(ファミリー劇場『ザ★ウルトラマン』放映「全話評」連動連載!)
ザ☆ウルトラマン#40「怪獣を連れた少年」 ~佳編
ザ☆ウルトラマン#41「激突!! ウルトラマン対ウルトラマン」 〜後期の良作画回
ザ☆ウルトラマン#42「ウルトラマン生けどり作戦」
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#43『怪獣になったモンキ!?』
電送怪獣ネオドストニー登場
(作・平野靖司 演出・辻勝之 絵コンテ・白土武 怪獣原案・山口修)
(サブタイトル表記の他、ドストニーA・ドストニーB・モンキドストニー登場)
(視聴率:関東9.3% 中部14.3% 関西14.8%)
(文・内山和正)
(1997年執筆)
◎科学警備隊のマスコットロボ・ピグ、涙の三部作の最終作(第一作は、7話「攻撃指令 目標はピグ!!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090613/p1)、第ニ作は、12話「怪獣とピグだけの不思議な会話」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090719/p1)と独断で認定させて下さい)。
◎地球防衛軍・極東ゾーンの宇宙工学研究所に運びこまれた謎の機械はヘラー軍の物質電送機だった。リスを追って中に入った小猿モンキは、電送されて来た怪獣ドストニーAと合成されてしまい、モンキ自身の意志により暴れはしなかったものの、地球の科学では元に戻れないという。
ヘラー軍のロイガー司令も困り、ドストニーBを派遣してモンキドストニーを電送機に再度入れ、分離のためにヘラー軍タイターン基地へ連れ戻させる。
極東ゾーン・科学警備隊のゴンドウキャップ(隊長)は次の電送が行なわれる前に電送機を破壊するよう命じる。モンキの飼い主であるロボット・ピグはそれを防ごうとする……というストーリー。
モンキの生還がご都合主義ながらピグの悲しみに心打たれて許せてしまう。モンキが災難に遭う前、言うことを聞かぬモンキに腹を立てていたピグが、モンキの怪獣化、さらには命の危機に際して、嘆き必死になるのはまさに親心といったところ。
◎侵略怪獣の電送先にされてしまう危険性があったとはいえ、研究のために電送機の保存を主張する宇宙工学研究所の所長が一方的に批判される役回りなのは残念。
筆者個人は必ずしも好きな番組ではないが、そういう部分では97年現在放映中の『ウルトラマンダイナ』4話「決戦! 地中都市」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971202/p1・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971201/p1・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971203/p1)に登場した、地底都市を開発している社長の言い分にも一理を与えた描写のほうが良いかも(?)。
◎今回の怪獣はこの番組の怪獣の中でも魅力的なデザインの一つと思われるので、当時着ぐるみで造形してほしかった。怪獣原案は山口修(やまぐち・おさむ)氏。
しかし当時のレベルではデザイン画が格好良い次作『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)5話「まぼろしの街」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100530/p1)に登場した四次元ロボ獣メカギラスも、あんなみっともない着ぐるみになってしまったのだから造形されなくて良かったのかもしれない。
筆者は『80』での山口修氏がデザインした獰猛そうな怪獣たちが好きなのだが、『ウルトラマンダイナ』初期編の山口怪獣(4話の肉食地底怪獣ダイゲルンなど)は悪い意味で氏らしさが濃厚に思う。
