「ウルトラマンエース」総論
「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧
[ウルトラ] 〜全記事見出し一覧
ファミリー劇場『ウルトラ情報局』ウルトラマンエース編レポート
(文・森川由浩)
『ウルトラ情報局』(02〜放映中)は、CS衛星放送「ファミリー劇場」(361ch)での円谷プロウルトラシリーズ放映にシンクロして誕生した番組で、シリーズ第一弾『ウルトラQ(キュー)』(66)放映開始と共に2002年12月よりスタートした。
その内容は同局で放映されるウルトラシリーズの関係者を招いてのインタビューと、『ウルトラ』はもちろん、他の円谷プロ作品に関するDVD、玩具、各種グッズのインフォメーション、視聴者からの質問に答えるコーナーで構成された情報番組である。
ナビゲーターは『ウルトラマンコスモス』(01)のヒロイン・森本綾乃(アヤノ)隊員役の鈴木繭菓(すずき まゆか)、構成・演出は円谷プロ作品のDVD、CD、書籍などの解説・構成で80年代後半から活躍する秋廣泰生(あきひろ やすお)が担当する。
一ヶ月単位で番組が更新、最初の放映は各月の第三木曜日の20時30分で、以後一ヶ月は同じ番組が別の時間帯で何回も再放送される。
これまで、レギュラー俳優、メインスタッフはもちろん、一回だけのゲスト俳優やこれまで各種書籍などにインタビューの載らなかった関係者の登場もあり、ファン括目の情報番組として、根強い人気を誇る番組だ。
昨06年5月から一年間放映された『ウルトラマンA(エース)』(72)の放映と連動し、最初に別枠で放映される特番『ウルトラマンAのすべて』に主人公・北斗星司役の高峰圭二を招き、以後『ウルトラ情報局』では、脚本家・美術デザイナー・監督・特撮監督はもとより、先に発売された『A』DVDにもインタビューの収録されなかったTAC(タック)隊員の俳優も出演、非常に密度の濃い顔触れによる初公開秘話続出のディープな内容になった。
既存の各種ムック本だけでは伺えない、関係諸氏による『A』秘話は、以後の作品研究や検証、分析などの一助になる事は間違いない。
だが、CSやケーブルTVに加入しないと、このファミリー劇場で放映される番組は鑑賞できない。
諸事情で受信・契約できないために視聴のできないファンも多いとは思う。
そこで、そうしたファンにも番組内で公開された作品秘話を知って頂こうと、『Aのすべて』『ウルトラ情報局』での『A』関連ゲストによる秘話をここにまとめてみた。
今後ビデオやDVD、再放送などで作品を楽しみ一助になれば幸いである。
特番『ウルトラマンAのすべて』
ナビゲーター 市瀬秀和(いちのせ ひでかず)(俳優 『ウルトラマンコスモス』フブキ隊員役)
ゲスト 高峰圭二(たかみね けいじ)(俳優 『ウルトラマンA』主人公・北斗星司役)
別項:(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070630/p1)にてレポート!
『ウルトラ情報局』ウルトラマンA編
2006年5月号 鈴木儀雄(すずき よしお)(美術デザイナー)
(関連記事:特撮意見② 〜怪獣デザイン・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060409/p1)
・美術デザイナーという仕事
特技監督・円谷英二の下で撮影助手を務めた後(かの『ゴジラ』(54)第1作より現場に参加)、美術に転向、円谷プロ作品は円谷英二の招きにより『マイティジャック』(68)より参加。
「美術監督はセットを作るのが使命なんです」(談)。
「宇宙時代から神の時代まで全てデザインする」(談)。
「撮影のための“バック(背景)”を作る」(談)。
・デザインワークスの守備範囲
ヒーロー、超獣、TACの基地、ガン、武器、マーク、隊員服、ヘルメットに至るまで担当。
「やり甲斐がある。セットの図面引いてるだけよりも怪獣描いてる方が楽しい」(談)。
・エースのデザインについて
Aは男性と女性の合体コンセプト、両性を持った個性的な映像でデザインした。
地球を救うという使命から、顔も体も頑強な、強いイメージに。
とはいえ女性のイメージも必要。強さと優しさの両方を考えて、仏様の顔を参考にする。
ただ日本の仏像のみならず、インドの仏像も参考にした。
だが成田亨の作り上げた「ウルトラマン」のイメージも大事に継承しつつ、それでAの個性を大事にしなければならない。
頂頭部突起はローマの軍人たちの兜のイメージがモチーフ。
古代のローマ文化が世界に広がる=宇宙の文化や正義を広めるというコンセプトに通ずる。
・TACのデザインについて
円(丸)が多い。プロデューサー・熊谷健からも指摘された。自分でそんなに意識はしてない。無意識の中の意識?
