(ファミリー劇場『ウルトラマンエイティ』放映開始記念「全話評」連動連載!)
『ウルトラマン80』 再評価・全話評! ~序文
『ウルトラマン80』#13「必殺! フォーメーション・ヤマト」 〜UGM編開始!
『ウルトラマン80』#25「美しきチャレンジャー」 〜フォーメーション・ヤマト&急降下のテーマ再度使用!
『ウルトラマンメビウス』#17「誓いのフォーメーション」 〜&『80』#13、25フォーメーション・ヤマト編&BGM急降下のテーマ!
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『ウルトラマン80』第14話「テレポーテーション! パリから来た男」 ~急降下のテーマ&イトウチーフ初登場!
『ウルトラマン80』第14話「テレポーテーション! パリから来た男」 〜合評1
(文・内山和正)
(1999年執筆)
本作の防衛組織・UGMの極東エリア基地に新加入する、イトウチーフ(副隊長格)の初登場回である。
●その乗機が赴任途中の空中で消えてしまう。
●かと思えば、UGM基地の上空に光に包まれて現れる。
●乗機から降りたあとも、整備員や警備兵の制止を横柄に無言で押しのけてUGM司令室に向かっていく。
●UGM隊員たちに理由も云わずに無謀な垂直降下特訓を行なってみせる。
●イトウ自身が夜間の調査中に光に包まれて消えてしまう。
彼の行動は実に怪しげで、エイリアン(宇宙人)にスリ替わられたのでは? と隊員たちの疑念をつのらせる。
視聴者としては、彼がエイリアンではなく何か訳があるのだろうとは思うものの、その真相は突飛である。
彼は若いころからテレポーテーション(瞬間移動)の研究をしていた。ヨーロッパを同様の手口で荒らしまわった怪獣のテレポーテーション能力を研究して、人間たちが消失するあたりの方位を計算し、それに乗ってテレポートして怪獣の居所を突き止める。そして、催眠状態にある人々を、UGMの専用銃ライザーガンをかざして、怪獣が潜伏する倉庫の外に誘導していたというのである。
真相を知った主人公・矢的猛(やまと・たけし)隊員は、イトウを疑った自分を恥じて許せず、イトウに自分を殴ってくれと頼む。
「ムリもないさ。俺はいちいち言葉で説明せんからな」
と云うイトウだが、さらに懇願(こんがん)する矢的に折れて、イトウは一発だけ見舞う。心のわだかまりが晴れる矢的。両者の和解と信頼の構築を意味する、このへんの体育会系のノリもそれなりに魅力的だ。
もちろん、イトウのやりかたも一長一短ではあるから、そのダークサイドや欠点をも描いていく。和解の直後に、電波が通じないため倉庫の外で通信していて、戻ってきたハラダ隊員は事情を知らないからムリもないのだが、大声を出してイトウを「あんたはエイリアンだ!」と糾弾する! そのために怪獣は目を覚ましてしまうのだ。
眠りながら餌となる人間をテレポーテーションの能力で捕えてくるザルドンの、怪獣というよりは魔神ともいうべきようなルックスと巨眼のキャラクターも印象的で、この赴任話は新キャラクターの初登場回としても心に焼き付くような新鮮なものとなっていた。
ザルドンが両目から発するテレポート光輪を、矢的猛隊員が変身したウルトラマン80(エイティ)が超能力で手持ちの正方形の鏡(ハレーションミラー)で跳ね返すや、ザルドン自身がテレポートで消失してしまう。
それを追って、80もテレポートして、郊外から4次元らしき異空間に移動してのバトルも魅力的だ。
前話で披露したリバウンドミラーにつづいて、今回はハレーションミラーなどの防御の光学バリア技を披露するあたり、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)22話「復讐鬼ヤプール」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061010/p1)でも超獣ブラックサタンの攻撃に対して円形のサークルバリヤーを披露した、いかにも川北紘一らしい特撮演出でもある。
ラストシーンで、イトウチーフが単に傲岸不遜・横柄なだけの人間などではなく、道化(どうけ)てみせて冗談を云ったり、オオヤマキャップに若いころの失敗談をバラされて「勘弁してくださいよ〜」と弱いところを見せるあたりで、今後の展開におけるイトウの性格描写、人間としての幅の広さの可能性を予感・提示もしている。
他の脚本家がいかようなりとも料理ができるようにタネもまいており、本作前半のメインライターであり本話も担当した阿井文瓶(あい・ぶんぺい)氏の工夫には感心させられる。その狙いを体現できる、中堅どころの大門正明(だいもん・まさあき)氏のたしかな演技力もあるのだが。
前回の13話「必殺! フォーメーション・ヤマト」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100725/p1)ともども軍隊調であるのが顕著なのが、本来は軍隊ギラいの人間としては多少は気になるものの、それもさして気にならぬ「UGM編」開幕の魅力的な作品群となった。