※:製作No.43『怪獣になったモンキ』
(余談:拙ブログ主宰者は、四次元ロボ獣メカギラスが放映当時から大スキです。カクカクした箱っぽいデザイン&造型はいかにもロボット怪獣っぽくてイイと思うのだけれども……・笑)
#43『怪獣になったモンキ!?』
(文・T.SATO)
(2010年書き下ろし)
広大な宇宙とその神秘をイメージさせる、ウルトラの星・U40(フォーティ)のテーマ音楽でもある幽玄な楽曲のイントロが流れる。
眼下の地球と、本作ではおなじみ地球防衛軍の自転する宇宙ステーションEGG3(エッグスリー)を、ワンカットに収めた映像にて本話は開幕。
ナレーション「ある日、地球上空へ漂流してきた、ナゾの無人宇宙船が発見され、宇宙工学研究所の所長がその収容に向かった」
丸い黒ブチ眼鏡をズリ下げた、顔にシワが多いけれども、上品そうな白髪の所長。
所長自ら(!)が宇宙船の舵を握って操縦しているあたりは、むかしのジャンル作品によく登場する専門職が不明なオールマイティーな「博士」像といったところ。今日的な観点からツッコミしたい視聴者もいるかもしれないが、そこはまぁご愛嬌であり、本作のテーマから見れば瑣末なことだろう。
生物反応がないところから、1)乗員全員死亡 2)最初から無人 3)異星人の無人調査機 〜などの論理的・科学的な可能性が、宇宙工学研究所の面々とおぼしき乗員たちの会話で交わされる。作品のメインガジェット(小道具)へ視聴者の関心を喚起するためと、工学研究所のメンツの肉付けとして、当然あってしかるべき描写だろう。
――1979〜80年当時のジャンル作品では「異星人」という呼称の使用はまだ珍しいのだけれども、79年のSFホラー洋画『エイリアン』で、「異星人」や「エイリアン」という呼称がようやっと勃興しだす。次作『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)では従来からある「宇宙人」「星人」の呼称に代わりに、「エイリアン」の呼称が多用されるようになったことをも思い出す――
ナゾの宇宙船は、ライトグレー色の円筒の下端に三脚とおぼしきを着けて、上端にはコウモリの翼っぽい突起も付けるも、丸っこくてヤボったいスタイル。
対するに、宇宙工学研究所が駆る宇宙船は、同年のリアルロボアニメ『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)の母艦・ホワイトベースの艦橋の頭頂部分だけを抜き出して、左右や下方に直方体を突起させたような、基調は白でも、艦橋下部の左右に丸い小さな円形の黄色いレーダーが2つ、突端部に赤の小さなポイントが入った、当時としてはハイセンスな妙にカッコいいデザイン。
メカデザインの河森正治(かわもり・しょうじ)センセ、好き勝手にシュミに走ってデザインしています。作画的には動画はなくて、止め絵だけに留められていますけど(笑)。
マニュピレーターでゲットしたナゾの無人宇宙船を、宇宙ステーションEGG3にて簡単な調査をしたのち、地上の地球防衛軍・極東ゾーンに移動された旨(むね)を語るナレーションで、当時流行の宇宙SF的なヒキをも兼ねた本話の導入部は終了。
いつもの巨大戦闘艦ウルトリアが着艦している広大な極東ゾーン基地。
カメラが左側にパン(横移動)すると、実はその隣りに宇宙工学研究所の施設があったという映像は、初耳の初見(しょけん)だけど、絵的にはカッコいいからイイんじゃないですか? ワタクシめはそーいうノリはスキですが(笑)。
先の博士も、宇宙服を脱いでダラシなくゆるめたネクタイに、放映時期の冬季に合わせたかVネックのグレーのセーターと研究職にアリガチな白衣姿で再登場。
