假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

DVD付きビジュアルブック ウルトラマンレオ1974 ~往時の学年誌の『レオ』記事の数々!

『ウルトラマンレオ』(74年)総論 ~50年目の総括。その評価の変遷! 特異なる美点&欠点! 第2次怪獣ブームの終焉!
『ウルトラマンメビウス』(06年)#34「故郷のない男」 ~レオ客演!
拙ブログ・トップページ(最新5記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


『ウルトラマンレオ』 〜全記事見出し一覧
[ウルトラ] ~全記事見出し一覧


『DVD付きビジュアルブック ウルトラマンレオ1974』 ~往時の学年誌の『レオ』記事の数々!

(金田益実・編/ジェネオン エンタテインメント/2008年09月26日発売)
(文・久保達也)
(2008年12月執筆)


 「“あの時代のムード”を」満載した本格ビジュアルブックとして、ジェネオンエンタテインメントから刊行され続けた、ウルトラシリーズの「レア映像&音声」収録のDVD付写真集の第6弾、遂に『ウルトラマンレオ1974』がこのほど発売された。


 思ったほど「“あの時代のムード”」が再現されていないなぁとか、「どこでも見られる写真のオンパレード」だとか、とかくこのシリーズに対しては辛辣な評価を与えてきた筆者であるが、悔しいけど結局また買ってしまったのであった(笑)。


 まぁ、そもそも『ウルトラマンレオ』(74年)を単独で扱った書籍自体が珍しいから、買ってしまうのだが、果たして今回の中身は如何に?


 お〜っ、真夏竜が演じるおおとりゲンの単体スチールはこれまであまり見たことがないような……


 黒の空手着で気合を入れるポーズ!


 第4クール『恐怖の円盤生物シリーズ!』撮影時のものと思われる、紺のGジャン姿でレオのファイティングポーズのように構えた姿!(左手を開いて前方に突き出し、右手を拳にして構えたポーズ)


 紺のTシャツにジーンズ姿で、『レオ』の防衛チームMAC(マック)のナイフを右手にポーズを決めた姿など!


 余談であるが、前作『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)の主人公・東光太郎(ひがし・こうたろう。演・篠田三郎)が初期話数で見せていた普段着姿は、実はピンク色が多かった。それに比べて、おおとりゲンは黒や紺など、暗目の色調の衣服を着用していることが多かった。これはそのまま、作品のカラーを象徴しているかのようである。



 「“あの時代のムード”」を最も感じることができるのは、やはり70年代に円谷プロと独占契約を結んでいた二子玉川園で開催されていたイベントの様子を撮らえた一連であった!


 『レオ』放映直前の1974年3月9日から開催された『怪獣ランド二子玉川園 ウルトラ怪獣博 ウルトラマンレオVS.怪獣軍団』の宣伝用ポスターには、


●蝉(せみ)怪獣キングゼミラ
●しんきろう怪獣ロードラ
●百足(むかで)怪獣ムカデンダー
●さぼてん超獣 改造サボテンダー


 彼らが暴れ回るなかで、新ヒーロー・ウルトラマンレオが颯爽と登場した姿が描かれている。


 小学館の学習雑誌『小学一年生』と『小学二年生』は毎年3月1日に、『小学三年生』以上の学年誌は毎年3月3日に、新学年の4月号が発売される。そして、来たる来月4月からスタートする新番組の事前情報が掲載されていた。


 それらと併せて、こうしたイベントで一早く新ヒーローの姿をお目にかかることで、子供たちがいよいよ始まる新番組に対して、期待に胸を膨らませたであろうことは想像に難くない! 地方在住の筆者自身はこういったイベントの経験はなかったが、学習雑誌の新番組の事前紹介記事にはそうとう刺激されたものであった。それらのキャラクターが動いている姿を見た日にゃあ、そりゃあもう大騒ぎだっただろう!


 毎週日曜日や祝日に行われていたという盛大なるパレード!


 少女たちのブラスバンドを筆頭に、自転車に乗った子供たち、特殊車両マックロディー・マックカー・ウルトラマンレオと、MAC隊員・ウルトラの父・ウルトラの母・ウルトラの兄弟たち!


 さらに、『ミラーマン』(71年・円谷プロ、フジテレビ)に、『ジャンボーグA(エース)』(73年・円谷プロ、毎日放送)までも!


 子供たちが次々に握手を求めて、追いかけ回し、やはり大騒ぎだったようだ。


――ちなみに、『レオ』がスタートした74年4月には、『ミラーマン』のバトルシーンの短縮編集分と、アトラクション用の怪獣を使用した新規撮影分で構成された平日帯(おび)の5分番組『ミラーファイト』も、東京12チャンネル(現・テレビ東京)でスタートしていた――



 この際のパレードに参加しているMACの隊員は、青島隊員(演・柳沢優一)・黒田隊員(演・黒田宗)と、おそらく桃井(演・新玉恭子)と思われる女性であった――桃井隊員は別人のようにも見える…… 白川隊員(演・三田美枝子)ではなかったことだけは確かだ――。


 劇中、ゲンをいびりまくっていた青島隊員と握手をしている子供がいるのには笑える。たぶん放映前の時期のものかと思うのだが、そうでなければ隊員服姿であれば、とりあえず誰でもよかったのだろう(笑)。


 余談になってしまうが、ベレー帽にミニスカワンピースにブーツ姿という、MACの女性隊員の制服は正直、筆者もオトナの目線では「隊員服」というよりかは「イベントコンパニオンのコスチューム」にも見えてしまう。リアリズムで考えると機能性にはやや欠けているとも考える。しかし、だからこそ、「萌え」なのであり、『ウルトラマンフェスティバル』などのライブステージの司会をするお姉さんには、ぜひともMACの女性隊員のコスプレをお願いしたい!(笑)


(後日編註:なんと! CS放送・ファミリー劇場にて放映中の『ウルトラ情報局』(02年~)の2008年度の「ウルトラマンレオ」編での最終2編(2009年3月&4月号。おそらく2本で1本のまとめ録りだったのであろう・笑)のエンディングのアイキャッチの部分で、司会を務めている『ウルトラマンコスモス』(01年)のヒロイン隊員役で知られる鈴木繭菓ちゃんが、MACの女性隊員服姿に扮装していたのであった!・笑)



 森永製菓の協賛による「エンゼルステージ」で催されたという「怪獣決闘ショー」の壇上には、中央にウルトラマンレオとMACの隊員たちを配して、ウルトラの父と母・ウルトラ兄弟・ミラーマンとジャンボーグエースがズラリと勢揃いをさせていた!


