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ウルトラマンメビウス14話「ひとつの道」


『ウルトラマンメビウス』評 〜全記事見出し一覧


(脚本・太田愛 監督&特技監督 村石宏實)
(『ウルトラマンメビウス』〜ウルトラマンヒカリ編・短期集中連載!)
(文・久保達也)
 第14話『ひとつの道』は、なんと3ヶ月もの間、母に対してGUYSに入隊していることを隠してきたテッペイの主役話。湿りがちになりそうな話かと思いきや(まして脚本は太田愛!・笑)、いきなりの昆虫型甲殻怪獣インセクタス(雌)の登場に攻撃するGUYS、そしてマケット怪獣ウインダムの再登場で幕を開ける! マリナがインセクタスの胸から高周波を発しているのを聞きつけるや、テッペイは高周波の発振源である胸の穴を狙うよう、ウインダムに指示を与える。ウインダムは頭部からインセクタスの胸にレーザー光線を放ち、遂に勝利をおさめたのだ!


 ウインダムが敵に勝った! ウインダムは『ウルトラセブン』全49話中、都合3回登場したが、第1話『姿なき挑戦者』では宇宙狩人(ハンター)クール星人の円盤を2機撃墜したものの、3機が合体した円盤に光線を受けて即座に退散、第24話『北へ還れ!』ではオーロラ怪人カナン星人に電子頭脳を狂わされ、あろうことか親分のウルトラセブンと対決するハメになり、第39話『セブン暗殺計画(前編)』では分身宇宙人ガッツ星人の宇宙船の攻撃に破壊されてしまったのだ! 彼の哀れな末路を思うと今回の初勝利は実に感慨深いものがある。


 戦闘現場での勝利の記者会見に応じるトリヤマ補佐官とマル補佐官秘書であるが、そこに通りかかったテッペイを「今回の勝利の立役者」としてテレビカメラに紹介してしまい、自宅の居間でそれを見ていたテッペイの母クゼ・ケイコに衝撃を与えることになる。
 そしてトリヤマはインセクタスが這った跡の、粘液質の物質を踏んづけてしまい、その際にインセクタスのノープリウス(幼体)がトリヤマの耳から体内に入りこんでしまうのである!


 今回はトリヤマが起こした二つの失態が原因でのちに大騒動が巻き起こることとなる。本当にロクなことをやらかさず、テッペイからもGUYSからも市民からもマスコミからも本来なら非難されて然るべきところだが、トリヤマは今回誰からも非難されずに物語は終わることとなる。
 これによく似た構図が『ウルトラマンタロウ』(73年)第6話『宝石は怪獣の餌だ!』(脚本・田口成光 監督・筧正典・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080511/p1)で描かれていた。主人公・東光太郎(ひがし・こうたろう)が得体の知れないエジプトみやげの宝石を「誕生日プレゼント」として白鳥さおりに与えるが、それを好物とするなめくじ怪獣ジレンマを白鳥家に呼び寄せる結果となり、愛犬のポチは強酸で溶かされてしまい、さおりと弟の健一も散々コワイ思いをすることになる。そして光太郎がZAT(ザット)ガンのレーザーを浴びせたことでジレンマは巨大化し、街に大被害を与えてしまうのである!
 本来なら防衛組織に属する隊員として、光太郎は「軽率過ぎる」との批判を免れないところだ。だが視聴者がそうツッコミを入れる前に、この回は実に華麗にその危険性を回避しているのである!
 ジレンマがさおりの持つ宝石を狙っているらしいことが判明し、光太郎は宝石を捨てるようさおりを説得するが、いくら云ってもさおりは宝石を捨てようとはしない。愛する光太郎が誕生日プレゼントとして、お守りとしてくれたのだから絶対に捨てたくはないと主張するのだ。だがそれはあくまで表向きの理由であった。


 「もしこれが本当にお守りであったとしても、キミが命を捨てるような行動をとれば、それはお守りにはならないんだよ!」


 光太郎は遂にさおりをこう叱り飛ばすが、その際にさおりはようやく本心を打ち明ける。本当に宝石がジレンマを誘い出す代物であったなら光太郎さんは責任を免れない。でも自分が宝石を手放さずに無謀な行動をとり、それでジレンマに殺されるのであれば、それはあくまで自分の責任であり、光太郎さんは非難されずに済む……


 東光太郎やトリヤマ補佐官がとった行動は軽率ではあったにせよ、悪意はまったくなく、結果としてジレンマやインセクタスの恐怖を呼び起こすこととなったに過ぎない。あくまで結果責任のみを激しく追及しがちなギスギスした昨今の風潮を思うにつけ、さおりの光太郎への愛ゆえの献身的な行動は実に光るものがある。みんなさおりの爪の垢を煎じて飲んだ方がいい(笑)。
 今回はテッペイの親子愛をテーマにしているため、トリヤマの責任追及云々を省いていることもあるのだろうが、いずれにせよ愛が溢れるストーリー、そして巨大化前のジレンマの皮膚感覚とインセクタスが這った形跡のヌメヌメ感、深夜に暗躍するジレンマと病院の地下で不気味にうごめくインセクタスの怪奇描写と、『タロウ』第6話との共通項を筆者としては大いに感じる。物語の爽やかさと怪獣の生理的嫌悪感を両立させるという、不思議なバランス感覚もまた、今回は再現されているように思われる。


