうする、たけし?」


 意を決したたけしが北斗に近寄る。


たけし「ウルトラ兄弟は、弱いものの味方だと云ったね」
 だまってそれに力強くうなづく北斗。


たけし「おれはゾフィーだ! サイモンはおれが守るよ! おまえたちはうちへ帰っていいよ」
子供A「おれだってウルトラマンだぞ!」
子供B「おれはセブンだ!」
たけし「サイモンは渡すものか!」
北斗「よく云った! その気持ちがあれば、君たちは立派にウルトラの兄弟だ! 超獣は俺に任せとけ! 君たちはここでサイモンを守るんだ!」


 ジャンボキング打倒のために基地を出ていこうとする北斗の足を、サイモンが角のランプから赤いレーザーを発して攻撃した!?


北斗「サイモン、おまえどうして俺の足を?」
子供A「サイモンは行かせたくないんだ。心配してるんだよ。なあ、サイモン」
 赤ん坊のような声でうなずくサイモン。
北斗「サイモン……」


 富士山麓のゲートが開き、タックファルコンが、タックアロー二機が、ジャンボキング攻撃のために発進する!
 『ウルトラセブン』(67年)第30話『栄光は誰れのために』において、ウルトラ警備隊の地底戦車・マグマライザーを中心にして行われた野戦訓練の場面に使用された進撃マーチ風のBGM流用が決死の出撃に華を添える!


 高層マンションを粉々に破壊し、鼻先からの火炎攻撃で周囲を焼き尽くし、巨大な足で民家を踏み潰すなど、徹底的に猛威を奮うジャンボキングに対し、『タックの歌』のワンダバ入りインストゥルメンタルをバックに、タックファルコンとタックアローが攻撃を加える!


竜「攻撃開始! 突撃せよ!」


 華麗に宙を舞ってジャンボキングを攻撃するファルコンとアロー(操演の腕が光る!)だが、まるでびくともせずに進撃を続けるジャンボキング!


山中「2号機よりファルコンへ。熱光線では効き目がありません! アロー空対空ミサイルを発射しましょう!」
竜「下は街だ。これ以上の強化作戦はできん。まず超獣を他の場所へ移動させるんだ。投げ網作戦用意!」
山中「了解!」


 やみくもに攻撃を加えるばかりではなく、状況や超獣の特性からの的確な判断によって下される作戦命令。
 これこそが、次作『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)に登場する一見コミカルがらも、実はウルトラシリーズ史上最大の対怪獣作戦数を誇る防衛組織ZAT(ザット)にも受け継がれたミリタリー的リアリズムというものである。そして、「投げ網作戦」という即物的な作戦名が、どこか『タロウ』のZATの作戦名っぽくもある(笑)。


 タックファルコンの機体下部から落下した大きな網がジャンボキングをからめ取り、タックアロー二機がワイヤーで網ごとジャンボキングを輸送しようとするが、あまりの重量に耐えきれずにワイヤーが切れ、吹っ飛ばされたタックアローは次々に墜落する!


山中「脱出!」


 それをあざ笑うかのように、ヤプールの脅迫の声が街中にこだまする!


ヤプール「今日は街の半分を破壊した。あとの半分は明日までとっておいてやろう。明日の朝、8時までにサイモンを渡すのだ!」


 姿を消すジャンボキング。半分が廃墟と化した街……


 それを見ていたたまれなくなったのか、サイモンが子供たちの基地から外に出ようとする。


北斗「サイモン、どこへ行くんだ」
子供B「こいつ、自分からつかまりに行こうとしているんだ」
たけし「行っちゃだめだ!」
子供A「でも、明日になったらまたあいつが街を破壊しに来るぜ」
たけし「地球には、エースがいる!」


 一瞬ギョッとしてたけしを見つめる北斗。


たけし「エースが来てくれるまで、おれたちがサイモンを守るんだ!」
子供B「そうだ! おれたちだってウルトラの兄弟なんだ!」
子供A「ようし、みんなで力を合わせて、サイモンを守ろう!」
北斗「よし、僕はTACに帰らなければならない。ここは君たちに任せたぞ!」


 「大丈夫!」「まかしとけ!」「心配すんな!」などの子供たちの声に頼もしさを感じつつ、北斗はTAC本部に帰還する。


 ジャンボキングを各ブロック別に分けた側面図を映したモニターを前に、解説を加える竜隊長。


竜「このようにジャンボキングは、これまで我々が戦ってきた色々な超獣たちの、最も強い部分を結集して再生されている、超獣の王とでもいうべき最強の超獣だ!」
今野「一度死んだはずの超獣が、どうしてこんな形で生まれかわってきたんでしょうか?」
竜「死んだとはいっても、地上でバラバラにされた超獣の分子は大気を浮遊しているんだ。ヤプールはその分子を一気に集中させたんだ!」


 ヤプールは異次元人なのだから、死んだ超獣を再生させるような、人智を超える能力くらい持っているのだ程度で済ませてもよさそうなものを、一応の疑似科学的味付けをして説得力を持たせようとする姿勢には敬服する。


美川「そのヤプールはどこにいるんでしょうか? ジャンボキングを操っている、そのヤプールは?」
竜「残念ながら、わからん」
山中「隊長、ここは一応奴の要求どおり、サイモンを渡して様子を見たらどうです」
北斗「待って下さい! そんなことをしたら、あの少年たちの気持ちを踏みにじってしまうことになります!」
山中「いいか、ジャンボキングを倒す手がないとすれば、街を守る方法はほかにないじゃないか」
北斗「家や街は、また建てなおすこともできます。しかしあの少年たちの気持ちは、一度踏みにじったら、簡単には元に戻りません! 彼らはウルトラ兄弟のように勇敢で、やさしい気持ちを持とうとしています! その気持ちだけは、大切にしてやりたいと思います!」


 街を守ろうとする山中、子供たちの気持ちを守ろうとする北斗、どちらの発言も極めて理が感じられる、まっとうな意見であるのだ。
 そして子供の心をも守ろうとするシーケンスは、第3クールのダン少年編である第34話『海の虹に超獣が踊る』(脚本・長坂秀佳http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061223/p1)での竜隊長の「子供が生きる力を失おうとしているのだとしたら、それは超獣以上の脅威だ」というセリフや、第35話『ゾフィからの贈りもの』(脚本・久保田圭司・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061231/p1)でのウルトラ兄弟の長男・ゾフィの忠告「弟よ、よく聞け。おまえは過ちを犯したのだ。信じるべきものを信じず、少年の心を深く傷付けてしまったのだ。おまえは償(つぐな)わなければならない」に象徴される同系テーマの踏襲でもあったのだ!