隊員服の配色=銀は宇宙、オレンジは情熱・挑戦・明るさ・元気を象徴。
・超獣のデザインについて
怪獣より強いイメージ。
超獣は地球の生物と宇宙の生物、異次元の世界みたいなものと合体したもの。
色も原色、派手、形も複雑、今までの怪獣と全く様相を変えたので、「お叱りを受けたこともある」。
撮影しずらい=装飾品が多い。羽根、長い尾の操演等で苦労。造形する側、現場スタッフが苦戦。
苦労の傍ら「最終的に見てくれるお子さんが支持してくれないといけない」と自分のポリシーを推す。
「皆さん(スタッフ)との摩擦も沢山ありましたよね」(談)。
・愛されるキャラクター
「長い間支持されるのは、僕のデザインがいいというよりは、円谷英二さんのコンセプト、それを支えた沢山のスタッフの皆さんの情熱。情熱を傾けて作ってくれたからこそ残ってるとは思うんですよね」(談)。
・最後のメッセージ
「(A人形を持って)ウルトラマンAを友達にしてください。宜しくお願いします」
解説
『ウルトラ情報局』の『ウルトラマンA』編のトップを飾るゲストは、第二期ウルトラのビジュアルワークスを代表する美術デザイナー・鈴木儀雄である。
先に手掛けた成田亨(なりた とおる)、池谷仙克(いけや のりよし)といった従来のウルトラのデザインワークスとは一風変わったカラーを持つ鈴木の作風の背景、それを担当した当時の苦労が伝わる内容になった。
実際には円谷英二が存命中の「ウルトラ」のデザインワークスは担当していなかったとはいえ、円谷英二との出会いが全てのスタートであり、その遺志を継ぐものであるといった主張も見られ、円谷英二への愛情と感謝の意思を誠実な口調で思い出を語るのが印象的な第一回目であった。
2006年6月号 西恵子(にし けいこ)(女優 TAC美川のり子隊員役)
・出演のきっかけ
当時所属していた事務所の社長よりの紹介で、これまで「ウルトラマン」を見たことがなかったので『帰ってきたウルトラマン』(71)を早速見る。
「隊員服かっこいい!」 宝塚好き、女性が銃を持つ、イメージチェンジを図りたいのでやってみたいと返答。
早速TBSの橋本洋二プロデューサーに会う。
橋本「一年の長丁場で、体力は大丈夫か?」と。
西「それだけは任せて下さい!」と返答。
橋本「西君で行こうか!」とその場でOK。
実は他にも候補が居たらしい。
現場の雰囲気が他の作品とまるで違う。セット自体が異次元の世界。作戦室やコクピットなど、セットに行くのが楽しくて。
念願のTACガンは重かった。セットで山中隊員が銃を撃つシーンでは、その音の凄さに驚愕。
・美川のり子隊員
知的で活発、女性らしさ、優しさを出せれば。
第4話「3億年超獣出現!」 (http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060528/p1)のブローチ爆弾は自分の私物を使おうと監督に提案。このブローチは爆破を乗り越え今も現存、収録時に披露するが、これは母が大切に保管してくれたとの話。
私服を着るシーンは、男性陣も張り切って自前が多かった。
父親がテーラー=4話はパーティーなので衣装は自分でデザイン、父が一晩で作り上げた衣装を着用した。「あんまり私服姿が多いのも珍しい」と周囲の声も。
・TAC隊員秘話
南夕子役・星光子は幼く見えたが実は同い年、しかもつい最近知った。
「お姉さんぶってゴメンなさい」(談)。
ユニークで面白い人、ダンスをやっていて、休憩時間に披露してくれた。
他の男性陣(高峰・沖田)もユニークで笑いが絶えない現場。
沖田駿一は「真面目な顔して台詞言ってる方が可笑しい位(笑)」。
余りにも冗談が多く、隊長から「真面目にやれーっ!」のゲキが飛ぶこともあった。
・遠方ロケの思い出
一番の思い出作品。第42話「神秘! 怪獣ウーの復活」
(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070219/p1)
雪が吹き付ける中、隊員服が寒くて大変、拳銃を握る手が凍えて震える。
沖田「俺鼻水が出てさぁ〜!」(笑)
西「ダメよ本番で鼻水たらしちゃ〜」(爆笑)
「辛かったけど楽しかった」作品。
解説