 そして、当時は円谷音楽出版に在籍して、円谷プロ作品でも、


●『レッドマン』(72年・日本テレビ)
●『トリプルファイター』(72年・TBS)
●『ファイヤーマン』(73年・日本テレビ)
●『ジャンボーグA』
●『SFドラマ 猿の軍団』(74年・TBS)


といった作品の主題歌も歌唱していた子門真人(しもん・まさと)が、真夏竜に代わって『ウルトラマンレオ』の主題歌を披露した様子も写っていた!


 1976年に『およげ! たいやきくん』で大ヒットを飛ばして以降の、アフロヘアに眼鏡姿という、レゲエというかヒッピーのような印象とはかなり異なってもいる。実に若々しく健康的な姿であり、これもまた貴重な一枚ではある。


 なお、蛇足ではあるが、『レオ』第9話『宇宙にかける友情の橋』の「星獣ギロ」編においても、この『ウルトラ怪獣博』はロケに使用されており、当時の「二子玉川園」の様子を伺い知ることができる貴重な映像資料ともなっている。



 この『DVD付きビジュアルブック ウルトラマンレオ1974』のカラーページには、ウルトラマンレオ・MAC隊員のコスチューム・MACのメカニック類のデザイン画も掲載されている。実際のミニチュアのシルエットには充分に表現しきれなかったとはいえ、戦闘機マッキー2号・マッキー3号・潜水艇マックシャークの流麗なボディラインは未来感覚にも溢れており、実に美しいものがある。


 本放映の時代からはかなり先の「近未来が舞台」であったはずの初代『ウルトラマン』(66年)と『ウルトラセブン』(67年)に登場するメカニック群が、デザインとしては比較的にオーソドックスな出来であったのに対して、放映当時の「1970年代が舞台」とされていた『タロウ』の防衛チーム・ZATや、『レオ』の放映チーム・MACのメカニック群の方が、実は未来感覚に溢れていたというのは、逆説的でもあった。


 初代『ウルトラマン』の単独ムックであった『ファンタスティックコレクションNo.20 ウルトラマン 特撮ヒーローのすばらしき世界』(朝日ソノラマ・80年5月20日発行)の総論であったかに、「登場人物の名前がカタカナというだけで、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』には不思議な未来感がある」といった記述があった。そういった意見もうなずけはする。しかし、ZATやMACのメカニックデザイン・隊員服・基地の指令室の電飾満載の内装もまた、実に未来感にはあふれていたのだ!


 ちなみに、MACメカの名称は、企画書においては、


●マッキー1号がジャンボカンガルー
●マッキー2号がスペースゼブラ
●マッキー3号がスカイシャーク
●マックロディーはパンダジュニア
●マックヘリコプターはモスキーター


 上記のとおりであったそうだ――マックヘリコプターは、第27話『日本名作民話シリーズ! 強いぞ! 桃太郎! 桃太郎より』において、鬼怪獣オニオンの眼前に大きな桃をブラ下げるために登場したくらいであったが――。


 動物の英語名を、宇宙や空などを意味する英語で形容するかたちで統一した、独自のセンスの良さを感じさせる素敵なネーミングであると思う。もちろん、これらはZATメカの名称がスカイホエール・スーパースワロー・コンドル1号・ウルフ777(スリーセブン)・ラビットパンダ・ドラゴン・アイアンフィッシュといった、動物の名前をもじっていたことの踏襲ではあっただろう。



 圧巻なのが、74年5月1日発売の小学館『小学二年生』74年6月号掲載『だれも知らなかったウルトラマンレオ物語』のカラー再録であった! 獅子座L77星の王様がまだ幼いレオと弟のアストラを両腕に抱えた挿し絵は、個人的にも当時、ちょうど小学二年生であった筆者の記憶の片隅に残像がはっきりと残っている。この再録には「“あの時代のムード”」が一気に甦ったのであった!


 スポ根テレビアニメ『巨人の星』(68年・東京ムービー・よみうりテレビ)で、父親の星一徹(ほし・いってつ)が息子の主人公・星飛雄馬(ほし・ひゅうま)に課していた試練のごとく、レオとアストラの兄弟も、L77星の王でもある父によって切りたった崖から突き落とされたり、流れの早い川に投げこまれたりしている! こうした、ことわざ「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」そのまんまの修行で(笑)、レオとアストラは獅子は鍛えられて、立派な若者になったというのだ!


 そして、全宇宙の平和を守る人になるため、レオは武者修行として宇宙の旅に出た。しかし、その留守を狙ってサーベル暴君マグマ星人が率いる怪獣軍団がL77星を襲った!


 その怪獣軍団のメンツは、『レオ』の第1~2話にも登場した双子怪獣レッドギラス・ブラックギラス以外は、ミサイル超獣ベロクロン・古代超獣カメレキング・一角超獣バキシム・怪魚超獣ガランと、ナゼか『ウルトラマンA(エース)』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070430/p1)の超獣ばかりであった!


 その挿絵を担当したのは梶田達二画伯! これは梶田画伯が「超獣」が好きだったからではないだろう。おそらく編集部から提供された資料が「超獣」だけだったのだろう(笑)。しかし、もしかして、マグマ星人のL77星侵攻には、これらの超獣を産み出した異次元人ヤプールもが絡んでいたのやもしれない!? などと妄想しだしてしまうと、それもまた面白くなってくるのだ! しかし、それにしても、梶田達二先生の描いた「怪獣画」はいつ見ても素晴らしい!――


 レオは急いで宇宙の旅から引きかえして、怪獣軍団に立ち向かおうとする! しかし、その行く手をアストラが遮った!



アストラ「レオ、L77星は全滅だ。この場はひとまず逃げのびて、新しいL77星をつくるんだ!」
レオ「いやだ、僕は今戦う!」
アストラ「レオ、わかってくれ。死んでいったみんなが、君に望みをかけているんだ。ここで君が死んでしまっては、いったい誰がこの恨みを晴らすんだ。僕はこんなに傷をうけてしまって、もうだめだ。マグマ星人たちは君を捜している。僕が君の身代わりになって戦おう。そのすきに逃げるんだ!」


 手を握りあって、じっと互いを見つめ合っているレオとアストラ……


アストラ「レオ、僕はたとえ死んでも、君の心の中でずっと生き続ける。いつまでもいっしょだ。さようなら、レオ!」


 何十匹もの怪獣軍団に向かって飛び出していき、大声で叫ぶアストラ!!


