假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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ウルトラマンメビウス44話「エースの願い」  〜南夕子

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ウルトラマンメビウス』44話「エースの願い」 〜南夕子

(脚本・長谷川圭一 監督・小原直樹 特技監督・菊池雄一)
(文・久保達也)
(2007年4月4日脱稿)


ヤプール「おまえの強さの秘密は人間との絆だ。だが、それがおまえの最大の弱点でもある。おまえはGUYS(ガイズ)のサポートなしではまともに戦えない、無力なウルトラマンなんだよ! 貴様には何も守れん! 悔しがれ! 絶望しろ!!」


 先に公開された映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・松竹)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)に登場した「宇宙人連合」(極悪宇宙人テンペラー星人・暗殺宇宙人ナックル星人・分身宇宙人ガッツ星人・凶悪宇宙人ザラブ星人)を彷彿とさせる、ナゾの「暗黒四天王」が地球を狙った!


 その斬りこみ隊長として、この前後編の前話であった第43話『脅威のメビウスキラー』(脚本・赤星政尚 監督・小原直樹 特技監督・菊池雄一)で(正確にはさらに1話前の第42話『旧友の来訪』(脚本・谷崎のぼる 監督・佐野智樹 特技監督鈴木健二)から)、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』と『ウルトラマンメビウス』(06年)第24話『復活のヤプール』(脚本・長谷川圭一 監督&特技監督・アベユーイチ)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061112/p1)以来、ひさびさに姿を現したのは、異次元超人・巨大ヤプール


 ヤプールはヘシ折れた東京タワーを中心にしたビル街の廃墟を見渡せる、荒涼とした砂漠が広がっている異世界ウルトラマンメビウスことミライを幽閉してしまった!


 リム出版が1992年に企画した40冊にも及ぶ、初代『ウルトラマン』〜『ザ★ウルトラマン』『ウルトラマン80』の漫画化計画であった「COMIC’Sウルトラ大全集」の中の1編であり、リム出版の倒産により御蔵入りになるも、のちに双葉社の「ACTION COMICS(アクションコミックス)」レーベルの1冊として陽の目を見ることができた『ウルトラマンA(エース)』(脚本・新藤義親 作画・松久嘉仁 双葉社・99年10月28日発行・asin:4575936472)のオリジナルコミックがあった。
 同作品は『ウルトラマンA』(72年)の大傑作回である第23話『逆転ゾフィ! 只今参上』に多大なるインスパイアを受けたとおぼしきコミックであった。


 子供たちや北斗星司が連れ去られた異次元世界になんとなく似通ったムードといい、ベテラン俳優・清水紘治が演じるヤプールの人間体の山高帽にマント姿というファッションと、コミック版に登場する双竜超獣アドルフキングが変身した怪盗アルセーヌ・ルパン風の紳士との相似といい、不条理な異世界を演出するのに、『メビウス』スタッフがこのコミックをテキストにした可能性も少しはあるのかもしれないし、まったく参考にはしてなかったとしても(笑)、行き着くところは似たような描写に着地してしまうものなのかもしれない!?


 ヤプール人間体を演じた清水は、『ウルトラマンA(エース)』(72年)第4話『3億年超獣出現!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060528/p1)においても、防衛組織TAC(タック)の美川のり子隊員に対する中学時代からの執着心をヤプールに利用され、怪魚超獣ガランを操ってしまう漫画家・久里虫太郎(くり・むしたろう)を怪演! この第4話は、近年でも『轟轟戦隊ボウケンジャー』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070108/p1)第7話『火竜(サラマンダー)のウロコ』(脚本・會川昇 監督・諸田敏)で清水自身がゲスト出演したリメイク編(?)が登場している。
 また、『メビウス』公式HP(ホームページ)内の「WEB(ウェブ)メビナビ」によれば、今回のヤプールはこの久里虫太郎をモデルにして人間体に変身しているらしいとのことだ(笑)。


 ヤプール人間体のファッションは、『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)第40話~第51話(最終回)に至る『恐怖の円盤生物シリーズ!』に登場した、やはり全身が黒づくめでマントを羽織ったブラック指令にも似ている。そうなると現在でも活躍を続けている大林丈史氏にも、『メビウス』で再びブラック指令を演じてほしかった、などとついつい欲目が出てしまう。


 ヤプール人間体が左手でヒモを持って黒い風船5~6個を浮かべているサマもまた不条理感をいや増している! 奇しくも、『メビウス』第1話『運命の出逢い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)で、ゲストの幼女が持っていた赤い風船とも対比してしまう!(笑)


 先述の『メビウスウルトラ兄弟』のヒロインキャラの再登場であるジングウジ・アヤ(演・いとうあいこ)を守るために、そして人間体から巨大化変身したヤプールと対決するために、ミライは異世界ウルトラマンメビウスへと変身を遂げた!


 だが、巨大ヤプールがカマがない方の左手から発する念動力に翻弄されて、まるで歯が立たない!


ヤプールメビウス、まだ気づかないか! 貴様は罠にはまったのだ! GUYSと分断されたおまえは、いつもどおりには戦えぬ!」


 前話同様に、巨大ヤプールの姿に変身すると、『メビウスウルトラ兄弟』や第24話でもヤプールの声を担当してきた玄田哲章氏の声に変わるあたりは、声優さんへの義理を通している(いきなり清水氏オンリーの声になってしまったら、今までと不整合になってしまうのだし)。


 前話において、『メビウス』のシリーズ後半における、怪獣や宇宙人を地球に呼び寄せることいになっていたらしいナゾの時空波。その発信源を追って、ヤプールの分断作戦による通信妨害でウルトラマンメビウスことミライを泣く泣く残して、GUYS基地・フェニックスネストをフライトモードに変型させて大空へと飛び立ったGUYSは、太平洋の底から急浮上して大気圏を突破し月へと不時着したナゾの石柱から発せられる干渉フィールドによるシステムダウンによって、月面に足止めにされていたのだ!


