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アベンジャーズ/エンドゲーム ~タイムパラドックス&分岐並行宇宙解析!
(2019年4月26日(金)・日本封切)
(文・T.SATO)
(2019年6月16日脱稿)
それぞれが主演の映画シリーズを持つマーベル社のアメコミ・ヒーローたち、アイアンマン(2008年・初出は1963年)・超人ハルク(2008年・初出は1962年)・北欧神話の雷神ソー(2011年・初出は1962年)・キャプテンアメリカ(2011年・初出は日米開戦の年である1941年!)。
還暦前後の歴史を持つアメリカの古典ヒーローたちが、その誕生の時を21世紀に変えて同一世界を舞台に活躍――キャプテンアメリカのみ第2次大戦中に活躍して、不慮の事故で氷結後に現代で復活――。ひとりでは敵わぬ巨悪に対しては一致団結、『アベンジャーズ』(2012年・初出は1963年)なるヒーローチームを結成してコレに立ち向かう!
次第にガーディアンズオブギャクシー・アントマン・ブラックパンサー・スパイダーマン・ドクターストレンジ・女傑キャプテンマーベルと、いずれも原典の初出が1960年代であるアメコミヒーローたちも参戦。約20作品もの関連映画が作られて、『アベンジャーズ』映画としても通算3~4作目となる『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年・一応の初出は1991年)&『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)では、2年連続で公開される前後編2部作としても製作された。
そしてその前編では、背丈が3メートルはあろうかというヒューマノイド型のムキムキマッチョでいかにも強そうな悪の超人・サノス(初出は1973年)が宇宙各地の惑星を強襲! 宇宙誕生前からある(!)6つの特異点が変化した、各々が「空間」「時間」「力」「現実」「心」「魂」の属性を持つ宝石インフィニティ・ストーンをめぐって争奪戦を繰り広げる。
なぜならそれらをすべて揃えると、何でも願いを叶えてくれる本邦日本の『ドラゴンボール』や江戸時代の読本『南総里見八犬伝』の8霊玉みたいなモノだからだ(笑)。ブラックパンサーの故郷、アフリカはワカンダ国の大平原でのアベンジャーズ・ワカンダ国軍・北欧天上世界のアスカルド軍などの混成軍vsサノスの大軍団との関ヶ原の合戦の末に、悪の超人・サノスはついに6つの宝石をフルゲット。専用の手っ甲にハメて指をパチンと鳴らすや、大宇宙全体の生命の半数、スーパーヒーローたちの半数も薄い黒煙となって消失したところで、「次回につづく」となった。
そう、サノスの願望は、大宇宙の自然環境の保全! 増えすぎた人類や生物を半数に減らすという、それなりに公益性・正当性があるモノでもあったのだ――オッサン世代としては、往年の8号ライダーこと『仮面ライダー(新)』(79年・通称スカイライダー)の敵組織・ネオショッカーの目的を思い出す――
逆転勝利のカギは、量子力学による時間逆行で6つの宝玉を再ゲットすること!
はてさて、ヒーローもの・娯楽活劇作品である以上は、後編たる『アベンジャーズ/エンドゲーム』ではアリガチでもお約束の逆転勝利劇が待っていなければ詐欺である。文芸映画でもないのにバッドエンドはアリエナイ。すでに各ヒーローたちの単独主演の続編映画の製作も発表されているのに(笑)、スーパーヒーローたちが消滅したままで終わるワケもない。最後には全員が復活を遂げて、正義の軍団vs悪の軍団のリベンジ総力戦があって、勝利を納める結末を迎えるのは判りきっている。
だとしても、その過程を単なる段取り劇ではなくプチ・サプライズも交えつつ、煩雑・タイクツにならない範疇での適度に観客の関心も惹起する、ストーリーに技巧的な面白さもあるのか否か、しかもそれに一応の説得力があるのか否かがエンタメ活劇のキモでもある。
そのための方策。それは「時間」を逆行して、逆転勝利の勝機をつかむことだ! ……という展開になると予想したマニア諸氏も多かったことであろう。
なぜなら、インフィニティ・ストーンのひとつ、タイム・ストーンを使って、悪の超人・サノスは前編でのラストバトル中に、一度は破壊されたマインド・ストーンを局所的に時間を巻き戻して、破壊される前に戻って奪い取ってもいたからだ――日本の戦隊ヒーローでも時間を逆行させる能力を持っているチート戦士が時々登場するのを思い出す(笑)――。
あるいは、アベンジャーズの一員でもあり、アリん子サイズにミクロ化できてアリん子の群れを従えることもできる(汗)スーパーヒーローを描いた映画『アントマン』(2015年・初出は1962年)&その続編『アントマン&ワスプ』(2018年)においても、ミクロ化が行き過ぎて超々極微で物質や空間の最小単位でもある「量子」レベルにまで達すると、存在が確率論的となって複数に分裂して偏在したかのようになる――続編における敵怪人の存在形式もこの原理――。
量子力学にも則って、「空間」の定義も曖昧となり「時間」や4次元以上の「高次元世界」に「並行宇宙」との境目の皮膜とも隣接、時に混じって相互乗り入れしているやもしれない不可思議な超ミクロ世界へと突入。
加えて、人間の精神・意識も単なる脳内電気信号には還元できない、量子レベルの波動でも駆動されているのやもしれない!? という、ややトンデモな最新科学仮説「量子脳理論」も援用・拡大解釈して、「夢のお告げ」までもがSF的に正当化されるストーリーが構築されてもいたからだ。
――いやまぁ我らが日本でも、「高次元世界」から3次元並行・分岐宇宙の過去未来の時観線を見下ろしたアニメ映画『宇宙戦艦ヤマト2202(ニーニーゼロニー)』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181208/p1)や、「高次元存在」(=彼岸の彼方に去った完全なるニュータイプ)が局所的な時間逆行としか思えない部品破損を惹起する『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181209/p1)。秘めたる恋情が思春期症候群なる超常現象のトリガーとなって、一見冷めてるメガネの理系女(リケジョ)が「確率論的な分裂」を果たす深夜アニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(18年)の中盤回や、カンブリア大爆発期の絶滅生物が観測者による「多世界解釈」によって現代でオルタナティブな巨大怪獣として実体化する『ウルトラマンガイア』(98年)#8など、すでに同様の知見に基づいた作劇が試みられてきたことは付言しておきたいけど。
「量子」と「並行宇宙」ネタならば、粒子加速器の影響であまたの「並行宇宙」のスパイダーマンが集合するアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年・一応の初出は2014年)も記憶に新しいところだ――
はてさてフタを開けてみれば、後編『エンドゲーム』では西暦2012年や2013年に2014年などの複数の時代にタイムトラベルすることで勝機をつかんでいくストーリーでもあった。
すなわち、宇宙の彼方の田園惑星で枯れた農夫として隠居していた悪の超人・サノスは、すでにインフィニティ・ストーンに願ってインフィニティ・ストーンそれ自体を消滅させていたことが判明!
