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ウルトラマンエース21話「天女の幻を見た!」 〜天女アプラサ


「ウルトラマンエース」総論
「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・石堂淑朗 監督・山際永三 特殊技術・川北紘一
ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)
(文・久保達也)
 TACの竜隊長はある晩、美しい天女が舞い続ける「とっても楽しい夢」を見た。


 目が覚めると夢に出てきたのとそっくりな少女が突然部屋をノックし、


 「わたしをお手伝いに雇って下さい」と懇願する。
 「どうしてここがわかったの?」と竜隊長が尋ねると、
 「わたしは前から知っていました」とのたまい、自分を雇ってくれと懇願し続ける……


 今観るとまるでタチの悪いストーカーであり(笑)、本来なら「サッサと帰れ!」と追い返しそうなものだが、さすがにそこはダンディな竜隊長。
 少女のあまりにいきなりな頼みに対し、実に冷静で上品に対応しているが、二人の会話がまるでかみあっていないことが余計に強調されていてかえって笑える(このへんが石堂淑朗(いしどう・としろう)脚本の特徴で上手いところ)。


 近年の萌え系アニメなんかはこういう始まり方をするパターンが多いらしいが、筆者は全然知らんもので(汗)。
 そういや竜隊長の代わりに少女をお手伝いに雇った青年がその晩のうちに


 「ぼくは明日彼女に結婚を申し込むぞ!」


 なんていきなり決意するのもなんとなくそういうノリだよな(笑)。


 オマケに青年は


 「きみは、お手伝いさんというより、うちの……あ、ぼくの妹のつもりでいればいいんだよ。ウン」


 とひとりで納得までしているし。「女神さま」や「メイド」や「妹萌え」まで先駆けてるのかよ(笑)。


 ただ作品自体はラストで竜隊長が「これは夏の夜の夢なんだよ」と語った通り、乙女座の爆発によって地球に来た天女・アプラサと地球の青年との悲恋物語を描いており、ファンタジー的要素の強い作品である。
 南夕子をして「とってもきれいな子」とまで云わしめたほど、アプラサを演じた三景順子は目もと涼やかで清楚な和風の雰囲気で天女には適役である。


 これまで地球の生物と宇宙怪獣を合成して超獣を作り出してきたヤプールであったが、今回は乙女座の爆発から救い出した精神的・精霊的な存在ともいえる乙女座の精(!)・天女アプラサに恩を着せ、彼女自体を超獣に作り変えてしまう独創的な手法を取る。
 地球侵略のためとあらば手段を選ばない悪辣な存在として描かれてきたヤプールであるが、第23話『逆転! ゾフィ只今参上』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060429/p1)でエースに倒されていなければ一体どんな手段で挑戦を続けていたことであろうか?


 アプラサが「お手伝いさんとして雇ってくれ」を口実に竜隊長に助けを求めたことから今回は竜隊長が主役の話となる。
 刑事ドラマ『太陽にほえろ!』(72年)で云うならボス=藤堂係長(石原裕次郎)が主役の回のようなちょっと大人っぽい趣が漂っている。アプラサが隠れ家として利用した青年の豪邸に潜入する際の竜隊長のなんともダンディなスーツ姿が象徴的である(青年がアプラサの発言からTACを嫌ってしまったため、刺激しないよう私服で調査を行う必要があったため)。当時クールビズなんて流行していなくて良かった(笑)。


 それにひきかえ他のTACのメンバーの私服姿はあまりにもセンスがない。特に山中と今野は完全にチンピラにしか見えんぞ(爆・山中は第16話『怪談・牛神男(うしがみおとこ)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060903/p1)・18話『鳩を返せ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060907/p1)に続いてまたまたサングラス〜笑)。


 なお今回はのちに東宝の平成ゴジラシリーズの特撮監督を務めることになる川北紘一が特殊技術を初担当(特撮監督デビュー作!)。宇宙線の合成物である超獣アプラサールは全ての攻撃を素通りさせ、天女超獣であるがゆえ羽衣(はごろも)を使って強風を巻き起こしたり締め上げたり、幻影攻撃や頭部からのフラッシュ光線の美しさなど、特撮の見どころは満載である。



<こだわりコーナー>
*ファンタジックな要素が主眼でありつつも、疑似科学性も忘れていないところが本作の妙味。降り注ぐ宇宙線が東京一帯に集中し、TVの写りが悪くなったりラジオがノイズだらけになったり、温度低下という現象も見られた。青年の豪邸の金魚の変化も描いていく。