 だが人一倍、優れた聴覚の持ち主であるマリナの耳に、「石柱を破壊できる!」とのナゾの声が届いた!



 ススキの原で夜空に浮かぶあまりに巨大に見える美しい満月を地上から見上げていた小さな人影のナゾの紳士が、おもわず胸に手を当てる。


 オォ! 声の主は!? 顔は判別できない。


 だが、ショッキングブリッジの効果音とともに、胸に当てた右手の中指に輝く「A」のシンボル! こっ、これはエースリング!?


(前話末尾の次回予告や、事前のマニア誌での告知で、その正体は子供の視聴者たちでもわかってはいるけれど!・笑)



 しかし、石柱の頂きから発せられた青緑色の電撃が月面をブチ破った!


 そして、かつて月の文明を滅ぼしたと、往年の『ウルトラマンA』第28話でも明かされた、あの因縁の満月超獣ルナチクス(!)の別個体までもが出現したのだ!


 本来はヤプールとは無関係の超獣ではあるものの、ヤプールから石柱の用心棒としての役目を授かったのだろうルナチクスは、口から白いスモークと高熱火炎を発してGUYSを襲った!


 ピョンピョンというまさにウサギ飛びのような歩行、白い体毛の部分が増した造形と、今回のルナチクスはオリジナル以上にウサギらしさが増した演出となっている(笑)。


 これまでの戦いで強い絆を築きあげてきたウルトラマンメビウスとGUYS。だが、その反面、二者で力を合わせなくては満足に力を発揮できないという脆(もろ)さを、ここにきて皮肉にも、いや必然的に(!)さらけ出してしまったのだ!



 危機が迫ったメビウスとGUYSに対して、やはりショッキングブリッジとともに、先ほどの映像よりも大きく上半身の後ろ姿だけで映し出されたナゾの紳士は、美しい満月を見上げながら胸に当てた手をギュッと握り締めた! このバストアップで映し出された声の主は……!?


北斗星司(!)「みんな…… 最後まであきらめるな!」


 あの指輪はやはりエースリング(ウルトラリング)!


 そして、左の襟元には、かつて彼が所属していた防衛組織・TAC(タック)チームのバッジが!(感涙)


 やはり彼は、かつて異次元人ヤプールの侵略の魔の手から、南夕子とともにウルトラマンエースとなって地球を守っていた北斗星司だったのだ!(その場所は『メビウス&兄弟』のラストで、その故郷である「光の国」へと帰還しなかったことから神戸か?)



「TACのバッジが撮影現場には用意されていなくてね……。映画のときには付けていただけに「バッジがあればよかったなあ……」とスタッフに話していたら、撮影を見に来ていたファンの方が「これを使って下さい!」と持っていたTACのバッジを僕に渡してくれたんです。エースリングは小道具さんが用意してくれていましたが、せっかくなので、リングもその方が持っていたモノをお借りしました」

(『電撃HOBBY(ホビー)』07年5月号(メディアワークス・07年3月24日発売・[asin:B000O58XXC]スペシャルインタビュー「明日のエースは君だ! 信じる心が不可能を可能にする!!」『ウルトラマンA』北斗星司役・高峰圭二インタビュー)



 なんと良い話であろうか! TACのバッジに対するこだわりや、それを提供してくれたファンの方が持っていたウルトラリングまでも映像作品で使用してあげる厚意もまた感動的なのだ。
 おもわず涙ぐんでしまいそうな話なのだが、逆に云うと北斗がゲストで登場するにもかかわらず、映画『メビウス&兄弟』では用意されていたTACのバッジを用意していない本話の撮影現場の小道具スタッフや本編監督はいったい……(まぁ、人間だから、気が回りきらないこともあるのでしょうよ!・笑)


 「最後まであきらめるな!」なる力強いセリフとともに、胸に当てた手を強く握り締めて、メビウスとGUYSに対してゲキを飛ばすような強い視線を向けるといった、高峰氏の演技に対する姿勢は真摯そのものである。やや猪突猛進気味であった往年の北斗の姿が年齢相応に熟成を重ねながらもほのかに垣間見えてもいた!



 猛烈な勢いで攻撃を仕掛けてくる巨大ヤプールウルトラマンメビウスは敗北を喫して失神してしまって、異世界の奈落(ならく)の底の方へと落下していった!


 アヤの「ミライく~~~ん!!」といった悲痛な悲鳴も響く! 



 メビウスウルトラマンではなくミライ隊員の姿で苦悩していた。


ヤプールの云うとおり、ひとりきりの僕には何も守れない。アヤさんの命も……」


 そこに、北斗が頼もしい声で力強く語りかけてきた!


「おまえはひとりじゃないぞ、メビウス!」


「(つむっていた目をひらき、左に向き直って) えっ、エース兄さん!」


 北斗と向き合うミライ……


 画面は左右の両端から向き合った北斗とミライの全身像を映し出す。


北斗「たとえ離れていても、おまえには、感じられるはずだ。勝利を信じて戦っている仲間たちの姿が! かつて俺も…… 大切な仲間と別れた……」


 やや寂しげな視線を宙に向ける北斗。青暗い世界にいたはずの北斗の顔がやわらかい光明で照らし出される。


 ここで北斗とミライの背景に、TAC本部内で夕子の肩を抱き、ニッコリと微笑む北斗と夕子のツーショットが映し出された!