男性の側から語れば、女性隊員、女性レギュラーといったヒロインキャラクターには当然、異性への憧れや憧憬が投影され、今尚愛し続けている存在である。ウルトラシリーズのヒロインはもとより、あまたの特撮作品のヒロインの存在は、メジャーマイナー問わず多岐多様に愛されている。IT時代になり、ネット(「2ちゃんねる」といった匿名大型掲示板はもちろん、各種ファンサイトでも)でのヒロインへの愛溢れる書き込みは良く見かける。
そこでもう一人の『ウルトラマンA』ヒロインである美川のり子隊員役の西恵子の登場となった。
彼女は先に発売された『A』DVDのインタビューや関連イベントにも出席、そこで30数年ぶりに現在の美貌を多くのファンの前に現し、多くの喝采を浴びたのは記憶に新しい。
今は芸能活動から引退したのものの、青春時代を快く語っているその姿は西の好きな言葉“夢よ永遠に”の言葉のとおり、まさにファンの夢の実現であり、時を越えた嬉しい再会となったことであるだろう。
2006年7月号 櫻木健一(さくらぎ けんいち)(俳優 第12話「サボテン地獄の赤い花」ゲスト出演)
(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060801/p1)
・櫻木健一と高峰圭二の友好
当時『柔道一直線』(69〜71)『刑事くん』(71〜76 全四作)で活躍。
先に高峰が『刑事くん』(パートⅠ・71)にゲスト出演*1。
今度は高峰主演の『A』に櫻木が応援出演。お互いが関西出身で子役時代からの顔見知り。
関西の制作会社・宝塚映画で共に活躍。
・『ウルトラマンA』への出演
大阪で収録終了後*2、東京へと夜の東名高速道路をTACパンサーでの「お迎え」移動。
翌朝ロケ現場の学校の校庭に到着。
“『A』に『刑事くん』の主人公・三神鉄男が出演?”のイメージで実現。
プロデューサーが両作品とも橋本洋二=「橋本さんの遊び心では?」。
北斗星司・高峰圭二のイメージは、高峰の初主演作『竜巻小天狗』(60 関西テレビ・宝塚映画)と同じような雰囲気。
「これからやるぞ! っていう熱いものが見えた」(談)。
同話に出演の近藤正臣も当時同じ事務所(星野事務所)で同郷の友人。
三人が揃う温室のシーンはテスト一回で本番。だが三人ともアドリブは入れられるほど器用ではない。
印象に残る共演者はナレーターの岸田森(きしだ しん)*3、山中隊員役の沖田駿一とは仲が良かった。
・一緒に考えた変身ポーズ
後半の単独変身する変身ポーズは櫻木と高峰の考案、「『仮面ライダー』に負けないものを!」と。
「そういうの考えるの好きだった」(談)。
いつの間にか『柔道一直線』のアクション秘話に、時代劇映画『眠狂四郎(ねむり きょうしろう)』シリーズ(原作は56・63に映画化)の必殺剣「円月殺法」がルーツなどと延々……。
・最後のメッセージ
「『ウルトラマン』って、凄く夢が一杯詰まってるドラマなんで。懐かしいなと思ってご覧になるお母さん方もいらっしゃるでしょうし、はじめて見る子ども達もいると思うので、是非楽しんで観て下さい」
解説
ゲスト俳優、しかもたった一度だけとはいえ、主演俳優とは旧知の仲でもあり、また橋本洋二が担当していた『柔道一直線』『刑事くん』主演でもあり、同時期の『ウルトラマンA』にもリンクする諸要素はもちろんあるため、自分としては本来のウルトラ秘話よりそうした話題が個人的には楽しめた。
この櫻木の『A』出演による『ウルトラ』と『刑事くん』のリンクは、以後『刑事くん』パートⅡで櫻木が『ウルトラマンタロウ』(73)の服を着て幼稚園で子ども達とお遊戯をするシーンや、パートⅢでは櫻木演じる主人公の弟・次郎(佐野伸寿)がTVで『ウルトラマンレオ』(74)を見ているシーン等で描かれるが、こうした諸要素へのイントロダクションとして楽しむのも味わいがあって楽しいだろう。
2006年8月号 佐野光洋(さの みつひろ)(俳優 TAC吉村公三隊員役)
・出演のきっかけ
鈴木淳(作曲家)・悠木圭子(女優→作詞家)(両者のちに結婚)の所に歌のレッスンに通っていた。
詩の朗読も習う。佐野は学生時代演劇経験あり。
悠木「お芝居やってみる気ある?」
佐野「はい、お願いします」
翌日マネージャーを紹介、初のオーディションに行く。
カメラテストを受ける。元は主役候補=テストフィルム番組で公開。
当日踵の底が高い靴を着用、飛び降りシーンで踵から落ちて打ち身で一ヶ月は痛みが取れなかった。
・吉村隊員・誕生!