アストラ「僕がウルトラマンレオだ!」



 レオの身代わりをも演じてみせるアストラの健気さ! これはこれで陳腐でアリがちな定番の展開だともいえるのだが、やはり泣けるのだ……


 映像本編ではここまで具体的に映像化されることはなかったものの…… しかし、小学館の学習雑誌では、ウルトラ兄弟のようにM78星雲ウルトラの星出身ではない、まったく新しいウルトラマンであったウルトラマンレオと彼の故郷である獅子座・L77星を、「謎と神秘に包まれた」存在であるとして、独自の記事構成で徹底的に煽り立てていた。そして、マグマ星人による侵略、L77星の最期(さいご)、レオの弟・アストラの秘密、それらを勝手に……といっても、円谷プロの監修は受けたうえで、完全オリジナルストーリーとして独占公開してしまうことで、レオの悲劇のバックボーンを雑誌媒体側でも子供たちに対して強調することには成功していたのであった!


 それらのウラ設定は、1970年代後半のケイブンシャの『ウルトラマン大百科』(78年・ISBN:476691564X)などでも紹介され続けた。約30年を経た「月刊マガジンZ」(99年~)連載のウルトラ一族の前日談を描いた漫画『ウルトラマンSTORY 0(ストーリー・ゼロ)』(05年)での「ウルトラマンレオ編」(ISBN:4063492931ISBN:4063493369ISBN:4063493822)のストーリーの原型にもなるほどの大きな影響を、現在に至るまでも与えているのだ。近年でいうならば、ネット配信された『ウルトラマンメビウス外伝 ヒカリサーガ』(06年)に相当するものを、低学年誌で当時100万部前後もの大部数を誇っていた学年誌で展開していたわけであり、当時においてもメディアミックス戦略は見事に展開されていたのであった!


――このアストラがテレビ本編に初登場したのは、74年9月の放映分のことであった。たとえ一部の学年誌においてであったとはいえ、74年4月の放映開始から間もない5月1日にはすでに初お披露目はされていたのだ(レオそっくりの姿だったとはいえ・笑)。しかし、それから4ヵ月も経過したあとで、ようやく初登場させたといったあたりは、子供の生理や時間間隔を考えると、遅きに失した感もなくはなかったものの(汗)――



 この『DVD付きビジュアルブック ウルトラマンレオ1974』のモノクロページにおいても、小学館の学習雑誌に掲載された「独占記事」はふんだんに縮小復刻されていた! 「“あの時代のムード”」を感じるには、これだけでも充分に事足りるのであった!


 『小学二年生』74年4月号掲載の『これがウルトラマンレオだ!』においては、ウルトラ6兄弟が「ウルトラマンレオの顔」・「ウルトラマンレオのからだ」・「ウルトラマンレオのうでと足」を自分たちのそれと比較して、「謎と神秘に包まれた」新ヒーローについて考察していた。それに対して、



「まだくわしくはわからないが、頭のとさかはすごい武器になりそうだ。あんなのでやられたら怪獣もいちころだぞ」


「ぼくは足が短かったのでキックがきかなかった。レオの足がうらやましいよ」(爆)



 といった、ウルトラマンエースのコメントがいちいち笑える(笑)。


 それにしても、レオは鋭角な頭部を切断技として用いることはなかった。しかし、たしかに空中から猛スピードで怪獣に突撃して頭部で切り裂く! などいった荒技は見たかったように思えてくる。



 『小学三年生』74年6月号『ウルトラ大企画 レオのなぞ大公開! ☆レオのなぞをぜんぶ教えちゃうぞ!!』については、視聴者の子供たちが『レオ』を観ているうちに感じた素朴な疑問について、すべて答えてくれるありがたい企画であった。その中で注目してしまったのが……



Q:なぜウルトラ族はレオのことを知らなかったのですか?
A:レオの星L77星は獅子座の大流星群にかこまれている。そのため、ほかの星からの電波がみんなはねかえってしまい、L77星のあることはだれも知らなかった。


Q:セブンのカプセル怪獣はどうなるの?
A:ウルトラアイがこわれていると、カプセル怪獣も使えない。カプセル怪獣はアイのエネルギーを使っているからだ。


Q:セブンのウルトラアイは直らないの?
A:今ウルトラの国では、ウルトラアイを新しく作ろうとしているが、しばらくは作るのはむりなようだ。



 ほとんど「講釈師、見てきたような、嘘を云い」の世界である(笑)。しかし、子供たちの真剣な疑問に対し、ここまでハッタリをきかせて強引に納得させてしまっていた、当時の小学館学年誌の編集部の担当編集者には本当に頭が下がる思いである。昨今の小学館の『てれびくん』や講談社の『テレビマガジン』なども、円谷プロ側の縛りが強いのかもしれないが、こういった良い意味での稚気(ちき)にあふれる、楽しくて、かつそれっぽくもあるウラ設定の数々などを披露してほしいものである。



 これらのQAを読んでいると、せっかくモロボシ・ダンがMAC隊長として出ているのだから、やっぱりいつの日か傷が治ってウルトラセブンに変身して戦ってほしい! と願った子供たちは、当時の筆者も含めて、当たりまえだが、ほとんど全員であったことも、あらためてよくわかる。


 良くも悪くもヒーロー性にあふれる娯楽イベント編よりも人間ドラマの方を重視してしまった作劇のせいか、『レオ』の本編ではセブン復活編は実現しなかったものだ。しかし、内山まもる先生が学年誌で連載していたコミカラズの『ウルトラマンレオ』(asin:409108575X)では、1分間だけウルトラの父からエネルギーを送ってもらって、ダン隊長がウルトラセブンに変身するというエピソードがあった!


 『小学二年生』74年8月号『ウルトラマンレオひみつ大作戦 ついに出た!! レオのセブン生きかえり作戦だ!!』なども、そうした反響を受けての企画だ。



「セブンの正義を愛する心と勇気がぼくはたまらなくすきだ。だが、今、セブンは変身できない! こんな残念なことってあるか。ぼくは、セブンとともに戦いたい。どうしたら、セブンは生きかえることができるのか。それをじっくり考えよう!!」



 といった、レオことおおとりゲンの独白。そして、「昭和42年10月1日 地球へ来た」に始まり、「宇宙警備隊でかつやく」「新ウルトラマン(註:帰ってきたウルトラマン)をたすけた」「エースにわざを教えた」「ヒッポリト星人にやられた」「マグマ星人、レッドギラス、ブラックギラスにまけた」に至るまでの戦歴を簡単に振り返った『ウルトラセブンひみつアルバム』なども当時、目にした記憶が鮮明にあって、なんとも感慨深かった(涙)。


 ここでもまた、『ウルトラアイかいぞう大作戦』と称して、レオが壊れたウルトラアイをウルトラの国に持っていき、修理するのに必要な鉱石・アイ原石をウルトラ兄弟が発掘して、ウルトラの父が修理するという、年長マニアになってからの目線では実にテキトーなものにも思えて半分笑ってしまうけど、子供目線ではワクワクとさせられてしまう案が披露されていた! 結局のところ、実現することはなかったとはいえ、子供たちの夢に応えての、こうしたハッタリすれすれの回答案で、かすかな希望に「形」を与えてくれていた小学館の編集部には、やはり敬服せずにはいられない!