――日本特撮のマニア的には、並行宇宙を材としていた映画『ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』(99年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19981206/p1)にて、ゲスト子役が最後の最後に「何でも願いを叶える石」それ自体を自身の願いで消失させたオチなどもつい想起――
コレで6個のインフィニティ・ストーンを奪取して、「喪われた全宇宙の半数の生命」を復活させる願いを叶える目論見も絶たれたかに見えたのだが、「インフィニティ・ウォー」の際にはノンキに量子レベルの超ミクロ化実験を行なっていたアントマンがその5年後(爆)、自身の体感時間で5時間ぶり(笑)に現実世界へと帰還する。そこで彼が語る「量子の世界」とは「時間の世界」にも通じているという真実でもあった……。
時間GPSによる時間泥棒作戦! 過去への介入で分岐並行宇宙が誕生!
やや傷心でこの5年で家庭も持って娘もできたので、リベンジには乗り気ではない大企業の天才社長・アイアンマンの躊躇は本稿では端折るけど(汗)、マッド科学者コンビでもある超人ハルクおじさん&アイアンマンおじさんのがんばりで、「メビウスの輪」の原理も援用して、ついには「時間GPS」(なんつー通俗的なネーミング・笑)なる超アイテムの製造にも成功!
――「メビウスの輪」といえば、その原理で空間自体を湾曲させるハイテク装置を造って、3次元空間のウラ側にある異次元空間へと移行して、宿敵との最終決戦に挑んだ『ウルトラマンエース』(72年)#23「逆転! ゾフィ只今参上」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061012/p1)などもロートルは思い出す――
そこで、黒鉄色のアイアンマン2号ことウォーマシンの黒人おじさんが、映画『ターミネーター』(84年)・『スタートレック』(66年~)・『ある日どこかで』(80年)・『ビルとテッドの大冒険』(89年)などを例に挙げて(笑)、過去に戻ってまだ赤ん坊のサノスを殺害することで大破局を事前に回避する案を提示するけど、倫理的にも却下されてしまう(当然だ!)――本映画『アベンジャーズ』とは世界観を共有しないけど、同じくマーベル社のアメコミ洋画『X-MEN』シリーズの一編『デッドプール2』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180625/p1)では、そのネタを採用してたばかりなのに(汗)――。
ついでに云うなら、「インフィニティ・ウォー」の直前の時間に戻って、ここ5年の歴史や各自の人生をなかったことにして歴史をヤリ直すという方策もまた、広い意味での宇宙の全生命の5年間分の人生に対するジェノサイド(虐殺)やもしれない? という疑問符が付くほどに、全員とはいわずともマニア観客の大勢もスレている。
――『仮面ライダービルド』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181030/p1)の終盤では、時間跳躍ではなく並行世界の地球同士をブツけることで、ここ10年ほどの歴史を改変する大ワザに出ていたけど、一部のスレたマニアたちからコレはジェノサイドだとの批判もこうむった。たしかに指摘の通りなのだが、個人的には衝突相手の並行世界の地球の歴史はそのまま変わらず、衝突はあくまで触媒にすぎなくて、『ビルド』世界の地球の歴史のみが改変されたのだと解釈したいところだ――。
その疑問符に対する返歌か、アントマンが「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85年)のタイムパラドックス観は間違っていたのか」と早くも35年も前の映画となってしまった今や殿堂の古典タイトルを挙げて嘆息もする(笑)。そう、本作では時間を遡行して過去を改変したとしても、そこを起点に分岐した並行世界が誕生して、そちらが別の歴史をたどるだけであり、自身が元いた世界の歴史が変わるワケではないという時間跳躍原理が採用されるのだ!