第1話のTACパンサー(車)から下りてVサインするシーンがファーストカット。
「ドキドキもいいところ、なにやってるか全然わからない」と回想。
本部室のセットに入ると「ヒェ〜ッ! こういう世界もあるんだ〜」と驚愕。
自己紹介シーンではまばたきしていて、「一世一代の不覚(笑)。筧(正典)監督がよくOK出してくれたな(笑)」(談)。
・宇宙生物の専門家
一番心がけたのは、怪獣の名前を確実にはっきり伝えること。「これは○○(怪獣の名前)だ」と。
・岡山ロケの思い出 第16話「怪談・牛神男(うしがみおとこ)」
(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060903/p1)
最先端のTACが新幹線で帰省する。
あの辺りから普通の生活とのコンボみたいなのがはじまった。
初めてメイン活躍、自分にとっては記念碑的な回。
新幹線車中で駅弁を食べるシーンを今野隊員役の山本正明は「あれは芝居じゃないよ(笑)」と。
ロケ現場の牛の鼻輪を積んだ鼻ぐり塚は岡山・吉備津(きびつ)神社に実際にある。
最初に見たとき「ホントにこんな所あるんだ」と驚愕。
人間は牛を食用しているから、「本当に供養しないといけないのかなと」と痛感。
・雪山ロケの思い出 第42話「神秘! 怪獣ウーの復活」
雪の世界に行くのが始めてだったので、用心して重ね着し過ぎて着膨れ。現場に出たら逆に暑かった。
雪が降ってるのではなく、積もっているだけの状態では意外に寒くなかったと気付く。
・印象に残る名シーン
第24話「見よ! 真夜中の大変身」
(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1)より、
ゲストの岩本多代(ケンタの母役)が夜、公園に配置された多くのろうそくに灯された光の中を行くシーン。
第28話「さようなら夕子よ、月の妹よ」
(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061111/p1)より、
南夕子が草原を走りながら降りてくるシーン。
「トータル的な話としてではなく、場面場面では結構印象に残ってるものがありますね」(談)。
・吉村隊員・最大の貢献!
劇中で何度かギターと歌を披露するが、スタッフも佐野がギターを弾けることを知っていた。
台詞と同様全部アフレコ、録音スタジオでも画面にあわせてギターの引き語り。
「いい体験させていただきました。他のシリーズでは余り無い」(談)。
・最後のメッセージ
「『ウルトラマンA』、唯一“超獣”と戦ったAでございます。宜しくお願いいたします。吉村公三もね、宜しくどうぞ〜/~」
解説
先に発売された『ウルトラマンA』DVDソフトの解説や、映像特典のTAC隊員関連インタビューには、主人公の高峰圭二、星光子、隊長の瑳川哲郎、西恵子といった四人しか登場していないが、そこに登場しなかったTAC隊員俳優の存在や裏話、そして近況はファンとして大いに関心がある。その期待に応えて今回「DVDインタビュー未登場隊員」のトップを飾って本番組に出演したのが、この佐野光洋である。
佐野が当初は主役の候補であったりだとか、芸能界デビュー秘話等興味深い話題に溢れる回であった。確かに脇役の隊員ではあるのだが、作品を彩るヒーローの一人であるのだから、こうした名バイブレーヤーの活躍にスポットを当て、知られざる番組の側面を世に知らせるのは大事だと思わされた。
佐野は近年では『仮面ライダー龍騎』(02)第44話「ガラスの幸福」にも、仮面ライダーインペラーこと青年・佐野満社長の会社の重役たちのひとりとしてゲスト出演。
(後日付記:『仮面ライダーディケイド』(09年)第22話「ディエンド指名手配」(「ディエンドの世界」編前編)にも、ゲスト出演!)
