(ファミリー劇場『ザ★ウルトラマン』放映「全話評」連動連載!)
#23『超音速の対決』
高速怪獣ザンバ登場
(作・星山博之 演出・辻勝之 絵コンテ・高橋資祐 怪獣原案・鯨井実)
(視聴率:関東7.4% 中部9.1% 関西8.7%。
以上、ビデオリサーチ。以下、ニールセン 関東13.8%)
(文・内山和正)
(1997年執筆)
マッハ5を超えるスピードで飛び、切断する怪獣により旅客機やコンビナートが被害にあった。
速度的問題から実験飛行機を使って怪獣を追いミサイルで弱らせてから科学警備隊の大型戦闘機スーパーマードックで倒すとの作戦がとられることになり、実験飛行機の操縦と攻撃は主人公・ヒカリ隊員と航空班から応援参加した青木の担当となる。
しかし青木は旧友のヒカリに敵意を剥き出しにした。アキヤマキャップ(隊長)は密かに二人の過去を探る。
(以上、ストーリー)
前回と同じ星山博之氏の脚本であるが、違うタイプの作品に仕上がっているのが(この場合は)嬉しい。
怪獣対策と、青木のヒカリへの恨みで全編が構成されているハードタッチ(実際には暖かいドラマなのだが)の防衛軍ドラマで、ウルトラマンさえ出てこなくとも成立する内容である。
(それでいてウルトラマンの登場はよけいではなくストーリー進行の必然として処理されている)
このような作品が作られたのは「いいひと」なだけのヒカリを印象づけるためだったのではないか。
第1話「新しいヒーローの誕生!!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090505/p1)か第15話「君がウルトラマンだ」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090808/p1)を観た人にしか判らないだろう、ヒカリが科学警備隊に入る前に宇宙ステーションEGG3(エッグスリー)に勤務していたエリートだったとの設定を生かし、
「EGG3に行くのは自分のはずだった」
とやっかむ青木を登場させ、彼を描くことによってヒカリに厚みを持たせようとしたと考えられる。
このようなドラマではありがちな、青木が失敗をして反省する……という形ではなく、失敗してしまうところをヒカリがその前に処理してしまうため、失敗に至らず却(かえ)って誤解してヒカリを恨んでしまったりする。
いわばヒカリとアキヤマによる癒しのドラマで、もちろん最後には青木がヒカリに感謝するのだが、アキヤマの推薦でEGG3転勤の夢も叶い、青木にとって幸せばかりの結末となる。
結局ヒカリは最後まで「いいひと」でしかないのだが、それでいていつもよりも魅力が感じられたと思うのは筆者だけだろうか?
メインライターの吉川惣司氏がヒカリに内面を曝(さら)させたり子供っぽくさせたりして肉付けをしたのに対して、いつものヒカリのままで存在を浮き上がらせようと試みたのだろう。
甘い結末も清々しさを感じさせてくれる。
エイに似た怪獣を境遇から「はぐれ鳥」と称し、青木の境遇と重ね合わせるのも臭いながらに格好良く、飛行機を掃除するトベ隊員に
「腹が立たないんですか。先輩のあなたが汗まみれになっているのにコイツが何もしないことを」
と青木がヒカリの悪口をいうところも、言い掛かりながらも言葉の表面上では一理ないこともなく、今まで明確ではなかったトベとヒカリの年齢差が明確になったことも興味深かった。
好編である。
※:製作No.17『大空のライバル(仮)』