ココが本作のスゴいところだとの感想も聞いたけど……。いやいやいやいや。「親殺しのパラドックス」を回避するための、今やジャンル作品ではむしろ主流のタイムトラベル観でしょう。
今では振り返られることも少ないけど、80年代に一世を風靡した『幻魔大戦』シリーズ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160521/p1)などでも、漫画版や小説版に『新幻魔大戦』や『真幻魔大戦』の関係性を、時間跳躍者や高次元存在でもある神のごとき宇宙意識の介入による歴史の分岐の結果だとしていたネタは、日本SFでも70年代末期にはすでにある。
幾つものルートを遊び倒すことから生じる趣向、いわゆる『ゲーム的リアリズムの誕生~動物化するポストモダン2』(07年・ISBN:4061498835)もズッと飛ばして時代が降ったところでも、アメコミ洋画マニアの大勢が歯牙にもかけないどころか下賤なモノとして見くだしてもいるであろう(笑)、本作公開時にも絶賛放映中の日本の子供向けヒーロー番組『仮面ライダージオウ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190527/p1)や、本作封切直前に完結した女児向けアニメ『HUG(はぐ)っと! プリキュア』(共に18年)でさえもが、未来からの現代への善意や悪意による歴史介入の結果として、2つの未来線が誕生してしまうというネタはすでにやってみせている。
どころか、2つの未来から異なる人生をたどったパラレル存在同士が来訪して現代を舞台に対決したり、分岐した未来で誕生した美少女アンドロイド(プリキュアの途中追加戦士)が、並行世界での自身の心&記憶を一部継承したかのような描写で――おそらく彼女のAIは量子コンピューター――、クールなSF性&ハートウォームなドラマ性を両立させる描写までをも達成していたりもする。
よって、過去は改変できないので、現代を起点に大改変を試みるという方針で決定! それは、過去の時点ではまだ消滅はしていないインフィニティ・ストーンを現代へと取り寄せて、「喪われた全宇宙の半数の生命」の5年後のイマ・ココでの復活を祈りながら指パッチンをすることだ! そして、願望が達成され次第、即座にインフィニティ・ストーンを元の時代の元の場所へと返すことで歴史改変は起こさない! 名付けて「時間(タイム)泥棒」作戦!(笑)
――「時間泥棒」とはもちろん、『ネバーエンディング・ストーリー』(79年・84年に映画化)原作者としても有名なミヒャエル・エンデの著作で、むかしは日本の小学校の学級文庫にも必ずあった、女児が主役の懐かしの児童文学『モモ』(73年・86年に映画化)からの引用――。
西暦2012年・2013年・2014年への介入。分岐宇宙化は回避可能?
で、アベンジャーズ基地内の巨大円卓上で、昭和の7人ライダーやスーパー戦隊、あるいは本作の数ヶ月前に封切りされたばかりで同じく歴史改変をネタにしていた『映画 刀剣乱舞』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190323/p1)の刀剣男子たちのように、お揃いの白い制服甲冑に身を包んで様式美的な円陣(笑)まで組んだ多数のアメコミ・ヒーローたちが、映画『プリキュア オールスターズ』(09年~)での歴代プリキュア・シャッフルのように(笑)2~3人ずつで一組となって、過去の時代へレッツらGo!!
彼らが向かう先の舞台は、作戦遂行可能性のリアリズムよりもファンサービス的な華々しさを重視する。すなわち、
・2012年の映画『アベンジャーズ』における大激戦の真っ只中!
・2013年の雷神ソー映画の第2弾『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』における北欧天上世界アスガルド!
・2014年の映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』冒頭の遠宇宙の惑星!
もちろんエンタメ活劇である以上は、物事がスンナリとうまく行き過ぎてもツマラない。過剰に重たくならない範疇での少々の困難も伴なうから、それとの落差で成功のカタルシスも増すというのが人間心理でもあり、コレを利用するのが物語一般の作劇原理でもある。
2012年のニューヨークにある中国に忖度(爆)したチベット改めネパールの出張所(笑)で、のちにドクターストレンジの女師匠ともなる美人魔術師に、早くもインフィニティ・ストーンのひとつ、タイム・ストーンの一時拝借は阻まれる。
ココで観客に対するダメ押しの念押しか、超人ハルクの懇願に対して、4年後にドクターストレンジが誕生する未来までをもすでに見通せている(!)女魔術師は、彼の誕生のためにもストーンは渡せないと主張して、彼女の手許からニューヨークの大空へと向かって伸びる「赤い飛行機雲」とその途中から分岐する「赤い飛行機雲」にて図示するかたちで、歴史改変で分岐宇宙が誕生してしまう原理が再度語られる。
ただ、ココでの女魔術師は、時間介入で即座に分岐宇宙が誕生するのでもなく、タイム・ストーンをこの時間線の外に持ち出すような大事で初めて、分岐宇宙が誕生するようにも発言している!? それは逆に云うなら、些細な歴史改変に留まるのであれば分岐宇宙は誕生しないので、歴史改変は可能である、歴史は上書きされてしまうということなのであろうか? ならば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も正しかった!?(笑)
そして5年後の現在こと2023年と西暦2012年の間をアベンジャーズの複数名が往還する歴史ループが固定されることで、それは各人の主体的な自由意志の発露のようでも高次の視点で見れば運命・必然でもあったということにもなるのか!?――「歴史分岐する時間跳躍」/「歴史分岐しない時間跳躍」の並立もまた、『幻魔大戦』シリーズではすでに前例がある――。