 一方、小学館の幼年誌の『よいこ』では、特写を用いたオリジナルの「写真物語」が連載されていたようだ。


 その1974年9月号には、なんと「ニセウルトラマンレオ」が登場! 頭部前面のフチと目の周囲に黒いクマどりをした「ニセウルトラマンレオ」が子役の「じゅんちゃん」をいじめて暴れ回っている! そこに本物のウルトラマンレオが登場! レオはニセのレオを空手でやっつけて、「やっぱり、ほんもののれおがつよいや。『ありがとう。』 じゅんちゃんは、れおとあくしゅをしました」。めでたし、めでたし(笑)。



 逆にさすがに、高学年向けの『小学六年生』ともなると、もうオリジナルの稚気あふれる特集記事などは掲載されていない。『番組ガイド』として当月放映分のあらすじ紹介のみにとどまっていたようだ。しかし、サブタイトルの表記が、実際のものとは異なるものが存在していた!



第18話『吸血鬼! こうもり少女』 → 『東京をおそったこうもり』の表記
第19話『よみがえる半魚人』 → 『生き返った半魚人』の表記
第21話『北の果てに女神を見た!』 → 『宇宙船に乗った女神』の表記
第31話『地球を守る白い花 花咲か爺さんより』 → 『ねむり花を咲かせるおじいさん』の表記
第32話『さようならかぐや姫 竹取り物語より』 → 『弥生は月の王女さま』の表記
第33話『レオ兄弟対宇宙悪霊星人』 → 『まっ赤な怪奇いん石』の表記
第34話『ウルトラ兄弟永遠の誓い』 → 『帰ってきたウルトラマン登場』の表記


 もちろん、正規のサブタイトルの方は、第18〜21話は『見よ! ウルトラ怪奇シリーズ』、第31~32話には『日本名作民話シリーズ!』が、サブタイトルの前に表記されていたことは云うまでもないものの、念のために注釈(笑)。



 ふつうに考えれば、シナリオ段階でのタイトルだったのだろう。これはこれで貴重な情報なのだ!



●第22話『レオ兄弟対怪獣兄弟』放映は9月
●第26話『日本名作民話シリーズ! ウルトラマンキング対魔法使い 一寸法師より』放映は10月
●第33話『レオ兄弟対宇宙悪霊星人』、第34話『ウルトラ兄弟永遠の誓い』放映は11月
●第36話『飛べ! レオ兄弟 宇宙基地を救え!』や、第38話『決闘! レオ兄弟対ウルトラ兄弟』放映は12月
●第39話『レオ兄弟ウルトラ兄弟勝利の時』や、第40話『恐怖の円盤生物シリーズ! MAC全滅! 円盤は生物だった!』放映は翌年1月


 『レオ』は中盤以降は、月1回はイベント編を連打し続けることになった。当然ながら、小学館の学習雑誌もは毎月、これらの大特集を組むことができたわけである。特にアストラとウルトラマンキングの初登場はともに各月の第1週のことであった。月初めに発売された学年誌で視聴者が事前情報を得てから間もなく、新ヒーローの姿にお目にかかることになったのだ! しかし残念! 時すでに遅し! 『レオ』の低落していた視聴率を回復することはなかったのであった……


 逆に云うと、5〜8月の通称「特訓編」が、そのストイック(禁欲的)な作りゆえに、偏り・クセは非常に強くても、ドラマ的・テーマ的には非常な高みに達したことを認めるにやぶさかではないのだが、その「特訓編」においてこそ、1ヶ月に1回くらいは、ウルトラ兄弟の誰かが助けに来たり、ウルトラセブンが一時的に復活できたりといった、子供たちがおおいに喜ぶような、娯楽活劇イベント編を作るべきであったと思うのだ!



 そして、レオの弟・アストラのひみつも語られる!




 レオとアストラはふたごの兄弟。それなのに、顔やからだがちがっている。どうしたんだ。


 「にいさん、聞いてくれ。ぼくにはあれから、いろんなことがあったんだ……」


 アストラはマグマ星につかまっていたのだ。殺されずにくさりでつながれ、どれいのようにはたらかされていた。


 「くそっ、いつかきっと、にげだしてやる」


 そんなある日、なぞの男があらわれ、アストラをたすけ出した。アストラはひっしににげ出した。


 ぼろぼろになったアストラは、なぞの男に改造された。強さをばいにして、生きかえったのだ!


 せいぎのいかりにもえるアストラになぞの男はいった。


 「ちきゅうのレオをたすけに行け!」


 アストラをたすけたなぞの男とはいったいだれだ。


 そのひみつは小学二年生11月号で大はっぴょう!!


(『小学二年生』(小学館)74年10月号掲載『レオの弟 アストラのひみつ』)
 




★9月6日(金)のテレビで、レオとアストラは短い間話しあう。そのときの話はこれだ。


レオ「生きていたのか、アストラ……」
アストラ「レオにいさん……」
レオ「おまえのむねのアストラサインを見たときは、おどろいたよ。あのほのおの中で死んでしまったとばかり思っていたからな」
アストラ「ぼくも、やられたと思うと、その場にきぜつしちゃったんです。気がついたら、マグマ星のろうやの中で……」
レオ「そうか、すまない。おまえにばかり苦しい思いをさせて」
アストラ「なにをいうのです。にいさんが地球を守り、宇宙平和のために活躍してくれていると思うと、心強かったですよ」
レオ「どうして地球へ来たのだ」
アストラ「ぼくをたすけてくれた男が、にいさんのピンチを教えてくれたのです」
レオ「その男は、いったいだれなんだい」
アストラ「ぼくにもよくわからないんです。ただ、とても強くてやさしい人ですよ…… にいさん、ぼくはもう行かなくっちゃ」
レオ「どこへ行くのだ」
アストラ「ぼくは宇宙パトロールをしなければならないのです。なぞの男との約束です」
レオ「そうか、それではしかたがない。また会おう」
アストラ「さようなら」


(そういうと、アストラは去っていった)


 なぞの男はだれだ!?


★小四11月号では、アストラをたすけたなぞの男のひみつをさぐる! 楽しみに待とう!