弛緩(しかん)した日常を彩(いろど)るゆったりした休息BGMに、明るい冬の日差しと樹木もところどころに生やしてリスが樹の上を走り回り、それを見て科学警備隊のマスコットロボ・ピグが飼う小猿モンキが、
「キキキッ、キキキッ」
と関心を示す風景は、歳のせいかSF的なものにワクワク感をあまり感じなくなり、日常的な風景の方にこそ親しみを感じるようになってきているオッサンオタク的には、愛おしい光景だ。
設置してある無人宇宙船を囲った金属パイプの矢倉の上や樹木上で、小猿モンキがリスを追いかける光景も、作画は必ずしもよくはないのだけど、背景美術の茂る葉や金属パイプのウラにうまく隠れるかたちにて作画されており動きもよい。
分析室で博士は科学警備隊の面々に説明する。巨大カプセルのような無人宇宙船は「物質電送機」であると。「物質」を「原子」の単位にまで分解して電送することができる画期的なものなのだと。
物質の構成要素である「原子」という存在や専門用語は、本作のメインターゲットである子供にはわからないという問題もあるやもしれない。が、「瞬間移動」が可能な科学的装置だ、という認識さえ与えれば充分ではあろうから、専門用語で尺を要して長々と講釈を垂れるようでは論外だけれど、専門用語の点描的な使用であれば、擬似科学的・SF的フンイキ作りとして許容されてしかるべきだろう。
「原子」に分解するまではともかく、「原子」そのものが宇宙空間を電送されていくというのは、アメリカのSFテレビドラマ『スター・トレック』(66年)シリーズなども同様だけれども、長じてから視聴すると大ウソだともいえるのだけれども(笑)。
とはいえ私事で恐縮だが放映当時、小学校高学年で科学少年でもあった筆者は、まさに本作放映時の79年に子供向けの百科事典か何かで、
「あらゆる“物質”の一応の最小単位は“原子”であり、しかもそれは自然界に92種類しかなく、無限に近い多様な“物質”も、この92種類の組み合わせでしかない」
ことを知って、荘厳な(笑)知的衝撃を受けて、ワクワクしていた時期だから、本話の「物質電送機」にもワクワクしそうなモノなのだが、「電送」はともかく「原子」の単位にまで分解してうんぬんのあたりは記憶がなかった。当時は聞き逃してしまっていたのであろうか?
本作の最終章・4部作にて、ヘラー軍団の首領・ヘラー自らが劇中の重要人物を、機械装置で「原子分解」してしまって原子構成パターンを記した幾何学的な穴あきが点在する金属製のカードに記録してしまうというシーンが描かれて、こちらはドラマ的にも重要なクライマックス・シーンにSF的なガジェットをもカラめた相乗効果で、子供心にコーフンを禁じえなくってキョーレツに記憶に残っているのだけれども。
まぁ小学校高学年という、そろそろイロケ付いてきて思春期の男女コミュニケーションの方にも関心を持たねばならないトバグチに立った時期に、それらをヨコ目では見つつも「原子」だのナンだのの存在を知ることの方に喜びを感じたり、そのような知見を得ることこそを「コレこそが俗世から離れたところで到達した科学的な真理なのだ!」なぞと重きを置いているようでは、そのあとの世渡り・人生に苦労しそうでもあり――事実、苦労をしたけれど(笑)――、今では小学校高学年でそーいう知識を仕入れたことがちっとも自慢にならないナと思っていたりもするのだけども(汗)。
閑話休題。しかし博士には予想もつかなかった反応を、科学警備隊の面々は示す。
この「物質電送機」は侵略者が送り込み、侵略怪獣が電送されてくる可能性もあるのではないのか? と。しかも、「物質電送機」は危険だから破壊するのだと!
そこは、井の中の蛙(かわず)、大海を知らない学者センセイの通弊。井戸の底から見る空の青さを知ってはいても(笑)、ヘラー軍団の侵略に目下さらされている状況では、筆者も個人的には科学警備隊の万が一の被害予防の見地に立った判断の方が現実的だとも思う。
