(2023年4月16日(日)UP)
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『帰ってきたウルトラマン』(71年)#1放映から52周年! 主演の団次郎(だん・じろう)の追悼! とカコつけて……。『帰ってきたウルトラマン』(71年)序論と#1評をアップ!
『帰ってきたウルトラマン』第1話「怪獣総進撃」 ~第2期ウルトラシリーズ・人間ウルトラマンの開幕!
(文・犬原 人)
(2020年1月27日脱稿)
追悼、脚本家・上原正三 ~『帰ってきたウルトラマン』序論
1971年(昭和46年)4月2日から翌72年(昭和47年)3月31日までTBS系列に於いて、毎週金曜夜7時より全51話が放映された『ウルトラマンシリーズ』第3作。
製作は円谷プロダクション。その代表作である初代『ウルトラマン』(1966)と『ウルトラセブン』の再放送や、そのクライマックスシーンを再編集したり使用済みの着ぐるみ怪獣を造成地で戦わせたりした5分番組『ウルトラファイト』(1970)などの結果もたらされた「第二次怪獣ブーム」を背景に、「新しいウルトラマンを作ろう!」という機運が湧き起こったのだ。
そういった中で、作品世界とキャラクター設定に責任を取る文芸チーフ・メインライターとして招聘されたのが、円谷プロ契約社員の作家として『ウルトラQ』(1966)第21話「宇宙指令M774」でデビューし、『ウルトラセブン』(1967)・『怪奇大作戦』(1968)で実績を残しながらも、赤字が膨らんだ円谷プロでリストラにあい、『セブン』で知り合ったテレビ局側のプロデューサーである橋本洋二氏の伝手で、ウルトラシリーズも放映されていたTBS日曜夜7時枠の武田薬品提供「タケダアワー」枠で大人気スポ根ドラマ『柔道一直線』(1969・東映)の脚本をサブライターとして見事に務め上げていた上原氏だったのである。
大人気テレビアニメ『巨人の星』(1968)・『タイガーマスク』(1969)・『あしたのジョー』(1970)と同じく、梶原一騎(かじわら・いっき)原作によるスポ根(スポーツ根性)ドラマである『柔道一直線』を執筆していた上原氏と橋本プロデューサーが『ウルトラマン』に持ち込んだのは、後年でいうところの「人間ウルトラマン」「根性ウルトラマン」という概念であった。
――あくまでも、この「概念」「作品コンセプト」は後年になってからの呼称である。90年代後半に製作された平成ウルトラマン3部作を評して「人間ウルトラマン」だとマニア間で呼称されだしたものを、本作『帰ってきたウルトラマン』を再評価してみせた書籍『帰ってきた 帰ってきたウルトラマン』(辰巳書店・99年3月1日発行・7月5日2刷)あたりを起点として、本作『帰ってきたウルトラマン』こそが「人間ウルトラマン」というコンセプトの原点でもあったのだと捉え直したことが実に的確であったために、同作や同作を起点とする第2期ウルトラシリーズのことをそう批評的に論じることが増えていったのだ――
そして、初代ウルトラマンやウルトラセブンが持っていた、後年のマニア評論でいうところの「神秘性」は少々奥に引っ込めて、ウルトラマンと彼に変身する青年・郷 秀樹(ごう・ひでき)の意識を明確に分離して、ウルトラマンの登場と怪獣との対決というクライマックスに話を導くためには、郷 秀樹がひとりの「人間」として限界まで「努力」し、その努力をウルトラマンにも認めてもらわなければならない……という道徳的な制約も課せられた。
しかもその「努力」とは、怪獣を直接倒す、必殺技を編み出すための「特訓」とは限らない。怪獣災害に対処するために国連機構が組織した怪獣攻撃隊・MAT(マット。Monster Attack Team)に入隊した郷 秀樹が、無理解な上官や意地悪なエリート隊員との確執、さらにはМAT自体が世間から「不要論」まで出るまでの組織だという状況を克服するための「努力」の意味も兼ねている。
