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ザ・ウルトラマン36話「宇宙から来た雪女」 ~民話ネタと思わせて、リアル・シミュレーション要素も! 地味でも風情ある佳品!

(ファミリー劇場『ザ★ウルトラマン』放映「全話評」連動連載!)
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『ザ・ウルトラマン』第36話「宇宙から来た雪女」 〜民話ネタと思わせて、リアル・シミュレーション要素も! 地味でも風情ある佳品!

氷結怪獣ダランチュラス登場

(作・宮田雪 演出・関田修 絵コンテ・山口務 怪獣原案・鯨井実)
(視聴率:関東10.1% 中部14.8% 関西15.6%)


(文・内山和正)
(1997年執筆)


 日本の南アルプスを中心に、氷河期の再来のような異常寒波が襲った。件(くだん)の南アルプスでは、氷点下40度にも達していた。


 救助物資を運ぶ途中で吹雪に三日間閉じ込められたトレーラートラックの中で人間が氷結している姿を、孤立した山村から様子を窺(うかが)いに来た村人ふたりが発見する。そして、近くに立たずむ髪の長い透き通るような白い顔の雪女のごとき、和装の女性が目撃された。


 この事件を調査中であった、地球防衛軍・極東ゾーンの科学警備隊の隊員である主人公・ヒカリ隊員も、不忍峠(しのばずとうげ)で、狼を連れたその女を眼にした。その後、極東ゾーンの気象調査隊員たちが不忍峠付近で異常怪音波を受信した、と我らが科学警備隊に連絡してきた。


 ヒカリ隊員らが急いで駆けつけると、その気象調査隊員たちはスノービハイクルの中で凍死していた。


 狼が鳴きだした。ムツミ隊員は近くに雪女がいると判断する。ヒカリは「呼んでる。僕を呼んでる」と叫んで、雪の中へスノーモービルを駆っていく。
(以上、ストーリー)



 冒頭の孤立した山村は、漫画『ドラえもん』(69年)初期の某話にも登場していた、豪雪に対応した三〜四階建ての外壁全てが急峻な三角形の藁葺き屋根で覆われている通称・合掌造り(がっしょうづくり)の建物が散在する、1995年にはユネスコ世界遺産(文化遺産)にも登録された岐阜県の「白川郷(しわかわごう)」が、美術デザイン的にはモデルだろう。


 山村から遭難したトラックを探しに出た村人が、足袋(たび)に古式ゆかしい丸い輪状の「かんじき」 (樏・橇)を履いて風雪も激しい野を歩くことで、ひとつだけ実が残った柿の木とお地蔵さん越しに見下ろせる先の「白川郷」ともども、映像演出面での風情も出そうとしている。


 村人が遭難トラックを発見するシーンでは、急に風雪が止んで、なぜだか空や雪原を赤い色調で照らすことによって、異常事態を際立たす「異化作用」の「演出」を施している。


 麓(ふもと)で保護された先の村人ふたりの発言――「妖怪」である「雪女」だの、日本では絶滅したはずの「狼」だの――は当然、地元の警察には信用してもらえない。レギュラーの小猿・モンキをはじめとして、本作ではチョイ役の専門で、のちの大家の声優・千葉繁が演じる地元の警察署員が、村人ふたりを適当にあしらう声の演技がいい味を出しているのだ。


 今回の氷結事件で先に派遣されていたヒカリ隊員とムツミ隊員はスキーで行動。次に派遣された隊員たちは、スノーモービル(雪上スキー&キャタピラのバイク)を駆って移動することで、この両者を差別化もしている。



 上述の「ストーリー説明」のあとで、雪山の谷底から、羽を生やした紺色の蜘蛛(クモ)型の怪獣が登ってきて、口から吹雪を起こして、両目から冷凍光線を吐いてヒカリを狙うあたりがスリルを与える。


 怪獣や雪女のデザインがいわゆるアニメ的でありながらも、意外にも(?)実写特撮作品でも通じそうなストーリー展開がなされている(雪女の正体が語られるまでは……)。


 この雪女の正体が宇宙人であることはサブタイトル「宇宙から来た雪女」で示されている。そのために、視聴者にとっては“悪”かどうか? いった興味しか残されていないわけだ。その雪女の事情とは…… 「悪い怪獣に狙われている宇宙人」といった設定はおなじみのものではあった。しかし、雪山に立っていた理由が、「地球人に呼びかけていた」のであったり、「すでに死に瀕している」といった、複数のパターン破りの組み合わせによって、多少の驚きも与えている。


 この雪女はテレパシーのみで会話をする。彼女はノアという名前で、4万8千光年かなたの白鳥座・82番星人であった。「雪女」といった「妖怪」的なイメージとは程遠い素性も明かされるのだ。科学者であった父とともに、自分の惑星の温暖化を阻止するための冷凍エネルギー・フリーザーGの実験装置に、生物が闖入していたことが原因となって、氷結怪獣が誕生してしまったことを明かすのだ。


 ウルトラマンのプラニウム光線と合成することで、今回の蜘蛛怪獣を倒すことができるという、溶解光線・スーパーマグマエネルギーを封じた「十字架型のカプセル」を、父は死の間際に娘・ノアに託したことで、ノアはウルトラマンを探していたのだった。