 夕子を「恋人」ではなく、「仲間」と称したことに対しては、後述する女性ファンたちにとっては、ひょっとしたら不満の声もあるかもしれない(汗)。


北斗「共に苦しみ、笑い、戦った人と…… 彼女は自分の使命を終えたとき、同胞たちが待つ場所へと帰っていった」


 『ウルトラマンA』第1話『輝け! ウルトラ五兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060514/p1)において、北斗とともにミサイル超獣ベロクロンの襲撃によって命を落とし、ウルトラマンエースから「大いなる力」を授けられた白衣の天使・看護婦であった南夕子は、実は月の高度文明種族の末裔であり、「打倒ルナチクス」の命を受けた月よりの使者だったのであった。第28話『さようなら夕子よ、月の妹よ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061111/p1)において、悲願のルナチクス打倒を果たした夕子は、ウルトラマンエースの使命を北斗に託して、月星人の仲間の待っている冥王星へと帰っていったのだ……


ミライ「知っています。その人は月の人間だったんですね」


北斗「俺はひとりっきりになった。(なんとも云えないような寂しげな表情を浮かべる北斗=高峰圭二氏の演技!) ……だが、俺は戦えた! 離れ離れになっても、彼女の意思が俺の中にいたからだ!(ここでは一転して表情と声に力がこもり、そして北斗は再び胸に手を当てる!)」


 TACヘルメット姿のかわいらしい笑顔のご尊顔がアップで映し出された夕子のスナップが浮かぶ!


 そして、そこに流されるは、♪ジャカジャカジャ〜ン、ジャンジャ〜〜ン(「ウルトラマ〜ン、エ〜ス〜~~」)なる、『A』においてウルトラマンエースの登場シーンに多用されていたブリッジ曲の映画『メビウス&兄弟』用の癒し系のアレンジBGMだ!


北斗「俺たちは変わらず、いっしょに戦っている。そう実感できたからだ!」



「あれは、小原監督から「やってくれ」と言われたんです。「夕子は月に帰ってしまったけれど、いつでも一緒にいた」というような北斗のセリフがありますが、台本を読んだ時から、このシーンでは胸に手を当てて演技しようと考えていました。どうやら監督も同じことを考えていたようです。自分からお願いして、別のセリフのときにもその芝居をさせてもらいました。放送日に自分の演技を観て、「何度もやるもんじゃないな……」とも思いましたが、北斗の心の中にはいつでも夕子が一緒に居たことを表すとしたら、やはり心臓、ハートですから、これでよかったんだろうと思っています」

(『電撃HOBBY(ホビー)』07年5月号掲載・メディアワークス・07年3月24日発売)スペシャルインタビュー「明日のエースは君だ! 信じる心が不可能を可能にする!!」『ウルトラマンA』北斗星司役)高峰圭二インタビュー)



「あのふたり、どうなるのかなあ? って。それなのに、あの28話よ、あの……! 私たちのヒロインを返せって感じよね」

(同人誌『ウルトラマンA・全員脱出! 3』(グループSOS・89年5月吉日発行)所収「早すぎたヒロイン・南夕子 〜彼女が我々にもたらしたもの〜」)



 北斗星司と南夕子、ふたりの男女の絡みを見るために「怪獣番組」を視聴していた、身体こそ小さくても心は「女」であったと同人誌で述懐する当時の女子児童たちは、『A』第28話で夕子が番組を去ってしまい、第38話『復活! ウルトラの父』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070121/p1)と第52話(最終回)『明日(あす)のエースは君だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)で彼女がゲスト出演した以外は、北斗が夕子のことをまったく顧みる様子がないように見えることに涙し、怒り、そして、その中の熱狂的な人々は北斗と夕子に永遠の愛を与え、『A』の世界を探求し続けていたのであった。(「『A』同人誌の歴史1〜『A』再評価の端緒を築いた伝説の名同人誌『全員脱出!』評」・(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070331/p1))


 だが、寂しかったのは彼女たちだけではない。北斗とてやはり寂しかったのだ。そして、決して夕子のことを忘れていたわけではなかったのだ。それどころか、北斗の心の中には今でも夕子が存在し続けていたのである。だからこそ、ウルトラマンエースヤプールの残党がおそらく送り出していたであろうシリーズ後半の超獣たちとも、最後の最後まで戦い抜くことができたのだ! ……と30数年の歳月を経て、新たに語り足されたのであった!


 実に腑に落ちてくる「補完」である。北斗の夕子に対する想いを的確に表現した高峰圭二氏の演技プランと、夕子のことを実は北斗は片時も忘れていなかったとしたシナリオは、35年の時を経て、あのころはまだ小さかった女の子たちの溜飲を、ようやく下げることにもなったはずであリ、彼女たちほどではなくても、魚の小骨がノドに引っかかっていたような想いを『A』に対して抱いてきた我々の想いをも「補完」するものともなっていたのだ。


 ……まぁ、北斗の「俺はひとりっきりになった」というセリフには、夕子以外のTACの濃ゆい隊員たちは「仲間」じゃなかったのかよ!? そんなに山中隊員にいじめられたことや、隊員や隊長みんなに信じてもらえなかった経験がトラウマになっていたのかよ!? とプチ・ツッコミもしたくはなったものの(笑)。


 でも『A』終盤では、北斗と山中はけっこう仲が良かったし、『A』をよく観ればTAC隊員たちは和気あいあいとするシーンが実はけっこうあったり、仲間同士で失敗をかばいあったりフォローしあったりすることも多いチームなのだ。


(『A』第14話『銀河に散った5つの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)・第21話『天女の幻を見た!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061009/p1)・第22話『復讐鬼ヤプール』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061010/p1)を参照のこと!)