◎イトウチーフが使用する専用戦闘機・エースフライヤーは、スカイハイヤーやシルバーガルのような架空の近未来兵器ではなく、本作においては多数登場するいわゆる雑魚(ざこ)メカであった一般の地球防衛軍隊員用の実在する現用戦闘機(F/A-18 レガシーホーネットだそうだ)とも同型であることも、彼のシブさと特権性を演出している。まあ小さな子供にとっては気が付かないような類いのこだわりではあるのだが……
◎1980年当時のジャンル作品で、「異星人」「エイリアン」という呼称はまだ珍しいが、前年79年のSF洋画ホラー『エイリアン』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171104/p1)で、「異星人」や「エイリアン」という呼称がようやく普及をはじめる。本作『ウルトラマン80』では従来の「宇宙人」「星人」の呼称に代わり「エイリアン」の呼称が多用されることで、当時としては新鮮味も出していた。
◎おそらく実在の在日米軍・厚木基地などの高空写真を基にした、広大な複線の滑走路を有するUGM極東エリア基地を、上空から見下ろした超リアルな特撮美術の出来には脱帽する。特撮美術陣の見事な働きぶりには拍手を送りたい。
(編:『80』同様、特撮シーンは東宝の特撮部門(東宝映像)に下請けに出していた『ウルトラマンエース』の#20「青春の星 ふたりの星」(特撮監督・佐川和夫 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061008/p1)における、冒頭の高空から眼下に見下ろす夜間の駿河湾岸の超リアルな特撮美術も、特撮マニアならば要チェックである!)
◎隊員たちがUGM基地の玄関(?)前の庭でくつろぐシーンで、地球防衛軍の英語名が掲示された門が写る。それによると、「UNITED NATIONS DEFENCE ARMY」。直訳すると「連合国(=国際連合=国連)防衛軍」。
◎オオヤマキャップの5期下であるという設定を持ったイトウ順吉チーフを演じた大門正明氏は、特撮ジャンルにおいては怪獣映画『ゴジラ対メカゴジラ』(74年)主人公・清水敬介、『メカゴジラの逆襲』(75年)の草刈、TV特撮『電脳警察サイバーコップ』(88年・東宝)のZAC(ザック)隊長こと織田久義がジャンルファンにはつとに有名である。
『ウルトラマン80』第14話「テレポーテーション! パリから来た男」 〜合評2
(文・久保達也)
(2006年9月執筆)
『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)第17話『誓いのフォーメーション』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061001/p1)において、『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)第13話『必殺! フォーメーション・ヤマト』で使用された防衛組織・UGMの戦闘機・シルバーガルによる分離編隊攻撃である「フォーメーション・ヤマト」が再現されたシーンでBGMが流用されたことから、だまされている人も多いかと思う。『80』で初めて、いわゆる『急降下のテーマ』のBGMが流用されたのは、第13話ではなく第14話『テレポーテーション! パリから来た男』(脚本・阿井文瓶 監督・湯浅憲明 特撮監督・川北紘一)における、UGMの垂直降下の訓練シーンからである。
『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)第14話『悪魔の星が来た!!』(脚本・梓沢四郎 絵コンテ・八尋旭 演出・安濃高志 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090803/p1)において、主人公のヒカリ超一郎隊員が火山怪獣ガドン攻撃のために、小型攻撃機・バーディで出撃するシーンで初使用されて以来、科学警備隊のフライトシーンで多用されて『ウルトラマン80』にも流用された高揚感にあふれるBGM。
『80』第14話での使用が印象的であったことから、ファンの間で『急降下のテーマ』と命名されたわけであるが、元々『ザ★ウルトラマン』で何度も使用されていた曲が、『80』の時点でそんな扱いを受けるというのは考えてみればおかしな話。要するに第1期ウルトラ世代のマニア(当時もう20歳前後)は、『ザ★ウルトラマン』がアニメであったことに難色を示して、放映当時にまともに視聴していなかった人間が多いという裏づけともいえる現象であった(『80』で初めて耳にしたわけである)。