でもまぁコレも1回だけの歴史分岐に留まれば、観客も即座に理解ができる。2012年・2013年・2014年の3つそれぞれの時点で分岐が生じる可能性についてもまぁ理解ができる。しかし、各々の時代にインフィニティ・ストーンを返却しに過去へと介入する度に、さらに「返却された世界」と「返却されなかった世界」とに再分岐するやもしれない可能性までをも考慮する人間は早々いないと思う。あるいは、モヤッと念頭にはその疑問が浮かんでも、フツーは観客の脳髄の理解のキャパシティー(容量)もオーバーするとは思う。
しかし、論理的には最低でも1+(3×2)で7通りもの並行宇宙が誕生してしまうハズだ。筆者のようなイジワルなマニアはそこをも選り分けて、ストーン返却が果たされなかったがために4年後の2016年にドクターストレンジも誕生せず、マルチバース(多元並行宇宙)のひとつでもある「暗黒次元」からの侵略で滅亡を迎える分岐世界が誕生する可能性も想起する。
その場合、「自世界ファースト」に基づく別世界の地球人70億の大虐殺を惹起したことにもなってしまい、7世界のうちの3世界がストーンの返還がなされなかったがために破滅したやもしれないとも推測してしまう。しかし、そのような作品自体の重大な瑕疵ともなりうる非倫理的な可能性については考えたくはナイところだ(笑)。
なので、スタッフたちの公式見解からはハズれていようが(?)、些事の歴史改変程度であれば、つまりはインフィニティ・ストーンを過去の時代の元の場所へ即座に返却すれば、歴史改変や歴史分岐は起こらないのだと見ておきたい。
ここで、「歴史自体の復元力」というSF設定を持ってきて、大スジでは史実に類似した役回りを代替者が務めることで歴史が進む往年の映画『戦国自衛隊』(79年)を想起する。過去の時代に対しての悪党集団の干渉に対して正義のタイムパトロールを対置することでバランスが取れて未来の歴史改変も免れられているとするSF的エクスキューズも付けていた『未来戦隊タイムレンジャー』(00年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20001102/p1)なども思い出す。
つまりは、本作には分岐にならずに上書きとなる歴史改変も併存していて、よってドクターストレンジが誕生しなかったので滅亡を迎えた時間線の並行世界はひとつも誕生しなかったと解釈したいところなのだ。
――いわゆる「バタフライ効果」で、蝶々の羽ばたきの有無による空気変動でも、中長期スパンでは中和・相殺されて大局に影響がなくなるどころか、相違が拡大していくばかりであることがカオス理論的にも判明している現在、時間跳躍者が過去の時代に突如出現して、ある容積を占めることで空気がその外部に押し出される「バタフライ効果」も思えば、インフィニティ・ストーンを元の時代の元の場所に戻そうとも、やはり歴史は分岐せざるをえないので(汗)、「歴史自体の復元力」という概念自体もホントウは非科学的ではあるのだが……。
この矛盾はソレこそ3次元物理法則よりも上位の高次元存在(神さま)などを措定して、それによる介入で「歴史自体の復元力」が働いたとでもするか、特定個人の過去へのタイムリープで局所的なループができること自体が、高次の視点で見ればあらかじめ定められていた運命・必然でもあったのだとしないかぎりは解消ができない――
2012年と2014年で弁護できない規模での改変! 分岐宇宙が誕生!
……なぞと考えつつ本作を鑑賞しつづけていると、2012年の映画『アベンジャーズ』の戦場で、2012年と2023年のふたりのキャプテンアメリカが鉢合わせしてバトルが勃発してしまう!(笑) マインド・ストーンの回収には成功するも明らかにイレギュラーな事態であり、もうココで歴史が変わっちゃっているよネ!?(汗)
いやでも、2012年のキャプテンは2023年のキャプテンを偽物だと思っているであろうから無問題であり、あのときに偽物に遭遇したという記憶がキャプテンの個人史に上書きされただけで、あるいはそもそもソレこそが規定路線の運命だったことにもなったのだ! 先の映画『アベンジャーズ』では語られなかっただけの実話だったのだ! という弁護の余地もあるよネ? と脳内補正をしつつ、さらに鑑賞をつづけていると……。
アイアンマン&アントマンはインフィニティ・ストーンのひとつ、スペース・ストーン(4次元キューブ)の拝借に失敗!(爆) どころか、映画『アベンジャーズ』の主敵であり雷神ソーの義弟でもある悪神ロキが、このスペース・ストーンを横取りして逃走してしまうのであった!
オイオイオイ。あの映画にそのオチはなかったゾ! 明らかに歴史が変わっちゃっているじゃん!! ……後日ググってみると、ここで誕生した分岐並行世界を舞台に、悪神ロキを主人公としたTVシリーズが作られるそうである(汗)。
――昭和の時代に元祖の仮面ライダー1号&2号が悪の組織・ショッカーに敗退したという、分岐した歴史をたどった並行世界(分岐されずに上書きされた世界?)を描いた映画『スーパーヒーロー大戦GP(グランプリ) 仮面ライダー3号』(15年)ラストでは死亡したままで終わっていた『仮面ライダードライブ』(14年)の2号ライダー・仮面ライダーマッハが、ネット配信による映画の続編『仮面ライダー4号』(15年)において、幾度もの時間ループの果てにようやく復活を遂げるようなメディアミックス展開だったのですネ(笑)――
仕方がナイので作戦変更、キャプテンアメリカ&アイアンマンは、まだ戦後25年目の1970年の米軍基地へと飛んで、そこに保管されていたスペース・ストーンをゲットしようと試みる! ココでご都合主義にもアイアンマンの父親や第2次大戦時にキャプテンアメリカの恋人でもあった女性高官がふたり同時に在籍していて、それと知られずカンタンな会話を交わしたり、隣室から万感の想いにカラれながらむかしの彼女を見詰めるのも人間ドラマ的には悪くない。
雷神ソーはガーディアンズオブギャラクシーのアライグマ型チビチビ動物宇宙人と、自身の主演映画第2弾の2013年の北欧天上世界にタイムトラベルして、リアリティ・ストーンをゲットするついでに、後年の雷神ソー映画第3弾『マイティ・ソー バトルロイヤル』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171113/p1)にて敵に破壊された神々の世界の巨大トンカチ型武器・ムジョルニアも失敬することで(!)、いま所有している手斧型武器・ストームブレイカーとの二刀流ともなる!