上原脚本は「主人公をギリギリまで追い詰めるため」の極限状況と人物描写を登場人物たちに要求した。これは彼を育てたプロデューサーであるところの橋本氏の『怪奇大作戦』以降の「人間ドラマ重視志向」の影響であることは間違いない。
とにかく本作の登場人物は、それまでの子供向けヒーローものにあった「役割分担から逆算した、記号的・漫画的なキャラクター造形や人物配置」を廃し、「現実社会の人間たちに近い、切れば血が出るようなリアルな人間たちの情念や相克」を中心とした群像劇を見せたことが、本作の大きな特徴になりおおせている。
しかし、そのゆえに子供たちやSF志向のマニアたちの評価をやや下げたという言い方もできる。SF的ガジェットや未知なるものへのロマンを話の核に持ってきてほしい第1期ウルトラ世代で当時すでに中高生であった原・オタク青年たちにとっては「第1期ウルトラとは作風が違う」「やや暗くて重たい」「怪獣やSF性が二の次になっている」というわけである(ただし、当時の幼児や小学校低学年の児童たちは、もちろんそんな違いはわかっておらず、単純にヒーロー対怪獣ものとして楽しんでいた)。
そんなSF志向の10代の時期を過ぎて20歳前後の年齢に達してくると、突如として本作の人間ドラマ部分の高度さがわかって魅力的に感じて再評価をするマニアも増えてくる。よって、『帰ってきたウルトラマン』の真の面白さは大人になってようやくわかる、視聴者を選ぶ通好みの作品だ」という評価も正しいのだ。
実際に、放映終了から10数年後の1984年には特撮雑誌『宇宙船』で「帰ってきたウルトラマン再評価」特集が組まれている(しかし、ここから同作以降の第2期ウルトラシリーズの再評価も順調に進んでいけばよかったのだが、それは同人誌ではともかく商業誌ではストップしてしまった。よって、20世紀いっぱいまでは一般的な特撮マニア間では、第2期ウルトラシリーズの中では本作『帰ってきたウルトラマン』だけがかろうじて評価されていた)。
そんなところにも着目しながら、実際にオンエアされた『帰マン』での上原脚本回を通じて、本作の魅力と上原氏の作家性を実際に洗い出していこう。
『帰ってきたウルトラマン』第1話「怪獣総進撃」
(オイル怪獣タッコング・ヘドロ怪獣ザザーン・凶暴怪獣アーストロン登場)
世界の各地で異常気象や地殻変動、そして相次ぐ核実験により、怪獣たちが一斉に目を覚ました。東京湾岸においてもザザーンとタッコングが暴れながら上陸し、勝鬨橋(かちどきばし)を壊して相争う。タッコングはザザーンを葬るが、謎の何者からの攻撃を受けて海に帰っていく。
その過程で高層アパートが破壊され、逃げ遅れた少年と子犬をかばって絶命した郷 秀樹(演・団 次郎)。彼は坂田自動車工場を手伝いながら、その工場主の杖をついて歩く兄貴分の青年とレーシングマシン・流星号を製造しており、そのレーサー要員でもあった。そして、兄貴分格の青年の妙齢である妹と、まだ小学生の弟とも仲良くやっている光景が、その直前まで描かれていた。そんな彼が急逝したのだ。悲嘆に暮れる坂田兄弟の描写が実に沈痛であり、流星号まで鎮魂のために燃やしてしまうあたりも真に迫っている。
しかし、郷はウルトラマンに邂逅する。ウルトラマンは透明な姿でタッコングを撃退したものの、「このスタイルでは地球に滞在し続けることは困難だ。よって、地球での憑代(よりしろ)となってほしい(大意)」と合体した。郷 秀樹は病院のベッドで、劇中のセリフでいうところの「フェニックスのように」復活する。
先に郷の自己犠牲の勇気を目撃しており、その復活の生命力に感動した怪獣攻撃隊・MATの加藤隊長(演・塚本信夫)は彼をスカウトに来た。しかし、郷はその聴力ではるか離れた浅霧山に怪獣アーストロンの出現を感知。理由も語らずにその場を飛び出してしまう。
全力を尽くして村人たちを助けていると、郷の意志とは無関係に光が差してきてウルトラマンへと変身! 山間での激闘の末に必殺のスペシウム光線でアーストロンを倒す。