 テレビを見て仰天し、GUYS基地・フェニックスネストに怒鳴り込んでくる和服姿のケイコ。突然の訪問に「あ〜どうしようどうしよう」と頭を抱えて慌てふためくテッペイの演技が傑作だが、社員食堂から出てきたミライ・リュウ・マリナ・コノミに対し、テッペイは母にGUYS入隊を隠していることをうち明け、自分がGUYSにいないと証言してくれと懇願する。既に結束が固まった仲間たちはこれを快諾する。
 社員食堂に現れたケイコに隊員たちは他人の空似だとごまかそうとするが(そんな場においてもマリナが「世の中には似た人間が3人はいる」と発言したことに、ミライに「そうなんですか!?」と反応させているのが絶品!)、事情を知らずに現れたジョージが薔薇の花をたずさえ(笑)、「これはこれはテッペイの……」と挨拶しようとして一同が凍りつく!
 ここで画面が数秒間停止してしまう演出が実に秀逸である。まるで『ウルトラセブン』第5話『消された時間』に登場した宇宙蝦(えび)人間ビラ星人の時間停止光線を浴びたかのようだ(笑)。この演出のあと、大慌てでジョージの口をおさえる隊員たち、激怒するケイコを見せることで効果は絶大なものとなっているのだ。
 そしてインセクタスに取り憑かれて食堂で突如暴れ回り出したトリヤマをなんとケイコが押さえつけ(!)、その際に幼体が彼女の耳から体内に入り込むや、ケイコは突然帰ってしまった。
 テッペイは、母にGUYS入隊を隠している理由を一同にうち明ける。子供のころ、テッペイが高い木から飛び降りようとするのを見た母はショックで倒れ、医者である父の必死の看病で一命をとりとめたという。テッペイが医者を志した理由もここで端的に表現されているわけだが、彼はこのとき、もう一つの重大な決意をしたのである。


 「母の前で、二度と木から飛ぶようなマネはしない」


 これを聞いたリュウはみんなでテッペイの秘密がケイコにバレないようにバックアップしようと一同に提案する。だが、ただひとりジョージだけがそれに賛同しようとしない。ミライがその理由をたずねると……


 「いいか。俺の今回のテーマは、テッペイの自立だ!」
 インセクタスは既にトリヤマの体内から離れ、別の人間に乗り移った可能性が発覚、心配になったテッペイは実家へと向かう。ケイコはテッペイが大学に行っていないことを激しく責めるが、続いて現れた隊員たちを見るや、「あなたたちテッペイとどういう関係? 昨日は知らないと云っていたのに!」とまたもや激怒! ところが……


 「GUYSの、お宅訪問〜!」


 マリナのあまりに唐突なこのフレーズに続き、コノミが「GUYSは週に一度、抽選で当たったご家庭を訪問してGUYSに対する理解を深めてもらっているんです!」と嘘八百を並べたてる(笑)。この思いつきの機転もさることながら、ここまでしてテッペイをかばおうとする隊員たちの思いやりの深さには敬服させられるばかりである。
 インセクタスはケイコの体内からも既に抜け出たことが判明。ミライは再登場のクゼ家のメイド・もえさん(笑)からケイコが夫の病院に立ち寄ったことを聞き出すが、案の定、インセクタスは看護婦のロッカー内に不気味な粘膜をつくりだしていた! 響き渡る白衣の天使の悲鳴!
 病院に急行するGUYS。時を同じくしてサコミズから昆虫の大群が病院に向かっているとの連絡が入った。インセクタスの高周波によって呼び寄せられたのだ!
 インセクタスが巨大化する前に病院地下の駐車場におびき出して倒す作戦を立案するGUYS。「この病院のことを一番知っているのは僕だ」とおとりになろうとするテッペイ。だが……


 「行ってはいけません! そんな危険なことをしては駄目! その制服……あなたはお医者様になるはずだったのに、どうしてGUYSなんて横道にそれてしまったの!」


 ケイコがそれを阻止しようと立ちふさがったのである。「ごめん……」とつぶやき、立ち去ろうとするテッペイになおも「行っては駄目!」と叫ぶケイコに、マリナが力強く主張する!


 「GUYSはプロのチームです! テッペイくんも、この病院も、守ってみせる!」


 『Run through!〜ワンダバ「CREW GUYS」〜』*1インストゥルメンタルが流れる中、遂にインセクタス打倒作戦が開始!
 地下に潜入したGUYSが、不気味に忍び寄るインセクタスの影をマリナの優れた聴覚を頼りに捜索する場面は、サスペンスフルな音楽の効果もあってスリル感の溢れる仕上がりであるが、発見したかと思いきや、インセクタスは既に成長を遂げたあとであり、地上にその巨大な姿を現した! 病院を破壊しようと迫り来るインセクタス(雄)!
 一斉に攻撃の手を加えるGUYSの戦列を離れ、ミライはウルトラマンメビウスへと変身! 空中からインセクタスにキックを浴びせるが、インセクタスの高周波に呼び寄せられた数え切れないほどの昆虫の大群がメビウスを襲う!
 「昆虫ども、こっちだ!」同じ周波をメモリーディスプレイから発して昆虫の大群を自分の方に誘いだし、メビウスを救おうとするテッペイだが、はずみで転倒、一斉にテッペイを襲撃する昆虫の群れ!
 あわやと思ったそのとき、超絶科学メテオールによる光のバリヤー=キャプチャーキューブがテッペイの周囲に張りめぐらされる!