 山中と北斗双方の意見を尊重したうえで、竜隊長はついにある決断を下す!


竜「明日、試してみよう!」
今野「試すって、何をです?」
竜「細胞分解ミサイルだ!」
吉村「しかし、あれはまだ試作の段階では!?」
竜「やるだけのことはやってみよう。街も、子供たちの心も、破壊させてはならん!」
北斗「隊長!」


 細胞分解ミサイルは、前後編の第26話『全滅! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061030/p1)に登場したTACの新兵器・細胞破壊ミサイル、第27話『奇跡! ウルトラの父』(共に脚本・田口成光 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061105/p1)に登場したその改良であるヒッポリトドームを破壊する戦果をあげた細胞破壊銃のシリーズの後継発展型か?


 北斗が子供たちの気持ちを尊重するように、また第30話『きみにも見えるウルトラの星』(脚本・田口成光 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061125/p1)でも独断で警戒地域に急患の救急車を通した北斗の行為に対して、例によって山中隊員が北斗を激しく責めたて、美川隊員は「山中隊員だってもしあの現場に居たら北斗隊員と同じように……」と必死で北斗をかばい、竜隊長は「仮にもし自分がその現場に居たら」と仮定し隊員たちにどうしたかを聞き、今野隊員は深く悩んだ揚げ句に何も答えず、吉村隊員は「ぼくもあの現場に居たら北斗隊員と同じようにしたと思います!」と力強く答えて、竜隊長は「非常に難しい判断だったわけだ」と結論づけ、同じ過ちを二度と繰り返すなと北斗を諭してみせたように、それぞれに一理ある賛否・是々非々で判断がつけにくい事象に対する複数の見解を吸い上げてみせて、街と子供の心の両方を守ろうと采配を下す、いつもながらの極めて理想的な竜隊長の上司像には、思わず涙があふれ出る……


 満天に輝く星々を見上げ、決意を固める北斗。


北斗「明日はエースになろう。明日こそは、どんなことがあっても」


 そのとき、星空の中にオーロラが輝き、かつてともに戦った盟友・南夕子の姿が現れた! 「月の妹」となったことを象徴するような、純白のロングドレスを身にまとって……


夕子「星司さん、もしあなたが、ウルトラマンエースだということを誰かに知られたら、あなたは二度と人間の姿に戻れないのよ」
北斗「知っている。しかし、どうして今、俺にそれを云うんだ……夕子!」


 夕子は何も答えてくれず、オーロラの中に消えた……


 翌朝、細胞分解ミサイルの発射準備にかかるTAC。


竜「北斗、おまえはサイモンと子供たちのところに行ってやれ」
北斗「ハイっ!」


 北斗が子供たちの秘密基地に駆けこむと、白いヘルメットをかぶり、玩具の機関銃やバットを手にした数十人の男の子たちが気勢をあげていた。70年代初頭という時代から、どうしても学生運動や左翼過激派の学生を連想してしまう(笑)。
 ちなみに学生運動で大学が封鎖されてしまい、大人社会にも学生運動にも双方に懐疑の眼を向けてドロップアウトしている休学中の学生・篠田一郎と北斗の交流を描いたのが、第20話『青春の星 ふたりの星』(脚本・田口成光 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061008/p1)であった。


たけし「みんなもサイモンを守るんだってさ!」


 「みんなでサイモンを守るんだ!」などと口々に叫ぶ子供たちを頼もしく思う北斗だが、腕時計が8時になった途端、赤く点滅を始めたサイモンの角に疑念を抱く……


北斗「あの点滅はなんだろう? 何かを発信しているようだが……」


竜「発射用意!」
吉村「ハイ!」
竜「発射!」


 ついに発射される細胞分解ミサイル!(映像で見る限りミサイルというより完全にレーザーなのだが、本編班と特撮班の連絡がうまくいっていなかった?・汗)


吉村「命中だ!」


 だがジャンボキングはバラバラになるどころか、目から発した波状光線でミサイルの発射台を粉砕し、口からのミサイル連射で隊員たちを火の海に包む!
 雑居ビルを破壊して進撃を開始するジャンボキング!
 信号機や街灯、電話ボックスにポスト、果ては「立入禁止」の看板という細部に至るまで、緻密につくられたミニチュアセットが、圧倒的な火炎の量で焼き尽くされる!


子供A「大変だぁ〜! 超獣がこっちに向かってくるぞ!」
北斗「危ない! みんな逃げろ! 逃げるんだ!」


 ジャンボキングがすぐそばまで迫り、危険を感じた北斗は子供たちとサイモンを避難させる。
 サイモンを守って逃げる北斗を、ジャンボキングの口ミサイルが襲い、周囲は火の海に包まれる!
 そこからジャンプして逃れるサイモン。
 続いて北斗も脱出し、「大丈夫か?」とサイモンを気遣うが、そのときサイモンは驚くべき言葉を口にする!


サイモン「北斗星司よ、私の声に聞き覚えはないか?」
北斗「……ヤプール!?」
サイモン「そのとおり、ジャンボキングを操っているのはこの私だ! まんまと罠にかかったな。早くみんなの前でエースになってやったらどうだ? 北斗星司、いや、ウルトラマンエースよ!」


 思わずタックガンを構える北斗だが、異変に気づいた3人のウルトラ兄弟たちが北斗を制止する。


たけし「なにをするんだ!」
北斗「どくんだ!」
サイモン「フフフ……みんなの前で私を撃つがいい。誰も私がヤプールだとは信じていないぞ。私を撃てばおまえは子供たちの信頼を裏切ることになるぞ!」


 背後にいるウルトラ3兄弟の視線を感じ、どうすることもできない北斗。


北斗「くそっ!」
サイモン「人間の子供からやさしさを奪い、ウルトラマンエースを地上から抹殺することが、私の目的だったのだ!」


 意を決した北斗のタックガンの銃口がついに火を吹いた!!


 崩れるように絶命するサイモンを介抱しようとし、最期を見届けたウルトラ3兄弟が北斗を取り囲む!


子供A「なぜサイモンを殺したんだ!」
子供B「サイモンを守れと云ったくせに、なぜ殺したんだ!」
たけし「こいつは超獣がこわくてサイモンを殺したんだ!」
北斗「違う! こいつはヤプールだったんだ!」
たけし「うそだ! 信じるもんか!」
子供A「どうしてサイモンがヤプールなんだ! 証拠を見せろ!」
北斗「テレパシーだ。テレパシーでこいつがそう云った」
たけし「デタラメ云うな! 人間のくせになぜテレパシーがあるんだ!」
子供A「テレパシーがあるのは、ウルトラ兄弟だけだ!」


 北斗にとって、いや子供たちにとっても絶体絶命の危機に、北斗は昨晩の夕子の警告を回想する……


夕子「星司さん、もしあなたが、ウルトラマンエースであることを誰かに知られたら、あなたは二度と人間の姿に戻れないのよ」


たけし「もうやさしさなんか信じないぞ!」
子供A「TACは超獣を倒せないもんだからサイモンを殺したんだ!」
子供B「オレたちだって、もうおまえの云うことなんか聞くもんか!」


 激しい憎悪の形相で北斗をにらみつける子供たちを救うために、北斗はついに真実の告白をする決意を固めた!