アーストロン打倒後、人間の姿に戻った郷は現場にやって来たMAT隊員たちと初対面のあいさつを交わす。
そして、自分に何が起きたのかを改めてウルトラマンから聞かされた郷は、「地球人類の自由と繁栄を脅かす、あらゆる敵と戦うこと」を使命に、ウルトラマンとして生きることを朝日の中で誓うのであった……。
……『ゴジラ』映画ですでに「怪獣ものの巨匠」となっていて、特撮監督・円谷英二氏とも縁の深かった、東宝の本多猪四郎(ほんだ・いしろう)氏を監督に招いた本話。上原氏と本作の幸福は、本多氏に第1話の監督を担当してもらったことに尽きる。怪獣映画『ゴジラ』第1作(1954・東宝)を成功せしめたドキュメンタリー・タッチの重厚な演出が「怪獣が実在する世界」「その怪獣たちが一斉に目覚めた世界」を描き出すことに成功している。それは上原氏が本作の序盤で描こうとしていた「大自然の象徴としての怪獣」を表現させることを後押ししたのだ。
人間ドラマの方も負けてはいない。田舎からひとりで上京し、下町の自動車修理工場で働きながら、いつかはレーサーになって母親を呼ぶことを夢見ている郷 秀樹。彼を取り巻く坂田兄妹。雇い主にして精神的な兄ともいえる坂田 健(さかた けん)(演・岸田 森)。昭和中期までの素朴な男女関係には往々にしてあったことだが、恋人格なのにその自覚が当人にはない妹の坂田アキ(演・榊原るみ)。そして、彼を慕う男子小学生で等身大の男の子を演じきった末弟の次郎(演・川口英樹)との「疑似家族」とも呼べる絆。
怪獣の襲撃でその絆が切れてしまった悲しみを、30分番組の前半15分のAパートすべてを使い切って描くことで、その死の重みと、見ず知らずの少年と子犬を救って絶命した郷にウルトラマンが感動し、地球での憑代にするという展開に説得力を与えている。
ちなみに、見ず知らずの少年を演じた子役はのちの伍代参平、東映の戦隊もの『忍者キャプター』(1976)の金忍キャプター5(ファイブ)・大山昇、『大戦隊ゴーグルファイブ』(1982)のゴーグルイエロー・黄島太である。
初代『ウルトラマン』のハヤタ隊員や『ウルトラセブン』のモロボシダン隊員が、ある程度は完成された「大人」として最初から登場していたのに対し、彼らよりかは未熟で身近な「お兄さん」である。その気になれば視聴者である子供たちにもできそうな善行や英雄的行動でウルトラマンに選ばれるという展開は、「ウルトラマンになりたい!」と願うすべての子供にとって大いに感情移入を誘って、道徳教育的な効果ももたらすものですらある。
未熟な若者の道徳的な善行、超越者による選抜。このふたつを同時に一挙に描写できた上原脚本による本作の第1話は、次回以降への興味を見事に子供たちにもたらすものであったのだ。それは前作『ウルトラセブン』で上原氏が手掛けた第17話「地底GO! GO! GO!」で、ウルトラセブンが地球人に擬態して滞在するにあたって、仲間を救うために自らのザイル(登山ロープ)を切った登山家の青年・薩摩次郎(さつま・じろう)の姿と魂をコピーしたことの発展形でもある。そして、高潔な精神から来る自己犠牲も厭(いと)わんとするメンタルの持ち主である青年こそが、ウルトラマンたちが自らの依り代にするのにふさわしい人格の持ち主だと判定するパターンは、のちのウルトラシリーズの第1話の典型となって、世紀をも超えていく普遍の伝統パターンとなったのだ。
しかし、余人には感知できない超感覚を郷だけが保持して、それで独走してしまう描写も点描することで、今後はそこに彼が他人に理解してもらえず孤立もしてしまう不穏の伏線もサラリと張られている。そして、この孤立描写が期せずして上原氏の作家性を表出するのに持ってこいの舞台装置にもなっていくのだ。
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