ジョージ「隊長、メテオール、悪いんだけどさあ」
サコミズ「以後事後報告厳禁!」


 「おまえは二度と木から飛び降りないって、決めたんだろ。だったらどうしてGUYSにいるんだ。GUYSの仕事は、常に危険と隣り合わせだぞ!」とテッペイを非難していたジョージだったが、テッペイの危機を救ったのも他ならぬジョージであった。彼の今回のテーマだった(笑)「テッペイの自立」が果たされたことも大きいのだ。
 テッペイから離れた昆虫の大群は再びメビウスを襲撃した! テッペイはインセクタスの中枢神経が集中した腹と胸をMN弾で攻撃するよう、仲間に指示を出す。
 「メテオール・インストール!」との音声とともに、一斉にMN弾でインセクタスを攻撃するGUYS! 致命傷を受けたインセクタスはメビウスにとどめを刺された!


 仲間とともに帰還しようとしたテッペイは、ジョージにこうとがめられた。


 「おまえはさあ、まだやることあんじゃないのか?」


 ケイコに向かって歩いていくテッペイの心の声……


 「母さん、僕は横道にそれたんじゃない! 僕は変わらない一本の道を歩いているんだと思う」


 そして力強くケイコに主張するテッペイ。


 「医者もGUYSも、どちらも同じ人の命を守る仕事なんだ! 僕はいつか必ず医者になる! でも今は……」

 そう云い終わらないうちに、ケイコはテッペイの負傷した右腕にハンカチを巻きつけながらこう諭した。


 「早く行きなさい! 母さん人を待たせるのキライよ。さあ!」


 息子を送り出したケイコは現れた夫にこうつぶやく。


 「子供だとばかり思っていたのに……」
 「そうでもないさ」


 人間愛のさまざまな形を、怪奇色濃厚な怪獣事件に巧みに絡ませて描いた本作は、一歩間違えれば辛気臭い話となる危険性を回避した、実にバランス感覚に溢れた仕上がりである。「テッペイの自立」がテーマであれ、あくまでインセクタスの恐怖が物語を引っ張り、それが中心となって様々な人間模様を形成しているのである。あの太田愛でさえも『メビウス』においては光となるのである(爆)。
 なお蛇足ではあるが、ケイコを演じる林寛子は『変身忍者 嵐』(72年)にカスミ役でレギュラー出演していたほか、『仮面ライダー』(71年)第24話『猛毒怪人キノコモルグの出撃!』、および第25話『キノコモルグを倒せ!』にもゲスト出演しており、既に特撮ヒーロー作品に関しては手慣れたものです。ちなみに小泉今日子が82年にカバーした『素敵なラブリーボーイ』は元々は彼女の持ち歌であり、アイドルタレントとしての一面もありました。

2006.7.25.
(了)


(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年準備号』(06年8月12日発行)『ウルトラマンメビウスウルトラマンヒカリ編・合評②より分載抜粋)



『ウルトラマンメビウス』評 〜全記事見出し一覧


*1:妙に古めかしいメロディ(まあ狙ってるんだろうけど)が印象的な挿入歌で(作詞・満田かずほ 作曲・冬木透)、主題歌とカップリングされ、CDシングル(asin:B000F6YQ72)がコロムビアミュージックエンタテインメントから発売中(主題歌を歌唱するメンバーを見ると、06年9月16日から公開される『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』の出演者をはじめ、超豪華な顔ぶれだ……)
 ただ個人的には『ウルトラマンダイナ』(97年)の挿入歌『Take off!! スーパーGUTS(ガッツ)』(作曲は矢野立美ではなく佐橋俊彦が担当)の方があかぬけていて好きだったなあ。もちろん第2期ウルトラ世代としては「ワンダバ」には特別な想いがあるが(78年5月21日にキングレコードから発売されたLPレコード『サウンドウルトラマン!』に、ウルトラBGMとしては初めてレコード収録を果たした『MATのテーマ』を、それこそミゾが擦り切れるきらいに聴いたものだ!)、これを突きつめるといっそBGMも全部旧作でやってくれ、ってことになっちまうしなあ。もちろんウルトラ兄弟が登場する際にはぜひお願いしたいけど……
 いや、『メビウス』にはそれ以上に魅力的な音楽が結構あるぞ! この原稿もコロムビアのサントラ(asin:B000FTW8MO)聴きながら書きたかったのだけど、発売が06年7月19日から26日に延期になったから無理だった……