(ファミリー劇場『ザ★ウルトラマン』放映「全話評」連動連載!)
ザ☆ウルトラマン#41「激突!! ウルトラマン対ウルトラマン」 〜後期の良作画回
ザ☆ウルトラマン#42「ウルトラマン生けどり作戦」
ザ☆ウルトラマン#43「怪獣になったモンキ!?」 ~ピグとモンキの泣かせる佳品!
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#44『ウルトリアが二つに割れた!?』
円盤怪獣スペーダー登場
(作・若槻文三 演出・関田修 絵コンテ・吉田透 怪獣原案・斎藤誠一)
(サブタイトル表記の他、カプセル怪獣カペラドン・宇宙魔軍サイエン星人・隕石円盤サイエンダー登場)
(視聴率:関東11.3% 中部13.3% 関西14.6%)
(文・内山和正)
(1997年執筆)
◎ニシキ教授最後の登場。今回は巨大戦闘艦ウルトリアが分離できることを無謀な行動の結果偶然発見する。この能力はもう少し前の回で明らかにして戦闘シーンに活かしてほしかった。
◎怪獣カペラドンがカプセルで世界中の様々な場所に打ち込まれる。その発射場所であるスペースポイントX(エックス)を攻撃するためにウルトリア発進……というストーリー。
◎怪獣スペーダーもカペラドンも丸まっこい体型で妙な生物感がある。
◎「今、はやりのワープを知らんのか」との当時のアニメブームを取り入れたニシキのセリフあり。
※:製作No.44『ウルトリア宇宙大奮戦(仮題)』
シナリオでは、「隕石円盤サイエンダー」名義。
#44『ウルトリアが二つに割れた!?』
(文・T.SATO)
(2010年執筆)
不穏な夜空にいくつかの光点が輝く。
ナレーション「ある日、宇宙の彼方からロケット弾が次々と飛来し、地球上で爆発すると、中から巨大怪獣が現れ、所かまわず暴れまわった」
海上に落下したロケットから出現した怪獣は、間近に航行するタンカーをねらい、地球防衛軍の戦闘機と交戦!
富士山の裾野に出現した怪獣とは、我らが地球防衛軍の極東ゾーン・科学警備隊の小型戦闘機・バーディ3機が迎撃(げいげき)!
ニューヨークの摩天楼であろうか、戦車隊と戦闘機が応戦!
ナレーション「世界各国の地球防衛軍の必死の活躍によって、各地の巨大怪獣は次々と倒されていった」
劇中にて名称は呼称されていないが、ロケット弾から1体ずつ出現した巨大怪獣は同一種であり、その名はカプセル怪獣カペラドン。
カプセル怪獣というと、我々ウルトラシリーズマニアは、いや放映当時の子供たちであっても、『ウルトラセブン』(67年)ことモロボシ・ダン隊員がひそかに所有する正義の味方のカプセル怪獣ウインダム・ミクラス・アギラたちをつい連想する。
次に、カプセルという人工物から想定される、野性とは程遠いイメージも連想されてくる。が、ここでは直後のシーンにて言及されるロケット弾こと「怪獣カプセル弾」から出現した怪獣という意味で、カプセル怪獣の別名が命名されていることがわかる。
カプセル怪獣カペラドンは、本話の前段の噛ませ役にすぎないのだが、個人的にはなかなかカッコよくて魅力的なデザインだ。
ライオンや伝説の聖獣グリフォンがモチーフ。白いライオンのマスクに顔面を覆う黄金色のウロコのようなタテガミ、赤一色の鋭利な両眼に、グレーの逞しい体躯(たいく)で太くて頑丈そうな四つ脚を保持するが、それとは別に身体の前面にも小さな両前腕があって都合、脚が6本!
