(ファミリー劇場『ザ★ウルトラマン』放映「全話評」連動連載!)
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『ザ・ウルトラマン』第18話「謎のモンスター島(とう)」 ~島そのものが超巨大怪獣!? 隊員たちのイキなはからい! 泣ける人間ドラマ!
『ザ・ウルトラマン』第18話「謎のモンスター島」 ~合評1
(文・内山和正)
(1997年執筆)
地球防衛軍・極東ゾーンの喫茶室で働くユリ子の故郷、日本の南端に位置する南浮子島が海蛇のような怪獣に襲われた。父の反対を押し切って極東ゾーンの科学警備隊に入るために島を出たものの隊員にはなれなかった彼女は、父には隊員として活躍しているとのウソを告げてきた。
それがバレることを危惧する彼女に同情した隊員たちは、アキヤマ隊長には内緒にしてユリ子をムツミ隊員の代わりに隊員として連れていく。しかし、それが原因で彼女の父・野島医師はケガをすることになり……
(以上、ストーリー)
12話「怪獣とピグだけの不思議な会話」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090719/p1)と13話「よみがえった湖の悲しい伝説」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090724/p1)にも登場し、13話では主人公・ヒカリ隊員に好意を抱いているらしいことが示されたユリ子をメインとした回でもある。
といっても、それらの回ではわずかな出番でしかなかったし、放送日程でいえば一月分も登場していなかったのだから、初登場のキャラクターだと思う人も少なくないかもしれない。
科学警備隊で働く隊員ではないキャラクターにスポットを当て、このような話を作ることは好ましい試みといえる。
ただ、ありふれた素材であるうえに、主人公・ヒカリ隊員がユリ子を通信機でサポートすることにしろ、父のケガに責任を感じた彼女が罪滅ぼしに危険な調査をすることにしろ、いざというところで娘を救ける野島医師にしろ、パターンどおりになっており、ソツはないが、反面それほどには深みもない。
それでも、ユリ子に彼女の仕事を恥ずかしがる必要はないと諭(さと)したうえで、
「せいいっぱい、背伸びしろ」
と送り出すラストのセリフには胸が熱くなった。
海蛇怪獣は蛸(タコ)のような怪獣の足にすぎなかったというのが、怪獣モノとしてのこの回の趣向である。
長年、島それ自体が怪獣の頭だったと誤解して記憶していたが、今回の再視聴で海面下の洞窟に入りこんで長い歳月をかけて大きくなったものにすぎなかったと思いだした。大きいことは確かだけれど、思っていたほどではなかったようで少しガッカリした。個人的な感慨で申し訳ない。でも、もっと特大の存在だった方が迫力も出たのでは? いや、それ以前の問題として、今回の海蛇怪獣の大きさも、この時期のTVアニメや本作『ザ・ウルトラマン』でもアリガチな、シーンごとにあまりにも違っていてイイカゲンだったから、たとえ島それ自体が怪獣だったとしても、作画の巧拙的にもあまり効果はなかったかもしれない。
(編:当時の幼児誌『てれびくん』か『テレビマガジン』の巻頭カラーグラビアでは、「島そのものが怪獣だ!」としてリアル・写実タッチのイラストで紹介されていたような記憶もあり。拙ブログ編集者もそちらの印象での記憶がキョーレツで、同様の誤解を長年してきた・笑)
今回、アキヤマ隊長は部下たちがユリ子に隊員役を演(や)らせたことについて厳しい態度を示す。専門知識を要する危険な任務なのだし、死傷してはいち大事なのだから当然なのだが、子供向け番組としてはヘタをすると融通のきかないジイサンと思われかねないような微妙な描かれ方でもあった。
ユリ子は怪獣好きだという、この当時の女性キャラクターにしては非常に珍しい(?)設定で、自室の壁には怪獣のポスターがたくさん貼られている。伝説怪獣ウー(『ウルトラマン』・66年)・変幻怪獣キングマイマイ・始祖怪鳥テロチルス・合成怪獣レオゴン(以上『帰ってきたウルトラマン』・71年)・古代超獣カメレキング(『ウルトラマンA(エース)』(72年)2話・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060515/p1)などだが、実写の映像作品や写真などではなく、マニア向け書籍で明かされてきた「デザイン画」「設定画」の方が元になっているようなのには注目だ。
ラストにヒカリ隊員役の名声優・富山敬(とみやま・けい)氏が唄う挿入歌「明日に……」(ASIN:B0000DJW7W)が流れる。
当時はTVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(74年)の総集編映画(77年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101207/p1)が大ヒットしたことに端を発した第1次アニメブームの渦中でもあった。それに乗じて、旧作アニメの発掘にはじまり、現行作品のマニア向け書籍やマニア向けのBGM集・挿入歌集のレコードなどがようやく発売されるようになった時代でもあった。
『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999(スリーナイン)』(78・79年に劇場アニメ化)が流行っていたあの時代、僕たちはそれらの作品で、“愛”だの“ロマン”だの“夢”だのを口にしているだけで、ロマンを感じていられた。それが幸せだったのか不幸だったのかは判らないが。
時は流れ、今この歌を聴くと素朴で、ちょっと笑ってしまう。でも、好きな曲だなぁ……。
※:製作No.22『ユリコ故郷に帰る(仮)』
シナリオでは、「海底怪獣アイランダー」名義。
『ザ・ウルトラマン』第18話「謎のモンスター島」 ~合評2
(文・久保達也)
(2019年10月20日脱稿)
地球防衛軍・極東ゾーンの喫茶室に勤める黒髪ロングの野島ユリ子って、円谷プロの『電光超人グリッドマン』が原作の深夜アニメ『SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190529/p1)に登場したメインヒロイン・新条アカネみたいな怪獣オタクだったんだな(笑)。
部屋の壁の合成怪獣レオゴンの絵がずっと映っているのが気になった。たぶんこの怪獣のデザイナーでもある、マニア上がりの小林晋一郎(こばやし・しんいちろう)には許可をとってはいなかっただろう(笑)――氏は高校生当時に、『帰ってきたウルトラマン』(71年)に怪獣デザインを投稿し、同作の怪獣レオゴンや『ミラーマン』(71年・円谷プロ フジテレビ)に登場した暗黒怪獣ダークロンとして採用されている。映画『ゴジラVS(たい)ビオランテ』(89年・東宝)に登場したバイオ怪獣ビオランテなどのデザインや、90年代には特撮雑誌『宇宙船』での怪獣デザインに関する連載コラムなどでも知られている――。
それにしても、
●ユリ子のビキニ姿での大サービスぶり
●実際にはタコ型の岩礁(がんしょう)怪獣アイランダを、巨大な多数のウミヘビ怪獣っぽく見せる演出
●科学警備隊の隊員たちのイキなはからい
●おもわず泣ける人間ドラマ
あまりにも充実した内容には感服した。
主人公・ヒカリ超一郎隊員の声を演じた故・富山敬が歌う挿入歌『明日に……』が流れるタイミングも絶妙であった。