 だから、ここでは「仲間と分断されて、ひとりで戦うミライ」に対する励ましとしての言葉だったのだと好意的に受けとめようではないか!?


 もちろん、「仲間」の存在の称揚が、我々オタクたちのように内気で友人なども少なかった、そもそも友人がいない人間たちに対する脅迫や死刑宣告(爆)のように聞こえてしまったり、あるいは「仲間」以外は皆「風景」で、「仲間」以外の第三者の一般人なぞは守らない! 「身内」しか守らない! つまり、「仲間」ではない人間でも守ろうとする「公共心」ではない! といった批判も正しいとは思うのだ。
 とはいえ、「仲間のため」だけに彼らは戦っているわけでも決してないだろう。しかし、そうはいっても、世界や地球や人々を守るためには「仲間」「同士」「戦友」といった存在がいた方が心強いことは確かだし、そういった精神衛生の面からだけではなく、具体的な戦略・戦術の面でも「仲間」がいた方が有用性や実利もあるものだ(笑)。そういった意味で云えば、「仲間がいたから戦えた」といった発言にも一定の「理」はあるのだ。


ミライ「離れていても…… いっしょに?」


 画面からは光明が消えて青暗くなり、月面でルナチクスに対して決死の戦いを挑んでいるGUYSの仲間たちの姿が、ミライの脳裏に映し出された! ハッとするミライ!


北斗「立て、メビウス! 仲間たちの想いとともに、ヤプールを倒せ!!」


 表情とセリフに実に力のこもった高峰氏の演技がカッコいい! 「仲間たちの想い」というフレーズは、『メビウス』第31話のサブタイトル『仲間達の想い』からの引用でもあるのだろう!


 北斗に励まされたミライはうなずいて、全身に闘志をみなぎらせて「ウワァァァァ〜ッ!!!」と叫びはじめた!


 そして、仲間たちとの絆でもあるGUYSの「ファイヤーエンブレム」の紋章をその胸に浮かばせて燃やしはじめる!


 すると、ヤプールに支配された異世界で倒れ伏していたミライことウルトラマンメビウスの両眼に灯りが点った!


 そう。これまでのミライと北斗の会話は、物理的な物質世界での出来事ではなく精神世界での出来事だったのだ!


 とはいえ、一応の物理的な世界(?)だったとはいえ、ヤプールが構築した異世界の奈落の底に落ちていたウルトラマンメビウスは、ここで目覚めて立ち上がったのだ!


ヤプール! 僕はひとりなんかじゃない! 心はいつも、仲間たちとつながっているんだ!!」


 ベタといえばベタな展開とセリフではある。少年漫画などではよくあるような既視感バリバリの典型とセリフでもある。しかし、そうとわかってはいても感動的なのだ(笑)。


 そして、メビウスが「仲間たち」と語る部分で、北斗のそれを踏襲してきちんと胸に手を当てている演技もまたよいのだ!


 たとえ物理的には距離は離れていても、GUYSの仲間たちと闘志をひとつに集めて、メビウスは胸に浮かべた炎のエンブレムで熱い炎を燃やして、強化形態であるウルトラマンメビウス・バーニングブレイブへと強化変身した!


 そして、ヤプールに猛攻を繰り出す!


 メビウス・バーニングブレイブの蹴りとパンチの連打に、さしものヤプールも吹っ飛ばされる!



 干渉フィールドによって月面に足止めされていたGUYSの基地母艦・フェニックスネスト内にいるマリナの耳にも、北斗の声が響き渡った!


マリナ「教えて! どこを攻撃すればいいの?」
北斗「いいか。石柱の右側面に、赤く明滅する突起物がある。それが干渉フィールドの、放射中枢だ!」


 2分割した画面の右側にはマリナ、左側には北斗のそれぞれの表情のアップを配した演出が、これもこれで70年代合体ロボットアニメのむかしから演出でベタなのだが、やはりカッコいいのだ(笑)。


 もちろん、いくらマリナの聴覚が優れているからといって、月面にいるマリナに地球にいる北斗の声が音波として届いたわけではない(笑)。これは北斗がテレパシーでマリナに呼びかけたと解釈すべきだろう。
 『A』最終話に登場した子供たちによれば、「テレパシーがあるのは、ウルトラ兄弟だけだ!」と云っていた(笑)。そうなると、マリナだけが北斗のテレパシーを傍受できる能力をナゼ? といった疑問が生じる御仁もいるかもしれない。しかし、別にマリナにテレパシー能力がなくても、北斗ことエースだけがそれを持っていれば、一方的にテレパシーを送ることは可能だろ!(笑)


 もちろんGUYSのメンバーは、『メビウス』第1話『運命の出逢い』において、保育園で飼育されていたウサギたちを危険も顧みずに助けようとした連中であった。『帰ってきたウルトラマン』(71年)第1話『怪獣総進撃』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230402/p1)において、自らの命とひきかえに少年と小犬を助けた主人公・郷秀樹のように、すでにナンと全員がウルトラマンと合体できるだけの資格を示していたとももいえるのだ。
 だから、マリナには北斗の声を聴く資格があるのだ! と云いたいところだが、この論法だと、マリナでなくても他のGUYS隊員の誰かでも、あるいは隊員の全員でも、北斗の声が聞こえてきてもよいことになってしまうあたりで、弁護がしづらいところだ(笑)。



 北斗の指示を受けて、マリナが搭乗した小型戦闘機・ガンスピーダーが石柱の突起物に近接してレーザー攻撃!!