北斗「僕が奴のテレパシーをわかったのは……それは僕が……ウルトラマンエースだからだ!」


 子供たちの間に、稲妻のような衝撃が走った!


たけし「……うそだ……」


 そのとき竜隊長以下、TACの隊員たちも姿を見せる。


北斗「うそじゃない! 見ていてくれ! これがウルトラマンエース最後の戦いだ!」


 別離の捨てゼリフを残した北斗は、子供たちやTACが見守る中、ジャンボキングに向かってひた走り、「とりゃーっ!」と空中高くジャンプ! 腕をクロスさせた北斗は宙で回転し、やがてそれはウルトラマンエースの勇姿となった!
 そして光の中から回転しながら巨大化していく、お馴染みの変身パターンへと続く!
 バックにはエースの優勢の戦いを描写する定番曲が颯爽と流れ、最後の決戦へと向かうエースを華麗に、かっこよく演出する!


 北斗がまったく別の姿へと変身を遂げたことを強調するためか、巨大感を演出するためにあおりで撮らえられたエースは心情吐露を発するが、その声はまぎれもなく北斗のものであった!
 北斗を演じる高峰圭二がエースの声をあてたのはこれが初であるが、これまで納谷悟朗ほか――第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060604/p1)をはじめ、第6話『変身超獣の謎を追え!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060611/p1)の「ウルトラギロチン!」や第10話『決戦! エース対郷秀樹』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060709/p1)の「ウルトラナイフ!」の叫びは、筆者には納谷氏ではないように聞こえる――で演じられてきたエースの声を、この段になって高峰自身に演じさせることが、次のセリフを実に効果的に響かせることになるのだ!


エース(北斗)「彼らに真実を伝えるには、こうするしか仕方がなかった……
 さようなら、地球よ……
 さようなら、TACの仲間たち……
 さようなら、北斗星司……」


 エースの勇姿を感慨深く見つめる竜隊長……


 いきなりエースのピンチを描写する定番曲が流れる中、ジャンボキングは口からミサイルを連続発射、大地が炎に包まれる!
 辛くもよけたエースは宙を華麗にジャンプ、ジャンボキングの頭部に跳び蹴りをくらわすが、ジャンボキングは今度は目から波状光線でエースの足元を狙う!
 これをかわしたエースは再び宙をジャンプし、ジャンボキングに馬乗りになるも降り落とされ、怪力に突き飛ばされてビルを破壊してしまう!


 再度宙にジャンプしたエースはジャンボキングにまたも馬乗りになり、後部にあるもうひとつの頭にパンチの嵐を浴びせるが、ギロチンのような形をした触角からの黄色い金縛り光線にからめ取られ、大地に降り落とされた末、超重量級の巨体を支える足に踏みつけられてしまう!


 周囲が夕焼けに染まる中、カラータイマーが点滅を始める!
 エースに駆け寄る子供たちとTACの仲間たち!


たけし「エース! がんばれ〜っ!」


 「エース! エース!」と叫び続ける子供たち。
 その声援にエースは形勢逆転!
 ジャンボキングの足から逃れたエースは、両腕を左後方に大きく振りかぶり、全エネルギーを蓄積させ、両腕をL字型に組んで必殺のメタリウム光線を放った!
 戦意を喪失したジャンボキングに対し、エースはさらに両腕を宙に高々とかざし、その両端から発する光のエネルギーをギロチン状に変化させ、とどめのギロチンショットを放つ!
 首が吹っ飛び、ジャンボキングの巨体は大地にドド〜ッと倒れ伏した!


 第28話『さようなら夕子よ、月の妹よ』で星司と夕子の別れを演出した、幻の挿入歌『ゾフィのバラード』のインストゥルメンタルが流れ、地球の子供たちとエースとの別れが感慨深く描かれる。
 勝利したエースを笑顔で見つめる子供たちの心に、エースの最後のメッセージが響き渡る!


エース「優しさを失わないでくれ。
 弱いものをいたわり、互いに助け合い、
 どこの国の人たちとも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。
 たとえその気持ちが何百回裏切られようと。
 それが私の、最後の願いだ……」
 (この声は納谷悟朗が担当した)


 子供たちの優しさを守る戦いに勝利したエースは、天を仰ぎ、はるか彼方、ウルトラの星へと飛び去っていく……


たけし「エース!」


 主題歌のイントロが流れる中、「エース!」と叫び続けながらあとを追い、手を振ってエースを見送る子供たち。燃えるような夕焼け空の中、やがてエースはウルトラの星のような輝きを見せる光点となり、彼方へと消えた……


竜「北斗……」


 竜隊長、山中隊員、今野隊員、吉村隊員、美川隊員、そして南夕子、北斗隊員とのクレジット入りで、第1話からの各隊員の描写がエンディングタイトル風に編集された、シリーズでは異例のラストシーンを飾るのは、特撮ヒーロー作品の主題歌中でも屈指の名曲・『ウルトラマンエース』である!


 再び視聴者の前に姿を見せる我らのエース。先述のエンディングタイトルが、まるでエースがTACの仲間たちを回想していたかのように見せる演出のごとく、夕焼け空に想いをはせていたエースは、続いて視聴者にその視線を向ける。次のような想いを胸に……


 「明日のエースは君だ!」


「おわり」





 『ウルトラマン』(66年)第39話『さらばウルトラマン』において、科学特捜隊日本支部を破壊し、ウルトラマンをも倒してしまった宇宙恐竜ゼットン
 『ウルトラセブン』(67年)第49話『史上最大の侵略(後編)』において、世界各都市に地底ミサイルを放ち、30億全人類の皆殺しを図ろうと画策した幽霊怪人ゴース星人。
 『帰ってきたウルトラマン』(71年)第51話『ウルトラ5つの誓い』において、ゾフィー初代ウルトラマンウルトラセブン・新ウルトラマンを皆殺しにする「ウルトラ抹殺計画」遂行のため、地球に宇宙恐竜ゼットン二代目を派遣、M78星雲にバット星連合部隊を出撃させた、触角宇宙人バット星人。
 シリーズを重ねるごとに、各最終回に登場した侵略者たちの野望は、スケールが壮大さを増すばかりであった。
 そして『A』の最終回に再び登場したヤプールの目的は「地球の子供たちからやさしさを奪い、ウルトラマンエースを地上から抹殺する」ことであった。