ソーもやはり、今は亡き母親とも遭遇、この5年の失意で酒に溺れてブクブクに肥満して変わり果てた姿になっていたのにも関わらず、母親が息子だと直感的にすぐに気付いて、すべてを許して包容する姿もコテコテな展開ではあるけれど、やはり感動的でもある。
2014年の外宇宙惑星に向かったのは、実は悪の超人・サノスの娘でもあり(!)、ガーディアンズオブギャラクシー映画第2弾『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170513/p1)にて緑色の宇宙人である姉との激闘の末に改心を果たしたスキンヘッドの青いサイボーグ少女・ネビュラ嬢。アイアンマン2号のウォーマシンおじさん、共に黒ずくめの服装で身を包んでいる超人ではなく優れた身体能力を持つ人間にすぎない弓の名手・ホークアイ、ロシアの女スパイ上がりのブラックウィドウもコレに従う――毎度のことだけど、地球人にも呼吸可能な大気がある惑星なのですネ(ガチなツッコミではないので、念のため・笑)――。
ところがドッコイ、今時のサイボーグなので5G(ファイブ・ジー)やWi-Fi(ワイ・ファイ)の電波を通じて(ウソです)、2014年と2023年のネビュラ嬢が電脳ネット経由で同調して、時間泥棒作戦が2014年にはまだ存命中でヤマっ気も脂っ気もあった悪の超人・サノスにもバレてしまうのだ!(爆) ココでも歴史が分岐しちまったヨ!
なぜにそのような「機内モード」に設定しない初歩的なミスを? なぞとは云ってはイケナイ。劇中人物が何らかのヘマやポカをやらかしてくれるからこそ、起伏のあるドラマが作れたり、ディスコミュケーションから来るのちのちの大バトルが描けるワケである。
地球・白色彗星帝国・ガミラス帝星の実力者が偶然そろった場で、白色彗星帝国の次代の大帝候補でもあり地球人との和解も考えはじめたミル青年が、そんな事情は知らずにガミラス総統を救おうとしたガミラス特殊部隊に射殺されてしまうからこそ、宇宙戦艦ヤマト2202vs超巨大戦艦との総力戦にも持ち込めるのだ(笑)。往年の東映メタルヒーロー『特捜ロボ ジャンパーソン』(93年)#37「正義vs(たい)愛」みたく、ゲストの悪役ロボットが正義に目覚めたのかと思ったそばから悪党が機械で洗脳するからこそ、ヒーローとのバトルにも持ち込めるし悲劇性も高まるのだ。
「フィクション」とはフランス革命前の18世紀の啓蒙主義的な「理性」や「合理」が支配するモノでは毛頭なく、20世紀初頭に発見された「無意識」や「リビドー」が優先される、本質的に「下世話」で「不謹慎」なモノなのだ(笑)。
生命復活の目的は達成! 2014年の過去から大軍団も襲来してラストバトル!
2023年のアベンジャーズ基地に帰還したメンバーが持ち寄った6つのイニフィニティ・ストーンを、アイアンマンが手っ甲にハメて指パッチンするや、世界は鉛色の重さを脱して急に騒がしくなる。そう、喪われていた「全宇宙の生命の半分」が復活を遂げたのだ。とはいえ、このままハッピーエンドで終わったならば詐欺である(笑)。
この直後に2014年の時点から分岐した直後の並行宇宙から飛んできたサノスの宇宙戦艦群&大軍勢にアベンジャーズ基地が襲撃されて巨大なクレーターと化す! そして広大な窪地と化したCG背景の戦場にてはじまる肉体ガチンコ大バトル!
しかして「インフィニティ・ウォー」で消滅したアベンジャーズの面々・ワカンダ国軍・北欧天上世界アスガルド軍・宇宙海賊ラヴェジャーズの艦船らも次々と復活! 同じく復活を遂げたドクターストレンジが宙空に無数に出現させたドラえもんの「通り抜けフープ」(笑)を通じて続々と参集してくる強者集結のカタルシスも味合わせてくれる!
アベンジャーズのリーダー・キャプテンアメリカによる、結局は日本の歌舞伎的様式美とも同じじゃネ? と思える、おなじみの「アベンジャーズ! アッセンブル(全員集合・攻撃開始)!!」の号令とともに、第2次関ヶ原の合戦がはじまる! 各ヒーローに見せ場も与えた尺もボリュームもいっぱいの二転三転する大バトル!
コレコレ、コレですよ! 単なるヒーローものじゃない、バトルものじゃない、ドラマも人間も描かれている、社会派テーマやリベラル左派的な多様性ガー、とマニア諸氏は云うけれど、やはりそれは最終バトルを成立させるための言い訳か、でなければ最終バトルを感情面でも盛り上げるためのキャラの動機付けにすぎなくて、所詮はヒーローものとは民主的な話し合いではなくバトルで決着させる英雄崇拝・前近代的・封建的なジャンルに過ぎなくて(笑)、身体の拡張感、身体を自由自在に動かして状況もリードしていく身体性の快楽、幼児的な全能感・万能感を満たすためのジャンルなんですよ!――もちろん倫理的にも許される「暴力」の発露の条件付けとしての「正義」の探求も二次的にはあるとも考えますけれど――
そしてバトルは、6つのインフィニティ・ストーンをハメてあるアイアンマンの右腕巨大化版みたいな手っ甲をめぐる争奪戦ともなっていく。日本のロボットアニメ『マクロスF(フロンティア)』(08年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20091122/p1)みたく、亡き戦友の銃器を仲間たちがバトンリレーをしていった果てに最後の一撃を決めていたように、それで武器の性能や威力がアップするワケでもナイけれど、ひとりの超絶ヒーローがいればソレだけで充分だよネ! ということではなく、この場にいた他のヒーローたちも欠けることなく有用であったと思わせて、物語的にもシンボリックな次元で、その手っ甲にヒーローたちの想いが込もっていくかのようなバトンリレーが繰り広げられた末に、最後の勝利の時を迎える!