 干渉フィールドは破壊された!!


 そして、ダウンしていたフェニックスネストのシステムも回復した!



 だが、今度は石柱の用心棒・ルナチクスがその口から高熱火炎を吐いてGUYSを襲撃してきた! 果たしてGUYSはルナチクスを倒して、無事に月世界から帰還することができるのか!?



 夜空に浮かぶ美しい満月を見守っていた後ろ姿のバストアップの北斗。


 聞き覚えのあるショッキングブリッジとともに月を見上げる! ついに戦う決意を固めたのだ!


 ここでついに正面のバストアップとなり、TACの隊員時代に彼のトレードマークであった白いマフラーがいつの間にか襟元からのぞいている!



「変身する前は隠しておいて、なぜか変身する直前はネッカチーフを外に出している……という芝居も、僕から小中監督(筆者注・映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』の小中和哉監督)にお願いしたアイデアのひとつです。映画の撮影で使ったネッカチーフの長さが足りなかったので、「もう少し長くてもいいんじゃないかな?」と言っていたら、今度は長くなりすぎてしまった……(笑)」

(『電撃HOBBY(ホビー)』07年5月号掲載・メディアワークス・07年3月24日発売)スペシャルインタビュー「明日のエースは君だ! 信じる心が不可能を可能にする!!」『ウルトラマンA』北斗星司役)高峰圭二インタビュー)



 少しでも華のある演出にしようと自らアイデアを提示していく高峰氏の姿勢は、頭が下がる思いだ。


 当然、最大の見せ場でもある、北斗の変身シーンには力がこもり、氏の真骨頂が発揮される!


北斗「夕子、行くぞ!!」


 月に向かって力強く叫ぶ北斗! ナンと! ついにここで月世界の住民でもあった、かつての相棒「夕子」の名も叫んでいる!


 実際に月を見上げているかのような視線の向き、セリフとともに目線にも力がこもる!


 そしてなんと、『メビウス』では諸般の事情の日本音楽著作権協会JASRACジャスラック)へのあまりに高額な支払いの都合で(笑)、そのあたりの事情も知るスレたマニア的には使用されないだろうとアキラめていた『A』主題歌(のイントロだけ。ただしカバー版?)もついに! ついに! 響き出した!


 一般人はともかく、我々マニアの視聴者やウルトラシリーズにもくわしい子供たちの気持ちをいやがうえにも盛り上げる、待ちに待っていた旧作の歌曲のインストゥルメンタルやBGMの再使用!


 北斗はかつて『A』第28話のラストで夕子から託されたエースリングをはめた両腕を、X字型に一度クロス!


 サッと伸ばした両腕を上方から左右に大きく開いたあとに、両こぶしに力をこめて胸の前でタッチさせた!


 合わさったリングから光の粒子が舞い踊り、やがて映画『メビウスウルトラ兄弟』での新撮のエースへの変身巨大化カットではなく、往年のTVの『A』本編で使用されていた、闇の中で光の渦からグルグルと回転しながら巨大化する変身パターンへと続いた!


 ここでも、よもやのバンク映像の再使用をついにやってくれたゾ!



 ルナチクスがその口から吐き出した火炎攻撃をさえぎってみせた星型の光!


 それは『A』第37話『友情の星よ永遠に』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070114/p1)で、ウルトラマンエースが鈍足超獣マッハレスに使用した、両手の先から発射する星型の手裏剣型光線・スター光線だ!


 それに続いて、なんと月面まで瞬間移動(高速移動?)したのか、右斜め上から光跡をひいて左横向きの立てヒザ座り姿の着地ポーズで登場するエース!


 あまりにカッコがよすぎるゾ!


マリナ「あれは!」
テッペイ「ウルトラマンエースだ!!」


エース「ウッ!」「トァ〜~ッ!」「テェ〜〜ィッ!」



 こ、この掛け声は!


 『A』の第1話や第52話(最終話)、第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)や第14話『銀河に散った5つの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)などで、エースの会話部分の声を演じてきた納谷悟朗(なや・ごろう)氏の掛け声を加工してつくられた、オリジナルのエースの掛け声だ!


 納谷悟朗氏は、『ルパン三世』(71年)の銭形警部や、『仮面ライダー』71年)のショッカー大首領など、アニメ・ヒーロー作品・洋画(主に名優チャールトン・ヘストン)などの吹き替えは枚挙にいとまがないほどの名声優であられる。


 しかし、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』においては、エースの掛け声はそのオリジナル音声が使用されておらず、初代ウルトラマンウルトラマンジャック帰ってきたウルトラマン)らの掛け声をじゃっかん低音に加工したかたちで使用されていた。90年代以降は、アトラクションショーやキッズ向けの再編集ビデオ作品の類においてさえ、オリジナルのエースの掛け声に忠実な効果音を使用していたことを考えると実に残念な処置であった。


 これらのエースの掛け声の再使用は、再放送やビデオ化の際にも出演者や主要スタッフへの配当といった権利関係が厳しくなった現在では、無断使用に当たるかもしれないので、万が一の訴訟を恐れて自粛してしまったといったことではなかろうか!?