シッポは途中から二股に割れている。白面でスルドそうな、しかし無表情な顔は、個人的には『ウルトラセブン』の怪獣ダンガンの顔面をも想起させる、
また世界規模での敵の物理的侵攻作戦というスケール感も、物語的にはワクワクさせられるものだ。
――ホントウにリアルに考えるならば、当事者たちにとっては生命の危機に関わる深刻な事態なのだから、「ワクワクさせられる」などという感慨は不謹慎この上ない見方だともいえるのだけど、物語の鑑賞とは本質的にそーいう見世物・野次馬的なものであるのも否めない(汗)――
週1の特撮作品では、水(海)特撮とその他のシーンを、同時に両立して映像化するのは――ビル街特撮と山間や平地の特撮の両立であったとしても同じだけど――、スタジオのスペース的にも予算的にもスケジュール的にも困難だろう。
特撮部分を実質まるまる東宝に下請けに出していた『ウルトラマンエース』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)〜『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)前半#30までの時期だと、東宝で当時一番広大な第9ステージを使って、1話の中でも山間や平野に住宅街や湾岸埠頭(ふと
う)にマイナス宇宙にあるゴルゴダ星のウルトラ5兄弟の十字架がそびえる丘などのセットに組み替えてさえいて――スタジオの片側半分とその反対側でふたつ特撮セットを造っていたのやもしれないけど――、複数の特撮怪獣バトルシーンを映像化していたりもする。
が、アレは予算が潤沢な時代かつ、東宝特撮の膨大なミニチュアのストック群を使いまわせて、かつ熟練・凝り性の美術スタッフが活躍できた時代の例外ではある――ここでは『エース』や『タロウ』各作の序盤は素晴らしい出来だけれども、それ以降の通常編での美術セットはともかく怪獣や超獣の着ぐるみの造型面での問題は置いといてくださいネ――。
ロケット弾は約10個飛来してきて、映像化された怪獣は都合3体。だが、すべてが同一種であるところも珍しい。
――本作の初期編では、#1「新しいヒーローの誕生!!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090505/p1)の冷凍怪獣シーグラ、#3「草笛が夕日に流れる時…」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090516/p1)の分裂怪獣ワニゴドンなど、同一種の複数個体登場の前例もあったけど――
とはいえ、アニメ作品でも作画や背景美術のシーンバリエーションが増えるほどに手間はかかるようになるのだし、10シーン連続で同一種怪獣を描いても、テンポ的には煩雑になるだろうから、本作でも3シーン3体に留められており、あとはナレーションで連想させる手法であって、それはそれで妥当だともいえるだろう。
カプセル怪獣カペラドンが高層摩天楼の上に鎮座ましましているのが、怪獣はビルをその体重で破壊できるハズなのにオカシイともいえるかもしれないけど、片手に美女ならぬ戦車をにぎっているあたり、怪獣映画の元祖『キング・コング』(1933年)へのオマージュなのだろう。細かい不整合は気にするな(笑)。
――海上シーンでの怪獣を攻撃するミサイルが、怪獣ではなくタンカーに命中して爆発しているように見えるシーンは、セル画のズレなのだろうけど、残念といえば残念。この時代のラフな作画のアニメ作品にすぎないという、媒体ゆえの覚悟・断念を筆者個人が無意識にしているせいか、細部の瑕疵(かし・欠点)はサラっと流せてしまい、あまり気にならないといえば気にはならないのだけれども――