(『小学四年生』(小学館)74年10月号『よかったな、また会えて』)
 



 う〜む、あのわずかの間にこんな長い会話をしていたのか(笑)。映像本編のアストラ初登場の第22話では、ウルトラマンキングの存在については劇中では一切語られてはいなかった。しかし、小学館の学習雑誌においては新ヒーロー・アストラの登場に絡めて、早くもキングの存在を「なぞの男」として先行発表! 読者の期待を徹底的に煽り立てていたのだ! そうなると、映像本編の第22話でも、学年誌でのこの煽り方にならって、ラストシーンのナレーションなどでも、



「死んだと思われていたアストラが生きていた! アストラを助けたのは誰か!? それはもうすぐ明らかになるのだ……」



 などといった煽り方をしておいた方がよかったのではあるまいか!?(汗)



 そして、74年11月号の各誌では、遂にウルトラマンキングがその全貌を現した!


 『小学二年生』74年11月号『ウルトラ大特集 ウルトラマンキングのすべて』では、恒例の『ウルトラマンキング かんぜん図かい』だ! それによると、この時点でのキングの年齢設定は後年の20万歳ではなかった! その倍の40万歳以上であったのだ!


 キングのアゴにたくわえた豊かなヒゲは、「40万さいいじょうにならないと、はえてこない」。そして、「からだがむらさき色なのは、40万さいいじょうだからだ」といった記述があったのだ!(笑)


 ウルトラマンキングが映像本編に初登場した『レオ』第26話の紹介でもある『ついにとう場! ウルトラマンキング』。そして、小学館のオリジナル設定による解説『ついにわかったキングの6大ひみつ』――「ゾフィーのおじいさんといううわさもある」との記述に注目! 個人的にはこのウラ設定も、公式設定にしてほしい!――などで構成されていた、徹底大特集でもあった!


(編:ウルトラマンキングの年齢設定は、少なくとも70年代後半以降においては20万歳に統一されていた。26万年前にウルトラの国の太陽が爆発して、人工太陽・プラズマスパークのディファレーター光線によって、ウルトラ一族が地球人とも変わらない姿から今の超人種族へと進化したという年代設定よりも、年長の存在になってしまって矛盾してしまうためだろうと思われる……。しかし、映画『新世紀ウルトラマン伝説2003』(03年)では、キングはいきなり30万歳の誕生日を迎えてしまっていた! ウ~ム。今から10万年後の出来事を描いた映画である! と解釈しておこうかな?・笑)



 アストラ、そしてウルトラマンキング、MAC基地、マッキー1号、『レオ』に登場したゲスト怪獣やゲスト星人たちのデザインを担当されたのは、2009年現在でも大活躍されている特撮美術の大御所・大澤哲三氏であった。


 ウルトラマンキングの王冠を彷彿とさせる頭部、アゴに見られるヒゲ状の装飾、勲章を思わせる腹部のバックル、長いマントでもあるウルトラマント。これはこれで、初代ウルトラマンとは異なった意味での神秘性も感じられるのだ。しかも、先の『ウルトラマンキング かんぜん図かい』では、ウルトラマントは「光の糸(!)であんである」と紹介されていた! カッコいい! 何気に広義でのSFだ!(ファンタジーかもしれないが・笑)



 ちなみに、ウルトラマンレオのデザインは、『ゴジラ』初作(54年)の時代にはじまり、平成ゴジラシリーズまで関わっており、我らが第2期ウルトラシリーズでも、本編美術&特撮美術を兼任してきた鈴木儀雄(すずき・よしお)氏が担当している。



 新年1975年を迎えて、第4クールの一発目である第40話を紹介した各誌では、当然のことながら、防衛チームの「MACぜんめつ!!」がかなりセンセーショナルに扱われている! しかし、全滅することによって、初めてMACは小学館の学習雑誌でまともに扱われることになったともいえる……(前作『タロウ』のZATは、学習雑誌でもまともに扱われてきたので……)。


 映像本編におけるMACの存在の希薄さは、作品を視聴すれば誰でも感じることだろう。しかし、おおとりゲンとモロボシ・ダンの師弟関係、そしてゲンとトオル、カオル・百子(ももこ)・猛(たけし)らスポーツセンターの人々との交流を主軸に描いたために、MACの隊員たちの個性が描写ができなかったワケではないのだろう。意図的な確信犯でMACの扱いが小さく描かれてきたのだろう。そうした試みを手放しでは絶賛はできないものの、学習雑誌での扱いを見てみても、そうした位置付けであったことが傍証されるというものだ。



 なお、放映終了間近となったこの時点においても、1月元旦ではなく12月の下旬に発売だったと記憶している『小学二年生』75年2月号『ウルトラひみつ特集 レオ! 大へんしん』や、『小学三年生』75年2月号『ウルトラ大企画 新レオ強化作戦』などにおいては、新たな敵・ブラック指令が操る円盤生物に対抗するために、晴れてウルトラ兄弟の一員だと認められたウルトラマンレオがウルトラの国で大特訓を重ねて、心臓に「ウルトラ回路」(!)を組みこまれて強化されて、「改造新レオ」(!)として生まれ変わったというオリジナル記事が掲載されていた。
 あくまでも鍛えた肉体を武器としている『レオ』に、「改造」という概念はまったく似つかわしくはないのだが(笑)、TBSの橋本洋二プロデューサーの意向で人間ドラマ性や社会派テーマ性を重視していた第2期ウルトラシリーズ作品には欠けていたこうしたファクターとは、このような良い意味での稚気あるギミックやアイテムを前面に押し立てていくるようなことだったのだろう。



 3月アタマに発売の4月号で新学年となる都合上、小学館の学習雑誌では第4クール『恐怖の円盤生物シリーズ!』を完全にフォローすることはできなかった。よって、75年2月3日に発売の『小学三年生』75年3月号にて、ひと足早く『レオ全記録 さようならウルトラマンレオ保存版 レオの1年間をふりかえる!!』と題したメモリアル記事が掲載されている。



*4月  セブンがやられた!!
*5月  ゲン、MACにはいる。
*6月  ゲン、とっくんをうける。
*7月  レオ、光線わざを使う。
*8月  怪奇怪獣、つぎつぎとあらわれる。
*9月  アストラ登場!!
*10月 ウルトラマンキング登場!!
*11月 セブンガーあらわれる。
*12月 レオ兄弟対ウルトラ兄弟。
*1月  MACの全めつ。
*2月  レオは、たたかった。
*3月  そして、今、また旅に出る……。



 1年間の戦いの名場面と怪獣図鑑の大特集で締めくくられた記事をもって、『ウルトラマンレオ』のみではなく、ウルトラマン関連の大々的な特集記事それ自体が小学館の学習雑誌からいったん鳴りを潜めることとなる(もちろん、小規模な特集記事は継続して掲載されていた……)。最後まで『レオ』をフォローできたのは、「月刊」ではなく「週刊」の同じく小学館の『週刊少年サンデー』に連載されていた『サンデーテレパックコーナー・ウルトラマンレオ』のコーナーの方であった。


 特に第50話『レオの命よ! キングの奇跡!』を紹介していた、『週刊少年サンデー』75年4月6日号(第14号)の『こぼれ話』に、『DVD付きビジュアルブック ウルトラマンレオ1974』を購入した諸氏は、思わず大注目してしまったことだろう!