 そうであれば、手間暇を惜しまずに納谷悟朗氏の所属事務所に出向いて、改めてエースの掛け声を万年再利用ができる契約を締結すればよいではないか!? と思っていたところだ(笑)。


 もちろん、ウラ事情については知らないが、そういったことをクリアしたのではなかろうか?


 ついに! ついに! エースの掛け声も、アトラクショーのみならず映像本編でも、オリジナルの掛け声が再使用される日が到来したのだ!(感涙・笑)



 そして、オリジナルのエースのスーツアクター・中西正氏や武内正治氏を充分に研究し尽くしたに違いないエースのファイテングポーズやファイテングスタイルも感激だ!


 本話において、エースを演じたスーツアクターは、『メビウス』では主に怪獣をじている丸山貢治氏だそうだ。


 そしてまたもや、怪獣博士隊員のテッペイによる「ウルトラダイナマイト!!」「ウルトラマンレオだ!!」「ウルトラの父だ!!」に続く、あまりに嬉しそうな「ウルトラマンエースだ!!」とのセリフが!(笑)


 エースは月面上を2度も前転してルナチクスに右横に出て、ルナチクスにキックやチョップを喰らわして背負い投げもする!


 ルナチクスも負けてはいない! のしかかってきたエースを口からのスモーク攻撃で吹っ飛ばし、突進して頭突きの猛攻をエースの腹に喰らわせた!


 だがエースも、後ろからつかみかかったルナチクスを一本背負いで投げ飛ばした!


 ルナチクスもオリジナルと同様に、赤い目から連射される目玉ミサイルを放った!(他に例を見ない怪獣の攻撃技だ! もっと評価されて然るべきだ!)


 しかし、エースも側転の連続で、ついには地面に伏したまま横転がりになって見事に交わしてみせ!


 一進一退のカッコいい戦闘の継続で、視聴者の興奮も最高潮に達していく!(笑)



マリナ「エース! 危ない!!」


 マリナのガンスピーダーがエースを援護射撃した!


 怪獣攻撃隊もただの傍観者やヤラれキャラではなく、怪獣に対してトドメは刺せなくても有用な存在だとして描くのだ!


サコミズ隊長「フェニックス・フェノメノン!!」


 サコミズ隊長も、フェニックスネストの必殺エネルギー砲を、元凶であるナゾの石柱にめがけて放った!


 ついにエースもその必殺技を繰り出すときがきた!


 ルナチクスが口から放った火球を辛くも避けたエースが、両腕を後方に大きく振りかぶってエネルギーを蓄積し、両腕をL字型に組んで発射するメタリウム光線だ!


 七色に輝く必殺光線を浴びたルナチクスは、同じく七色に輝きながら華々しくその最期を遂げていく!!


 同時にナゾの石柱も大爆発を遂げた!!


 そして、異世界ではメビウスが胸から発するファイヤーエンブレムの結晶技であるメビュームバーストで巨大ヤプールにトドメを刺していた!


ヤプール「(断末魔の声で)なぜだ!? 貴様が俺に勝てるはずは…… 俺が倒れても、偉大なる皇帝に仕えた四天王は、まだ3人残っている! フハハハハハ。破滅の未来で、待っている……(ヒザを崩して悲鳴をあげながら爆死!!)」


 巨大ヤプールが倒れ伏し、爆発する瞬間、『A』オープニングでおなじみの油に光が当たって七色に反射しているような光学映像が一瞬流れるサマがまた芸コマだ! まぁ多分、ヤプールのことだから、人間がいるかぎり、あるいは宇宙に精神・心を持った知性体がいるかぎりは、滅びることもないだろうから、また今後の新作ウルトラマンでも復活する日が来ることだろう!?



暗黒四天王グローザム「ヤプールは倒れた。次は俺の出番だ!」
暗黒四天王メフィラス星人(3代目?)「すでにデスレムが向かった……」
暗黒四天王グローザム「何だと!?」


 オオッ! 本話の段階では(笑)、まだまだ得体の知れない「大物感」と「有用感」を漂わせている四天王の描写にはワクワクさせられる!


 映画『メビウスウルトラ兄弟』のテンペラー星人もそうであったが、やたらと威勢がよく、斬りこみ隊長を買って出た者の末路は常にあっけないのが、この手の作品のお約束である(笑)。


 ヤプールが敗れたことで、ミライやアヤたちは現実の世界に戻ってきた。


 ふたりとともに異世界から解放された悪徳ルポライターヒルカワにもミライが手を差しのべる。しかし、彼はそれを振り払って、異世界で目撃したミライの正体を世間に公表すると匂わせて、その場を離れていった……


 ヒルカワもまた、『メビウス』第28話『コノミの宝物』(脚本・長谷川圭一、監督&特技監督小中和哉)に登場した、コノミの幼馴染み・スザキの友人のゴシップ雑誌記者の再登場であった。演ずるは前々作『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060308/p1)の防衛組織・ナイトレーダーの石堀光彦隊員こと加藤厚成氏!



北斗「ミライ」


 命がけで守った者に冷たい仕打ちを受けて失意に沈んでいるミライに対して、月面から宇宙に低く大きく浮かんでいる美しい地球をながめつつ、エース=北斗の声が響き渡った!