 エースを地上から抹殺するのは当然として、「地球の子供たちからやさしさを奪う」については、これまでのウルトラシリーズの最終回で描かれてきた「史上最大の侵略」と比較すると、一見スケールが小さくなってしまったかのような印象を受ける。
 第1世代マニアにも評価の高い市川森一脚本回であることから、そして主に切通理作(きりどおし・りさく)の著作『怪獣使いと少年――ウルトラマンの作家たち 』(93年・宝島社・00年に宝島文庫・asin:4796618384)以降での好意的記述により非常に評価が高まった本話ではあるが、一部のマニアからすれば、どうしてもそんな印象で捉えてしまうだろう。


 だが果たして本当にそうだろうか? 我らのヒーローを倒してしまう最強怪獣や、世界各都市を壊滅させる地底ミサイルは確かに圧倒的な脅威である。だがしかし、それらは所詮は「空想上の産物」として受けとめられるものであり、ほとんど実感が伴わない恐怖に過ぎないとも思える。
 それらに比べ、「地球の子供たちからやさしさを奪う」については、やろうとすれば現実に実行できるものなのだ。いや、既にそれはこの世界で実行されているのだ。


 ここで作品論から一度離れて俗っぽい現実世界の(06年11月)現在の日本の状況にふれさせていただくことになり恐縮だが、バブル経済崩壊後のこの日本が歩んできた惨状を振り返るだけでもそれが伺い知れるというものだ。
 この十数年もの間、人々の間からどれだけの「やさしさ」が奪われてきたことか(もちろんバブル以前のここ数十年前から進んでいたことでもある)。
 規制緩和構造改革の名のもとに、中高年層がリストラされるばかりではなく、若者たちの間にも失業者が増大。そうでなくとも非正規雇用の拡大により、働いていても生活保護水準並みの貧しい生活にあえぐ人々(「働く貧困層=ワーキング・プア」と呼ばれている)が近年増加している。


 そんな人々が最後の手段として頼る生活保護制度ですら「小泉構造改革」によって生活保護費の削減が進められたために、各地の福祉事務所が違法な申請拒否をして門前払いをするケースが目だっている(会計検査院の調査では、04年度の相談件数のうち、実際に受理された申請件数は全国平均で30.6%のみであり、7割が門前払いされているのだ!)。「健康で文化的な最低限度の生活」なんぞ日本国憲法はなにも保障してはいないのだ。
 「格差は決して悪いことではない」と公言する男によって、社会的な弱者はどんどん切り捨てられていった。過激さを増す「競争社会」によって弱者はさらに増大し、「格差社会」はひどくなる一方である。
 企業が安全よりも目先の利益ばかりを追求するようなご時世の中で、人々の間に利己主義が蔓延するのも当然の帰結である。人々はもはや他人に対して「やさしさ」を見せる余裕なんぞ、経済的にも精神的にもないのである。自分たちさえよければそれでいいのだ。
 近年ようやく問題視されるようになった飲酒運転も、広義でとらえれば「やさしさ」の欠如からなされる行為である。この場合は経済的勝ち組による行為とはいえないだろうが、自分さえ快楽が得られれば、人を跳ね飛ばして殺すことに至ろうが知ったこっちゃないのだから。


 そんな「やさしさ」のない社会の中で、最も害を被るのが子供たちなのだ。実の親に虐待されるばかりではなく、異常性愛者の標的ともなるなど、大人たちから「やさしさ」を与えられるどころか奪われてしまった子供たちが、ストレスのはけ口としていじめを繰り返し、その被害者が連鎖して自殺する……この悪循環は近年の「やさしさ」を失った「格差社会」と決して無関係ではないだろう。


 まあストレートに、90年代後半以降の新自由主義的経済政策と結びつけるのも安直で、古代ローマの昔からどこの国でも世の中が豊かになると、日本の80年代のように軽佻浮薄・享楽主義・ミーイズムに流れ、「やさしさ」よりも「チョイ悪」の方がカッコよくなってきて、「やさしさ」は廃れがちになるものなのかもしれないが。
 それに「やさしさ」が社会から減少しようが「格差社会」「身分制社会」であろうが、「やさしさ」を失わない人間もいるわけだから、社会に原因のひとつがあるにしてもそれは二次的な誘因であり、身も蓋もないことを云えば個々人の品性の「格差」に一次的な原因がある可能性もあるのだが、それは大きな声では云わないことにする。


 とはいえやはり程度問題もある。本人の資質・負荷を超えて極限状況まで「やさしさ」を奪われた子供が行き着く果ては……古いところでは68年に連続射殺魔として4人を拳銃で殺害した永山則夫(97年に死刑執行)の場合、父が賭博におぼれ、母が行商で支える極貧生活の中、幼いころから周囲に虐げられ続け、ついには兄弟ともども極寒の北海道網走市で母に置き去りにされた。
 集団就職で上京するも(「金の卵」ともてはやされた集団就職者たちだが、実際には機械より安い労働力で使い捨てだったらしい)、人間関係のトラブルから半年で勤務先を飛び出し、各地を放浪した末、米軍横須賀基地で「社会に復讐するために」拳銃を盗み出す。拳銃を手にしたとき、彼は「生まれて初めて親友に出会った」と思ったらしい……
 そして近いところでは06年に自分の娘と近所の男の子を殺害した畠山鈴香容疑者。彼女もまた永山則夫と同様、極貧生活と周囲からの虐待に苦しみ続けた。「くさい」「汚い」と疎外され続けたあげく、高校卒業時に彼女に対して級友が贈ったメッセージ・寄せ書きは「会ったら殺す!」「もう秋田に帰ってくるな!」「秋田から永久追放!」などの壮絶なものであった。まったく人々から「やさしさ」を向けられることがなかった彼女が、たとえ子供が授かったとはいえ、「やさしさ」を向けることは困難になるだろう……


 (とはいえ彼らの犯罪を正当化しようというのでは決してない。犯してしまった罪は絶対に償うべきである。もちろん同じような苦境に置かれても「やさしさ」を失っていなかった例もある。奇しくも畠山鈴香容疑者に殺害された実の娘がそれに当てはまる。ただし罪は罪として当事者がまず第一に償うにしても、その時系列における社会的経済的原因、あるいは周囲の人間の道義的責任をも探求して何らかの理性的な善処を施さなくては、同じような犯罪は今後もくりかえされ続けるだろう)
 (関連記事:緊急UP! 秋葉原通り魔事件 〜苦境下の人々へ http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080617/p1