世界各地に侵略者の魔手が同時に攻撃を仕掛けてくる危機といえば、ゴース星人が世界各都市を地底ミサイルで破壊する『ウルトラセブン』最終回前後編、のちの『ウルトラマンティガ』(96年)で複数体の怪獣ゾイガーが世界各都市を攻撃する最終章3部作(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091211/p1)、エンペラ星人の配下のロボット怪獣インペライザー13体が世界各地に出現する『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)最終3部作(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070505/p1)などもマニア的には連想されてくる。
が、もちろん本話は最終回ではないのだし、本エピソードの主テーマも世界規模の危機を描くこと自体にはなく別にあるので、それらほどの絶対的危機感・絶望感はもちろんない――本話の目玉は別にあって、そちらの騒動や爽快感を描くことに目的があるのだから、過剰な絶望感やそこからの離脱などは描く必要も、物語的にはないということである――
もちろん敵の攻撃がスケール感を増したことを、極東ゾーン基地・喫茶室で科学警備隊の隊員たちがひとしきり嘆くシーンを配置し、ヘラー軍団のスケール感&脅威を示唆してはいる。ついでに、ウルトラマンでも対処は大変だろう、地球もオシマイかな? と冗談でも隊員たちに語らせて、しかして主人公・ヒカリ隊員の
「そんなことが! そんなことが絶対あってたまるか!」
とのヒロイックな奮起描写でツボを押さえて、主人公のキャラも立ててみせてもいる。
しかしその次のシーンでは、早速(さっそく)コミカルなBGMが響き出し……。
本作のセミレギュラー、#5「パッセージャー号地底突破!!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090530/p1)、#17「ベータミーが消えた!!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090822/p1)、#32「宇宙からの物体X(エックス)」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091206/p1)にもゲスト出演して、キョーレツな印象を残した白ヒゲ白髪のユカイな日系ハーフ、ヘンリー・ニシキ教授が4度目のご登場!!
なんと巨大戦闘艦ウルトリアの艦長席に陣取っている(笑)。
「じ、じいさん!」
と叫んで、逃げ出すトベ隊員。
ニシキ教授「よう、運転手くん。……若いの、丸いの、ピッケル君。みんな元気そうだな、よろしい〜」
本話の導入部に対して散々御託を並べてきたが、このセリフに象徴されるノリこそが、本話たる#44の作風・空気の主眼(のひとつ)です(笑)。
この時点でもすでにベテランの名声優である熊倉一雄(くまくら・かずお)氏のトボケた味わいは絶品のニシキ教授。人名を覚えない――覚える気すらない(笑)――、悪意はない善人なれども、キョーレツなキャラクターが早くも炸裂!
ピグ「先生がいるなら百人力なんだナ」
隊員たちの困惑はさておき、あまりに調子がよすぎる科学警備隊のコミカルメーカー・等身大ロボットのピグの発言に、ムッとしたトベ隊員が足を踏んで牽制、お灸を据える。
ピグ「ギャア〜〜〜、イタタタタ」
ニシキ教授が苦手なトベ隊員に、教授を好いているピグ……と描き分けもできている。もちろん本作を綿密に視聴しているファンであれば、#32「宇宙からの物体X」後半で芽生えたピグとニシキ先生の友情を引きずった描写であることもわかるだろう。
ニシキ教授登場の4編はすべて、ウルトラシリーズに第1期の初代『ウルトラマン』(66年)から参画してきた脚本家・若槻文三(わかつき・ぶんぞう)氏の担当。