仮に国家なり国際機関なり為政者なりが、本話のようなある意味、平時ならばともかく戦時下の状況で、敵の破壊兵器に類する存在である可能性が高い、古代ギリシャのトロイの木馬のような「物質電送機」を入手した場合、総合的な見地に立って破棄を命じる可能性が高いだろうとも思うのだ。
ここで話題に出すのは脱線なのだけど、リアルな怪獣映画として特撮マニア間では大絶賛された平成ガメラシリーズ第1作『ガメラ 大怪獣空中決戦』(95年)前半部で、人間を捕食する怪鳥ギャオスを、マッドな学者センセイどころか日本国家自身が捕獲しようとする光景が延々と描かれるけど、クマやイノシシでさえ人里に現れて危害を与えれば射殺するしか対処のしようがないというのに、いかに貴重種とはいえ巨大怪獣を殲滅するのではなく捕獲しようとするのはおおよそ有り得そうになくって、個人的にはあまり現実的な描写には思えなかったモノなのだが……。なぞと個人的な感慨を吐露してみたりして。
日本政府による捕獲作戦に違和感をいだかなかった方々に、もしも不快に思わせてしまったのならば申し訳がないのだけれども。もっとも、リアル性を志向していないファンタジック(和製英語・笑)な作品であれば、どんなにウソをやっていても「そーいうものだ」的にナットクするけれど。
とはいえ、それはそれとして、「物質電送機」の破壊に猛反発して10日、いや1週間と猶予を迫る博士の気持ちももちろんわかるし――「せめて3日で」と云うゴンドウキャップの進言は断固断っている博士ではあるけれど(笑)――、古典的な我々オタク族にも顕著である「安全よりも知的探求」という執念の現れではある。
総合的な見地の判断から見た合理性のことは別として、オタク族の一員としては対象ジャンルを変えて想像してみれば、イタい程に博士のその気持ちがわかるといえばわかるのだけれども(笑)。
ゴンドウキャップの予想は見事に的中。
次のシーンでは、本作終盤・第4クールの宿敵・ヘラー軍団配下の、土星の衛星タイターンの前進基地に城を構えるロイガー司令のシーンが早くも描かれる。やはりこの物質電送機はロイガー司令が送り込んだものであったのだ。
アニメ作品ゆえの効用か、怪獣ドストニーは2体も用意されており、話をサクサク進めるためであろう(←批判じゃないよ)早速、そのうちの1体が電送されてきた!
知らせを受けて、宇宙工学研究所の施設の正面入り口から駆け出してきた科学警備隊の面々。怪獣出現もそっちのけで、小猿モンキがいないと騒ぐマスコット・ロボのピグ(笑)。
入り口すぐ外に、後ろ姿で悲しげに鳴きながら佇(たたず)む怪獣。その鳴き声を聞いて、「まさか?」と見上げるピグ。
隊員たちは驚異の光景を目撃する。怪獣の顔面は、小猿モンキのそれであったからだ!
ここからが、本話の真の開幕であり真骨頂。
モンキ自身が意識と身体の主導権を握っているからであろう、暴れることもなかったモンキドストニーは、ヘリコプター4機で空輸されてきた檻に入れられる。おとなしく従う怪獣・モンキドストニー。
本話の作画は必ずしも良くはないのだけれども、登場人物たちの表情演技や芝居はシッカリとしており、眼を大きく見開いたピグの驚愕の表情といい、
「モンキだ!」
と飛び上がって驚く姿といい、涙を流して手のひらでぬぐったり、ウルウルしたり、「モンキ、モンキ」と走り寄っていき檻の格子に取りすがって、
「なんて姿になっちまったんだ……」
と嘆いてみせるピグの姿&表情が、名声優・滝口順平氏の声の演技ともあいまって、かわいらしくも真に迫っていて心動かされる。
博士の推測で、物質電送機に忍び込んでいたモンキが、電送されてきた怪獣と合成されてしまい、分離は困難だと語られる。
「そんな! モンキはどうなるんだ!?(怒)」
科学警備隊のメカニック担当・トベ隊員が、あの電送機を逆用して、分離すればイイのでは? との考えを述べる。
「(乾かぬ涙のまま)なんだなぁ(喜悦)」
いやそれはムリだと、博士に言下に否定されて、ピグの表情はまたもや暗転急直下!