 いささか世俗的な例ばかりを書き連ねてしまったが、「やさしさ」を失ってしまった社会は、いつ飛んでくるかもわからないような核ミサイルよりも、ずっと身近に迫った脅威なのである。まるで人々の心の闇に、無数の異次元人ヤプールが巣食ってしまっているかのように……


 TACの竜隊長は第34話『海の虹に超獣が踊る』(脚本・長坂秀佳http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061223/p1)において、


 「子供が生きる力を失おうとしているのだとしたらそれは超獣以上の脅威だ」


 と語っていた。「やさしさ」を失った現代社会は、まさに超獣以上の脅威なのである。


 先に個々人の品性の「格差」を話題にして、最も害を被るのは子供たちだとも美化・聖化して語ったが、第3話『燃えろ! 超獣地獄』(脚本・田口成光・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060521/p1)において、ヤプール


 「子供が純真だと思っているのは人間だけだ」


 と語っていた。そう、確かにその通りなのだ。
 本話ではウルトラ兄弟のお面をかぶった子供たちが、異質な存在であるサイモン星人の子供をいじめる場面によって、子供たち本来の姿もリアルに描写されている。


 地方の片田舎で育った筆者の記憶をたどっても、そのころやたらと空き地や草むらに出没した蛇(ヘビ)や蛙(カエル)、トカゲなどを見つけては、集団で石をぶつけ、棒でつつき回し、果ては腹をかち割ったりして残酷に殺し、大人たちに「なにやってるんだ!」と散々怒られたものだった。これらは確かに決して「小泉構造改革」のせいではなかったが(笑)。


 『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)第32話『怪獣使いの遺産』において、GUYS(ガイズ)のリュウ隊員に狙撃され、左腕から緑色の血液を流すメイツ星人ビオ(『帰ってきたウルトラマン』(71年)の異色作・第33話『怪獣使いと少年』に、差別的な日本人たちによって殺されてしまった金山老人ことメイツ星人が登場したが、彼はその息子)に対し、保育園の子供たちがハンカチを手渡す場面がある。
 子供番組なのだから、これくらいのベタな描写はよしとしなければならないのかもしれない。
 だがリアルに考えれば、緑色の血を流す奴を見たら、子供たちはまず「こいつ人間じゃない!」とこわがるか、それこそ集団で石をぶつけるのが、全員ではないにしても過半の子供の、そして子供集団の本来の姿ではないのか?
 そして、そんな決して純真ではない子供たちを誤った方向に導かないために、正しく諭(さと)すのが長じて理性や道理を身につけたはずの大人たちの責任なのである。
 物語の展開上の都合とはいえ、本来ならばメイツ星人ビオに恐怖心を見せる子供たちに対し、斎藤とも子(彼女の出演自体は実に嬉しかったものだが)演じる園長先生が子供たちをとがめ、率先してメイツ星人ビオに「やさしさ」を示すことで子供たちを諭す姿を描いた方が、説得力も増すというものではなかっただろうか?


 異形(いぎょう)の存在であるサイモン星人の子供に対し、


 「まだ子供だわ、この宇宙人」


 と思いやりを示す美川、


 「さあ、おいで」


 と優しい笑顔で暖かい手を差しのべる今野。
 いじめられていた宇宙人の子供に対し、二人はあふれんばかりの「やさしさ」で暖かく包んであげるのである。


 一方、ウルトラ兄弟を気取り、サイモン星人の子供をいじめていた子供たちにも「やさしさ」は向けられる。


 「こらっ! やめろっ!」


 との山中の一喝も、子供たちを誤った方向に導かないための「やさしさ」の発露なのだ。


 そして北斗は


 「ウルトラ兄弟は弱い者いじめはしない! 何もしない宇宙人の子供を、わけもなくいじめたりはしない!」


 と叫ぶ……


 同じ市川森一が書いた第14話『銀河に散った5つの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)において、ヤプールゴルゴダ星で十字架にかけられたウルトラ4兄弟からエネルギーを奪い、それを異次元超人エースキラーに与え、エースそっくりにつくられたエースロボットを実験台にし、ウルトラ4兄弟の必殺技を次々と兄弟たちの眼前で披露させる。エースそっくりのロボットが苦しむ様子を見せることにより、まるで「これまでおまえたちは散々弱い者いじめをしてきたのだ!」とばかりにウルトラ4兄弟を動揺させるかのように……


 本話では北斗の眼前でそれがその本質はともかくある意味で再現されることとなったのだが、北斗はヤプールに対し、ウルトラ兄弟の怪獣退治が決して弱いものいじめではないことを回答するのだ!


 「ウルトラ兄弟は、ゾフィーも、マンもセブンも、弱い者の味方なんだ!」


 北斗に諭された子供たちは、ジャンボキングの出現、そして「サイモンを渡せ!」とのヤプールの脅迫によって、サイモン星人との間で不思議な連帯感を生み出す。
 北斗の説教だけでは子供たちに遺恨が残る可能性もあるわけであり、そのあとでこうして危機的状況を共に経験させることで一体感を持たせる筋の運び方はなかなか見事というべきである。


 しかしそれは、子供たちの間に「やさしさ」を一度は生み出しておきながら、さらにそれをよりにもよって北斗自身によって粉々に破壊させてしまうという、自作自演のヤプールの緻密な侵略計画であったのだ!


 大人である北斗の「裏切り」であるかのような行為を子供たちの眼前で見せつけ、「サイモンを守れと云ったくせに、なぜ殺したんだ!」などと、子供たちの精神・心に激しい衝撃と傷と人間不信を与えるにはあまりに十分に過ぎるものであり、これ以上の残酷な行為はほかにない。
 まさにヤプールこそ、「本物の悪魔」((C)映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)でのエースのセリフ)なのである!


 「地球の子供たちからやさしさを奪い、ウルトラマンエースを地上から抹殺する」というヤプールの目的の半分は、この時点で既に達成されてしまったのである!