ニシキ先生は、巨大戦闘艦ウルトリアのもうひとつの司令室、極東ゾーンの一班である科学調査隊が調査しても用途が不明であったというBルームに行くという。その際に、ニシキ先生との同行を理由をつけて断る隊員たちの描写も笑える。
結果、残り物になったヒカリ隊員と、嬉々としているピグがともにBルームへ。そのままニシキ先生は、ウルトリアβ(ベータ)のキャプテン(艦長)席に図々しくも収まってしまう(笑)。
向かうは宇宙の彼方、「スペースポイントX(エックス)」! その呼称のセンスが今日的な観点からは笑ってしまうかもしれないけど、即座に「仮称」だと説明されることでセーフになっている(?)。
とはいえ、
・「怪獣カプセル弾」の発射点は、本作ではおなじみ宇宙ステーション・EGG3(エッグスリー)の協力で極東ゾーンの宇宙観測隊が特定した……とゴンドウキャップ(隊長)に語らせたこと
・ニシキ先生も極東ゾーンの桜田長官――本話では未登場――に頼み込んで搭乗できるようになったこと
・巨大戦闘艦ウルトリアの船出に際して、北アメリカゾーンのライオネル長官やヨーロッパゾーンのシュミットレス長官からの祝電メッセージを読みあげられたこと
このあたりは、本作の世界観・舞台設定を活かしてそれらしさも出していて、喜ばしいかぎりである。
専攻の学問が不明なニシキ先生のオールマイティな博士像だけは、この時代特有の大味さではある。
が、SF的なスケール広大感やSF的な肉付けには感度があっても、現実の「博士」像を小学生たちは知らなかったりもして、そのイメージはほとんど「老賢者」であったりもするのだし――筆者なども幼少時はそうであった――、もちろんそれ以上にコミカルな演出がなされていて、現実感が過剰に優先されない空気が醸成されていることもあり、問題視するにはあたらないであろう。
宇宙空間を航行する巨大戦闘艦ウルトリア。
ニシキ先生「そうか、そうとなれば、わからないものは……さわってみるにかぎる!」
とイイカゲンな理由で、大ピンチに際しての逆転劇ではなく(笑)、30分もの前半Aパート中盤で早くも、サブタイトルにもなっているウルトリアの分離が映像化!
「みんな、ほかはさわるな。……わかっているから」
とのセリフの後半部分は、脚本にもあったのだろうか、御大(おんたい)ベテラン声優のアドリブによるものだろうか?(笑)
とはいえ、即座にまたも「怪獣ロケット」群が飛来してくることで、戦闘タイムが早くも開始!
ゴンドウキャップたちが駆るウルトリアα(アルファ)の主砲はコレを撃破するも、1弾だけ取り逃がしてしまう。
それを目撃して、意外にも科学者なのに、平時にはハコ庭的な重箱のスミ突つきの合理性・論理性の構築には秀でてはいても緊急時にはパニクって、結局は「論理」「合理」的な判断の基礎・土台となっている人間の「感情」というモノの安定(!)という土壌が液状化して、イザというときに論理の格子の垂直水平がたわんでグチャグチャになってしまうような人種が集っているという印象の学者センセイたちという職業なハズなのに――偏見だったらゴメンなさい(汗)――、豪胆にも泰然自若(たいぜんじじゃく)として即座に大局を見据えて、的確に政治的・軍事的な判断をも下してみせるニシキ大先生!
ウルトリアの巨大な左右両翼部分が分離したニシキ先生たちが駆るウルトリアβは、「怪獣カプセル弾」を追うことに決定! ヒカリ隊員も云う通り、先生は「ただものではない」(笑)。
30分もの後半Bパート冒頭、ロケット弾が落下した先、自由の女神がそびえる摩天楼に出現したカプセル怪獣カペラドン。
宇宙から舞い戻って追跡してきたはイイものの、都市内では主砲をブッ放せないウルトリアβに代わって、ヒカリ隊員は司令室から抜け出すや、変身してウルトラマンが早くも登場。
攻防の末におなじみの必殺ワザ・プラニウム光線で怪獣を爆砕する!