「今回登場するブニョは、名まえのとおり、ブニョブニョしていて、くらげが変身したみたいなヤツだ。


 これは、お酒のおかずからヒントをえたんだよ。


 特撮監督の矢島さん(引用者注・矢島信男氏)と、デザイナーの大沢さん(引用者注・大沢哲三氏)が、つぎはどんな円盤生物にしようかと、お酒を飲みながら、話していた時に、出てきたおかずが、くらげだったんだって。


 うまくやったねえ。」



 偶然の産物が大成功をおさめた典型的な例であろう。名バイプレーヤー(脇役)・蟹江敬三(かにえ・けいぞう)が役者魂を炸裂させた、狂気に満ちた演技によって、見事に命を吹きこまれた円盤生物・星人ブニョは、CSのファミリー劇場で放送された『ウルトラマンレオのすべて』にゲスト出演した真夏竜氏も、最も印象深い怪獣として挙げるほどの大傑作となったのだ!



 最終回の手前に至っても、そのような力がみなぎった作品が『レオ』からは続出した。そのパワーの源は果たしてどこにあったのか? オイルショックによる製作費の高騰。『マジンガーZ』(72年・東映アニメーション、フジテレビ)や『ゲッターロボ』(74年・東映アニメーション、フジテレビ)に代表される、スーパーロボットアニメの台頭などによる人気の低迷。視聴率の低下。


 1974年は特撮ヒーロー作品に対し、逆風が吹き荒れた年だった。円谷プロもまさに土壇場に立たされた一年であったのだ。



「いま君たち小学生でウルトラマンを知らずに育った人はいないでしょう。あれほど人気のあったウルトラマン。しかし石油ショックがきました。怪獣がビルをこわしたり、ガソリンをどんどん使うことはむずかしくなったのです。それでなくても特撮は、真夏の海辺に雪を降らしたり、とてもお金がかかるのです。視聴率も下がりました。こういうテレビ局のいろいろの事情から、一応、打ち切ることにしたのです。


 小学館では、編集者たちの間でウルトラ専門のチーム、MAT(マット)を作っていました。隊長の上野明雄さんは、


 「ウルトラで育った子どもたちは、おとなになってお酒を飲めば、ウルトラマンの歌を歌うようになるかもしれません。みんなウルトラマンから教わった、理想主義を忘れないでしょう。ただ、ウルトラマンは、いつも立派で正しいので、見ている方が、少々くたびれてしまったのかもしれません」


 といっています。


 モロボシ・ダンの森次晃嗣さんは、


 「うちの子は、私に、ずっとウルトラマンをやってほしかったみたいです」


 と別れを惜しんでいます。


 怪獣の中にはいっていた河合徹さんは、


 「怪獣がたおされるのは運命だが、一回くらい勝ってみたかった」


 と残念そうです。


 円谷プロのプロデューサー・熊谷健(くまがい・けん)さんは、ウルトラマンに青春をかけてきたといわれる人ですが、


 「正義とはなんだ。しあわせとは、勇気とはなんだ、ということを、きっと子どもたちはわかってくれたでしょう。ウルトラの星も、もう見せてしまったので、新しく神秘性のある星をさがして、もう一度ウルトラマンに帰ってこさせるつもりです」


 といっています。


 ウルトラマン・レオからの、お別れのことばは、こうです。


 「自分のことは自分でして、人をたよらず生きる。海が見たければ、自分の足で歩いて行きなさい」 」


(『毎日小学生新聞』75年3月26日掲載『グッドバイ ウルトラマン』)
 



 同じ毎日新聞でも、



「みんなが、子どもに夢を、といった。だが外野の一人は「あれはやってる大人たちの積木遊び」といった。ほんとうは大人たちが集まって、みんなでおもしろがっていたのだ。そして積木がこわれたのだ」



 などと冷酷に結んでいた『毎日新聞』75年3月13日夕刊掲載の『さよならウルトラマン』の記事とは異なっている。もちろん、ターゲットが異なるからだろうが、『毎日小学生新聞』ではやむにやまれず、いったんウルトラシリーズを打ち切らねばならない外部事情を暖かく解説していたのだった。私事で恐縮だが、これまた当時、購読していたので感慨深いのだ。


――『毎日新聞』75年3月13日夕刊掲載の『さよならウルトラマン』については、『ファンタスティックコレクションNo.10 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマンPARTⅡ』(朝日ソノラマ・78年12月1日発行)で、第2期ウルトラシリーズの作り手や作劇に対する批判への補強として、「ある意味では正しい」として引用してもいた(汗)。しかし、この理屈で云ったら、第1期ウルトラや平成ウルトラや平成ガメラも、どころか、あらゆる子供向け番組やファンタジー作品なども大人が作っている以上は、すべてが「大人の積み木遊び」に過ぎないだろうに!(笑)――



「『ウルトラマンレオ』の戦いは、星人や怪獣だけではなかった。70年代ウルトラマン四部作の最終ランナーが挑んだのは1974年という時代。そして新シリーズへの飽くなき挑戦だった」


(『ウルトラマンレオ1974』・金田益実「あとがき」)
 



 時代の波に翻弄され、悪戦苦闘を続けた『ウルトラマンレオ』。


●五島勉(ごとう・べん)『ノストラダムスの大予言』発売(73年11月25日。発売5ヶ月で131万部突破)
●韓国の朴大統領狙撃事件(文世光事件〜北朝鮮シンパの在日韓国人による大統領暗殺未遂・8月15日)
●三菱重工爆破事件(8月30日〜翌年5月までに左翼過激派による合計9件の連続企業爆破事件に発展)
●原子力船むつの放射能漏れ事故(9月1日)
●日本赤軍(左翼過激派の一派)がオランダのフランス大使館を占拠(ハーグ事件・9月13日)


 世間を震憾させる事件が続発し、


●巨人軍・長嶋茂雄(10月14日)
●同じく巨人軍の川上哲治監督(11月21日)
●田中角栄首相(11月26日)