 また主要キャラクターの善意を逆用して、善意を発揮すればするほど実は危機に陥ってしまうというイジワルな展開は、地味に埋もれているが実は佳作でもある第19話『河童屋敷の謎』(脚本・斉藤正夫・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061007/p1)での北斗がゲストの少年を信じる心、中学生時代のトラウマから少年との約束を必ず守らんとする精神までをも逆用して、危地に陥れんとする異次元人ヤプールの策謀を描く作劇に影響を受けたものだったのかもしれない。意識してのものでなかったとしても第19話に通じるものがある。


 その第19話『河童屋敷の謎』において豪邸のプールで泳いだ子供たちがカッパ人間にされ、第23話『逆転! ゾフィ只今参上』(脚本・真船禎・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061012/p1)では地球の子供たちが洗脳されて異次元空間に連れ去られ、第33話『あの気球船を撃て!』(脚本・石堂淑朗http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061218/p1)においては気球船超獣バッドバアロンが子供たちの魂を吸い取り(子供らしい覇気を失って勉強するようになり・笑)、第18話『鳩を返せ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060907/p1)では少年が飼育していた鳩を大鳩超獣ブラックピジョンに改造され、第40話『パンダを返して!』(共に脚本・田口成光・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070204/p1)では宇宙超人スチール星人が少女が大事にしていたパンダのぬいぐるみを奪うなど、本作では従来のシリーズに比べ、子供たちが直接的な被害を受ける例が目立っている。


 東映のヒーロー作品においては、定番の「幼稚園バス襲撃」や、怪人が子供の血液を集めて爆弾を製造するなど、前者は世界制覇を企む悪の組織にしてはやることが小さいとか、後者に至ってはまったく科学的根拠がない(爆)などと、槍玉にあげられるようなセコい作戦がかつてはよく描かれたものであるが、これは子供たちに「身近な恐怖」を感じてもらうための配慮でもあった。
 もちろんそれらの要素は、小学校高学年にもなれば非合理的であることが目についたり、見ていて恥ずかしくなったりするものでもあるのだから諸刃の剣でもあるのだが、それらの身近な事件がまったく描かれず、大人たちだけの世界を描いた平成ライダー作品(https://katoku99.hatenablog.com/archive/category/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC)を、筆者はマニア予備軍の子供はともかく一般の子供たち(特に未就学児童=幼児)が心の底から楽しんでいるとは思えない。


 ヤプールが地球の子供たちに直接攻撃の手を加えることが多いのも、子供たちに「身近な恐怖」を与えるといった趣向も働いていたのかもしれない。
 しかし同時に、第23話で子供が連れ去られた数だけ夜空の星が増えるという、まさに「死」のイメージが描かれていることが象徴するように、地球を壊滅させるには将来を背負って立つ子供たちを標的にするのが最もてっとり早く、かつ極めて有効的な手段であるといえるのではなかろうか。
 そうした意味においては東映のヒーロー作品で描かれた、悪の組織による一見セコいと思われた作戦の数々は、深読みすれば実に遠大なものだったのである。今現実の子供たちがおかれている「危機的状況」を思うにつけ、筆者は大いなる実感をもってそう考えるのである。


 「もうやさしさなんか信じないぞ!」
 「おれたちだって、もうおまえの云うことなんか聞くもんかっ!」


 「やさしさ」を奪われ、大人に対して不信感を抱いた子供たち。
 子供たちに「やさしさ」を取り戻させるため、夕子の警告があったにもかかわらず、子供たちに自分がエースであることを告白しなければならなくなった北斗。
 そのために、ヤプールが云ったように、ある意味ではエースは確かに「地上から抹殺」されたことになったのだろう。


 だが自分がたとえ地上から抹殺され、ウルトラの星に帰還せねばならなくなるに至っても、「彼らに真実を伝えるには、こうするしか仕方がなかった」として、あくまで「やさしさ」を守るために、エースは最強超獣ジャンボキングに敢然と立ち向かい、これに勝利する!


 子供たちへの「最後の願い」における、「たとえその気持ちが、何百回裏切られようと」の部分が、エースの「最後の願い」に説得力を与えている。
 きれいごとだけでは通じないこの世の中。現実には常に弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人たちとも友達になろうとすることは極めて困難なことだろう。
 それを阻害してしまう要因があふれ過ぎているのだ。だから「やさしさ」も、何百回どころか何万回だって裏切られる可能性があるのだ。それでも最後まで「やさしさ」にこだわり続けた最終回……



 テーマだけではなく、今回は随所に「やさしさ」が垣間見える仕上がりとなっている。その最たるものが、シリーズ前半の核となっていたにもかかわらず、惜しまれながら姿を消すこととなったヤプールと南夕子の再登場なのではなかろうか。これもまた一種の「やさしさ」の発露である。
 ちなみに憎々しげな異次元人ヤプールの声は、シリーズ前半と同じく西川幾雄氏。西川氏はタツノコプロの名作アニメ『新造人間キャシャーン』(73年)で主役キャシャーンこと東鉄也(あずま・てつや)を演じたことでも有名。なおネット上の好事家の調査(http://www.geocities.jp/metalderfan/colums/col12_hed_nishi.htm)によれば、東映メタルヒーロー超人機メタルダー』(87年)の敵怪人・モンスター軍団軽闘士ヘドグロスは名目上(誤記?)は龍田直樹氏であるが、実際は西川氏が声を演じていたらしい。
 (後日付記:ヤプールの声は西川氏ではないのではないか? という声も根強いらしい。……好事家の研究を待つ!・笑)



 『シルバー仮面』(71年)の春日(かすが)兄妹の末っ子・はるかをはじめ、戦隊シリーズ『バトルフィーバーJ』(79年)や戦隊シリーズ超電子バイオマン』(84年)など、やむにやまれぬ事情で女優が降板したため、主演級のヒロインが交替する例は決して少なくはない。
 だが彼女たちはその後は最終回に至ってさえ、まったく顧みられることなく終わってしまうのである(まあ事情が事情なので、当然といえば当然なのだが……)。


 ウルトラでさえ例外ではない。『帰ってきたウルトラマン』第37話『ウルトラマン夕陽に死す』において、暗殺宇宙人ナックル星人に殺された恋人・坂田アキのことを、郷秀樹は最終回で地球を去る際も回想さえしないのである
 (にもかかわらず、バット星人に捕らえられた村野ルミ子が見た夢として、郷と彼女の結婚式が描かれるさまは、アキのファンとしては無神経極まりないというよりほかにない!)。
 もちろん坂田アキを演じた榊原るみが多忙になったことにより降板となったのであるが、同じ降板でも無残にも車にひきずられて投げ落とされた坂田アキと、月星人(げつせいじん)であることを北斗に明かし、月に帰還するというロマンチックな退場となった南夕子と、果たしてどちらが女優に対する「やさしさ」を感じられるか、云うまでもないだろう。