そのあと、ヌケヌケと後ろの窓から手に取るようにウルトラマンの活躍を見ていたとのたまうヒカリ隊員。
相手がコミカルなニシキ先生だからか、ヒカリ隊員とニシキ先生のトボケたテキトーなやりとりが、作風のSF的リアル度よりも所帯じみた日常度の方を優先するように影響をおよぼして、本話のリアリティの線引き基準を低下させ、視聴していてもリアリティ面ではイチイチひっかかったりせずにサクサクと見られる(笑)。
そして、先にスペースポイントXに向かっていったウルトリアα(アルファ)に、今さらもう追いつけっこないという、ごもっともな発言をするピグ。
ニシキ先生「(人差し指をふりながら)ピッケル君、わかっとらんようじゃな〜。‟ワープ航法”というのを知らんのかね、今はやりの」
放映当時から大笑い。……はオオゲサにしてもプッと吹いてしまうこのセリフ。
今風にハイブロウ(高尚)に云うと、「メタ・フィクション」。
1970年代ドラマ評論だと、『お荷物小荷物』(70年)――TV時代劇『必殺』シリーズの山内久司プロデューサー&名脚本家・佐々木守氏コンビによる名作TVドラマ――が評された際のターム(専門用語)が、「脱・ドラマ」。
カンタンに云うと、要は単なる「楽屋オチ」(笑)。
ピグ「ワープ。(仰天して)‟ワープ航法”!! (後ろ上方のキャプテン席を向き直って見上げて) って、あの‟ワープ航法”、もしかして!?」
光の速度を超えて(あるいは空間を超越して)遠方の宇宙にまで航行する「ワープ航法」。
舶来のSF小説にはあったのだろうし、日本でも『宇宙大作戦(スタートレック)』(66年・日本放映69年)が本作『ザ☆ウル』放映の10年前にはすでに放映されていて、そこで「ワープ」という言葉も出てきてはいた――空間跳躍ではなくドチラかというと超高速飛行という映像イメージだったけど――。
「ワープ」という専門用語。コレを1979〜80年当時の小学生や十代の少年少女たちは、クラスで数名のマニア気質の人間たちの規模に留まらず、クラスの過半〜ほとんど全員のスケールで知っていた。
コレが大々的に知られることになったキッカケは、当時としては革命的なTVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101207/p1)が幾度かの再放送を経て、再編集劇場アニメとして公開されることが決定した際の再放送である1977年夏のことだろう。
14万8千光年彼方のイスカンダル星へと向かう『宇宙戦艦ヤマト』初期編では、ワープ航法という空間跳躍の概念の重要性とその技術的困難が強調されていて、長尺のシークエンスと大々的な神秘的映像演出でもって、それが非常に印象的に描かれていたからだ。
筆者も科学少年であったから、学研漫画『宇宙のひみつ』か何かで光の速度こそが最高で、それを超えるスピードのものは存在しないことを知識として知ってはいた。
しかし、たとえウソでもその限界を超えてみせるSF的ガジェット(小道具)には、やはり科学的知識を知ること以上にワクワクしたものである――ガジェットという用語も70〜80年代には流通していないけど(笑)――。
とはいえ、たしか77年9月15日(祝)敬老の日――第3次怪獣ブーム=第3期ウルトラブームが勃興するのは翌78年のこと――、当日は夏休みの終盤から平日午前10時台に再放送されていた『ウルトラマンエース』(72年)#13「死刑! ウルトラ5兄弟」(脚本・田口成光 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)が放映されていて、それを視聴していた小学校中学年の筆者は驚愕することになる。
幼児のころには意味もわからず視聴していたけど、劇中に登場するゴルゴダ星が存在するという「マイナス宇宙」!
――「物質」と「反物質」がふれあうと打ち消しあって大爆発が起きてしまうという意味での「反物質宇宙」ということではなく、劇中では別名「裏宇宙」とも呼称されていることからして、「異次元」ともまた異なる、単に位置的・地理的に宇宙空間それ自体の湾曲によって、丸い地球にもウラがあるのと同様に、丸いのだか布団を折りたたんだようなU字型だかをしているのかもしれない「大宇宙」という地表・布団(?)の屈曲の「ウラ側」のポジションにある位置が「マイナス宇宙」のことなのかも!? などと筆者は勝手に妄想している――
そしてそのゴルゴダ星へと到達するために、ウルトラマンエース自身が「光の速さ」を超えて(!)、宇宙空間を航行してみせる……というヒーローの超越性・圧倒性・万能性・神秘性!