 往年のヒーローたちもまた、ウルトラマンと同様に次々に辞意を表明した。74年とは、まさにそんな時代だったのである。



 そして2008年、「世界大恐慌」とでも呼ぶべき金融危機の嵐の中、企業はまたしても人員削減に踏みきり、自動車メーカーを中心に期間従業員を大量解雇、その魔の手は正社員にまで伸びようとしている。来る2009年を果たして無事に迎えることができるのか、悲観する者の中には、まだ記憶に新しい秋葉原通り魔事件のようなことをやらかす者も出てくるかもしれない。思えば08年は、『レオ』の第1クール目に登場する、星人たちが引き起こしたような凄惨な通り魔事件が続発した年でもあった。


 CSファミリー劇場で2008年5月から放映されているのは実にタイムリーである。これを機に、多くの特撮マニア諸氏が「“生きる厳しさと哀しさを鮮烈に謳(うた)う”」『ウルトラマンレオ』を鑑賞することで、逆説的だが、自身のことを奮い立たせて生きていってほしいと思っていたりもする。


 私事で恐縮だが先日、仕事で顧客のお宅に電話をしたら、『ウルトラマンレオ』の主題歌が大音量で流れていた! そして、そこの子供が大声で『レオ』の主題歌を歌っていたのだ!――そのために、母親の声がまるで聞こえず、仕事にならずに困ってしまったが(笑)―― その子もまた将来に挫けることがあれば、『レオ』を再鑑賞して、自身を奮い立たせてほしいと思ったりもするのだ……


2008.12.5.




<付記>


 モノクロページのもうひとつの名物である、放映当時のカレンダーであるが、今回も新たな発見が続出。ついでに筆者の頼りない記憶も補足しながら、特に注目すべきものを列挙しておく。


*1974年4月12日、TBSが平日の18時から再放送していた『ウルトラセブン』が終了、そして19時から『ウルトラマンレオ』の放送がスタートしているのだ!(編:編集者は当時、幼稚園児であったが、夕方6時に『セブン』最終回、7時から『レオ』#1放映開始という、この奇遇がキョーレツに印象に残っている)


*日本テレビが73年10月4日から木曜19時30分に放送していた『木曜スペシャル』では、74年3月7日に超能力者ユリ・ゲラーが生出演したのを皮切りに、4月4日『特集!! 驚異の超能力ユリ・ゲラー』、4月25日『クレスキンの超能力の世界』、8月1日『怪奇大行進! 恐怖の90分! フランケンシュタインからノストラダムスまで』、10月10日『現代の怪奇・追跡第3弾・宇宙人は地球に来ている!!』、12月5日『世界の予言者・戦慄の大予言!!』、75年2月13日『現代の怪奇・空飛ぶ円盤をキャッチ! 雪男が見つかった! 四次元世界の謎を探る!!』などが立て続けに放送されていた。


 つのだじろうの漫画「週刊少年チャンピオン」連載『恐怖新聞』、「週刊少年マガジン」連載『うしろの百太郎』(共に73年)の大ヒット。洋画『エクソシスト』(7月13日)、東宝『ノストラダムスの大予言』(8月3日)、洋画『ヘルハウス』(9月7日)、洋画『悪魔のいけにえ』(75年2月1日)などの公開と併せて、やはり当時のオカルト・ホラーブームは相当なものであったらしい。


*NETテレビ(現・テレビ朝日)で当時平日7時20分から放送されていた子供向けバラエティ『ブンブンバンバン』――今でいうテレビ東京の『おはスタ』のような番組。マスコットキャラとして蜂の「ブンブン」と熊の「バンバン」の着ぐるみが登場していた――で、7月22日から26日放送分に『イナズマンF(フラッシュ)』(74年・東映、NET)の主人公・渡五郎(わたり・ごろう)とイナズマン、悪の組織デスパー軍団がゲスト出演していた。たしか渡五郎はサナギマンの過程をはしょって、「超力招来(チョーリキショーライ)!」といきなりイナズマンに変身していたような記憶がある。


 なお、9月16日から19日までは、『仮面ライダー』(71年)から『仮面ライダーX』に登場した1号・2号・V3・ライダーマン・Xの5人の仮面ライダーに、『仮面ライダーV3』のデストロン大幹部・ヨロイ元師や怪人たちが総出演していた。この際は三重県鈴鹿(すずか)市の鈴鹿サーキットに隣接した遊園地からの中継を交え、神啓介は当時、存在した「でんでんむし」なるモノレールの高架上という、危険な場所で『仮面ライダーX』のシリーズ後期の変身ポーズであった「大変身!」を披露していたように思う。ちなみに、この番組には、『人造人間キカイダー』(72年)で名探偵・服部半平を演じていた植田峻(うえだ・しゅん)も「おにいさん」(?)として出演していた。


*『8時だヨ! 全員集合』(69〜85年・TBS)にウルトラ怪獣がゲスト出演したことがあったという、おぼろげな記憶があったのだが、どうやらそれは74年8月10日のことであったらしい。この際は、宇宙怪獣エレキング・暗闇宇宙人カーリー星人(多分巨大化の方)、そして『ジャンボーグA』第26話『―グロース第2号作戦― 謎! ノンビリゴンの正体』に登場したノンビリ怪獣ノンビリゴンだったようである。前半のコント部分に登場していたのであるが、この際の怪獣たちはなぜかランニングシャツにランニングパンツを着用、舞台の袖から袖を走るだけという、ほんの十数秒の出演だったように記憶している。どういうシチュエーションで登場していたかは、とんと覚えがないのであるが。


*『レオ』第31話に登場した花咲か爺さん役は、当初は岸田森(きしだ・しん)が予定されていたとか!――もちろん、『帰ってきたウルトラマン』(71年)の坂田健(さかた・けん)、『怪奇大作戦』(72年)の牧史郎、『ウルトラマンA』のナレーターなども担当してきた、名俳優である―― 74年7月20日公開の東宝『血を吸う薔薇』での、正体が吸血鬼である学園長役で見せてくれた狂気に満ちた演技を、『レオ』においてもぜひとも披露してもらいたかった!――ちなみに、学園長の夫人を演じたのは、『帰ってきたウルトラマン』でMATチームの紅一点・丘隊員役だった桂木美加――


 『レオ』第31話で実際に花咲か爺さんを演じたのは、同年10月6日からTBSで日曜20時枠で放映が開始されたテレビドラマ版『日本沈没』においては、主人公・小野寺俊夫(演・村野武範)の上司である、海洋開発センターの運行部長・吉村秀夫役だった故・仲谷昇(なかや・のぼる)。小野寺の恋人である阿部玲子(演・由美かおる)に対して、執拗にストーカー行為を働く姿は、正直に云って昆虫星人バーミン星人なんかよりもよっぽどコワい(笑)。