ピグ「モンキ、おまえイタズラばっかりしてるから、こんなことになったんだゾ」
ベットの飼い主として文字通り親身になるピグがイイ味を出している。
マルメ隊員「考えてみればモンキもイイ奴だったのになぁ〜」
ピグ「ナンだ!! モンキはまだ死んだワケじゃないんだナ!!」
ガサツなマルメ隊員らしいセリフが不謹慎でもチョット笑える。マルメ隊員の足を踏んづけて、ピグが怒って行ってしまうシーンもまた、半分ギャグ的に笑えつつも、真情が出でいてイイ感じである。
あげくの果てに、物質電送機を破壊しようと集結した戦車隊の前で、電送機を囲った金属パイプの上に登って、
「いやだ〜〜〜!! モンキが帰ってくるまでこの装置は壊させないぞ〜〜〜!!」
「みんな、みんな、モンキが、モンキが……(涙)」
「ウソだ! モンキは、モンキは、絶対生きてるんだ。生きててほしいんだぁ〜〜〜〜!!」
名シーンの数々。ダメ押しで、後ろを向いて泣き出すシーンになると、かわいそうになってきて、筆者の方でも連られて、ピグの心情に感染してきて泣けてくる(汗)。
これらの名シーンの合間に、実際にはドストニー2号が出現。
その豪腕パンチで戦うモンキドストニー対ドストニー2号のバトルや、土星のタイターン基地でのドストニー1号とモンキとの分離や、モンキのタイターン基地でのユカイな珍騒動も挟みつつ。
30分後半Bパートでは、ドストニー1号と2号の合成であるネオドストニーが、物質電送機から出現。戦車隊や科学警備隊、ウルトラマンとの大激闘をくりひろげる。
もちろん子供番組だから、愛らしいレギュラーキャラのモンキが死ぬハズもなく――死んだからってハイブロウ・高尚な作劇ってゆーものでもあるまい!――、いろいろあって偶然の事故(笑)で帰還を果たす。
物質電送機が起動により輝き出すや、それを根拠もなく「モンキが帰ってきた!」と喜びだし、科学警備隊の攻撃BGMをアレンジした哀愁のBGMが流れ出すタイミングも絶妙。
モンキが物質電送機から走り降りてきて、ピグとモンキは感動の再会も果たす。
もちろん極東ゾーン基地の敷地内、宇宙工学研究所前に設置された物質電送機の目前、怪獣ネオドストニー大暴れの現場ゆえ、ピグとモンキはあわや瓦礫に埋もれそうになる!
それを見て、ヒカリ隊員はウルトラマンへと変身!
クライマックスは、もちろん怪獣とウルトラマンとの大バトル!
メカ怪獣(サイボーグ怪獣?)なのに、何本もの触手をくりだしウルトラマンを拘束し、長大で太い節ばったシッポで打撃を与えて苦しめる。
ウルトラマンが怪獣のシッポをつかんでジャイアントスウィングでグルグルとブン廻して投げ飛ばして反撃するサマは豪快!
物質電送機の上端の突起に突き刺さる怪獣。
#1「新しいヒーローの誕生!!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090505/p1)でも使用した、カッコいいプロポーションの左横から捉えたウルトラマンのL字型に組んだ右腕の稜線に白桃色のエネルギーがうねりつつ集中して光球と化し、上半身をひねって水平に右腕をふるって射出する必殺ワザ・プラニウム光線の、作画レベルも高いバンクセル画をひさびさに使用!――あまりにもカッコよくて作画レベルも高い必殺ワザのバンク・セルなのだから、もっと頻繁に再使用をしてほしかったなぁ――
怪獣と物質電送機は爆炎の中に消えたのであった……。
ラスト、戦い済んで、宇宙工学研究所の敷地内で、科学警備隊の面々と談笑するピグとモンキ。
隊員たちに聞かれて「キキキ、キキキ」と誇らしげに語るモンキ。
それをナゼだか翻訳できてしまったり(笑)、笑顔でモンキを叱り、モンキのアタマもペコリと手のひらで叩くピグ。
ゴンドウキャップのやさしい叱責に、「ゴメンなさい、ゴメンなさい」とばかりに何度もアタマを下げるモンキ。
とにかく、ピグとモンキの表情と動きがかわいい。
めでたし、めでたし、となるのであった。
◎後年の(当時から?)公式資料では合体前の2体の怪獣ドストニーは、ドストニーA・ドストニーBと命名されているが、劇中ではドストニー1号・ドストニー2号とロイガー司令がハッキリと呼称している。
むかしは(当時は)家庭用のビデオ機器が普及していなかったことから、関係各位がイイガゲンな扱いをしてしまった結果として、この誤った呼称が普及してしまっていた可能性がある(笑)。あるいは映像作品側ではなくシナリオ側での呼称・記述に準拠したものなのであったのだろうか?