――イジワルに見ればアリガチな既視感あふれる展開だともいえるけど、ヒトの心に感動をもたらす普遍・王道・鉄板なのだともいえるのだ!――
寂寥の終幕 キャプテンアメリカが最後の最後で分岐並行宇宙を創造!?
戦い済んで陽が暮れて、『アベンジャーズ』の2トップであるアイアンマンとキャプテンアメリカの退場・引退劇も描かれる。そう来たか。インフィニティ・ストーンの返還劇を端折るのも、物語の構成バランス的には正しいとも思う。
ラスト、過去の時代へストーンを返還しに旅立ったキャプテンが帰ってこない。どころか老人と化したキャプテンがベンチに座っている(汗)。エンドクレジットでは1950年代っぽい邸宅&風景の映像とオールデイズな音楽が鳴りだすことで、のちにスーパーヒーロー管理組織の上官ともなった第2次大戦中の恋人との蜜月が「70年間の冬眠」で果たせなかった後悔を、DC社の『スーパーマン』(1938年)並みのキマジメ誠実ストイックなヒーローで「私」よりも「公」を、高潔な神に近き存在だけが持ち上げることができるという雷神ソーの巨大トンカチも本作ラストバトルではラクラクと持ち上げて使いこなしてもみせたキャプテンアメリカが、はじめて「公」よりも「私」の方を優先し、その人生をタイムトラベルに便乗してヤリ直していたことも示唆される。今まで散々に公的な使命に我が身を捧げてきたのだから、慰労の意味でもココで私生活を充実させても誰もが許すであろうけど。
――とはいえ、映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160701/p1)では、暴力装置とも成り得るヒーローたちを管理する機関の下に付くことをよしとせず、開拓民的な自主独立を重んじる気風からも、そのポリシーは「大きな政府」の「福祉互助」的な「民主党」ではなく、「小さな政府」の「自助努力」的な「共和党」といった感じではあるけれど……(両党に対する党派的な優劣の話ではナイので、くれぐれも念のため。筆者個人は双方の政治理念それぞれに一理があるとも思っています)。
正しい「歴史」の護持が目的であったハズなのに、矢も楯もたまらずに眼の前の「人道」を優先させることで「カタルシス」と同時に「歴史改変」をも惹起していく『未来戦隊タイムレンジャー』後半&幕末にタイムスリップした医師の尽力を描いたマンガ『仁―JIN―』(00年・09年にTVドラマ化)等々もまた想起――
歴史に大きな支障が出ないのであれば、歴史は分岐せずこの時間軸の世界でキャプテンは静かに暮らして、晩年には自身も含むアベンジャーズの激戦の歴史をヨコ目に眺めて、しかしてかつての恋人とは早々に結ばれていたという歴史の上書き微改変があったのやもしれない。
この解釈にはムリがあるというのならば、分岐並行世界では恋人と結ばれることは果たしても、それからでも約80年の人生を送った末に、タテ移動の時間跳躍ではなくヨコ移動の並行世界跳躍を行なって、我らが住まう元の時間線の世界へと戻ってきたのやもしれない……。
――コレまたヤボだけど、並行宇宙をまたがった跳躍に、「仮面ライダージオウ世界」・「仮面ライダービルド世界」・「ライダーがTV放映されている現実世界」の3つの並行世界を斜めに何度もタイムトラベルしていく昨冬の映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190128/p1)などもまた想起――
想像が膨らむところだけど、この美しい結末を台無しにして尻を叩いて催促をするようなことを云わせてもらえば、分岐した並行世界の1950年代・60年代・70年代などの東西冷戦下を舞台に、東側と戦うキナくさい『キャプテン・アメリカ』の続編映画も製作していってほしいところだ(笑)。
……その世界でも戦中に氷結していたパラレル存在のキャプテンアメリカが70年後に目覚めて、かつての恋人が自分そっくりの男と結婚していても、彼はやはりストイックに正義の味方に徹して「インフィニティ・ウォー」を駆け抜けたとも思うけど……。最後の最後に過去に戻って恋人との人生をヤリ直す余生の選択肢を採ることはなくなりそうだナ(汗)。
各分岐世界の2018年でも悪の超人・サノスによる「インフィニティ・ウォー」が勃発して、各々が「時間GPS」で2012年・2013年・2014年の時点に戻ったら、分岐後の2013年と2014年は問題がなくても、2012年だけは未分岐の世界なので各位がバッティングするんじゃネ? とも思うけど……もうこの件にはふれないでおこう(笑)。
・2012年で悪神ロキが脱走することで分岐した世界は、番外TVシリーズ『ロキ』で描かれていくらしいことは先にも言及した通り。
・2014年のサノスが2023年の並行未来で返り討ちにされた分岐世界では、2018年の「インフィニティ・ウォー」も起こらないので多分問題は少ない。
・2013年の世界からはきっと分岐も発生しなかったのだと思いたい。
・とはいえ、2012年・2013年・2014年各々の時点から分岐宇宙が誕生した可能性も否定はしきれない。
・ストーンが過去の時代に返却された際に、同時に返却されなかった世界も誕生して、それが滅亡を迎える事態は想像したくないので、返却時は分岐が生じなかったと思いたい。
・1945~50年ごろからキャプテンの介入で分岐したやもしれない世界については、先にも説明した通り。
・ドクターストレンジが予測した1400万604通りの悪の超人・サノスに敗北する可能性はあくまでも可能性であって、並行宇宙としては実在していないと思いたい。
……といったところだけど、もちろんその時々の作り手の意向・後付け設定の方が優先されていくであろうから、最終的には筆者もそちらに従います(笑)。