2006年9月号 山本正明(やまもと まさあき)(俳優 TAC今野勉隊員役)
・出演のきっかけ
『ウルトラセブン』(67)主役・森次晃嗣と同じ事務所に所属、それを見て「『ウルトラマン』の隊員やりたいなぁ」とマネージャーに相談、その話が来た。
撮影現場を知るため、『帰ってきたウルトラマン』にゲスト出演(第18話「ウルトラセブン参上!」喫茶店店員役)。
「隊員はアイドルだ」と語る。
・今野隊員のキャラクター
初のTAC隊員顔合わせはみんないい男、いい女ばかりで「二枚目じゃかなわない、明るく、茶目っ気」と。
どういうキャラクターでやるかをみんなで最初に話し合う。
主役の高峰圭二は上京したてだったので、隊員みんなでコミュニケーション。
だからチームワークは良かった。
第1話……高峰・佐野は二枚目を意識、ヘルメットをとってもヘアスタイルにも気を使うが、山本は無造作。
・竜隊長(瑳川哲郎)の思い出
隊長は無口で、こっちが話しかけても「うん、うん」くらい。
とっつき辛い人だが、そのとっつき辛さが指揮官としてよかったのかも。
撮影中に隊員の芝居をチェック、「あそこはどういうつもりで芝居をしたか?」を問う。
「監督に言われるならいいけど、なんで隊長にいわれなきゃいけないんだ?」と高峰、佐野たち隊員俳優。
・南夕子(星光子)の思い出
駄洒落が好き、みんなを笑わせる娘。
一生懸命芝居をしている中、後から余計なこといって笑わせる。
ある一面和気藹々(わきあいあい)、でも決めるときは決めていた。
・吉村隊員(佐野光洋)の思い出
家が近く、撮影の行き帰りも一緒。よく自分の家にも遊びに来た。
今でも30年以上の付き合いが続いている。
・第9話「超獣10万匹! 奇襲計画」の思い出
(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060708/p1)
初の主演作で相手のヒロイン役は江夏夕子(俳優の目黒祐樹夫人)、撮影の雰囲気になれるまで時間が掛かるが意外と気さくな女性。
一番よく絡む山本を通じてのコミュニケーション。
台詞の中での「デブが!」は彼女が勝手につけた。
監督にOK貰い、「山ちゃん、リアクション頼むね」と。
江夏は他の隊員(俳優)のことを山本に色々聞いてきた。
「明るくやろうと心がけていた」(役作り)、「毒蝮(三太夫)さん(『ウルトラマン』(66)のアラシ隊員、『セブン』のフルハシ隊員)もそうだし」(談)。
・第14話「銀河に散った5つの星」
(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)
高倉司令官・山形勲がゲスト出演、昔から憧れていた俳優なので「心ときめかせて撮影した」(談)。
・第15話「黒い蟹の呪い」
(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060828/p1)
岡山ロケ、今野隊員も実家が岡山と言う設定。ヘルメットを外すと汗だく、大変だった。
私服のシーンは楽、海辺で居眠り。
爆破の炎の中より少女を救出するシーンでは意外にも機敏。
円谷一(当時円谷プロ社長)曰く「君、隊員服よりも私服が似合うなぁ」。
・スタッフとのコミュニケーション
いつもいっしょだから気心知れている。
夏場になったら裸でいたりするが「そんなに(陽に)焼いたらとれねぇよ!」と。
自分達は大変だけど、レギュラーのわがままを聞いてくれ、俳優に気を遣うスタッフには感謝。
・思い出に残る監督
山際永三、体が大きい。会えば「山ちゃん、明るくやってよ!」と必ず言う。
ある意味尊敬し、憧れを持っていた。現場の雰囲気を凄く良くしてくれた人。
「山際さんの作品だったらもう一度やりたいな」(談)。
・自分にとって今野隊員とは何か?