その映像化として、油が七色に反射したかのようなまばゆい万華鏡のような空間を左右に割って飛行していく特撮シーンも描かれる。
コ、コレは、『宇宙戦艦ヤマト』で云うところの「ワープ航法」そのものではないのか!? 『ヤマト』よりも前に『ウルトラ』はこんなにもSFチックなことをやっていたのか!? ……などと幼な心にも大衝撃!!
――そんなハイブロウなことを一方でやっていながら、一方でのちの『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)で田口センセイは、星の軌道の制御装置であるウルトラキーを盗まれた300万光年彼方にあるウルトラの星が、「光の速さ」を超えてたかだか1週間くらいで地球に激突するくらいに大接近するネタをやっていたりして……(汗・『エース』第13話でのこの描写がある以上は、確信犯だったのではあろうけど)。
『ヤマト』鑑賞後にこの『レオ』のエピソードを再視聴すると、その一点では子供心に違和感を禁じえなかったものだけど(笑)。歴代シリーズに多数の後付け設定が与えられた、はるか後年の『ウルトラマンメビウス』あたりで、TVスペシャル『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』(79年)のイスカンダル星みたく、アレは実は惑星自体がワープを繰り返していたのだった! とかナンとか辻褄合わせの追加設定を与えてほしかったところではある――
この『エース』第13話再放送の翌々年である『ザ☆ウル』放映時でもある79年には、駄菓子屋で売っていた子供向け怪獣カード・山勝(やまかつ?)のペーパーコレクション(20円で5枚封入)では、怪獣のみならず、『ウルトラマンタロウ』#25「燃えろ! ウルトラ6兄弟」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061126/p1#20061126f2)にて、タロウがウルトラの星へと飛行するシーンまでもがカード化されたのだが、そのカードのウラの説明文には、アルバイトのマニア――竹内博センセイや中島紳助センセイや氷川竜介センセイあたりでしょうか?――が勝手に書いたのだろうけど、これに「タロウワープ」なる命名がなされていて、コレまた幼な心に筆者は狂喜をしたものだ(笑)。
ニシキ先生「ピッケルくん、君は勉強不足だゾ。SF小説を読まぬかね〜」
ピグ「タマにゃ読むけど……」
……なんつー会話だ。SF小説に依拠する科学者。SF小説も読んでいるロボット。ほとんどコントと化している(笑)。
かくしてココぞとばかりのカッコいいシーンで、ウルトリア初登場以来、定番の重厚(じゅうこう)なクラシック(?)の流用曲が響き出して、宇宙空間に出撃したウルトリアβは、閃光に包まれつつワープ!
ここで『ヤマト』でもおなじみ、異空間の中を飛ぶウルトリアと、気を失ったのかG(重力)の圧力に耐えているのか眼をつむった搭乗員たちの姿も描かれる。
対するウルトリアαは、スペースポイントXに、直径10キロメートル(!!)にもおよぶ巨大隕石を発見! ……というかもう小惑星だろう!(笑)
それはナレーションによれば、本作第4クールの宿敵・ヘラー軍団の命令で、ゲスト宇宙人・サイエン星人が巨大隕石を改造した円盤・サイエンダーだったのだ!!
サイエン星人は、本作には多い人間型の直立歩行する複数体の個体が登場。ヒョロ長いスマートなボディだが、体表を覆うウスい紫色のスーツで顔を眉と眼と鼻だけ残して口元を隠しつつも、鋭角的で巨大な耳たぶがスーツから透けて盛り上がる特徴的なデザインが、悪党なりにカッコいい。
よくよく凝視すると、シャープな吊り上った眉毛と大きなカギ鼻に巨大な耳たぶといい、『スタートレック』のレギュラー、ヴァルカン星人のミスター・スポックがデザインのソース(源泉)のようだけど(笑)。
この複数体が登場して暗躍するイメージは意識したワケではないだろうが、結果的に次作『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)の宇宙人像にも継承されている。
とはいえ、サイエンダーは円盤には見えず、デコボコな小惑星そのものといった存在ではあるも……。イメージ的・SF設定的にはスケール雄大ですばらしいハズなのだが、それほどワクワクしないのは、部分的にメカニカルな装甲でもあればともかく、映像的にはただの岩石の小惑星にすぎず、映像的なスター性・オーラがこの小惑星にはないゆえか?