独立した作品でありつつ、同一世界を舞台に連続性も保持した「世界観消費」
原典たるアメリカンコミックでは1960年代から実現していたスーパーヒーローの共演劇を、実写映画でも再現した2008年の映画『アイアンマン』にはじまる『アベンジャーズ』は2トップの退場で一旦の終了となった。しかし、間髪置かずに公開されるアベンジャーズ版スパイダーマン主演映画の第2弾『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19年)では予告編を観るかぎり、本映画の決着を受けたあとの「傷心」と「時空の混乱」が描かれることで、観客のちょっとした知的・マニア的な関心の継続を惹起する戦略を採っているようでもある。
実のところ筆者は、ヒーロー大集合映画『アベンジャーズ』シリーズよりも各々のアメコミヒーローが単独主役を張った作品群の方が、起承転結のメリハリやドラマ性&テーマ性の面においても出来がイイ作品が多いとも思っており、実は本作の前作たる前編『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180619/p1)に至ってはツマラなかったとすら思っていたりもする(爆~熱烈なファンの皆さまには申し訳ございませんけど)。
そんな筆者は近作を例に取るならば、本作よりも『ブラックパンサー』(2017年・初出は1961年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180607/p1)や『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年・初出は1966年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170901/p1)に、世評は低いようだけど『ドクター・ストレンジ』(2016年・初出は1963年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170504/p1)の方が出来がイイと思うし、心の底から楽しめる傑作だとも思っている。
――もっと云うなら、ヒーロー大集合映画としてなら、テイストはチャイルディッシュでも、シーソーバトルの組み立て方&各キャラの立て方での純・技巧面では、女児向けアニメ映画『プリキュア オールスターズDX(デラックス)』シリーズ初期3部作(09・10・11年)の方が『アベンジャーズ』シリーズよりも出来がイイし、神懸かった大傑作だとも思っていたりもするけれど(爆)――
平成のはじめに、オタク第1世代の評論家・大塚英志はその著作『物語消費論』(89年・ISBN:4788503360・ISBN:4044191107)で、ある作品の「前日談」や「後日談」に「番外編」、さらにはその世界の「地図」や壮大な「歴史」を作ることで、作者や読者に自動的に「物語」や「二次創作」を次々と製造させやすくなり、虚構の世界で人々を中長期に渡ってアキさせずに享受させることが、将来のエンタメ・ビジネスの主流になるとも主張して、コレを「物語消費」と名付けていた。
そして、それらの萌芽がシリーズをひとつの歴史として連結した昭和の1970年代のウルトラマンシリーズやら学年誌での後日談マンガ連載にウラ設定の開示であるとして、TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101207/p1)や『機動戦士ガンダム』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990801/p1)に『ビックリマン』(87年)などの劇中に叙事詩的な壮大な歴史を持つ作品群をそれらの結実としていた。
個人的にはコレは「物語消費」ではなく「世界観消費」と呼称するのが正しいとも思うけど、スケール雄大な大陸のごとき「世界地図」的な世界観 & 善と悪とが絶えることなく闘争を繰り広げてきた「架空の偽史」に対してワクワクするような気持ちは、個人的にも実感としてよくわかる。
オッサンの筆者が子供であったころの1970年代にも、円谷プロが創立10周年を記念してウルトラマンシリーズのみならず自社製作の『ミラーマン』(71年)やら『トリプルファイター』(72年)などの各種ヒーローなども、「銀河連邦」の名の元に同一世界での出来事だと設定する展開が見られたことがある――継続はしなかったけど――。
今のテレビ朝日にて70年代中盤に放映された、舞台の公開収録番組でも、『仮面ライダー』や『秘密戦隊ゴレンジャー』に『がんばれ!ロボコン!!』やら『超電磁ロボ コンバトラーV』に『一休さん』(ひとりだけ室町時代!・爆)などが共演して、悪の組織と激突する特別番組が幾度かあって、その夢の共演にはワクワクしたものだ。
思えば、我々も幼少時には番組の垣根を超えて、あまたのソフビ人形で今で云うところの私家版「スーパーヒーロー大戦」やら「アベンジャーズ」、善の軍団vs悪の軍団との抗争劇を日々飽きもせずに高揚しながら友人たちと繰り広げていたモノである。
もっとさかのぼれば、それぞれが主役物語を持っている江戸時代初期の剣豪、宮本武蔵・息子の宮本伊織・荒木又右衛門・宝蔵院胤舜・柳生宗矩・柳生十兵衛らが大集合してバトルロイヤルする江戸~大正期にかけて成立した講談『寛永御前試合』などもある――コレのオカルト翻案版がかの山田風太郎の伝奇小説『魔界転生』(64年・81年に映画化)――。
ゲーム「スーパーロボット大戦」(91年)的な強者集結の発想は、日本にも200年近くも前からあるくらいなのだから、古今東西ドコの国でもありそうではある。
実はかつて日本でも「世界観消費」が隆盛を極めていた! 今こそそれらの復活を!