「地球を守る、正義の味方の役を出来たと言うことですね。子どもさんたちが喜んでくれれば、一番やりがいのあった仕事かな」(談)。
・最後のメッセージ
「これからもっともっと楽しい、それで痛快な話がいっぱい出てくるから、みんなも一生懸命見てね!」
解説
「DVDインタビュー未登場隊員」第二弾として登場した山本正明。元来山本は「山本磯六」の芸名でデビュー、『忍者部隊月光』(64〜66 フジテレビ・国際放映)の満月役でも活躍、ヒーロー番組は本作が初めてではないのだが、それについての言及がなかったのが意外にも思えた。だがラスト近くになって出演した『月光』と、最初から最後まで一年間の長丁場をこなした『A』とでは思い入れや記憶にも差はあるのかもしれないが。でも「『ウルトラマン』の隊員やりたい」という希望の裏には、『忍者部隊月光』に出演した時のことが土台になっているのではと思わされるものがある。
穏やか、且つにこやかなムードで『A』時代の思い出を語る山本は、終始「今野隊員」であった。
2006年10月号 平野一夫(ひらの かずお)(脚本・監督)
・『ウルトラマンA』参加のきっかけ
「この仕事の前に『チャコちゃん』(66 TBS・国際放映)『コメットさん』(初代、67 TBS・国際放映)の助監督をやっていて、色んなアイデアを出していたのもあり、その実績からシナリオライターの上原正三さんや市川森一さんが「平野にやらしてみるか」となったと思います」(談)。
「子ども番組だからこそ、メッセージ性の高い番組を考えました」(談)。
・第11話「超獣は10人の女?」
(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060731/p1)
番組を形にするのに精一杯、そっちに腐心。
周りのスタッフ・ベテラン諸氏に救われた。
「「好きなことあいつ言いやがって!」と言われてやったと思いますよ(笑)」(談)。
女子大生が劇中歌う当時のヒットソング『ハチのムサシは死んだのさ』(有名俳優・内田良平の作詞)。
使用の理由は、リズミックで誰が歌っても歌いやすい。思わず口ずさんで。
北斗のテレパシー=最後まで悩んだ。そうしたら心からの叫びを訴えられるかを。時間切れで実際の描写に。
橋本洋二プロデューサーに「工夫すればよかったのに」と試写が終わってからダメだしされた。
今思えば「素直に表現しているから、生意気盛りで色んな手を加えなくてよかった」と回想。
女子大生VS南夕子・女の戦いには、当時沖縄返還、浅間山荘事件、田中角栄日本列島改造論など変貌する世情も反映。
「多分に小川(信夫)さんの編集技術に救われました」(談)。
・第12話「サボテン地獄の赤い花」
(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060801/p1)
上原正三と話しているうちに彼が製作。自分のアイデアと言うより、周りの人たちのアイデアで製作。
第11話と正反対で子どもがメイン。
大村千吉、天草四郎、櫻木健一、近藤正臣といった有名俳優のゲスト出演。
「新人監督の冒険なんかも許してもらえるキャパシティがあった」(談)。
三年前にドキュメンタリーの仕事でシルクロードに行った時、現地のデパートでサボテンダーのフィギュアや該当話数のビデオが発売されていた。
現地人に自分が作ったといっても現地人には信用して貰えなく、
「こういう大きなものは日本人には作れない」と返される。
・第24話「見よ! 真夜中の大変身」
(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1)
本話担当監督の真船禎と共同で脚本を担当。
「徹夜して二人で書き上げた。『ウルトラマン』も撮影が追われてくると本屋(脚本家)さんも間に合わなくなる。それで苦肉の策でね(笑)」(談)。
母親が変身、赤い雨が降るとか、好きな事をやった。
公害などで社会的な環境が変化していく時代。
日本が浮かれ始めた時。
食事が違うものに見える幻影の表現=「小道具さん凝ればよかったのにね(笑)。おもちゃ(笑)」(談)。
・愛と信頼と優しさと
「表現することは難しいことけども、その中でもメッセージやテーマを盛り込んで訴えようとするのは難しいですね。やっぱり「愛」「信頼」とか「優しさ」とかね、人間の素晴らしさみたいなものをね、汲み取ろうとしたんじゃないかなと。またそれは円谷さんの元に自然に集合した中で出てたきたことかも知れないけど、いいことじゃないかなと思ってる」(談)。
「変わってるようで変わってないんですよ。人間の捉え方なんかは変わってないと思うんですよ。それを一番子ども達に豊かに与えてくれているのが、案外僕は知らなかったんじゃないかなと。『ウルトラマン』に教えられたというのかな」(談)。
・最後のメッセージ
「是非ご覧になってください。そして大いに楽しんで下さい。よろしく!」
解説
この番組の凄いところは、こうしたテレビシリーズを語る場合、監督にしろ脚本家にしろメインで主軸となった人物をフィーチャーし、その証言はメインスタッフ故にあたかも作品の全てみたいな印象を与えさせる傾向が伺えるが、今回はほんの数本ゲスト的に入っただけとはいえ、脚本・監督の双方で活躍、作品の活性化に尽力、今は泉放送製作でフジテレビ系の東海テレビ製作の昼メロ枠にて話題作・人気作を連打するヒットメーカー・平野一夫のクリエイターとしてのルーツを探る上でも興味深い話題が続出した回であった。
……つづきの06年11月号〜07年4月号は来週UP!