*TAC作戦室での会話。
竜隊長「ああ。乙女座といえば、今朝、きれいな乙女に叩き起こされたよ」
今野「へ〜〜〜。(からかうように)大丈夫でしたか隊長〜」(隊員たち一同、明るく破顔)
竜隊長「なにが?」
今野「いや、別に(語尾上がり)」(今野隊員、小さく舌を出す。隊員たち、いっそうなごむ)
竜隊長「いきなりお手伝いにしてくれって云うんだよ。いやぁびっくりしたねぇ」
夕子「お手伝いじゃなくて、奥さんじゃないのかしら!」
竜隊長「こら! 年上をからかうもんじゃない」
一同(笑)


*深夜、青年が住む豪邸の周囲を私服で内偵中の会話。
美川「どうですか?」
山中「ああ、今のところぜっんぜっん異常なしだな」
吉村「少女がレーザーを放ったっていうのはぁホントかなあ?」
今野「(指さして)あ、それに天女の夢だろ」
吉村「ああ」
山中「隊長もここんところ疲れているからなあ〜(語尾上がり)」
今野「(首をひねって)オカシイんじゃねえのかな! 少し」
竜隊長の通信「こら! 筒抜けだぞ!」
今野「ありゃ〜、スイマセン! (一同にスマンと手を合わせて)マイクのスイッチ入ってたよ」
山中「(頭をかきながら)マ〜ズイなあ〜オイ。……(一同に)オイ! 仕事だ!!」
TAC作戦室の竜隊長・北斗・南「(笑)」


*石堂脚本回の生き生きしたセリフまわしの面目躍如!(笑・もちろんTAC隊員たち役者陣の芝居もよいのだが) ヌルいマニアによる石堂低評価なんて信じちゃアカンよ。『A』第38話『復活! ウルトラの父』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070121/p1)でのサンタクロースがウルトラの父に見えた竜隊長に対する周りの反応や、悪評高い『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)第37話『恐れていたバルタン星人の動物園作戦』でのUGM作戦室での石堂会話なども抱腹絶倒させてくれます!


*天女アプラサの身に異変が生じる。青年にその姿を見られないように一室に閉じこもるも、次第に顔がただれていき……自身の姿を鏡で見てショックを受けた彼女が、物を投げて鏡を割るあたり、乙女心を描きつつショッキングさも同時に出してみせる演出! 『帰ってきたウルトラマン』第47話の人魂怪獣フェミゴンや『A』第16話の牛神(うしがみ)超獣カウラなど、人間が怪獣化するという石堂脚本回の特異な発想と本話との共通点も見出せる。


川北紘一の特撮演出もデビュー作なのになかなか。住宅街での美しい夜間巨大バトルをたっぷり(ホントに長尺!)見せてくれる。崩壊する自宅から青年が逃げ出すシーンに巨大感たっぷりにローアングルで見上げるように撮られた天女超獣アプラサールを合成するシーンがうまい。戦闘後の夜明けの空に、少女の姿に天女が戻るも巨大なままでいるシーンもシュールだ。ここでも地上にいる青年と巨大化した天女の足元を合成しつつ、カメラが上方に移動していくという難度が高そうな野心的なカットが。しかも最後に天女が青年を見下ろして微笑むという人間ドラマ的演出も忘れてはいない。もちろん何よりアイデア豊富なアクション演出の一挙手一投足の攻防が凝りまくっている。超獣をワイヤーで吊ったり、羽衣は終始風でたなびかせて優雅にしたり。空中回転後のエースのキックはふつうはキマるけど、本話では超獣が間一髪で避けてみせ着地直前のエースを片手ではじいて転ばします!
*人間の姿をした天女がウルトラマンや怪獣と同じサイズで出現するビジュアルは、次作『ウルトラマンタロウ』第39話『ウルトラ父子(おやこ)餅つき大作戦!』(脚本・石堂淑朗 監督・山際永三 特殊技術・山本正孝)において巨大化した姿で再登場した南夕子のイメージの元となったかも。


*アプラサは、現在は東南アジアの国家・カンボジアに相当する、クメール文化由来の言葉であり、「天使」や「天女」、「踊り」を意味する言葉だそうだ。
*天女アプラサは身体は超獣化しても心は天女のままであったことはお忘れなく。最後はエースに白鳥座へ連れて行ってもらうというロマンチックなオチ。こういうオチが本家シリーズでアリなら、歴代ウルトラマンがゲスト出演した乙女座出身の大場久美子の『コメットさん』(78年)も番外編ではなくウルトラワールドにゆるやかに含めてもイイんじゃね??


*アプラサをお手伝いに雇う青年を演じた松坂雅治は『ウルトラマンレオ』では防衛組織MAC(マック)の白土隊員を演じることになるが、第6話『男だ! 燃えろ!』においては婚約者を暗闇宇宙人カーリー星人に踏み殺され(……)、またしても悲恋に終わることになってしまった。
 それにしてもアプラサが地球を去った際に「うわ〜っ!」と泣き崩れるのはいいが、全然涙出てへんぞ(笑)。


*視聴率15.6%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)


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