このような状況に対して、各種商業誌や編集ビデオ、最近では平日帯番組『ウルトラマンボーイのウルころ ウルトラころせうむ』(03年)やファミリー劇場『ウルトラ情報局』(02年〜)の監督としても活躍されている、『ザ★ウル』本放映当時はまだ小学生であった特撮ライター・秋廣泰生(あきひろ・やすお)氏は、特撮同人誌『夢倶楽部 VOL.10』(大石昌弘・97年8月15日発行)『ザ★ウルトラマン』特集PART1において、こう語っている。
「(引用者補足:『ザ☆ウルトラマン』は)本放映当時は結構人気があったように思うのですが、あくまでリアルタイムならではの人気だったのでしょうか。そう言えば『ウルトラマン80』の第14話から『ザ☆ウルトラマン』の冬木透氏の劇伴が流用されはじめた時も、『80』の新録音曲と思われたりして、なんだかなあ。“急降下のテーマ”なんて、僕はいの一番にバーディの活躍シーンを思い出すんですけど……」。
そう、この曲は『科学警備隊スクランブル・テーマ』とでも呼称すべき楽曲だったのだ。
ちなみにこの曲は、『80』第25話『美しきチャレンジャー』(脚本・阿井文瓶 監督・湯浅憲明 特撮監督・佐川和夫 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101016/p1)において、再び「フォーメーション・ヤマト」が試みられて(!)、敵の円盤群の撃墜に成功した際に使用されており、『メビウス』第17話での流用はむしろそちらからの引用なのであった。
空前のボーリングブームに沸いた1971年に、同名タイトルのスポ根(スポーツ根性)ドラマ『美しきチャレンジャー』が、新藤恵美・森次浩司(『ウルトラセブン』(67年)主人公モロボシ・ダンを演じた森次浩司!)らの主演でTBS系にて放映されていた。
この『80』第25話のサブタイトル『美しきチャレンジャー』もまた、オオヤマキャップこと中山仁が女子バレーボールのコーチを演じて最高視聴率も40%(!)近くに達していた大ヒット・スポ根ドラマ『サインはV(ブイ)』(69年・続編は73年)つながりの連想で、「風が吹けば桶屋が儲かる」式に引っ張り出されてきたものだろうと思われる(笑)。
ちなみに、この第25話『美しきチャレンジャー』も、平成ウルトラの特撮では考えられないような、広大なUGM基地の飛行場セットとウルトラシリーズ最高レベルのリアルな出来の大型にして多数のミニチュア群(現実の空軍風の基地施設!)と、およびすでにSF洋画『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』(共に77年・78年日本公開・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200105/p1)以降の時代でもあってか、謎の宇宙人の円盤のデザインも超カッコよくて、そんな中でエイティと怪獣がウルトラシリーズ十指に入るであろう豪快な特撮怪獣バトルを繰り広げる注目作!
なお『急降下のテーマ』は、06年9月20日にコロムビアミュージックエンタテインメントから発売された『ウルトラサウンド殿堂シリーズ(8) ザ★ウルトラマン』(asin:B000H30GT0)にも収録されている。06年現在入手可能なのはこれだけなのでぜひ!
そして『メビウス』第17話は、単なる流用ではなく、新たに男声コーラスによる「ワンダバ」がミックスされているのがポイントである。
88年10月1日に日本コロムビアから発売された2枚組CD『円谷作品オリジナル原盤 ザ・ウルトラマン/ウルトラマン80音楽集 冬木透の音楽世界』の解説書においては、この曲について
「録音時のクレジットには“コーラス無し”と書かれており、この曲に本来は“ワンダバ”コーラスが付く筈であったことを示唆している」
と書かれている。今回はこれが実に27年ぶりに、新規にコーラスをミックスして再現されたのであった!(06年8月30日にコロムビアミュージックエンタテインメントから発売された『ウルトラマンメビウス ソング・コレクション』(asin:B000GFM8BS)に収録)
さらに、97年1月21日に日本コロムビアから発売された2枚組CD『ザ★ウルトラマン ミュージック・コレクション』(asin:B00005ENGI)の解説書の中に、同時に録音した挿入歌『ウルトラマン賛歌』のメロオケのコーラスのために当時は男声コーラスが集まっており、コーラス入りバージョンを録音した可能性はあるとの作曲担当・冬木透の証言が掲載されている。
『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)でも防衛組織・MAC(マック)の攻撃シーンに多用された『MACのテーマ』も、ワンダバコーラス入りが録音されたものの、結局は劇中では使用されなかったという前例があることから考えても、ワンダバ入りの『急降下のテーマ』の録音テープは行方不明となっているか破損して廃棄などされただけで、録音された可能性はあるとはいえるだろう。
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