北斗「やさしさを失わないでくれ。
 弱い者をいたわり、互いに助け合い、
 どこの国の人たちとも友達になろうとする気持ちを、失わないでくれ。


 たとえその気持ちが、何百回裏切られようと。


 それが私の、変わらぬ願いだ……」




「『ウルトラマンA』の最終回で、「やさしさを失わないでくれ。弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人たちとも友達になろうとする気持ちを忘れないでくれ(筆者注・原文のまま)。たとえその気持ちが何百回裏切られようと……それが私の最後の願いだ」というセリフがありますが、あれは北斗が自分がエースであることを明かした後のセリフなので、納谷悟朗さんの声なんです。できれば自分で言わせて欲しかった……という当時の想いがあって、「一行でもいいからそのセリフを僕に言わせて欲しい!」というお願いをしました」

(『電撃HOBBY(ホビー)』07年5月号掲載・メディアワークス・07年3月24日発売)スペシャルインタビュー「明日のエースは君だ! 信じる心が不可能を可能にする!!」『ウルトラマンA』北斗星司役)高峰圭二インタビュー)



 『A』第52話(最終話)において、エースが地球の子供たちに語った最後のメッセージもまた、北斗の、いや高峰氏の心の中では、夕子とともに今でも生き続けていたのである。


 まぁ、「地球がこうなったのはおまえのせいだ!」とばかりにミライを散々足蹴にし、トドメにツバを吐きかけるようなヒルカワと友達になれるのか!? とか、「それが人間の本性だ。そんな奴をまだ守ろうとするのか?」とヤプールに語らせるあたりで、甘っちょろくてキレイごとなだけの「人間性善説」だけで終わっていないあたりも評価はできるし、こういった悪役が存在しなければ、それとも対になっている「エースの願い」の言葉もまた、唐突に過ぎるものとなってしまったことだろう。


 ただし、こういった描写もセンス次第ではあって、たかが町の「暴走族」を例に「2000年後に宇宙に災いをもたらす地球生物」として「人類」を描いていた、映画『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE』(03年・松竹)のようでは、あまりにも説得力には欠けてしまうのだが(汗)。



 しかし、そんな邪念も、次の瞬間には木っ端微塵に吹っ飛んだ!


夕子「(声のみ)星司さん……」


 北斗の真後ろから懐かしい声が響いてくる。


 北斗の記憶の片隅に残る、透明感のある甘い声が、北斗の名を呼んだのだ!


 さも信じられない、意外であるかのような表情をしてみせる高峰氏の演技がこれまた絶品!


 声のする真後ろを振り向く北斗…… そこには!



北斗「夕子……」(思わず頬が緩む! 無理もない!)


夕子「ほ〜んッとうに、おひさしぶり」(満面の笑みを浮かべながらカメラに歩み寄ってくる)


 『A』第28話・第38話・第52話(最終話)。そして、『ウルトラマンタロウ』(74年)第39話『ウルトラ父子(おやこ)餅つき大作戦!』でも見せた、純白のロングドレスに身を包んで、月のような球体を5つもつないだシルバーのイヤリングに、これまたシルバーのネックレスを付けた夕子が、夜空に青白く輝くひときわ大きな天の川を背景にしたフレームの左隅から歩み入ってきて、画面の左右両端から北斗とロングショットで向き合ったのだ!


 このふたりの永遠の愛はやはり、共に7月7日の生まれだからか、七夕伝説とも符合していたのである!(号泣……)


北斗「ああ……」(なんとも感慨深げな表情!)
夕子「もし私が月の人間じゃなくて、ず〜っと地球にいられたら…… 星司さんといっしょに、こんなふうに年を重ねていたのかもしれない」
北斗「そうだな」(これまでにない優しい語り口!)


 いや、筆者には夕子がさほどに歳を重ねてきたようには思えない! ルックスも声も、そこまで変わっていないではないか!?



「すごく照れましたが、夕子との再会シーンをとても綺麗に撮ってもらえて嬉しいです。星さんは映画のエンディングにも登場していますが、そのときはお芝居はなかったんですよ。だから、今回の撮影ではとても緊張していたみたいです。僕は口が悪いもんだから、「大丈夫だよ、まだ若くて綺麗に見えるよ!」って言ったら、叱られちゃいました……(笑)」

(『電撃HOBBY(ホビー)』07年5月号掲載・メディアワークス・07年3月24日発売)スペシャルインタビュー「明日のエースは君だ! 信じる心が不可能を可能にする!!」『ウルトラマンA』北斗星司役)高峰圭二インタビュー)



夕子「でも、後悔はしていません。(ここで夕子のバストアップに切り替わって)


 さっき星司さんが云ってくれたように、私も……(満面の笑顔で目線を遠くに泳がせ)


 星司さんをずっと近くに…… 感じていたから(可憐さを、大人の余裕と同時に漂わせながら……)」



北斗「(報われたような万感の表情で)夕子……」


夕子「(笑顔で歩みを開始する)」


 歩み寄るふたりが35年ぶりに手のひらを合わせる!


 ふたりの手のひらのアップ。


 やさしげなやわらかい光の粒子がほと走り、エースの変身巨大化時の効果音だけが静かに鳴り響く!


 まさに35年ぶりのウルトラタッチだ!(ああ、もう涙が止まらない……)



 画面で描かれたことだけが、作品世界のすべてではない。北斗だって夕子との別れはやはり寂しかったのだ。だが、ヤプールが一度は滅びても、次々に出現する超獣たちと戦うためには、北斗星司は夕子への想いを表面に出すことができなかっただけなのだと解釈したいのだ。


 そして、夕子もまた月世界の仲間とともに冥王星へ移住しようとも、北斗のことをずっと近くに感じていたのだ。35年の時を経て、ついにこの事実が証明もしくは補完されたのだ!