コレが劇場アニメのような高精度な背景美術画であったならば……、あるいは劇場アニメ『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(78年)終盤に登場する下半分が小惑星で上半分が超近代的な摩天楼ビル群のような白色彗星帝国、そしてそこを割って出現した超巨大戦艦、もしくはリアルロボアニメ『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)終盤に登場した、いびつで個性的な形態をした宇宙要塞ソロモンや宇宙要塞ア・バオア・クーみたいなフォルムでもしていれば……。
とはいえ、1キャラクターとしてのスター性・オーラの点ではともかく、背景美術・小道具としての小惑星基地としては充分な設定を具有しており、メカメカ金属っぽい内部には赤い弾頭に白いボディのミサイルを多数装備して、紫色の円盤型戦闘機も多数保有する!
直径10キロではなく1キロメートルでも充分インパクトが大だったんじゃないかとは思うけど……。ウルトラマン映画最新作『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)に登場した超巨大怪獣である百体怪獣ベリュドラが身長4キロメートルと設定された今となっては、直径10キロくらいで結果的にはよかったか?(笑)
ただ、マニア向け書籍等で公表されている本話の準備稿のサブタイル仮題&登場怪獣名によれば、この要塞サイエンダー自体がゲスト怪獣扱いとなっており(?)、#41「激突!! ウルトラマン対ウルトラマン」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100213/p1)における地底の広大な空間同様、完成した映像では圧倒的な存在感があるワケでもないのは少し残念だ。まぁこの要塞をあまり綿密に描いても、怪獣もの作品には見えなくなってしまうかもしれないし、ヘラー軍団の土星の衛星タイターン基地よりも強そうになってもアレではあるのだけど。
戦端が開かれる!
敵要塞からの多数のミサイルのお出迎え!
ウルトリアαは主砲のレーザー砲で迎撃!
敵円盤群の多数飛来!
ウルトリアαは大型ミサイルで迎撃!
しかし敵の攻撃も徐々にウルトリアαに命中していく!
そこに真打ち怪獣・円盤怪獣スペーダーも飛来!
とはいえ、円盤には似ていないフォルムだけれども。薄いパープルというかグレーの体色に青い顔面で――『タロウ』#24〜25に登場した怪獣ムルロアみたいな――、胴中央が樽のように太いが長く、羽根を生やした羽虫のようなデザインが魅惑的な怪獣だ。
怪獣マニア的には、別名を「円盤怪獣」ではなく、『ウルトラマンレオ』第4クールに登場した「円盤生物」にしてほしかったと思うところだろうけど。筆者も多くの読者同様(?)、放映当時からそう思ってきた。そしてこの願望の実現は、後年の『ウルトラマングレート』(90年)まで待たねばならなかった(笑)。
素早い身のこなしで、大型ミサイル数発を避け、ウルトリアαの甲板と艦橋部に取り付きゆさぶるシーンは、作画は当時の並レベルでもけっこう迫力がある。
司令室の半球プラネタリウム型モニターに、怪獣スペーダーの冷酷そうな昆虫系の顔面がドUP(アップ)になるシーンも、絶望感があってけっこう怖い!
そこにウルトリアβが到着!
主砲を撃ってはウルトリアαにも当たってしまうからと、怪獣の鼻息が聞こえるまで前進せよと的確に命じるニシキ先生!
ヒカリ隊員はまたもβの司令室を抜け出し、ウルトラマンに変身! 激闘の末、怪獣の口から吐く光線をスペースミラーバリヤーでハネ返す新ワザも見せて、プラニウム光線で怪獣を撃破!