 彼女の命が危ないのはあくまでも「地球にいたら……」ということであって(?)、無事に帰って行くのには拍子抜けしてしまった(それとも、やはり生命は残り少ないままなのだろうか?)。しかし、本話の音響面でのイメージを一方で象徴させてもいる、どこか物悲しい「狼の遠吠え」が響くなかで、ハッピーエンドでまずはめでたしめでたし……だと思いたい。



 過去のウルトラシリーズで、「雪男」や「雪女」などの「伝承」テーマをモチーフにした作品は、


●初代『ウルトラマン』(66年)の伝説怪獣ウーが登場する30話「まぼろしの雪山」
●『帰ってきたウルトラマン』(71年)の雪男星人バルダック星人が登場する39話「20世紀の雪男」
●『帰ってきたウルトラマン』の雪女怪獣スノーゴンが登場する40話「まぼろしの雪女」
●『ウルトラマンA(エース)』(72年)42話「冬の怪奇シリーズ 神秘!怪獣ウーの復活」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070219/p1
●『ウルトラマンA』43話「冬の怪奇シリーズ 怪談 雪男の叫び!」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070224/p1


 上記のエピソード群があった。


 いずれも「伝承」や「伝奇」や「民話」に作風が特化した印象があった。本話もそれらに準じて、「伝説」テーマのみで行くのかと思いきや……。


 極東ゾーンの桜田長官も登場! 宇宙ステーション・EGG3(エッグスリー)からの気象写真を基に、現地に「緊急対策本部」設置と「第二次気象調査隊」の編成と、その指揮をゴンドウキャップにくだすような、「科学」的・「ミリタリー」的な描写も挿入されていくあたりは独自であって、しかも魅力的であった。


 同じく雪が積もった極東ゾーン基地内のシーンで、科学警備隊のコミカルメーカー・ピグが人間サイズのロボットであるのに、「寒さは苦手だ」と首に巻いたマフラー(笑)をひるがえすような仕草による、かわいいギャグ演出も忘れない。豪腕のゴンドウキャップも、コートを着込んだ隊員たちと現地の対策本部で、「雪女」などの「お化け」の類いの話は実は苦手なのだという、プッと笑える意外な一面も見せている。


 特別なイベント編ではないし、「雪女」といった題材からしても、子供たちにも平均的なマニアたちにも、シリーズ中では最も地味な類いの話には写るだろう。しかし、スレたマニアから見ると、あまり語られていないであろうエピソードだからこそ、「味わい」と「語りがい」があるエピソードだともいえるだろう。



◎脚本の宮田雪(みやた・きよし)は、本作ではこの1話のみの参加だが、あまたのTVアニメやアクション刑事もので活躍した御仁である。『ゲゲゲの鬼太郎(きたろう)』の水木しげるが作画を担当した『ゆきをんな』という漫画の原作も担当しているようだが、筆者個人は未読である。


※:製作No.31『ゆきおんなの秘密(仮)』


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊98年号』(97年12月28日発行)『ザ☆ウルトラマン』特集・合評3より分載抜粋)


編集者付記:


 ノアの声を演じたのは、12話「怪獣とピグだけの不思議な会話」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090719/p1)、13話「よみがえった湖の悲しい伝説」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090724/p1)に登場し、18話「謎のモンスター島」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090912/p1)ではゲスト主役を張った地球防衛軍・極東ゾーンの喫茶室で働く野島ユリ子も演じた声優・岡本茉莉(おかもと・まり)であった。


 一般的には、タツノコプロのTVアニメで「タイムボカン」シリーズ第2作『ヤッターマン』(77年)のヤッターマン2号ことアイちゃん役と、東映の魔女っ子TVアニメシリーズ『花の子ルンルン』(79年)のルンルン役で有名である。長寿邦画『男はつらいよ』(69〜95年)シリーズでも、初期の数作に「旅芸人一座」の一員として、顔出しでの同一の人物役として出演し続けてもいた。特徴的な華のある、後年でいうところのややキンキンとした、いわゆる「アニメ声」であるので、マニア的にはすぐにわかることだろう(笑)。


 岡本茉莉は、CS放送・ファミリー劇場『ウルトラ情報局』2010年1月号(09年12月第3火曜〜10年第2金曜放送)にもゲスト出演! 野島ユリ子と本話におけるノアのエピソードを中心にその逸話を語られてもいた。ストーリーのねらいを「深読み」も含めて「役作り」をしていく際のボキャブラリー(語彙)が豊富であることに、まずは感心してしまう。


 本作『ザ☆ウルトラマン』への出演は、主にタツノコプロ作品を担当していた録音スタジオ、およびその録音監督が招聘してくださったとのことだそうだ。


 本作の他のゲストやイレギュラーの出演者たちも、いま思えばその当時のタツノコプロ作品に出演していた御仁たちが多い。世代人のマニアならば、本作にはタツノコプロ作品にも多用されていた「ブリッジ曲」(場面転換時に使用される、短い効果音的なBGM)が多用されていることに気付いていたことだろう(笑)。


[関連記事] 〜ウルトラシリーズ「雪男」「雪女」ネタ!

『ウルトラマンエース』#42「冬の怪奇シリーズ 神秘! 怪獣ウーの復活」

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070219/p1

『ウルトラマンエース』#43「冬の怪奇シリーズ 怪談 雪男の叫び!」 〜身勝手な大衆に批判の視点!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070224/p1






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