 なお、『レオ』第31話が放映されたのは74年11月8日(金)のことであったが、その5日前である11月3日(日・祝)に放映された『日本沈没』第5話『いま、島が沈む』には、『レオ』でレギュラーの梅田トオル少年を演じていた新井つねひろが、太一という少年役でゲスト出演していた。


 ちなみに、『日本沈没』で唯一リアルタイムで筆者が視聴したのはこの第5話のみであった。当時はまだ小学二年生であったために、夜は20時になると寝かされていたのだが(いまどきこんな子はいないのだろう)、当日は「誕生日」であったため、特別に遅くまで起きていることを許されて、真剣に視聴した記憶がある。太一が絵を取りに校舎に戻ってしまったために津波に飲まれて絶命し、代わりに浮き上がってきた太一の描いた絵を見て哀しむ小野寺に対して、


「小野寺君、この絵が一枚であるうちは、まだいい。今にこうした絵が何百万枚、何千万枚と浮き上がることになる!」


 などと田所博士(演・小林桂樹(こばやし・けいじゅ))が語ったセリフは、今も痛切に耳にこびりついている。筆者が『日本沈没』の大半を視聴することができたのは翌75年の夏休みで、TBS系の中部日本放送が平日14時に行った再放送であった。


(関連記事:『日本沈没』06年映画版評 〜果てし無き、日本沈没の果てに…・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060716/p1・73年映画版にも言及)


*そして、第32話に登場する中島弥生(なかじま・やよい)=かぐや姫は当初は秋吉久美子が予定されていたとか! 実際に演じたのは、『仮面ライダーV3』で珠純子(たま・じゅんこ)役でレギュラー出演していた小野ひずるであった。もしも秋吉が演じていたら、80年代にはよく放送されていた「あの人の意外な過去」的番組において、さんざんにネタにされたに違いない。


*付属していたDVD『ウルトラマンレオ TIME−SLIP FILE ―映像&音声コレクション―』に収録されたコメンタリーには、いつもの満田かずほ・五藤圭子のほか、真夏竜と森次晃嗣(もりつぐ・こうじ)も招かれていた。しかし、そのトークの内容の大半が、CSファミリー劇場『ウルトラ情報局』と重複している。別項でそれについて述べているので(編:近日中にUP予定)、今回は割愛させていただいた。


 ただ、ひとつ気になったのが、恒例で収録されていた、放映当時にサングラフから発売されていた8ミリフィルムで、今回は『悪魔マグマ星人出現!!』を収録していたが、トーキーではなくサイレント(無音)だったことであった。音声テープの方は紛失してしまったのだろうか? それとも、オイルショックの影響で、もとから音声はなかったとか?


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2009年号』(08年12月28日発行)『ウルトラマンレオ1974』評より抜粋)


[関連記事]

『ウルトラマンレオ』(74年)総論 ~50年目の総括。その評価の変遷! 特異なる美点&欠点! 第2次怪獣ブームの終焉!

katoku99.hatenablog.com

『発表! 全ウルトラマン大投票』 ~レオが上位にランクイン! その投票内訳も平成ウルトラ3部作直撃の30代も含めて下の世代が過半を占めていた!

katoku99.hatenablog.com



[関連記事] ~CSファミリー劇場『ウルトラマンレオ』放映終了間近に連動して、「レオ」記事集中UP!

ファミリー劇場「ウルトラマンレオのすべて」 〜真夏竜!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090413/p1

ファミリー劇場「ウルトラ情報局」ウルトラマンレオ編1

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090419/p1

ファミリー劇場「真夏座VOICECUL(ボイスカル)第一幕」

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090426/p1



[関連記事]

DVD付きフォトブック ウルトラマンA 1972

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070210/p1

DVD付きビジュアルブック ウルトラマンタロウ 1973

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080504/p1



[関連記事] 〜「ウルトラマンレオ」言及記事

コンビニ漫画『ウルトラマンレオ 完全復刻版』 ~内山漫画のレオ最終章は3部作! マグマ星人・ババルウ星人・ブラック指令も活かした名作!

katoku99.hatenablog.com 

『ウルトラマンエース』#24「見よ! 真夜中の大変身」

〜『ウルトラマンレオ』#36「怪奇! 悪魔のすむ鏡」に言及

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061015/p1 

『ウルトラマンエース』#22「復讐鬼ヤプール」

〜『ウルトラマンレオ』#37「飛べ! レオ兄弟 宇宙基地を救え!」に少し言及

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061010/p1

『ウルトラマンメビウス』#15「不死鳥の砦(とりで)」

〜『ウルトラマンレオ』における防衛組織MAC(マック)の死者出まくり描写のある意味のリアルさ

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060924/p1

『ウルトラマンダイナ』総論 〜『ダイナ』と『レオ』の熱血の差異

「精神主義」ではない「熱血ドラマ」、という特異な橋本イズム

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971215/p1



[関連記事] ~レオ客演編!

『ウルトラマンメビウス』(06年)#34「故郷(ふるさと)のない男」 ~レオ客演!

katoku99.hatenablog.com

『ウルトラマンメビウス』最終回 最終三部作 #48「皇帝の降臨」・#49「絶望の暗雲」・#50「心からの言葉」 〜ありがとう!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070505/p1

『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟2』 ~東光太郎! 幻の流産企画!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20130317/p1

『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年) ~岡部副社長電撃辞任賛否!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101224/p1

『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』(10年) ~映画の前菜ビデオ作品なのに大傑作が爆誕!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111201/p1

『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10年) ~大傑作!(なのに不入りで暗澹たる想い・汗)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111204/p1

『ウルトラマンサーガ』(12年) ~DAIGO・つるの剛士・杉浦太陽・AKB48・昭和OB投入の是非!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140113/p1

『ウルトラマンジード』(17年)最終回「GEED(ジード)の証」 ~クライシスインパクト・幼年期放射・カレラン分子・分解酵素・時空修復方法はこう描けば!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180213/p1



ウルトラマンレオ 1974 [DVD]



 2009年5月からCSファミリー劇場『ザ・ウルトラマン』放映開始と連動して、「ザ☆ウルトラマン全話評」も毎週連載UP予定!(ファミ劇で「ザ★ウルトラマンのすべて」(ゲスト・伊武雅刀!……とHP等で告知されてましたが、実際には声優・柴田秀勝氏でしたがイイ内容でした……)が、5/3(日)10:30、深夜5:30、5/5(火)20:00で放映終了!)
[ウルトラ] 〜全記事見出し一覧
『ウルトラマンレオ』 〜全記事見出し一覧
拙ブログ・トップページ(最新5記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