要塞サイエンダーの内部にも突入し、プラニウム光線を乱れ打ち! サイエンダーも動力炉でもやられたのか大爆発を起こす!
ウルトリアαの主砲レーザー砲、βはニシキ先生直々が射手となって大型ビーム砲、ウルトラマンもプラニウム光線を光球にして発射する同時攻撃によって、逃げ出したサイエン星人の戦闘機ならぬ母艦も宇宙の藻屑と消えたのであった。
本作第4クールに多い、怪獣バトルのあとに宇宙戦艦バトルが配置されるパターン破りを、本話も踏襲してみせた。
クロージング・閉幕は、説得力があるようなナイような、ニシキ先生の演説・説教で終わる。
「わからなきゃさわってみる」。「勇気と冒険心」。「活かすも悪用するも君たちの心次第」
それを神妙な面持ちで聞いている隊員たち――作画レベルは並だけど、らしい表情はイイ感じだ――。
三段論法ではあろうが、屁理屈オタクとしてツッコミを入れるならば、初段と三段目がつながっていなくて、三段目のオチはたしかに正論だともいえるけど、それでもって初段を正当化できそうにもないところが……。
天下の憎めないニシキ大先生のことだから……「ま、イッか!」(笑)
巨大戦闘艦ウルトリアの分離合体、そしてワープ航法も可能であった、という本話のお題。コレらの設定は、本作のメインストリームに関わる#47〜50(最終回)の最終章「ウルトラの星へ!!」4部作ヘの伏線でもある。
だから、本話の題材自体が一脚本家のアイデアであるワケもなく、プロデューサーなりメイン脚本家やチーフディレクターからのオーダー(注文)によるエピソードであったのだろうとも思うのだけど、それらを的確に料理しつつも、気持ちのイイ娯楽活劇編の佳作に仕上がったと思う。
◎アッサリと描かれているけれどオーラス前、再合体直前のウルトリアβの司令室に戻ってきたヒカリ隊員に対するニシキ先生の反応。実はキレ者の先生のことだから、「フムフム」とヒカリ隊員の再度の同じ言い訳を聞き流しつつも、ヒカリ隊員の正体がウルトラマンであることを察知したようにも見えなくはない。と本放送から30年後の今回の視聴でそう思った。筆者の深読みかもしれないが。
とはいえ、科学警備隊の隊員たちが、ヒカリの正体を徐々に察知していくのが、本作第4クール終盤の目玉でもあるのだから、その一環であったとも勝手に読み込んでみたいところだけれども。
――前作『ウルトラマンレオ』第4クール終盤でも、主人公が寄宿する美山(みやま)一家の面々は、ほとんど主人公・おおとりゲンの正体がレオであると薄々察知しだしており、製作スタッフはちがえどシリーズものは継続していくと、このように設定自体を内発的に自走・発展させていくものでもあるのだともいえる――
◎巨大戦闘艦ウルトリアがαとβに分離する直前、#38「ウルトラ大戦争!! 巨大戦闘艦ウルトリア出撃」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100123/p1)にも登場した艦内の「透明な球体がいくつも通路の左右に配置されている内部メカ」が再度出てきて、ウルトラ素粒子による動力炉なのであろうか輝きだす。
#38評でもふれたが、2008年に発売された本作DVD−BOX(ボックス)(ASIN:B0012ULS3U)ライナーノーツ(解説書)にて明かされた新(?)事実、ウルトリアの「艦橋(司令室)」とこの「透明な球体がいくつも通路の左右に配置されている内部メカ(動力室)」は、本作のメカニックデザイナー・河森正治(かわもり・しょうじ)氏によるものではなく、同じくスタジオぬえ出身の宮武一貴(みやたけ・かずたか)氏の筆によるものであったけれども、その設定画を#38よりも忠実に映像化できている。