 南夕子を演じた星光子の降板の理由もまた、第28話『さようなら夕子よ、月の妹よ』評(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061111/p1)で詳述した通り、「舞台に専念したい」という本人からの申し出が最たる理由とする仮説をこの『A全話評』では取るのだが、通常なら遺恨を残すような理由であるにもかかわらず、スタッフは彼女の最後の舞台を実に華々しく演出した。
 「いつでも帰っておいで」とでも云わんばかりのように。だから「夕子を演じられない」と苦悩し続けた星氏でさえも、第38話『復活! ウルトラの父』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070121/p1)に続き、今回と気持ちよく再出演することができたのではないだろうか? そしてこのことこそが『A』スタッフの「やさしさ」の賜物(たまもの)といえるのではなかろうか
 (こんなことを書くと『帰ってきた』には「やさしさ」がないのか! なんて批判を受けそうだが、決してそんなことはありません! ただアキの件だけはねえ……どうしても未だに解せんのよ筆者は)。


 そればかりではない。第28話で夕子が姿を消しても、「♪いまだ! 変身! 北斗と南〜」というフレーズが入った主題歌は変更されず、最終回までオープニングを飾り続けたのである。……この時代の作品は1年を通じて主題歌を変更することはあまりなかったので、何も考えていなかった可能性も高いが(笑)、『A』に女性ファンが多いのは、決して南夕子というファクターばかりではなく、作品の根底に流れるこうした「やさしさ」「暖かさ」といった要素が支持を受けているのだと云っても過言ではないように思える。



 最終回を観て少々残念に思うのは、「ウルトラマンエース最後の戦い」に熱い声援を送る子供たちに対し、TACの隊員たちがただ茫然と見上げ、静かに見守っているのにとどまっていることである。


 『ウルトラセブン』第49話(最終回)において、モロボシ・ダンウルトラセブンである事実はウルトラ警備隊の隊員たちはアンヌ隊員からのまた聞きによって知るだけであるのだが、双頭怪獣パンドンを攻撃する中でフルハシ隊員が「ダン、離れろ! 怪獣は俺たちにまかせろ!」と叫ぶなど、皆がセブンをダンと呼ぶことによって盛り上がりに拍車をかけていた。
 シリーズ中盤の第30話『約束の炎』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061203/p1)において、早くもミライがGUYS隊員たちの眼前でメビウスに変身するという、異例の展開を見せた06年現在の最新作『ウルトラマンメビウス』もまた然(しか)りであった。


 北斗もまたTACの眼前でエースに変身を遂げているのだから、竜隊長のみが一言「北斗……」とつぶやくだけなのは、先述した例と比べるとやはり若干のもの足りなさが残る。せめて山中だけには「ほくとぉ〜っ!」などと派手に叫んでほしかったものだが(笑)。


 ただ隊員たちの名場面を編集したエンディングに至っては、これまたスタッフによる「やさしさ」の大いなる発露である! ここまで愛情をもって扱われた防衛チームは未だかつてないのだ!


 有終の美を飾るにふさわしいイキな演出……ヤプール然り、南夕子然り、TAC然り、
 そして市川が関わっていなかった『A』第3〜4クールの児童ゲスト編のドラマとテーマをも彷彿させる子役ゲストの登場然り……


 全ての登場キャラが「やさしさ」をもって扱われた集大成的な最終回は、「やさしさを失わないでくれ」とのエース最後のメッセージとともに、大いなる感動を我々に与えたのである。


 そしてなんといっても最大にやさしかったのは、一度は『A』を去った市川森一に「メインライターとしての責任を果たせ」と、最終回を発注したTBS側のプロデューサー・橋本洋二の配慮だったのではないだろうか……



<こだわりコーナー>
*『ウルトラマン画報・上巻 −光の戦士三十五年の歩み−』(竹書房・02年10月4日初版発行・ISBN:4812408881)によれば、ジャンボキングはユニタング・カウラ・マザリュース・マザロン人・巨大ヤプールのほか、スチール星人も合体したとされている。おそらくはジャンボキング後部にあるギロチン状の装飾を、スチール星人の頭部が出典であると解釈したのかと思うが、これはマザロン人の肩の装飾では?
*サイモン星人の子供のスーツは断定はできないが、おそらくは第10話『決戦! エース対郷秀樹』に登場した、変身怪人アンチラ星人の改造かと思われるのだが?


*DVD『ウルトラマンA Vol.9』(デジタルウルトラプロジェクト・04年9月24日発売・asin:B00024JJII)の解説書に掲載された「星光子独占インタビュー」より。


 「えっ? 出ていました私? 『エース』? 『タロウ』じゃなくて? ああ、クリスマスの回ね。これはパリに行く前の、たぶん11月くらいに撮りました。でも最終回は……。ごめんなさい。私、撮影した記憶がないんです。たぶん最終回として撮ったものではないと思います。だって私、そのころ日本にいませんでしたから」


 ウ〜ン、また筆者の悩みが増える……強引な解釈を加えれば、第38話『復活! ウルトラの父』の撮影の際、「どこかで使えるかも?」ととりあえず撮っておいて、最終回に使用したとか???(あるいは第38話のカットされてしまったシーンかテイク違いだろう)


*『ウルトラシリーズ・サブキャラ大事典』(小河原一博東京堂出版・02年9月発行・asin:4490106114)巻末の市川森一インタビュー。立ち読みでの記憶で恐縮だが、途中で夕子が月に帰らなかった場合のラストの構想を市川は下記の大意で発言していた。


 「僕はエースを存命させる気はありませんでした。北斗、南は普通の男女になり、二度とエースにはなれなくなる。二人は人間の男女として愛し合うようになり、変身することを放棄する。本気で愛することで神の力(エースの力)を必要としなくなり、二人はTACを退任、結ばれて地方の牧場で生活をはじめるか、故郷の広島に帰り、のち一児が誕生……そんなエピローグになったと思います。
 ではヤプールはどうなるのか。ヤプールは人間が作り出すトラウマと考え、自分に勝てば消える幻影のようなもの。エースはヤプールを倒し、北斗と南は戦いの中で愛情に気がつく。人間の作り出す欲望の悪魔を倒せるのは愛情だけだというメッセージを残したかった」


*ジャンボキングを倒した必殺技は、通称ギロチンショット。過去の子供向け書籍には、ウルトラギロチンだったりスペースQだったりスペースギロチンだったり名称があまり統一されていなかった。
 こちらも立ち読みでの記憶で恐縮だが、90年代前半の平成ゴジラシリーズ出版物のブームでマニア向けの大判書籍『ゴジラ大百科』(ISBN:4056007144)を毎年ヒットさせていた学研が放った類書『ウルトラマン大百科』(学習研究社・93年8月発行)のコラムによれば、シナリオには「スペースQとウルトラギロチンの複合技」と書かれていたそうな。


初代ウルトラマンのお面を終始頭に付けていた子供を演じた高橋仁は、第3話で一角超獣バキシムの人間体、第32話『ウルトラの星に祈りをこめて』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061210/p1)では超獣人間コオクスの人間体と、可愛らしい顔立ちなのになぜか悪役ばかりだったが、今回の三度目の出演ではウルトラマンと、あまりに両極端に過ぎる(笑)。


*セブンのお面を付けていた子供Bは、Bパートでは終始ヘルメットをかぶっており、撮影中にお面が損傷したのかと思いきや、北斗が正体を打ち明ける場面をよく見ると、ちゃんとヘルメットの下にセブンのお面を付けている!