 CDショップ・HMVで催された、デジタルウルトラプロジェクト発売のDVD『ウルトラマンA』(04年・asin:B00024JIU2)の販促イベントに、「何度もお断りした」にもかかわらず半ば無理やりに引っ張り出されてしまったことがキッカケとなり、その後は各種媒体で『A』の裏話を語るようになった南夕子役の星光子氏であった。しかし、まさか映像本編でも再登場してくれて、しかも消化不良な要素が残っていた『A』をここまで補完してくれるとは!


 彼女を最初に引っ張り出して、そして次からインタビューなどを実施し、さらには映像本編にも抜擢するかたちで、バトンをリレーしてきた御仁たちの、ここ数年の功績と成果はあまりにも大きい稔りを迎えたのであった。



 まぁ、たしかにこの再会シーンはあまりに唐突かもしれない。ここまでのストーリー展開ともつながりはない。夕子再登場の「伏線」もなかった。強(し)いて云えば、北斗が「夕子、行くぞ!!」と叫んでいたことと、前話の末尾の予告編で「夕子」再登場があるかもしれない!? と示唆(しさ)されていたことが「伏線」ではあった(笑)。


 まぁ、それを云い出すと、北斗の再登場自体も同様なのだけど(爆)。そう、北斗と夕子の再登場には「取ってつけたような感」も確かになくはないのである。


 だが、そんなことは百も承知なのだ! それでもこの場面は長年のウルトラシリーズのファンからすれば必要不可欠のものなのだ! 北斗と南の再登場に彼らの再会があるからといって、本話の物語自体が破綻してしまうわけでもないのだし、少なくともウルトラシリーズや『ウルトラマンA』を未見の視聴者にも許容範囲にはおさまっている展開ではなかろうか?


 たしかに夕子の登場に関してまったく伏線は描かれてはいなかった。しかし、それを云うならば、『帰ってきたウルトラマン』第18話『ウルトラセブン参上!』や同作の第38話『ウルトラの星 光る時』に登場したウルトラセブン初代ウルトラマンだって、一般的な意味での「伏線」などはなかったぞ(笑)。


 ストーリーの整合性うんぬんよりも総合的に考えれば、かつてのヒーローやヒロインの再登場自体が大きな感動と高揚感を与えてくれるわけなのだ。まさに「参加することに意義がある」ならぬ「再登場することに意義がある」のだ! 筆者にかぎらず世代人であれば、『帰ってきた』第18話のセブン登場シーン、第38話の初代マンとセブンの登場シーンなどは、いまだにリアルタイムで観た際の記憶が鮮明に残っていることだろう!


 現役の子供たちからしてみても、もう児童誌での設定情報などで「ウルトラ兄弟」の設定はおおかた認知されていることだろうし、前話の予告編での設定紹介コーナー「メビナビ」でもエースの紹介があったのだから、それらが広い意味での「伏線」になっているのだと考えれば、まさに無問題!(笑)


 しかし、我々オタクが百万言を費やすよりも先に、高峰氏自身が端的に本話『エースの願い』を要約してくれていた。



「息子も観たそうなんですが、合体変身が半分で終わってしまっていた『A』の後日談として、ファンの人たちも納得できるような脚本だったんじゃないかと感心していましたよ。南夕子が途中でいなくなってしまったことで、その当時から観ていたファンの人たちにとっては、もやもやしたものが残っていたんでしょうね。それが、今回の『エースの願い』でのお話によって、ウルトラタッチはしなかったけれど、「まだ二人とも元気でいて、心が通い合える関係なんだな……」という雰囲気を匂わせてくれたのはよかったと思います」

(『電撃HOBBY(ホビー)』07年5月号掲載・メディアワークス・07年3月24日発売)スペシャルインタビュー「明日のエースは君だ! 信じる心が不可能を可能にする!!」『ウルトラマンA』北斗星司役)高峰圭二インタビュー)



 そう。まさにそのとおりなのだ。



 もちろん、夕子の宿敵であったルナチクスを再登場させるのであれば、北斗とも合体変身をしてほしかったとか、夕子を「姐(あね)さん」呼ばわりしていた『タロウ』第39話に登場した月面に住んでいる「うす怪獣モチロン」を再登場してほしかったとか、『ウルトラセブン』第35話に登場した月怪獣テペロの同族別個体も登場してほしかったとか、『ウルトラマンレオ』第32話『日本名作民話シリーズ! さようならかぐや姫 「竹取り物語」より』に登場した月光怪獣キララも登場させて、同話で月に帰ったかぐや姫こと弥生(やよい)さんと南夕子も同じ月星人であり知己でもあることを念押ししてほしかったとか、マニアの皆さんも思っているであろうことは筆者も妄想してしまったりはしている(笑)。


 しかし、そこまで盛り込んでしまうと、「35年ぶりの北斗と夕子の再会」の「ロマンチックさ」といった焦点がボヤけてしまって散漫になってしまうことだろうから、やはりこのふたりの再会に的を絞ってみせた本話の作劇が正解だったのだ。

2007.4.4.


(了)



※:『電撃HOBBY(ホビー)』2007年5月号(メディアワークス・07年3月24日発売・[asin:B000O58XXC])に、われらが北斗星児こと高峰圭二氏の単独インタビューがなんと4ページ(!)もの長きにわたって掲載されているので、マニアなら買いです!


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