1970年代には、『ウルトラマン』(66年)や『仮面ライダー』(71年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140407/p1)や『人造人間キカイダー』(72年)に『マジンガーZ』(72年)などの作品群が、続編シリーズ作品を通じてその世界観を共通のモノとしていたり、映画では『マジンガーZ』や『デビルマン』(72年)と『ゲッターロボ』(74年)などが共闘したりもしていた。
映画『ジャッカー電撃隊VS(たい)ゴレンジャー』(78年)冒頭では、仮面ライダーV3(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140901/p1)がヨーロッパで、キカイダーはモンゴルで、仮面ライダーアマゾン(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20141101/p1)は南米で戦っているとされることで、コレらの作品を同一世界としても描いて、往時の子供たちをワクワクさせてもいたモノだ。
しかし、70年代末期~00年代初頭にかけては、オタク第1世代がオタクジャンルの市民権を得ようと活動した際の理論武装として、既知のモノではない未知なるモノとしての「ヒーローの神秘性」やら「怪獣の恐怖性」というテーゼが、高いテーマ性を持つものとして至上の原理とされることで、「一回性」・「初遭遇」が賞揚されるようにもなっていった。
なおかつ、往時はジャンル系マニアのみならず世間の映画マニアたちも今から思えばまだまだ純朴であった時代というべきで、「続編」や「PART2」に「シリーズ」作品が商業的には大ヒットを収めていたとしても、割り切ることができずに「それは堕落である!」とクソミソにケナしていたようなアオくさい時代でもあったのだ。
そこから、リセット的なリメイク作品が賞揚されるようにもなり、たとえリセット作でも平成ゴジラや平成ガメラのようにそれらが連続シリーズ化の様相を呈してくると、それは設定の縛りにもつながり、作劇の自由度が少なくなるとも批判をされてきたモノだ。
しかし、それらの言説やテーゼは果たして正しかったのであろうか? 無謬の尺度であったのであろうか? ある時期までのジャンルの再興にとっては非常に有益でも、それ以降はジャンルの豊穣さを否定する狭さへと帰結したのではなかろうか?
いやまぁ完全リブートされた『シン・ゴジラ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160824/p1)が超特大ヒットを放ったり、長命SFシリーズ『スタートレック』が低迷してきたところで、仕切り直した中点付きのタイトルのリブート映画『スター・トレック』(09年)がヒットした例もあるので――後者は厳密には原典とは並行宇宙の関係でつながってもいるけれど――、ドチラの手法であっても面白ければ、あるいは売れればそれでOKではあるので、100か0かの関係ではナイし、完全リブート作でも面白ければ大いに評価はする(笑)。
しかし、個人的には「世界観消費」の方向性にこそ、人々をよりワクワクさせる豊穣な可能性があるのだと感じていて、日本のジャンル作品も大局・大勢としてはそこに向かうべきだとも考えている。
円谷プロのウルトラシリーズは00年代末期~10年代中盤には、バンダイから出向してきてTV番組『ウルトラマン列伝』(11年)を宣伝するための「列伝ブログ」も担当していたプロデューサー氏が主体となって事が進んでいたと推測しているけど、氏が担当していた時代の作品群は作品世界も越境した「世界観消費」の面白さもそれなりにあったとは思うものの、フリーの若手プロデューサー氏に交代してからは、氏も頑張っているとは思うものの、そのインタビュー記事などを読むかぎりでは、「先輩ヒーローには頼らないでも楽しめる作品としたい」旨を語っていて(爆)、それはそれでその志は壮とすべしだけど、中盤回や映画版では先輩ウルトラ戦士や近作の悪党たちこと「円谷のヤベ~やつら」四天王(笑)もゲスト出演させて、キャラ人気的なイベント性の方をこそ重視していった方がイイとも思うゾ~。
東映も「ライダー」や「戦隊」に過去の東映ヒーローたちをも同一世界の存在として扱う、2代目・宇宙刑事ギャバン(12年)を主役とした『スペース・スクワッド』シリーズ(17年~)を展開しているけど、コレも東映全体ではなく子会社・東映ビデオの好き者プロデューサーと『パワーレンジャー』(93年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080518/p1)で凱旋帰国した坂本浩一カントク主導に過ぎないようでもあるので(?)、散発的な試みに終わっており、非常にモッタイないとも思う。
東映全社が一丸となって、計画的に現行「ライダー」や「戦隊シリーズ」にも1クールに1回は、2代目ギャバンや2代目・宇宙刑事シャイダーに、彼らの宿敵でもある邪教団・幻魔空界の敵幹部やら敵怪人たちをもゲスト出演させることで、子供たちにもその存在とヒーロー性を認知させ、現行TVヒーローと番外ヒーロー世界との二層的な構造の各々に連続性も持たせることで、子供レベルでの知的好奇心・ジャンク知識収集欲をも喚起して、春休みの大集合映画などでは彼ら2代目宇宙刑事や先輩東映ヒーローたちとも一致協力・団結して巨悪に立ち向かう! という方向へと持っていくべきではなかろうか?
昨2018年度の女児向けアニメ『HUGっと! プリキュア』もこの手法で、10月の映画公開3ヶ月前の7月にはもう初代『ふたりはプリキュア』(04年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20040406/p1)をゲスト出演させて、映画の宣伝CMも流しはじめて(笑)、映画封切直前には歴代プリキュア全員集合の前後編大バトル回も配置することで、同じく歴代プリキュアが全員集合した『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』をシリーズ最高の興行収入に押し上げてもいるのだから……。
「ウルトラ」や「東映特撮ヒーロー」もコレを見習うべきだと強く主張をしたいのだ!(笑)
2019年6月18日(火)後日付記:ナンと! 本日レイトショーで観た、ラノベ原作(14年)の深夜アニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190706/p1)の後日談映画『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』(19年)が映画の神様のイタズラか、『アベンジャーズ/エンドゲーム』とほぼ同じネタ・お題でビックリ! 量子力学で一応の補強が施されているあたりも同んなじ(テイスト自体はベタつかないけど甘酸っぱい青春なので、全然ちがいますけれど・汗)。
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