この当時の怪獣たちの設定は、円谷プロに1971年〜87年ごろまで在籍していた特撮ライターで、近年(後日付記:2010年当時)はお身体を壊されているとも仄聞する竹内博(たけうち・ひろし)氏がすべてを手懸けていたと、各種の書籍からの記述で推定されるのだが……。
(さらなる後日付記:竹内博は遠回しに、アニメ系の『ウルトラマン』やその怪獣の設定には関与しなかったと仄めかしていたのを、何かの書籍でのインタビューで読んだ記憶もあり……)
小猿モンキを分離しようとしたら、1号と2号が偶然合成されてネオドストニーが誕生してしまうあたりは、テキトーもイイところなストーリー展開で(笑)、敵・ヘラー軍団が意図的・主体的に1号と2号を合成させた方が憎々しげになってよかったとも思うけど――あるいはシナリオ段階ではそうなっていたとしても、尺の都合やテンポの問題から、絵コンテ段階で簡略化されてしまうこともあるのだろうが――。
怪獣のルックスは、後年の怪獣メカキングギドラ(怪獣映画『ゴジラVS(たい)キングギドラ』(91年))のごとく、胴体部分は甲冑に覆われたようなメカになっていて、手脚の方が部分的に生物としてのナマ身のムキ出しとなっている。
顔は無機質でメカっぽかったり、眼が緑色の複眼か昆虫ぽかったりで、ゴジラ映画『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(72年)で登場した宇宙から侵略兵器として遣わされたサイボーグ怪獣・ガイガンにシルエットは似てないけれども、コンセプト的には共通するモノを個人的には感じさせる、なかなか独創的なデザインである。
ただし担当の特撮美術デザイナー・山口修らしいデザインだったかといえば、個人的にはそうも感じないのだけれども(良し悪しではなく)。そのデザインの成否はともかく、本話の作画はよくはないのが少々残念で、その点で損はしているナとも思う。
1号は頭頂部〜鼻先にかけて前方に反ったツノを生やし、逞しい下半身に長大なシッポを生やして、手の甲などはナマ身(?)の蛇腹(じゃばら)を見せるも、両腕は肉食恐竜のごとくに細くて貧弱に見えるけれども、鋭いカギ爪を生やしている。
2号はさらにメカ甲冑の部分が多い印象で、両腕が二重の鎌(カマ)のようになっていて、下アゴ(口?)の延長にメカっぽい2連装の長大な突起が下半身まで伸びているのが強い印象を残す。毒ガスマスクっぽい印象もある。
1号の変型であるモンキドストニーは、顔はかわいらしいが、2号と戦いだすと一度は優勢に立っているので、弱そうともいえない(笑)。
合体したネオドストニーは、小さいアタマの鼻先と下アゴの両方に長大な突起、顔の左右にも突起があるあたりキョーレツな印象。
アタマの左右にも上方に沿った色違いの突起があり、コレが触手にも変形する。
メカっぽい装甲と同じグレー色の下半身が、ネオドストニーのみ体毛のようにもなっているあたりだけは、この当時のTVアニメゆえのイイカゲンさかも?
◎ウルトラマンの胸中央のカラータイマー。本作におけるウルトラマンジョーニアスのそれは「青⇒黄⇒赤⇒赤の点滅」と変化していくのが定番なのだけど、なぜだか本話ではイキナリ「青⇒赤」と途中の「黄色」をスッ飛ばして変化している。いや別にイイけども(笑)。
◎モンキの声はご承知の通り、今ではベテラン声優、兼・録音監督(=音響監督)――録音や効果音などの専門家・ミキサーなどではなく、アフレコ現場で声優たちに演技指導などをする監督――としても知られる千葉繁氏が演じておられる。
CS放送ファミリー劇場『ウルトラ情報局』に、本作放送と連動で昨09年に千葉氏が出演した際には、もちろん本話に関しても話題にされて、「キキキ」の鳴き声だけでいかに感情を表現するかの苦労を語られた。