*お面といえば第33話『あの気球船を撃て!』(脚本・石堂淑朗http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061218/p1)でお面を付けてエースを気取っただいすけちゃんが、気球船に乗りこもうとして女の子を転倒させた際、ウルトラ6番目の弟・ダン少年が「ちぇっ、女の子を泣かせておいて助けようともしないくせに、なにがウルトラマンエースだ!」と非難する場面がある。これもまた、ウルトラマンが弱い者の味方であることを強調する演出であるかと思う。
 3クール目以降の子供中心の展開、はっきり云えば、この第33話のだいすけ少年とダン少年の描写が、市川による最終回の着想の元であってもまったく不思議ではないと思う。


 そして『ウルトラマンタロウ』(73年)第26話『僕にも怪獣は退治できる!』(脚本・阿井文瓶・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060917/p1#20060917f1)において、小さな男の子が中学生たちにいじめられている様子を見て見ぬふりをして通り過ぎようとした白鳥健一少年は、路上に落ちていたタロウのお面を見たのがキッカケで、敢然と中学生たちに立ち向かっていく!
 「弱い者をいたわり」というエース最後の願いは、『タロウ』において完全に成就されるに至る! その魅力についてはまた後日。
 ちなみにこの回で父親の紙芝居屋という職業を「かっこ悪い」とバカにし、「怪獣とケンカばかりしているタロウなんか嫌いだ!」などと、実に冷めた竹雄という少年を演じているのも、先述の高橋仁である。


*こうして見ると作品中でも結構重要なアイテムとして扱われているお面だが、06年7月17日にTBS系で放送された『筑紫哲也NEWS23(ニュースツースリー)』の特集『誕生40年“ウルトラマンが見た日本”』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060917/p1#20060917f2)において、脚本家の市川森一は「仮面をつければどんな弱いものいじめをしても正義の行使となる」と語っていた。


 確かに氏が書いた『A』第52話(最終回)における、ウルトラ兄弟がサイモン星人の子供をいじめる場面はそう解釈できるものである。
 だが先述の健一少年のように、「タロウのお面がなかったら、僕はひきょう者になるところだった!」と、むしろ仮面によって英雄になる子供もいるのである。
 だから結局は仮面に問題があるんじゃなくて、それをかぶる方に問題があるんじゃないかと思うのだが。まあ、氏お得意の、後付けの解釈に過ぎないんでしょうが(笑)。


*視聴率19.1%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)


『假面特攻隊2006年号』「ウルトラマンエース」#52関係記事の縮小コピー収録一覧
静岡新聞 1973年3月30日(金) TV欄・ウルトラマンエース=最終回=(安心堂、はごろも缶詰提供)超獣の王者が出現 〜「大超獣ジャンボキング」の記述・大枠紹介記事


※:シナリオを元にして紹介記事を執筆したと思われる直上の新聞記事によれば、この最終回評で、初代ウルトラマンのお面をかぶっていて便宜的に子供Aと記述した少年の役名はススム(高橋仁)。ウルトラセブンのお面をかぶっている子供Bと記述した少年の役名は三郎(柳下達彦)。メインの子役・タケシ(カタカナ表記が正解)を演じている子役の名前は紺野秀樹くんとのこと。


[関連記事] 〜エース最後の願い再び!

ウルトラマンメビウス#44「エースの願い」 〜エース&南夕子客演!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070408/p1


[関連記事] 〜ウルトラシリーズ最終回評

ウルトラマンネクサス最終回 〜中後盤評 #37「Final Episode 絆 ―ネクサス―」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060308/p1

ウルトラマンマックス最終回 〜終盤評 #33、34「ようこそ地球へ!」バルタン星人前後編

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060503/p1

ウルトラマンメビウス最終回 最終三部作 #48「皇帝の降臨」・#49「絶望の暗雲」・#50「心からの言葉」 〜ありがとう!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070505/p1

ウルトラマンエース最終回「明日のエースは君だ!」

  (当該記事)

ウルトラマンティガ最終回 最終章三部作 #50「もっと高く!〜Take Me Higher!〜」・#51「暗黒の支配者」・#52「輝けるものたちへ」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1

ウルトラマンダイナ最終回 最終章三部作 #49「最終章Ⅰ 新たなる影」・#50「最終章Ⅱ 太陽系消滅」・#51「最終章Ⅲ 明日へ…」 〜賛否合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971211/p1


[関連記事] 〜エース全話評・主要記事!

ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜序文

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060513/p1

ウルトラマンエース#13「死刑! ウルトラ5兄弟」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1

ウルトラマンエース#14「銀河に散った5つの星」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1

ウルトラマンエース#17「怪談 ほたるケ原の鬼女」 〜真船演出! #23のプロト!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060904/p1

ウルトラマンエース#18「鳩を返せ!」 〜名作傑作!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060907/p1

ウルトラマンエース#19「河童屋敷の謎」 〜夕子活躍!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061007/p1

ウルトラマンエース#23「逆転! ゾフィ只今参上」 〜メビウスの名の由来はA#23にあり!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061012/p1

ウルトラマンエース#24「見よ! 真夜中の大変身」 〜赤い雨! ヤプール壊滅二部作後編!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1

ウルトラマンエース#28「さようなら夕子よ、月の妹よ」 〜南夕子降板の真相異論!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061111/p1

ウルトラマンエース#30「きみにも見えるウルトラの星」 〜主役窮地の作劇極北!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061125/p1

ウルトラマンエース#33「あの気球船を撃て!」 〜最終回の着想はここに!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061218/p1

ウルトラマンエース#34「海の虹に超獣が踊る」 〜長坂秀佳脚本第2弾!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061223/p1

ウルトラマンエース#35「ゾフィからの贈りもの」 〜子供に過ちを犯す主役!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061231/p1

ウルトラマンエース#43「怪談 雪男の叫び!」 〜身勝手な大衆に批判の視点!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070224/p1

〈DVD付きフォトブック〉「ウルトラマンA 1972」レビュー

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070210/p1

『エース』同人誌の歴史1 〜『A』再評価の端緒を築いた伝説の名同人誌『全員脱出!』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070331/p1

ウルトラマンエース最終回「明日のエースは君だ!」

  (当該記事)